○
参考人(香川綾君) 香川でございます。「
食生活改善の方途について」という御
質問でございますので、それについて簡単に所見を申上げたいと思います。
日本人の健康度を高めるということと、それから活動のできる年齢を長くいたしますということ、その二つは
日本の民族を再興するのに一番大事な
基本的な条件だと思つております。多産多子、或いは低能率とか病弱とか早老、短命というようなことが一般の生活
改善によつて
改良されなければならないことですけれ
ども、特に合理的な
食生活をいたしますことが一番これを
改善するのに直接な問題だと思うのです。そうして欧米人の一人と
日本人の一人が相対しまして、その
能力において劣らないというようなところまでどうしても持つて行かなければならないと思います。それで
食生活の
改善ということは、そういうような根本的な
国民の実力の問題になりますが、又同時に
日本の只今の
国民生活のうちで経済問題が、
食生活が、非常に大きい役割を占めるように戦後特に
なつて来ております。非常に貧困になりましたためですが、そういうことと、又婦人の家事労働に要する時間のうちでも
食生活に要します時間が最も大きいのでございます。こういう労力的な問題、そのようなことがすべて
食生活の
改善と関連をいたしましております。現在の
国民生活の
状況はどうであるかと申しますと、これは
終戦後毎年四回ずつ
国民の栄養生活の調査が行われまして、非常に明瞭に
なつて来ております。その結果、併しながらいつでも欠陥として現われて参りますことは、蛋白質の欠乏、これは
戦前からありましたけれ
ども、戦後もやはり幾分
都市のほうは
上昇しておりますが、農村ではまだあります。殊に農村の動物性蛋白質はまだ十分必要量に達しておらないのであります。それから
日本全体についてカルシウムがどうしても足りません。それからビタミンAとかB1、B2、C、その他でありますが、そういうビタミン類の欠乏もやはりございます。このように
我が国の
食習慣によつてこういう欠陥が来ておりますのでありますが、そのうち特に目立つ
食習慣といたしましては米の偏重であります。米或いは米麦の偏重であります。そういう偏食の結果、非常に心身の発育を阻害いたして十分に発育いたしておりません。或いはそのために早老……早く年が寄ります。或いはそのために胃腸疾患が多いし、又各種のビタミンの欠乏症等がよく起つております。又結核病の多発とか、又は高血圧症の多いこと、若くて高血圧症になることな
ども、これらの
食生活と関連しているように考えられております。でこのような
食習慣というものは一体何から起りますかと申しますれば、結局はその地域の
生産する食物によつて長い間自然に起つて来た、習慣付けられたものでございましようけれ
ども、又
食習慣、食物の変ることによりまして
生産される食物が変ることによりましてこの
食習慣は必ず変ることができるものであろうと思います。併し又これには相当年月を要しましよう。併し大人よりも子供におきましてはその
食習慣は非常に早く、新らしい習慣に変り得るものであります。つまり私は
食習慣は変り得るという前提の下に
食生活の
改善を考えたいと思うのであります。そこで
日本の食物
事情が、食糧の
生産事情が昔から言われたような瑞穂の国のような
事情が続いているかどうかということでありますが、それは全く今では様相が違つておりまして、昨年のように非常に豊作と言われておりましたときでも、その食糧の
主食糧の内訳を見ますと、
内地米の
生産が六千六百万石で、そしてそれでも足りませんで外米を買いましたし、又
小麦や大麦が約二千万石とれましたがそれでもまだ足りませんで
小麦、大麦を買入れております。そして米が殆んど全
消費量の半分くらいしか、半分強しかなか
つたのでございます。本年はその中から更に千二百万石の減収でございますから、到底本年は外米を買いましたのも合せましても米は
消費量の半分しかないのでございます。このように食糧
事情が変つて参りましたから自然に
食生活も変つて来るでございましよう。それでそれに対する
政府の今年の対策というものを見ますというと、
輸入米を、昨年の約七百万石に対して更に四百万石の追加をいたしております。又
輸入小麦や
輸入大麦な
ども相当多量に買入れましてそこに人造米の二百万石が予定されておるようでございます。ですけれ
どもそれだけでもまだ今年の減収に対しては十分補えておりませんので来年の早場米等を充てておることと思います。併しこういうものはただそのときの姑息な手段によりまして欠けているものだけを買整えて補充すればよろしいというようなことでいいでございましようか。私
どもはやはり
