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1953-11-06 第17回国会 参議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月六日(金曜日)    午前十一時十一分開会   —————————————   委員の異動 本日委員加納金助君辞任につき、その 補欠として石原幹市郎君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     佐藤 尚武君    理事            徳川 頼貞君            佐多 忠隆君            曾祢  益君    委員            石原幹市郎君            草葉 隆圓君            梶原 茂嘉君            高良 とみ君            羽生 三七君            加藤シヅエ君            鶴見 祐輔君            杉原 荒太君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君   政府委員    法務省刑事局総    務課長     津田  実君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       神田襄太郎君   説明員    外務省欧米局長 土屋  隼君    外務省国際協力    局第三課長   安川  壮君   —————————————   本日の会議に付した事件日本国における国際連合軍隊に対  する刑事裁判権行使に関する議定  書の締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○未帰還抑留胞引揚促進等に関する  請願(第一六四号)(第二一二号) ○広島県呉市旧軍施設返還に関する請  願(第三五号) ○岡山県日本原旧陸軍演習場接収反対  に関する請願(第六五号) ○福井県若狭湾上空米空軍飛行演習  場化反対に関する陳情(第四号) ○国際情勢等に関する調査の件  (報告書に関する件)  (新木駐米大使の対米通告問題)  (日本学術会議委員ソ連渡航に関  する旅券下附問題) ○継続調査要求の件   —————————————
  2. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 只今より外務委員会を開きます。  先ず日本国における国際連合軍隊に対する刑事裁判権行使に関する議定書締結について承認を求めるの件を議題といたします。質問のあるかたはどうぞ順次御発言をお願いします。
  3. 杉原荒太

    杉原荒太君 少し質問したい。余り重要なことじやないのだけれども、今度のこの議定書取扱つている問題について公務執行中の犯罪なりや否やということが非常に一つの重要な点になつておるわけだから、その公務執行中の作為又は不作為による罪ということ、民事事件でしたら、この公務執行に当つて例えば損害賠償の原因となるようなことを作つたというようなことは非常によくはつきりするのですが、刑法上の犯罪について、公務執行中の犯罪というとき、先ず問題が二つあると思うのですがね、一つ公務執行中というのが、公務を執行しておる時と時を同じうしてという意味、それから公務執行行為それ自体についてという場合と二つある。これは民事事件のときなど、非常にこれは問題になる。それだから、民事事件などでは、これを非常に法文にも注意して書いてある。ただ刑事事件の場合、これは公務執行中というのは、つまりただ時が公務執行の時と時を同じうしているというだけであつて、その公務執行行為それ自体について、それが犯罪という行為を生んだという、どつちの意味なんです。もう少し具体的の事例で、ちよつともう少し考えてみるとどうなるのですか。
  4. 下田武三

    政府委員下田武三君) 日本語では公務執行中と日本の法令に慣用されておる字句を使いましたのですが、英文のほうではイン・パフオーマンス・オブ・オフイシヤル・デユーテイ、イン・パフオーマンスということは必ずしも公務を執行しておる時間中という、時というよりも杉原さんのおつしやいます公務執行に際して——についてというその意味のほうが私は正確だと思うのです。でありますから例えて申しますと、公務でジープを運転しておつて、その際にした、或いは詐欺のような場合には正に調達担当官軍隊の需要についての発注の話をしておつて、これは確かに米軍納入物件の話だと思つてつたら、豈計らんや、それがそうではなくて詐欺であつた、単に時というよりも公務自体密着性が必要であると思うのです。
  5. 杉原荒太

    杉原荒太君 よくわかりました。私もそのほうが、そうでなくちやならんと思うのですが、公務の場合とそうでない場合を区別をする、その趣旨からしてそうでなくちやならんと思うのですね。  それから第二には、今度の議定書は、これの効力発生条項等を見て来るというと、今までの、条約作成の上から見て非常な新らしい例というか、それを開いたものだと思う。議定書自体には十号の二十九日ですか、から効力を発生するということが書いてあるが、併し憲法との関係考えて別に措置をとつてある、これは非常にいいことだと思う。併しこういうふうなこともあと国会手続をとる必要があるのだ。つまりこの議定書効力をフアイナルなものにする、最終的なものにするためには、憲法規定によつて国会憲法規定による手続をとる必要があるのだということをはつきりと相手側にも述べて、そうして私はそういう措置をとられたことは非常に適切な措置つたと思う。ただこれが今までの条約作成史上からすると、少くとも新憲法になつて以来の初めての例、こういうふうな方式でやられておる。私はこれでもいいと思う、これでもいい。今までもややもすれば、私は非常に率直に言つて、従前ややもすれば、条約というような効力も、最終的に対外的に効力が発生したのちでも構わないんだという、私から見れば非常に根本精神から見て遺憾なことだと思つてつたんですが、併しそういうことはする必要がないんであつて、実際にそうしなくても、条約作成技術の上で注意してやりさえすれば、何もそんな乱暴なことをやらなくたつて実際に済む方法があり得る。そのあり得る方法ということなども、私今度の措置によつてもよく証明されておる。かねてからこういういろいろ方法があるから、何も乱暴なことをやらなくても、ちやんと憲法に副つてやれるんじやないか、それをやるように注意しなさいということを私は言つておる。今度はそういう点では非常にいいと思う、この措置をとられたことは。幾らでも方法はある。だからこの点は非常にいいと思う。ただまあこれは今ここで言つても仕方がないようなことだけれども、更に今度今の国連軍議定書については、こういうふうに措置をとられたが、もう一つのほうの行政協定のほうでは、前からのしきたりをそのまま継続されて、国会承認ということも今度得られておらない、得る措置をとられなかつたが、併しああいうようなものもいい方向に改めるなら一向差支えないんだから、私はああいうのも少くともこれと同じような措置をとられたら更によかつただろうと思う。それでそうすることによつて、何もお困りにならない、向うとの関係つてちつとも差支えないし、そうしてそのとり方だつてですよ、今度と同じようなこういうつまり条約作成技術から見ても、こういうふうにすることによつてやり得るんだから、そのほうが私はよかつたと思う。これ自体は、私はこういう措置をとられたことは、何か今までこういういろいろの条約作成上のちやんと途があるにかかわらず、それをとらなくて、いろいろ言つておられたような感じがしたから、私は非常にこれは少し考え直しなさいということを言つてつた。まあこれは質問でも何でもないが、それだけ申上げておきたいと思います。
  6. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ほかに質疑のあるかたはございませんか。
  7. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の杉原委員手続の問題に関連してですが、一応事後承認という形で提出を求められているんですが、事前に国会に諮ることができなかつた理由というのが、ちよつと御説明になつたけれども、はつきり呑み込めないんですが、もう一遍その点を御説明願いたいと思います。
  8. 下田武三

    政府委員下田武三君) 先ずこの米軍刑事裁判権に関します日米間の行政協定の改正の問題との関連がございます。それは日米間の取極が九月二十九日に署名いたされまして十月二十九日に実施されるということが前からきまつてつたわけであります。そこに持つてつて国連軍のほうも同日から発効させて、つまり日本にいる外国軍隊は、米軍であろうと国連軍であろうと、一律に同じ日から同じ取扱を受けるということにいたす必要が、先方にも又我がほうにもあつたわけでございます。そこで国連軍のほうの二十六日署名、つまり実施の三日前に署名するということに、今国会会期決定前に、関係国との話合決定いたしまして、そうしてその後に今国会会期決定いたしましたので、僅かの会期でありまするから、その予定を変更して国会に先ず提出して御承認を求めた上で、国連軍のほうの議定書だけはあとから署名実施したらどうかということも考えたのでございますけれども、先ほど申しましたような必要、特に困りますことは、若し国連軍の取極をあとから実施いたしますと、米軍のほうがむしろ先方から言うと不利な取扱を受けることになります。逆な結果になります点もありますので、かたがた関係国政府はぜひ予定通り手続で運びたいという強い希望を表明されましたので、そこで止むを得ず米軍と同時に国連軍のほうも切替をやるということに、既定方針通り決定いたしましたわけであります。併しながら前国会でも杉原委員からも御希望の表明がありましたように、それはその必要はいたし方ないとしても、我がほうとして憲法上の建前はやはり通す必要がありますので、日本政府代表から憲法との関係を篤と述べましたステートメントを作りまして、二十九日から実施はするけれども、最終的に効力を発効するのは、国会承認を得て、憲法上の必要の手続を経てからやるぞということを念を押した上で、二十九日から実施ということにいたした次第であります。
  9. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 アメリカ駐留軍との均等待遇の点から、不均衡が生ずることのないように、期日を合せたのだというような御説明つたと思いますが、併しそれは国連軍の地位が国際法一般原則に従つてやられるということを貫きさえすれば、それに譲歩をさえしなければ、何も無協約の状態であつても、駐留軍より有利だとか等々の問題は、決してあり得ないはずだと思いますが、その点はどういうふうに考えておりますか。
  10. 下田武三

    政府委員下田武三君) 裁判権と申しますか、裁判自体については仰せ通りなんでございますが、刑事当局検察当局関係でございますが、身柄引渡しの問題で、例の吉田書簡におきまして、四十八時間以内に身柄引渡しをやるという案が、これは日本政府の一方的の通牒ではございまするけれども、国際的信義の上から行きますと、我がほうから言つたことは特別の支障がない限りは、やはり実施するほうがいいわけでありまして、そうしますと、米軍のほうは四十八時間以内に引渡すいうようなことは何もありませんにもかかわらず、国連軍に対しては四十八時間以内に身柄先方へ引渡すという点がございますので、やはり国庫軍側のほうは、その点から見ますと有利になる、こういう関係になるわけでございます。
  11. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その点になると青田書簡自体が問題になつてき、そういうものを出されたことが不都合だというような問題にもなると思いますが、これはもう前にすでに論議し尽された問題です。この問題については従つて意見が違うということに過ぎなくなると思いますので、一応この点はこれにしておいて、仮にそういう状態が起きて、どうしても期日を合わさなければならないとするならば、非常に重大な問題であるから、たまたま開かれる臨時国会に、たまたま開かれるから審議するという態度でなくて、本当に憲法条約との関係を厳重にお考えになれば、わざわざこのためにでも一日か二日の国会を臨時的に開いてでも、これをかけるということが正式な、本当に国会条約との関係を尊重する態度であり、やり方である。それをやる決意さえあれば、できたはずだと思うのですが、にもかかわらず、おやりにならなかつたのは、どういう理由なんですか。
  12. 下田武三

    政府委員下田武三君) 平生の場合でしたら、まさにお仰せ通り手続をとるべきだと思います。ただ国連軍の取極の署名手続のきまりましたのがやはり国会会期決定前ではありましたけれども、極めて短期の前でございまして、非常に期日関係上、そのために国会の御召集を願うというようなわけにも参りませんでしたし、又一方先ほど杉原委員のおつしやいましたように憲法七十三条の運用といたしまして、国会建前憲法建前も崩さずに、而も外交上の必要を満足せしめるという手があるわけでありまするから、実は新方式なんでございます。つまり普通の場合でしたら、批准条項を求めるとか或いは出先が署名する場合でしたら、あとレフレンダムというような手もございますけれども、今度の場合は関係国批准条項を求めることにつきましても、関係国にいろいろの事情がありまして、さうは参りませんし、又東京外務大臣署名するものでありまするから、あとレフレンダムを付けることもおかしいというような観点から、日本代表ステートメントということを案出いたしまして、そうして憲法建前は害せず、而も外交上の事務処理には支障を来さないという措置に出たわけでございます。その点は御了承願いたいと思います。
  13. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いろいろ御苦心なさつているようですが、結果から見れば、単に形式的に体裁を整えたに過ぎないという感じしかしないのですが、殊に憲法で許されているのは、非常に必要止むを得ざる場合、万止むを得ざる場合の異例的な措置として認めているので、今までのお話では、これをそう異例的なものとして取扱いに値するとは私たちは考えないのですが、この点もどうも意見になりますから、一応この点はこれでおきます。  もう一つお尋ねしますが、日本駐留している国連軍というのは、講和条約締結されてのちに、どういうふうに数的に或いは位置その他で変化をして来たのか、特に朝鮮事変後の変化の状況ですね。それをもう少し御説明願いたいと思います。
  14. 下田武三

    政府委員下田武三君) 米軍もそうでございますが、国連軍兵力数をそのまま発表することはやはり軍の機密になつておるそうでございまして、正確なことは申上げられませんですが、一番多いときでもせいぜい在日国連軍は一万くらいだと思います。ずつと現在では減つて参りまして、普通呉広地区、東京には恵比須キャンプという小さいものもございますが、五、六千から現在ではむしろ四、五千ではないかと思つております。それで米軍のほうは比較的長期に滞在しておりまするが、国連軍のほうは非常に移動の激しいものでありまして、兵数は先ほどのは平均でございまするけれども、実際におる兵隊というものは、しよつちゆうカナダ、濠洲ニユージーランド等に交代のために行つたり来たりしておるものでありまして、非常に移動の激しい軍隊でございます。
  15. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 一番多かつたとき一万程度で、それから逐次減つて今四、五千、或いは五、六千というところじやないかというお話ですが、それは朝鮮休戦が成立した後に非常に変化があつたのか。それからその数は国別言つて、もうすでに完全に朝鮮休戦成立以前は駐留していたけれども、今は全然引揚げてしまつているというような国々があるのかどうか、その駐留している国別に見てどういうことになつておるのか。それから日本には今その程度ですが、朝鮮には国連軍アメリカ軍以外の国連軍というのはどういう駐留の恰好になつておるのか、その辺……。
  16. 下田武三

    政府委員下田武三君) 各国兵力の配備につまして私ども詳しく存じませんが、ただ朝鮮休戦に関連して、今のところまだ国によつて全然撤退するとか、或いは少くとも朝鮮から撤退して日本引揚げて来るとか、国別ばらばら動きはないようでございます。これは国連側の政策といたしまして、この各国の足並を揃えて民主主義陣営行動に一糸の乱れも来たさないということに非常に重点を置いて、国によつてもう俺のほうは帰るというようなばらばら動きはないよう聞いております。
  17. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、対日平和条約が結ばれて、あのときに一応速やかに占領軍撤退をする、或いは少くとも九十日以内に撤退をするという条項があつたと思うのですが、あの条項はそれに続く但書によつて殆んど法は死文化してしまつておるんだと了承していいのですか。
  18. 下田武三

    政府委員下田武三君) 平和条約で九十日の撤退期間というのが認められましたが、朝鮮戦争なかりせば確かに九十日以内に引揚げたでございましよう。併し平和条約発効前に朝鮮動乱が発生いたしましたので、結局撤退ということはなくて、依然として今日も日本国外国共がおるわけでございますが、これは併しもう占領軍ではございません。平和条約発効と兵に占領軍ではなくて米軍に対しては安保条約国連軍に対しては吉田アチソン交換公文という別個の取極に基いて日本駐屯する軍隊占領軍から合意による駐屯軍隊ということの切替えが行われたわけでございます。
  19. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、今後の見通しとしては国連軍はどういう時期、どういうふうな撤退の仕方をする、又させなければならないというふうにお見通しになつておるのか。それらの問題について具体的にすでに話合いをしておられるのかどうか、その点をもう一遍お伺いいたします。
  20. 下田武三

    政府委員下田武三君) これは刑事裁判権のみに対する取極が今回できたのでございますが、実は一般協定交渉は前からやつておりまして、その一般協定の中に外国軍隊撤退に関する規定話合つてつたわけでございます。その前の話が、朝鮮休戦となりました今日そのままを採用できるかどうか、再検討を要すると思いますが、やはり朝鮮での停戦が完全に成立した日の一定期間後にやはり撤退する、そういう方式で前は話合つてつたのでございます。
  21. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 完全な停戦ができたときですか、休戦ができたときですか、どういう状態意味するのか……。
  22. 下田武三

    政府委員下田武三君) 朝鮮におけるホステイリテイーでございますね、敵対行為が終止した日から一定期間後というように考えております。
  23. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の状態はどういうふうにお考えになるのですか。
  24. 下田武三

    政府委員下田武三君) やはり恐らくは前の方式が、そのまま討議の基礎になり得るのではないかと考えまするが、ただ先方意見はまだ聞いておりませんので、はつきりしたことは申上げられません。
  25. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の国連軍或いはアメリカ軍朝鮮における国連軍というものは軍事行動をしているというふうに考えるのか、軍事行動はすでにもうしていないというふうに考えるのか、その点はどうですか。
  26. 下田武三

    政府委員下田武三君) 現実敵対行為はやんでおりまするが、未だすべての問題が解決したわけでありませんので、再び敵対行為が万一起つても差支えないだけの態勢は依然として継続しておる必要があるという、そういう事態だろうと思います。
  27. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 だからそれは駐留しておるという状態で、その駐留状態というのは一体軍事行動に従事しておるとみるのか、いや、もう休戦協定が成立したと同時に、軍事行動はやまつたのだ、それには従事していないというふうにみるべきなのか、その点はどうです。
  28. 下田武三

    政府委員下田武三君) 前の話では、日本側が非常に注意した点は、現実の撃ち合いがやまりましても、或いは休戦の監視とか或いは何か国連から付託された特別の使命を持つて、いわゆる軍事ミツシヨン式なものが残る、その場合に鉄砲は撃たないが、或る軍事ミツシヨンが残つておるから、依然として日本後方基地としての役割を継続したいというようなことを言われたらたまらないわけでございまして、そこで厳格に軍事行動という字を日本側は採用しなかつたわけであります。そこで現在のところそういう停戦の確保を期するための方式すらできていないわけでありまして、多分に状態は未確定な要素がありますので、今度一般協定交渉を再開いたしましたときに、その点が実は一番問題になるのではないかと思います。先方は、いや、国連軍というものは決して安心して引揚げるわけにまだ行かないということを言うでありましよう。そこでその御質疑の点が実は今度の交渉での一番の問題だろうと思いますが、併し日本側建前は、先方事情を推察するにやぶさかでありませんが、ただ如何なる意味においても、不必要な国連軍がおつては困るという建前は堅持したいと思います。
  29. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その点は現在の朝鮮における国連軍には、あれが駐留しておることが必要かどうか、それらの点については意見も違いますが、ただ事実として、駐留をしておることは事実であると思いますけれども、今の御説明その他から考えると、軍事行動に従事しておるとは厳密には言えないのじやないか。そうだとすると、朝鮮における軍事行動に従事する軍隊に対して云々ということであるから、吉田アチソン交換公文で約束した義務も最早解消しておると我々は見ていいのじやないか。そうだとすれば、やはり国連軍が引くこと自体について交渉なり、折衝の重点を置くべきであると思うのですが、これは意見になりますけれども、その点はどういうふうにお考えですか。
  30. 下田武三

    政府委員下田武三君) 吉田アチソン交換公文の前書にもはつきり申しておりますように、要するに国連決議に基いて行動する軍隊のサポートを許しておるわけでありますから、いずれ朝鮮事態が確定いたしますれば、国連において新たなる決議なり、何なりができるだろうと思います。それですから問題のオール・ピクチュアは国連の新たなる決議によつて明確になると思います。それから又実は国連側大臣も申しましたように、ちつとも日本に長くいたくないのでありまして、むしろ事情が許せば、早く帰りたい国々ばかりでありますから、先ほど申したように、日本側としては不必要な長期駐屯を認めない方針ではございますけれども、実は日本から催促するまでもなく、先方のほうが事情さえ許せば、早く引取るということに相成るのではないかと思つております。
  31. 杉原荒太

    杉原荒太君 この議定書実施国内法との関係でありますが、これはどういうふうにするつもりか。例えばこの議定書で予想される関係外国軍事法廷日本人証人として出頭しなければならない、それを義務付ける必要がある。或いは日本人証人として出た場合、偽証をした、併しそういうのが処罰制裁規程までくつつけるというならば、やはりこれは法に根拠がなければならんと思う。証人出頭義務或いは偽証罪なんというものは、既存の一般法律では賄い切れないだろうと思います。特にこれがための特別の立法をしなければならないと思いますが、そういうのは一体どういうふうにしようとしておられるのか。
  32. 下田武三

    政府委員下田武三君) それは詳細は法務省津田総務課長に御説明をお願いしたいと思うのでありますが、御指摘一つの点はやはり重要な問題でございまして、先ほど申しました日本代表ステートメント憲法第七十三条との関係におけるステートメントと同時に、国内法との関係ステートメントを出しまして、これは国内法がなければ御指摘日本国民に対して証人出頭義務を課すことはできないわけであります。ですからそれは法律ができて、国会の御承認を経て実施施されるまではできないものであるぞという念を押す意味ステートメントを同時に出したわけであります。その国内法の点は津田さんから御説明願いたいと思います。
  33. 津田実

    政府委員津田実君) この国際連合軍隊、つまり派遣国軍事裁判所日本人証人として出願するというのが当然出て参ると思います。それから勾引或いは召喚等処置につきましては、この議定書に伴う刑事特別法を合せて御審議をお願いしておるわけであります。それの処置をいたしておるわけであります。但し偽証罪の点までは未だ処置はいたしておりません。と申しますのは、現在の刑事特別法におきまして合衆国軍隊軍事裁判所出頭した場合におきましては、勿論偽証罪制裁はあるわけであります。併しながら今回の議定書におきましては、日本国といたしまして義務としてそこまで未だ負つていないというふうに解釈いたしております関係上、まだ実体規定としてこのような偽証を罰する規定を設ける段階には至つておらない次第であります。
  34. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 MSAの関係で、何と言いますか、軍事顧問団が日本駐留することは予想されるわけであります。その軍人さんの身分関係と言いますか、これはどういうふうになるでしようか。
  35. 下田武三

