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1953-11-07 第17回国会 衆議院 労働委員会人事委員会大蔵委員会農林委員会通商産業委員会運輸委員会郵政委員会電気通信委員会連合審査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月七日(土曜日)     午前十時十八分開議  出席委員  労働委員会    委員長 赤松  勇君    理事 鈴木 正文君 理事 持永 義夫君    理事 高橋 禎一君 理事 山花 秀雄君    理事 矢尾喜三郎君 理事 山村新治郎君       池田  清君    黒澤 幸一君       多賀谷真稔君    井堀 繁雄君       竹谷源太郎君    中原 健次君  人事委員会    委員長 川島正次郎君    理事 赤城 宗徳君 理事 田中  好君    理事 永田 亮一君 理事 加賀田 進君    理事 受田 新吉君 理事 山口 好一君       田子 一民君    池田 清志君       竹山祐太郎君    石山 權作君       櫻井 奎夫君    森 三樹二君       池田 禎治君  大蔵委員会    委員長 千葉 三郎君    理事 大上  司君 理事 春日 一幸君       大平 正芳君    苫米地英俊君       藤枝 泉介君    本名  武君       小川 豊明君    久保田鶴松君       柴田 義男君    井上 良二君       平岡忠次郎君    福田 赳夫君  農林委員会    委員長 井出一太郎君    理事 金子與重郎君 理事 足鹿  覺君    理事 川俣 清音君 理事 安藤  覺君       小枝 一雄君    佐々木盛雄君       福田 喜東君    松岡 俊三君       松野 頼三君    松山 義雄君       加藤 高藏君    吉川 久衛君       井谷 正吉君    芳賀  貢君       中澤 茂一君    日野 吉夫君  通商産業委員会    委員長 大西 禎夫君    理事 小平 久雄君 理事 福田  一君    理事 長谷川四郎君 理事 永井勝次郎君    理事 伊藤卯四郎君 理事 首藤 新八君       小川 平二君    小金 義照君       山手 滿男君    加藤 清二君       齋木 重一君    始関 伊平君  運輸委員会    理事 岡田 五郎君 理事 松井 豊吉君    理事 楯 兼次郎君 理事 川島 金次君       木村 俊夫君    徳安 實藏君       南條 徳男君    臼井 莊一君       正木  清君    山口丈太郎君       熊本 虎三君    中居英太郎君       館  俊三君  郵政委員会    委員長 田中織之進君    理事 羽田武嗣郎君 理事 船越  弘君    理事 大高  康君 理事 片島  港君    理事 吉田 賢一君       坂田 英一君    伊東 岩男君       櫻内 義雄君    松浦周太郎君       佐々木更三君    淺沼稻次郎君       土井 直作君  電気通信委員会    委員長 成田 知巳君    理事 岩川 與助君 理事 塩原時三郎君   理事 橋本登美三郎君 理事 小泉 純也君    理事 原   茂君 理事 松前 重義君    理事 寺島隆太郎君       庄司 一郎君    齋藤 憲三君       甲斐 政治君    松井 政吉君       三輪 壽壯君  出席国務大臣        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         農 林 大 臣 保利  茂君         労 働 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局次長) 正示啓次郎君         大蔵事務官         (造幣局長)  村岡 信勝君         大蔵事務官         (印刷局長)  吉田 晴二君         林野庁長官   柴田  栄君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  細田 吉藏君         労働事務官         (労政局長)  中西  実君  委員外出席者         通商産業事務官         (軽工業局長) 中村辰五郎君         日本専売公社総         裁       入間野武雄君         日本国有鉄道総         裁       長崎惣之助君         日本国鉄道参与         (職員局長)  吾孫子 豊君         日本電信電話公         社副総裁    靱   勉君         参  考  人         (公共企業体等         仲裁委員会委員         長)      今井 一男君         参  考  人         (全印刷労働組         合中央執行委員         長)      島田和三郎君         参  考  人         (全印刷労働組         合中央執行副委         員長)     河村 勝治君         参  考  人         (全印刷労働組         合給与対策部         長)      杉山 秀雄君         参  考  人         (全専売労働組         合中央執行委員         長)      平林  剛君         参  考  人         (全専売労働組         合中央執行副委         員長)     齋藤 一雄君         参  考  人         (全専売労働組         合調査部長)  佐藤 維恭君         参  考  人         (全造幣労働組         合中央執行委員         長)      原田 正夫君         参  考  人         (全造幣労働組         合中央執行副委         員長)     竹田 豊彦君         参  考  人         (全造幣労働組         合中央執行副委         員長)     大森 忠晴君         参  考  人         (全林野労働組         合中央執行委員         長)      妹尾 敏雄君         参  考  人         (全林野労働組         合中央執行副委         員長)     中村喜己則君         参  考  人         (全林野労働組         合書記長)   岩村 幸雄君         参  考  人         (アルコール専         売労働組合中央         執行委員長)  蔵野  晴君         参  考  人         (アルコール専         売労働組合中央         執行委員長) 乗松 義雄君         参  考  人         (アルコール専         売労働組合書記         兼賃金対策部         長)      青木金治郎君         参  考  人         (日本国有鉄道         労働組合中央執         行委員長)   柴谷  要君         参  考  人         (日本国有鉄道         労働組合書記         長)      横山 利秋君         参  考  人         (日本国有鉄道         労働組合給与対         策部長)    鎌倉 繁光君         参  考  人         (日本機関車労         働組合中央執行         委員長代理)  中村 順造君         参  考  人         (全逓信従業員         組合中央執行委         員長)     横川 正市君         参  考  人         (全逓信従業員         組合書記長)  宝樹 文彦君         参  考  人         (全逓信従業員         組合中央執行委         員)      武田  勇君         参  考  人         (全国電気通信         労働組合中央執         行委員長)   鈴木  強君         参  考  人         (全国電気通信         労働組合書記         長)      大木 正吾君         参  考  人         (全国電気通信         労働組合給与対         策部長)    八巻 寿男君         労働委員会専門         員       浜口金一郎君         人事委員会専門         員       安倍 三郎君         人事委員会専門         員       遠山信一郎君         大蔵委員会専門         員       椎木 文也君         大蔵委員会専門         員       黒田 久太君         農林委員会専門         員       難波 理平君         農林委員会専門         員       岩隈  博君         通商産業員会専         門員      谷崎  明君         運輸委員会専門         員       岩村  勝君         郵政委員会専門         員       稲田  穰君         電気通信委員会         専門員     吉田 弘苗君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(印刷事業に  関する件)(内閣提出議決第一号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(専売公社に  関する件)(内閣提出議決第二号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(造幣事業に  関する件)(内閣提出議決第三号)  公共企業体等労働関係法第十六条第項の規定に  基き、国会議決を求めるの件(国有林野事業  に関する件)(内閣提出議決第四号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(アルコール  専売事業に関する件)(内閣提出議決第五  号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(国有鉄道に  関する件)(内閣提出議決第六号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(郵政事業に  関する件)(内閣提出議決第七号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(電信電話公  社に関する件)(内閣提出議決第八号)     ―――――――――――――
  2. 赤松勇

    赤松委員長 これより前会に引続いて、労働委員会人事委員会大蔵委員会農林委員会通商産業委員会運輸委員会郵政委員会電気通信委員会連合審査会を開会いたします。  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件、議決第一号より第八号までを一括議題といたします。まず議決第一号より第四号までについて、政府側より提案理由説明を求めます。小笠原国務大臣
  3. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいま議題となりました公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件、三件について、その提案理由を御説明申し上げます。  まず印刷局裁定について申し上げます。  本年四月十日に全印刷局労働組合は、本年四月以降の賃金改訂に関する要求印刷局に対して提出し、両当事者間で団体交渉を重ねましたが、妥結に至らず、調停段階に入り、六月二十六日公共企業体等中央調停委員会は、調停案を提示いたしました。これに対しては、双方ともに受諾しがたい旨を回答し、全印刷局労働組合申請により、七月二十日公共企業体等仲裁委員会仲裁手続に移行し、同委員会は、九月二十九日裁定を下したのであります。  右裁定によれば、その第一項及びこれに関連する追加経費とし昭和二十八年度予算に対し、さらに約九千万円を要することとなります。この追加経費は、本年度特別会計予算歳入歳出予算に含まれておらず、給与総額につきましては予算総則第八条の金額を超過することは明らかでありますので、これを支出することは予算上不可能であります。従つてこの裁定は、公共企業体等労働関係法第十六条第一項に該当するものと認められますので、本件国会に提出し御審議を願う次第であります。  次に、専売裁定について申し上げます。  本年三月十日に全専売労働組合は、本年四月以降の賃金改訂に関する要求日本専売公社に対し提出し、両当事者間で団体交渉を重ねましたが妥結に至らず、調停段階に入り、七月十五日公共企業体等中央調停委員会調停案を提示いたしました。これに対しては双方ともに受諾しがたい旨を回答し、同委員会申請により七月三十日公共企業体等仲裁委員会仲裁手続に移行し、同委員会は十月十日裁定を下したのであります。  右裁定によれは、その第一項及びこれに関連する追加経費として昭和二十八年度予算に対し、さらに約五億九千万円を要することとなります。この追加経費は本年度政府関係機関予算収入支出予算に含まれておらず、給与総額につきましては予算総則第八条の金額を超過することは明らかでありますので、これを支出することは予算上不可能であります。従つてこの裁定公共企業体等労働関係法第十六条第一項に該当するものと認められますので、本件国会に提出し御審議を願う次第であります。  最後造幣局裁定について申し上げます。  本年五月十八日に、全造幣労働組合は本年四月以降の賃金改訂に関する要求造幣局に対して提出し、両当事者間で団体交渉を重ねましたが妥結に至らず、調停段階に入り、七月十六日公共企業体等中央調停委員会調停案を提出いたしました。これに対しては双方ともに受諾しがたい旨を回答し、全造幣労働組合申請により、八月二十日公共企業体等仲裁委員会仲裁手続に移行し、同委員会は十月二十七日裁定を下したのであります。  右裁定によれば、その第一項及びこれに関連する追加経費として昭和二十八年度予算に対し、さらに約三千万円を要することとなります。この追加経費は本年度特別会計予算上の歳入歳出予算に含まれておらず、給与総額につきましては予算総則第八条の金額を超過することは明らかでありますので、これを支出することは予算上不可能であります。従つてこの裁定公共企業体等労働関係法第十六条第一項に該当するものと認められますので、本件国会に提出し御審議を願う次第であります。  以上、三件の提案理由を御説明申し上げましたが、何とぞ御審議の上、国会の御意思を表明願いたいと存ずる次第であります。
  4. 赤松勇

    赤松委員長 多賀谷真稔君。――ちよつとお願いしておきますが、大蔵大臣参議院予算委員会の方へ出席しなければなりませんので簡単にひとつ……。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 予算編成責任者であります大蔵大臣に対しまして、全般的な問題として仲裁裁定政府はどういうように考えておるかということをお尋ねいたしたいと思います。
  6. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 仲裁裁定は私どももこれを尊重いたす考えでおりますが、ただ、先ほど申し上げましたような事情で、現在のところ予算上資金上その措置をとりかねておる次第であります。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 先ほど申された、事情と言われますのは、予算総則給与総額を越える金額である、こういうだけの理由でありますか。しからば、政府はどうして予算案を提出されないのか、お尋ねいたしたいと思います。
  8. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 現在の三公社五現業の裁定については、現在の予算のわくではできないことは御承知通りであります。しからば、なぜこれに対する補正予算その他の措置をとらないかというお尋ねかと存ずるのでありますが、これにつきましては、他の公務員との関係とか、またその公社経理内容、あるいは公社相互関係、たとえて申しますと、国鉄あるいは郵政等につきましては、国鉄については大体運賃一割の値上げということが必要となつて参り、さらに郵政につきましても料金の値上げ等を必要とする等の事情もありますので、そこで今各種の条件を検討いたしております。従つて検討終つた上で、予算その他をどうとり得べきかということを判断したい、かように考えておる次第であります。今回の予算案は、御承知のごとく災害関係だけでございましたので、従つてこれを全然提出してない次第であります。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今検討中だということでありますが、この公労法の十六条に「十日以内」という期限を切つてある。しかし閉会中であるから、国会召集から五日以内ということになつておるわけでありますけれども、一体この期限をいかに解釈しておるのか。裁定があつた場合には当然十日以内に政府検討し、また閉会中であるならば、国会召集から五日以内に検討してその結論をもつて予算案を提出して再会の審議を願うのが至当であると思うのに、まだ検討中とは一体どういうことであるか、お尋ねいたしたい。
  10. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 お答え申し上げました通り、諸般の点からこれを検討いたしておる次第であります。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 仲裁裁定は、最終的拘束力を受けるわけでありましてただ予算上不可能な場合にのみこれを国会にかけるということになつている。しかも十日以内にかけるという意味は、十日以内に政府の意見をまとめて、そうして予算案を提出するという意味だと考えるのでありますが、もう一度お尋ねいたしたいと思うのであります。
  12. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 それは政府委員をしてかわつて答弁いたさせます。
  13. 赤松勇

    赤松委員長 ちよつと大蔵大臣に希望しておきますが、これは主としてやはり予算上不可能だということで議決を来められて来ているわけであります。従いまして、大蔵大臣に対する質問があろうと思うつのであります。八つ委員会連合審査会でありまして今も委員諸君から強い要求がございますけれども、私は今委員諸君にお願いしまして、きようは参議院予算委員会がありますからそちらの方へ出ていただくように今話をしております。それで、あとで一応理事会を開きまして相談をしますが、きようもし無理だとすれば、これは予算上不可能だという理由でかけて来ておられるのであります。これは継続審査事項になりますから、大蔵大臣責任をもつて出席願つて予算上不可能であるという点を十分御説明を願いたい、質疑に答えていただきたいと思います。その際には大蔵大臣責任をもつて出席を願いたいと思います。
  14. 赤松勇

  15. 保利茂

    保利国務大臣 ただいまから、昭和二十八年十月二十七日に、公共企業体等仲裁委員会が、公共企業体等労働関係法の適用を受ける林野庁職員昭和二十八年一月一日以降の賃金改訂及び増額に関する紛争について行いました仲裁裁定第十八号を国会に上程いたし、御審議願う次第につきまして御説明申し上げます。  本年二月二十三日に、林野庁職員代表は、一月以降の賃金改訂及び増額に関する要求書を、林野庁当局に対し提出いたしまして、両当事者間におきまして、数次の団体交渉が行われましたが、当局側がこれを拒否いたしましたので、職員側は四月六日団体交渉を打切る旨当局側に通告し、同日公共企業体等中央調停委員会に対し調停申請をいたしました。同委員会は六月二十六日調停案を提示いたしましたが、当局側は九月七日、職員側は同月一日、それぞれ全面的には受諾困難の旨、同委員会に対しまして回答いたしましたので、同月十一日調停が打切られ、同月十四日職員側は、公共企業体等労働関係法規定によりまして仲裁申請行つたのでございます。  よつて公共企業体等仲裁委員会は、これが審議を重ねました結果、十月二十七日、これから御審議をいただきます仲裁裁定行つた次第でございます。同裁定の第一項、第三項及び第五項の実施並びにこれらに関連いたす経費といたしまして、本年度約八億七千万円を必要とすると推定されますが、この追加経費は、昭和二十八年度特別会計予算歳入歳出予算に含まれておらず、かつ裁定第一項の実施につきましては、予算総則第八条による給与総額金額を超過することは明らかでございますので、公共企業体等労働関係法第十六条所定の手続をもちまして、裁定国会に上程いたし御審議を願う次第でございます。  何とぞ慎重御審議の上、国会の御意志の表明を願いたいと存ずる次第でございます。
  16. 赤松勇

    赤松委員長 ちよつと速記をとめて。     〔速記中止
  17. 赤松勇

    赤松委員長 速記を始めてください。  議事進行について委員の皆さんにお諮りしたいことがございます。本日は参議院最後予算委員会でございまして、ただいま総括質問が行われております。労働大臣は、緑風会質問がございまして、そのあと右派社会党松澤兼人君の質問が十分間、それが終りましてただちに出席することになつております。緒方副総理は午後必ず出席をいたします。運輸大臣も、先ほど申し上げましたように、午後には必ず出席します。なお郵政及び通産両大臣は、ただいま出席するよう要求しております。ただいま政府側から出ておりまする方は、大蔵関係では、日本専売公社監理官造幣局長造幣局東京支局長印刷局長印刷局業務部長、大蔵省の給与課長郵政人事部長、通産省は軽工業局アルコール第一課長、それから電通関係電電公社の副総裁電電公社職員局長、以上の諸君でございます。それで間もなく労働大臣出席をいたしますから、その間、今井仲裁委員長から、きよう午前中だけにしてもらいたいという御要求がございますので、これを了承したいと思います。そこで今井仲裁委員長に対する質疑をやつて行き、その間もう十分ほどしましたら労働大臣出席いたしますので、きように議事を進行いたしたいと思うのでありますが、いかがでございましようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 赤松勇

    赤松委員長 それではそのように御了承願います。  なお昨日来の参考人の方々もみな御出席でございますから、昨日来の陳述に対する御質疑がございましたならば、引続き御質疑をしていただければけつこうだと思います。  それでは参考人及び今井仲裁委員長、あるいは政府側から今出席しております諸君に対する御質疑があれば、これから質疑を行いたいと思います。
  19. 井堀繁雄

    井堀委員 今井参考人外八つ労働組合代表者として御出席なつております参考人に、それぞれお尋ねをいたしたいと思います。  まず同一の問題についてそれぞれお答えを願う点からお尋ねをいたそうと思いますが、一つは仲裁委員会性格についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。昨日も今井参考人の御発言の中で、仲裁委員会性格の最も重要な部分について御説明がありました。すなわち仲裁委員会は、公労法規定に基いて、団体交渉並びに調停手続が不調に終つた労使関係紛争処理を、最後段階において処理される機関であることはよく承知いたしておりますが、この八つ裁定を拝見いたしますと、最も争いの重点になつておりますものは賃金給与関係する問題でありまして、これについて大胆な裁定か下されておると、われわれは一面敬意を表し、かつはその裁定についていろいろな疑いを持つものであります。そこでお尋ねをいたしますのは、昨日も御説明がありましたように、この仲裁委員会性格は、紛争の解決が主要な任務で、賃金委員会等のごとき性格とたいへん相違する点を強調されておりましたので、こういう困難な問題が裁定委員会に持ち込まれたという事実について、われわれは非常に悲しむものであります。しかしながら、この裁定を下されたおもなる点は、賃金要求に対する裁定であります。そこで事実を一、二お尋ねをいたそうと思うのであります。従業員側すなわち労働組合側の要求と、当局のこれに対する団体交渉調停委員会の結果についての報告をいただいておりますが、数字的に見ますと、大部分、当局側が交渉の過程において、また調停の結果について同意をされた数字が、そのまま裁定に現われておるという点である。こういうことは、団体交渉の詳しい経過を知ることのできない私どもの立場からしますと、裁定は事実上当局の、すなわち雇い主側の意思をそのまま数字の上に採択したとしかとれないのであります。この点について、私は委員会性格が重要であろうと思いますので、率直にひとつお答えを願いたいと思うのであります。問題の解決が、こういう賃金給与に関する問題について困難であれば、その困難な事柄を率直に聞かせていただきたい。ことに私の懸念いたしますことは、雇い主が、単なる営利企業を行う民間の使用者と異なりまして政府である。政府は、申すまでもなく二つの性格を持つわけであります。一方には労働者に対して雇い主としての性格を持つと同時に、他方においては日本の行政権を握つており、民間業者と違つて強力な権力を持つておる雇い王である。そういう雇い主と労働者との間の紛争を処理する場合における仲裁委員会の立場がいかに困難であるかは、十分想像できるものでありますが、そういう場合に、一体一般に考えられまする労使関係紛争を、団体交渉調停、あつせんというような過程は別といたしまして、仲裁という階段に入つた場合に、はたしてまつたくいずれからも拘束されない公正の立場に立つて判定ができるという性格を今日持てるかどうか、持てるとすれば、その点をはつきりお答え願つておきたい。次に、賃金についてのいろいろな仲裁裁定に対する経過と理由が述べられております。その中で多くの労働組合側から要求されております理由のものは、大体マ・バ方式による主張が多いようでありますが、これはことごとくしりぞけられておるようであります。私はア・バ方式をしりぞけたことをどうこう聞こうとするのではありません。それから専売その他の場合におきましては、民間給与との関係の均衡を強調しております。あるいは一般公務員との均衡の問題も出ておるようでありますが、そういう均衡についても、多くの意見を理由書の中に拝見することができません。そこで私の聞きたいのは、賃金の性格というものは、もちろんマ・バ方式のように片寄つてはならぬかもしれませんけれども、少くとも労働の質と量というものが、すなわち生産性の問題が取上げられておりながら、単に上すべりをしておるという感じがいたすのであります。一体、今裁定を下されております職場は、八つともそれぞれおのおのの特質を持つておるようであります。あるものはサービスを、あるものは民間企業と同じような商品を生産しておる、あるものは運輸、輸送というような輸送事業、あるものはまつたく公共にのみ奉仕するというような性格郵政関係、そういうようにみな異なつておりますものに対し、大体同じケースの上に賃金裁定を下しておるようでありますが、こういう点について、委員会がどういうふうにお考えになつて、賃金に対する裁定をなさつたかについてお尋ねをいたしたいと思うのであります。最後に、これはわれの責任にもなると思いますが、公労法裁定に対する政府の義務であります。政府は今日も提案趣旨にも明らかにされておりますように、十六条の予算上資金上の理由を建前にいたしまして、裁定が実行できない、そこで国会審議を求めて来ておりますが、こうなりますと、政府は直接裁定に対する義務を国会に背負わせようとする結果になると思うのであります。ある意味においては、これは民間でありますと、会社重役と株主というような形にも考えられるわけであります。われわれは、国民全体の利益を代表することは申すまでもありませんが、政府の場合もそういう性格と雇い主の性格を二つ持つわけであります。こういう場合に、大体賃金給与というものに対して、雇い主であるものは、それが営利を目的とすると、あるいは公益事業であることを問わず、事業である限りにおいては、今日資本主義の経済の下においては、賃金というものは、一定の原価計算の中に割込む数字があるはずであります。こういう問題について、今までの報告書を拝見いたしますと、政府側はこれだけの賃金でなければならない、これだけは支払うというようなものが団体交渉の上にも現われておりませんし、こつちからつつかれればあつちに動く、あつちからひつぱられればこつちに動くというような傾向が感ぜられるのでありますが、こういうものに対して仲裁裁定委員会は、雇い主側に対して――賃金の責任ある雇い主なり、あるいは政府なりといつたような公の立場、両方持つている性格の雇い主側に対して、労働者に対する給与はどのくらいであるという点について明確にただされたかどうか。それから予算上資金上の関係で、仲裁裁定政府責任において当然服さなければならないという三十五条の規定ですが、それをもし予算的な措置について、仲裁裁定とまつたく反対の態度を決議した場合には、仲裁裁定委員会はこういうものに対してどういうふうになすべきだというふうにお考えであるかどうか。この三つについて、はなはだ御迷惑だろうと思いますが、非常に今後重大なことになると思いますので伺つておきたいと思うのであります。それから労働組合側を代表される参考人について、全体からお答えいただくことは困難かと思いますので、私の方で御指名申し上げては恐縮でございますが、国鉄と専売と印刷を伺えば大体出て来るのではないかと思いますので、仲裁裁定関係いたしまする性格上のことその他について、御不満があるとすれば、どういう点を――もちろん法律の改正については、私どもは別の意見を持つておりますが、現在の法律をそのまま運営する上において、仲裁裁定に関するいろいろの不満があると思いますので、その点を明らかに伺いたいと思います。
  20. 赤松勇

