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1953-11-11 第17回国会 衆議院 労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月十一日(水曜日)     午後一時十七分開議  出席委員    委員長 赤松  勇君    理事 鈴木 正文君 理事 持永 義夫君    理事 高橋 禎一君 理事 山花 秀雄君    理事 矢尾喜三郎君 理事 山村新治郎君       池田  清君    田中伊三次君       黒澤 幸一君    多賀谷真稔君       井堀 繁雄君    長  正路君       中原 健次君  委員外出席者         検     事         (刑事局公安課         長)      桃澤 全司君         農林事務官         (食糧庁業務第         一部需給課長) 大口 駿一君         労働政務次官  安井  謙君         労働事務官         (労政局長)  中西  實君         参  考  人         (関東金属労働         組合日本製鋼赤         羽支部執行委         員長)     前田 信義君         専  門  員 濱口金一郎君     ————————————— 本日の会議に付した事件  労使関係に関する件     —————————————
  2. 赤松勇

    赤松委員長 これより会議を開きます。  まず労使関係に関する件について調査を進めます。日本製鋼赤羽支部争議問題について質疑を許します。山花秀雄君。
  3. 山花秀雄

    山花委員 組合側お尋ねをしたいのですが赤羽工場で大体二千四百人程度の首切りが発表されたという陳述でございましたが、同じ系統工場一で、何かきのうかきようあたり、府中武蔵工場で若干首切りが出たということを聞いておるのですが、もし御存じでしたら、どういうような状態になつておるかということをひとつお聞かせを願いたいのです。
  4. 前田信義

    前田参考人 申し上げます。日本製鋼赤羽作業場は、特需仕事をしておるのでありますが、これと同じ系統日本製鋼武蔵製作所、ここにおきましても一部特需作業をしております。ここはちよつと赤羽とは形態が違いまして、赤羽は、そこが四地区にわかれて全部特需をやつておりますが、武蔵は一部民間の一般作業もやつております。ここにおきまして、これは今月の二日の日だつたかと思いますが、はつきりわかりませんが、四百七十四名の首切りがあるということを会社で発表したわけでございます。これについては、円満に話合いの上で解決したいということで氏名の発表は差控えておつたわけであります。ところがたまたま一昨年九日に至りまして、会社の方は四百七十四名の氏名を発表した。それとともに、赤羽でとりました処置と同じように、二日間の臨時休業をするという処置に出たわけであります。あそこは、一般通用門米軍基地にございます。それから従業員通用門基地でないところにあるわけでございます。従いまして、組合は過去においてスト権も確立しておりますので、この四百七十四名の首切りに対しまして、認められないということで、その門を強引に押しあけて中に入つて就業しておる。それと同時に、中で大会も持ち、あくまで闘うということを表明しております。現在その後の情報は聞いておりませんけれども、とにかく門をあけて強引に中に入つて作業をしておるということだけは聞いております。
  5. 山花秀雄

    山花委員 もう一問聞きたいのですが日鋼関係で、ほかの地域の工場特需をやつている工場があるかどうかという点を伺いたい。
  6. 前田信義

    前田参考人 大体特需といたしましては、府中日本製鋼武蔵と、それから赤羽作業場だけでございます。
  7. 山花秀雄

    山花委員 労働省側にお聞きしたいことは、日鋼武蔵工場におきましては、従業員を雇い入れるときに、いつ馘首されてもいいという誓約書をとつて雇い入れておるから、今度の首切りはそれに基いて行つたものである、こういう声明をしておるそうでありますが、そういう誓約書をとつて雇い入れることが許さるべきことであるかどうかという点について、労働省見解をひとつお述べを願いたいのであります。
  8. 安井謙

    安井説明員 ただいま事務当局労政局長が参りまして、その間の事情について詳しく御説明したいと存じます。私の手元でちよつと事務的に間違つてもあれでございますから……。
  9. 山花秀雄

    山花委員 政府側にいろいろお尋ねしたい点がございますが、ただいま私の問いましたことにつきましても、やはり事務当局との打合せがないと、なかなか答弁できないような点もあろうと思いますので、至急に——一時からこの委員会を開会するということは、午前中にもはつきりわかつており、委員部の方から労働省の方にも通達をしておると思うのですが、出て来られないと、今言つたように、質問がからまわりするおそれがございますので、至急委員長の方からお呼びを願いたいと思います。それまで若干質問は停止いたします。
  10. 安井謙

    安井説明員 まことに申訳ございません。ちよつと事務的に打合せがあつて延びておりますが、もうすでに労働省事務当局も出ておりますので、すぐ参ります。
  11. 山花秀雄

    山花委員 時間の関係もございますので、私は一応やめますが、他の委員からいろいろ質問もあろうと思いますから、他の委員の方でしていただきます。
  12. 赤松勇

    赤松委員長 労働省の諸君が来るまで、ちよつと速記をとめて……。     〔速記中止
  13. 赤松勇

    赤松委員長 速記を始めて……。
  14. 山花秀雄

    山花委員 政府委員も参られましたから、今の質問をもう一度重ねていたしますが日鋼武蔵工場におきましては、昭和二十四年以降の就職について、条件として、いつ馘首されても異議は申しませんというような一札を入れて、それ以後約七百人ぐらい就職しておる。今回は約五百人未満首切りを発表しておりますが、そういう意味で、会社側としては、当然この契約に基く措置であるという意向をもつて、この首切りに対しては何ら労働者の満足するような対策を立てていないのでありますが、ただいま申し上げましたような雇用契約が、はたして許さるべき契約であるかどうかという点について、労働行政を担当しておられる労働省側見解をひとつお伺いしたいのであります。
  15. 中西實

    中西説明員 武蔵工場におきまして四百七十四名、十一月の四日に通告のありましたことは承知いたしております。その個々の労働者につきまして、そういう具体的の契約がございますかどうかは、承知いたしておりませんが、もしそういう契約がありました場合、それが法律上いいのかどうかという点につきましては、法律解釈はこうなるかと存じます。つまり、契約期間はきめずにいつ解雇されてもいい。これはいいと思うのでありますが、ただ法律の最低限の要件、民法におきましては十四日、基準法におきましては三十日の予告期間というのがございます。こういつた規定に反してすぐに首切るということは、たとえば基準法でいう臨時とか、二箇月未満雇用なら、解雇予告の適用がございませんけれども、それを越えたような場合、つまり解雇予告が当然しなければならないような労働者につきましては、たとい臨時雇いといいましても、やはり予告心要になります。それを無視して、いつ何どき首切られてもさしつかえございませんといいましても、やはり違法な解雇になると存じます。しかし、今言いました基準法上の所定の措置をいたしました場合には、そういう契約はいいのじやなかろうかというふうに考えます。
  16. 山花秀雄

    山花委員 私のお尋ねしておりますのは、たとえば基準法規定による三十日の予告手当を出せば、いつ首切つてもいい、これは私はよくわかつておるのであります。しかし、その雇用するときに、そういう一札を強要するということが、今の、たとえば労働法規上において、許さるべき行為であるかどうか、こういうことをお尋ねしておる。首切りの問題じやございません。雇用条件にそういう一札をとることがいかどうかという点であります。
  17. 中西實

    中西説明員 その点は、私契約といたしまして本人の意思契約いたしますことにつきましては、先ほどの法律上の要件さえ違反しなければ、さしつかえないのじやなかろうかというように解釈いたします。
  18. 山花秀雄

    山花委員 私は、ただいまの政府答弁は、非常に重要な影響を他に与えると思うのであります。少くとも労働法はただいまのところは保護法になつておると思うのであります。保護法解釈からいたしますと、これは一方的な平等観念に伴わない一つ雇用条件ということになります。それを労働行政に携わる政府委員の方かさしつかえないという答弁でございましたが、そういうふうに私ども政府答弁があつたと理解してよろしゆうざいますか、重ねてお尋ねをしたいと思うのであります。
  19. 中西實