    政府委員下田武三君) MSAの協定が実施されますと、仰せのような軍事顧問団が参るようになると思います。そこでそれのステータスでございまするが、日本側は軍事的な色彩の者よりも、シヴイリアンのステータスの者を好むわけでございまして、つまり大使の監督の下にある大使館員、或る者は完全な外交特典を認める少数の上級者と、それから書記生、雇用人式の特権を認める者、これは運転手とか料理人とかいうような極めて限られた特権しかない者、とにかく大使館の職員としてのステータスを与える者であらしめたいという希望を述べておりまするが、今までのところ米国のほうから返事が参つておりません。そこで若し日本側希望が実現いたしますれば、これはまあ外交官特権の問題で、一般国際法に従つて処理いたしまするが、そうでなくて軍人のままで来るといたしますと、これはやはりアメリカの米極東軍の身分で来ることになると思いまするが、そういたしますと、この議定書と同時に実施になりました日米間の刑事裁判権行使に関する議定書に従いましてこの適用を受けることになると思うのです。
  36. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 当然この日米間のあの協定の適用があるかどうか、少し疑問が残りはしないでしようか。
  37. 下田武三

    政府委員下田武三君) つまり日本に訓練とか或いは兵器の発注等の特別の任務を帯びて来ておるという意味で、何と言いますか、礼儀の問題としては考慮すべきでありましようが、併し法律上は私は区別がつかない、身分が米軍人であればやはりひとしく日米行政協定の新たな規定が適用になるべきだと思います。
  38. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 そうしますると、軍事顧問団も安全保障条約に関連してと言いますか、あれに基いて日本駐留するというふうになるわけでしよう。
  39. 下田武三

    政府委員下田武三君) この点もまだ将来話合わなければわかりません。併し今のところ一応厳密に言いますと、朝鮮の作戦に従前する米軍は、これはまあ安保条約の範囲外ということも言えるのでありますけれども、一応日米間の新しい行政協定の適用範囲は、日本に来ておる米軍人すべてに適用するということになつておりまするので、主として朝鮮で働いておる者でも日本におる場合は、行政協定のほうで処理すると同じような意味で、たとえ日本政府と特殊な関係のある仕事に従事いたしておりましても、米極東軍の所属員でありますれば、やはり行政協定を適用するということになりやしないかと思います。併しこれはMSA協定の附属文書といた、しまして、軍事ミツシヨンに対して、特別の特権を認めるということは理論的には考えられることでありますが、併しそれは今先方のステータスに対する態度決定しておりませんので、或いは軍人にするという場合には、そういう申入があるかも知れませんが、今のところ問題になつておりません。
  40. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 少し細かいことですけれども、軍法に服するという者の範囲は、向うで何か通報して来るようになつておりますけれども、大体どういう範囲内なんでしようか、これはやはりこの軍隊の構成員には全部包含されるわけでしようね。
  41. 下田武三

    政府委員下田武三君) 軍法に服するものの範囲は仰せのように各国からそれぞれその国内法を通報して来ることになつておりまするが、この構成員が含まれることは勿論でございまするが、米国の軍法を例えて申上げますと、海外にある軍隊に随伴する家族は軍法に服することになつております。又新たに召集を受けた人、被召集者、それから軍関係の学生生徒、予備員、そういうものも米国の軍法によりますと軍法に服するものの範囲に含まれております。ただ念のために申しますと、これは議定書第一項の問題でありましてつまりそれに対して米国の軍法を適用することは認められますけれども、問題の彼我の裁判権の分れ目のところになりますと限定しておるわけでございまして先方公務遂行中の犯罪或いは先方の内部犯罪について裁判権行使し得るものは、その軍法に服するもの全部ではございませんで、軍隊の構成員及び軍属というものだけに限定しておる次第でございます。
  42. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 文面上で見ると、家族については全部日本側の専属的な管轄に入るように読めるのですけれども、その家族についても軍法に服する場合は競合することになるわけですか。
  43. 下田武三

    政府委員下田武三君) 家族につきましても勿論競合する場合がございます。そこで準則のところでは先方の法令の適用を受けることを認めておりまするが、競合した場合は取扱いとしては、この家族は除外しておるわけであります。つまり家族の犯罪というものは、普通人の犯罪と同じように、日本側裁判権を持つておるということになつております。   —————————————
  44. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 鶴見委員から緊急質問の申出があります。どうぞ。
  45. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 今外務大臣がおいでにならないようでございますが、急ぎますから特に出席を求めないで只今おいでの局長に伺つて置きますのでありますが、只今ワシントンから電報が入りましたのによりますと、昨日五日でありますから日本の今朝の一時頃であろうと思いますが、新木駐米大使が国務省のロバートソン国務次官補を訪問されまして去る三十日池田・ロバートソン両氏の共同声明が出ておるのは日本政府においてこれを認めるということをお話になつた。そうしてアメリカがこの共同声明の中にガツト加入に関して日本を援助してくれたことを感謝する。それで日本は共同再開の趣旨を受諾するというようなお話があつたというのでございます。これによりまして今まで池田特使は個人の資格で行かれたのを、新らしく日本政府の名においてこの共同声明を認めた。従つてこれが今までの形式と変りまして、池田・ロバートソン共同声明というものが日本政府を拘束するものとなつたということを正式に認めたものだという特電が、今或るところヘ入つておりますのですが、これについて外務省の御意見をお聞きしておきたいのであります。これが事実であるかどうか。
  46. 下田武三

    政府委員下田武三君) 新木大使のロバートソンに対する会談の公電を私まだ見ておりませんので確かなことを申上げられないのでありまするが、恐らくそれは最近の米国の示した好意に対して謝意を表する目的で行かれたのではないかと思いまするが、そこで池田・ロバートソン共同声明を政府として確認すると申しまするか、そういう意味を有するかどうかという点は、公電を見なければ何とも申上げられません。併しながら常識から考えまして、池田・ロバートソン共同声明と申しますのは、これは実は何ら決定はないわけでございます。お互の意見を交換しまして、その意見が一致したという字を使つておるところがございまするが、この条約取極の要因、具体的にどういうことについて両国が共同の行為をなすとかいうようなことは何もないのでありまして結局意見の交換が行われた主なる事項について、ただ拾い上げましてでつち上げたような共同声明でございまして、あの声明の程度でございましたら、実は東京でも今まで、行われておつた話の範囲外に出ないものでありまするから、あれをたとえ新木大使が改めてロバートソンと確認したというようなことをとられましても、法律的にはこれによつて日本側に新たに義務が殖え、或いは日本側が新たに権利を獲得したというような効果は私はないのではないか。然らば全然効果がないかと言いますと、大使という政府の正式の代表者が確認いたしますとしますと、引続き東京等で行われます話合いの出発点は池田さんとロバートソン氏の話したところから始めようじやないか。つまりあそこで相談したことを改めて初めから話合うということは手間だから、あそこで話合つた程度のところから、又それを出発点として、それより先を話そうということになると、いうのが、私は唯一の効果ではないかと存じます。併しこれはまだ公電を見た上でない説明でございますので、その点は公電を見まして、若し違いましたところがございましたらば、後日又御報告申上げたいと思います。
  47. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ちよつと議事進行について。非常に重要な問題でありまするので、私やはりこれは外務大臣に至急に御出席願つて質したほうがいいのじやないかと思うのですが、外務大臣恐らく予算委員会に行つておられるのじやないかと思いますが、予算委員会は差繰りができるはずだと思いますので、非常に重要な問題だし、是非至急にこつちへ出席して頂くようにお取計らいを願いたいと思います。
  48. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連してですが、外務委員の諸君にも、予算委員の諸君にも若干私聞いたことを伝えておきましたけれども、それは事実今下田条約局長が言われたようなこともあるし、それからガツト加入の問題もかれておるようですが、併し実際には日本政府を拘束するものとみなすというのが向うの電報のようです。そこで事実は、内容的には共同声明にえらい趣旨はないにしても、今まで政府はこれは個人的な使節だとさんざん言われておつて、実質的には今後拘束することになるというので、今の鶴見さんの御発言は非常に重要だと思いますが、それは大臣が出て来られれば非常に結構だと思います。
  49. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 大体外交問題その他に関連しては昨日か一昨日終つて、今日はもつと災害対策なり給与ベース等々の問題になつているはずですから、外務大臣差繰りのできないことはないと思います。若し予算委員会においでになつて出られないというのであれば。  だから是非一つこつちに至急……。
  50. 曾禰益

    ○曾祢益君 私佐多委員の、これは私は動議と考えるのですが、動議を私は支持したいと思うのです。それでただ議事進行のあれについては、鶴見先生の御了解を得て、我々はビジネスのほうは進めて、併しこれは非常に重要な問題だから、この委員会は継続をして頂きまして、外務大臣の出席を求めて、そうして鶴見先生の御発言もあろうし、我々も関連して伺いたい。重大問題であるから、委員会を継続して、外務大臣の出席を求める意味において佐多委員の動議に賛成したいと思います。
  51. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 今曾祢委員からの御発言がありました。私も実はそのことをお諮りしたいと思つてつたのでありますが、鶴見委員の緊急質問は今朝来我々が取扱つておる議定書の問題とは、これは別個の問題であると思いますので、この議定書関係のことだけは今この際きめて頂いて、そうしてその間に外務大臣の出席を求めて、来られたならば、そうして議定書のほうが片付いておつたならば、そのときに外務大臣に改めて質問して頂く、こういうことに……。
  52. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 私もそう願いたいと思いますのは、この外電に関連しまして、昨日の外務大臣の御説明の中で重要な問題が一つありましたから、これと二つが一緒になつた問題になるものですから、是非外務大臣に御出席を頂きたいと思います。   —————————————
  53. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは元に返りまして質疑を続けて頂きたいのでございまするが、まだ御質疑のあるかたはございますか。
  54. 高良とみ

    高良とみ君 この議定書でありますが、この議定需自身についての私どもの意見は別といたしまして、この議定書が出発しておりまするところの国連軍一般協定は、吉田アチソン交換公文によつてのみされたのであつて、そうしてこれは国会国連軍駐留継続ということに対しては、今まで承認を求められたことがないと了承して間違いないですか。
  55. 下田武三

    政府委員下田武三君) 古田・アチソン交換公文は、平和条件、安保条約同様に国会の御承認を求めております。ただ今度の取極と米国の取決めとの差違は、行政協定のほうは、安保条約条項の中に米軍の配備を規律する条件は、両国政府間の行政協定で定めるという規定がございました。ところがこれに反しましてれ国連軍の配備を規律する条件については、両国政府間できめるというようなことは、吉田アチソン交換公文には全然謳つてないのでございます。でございますから、親条約の委任が全然ございませんので、今回の議定書は、これは新らたに国家間の約束になりますので、国会の御承認を求めておる次第でございます。
  56. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと、この一般協定において、そういうことがきめられていないということは、原則から申しますると、外国軍隊の国内に駐留することに対することは、而もそれは軍事行動をする目的を持つておるという軍隊駐留させることは、憲法条項等からいいましても、何か特別な委任がない限りは、国会の委任のない限りは、非常に逆なことになつておるということは十分御承知だろうと思うのでありますが、その点如何でありますか。
  57. 下田武三

    政府委員下田武三君) 朝鮮敵対行為に従事しておる国連軍日本駐留させることは、国会の御承認を得ました吉田アチソン交換公文規定されているわけでございます。で、その大体の約束は国会の御承認を得まして、ただその大体の約束の中に、配備を規律する条件は政府間できめるという委任規定がございませんので、そこでこれはやはり新たな国家間の約束になりますので、吉田アチソン交換公文につきましてすでに一旦国会の御承認を得ておりますにもかかわらず、又改めてこの取極について国会の御承認を求めておる次第でございます。
  58. 高良とみ

    高良とみ君 この一般協定が財政経済事項の支払に関する件等を中心として未決定である。これに対しては非常に遺憾でありますが、今回この裁判権移動に関してのことは、問題はむしろ小さいことであつて、若し均等原則を守つて行くならば、敢えて北大西洋条約なみにすると言わないでも、このことは小さい問題だと思う。そのもとのほうの一般協定ができず、又そのもとにある吉田アチソン交換公文の中に外国軍隊を国内に、軍事行動のために駐留させるということの、その配置についての協定がないとするならば、これはアメリカとの行政協定そのものもありますが、下田局長のこの間からの論理から申しますと、これは駐留、つまり日本憲法が発効する前は別といたしましても、やはり多少農法違反であるという考えを持ち得るのではないか、即ち憲法改正をしなければ、こういう外国軍隊駐留についての国会承認は、根本的には憲法と抵触してくる余地があるとお考えになつておるかどうか、その点を伺います。
  59. 下田武三

    政府委員下田武三君) 国連軍を配置すること自体につきましては、吉田アチソン交換公文で決めておりまして、国会の御承認を仰いでおるわけであります。そこで配置された軍隊を、どういうようにやるかというこの条件は、先ほどお話一般協定で実は全部一遍にきめたかつたわけでございます。その一般協定はなかなかまとまりませんので、取りあえずやはり相当重要な問題でございますこの刑事裁判権につきまして、刑事裁判権の問題だけを切離しまして、先にきめまして実施すると、引続き爾余の財政経済問題等を含みます一般協定あとで作りまして、それであと一般協定ができましたならば、今度の取極をそつくりそのままその中へ入れ込んでしまおうと、そういう考えになつております。
  60. 高良とみ

    高良とみ君 よく苦衷のおありになるところはわかるのでありまするが、願くば財政経済事項のみでなく、それからこの裁判権移動のことばかりでなく、もう一つ根本に遡つて日本における国連軍の配置に関し、その権限に関してはつきりした協定を一般協定の中にお入れになることを希望すると共に、それについての厳密なる国会承認を求めることを条件とされんことを希望する次第であります。どういうお考えでありましようか。
  61. 下田武三

    政府委員下田武三君) 将来できます一般協定におきまして、改めて配置の権利を、与えるという意味規定は、私は必要でないのじやないかと思います。ただ先ほど佐多さんからも御指摘がありましたように、いつまでおるかという撤退条項、は私は必要だと思いますが、そういうものを含めた一般協定国会提出いたしまして、御承認を得る所存でございます。
  62. 高良とみ

    高良とみ君 これに、今関連いたしまして、少し後戻りになりますが、一九四七年六月十九日の極東委員会の決議にありますところの、日本国内においては文民的警察隊を保持してもいいけれども、再軍備及びそれを養うような工場の活動も禁止するものであるというような決議があるのでありますが、あれは講和条約の発効によつて全然無視していつてもいいというお考えでしようか。或いは講和条約でこれは御破算になつてしまつたのだから、再軍備の途を開いても、極東委員会の決議はもう効果がない、こういうふうに考えておられるのか、その点伺いたい。
  63. 下田武三

    政府委員下田武三君) 日本の軍備問題につきましての連合国側の態度は、非常に変つて来ておりまして、御指摘の極東委員会の決定は確かにありましたわけであります。当時は併し日本を太平洋のスイスにするという考えが強かつた時代でございまして、その後の国際情勢の変化によりまして、まだ占領時代におきましても、連合国側の態度は非常に変更しております。極東委員会の決議自体も私は変つておると思います。最終的には平和条約条項におきまして日本は集団的及び個別的な安全保障、自衛の措置をとる権利を有することをわざわざ入れておりますのであります。結局は平和条約が最後的な文章でございますので、これに矛盾するような前の指令或いは決定等は、平和条約規定によつて置き変えられたと考えて一向差支えないと思うのであります。
  64. 高良とみ

    高良とみ君 只今お話があつた自衛の権利を有するということは、何も再軍備をするということを、あの平和条約に語つたのではないと私どもは了承しておるのであります。それは極東委員会の決定にありましたような、十分な文民的警察隊を保持していいという趣旨であつて自衛というものはそういう範囲であると考えるのであります。ですからそこで自衛の能力をもともと有するということになれば、外国から攻めて来たときに、それは警察隊であつても、或いは農民であつても、それを守るという程度の、あらゆる国が生存のために持つ自衛軍であると考えるのであります。その点で講和条約は再軍備を承認しているというような御解釈を伺うと、いろいろな点に齟齬を来すと思いますが、その自衛の権利を持つというのは、そこまで解釈が行つては行過ぎるのではないかと思いますが、如何でしようか。
  65. 下田武三

    政府委員下田武三君) 平和条約の五条で国の自衛権を有するということは何も再軍備の権利を与えたわけでもございません。それは仰せ通りだと思いますが、併しベルサイユ条約や、イタリアの平和条約の際には、それらの会までの平和条約は敗戦国側の軍備の制限条項がございます。陸軍は十万とか、艦艇は何万トンとかいう制限がございます。そこで相互条約の際にソ連側は日本の陸軍は十五万とか、飛行機は何百機とかいう、つまり軍備の制限条項を挿入する考えを披露いたしましたが、終局できました平和条約は軍備の制限条項がないわけでございます。でございますから、これは何も連合国側が権利を与える、与えんの問題ではなくて、日本側が独自の見地から処理していいという結果を対日平和条約はもたらしておるものだと存じます。
  66. 高良とみ

    高良とみ君 その点に行きましては議論のわかれるところでございましようが、何もイタリアは早期に降服したから軍隊は制限した数だけ持つていいということと、日本が後に降服いたしまして、そうしてその当時の幣原首相その他の考え出したこの日本憲法とですね、それが同じだというような考えかたは、それは外交技術士或る数を持ちたいということを申出されたにしましても、やはりイタリアの例をそのまま持つて来るというわけには行かないし、又そのときに許可がなかつたから、これは無制限に、日本の勝手にしてもいいというふうに考えられるようには私は思えないのです。即ちその点で伺いたいと思いますのは、この外国との条約は、殊に優先するとは申しまするけれども、やはり憲法条項内において結ばなければなら行い外国との条約だと思うのでありまして、若しそういう解釈で以て日本が自分で軍隊をどういう数にしようと自由であるというような解釈で以てサンフランシスコ条約を結ばれたとしたならば、そのものが憲法違反であると考えられますが、如何でしようか。
  67. 下田武三

    政府委員下田武三君) 平和条約日本の軍備に関しましては全然白紙でございます。白紙でございまするから、この国際条約としての制限、又積極的に権利を認めるということもございませんけれども、従いまして憲法が許す範囲内のことは、日本側が独自の見地からやりましても平和条約との関係において何らの支障がないということが挙げられるのだと思います。
  68. 高良とみ

    高良とみ君 わかりました。そうすると、その憲法講和条約との関係は又別な機会にいたしまして、要するに外国軍隊駐留は極めて異例なことであつて、そうしてそれが特に今までのような治外法権的なものを持つていたということについては、これは元に戻すのは勿論でありますが、その外国軍隊駐留そのものが戦力を保持し、而もそれは軍事行動をなしつつある軍隊であるということであるならば、これは速く憲法通りに元へ戻さなければならないというお考えを持つておられると存じますが、如何ですか。安保条約があるにしても、少くとも早く駐留軍は帰つてもらうとともに、そういう戦力を日本の国土に留めておくということは憲法の精神に反するというお考えはお持ちでしようか。
  69. 下田武三

    政府委員下田武三君) 私は別に憲法の精神に反すると思いませんが、それから又現在引続き外国軍隊がいると申しますることは、日本の責任でも、ございませんし、又連合国側の責任でもございません。全く国際情勢の然らしむるところでございます。それについて憲法との関連におきまして私は問題は生ずる余地がないと思うのでございます。
  70. 高良とみ

    高良とみ君 わかりました。これは議論のわかれるところでありますから私は質問はこれで打切ります。
  71. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 関連しまして、吉田アチソン交換公文国会承認を得ているというお話ですが、あのときには、私はつきりしないのですが、あの交換公文自体承認案件として出されたのじやなくて、対日平和条約日米安保条約承認案件として出てそれの附属書類として提出されたのじやなかつたか、従つて、独立の承認案件として議題としてはなつてなかつたのじやないか、若しそうだとすれば、厳密な意味における承認を得ているとは言えないので、若し承認を得なければならないものとすれば、改めて正式な議題として承認をとるべきものじやないかと、実はかねて疑問に思つておるのですが、その点はどうなんですか、はつきりしておつたのですかね。
  72. 下田武三

    政府委員下田武三君) これは同案件と申しますか、たしか当時出しましたのは、一冊の文書にいたしまして、そしてその内容につきましても、国会に政府側が説明しました場合に、安保条約というものは、こういうものがついておるということで提出いたしまして御承認を得ておるものと私は承知しております。
  73. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、安保条約が案件になつていて、その一体のものとして承認したのだという考えですね。
  74. 下田武三

    政府委員下田武三君) 仰せ通りでございます。
  75. 杉原荒太

    杉原荒太君 今の関連ですがね、それは佐多さんの言われるように、私も実はあの当時も問題にしておつたのですよ。それは政府側から出された承認の客体として何がそこに含まれているのかということが必ずしも明瞭でなかつたのです。その当時のことは私もうろ覚えになつたけれども、私はそのときわざわざ西村条約局長に対して話したことがあるのです。これは私丁度あのとき両条約の賛成演説をやらされたので、そのとき、これはあそこで正式な発言とするときは、ちやんとその承認の客体になつているものをちやんと列挙せねばいかんだろうと思つたから、私は特に西村君に、これは一体僕はこういうふうにここを言おうと思うが、これでどうかといつて西村君の意見を聞いた。そうしたら西村君はそのとき、いわゆるこの附属書的なものはむしろとれたらとつたほうがいいだろうという意味のことを言つたのだ。それはまあそのときの取扱は、その部分だけを今ここで言つても余り意味がないけれども、実際あのとき政府から出された、国会承認を求めるの件として正式の書類を出されたものに、はつきり列挙してあつたかどうかは非常に疑問ですよ。私はなかつたと思うけれども、その点は今までのような承認を、あのとき承認客体の中に入つておるんだということをずつと聞いておるけれども、その点は少し取調べられたらいいと思うし、それから今後の場合、ああいう場合はやつぱり明確に一つ一つ承認の客体は列挙しなくちやいかんと思う。いわゆる附属書類じやないのですよ。当然に、必然にくつ付いて行けるものじやないですよ。何か私あのとき少し書類の取扱について政府側が出されたのがルーズのような感じがしておつた。これはやつぱり厳密に一つ一つ承認の客体になるものを列挙しなきやいかんですよ。正式書類の中に列挙してなかつたと思う。
  76. 下田武三