日本の食物を買入れますときには、それをどのようなものを買つたら一番経済的で又栄養的であるかということの根本に遡つて考えなければならないと思います。一〇〇カロリー当りの
輸入食物、
輸入カロリーのカロリー源の単価を申しますと外米は二円二十二銭で、外
小麦は一円二十八銭で、外大麦は一円六十九銭で、大豆は一円二十一銭、砂糖は一円二十六銭というふうでこれは全部のカロリー源として
輸入されるもののうち外米だけが特に高く、約全体のどれから見ましても約二倍に近い
価格を占めているのでございます。で、こういうものを
輸入する場合、栄養上からと、それから
世界市場の睨み合せから、両方考えて買入れなければいけないと思います。
次にこの食糧をどういうふうに
とつたらばよろしいかということが栄養的に見まして非常に大切な問題で、これが根本的には戦嘉からもたびたび審議され、又
最初は
国民食として規定が作られました。又戦争後には二十二年に、栄養食糧対策審議会でその
数字が出されております。最近は資源調査会の食糧部会におきましてその
数字が出されております。それは熱量が二千百八十カロリー、蛋白が七十三グラム、脂肪が三十グラム、カルシウムが一グラム、鉄十ミリグラム、ビタミンAが三千七百国際単位、ビタミンB2が一・ニミリグラム、ビタミンB2が一・二ミリグラム、ナイアシンが十二ミリグラム、ヒタミンCが六十ミリグラム、ビタミンDが四百国際単位というふうにきめられたのでございます。このようなきまりがございますけれ
ども、これによつてこのような栄養をとるにはどのような食物を持つて来たらいいか。その食物の配分、つまり食糧の構成でございますが、まだ今年の分は食糧構成案が食糧部会においては製作されておりませんので、試みに二十二年に作られましたもののうち、その十年後を見越して将来案というのがございます。それを持つて参ります。そういたしますと、それは少し栄養量が低いのでございますから、丁度今度の栄養量を合せて考えますと、全部は申しませんが、大体米は玄米で二百七十グラム、それから大麦が、裸麦が十グラム、
小麦が六十グラムというふうに
なつておりますが、この
小麦をもう少し多くしまして九十グラム、それからさつまいもが百グラムに
なつておりますけれ
ども百五十グラムというふうに、
昭和二十二年の食糧構成案をちよつと仮にカロリーを合わすためにそのように
国内の
生産量、或いは
輸入量のうち可能なものの
数字をそこに附加えまして、そうして一応これを置換えて見るといたします。そういたしますと、
牛乳などは一日の
消費量が六十グラムというふうに出るのでございますそうしてこのような食糧構成をいたしまして、この食糧構成で
日本の食糧の
生産が間に合うかどうかということを考えて参るわけなんです。
今日までこういう審議会が開かれて、栄養審議が行われましてこれだけ食べれば完全に
日本人は栄養が確保される。又そういうふうに食糧が
生産されればよろしいということを栄養学者のほうでは非常に真剣に、非常な努力をいたしましてこしらえるのでございますけれ
ども、食糧行政におきましては一向そういう
数字は考えられておりませんでございます。そういう空虚な栄養の
数字をもつて扱うだけでありましたならば、栄養審議会というものの
意味がないのでございます。例えばここに規定されました食糧構成案でやられましたような米の二百七十グラムというようなものは、これは仮にこの
数字を一人当りに一
年間に当てはめて見ます。二百七十グラムというのは一合八勺なんです。この一合八勺を只今のこの計算の基礎に
なつております、人口が八千三百万人で計算いたしておりますから、この八千三百万人に当てはめて見ますと、五千四百五十三万石あれば米は丁度よろしいはずでございます。そのような栄養的に見まして米の数量が丁度今年のような凶作のときでさえも、丁度よろしい
程度の米を食べていたほうが栄養的にはよろしいということが、すでに
昭和二十二年の栄養対策審議会で決定に
なつているわけでございます。併しながらそのためには、その他のものをいろいろ多くしなければならないことは無論でございます。例えば
牛乳にいたしますと、只今御報告がございましたように、大体三百五、六十万石しか
日本ではできませんので、それを一人一日当りといたしますと、僅かに一勺半ぐらいの分量でございましてそうしてこの六十グラムというものにいたしますためには、これの二倍余り
牛乳を殖やさなければならないのでございます。さてこのように栄養的に見て、
国民の必要な食糧の全量を計算いたしまして、最も自給度を高めるように、且つ又最も安い
値段で買い得る