    中西説明員 望ましい望ましくないという問題はあるかと存じますが、個人の自由意思によつてそういう契約をいたすことは、法律上違法ではないというふうに解釈をいたします。
  20. 山花秀雄

    山花委員 政府答弁はつきりいたしましたから、この問題につきましては、私どももさらに大きく研究をいたしまして、あとで討議をして行きたいと考えております。  そこで政府お尋ねしたいことは現在基地内における特需工場において、こういう首切りが行われました場合に、ここ区でのストライキ行為は、体どういうようになつておるかという点について、お尋ねをしたいと思うのであります。
  21. 中西實

    中西説明員 基地内外を問いませず、争議権につきましては、特段の法律上の差異はないかと存じます。
  22. 山花秀雄

    山花委員 この前の労働委員会で、政府解釈答弁なすつた点は、特需関係工場においても、基地内に作業場のあるところでは、労働組合活動が許されない、こういう答弁を聞いたのであります。具体的に申し上げますとたとえばビクター・オートと一緒にある武蔵工場においては許されない。但し下丸子の東日本重工ですか、ああいう場所は許される。こういう解釈答弁でございましたが、今度は具体的問題になりましたが、府中武蔵工場内において大量首切りが行われた当然労働組合といたしましてはこれに対抗するためにストライキをやる。このストライキをやる場合に、作業場内において当然行われることについて、これが可能であるかどうか、こういう点であります。
  23. 中西實

    中西説明員 基地内における組合活動につきまして、例の行政協定三条との調整が生ずることは、前に申した通りであります。ただ争議、つまりストライキ労務提供拒否するということにつきましては、たとい基地内に従業しております労働者といえども、当然なし得ることかと存じます。
  24. 山花秀雄

    山花委員 労務提供拒否ということになりますとこれは当然の基本的人権としてあり得ることでありますが、それの一つの手段として行われるストライキ行為ということは、これはやはり組合活動の一環になると思うのであります。それが前の政府解釈では組合活動は行われないという解釈でございましたが、こういう首切りに伴うところのストライキの、言いかえれば団体行動自由活動が許されるべきことであるかどうかという点について、もう一度政府解釈をお伺いいたしたいと思います。
  25. 中西實

    中西説明員 基地内といえども、そこの管理者が認めます組合活動はできると思います。ただ管理関係行政協定三条との調整上相当の制約を受けることはやむを得ないかと思います。今の争議行為でございますが、労務提供拒否は、先ほど言いましたように基地内の従事者といえどもできるわけであります。しかし基地内におきまして労務提供拒否以外の行動、たとえば基地内においてピケをやるとか、合法、違法が問題になつておりますけれども、シツト・ダウンするとかいうようなことになりますと、やはり行政協定三条との関係が出て来るというふうに思います。     —————————————
  26. 赤松勇

    赤松委員長 山花君、ちよつと——昨日以来御了解願つておきましたように、ただいま農林省の大口需給課長が来られました。供出問題で非常に多忙でございまして、労働省に対する質問あとにまわしていただいて、多賀谷君の質問を許したいと思いますが、よろしゆうございますか。
  27. 山花秀雄

    山花委員 よろしゆうございます。
  28. 赤松勇

    赤松委員長 それでは次に旭硝子牧山工場争議問題について質疑を許します。大口需給課長桃澤公安課長が出ておられますから。  多賀谷真稔君。
  29. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 食糧庁お尋ねいたしたいと思います。今問題になつております八幡市の旭硝子牧山工場におきまして、争議が起りました。そうして十月七日に第二組合の結成と同時に保安要員をほとんどカン詰にいたしまして、そのほかに日々請負が入つておりましたがその請負もともに食糧会社から支給いたしまして、そして食管法違反の問題が起つたわけであります。このことについて、まずお尋ねいたしたいと思いますのは、八幡市から百九十七俵の米が食糧協同組合を通じて出されておりますけれども一体かような応急米と称すべき米はどういう要件で従来出されておるか。聞くところよりますと、あの風水害におきましても、八幡市市民は四万の罹災者を出しておりますが、この四万に対しても百七十俵の米しか出されていないにかかわらず、百九十七俵の米が出されておる、こういう点について、応急米を出す条件といいますかそのものについてまずお答え願いたいと思います。
  30. 大口駿一

    大口説明員 応急米につきましては、食糧管理法に基きまして、現在食糧庁といたしましては、各都道府県に、毎月応急米として都道府県知事の判断で出してもいいというわくを十トンないし五十トン、県の大きさによつて違いますが、わくを与えておりまして、福岡県について見ますれば毎月平均四十トンの応急米わく都道府県知事委任をしております。この根拠食糧管理法第八条の三の第三項に都道府県知事が必要がある場合におきましては特別購入券乙というものを発給いたしましてその切符一般小売販売業者のところに提示をすれば切符に記載をしてある数量の米が受領できるという仕組みになつております。ただいまのお尋ねの件につきましては、最近かような事実があつたということを聞きましたので、福岡県庁の、食糧課長がたまたま上京し参りまたのでいろいろ事実を調査するように依頼をいたしておりまして、近日中にその調査の結果がまとまりますが福岡県の場合におきましては、県知事委任をしてある応急米わくを各市郡に一応わけて、各市長購入券発給事務の一部を委任をしておるのであります。ただいまの場合において市長が正式の権限に基いて購入券発給しておるとすれば、一応食糧管理法根拠条文があるわけであります。  次に従来応急米をどういう用途に出しておるかというお尋ねにつきましては、いわゆる応急米でありますから、災害とかいろいろな応急の必要が生じた場合に、都道府県知事が与えられたわく範囲内である限りは、自分で必要と認めたものに購入券発給するわけでございます。大規模な水害等によりまして、既定のわくでまかない切れない場合におきましては、追加の要求の連絡が私どもの方にありまして、必要があれば、私どものところで追加を出すという仕組みになつております。そのほかに、一般入院患者特別加配をいたしておりますが、この入院患者特別加配食糧とかあるいは外地から引揚げて参ります引揚者が、ごく少人数で引揚げて参りました場合の希望地へ帰り着くまでの食糧を出す場合とか、そういうような場合につきましては、応急米を出してもさしつかえないという取扱いを従来いたしております。
  31. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この事件につきまして、八幡市ではたして百九十七俵の応急米を出す権限があるかどうか。県知事に相談をせずして、独自に出す権限があるかどうかをお尋ねいたしたい。
  32. 大口駿一

    大口説明員 ただいま申し上げました通り福岡県には毎月四十トンの応急米わくを与えておりまして、福岡県庁はそれを各郡市別に割振つておるわけでありますが、八幡市に何俵の権限を与えておるかということは、昨日上京いたしました食糧課長がたまたま資料を持ち合せておりませんでしたので、一ぺん帰りました上で報告をいたすように依頼いたしております。百九十七俵というと、約十トンちよつとでありますので、福岡県全体の四十トンのわくの中であることは、間違いがないわけであります。
  33. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 しからば、かような場合において、応急米を出す要件が満たされておるかどうか、食糧庁としてはどういうふうにお考えになるか、お尋ねいたしたい。
  34. 大口駿一

    大口説明員 応急米を出す要件といたしましては、食糧管理法施行規則第四十四条に基きまして、特別購入券の様式を示しておりますが、その切符を発行するところをちよつと抜萃して読んでみますと「左に掲げる者その他の者であつて都道府県知事が必要と認めたもの」と書きまして、災害を受けた者とか、あるいは厚生食堂に出す場合とか、職域食堂に出す場合とか、いろいろな場合を列挙しおります。この列挙は例示的なものでありまして都道府県知事が必要と認めた場合においては、法的にはさしつかえないことになつております。
  35. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では今度の場合でも、こういうような第二組合ができて、しかも通勤をすれば十分自宅で食事ができる場合、これをカン詰にしておりますから非常に困るのでありまして、毎日弁当を持つて行けば行き得る場合において、食糧庁としては、こういうものに対して応急米を出してもよろしい、法的には何も違反でないと考えられるかどうか、お尋ねいたしたい。
  36. 大口駿一