    政府委員下田武三君) 私は当時おりませんでその間の事情をよく存じませんので、なおよく調べてお答え申上げます。又結局、この平和条約の中にございます特別の取極を害するものでないという、その特別の取極として安保条約吉田アチソン交換公文提出されて、而も一冊の木にして提出して、それで内容も詳しく御説明して、国会側で御承知の上で御承認を下さつたものだというように私ども伝えられておりますので、なお、そういう文書の取扱いにつきましての杉原さんの御意見識に御尤もだと思うのでありまして、今後はそういうようにいたしたいと思うのであります。
  77. 曾禰益

    ○曾祢益君 関連発言さして下さい。質問じやないですけれども。私もどうも少しうろ覚えになつたのですけれども、確かにああいうことはやつぱり採決の客体というものがぼけて非常に工合が悪いのです。安保条約と結局突込みで採決してしまつたことになるわけです。政府は二つあるということは確かに説明されたと思うけれども、これは全く別個なんで、これはあえてこういうことを言つても仕様がないけれども、安保条約には反対だけれども、吉田アチソン交換公文には賛成ということがあり得るのです。明白にあり得る。これは突込みとして一つの案件として出ているが、内容的には二つのものだ。非常にへんてこりんな扱い方だ。今佐多君がああいうふうに質問をされたのは御尤だ。これは結局においては、意見のあれは別として国会においては両方承認してしまつた結果だけが残つておるという、非常にそこに割切れないものがある。だから結論的に言うならば、ああいうことが今後ないように、一つして頂きたい。
  78. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 御参考までに申上げますが、先ほど外務大臣の出席を求めました。大臣は予算委員会にはおられませんで、大臣室におられたそうでありますが、何らか差支えがあるけれども、少しお待ち下されば、後刻出席をするということでありました。  では本問題に対しまする御質義はこれで尽きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。これより討論に入ります。御意見のあるかたはそれぞれ賛否を明らかにしてお述べを頂きます。
  80. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 只今議題になりました日本国における国際連合軍隊に対する刑事裁判権行使に関する議定書締結にについて承認を求めるの件につきまして、私は日本社会党を代表して反対の意を表明いたします。  反対の第一の理由は我が日本社会党は国際連合軍隊が我が国に駐留すること自体について反対だからであります。我が国は日米安全保障条約署名の際に行われた古田・アチソン交換公文において朝鮮における軍事行動に従事する国連加盟国がその軍隊を田本国内とその附近において指示することを辞し、且つ容易にすることを約したために、これに基いて現に若干の国連軍が我が国に駐留をいたしております。あの当時日本社会党は日本国際連合行動に援助を与えるにしても、日本の非武装平和主義を堅持し、軍事的援助を与えるべきではない。従つて軍隊駐留を認めたり、軍事基地を提供したりすべきでないと主張したのであります。これはひとえに日本を戦争の巷に化してはならんという念願によるものであります。あの当時においてさえ、国連軍駐留に反対した我々は朝鮮休戦が成立をし、国際連合軍隊朝鮮において軍事行動に従事する必要のなくなつた現在、国連軍が依然として我が国内に駐留していることに対しては、強く反対せざるを得ません。国連軍駐留を今もなお認めることは対日平和条約の第六条「連合国のすべての占領軍は、この条約効力発生の後なるべくすみやかに、且つ、いかなる場合にもその後九十日以内に、日本国から撤退しなければならない」という条項を全く抹殺するものであります。これでは独立国の面目は丸潰れ、未だに占領治下にあるとしか言えないと思うのであります。今こそ国連軍撤退を強く主張し、交渉しなければなりません。然るに政府はこのことを殆んど考えない。逆に国連軍の我が国における地位を規定する協定の締結に憂身をやつして、その一歩としてこの議定書締結したのであります。占領状態、軍事的隷属から脱却し、我が国の完全な独立、我が国を完全に独立させることを念願とするものならば、この議定書締結に反対をすべきことは余りにも明白であると思います。  反対の第二の理由は、国連軍に対する我が国の地位がこれによつて有利になるどころか、むしろ不利になるからであります。仮に国連軍の我が国における地位を規定する協定がなく、無協約状態であるとしても、刑事裁判権については国際法一般原則に従つて、いわゆる属地主義を貫き得るのであつて、この議定書に定められたことは、むしろ当然であつて、今更事新らしく規定するまでもありません。それまで我が国がこの属地主義を十分に貫き得ないで、いろいろ紛争を醸したのは、政府が従来の占領時代の卑屈さから抜け切らず、独立国の体面を毅然として堅持しなかつたからであります。而もこの議定書によつて属地主義を確立した代償として、これまでの国際法一般原則には見られなかつたいろいろな制約を受けております。無協約状態よりも不利になるというゆえんがここにあります。更にこの協定を契機として政府は国連軍アメリカ駐留軍と同等の地位を与え、均等待遇を与えるように方針を変更しております。元来、御承知の通り国連軍は単に古田・アチソン交換公文によつて滞留するものであつて日米安全保障条約に基き日米行政協定によつて律せられるアメリカ駐留軍とはその地位がおのずから異ることは論を待ちません。だからこそ、政府はこれまで国連軍の地位に関する全般的な協定の交渉に当つては、異る待遇を与える方針で臨まれたと思います。財政、経済条項について双方の主張が対立をし、今日まで妥結できぬ一半の理由も又ここにあると思われます。然るにこの刑事裁判権条項における均等待遇を契機として、政府は今や全面的に均等主義に転換したようであります。この議定書の故に日本はむしろより不利になつたというゆえんがここにもあります。  反対の第三の理由は、この議定書締結手続についてであります。御承知の通り憲法第七十三条の規定によれば、内閣が条約締結するときは原則として事前に国会承認を必要とすることになつております。然るにこの議定書は十月二十三日に開かれた協定交渉正式会議において採決をされ、同じく二十六日に我が国と関係諸国との間で調印をされ、すでに十月二十九日から発効をしております。国会は単に事後承諾を受けておるに過ぎません。成るほど憲法は時宜によつて国会事後承認を認めてはおりますが、それは異例的な措置として万止むを得ない場合に限るべきであります。この議定書は、その内容から言つても、成立の経緯から言つても、決して異例的措置をとるべきものではありません。近く開かれることが確定している国会日程と調子を合わして、先ず国会の審議決定を経てから調印、又は発効せしめても何ら差支えないのであります。若しそれほど急を要するならば、一両日の国会会を臨時に開くべきであります。政府かこれを無視したのは、国会を軽視し、憲法を蹂躪することを意に介しないからであります。政府はこの議定書の前提として日米安保条約第三条に基く行政協定第十七条を改正する議定書締結をいたしました。この協定も、行政協定の改正条項として国会の審議を経ることをしないで、新しい協定の形式にして国会の審議を経べきであつたのに、それをやつておりません。若し国会承認を求めないならば、少くともこの議定書類一切を政府が自発的に国会提出して、詳しく説明をすべきであるにかかわらず、そのことすらなさず、私の要求によつて漸く議定書その他を提出した政府の態度は、国会を全く無視した傍若無人の態度と言わざるを得ません。  以上の理由によつて本件に反対であることを重ねて声明をいたします。
  81. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ほかに御発言ございませんか。
  82. 杉原荒太

    杉原荒太君 私はこれに賛成したいと思います。理由は極めて簡単に申上げますが、その内容においておおむね妥当だと思います。  それから手続の点につきまして、憲法との関係、これは非常に大事なことだと思う。殊に今まで今の政府のとつて来られたいろいろの事例から見ましても、この問題は非常に注意して見ておつた。今度できたこの議定書議定書だけを見ますというと、十月二十九日にすでに効力を発生せしめてしまつておるので、その点、若しあの議定書のようなああいう条約の作り方だけで、あれと別個にあの松平代表がその効力の発生について特に正式に陳述をしておられる、あれが伴わなかつたならば、私はこれに賛成しようにも実はすることができないという考えを持つてつたのでありますが、併し松平代表のあの正式の陳述がありまするの外れその点憲法の精神から見まして逸脱はしていないと思いますので、この点も私賛成しようと思う。そのほかはいろいろ実はこの議定書はその時期からいいますというと、実はもつと早くできておらなければならんものである。この刑事裁判権の事柄は勿論ですが、併し財政、経済等の条項についてはまだ残つておるのだから、これは未だにこういう問題が片づけ切らんでおるということは、非常に私は外交の無能だと思う。もつと、それだから、あとつておる問題は至急これは一つ解決されるように努力してもらいたいと思う。そういう希望を付して私はこれに賛成したいと思う。
  83. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は日本社会党を代表いたしまして、只今議題になりました議定書に対しまして賛成の意見を表明したいと思います。  その理由の第一は、我が党といたしましては、国際平和を維持する方法といたしまして国際連合の国際平和と安全を維持するこの機能を高く評価いたしまして、そうしてこれを強化することが国際平和と安全の維持というふうに考えておる次第であります。従いまして朝鮮動乱のような侵略戦争に対しましては、国際連合の侵略を排除する警察行動に対しては、我が国としても日本憲法の範囲内においてこれに援助を与えるのが、これは当然であると、かような見地に立つておるわけであります。さような一般的な見地から、国連軍と称するものが朝鮮行動をとつておりまして、そうして日本を或る程度使うようなことに対しては、これは賛成すべきであると、かように考えておるのであります。  それから第二の理由は、以上のような基本的な立場にかかわらず、元来国連軍日本に残つておりますることは、何と申しましても、平和条約規定から申しまして平和条約効力発生後九十日以後においては明確な駐留に関連する新たな協定がなければならん。かように当然に主張して参りまして、政府をそのたびに督励いたしまして、吉田アチソン交換公文があるから一応いいのだというような態度ではいけない。従つて本件のごとき刑事裁判権の問題については勿論北大西洋方式によるべきであるし、又その他の財政問題、経済問題便宜供与等についても、速かに無協定状態を改めて、明確なる協定を作るべきだ、かような態度で政府を督励して参つたのでありまするが、只今杉原委員からも指摘されたように、誠にこの点においては政府は怠慢であつた。これは大いにその罪の非を鳴らさなければなりませんが、本件に関しましては、内容的に申しまして、我々の主張したような、北大西洋同盟条約式の裁判管轄権の問題をきめるものでありますから、内容的にも我々はこれに賛成である。以上の二つの理由からこの協定自体に賛成したいと思うのであります。  ただここに問題になりまするのは、同僚各委員からも縷々指摘されましたように、何と申しましても、我々、憲法七十三条の規定を明確に、忠実に厳守するということが極めて必要なことは今さら申上げるまでもないと思うのであります。いろいろな事情があつたことも認めます。内容的にいいことも認めまするが、又いろいろ形式を尊重すると言いまするか、憲法規定に成るべく忠実ならんとして、この事後承認といういろいろな措置をとるについて、いろいろ考えられた点はわかりまするが、併しやはり事後承認ということは、断じてこれをルーズに取扱つてはならない。その見地から言いますると、本協定が、今後憲法軽視、殊に国際条約に関する憲法の精神を軽視するような前例とならないように、厳格に注意をして行かなければならない。かような一つの警告を発し、更に又残つておりまする財政問題等につきましても、速かに協定に達し、これに正式に、事前に国会承認を受けることを条件といたしまして、この本協定に対して賛成いたしたいと存じます。
  84. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私は本件議定書に賛意を表するものであります。  本件を考えまする上においては、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約三条に基きまする行政協定第十七条の改正に関しまする議定書を当然考慮に置かなければならないのでありまして、日米間の今回の改正自体は著しく改善されたものと私は考えるのであります。これと関連のありまする、国際連合軍隊に対する刑事裁判権の問題も関連を保ちつ、考えることが合理的であり、且つ妥当であろうと思うわけであります。従つて現実に即して考えて、本件議定書に賛成をするわけであります。  ただこの際希望を申述べておきたいことは、日本とアメリカとの議定書が、むしろ本体であつて他の国際連合軍隊に関しまする今般の議定書が、実質的には付随的と申しますか、そういうような立場にあるように思われるのでございます。その本体的のものが両政府間のみの取極できまり、それに必然的に関連のある他の国際連合軍隊に対しまする分についてのみ、国会承認を求める、このことは形式的の論理から言えば、一応の理窟はあるかもわかりませんけれども、実質的に考えますると、極めて不合理と思われるのであります。この点は将来とくと御考慮をお願いしたいという希望を申  上げておきます。
  85. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ほかに御発言はございませんか……別に御意見もないようでありまするから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。それでは討論は、これにて終局したものと認めまして、これより採決に入ります。日本国における国際連合軍隊に対する刑事裁判権行使に関する議定書締結について承認を求めるの件につき採決いたします。本件を承認することに賛成のかたの挙手を求めます。    〔賛成者挙手〕
  87. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 多数であります。よつて本件は承認すべきものと決定いたしました。なお本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四条によつて、あらかじめ多数意見者の承認を得なければならないことになつておりますが、これは前例通り委員長に御一任を願います。  それから又本院規則第七十二条により、委員長が議院に提出する報告書について多数意見者の署名を付することになつておりまするから、本案を可とせられたかたは順次御署名を願います。   多数意見署名     梶原 茂嘉  杉原 荒太     曾祢  益  加藤シヅエ     鶴見 祐輔  石原幹市郎     徳川 頼貞
  88. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ちよつと速記を止めて下さい。    〔速記中止〕
  89. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記を始めて。  それで外務委員会は暫時休憩いたしまして、午後二時半に再開いたします。    午後零時五十一分休憩    —————・—————    午後二時五十八分開会
  90. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それではこれより休憩前に引続きまして外務委員会を再開いたします。  午前のお打合せでは午後二伸半に委員会を再開しまして、外務大臣の出席を求めることになつておりましたが、外務大臣は予算委員会の関係で、三時二十分頃でなければこちらに来られないことがわかりましたので、それまでの時間を利用して請願、陳情五件を扱いたいと思いまするが、皆さんがた御異議ございませんか。    「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 別に御異議ない模様でありますから、それでは請願、陳情を議題といたします。先ず専門員の説明を求めます。
  92. 神田襄太郎

    ○専門員(神田襄太郎君) 未帰還者抑留同胞引揚促進等に関する請願というのが二件ございます。  一つ請願第百六十四号でありまして、請願者は、京都市中京区夷川通り烏丸通西入巴町八十三守山久次郎外六名でありまして、紹介議員は井上清一君でございます。その趣旨は、終戦以来すでに八年を経過しております今日、なお数万の同胞が海外に抑留され、又消息不明であることは、国家の一大不祥事であり、肉親の堪え得ないところでありますから、この抑留同胞の帰還及び消息不明の同胞に対する調査究明について、すみやかにその対策を確立して実現を図り、又巣鴨に拘置されている戦犯者の釈放等に万全を期せられたいとの請願でございます。  もう一つ請願第二百十二号でございまして、請願者は徳島県勝浦郡横瀬町長朝桐猪平、紹介議員は寺尾豊君外一名でございます。その趣旨は大体第百六十四号と同じでございます。
  93. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 只今の請願に対しまして政府の見解を求めます。
  94. 安川壮

    説明員(安川壮君) 海外抑留同胞の引揚問題に関しましては、皆さまよく御承知の通り、終戦以来問題が継続しておりまして、最近におきましては問題が集約されまして、ソ連地域と中共地域というものに殆んど集約されて参つた次第でございます。中共地域に関しましては御承知の通り昨年の十二月一日の北京声明によりまして、今年三月以来集団引揚が続行中でありまして、現在までに第七次の引揚が終了いたしました。累計二万六千百二十七名のかたが帰つて来られたのであります。ただ最近中共側の責任機関たる中共紅十字会の会長の李徳全女史が邦人の引揚は第七次を以て打ち切つて、爾後は個々に帰国を希望する人に対して援助を惜しまないという趣旨の話を、北京におられました中共貿易促進議員連盟の方々に対して話をされたということが外電で伝わつております。この問題につきましては留守家族の方々も非常に心配をしておられると存じますが、我がほう、日本のこの中共引揚問題に関する責任と言いますか、担当機関として御承知の三団体、日本赤十字社を含む三団体がございまして、その三団体が九月の三十日に電報を先方に打つております。今後の引揚の見通しについて照会いたしておりますが、未だに正式な返事というものがありませんので、その返事があり次第問題がはつきりするのではないかというふうに存じております。若しその返事によつて第七次船で集団引揚打ち切りということになりました場合には、爾後の個別の引揚をどうするか、或いはそれ以外にどういうう方法を以て引揚を促進するか、或いは今まで引揚げて来られなかつた方々の消息の問題をどういうふうにして調査し究明するかという問題が残るわけでありましてそれにつきましては、現在のところでは先ほど申上げました三団体の照会電報に対する正式返事があるまで待つて対処したいと存じております。従来個別引揚げという方法もございまして、香港を通じて政府が経費を負担して引揚げて来られた方々もありますし、その方法を更に復活し或いは敷衍して対処するということも一案かと存じております。  ソ連関係につきましては御承知の通り現在日赤の代表団が島灘さんを団長といたしましてモスコーに行つておりまして、今までの電報によりますと、一般邦人九百名を含めまして千三百二十名という方々が帰つて来られる、その他の方々の問題、他の方々がいつ頃引揚げられるか、或いはその他の方々の消息の問題につきましても、日赤の代表団におきましては、先方のソ連赤十字に十分要望をして情報をもつて帰るものと確信いたしております。その上でさらにその方々の引揚の問題或いは消息についての徹底的な究明の問題というものを取上げて考えて行きたいというふうに存じております。  只今の二件の請願につきまして簡単でございますが、政府としての考え方を御報告申上げます。
  95. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 只今の請願に関しまして政府側の見解を承つたのでありまするが、委員諸君において何か御意見ごございますか。……別段の御意見もない模様でありまするが、では本件を議院の会議に附し、内閣に送付すべきものと決定いたしまして御異議ございませんか。    〔「異議なしと呼ぶ者あり〕
  96. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 御異議ないものと認めまして右を決定いたします。  それでは残り三件の請願に関しまして専門員の説明を求めます。
  97. 神田襄太郎

    ○専門員(神田襄太郎君) 請願第三十五号は、広島県呉市旧軍施設返還に関するものでございます。請願者は、広島県知事大原博夫君外二名、紹介議員は山田節男君外二名でございます。請願の趣旨は、呉市は旧軍港都市転換法の制定により、平和産業都市として旧軍施設跡に着々大工場の進出を見ましたが、現在国連軍駐留により、これ以上工場を誘致するという余地のない状況であります。ところが現に国連軍に雇用されているものは約一万三百名でありますが、これらのものは将来国連軍引揚という事態に直面いたしますと、いずれも失業者となりますので、この事態に備え工場誘致に必要な旧軍施設をできる限り早期に返還せられたいというのであります。
  98. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 只今の請願第三十五号に関しまして政府の見解を求めます。
  99. 安川壮

    説明員(安川壮君) 呉の旧軍施設につきましては、現存大部分を国連軍の施設として提供中でございます。かねてから地元のほうの御要望もありますので、目下末だ国連軍協定はできておりませんが、特にこの施設関係の問題を討議するために、これは日本政府国連軍当局との非公式な合意に基きまして、特に施設関係だけを協議するために、一種の予備作業班というものを設けまして、従来その会議を通じまして、国連軍側に対して、呉の軍事施設についても不要のもの或いは不急のものを返還するように交渉を続けて来ております。目下の状況は約一月ばかり前にこの会議を開きまして、その席上で大体日本側から見て、先方が特に必要としない、或いは必要としても現在の既存のほかの施設に、何と申しますか、コンソリデートすることによつてあけ得る施設というものを、大体こちらでめどをつけまして、その線で先方に対して一定の施設の返還を要求したのでありますが、先方はこれに対しては十分考慮する。そこで先方で検討したあと、改めて近いうちにもう一回会合を開いて返還し得るものはなるべく早く返還したいという意向を先方が表明したという段階になつております。従つて具体的にどれだけの施設を返還し得るかということは、次の予備作業班の会合で成る程度明らかにされるものと期待いたしております。
  100. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 只今の請願に対しまして御意見ございますか。
  101. 杉原荒太

    杉原荒太君 この請願自体じやないですが、丁度いい機会ですから、ちよつと私は国際協力局のほうに申上げておきたいのですが、私この間佐世保に行つて来たのですが、そうして丁度あそこに今度保安庁の警備隊の総監部などが設けられまして、丁度あそこの総監に会いに私は行つて来たのですが、あそこに行つて非常に私は驚いたのは、総監自身もちよつと意外に思つてつたのですけれども、あそこの今度の総監部の入る社屋ですね。これは到底予定されておつた所が使いものにならない。そうして市内には御承知のように随分アメリカ側で外人などが使つており、而もいろいろ聞くというと、少し向うで融通してもらえれば、あの警備隊の総監部くらいの入る所はあるらしいのですよ。ああいうようなのは一つ、これは中央でもすでにわかつておられるかも知らんのだが、極力一つ僕は推進して、中央のほうからも注意して、特に中央のほうから言わなければ、なかなかむずかしいらしいから、やつて頂くことが必要だと痛感して来たのです。そのことだけ申上げておきます。
  102. 安川壮