    赤松委員長 ちよつと今井さん待つてください。委員諸君に御報告申し上げておきますが、ただいま日本専売公社総裁及び職員部長が出席をされました。なお国鉄総裁はただいま参議院の決算委員会に呼ばれておりますので、済み次第こちらに出席をするとのことでございます。
  21. 今井一男

    今井参考人 お答え申し上げます。ただいまの井堀委員お尋ねは主といたしまして仲裁委員会の賃金問題を扱う場合における基本的な考え方ないし態度といつたような点を御中心のように拝承したのであります。御承知通り、これまでの公労法関係団体交渉というものは、率直に申しますと、これを団体交渉と称してよいのかどうかとも評し得られるような程度の交渉しか行われていないのが、むしろ通例のようでございます。今回の賃金紛争に関しましても、形式的な若干回数の交渉が行われたことは、もちろん事実でありますけれども、その際に少くとも当局側の方から、自分たちとしては現在賃金は幾らが妥当だといつたところまで明白な意見を述べられたところはないようであります。もつとも今回は、一、二、上げる必要はない、現段階においてはかくかくの事情で、すなわち物価は昨年のべースアツプ以来大きな開きかない、また民間貸金にもそれほどの開きはない、従つて上げる必要はない、こういうことをはつきり言われた向きは若干ございます。しかし、大勢的に申しますと、従来からの慣例はおおむねそれに近いもののようであります。また調停段階に参りましても、当局側から具体的に賃金につきましての積極的な数字に関する意見が述べられたようには伺つておりません。また仲裁委員会の過去におきましての経過からいたしましても、当局側の方から、具体的にそれでは何万何千円が妥当と考える、こういつた意見を伺つたこともほとんど皆無でございます。但し、今回は従来と違いまして、調停案が示された場合に、調停案の額につきまして、積極的におおむねよかろうという意見を述べられた当局が一、二ございました。先ほど井堀委員は、全体がというようにおつしやいましたけれども、これは誤りでありまして、一、二の当局がそういう意見を述べられておりま。われわれは、従来仲裁手続におきましては、当局のそういうような具体的な意見のない場合におきましても、極力両者の意見から結論を出すように努力してやつて参つたのでありますが、今回のように八つもの問題が一ぺんにかかつて参りますと、事実上われわれの方が一つ一つに時間をさくだけの余裕もございませんし、また仲裁委員会が従来とつておる一つの企業体における労使紛争解決という立場からいたしましても、少くとも経営者としては、具体的な意見があるべきであります。もちろん予算関係、財政関係、いろいろのわく、考慮は必要でありましようが、しかしそれにいたしましても、いかに予算上の余裕があつても、これ以上の賃金を出すことは、国営企業の立場として適当でないというような最高限度の金額もありましようし、同時に、これより低くては経営者として仕事をやつて行くのに困る、こういう線もあろう。従つて、少くとも幅のある数字でよろしいからぜひお示しを願いたい、そうして両者の意見を中心にして行きまして、それに基いてわれわれが従来考えておつた裁定の出し方を実現するように、しつこく当局の方に交渉あるいはお願いをしたのであります。その結果、今回は最終段階までには、おおむね具体的な御見解をいただきました。その御見解は、いずれも結局におきまして調停案の額をおおむね妥当とするというような御見解でございました。従いまして、結局これは仲裁手続中に最終段階で出そろつた意見でございます。あえて解釈いたしますれば、当局側はそこまで譲られた、かようにも解し得るかもしれません。しかし、また解し方いかんによりましては、先ほどおつしやいましたように、当局側の意見を全部採用した、組合側の意見を全部しりぞけた、かような解釈もあるいはできるかもしれません。しかし、私どもの基本的な考え方といたしましては、両者の言い分の中から、なるべく合理的なものを組み合せて行きたいということでございまして、私どもはこの方式を頭からいかぬとも、いいとも別に考えているわけではございません。個人的には、もちろん意見がございますけれども、もちろん労働者がマ・バ方式によりたいという場合に、仲裁委員会がそれをいかぬという理由は少しもないのでありまして、また両者の意見が食い違う場合に、私どもは最低賃金等をはじく場合には、むしろマ・バ方式をとるべきであるというような見解を持つておりますし、またさらに出ました一つの賃金というものが、具体的にいかなる生活内容を意味するかということにおいて、マ・バ方式はぜひ労働者として必要な点でなかろうかということも考えております。  今回出ました八つの各組合の要求は、いろいろ考え方は違つております。三つも四つも違つておりますが、この違つた線に沿いながら、その考え方のうちの基本的に正しい線は――正しいといいますか、当局と話合いがつかない線でありましても、われわれが見まして筋の正しい線は、その算式その他におきましてのいろいろの問題、たとえば実質賃金を戦前に回復しろ、そういうことが論理的に許されるような場合でありましても、その場合に税金までもそれに乗つける、こういつたことは、結局生産性の問題とからみますと、理論的におかしなことに相なるわけでございます。そういつたような算式にわれわれが手を触れまして金額をいじるようなことはいたしません。しかし、決して頭から組合の考え方を全然しりぞけるという行き方でやつたのではございません。しかし昨日申し上げましたように、組合側はおおむね大会決議のわくが入つておりますので、ある程度仲裁委員会のあつせん的なものの考え方、そういつたことによる両者間の歩み寄りというわれわれの申し上げるところに対しまして、あるいはそういう考え方もあるというような納得が得られましても、公式にこれを認めるということは、組合の立場上むずかしいようであります。従いまして、結果的には、私どもとしては非常に遺憾ではありますが、私どもの意見がより強く入つてしまつた結果になつたことは、これまた事実でございます。昨日たしか申し上げたと思いますが、もしも両者間の見解が、非常につばぜり合いと申しますか、同じような方式で、同じようなものさしを使つてそれで賃金改訂をやろう、そのものさしと取り方が、何式がある、かに式がある、あるいはその具体的な数字についてこまかい争いがあるといつた場合になりますれば、私どももその議論の中に入りまして、そうして百円、二百円というこまかい数字にまでわれわれはタツチして、なるべく両者の納得に近いようなものを出すために努力をする用意は持つております。しかし今回の紛争は、おおむね両者の意見が遠いところで対立したまま、その点の歩み寄りが得られませんでしたので、従いまして、これは井堀委員御専門ですから、私から申し上げるのもおかしいのでありますが、賃金の出し方というのはいろいろの考え方もあるわけでありまして、そういうこまかい数字にとらわれませんで、私どもが従来から基本的に考えている調停尊重という基本線を一応とりまして、それを頭から直すほどの数字でない以上はそれによつた、こういう結論がかなり出ております。そういつたこともからみ合いまして、結果的には今御批判がありましたような調停案の額におちついてしまつた次第でございます。われわれといたしまして、一つ一つの企業体につきまして一つ一つ労使紛争の考え方に従う線問題を解決しようという努力は、理由書を御通覧願えば大よそ御了解願えるのじやないかと考えるのでありまして、数字の方はさようになつておりますので、考え方自身といたしましては、その間かなりの苦心を払つたつもりでございます。  それから、最後にお述べになりました三十五条の関係でございますが、要するに公労法が適用されました以上は、公労法の精神は、争議権のないかわりにこういつた手続でやるという建前の国営企業やあるいは公社というものを、極力民間の労使関係に近い形でまとめて行きたいという考え方、そういう点に対しまして、民間の労使関係におきましての賃金問題、すなわち支払い能力というものがある程度賃金をチエツクする、そういつたことに対する配慮は、これは私どもやむを得ないことと考えるものでありますが、しかしそれはやはり独立採算制が各八現業、八つの組合につきまして、建前としてとられております以上は、これを一箇の企業体として一つずつお考えいただくことが必要ではないか。予算のわく自身が、全体としてその賃金を支払つてもこれを越えず、さらにまた与えられたところの事業計画を遂行する、こういつた場合にも、なおかつその賃金の改訂が認められないということになりますと、おそらく賃金改訂の可能な場合というのはなくなるのじやないか、こういつた感じは、私いどもとして強く持たざるを得ないものであります。公労法の建前から申しますと、企業ごとにそれぞれ交渉委員が労働省に登録の上きめられまして、交渉委員会をもつて、おやりになるのであります。従つてその交渉委員団体交渉というものを完全にやれるような――むろん特殊な制約があることは、これはもうやむを得ませんけれども、その制約をなるべく少くいたしまして、団体交渉の範囲、団体交渉の実際上の運行をなるべく民間の例に近いような形でやるという考え方さえもし行われますならば、先ほどおつしやいましたように仲裁の範囲も、仲裁のケースも非常に減るでありましようし、またここに公労法の所期しておるところの労使関係も確立れさるのじやなかろうか、かような感想は常々抱いておるのであります。お答えにならないかもしれませんが……。
  22. 赤松勇

  23. 横川正市

    ○横山参考人 国鉄の横山でございます。ただいまの御質問にお答えいたしたいと思います。  仲裁委員会に対しまして何よりも不満なのは、何といいましても金額が低過ぎるということであります。これはどう考えましても低い。きのう専売の平林委員長が申しましたように、今度のアツプにいたしましても、裁定によりますと、算術計算で五百円くらいにしかなりません。こういうことでは、私どもは今日の物価の上りぐあいなり、生計費の状態なりでは、どうしても低いと思うのであります。これは伝統的に私はそういうことが言えると思うのであります。どうしてこういうことになるかといいますと、仲裁委員会としては経理能力を考えておられるので、たとえば昨年の国鉄の――本年の裁定につきましては、皆さんのお手元に理由書もありますが、昨年の理由書から例を引いてみたいと思うのであります。こういうことが書いてあります。「従来から国鉄は、その経理能力の関係上、賃金は若干低目に決定されて来た。本委員会は、昭和二十五年度の賃金決定に当り、本来ならば八千五百円以上を妥当と認めながら、国鉄の支払能力を考慮して、敢えて八千二百円と裁定した。これが昨年度調停案の基礎となつたのである。」しかも今次裁定は「単に昨年度の賃金をそのまま本年度に引直したものに過ぎないのである。」こういうふうに経理能力で下げて、ほんとうは八千五百円といいながら八千二百円にする。そいつをまたことし引き直す。経理能力がいけないからというので、また引直す。こういうふうにしてだんだん督になつてしまつているのが今日の実情であります。  一体しからば、国鉄の経理能力というもの、あるいは専売なり電通なり、一般の公営企業の経理能力というものは、民間産業におけるように純然たる経理能力ということができるかといいますと、これは皆さんが御存じの通り、そういう公営企業の経営というものは政策により、あるいは予算によつて経理が、金が生み出るか生み出ないかという大本の問題があるわけでありますから、単純な経理能力論というものは適用いたさないのではないかということを、われわれとしてはいわなければならないと思うのであります。  第二番目の、仲裁におけるわれわれが感じますことは、公営企業におきます国鉄なりあるいは各公社の当局者が、きわめて私は責任がない、あるいは不誠意だということをいわざるを得ないのであります。御存じの通り公労法十六条では、予算上資金上不可能な協定をも各公社の当局は応じ得るということになつておるわけであります。けれども今日まで、ただの一回をも国鉄なりあるいは専売なり、公社当局が資金上予算上不可能な協定に応じたことはないのであります。みずからその権限を与えられながら、それを実行いたさなかつたことは、今、仲裁委員長がおつしやいましたように、仲裁の審議に臨んですらも、経営者として、金があろうがなかるまいが、とにかくこれだけは従事員を持つている以上支払わなければならないという責任感というものがなければならないと思うのでありますが、それらが一向披瀝されて行かないのであります。従いまして委員長がおつしやるように、つばぜり合いなどというものはあろうはずがございません。公社当局が賃金を幾らというふうにちつとも言わないのでありますから、つばぜり合いがあろうはずがなく、従つて団体交渉調停委員会も、事賃金ベースに関します限りにおいては、皆さんがいろいろ言つてくださいますような、なぜもつと団体交渉をやらぬのかという御意見が出るような事態の想定がされて参るわけであります。その辺はぜひとも公社当局が深思三省をしなければならぬところであると私は思うのであります。  それからもう一つの問題点は、この資金上予算上可能、不可能の議論であります。この点は昨日私が参考人として公述いたしましたので、あえて二回は申しませんが、今回政府国会で御提案されておるような、予算総額の中に含まれておらない、給与総額の中に含まれておらない、だから不可能だ、こういう議論というのは、まつたく今日までの、しばしば政府国会においていたしておりました答弁をもつてすら、きわめて矛盾もはなはだしいものだと私は考えるわけであります。この給与総額なりあるいは予算総額というものは、皆さんが国会でおきめになつて、ことしは一万三千四百円なりあるいは一万三千円の単価でそれに人数をかけ、十二箇月をかけてやつておるのでありますから、そういう中にこの裁定実施の金があろうはずはないのであります。問題は行政措覆によつて移流用をし得るかどうかということにかかり、その移流用ができなければ不可能か可能かという議論になつて参るのでありますが、すでに昨日各参考人が公述いたしましたように、流用が可能である、その公社予算の総額の中で可能であるという議論であるならば、これはもう政府国会における答弁の中から、可能というふうになるのは当然かと私は考えるのであります。  最後に、今まで四年間仲裁裁定審議を願つて参りました私どもとして痛感いたしますのは、当初公労法が制定されましたときに、先ほど井堀委員が三十五条を引用くださいましたが、最終的に拘束力を与えるべし、こういう立場をそのまま素直に公労法制定当時に受取つたのであります。ところが今日はまさに仲裁裁定が何か客観的に見ますと、調停案のごとき印象を与えがちであります。まことにこれは、それこそ公労法というのはこの一点だけに集中される問題でありますから、ぜひともこの点についてはかかる印象が払拭されるように、皆さんの御協力をぜひお願いいたしたいと思つておるわけであります。
  24. 赤松勇

    赤松委員長 専売平林参考人
  25. 平林剛

    ○平林参考人 専売裁定に関する不満はどういう点にあるかというお尋ねでございますから、これについてお答えをいたします。  もちろん私は仲裁委員会に対しまして、機構そのものについて、またその機構の中でいろいろ今回の紛争の処理に当りました仲裁委員長を初めとする関係者に対して、不満を持つておるものではありません。八つの単産が、短かい期間に幾つかの賃金に関する紛争のお世話を願うために仲裁委員会に提訴をいたしたのでありまして、いろいろ努力をされた関係者に対しては、深い感謝の念を持つておるのであります。しかし、今の公企労法下における仲裁委員会の運営そのものは、どなたが仲裁委員におなりになろうとも、たいへん苦労の存するものだと思います。しかしお尋ねのように、仲裁裁定に関する不満を述べれば、私ども数限りなくあるのであります。ただ、今申し上げることは、死んだ子の年を数えるような気持がいたしますけれども、しかしせめてこの不満な裁定を完全に実施していただきたいという気持から、私どもの持つておる不満の一端を述べさせていただきたいと思うのであります。  私どもが第一に仲裁裁定の内容にたいへん不満でありますのは、組合側の主張でありました労働生産性について、正しい評価をしていただけなかつたということであります。私どもが今回の賃金を要求いたしますのは、戦前昭和九年ないし十一年におけるわれわれの生産性と、今日における労働生産性を比較いたしまして、戦前を一〇〇にいたしましたならば、今日の労働生産性は一四二という割合になつておる。言いかえれば、労働生産性については、われわれは戦前の水準をはるかに越えた働きをしておるということを自負しておるからであります。敗戦後、労働者が賃金を要求するにあたりまして、われわれはよく、お前たちは自分で責任を果してから能書を言え、ということを言われて賃金を押えられて参りました。しかし、今日の段階におきまして、労働者はりつぱに戦前の水準を回復するばかりか、はるかに上まわつた労働生産性を持つているにもかかわらず、賃金がいつも低く押えられておる、こういうことにたいへん不満を持つておつたのであります。そういう意味で、現在のわれわれの貸金は、少くともこの労働生産性に見合う賃金を受取つてよいはずだというのがわれわれの主張であります。戦前昭和九年ないし十一年に五十二円程度の給料をもらつておつたのであります。その後の物価上昇をどう少な目に計算をいたしましても、三百倍や三百二、三十倍にはなつておるのでありますから、どんなに少く計算をしても一万五千円を下ることはないと思つておつたのであります。ところが仲裁委員会は、この労働生産性につきまして、われわれの護をあまりいれないで、諸般の事情を考慮して一万四千八百五十円という低額に押えた、こういうところに働いておる君たちとしての限りない不満があるのであります。これが、もちろん現在諸般の事情というものが、この労働者の生産に対する努力を正しく評価してくれないがゆえに、仲裁委員の任務に当る人たちに苦労が存するとは思いますけれども、私どもとしてはどうにも耐えられない不満の一つであります。  もう一つは、ただいまのに関連をいたしまして、裁定額が別な意味でも非常に低過ぎるということであります。これは、今までわれわれが貸金改訂の要求を何回も行いましたうちでも、一番低いアツプ率であります。昨日も申し上げましたように最低のものでありまして、本俸におよそ五百円程度よけいちようだいする。生活の中心をなしておる三十三号俸、われわれの組合の中で言いますと、家族をかかえて生活が一番苦しい者が千二百七十円本俸をよけいちようだいするという程度の裁定であります。これで今後の生活を維持して行けということを最終的にきめたのでありますから、私どもの生活実態を考えましたときには、はなはだ酷な裁定であるというふうにしか考えられません。特に仲裁委員会の方の理由書を読みますと、われわれの不満に対して、まあこの際はがまんをしろ、世間一般が内職やあるいは女房の手助けや子供の収入を合せて生活をしているような実態であるから、基準賃金だけで標準生計を営むというような考えは、今のところ起すなというようなおさとしが中にあるわけであります。仲裁委員会までが、労働者をこの程度でがまんしろと言つているような裁定でありますので、これではこれからの日本を背負つて立とうとする労働者の生活を維持して行く上におきまして、はなはだ不当な低賃金ではなかろうか、こう考えるのであります。  もう一つ、今回仲裁委員会が非常に苦労なされていると思われる、またなるべくならば仲裁裁定が円満に処理して行けるようにと苦心を払われているもの、しかもそれが労働者にとつてたいへん不満であるものとして、実施月が延ばされてしまつたということであります。調停案尊重という建前で仲裁委員長裁定を下したというのでありますけれども、調停案は四月以降一万四千八百五十円というのがそれであります。ところが、いろいろ諸般の事情を考慮して八月から実施ということに相なつているのであります。この点につきましても、調停案尊重の建前をもうすでに実施月から仲裁委員会はくずしているのでありまして、労使の間において特に四月実施ということに異論がなかつたにもかかわらず、この点は諸般の事情を考慮して延ばしているというところに、われわれ不満があるのであります。ただ、私はこの際、昨日仲裁委員長がこの席で申されました一つの意見だけをたよりにしているのであります。それは、ただいまの公企労法の建前から行きますと、国会仲裁委員会が提示した額を、あるいは仲裁委員会が下した裁定額がよいの悪いのということを論ずる場所ではなくて、それが予算上可能であるか不可能であるかという判断をする場所にしてもらいたい、こういうことを強調されておつたことであります。この意味は、たとえば四月実施とされている仲裁裁定の内容を八月に実施するというようなことや、あるいは十月から実施するというようなふうに書きかえるようなことをやらないでもらいたいというような意味に拝察したのであります。せめて国会におきましては、公企労法による仲裁裁定のほんとうの意味を御理解され、このように低い裁定額でありますから、どうか削つたりなどしないで、仲裁裁定が完全に実施されるように結論を出していただくことをお願いいたしたいと思うのであります。  御質問のお答えといたします。
  26. 赤松勇

  27. 杉山秀雄

    ○杉山参考人 仲裁制度に対する不満につきましてお答えいたします。私どもは政府機関ではございますけれども、一つの事業体といたしまして独立採算の建前をとつておるわけであります。公労法もまたこの事業体別の団体交渉権を与えております。これにつきまして、私ども不満があるわけではございませんが、事業の経営体といたしまして改訂賃企の支払い能力を持つておる、しかも雇用する上からいたしまして、同種産業との賃金の均衡ということも考慮いたさなければならない、また従業員の協力と努力に対しましては、これに何らかの報いる処置をとらなければならない、そういう上から賃金の引上げを認めておきながら、特にこの政府機関の官業におきましては、職員が能率の向上とか、あるいは物資の節約とか経費の節減、その他協力と努力を払いましても、これがすべて予算上の制約によりまして、努力すればするほど、来年度予算におきましては、その努力をした分で押えられて、従業員は何ら報いられるところがないばかりか、かえつてぎりぎりに縛られてしまう、こういうような一つの問題があるわけであります。そういう場合におきまして、雇用する上から賃金の引上げを当然認めておるという場合におきましても、なおかつ仲裁裁定実施いたさない。そして一般会計に対しましては、公務員との均衡という点を除きましては、資金上予算上賃金の引上げに対しまして何らの支障を与えるものではない、こういう場合にもかかわりませず、仲裁裁定を、官業の従業員であるというこの一点によりまして、実施いたさないといたしますれば、ここに私どもは仲裁制度そのもののきわめて弱い点があるのではないかと考えるのであります。もしまた一般公務員との均衡という点のみにおきまして、この裁定実施が不可能ということになりますれば、事業体別の団体交渉というものは、もはや賃金の紛争に対しまして解決するところのものではないのでございまして、ここにおきましては、当然統一的な政府に対する団体交渉権というものを認めるべきであると思うのであります。そしてまた、制限はされましても罷業権という基本的な権利を与えなければ、これらの解決というものは不可能になるというふうに存ずるのであります。本年の一月から公労法が適用されまして初めての仲裁でございますので、私は十分な点はわかりませんが、まだ一月から適用されまして日にちが浅く、仲裁委員会といたしましても、まだいろいろの準備が整つておらなかつたということ、あるいは一度に八現業のこの仲裁がなされたという点、そういう点からいたしまして、私ども十分今度の仲裁委員会のとられました事柄につきましては、敬意を表しておるわけでございますが、ただ仲裁委員会の仲裁の仕方に対しまして若干の感じを申し述べますならば、仲裁委員会は、事業の支払い能力という点に最も重点を向けられました。これにつきましては、私どもそれにとやかく言う筋合いもありませんが、その場合、経営の実態を精細に分析した上におきましてそれをなされるならばまだしも、当局側からするところの言質によつてこれをなされる。それから十分に私ども従業員の労働の態様というものを実際に調査しておられません。従いまして、どうしても当局側の言われたところの数字というものがそのまま取上げられまして、賃金改訂におきましても、労働者のこの主張というものはどうしてもおわかりにならない、こういう感じを率直に私どもは今日受取つたわけでございます。  以上簡単でございますが、お答え申し上げます。
  28. 赤松勇

    赤松委員長 井堀君の質問に関連して質問の通告がありますので、これを許します。片島港君。
  29. 片島港

    ○片島委員 ただいまの質問並びに答弁に関連して、今井仲裁委員長お尋ねいたしたいと思うのでございます。各裁定書を見ますと、たとえば全専売のただいま問題になつた支払い能力の問題でありますが「企業的にみてその支払能力には全然問題はないと認められる」というように、非常にきつぱりと支払い能力を認められておるし、それからまた電通公社にいたしましても、これだけの増収をあげておつて、またこれだけの利益をあげておる。「真に労使の協力があるならば、この程度の賃金引上げは可能と予想される。」そういつたぐあいに、経理状況などから見て支払い能力はあるということを、非常にはつきりと書いておられるのであります。こう断定をせられる基礎は、ただいま参考人からお話がありまして、非常に不満のようでありましたが、今井仲裁委員長は、どういう点から経理状況からも支払い能力ありと裁定書の中に明確に書かれておるのか、その点をひとつお伺いしておきたい。
  30. 今井一男