    大口説明員 法的な問題といたしましては、ただいまお答えいたしました通り、一応都道府県知事の認定ということが最終の要件になつておりますので、法的にはさしつかえないというふうになつております。ただ、現在の問題につきましては、県庁を通じていろいろ事実を調査いたさせておりますので、その調査の結果がわかりますれば、それに基いてかような用途に今後出さないようにというような必要があるとすれば、そのような警告をこちらが出すということは考えております。
  37. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 食糧庁としては、きわめて遺憾な答弁だと思います。なるほど、手続のことは言つておられる。法的根拠については、手続知事が必要と認めた場合にはよい。しかし、いやしくも応急米を出す以上は、どういう場合に出すということを、十分施行規則なり、あるいはその他の通牒によつて指示しておらなければならぬと考える。だれが考えましても、かような場合に応急米を出し得るという性格のものではないと思うのであります。しかるに、今の答弁を聞いておりますと、それじや知事がどんな場合に必要であると認めても、それは知事権限であつて食糧庁としては何ら関知するところでない、今後の問題である、こういうように受取れるわけであります。一体食糧庁としては、応急米災害その他において出す、こういうことを決定し、その施行において、どういう監督の注意をなされておるか、再度お尋ねいたしたい。
  38. 大口駿一

    大口説明員 食糧庁といたしましては政府の米の配給につきましては精密な検査をいたしまして、一般消費者配給並びに農家の配給労務加配、その他すべて毎月各都道府県で必要な数量を、前月の半ばごろまでに通達いたしまして、その範囲内で成規手続従つて配給の実施をいたしておるわけでありますが、事前に予見できない事態に備えましで、応急米というものの制度を設けまして、ごくわずかの数量を各都道府県知事委任いたしております。いわゆる応急でありますから、事前要件のいろいろな場合をあげまして、この場合に限つて出してよろしいというこまかい細部の指示は、現在のところいたしておりません。従来都道府県知事応急米を使用する場合の報告によりますれば、特に応急米の定義を逸脱したような使用をした実例がございませんので、今後そういう問題がありますれば、都道府県知事に対してこまかい要件の例示をいたしましてかような場合には応急米を使用してよろしいという要件を示す必要が起きますれば、私の方も考慮いたしたいと思うわけであります。
  39. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いやしくも食管法ができ、そうして米が統制である場合に、いまだ予見できないからということで——なるほど予見できない事態もあると思います。しかしながら、法律つて、つくる場合には、必ずしも全部を網羅してつくり得るわけではありません。しかし例示的な規定によつて、それと同等の緊急性応急性がある場合に出すことは法律をつくりまたそれの施行の任に当る者の当然の義務であろうと思う。しかるに、何か本事件について、必要であると認めれば出し得るのだ、こういうようなことをお答えになることは、非常に遺憾に思うわけであります。  それでは、具体的な問題として、労働者カン詰にされて仕事をしておる、そうして千名以上の者がおる場合に、一体応急米として出し得るかどうか。これは毎日うちから通わせれば、当然何も応急米を出す必要がなく、配給を受けておる人であります。この場合に出し得ると考えられるかどうか、お尋ねいたしたい。
  40. 大口駿一

    大口説明員 私どもの方でこの事件食糧応急米を出したということを聞き及びましたのは、ごく最近のことでありますので、さつそく福岡県庁連絡をいたしまして、事実の調査を依頼したわけでありますが、従来私ども考えておりました応急米用途、並びに従来まで各都道府県において応急米を消費された用途と、若干違う新しい用途でありますので、よく事実を調査いたしました上で、いろいろ今後の問題をきめて行きたいと思うわけであります。
  41. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今後の行政処置でなく今までの行政処置についてお尋ねしておるわけであります。この事件は、なるほど認可をすることは違法ではないが、不当であるという範囲のものであるか、あるいはあくまでも違法であるという範囲のものであるか、お尋ねいたします。
  42. 大口駿一

    大口説明員 正規購入券発給いたしました上で、正規卸売販売業者を通じて受配をしたものであるならば法的には違反ではないと思います。しかし、購入券発給して行われたものであるかどうかということも、現在調査をいたしておりますし、それから実際にどういう情勢で、対象となる人員と数量との関係等調査した上で、不当であるか、不当でないかの判定はいたします。
  43. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では、応急米を使用する場合の実質的要件を欠いた行政措置がなされるといたしましても、食管法違反でないと考えられるか、お尋ねいたします。
  44. 大口駿一

    大口説明員 ただいま申し上げました通り購入券正規発給をいたしまして、その購入券販売業者に提示した上で、その購入券に記載した数量のものの受渡しが行われている場合には、食管法違反の問題は起きないと思います。
  45. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 非常に遺憾な答弁でありますが、さらに私は次の問題を続いてお尋ねし、最後に食糧庁に対する私の意見を述べたいと思うわけであります。  まず事件は九日の十六日に会社の方から市役所に行つている。九月十六日といいますと十月七日から一部操業が行われ、カン詰にされ、第二組合ができたのであります。ところが九月十六日は九月十日に争議に入りましてからわずかに六日しかたつていない。その九月十六日に頼みに行つたということを、後に助役名で市の助役が公表をしております。でありますから、話のあつたのが九月十六日九月十六日においてまだ何らそういう事態が起つていない会社が当然企図したのでありましようけれども全然起つていないのに食糧を出す約束をした、これについてどういうようにお考えであるか、お尋ねをいたしたい。
  46. 大口駿一

    大口説明員 かような事態食糧を出すことが、食糧庁として妥当かどうかというお尋ねでありますが、私どもの方で、ただいま繰返して申し上げました通り、事実を十分調査をいたしました上で、市役所並びに卸売販売業者福岡県庁その他の連絡関係十分調査をいたしました上で、判定をいたしたいと思うわけであります。
  47. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 当事件は、すでに市役所声明を出しておる。一応市役所の市の助役声明を妥当であると考えて、真実であると考え質問をするわけでありますが市役所は次のような声明を出しておるわけであります。それは、九月の十六日に会社側から桑原農林課長に、口頭によつて申入れがあつた。そこで桑原農林課長は独断でそれを許可し五十俵を食糧協同組合から出すように指示した。そこで残りの百四十七俵については、市としては関知しない食糧協同組合がかつてに出したものである。しかし農林課長が独断でやつたということについては非常に遺憾であるが、市の首脳部は知らないのだ、こういう声明を出しております。でありますから、当然この問題は県の許可も受けていないことは明らかであります。この桑原農林課長、さらに会社の木島厚生課長、並びに富松庶務課長さらに食糧協同組合長は食管法違反の疑いはないかどうか。食糧庁としてはどういうようにお考えになるか。この私が申しました事実を前提として、お答え願いたい。
  48. 大口駿一

    大口説明員 福岡県庁食糧担当者に私が尋ねて、従来まで明らかになつております点は、福岡県庁食糧庁委任を受けております月四十トンの応急米わくを各市並びに郡に再委任をいたしておるということでありますが、委任をしております数量が現在まだわかつておりませんので、その委任範囲数量的に越えておるか、越えておらないかの問題を除外いたしますれば、県庁と市及び市役所内部の委任関係でありまして、その委任が行われている以上は、成規手続で出したものであれば食管法違反という問題はないと思います。
  49. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは市役所県庁との関係だけをお話になつたので、私がお聞きしておるのは、さらにそれから市が独断で農林課長が出しておる、さらに協同組合長は市から何も指示されないものを百四十七俵出しておる。さらに会社の方はまだ全然起つておりません事態に対して、九月十六日に申入れをし、九月三十日から米を受けておる。この関係について、どういうように考えられるか、お尋ねいたしたい。
  50. 大口駿一