    説明員(安川壮君) 只今御指摘のような事情は全国各地にも共通する問題だと思いますが、何分施設がたくさんありますので、中央でじつとしておつてもなかなか実情が掴めませんので、主として現地の市或いは県の当局又調達庁の出先からの報告に基きまして、施設の余裕あるものの返還交渉そのものは中央でやつております。ただ実情は中央でなかなか把握しかねますので、地方からの報告に基きまして、交渉は中央でやるという方針で従来やつておりますので、佐世保の問題につきましても、御指摘のような事情が現に存在すれば、更に詳細な情報を地方から取りまして、中央で交渉して行きたいと思います。
  103. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では本件を議院の会議に付し内閣に送付すべきものと決定して御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 御異議ないものと認めます。さよう決定いたします’。  次に請願第六五号に関しまして、専門員の説明を求めます。
  105. 神田襄太郎

    ○専門員(神田襄太郎君) 請願第六五号は岡山県日本原旧陸軍演習場接収反対に関するものでございます。請願者は岡山県上伊福岡山県庁内岡山農業委員会協議会内松尾智猛でありまして、紹介議員は江田三郎君、秋山長造君でございます。岡山県日本原旧陸軍演習場を駐留軍演習場として接収する問題は、目下中央で検討されておるのでありますが、県の農業行政の見地からいたしますと、この日本原地帯は北部地方における唯一の平坦な農適地でありますので、これを高度に利用して農民生活の安定を図るべきであり、この地帯を活用することによつて農業零細化を防止することができますし、又この地帯は軍生地農業として酪農を導入し、以て一瞬農家経済の安定を図ることができますので、これらの理由により日本原全域を開放せられたいとの趣旨の請願でございます。
  106. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 先ず只今の請願に関しまして政府の見解を求めます。
  107. 安川壮

    説明員(安川壮君) 日本原の演習場は占領中に占領軍によつて演習場として接収されまして、占領終了後も引続いて米軍の使用に提供しておるのでありますが、現在建前といたしましては、米軍と保安隊の共同使用ということになつております。ところが現実には米軍朝鮮事変関係がありまして、国内から兵力朝鮮に対して転用されたというような関係もありまして、現在は使用しておらないという状況にありまして、現実には保安隊のみがこれを使用している状況にございます。そこで政府といたしましては、米軍側に対しまして、これを今後使用する目的があるかどうか、あるとするならば、如何なる条件で使用するかということを過去交渉を続けて来たのでありますが、朝鮮事変の成行き不確定のため想像されますが、なかなか米軍側がはつきりした将来の使用計画というものを示して来ないままに現在に至つております。そこでこの米軍の使用が朝鮮事変の成行きというものにかかつておりますので、現在直ちに米軍のほうにこれを返還しろという交渉をするのは、現在時期として不適当であると考えまして、更に朝鮮事変の成行き等を睨み合せまして、今後米軍に対して将来の使用計画というものを更に交渉いたしまして、米軍の必要性の有無、或いは必要の緊急度の強弱というものが明らかにされる時期を待ちまして、返還の交渉をすることも可能であると考えております。
  108. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 何か御意見はございませんか。……では、本件を議院の会議に付し、内閣に送付するものと決定して御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 御異議ないものと認めまして、さよう決定いたします。  最後に陳情第四号について専門員の説明を求めます。
  110. 神田襄太郎

    ○専門員(神田襄太郎君) 陳情第四号は福井県若狭湾上空米空軍飛行演習場化反対に関するものでございます。陳情者は福井市大手町二二六ノ二漁業協同組合連合会長山下喜作外五名でございます。陳情の趣旨は福井県若狭湾は日本海における最優秀漁場でありまして福井県の漁業は挙げて本海区の宝庫に依存し、本県漁民の生命線となつておりますので、若狭湾上空が米空軍の飛行演習場となりますと、これによつて全漁民が物心両面に受ける影響は甚大でありますから、かかることのないよう格別の御考慮を払われたいと  いうのであります。
  111. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 只今の陳情に対しまして政府の御見解を求めます。
  112. 安川壮

    説明員(安川壮君) 若狭湾の演習場につきまして、どういう種類の演習であるかということを簡単に御説明いたしますと、これは米軍が空中射撃の演習をするのでありまして、目標機が飛行機の尾部に吹流しを付けまして、それに対して上空から射撃をするというのが演習の実態でございます。地元のほうは最初この演習の実態がはつきりしなかつたためにいろいろ反対の意見が強かつたのでありますが、その後政府とそれから地元関係者との間で交渉を重ねまして、政府としては演習の実態をよく説明いたしまして大体現在地元のほうも納得いたしまして、或る一定の条件の下に設置することには必ずしも反対しないという状況になつております。そこで反対の一番強い理由になつておりますまあ漁業に対する影響でありますが、これは科学的に見ても殆んど漁業そのものには影響は及ぼさないというのが、政府の見解でございます。危険の度から申しましても、何千メートルの高空からやる演習でありまして、これは絶対に危険なしとは言い切れないかも知れませんが、何百分の一の危険しかないということでありますし、又上空で演習するということ自体が、海中の魚と言いますか、魚族その他の遊弋にも影響を及ぼすことがないということでありますので、これは事実上地元で心配されるような事態は起らないというのが政府の見解でありまして、ただ成るべく地元関係者の不安を除くために、一定の距離の沖合でやるとか、或いは高度を一定以上にとらせるというような条件を地元関係者と連絡の上只今米軍と折衝中でありまして、大体この条件がまとまれば、地元関係者の了解を得た上で、円満に決定できるものと期待しております。
  113. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 何か御質問はございませんか。  ちよつと私から御質問申上げたいのですが、今の御説明で飛行機に吹き流しを付けたものに対して射撃をする、こういうわけなんですか。その射撃というのは地上から射撃をするのか、そうでなくて空中での射撃か、そういうところをもう一つ説明願います。
  114. 安川壮

    説明員(安川壮君) 目標機が尾部に吹き流しを付けまして飛びまして、その上空から他の飛行機がその吹き流しを目標にして射撃をする、地上からの射撃ではございません。
  115. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 若しそうだとすると、何も若狭湾の上でそういう訓練をしなくても、もつと違い所に出て訓練するということも考えられるのじやないですか。
  116. 安川壮

    説明員(安川壮君) この点は、まあ常識的と申しますか、素人考えで言えばそういうことにもなるのでありますが、大体訓練をします飛行機が名古屋の小牧の飛行場と、それから大阪府の伊丹の飛行場を根拠地として飛立つているわけでありまして、ジエツトの戦闘機がやるわけであります。これはまあ飛行機の航続能力、それからやはり陸の見えないところでやるのは、飛行機の安全その他から言つても不安があるというような、いろいろな要件がありまして、やはり陸地の見える地帯でなければ工合が悪い、距離的な要件というようなものが主な制約になりまして若狭湾ということになつております。
  117. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) そうしますと、先ほどのお話で、米側と一定の高度を保たせるというようなお話合があるようですが、非常な上空でやつた場合には、どうせ実弾を打つのでしようから、その実弾は絶対ではないけれども、比較的人命その他に危険を及ぼす虞れが少いと、こういうわけですか。
  118. 安川壮

    説明員(安川壮君) 一定の高度から撃てば大体下に落ちて、下におります漁船なり、船に当る確率が何百万分の一ということなんでありますが、仮に何百万分の一の確率の一つに当つた場合を仮定しましても、先方説明によりますと、すでに海上に到達するまでには、弾丸の速度も鈍つておりますし、特に人命にかかわるような被害はないというのが先方説明であります。又従来これはほかの地域にも同じような訓練をやつておりまして、占領期間中から現在まで、一件もそのような事故を起したことはないという実情であります。それからもう一つ附加えますと、若狭湾と申しますと、如何にも若狭湾の湾内の真上でやるように響きますが、これは湾内ではありませんので、演習をやります上空も、大体湾の入口から、現在交渉しておりますのは、大体四十海里沖合のほうで、やはり名称は若狭湾ということになつておりますが、必ずしも若狭湾の湾の真上でやるということではございません。
  119. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 委員諸君は、只今お聞きの通りの政府側の説明乃至は見解でありまするが、この陳情の処理は如何取計いましようか。政府と地元との間には、すでに大分の話合ができておるかのように一応聞いたのでありますが、そうだとすれば、或いはこの陳情を採択して、議院の会議に付することが必要であるかどうかということも考えられます。
  120. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 一定の条件で、地元としてはさして反対はないようだというお話でありますけれども、その条件は大体どういう条件であり、その条件は大体確保されると言いますか、実行されるというふうになつておるわけでしようか。
  121. 安川壮

    説明員(安川壮君) 只今の条件は、まあ一番大きな条件は、一定の高度以上をとらせるということと、それから先ほど申しました海岸線からたしか四十哩と申しておりましたが、その一定の距離をとるということが主なることでございます。この条件がまだ正式に米軍との交渉は最終的にまとまつておらないという段階にあるわけであります。それから只今地元のほうも最初のように全面的に反対という態度はとつておりませんが、根本的に申せば、作らせることは面白くないということは変りないと思います。
  122. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 只今の政府側の説明では、まだ地元と完全に話合がついて、了解がついているというわけでもなさそうに見えまするし、又米軍側との協定も今交渉中で、結論には到達していないという模様であるということがわかつたわけであります。それならば、やはり先ほど来ほかの請願に関して御決定を見たごとく、当件を議院の会議に付し内閣に送付すべきものと決定することにいたしましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  123. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 御異議はない模様でありまするから、然らばさよう決定いたします。   —————————————
  124. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 次に、当委員会におきましては、国際情勢等に関する調査を行なつておるわけでありますが、会期も明日までになつておりますので、一応調査報告書提出し、併せて本件の継続調査を要求することにして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それではさよう決定いたします。なお調査報告書には多数意見者の署名を付することになつておりますので、順次御署名願います。   多数意見署名     梶原 茂嘉  杉原 荒太     曾祢  益  徳川 頼貞     羽生 三七  鶴見 祐輔     佐多 忠隆   —————————————
  126. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 下田条約局長から今朝来日本のガツト加入の問題について一応の御説明を申上げたいという申出がございました。大臣が来られるまで、それでは下田条約局長からその件についてのお話を承わることにいたします。
  127. 下田武三

    政府委員下田武三君) 大臣から御報告申上げるべきでございまするが、まだ参りませんので、私代つて御報告申上げさして頂きたいと思います。  ガツトヘの日本の仮加入に関する件でございまするが、我が国は十月の二十三日ガツトヘの仮加入が認められまして、翌三十四日我が代表は日本国の仮加入に関する文書に署名いたしましたので、ここに従来の経緯と右文書の内容のあらましにつきまして御報告申上げたいと存じます。  我が国は、一昨年九月ジユネーブで開かれましたガツト締約国団第六回会期以来、オブザーバーの派遣を認められて参りました。第六回会期ではガツトヘの簡易加入手続が採択されましたので、昨年七月十八日付を以ちましてこの簡易加入手続きに基く加入出講をいたしたのでございます。この申請は本年二月の会期間、委員会に付託されましたが、同委員会会はこの申請を更に締約国団の特別会期において決定することを勧告いたしました。ところがこの特別会会期は、米国の互恵通商法の効力延長の問題とも関連いたしまして結局開かれずに終つたのでございます。そこで本年八月の会期間、委員会は、この日本加入問題を第八回会期において討論することを決定いたしたのでございます。このような経緯を辿りまして漸く、去る九月十七日からジユネーブで開かれました第八回ガツト締約国団会期におきまして、日本加入問題が上程されましたので、同会期における折衝と並行いたしまして、関係国に対し種々交渉を行いました結果、幸いにして十月二十三日、賛成投票二十六、反対投票なし、棄権七で、我が国の加入が認められるに至つたのでございます。  我が国の仮加入に関しましては、二つの文書が作成されたのでございます。即ち、お手許に配付いたしました関税及び貿易に関する一般協定のある締約国と日本国との通商関係の規制に関する宣言とガツト締約国団の決定とがそれでございます。宣言のほうは、我が国とガツト締約国中の希望国との共同宣言の形をとつておりまして、それによりまして、明後年六月末まで、又我が国のガツトへの正式加入までの間、これらの国と我が国との通商関係もガットの規定に基いて規制いたそうとするものでございます。又決定のほうは、ガット締約国団の決定でございまして、これによりまして宣言と同一期間中我が国とガツト締約国団及びその補助期間の会議への参加を認めようといたすものでございます。我が国はこの宣言によりまして、宣言に参加するガツト締約国から関税事項に関する最恵国待遇を受ける利益を得、又これと関連いたしまして採択されました決定によりまして、関税及び貿易に関し国際的な発言権を獲得し、我が国の利益を保護増進する大なる足掛りを得ることとなつた次第でございます。よつてこれらの利益を考慮いたしまして、又これらの文書はもともと我が国の要請に基き、且つ我が国の署名を前提といたしまして作成せられたものであるのにも鑑みまして、政府はその責任におきまして、本件宣言の作成されました十月二十四日に直ちにこれに署名し、開会の承認憲法第七十三条三項但書の規定に従い事後に求めることとさして頂いた次第でございます。  ここにお断りしておかなければなりませんことは、本件宣言が作成されましたのが何分本国会会期前僅か五日前のことでありまして、未だ関係文書の認証謄本すらも到着いたしていないような次第でございまして、本件につきまして直ちに現国会——御承認を仰ぐことが事事上不可能なことでございます。従いまして、本件は次期国会において正式に御承認を求める手続をとることとさして頂きたいと存じますので、末日ここにあらかじめ委細を御報告申上げまして、皆様の御了承を仰ぐことといたした次第でございます。
  128. 羽生三七

    ○羽生三七君 この仮加入と正式加入と一体実際的にはどういう相違があるのか、この辺ちよつとお聞きしたい。
  129. 下田武三

    政府委員下田武三君) ガツトの正式締約国になりますためには、他の締約国の一つ一つと関税交渉をいたしまして、関税交渉が成立いたしましてから正式に締約国になるわけでございまするが、その関税交渉がいろいろな事情のためになかなか開かれません。そこで関税交渉をやれる時期を待つてわりましたならば、いつまでたつて日本が加入できませんので、そこで簡易手続というものの採択方を工作いたしまして、それで簡易手続の採択もできたのでありますが、結局この九月に開かれますまで、現実日本の加入問題の審議が行われたかつたのでございます。そこで九月の会議で、関税交渉をすること心しに、仮に日本に対しましてあたかも締約国であると同じような地位を認める、つまりガツト関係会議には日本は参加できる、又宣言に参加した国と日本の間にはガツトの規定によつて通商関係が律せられるというような地位を獲得することができたわけでございます。
  130. 羽生三七

    ○羽生三七君 ガツトの会議というのは毎年あると思うのですが、最も近い機会に宣言に参加した各国との間に具体的な関税上の取極ができて、正式加入と言われる時期までには一応そういうことが完了するお見込みでしようか。
  131. 下田武三

    政府委員下田武三君) 関税交渉は、先ほど申しましたように、アメリカの互恵通商法の一年間延長、その一年間はアメリカとしては如何なる国とも関税のネゴシエイシヨンができないという建前になつておりますために、事実上一年というものは行うことが不可能なのでございます。そこでまあ日本としては、その難関を回避して、加入国と同じような地位を得ることになつたわけでありまして、次の会期はまだいつ開かれるかわかりませんが、恐らく来年の前半にあると思いますが、その際には日本は参加できるということになる次第でございます。そうして又関税取極というものは、もう関税交渉まではやりませんで、今何の取極によつて一挙に、今日まで署名しました国は十三カ国でありますが、一挙に日本と十三カ国との間にガツトの最恵国待遇の規定を初めその他の規定動き出すわけでございますので、その点は非常に利益だと思います。
  132. 杉原荒太

    杉原荒太君 この決定によつて日本がどういう地位に置かれるかということを正確に述べてみると、どうなりますか、それを一つ……。
  133. 下田武三

    政府委員下田武三君) 決定は、日本以外の締約国団の決定でございまして、日本は当事者でないわけなのであります。ただ宣言を導き出すための一つの締約国団の内部の文書でありまして、従いまして日本はこの決定のほうには署名いたしましたわけではございません。従いまして、次の国会に御承認を求めます文書も宣言のほうのみでございます。
  134. 杉原荒太

    杉原荒太君 それではつまり決定によつて、締約国団がこういうことを決定してその結果、日本がガツトの会議乃至ガツトの関係の機構の会議に招請されるということが出て来るわけですね。そうして招請されて、そこで発言することができる、併しその討議に参加して、一種の発言権は認められるということになつたわけですが、厳密の意味の権利かどうかわからんが、併しそれに対して或る議題が、投票などするというような、決議などするというようなときに、その決定にもあずかることがこの決定の結果一体認められることになるかどうか。
  135. 下田武三

    政府委員下田武三君) その点まで今回の文書にはつりいたしておりませんが、会議のミニツツによりまして、日本は単に会議に参加すると、顔を出して発言をし得るということは明らかでありますけれども、投票権があるのかないのかという点につきましては、こういう妥協が成立いたしたのであります。つまり、ガツトの内部のアドミニストレイシヨンとか、オーガニツク・マターとか、そういうことには日本は正式締約国ではないのだから投票権がない。併しその他の実情的な問題につきましては、日本は投棄権とは言わないのでございますが、日本の意思がカウントされるというような妥協ができたのであります。
  136. 杉原荒太

    杉原荒太君 非常にはつきりしない点があるわけですが、仮加入そのものの性質から、そうなるのでしようが、非常にはつきりしないことになりますね。
  137. 下田武三

    政府委員下田武三君) もう少し詳しく申しますと、今度の会議の報告の中に、こういうことが書いてあるのでございますが、締約国団の会議では、通常正式のボート、投票を行わず、議長が灘会の空気に基いて決を採ることになつておりまするが、その場合には事実上日本が投票権を有する場合と同じ効果がある。と申しますことは、議長が会議の空気を認識する際に、日本代表が賛成しておれば、それが議長によつてカウントされるという意味なのであります。
  138. 杉原荒太

    杉原荒太君 今まで新聞報道等でガツトの仮加入に関する報道を見ておるというと、私非常にはつきりしないのでございます。正確にこれを二つ知りたいと実は思つてつたので、なおよくお聞きしてみたいと思うのですが、かなり独断的にこうなつたというようなことが、私一般に必ずしも正確ではなく不正確に伝えられておるように思うのです。その辺のところ、殊に認証謄本なども来ていないわけですが、正確なところをよく一つ一般に知らせるように、国会などでも報告してもらいたいように思うのですが、殊に今の説明によると、こつちのほうの決定の結果、日本がどういう地位に立つかというような点なども、今まで新聞などで普通報道せられておるのとは少し違うように思う。宣言のほうは私まだ精密に読んでいないからわからんが、これは結局例のつまりガツト税率が付されるわけでしよう。
  139. 下田武三

    政府委員下田武三君) 仰せ通りでございます。
  140. 杉原荒太

    杉原荒太君 そうして、この宣言に加入する国との間においては、その税率が認められると、こういうわけですね。
  141. 下田武三

    政府委員下田武三君) 日本は新たに加入するわけでございますので、この宣言の附属として、日本国の関税譲許表というものが附属文書になつております。それから相手国のほうはどうかと申しますと、これはガツトの協定自体は、御承知のようにまだ実施されておらないのでございますが、そのガツトの協定を暫定的に実施する取極がございます。その暫定的実施の取極に各国の関税譲許表が付いておるわけでございます。そこで結局日本に対しましては、日本側は今度の宣言の附属文書の関税譲許表、それから他の締約国はガツトの暫定的適用に関する文書の附属関税譲許表が適用されることになるわけであります。
  142. 杉原荒太

    杉原荒太君 それからこういう関係はどうなるのですか、税率表ではなくして、ガツトの規約によると、最恵国待遇とか、それからいろいろ待遇に関する原則的な規定が規約自体にありますね。あれの適用はどうなりますか。
  143. 下田武三

    政府委員下田武三君) 御指摘のガツトの条項の中にありますいろいろな待遇その他をきめました原則的な規定、それは今回の宣言によつて日本と他の宣言参加国との間に適用になるわけであります。
  144. 杉原荒太

    杉原荒太君 そうして、あの全体の規約の中にこういうことがあつたと思うのだけれども、一定期間に譲許税率を変更せんという条項もあつたようだが、そういうものの適用も自然受けてくると思う。一面からはそういう拘束というか、そうものも受けてくるのですか。
  145. 下田武三

    政府委員下田武三君) お説の通りであります。
  146. 杉原荒太

    杉原荒太君 それから日本では一方関税定率法を、これはつまり複数関税制度に今度しようとしておるが、そういう措置国会へでもとろうとしておるか。
  147. 下田武三

    政府委員下田武三君) まだ国会提出いたします段階にはなかなかなつておりませんが、政府部内の一部におきまして、正確に申しますと、複数税率表じやないのでございます。つまりA種の税率とB種の税率という意味のダブル・タイプではございませんで、一定の場合に法律で決めた税率に五〇%足すとか、或いは一〇〇%足すとかというようなことを可能ならしめるような立法措置を講じたらどうかというような考え方が政府の一部にございます。
  148. 杉原荒太