    今井参考人 お答え申し上げます。全部が全部明確に書いておるというわけではございませんが、明確に書いておる部分も確かにございます。もちろんわれわれは、許された時間内の検討でございますけれども、従来の予算の実績、あるいは本年度における中間的な経過、こういつた点に対しまして、なおかつ前申し上げましたように、これが民間企業でありましたならば、企業的に見ましてこの賃上げというものは問題でない、おそらくどこの労働委員会がお調べになりました場合でも、これは問題ないと認められる、こういつたものに対しましては、今御指摘になりましたような書き方をしたわけであります。材料は、今申しました通り征来の予算の実績なり、本年度の済みました上半期の数字等から判断したのであります。
  31. 片島港

    ○片島委員 そういたしますと、実は今井仲裁委員長は、財政問題あるいは会計制度などについても非常に詳しいお方でありますから、非常にきつぱりと言つておいていただけば、私たちそれを自然と信用いたしておるわけでありますが、各企業別にこのような裁定をいたされます場合には、もちろん企業別の経理状況、支払い能力などが、やはり一つの大きなフアクターとなつ裁定をされることと思うのであります。仲裁委員長がそういうふうに各企業別の特殊性というものを十分に考慮せられてやつておられるということは、結果的にいえば、やはり各企業別に、その経理状況などを勘案した上、個別に実施をすべきものである、こういうふうにお考えになつておられるかどうかつ私が特にこれを仲裁委員長にお伺いしておりますのは、政府側の答弁あるいは説明は、いろいろと経理状況の違う八つの企業について、別々の取扱いをしないで、画一的に予算上資金上不可能である、こう言つておられるが、仲裁委員長は、やはりこれは各別に実行すべきものであるとお考えになつておられるかどうか。この点について、仲裁委員長のお立場から伺つておきたいと思います。
  32. 今井一男

    今井参考人 私どもの出しました八つ裁定そのものにつきましては、これに関係したものでありまして、全部私どもの裁定通りに実現されることを望むものでございますけれども、しかし、これを基本的な立場で考えますと、個別的に問題が起つて参ります。それぞれ私どもの前で議論をされる労使の言い方が、全部違うわけでございます。その労使の言い方を基礎にしてわれわれが判断を下しておりまと、結局そこに違つたものが出て来るのが、むしろ当然だろうと思います。これをもしも画一的にやる必要がございますならば、先ほど印刷の杉山さんがおつしやいましたけれども、個別的にやるのはむしろそのバランスを失する方法でありますから、全部企業別に集めまして統一交渉をやるなり、あるいはまた人事院のような一箇所の場所でおきめになるのが、一番権衡をとる方法だと思います。公労法の建前は一つの企業体として個別に団体交渉をやるという建前をとりました以上は、私はそこにある程度の不権衡な問題が起ることは、制度の性質上やむを得ないことだと思います。私ども一つの賃金というものを頭から考えておりまして、こういう労使の主張にかかわらず、この賃金を押しつけるといつた考え方はとつておりませんから、私どもも、労使の主張の中の合理性のあるものだけを積み上げて行つて結論を出そうということになりますと、どうしてもさような結果に相なります。具体的に申しますと、たとえばここで一万五千円なら一方五千円が一応妥当と認められた場合に、ある気の強い当局者はそれを一万四千円と主張し、気の弱い当局側は一万太り千円と主張するかもしれない。しかし、当局の方が一万六千円まで出すという場合に、仲裁委員会はそれが高過ぎるということを言うべき立場でないことは明らかであります。従いまして、その意味からも多少のでこぼこができるのは順序だろうと思います。だから権衡が大事ならば、今の制度を基本的に改めざるを得ない、さように私は考えます。
  33. 片島港

    ○片島委員 やはりただいまの各社別の問題について、他の政府委員の方に質問がございますが、今井仲裁委員長の時間の関係があるそうでありますから、私の質問は後にすることにして保留をいたします。
  34. 楯兼次郎

    ○楯委員 今質問をいたしておりまする点に関連をいたしまして、二、三お聞きいたしたいのであります。きのうもきようも仲裁委員長が出ておられますが、仲裁委員会は賃金委員会ではない。これを簡単に結論的に申し上げますと、支払い能力があるという考え方に立つて、あの裁定の結論を出されたのであろうというふうに考えておるのでございますが、この点について、ひとつ簡単にお答え願いたいと思います。
  35. 今井一男

    今井参考人 支払い能力の点は、私ども確かに一通り検討はしたのでありますけれども、ただ誤解を起すと困りますので、若干申し添えておきたいことは、私極力民間に近いということを申し上げましたけれども、全然民間の場合とは違うと思います。と申しますのは、民間でありますれば、もし会社が非常にべらぼうなもうけをした。そのもうけのためにべらぼうに賃金を上げるということがありましても、これは御随意であります。また、はたの人間がかれこれ言うべき筋のものではないと思います。またその反対の場合があると思います。しかし、国営企業や公社のような特殊な立場にありますものは、かりにもそんなことはないでしよう。かりに、たいへんなもうけがあつたからといつて、それを全部賃金に向けるということは、その性質上適当でない、こういつた問題は当然起るだろうと思います。また逆の場合もそうであります。景気のいい場合に上げなければ、また景気の悪い場合も、下る限度というのは民間の場合とは違う。従つて支払い能力はむろんチエツクされることは当然だと思いますけれども、その程度が民間の場合とはおのずから違つて来る。それは料金にいたしましても、その他運営にいたしましても、政府なりあるいは法律の力によりまして、そこに干渉がある。また事業の性質から申しましても特殊な立場をとつておるから、そこにおのずからなる幅はあります。従つて純粋の民間の支払い能力そのものの議論を、私どもは持つて来ようとするものではありませんけれども、しかし、それに対しましては、画一的にやらなければならないのであります。こういう考え方であります。
  36. 楯兼次郎

    ○楯委員 それではその支払い能力に関連をしてお尋ねいたしますが、私ども公労法を見てみますと、行政措置実施できる場合には、国会議決を求める必要がないというふうに考えておるわけであります。ところが資金上予算上不可能という言葉がありますために、国会議決を求めると明記しておりますが、仲裁委員長としては、予算上資金上不可能なという解釈でありますか。昨日から各単産幹部の御説明を聞いておりますと、これは組合が管理、運営にタツチすることはできませんが、相当立ち入つた自己の企業内の経理内容検討しております。しかしながら、権威づけられておらないというところにうらみがあると思いますけれども、そのことは別といたしまして、資金上予算上不可能な場合の解釈を、仲裁委員長としてはどういうふうに御解釈になつておるか。昨日来からの自己の企業内の経理内容は、これを実施できる、こういうことを口をそろえて各組合の参考人はおつしやつておるわけでございますが、この解釈についての御見解を承りたいと思います。
  37. 今井一男

    今井参考人 私どもの意見がどれほど権威があるかは問題でございますが、お言葉に従いまして申し上げますと、この意味が、公労法ができましたときの現実の扱いましたときの解釈と現在の解釈とが、ほかの事情の変更によりかわつて来たように思うのであります。少くともあの法律が制定されましたときの立法精神は、私前々から申し上げておりますように、民間と同じように企業的な支払い能力、あえて申しますれば、国会が認められましたところの予算のわく、千億なら千億、五百億なら五百億というわくを踏み出さなければならないもの、そういつたものはこれは予算上不可能だ、これはあらためて国会の承認がいる。これは予算の建前からもそうでありましようし、そういつた意味であの立法がされたことは、これは明白だろうと思います。しかし、その後翌二十五年から給与総額予算総則に入りました。給与総額というものは、国会でおきめになつ関係から、かりに全体のわくは動かす必要がございませんでも、そのうちの人件費の部分がかりに一万円か、二万円動きましても、これは全部国会の御承認がなければ変更できない。もちろん特殊の例外はございますけれども、そういつた建前になりました関係から、結果におきまして、その面で国会予算上の手続がいる関係から、それがまたあの十六条の予算上という言葉に結局においてぶつかるという形に相なつて来る。しかし、本来の趣旨はおそらく全体のわく、国会か与えられたところのわくということが精神であつたろう、かように私どもは一応考えております。
  38. 楯兼次郎

    ○楯委員 大体制定当時と大分運用が違つて来たということは、私も感ずるのでありますが、きのうの各参考人説明を聞いておりますと、ベース・アツプという点については、これは完全実施をしておらない。ところがそうかといつて、資金の伴う仲裁の裁定が、全部実施されておらないというような場合もないわけであります。ある一面においては、簡単に言いますと、金額の大きい面においては、実施されておらない。ところが比較的資金の少い面については、行政措置によつて実施をされて来ておるのが、過去の実績であります。そういたしますと、どうもただいまの仲裁委員長の御説明から行きましても、私たちは非常に不可解に感じておるわけであります。そこで私がいま一点お聞きいたしたいのは、なるほどそういうような過去の実績がある。しかし完全実施と行かないまでも、自己の企業内である程度の資金の操作というものが全然つかないということは、私ども考えられないわけです。従つて政府議決を求めて来る理由として、これだけはできるけれども、完全実施はできない、こういうような提案の仕方ならば、私どもある程度了解が行くわけであります。従つて、行政措置でできる場合には国会議決が必要であるかどうかという点について、もう一回だけ御説明を願いたいと思います。あなたの御見解をひとつお願いいたしたいと思います。
  39. 今井一男

    今井参考人 行政措置という意味でございますが、給与総額のわく内で操作ができるために、過去におきましても、裁定がそのまま実施された例は二つばかりございます。また給与総額に入つております賃金の種類がきまつておりますから、従つてそれ以外の賃金――妙な話になりますけれども、そういつた形で実行されている面もあるようであります。しかし今回の裁定は、これは全部給与総額にぶつかりますので、この点は、その意味では予算総則給与総額の条項を全部改訂していただかなければ実行はできまい、かように私ども考えます。
  40. 楯兼次郎

    ○楯委員 そうすると、仲裁委員長の結論としては、給与総額をかえれば、企業内の予算で支出をする財源はある。しかしながら、あるんだが、これはやはり政府のとつておるように、その承認を国会に求めなければいけない、こういう結論でございますか。  それでは今度はひとつ理論的なことをお伺いいたしますが、この資金上、予算上不可能である場合には、国会議決を求める。しかし、行政措置でこれが実施できる場合には、これは政府を拘束するものであるかどうかという点であります。資金上予算上不可能な場合は別といたしまして、小さな金額でございまして、これを行政措置でできる場合には、これは私は両方ともこれを拘束いたしますが、こういう場合には、当然政府を拘束して、そういうものであつて国会議決を求めて来るということは、公労法違反である、こういうふうに私は考えておりますが、この点について御見解を承りたいと思います。
  41. 今井一男

    今井参考人 御質問公労法の十六条の政府を拘束する拘束しないという条文の解釈のようにお伺いしたのでありますが、これも私どもの過去の経験から申しますと、公労法の修正によりまして、意味がやはりかわつて来たと解せざるを得ないのじやないかと、深い研究もしておりませんが、そういう感じを持つものであります。すなわち、昨年の公労法の改正前に、国鉄と専売だけか公労法の適用を受けておりました時代には、団体交渉の対象となりますものは、国鉄公社と組合との関係であります。すなわち、公社という国から離れました別人格、特別な法への労使紛争の問題であります。従つて裁定そのものは、国鉄公社当局と職員側を拘束といたしますけれども、第三者の立場にあります政府は、これと全然関係はない。従つて、これを拘束する拘束しないなんという問題は、むしろナンセンスだ、こういう解釈ができた。むしろその方が順序でなかろうかというような感じを私は持つたのであります。ところが、昨年公労法が改正されまして、国営企業がこの中に入つて来ました。郵政省のごときは、郵政大臣が直接その名前を出して来られたのであります。郵政大臣郵政大臣の立場でおやりになることが、それがすなわち政府といえるかどうか、これは非常にむずかしい問題だと思います。ことに公労法上の政府という場合と、俗に郵政当局を政府という場合と、これはむずかしい法律論になるかと思うのでありますけれども、いずれにいたしましても、前のように公社当局というものとは全然違う立場の人、すなわち国家の行政権をあずかつておる立場の人が交渉相手になるのであります。しかもこれが三十五条によりまして一応拘束される対象になります。そういたしますと、その限りにおきましては、前のような第三者であるというような言い方は成り立たなくなるのじやないか。もつとも公労法の改正に私ども全然タツチしておりませんから、どういう御趣旨で改正になつたのかも、実は存じないのでありますけれども、常識的に考えまして、その解釈がかわつて来ざるを得ないような感じを持つものであります。従つて、そういう観点からいたしますと、昨年の改正後の公労法におきましては、たとえば郵政大臣限りで行い得る問題は、当然これは拘束されざるを得ないことになる。こういう議論には、いやでもおうでもなつて来るのじやないかという感じを持つております。
  42. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今井仲裁委員長にお伺いいたしたいと思うのですが、今の予算上資金上不可能な支出である、ことに今度の場合は、給与総額を越えるから不可能である、こう政府も言い、今井仲裁委員長も、形式論理としてはそれを認めておられるようでありますが、私はことに全印刷の場合、これは今後の収入によつて十分やつて行けるもので、こういう場合においては、単に給与総額がかわるということでなくて、むしろ私は職員の能率向上によつて収入が増加することによる特別給与の中に入るのではなかろうかと考えるのであります。それは十六条に資金上予算上不可能という「資金上」という言葉でありますが、資金上という言葉は、実は政府も言つておりますが、まつたく空文にひとしい言葉であるといわれておるわけであります。これはこの法律ができますときに、英文で来て、その英文を訳したのでこういうことになつた。そこで、一体日本では資金上というのはどういうことであるかということをアメリカ人に聞いております。そのときにアメリカ人が――これは私が単に聞いたのでなくて、松崎前法規課長が本に書いておりますので引用したいと思うのでありますが、アヴエーラブル・フアンドということは、これは自分がもうけた金を自分が使うということだ。すなわち、もうかつた金は自分で使つていいという意味である、こういうことを言つておる。ところが日本の場合は、電電公社にいたしましても、国鉄にいたしましても、あるいは専売にいたしましても、若干積立金を認めておる公社はありますけれども、ほとんど納付しなければならない。こういうことになつて、資金上という余地がない。しかし英訳をしてその法律をつくつた精神は、やはり自分がもうけた分は自分で使つていいのだ、こういう考え方から来ておると思うのであります。そういう公労法の精神から参りますと、少くとも次に書いております職員の能率向上によつて増加した場合、これはベース・アツプであろうとなかろうと、当然特別給与として支給していい。何もベース・アツプであるから特別給与でないという理論はないと思うのであります。ことに最近出ました慶応大学の峯村教授の本を引用してみますると「必ずしも「特別の給与」という名目でなされている必要はない。たとえベース・アツプの協定であつても、当該年度に、右に述べた範囲内の支出で履行が可能であれば、その中で資金を支出し、なお次年度からは、予算作成が義務づけられることになるわけである。」こういうことを書いておられるわけであります。そういたしますと、私は当然特別給与として支出できると考えるわけでありますが、これに対して仲裁委員長の御所見を承りたいと思うわけであります。     〔「労働大臣を呼んで答弁させろ」と呼ぶ者あり〕
  43. 赤松勇

    赤松委員長 労働大臣は、今呼んでおります。あなたの方の理事の了解を得て呼んでおります。
  44. 今井一男

    今井参考人 御指摘の峯村先生の本も松崎さんの本も、実は私は読んでおりませんので、その意味では私が申し上げるより、ただいまお声がありましたように、労働大臣からお聞きになる方が、むしろ順序のように思うのでございますが、私なりの所見を申し上げますと、これは第一次国鉄裁定の場合一に、この席で非常にむずかしい議論になりましたように、その年度末まで全部決算をしてみると、そこに少くとも財源的な余裕があり得る。そのあり得る財産と申しますか、そういつたものを国会で不承認のためにつぶす、これがもし民間の場合でありますならば、少くとも相当めんどうな法律問題を起し得ることに相なる問題であります。しかしながら、現在の資金上予算上という言葉は、給与総額の問題から、形式的に国会の承認をどうしてもとらなければならぬような形に相なつておりますので、第一次国鉄裁定の場合に議論されましたような議論が、そのまま応用しにくくなつた感じは、私ども強く持つのであります。
  45. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも私の質問に対するお答えでないようでありますけれども、峯村教授並びに松崎氏の本を引用しての私の質問でありましたので、この点は、さらに副総理、労働大臣大蔵大臣質問いたしたいと存じます。
  46. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 関連して今井委員長に一言御意見を聞きたいのであります。それは予算総則給与総額の問題であります。一般会計予算では、人件費のためにみだりに増額してはならないと第二十条の末項に書いてあります。それだけの制限にすぎない。あとは一般の予算執行上の制限を財政法上受けるにすぎない。しかるに公共企業体並びに現業に関する特別会計の予算総則によれば、公共企業体労働関係法の適用を受ける職務に関してのみ給与総額を定め、厳重なわくをつけておる。この結果仲裁委員会の機能がまつたく没却されて、仲裁委員会の存在の意味がなくなる、公労法が完全に無視せられるということが、この予算総則の定めのために起つておる、かようにわれわれは考えざるを得ないのであります。こうした予算総則の中のこまかい手続のような規定でもつて、重要な公労法が無視され、仲裁委員会の権能が全然発揮できないというこの事態に対して、仲裁委員長はいかように考えるか、御所見を承りたいと思います。
  47. 今井一男

    今井参考人 私どもの立場から申しますれば、仲裁委員会は、裁定を出すことが法律上の職責でありますので、ただいまおつしやいました条文そのものが仲裁委員会の権能にどうこうという点は、おつしやるほどに私どもは強くは感じないのでありますが、ただお言葉の通り公労法というものをつくつた意義はどこにあるかという点につきましては、疑問を持たざるを得ません。すなわち、これを特別会計とし、あるいは独立採算制にいたしまして、労使の協調によつて平和的な労使関係の樹立によつて能率を上げて、国営企業に伴ういろいろの欠陥を除こうということに目的があるといたしますれば、公労法の適用前の場合になかつたわくを新しく設けるということは、これほど能率を阻害することはないのじやないか。すなわち、経営者というものは、時と場合によりましては、物件費をうんと使つて人件費を減らす方が経営上得策な場合もありましようし、また反対の場合もありましよう。さらにまた人間の数等も、高給者を数少く雇う方が事業上よろしいという場合もありましようし、また反対の場合もありましよう。そういつたことほど一切企業経営者の経営の腕の振いどころだと思います。それをさかさまに、従来なかつたものが挿入されるということは、私どもにもし批判が許されるならば、これはかえつて能率を阻害し、かえつて公労法をつくつた趣旨には遠ざかるのじやないか、かような感じはしよつちゆう抱いておるものであります。
  48. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 この問題は、大蔵大臣なりあるいは労働大臣質問しなければならぬと思うのでありますが、かりに仲裁委員長は、この予算総則において、公労法関係職員に対してのみ給与総額のわくを設けて、何かはかに実益があるとお考えかどうか、その点もついでに尋ねておきたいと思います。
  49. 今井一男

    今井参考人 実益とおつしやる意味がよくわからないのでありますが、とにかくあれができまして、十六条の解釈等もかわつて来た、こういつたことにはなつたようであります。
  50. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 それ以外のことで別にないですね、それだけひとつ……。
  51. 今井一男

    今井参考人 ちよつと思い当りません。
  52. 井堀繁雄

    井堀委員 ただいままで各参考人から御答弁をいただきましたことで、仲裁裁定に対する重要な問題について、大体明らかになつたと思います。そこで、今井参考人にいま一つはつきりお答えをいただきたいと思うのは、先ほどの御答弁の中で、最も重要だと思われますのは、公労法の中に規定されております救済制度でありまする限りにおいては、団体交渉なり調停という手続を経て、それが不調に終つた最後の段階において行われる裁定であることは、争う余地はないところであります。こういう過程において十分に機能が果されなかつたということについては、今井参考人からも、かつは提訴をされました労組側の有力な三つの団体からの発言の中にも、きわめて明白であります。かような法自体の運営が円満に施行できない現状はよくわかつたわけでありますが、そういう中で行われた仲裁裁定がどういうものでなければならぬかということが、私どもにとつては重要になつて来るわけでございます。そこで、その裁定について最も私どもの重視いたしておりまする点について、たとえば基本給に対しまして、従業員側から要求されましたものが、数字の上におきましては八つとも、もちろんはなはだしく大幅に低減されて裁定が行われております。その中で、私が申し上げたことに訂正をしなければならぬと思いますのは、当局側のこれに対する意見と申しましたか、それは確かに当局側調停に対しまして賛意を表された。たとえば印刷、造幣、アルコール、林野、郵政、これらは当局が調停案を承認されたと報告書に明らかにされております。ところが裁定になりますと、まつたく調停の際の数字がそのまま基本給として裁定されておるわけであります。これは今全専売からの参考人の御説にもありましたように、その時期がかなり動いておるわけであります。幅があるわけであります。実は裁定の際における意見を拝見いたしますと、今日の賃金給与の問題は、御案内のように非常に経済が動揺しておる時期でありますから、言いかえますとインフレの早足の時期に起り得る賃金問題でありますことは、問題の外に置くわけには行かぬわけでありますから、時間と金額に対する裁定というものは、その金額の相違が、幅が少いか多いかは別でありましようが、全然その幅が認められていない裁定を行われておるという、こういう事実は、どう見ても裁定に対する何らかの拘束を受けておる感じが私どもいたすわけであります。こういう点で先ほども申し上げるように、ただ裁定のところだけを考える場合には問題でございませんけれども、一番望ましい労使関係の調整の機関である、すなわち法律の望んでおりまする団体交渉でありますから、その団体交渉が、参考人も強調され、あるいは当局の報告書の中にも明示されておりますように、十分な機能が遺憾ながら発揮できなかつたということを繰返しております。でありますから、言いかえますと、裁定に全部が依存しておるということを言つても、これはあやまちでないと思う。すると、その責任は、少くとも三人で構成されております裁定が、日本の労働問題の雌雄を決定する、政府みずから雇用されておりまする労働者の給与問題に対する一つの結論を与えるわけでありますから、その影響するところきわめて甚大であります。そういう場合に、私はただ一例を便宜上、調停に示されたそれぞれの意見を数字の上で今申し上げたわけでありますが、こういう点にも法の現われがない。こういう点について、これは法律をつくつた政府なり国会、また国民全体の非常に留意をいたさなければならないことであります。もし法治国において法律が軽視されたり、あるいは部分的であつても無視されるというようなことがあつては治安の保持はもちろんできません。ことに労使関係規定を法律で定める以上においては、どちらからもそれが破棄されるようなことがあつてはならぬわけでありまして、そういうものに対する指針を与える仲裁裁定の結果というものを、私どもは非常に重視したわけであります。こういう意味で三人の委員の立場については、十分尊敬もできまするし、努力に対して深甚の敬意を払うことにやぶさかではありませんけれども、いかんせん裁定の結果に出て来たものが、何だか当局の意思に押し流されているというふうにとれる。もしこの私のとり方が間違つておりますれば、その点に対してはつきりお教えを願いたい。というのは、私は決して仲裁裁定に対して当事者のような立場で不満を述べるのではなくて、機能が正しく動いているかどうかということが問題であるわけであります。それが正しく、しかも権威ある決定であるといわなければならぬことは申すまでもないわけでありますから、そういう点に対して当事者の両方のうち、どちらかがはなはだしく不満があるようなことでありますればその不満に対して、納得させることを条件にして、やはり裁定があるはずでありますから、そういう点が実は伺いたかつたのでございます。そういう点で全体はとにかくといたしまして、給与の点について、調停の際の結論と、それから相当の期間を置いて裁定なさいました仲裁の際の数字とが、何らの変化を見なかつたというのは、どういう御事情があるのか。これを見ますと、調停のあつた時から、あるいはひどいのになりますと団体交渉が開始されたのは二月から、そして裁定があつたのは九月十四日というように、相当長期間動いているわけであります。こういう期間、物価指数、たとえば東京の商工会議所の物価の異動に関する統計を見てみましても、非常な動きを示しているわけであります。私がこういうことを申し上げることは失礼ですが、今マ・バ方式に対する御所見も明らかにされましたから申し上げるのでありますが、今日賃金の最も大きな要素を占めるのは、労働の再生産、すなわち生活の最低をどう補うかということに大きな問題があることは申すまでもないのであります。こういう問題から考えますと、この裁定はそこに非常に重視されているわけでありますが、そういう動きが出ていないというのは、この仲裁機関に対する何らかの圧力が加えられて来るということに、もし感ぜられますなら、そういう点を除去して行くわれわれは任務がございますから、この点ははなはだ言いにくいことかもしれませんが、日本の法律の権威を維持し、あるいは労使関係の最も重要な段階において裁断をなされるところでありますから、立場を越えていろいろなことを伺いたいわけでありますので、その立場に立つて明確なお答えを願いたいと思います。
  53. 今井一男