    大口説明員 応急米を出します手続につきまして再度御説明をいたしますと、数量につきましては、先ほど申し上げました通り各県に委任をしております数量範囲内であれば、都道府県知事が再委任をしている場合は、市役所権限になると思いますが食管法にきめております特別購入券乙というものを実需者に発給をいたしますれば、その実需者はその市内の販売業者の店にそれを提示をすれば、様式が食管法にきめられている様式のものである限りは、卸売販売業者はその切符に記載してある数量市役所の検査を受けずに出すことはこれは違法ではないわけであります。従いまして、現在私の方で調査をいたしておりますのは、市役所が実際に現在問題になつております応急米を出します場合に正式に特別購入券乙を発給したかどうか。それから、卸売販売業者がその発給された購入券の提示を受けた上で米を出したかどうか、これを調査しているわけでありまして、その手続の正当に行われたかどうかは、まだ私どもの方では報告を受けておらないわけでありますから、食管法違反であるかないかという問題は現在ただちに判定をすることはできない状態であります。
  51. 赤松勇

    赤松委員長 大口さん特別購入券の乙というのを受ける資格者は、どういう八ですか。
  52. 大口駿一

    大口説明員 食糧管理法第八条の三の三項にこういう規定があるわけであります。「都道府県知事ハ必要アリト認ムルトキハ第一項ノ規定二依ルモノノ外」——第一項と申しますのは、普通の購入通帳であります。「消費者又ハ販売業者二対シ農林大臣ノ指示二従ヒ購入券発給スルコトヲ得」という規定がありまして、施行規則の四十四条に「食糧管理法第八条ノ三第三項の規定により都道府県知事発給する購入切符の種類及びその交付を受ける消費者は、別表四に定める通りとする。」、こういう規定がありまして、別表の四に、様式と申しますか購入切符の種類というのに「主要食糧特別購入切符(乙)」というのがありまして、その下の欄に「交付を受ける消費者」という見出しに基きまして「左に掲げる者その他の者であつて都道府県知事が必要と認めたもの」、こう書きまして一、二、三、四、五とこれがあがつております。一は「災害を受けた者」、二は「厚生食堂(社会事業を目的とする給食施設をいう。)」、三は「職域食堂労務加配を受けない労働者、学生又は生徒を対象とする会社、官公庁又は学校に附属する給食施設をいう。)」、四は「その他食品衛生法第二十一条第一項の規定により、食品衛生法施行規則第十九条に規定する飲食店営業(委託加工業を除く。)又は喫茶店営業の許可を受けた者」、五は「鉄道の停車場の構内又は客車内で旅客に食事を販売する業者」、これが「左に掲げる者その他の者であつて」ということでありまして、その他今例示以外の都道府県知事が必要と認めたものについては、規定の上では購入券発給してさしつかえない規定になつております。
  53. 赤松勇

    赤松委員長 応急米はその一番初めの罹災者の中に入りますね。
  54. 大口駿一

    大口説明員 入ります。
  55. 赤松勇

    赤松委員長 それ以外の者は入らないでしよう。
  56. 大口駿一

    大口説明員 応急米で私どもの方で従来出しておりますのは、入院患者——、これは結核、精神病並びに癩病患者でありますが、消費県、すなわち月十五日しか配給しておらない県です。かような設備に入院をしております患者につきましては、一日三十グラムの特別加配の制度があるわけであります。この三十グラムの特別加配の米は、食糧庁があらかじめ各都道府県に認めております応急用のわくの中で発給をするようにという指示をいたしております。
  57. 赤松勇

    赤松委員長 そういたしますと、第二組合なるものに入つておる組合員が、会社作業場カン詰にされて、そこで主食の給与を受けたということは、この中のどれに該当しますか。
  58. 大口駿一

    大口説明員 従つて「その他の者であつて都道府県知事が必要と認めたもの」というものに法的には入るわけであります。従つて、その都道府県知事が必要と認めた場合においては、私どもの従来の取扱いからいたしますれば、当然その配給を受けた者は、一般の家庭配給と二重になるわけでありますから、この点の取扱いは、事実をよく調査をいたしました上で判定をいたしたいと思います。
  59. 赤松勇

    赤松委員長 今の御答弁は確認しておいていいですね。
  60. 大口駿一

    大口説明員 けつこうであります。
  61. 赤松勇

    赤松委員長 そこで、今度は政策上の問題になりますけれども、もしそういうことがどこかで行われておつたということが明らかになつた場合でも、法律上さしつかえないということになりますね。
  62. 大口駿一

    大口説明員 法律上は、さしつかえないと思います。
  63. 赤松勇

    赤松委員長 食糧庁の政策としてはどうなんですか。今、供出を促進されている食糧庁の政策としてはどうですか。
  64. 大口駿一

    大口説明員 私まだ上司に相談しておりませんが、私の判断では若干疑義がありましたので、特に福岡県庁食糧課長が供出割当で上京中でありましたので、事実を詳細に調査するように依頼したわけであります
  65. 赤松勇

    赤松委員長 ですから私の方は、そういう事務的な答弁でなくて、食糧庁の長官に出て来ていただいて——これは供出の問題はやはり重大な関係があるのです。影響するところ非常に大きいものです。もしもどこかの党がこれを声明したりすれば、これは非常に与える政治的影響は大きいのです。ですから、多賀谷君は、おそろくそういう事務的液答弁を要求しておるのではないと思います。  なお御質問を続行いたしますか——賀谷真稔君。
  66. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今委員長からも質問がありましたが、食糧庁の立場として、私はこの問題は、ことに現在のようは供出の問題あるいは米が非常に逼迫しておる現状において、ことに日本でも北九州は非常に食糧が危機にさらされておる、こういう情勢におい、北九州のまん中の八幡で起つた事件であります。そこで北九州の市民も、これについては重大関心を持つておる。市もしばしば声明を出しておる。こういうような事情の中で、食糧庁が今まで知らはかつたこと自体が、私はきわめて怠慢であると思うのです。なるほど、食糧庁は今非常にお忙しい関係もあるでしようければも、これはきわめて他に及ぼす影響の大きな事件であります。でありますから、すみやかに調査されまして、私は二十四日から、まだ労働委員会がございますので、さらに質問を展開いたしたいと思うわけであります。
  67. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 関連して、今の応急米配給のことについてお尋ねいたしますが、一体都道府県に、応急米わくをきめて配給をさせるということにしておいて、実際そのわくに満たないで、実際に供給した量が少くて、わくが余るというようなことは、しばしばありますでしようか。あるいはあるとして、どの程度の量であるか。これは全国的な問題として承りたいと思います。
  68. 大口駿一

    大口説明員 今年の十月末で終了いたしました二十八米穀年度において、応急米を大体わくで示しましたのは、年間五千トン程度のものであります。しかしながら、応急米は、この範囲は消費をしてもさしつかえないという一応の最大限度のわくでありまして、その都道府県知事購入券発給しなければ、購入券の回収はないわけでありますから、購入券の回収がありました後に、食糧事務所からその数量の現品を売却いたします。従いまして、応急米を実際に消費いたしました数量と、応急米として認めておりますわくとの間には開きがあるわけでありまして、現在正確な数量を手元に持つておりませんが、実績を集計いたしますれば、ただいまのわく数量よりは少い数量でとどまつておるわけであります。
  69. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 その点について、昭和二十八米穀年度から過去三箇年間ぐらいの、全国の都道府県応急米に関する、与えたわくと実際に消費した量というものとの数を、正確に一応お調べ願つてお答えを願いたいと思います。本日はこの程度にいたします。
  70. 赤松勇