輸入食糧を計算いたしまして、そうして食糧のほうからきめて参りますことが必要だと思います。つまり必要な栄養量を算出いたしましてそれによつて食糧を
生産し、且つ
輸入するというような計算が必要なのではないかと思います。そういたしますと、米麦のうち、米は
生産量で十分でありますから、麦、殊に最も安くつくところの
小麦を
輸入するのがよろしいでしようし、豆は、大豆は後ほど申上げますが、大豆は
輸入すべきであります。又魚肉類では、これは成るべく自給のほうへ持つて行つたらよろしいし、又農村では水田の養魚のようなものをもつと奨励することが必要でございましよう。いもはこれは自給ができますのでございますが、
品質を
改良しなければ食糧としては不十分でございますし、又もう少し
加工のことも研究する必要がございましよう。緑黄野菜は自給が大
部分できますが、なお多くあつたほうがよろしいと思います。淡色野菜はその中にはなくてもよろしいものもあろうと思います。乳は少くとも今の二倍、或いはそれ以上に
増産されることが是非とも必要であります。砂糖は
輸入されることが必要であります。そのように見まして、さて栄養と申しますものは
食習慣を無視しては行われないのでございまして、
食習慣を考えて見ますと、私の
学校の学生の都内居住者の家庭だけを百軒調べて見たのでございますが、それによりますと、大多数の家庭では一日二食米飯を
とつております。そのうち
配給は一食半ですから、一カ月のうちに四日乃至五日分の闇米を買わなければやつて行けないのでございまして、買つている家も買つていない家も全部百軒平均いたしまして、一升ずつの闇米に
なつております。一人一升、一カ月に使つておつたわけでございます。そういたしますと一日の闇米代は十円に当るのでございます。併しそれを場所を変えまして、下町、又は
工場労務者のところで調べましたところが、一日の闇米代が二十円に当つております。つまり平均二升に当る闇米を食べているのでございます。そうして
小麦粉製品の
消費の
状態は、学生の家庭におきましては、
パンが六七%で、うどんが三三%でございましたが、
工場労務者の場合には、
パンが三円五十銭で、うどんが十円というふうに反対に
なつております。これは
パンがインテリ層若しくは山の手
方面に多く
消費されて、そうしてうどんが却つて労務者のほうに多く
消費されているような面が少し出ているように思います。それで闇米をどうして買いますかという理由を聞きましたところが、大多数の答えは好きだからと言つて参りました。それで私
どもは
食生活の
改善を強制的にすることはできません。好きなものをどうしても好きでないでしようと言うことはできません。それで米食希望者のために早速何を持つて行つたらいいか。どこでも一食、或いはそれ以上を
パンにして、或いはうどんにしておりますのですから、更にその上にうどん、
パンを持つて行つても受付けない
部分が又幾分あるのでございます。そういう点にはどうしても
嗜好の点とか、或いは栄養の点とか、
価格の上がり、若しも人造米というものがその点でいろいろな性質が合うことでございましたならば、これを用いてもいいのではないかと思つております。又農村におきましても、今年は非常にきつい供出をしている場所もございます、場所によりますけれ
ども。そういう場所では供出をいたしました
あとは、是非とも外米を頂きたいということを異口同音に聞くのでございます。でそういうときに非常に高い外米を買つて上げるよりも、それよりうんと安く作れる、半分の
値段で以てできる
小麦粉を主体といたしまして人造米が作れたら、それを上げたほうがいいように思います。
ついでに人造米のことにちよつと触れたいと思いますが、人造米は、澱粉を主として作られるものは、栄養的に見ても、非常に又味の上でも不都合であると思います。澱粉には蛋白質も、又脂肪も、カルシウムも、ビタミンB1B2もすべてございませんで、澱粉質のみでございます。で
日本人の栄養欠陥の大きいものは、この蛋白質、そしてカルシウム、ビタミンでございます。然るにこの澱粉の中には、米にあるよりも更に蛋白質がゼロであるし、又カルシウムも、ビタミンもないということで、そういう澱粉を米の粉の代りに半分も、又それ以上も入れて作るというような人造米は、これは非常に
国民の栄養のために、危い危害を感じるものでございます。それでそういうようなものにつきましては、先だつて厚生省が警告を発しられましたことは、誠に適当な処置であると思います。
消費者といたしましても、私
どもはいつもこの点については警告を発しているわけでございます。併しながら只今調ベましたように、現在の
食習慣と照し合せまして、そして又農村などの希望を聞き合せましたときに、これに外米を入れることは、経済的にどうしても