    今井参考人 今回の数字が調停案の額にたまたま一致いたしましたので、ただいま私どもとしても、まことに残念な御疑念をいただいたのでございますが、私第一次国鉄裁定以来この問題に携わつておりますので、ただいまの井堀委員の御疑念に対しては最も自信を持つて、最も明確にお答えできます。われわれの仲裁委員会は、占領下におきましても、ただの一度も総司令部とも連絡をとつたことはございません。また政府との関係におきましても、たつた一度、午前中に裁定を出すのを午後に延ばしてくれないかと言われたことが昭和二十四年にございましたが、それはお断りいたしました。それ一回だけでございます。全然三人の委員の独立的な見解でやつている点は、私はどんな判でも押して御証明申し上げますから、御信頼願いたいと思います。  ただ残念なことには、特に今回のように八つの案件が一度に出まして、それをわずか三人の委員が片手間に片づけるということになると、実際調べたいものが、どうしても調べ足りないということに相なります。その意味で、この裁定井堀委員からおほめもいただきましたけれども、決して私どもとしてはほめられるような、そんなことは考えておりません。非常に欠陥の多いものとは思います。しかしながら、労働問題の結論は、裁判所の裁判と違いまして、科学的な真実を発見することにはないんじやないか、そういつたために、自分のすきなだけ資料を集め、自分の心証を得るまでとことんまでやるというわけには行かないものであります。これはもう申し上げるまでもないことで、釈迦に説法になりますが、そういつた意味合いから、私どもといたしましてま、極力両当時者にいろいろの主張、資料を御提出願いまして、それをただしまして、そういうところから組み立てまして、とにかく早く結論を出す。ただ結論における理由書の書き方といたしましては、個別的に各企業ごとに労使の言い分というものに従つてつて書きたい、そういうことをわずかにわれわれとしてそれぞれのニユアンスを出したと申しますか、そういつたことでございます。この裁定に対する御批判は私ども甘んじて受けます。決して私どもとしてそんなにりつぱに考えておるわけじやございません。その点決してうぬぼれているわけではありませんが、但し御疑念の点は、ぜひこれから払拭していただきたい、特にお願い申し上げておきます。
  54. 井堀繁雄

    井堀委員 たいへんありがとうございました。そういう疑いがどちらにも微塵もあつてはならないと思いましたので、明確な御答弁をいただきましてありがとうございました。  そこで、参考のために伺つておきたいのでありますが、今の経過の中に明らかなように、もちろん法の精神から行きましても、実質的に物を判断いたしましても、その事業場ごとに問題があるわけでありますし、そして個々それぞれの特質があるわけでありますから、個々に団体交渉を行われ、あるいは不幸にして仲裁裁定にまで入るにいたしましても、それが個々異なつた立場において、また判断の資料も違つて来るわけであります。ところが傾向的に見ますと、これは労使いずれにも御都合があると思うのでありますが、雇い主が一つでありますから、統一闘争になることは、労組側からいえば当然であります。これは政府あとお尋ねをして明らかにしなければならぬので、そのためにお尋ねをするのですが、実際の姿から行くと、今度の八つの労使の問題は、結果において同一ケースで結論が下されている。多少具体的な事実は別として、そういうことになりますが、問題の紛争を能率的に処理するという立場からいつても、これは各個で相当な時間をかけて、何か形式的な交渉や形式的な調停手続を経なければ仲裁に入れぬからというようなことで、かなりむだ道をとつておるような気がするのであります。そういう点からもつと能率的にやるということであるならば、今日の公労法の精神からいえば、政府のしかるべき責任者を定めて、統一的な――細部にわたることは別として、基本的なものについては統一的な交渉を行つて解決するということを一方でやり、かなり特質の強いものについては、それぞれの事業場において交渉して行く、こういう二本建で団体交渉が持たれる、あるいはそれが調停に入るとか仲裁に入るというようなことにするのが、実際的なような感じがいたしました。それから、もしそれが適当でないとするならば、各事業場において最後段階に入るにいたしましても、そこでけじめのつくように、どちらかにしないと、これは私は公労法の円満な運営ということにはならぬのじやないかという感じがいたしましたので、初めからしまいまで、最も深い関係を持ちまする機関の長であります今井参考人の見解を伺つておきたいと思います。
  55. 今井一男

    今井参考人 私ども決して現在の公労法が、その所期するような満足な姿で運営されておるというような感想を抱くものではございませんが、といつて、しからばどういつた方法によればこれが理想的な姿になるかということにつきましては、遺憾ながら私もただいまここで自信のあることを申し上げかねます。ただいま統一交渉と個別交渉と二つにするようなことをおつしやいましたが、これも確かに一つの方法であろうと思います。しかしまた、同時に、公社の場合ならば公社予算というものは、これは憲法上は別に国会にかける必要はない問題であります、財政法上はございましても……。従つてこの問題はまだある程度解決方法がつきましても、国営企業の分は、どうしても憲法上国会のごやつかいにならなければならぬのであります。そこにやはり予算的な非常にむずかしい問題が残り得るのじやないか。その面によほど各企業の独立性というものを強調して行きませんと、最終段階において、まあ現在とは違つても、やはりある程度そういつた面にぶつつかる範囲が出て来るのじやないか。ぼんやりとはそういうような感じを持つておりますが、ただ、今申されました一つの御提案は、確かに一つの方法であろうと私ども解しております。
  56. 井堀繁雄

    井堀委員 仲裁委員長には、個人的な意見まで伺つて、たいへん恐縮であります。なおお尋ねいたしたい点もございますが、御所用もございましようから、今井参考人に対する質問はこれで打切りたいと思います。  なおこれに関連いたしまして大蔵大臣労働大臣、所管の八つの職を統轄されまする他の国務大臣お尋ねいたしたいと思いますが、御出席がないようでありますし、時間の御都合もありますから、質問を留保させていただきます。
  57. 赤松勇

    赤松委員長 本件に関しましては、労働委員会におきまして継続審査を決定いたしまして、ただいま私より議長の手元にその旨を要求いたしまして、おそらく本日の本会議で御承認をいただけるのではないか、かように思つております。従つて今井仲裁委員長には、休会中といえども、あるいはしばしば御出席をお願いするかもわかりませんが、よろしくお願いいたします。  なお、ただいま各委員会理事諸君の御意見を聞きまして、午後は一時半に再会してもらいたい、それまで暫時休憩してもらいたいという御意向でございましたので、さよう決定したいと思いますが、三公社五現業に対する質疑の通告もたくさん出ておりますから、政府及び公社側においては、できる限り適当なる答弁者をそろえていただきますように、委員長よりお願いしておきます。  それでは暫時休憩いたしまして、一時半より再開いたします。     午後零時四十一分休憩      ――――◇―――――     午後二時三十八分開議
  58. 赤松勇

    赤松委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。  質疑を続行いたします。井堀繁雄君。
  59. 井堀繁雄

    井堀委員 政府を代表いたします総理大臣お尋ねいたしたいのでありますが、御出席がございませんので、これにかわるべき責任ある御答弁を国務大臣にお願いしようと思いますが、国務大臣労働大臣お一人のようでございまするので、かわつて御答弁を願えるならば、責任ある立場においてはつきりお答えをいただきたい。もしお答えができなければ、保留いたしまして、総理の出席の機会を得てお尋ねいたしたい。次は各省の関係事項についてもそれぞれ所管されおりまする大臣の御意思をお尋ねすべきが妥当と思いまするが、これも御出席がありませんので、国務大臣の資格において、これが代行できるならば、これにかわつての御答弁を願いたいと思います。  第一にお尋ねいたしたいのは、去る本会議におきまして、政府仲裁裁定の尊重をそれぞれ明言されております。当然なことでありますが、その裁定を尊重するという具体的内容について、お尋ねをいたそうと思うのであります。今裁定につきまして、この委員会におきまして、仲裁裁定委員会委員長から明らかにされておりまするように、中心は何といいましても、基本給の昇給を含む経済要求であります。でありますから、こういう一切の裁定を尊重し実施するという意味であろうと思いますが、ここに提案しておりまする法第十六条によりまする予算上、資金上の理由で、政府昭和二十八年度政府関係予算にその準備のないことを理由にしております。そうであるといたしますならば、その実行のためには、当然補正予算が用意されなければならぬと思うのでありますが、その用意がいつ国会に上程されるかを、この際はつきり伺つておきたいと思います。  次にお尋ねいたしたいのは、団体交渉についてであります。この報告によりますと、各省それぞれにおいて数次にわたつて団体交渉を行われたという報告が出ております。数のことを言うのではありませんが、仲裁裁定委員会に両者から仲裁を要求いたしまするには、それぞれの理由がつまびらかになつておるはずだと思いまして、先ほど委員長説明を求めましたところ、団体交渉はほんの形式的なものであつて団体交渉とみなすことは疑わしいというきわめて明確な御発言がありました。そこで、こういう団体交渉をもつて責任ある雇い主の立場として責任を十分とつたものとお考えかどうか。もし団体交渉が、今井委員長のおつしやられるような実情であるといたしますならば、公労法の精神にいう労使関係が一番望ましい姿である団体交渉に期待が置けない。従つて調停意味をなしませんし、結果は仲裁裁定というごく少数の最も限られた限界において、こんな貴重な労働問題の解決をするということになるのでありますが、こういうような今後労使関係の解決の機関をどうするというお考えであるかについて伺いたいのであります。  そこで具体的にお尋ねをいたしますと、団体交渉がどうして法律の希望するような形に運営ができないか、その原因をお尋ねいたしたい。  次にその原因が明らかにされて来るといなとにかかわらず、事実において困難であつたということになつておりまする以上、それでは今後も依然として仲裁裁定のごやつかいになつて、政府は労使関係における労働条件の処理を続けて行かれるという御意思か。でないとすれば、どういう方法で団体交渉を円滑に今後押し進めて行く方法をお考えになつておるかどうか。  第三にお尋ねをいたしておきたいと思いますのは、給与の内容についてであります。給与につきましては、今日仲裁裁定の場合にも明らかにされましたように、仲裁裁定委員会が、賃金のような非常にむずかしい、いわば社会的経済的に、ことに労資関係の一切を決定するといつてもいいくらいに重大な、しかも複雑な困難な問題を、こういう委員会が処理するということは適当でないという意味も明らかにされておるのであります。そうすると、政府賃金給与に関する問題を処理する自信を、あるいはその責任をみずから懸念されておる委員会に依存するというような現状であつてはならぬのでありまするから、従つてそこには政府自身がはつきりした労働条件、ことに給与に関する確固不動の方針というものを持たなければ、今後の労務管理が遂行できないようになるのではないか。従つて、それぞれの職種やいろいろかわつた業種を持つておいででありますが、それぞれについて何か格づけをして、統一的な均衡のとれた労働条件を打立てるということでありますならば、そういうことを政府のどの機関でおきめになるのか、あるいは従来通り各個ばらばらでやるとすれば、団体交渉がスムーズに運営できるような権限というか、そういう立場をそれぞれの所管の責任の地位にある人、あるいは衝にある人に与えなければならぬのでありますが、そういう与える方針について、何か決定しておりますならば聞きたいし、決定してないとすれば、どうするかという政府責任の立場を明らかにしていただきたいと思うのであります。  次には賃金のきめ方であります。今申し上げました通り仲裁裁定政府の賃金あるいは労働条件の基準を定めるところだといつてしまえば、この質問意味をなさぬのでありますが、まさかそうは言わぬと思います。そうだとすれば、一体政府国鉄の場合あるいは全専売の場合、あるいは印刷のごとき、民間企業とまつたく選ぶところがなく、製紙事業のような生産事業を営む職場を持つておるのであります。こういうようにいろいろなものを持つておりますものに対する賃金なり待遇なりというものについて、民間給与と均衡をはかるということを考えなければならぬことは申すまでもないことでありますが、その民間との均衡をはかる場合に、一体何を目安にしてどういう根拠に基いてこういう種類の賃金を定めようという方針を持つておるか。全般的なものといたしましては、公務員との均衡の問題も出て来ると思いますが、そういう賃金の最も重要な要素と申しますものは、何といいましても政府の場合は一般の営利企業と異なるのでありまして、説明するまでもなく、営利企業はその支払い能力の限界は、営利社団である限りにおいては工場、会社の破綻をしてまで賃金の支払い能力を要求することは限界であります。政府の場合はその限界が多少異なつて来ると思うのであります。こういう立場の違つた雇い主が定める労働条件というものは、民間の労働条件にいつでも範たるものでなければならぬことは言うまでもありません。そういう意味でも民間給与との関係だけにその均衡を保つということだけではなくて、むしろこうあるべきだという一つの範をつくるに足る計数が用意されなければならぬと思うのでありますが、そういうものを御研究なさつておるか、またそういうものをどこでおやりになつておるか、そういうものをお示しになつて各省の交渉を進めさせておるのかどうか、あるいはまた逆にそういう事柄について報告を受けて調整をとるというようなことをやつておいでになるかどうか、やつていないとするならば、今後そういうことについてどうなされるか。ことに賃金の問題につきましては、労働基準法に基いて政府は必要な場合には最低賃金をも定めなければならぬという日本の法律構成であります。こういう関係からいたしまして、どうしても賃金に対しては政府自身が確固たる方針を持つていないはすがないと私どもは思うのであります。そういうものがあつて、それを内々交渉の衝に当つている人々に内示して交渉せしめておるのか、そういうものが全然ないのか、ないとするならば、まことにずさんきわまる話だと思います。最後に法十六条と二十五条の関係について、これは労働大臣が本会議におきましてはつきり答弁されておることでありますが、私はここで法律解釈について法律学的な議論をしようと思うものではありません。こういう法の生れて来た社会的なそれぞれの理由が、むしろ重要であろうと思うのであります。ことに政府がみずから雇用する政府職員の労働条件をきめるときに、この法律に依存するという現状を、先ほど来具体的にお尋ねした場合にもおわかりのように、こういうものか、ことに労働大臣についてお尋ねしなければなりませんが、かつて第十六国会でスト規制法を論議いたしまする場合に、政府はたびたび言つております。民間の労働者、ことに民主主義の自由を保障されておりまする今日の日本の労働者の組織というものは、労働者の社会的、経済的な地位を保障する基本的なものとして、団結が裏打ちされておりますことは申すまでもありませんが、そういう労働者の基本的な立場というものについても、政府は公共福祉という名文句を表に打出して参りまして、とにかく全体の利益のために、労働者のこういう生活を守る唯一のとりでも制限をしなければならぬという理由で、あの法律の提案が行われました。これは私どもからいいますと、もちろん反対でありますから、そのことをここで繰返そうとするものではありませんが、百歩譲つて政府の主張通りに、あの当時の労働大臣説明を承認いたすといたしましても、ここで公務員の場合にこれを考えなければなりません。公務員の場合に、あるいは今当面しておりまする公企業体あるいは政府の経営する事業のもとにおける労働者については、一般の労働者の罷業権を、この法律によつていろいろと制約を加え、またそれにかわるべき保護を与えておることは明らかでありますが、こういう民間の労働者と同一の労働条件しか与えられない労働者について、争議権がはつきり、ここでは制約ではなくて奪つておるわけであります。労働大臣はたびたび、争議権養うというようなことは考えていない、争議権の好ましからざる行為の一、二を規制するという意味であの法律を出したということを答弁されておるわけであります。ところが、今日この公企労法のもとに置かれておる労働者が、法律において争議権がまつたく制約されておりますことは、スト規制法と比較いたしまする場合に、明確になつて来るわけであります。こういう点で、労働大臣は本会議におきまして、何か予算上資金上の理由仲裁裁定が守られなくても、法律の上から矛盾を感じない意味の法律論を展開されておりましたが、私は条文の解釈をどうこうというのではなくて、今申し上げた大筋で明らかに労働者の行過ぎを一部是正するということについてもたいへんやかましい時代、まつたくそれを規制しておる法律であり、それにかわるべき仲裁裁定でありますることは、述べるまでもないわけであります。だからこれがはつきりしていないと、先ほど来私の質問をいたしましたことについても、あいまいになつて来ると思うのでありまして、もし依然として、労働大臣としては、労働者のスト権を一方において奪つておるが、その奪つた理由について何か確固たる信念でもおありでありまするならば、この際それを伺つておきたいと思います。その御答弁のいかんによりまして、この点については少しく質疑を続けたいと思いますので、一応御答弁を願いたいと思います。
  60. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えを申し上げます。御質問は大体五点のように承りました。まず第一点は、補正予算の第二次的のものを考えるべきではないか、それはいつごろであるかということであります。私どもがこの議案について御審議を願つておりますのは、すでに本院において御議決を願い、今参議院において御審議中の予算給与総額におきまして、資金が出せるかということで御審議を願つておるわけであります。ただいまのお話は、当然の御質疑かと思いますが、ただ私といたしましては、できる限り仲裁裁定を尊重すべき立場にもあり、また国家公務員並びに公共企業体あるいは特別会計職員の給与を改善し、その利益を保護するという立場にございますので、できる限り関係財務当局等にも事情を話し、その間に話を進めたいと考えておるのでありますが、何分にも国家財政が非常に逼迫しておる際でもあり、また予期せざる大災害を受けた直後でもありまするので、非常に予算上の措置がむずかしいということを言われておるのであります。従いまして、この点はどう相なりまするか、私としましては、できる限り努力をいたすのでありまするけれども、今ここにどうなるということについては申し上げかねるわけであります。  次に、団体交渉について、これが適正かつ協力的に行われていないのではないかというような御趣旨でございましたが、私はこれは大いに忠実に団体交渉が行われたものと考えておるのであります。しかしながら、政府機関あるいは特別会計上の制約を受くる公社あるいは公共企業体の建前といたしまして、そこに予算上の制限があることは当然のことであろうと考えるのであります。  さらに給与の内容につきまして、仲裁という制度そのものと、あるいは賃金を確保する何か権威のある委員会というものと別に考えて、そういうものを設けたらというような御趣旨の御質問だつたように思いましたが、今まで給与の内容につきましては団体交渉によつて解決せられたこともありまするし、調停案がまたそのまま実施せられたこともあります。仲裁が実施されたこともあるのでありまして、現状におきましてはいろいろ困難もございまするが、これといつて、今政府においてこれにかわるべき方法を特に考えるということもないのであります。ただ内閣を中心にいたしまして、公共企業体あるいは特別会計職員の給与の内容についてさらに話し合つて行こうという考え方を持つておることを申し上げておく次第であります。  第四に、ここで議題なつておりまする関係職員の仕事の内容の問題がございましたが、これらの公社あるいは公共企業体の仕事の経理的な面におきましては、大体国への繰入れ、余剰ができれば国の会計を補助するという建前にございまするので、この点においては一般の営利企業と異なつておると思います。なおあらゆる場合そうでありますが、賃金というものは、仕事の内容、量、質ともに同量のもの、あらゆる場合観念的に同じであるべきものでありましようけれども、実際に同じであるということは、なかなか困難なことではないかと思つておるのであります。  最後質問がございましたのは、十六条と三十五条との関係でございます。これはもう申し上げるまでもないことかと思いまするが、三十五条の前段には、仲裁委員会裁定当事者双方を最終的に拘束するということを書いてございまするが、その但書におきまして「十六条に規定する事項について裁定の行われるときは、同条の定めるところによる。」こうあるのでございまして、十六条、すなわち「予算上又は資金上、不可能な資金の支出を内容とするいかなる協定も政府を拘束するものではない。又国会によつて所定の行為がなされるまでは、そのような協定に基いていかなる資金といえども支出してはならない。」とあるのでありまして、何か本会議におきまして、この議案の議決を求むることは、政府が法律を蹂躪するというようなお話がありましたから、そういう趣旨ではないということを申し上げたのであります。
  61. 赤松勇

    赤松委員長 ただいま各委員会理事諸君の御了解を得ました通り、暫時休憩いたします。     午後三時四分休憩      ――――◇―――――     午後三時七分開議
  62. 赤松勇

    赤松委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。  なおこの際委員の皆さんに御協力を得たいことは、発言の時間につきましては、理事会におきましても何ら打合せをしておりません。なお運輸委員会郵政委員会その他から強い発言の要求がありますので、ひとつ御協力をお願いしたいと思います。井堀繁雄君。
  63. 井堀繁雄