    赤松委員長 それでは、   旭硝子牧山工場争議問題に関連して応急米を加配した問題については、その与える影響がきわめて甚大であるので、食糧庁においては十分これを調査して、すみやかに本委員会報告すべし。 以上でよろしゆうございますね。  それでは多賀谷真稔君。
  71. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 労働省にこの問題についてお尋ねいたしたいと思います。この問題と申しますのは、旭硝子の牧出工場争議についてでございます。  まずこの問題を労働省お尋ねいたします前に、福岡の地方労働委員会並びに県の労働部、さらに八幡の労政事務所は、非常な努力をしてあつせんをされたわけであります。これは労働者も非常に喜んでおることを、まず申し上げておきたいと思います。この事件において、県の労働部とかあるいは労働委員会があつせんをいたしました。しかしながら、あつせん案が出た場合に、組合の方はのむと言つたにかかわらず、会社はけつたわけであります。そこでまた一週間程度事件が延びたわけであります。組合は、ほとんど得るところなく終つたわけでありますが、最近の傾向として、ほとんど調停案とかあつせん案は、民間の会社では、会社の方がけつておる。組合の方はのむ。こういつた全般的な問題について、どういうようにお考えであるか、お尋ねいたしたい。
  72. 中西實

    中西説明員 統計的に調停案なりあるいは仲裁は、めつたにないのであります。それに対して労使がどういう態度をとつたか、ちよつと数がわからないのでありますが、調停案等が出ました場合に、われわれの気持といたしましては、両当事者がこれを受諾するということが、最も望ましいと思つておるのであります。民間企業におきましてはもちろんのこと、ことに公益性の多い企業におきましては、特にその点、われわれとしては希望しておるわけであります。結局労働争議というものは、力関係で事を解決しようとしてあくまでつつばり合えば、どちらかが倒れるまでやまないわけであります。     〔委員長退席・高橋(禎)委員長代   理着席〕 従つて、合理的な解決方法として、第三者たる委員会判定に従うということが、最も望ましい良識ある解決方法だというふうに考えております。
  73. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 最近の事例として、ほとんど会社側がけつておるということは、これは統計をまつまでもなく大勢でございます。政府みずからそういう状態であるから、労働慣行がなかなか確立しないのでありまして、私は非常に遺憾に思うわけであります。  次にお尋ねいたしたい問題は、この牧山の争議は、デモその他によつて、今までの平穏な状態から、非常な闘争的な段階に入つたというのは、原因は会社のスキヤツブである。牧山の労働協約によりますと、保全協定が履行される限り、罷業の実態を阻害する目的をもつて他の労働者を就業させないという労働協約があるのであります。組合の方は、むしろ一般から考えれば、多いと思われるほど保全要員を入れております。五百名からの保全要員を毎日出しておつたのであります。ところが、その保全要員が帰つて行くのをとめて監禁をして、さらに日々請負が入つておりましたが、その請負をスキヤツブとしてスト破りに使つて、そうして今度の事件を複雑化させたわけであります。一体こういう労働協約があるにかかわらず、会社がこのたびとつた処置は、妥当であると考えられるかどうか、お尋ねいたしたい。
  74. 中西實

    中西説明員 個々の争議で、どちらがいい悪いということを言わされることは、最も困惑を感ずるのでありまして、大体労働慣行として世間一般の常識判断からいたしますれば、おのずからその個々の場合についていい悪いがわかつて来るだろうと思います。実は、一応の報告は受けておりますけれども、詳細な点につきましては、これの是非を判断するまでの実態をつかんでおりませんので、この程度でごかんべんをいただきたいと思います。
  75. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 さらに私はつけ加えたいと思います。私もずいぶん労働争議を見て参りましたが、かように海に陸にというようなスキヤツブの行われた争議は初めて見たのであります。まさに近代戦の様相を呈しておる。あかつきに乗じまして、会社は門司その他の支店に集結いたしました第二組合員を連れて、しかもその第二組合員は顔を隠して小さくなつておる。その附近に暴力団がおつて、上陸用舟艇とも称すべき舟によつて上陸をして来ておる。さらに一方そういう作戦をとつておきながら、今度はトラツクを先頭に、暴力団がうしろへついてピケを突破して工場に入つた、こういう状態が行われたから、その後のデモが行われたわけであります。それで先ほども申しましたが、九月十六日には、すでに会社は多くの人々を監禁して、就業さそうという計画を、争議が起つて一週間足らずして計画をし、今問題の起つております応急米を放出さしておる。これは牧山工場会社がどういう感覚でやられたか、よくわかりませんけれども、私はこういつた争議形態が今後とられるならば、今後の労働争議というものは、非常に大きな問題を惹起するであろうと思う。これについて一体労働省はどういうようにお考えであるか、お尋ねいたします。
  76. 中西實

    中西説明員 事の真相につきましては、先ほど言いましたように、一応の報告しか持つておらないのでありますが、しかし事がこのようにこじれておりますにつきましては、やはり相当労働問題に対する認識の欠如があるということは確かだろうと思うのであります。しかしながら、結局こういつたいろいろな経験を経まして、おのずからそこに良識ある労使の慣行も立つて行くのではなかろうかということを期待いたしております。
  77. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 会社の労働部長その他の方も、福岡の地労委の委員であります。よその会社に行かれれば、非常に公正なりつばな御意見を吐かれるのであります。ところが事自分のことに関すると率直に言つて、なかなかがんこであり、むしろ非常に冷酷な戦術をとられておる。これは最近の日経連の機関紙を見るとわかりますけれども労働組合が平素使つておる以上の言葉でもつて、断固粉砕とか、あるいはデマであるとかなんとか、いろいろ悪辣な言葉を使つておる。こういう日本の経営者全体としての動き——個々の経営者は、個人的に会いますと紳士でありまして、非常にものわかりがいいが、こういうような経営者の団体となつてそれが動く場合においては、非常に冷酷な戦術がとられつつある。こういうことに対して、労働省一体どういうようにお考えであるか、お尋ねいたしたい。
  78. 中西實

    中西説明員 結局労働問題は、政治経済そのときどきのいろいろな根底になつておる諸条件によつて、動いて行くものだと思うのであります。従つて、いろいろの過程におきまして、種々の様相も出て来るかと存じますけれども、要は、日本の経済の興隆のために最も妥当な労使のあり方というものが、いろいろの経験を経て確立して行くというふうに考えております。従つて、現在どうのこうのということについては、われわれとしましても、性急に批判をすべきではないと考えております。
  79. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 最後に法務省にお尋ねいたしたいと思いますが、労働者を二十日余り工場から一歩も出さないで、家族が面会に来る場合は、暴力団がついて、十分なる話もできない、こういう状態において就業させておる。さらに、奥さんが出産を待つばかりの状態にあつて、電報を打つたにもかかわらず、それを連れて行つて、そうして全然帰しておらない。こういう状態の就業を、一体どのようにお考であるか、法務省にお尋ねいたしたい。できれば、準法の関係において労働省お尋ねいたしたい。
  80. 桃澤全司