    杉原荒太君 これは今条約局長にすぐ言つてもどうかと思うのだが、これは今後の通商政策をやつて行く上からいつて、この複数税率の適用の問題を考えると、日本でも国内法において、そういう点の備えをちやんとやらんと、必ず私は通商問題というのは運営がうまく行かんと思う。今までのいろいろな経験からみても、やはりこちらでも一つの武器を持つておらなければいかんことは、これはもう今までの経験が証明しておると思う。そういう点で只今言われたように、何らかの国内法の整備が非常に急務であろうと思うのですがね。そうしてそれに会わして通商条約のほうの方式考えて行くということ、これはむしろ私はもつと早くやつておらなければならんことで、今でも私は遅れておるように思う。これはあえて私答弁を求めるわけじやないけれども、そういうことを痛切に感じておるものだから申上げる。  もう一つ申上げておきたいと思うのだが、これはいろいろ今の改めて国会承認を求めるということとは別に、この委員会としても考らえれることだと思いますが、今までガツトに入ることは実際上非常にむずかしかつたんだが、これは例のアメリカの互恵通商法問題がああいうふうになつて、ますます以てむずかしくなつてしまつたので、実際日本としてはもつと早く実は推進をしてもらいたかつたと思う。それでも、実は非常に今ではアメリカのほうの大きな障碍をなしていると思う。併しああいう問題が出て来る前に、これは早くやつてもらいたかつたと思う。併しそれでもイギリス側などは非常に反対もあつたことも事実だし、殊に去年イギリスに行つたときもだが、その後もずつとイギリスの状況などを実は私情報も得て知つているんですけれども、この間の保守党の大会などではボード・オブ・トレイドの長官などは吊し上げになるくらいで、これは国内問題としてもイギリスなどじや日本のガツトの加入問題について非常に反対があつた。そういう事実を考慮に入れて考えれば、今度この程度のものにせよできたということは、これは松本代表などの非常な御努力の結果だろうと思つて、その点感謝に堪えんけれども、これは私むしろ外務大臣に特にこれに関連して申しげておきたいと思つたんですが、これから後ランドール委員会のほうがきまり、どういうふうになつて行くか、要するにこれからのランドール委員会の結果が出て来るまで、出て来て、それが或いはガツト機構などを通して世界経済の政策が国際的にきまつて行く、あれが国際経済の私は重大な時期だろうと思う。これからの一年乃至或いは年来の六月頃か、或いは来年一ばいくらいの間というものは、国際経済の非常に私は重要な時期だろうと思う。これは米ソの政治的、軍事的な関係以外に、国際経済、殊に自由世界内部の国際経済の非常な私は重要な時期だろうと思う。そういうことを考えて、とにかく曲りなりにも今日ガツト機構というものに接近して来たということはいいと思うが、同時に今言つた来年度重要な段階においての国際経済に対する外務省の外交工作というものは非常に努力されなくちやならんだろうと思います。
  149. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ガツト仮加入に関しまする政府の御説明並びにこれに対する質問は、大体本日はこの程度に留めておいて差支えありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  150. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それではさように決定いたします。外務大臣の出席は、千田委員質問が殆んど今終つておりますので、大臣は間もなく出席せられると思います。ということでありますから、このままで暫くお待ちを願います。速記を止めて。    〔速記中止〕
  151. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記をつけて下さい。  実は今朝の会議におきまして鶴見委員から緊急質問提出されました。それは池田・ロバートソン共同声明に関して、新木大使が政府の命を受けて、米国側に正式にあの共同声明を政府として承認すると、こういう報道が伝わつたそうであります。そのことに関しての緊急質問であります。鶴見委員からどうぞ緊急質問の要旨について説明して、且つ御質問に入つて頂きたいと思います。
  152. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 私は只今委員長説明の問題に関しまして緊急質問をいたしたいと思うのでありますが、数箇の点に触れるのでありますが、第一点、今朝入手いたしました或る新聞の情報によりますと、政府は在米大使新木氏に対して、訓令をお出しになつて、その結果新木大使が五日国務省にロバートソン国務次官補を訪れて、先般、先月の三十日に発表されました池田・ロバートソン共同声明について日本の政府が同意する旨を伝えた。及びこれに対するアメリカの協力と、それからガツト仮加入にアメリカが協力したということに謝意を表した。そうして今まで池田氏は個人の資格で行つてつて、総理大臣も又個人の代表であつたと言うのでありますが、今回は新木大使が日本政府からの訓令に基いて、日本政府がこの共同声明に同意したという申入れをしたという報道があるのでございますが、この報道が事実であるかどうか、これを先ずお伺いしたい。
  153. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 元来、池田君が総理の個人的な代表といいますか特使といいますか、そういう資格で参りまして話をしたわけであります。そこでその話の結論といいますか、共同声明というのが出ておりまして、これを見ますと、いろいろな問題が取上げられておりますが、いずれも東京で今後話をするという趣旨であります。そこで今までは池田君と向うのロバートソン次官補その他と話をしましても、一体日本政府はそれをどう考えているかということを一遍も言つていない。そこで先日関係閣僚が相談しまして、これらの問題について東京で今後話合いをするということについては差支えない、こう考えまして、東京で話をするということについて同意をするという趣旨のことを国務省に申入れたのでございます。従いまして今後いつ話を始めるか、又いろいろな問題を同時にやるわけには行きますまいから、だんだんやつて行くのでありますが、その話合いの日取りとか或いはどれを先に取上げるかというようなものは、勿論今後話合いによつてもきまるわけであります。従いましてその話合いの結果がどうなるかはすべて東京での会談の結果になりますから何とも申上げられませんが、東京話合いをするということについては、政府として異存はない、こういう趣旨のことであります。私どものほうにも新木大使から簡単な非常に短い電報が入つておりますので、どういうふうに新聞記者会見等で申したか詳しいことは言つて来ておりませんけれども、そのことを新木大使が申して、それが新聞で伝えられたのではないかと思います。
  154. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 そういたしますと、あまりしかつめらしく申す筋でもありませんが、今まで本院及び衆議院において、総理大臣は、池田氏は自分の個人的の代表者であつて、政府には関係ないというお話であつたのですが、こういうふうにして、その成果が公式に政府に取上げられたということになると、遡つて池田氏のやつたことが政府の代表者として認められることになりますね。
  155. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これはそういうことになるかも知れませんが、要するに政府としては、東京で今後話合いを続けるということについては異存がないという趣旨のことを新木大使を通じて申上げたのであります。
  156. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 私の伺つておりますのは、この問題について東京で正式に政府は話合いをされるときに、池田氏が個人として今まで話合われたことを基礎として取入れて話合いをする、こういう意味でございますか。
  157. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 大体この共同声明に述べられておりますことは、今まで政府が言うたこととあまり違つたことはないのでありまして、考え方は大体似たようなものと考えておりますが、一々共同声明の、これは約束したのだとか、これはきまつているのだとかいう趣旨のことではございません。これは共同声明の中にもはつきり断つて、今回のへ会談は、相互の意向を打診することを目的としたもの、こう言つておりますから、双方の意見はこの中に或る程度盛込まれておりますが、これが合意に達したということはないはずだと考えております。従つてこれは参考にはいたしますが、アメリカの考え方がどこにあるかということも、まあ池田君が帰つてくれば、それも聞きましようが、要するに政府の趣旨は、東京話合いをするということについては異存がない、こういう趣旨であります。
  158. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 その話合いということが、池田・ロバートソン国務次官補との話合いがなかつた場合と、あつた場合との相違はございましよう、違いは。
  159. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) それはこちら側の考え方については余り相違はないと思います。併し先方考え方が一層よくわかつたという点においては、成る程度の違いがあるかも知れません。
  160. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 なぜそれをお伺いするかと申しますと、この話合いの中には、池田氏は相当広汎にいろいろな問題に触れておられると思うのであります。共同声明のほかに、長い間のお話があつて、それが正式な政府の条約でもなんでもありませんから、文字通り採用されるということはないと思いますけれども、あれだけの時間と労力を費してやられたことを、政府がそのままなかつたものとは認められないから、どうしてもこれらのお話の基礎になる。といたしますと、例えばこういうようなことがいろいろ出ていると思うのであります。例えば日本に対して米国の軍事的援助をする、それについて政府が話合いをする、こういうのでございますね。その軍事的援助については、共同声明の中にはありませんけれども、その前に新聞にしばしば出ておりますことは、兵力量の問題についていろいろ話合いがあつたように見えるのですが、少くとも今外務大臣お話のように、向うの意思だけは大体わかつて来たというお話であります。新聞の報道がそれだけ有権的なものかどうか存じませんけれども、私がこれをお伺いするのは、日本国民としては、東京において発表されるものよりも、アメリカのほうで発表される材料のほうが分量が多かつた、従つて日本国民が非常な関心を持つている問題は、東京よりむしろアメリカのほうで相談されているという心配を持つていると思うのであります。その一つの点は、例えば兵力量の問題でありますけれども、これはその内容の前提として出ているのでありますけれども、例えば日本が窮極においては二十二万五千乃至三十五万の常兵力を持つ、こういうことであります。そうしますと、それがその話合いの中にあつたものといたしますと、これは予算委員会などで衆議院でもしばしば問題になつておりました軍とか戦力とかという問題に関係をして来る。これはやかましく理窟を言うよりは、常識として三十五万人の陸上兵力であつて、而もここに軍事的の援助をして、いろいろの兵器も渡すと書いてあるのですから、軍事的でないとは常識では考えられない。昨日の外務大臣お話の中にこういうことがあつたと思います。東京におけるMSAの会談の中では、軍と戦力とは日本憲法では許されないから、これを除いた問題として交渉するというお話がありました。ところが若しこの池田・ロバートソン会談の内容をなすものの話合いの中で、こういう大きな戦力の或いは兵力の問題で話合いがあつたということになりますと、これを常識的に考えて、軍備でもなければ戦力でもないと言うことは、余ほどむずかしくなつてくると思うのでありますが、そこで私はこの新木大使のお話になつたことが、どの程度に池田・ロバートソン会談をお認めになつたという意味かということを伺つておるのであります。
  161. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 池田君が共同声明にあるだけのことを話したのでは勿論ないだろうと思います。長い間いろんな話をしたのですから。併しそれは全然政府を拘束しない意見の交換だと私は正直のところ信じております。そこで先方では先方意見を述べたことと思いまして、前のアメリカの議会で、ダレス長官その他が三十何万ということを言つたということも伝えられておりますから、或いはそういうことも出たかも知れません。併しながら新木大使にはつきり訓令をいたしましたのは、この共同声明ということを引きまして、この共同声明の中にある東京会談といいますか、東京話合いをずるという問題、この点については日本政府は異存はない。その他の点については全然訓令には触れておりませんし、又政府としてはその他の点を同意するとか同意しないとかいう筋合いのものでないと考えております。結局仮に池田君が行かないで、アメリカの人が誰かが仮にこういう問題について東京話合いをするのが適当である、こういう意見を述べた場合でも、日本政府がいいという場合にそれは東京でやろうという場合もありましようが、たまたま池田君が行きまして、このコミユニケによると、いろいろな問題をこれから東京で話そうということでありますから、これは異存がないのだという趣旨のことで、現に共同声明に載つておる東京会談と言いますか、共同声明をリフアーしておる、これについて東京で話をするということについては異存はないと、こういうことを申しておるのであります。
  162. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 その点はよくわかりました。そうすると、共同声明のほうに重大なことが一つあるのです。おしまいのほうですが、日本の部隊が自己防衛の能力を増進するに従つて、在日米軍撤退すべきことについても意見の一致をみたと、こうあるのですね。これもやはり今のお話だと、新木大使を通して、共同声明の中にありますから、お認めになつたということになりますでしようね。
  163. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これはこの前のことを思い出して頂きますと、安全保障条約のときにも我々は国会に対してしばしば説明しておりまして、これは暫定的の条約なのであつて、恒久的の条約ではない。この前文に直接侵略、間接侵略に対抗する自衛力を漸増するということは期待として書いてある、期待として書いてあるから、決して条約上の義務ではないけれども、こういうものを前文に書いておいて、条約上の義務ではないが、日本はこんなことは全然知らないのだという意味ではない。義務としては受付けないが、そういう期待がアメリカにあるということはよく承知しておるから、こういうことを書いてあるという趣旨であります。従つて、そのときから暫定の条約であつて、将来はだんだん自衛力が漸増して来る、そのときはアメリカ軍がだんだん減つて行くということにも煮るわけであります。又それに基きました行政協定締結の際も、これも国会で御説明いたしておりまする議事録の中で、仮に日本の自衛力を漸増する、そのときに余計な経費がかかるというときは、防衛分担金の日本の負担分をそれに比例して減らす、どれだけ減らすということは書いてありませんが、そういうこともアメリカ側として十分考慮を払つていると、こういうことを言つて議事録に残しております。それもありまして、もとから、だんだん日本の力が殖えればアメリカのものは減つて行くという考え方で進んでおりましたが、今まではそこまで行つておりませんでした。今度保安庁で研究しておりますが、その研究の結果ができますると、同時に直接侵略にも当り得る任務を保安隊に与えるわけであります。そうすれば、一部のものは減るということも出て来ると思います。我我はそういう点は前からも考えておりまして、この点は考え方としては今までと余り変つておりませんが、併しこういう強い内容をこれだけでは実は余り意味がないのであつて、実際どれだけ殖えればどれだけ減るとか、それはいつ頃になるのかというようなことがなければ、これは主義上の問題だけで今までと同じであります。我々としてはやはり東京でいろいろこの問題も話をしてみるという、要するに、東京で話をするということについて同意をしたということで、すべては東京で話してみると、こうなろうかと考えます。
  164. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 私、その点を取上げて御質問をするわけは、昨日外務大臣の御説明の中に、日本の防衛力を殖やすのは、アメリカの軍隊撤退するからというよりは、世界情勢が緩和されるときにアメリカの兵隊は撤退するので、日本の戦力が願えるから撤退するのではないということを昨日お話になつたのです。すると、池田・ロバートソン会談の共同声明との趣旨が、アメリカ軍の減る理由が違うと思うのですよ、昨日の御説明と……。
  165. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私の言つたのは、ちよつと強調のし方で誤解を招いたかも知れませんが、御質問が、アメリカの部隊の減るのは日本の防衛力が殖えて、それに代つたときであろうと、こうおつしやつたので、それもありましようけれども、必ずしもそればかりではないのであります。安保条約の三条はこういうふうになつております。従つて、仮に防衛力が、そういうことは極端な議論ですが、防衛力が非常に不十分であつても、世界中が平和になつて何にも心配がないとか、或いは十分なる安保諸費が他の方法でできたということができれば、安保条約にもそういう場合には効力を失うと書いてあります。そういう意味もあるのですということを申上げたのですが、或いは強調のし方が強くて、防衛力には関係なく、そういうときだけはなくなるのだというふうにおとりになつたかも知れません。これはそのときもこう言つたと思います。防衛力が殖えてアメリカが減るというのが本筋ではあるけれども、こういう場合もあるのです、こういう趣旨に申上げたと思うのですが。
  166. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 その点は言葉尻をとるのでも何でもないので、御趣旨を聞くつもりであつたのですが、そうしますと、国際情勢が緩和して各国が非常に平和の状態になり、或いは国連が強化されて戦争の準備が要らなくなるということは最も望ましいことで、外務大臣がそれを希望されることは我々全然同感であります。ただ今日のような情勢では、非常な危険が日本にあるから、日本をそういう状態に置きたくないという考えからいつて日本が防衛力の揃わない国になつては困るという考えがあるものですから、それがたまたま池田・ロバートソン会談の共同声明の中にも出ておりますから承わつたのですが、そういたしますと、ここに私ども一つの疑問を持ちますのは、この間衆議院の予算委員会で四人の質問者が立つて、主として総理大臣、木村長官にお尋ねをして、軍とはどういうものか、戦力とはどういうものかとか、それから交戦権を認めるとか認めないとかいう抽象的な議論がありました。そのときの総理大臣説明の限界は、私はわかつたつもりでおりますが、それは当時の質問者がその問題をもつと具体的にお尋ねにならなかつた。これは私は外務大臣にお尋ねするのは、少し場所が違うかも知れませんが、お尋ねしておきたいと思いますのは、戦力とか軍とかというものを抽象的に議論をしまして、も、議論は尽きないと思うのであります。問題は結局昨日の外務大臣お話では、軍とか戦力は認めないという日本の趣旨をアメリカは了解した、こういうお話なんです。予算委員会では、総理大臣は、軍というものは定義観によるから、定義観によつては軍と認めてもよろしい、自分はそうは思わないというお話であつて水掛論でありまするけれども、これは併し一般の国民の常識の問題として、今現実日本が非常な危険の前に立つているのでありますから、自衛権があるのなら、自衛をする力も同時に持たなければ意味をなさないということは、これは常識だと思うのであります。戦力という字は最近の言葉ですから、どういうかはつきりしないけれども、併し戦力というものは、総理大臣の言われているのは私はわかると思うのであります。そもそも私の解釈から言えば、国際戦争をするようなものは戦力であつて、国内の危険、それは直接或いは間接の危険を防止するのは戦力にはならんと、こういうふうに了解したのですが、これは外務大臣にお尋ねしてもどうかと思いますが、そういたしますと、今MSAの交渉をこれから東京でおやりになるときに、軍というものと戦力というものは全然認めないという昨日のお話であつて、会談をなされるとすぐ起つて来る問題は、十一万の保安隊及びこれに対する経費が、二千億になんなんとしているのであるという場合に、これは全然軍ではない、戦力ではない、どれだけ殖えてもそうならないといつては、国民の常識としてはこれは納得されないと思うのであります。殊に吉田・重光会談のときの表現が非常に抽象的であつて、よくわからなかつたのですが、どうも予算委員会の総理大臣の御意見を伺つていると、我々が重光氏から聞いておつて了解したことと大変開きがあるのです、違うのです。でありまするから、昨日の外務大臣お話はつきりして来たのですが、軍というものと戦力というものは憲法に違反するから、日本の今日の政府は作らない、それから私がさつき申上げましたのは、窮極においては三十万の兵隊を持つというようなことになりますと、たとえこれが今日十一万にしても、十八万にしても、それを軍ではない、戦力ではないということになると、私は一般の人間の常識では受取れないと思うのです。ですからこれは非常に大事なことになつて来て、よその国、民主主義の国でも随分軍の機密に亙ることもどんどん言つている。マーシヤル長官が、ヨーロツパには何箇師団を置くのだというようなことを聞かれたときに、とうとう思い切つて六箇師団ということを言つて、非常に問題になつておる。あそこまで言うのですから、日本の政府も民主主義を守るということを眼目にしておいでになるのだから、もつと正直にはつきりおつしやつたほうがいいと思うのです。そこで今の、現に池田・ロバートソン会談の共同声明の文句と、昨日の外務大臣お話は私は常識的に考えて食い違つて来ている、如何でございましよう。
  167. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私の軍とか、戦力とか申しますのは、憲法の言葉に「陸海空軍その他の戦力」と書いてありますので、そういう意味で申上げておるのですが、ただこの前の曾祢君の御質問にも、私前に答えたように、或る実力部隊がある、憲法の禁じているのは、この簡単に言えば戦力に至るものである。戦力に至るものは禁じておるのだということでありますから、政府としては戦力に至らざる限りで、而も経済等に合うようにして、できるだけこの防衛力を増強しようと考えておる。ただこれを憲法が、屁理窟かも知れませんが、軍と言つてはいかんとか、何と言つてはいかんということは言つておらない。従いまして政府としては、これは軍と呼ぶべきものではない、或いは適当でないとは考えておりますけれども、これを軍隊であるとお呼びになり、お考えになつても、これはどうもとめようがないので、ただ政府としてなすべきことは、政府は憲法に従つて行動すべきものでありますので、戦力に至らないもので、できるだけ経済的に、でき得る限り防衛力の増強ということをやる。併し総理も言われるように、それをだんだんやつているうちに、これが十一万なら戦力ではないが、十二万なら戦力だというように、はつきりは区別はありません。区別はありませんから、ときに議論もありましようが、もう戦力とか、戦力ではないとかいう議論はありましようが、併し多くの人が認めて、これはどうしてもそこまで行けば戦力だよということになれば、憲法をその前に改正しなければならないという問題は出て来るでありましよう。併し憲法を改正しない限りにおいては、政府としては、要するに名前はどうであろうと、実質の問題でありまして、名前は警察と言おうが、軍隊と言おうが、これは付け方等によるが、戦力に至らざるものを現在のところは作るのであるという考えで来ております。
  168. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 話は非常に抽象的になつて来たのですが、私は具体的に一つつてみたいのです。私どもの考えておる自衛軍というものは、むしろ政府の考え方よりももつと小さいものです。もつと金のかからないもの、その前に先ず社会保障制度をいたすべき、経済自立をいたすべきだと思つているのですが、そこで今総理大臣の御意見を、私どもが予算委員会で聞きながら感じたことは、今あなたのおつしやつたのもそうじやないかと思うのですが、戦力というものは攻撃的な力を持つたものを戦力とお考えになつているのじやないかという感じがするのです。攻撃的という意味は、例えば今長距離爆撃機とか、或いは原子爆弾とかいうような、非常な近代戦争をする武器がありますね。そういうものを持つた場合は、形はそれは戦力だろうと思うのです。だからそれがいけないと総理大臣は言われるのですね。これはもう明白に誰でもそう思うけれども、それまでに行かない程度でも、戦力になり得ると思うのです。例えば今お尋ねしてもお話はできませんでしようが、恐らくは今現内閣でお考えになつておる防衛隊というのですか、或いは自衛隊と言いますか、それは相当大きな金をお使いになるものじやないかと私は思う。それが出て来てから、議会休会中にそれが話がついてしまつて、今度の条約にしましても、済んでから事後承認をお求めになるというと、国民から言うと、こんな重大な問題を議会閉会中にきめて既成事実として承認をお求めになるという感じが非常に強い。で、この非常な大切な問題だから、私はもつと具体的にはつきりと国民にわかるようにお話になつたほうがいいのじやないかと、こういう感じが強いのでございますが、だから戦力論とか、或いは軍という文字の争いをしてみても始まらないので、日本経済の根本を危うくするような金を使う場合には、これは私は非常に大きな軍備だと思う。これは或いは日本国民がどこまで連れて行かれるかわからないような軍隊ができるということになれば、これは私は憲法予定しているものじやないと思うのであります。そういう具体的なものが問題なんで、文字の争いを私は申上げているのじやございませんが、これは今お答えできる範囲のものがありましたら、伺つておきたいのであります。
  169. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 実は今保安庁でいろいろ計画しておるようでありましてこ君は予算との関係もありますし、まだ申上げる段階には勿論至つていないと思いますが、併し予算編成の時期もありますから、そう遅くないうちに計画はできるものならできなきやならんと思つております。併しもう一つ考え願いたいのは、これは勿論相対的のものでありますから、例えばアフリカのどこかの小さな国が軍隊を持つている。その数とか、装備とか、日本のこれと比べて、あれが軍隊ならこれも軍隊じやないかという議論もできましようけれども、やはり日本としては、常識で、八千五百万であつて海岸線がこれだけ長い、そして地位から言うと、非常にヴアルネラブルなところにあるということになりますと、これが成る程度まででも寄るということになれば、これは相当に必要というものが出て来ましようから、単に絶対値が大きいとか、小さいとかいうことだけでも、なかなかそれだけでは議論がきまらないのじやないかと思います。で、今我々が少くとも具体的にはまだきまつておりませんけれども、そういう人口の問題、海岸線の問題、それから周りの諸国の問題等いろいろのことを考えてみましても、これはどうしたつてこの憲法にいわゆる戦力と称するものにならないと思うものを、実は計画すべきであるというのでやつておるのでありまして、まあそう厖大なものもできないだろうと思いますが、まだちよつと時間がかかるので、今ここで具体的にこういうものだということを申上げることは、私にはできませんけれども……。
  170. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 私だけで時間を頂戴するのはいけませんから、最後に一つ、大事なことを一言だけ、質問と同時に、希望を付しておきたいのでありますが、それはどういうことかと申しますと、今アメリカ側が日本に対して日本の自衛力或いは軍隊を増強しろというふうに、強く要求しているという感じ日本国民に与えておると思うのです。で、私から申せば、これはアメリカのために取らない。なぜかと言えば、アメリカが中心になつて日本の占領を始めたときに、アメリカの政策を振り返つてみますれば、当時のアメリカは、今日の対日政策とは全然違う政策を持つていたと私は思う。それなら、その当時日本人に殆んど相談がなかつたとさえ言われるほど急いで、あの憲法日本に通過させたそのときのアメリカの考え方は、世界的に類例ない平和憲法ができたと、こう日本言つて日本が将来侵略国にならないようにするのだという感じは、ソ連とアメリカは危険な状態にはならない、東洋の安定は中国と協力してやる、こういう感じであつた。それが当時の予想と反した国際情勢になつたのは、平たく申してアメリカの国際政局に対する見込違いだと私は思う。その見込違いをしたあとで、今度は日本に向つてこの憲法を、こういう解釈をすればよろしいから、こういうふうに兵力を増強してくれと言われると、日本国民としては、行先変更の通知を全然受けないで、全然前と違う意見が出て来た、こういう感じを受けるのみならず、それが参勤交代のように、日本国民の代表者がワシントンに行つて話をするということについて非常に日本国民は疑念を持つと思うのです。このことを私はよく日本国民に了解させておおきにならないと、日本の識者の中で、アメリカの正しい建国の精神を尊重している人々の中に、この政策に対して、非常な不満を持つ人が殖えて来ることは、今日は弱い日本であり、混乱した日本ですから問題になりませんけれども、これは私は長い将来の、東洋の或いは世界の国際政策の上に、非常に危険な爆弾を仕込むものだと、こういう感じを私は率直に持つておるのであります。私などのことで言いましても、個人ですから、これは大したことはありませんが、政府としてはこの点について、アメリカに対して十分な用意を持つて、本当にアメリカのためを思う人間がそういう心配をしておるのだということを、私はアメリカに言つて頂きたい。曾つて私が向うに行きましたときに、こうやつておくと、必ず日本国民の心理というものは変りますよと申上げたのですが、同じことを私は感じたので、恐らくは今日日本の政府が思つていないほどの厖大な軍備をアメリカが要求しているのだと想像するのであります。そういう要求をもたらすこと自体が非常な災害を生むことと思いますから、私はこの現実のMSAの問題とか、或いは自衛力の漸増の問題だけでなくて、非常に長いこの太平洋の平和とか、日米の国交の進展という上に悪い影を投げる、こう思うのでありまして、私はこの点について外務大臣が万遺憾なきを期して頂きたいということを衷心から思いますので、こういうことを御質問しておるのであります。外務大臣の御感想でもよろしうございますからお伺いしたいと思います。
  171. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私は今の鶴見さんのお話は全く同意見です。又安保条約を作るようなときでも同様のことを私は言いまして、つまり向うは条約を作る、そうすれば独立国になる。占領軍撤退すれば当然日本が自分で守る必要もある、又国際的に言えば義務もあるからという議論に対して、同じようなことを言いました。結局それならば、暫くの間アメリカが責任を持つて日本を預かりましようということになつて、その時期は早く作つてもらいたいということが安保条約の結論であつたと私は考えております。が、この頃も又おつしやるようなことが非常に言われておりまするし、又国民もおつしやるようなふうに感じておる面が非常にあると思います。私どもは今後とも、全く今の御趣旨は同感でありまして、又日米の将来から見ても必要なことでありますから、できる限りそういう趣旨で今後とも強く先方考えを十分まとめてもらうようにいたしたいと思つております。
  172. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 私の質問はこれで終りました。
  173. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちよつとまあほかの、新木大使の申入れの問題に皆さんから御発言があつたのですが、ちよつと今のことに関連してお尋ねいたしたい。今の外務大臣お話を承わつておると、これは外務大臣にお伺いするのはどうかと思いますが、例えば戦力の最終的判定者は誰かという気がするのですが、御答外を承わつてつて自分でこれは戦力に至らない範囲だとやつておればもう際限なしにそれで行ける。戦力の最終的判定者は誰か。これは非常に大きな問題だと思うのですが、誰が最終的に判定するのでしようか。
  174. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私はこれは国民全般だと思うのです。
  175. 羽生三七