    井堀委員 連合審査でありまするから、また関連質問がたいへん多いようでありまするので、できるだけ圧縮してお尋ねいたしたいと思います。  今労働大臣の御答弁の中で、ややはつきりいたしましたものは、従来の報告の中もにあるように、政府と労働者との間で話合いをする統一的な機関を設けてもよいというお考えのように今お聞きしましたが、ただ話合いというのでなくて、私の伺いたいのは、団体交渉の場としてそういうものをお考えにならなければ、ただ懇談するという程度でありましては、私は今までの経過から見て問題解決の有効な手段とは考えられないのであります。この点について何か統一交渉という言葉が強ければ、結果においてそれと同じ性格を持たせるような意味での合理的な折衝を行う方法をお考えであるかどうか、もう一ぺん伺つておきたいと思います。  それから他の問題につきましては、明確な御答弁をいただけませんでしたのは、私の質問が不得要領であつたからかもしれませんが、時間の関係もありますから繰返して質問いたしますことは遠慮いたしたいと思いますが、重要だと思われる点について、もう一度だめを押して聞いておきたいと思います。それは労働条件の点であります。これは労働大臣でも十分御答弁いただけるものと思うのでありますが、今、日本の労使関係の中で、経済要求の問題については非常に困難な条件が折り重なつておることは申すまでもございません。これは大蔵大臣がおいでになれば、ぜひ伺いたかつたのでありますが、かわつて御答弁が願えるならばはつきりいたすと思います。新聞の記事で拝見したのでありますが、政府は人事院の勧告や仲裁裁定の実行、すなわち給与の引上げによつて物価を刺激し、それがインフレヘの要因をなすという理由でこれを拒んでいる。いま一つは、御答弁になりました災害その他の政府関係する予算がかさんで来たのでという理由であるようであります。第一のインフレ説でありますが、これに対して国務大臣としての見解をぜひこの際伺つておきたいと思います。私どもは賃金の引上げ、給与の引上げがインフレを刺激する、悪性インフレヘのきざしになる。あるいは給与の改訂というものがそういう意味ではばまれるとするならば、これは申すまでもなく労働者の生活を破綻させる以外の何ものでもないわけであります。こういう公式的な考え方で了解ができるほど、今日単純な状態でないことは申すまでもありません。しかし、こういうことが新聞に出ておりましたので、ぜひひとつ明らかにしていただきたいと思います。  それから災害その他政府関係予算の増加によつて、これを予算化することに対して障害になるよう――また今度の補正予算に出すことが、私は一番忠実に仲裁裁定を尊重する近道であつたと考えておりますが、今回の補正予算政府がこれを提案をしなかつたということは非常に遺憾であつたと思います。しかし問題は、先ほど来私のお尋ねしておりますのは、どんな無責任な民間の企業者であるといえども、労働者を雇用する限りにおいては、その労働者に対する賃金なり労働条件なりについては、労働大臣の所管されておりまする労働法規をごらんいただければわかるように、基準法によつても、あるいは労調法によりましても、労働組合法によりましても、労働者を保護するという一面においては、経営者に対して強い義務を負わしておるわけてあります。それを怠りまするならば、それぞれ強い処罰を規定しておりまする法規が現存いたしておるわけであります。そういう一方には民間の経営者に対して義務を迫る立場にある行政力を持つておるわけでありますから、それが他方において労働者を雇用する場合において、いやしくも仲裁裁定に頼るような現状を、よもや労働大臣としては適当なものとは考えられぬと思う。これはひとつ労働大臣の立場で御答弁を願いたい。そういう意味で、政府のいう予算化の問題が拒否ということになりまするならば、逆に申しますと、民間の経営者が、不事の災害とか、あるいは財界の不況というような社会的な原因に基いてその能力を失つた場合に、賃金に対する債務は一体どうなるのか、そういうことは非常に危険な弁解になるのだ。だから負担能力の問題でありまするのならば、たとえば、額の大小をあげて言うならいいが、従来と違つて災害その他があつて仲裁裁定の全部が行えなければ、その部分はこうこうして行うというような誠意がやはり求められておるわけであります。こういう点についてのお尋ねをいたしたいために、賃金に対する、あるいは労働条件に対する政府の確固たる方針があるかないかをお尋ねしたわけであります。極端でありまするが、もしそういうものがないということでありまするならば、民間の経営者に対するきつい義務を、政府みずから喪失すると思うのであります。そういう意味で非常に重要だと思いますからお尋ねをしたので、もしなければこれはやむを得ません。あるともないともお答えがいただけなかつたのであります。その点に対するはつきりした御答弁を聞きたいと思います。いろいろ時間の関係もございまするので、私一人ばかり独占することはどうかと思いますが、その重要な点についてだけ、ぜひ明らかにしていただきたいと思います。
  64. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私のお答えが非常に言葉が足りなかつたために、誤解があつたかもしれませんが、御質問の第一点の、統一交渉を政府は考えておるのではないかということでありますが、私はそういう意味で申したのではなくて、今問題になつておりまする三公社、五現業の問題を含めて、政府間のいろいろ給与に関する問題を政府自身において話し合つてみることが必要ではないかと思つておるということを申し上げたのであります。御承知のように、国鉄法、専売公社法を見ましても、あるいは特別会計の給与準則を見ましても、国家公務員との間に連絡をとるということも書いてあるわけでありますし、その他の、全然関連なしにまつたく他を考えずに、それぞれの給与をやるということが一般の労働政策上から見ましても、完全妥当なものかどうかということについては、私どもも疑念を持つておるわけでありまして、そういう点を話し合つて行くということはよくはないか、こう思つております。  御質問の第二点のインフレのことでありますが、給与を上げればすなわちインフレになるということでございます。私はその間に消費購買力がふえるということが、インフレと全然無関係であるとは申しませんが、それよりも、むしろ問題は、こういう支出をする場合の財源が問題であろうかと思うのであります。財源のないところに無理な支出をすればインフレになる。そこに何か適当な財源を見つけるべく、大蔵大臣としても努力をされたいということを申しているわけでございますが、大蔵大臣の申しますには、本年度の災害において財源は枯渇している、それで非常に困難だと申しておるのでありますが、この問題については慎重に検討をしようということを言つている次第でございます。なお国庫大臣としての大蔵大臣がそうおつしやいますのは、大蔵大臣の立場からはそうでありましよう、また各省の担当大臣の意見もございますので、私の立場といたしましては、できるだけサービス的な立場に立ちまして、その間のあつせんをする、そういうことであります。
  65. 井堀繁雄

    井堀委員 ごく簡単にもう一度はつきりしていただきたいと思います。インフレ説については、これは仮説だというふうに否定的にはつきりしていただければけつこうです。  それから次に、災害等の関係で負担の困難を理由にしている点については、大蔵大臣でなければ答弁できなければ、これは無理に答弁することは困難だと思います。  次に、労働大臣としての立場ですが、今経営者側の立場に立つ、すなわち政府関係者の話合いをするということでありますが、それは政府内のことですから、とやかく言うことはないのです。私がお尋ねしているのは、各個ばらばらな団体交渉を行つているのですが、そのことが悪いというのではない、各個でやるならば、各個でやれるような構えを、すなわち権限を与えてやらなければ、団体交渉は事実上無意味なものになることは言うまでもありません。団体交渉が、法の精神に基いて正しく運営できるようにしてあげるためには、権限を付与しなければいけません。その権限も与えないで、困難な団体交渉の衝に当らせるというやり方では、何回やつてもこんにやく問答になろうかと思います。察するに、そういう権限が付与されていないので、表向き労働組合に対しては答えられないので、不得要領になり、また労働組合もそういうようにだんだん麻響棄て、ずるずる飛び込んで来るのではないかと思う。ですから、団体交渉をやれるようにするということについて、政府は誠意があるならば、そういう権限を付与する。権限を付与するということが適当でないとするなら、どういう政府の立場にある人が責任の衝に立つて、全体の労働組合に対して団体交渉に応ぜられる考えであるか。その二つがあるのではないかという立場をとつて質問をしておるのでありますが、そういう必要がないというならば、団体交渉の法の精神が主張いたしますように、円満にやつて行けるというはつきりした見通しを伺いたいと思います。
  66. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 インフレ説は仮説であるとは、私申しておりませんので、問題は財源の点であろうということを申しておるのです。給与にいたしましても、何にいたしましても、そうでありますが、財源のない支出をいたしますれば、赤字支出はインフレを呼ぶ、そういうことを申したのであります。  なお統一交渉の問題についてでございますが、各企業体それぞれの権限を付与されまして、団体交渉をするわけでございまして、その間の関連が、使用者といいますか、政府側といいますか、その間において連絡をとられることは、全般の給与体系から見て望ましいことであると考えているわけでありまして、かりに統一交渉の権限ということを考えてみましても、これは統一してやるということは、各企業体にそれぞれ権能を与えております以上無意味でありまして、そうしましても、結局出庫財政支出の問題になつて来るのでありますから、それよりは、むしろ各企業それぞれの特性の問題においてそれぞれ問題を考えて、その総合したものを国家財政との牽連において考えるというふうに、現在の方法でよろしいのではないか、こう思つております。
  67. 井堀繁雄

    井堀委員 大分はつきりして来ましたが、最後の、今の各事業庁ごとに団体交渉を持つということが明らかになつて、私もそれは賛成です。そうすると、実質的に団体交渉が行われるようにするためにはどうしたらいいと政府はお考えになるか、その点をひとつはつきり御答弁願います。
  68. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、現在において団体交渉が実質的に行われていないとは思つておらない。現在のところ、調停の段階を経ずして問題の解決したものもあります。賃金の問題についてはございませんが、他の問題についてはありますし、調停の段階において解決した問題もあります。私はこれでよろしいと思つております。ただ、公共企業体の性格上、国家財政のわくの影響をこうむる、やはり国家公共のために仕事に従事している人の受けるわくというものがある。これは公共企業体というものそのもののわくをはずさない限り、やはりのがれることのできないものではないかというふうに考えます。
  69. 井堀繁雄

    井堀委員 けしからぬ御答弁を伺つたと非常に残念に思うのです。他の大臣ならともかく、労働大臣ともあろう者が、団体交渉がうまく行つてないとは思わないという御答弁はどうかと思うのです。うまく行つておるのなら、仲裁裁定が起るはずがない。そんなことは釈迦に説法になるが、団体交渉がうまく行かないで、その次の段階としてはあつせんなり調停なるものがあるのです。それもうまく行かないで仲裁裁定に入つたのです。これは労働法のイロハであります。これはともかくどんな弁明をしようと事実です。団体交渉がうまく行かない。それを白を黒と言いくるめたのでは、私どもの質問意味をなさないし、団体交渉がうまく行かないという事実はいかんともしがたい。だからこそ団体交渉をうまくやるようにするというような、私がそんなことを言うのはおかしいのですが、一体労働省は民間に団体協約を結べとか、団体交渉はこうあるべきだということを指示されておる、それは一貫しております。仲裁裁定最後の段階です。元来労働問題を裁定に持つて行くことは、下の下であります。そんなことは言うまでもない。その下の下の状態がここに来ているという事実は、どうすることもできぬのじやないか。その欠点を押し隠すような答弁はどうかと思う。だから、どうしても団体交渉をうまくやつて行くことを考えなければ、問題の解決にならないのじやないか。もう一度、その点についてはつきり御答弁願いたいと思います。
  70. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 今申し上げておりますように、公共企業というものは、政府関係機関予算のわくに縛られております。それからなお、特別会計の方はもとより特別会計予算のわくがあるのでございまして、そういうわくがございまする以上、理事者側におきましても、いわゆる不覊奔放に言いくるめるわけには行かない。これは政府関係機関予算なり、特別会計なりの性格上の問題なのであります。そのわく内において団体交渉がうまく行かぬという問題は、それはあるのです。しかし、うまく行く場合もある。何も頭からこれをうまく行かぬからときめてしまうことはない。予算のわく内において研究すべき余地が多分にあると考える、こういう趣旨であります。
  71. 井堀繁雄

    井堀委員 何も言葉じりを争つておりませんから、もう少し真剣に御答弁を願いたいと思うのです。公共企業体だから団体交渉がうまく行かぬかのごときお答えが今ありましたが、それは逆じやございませんか。私企業の場合は営利追求で、これが主目的ですから、賃金問題、分配問題になりますと、なかなか妥協がむずかしいということは、私はむしろ当然だと思います。公共企業体の場合には、全部ではありません。全部ではありませんが、たとえば印刷の例をとりましても、製紙をやつておりますが、その製紙は自家生産です。自家生産でありますから、その結果、すなわち国が求めるものに応じられるという条件が整えば、こういう場合には、採算を割つても労働者の要求を満たし得るということが可能なのです。それから郵政のように、もつばらサービスを事とするようなものは、言うまでもなくそれは採算よりは国の行政的至上命令の方が優先するわけでありますから、そういうようなものについて、少くとも今日の労働組織を持つておる労働者は、社会的地位や、公務員として、あるいは公共事業に従事する労働者としてのりつぱな誇りを持つておると私は思う、責任もまた感じておると思うのであります。そういう相手方を信用し、相手方の人格を尊重して労働条件がとりきめられるということを、労働省は説いておいでになる。団体交渉は、誠心誠意相手方を尊重し、またみずからを主張するという建前を説ついておいでになる。どうも労働大臣の答弁といたしましては、私はふに落ちないのであります。もう御答弁をしていただけなければやむを得ませんけれども、はつきりしていただく必要がある。
  72. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お言葉の通りに申し上げられればよろしいのでございますが、私は残念ながら井堀さんと見解を異にするのであります。私は私企業であれば自己の責任においてその会社の経理の終局について、ただちにはね返りについて責任を持ち得る、そこに思い切つた判断がなし得るのであります。しかし御承知のように国の全額出資の公共企業あるいは特別会計の中の公共企業体をあずかる理事者側といたしましては、やはり国民の信託を受けてその経理を行わなければならぬ。そこで国民全体すなわち予算に対する、財政に関することの影響というものを考えなければならぬ。それはだれによつて判断されるかといえば、今の公労法の建前から申しまして、結局国会でございましよう。そこまで考えてその経理のやり繰りを判断するということになる。そういうことになりますとへその敏活なる判断――これはおれが責任を負うからよろしいというような団体交渉の場合の闊達自在なる理事者側の判断というものは、なかなかしにくいのじやないか。そこで私の申し上げておりますように、公共企業体の持つ性格から来るところの問題があると思う、こういうことを申し上げておるのであります。
  73. 井堀繁雄

    井堀委員 それでは、もうその問題は意見の相違にいたしましよう。そこで意見の相違した労働大臣の主張についてお答えを願おうと思う。公共企業体の団体交渉がなかなかまとまりがたいという御主張が正しいといたしますならば、それならば団体交渉に頼るという公労法の精神を改められなければならぬと思う。それでは仲裁裁定調停はなおさら困難、仲裁裁定に依存するということは建前になつておると思うのでありますが、そう理解してよろしゆうございますか。
  74. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 団体交渉がまとまりませんければ調停に持つて行く、調停によつて解決できなければ仲裁に行く、仲裁によつて予算上資金上不可能ということであればこれは国会において議決を願う、こういうことよりしかたがないと思つております。
  75. 井堀繁雄

    井堀委員 労働大臣とは見解の違いがございますから、この点については、ぜひ責任ある総理もしくはこれにかわるべき国務大臣の答弁を伺つておきたいと思います。ということは、このことは吉田政府の労働政策、日本の政府の労働政策の基本的な問題に関連いたしますので、労働大臣と私どもの見解の食い違いだということにいたしまして、この点は質問を保留いたしまして、他日責任ある政府の御答弁を伺うことにいたします。一応これをもちまして他の方に譲りまして質問を打切ります。
  76. 赤松勇

    赤松委員長 館俊三君。なお楯兼次郎君からも関連質問があるそうであります。幸い運輸大臣がお見えになりましたから、どうぞ適宜発言を求めてお願いいたします。
  77. 館俊三

    ○館委員 労働大臣お尋ねいたしますが、最初井堀委員団体交渉のことでお聞きになつたので、私もそれについての関連質問委員長にお願いしたのですが、大分井堀委員が委曲を尽されましたので、私は簡単に質問をしておきたいと思います。今井仲裁委員長は、長年仲裁委員長をやつていらつしやるのですが、その人が、現在の団体交渉は無意味だということをおつしやつておられる。そこで、こういうことを土台にして井堀委員がお聞きになつたのでありますが、労働大臣はこれに対してどういうふうにお答えになつかというと、忠実にやつているのだということを最初言われた。その通り団体交渉は忠実にやつております。労働者の方といたしましても、国鉄当局といたしましても、少くともこの機関につかまつてつて問題を解決するよりほかに道がないのでありますから、無意味だと当局も考え、国鉄労働者も考えておつても、この道しか行く道がございませんので、それで忠実にやつておる情ない状態なのであります。その次に井堀委員が、何かこれよりかわつた方法がないかとおつしやつた。ところが、これよりかわつた方法がないというお話でした。そこでお聞きしたいのですが、忠実にやつていらつしやる表面だけをごらんになつておつたのでは、労働大臣はお勤めが困難ではないかと私は思つております。そういう表面的なものの見方ではいけない。かわつた方法はないかという質問に対して、ないと言つておられるような平面的なお答えでは、少くとも労働大臣はいけない、私はそう言いたい。そこで、なぜ今井仲裁委員長が、この団体交渉が無意味だということをおつしやつたかという意味について、私はこう考えておるのであります。それは、私も最初の地方調停委員として、そのとき如実に無意味であるということを感じました。第一に、交渉する時分に国鉄当局に聞いてみますと、一文も金がないということを最初から言つておられた――これは二十四年の話です。一文も金がないのに交渉ができるわけはないと私は言つた。少くともこれは取引の場であるから、百円でも二百円でもふところに入れておつて、向うが二百円と言つたら、百円しかないから百円にしてくれということで交渉ができる。手振りはつかんで賃金に関する交渉を最初から切り離していたのでは、交渉が成り立たないということが、第一回の地方調停委員会で、当局に会つたときの私の言い方でした。そこで私は言うのですが、この団体交渉の両当事者は、交渉能力を持つていなければならぬのであります。私は現段階において、国鉄総裁も、それから国鉄の組合そのものも、団体交渉当事者としては無能力者であると思つておるのですが、その点について、労働大臣の御見解を聞きたいのであります。
  78. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 国鉄の当局者が無能力者であるかということですが、その批評は差控えたいと思うのであります。
  79. 館俊三

    ○館委員 国鉄の当局者が無能力者というのではない、国鉄の当局者が、団体交渉の場に立つておる場合には、無能力者である。それなら労働組合の方はどうかといえば、これも無能力者である。無能力者と無能力者の両当事者が会つて物事の解決ができるわけがないのである。禁治産者ばかり集まつて物事を相談しても成り立たない、こういうのが私の言い方なのであります。この点について総裁が禁治産になつておる、労働組合もこの点についある意味における禁治産になつておる。この両方がいかに団体交渉を忠実にやつておりましても、それにかわる方法を見つけようといたしましても、この団体交渉は無意味であるということを、経験の上から私は言つておるのであります。今井委員長の無意味であるという意味も、おそらくそうであろうと思うが、この点についての労働大臣の御見解はどうか。これは侮辱して言つて  いるのではないのですよ。
  80. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御承知のように、公共企業体というものは、国の経営する企業でありまして、この企業の正常な運営をはかるということは、これは理事者の当然の責務であろうと思うのです。何が正常な経営であるかといえば、その正常な経理はもちろんであるし、またそこに働く諸君の労働意欲の正常なる高揚をはかるような道を講ずる、これも正常な経営の大きな要素であろうと思いますから、そういうことを彼此勘案しつつ団体交渉に当るのであつて、私はその性格団体交渉者として不適格である、あるいは無能力者であるとは思いません。その公共企業体という制度から来る一つのわくがございます。そのわくの中における適格性がある、こう考えております。そのわく内にあるどうにもしかたがないものについてどうするかということについて、調停委員会あるいは、仲裁委員会があるのでありまして、その委員会裁定にまつ。その裁定当事者を拘束するし、また政府を拘束する。しかし、予算上資金上できない場合には国会議決を求める、こういうことになつておるのでありまして、これは法律の通りであると思うのであります。
  81. 館俊三

    ○館委員 それはさつきからしばしば聞いたお話で、きわめて平面的な話なんであります。今調停委員会があり仲裁委員会があるというお話ですが、これは私企業の場合の労働委員会にもやはりあるわけです。しかし私企業の場合の団体交渉の両当事者は、決して両当事者とも無能力者ではない。どうして私が、この公共企業体の場合における団体交渉の双方が無能力者であると言つているかということについて、お気づきになりませんか。私企業の場合には両当事者とも完全なる有能力者です。そこに区別がある。公共企業体の団体交渉における両当事者を、もう一歩さかのぼると、仲裁の裁定を下した場合においては、労働組合は有能力者であるけれども、総裁の方はこの場合も無能力者である。これはどういうことを私が言つているかというこは、労働大臣はお気づきになつているはずだと思う。
  82. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 無能力という定義にもよりましようが、私の申しておりまするのは、その一つの公共企業体というもののわくがある。すなわち国家の金を使い、国家全体のために奉仕し、その利益をはかる、こういう公共企業体から来るところのわくがあるので、そのわくに縛られるということを申しております。縛るわくがあるから無能力であるとは私は思いません。
  83. 館俊三

    ○館委員 いつも同じことを繰返されておるのでありますが、国有鉄道をあずかつている当事者国有鉄道を経営する場合に、経営の全般にわたつてものを考えるということは、きわめて大事なことであつて、私たちが国鉄の経営者に対して、労働者のことばかり考えよというわけに行かないことは、当然の話である、そういう立場で考えを願いたい。それでは言いますけれども、日鉄法の四十四条でどういうことをきめてあるのですか。日鉄法の四十四条には、国鉄内の当初予算できめた人件費以外にわたる人件費は、総裁は出してはならぬときめてある。そういう総裁団体交渉の相手として持つて来るということは、無能力者を労働者に向つて表面に立てておるということです。いろいろ総裁国鉄全般にわたつて経理を考えて、その上に立つて拘束されるんじやなくて、すでに日鉄法の四十四条できめられておるのです。最初からこの法律によつて総裁は無能力者になつてしまつておる。そういう者を相手に組合が一生懸命に汗水たらしてやつてつても、団体交渉が無意味だと今井仲裁委員長が言つておるのは、当然なんです。私はあの当時の加賀山総裁にも話したのですが、あなたのこの問題に対するあつせんの仕方というものは、そこに限界がある、それ以上は運輸大臣大蔵大臣に頭を下げて歩くよりほか活動の範囲がない、禁治産者じやないかと言つたら、まさしくそうだとおつしやつた、そういう者を真剣な労働組合の前に立たせておいて、それで一体団体交渉が忠実に行われ、かわる方法がない、これが一番いいということをおつしやる。それはあなたは気づいていらつしやるのでしよう。
  84. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これは日鉄法に限らず、専売公社法におきましても、その他特別会計の給与準則におきましても、給与については国庫大臣たる大蔵大臣の制限があることは当然であります。これは先ほど申し上げましたことを繰返すのでありまして、国家のために奉仕し、国家のために有用ならんとする目的を持つ公企体の性格から来るところのものでありまして、これがあるからといつて、給与に関しては全然無能力ということは言えない。それはそのために、また繰返すことになりますが、調停あり仲裁あり、また国権の最高機関たる国会において、諸君の御審議を煩わす道がある。政府といたしましても、サービス省である労働省といたしましての考え方もあり、あるいは国庫大臣としての大蔵大臣の考え方もあり、いろいろな考え方を彼此勘案することによつて決定されるわけでありますから、全然無能力ということはない。ただ、かりにこういうものをはずしてしまつたら、いずくんぞ公共企業体の面目ありやということになるのでありまして、これは民間企業とかわらないことになる。これは公企体の持つ性格上から来る問題でございまして、これは館さんのおつしやるように一つの制限があるということは、私も最初から認めておるのです。だからといつて、全然団体交渉の能力なしとは言ひ切れない。他にもいろいろな団体交渉の問題もあるのでありまして、また給与問題に対しても、今私が申し上げたような解決策はあるのでありますから、無能力とは思えない、こう申し上げておるのであります。
  85. 館俊三