    桃澤説明員 ただいまのお話は、実は現地からの報告にはないのでございまして、どういう状況であつたか、あらためて調査いたしたいと思いますが、昨日も申し上げましたように、そういう方面からの情報が、実はすべての争議にわたつて十分われわれの耳に聞えて来るとは限らないのでございます。その原画の一つは、あるいは検察庁あたりに組合の方に来られると、何か組合員に対しての誤解を生ずるという心配をされているのじやないかという点もあります。それから検察庁の方といたしましても、組合の方々の真のお考えを伺いたいのでありますが、何か干渉ととられても困るということで、御遠慮申し上げている向も聞くのであります。将来は、そういう不都合なことがありましたならば、あるいは不都合だと思われるような行いが見受けられたときには、御遠慮なく検察庁の方にもお申出願いまして、それについて、もし刑事事犯がそこにあるという判断ができますれば、すぐ捜査を始める、かような態勢で行きたいと考えている次第であります。ただいまのお話も、今申し上げましたような事情で検察庁の方には全然聞えていないという関係になつておりますが、もしも、それがあるいは強制労働というようなことになつたり、あるいはほかの犯罪を構成するような面があれば、これはもちろん取締りをしなければならぬ、こういうふうに考えております。
  81. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 もう一つ法務省にお尋ねいたしたいと思いますが、第一組合事務所を暴力団が襲つた事件であります。これは過失傷害であるから、告訴をまつてやらなければならぬ、親告罪である。あるいは器物毀棄も親告罪である、こういうことで簡単に逃げておられるような報告を承つたわけであります。しかし、私はいやしくもこうして暴力団が闖入して来て、そうしてけがをしたというようなことを、警察が考えてこれは過失傷害であるから告訴をまたなければ何ら取調べられない、こういうことでは、私は非常に今後大きな問題が起ると思うのであります。正門にデモが一部入り込んだということを、これだけ重く取上げられる検察庁並びに警察においては、こういうような当然現実にけがをして、しかも私服が見ておる、これだけの多くの人間が入つて騒動を起した事件を、全然放置されておる。しかも過失傷害であるという。過失であるかどうかという判定は、今後にまたなければならないと思うのでありますが、そういう状態を全然放置されておるということは、遺憾であると思うのであります。もう一度これに対して、法務省としてはどういうお考えでありますか伺いたい。
  82. 桃澤全司

    桃澤説明員 過失の場合と、単なる器物毀棄の場合とは別個でございまして、多衆によつて器物毀棄が行われるということになりますと、暴力行為等取締りに関する法律違反で、もちろん取締りに当らなければならぬと思います。しかし過失の場合には、これは積極的にはたして捜査に乗り出してよいかどうかは、多分に疑問があるのであります。昨日も申し上げましたが、警察の調べでは、その当時写真もとつておるようでありますが、過失であることが確認されたという報告を検察庁に対していたしておるようであります。しかしながら、昨日の多賀谷委員のお話によりますと、必ずしも過失ではないようなお話でございましたが、これらの事情をとりまとめ、あるいはそれに対する証人氏名等をとりまとめて、診断書などとともに出していただき、検察庁の方に捜査権の発動を促していただけば非常に幸いである。これはきのうも申し上げましたが、その気持はかわりありません。
  83. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 最後に要望をしておきたいと思うわけであります。それは多数が闖入して来て器物毀棄を行つておるわけであります。これは暴力行為取締りの関係から私は発生するかと思うのでありますが、こういつたことは不問に付されておつて、そうして第一組合行つたことのみが取上げられておる。こういうことに対して、組合員また一般労働者は、検察庁当局に対して、いな国家権力に対して、何か自分たちだけが反対の立場をとられておる、こういうように感じておるわけである。このことはきわめて大きいことであると思うのでありますが、今後とも公正にお願いいたしたい。ことに、この事件はきわめて大きな輿論の上に立つておりますので、早く御調査なさつて、公正に取扱つていただきたいことをお願いしておきます。  さらに私は、本問題は今後において労働争議会社側の戦術の大きな転よを促すような問題がひそんでおると思うのであります。労働者カン詰にしておいて、応急米市役所からもらつて、そうしてスト破りができるということになりますと、こたはたいへんなことであると思う。保安要員その他を門を締めて全然出さないで、そうしてこれを足場にして第二組合をつくる、そうして米は応急米で来る、こういうことになりますと、今後おそらく経営者はこれをまねるでありましよう。私はこの問題は、今後食糧庁からの報告とともに、再度この委員会において審議いたしたい、かように考えまして、この問題の質問を打切ります。
  84. 山花秀雄

    山花委員 先ほど労働省お尋ねしておる途中で食糧関係の問題に入つたのでありますが、ただいま多賀谷委員から、公安関係について若干質問がございましたので、これに関連いたしまして、最近の労働争議の傾向につきまして法務省側の、特に公安を担当しておられる側の見解をお聞きしたいと思うのであります。  最近中小企業でずいぶんストライキが起きておりますが、私どもが公平にこのストライキの実情を見ておりますと、排発行為が各所において行われておるのであります。これは一例でございますが、葛飾区にある昭和ゴム化工という、従業員約八十人くらいの工場で、賃上げを要求いたしまして、現在ストライキに入つております。そのストライキをやつておる従業員のたむろしておるところに、泥酔をして暴言を吐き、排発を行つて——当然そういう形でございますから、ざつくばらんに申し上げますと、けんかになる、若干けがをする。それを理由にして大量検挙が行われておる。これは取締りの側に立ちますと、そういう暴行ざたが行われたがゆえにこれを検挙した、こういう言い分になつております。戦後こういう形態はあまりございませんが、戦前の労働争議には、はつきり申し上げますと、特高関係と事業主関係が共謀して、こういうような挑発行為を行い、争議団員の全員検束というような形で争議団をもみつぶすということが、戦前はよく行われたのであります。最近、そういうような戦前の傾向に逆もどりをしておるような形が、特に中小企業のストライキにおいて見られるのであります。ただいま申し上げました葛飾の工場におきましても、十二名を検挙いたしております。わずか七、八十人の争議団で、中心幹部がそういうことによつて十二名から検挙されますと、言いかえれば、争議団の力は無力になり、当然この争議争議団の敗北に終るという結果を生ずるのでございます。ところが、お考えいただきたいことは、泥酔をして争議団のたむろの中にやつて来て、挑発行為をやつたという、特にこの問題が、単なる町の暴力行為でなくして、争議に関連しておる。こういう問題につきましては、取締りの衝に当る場合においても、争議を円満に解決するという建前から、いわゆる被疑者の数も、どうせけがをしたのでございますから、これは一人か二人がぶんなぐつたんだろうと私は思うのです。ところが、それが口実になつて大量検挙ということが行われておるのでございます。この十二名の検挙のうちでも、二人は現場にいない人を検挙しておる。これは釈放されました。しかし、なお十人がそのまま警察に残されておる。こういうような事態がこれからたびたび起きると思いますが、こういう問題に関して、今後どういうように扱われるかという点について、これは労働争議とも関連しておる問題として、ひとつ御意見を承りたいと思います。
  85. 桃澤全司

    桃澤説明員 泥酔者が挑発をして、それでけんかになつたということは、私存じませんでしたが、将来そのようなことが行われ得るといたしますならば、私どもとしても、検察庁の実務を取扱う者に対して、十分注意をいたしたいと存じます。ただ、この際申し上げたいのは、多くの労働争議において、ややもすると暴力に訴えたくなる。そういう事案がだんだんふえて参つたような感じがするのであります。この際労働者側の方においても、さような場合に、あるいは経営者その他の挑発に乗らないように、十分注意していただきたいというような感じを持つておりまして、その機会があるときには、組合の方にも私ども申し上げておるのでありますが、さようなことのないように、また検察の面でさような者に引きずられることがないように、将来とも戒慎いたしたいと存じておる次第であります。
  86. 山花秀雄