    ○羽生三七君 どうもちよつと、それでは国民全般と言つても国民が別に議会に……。国民の代表の議会ということを意味するなら、これも一つの行き方だと思いますが、緒方国務相はさようなことを言つておられましたが、そうでないと、これは政権も代ることがありますが、今の政権がずつと続いている場合には、我々はこれを戦力と見ないのだ、こういう判定を下しておればいつまでもそういうことができる。従つてもう最終的に戦力の判定者が誰かということが一番大事なことであると思います。それからもう一つは、自分は戦力に至らないのだということになれば、戦力に至る範囲はどういうことであるか。戦力に至る範囲というのは、例えば軍で言えば百何十万、空軍で言えばジエツト機何百何十ということになる。無軌道に戦力というふうに言つておるだけではどうも変なことになると思いますが、今の国民という概念をもう少しはつきりしてもらいたい。
  176. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 併しこれは政府が、勿論政府は政府できめます。国会国会考えてきめましよう。併し最終的にはやはり国民の判断ということになつて、国民が例えば政府はごまかしのことをやつておるんだと思えば選挙のときに政府のほうに投票しますまいし、まあこれは憲法の問題として最高裁判所で決定するということもありましようけれども、併し恐らく裁判所の性質から言えば、この何万になれば戦力だという決定はなかなかできないだろうと思います。これは先ほど鶴見さんにお答えしたように、それじやジツエト機を一機持てば戦力だ。ジエツト機さえ持たなければ戦力じやないかというような議論になりますから、大体の常識でこれは戦力だろうというような考えは出て来ましようけれども、びしつと定義を以て何方までは戦力でなく、何万から一人でも超えれば戦力なりという、そういうようなこともできないだろうと思います。従つて結局私はあいまいなようだけれども、国民の判定ということに最後には落ちるのじやないかと思います。
  177. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は今外務大臣が言われたように、ジエツト機を幾つ持てば戦力だ、地上軍なら何十万からだということを常識上考えて、そう杓子定規には参らないということは私も知つています。ただ問題は政府の政治的責任として、今国民が最終的な審判者だと言れて結局議会を通じてということになれば非常にわかつて来ますが、そうでないと全然限界のない無軌道なものになるということを憂うるために、そういうことをお尋ねしたので、常識的に何機からどうこうということを申上げたわけじやないのです。
  178. 曾禰益

    ○曾祢益君 ちよつと今鶴見委員の御質問に対する外務大臣のお答えでは了解できないところがあるのですが、外務大臣はどういう訓令をお出しになつていたか。今のお答えによりますると、東京で会談するということに賛成した。そういうことをまあ訓令によつて新木大使からロバートソン氏に言わした、こういう意味なんですか。それともやはり共同コミユニケの内容を、あれを確認してそうしてそれを基礎としてというか、そういう共同コミユニケの内容に対する政府の意見の開陳を訓令によつてやられたのか、私はこういう程度の訓令のごときは、はつきりと現物をここで委員会にお示し願いたい、さように考えるのですが、訓令の内容についてもつとはつきり御説明を願いたい。
  179. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 訓令の内容は、これはどうもそういうと非常に角が立ちますけれども、行政府として与えられておる権限はあるのです。国会国会の権限は勿論ある。そこで私は内容、そんな中味を言わんとか言うとかいう問題じやなくして、それは行政府でやるべきことだと思います。併しその内容は要するに共同コミユニケをリフアーしまして、その中にある、東京で会談するということについては異存がない、こういう趣旨であります。
  180. 曾禰益

    ○曾祢益君 どうもただリフアーされて、東京で会談を続けるという点だけを賛成せよという訓令を出されたということは、ちよつと常識上受取れないのですが、まあこれは新聞の通信社のあれは全然何ら権威がないからといつて片付けられないのではないか。やはり、今までは成るほど吉田首相の個人的代表という極めて異例な取扱いでやつて来たけれども、これからは正式の政府の代表の会談になる、これがまあ常識であつて、その点はまあ今のあなたと私の質疑で明瞭になつていると思う。その場合に、あれだけはつきりと共同コミユニケというものを出しておきながら、その共同コミユニケは全然参考にもしないで、追認も与えないで、ただ東京で会談をするということを賛成しろという訓令を出したとすれば、これは或る意味で総理吉田茂君の個人的使節のもとで今までやつたことは否認するというような政治的な意味すら持たないとも限らない。そうじやなくて常識的に考えて、まあ今までは個人的なあれでやつたけれども、あれは追認して、併し事後は東京でやる、こういう趣旨の訓令をお出しになつたのではなかろうかと思うので、今も、私も別に裃を着て、アメリカの議会みたいに何でも国政監督権があるから、政府の訓令はここで披瀝しろ、議会の権能にかけていきり立つと言うわけじやありませんが、そこはもう少し常識にあつた御回答があつて然るべきではなかろうかとこう思うのです。
  181. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 曾祢君のおつしやるのもよくわかるし、外務省のやり方としては普通そういうふうになりますが、この共同コミユニケを私も読んで、閣僚ともいろいろ相談したんですが、考え方はこれは今までの政府の考え方と池田君の育つていることは殆んど大差ありません。そこで内容を見てみますると、結局東京で会談するということになつてしまう。従つて少くとも池田君が行つて、こういう話をして共同コミユニケを出しておる。そこでそれに対して政府は全然知らないで何にも関係しないのだ。知らん顔をしておるのも一つの手かも知れませんが、我々はそうじやない。日米関係の今までの緊密さから言つても、こういう共同コミユニケが出た。そこでその中で具体的にあるのは何かと言つた東京で話をするということ。この共同コミユニケをリフアーしまして、東京で話をすることにはいずれも異存がない。こういう趣旨のことを申したのであります。そのほかにはこれにはないのです、中身は。(笑拝)
  182. 曾禰益

    ○曾祢益君 それは中身がないようなコミユニケだつたら、誰も国民も我々も問題にしやしません。だから東京でやるというようなことは、手続的に次の段階としての当然であるけれども、コミユニケの内容がこれだけでほかはないなんということは、これはもう常識的にそういうことはちよつと無理ではないですか。そこで私はなぜその点を詳しく伺うかと言えば、一つは何といつても総理のこれは、あなた直接ではございませんでしようけれども、総理のこの問題に関する説明は、あれは池田君のやられたことは、これは単なる自分の個人的な使節としてやつておることであつて、自分だけを政治的には拘束するという言葉を使つたと思いますけれども、それ以外の何ものもない。私はむしろ、これは一昨日の予算委員会における質疑でございましたか、時間がなかつたので余りその点をはつきり言いませんでしたが、私はこういうことを言つて、更に総理に答弁を促した。総理、一体総理個人の使節なんかということは、実際上考えられない。やつぱり総理大臣というものは一つの公の資格において行動しておられるわけです。だから池田君のやつたことについて一体閣議は、内閣としてはこれを責任を負うのか負わないのか。内閣の責任はどうなんだ。閣議に諮つたのか諮らないのか。こういうことを伺つたんですが、飽くまでまあ総理のことですから例の、ごとくぷんと怒つちまつて、前に言つた通りだというような、要するに個人的な使節だけだということを言われた。それがその十一月の五日ですか、今日は六日ですから十一月の四日ですね、それから間もなく、外務省はいつ発信されたかわからないけれども、殆んどときを同じゆうして外務省から訓令が行つて、そして実質的に池田君のやられたことを追認して、合法化してその事後は東京でやるという訓令を出された。これは実際国会における国会議員の質問に対する総理の答弁としては誠にこれはけしからんことじやないか。かように考えるのです。たしかに単なる特使でないということが、従つてただ吉田個人を拘束するものでなくて、やつぱり政府としてここに一つの責任を追認して、その上に立つて正式の外交交渉に移そうという措置をとつておられるようであります。でありまするから、そういうようないきさつがあるから、私は異例のようでありますけれども、外務大臣としては新聞に出ておるこれに対して如何なる訓令を発せられたのかということを伺つているわけです。
  183. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私は、むしろ若し政府の正式の代表者であるならば池田君の言つたことがそのまま、これは国際条約なら国会承認が要りますが、そうでないものであるならば、そのまま政府の言葉として取らるべきものである。これに対してとにかく東京で話をすることは異議がないということを言いましたのは、つまりその前は本当の何といいますか、パーソナル・エイジエントという意味であるから、国務省では池田君と話したけれども、そういつた、政府がどういうふうに考えているかわからない。そこでこれを見たところが、一向差支えないようであるから関係閣僚とも相談をして、それでは一つ東京で話をしようということだけは、向うへ申入れようというので、これには異議がないということを申入れたわけであります。
  184. 曾禰益

    ○曾祢益君 どうも同じ点をぐるぐる廻りしているようですが、今のお言葉でもわかるように、これは池田君が個人特使として個人的にやつたことを政府が追認したということに受取るほかないと思うのですが、これは先ほどの外務大臣お話だと、これは関係閣僚に相談したと言つておられますけれども、閣議には正式にお諮りになつたかならないか、その点を。
  185. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 閣議のことは、決定したことは官房長官から常に発表しております。これは閣議に諮るべきものでないと思いまして、今までも報告はいろいろ閣議でもいたしますけれども、例えばMSAの交渉にしましても、或いはここにある小麦の買入れ等もありましようけれども、これは関係閣僚で相談をいたして、それでとにかく話をしてみる。或る程度これでまとまりそうになれば、そのときは閣議の承認を得て具体的に進んで行く。今の段階では閣議の承認を受くべき性質のものでないと思つて関係閣僚だけで相談をいたしました。
  186. 曾禰益

    ○曾祢益君 そうするともう一遍伺いますが、共同コミユニケというものは発表前に閣議に諮つたものでない。それから今日あれになつたんですが、つまり外務大臣から新木大使に訓令を出して、これを実質的に追認して、事後は東京の正式外交交渉に移すという、この決定も全然閣議に諮つていない。こういうわけですか。
  187. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) その通りです。
  188. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は只今の外務大臣との質疑応答を通じて、これは少くとも総理大臣としては、非常にこの国会に対しては国会軽視の非常な重大な事例ではないかと思う。確かに池田君は特使として個人的な資格でやられたかも知れない。併しその共同コミユニケを出した後で、国会から共同コミユニケの性質をはつきりせよというのが、言葉が悪いかも知れませんが、追求になつたときには、それはあくまで政府を拘束するものでないと言つておる。そうしてこの頃になつて、今度はそれを追認、池田君の共同コミユニケの内容を追認しておる。それで正式の外交交渉に移すと、こういう措置をとつた、而もその間我々に対しては何一つ釈明も何にもされておらない。これは実際国会に対する非常な軽視の一例であると思うのです。私はこの点は非常に重要な問題だと思いまして、外務大臣の只今の御答弁にはどうもはつきりしておらない。結局これは証拠をお出しにならないからわかりませんけれども、これはどう考えても、私が申上げたように、少くとも国会の追求を受けて、今まで特使で個人的なものであるといつてつたものを、これを正式に政府の追認を与えた。こういうことに私はなろうと思うのでありますが、更にこの内容についてまだいろいろ質問したいこともありまするけれども、一応同僚各位の御質問があると思いまするから、一応これで私は打切ります。あと関連質問等をさして頂きたいと思います。
  189. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 実は外務大臣今四、五分でもつて予算委員会のほうから要求が来ておるので、その範囲内で一つ……。
  190. 杉原荒太

    杉原荒太君 私のは簡単です。今曾祢君が言われたのは私も全然同感で、もともとこの総理大臣の個人的な代表なんというのはあり得べからざることなんで、これは或いはパーソナル・レプレゼンタテイーヴ、パーソナルというのをそういうふうに日本語で言つておられるのかも知れんけれども、個人としてこういう公のことで外国へ行くなんということは問題にならんですよ。問題になるどころじやないですよ。それは知らんのだというふうな、これはもう問題にならんことだと思う。私は初めからそう認定している。今併し私の言わんとする点は、別のところを一つ外務大臣のおられる間に質問したいと思うが、この池田・ロバートソン共同声明について、池田氏が新聞記者などにも非常に自分の努力を大いに語つておる。経済援助の素地をこれで得たんだということを、大新聞などでも経済援助の素地成る、というふうに大きく伝えている。ところがこの内容をよく見ますと、そこに非常に私はミス・リードする。随分国民をして誤解させるものがあるように私は思う。それはよく内容を見て行くというと、MSA法の五百五十条のことに過ぎないんです。つまり余剰農産物の使用のことに過ぎないのだと私は解釈する。この共同声明の内容を見るというと……。ところがこの池田氏の語つた「五百五十条による援助と、防衛支持援助の途を開くことが今度は一番私が関心と努力を払つた点である」とこう語つておるのである。これはむしろ五百五十条による経済援助と防衛支持援助というふうに並べて、借るんじやなくて、努力はそうだつたかも知れんが、やられておるものは五百五十条に過ぎない。このMSAの全体の経過を見ると、あれは私が説明するまでもなく、ほかのいわゆる防衛支持援助とか、或いはミユーチユアルのデイフエンス・ファイナンスとか、経済援助とか技術援助とか、それぞれ一定のきまつたものであつてちやんと法律にそういう条項も違い、又その予算も違い、それから使う条件も違い、すでにきちんときまつた別の枠のものになつて構成されておるわけなんだ。それだからここでいわゆる経済援助の素地成ると言つているけれども、デイフエンス・サポートのない五百五十条に過ぎないと私は思う。これを見ると、どうもそう解釈されるのだが、そうであるかどうかの点だけ一つお尋ねしておきたいと思う。
  191. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 池田君が新聞記者に個人的な会見をしてどう言われたか、又それがどう伝えられたか私からは説明のしようもないのですが、実は正直のところそんな詳しい報告も来ておらないのです。いずれ池田君が来れば、いろいろな点がはつきりすると思いますが、我々のはつきり言えることは、この共同コミユニケでありまして、このコミユニケに従つて我々は考えております。又池田君もこのコミユニケ以外には何ら秘密な文書はないということを報告しておりますので、正直なところコミユニケだけで判断しております。
  192. 杉原荒太

    杉原荒太君 それだからコミユニケについて私も質問しているわけだけれども、コミユニケの中にこうあるのですね。「MSA法の第五百五十条の規定及びこれに関連する防衛支持援助の諸行為に関する必要な諸取極が結ばれることになろう」と、こういうことがある。これはここにわざわざ防衛支持というようなことが入つて来るから、非常にどうかするというと、これがいわゆる経済援助だという広い意味のことというふうにとられるかも知れん。ここに書いてあることでも、「五百五十条及びこれに関連する」と、こう書いてあるから、それだからここに至つてコミユニケ自体は必ずしも私は誇張しては書いてないと思う。併し余り池田氏の話なぞと結び付けるというと、ここで非常にいわゆる経済援助の素地成るというふうに、堂々たる大新聞でもそういう見出しをつけて報道するように伝えられておるわけなんだが、これは個々の内容は、言うように五百五十条の余剰農産物の使用以外の経済援助は含まれていないわけでしよう。共同コミユニケにある今の私の読んだ事柄は……。
  193. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これはどうも五百五十条によるコミユニケの売上代金の使用の問題であつてその使用が現実的には防衛支持と同じような使途にされるという意味じやないかと思いますが、これらもやはりこちらで交渉して見ないとはつきりはわからないと思います。
  194. 曾禰益