    ○館委員 ちよちよいさつきからの前の委員質問にも、団体交渉の場面はそのほかにもあるとおつしやるのですが、それはその通りです。解決ついたのもあるとおつしやるのです。これもその通りです。しかし、解決のついた事項、それは公労法制定のときの団体交渉の対象とすべきものでなくて――それは一応は団体交渉といつておりますけれども、苦情処理機関でやるような事柄が、団体交渉で解決されておるのです。苦情処理機関で始末のできるようなことが団体交渉で解決されておることな、あなた方は解決されておるとおつしやるのです。それは区別しておきましよう。その次に、今のお話によりますと、四十四条のことがおわかりになつておるのですか、この四十四条をはずしたら総裁の権限が非常に拡大されるとおつしやるのですが、最初にこの四十四条というものはながつたのです。私、最初の調停委員をやつておつたとき、四十四条はなかつた。ただあつたのは、大蔵大臣あるいは運輸大臣の許しを受けなければいけないという制限があつた。それで十分であつた。ところが第一回の調停案を出そうとしておるときに、こり四十四条が挿入になつた。これは仲裁委員もわれわれ調停委員も、これでは調停の効果がない、仲裁ができないぞといつて、第一回の調停委員のわれわれとしては、藤林敬三委員長の談話として、その当時の当局にこれを発表したくらいなものでありました。今それをはずされると、総裁の権限がおかしくなるという話ですけれども、その上に運輸大臣の権限があり、大蔵大臣の権限があり、十重二十重に取巻いておるのであつて、あえて四十四条を入れる必要はなかつたと私は思う。そういう意味において、すでに総裁は国体交渉に臨む前に禁治産者になつておるということを私は認めざるを得たい。それから労働組合がなぜ禁治産者であるかということです。これはすでに公労法によつてストライキ権を奪われておる。だから憲法で保障されたそういう国体行動権を奪われておる人間と、経理を自まかないできない人間が集まつて国体交渉をいかに力んでやつてもだめなんだ、当局の方は四十四条によつて、初めから受けることができないのです。その次にそれじや仲裁へ持つて行つた。これはフアツシヨ的にきめることですから、両方とも聞かなければならぬということになつておる。それを正しく聞くのはしかたがないと思つておるが、労働組合はそれを聞くだけの権能を持つておる。それを当局は聞いていいものか悪いものか、無能力者であるからいつもよたよたしておるということになる。公労法のこの欠陥をどうしたら救つて、どうして当事者に正当な国体交渉権の的確条件を与えることができるかどうかということについて、労働大臣は御苦心をなさつておられるか、その点についてお聞きしたい。
  86. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 種々の御意見かございますが、私もその御意見を伺いまして種々考究いたしております。
  87. 館俊三

    ○館委員 研究してもらうのはありがたいですが、早く結論を出していただきたい。それから労働大臣の労政事務というものは、単に労働省のわく内においてものをお考えになつてはいけない。もちろん、そうお考えになつていらつしやるというのではない。この点に関する限りは各省における公務員といいますか、あるいは政府機関の問題、それは全部その中における労働行政というものがあるわけなんです。運輸省における労働行政、あるいはその他の各公共企業体における労働行政は、その大臣がそれぞれ労働管理をやつていらつしやるけれども、その上に立つて労働大臣の労働行政という国一木にしたものがあるのでありますから、各省における労働管理あるいは労働行政というものの上に立つて、これを見て行かなければならない。その上から見て、今度この当事者に対して権限を与える方法についてどうするかということになると、振り返つて考えていただきたいことは、二十三年に、いろいろの労働者に対する圧迫のために、北海道を中心とするところの職場離脱が起きたのでありますが、そのときに政令二百一であつたかが出て、マツカーサーのえらい長い宣言が出た。その結果国家公務員法というものを無理やりに二十三年暮れの国会で通過させ、あるいは公共企業体労働関係法というものを通過させられた。しかし、このマツカーサーの宣言によりますと、非常にうまいことが書いてある。お前たちを……。
  88. 赤松勇

    赤松委員長 館君、ちよつと希望しておきますが、四時から本会議が開かれまして、労働大臣に対する緊急質問があるようでございますから、さよう御了承願います。
  89. 館俊三

    ○館委員 わかりました。そこで、お前たちは無能力者としてストライキ権はとるけれども、しかしながら給料はこういうふうにやるべきであるということをいつて、その上にできた公労法なんです。それを振りかえつてみて、初めて両当事者に能力を与えるべきであるという根本的な考えが出て来なければならない、ここに打開の道があるのであります。労働大臣はその点に対して深く思いをいたしてみた時分に、公労法の実情というものに対して、労働者のサービス省として、もう少しきりつとした態度を各省の役人にお示しになるのがあたりまえだと思う。それからもう一つ、私はこれで終りたいと思いますが、今度の公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件の提案理由説明を読んでみると、これの一番最後の方に「公共企業体等労働関係法第十六条所定の手続をもちまして、裁定国会に上程いたし御審議を願う次第でございます。」とある。これはわれわれが審議して、裁定は認むべきものであるときめるかもしれません。そういうことにこの提案なつておる。政府はこれを否決してくれとも言つていないし、可決してくれとも言つていない。これも無責任なつ話だと私は思うのですが、ここで決議することができるかもしれません。しかし前の方の文句では「予算総則第十五条の金額を超過することは明らかでございますので、」といつて、明らかでございますから、これを超過してもいいのか悪いのかきめてくれということなんです。そこで予算総則を読んでみますと、こういうことが書いてある。「日本国有鉄道は、職員の能率向上による企業経営の改善によつて収入が予定より増加し、」――今年は増加しました。これはほかの企業のことは言わぬけれども、ほかの企業の方も同じような関連で聞いてください。「又は経費を予定より節減したときは、運輸大臣大蔵大臣に協議して定めるところにより、運輸大臣の承認を経てその収入の増加額又は経費の節減額の一部に相当する金額を、昭和二十八年度において、職員に対し特別の給与として支給するため、前項に定める給与総額を変更することができる」。と書いてある。あなた方に、もしこの腹があるならば、九百何十億円という当初きめられた予算額を変更することができるのです。ところがこの説明では、「予算総則第十五条の金額を超過することは明らかでございますので、」ここまではわかるのですが、予算総則のうしろを見ると、そういうふうに変更することができると書いてあります。腹の持ち方一つです。最初の「日本国有鉄道法第四十四条の規定による日本国有鉄道の役員及び職員に対して昭和二十八年度において支給する給与」云々として、九百六十四億何ぼと書いてある。大蔵大臣が、そう言つているものだから、これを金科玉条として一寸も譲らないというふうにお考えになつていらつしやるのではないかと思う。予算総則のうしろへ行つてそういうことが書いてある、この点を御注目願いたい。しかもこれで見ますと、国鉄の場合、企業経営の改善によつて収入が予定より増加しております。あるいはアルコールの場合もその通り。みんなそうなんです。または経費を石炭節約その他で予定より節減しております。おそらくほかの企業体、公社においても、労働者の努力によつてそうだろうと思う。その場合には、これを冷害の方へ向けると書いてない。しかしこの総則は、冷害があつてあとからできた総則なんです。私は冷害や水害対策に対してもあの金にきわめて不服なんです。それをやるなと言うておるのではないけれども、この予算総則にはこれを給与の方へまわせと書いてある。なぜこれをたてにとつて、もう少し労働大臣はものが言えないのか。少くとも、私が最初言つたような団体交渉における労働者の無能力に対して、労働大臣がここでもつてサービスをしなければ、労働大臣の存在する価値はない。それからまた国全体の、各省における労働行政の一番トツプに立つてこれを総括する労働大臣の位置というものはどこにあるかと私は言いたい。お答えを願いたい。
  90. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御承知のように、四十四条にはこの項が追加されているわけでありまして、それはまた十五条にあるわけであります。これには、お読みになりましたように「前項の規定にかかわらず、日本国有鉄道は、職員の能率向上による企業経営の改善によつて」云々とございますが、「昭和二十八年度において、職員に対し特別の給与として支給するため、前項に定める給与総額を変更することができる。」とあるのでありまして、特別の給与、すなわち例外的な給与でございます。それ以外のものといたしましてはできないという法律の建前になつておりますので、私どもといたしましては事由を付して国会議決を求める――。不承認を求めるのではありません。承認を求めるのでもありません。要するに、われわれとして今財源がない、そこで国会で御審議を願つて、国権の最高機関たる国会の適当な議決を願いたい、こういう態度をとつている次第であります。
  91. 館俊三

    ○館委員 そういう態度をとられている当局が、口を開けば、財源がないのであるから今年は上げないという話をなさる。上ぐべきでないという確信を持つていらつしやるなら、なぜ天下の勤労者に対して、こういう提案の仕方をしないで、はつきり男らしく、上げないのだとおつしやられないのかということを私は考えざるを得ない。そういう態度をとらないで、そうして国会の中で審議をしてください。勤労者の味方の数の足りない国会審議をしてくれということは、実に私はひどい話だと思わざるを得ません。ついでにお聞きしておきますが、国家公務員法にいたしましても、政府関係機関等の労働関係法にいたしましても、これは紛争を解決する手段とはならないので、かえつて紛争を長引かせることに役立つものであつて、何のかいもないということを、私は二十四年のときに、藤林さんと出かけて行つて、増田甲子七に怒つたことがある。紛争を長引かせることには役に立つかもしれませんが、それ以外には何の効能もない。それが過去四回も踏みにじられている。これに対して労働大臣は、こういうことも解決した、こういうことも解決したとおつしやつておりますが、それは苦情処理のような問題だけが解決ついているだけです、大局において踏みにじられている。そういうことになつて来ますと、一体労働者はどこにつかまつて自分の意欲を開陳して効果を上ぐべきかということについて、非常な考えを持たざるを得なくなります。そういう考えがだんだん高じて来て、あなた方が言われるごとく、労働者の病膏肓に入つた場合に、それで労働行政が完全であるとおつしやられるかどうか。国有鉄道総裁自身も、この公労法というおかしな法律の中に迷い込んでしまつて、八幡のやぶ知らずのような法律の中に人づて、二箇月も三箇月もぐずぐずやつている。そういう法律については、過去長い体験を持つておりますが、さつぱりとこの法律をおやめになるとか、あるいは少くとも国鉄法四十四条をやめるとか、そういうことについての御関心はどうですか。たとえば、独立して、一応占領は済んだ。そこで占領法規はやめるという話もあつて、あなた方に都合のいい占領法規はやめておられるが、公労法というような押しつけられた法律をおやめになる意思があるかどうか。そうして普通の地方労働委員会、あるいは中央労働委員会というところに公平にあずけてしまうことが、将来の労働行政の上に最もいいのだというお考えがあるかどうかということをお聞きして、私の質問は打切ります。
  92. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 最初のお話ですが、この問題を国会議決を求めておる。ところが、その国会は勤労者の味方がきわめて少いということを承知しながら出しておるというお話でございますが、これは非常にお考え違いだろうと思います。私ども自由党に属しておりますが、自由党は決して勤労者の味方でないとは思つておりません。正しく国民全般の観点から判断して、勤労者のためにできるだけのことをいたしたいと考えておる政党であるということを申し上げたいと思います。なお、公労法自体の改正についてでありますが、それをどうするかというお話でございます。しかし、私はこの問題については、先ほども申し上げましたように、研究はいたしますが、ただお考え願いたいことは、現在仲裁裁定が出て国会の御審議を願つておる最中であります。その最中に、基礎となる法律自体がいいとか悪いとか、これをかえるとかかえないとかいうことは、私は慎みたいと思います。この法律の建前によつて審議を願いたいと思つそおる次第でございます。
  93. 赤松勇

    赤松委員長 館君、ちよつと待つてください。あなたの質問は非常にりつぱな質問で、私も敬服しておるのですが、関連質問で、相当長い質問で、郵政の方も怒つてつてしまいましたから……。
  94. 館俊三

    ○館委員 わかりました。これで労働大臣質問を打切りますから……。労働大臣公労法については御研究になつて、しつかりした建前で今一時の利害得失じやなくて、考えてやられないと、労働者の将来は、従つて日本の将来はきわめてあぶない。これだけを申し上げまして、私は終わります。
  95. 赤松勇

    赤松委員長 楯兼次郎君。
  96. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は労働大臣にお伺いいたしたいと思います。今、自由党は決して労働者の味方でないことはない、こういうことをおつしやいましたが、私昨年の十月から国会に参つたのでございますが、先ごろ、前の国会で通過いたしましたスト規制法のときには、非常に御熱心に、会期の延長までおやりになりまして御尽力をされたのでございますが、今度出た仲裁裁定実施については非常に冷淡である、こういうように受取れるわけでございますが、その辺の御心境をまずお伺いしたい。
  97. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 スト規制法につきましては、私も国民全体の見地から見て、ああいうことも必要であろうと思い、また私そのことにつきまして、労働関係の方々からいろいろの御反対があることも承知しておりましたが、中には個人的にはあれもいたし方あるまいという方もありましたので、私どもの立場といたしまして、一生懸命いたしたわけでございます。幸いに通していただきましたが、この運用につきましては、いやしくも労働者の権利の弾圧にならざるように、十分に注意して参りたいと考えておる次第でございます。また、ただいま仲裁裁定についてはなはだ不熱心ではないかというお話もございましたが、実は率直に申しますと、この仲裁裁定の建前が、企業別ではございますけれども、やはりその間に想関連するものがあつた方がよろしいのではないかと思つておるのでございます。ところが、林野、印刷等につきましては、ずつと仲裁が遅れて参りまして、これが国会の始まる二日前に裁定が出たような次第でございます。あの建前から言いますと、十日以後に国会に出せばよろしいわけでございますけれども、他の関係で、国会開会後五日後というので、他の五つのものを出すことにいたしておりましたが、これと一緒にして御審議をお願いしておるのでありまして、その間の事情裁定も遅れておりますので、非常に不熱心ということはないと思います。しかも、ときたまときたま非常な凶作と大水害に見舞われまして、思わざる出費のかさむときにあたりましたので、私どもとしても心底からこれは苦慮いたしておるのでございます。なろうことならと思いまして、種々心配をいたしておるのでございますが、何分にも国家財政の都合が非常にきゆうくつである、あるいは財源のないところへ支出するということは、インフレ論にからみまして非常に強硬な反対もございまして、目下のところきめかねて、引続いて御審議をいただいておる、こういう状況でございます。
  98. 楯兼次郎

    ○楯委員 これも見解の相違になりそうでございますから、これはやめておきまして、先ほど、公社当局も組合も無能力であるというような御質問が出たわけでございますが、私は、これはほかの大臣ならともかく、労働大臣が先ほどのような御答弁をするということは、非常に心外だと思つております。仲裁裁定が出たならば、これは予算総則によつて国会議決を求めなくてはならない。先ほど館委員も読み上げられたのでございますが、そういうものは特別の手当であつて、給与改訂等においては国会議決を求めなくてはならない、そういうような御心中であろうと思います。昭和二十六年に裁定五号、これは専売の裁定でございますが、国会にかからずして実施をされておるわけでございますが、その関連性を御答え願いたいと思います。
  99. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答え申し上げます。昭和二十六年三月二日に専売職員の二十六年度賃金の改訂をいたしたことがございます。これは給与総額内において一億七千二百五十万円をやりくりいたしたのでございます。すなわち予算総則給与総額内においてやつた、こういうわけでございます。
  100. 楯兼次郎

    ○楯委員 私も数字を承知いたしておりませんので、一応労働大臣の答弁を聞いておきまして、調べてから、あとで再質問をいたしたいと思います。  それから、仲裁裁定の解釈が、成立当時ときわめて異なつておる。それは私どもこの裁定が出た当時に、労働大臣あるいは運輸大臣速記を見たわけでございますが、こういうことを言つております。国会の所定の行為がなされなければ資金の支出が不可能の場合であつて国会の所定の行為をまたずして行政措置さえ行われるならば支出可能となる場合は、予算上資金上不可能な資金の支出に含まれないと解釈する、こういうことを言つております。いわゆる行政措置でこの実施が可能であるならば、資金上予算上不可能として国会議決を求める必要がない。こういうことを、代はかわりますけれども、労働大臣並びに運輸大臣が、これは二十五年の七月、第八回臨時国会でございますが、はつきりと質問に答えております。  それからいま一つは、これは国鉄裁定第一号だと思うのでございますか、裁定の差額三億円について紛糾をいたしたことがございます。そうして組合がこれを告訴いたしまして、そのときの東京高等裁判所の判決にも、やはりこういうことを言つております。当然手持ち資金でもつて処理することができる場合は支出不可能に該当せずと判決をいたしております。そうして当時大蔵大臣裁定完全実施のために必要な差額三億円につき流用の承認を与えなかつたのは、公社の経理上の理由から出たものではなく、他の政治的考慮によるものであるとの結論を出しておるわけでありますが、今川上つて参りましたこの裁定議決を求めるの件を私たち通読をいたしまして、非常に成立当時と意味が違つて来ておる、そういうふうに考えますが、労働大臣の御見解を承つておきたいと思います。
  101. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 当時の詳しい経緯は、私も実は存じませんものですから、後ほど政府委員から補足してもらつた方がよろしいかもしれませんが、私は「国会によつて所定の為行がなされるまでは、そのような協定に基いていかなる資金といえども支出してはならない。」すなわち十六条の後段にございまする予算上資金上不可能な資金の支出を内容とするいかなる協定――これは裁定と読みかえていただいてけつこうですが、そういう規定がございまする以上、国会の承認というものが条件であるというふうな考え方をとつておる次第でございます。なお当時の経緯等につきましては、政府委員から申し上げます。
  102. 中西実

    ○中西政府委員 先ほど行政措置でできる場合には、これは予算上質金上可能だという答弁がかつてあつたというお話でございましたが、私承知しております限りにおきましては、行政措置、つまり大蔵大臣の承認を求めるというような場合、これはやはり予算上資金上不可能であるということで終始一貫しておるように考えております。  それから裁判所の判例につきましてお話でございましたが、確かに東京地裁において二度、法規裁量であるようなことを言つております。ただ、しかしながら、逆に東京高裁におきまして、一度は明白に、自由裁量ということを言つておるのでありまして、この点裁判所の判例もまだ確定しておらないのであります。私たちの解釈といたしましては、終始一貫行政措置の場合、やはり予算上資金上不可能である、こういう解釈をとつて今日まで来ております。
  103. 楯兼次郎

    ○楯委員 いろいろな判例の論争をしておつてもしかたがありませんが、そうすると、この仲裁裁定による行政措置ということはあり得るかどうか、この点について御回答願います。
  104. 中西実

    ○中西政府委員 予算総則の中で給与総額をきめておりますが、その範囲内におきまして大蔵大臣あるいは所管大臣の承認でできる場合はあるわけでございます。
  105. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは、先ほど各委員が言つておりましたように、明らかに給与面における団体交渉の否認である、こういうふうにとつてもさしつかえないと思います。まず当初、予算を組みますときに、とにかく給与の余裕を盛つて予算が編成されるということは、私はあり得ないと思います。たまたま人でも減つて、そこに余裕が出て来た場合には行政措置をとる。そのときには大体あたかも正論のごとくおつしやいますが、そういう場合には、たまたま人でも減つて、当初予算よりかわつて来た、そういう場合しか私はあり得ないと思う。当初予算を編成しますときに、おそらく今度は一割くらいのベース改訂があるであろう、それだけの余分のものを給与総額に盛るということはあり得ないと思う。そうすれば、各委員が先ほどから言つておりましたように、政府は給与改訂については、公共企業体労働関係の組合員に対しては団体交渉を否認をしておる、こういうふうに解釈をしてもさしつかえないと思いますが、その点の御回答をお願いします。
  106. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 定期昇給をする分は、予算に入つておるわけであります。従つて、そのものを上げて次の予算が組まれるという見通しがあれば、そういうことはできるので、必ずしも理論上はあなたのおつしやるようにはならぬのではないかと思つております。  なお、財政法三十三条にも、予算決算令十七条でありましたかにも、可能か、不可能かということをきめる基準は書いてない。大蔵大臣によつて自由裁量であるということになつておると思う。そこへ先ほどから累次申し上げておるように、労働大臣の立場といたしましては、何とかこれを実現したいと思いまして、種々話をいたしまするが、国庫大臣たる大蔵大臣の立場としては、財源がない、あるいはインフレが懸念されるというので、不承認ということではなくて、要するに国会において御審議を願うということでこれを出しておるわけであります。その結果は、国会議決でありまするから、これは当然政府を拘束いたします。そこに予算を大きく組まざるを得ないということになるのでありまして、団体交渉は全然不可能な内容を持つのだということには、その結論からさかのぼつて考えていただきますと、ならないのではないかと考えております。
  107. 楯兼次郎

    ○楯委員 そういう結論から不可能ではないとおつしやることは、詭弁だと思います。公労法の精神をすなおに読んでいただけば、そういうことはあり得ない、服従をしなければならない。但し、予算のない場合にはというのは、すなおに読んだならば、当然政府が積極的に予算措置をして国会に提出をしなければならない、こういうふうに解釈をするのが常識であろうと考えます。しかし、労働大臣はこれを実現するように、さらに大蔵大臣その他関係大臣と種々検討されているという御答弁でございますので、非常に満足に思つているわけでございます。今日大蔵大臣がお見えになりませんが、仲裁裁定理由書の内容を見ておりますと、これだけのベース・アツプをする資金はあるということを、はつきりと言つております。たしか専売の裁定であつたと思いますが、全然問題はない、こういうように言つているわけでございますが、この裁定理由書の内容を、労働大臣は信用するのかしないのか、この点について御答弁をいただきたい。
  108. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私どもの立場といたしまして、仲裁の内容についてあれこれ言うことは、差控えたいと思います。またそれぞれ関係大臣の話を聞いておりますと、公共企業体そのものが、御承知のように国家財政に依存し、また国家財政を補強する建前にあり、余裕があるといつても、ない場合もある。すなわち国家にもつと納入しなければならぬという場合もあり、あるいは運賃の値上げをしなければできないという前提のある場合もあるし、一概には言えぬということであります。彼此勘案して検討しているというのが、目下の状態であります。
  109. 楯兼次郎

    ○楯委員 四日の本会議のわが党の山花委員質問に対する労相のお答えは、今のお答えと大分違つていると思います。これは間違いではないと思いますが、私の記憶しておりますところでは、たといその企業内では可能であつても、予算の振合い上不可能なときに実施しなくてもよい、こういうような御答弁をなさつております。こういう答弁から推察をいたしますと、八つ出て来た裁定のうちの企業体の中で、なるほどこれは実施してもさしつかえないというところはある。しかし、国家財政の面からこれをやることは、困るというような御答弁をなさつているわけでございますが、労働大臣としては、この裁定の内容は無理でない、積極的に実施をしてやろうというお考えがあるかどうか、もう一回重複いたしますが、お答え願いたいと思います。
  110. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 裁定の内容がいいとか悪いとか言うことは、私は差控えたいということを言つておるのであります。ただ、裁定を尊重する建前、そこで各企業体においても、あるいは国家公務員との関連においても、これを法律にも書いてあることでございますして、たとえば国鉄法においても二十八条において国家公務員との関連を考えてやるということを書いてある。他の特別会計においてもその通りでありまして、たとえばアルコール専売等におきましては、同じ課において、課長補佐までとそれ以下とか、あるいは公共企業体あるいは国家公務員とかいう関係もありまして、その関係が非常に微妙であつて、これはやはり全然無関係に考えることはできない。こういうようなことを各関係大臣も言われておりまするので、その間の事情をいろいろ考えているということであります。しかし、全体として尊重する建前から、できるだけ、それは多きに越したことはないのでありましようか、そのことについて努力する。しかし、それが全体がどうなるかということについては、関係大臣にも意見があり、国庫大臣たる大蔵大臣にも意見があるので、私として主張すべきことは主張して、その全体として検討中である、こういうことであります。
  111. 楯兼次郎

    ○楯委員 今労働大臣検討中である――まあ検討中といううちに年末が来て、正月になつてしまう。これでは困るので、検討中であるという具体的な構想としては、いかなることをお考えになつておるかという点が一点と、それから私は、この国会議決を求める理由として、仲裁の裁定の内容はほとんどが実施不可能である、こういうことをいつている。私は完全実施をしなければいけないとは思いますが、まあ百歩譲つても、国家財政あるいはいろいろの関係から、これだけは実施できるけれども、これ以上は実施ができないというような提案の仕方が、最もまじめな提案の仕方だと考えますが、その点についてと、二点ひとつお伺いしたいと思います。
  112. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 予算委員会におきまして、社会党両派でお出しになりました修正案におきましても、仲裁委員会の決定の八月というのをずらして、十月から――これは私の考え違いかもしれませんけれども……。     〔「違う違う」と呼ぶ者あり〕
  113. 赤松勇