    山花委員 私はこの事犯を取扱つております警察と経営者が、どのくらいじつこんであるかというようなことは、ここで別に申しません。しかし負傷した泥酔者と工場主とは、きわめてじつこんな間柄のものであります。こういう挑発行為は、労働者が全部相当訓練された労働者でございましたならば、乗らないと思うのでありますけれども、とにかく労働争議をやつております場合には、相当殺気立つているということも、これは否定することのできない事実であります。そういうところに、泥酔をして挑発行為を行う。これを自制することができるかどうかという点、これをぶんなぐつたという責任は、やはり労働者としては感じなくこはなりませんが、それが口実になつて争議団の実力をもぎとるような検挙が行われるというこの一点は、今後の公安関係あるいは労働行政の面からしても考慮していただきたい。ただいま申し上げました昭和ゴム化工の問題につきましても、一応お取調ベを願つて、この際善処をしていただくようにお願いをしたいと思うのであります。  続いて、労働省関係お尋ねしたいことは、先ほど質問が途中で切れましたが、最近朝鮮動乱も終結いたしました関係上、特需の量が減つて、各地で首切りがひんぴんとして行われております。労働省側でも調査されていると考えているのでありますが、ただいまのところどのくらいの首切りの量が出ておりますか、将来どのくらいにこれが拡大されるような見通しを持つておられますか、そういう点について、おわかりでございましたならば、ひとつ御説明を願いたいと思うのであります。
  87. 中西實

    中西説明員 まず特需関係で申し上げますと、これは米軍と民間工場との直接取引になつておりますので、その間迅速的確にはなかなか把握しがたいのでございますが、今わかつておりますものを申し上げますと、小松製作所の川崎工場、これが全員解雇になりまして千八百二十五名、それから日鋼赤羽が約二千三百、武蔵工場が四百七十四、それから日野ヂーゼル、これは臨時工が主でございますが、八百八十六名、三菱の下丸子が千百、合せますと六千五百八十五、端数まで正確にどうでございますか、大体このような数字になりております。  そこでこの特需工場におきまして、今後さらに首切りが起るかどうか、実はこの見通しは、目下外務省を通じまして米軍にも、できるだけ見通しを聞かしてくれということで交渉いたしておりますが、非常に困難でございます。われわれの見込みでは、大体アメリカの予算削減ははつきりしておりまして、これに対しまして、すでに今期の予算におきまして、大体今申し上げましたような首切りの必要を通告して来ました。あとはそう出ないのではなかろうかというふうな感じを持つております。それからのLSO方は、これは調達庁が直接やつているのでありますが、新聞にも出ておりましたように、約五千余出るであろう、それ以上にはこの近い将来には予想されないというように聞いております。
  88. 山花秀雄

    山花委員 今度の特需関係における首切りは、アメリカ政府の予算の関係から来ているということは、私どもよくわかるのでございますが、ただいまの説明によりますと、今期の予算は一応これでおちついているから、おそらく今期の予算期間内においては、これ以上の首切りは拡大しないであろう、次の予算期になりますと、またどうなるかわかりませんが、一応そういう意味で、ある期間の安定性はある、こういうように解釈してよろしゆうございますか。
  89. 中西實

    中西説明員 今期は確かにそういう見通しでございますつが、アメリカの本予算年度中は、大体そんなことでつないでくれるのではなかろうかというような感じでございます。なお、さらにその後のことにつきましては、実はこれはだれも確言できないのでありますけれども、話合いの経過から見まして、そう急激に影響を及ぼすようはことはしないであろうというような感じを受取つております。
  90. 山花秀雄

    山花委員 アメリカの場合には、労務契約で大体退職手当というような制度は一応ございません。日本ではまたそれが一つの慣習になつておりますので、その点の食い違いが若干あろうと思いますが、駐留軍関係直接の特需におきましては、労働組合の日本の調達庁ですか、その関係において、一応の退職手当の制度というものが確立しているということを聞いております。特需関係は、個々の日本の業者と労働組合の間の契約になつておりますので、これの首切りに関してはアメリカ側としては、予算がないから発注をやめたというだけで、日本の慣習その他に対しては、一切責任を日本の資本家にまかせている、こういう形になつているのでございましようか。
  91. 中西實

    中西説明員 今個々の会社につきまして調査をいたしておりますが、今までに聞いておりますところでは、全部仕事をやめてしまつたというような場合には、その辺のところまで軍の方で補償をするように聞いています。ところがこういつた縮小で、一部解雇の必要が起きたという場合には、そのために要する費用は補償をしない。そこで業者としましては、一部の場合でもやはり全部と同じように補償をしてもらいたい、こういう希望があるようでございます。これがすべての会社においてそうでございますかどうか、さらに調査してみたいと思いますけれども、われわれとしましては、できるだけそういつた場合に軍がめんどうを見てくれることを希望したいと思つております。
  92. 山花秀雄

    山花委員 ただいまの説明によりますと、特需関係では五つの事業所でそれぞれ整理が出ておりますが、川崎の小松製作の場合には、全員解雇工場閉鎖ということになつておりますので、ここではアメリカ側としてめんどうを見てくれる、こういうことでございますか。
  93. 中西實

    中西説明員 その点 は確かめておりません。しかし、全員解雇の際に、労働組合との間で退職金が問題になりましたのですが、これは妥結を見まして、一応退職金が出て問題が解決いたしております。
  94. 山花秀雄

    山花委員 先ほど中西労政局長の説明は、全員解雇のような場合には軍としてもめんどうを見る、事業縮小の場合にはめんどうを見ない、こういう御回答でございましたから、五つの事業所の中で、川崎の小松製作の場合には、全員解雇であり工場閉鎖であるから、ここだけはめんどう見てくれるかどうか、この折り返してお尋ねいたしましたのですが、そうお尋ねいたしますと、きわめて答弁があいまいになりましたが、この点について、もう少し明瞭にしていただきたいと思います。
  95. 中西實

    中西説明員 若干調査が不十分な点はおわびしたいのでありますが、川崎工場の場合、契約によりまして特に特別の退職金が出ております。おそらくこれは軍の補償のもとに出たものだというふうに解釈しております。
  96. 山花秀雄

    山花委員 特別の退職手当が出ているから、多分これは軍の補償がある程度あつたのではないかと思う、こういうことですね。
  97. 中西實

    中西説明員 そうでございます。
  98. 山花秀雄

    山花委員 そこで、もう一つお尋ねしたいことは、これは駐留軍関係にいたしましても、また特需関係にいたしましても、せんだつての石炭関係にいたしましても、最近各産業にわたり、広汎に失業者が大量に出ているというのが実情でございます。これの見返りというような形で、最近の産業で雇用が増加しているようなところがあるのでしようかどうか、ひとつお知りになつておりましたら、お聞かせを願いたいと思います。
  99. 中西實

    中西説明員 ちよつと今資料を持つておりませんので、職業安定の方に言いまして、資料をお届けしたいと思います。
  100. 山花秀雄

    山花委員 そういう御回答でございましたならば、多分雇用増大をするような産業はないのじやないかというふうに私は考えますが、どうでございましようか。
  101. 中西實

    中西説明員 全部が全部縮小とは存じておりません。現に建設関係等はふえている、そういうふうに感じております。
  102. 山花秀雄

    山花委員 最後にひとつお尋ねしたい点はどちらになりましても、差引相当大量の失業者が出ると思います。これらに対して、この失業問題解決のために、一応半年間の失業手当という制度がございますが、このように大量に首切りが出て失業者がふえるという点で、失業手当の金の問題については、ただいまのところ心配はないのでございましようかどうか、お尋ねしたいと思います。
  103. 中西實

    中西説明員 一般の失業保険の分につきましては、金の面では心配はございません。
  104. 山花秀雄

    山花委員 いずれ半年過ぎましたならば、すぐに日本の景気が回復するというようにも考えられませんので、それから後の失業対策ということが、具体論として問題になつて参ります。この失業対策に関して、ただいま労働省としては、もう明確なる一つの対策を立てておかなければ手遅れになると思いますが、こういう点についてお考えがございましたならば、この際ひとつはつきりしていただきたいと思います。
  105. 安井謙