日本の今日堪え得ないところでございますから、どうしても
小麦粉を使つた合成米をここに入れることが必要でございましよう。
それで人造米の配合の問題でございます。人造米のことは、これは稲が作るのではなくて、人間が作るものであるということで以て、人造米が若し実用に供されるようになりましたならば、徹底的に監視が必要なんであります。稲のように正直ではないと思いますから……。それで白米に比べまして、蛋白質は、白米では六四、よい配合の人造米、即ち
小麦七〇%、澱粉二〇%砕米一〇%の場合には、それは蛋白質約七グラムになります。悪い人造米のときに、即ち五〇%の澱粉を使いましたときに、蛋白質は三・五になるのであります。この蛋白質の違いは最も大きいものであります。併しこれだけで、よい人造米を作つたと言いましても、これだけでは何にもならないというか、余り推奨に値しないと思います。なぜならば、
小麦粉よりも
加工費だけ余計かかりますから、同じ
加工費をかけるならば、ビダミンB1とカルシウム、即ち
日本の白米食によつて非常に障害が起り得やすいところの栄養、B1とか、カルシウムを強化することが絶対に必要であります。これらの強化をしておきました場合は、却つて白米だけ食べるよりも、強化した米としまして、人造米を常に食べたほうが、常に混合したほうがよろしいということが言えるのでございます。それは勿論又混合いたします率にもよるのでございますが、取りあえずB1とカルシウムを強化することは絶対に必要でございます。それから味が絶対に白米に近いことです。そのためには
製造技術の問題がございますが、これには余り触れませんが、とにかく食味のために、
嗜好のために米が欲しいのですから、その
嗜好を害するような、炊いて融けるような人造米ならこれは推薦はできません。それから又
値段の上におきましても、
配給米と同じ
程度の
値段であることが至当と思います。これは
小麦粉なり、或いはそれに加えるところの砕米なりは、非常に安いのでありますから、それを
加工いたしましても、
加工賃を合せても
配給米
程度の
値段であることが必要だと思います。このようにいたしました人造米は、私
どもは推薦いたします。但し人造米をいも澱粉のはけ場と考えているような、粗悪で、そうして栄養価値の低い、そうしておまけに高いようなものは、これは全く食糧行政上から見ても、又
国民栄養の上から見ても非常に非科学的で、悪い、劣悪なものでありますから、厳重な取締規則を要すると思います。そして検査をいたしまして、悪質業者や又若し破廉恥な役人がいるといたしましたならば、そういうものに対する警戒は、常に厳重にされなけれげならないと思います。
次に
消費経済と、国際の
価格でありますが、
阿久津先生からも先ほ
どもお話がありましたように、私
どもは
消費者としていつも割切れない考えを持つておりますのは、最も国際
市場で高い米を、非常な補給金操作をいたしまして、安く売つてくれる、これはまあいいかも知れませんが、けれ
どもそのために、或いはそのためでないかも知れませんが、反対に安い
小麦が、国際
価格を聞きますと非常に安い
小麦が、非常に高く売られているような感じがいたします。本当に外米を買うように強制されているような形に見えるのであります。私
どもは高い外米を買わないで、
パンやうどんの
価格を国際
価格に準じて下げて頂きまして、そうして安く食べたいと思います。
パンの
価格は、一番安いのは、只今私
どもの
消費者のほうで手に入りますのは、
小麦粉の一食分が六円五十銭、乾麺の六円、それから押麦の七円十五銭、それから外米が七円五十四銭……、ちよつと上つているかも知れません。それから
内地米が八円八十四銭、うどんが九円、素麺が九円、
食パンが十一円三十二銭、これが一斤三十円の百三十グラムでございます。粉で百三十グラムとして……。マカロニが二十六円、オート・ミールが二十八円六十銭と
なつておりまして私
どもは絶えず
価格を考えながら
主食の調整をしておりますので、この点
小麦の
製品がずつと下のほうへ並んでもらいたいのでございます。
食習慣を尊重しつつ栄養的な指導と、
価格操作とを一本の線に沿うように政治が行われなければ、
国民を納得させながら、これを
食生活の
改善の方向へと導いて行くことは非常に矛盾が多くてできないのでございます。
次にさつまいもについて一言申しますと、さつまいもは、非常にビタミンAとか、B1、Cの豊富な食品でございまして、これを単なる澱
粉食品というふうに考えている見方は、
終戦前後代替食品として、食糧行政の中へいもを米と一緒に入れてしまつたあのような考え方から今日まで改まつておりませんのですけれ