    赤松委員長 八月です。それは間違いです。
  114. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 間違いですか。訂正いたします。そういうような全体の考慮というものは、やはり国家財政の建前から、さいふを握る国庫大臣との相談ということは必要なことでございまして、その間の意見がまとまりませんために、そのままになつておる。そこで、先ほどどなたかに申し上げたことだと思いますが、造幣あるいは林野、印刷というようなものが非常に遅れて出まして、国会開会直前でもありましたので、まとめて、いずれにしても国会に付議するということで出しておる。この結論がまだはつきり出ておらない。だめだと出してしまえという意見もむろんありましたが、それでは私もちよつと納得しがたいので、率直に申しますと、結論を出さないままに、こうして御審議をお願いしておるわけです。私どもの立場としては、できるだけのことをひとつ、国家財政も苦しいのだが、何とかできるだけ苦心をしてもらいたいということを考えておるわけであります。
  115. 楯兼次郎

    ○楯委員 どうも、立場があるのかどういうのか、はつきり言われないのですが、時間がないのに私ばかりやつてつてもいけないので、やめたいと思いますが、最後に私が要望なり御回答を得たいと思いますのは、昨年の暮れ電産、炭労のストライキがございました。私どもは委員会あるいは本会議に参りまして、あなたもそうでございますが、政府大臣の答弁を聞いておりますと、何とかして早く中央労働委員会の――これは法律的な意味ではございませんが、調停あつせんによつて、この問題を解決したい。いつの本会議、どこの委員会に出ましても、われわれの質問に対して、そういうお答えであつたわけでございます。仲裁裁定は中央労働委員会より法的拘束力を持つて、私は一段上だと思います。ところが、こういう公労法によつてストライキを禁止をして、その代用機関であるところの仲裁裁定が出ましても、また言を左右にして、これを実施をしていただかなくては困るのでございますが、今の段階では、実施をしようとしない。私は昨年の年末の国会と比較いたしまして、非常に政府の不誠意を追究いたしたいと思うのでございます。きめられてない民間のストライキに対しては、早く中央労働委員会が何とかしてもらいたい。ところが、ストライキを禁止をして、仲裁制度というものを自分でつくつておきながら、その結論の裁定には、言を左右にして、実施をしようとしない。非常に私は政府は不誠意であると思います。こういう点をひとつ、昨年の年末の炭労、電産の当時の状況を頭に思い浮べていただきまして、ぜひこの裁定だけは完全に実施をしていただくように、労働大臣の積極的な努力を私は御要望したいと思います。その点ごついてひとつ御答弁を願いたい、どういう考え方であるか。
  116. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 問題は国のさいふなのでございまして、どうも実施したい、尊重したいという気持にかわりはありませんが、金がないのでいかんともしがたい、こういう議論がありまするので、金はないだろうけれども、ひとつ苦心して少し何とかして考え直せということを申しておるような段階でございまして、ただこれは簡単に割切つてしまえないのであります。非常に苦心はいたしておりまするが、現在何とも申し上げることのできない段階でございます。
  117. 楯兼次郎

    ○楯委員 もう一言、私はそんな安易なものではないということです。もし汽車がとまつたら、あなた方は実施するに違いないと思うのです。ストライキをやつて汽車がとまつたら、あすの日にでも実施するでしよう。そういう争議権を禁止した法律の上にあぐらをかいて、かつてなことを言つてつてもらつては困る。そういう点をひとつ私は御忠告を申し上げまして、質問を打切ります。
  118. 赤松勇

    赤松委員長 片島港君。
  119. 片島港

    ○片島委員 私は労働大臣に若干お伺いしたいのでありますが、ここに八つ仲裁裁定が、国会議決を求めるために提出せられておるのであります。昨日から今日にかけて、それぞれの主管大臣が議会に提出して説明をいたされたわけでありますが、労働大臣は労働行政一般についての主管大臣でございます、この八つ裁定は、各主管大臣が御説明なつたわけでありますが、さつき申しました通り労働大臣はこれに対して、どの程度の職権を持つておられるのであるか、その点をまず第一にお聞きしたい。
  120. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えいたします。私といたしましては、公共企業体労働関係法をあずかつている立場からいたしまして、これが執行という建前から、発言の権限を持つておるわけでございます。なお労働省設置法にも、労働者の利益を保護するという建前がございます。そういう立場からも発言をする、こういうことであります。
  121. 片島港

    ○片島委員 これはどうも非常に妙な答弁であります。労働行政一般について、労働大臣責任を持つておられるわけであります。ところがまた仲裁裁定についても、もちろん御責任があるわけであります。それが両当事者に対して裁定が下されましたところが、それぞれの血管大臣が来て説明をいたしました。これは私は、一括しないで、八つ裁定をそれぞれの主管大臣説明をしたということは、使用者としての立場から持つて来られたものであろうと思うのであります。もし政府政府という一つのものであるならば、副総理かあるいは国庫大臣である大蔵大臣説明するはずでありますが、政府を代表するものでなく、行政府の、使用者としての立場から説明をされた。ところが、その一歩上にあつて、労働行政全部について大きなにらみをきかしておられる労働大臣のことでありますから、当然これについて相当な職権を持つておられるに違いない、こういうふうに考えたわけであります。それを私が昨日提案せられてから今日まで見ておりますと、ただこう見ておられるような立場におられるのじやないか。使用者がこの提案理由説明する、組合の方はやつてくれと言う、労働大臣はそれを大分離れたところから見ておられるような感じがするのでありますが、この点について、どういうふうにこの関連性があるのか。職権について、もう少し明確なところがなければ、ここにお呼びいたしましてから、いろいろとお尋ねをしても、これは何にもならぬのじやないか、こういうように考えたものですから……。
  122. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 従来の慣例上、そうしておるのであります。所管大臣といたしまして、使用者という立場から、政府を代表してその所管事項について話をする、こういうことであります。私としても、高いか低いか知りませんが、労働行政の責任者といた、しまして、強い関心と関連を持つておるわけであります。
  123. 片島港

    ○片島委員 強い関心だけ持つておられても、権限がないのであれば、何にも頼もしくないのであります。関心だけでは問題は解決しないのであります。先ほど井堀委員が聞いておりましたときに、確かにあつせんとかなんとかいう、そばにおつてあつせんをするというようなことを言われたのでありますが、そのあつせんがどの程度きく力を持つておられるものか。いくらあつせんしようと思つても、ほとんど問題にならないような力であるのか、相当強くその力が及ぶのであるか、私はこの点を実は聞いておるわけであります。今までベース・アツプについては、一回もその通りにこれを実施したことが政府はない、こういう話を聞いておるのでありますが、そういたしますと、非常に重要な立場にある労働大臣としては、自分の主管しておる労働問題について、同じ国務大臣でありなから、全然労働大臣の関心もあつせんも無視して今日まで聞いておらぬということになれば、労働行政については、先ほどから無能力とかいう話がありましたが、非常に無能力な立場にあられるのか。もし非常に能力を発揮していいのであるならば、こんなに労働大臣をばかにするならば承知せぬぞといつて、一回ぐらいはしりをまくつてみられても、決してさしつかえない問題である。それだけの力のない立場にあるのかどうか。そうであるならば、これは連合審査会を開いて、労働大臣を何ぼいじめてみたところで何にもならないのでありますから、私は郵政委員でありますので、使用者としての郵政大臣を追究するよりいたし方がないのでありますが、しかし私はやはり労働行政万般についての責任者である労働大臣は、そのような無力なものじやないと思うのであります。特に先ほどから、やりたくても金がない場合にはやれぬと言われるが、金があるということをちやんと書いてある。――これには金のあるものがある。たとえば国鉄郵政について若干の疑点があるのでありますが、その他については昨日から使用者側である林野庁の長官、あるいはアルコール関係中村説明員、そういう方々の顔色を見、また組合側の主張を聞いておりますと、やりたくてしようのないような使用者側の人も現実にある。そうして両方顔色を見合せて、にこにこして、その通りだという雰囲気が見られておる。金もある、やりたくてしようがない。それならば、八つの問題について一括してやるのでなくて、にこにことやれるようなところは、早くこれをやるべきではないかと思う。それについて労働大臣は、やはり一括してやるべきものであるか、それとも各企業についてそれぞれのこれは独立制があるのでありますから、それぞれをやはり切り離してやるべきであるか、この点について所見をまず承つておきたい。
  124. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 賃金の改訂等については、一回も実施していないというお話がございましたが、昭和二十四年の十二月二十八日、仲裁裁定第二号でありますが、これは実施をしております。これは一億二千八百万円であります。さらに四号から七号まで、これは実施をしておりませんが、その中に第六号、専売職員の昭和二十六年七月以降の賃金改訂、さらに第五号、二十六年専売職員の賃金改訂、これは完全に実施しております。  なお、私の権限の問題でございますが、これはやはり労働大臣の立場もございますし、国務大臣としての立場もございますし、内閣は一体でございますので、内閣問において話合いをしておるというような状態であります。
  125. 片島港

    ○片島委員 労働大臣は、やはり何といいましても労働行政の責任者でございますが、お尋ねいたしましたのは、各企業別にそれぞれの独立採算制をもつて実行しておるわけでありますから、各企業別に、実施すべきものは実施していいのではないか、またそういうふうに労働大臣としては仕向けて行くべきじやないか。先ほど言いましたように、その点が記録には残つておりませんから何とも言えませんが、みんな相当な人たちでありまして、団体交の半ばにおいても、また仲裁委員会に行きましても、当然これはやるべきであります、財源は、やるということになれば何とかなるということが、もう公然と言われておるのであります。ただ非常にはつきりした正式な記録がないだけであります。そういうようなところは、別個にそれぞれやりやすいところから順々にやるべきであると思われるか、やはり待つて、一番足のおそいものを引連れて、それが歩き出すまでは歩いちやいけない、こういうようなお考えであるかを私はお聞きしたわけであります。
  126. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 この問題につきましては、関係大臣いろいろ相談をしておるのでございますが、今のところどうすべきだという結論が出ておりません。
  127. 片島港

    ○片島委員 たとえて申しますと、こういうことであります。国鉄は非常に原資の関係上困難であるというので、なかなかうまく行かなかつた。しかし小さいものについて、たとえば――全専売のごときは非常に大きいのでありますが、全専売とか、あるいは林野とか、あるいはアルコールとかいつたような非常に明白に――今井さんに私はけさ聞きました。あなたはこのように企業的に見て支払い能力は全然問題ないというふうに非常にはつきり言つておられるが、どうしてかと言つたところが、これはいろいろと企業の内容をも調べ、よく経営者からも聞いてこういうふうに書いた、こういうふうに言つておられるので、これははつきりと支払い能力があるのであります。そういたしますと、こういう裁定が出た場合に、大臣ではありませんが当事者である専売公社総裁とか林野庁の長官とか、または造幣局長、こういつたような方々は、これを受諾してはならぬものでありましようかどうか。先ほどほかの委員から質問しておりまして能力がないから受けて悪いのならば、団体交渉の相手方としてどうかというようなお話があつたのでありますが、もし、よかろうということになつたならば、それの法律的な効果はいかようになるものでありましようか。よかろうと言つたら、すぐ首にしてしまうということでけりになるものか、それともよかろうということになつたことは、法律的に何らおかしいものではないので、これを実施するかせぬかが国会の問題になるのであるか、その点をひとつ法律的に説明をしていただきたい。
  128. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 最初のお尋ねでありますが、一ぺんに一括した方がいいか、あるいはできるものからがいいかということでありますが、まだ結論は出ておりません。相談をいたしております各大臣の意向は、なろうことなら、やはりそれぞれの労働政策もあるから、一本の考えで取扱いたいという意向が強いのであります。さらに後段の問題でありますが、御承知のように、三十五条によりますれば、仲裁委員会裁定に対しては当事者双方とも最終的決定としてこれに従わなければならないのであります。これはいいも悪いもないので、ただ十六条に該当する場合には十六条によるのでありまして、十六条に該当する場合などは、予算上質金上不可能であるから政府国会に持つて来る。当事者という問題は、この場合、いいと言つたからどう、悪いと言つたからどうという問題はないのであります。
  129. 片島港

    ○片島委員 その予算上資金上できないということは、この当事者であるたとえば大臣でない林野庁長官とか、あるいはその他の人たちは判定をすることはできなくて、所管大臣が結局判定する、こういうことになるのでありますか。
  130. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 当事者というのは、公社でございますか。
  131. 片島港

    ○片島委員 公社もありますし……。
  132. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 総裁そのものだと思います。しかしそれを予算的に扱う立場になりますると、関係各省の大臣ということになります。
  133. 片島港

    ○片島委員 公社ばかりではありません。たとえば林野庁長官とか、印刷局長とか、造幣局長とか、そういうふうに外局の長官は、みな対象になつておるのであります。
  134. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 そうであります。当事者でありますから……。
  135. 片島港

    ○片島委員 その当事者は、予算上資金上ということを判定する資格はないのであつて、その上におる大臣しか、その判定はできないのかどうか。
  136. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 そういう人の主観によつて判断するべきものでなくて、要するに、私ども申し上げておりますように、予算上質金上ということは、予算総則の中にございます給与総額に比べて、これが上まわるがどうかという問題でありますから、そういう問題は、客観的にきまるわけであります。
  137. 片島港

    ○片島委員 これは非常におかしいのであります。しかしながら、やはり団体交渉であり、また両方裁定を受けておるのでありますが、受けた当事者が、その裁定に――先ほど私が言いましたのは、たとえば林野庁長官とか、外局の局長とかいつたような人たちは、やはり予算上資金上ということも考える権限があるだろうと思う。自分の局内にある、自分の庁内にある予算についての責任者でありますから、それについての判断をすることができる。ただ自分には政府を代表するだけの地位がないと言いますか、しかしながら、その林野庁なり、あるいは印刷、造幣といつたようなものを、責任を持たされてやはり代表しておるものと思いますが、それはできるというふうに自分が感じた場合、その会計内においてはできるということを考えた場合には、これを受諾していいのじやないか。もちろん今予算がありませんから、予算を編成して、そして大蔵省でこの予算を認めなければ、これは予算にはなりません。しかしそういうならば、もともと予算というのは、つくらなければ何にもないのであつて、一番最初から、予算というものは地からわいて出たものではありませんから、いいと思つたならば、補正予算をつくらなければならぬ。つくつて自分の信念に基いてこれをやはり大蔵省と折衝しなければならぬものであります。やはりそこは自分の判断でありまして、その外局の長官、政府を代表しておるところのこの当事者は、受けるべきである。この賃金は妥当である、また資金上予算上、われわれはこれをこの会計内において実施することができる、ただ大蔵大臣がいかぬというならば、これはもう何をか言わんやでありますが、それならば、大蔵大臣が全部責任を持つて団体交渉責任者にもならなければならぬかと思うのであります。その場合、それを受諾するだけの権限はないのかどうかということを、私はお尋ねしておるわけであります。その当事者であるところの主管大臣なり、主管大臣よりもつと下の長官とか、外局の局長という人は、これを受諾する権限がないのかどうか、してもいいのか。私の言うのは、受諾をしても、予算上資金上できない場合には、政府はさらに国会に対して、この議決を求める件を出すことができます。できますが、その場合には、その長官なり局長は、政府の意見の判断を間違えたのであつて、非常に能力のない男だから、首になるということをさつき言つたのであります。そういうことになつて済むのか、権限が全然ないのか、その点を明確にしておきたいと思います。
  138. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私の説明が足りないのかもしれませんが、二十五条でございますると、両者を拘束するのでありますから、これはいいも悪いもないのであります。ただその中で、公社側が、あるいは特別会計を持つておる側が、できるといつたお話もございまするが、たとえばアルコール専売にいたしましても、この間衆議院の労働委員会におきまして、中村軽工業局長は、私は裁定書を見たときには、そう書いてあるのを読んで出たと言つております。中村君の言いますのは、やはり給与準則との関係もありますので、なかなかそう簡単に言い切れる問題ではないということを言つておりまして、一概には受諾したとも言えないということを言つておりました。この場合、受諾したからどう、受諾しなかつたからどうというのではなくて、仲裁裁定でありますから、公社側と、いわゆる理事者側と組合側との意見を聞いて、その中をとつて仲裁するのであります。ですから、仲裁に対して、いいとか悪いとかいうことは問題にならぬと思います。
  139. 片島港

    ○片島委員 どうも私の頭が悪いためか、よくわからないのですが、三十五条の「但し、第十六条に」という、この問題を判定する責任者というか、その当事者としては、各省大臣なり、あるいは今言いました裁定を下されておる当事者は、その三十五条の但書を判定する責任者じやないのかどうか、これは三十五条によつて同意すべきではあるが、しかしながら十六条関係があるからということは、客観的とおつしやるが、何か材料があつて、その特別会計内における、その事業の内部における経理状況、経営状態というものを見た上で、一企業々々々別に判定すべきものであつて、何も客観的と言いましても、そんなものが学問やなんかで漠然ときまつておるものではないと思います。その点を、私ははつきりしておきたいと思います。
  140. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 今の御質問は、調停の場合でありますと、受諾するという権限があるわけであります。仲裁の場合は、先ほど申し上げた通りであります。但し、仲裁は当事者を拘束するのでありますから、最終的にこれに従わねばならぬのであります。しかし政府は拘束しない。政府予算上資金上不可能であると認めた場合には、国会に出すということが書いてあるのでございまして、この予算上資金上不可能であるということは、要するに予算がございまして、その予算総則におきます数字に照し合せると不可能であるということが、客観的に判定される。  なお政府という意味でございますが、各省の大臣が、その省の予算を提出する場合に関係することでもありましようし、またその予算を査定する国庫大臣たる大蔵大臣が判定することであろう、こういうふうに考えます。
  141. 片島港

    ○片島委員 その点が、私はどうもはつきりしないのであります。政府といえば、各省大臣が、それぞれの責任においてやはり政府を代表する、こういうようなお話のようでありますが、政府といいましても、私が申し上げますのは、要するに二重人格を持つておると思うのであります。使用者としての場合と、それから政府を代表する場合としての国務大臣。さらにその点を明確にするために申し上げますならば、公社の場合、公社の経理状況から見て、これは当然やれるということを、公社代表者が考えた場合にも、やはりこれを受諾するということは、できないものでありましようか。そうすると、これは明確になつて来ると思います。  もう少し補足して、調停案の場合でも、調停を受諾するかしないかという問題、仲裁裁定の場合でも、これを実施するということを返答できるかできないか、こういうことを、公社総裁は、自分で意思表示ができるものかどうか。その点を、もしできると自分で感じて、その経営内において、公社の中において、原資の上から、経営状態からはできる。政府予算を組まなければできないことはあたりまえの話であります。しかし収支が償う予算であるならば、これは阻むべきであつて、その代表者がよいというならば、その場合に総裁が、これはよかろうと言つたことは、法的にどれだけの、いわゆる効果があるものでありますか。
  142. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 仲裁裁定は、当事者を拘束するのでありますが、政府を拘束しない。同時に、国会予算審議権を拘束するものでもない。そこで、たとえば公社側の総裁が、これができると考えて、そこで政府予算上できない、こういう場合に、公社総裁は、できるものと考えられましたら、国会において、これはできるということを言われるがよろしいと思います。国会は、その証言に基いて、これはやるべきであるという決議をされれば、これは政府を拘束し、政府補正予算を組まなければならぬ義務を生ずるのであります。従つて、そこに仲裁裁定が履行される、こういうことになると思います。
  143. 片島港

    ○片島委員 大体労働大臣お尋ねをしておきたいことは、私は、もう最初から予定しておつたようなお答えでありますが、最後にひとつお伺いをしておきたいと思いますのは、今おつしやいましたように、国会において、これは当然やるべきであるということを言うた場合には、政府はすぐにこれに伴う補正予算を組むのでありますか。しかし、補正予算を編成して国会に提出する権限は政府以外にはないので、議会の議員の方にはないのでありますが、当然そういうことになりますれば、こればかりでなく、これをやるのには、どのくらいの収支のバランス、収支予算、歳入歳出で、どれくらいの経費がいるかということを、もう少し明確な資料が必要じやないかと私は思うのであります。ただ漠然とでも、これはなかなかいいようなものであるから、これを受諾すべきであるということを言えば、政府は、それに基いて忠実にそろばんをはじいて、何百億かかろうと、それを編成なさるのでありますか。
  144. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 仲裁委員会というものは、これは政府の下部機構ではない建前であります。これは厳正中立な建前で裁定をするのであります。従つて、これに対して政府が、その内容がいいとか悪いとかいうことは、言わない建前になつておるわけであります。そこで国会において御審議をされる場合には、国権の最高機関としての国会の立場から、その内容をしさいに検討されるべきであろうと思います。その結果、これは補正予算を組むべきであるということになれば、そういうことに基きまして、私は先ほど補正予算提出の義務と申し上げましたが、これはちよつとおかしいのでありまして、政治的な責任を生ずるわけであります。政府補正予算を提出する政治的な責任を生ずる、こういうことになると思います。
  145. 片島港

    ○片島委員 その点はよくわかりましたが、義務はなくして、結局これが国会において、やるべきであるということになつたとすれば、予算を編成する義務といいますか、義務じやなくして政治的な責任政府は負わなければならぬ、こういうふうなことでございますか。補正予算は組まないのでありますか、これをやるということになりましても……。
  146. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 国会でおきめになりますれば、政府を拘束することになると思います。
  147. 片島港

    ○片島委員 労働大臣お尋ねをいたしたいことは、大体以上の諸点でありますが、私は何も所感を申し上げる必要はないのでありますけれども、大臣がもう少し強い立場に立つて、特に八つの議案というものは、八つのそれぞれの主管大臣責任者でありまして、これは先ほど政府を代表するものであるとおつしやいましたが、私は、これを説明せられるのに、やはり一つ一つを対等な立場で説明せられたからには、使用者としての立場というものが、非常に重要なウエートをなしておると思うわけでありますが、一歩上に立つて、労働行政万般についての責任を持つておられる労働大臣において、ただ見ておられるとか、あつせんとかいう程度でなくして、さらに一つ強い権力を発動していただきまして、これが実現をするように、また特にあなたの所管であるところの仲裁委員会が、これを決定いたしたものでもありますし、ひとつこれからさらに非常に努力をしていただきたいと思います。私どもは、各委員会にわかれましてから、各省別にそれぞれの裁定別に、委員会において、所管大臣にその責任を追究して行きたいと思うのであります。私の労働大臣に対する質問はこれをもつて終ります。
  148. 赤松勇