    ○曾祢益君 議事進行について。どういうふうになさいますか。外務大臣これから……。
  195. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) これから外務大臣の都合は、今予算委員会のほうから要求が来ております。(「こつちも今まで待つたんですからね」と呼ぶ者あり)五分ばかりの間に亀田君の質問があるから、そちらに廻つて頂きたいということです。それで予算委員会のほうのスケジユールを見ますと、亀田君の持ち時間が二十分、これに対する大臣の答弁はどれくらいかかるか知れませんけれども、まあその倍として四十分、一時間以内には大臣が又おあきになるだろうと想像する。
  196. 曾禰益

    ○曾祢益君 それじや続けてやりますか。
  197. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 皆さんがたの御希望によつて……。
  198. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 まだ残つておるのです。
  199. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それじやそのあとでもう一度外務大臣に来て頂くと、そういうことにいたしますか。それではこのまま休憩するということにいたします。    午後五時九分休憩    —————・—————    午後六時三十一分開会
  200. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは外務委員会を再開いたします。
  201. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 先ほどの鶴見委員その他の質問に対して外務大臣は、同意したのは、あの共同声明の内容そのものではなくして、東京で会談を開くということについて同意の意向を伝達したんだというお話でありましたが、我々が今新聞の電報その他で見たところによると、新木駐米大使はロバートソン国務次官補に対して、池田・ロバートソン会談の成果をまとめた日米共同声明の内容に、日本政府は同意する旨の日本政府の意向を伝達した、という電文になつているのですが、先ほどの御説明から言うと、これは明らかに誤報であるというふうにはつきり否定をされるのかどうか、その点を伺いたいと思います。
  202. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私どもの申しておるのは、東京話合をするということについて異議はないということであります。実際上この共同声明を御覧になればわかりますが、池田君の述べておることについては、考え方は私が先ほど申した通り今までの我々の考え方と殆んど違つておりません。殆んどと言うか全然同じと言つていいくらいであります。ただこの中身は両方の意見が書いてある点が多くて、その同意を与えるとか与えないとかという問題にならないのであります。要するに結論は東京で話をする、それが具体的なこれは措置になるのでありまして、それ以外に考え方が違つておればこれは指摘しなければいけませんが、池田君の言つておることはこの共同コミユニケに表われておる範囲においてちつとも我々の考え方と違つておりません。おりませんが、それを違つておるとか合つておるとかいうことも大して意味がないことであつて要するに話合い、この趣旨も結論が出ておるのではなくて、意見の何と言いますか、相互の意見の打診であるということになつておりまして、中身もそういう趣旨でありますから、結局その相互の意見の打診はこの発表でわかつておる。そこで具体的な結論は東京話合をする、こういうことになると思います。
  203. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、東京で会談をして話合をされるという題目はどういうことなんですか、正確に言えば。
  204. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) まあこれは共同コミユニケについて申しますと、それは東京でいろいろな話はしましようが、これについて申せば大体MSAの受入に関連して防備計画というものができればそれに入りましよう。それから第二はMSAではあるが、五百五十条の……。これはちよつと別ですが小麦の問題、それからガリオアの問題、それから中共貿易の問題、こういう種類の問題であります。
  205. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今おつしやつたようないろいろな題目がある思うのですが、防衛計画についてはこの共同声明文から我々が読み得るのは、日本の防衛力及び米国の軍事援助に関する諸問題については、具体的な了解に達する目的を以て近く東京において両国政府の代表が更に協議を行うことになつた。で問題はもう方針なり大要は一応両者のこれまでの池田・ロバートソン会談で一般的な了解に到達したので、今度東京で論議をするのは具体的な了解に達する目的を以て協議されることであるということを主張をしておると思うのです。そうだとすればそれが残されておる問題であつて、それ以前のそこで謳われておることは、すでに一般的な了解として池田・ロバートソン会談で取りつけられた了解であり、それを一応そのまま受けたということでなければ、仮に東京会談に応ずるという返事を出されたつて、すでにその前提になつておるものは受入れたんだということを予定しておられると思うのですが、その点はどうなんですか。
  206. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは今申しました通り、例えば日本の防衛に十分な自衛力の増強を図ることができない。憲法上或いは経済上、予算上その他の制約があつてすぐにはできない。これも日本は始終言つておることです。これらの制約を日本側としては考慮しつつ今後とも自衛力の増強を促進するために交渉を続ける、これも国会でも始終言つておるのです。米国はこれに対して米国議会の承認を条件として日本の陸海空の部隊の装備に要する所要品目を提供し、その編成を援助すべきである、これはMSAを交渉した当初から当然のことであります。だからこの内容について別にどこがけしからんとか、どこが政府として反対だということはありませんけれども、これは共同声明を非常に軽く取扱うように思われても……。折角の声明を何か値打がないように言うわけじやありませんけれども、実はこれは国会でも始終政府の方針として説明していることなんであります。  そこで結局この結論としては、そういう前提の下に今おつしやつたようた防衛力と軍事援助の諸問題、要するにこれは保安庁で以てどれだけの防衛計画を作るか、これに基いてどれだけの援助をやつておるか、こういう具体的な問題ですが、昨日でしたか大よそ説明いたしました通り、土管ができている、この中に何が流れるかという問題が残されている、それを東京でやる、これは当然のことと私は考えております。
  207. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 池田・ロバートソン会談で相互に取りつけた了解の限りにおいては、すでに向うで新らしく取りつけられた了解ではなくて、すでに東京会談において、或いはその以前から政府が主張をしていたことなんだというふうなお話なんですが、併しそれじや今まで政府は東京会談においてそういう問題について、日本の防衛力の問題等々について、例えば数量的にいつてどうだとか、或いは援助の額についてどうであるとか、或いは日本側でなくてアメリカ側は日本に対してどういう総額、数量の防衛力を必要と考えるというような点にまで入つて論議をされたのかどうか、或いはすでに論議をされた上に了解に達しておられたのかどうか、その点はどうですか。
  208. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) それはまだ達しておりません。まだそこまでの具体的論議には入つておりません。
  209. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると問題になると思うのですが、この共同声明はそういうことをいろいろ話合をして、そしてまとまつたことだけをここで一応文章にして書いて出してある。而ももう一つの会談成果を要約した草案の要旨、日本側の議事録要旨というものには、日本は五カ年間に十八万に増強をするという数字を出された。それは数字はそこには書いてありませんが、とにかく数字を提示されたことははつきり明瞭にここに書いてある。それから又アメリカ側の草案によれば、アメリカ側はさつき鶴見委員も御指摘になつたように、三十二万五千ですか、三十五万を極東の戦略態勢から必要とするということを強調をしたということもちやんと記録に出ておる。そうするとそれらの問題をすでに論議をして、そうして而もその論議の結果、ここに出ているような結論が一応了解なつたということなんで、そういうことはすでに池田特使が向うで話合うまでもなく政府のほうでは話していたんだというふうに言われるのかどうか。今までは内容の問題は具体的には何ら協議もしていない、話も出ていないというのが、我々が総理或いは外務大臣に聞かされた報告であります。
  210. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 池田君の報告によりますと、これ以外の秘密文書等は一切ないということであります。いろいろ話はしたかも知れません。併しそういう私はその新聞報道なるものは余り信じませんが、仮に今御指摘のような話合があつたとして、佐多君は一体それによつて何か了解に到達したとおつしやるのじやないでしよう。やはり意見の交換なんだろうと思う。従つてそれをどつちも拘束するわけはないのであつて、これは仮定の問題で議論になりますから余り言いませんが、要するに正確なものは、我々の新木大使に対する訓令も、この共同声明に基いてこの東京において話をするということについて異存がない、こういうことを申したわけであります。
  211. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それは外務大臣が言われる通りに最終的な具体的な了解に達しなかつたから、更に具体的な了解に達するために東京に会談を移されたのである。併しその前には今申上げたようなことが具体的に議論になつて、そうして方針としては今言つたように日本は自衛力を強化する必要がある。それからそれにはいろいろな制約があつて、アメリカが主張をしているような三十五万幾らというようなことはなかなか受けられない等々のこと、一応否定の部分だけは具体的な了解ができていると思うのです。五カ年十八万では不十分だという了解、或いは三十五万五カ年では過大だという了解、それらは前後の関係その他から了解ができている。ただそれならば更に具体的にどれだけにきめるかという問題が残されておるのでありまして、東京会談に移すということなのかどうか、その点はどうなんですか。
  212. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) それはお断りしておきますが、報道は私は信じませんから報道に基いて議論するのは好みませんが、少くとも佐多君も常識でお考えになつておわかりだろうと思いますが、予算をこれから今作ろうというところであつて、これはいずれ池田君の仮に何か言つたとしても今年今からこれをやろうというのじやないでしよう。恐らく来年度予算にその一部が盛られるということなんでしようが、予算が今作られようとするときであつて、まだこれは大蔵省でいろいろ予算討議をやつておれば、大体どのくらいの費目がどのくらい要るなんということは大体きまれば、正確なものは別として新聞にも随分出るのが従来の習わしでありますが、今誰が幾ら大蔵省を突ついたつて、それじや来年の保安庁費として幾らきめたということは出ておりません。実際まだそういう具体的な数字まで行つていないのであります。それを池田君のような大蔵大臣を長くやつた人が、一体来年度の予算もきまつておらないときに、何万はふやせるのだ、何万以上はふやせないのだとか、それは仮に三十何方と言われたことは多いと言われるでしようけれども、例えば十八万ならふやせるというようなことは又実際言えないでしようし、又いわんやあなたのおつしやるような十八万じや少いが三十何万じや多いなんというように相互の了解に達したということは、これは私は到底あり得ないと思います。そんなことは池田君が帰つて来て実際上聞くまでもなく間違いであり、若しそういうことを聞くことがありとしても、私はそんなことは書いてないと思いますけれども、日本側が十八万じや少いということは認める、アメリカ側は三十何方じや多いということは認める、そんなことは私はないと思う。
  213. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 アメリカ側の併し覚書のほうには三十五万を主張したが、それが過大だというふうに日本は答弁したということを言つていますね。
  214. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私はそれは知りませんよ。それはどこの一体発表になるものか、そんなものは見ませんがね。どういう発表のものですか。
  215. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 アメリカ側の会談の議事録草案なるものには、アメリカが極東戦略態勢からいつて、三十二万五千なり三十五万が必要であることを強調したということは書いてありますね。これは併しそんなものはありもしないのだし、そんなことは関知しないと言われるならばそれはそれまでですよ。
  216. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 少くとも今御質問の点は新木大使の新聞に発表された点だろうと思いますが、これは繰返して言いますが、共同声明の中の東京話合を開く、そこで更に交渉を続ける、こういう点について申したのであつて、共同声明以外の何か議事録とか提案とかそういうものは一切考慮いたしておりません。これははつきり申上げます。
  217. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いやその考慮していないと言われるのですがね。併し今まで新聞ではたびたび会談においてそういうことが論ぜられているということが、何遍も繰返し繰返し報道をされている。或いは更に最終の段階になると両国側の草案なんかでは数字も挙げて明示しておる。で、なお且つそういうのが土台になつて日本の防衛力を強化する必要があるのだとか、或いは日本の防衛に十分な兵力の増強を図ることは許されないのだとか等々の文句が出て来ているのだ。それなしにただ今まで政府が安保条約をきめられた頃に考えておられたようなことを言つて、それが相互の了解に達したと言つて、今更ここにれいれいしく共同声明として出されるはずもないし、だからそういうことは全然なかつたのだと、そうしてそういう草案なんかも知りもしないと言われるのならば、もうこれ以上私は質問をいたしません。併し私はそれならば、そういう問題はあちらで実際は論議をしておられながら、池田代表の資格その他の問題に関連して、或いは今の政府がやろうとしている秘密外交なり、国民には知らさないで先ず向うでそういう問題をいろいろ具体的に論議して、それをこつちに押付けるというやり方をやつておられるので、そういうことがフランクに話せないのだと、こうも逆に主張せざるを得ないようなことになつちやう。
  218. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私も池田君がこの共同コミユニケに発表されておるこれだけの問題、全然これ以外のことを話さないで何時間も何時間もアメリカの当局と会見をやつたとは考えない。だからいろいろな問題も話すでしようし、更にこれ以上の突込んだ話もしたかも知れない。したかも知れませんが、それは只今のところ政府としては知らないことなんだ、池田君がいずれ帰つて来ればこれは詳細に報告もありましよう。今月半ば前後に帰つて来るという電報もありますからそう遅いことでもありますまいが、そのときはいろいろ聞いてみましようが、少くとも池田君が政府の代りになつてこういう約束をしたとか、こういう取極めをしたということはこれは絶対にあり得ないことを私は明言いたします。それからなお新聞に報道していることを私は決してこれは間違いだとは申しませんが、私自身の最近の経験によりますと、フイリピンに行きまして話をするまだその前に、東京で確かに私がフイリピン政府に対して数は忘れましたが何億、そしてついでにインドネシアには何億、ビルマには何億、総額何億だという予定であつて、フイリピンにその額を言つたということが、私が会見する前にどうも新聞には伝えられていたように思います。その後フイリピンに何億、インドネシアに何億、ビルマに何億といつたふうのことは、だんだん私の話合の様子で具体的数字は言わなかつたらしいというような報道もありましたけれども、とかくこういうものはニユース・バリユーのかなりあるものですから、強調して大きく報道される場合もありがちだとは思います。併し今申した通り池田君がこれだけ、これ以外に何も話さないとは決して言つていない。それは突込んで話したこともありましよう、又これ以外にもいろいろありましようけれども、少くとも政府を拘束するようなことは一切ないということは私ははつきり申上げます。そうしてこの共同コミユニケを見まして、我々のほうとしては東京話合を続けるに適当であると考えましたから、改めてこういう問題について東京で話すことは、これは異議ないのだという趣旨をアメリカに通じたのであります。事実この共同声明の中には、このほかに何かあつてそれをお前は隠しているのだと言われればそれまでですけれども、この共同声明の中には、又新木大使が申しましたのは、共同声明についてでありますが、この中には考え方としては、我々も随分同意なこともありますけれども、併しどこを見たつてこれで東京で話をするかしないかということを除きますと、政府を拘束されるような問題は殆んどないのであります。中身を御覧になればはつきりわかりますが、例えば五千万ドルの小麦を買うということも、買うという約束はいたしておらないので五千万ドルを目途とすることが適当であるということに、この会談としても両者の意見が一致を見た、こういうことであります。今後これを五千万ドルがいいのか、三千万ドルがいいのか又条件はどうであるか、これはすべて東京話合わなければきまらない問題であります。そういう趣旨で東京でこれから話合をいたそう、こういうことなのであります。
  219. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いやだから私も池田特使が、例えば兵力量の問題を三カ年間に十八万とか十六万とかいうようなものを向うときめて来たとか、或いは軍事援助の貸与金額を幾ら幾らに大体きめて来て了解を取付けて来たということがあつたなどということは、毛頭言つていないのであります。併し池田特使はこの共同声明から見れば方針的なものだと言われますが、かなりこの案文から見る限りは具体的な了解に、この数額その他に到達する前提条件、方針としては一応到達して来たと見るべきじやないのか。そうしていやその程度のことならば外務大臣は、すでに我我が東京会談或いはその以前からも話合つていることなんだ、こうおつしやるのだけれども、それならば、今まではそういう問題については何ら話合つたこともないし、触れてもいないのだ、MSA援助の交渉にしても、ただ土管の問題を協議したのだと言われていたことと非常に言明が違つて来ておる。こう考えるからこの点を特にしつこくお尋ねしておるわけです。
  220. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) その御趣旨はわかりましたが、そこでただそういう議論をしていても仕方がないので、一体どこが今まで国会に言わなかつた点であるか、それを御指摘なさつたら御説明しましよう。
  221. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それじやアメリカ側は具体的にこの兵力量を提示してアメリカ側の見るところではこれだけが必要なんだということは話合はされなかつたのでしようか。
  222. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 今あなたのおつしやるのは、この共同声明の中に相当具体的に今までMSA等で話合をしていない点があるから、それをどうしたのだとおつしやるので、この共同声明の中で一つどこが一体国会等で我々の言わないところがあるか、それを御指摘願いたい。
  223. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならば、その問題は従つて直ちに日本の防衛に十分な自衛力の増強を図ることは許されないことが認められた、この点は私は察するに、向うが三十五万説或いは三十二万五千説というのを出してそれは達せられないということの了解に到達したというふうなことをただ文章で示しているのじやないか。そういうことはすでに政府としてはもう同意をしていたのだとさつきから言われる。それならばそういう兵力量の問題等々を論議されたのかどうか。
  224. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) それは少し御無理なことだと思うのです。ここの共同声明にはこの経済上、憲法上いろいろな制約があるということは言つておる。それだからアメリカの言う数は無理なんだということを了解したとは書いてないのです。こういう制約があつて思うようにできないのだということを話をしてこれは認められたとこう書いてある。それに何かこう書いてあるからアメリカのほうで何万とか言つて、それは無理だと言つたのだとおつしやるなら、これは少し無理だと思うのです。そのおつしやり方が。
  225. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 申上げますが、実は予算委員会のほうから催促が来ておりますから、それを一つお含みの上でどうぞ。
  226. 曾禰益

    ○曾祢益君 私先ほどのあれを繰返すようですけれども、今佐多委員も言われましたように、どうも新木大使の何と言いますか、言動に関する新聞報道と申しますか、これは先ほど私が余りよく知らなかつたのですが、その後の情報によれば正式に新聞会見をやられての話だ。従つてまあそう言つては失礼ですけれども、まあ間違いや観測記事とかというものじやないと、こういうふうに考える。そこで新木大使の新聞記者会見の話によると、これは明瞭に佐多君も指摘されたように、確かに共同コミニケそのものに、訓令によつて同意を与えたのだ。なお或る報道によればそのことは国会で、日本国会のことです、勿論相当論議が出るかも知れないけれども、政府の訓令だから私はそれを同意するということを向うに伝えたまでだ、というような報道すら伝わつておる。従つてこれはいろいろまあおつしやつておりますけれども、確かに政府の訓令によつてまあ共同コミユニケを、或いはその内容全体に対して政府が同意を与えろという訓令を手交したものだ、かようにどうしても考えられるのですが、その点をもう一遍おつしやつて頂きたい。  なおまあこれは言葉尻をとらえるわけじやないのですが、先ほどは東京で会談をするということが内容であるというふうに言われておりまするが、先ほどのあなたのお言葉の中に、共同声明に基いてということを言つておられる。共同声明に基いて会談を東京でやる、これだつたら共同声明そのものに政府としての追認を与えるという効果は、これは当然であると思うのです。従つてもう一遍この点をはつきりして頂きたい。
  227. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私の考えでは、今繰返して申しておる通り、共同声明の中にも盛られておる池田君の考え方については、政府としては別に異議をさしはさむものではないのです。私はこの考え方でいいと思います。この考え方はただ池田君が向うに話しただけで、向うが了承したという点はありましようが、だからその考え方を話し、又アメリカ側もアメリカ側の考え方を話した。それがきちんと合うか合わないかは今後の交渉によるものであつて、ここで合つたというものではない。というのはそこで初めに何とか双方の意向の打診を、何かエキスプロラトリーのものであるということになつておる。従つて私はこれは怪しからんということは決して言つておらない。内閣の意見は怪しからんということは言つておらんのです。この内容は結局東京会談で行うより具体的にならないのであつて、コミユニケの要旨というものは、政府が取上げて措置する部分は、東京会談をやるかやらないか、こういうことになるのです。結局この池田君の声明があつて東京会談はやりたくない、そういうこともありますまいが、理論的にはそういうことも有り得るまでです。そこで私の言葉は正確でなかつたかも知れませんが、池田君の話があつたから東京会談ということができたのであります。従つてこの共同声明に基いてと言つては正確ではないかも知れませんが、要するに共同声明ではこの東京会談をやることに異存がないということを申しておる。この中身が政府の考えと違つておるということを言つておるわけではありません。これを追認するとかしないという問題ではないと思う、中身は。
  228. 曾禰益

    ○曾祢益君 同意を与えるということを言つておるわけですが、同意を与えるという以上は少くともアメリカ側から、これでいいのか、今まで特使、プライベートですか、パーソナル・リプレゼンタチヴという名前でやつて来たが、政府はこれを大体承認するのかどうかという向うからの問合せ乃至要求があつたのか。それともそうでなくて政府としては今まで個人特使でやつていたのだけれども、これをやはり公けに認めるという意味で同意を与えるという言葉を使われたのか、その点はどうなんですか。
  229. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) アメリカ側からは何もこちらから言つてやる前にはもう全然ありませんでした。こちらから進んでやつたわけであります。
  230. 曾禰益

    ○曾祢益君 非常にくどいようですが、これは今非常に問題になつておるのです。本院におきましても実は議院運営委員会におきまして、これは重大な事件だから緊急質問を総理及び外務大臣に本会議でやろうという或る会派からの申出があるわけですが、それに対してこれは直接に官房長官の話ではなかつたようですが、与党の議運の委員のかたが官房長官に聞いたら、これはもう政府が同意を与えたということは誤報であるということをはつきり聞いて来た、ということで議連においては誤報であるならば、これはどうもしようがないだろうということになつておるようです。従つてこれは本院の議事にも関連して来る問題なんで、従つて誤報という意味は、正確に言えば政府、あなたのほうから訓令されて、共同コミユニケに対して政府の訓令によつてこれに同意を与えた、その同意の中には勿論東京で会談を続けてやろうという意味もありましよう。そういつたこともありましようし、共同コミユニケの内容は、実質的にあなたの言われるところによれば政府の考えと違わないのだからという意味もありましようが、これを簡単に追認とか承認とか言つておる、そういうことを含めて外務大臣は官房長官のこれは伝え聞きであるが誤電であるということを承認されるのかどうかということをはつきり伺つておきたい。
  231. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私は官房長官とは実は委員会に出ていたものだから連絡がとれないので知りませんが、恐らく東京で話をするということは官房長官も知つておると思うのです。同意を与えたというので、違う問題になつたからそんなことは行いのだと、こう言つたのだと思いますが、これは確かめないとわからないと思います。
  232. 曾禰益