ども、カロチンの多いいもを作りまして、その収穫期には生のいもを十分利用して、そうして又その後もこれを
加工いたしまして常用することが望ましいのであります。米の九勺に匹敵する分量は百目でございまして、その中のビタミンの分量は、若しビタミンAの多い種類を作りますと、ビタミンAが、米の零に対していもは一万四千、国際単位で必要量の四千国際単位を遥かに超過します。B1も米飯の〇・二四に対して〇・五二でございます。B2も〇・〇六に対して〇・一四でございます。ビタミンCに至りましては、米の零に対して一〇五でございまして、これも必要量を超過する分量でございます。このように私
どもはいもは単なるカロリー源であつて、澱粉源だとは考えておりませんのですが、その
生産の奨励
方法が誤つて、まずい
加工用のいもを奨励いたしました結果、今でもいものことを考えると身震いするほどいやなのであります。つまりうまいいも、栄養のあるいもを作らなければならないのであります。二十四年には一〇八グラム
とつておりましたものが、二十七年には僅かに四三グラムしか平均
とつておりません。然るにその
生産高は、二十七年には十六億貫とれております。十六億貫、一貫目は一升に当るのでございます。そのいもが十六億貫とれておりますのに、そのうち食べております分量は僅かに四分の一でございます。そのほかは澱粉にしたり、又その澱粉を持て余して、変な人造米を作ろうという企画をしたり、或いは
加工を十分できませんで、腐敗させたりもいたしておりますが、これはどうかもう少しおいしいいも、又カロチンの多いいもを作りまして、
日本のAとかCの給源の足りないのをここで補いましたり、或いはビタミンのBの補いにもすればもつとよろしいし、同時に百匁一食に当るということも大いなるこの際の助け舟であります。
それでそのいもの
生産と匹敵いたしまして、私
どもはいつも考えることは大豆でございます。大豆は非常な熱量源でありまして、又同時に蛋白源でございます。これは今の相場は知りませんが、二、三カ月前の相場で、アメリカの大豆はトン当り四万円、満州は五、六万円、
内地産が七万円とか伺いましたのですが、この四万円でございますと、非常に安いカロリーが得られるわけでございます。その上米麦より蛋白、脂肪源として非常に役に立ちますが、聞きますところによりますと、国産菜種の油の
値段を引下げないために、大豆は
輸入制限しているように聞きますのでございますが、大豆は蛋白源として大きな役割がございますことを忘れております。豆腐は庶民的な食べものでございまして、戦争前までは風呂銭と豆腐は同じ
値段でいつも来たのでございました。ところが戦争後に大豆の
輸入が思わしくなく
なつたときからだんだんその割合が変つて参りまして最近の制限によりましてとうとう十五円の風呂賃に対して十五円の豆腐は、昔百匁あつたものが五十匁になりました。豆腐の代は風呂賃と同じですけれ
ども、分量を半分にいたしましたので
値段が倍になりました。それですでに庶民的な蛋白源という線からずれてしまいまして、豆腐十五円からは十一グラムの蛋白質しか取れませんのに、魚十五円からは二十グラムの蛋白質が取れる始末でございます。これはもつと蛋白源としても、熱量源としても豆を欲しいと思います。
それから乳を
増産することもこれも非常に結構なことで、是非これは
増産して頂きたいのでございますが、このどうしてこんなに乳がどんどん売れるように
なつたかということについては、きつと
学校給食や何かが
日本中に非常に
牛乳がいいということを宣伝したのがあるかも知れませんし、又米国式のハウザ一式の栄養法などがきいたのかも知れませんが、いずれにいたしましても、
日本人はもう
パンを食べなければならないところまで追い詰められて来たのですから、ここで
牛乳をせめて一人一日六十グラム、つまり三勺まで欲しいと思います。で、
小麦をたくさん
輸入する。米の
輸入に代えて
小麦をたくさん
輸入すれば「ふすま」が系取れてそれで牛か飼えるから、それで又乳が取れるだろうというふうに、バンとミルクを関連して考えたいと思つております。農村における
食生活は特に米食が多いので御座います。そして私たちは
都市では一日につまり一食半、即ち一日三勺半くらいの割でございますが、農村では保有米が四合ございます。今年はそんなに行かないころも多いでしようけれ
ども、とにかく農村の米の食べ方は非常に多いのでございます。これをもつと、そのために又非常な欠陥、身体的症状も多く
なつているのですから、この栄養を
改善するためにも
パン食と
牛乳、或いはこのもつと強化された人造米などを入れることが必要なように思います。そして一村の中に
パン焼
工場を作りまして、そこで