    赤松委員長 川島金次君。
  149. 川島金次

    川島(金)委員 労働大臣は、本会議が開会されると、その方に出るというお話ですから、その開会までの間だけ、一応簡単に若干のお尋ねをしておきたいと思います。先ほど来からいろいろ労働大臣質疑に対するお答えを聞いておりますと、堂々めぐりであります。     〔赤松委員長退席、山花委員長代理着席〕 遺憾ながら一歩も前進をしたという形が現われて来ておりません。なるほど労働大臣の言われる通り予算上、資金上という明文で、このことは不承認である。従つてこれに対する国会の承認、不承認を求めて来ておつた。これは事務的に労政課長労政局長が言うならば、それでよろしいと思う。しかし、かりそめにも労働行政の最高責任者になられたあなたとしては、もつと高い見地に立つての、幅のある話も中には出て来なければならぬ性質のものだと私は思うのです。ことに小坂さんは、予算上財政上の問題について、他の閣僚に比し、むしろ大蔵大臣と匹敵するほどの造詣の深い方である。問題は、予算上資金上という堂々めぐりの問題でなくして、一体政府というものが、今度の三社五現業の裁定に対して、いかにしてこれを予算化するかという熱意というか、それにいかにしてこたえるかという誠意の問題、その熱意と誠意の上に立つた予算上財政上のむしろ能力の問題だと思う。先ほど来の大臣のお話を聞いておると、事務的な話である。もつと率直に、当面はこういうことで出て来たが、次の段階ではこうするとか、こうしたいとか、そういうものが、いやしくも労働大臣としては出て来なければならない。私は、それを期待してひそかにかたわらで今の質疑応答をずつと聞いておつたわけであります。そこで私は労働大臣に伺つておきたいのでありまするが、この三社と五現業の裁定に対する議決の件をまず閣議でさだめし諮つたろうと思う。この閣議の席上においては、それぞれの所管大臣からも話があつて、終局的には、私の想像するところによれば、大蔵大臣から、これに対する最後的な御見解もあつただろうと思う。しかし、大蔵大臣最後的な見解を表明する事前において、いわゆる現業の長たる者、あるいは直属の大臣、ことに労働行政全般の上に立つて、今日では最高の責任を持つておられるあなたが、この議決の件を閣議の席上で議題にされたときに、あなたには何らか積極的な発言があるべき筋合いではなかつたかと思うのです。ことに小坂君は、先ほど言つた通り、財政予算の問題についても、他の閣僚よりは詳しいわけです。それだけの能力があるのでありますから、あわせて労働行政の最高責任者の立場から、何らか積極的な意思の表明というか、閣議に対する献策的な立場に立つての発言が、積極的にあつてしかるべきではなかつたか。一体この案件を閣議の席上で議せられる場合に、どんな様子でこれが決定されてこちらに持ち出されて来たか。さしつかえなくは、そのときのあなたの立場、あなたがもし何らかの発言をしたとするならば、その事柄について、さしつかえのない範囲において、この機会にわれわれに明らかにしておいてもらいたい、かように思うわけであります。
  150. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 財政金融の大家でいらつしやる川島さんから、もう少し財政について知恵を出せという御趣旨の御質問でありますが、閣議の内容に関しましてとかく言いますことは、私の立場として差控えさせていただきたいと存じます。先ほどもいろいろ御質問にお答えしている中で、御想像願いましたかと存じますが、この六十年来かつて来ざる大災害で、かてて加えて天明以来といわれる大飢饉であるというようなことで、非常に多くの財政支出を必要とするときにあたりまして、裁定実施することに伴いまして、当然人事院の勧告もございまするし、官公吏のベース・アツプについても考えて行かなければならぬということになつて参りますと、非常に財源が苦しい、こういう事情にございまするので、なかなか結論を見出しがたいわけでございます。これはできないと言つてしまう結論の方なら、すぐ出るのでありますが、私どもとしましては、何とかして官公吏その他の実情を認識しつつ、御満足とまでは行かないまでも、とにかくこらえていただくだけの線を出したい。一般の国民諸君におかれても良識で判断することのできる線だけは出して行きたい、こういう気持でおるわけであります。しかしながら、公労法の建前もございまして、予算総則中の給与総額を上まわることは、すなわち予算上、資金上不可能であるということになつておりますので、その規定に基きまして、国会開会中でもありまするし、五日以内に国会に提出して御審議をわずらわす、こういう段階になつておるわけであります。
  151. 川島金次

    川島(金)委員 また同じところにもどつて、小坂労相はそこから一歩も出ないというかつこうを見せておられますが、私はそういうことであつてはならないと思います。あなたがかつて野党にいて、そしてこの予算委員会で大いに活躍せられておつた当時、その当時に出て来た賃金の問題、裁定の問題、そういうときに、少くともあなたはわれわれとともどもに、われわれと同じくらい積極的な立場をとつてそういう問題に当つたことを、あなたもひとつこの機会に思い返してもらたいと思う。  そこで、私はさらにお伺いするのですが、一体あなたは労働大臣として、今日のこの三社五現業に対するそれぞれの裁定が、日本の現状の物価情勢や一般国民としての立場における生計の実情に照して、はたして妥当のものであると考えられておるのか、それともこの裁定は、それぞれ違つた線が出ておりまするけれども、労働大臣としては妥当でない点がある。こういうふうに考えておられるのかどうか、これらの裁定に対するあなたの基本的な見解について、この際聞いておきたいと思います。
  152. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先ほど申し上げましたことを繰返して失礼になるかもしれませんが、私はこの裁定の内容につきまして、これが妥当であるかどうか、あるいは賃金の一般水準から見てどうだということを言いますことは、この段階においてはいかがかと思つておるのであります。ただ申し上げられますことは、やはり公企体の職員の給与も官公吏の給与も、あるいは一般の民間の給与も、できるだけ均衡をとつた賃金が望ましいということであります。それから私の立場としてはつきり言えることは、できるだけよき慣行を立てたい。非常に国家財政の苦しいことはわかるけれども、今までいろいろ御非難はあつても、仲裁裁定は一応尊重し、実施して来ているのだから、この線はできるだけ私としてはとりたい、こういうことなのであります。しかし、先ほど申し上げたように、非常に国家財政が苦しい、これはもう御想像のほかでございまして、たとえばこの凶作対策費にしましても、あるいは水害対策費にしましても、みすみす国会で御修正と相なるとわかつていながらああした原案を出さざるを得ないというほどに、国家財政が窮乏している、こういう大蔵大臣説明でございまして、私どもも大蔵大臣責任上そう言うものについて、とにかくしやにむにこれを押しまくつて調和を害するよりも、やはりものには順序があり、また道程もあるので、それぞれ従つておちつくべきところにおちつくということではないかと考えておる次第であります。
  153. 川島金次

    川島(金)委員 小坂労相ともあろうものが、小笠原蔵相の説明に無条件に了承を与えられたということは、まことに遺憾なことです。そこで、堂々めぐりでは困りますのでお尋ねしますが、しからば、この裁定が妥当であるかないかということについての見解を表明できないとすれば、今度は逆に、今日の一般公務員あるいは三社五現業の職員の生計の実情、今日の段階で今日の給与の形で、これで満足なものとあなたは思つておるかどうか。もし満足なものと思つていなければ、それに対して何らかの対策をすべきであるというふうな基本的なお考えを持たれているかどうか、それはいかがでございますか。
  154. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えいたします。私の立場といたしまして、給料は多ければ多いほどよろしいし、労働者の生活の内容が豊富になれば、それだけ喜ばしいことでありますが、やはり国家財政全般の立場もあるという観点に立ちますると、なかなか困難であるという実情はわかります。しかし、なるたけ多くして行きたい、こういうふうに考えておるのであります。
  155. 川島金次

    川島(金)委員 労働大臣ちよつと投げやりな言葉ですね。われわれといえども、できれば高いほどいいというふうには考えておりません。今の労働者は、高いだけを求めておるのではない。もちろん自分たちの生計を充実させながら、国全体の経済財政、こういつたものを無視して、いたずらに賃金の増額要求をしておるものではないのであります。ただ問題は、現実の日本経済のただ中にあつて生計を進めて行くために、賃金が低い、物価は高い、しかも高くなりつつある。     〔山花委員長代理退席、委員長着席〕 この中で歯を食いしばつてがんばつて働いて行かなければならぬ。しかも妻子を養つて行かなければならぬ。そのための現実の生活の苦悶が、賃金の引上げ要求なつてやむにやまれず出て来ておる。だから、今あなたの言うように、ただ多ければいいという問題ではございません。後つて、あの三社五現業ともども、調停に出します前、その以前の団体交渉をする場合にも、ちやんと具体的な身近かな計数をあげ――その計数のいい悪いはいろいろ客観的には見る人によつて違うところがございましようが、組合は組合としての主観的な立場において、この実情、この生計の困難さである、従つてこうしてもらいたい。これが職員の痛切な要求なんです、高いだけがいいという要求では決してありません。従つて、この公務員を中心とした三社五現業の職員の今日の生計の実態というものが、一体これでいいのか、これで生活が守られて行くのか、そういうふうに考えられておるのかどうかということで、今の小坂労相の言うような、私どもとしても、賃金が高ければいいんだ、そういう意味じやございません。そんなうわついた講じやない。労働者は二万円も二万五千円もよこせと言つておるのじやない。今の一万三千や四千では、家族三人、四人かかえて食えない。だからこれを救えという痛切な叫びなんです。そういう痛切な深刻な問題に対して、いやしくも労働行政の最高責任者である小坂さんにも似合わしからず、私としてはただ賃金がよければけつこうでございます、これだけでは私は少くとも済まされない問題だと思う。大蔵大臣大蔵大臣としての責任の立場上、いろいろなことを考えて発言をしておると思う。しかし労働行政の最高責任者の立場にあるあなたは、あなたなりの立場において、閣内でやはりある程度説得するということこそが、私は労働行政の最高責任者の立場じやないかと思う。そういう観点からいつて、今の三社五現業労働者諸君の給与というものが、これで満足だとあなたは思つていない。思つていないとすれば、どうしたらこれにこたえられるか、どうやつたら守れるか、どうやつたら要求にこたえられるか、この前進した積極的な熱意と誠意、能力とをあなた自身が発揮する絶好のチヤンスにめぐまれているのです。こういう事柄を論議するに、何か他人ごとのような、しかも形式論だけで済まされては困ります。この場は済んでも、国民は済まされない。職員が済まない。ただ小坂さんも大臣になられて日がたつたと見えて、答弁が大分うまくなりました。巧みになりました。その点は認めます。しかし、答弁が巧みになつただけで済まされないものが、現実にあるのだ。その現実を直視してどうするかという前進した積極的なものをわれわれは求めておる。そういう立場で私は尋ねておるのですから、どうぞそのつもりで御答弁を願いたいと思うのです。あなたのところの労働省の統計課が発表したところによりますれば、あなたも御承知かもしれませんが、最近の二十八年六月現在、お宅の統計で発表された産業別の一箇月の平均給与の総額は、幾らだと思いますか、一万七千三百四十七円になつております。これはお宅の発表した数字です。二十八年六月現在の産業別による一箇月平均給与実額が一万七千三百四十七円、これは間違いありません。これが総産業におけるところの平均賃金なんです。平均ベースなんです。これに対して国鉄は一万三千四百、その他大体これと大同小異、こういう形に置かれている。しかも政府は口を開けば、ことに経済審議庁長官あるいは大蔵大臣は、最近における国民生活は安定の兆がある、ことに勤労者の生活水準は、戦前の実情に接近して来ていると、こう言います。ところが実際は違うのです。これまたあなたのところの発表した統計の数字によれば、勤労者の実際の生計水準というものは、まだ八〇・九です。こういう問題をとらえて考えてみた場合に、国鉄、全逓、電信電話その他の諸君の組合が、痛切な要求をひつさげて団体交渉もし、ストライキはできないから調停に、裁定にと、その民主的な段階を経て要求を通してもらいたいと叫んでおる。しかもその裁定は、いずれも当初各組合が要求した賃金とははるかに遠い。遠いのだが、やむにやまれぬ民主的労組のあり方として、せつかく法律でつくられた最高の最終着駅ともいわれる裁定委員会裁定されたのだから、一応これでがまんしよう。そうしてそれぞれの組合はその裁定に服しており、それで少くともこの裁定だけは実現させてもらいたい、こう言つておるわけです。こんなことを、いまさら私が繰返す必要もないわけでございますが、こういう一般産業の平均賃金を見、あるいは生計の実質的な水準というものを考えてみた場合に、これに対して何らかの措置をするということ、これは私は責任ある政治家の絶対に考えて行かなければならない問題だと思う。小坂さんどうですか。こういつた問題について、ただ予算上、資金上、法律第何条第何項という事務的な堂々めぐりの話だけで、まわりくどいことばかりお互いに言わないで、もつと率直に、あなたのもう少し積極的な熱意のあるところを示して、多くの勤労者に対して、その痛切な叫びに、たといどんなことでもこたえるという熱意と誠意があつてほしいと思うのですが、その点はどうですか。
  156. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私の言い方が悪かつたのか、たいへんおしかりをこうむつて恐縮でございますが、私はやはり大蔵大臣の立場というものは、国庫大臣でありますから、非常に財政上のことを大事に考える。それなくしては財政上の破綻を来すおそれもあるのでございますから、立場上当然のことだと思います。また私の立場としましては、財政上のこともあるから、インフレを招かないように賃金は上げぬというような――それだからいけないのだと言えば、それだけになつてしまう。私の立場としては、あくまでも主張して、高きを望む、こういうことで、結局中間をとつて、いいところが出て来るということになるじやないかと思つたものですから、そう申し上げたわけで、決して全般のことを考えずにやつているわけではございませんから、この点あしからず御了承願いたいと思います。  なお、今まで法律的な議論で、文字の端をいじつているじやないかと言われますが、これにつきましては、政府公労法を躁聴しておる、無視しておるという見解が一部にありますので、そういう点をはつきりいたしたいと思つて、法律解釈を申し上げておるわけであります。何も一片の法律解釈をもつて問題をさばいて行けるとも思つておりませんし、また行こうとも思つておりません。非常に困難な問題ではございますが、できるだけ善処するように関係者の間を説きたい、こう実は心底から考えております。今一万八千幾らというようなお話がございました。数字が出ましたから申し上げますが、これは一般の職員の場合の平均給料でありまして、これが一万八千四百幾らであります。労務者の場合は少し低いのでありまして、その平均したものは一万四千五百円かそこらだつたと思いまするが、労務者は一万二千幾らで、平均賃金はそんなことになると思います。国家公務員の方は定期昇給がございまして、ベースが一万三千五百八十七円ですか、あれに比べて六%程度上つております。そこで私どもといたしまして、できるだけこの問題を今申し上げたような線で善処いたしたいと考えております次第であります。
  157. 川島金次

    川島(金)委員 私が先ほど申し上げた数字は、お宅の統計課で出した数字なんで、民間全産業の平均賃金、それが二十八年六月現在の調査によれば一万七千三百四十七円、しかも運輸、通信その他公益事業などに携わる従業員の平均賃金が、一万五千六百十一円になつておる。最も少いと言われる運輸、通信、公益事業ですらも、民間は一万五千六百十一円。これは政府の事業は含んでおらないようです。そういう実情にあつて、しかも実質的な平均水準というものは、政府が大きな声で言つているほどには達しておらない。あなたのところが発表した数字だけでも、戦争前に比較すればまだ八〇・九%にしか回復しておらない。こういう実情のときに、これら三公社五現業の組合員諸君が賃上げ闘争をすることは、やむにやまれないからしておる。こういうことをまず政府は十分に認識して行かないといけないと私は思うのであります。ただ労使間の抗争対立主義だけでやつておるのじやない。これは私が言うまでもなく、あなたの方がよほどよく御存じのことと思うのですが、そういう実情にあるのですから、何とかこれにこたえる、これに対して、今この国会に出ている承認、不承認の議決を求めるという形式的な手続以上に前へ進んだ何らかの考え方を労働大臣は持つべきである。その前へ進んだ考え方に対して、私が先ほどから承つておるところ、あなたの言葉は大いに冷たい。非常に消極的だ。ことに若き労働大臣として、至誠もあれば情熱も高いあなたの身のうちに、何らかこの問題について解決しなければならぬというほんとうに崇高な責任感というか、深い人間愛というか、そういつたものが少しでもたぎつておれば、もつと積極的な言葉が出て来るわけだ。もつと熱意のある言葉が聞かれなければならぬはずなんです。ところが、いつものあなたに似合わず、どうもその片鱗もうかがい知れないように私は先ほど来から聞いておる。そこで、先ほどから私は申し上げているのですが、そうした堂々めぐり的な話だけでなしに、この形式的な手続は形式的な手続として、これを乗り越えて、次に来るべき政府としての、ことに労働大臣としての積極方針、積極的な考え方、これがこの機会に国民の前に示されることを私は強く要求し、希望するわけなんです。ただ何とか心配しているのだという、その何とか程度では、なかなかわれわれも承服できないし、また三公社五現業の人たちもなかなか承服しがたいので、そういう点について、どうですか、もう一歩進めた形で何らかの具体的な話をすることができないのかどうか。これは相談ですが、ひとつできたらしてほしい、こう思うわけです。
  158. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私も言葉が下手なものですから、どうもあなたのおつしやるような情熱の表わしようもなくて恐縮しておるのですが、私の今置かれております立場からいたしまして、最善を尽すと申し上げるよりほかないと思うのです。元来、私はあまり言あげする方ではないのでありますが、大体お約束したことはやつておるつもりでありますし、できるだけ考えてはおります。しかし、今ここで国会の御審議を煩わすのに際して、ごらんのように議決を求める案件として出しておりますこの財源については、私は責任のない立場で、財源について責任を持つ大蔵大臣の意見も十分にそんたくされなければならないと思いますが、私としまして何とかしたいということを、いくら気ばつて申し上げてみても、もつと問題は実質的なところにあるのじやないか、こう思いますから、その間をもう少し見定めた上でないと、何とも申し上げかねるのであります。
  159. 川島金次

    川島(金)委員 なかなか本音が出て来ないようで、まことに困るのですが、政府全体としての立場から考えれば、まさにその通り、今この議案を出して来て、これを乗り越えた話をあなたがずけずけとするということも無理ではある。それはわかつております。わかつているが、ただ、今までの質疑応答で繰込された言葉の片鱗を伺つてみると、どうもこれ以上何にも考えてない、もう議会に対して、かつてにしろ、議会の議決次第、こういつたかつこうに見えるわけであります。先ほども他の委員から触れたのですが、そもそも議案ことに予算の発議権というものは政府にある。給与総額がきまつてつて、それを越える、だからできない。これはやはり単なる形式論なんです。給与総額はきまつておるけれども、給与総額をふくらませることも減らすことも、その権能は政府にある。限定した目前の給与総額は、確かにそうなんですけれども、しかし、これに対してこたえなければならぬという熱意と誠意と、また財政予算に関する能力がありますれば、それはおのずから補正予算なつて現われて来る、こういうかつこうなんです。あなたの話を聞いておると、さつきから給与総額がきまつてつて動かすことはできない、これだけで通しておる。それでは私はほんとうの答弁にならぬと思う。予算というものはどつかできめて来ておつて、それに対しては政府は手も足も出ない、こういうかつこうに政府が立つておるなら、今の話はよくわかる。ところがその給与総額いわゆる予算というものは、政府が発議をしてこれをふくらますこともできる、そういう権能を持つておる。その権能を持つておる政府が、給与総額はこれだけだ、ところが裁定給与総額を上まわる、だからできない、だから議会の議決を求める、これでは身もふたもない。さつぱり幅のない、政治的な意味も何もない答弁になつてしまう。そういうことで、私はこれ以上やつても堂々めぐりになりそうでありますから、差控えますけれども、問題は私は政府の熱意、そうして誠意、そうしていかにして今の勤労階級の生計を守つてやるか――こういうあつせん調停が出る、あるいは裁定が出たということも、結局政府の物価政策の、端的に言つて失敗ですよ。政府の物価政策が着実であつて、逆に物価は下り、安定しておるということであれば、何もしいて労働階級といえどもいたずらに賃上げの要求はしない。先般上げてもらつたが、すぐ物価が上つてしまう、物価が上つたということは、一半の責任政府にある。その物価騰貴によつて勤労層の生計が困難である、困難であるから賃上げしてもらいたい、その責任者は政府である。政府責任によつて物価が上つて来た。これは政府責任において解決すべきである、これは当然の話である。政府が強度の低物価政策をとる、あるいは科学的な通貨安定政策を強行をして、非常に物価も安定した、一般の生計も安定した、むしろ逆に日本国内の物価も国際物価の波にだんだんさや寄せして来るようなよい経済事情なつて来た。にもかかわらず、不当に労働組合が賃上げ闘争をしたというなら、問題は別です。ところが、そうではなくして、問題は政府の物価政策、そこから来ておる。それによつて来るところは、一般の人たちの生計の困難、こういうことに結果はなつて来ておる。だから、予算上資金上という問題ではない。政府がその責任を果すという意味においても、この問題を解決する責任があると、まあ私は思うのでありますが、政府にそういう責任感がないとすれば何をか言わんやであります。それで、これ以上私はその問題で論議を複雑にしようとは思わぬのでありますが、たとえば、端的に言つてしまいますが、この間大蔵大臣は、今月の末、おそくとも来月早々に第二次補正予算を出す心組みであると参議院では言つております。そうすると第二次補正予算というのは、どういう問題が織り込まれるのかということになると思う。われわれの推察するところによれば、まず第一に災害、冷害の跡始末のこともある。ことに十二号台風の経費というものはほとんど出ていない、そういつた問題もまずあるでしよう。それから懸案になつておる期末手当の増額の問題がまず考えられる。第三番目には、率直にいえば今問題になつておる公務員その他のベース・アツプの問題だろうと思う。それ以外には当面われわれとしては考えられない。たとえば、中小企業に対する金融措置、これは財政投資でなくても、あるいは住宅金融の問題もあるでしようが、それは直接予算上にかかわりなくしても方法はある。といたしますれば、第二次補正予算はそういう問題に極限されて来るのではないかと私は推察しておる。大蔵大臣が言明しておるいわゆる第二次補正予算の中に、一体期末手当及びこの裁定予算化という問題が入つて来るのかどうか。それについてのあなたのお見込みはどういうふうになつておるか、それを聞かしてもらいたい。
  160. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 非常にむずかしい問題でございますが、昭和二十二年、二十三年ごろは非常にインフレーシヨンも高進しておりまして、物価の値上りが非常に急速に歩調を上げて行つたということは事実であります。しかし、その後は物価も横ばい状態でございまして、非常に政府が物価を上げたとは私は思つておりませんが、朝鮮事変以来、やはりある時期には少し物価が上つておるということはあります。現在CPIは七月までは七%程度でありましたが、その後風水害の影響もございまして、あるいは凶作の影響もありまして、非常にやみ米が高騰したという状況もありますので、九月以降はまた上つたのではないかと思いますが、ただいまのところ、まだ私資料を入手しておりません。そこで、そうしたものの関係において、できるだけ勤労者の生活を満足せしめるような方向に持つて行く、ことに国家公務員あるいは公共企業体、公社の給与について政府が配慮するのは当然だと思います。但し、全般の国家財政の点、大蔵大臣は非常にその点を強調しておるのでございまして、第二次補正につきましても、私から見込みを言うことは早計かと思いまするが、私としましてはできるだけこの問題を実現をするように努力したいと考えております。最初は、新聞などにも記事がございました期末手当あるいは奄美大島の問題、あるいは一時打切りになつた国庫補助の問題というのが入つておりましたけれども、これはまた大蔵大臣ともよく相談いたしまして、この問題に善処したいと考えておる次第であります。なお、この問題につきましては、どうも従来労働大臣というより、むしろ国庫大臣たる大蔵大臣にお聞きを願つておつたのでありますが、私が非常におなじみの由をもちまして、特にいろいろ御激励をいただいて恐縮しております。私としてはできる限り努力したいと考えております。
  161. 赤松勇

    赤松委員長 それでは本連合審査会はこれをもつて散会いたします。  参考人の方々には両日にわたつて御多忙のところ御苦労さんでした。     午後五時三十七分散会