    ○曾祢益君 それは半分の御回答なんですが、そうするとあなたは新木大使が、とにかく分けの新聞会見において、政府の訓令によつて共同コミユニケに同意を与えた、これを外務大臣としては否認されますか。
  233. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) それは否認と言つては非常に角が立ちますが、新木大使も恐らく共同コミユニケのエツセンスというものは、東京で会談するということになるから、それを東京で会談することに同意をしたということを、或いは言葉の表現で共同コミユニケに同意したと言つたか、或いは新木大使は東京で会談すると言つたことを聞いたほうの記者が、これはそうすれば共同コミユニケに同意したとこう思つたのか、それはわかりませんが、要するに趣旨、エツセンスは東京で会談するということに対して政府は異存がない、こういう趣旨を伝えたのであります。
  234. 曾禰益

    ○曾祢益君 これはどうも常識的には新木さんがそれほどもののわからない人でもないと思うのです。だから先ほども私が引用した電報によれば、国会で相当問題になるだろうが、とにかく同意を政府の訓令によつて与えたということは、東京で会談をやるということは国会で問題になりはせんですよ。むしろああいう所で闇みたいに話をしておるということが、新木さんがそんなことを言われたということが問題になつて、共同コミユニケの裏書きをしておる。これは相当問題になるだろう。今まで個人の資格でやつていたのにそれを追認するのは、その効果を言われておるのじやないかと思います。その点はあなたは否認されるわけですね。
  235. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私はこの共同コミユニケを追認するとか、曾祢委員の言われるように重要視しておられるのはよくわかりませんが、この共同コミユニケの結論は追認しておる。一番大事なことは東京でやるということは、これはもうはつきり言つておるのです。
  236. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 如何でしよう。実は予算委員会で木村禧八郎君がすでに質問を始めておるのだそうでして、先ほどから外務大臣を要求して参つております。而して木村君の持時間は十分ですから質問は直ぐ済むのだろうと思います。それから一時間くらい外務大臣はお空きになるはずです。
  237. 曾禰益

    ○曾祢益君 それは続けてやらせて頂ければ結構です、今十分なり十五分なり、今折角佳境に入つたところだからこれをやめるわけに参りません。
  238. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは又あとで続けることにして……ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  239. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記を始めて下さい。
  240. 曾禰益

    ○曾祢益君 どうもあなたはやはり大使のとられた措置に対してはつきりした態度をお示しにならないで、非常に要領よく、政府は東京会談ということだけが内容であるがごとく言つておられましたが、併しやはりここにはつきりして頂かなければならないのは、これは共同コミユニケに対する同意と言つたことは、これはその点は訂正を要する、こういうことですわ。
  241. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 若し新木大使がそう言つたらこれは訂正を要すると思います。私は先ほども繰返したように、共同コミユニケに書いてある思想に対して、反対であるとか何とかということじやないのです。ただ同意を与えるとか何とかいう種類のものでないと思うから、又実際上慣例はそうなつておるから、正直に申上げておる。或いはやり方としてはあれは同意を与えて東京会談も同意をすべきものであると言われるかも知れませんけれども、実際上は東京会談をやるということだけがエッセンスだと思つたので、そういう種類のことを言つたんです。
  242. 曾禰益

    ○曾祢益君 どうもそうなると、こういう重大な問題で外務大臣の気持と、それから出先の大使の気持とがかくも大きく食い違いがあるということは、これは相当重大なことで、新木大使はこれは殆んど任に堪えないことになりますが、それでもかまいませんか。
  243. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは新木大使がそういうふうに誤解をしたか、新聞のほうで何か誤解をしたかまだわかりませんし、それからこれは表現の方法なんであつて、私も実際上中身に反対だというわけじやないのですが、要するに結局どう考えつて、結論は東京で話をするかしないかという問題に過ぎないと思うのです。
  244. 曾禰益

    ○曾祢益君 それでは先ほど本院で問題になりましたこれは誤報だということになりますか、全体としてこの新聞報道は……。
  245. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私は誤報だとか何とかということは言いたくないのです。要するに共同コミユニケの趣旨というものは、東京会談をやつて、こういうような問題の話を具体的に進めるということだと思うのです。そこで東京会談をやるということなんですから、そして中身にも反対はないのですから、どこがけしからんかよくわからないのだが、要するにそれだけのことだと思うのですが……。
  246. 曾禰益

    ○曾祢益君 それが問題になつているのです。だから誤報ならば誤報という取扱いをしなければならないし、これは議運の関係だと言えばそれまでですけれども、全体的な誤報でなければ、これは事重大であるから、緊急質問という意見が出ているわけなんです。だからその点を伺つたわけですが、むしろ私はそういう意味におきましてはその点はもう打切りたいと思うのですが、この意味におきましては、これははつきりした誤報でもない、半分は真実であるけれども、どうも外務大臣の意向と大使の新聞会見において話したことの新聞報道との間に間違いがある、全面的には新聞報道は外務大臣の気持に合つていない、こういう状態のように伺うわけです。それならばこの問題については、当然に本会議等において質問等をする価値のある問題だと思いまするが、それはここの議題じやないわけですから、むしろ外務大臣或いは総理大臣がこの間からの池田特使の資格等に関連するいろいろな質問があつたのですから、むしろ進んで明日の本会議等においてこの点について説明をされるというお気持があるかどうか、これを伺いたいと思います。
  247. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは説明をするかしないかということになりますと、私自身ではもうこれだけここで申上げておるので、担当の外務委員会説明をすれば十分だと思いますが、これは各党の意見もありましようし、運営委員会のお考えもありましようけれども、ここで気持があるかとかないかとかいうことは差控えますが、なお、新木大使のほうにはどういうふうに言つたか問合せております。
  248. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは御確答を求めるのは、今おつしやつたように困難でありましようが、一つ研究して至急明日までに政府の態度をきめて頂きたいと思いますが、これは本会議等で進んで御説明なさるほうがいいんではないかという意見だけを申上げておきたいと思います。  それからまあこれもあなたから見れば、形式論だということになるかも知れませんが、大体内容的に政府の考えておることと変らない、こういうお話でありまするから、その言葉自身が実は実質的にこれは内容の承認になるわけなんです。従つてこの文章が内容的に今後の交渉を拘束するのかしないのか。あなたはしばしばこれで何もきまつていないじやないか、すべては東京会談に移されたように言つておられるけれども、併し相当重要なことがここできまつているわけです。例えば今までは何と言われても、安保条約があるから、まあ暫くの間は、日本はいわゆる間接侵略に対しては保安隊的なものでやつて行くという方針であつたけれども、最近政府はいつの間にかその方針を変えられたようですが、国会等に対してはそういう方針の重大なる変化について何ら話されなかつた。で、コミユニケによるとアメリカ軍隊が撤退する、それでそれに対応していわゆる自衛軍を増強するんだ。これはもう確かに今までの方針から言えば相当大きな飛躍ですよ。従つてそういう点が内容的にも政府の考えと同じであるとすれば、これは相当大きなことであるし、その他ガリオアの問題についても、少くとも東京で話をやろうということを事実約束して来ていることなんだし、その他中共貿易の問題につきましても、これは一つの方向をはつきりと約束したようなものになつているわけなんです。外資導入の法令の緩和等についても、成るほど文句はまあ会談に立会つた者はこういう意見であると言つても、これは確かに日本政府側、或いは日本総理の代表として一つの方向を約束して来ておる。そうなつてみると一体これらの内容は、あなたの論理はどつちでもいい、政府の考えておると同じことなんだから、別に形式的にこれは拘束しないと言われておるが、実質論としてはこの盛られた内容が政府の態度であり、それが政府を拘束する一種の、外に対しても内に対しても、そういう効力を持つて来た段階にこれは明白に来ておる。そういう意味において共同コミユニケの内容は政府の今後の交渉を拘束するものであるか、この点をはつきりおつしやつて頂きたい。
  249. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは前国会の議事録を御覧になれば、よくわかりますが、木村保安庁長官は、前国会においても、直接侵略に対抗するように保安庁法を改正しようと考えておるということを言明しております。で、池田特使が行つてから始まつたことじやありませんし、池田特使の話合いの前にも、この国会の前にも、木村長官は新聞会見でありましたかでそういう意味のことを言つておられます。これも今始つたことじやありませんし、又アメリカ軍撤退したいという希望があつて、これは政府側にも言つておるということは、この前の国会でも言明しております。総理自身も言つておる。又それにつれて成る程度の増強、漸増計画ということも考えなければならんということも言つております。ガリオアにつきましては、東京で会談するということについては、これは新らしくお聞きになつたかも知れませんが、この問題については、政府は債務と心得ておるということは発表しておる。そこでいつまでも債務と心得ておつてその中身が全然きまらないとすると、将来の負担行為もわからないということになりますから、東京で会談することには政府としても異存はないし、又その準備も実は前から、この前に四千何百万ドルですかの対米債権という問題があつた当時も、なぜ一体ガリオアをぐずぐずしておるのだという意見もありましたが、これも併し期日をいつやるということは勿論きめておりません。いつから話をするかということはきめておりません。中共貿易につきましても、これは重要なことで断りますから、形式的でない、本格的にはこれはパリの会議できまることでありましようけれども、その前にアメリカその他主要国と日本が緊密に連絡するということも、これは私はよろしいと思つております。それからこれは政府として、しばしば外資導入につれていろいろな措置をしなければならんということは言つておりまして、これも異存はないことですが、これをどういうふうにするかということは、勿論今後の研究の題目でありますが、これは特に東京の会談ということには入つておらない。政府の考え方、政府がきめてやるということになりましようが、アメリカと相談することの部類に入りますまいかと思つております。従つて私は思想的には、これはあなたがたは別として、政府としては特に問題とすべきものはないと思いますが、併しこういう意見の開陳をやつたものを追認するとかしないとかいうことは、私にはどうもその必要がわからないので、追認したことになるかどうかわかりませんが、要するにその問題については東京話合いをしよう、こういうことでありました。
  250. 曾禰益

    ○曾祢益君 長くなるから成るべく簡単にしたいのですが、幾ら論議してもこれは堂々廻りみたいになつちやつたのですが、大体今のお話によりますと、一々私は反駁すれば限りがないのですが、籔から棒にこういうふうに態度が変つたのじやないという御説明のようですが、併しこれは発展的に変つておると思いますし、アメリカ等の話合いによつてその点が明らかにされたということは、単に国内的に政府の説明された方針というものとは又違つた内容になつて来ることは当然のことなんです。そこで問題は、これを追認するとかしないとかいう形式じやなくて、又拘束力を持つとか持たないとかいう議論についても、勿論私は主張は持つておりますけれども、今や国会の末期になつて、そうして実質的にはここに響いてあることは、政府の方針と違いない。どこが悪いのだ、併しこれは確定していないのだから、あと東京会談だからと、こういうことを言つておられることになるわけなんです。若しそういうことになれば、今まではあれは特使の個人的なものであつて、何ら政府が関知しないという態度であつて、今日ここに至つて、確かにこの内容は政府の従来の考え方からは私は相当飛躍しておる点もあるかと思いますけれども、それは別として、現在の政府の考え方と実質的に同じだということを言つておられる。それならば、我我議会を開いておる限りにおいては、現にこの委員会でも一々この内容について、詳細に御質問をし、そうしてもつと討議しなければならん。私はその内容には今触れていない。内容に関する意見はいろいろございますけれども、併しそういう討議の当然の機会を何かはぐらかすようなやり方は、これは私はどうも議会に対する尊重ではないと思うのでありまするから、私は同僚委員のお気持等によつて、この委員会会としてこれをどうするかということは、今後の問題ですが、例えば委員会は、今日も明日もこれらの内容に関する問題について論議する、或いは予算委員会会であろうと、本会議であろと……。今やこのコミユニケの内容が政府の考えと大体同じである。追認とか正式の拘束力ということはないにしても、そういう御発言の内容になるのですから、それならば当然そういうことを論議をするだけの重要性を持つて来たということになると思う。これは私は間違いないと思います。でありますから、例えば形式論から言つても、これはあの会見の内容として新聞が伝えたところと大臣の気持が違つている。これだけでも当然これは大きな問題です。而も内容的に政府の考えはこれと大体即応しているというなら、今度は内容に関する論議をやろうという……、これは私は当然だと思う。でありますから、今日の委員会はどうするかは別として、私は個人的に当然明日中にでも総理大臣外務大臣等が本会議において御説明になるのは当然だと思う。そういう観点からもう一遍お話を願つて、若し委員会が内容について論議するというのなら、私はその内容の論議については、私の権利を留保しておきまして、一応私の質問を終りたいと思います。
  251. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ここでお諮り申上げまするが、予算委員会は七時半かつきりに始めるそうでございます。そうして木村委員の持ち時間はあと五分残つておるというくらいに、向うも切り詰めてくれて、我々のほうが外務大臣の出席を得たということになつておるようです。でありますからこれ以上この段階においては、外務大臣に対する質問を続行するということは、これは遠慮しなければならないと用いますので、皆さんがたまだ質問がお残りであれば、又そのあとでお願いをするということになりましようが、とにかく外務大臣には一応あちらに帰つて頂くということになると存じますが、(「異議なし」と呼ぶ者あり)つきましては外務大臣がお立ちになりましたあとで、この委員会をどうするかということについて皆さんがたと御相談して、又お出を願うようでございましたら、三度も御足労を願うようで甚だ恐縮でありますがお願いしなければならんと思います。それでは、速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  252. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それじや速記をつけて下さい。では池田・ロバートソン共同コミユニケに関する外務大臣に対しての質問は、本日はこれで打切るということに皆さん方のお話合いが成り立つたように思いますのてれ本日はこれでその問題は終了いたします。但し明日は国際情勢に関する調査を議題として外務委員会は十時に招集しておくということに、これ又皆さん方の御同意を以て決定いたします。  続いて佐多委員から学術会議の会員のソ連学術視察の件と申しますか、モスクワで学術会議があるそうで、それに対しての日本からの学術会議の会員諸君がソヴイエトに行かれるという問題で、今その旅券の発給ができるのかどうかということについての御質問がありました。それに対して土屋欧米局長から御答弁があつたのでありますが、これについては今局長からの御答弁に対してまだ質問意見の交換が行われるようでありましたならば続けて頂く、さもなくて今の欧米局長の御説明事情、外務省の考えはわかつたというならば、これで終了したということにしたいと思いますが。
  253. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いやまだちつともわからないのですが、もう少しお聞きして……。
  254. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは何ですけれども、今一応土屋局長から速記の付いておるところでお話して頂きましようか。
  255. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いやさつき聞いたことだけは一応わかりますが、もつと続けて……。
  256. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) もう少し続けて何する……、では土屋局長、一つ委員会としてのこれから質問に対して答弁を続けて頂きたい。
  257. 高良とみ

    高良とみ君 実はこの問題については、同僚梶原委員から御質問もあることになつてつたと了解しておりますが、今予算委員会のほうに行つておられますので、私からもお伺いしておきたい。
  258. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 梶原委員からはまだ質問の形では出ておりません。
  259. 高良とみ

    高良とみ君 それは私たち同士の話でございます。で、二、三伺いたいのですが、昨日の外務委員会か何かでスポーツ関係のソヴイエトの人を日本に入れることを考慮してもいいとするだろうというお考えがあつたように、まあ新聞報道は言つておるわけであります。御趣旨はよくわかりませんが、そうすると代りにこちらからこれは国際オリンピツクのスポーツ、レスリングかスケーテイングかの問題らしいのですが、私はよく知りませんが、こちらから出張するというような場合には、これは国務に関することとして公用旅券をお出しになることを御考慮になる余地もあるのでありますか、それを伺いたい。
  260. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それは私から御参考までに昨日の話を申上げますが、それは外務大臣に対しての羽生委員からの質問に答えて、外務大臣の御話として、何か国際スポーツのメンバー、何のスポーツであつたか記憶しませんが、とにかくスポーツのほうで国際選手が日本にやつて来るということになつておるのだそうであります。その中に偶然数名のソ連人がいる。それに対しての入国許可、旅券じやない、入国許可が下りるものであろうかどうかとの羽生委員質問に対して、外務大臣は、普通ならば入国許可ということは困難だと思うけれども、併しこういうような場合、即ちスポーツの一つのグループの中に、たまたまソ連人が入つておるということであれば、これは問題が少し違うと思うから、考慮の余地があると自分は思うと、こういつたような回答であつたのであります。それだけ申上げておきます。
  261. 高良とみ

    高良とみ君 さようでございますか。それでは土屋局長にお伺いしたいのですが、先ほどその資格があるかどうか、そのことが国に利益をするような大事なことであるかということが条件のように伺つたのですが、そうするとこの学術会議というものは国で承認しておる機関で、その中には気象のこととか、シベリアの気候のこととか、或いは物理学、原子物理学などのこともあるらしいのでございますが、そういうことの人をソヴイエトに派するということは、つまり科学的な中正な非政治的なものであるならば、これは資格があるというふうにお考えになりますか。それもまだ資格が不十分である……。
  262. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) 資格の点について認定がつきますと、私もここでイエスかノーかのお答えができますが、その点の認定がつきませんから、目下考慮中でありますと、こういうことを申上げたのでありますが、ただ御満足頂けるかどうか知りませんが、説明をいたしますと、国の要務と少くとも認める必要がありますので、国の要務と認めることが先ず必要になりましよう。第二は国の要務である限りにおいては、国の要務を遂行するだけの資格の一応あるかたでないといけないと思います。従つて、国の要務を委託したという事実に対しまして非難を受けたり、或いはよそからどうも疑いを持たれるということでは困りますから、こういう二つの条件を加えた上に出しているということになれば、今おつしやつたような会議の性質もよく調べる必要もございましようし、そういう点から考えまして公用旅券を出すということは理論上は可能になります。
  263. 高良とみ

    高良とみ君 そうすると、今お話通り、上の人と相談してみると、考慮の余地があると今おつしやつたように了承しますが、全然考慮の余地がないというふうには言われていないということで間違いございませんね。
  264. 土屋隼

    説明員(土屋隼君) その通りでございます。従つて、内輪で外務省の意向を聞きたいといつておいでになつた関係者のかたには、上司に伝えた上で何分前以てお知らせすることができればいたしましようと、こういうわけであります。
  265. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 公用旅券ならば場合によつては出す余地が考えられるというお話ですが、若しそういう余地があるならば、そういう点を好意的にお考えつて早く措置をして頂きたいという希望と、それから公用旅券だとか、プライベートな旅券だとかというようないろいろな議論があると思うのですが、一般的に私の意見なり希望として、そう向うに行くことをこだわらないでプライベートな旅券でも出せるようなふうに、出すような方向にもう少し運用を拡げるなり、或いは法を改正するなりというようなことをおやりになつたほうがいいんじやないかと思うのですが……。まあ問題は、今後でも非常にたくさんの或る意味で言えば、文化攻勢といいましようか、そういうものが相当たくさんかかつて来ると覚悟しなければならんと思うのですね。そのときにそういう私個人の考え方から言つても、向うから金が来て、みんながそれにおぶさつて、とんとんそれだけで行くというようなことも、或る意味では非常に不見識だと私はその点についてはそう思いますけれども、実際問題として外貨その他の割当もないし、日本のあれも、状態も非常に貧乏な状態だし、そうえらそうなことも言えないような実情でもあるのです。それらの点も考えながら、金がどこから来るかというようなことは、或る意味ではそう大きくこだわらないで、而もアメリカその他のほうからの話だつたら、金が向うから来ようが何しようが、さつさとお出しになるのですから、それならばやつぱり両方に、そうこだわらないで積極的に出すところは出して、両方一つ満腹させて、その上で公正な判断をさせるというくらいに、日本国民なり、特に学者諸君に対してあたりは大きく考えられたほうがいいのじやないか。同時にその文化攻勢が非常に広汎なものになつて積極的になつて来ると思うのですが、それに関連して、といつて一方的にソ連側からだけそういうものがたくさん来てそちらだけに行くということは、非常に片手落ちだから、幸い土屋欧米局長はアメリカその他に非常な関連がおありになるのだから、アメリカその他にももう少し働きかけて、ソ連ではこういう大規模な文化攻勢をやつておるのだ、それをただ駄目だ駄目だと言つて防いでおつても、事はとても防ぎ切れる問題ではないのだから、それの上手を行つてお前らのほうも大量に日本国なり何なりを招聘するなり見せるして、そうして民主陣営のよさを身を以て体験さしてくれと、そういう形で若し対抗するなら対抗し、公正な判断をするような空気を作るべきだということを、MSAの援助で金をもらうとかもらわんとかいうようなことに憂き身をやつされて一生懸命になられる以上の、そういう積極的な働きがけをアメリカ乃至その他にも一つつて頂きたい。そういう方向でこの問題に対処するようにお取計らいを願いたいと思うのですが、これは私の希望です、希望として申上げます。
  266. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは本日の外務委員会はこれで散会いたします。    午後七時五十一分散会