パンを焼いて
農家の一食分でも手助けをするような考え方、又その
小麦が非常に安い或いは裏作
小麦をそのまま物で交換するような
方法な
ども考えられると農村など案外
パン食が入り得るのではないかと思います。それからそういう場合にはこれは同時に農村に
学校給食も行われるとよろしいと思います。
学校給食は
都市にばかり集中的に今まで行われておりましたけれ
ども、これは本来は
食習慣を次の世代において米から引離して行くように持つて行くのが大きな目的なんですから、最も米食に偏るところの農村においてこそ
学校給食が必要なのであろうと思います。本年は凶作で大分農村におきましても弁当を持つて来られない子供が殖えたようでございますから、この機会に是非農村に
パン焼
工場を建てて、そうしてそれが永続するためにも
学校給食を同時に行うようにされたいのでございます。そうして
パン食の食べ方というものを
パン食をせられます当初において指導をいたしませんことには、米の飯を山盛り食べるごとくに
パンを食べたのでは却つて栄養が害われますから、どうしても
パンとミルク、或いはそれに野菜などの、或いはお魚などの食餌を添えたところの完全なる
学校給食というものを土台にいたしまして、その地区の
パン食を普及して行くように努めることが非常に必要で、勿論そのほかに農林省においては農村生活の
改善普及が行われるでしようし、厚生省におきましてはその地区の保健所が
パン食の普及に指導をされると思いますが、全部が各省相寄つて
一つの問題を集中的に
改善して行くように考えなければ、
パン食の普及は農村におきましてはなかなか完全に入れることが困難ではないかと思います。併しながらどんなに困難でも農村に
パン食を入れない限り
日本の米では
日本が自給することができないで、永久に外米を買わなければならない
状態になると思いますから、どうしても
パン食を農村に入れたいと思います。
学校では只今の人口を合せて見ますと、学齢期が丁度小
学校が一千百二十一万四千人でございます。そして中
学校は五百三十三万人おります。合せて一千六百五十四万四千人の義務教育の学童並びに生徒がいるわけでございます。でこの人たちが毎日九勺の弁当を持つて来ると九十五万トンの米を二百日の間に食べるのでございます。この九十五万トン、即ち昨年買つた外米の半分の量でございます。その量を昼の弁当にして学童並びに生徒が食べているので、これを
価格にいたしますと三百四十五億円でございます。
小麦粉の百グラムに換算いたしますと、
加工費を別といたしまして
小麦代だけといたしますと、外貨の支払がその半分で済むのです。そうして又それと同時にこれに要するところの補給金も非常にたくさん要るように
なつておりましてこれだけの米の補給金が約五十三億に
なつております。これでその買いました
小麦の補給金の三億円を引きましても五十億円が残ります。この差引いたしました米の
輸入価格と
小麦の
輸入価格との差引の金と、それからこの補給金の差引の金と合せますというと、二百二十二億円となります。このお金がございましたら本当にこの
全国の義務教育の子供たちに今よりももう少しいい条件で
学校給食が全部にもでき得ると思うのでございますが、これは或いは勝手な考え方かも知れませんが、とにかくそういうふうにいたしまして差当りこの子供たちを先ず
パン食へ導きたいと思います。このような凶作の年に特に農村の
食生活を米食から
小麦食に、つまり
パンであろうと、人造米であろうと、それが
小麦食という方向へこれが転換させて行かなければ経済的には駄目でございましよう。又米以外の麦とか、豆とかいもとか乳とか油とかを加えましてもつと栄養を高め、全体の経済的にも安いもの、而も自給度の高い食事というふうに変えて参りますことができましたならば、非常に経済的にも栄養的にも、且つ又
パンと食が入ることによつて家庭の炊事労力についても非常にプラスになると思うのでございます。従来の栄養
改善の方策というものは、栄養
関係のものが専ら一生懸命立てるのでございますけれ
ども、それが農林省の食糧
方面におきまして一向にそれにタイアツプしてもらえないのでございます。そういう点で非常に栄養
改善が空虚に終ることが多かつたと思います。又栄養
改善を申しますときに、余り理想的な
数字にこだわりましてそして実際の
食生活習慣を無視いたしますようなやり方をいたしますというと、これも又生活から浮いてしまうのでございます。栄養的でそして食糧経済的で、そして生活
技術的なところの栄養
改善というものも、各
関係のかたがたが広い視野に立つて
日本の今後をどうするかという非常に重大な問題として総合的にお考え頂きたいと思います。