    安井説明員 いろいろな社会情勢に対応いたしまして、最近労働省でも、各関係省でも、各関係経済省とも種々見通しについても協議をいたしている次第であります。さらに、先回の委員会でもございましたように、失業対策委員会といつたものもさらに強化いたしまして、でき得れば——内閣の官制にした方がいいかどうかは、こたはまだ検討中でございますが、強いものにいたしまして、十分な措置をとつて行きたいと考えております。
  106. 山花秀雄

    山花委員 当然大きな失業問題が重要な労働対策の一環になるだろうと思いますが、十一月二十四日には失業問題を中心に本委員会を開催することになつておりますので、そのときに労働省側としての十分なる対策をここで発表できるような腹案を持つて来ていただきたいと要求するものであります。われわれ委員としましても、この問題には重大なる関心を払つておりますので、十分研究して質疑を重ねて行きたいと思いますから、よろしくお願いしたいと思います。私の質問は本日はこれにて終ります。
  107. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員長代理 この際委員各位に了承を願つておきたいと思いますが、中西労政局長は、三時半までに労働問題協議会に出席したいという御希望があるわけでありますから、その点お含みの上質疑をお続け願いたいと思います。  井堀君。
  108. 井堀繁雄

    ○井堀委員 中小企業の労働対策についてお尋ねいたしたいと思います。通産省、労働省、法務省にお尋ねをいたしたいのでありますが、通産省はお見えでないので、労働省と法務省にお答えをいただこうと思います。  御案内のように、中小企業の労働関係は、今日非常に重要な問題となつておると思うのであります。ことに日本の産業経済の上に占めております中小企業の姿を率直に認めますならば、労務対策はきわめて喫緊な問題だと思うのです。そこで、政府の中小企業労働対策についてお尋ねをいたすのでありますが、時間の制約がございますので広くわたることは困難と思いますので、重要と思われる二、三の点についてただしておきたいと思います。  まず、中小企業の定義が、いつも問題になるようでありますが、ここで私のお尋ねいたそうとする中小企業は、まず雇用人員を基礎にしてお尋ねをしようと思うのであります。政府の統計の中に、昭和二十六年七月の統計で、従業員三十名以下の事業所と従業員の数が発表されております。パーセントを見ますると、全事業場の九八%が三十人未満の従業者であるとされております。従業者の総数におきましても全体の六一%に相当することを明らかにしておるわけでありますが、このように三十人未満の従業者で経営されておるものが中小企業だと仮定いたしますと、きわめて広汎なものになるわけであります。労働者といたしましても六一%といいますから、労働対策としては、当然ここにははつきりした政府の方針があるはずと思うのであります。そこで実際の姿をどう政府が把握しておるかをお尋ねしてから、順次私の質問を進めるべきでありますが、通産省の方がお見えでありませんので、問題は多少あちらこちらいたすのでありますが、労働省の立場から、まず雇用の実態について、どのような現実把握をなさつておいでになるかをお尋ねいたしたいと思うのであります。私どもの見ております中小企業の雇用の現状というものは、労働省が発表されました働労白書の中に、たとえば失業者の統計あるいは不完全就業労働数を発表いたしております。また一般には潜在失業の言葉をもつて言い表わしておりますが、その潜在失業並びに不完全就業者の最も多く包容されております作業場は、中小企業であると思います。でありますから、ほんとうに失業対策を樹立しようとすれば、中小企業の雇用問題を明確に把握しなければ、日本の失業対策は成り立たぬとすらいえると思うのです。そこで、一体労働省の経済白書の統計を見ますと、不完全労働者の数をかなり大きく把握されておるようであります、もちろん実態はもつと大きいものであるかわかりませんが。たとえば、失業者の数が昭和二十六年に三十六万、二十七年には四十七万、二十八年の上半期を想像して五十一万、二十六年から二十八年にかけて失業者の増大の傾向というものは、きわめて恐るべき速度でありますが、これと潜在失業との問題を、われわれは取上げなければならぬと思います。そこで、不完全就業数の二十七年十二月現在の統計によりますと、全労働人口の中から一千百五万人を摘出して、この中から農林関係を除きまする数三百七十四万人、この三百七十四万人は、おそらく中小企業のもとにある労働者の実態を把握しておるものと見て大差がないと思う。このような莫大な不完全労働、半失業というものが中小企業の労働実態といつても、決して言い過ぎではないと思います。このように日本の全労働者の六一%を占める多くの労働者が、かような不完全雇用の中に、また不安定な雇用状態の中に放任されておることはいなめないと思うのでありますが、こういう不完全な労働状態のもとに、低劣な労働条件と低い賃金に甘んじて労働しております人々を、どのように政府は保護されようとしておるかを伺いたいのであります。  いまさら労働組合法、労調法、労働基準法の説明をするまでもないと思いますが、この三つの法律は、それぞれ労働者の自主的な労働条件の改善のための保護と育成を約束しております。労働基準法のごときは、労働者の労働条件というものは、労働者の人たるに値する生活を満たすに足るものでなければならぬという、きわめて大胆な表明をしておるくらいでありますが、今日中小企業のこのような姿について、労働省はどのような数字を把握し、対策を持つておるかを、まず雇用の形態の面についてお答えを願いたい。もし本日御用意がなければ、引続き労働委員会が開催されておりますから、次の労働委員会にその数字を明らかに御提示願いたいと希望しておきます。  次は、労働賃金、給与の問題についてでありますが、毎月勤労統計調査表によりますると、三十人未満の給与の統計が出ておりません。五百人以上の場合には、二十八年四月現在一万六千六百二円、百人以上の作業場においては一万四千二百六十八円、三十人以上の場合においては一万二千五百十二円、このように労働者雇用量の規模において、労働者の収入がかくのごとく逓減して来ておるのであります。三十人未満のものについては、私の手元にあります資料を総合いたしますと、この当時は九千円から八千円台に下つておると見てさしつかえないと思います。こういうふうに規模の大小によつて労働者の給与が非常な開きを見せておると思います。労働省において、三十人未満の事業所、さつきも申し上げたように労働者の六一%を占める広い範囲労働者の給与状況が調べられていないはずはないと思うのであります。実態を調査することは困難でありましようが、概数でけつこうでありますから、どのように給与の状況を把握されておるかをお答え願いたい。またこの対策を伺つておきたい。  次は、これに対する未払い賃金の傾向であります。大きい工場会社等における未払い賃金は、すぐ大きな社会問題になりますし、労使関係の間にすぐ取上げられて、団体交渉その他によつて処置をされるのでありますが、中小企業のもとにおいては、これが非常に困難であります。そこで第三の質問をいたすのでありますが、三十人未満の職場において、労働組合の組織がどの程度になつておるかをお答え願いたいと思います。きわめて劣勢であることは、すぐ想像のつくことでありますが、せつかく労働三法という対社会的に労使関係の対等を保持しようとする法律があつても、その組織が事実において不完全でありますことは、いずれ統計の上でお示し願えると思いますが、そういう場合において、たとえば労働組合法の中において、労使関係の健全なものは団体交渉、労働協約といつたようなものを助成することを法律が約束し、そのサービス省である労働省がこれを指導しておることは疑いをいれぬところでありますが、いかなる具体的な指導とどういう努力が今まで払われて来たかを、具体的にお示しいただきたいと思うのであります。  以上三つの点について、労働省のお答えをできるだけ具体的にお願いいたしたい。繰返しますが、もし資料が本日用意がなければ、次回の労働委員会でけつこうであります。  それから法務省にお尋ねをしておきたいのでありますが、どうも各地に起つております労働争議については、先ほども質問がありましたが、中小企業のもとにおける労働争議、紛議等には、警察の圧力というものが、かなり露骨に響いて来るのであります。輿論になかなかなりがたいのであります。これはあと労働省の方のお答えで明らかになると思いますが、組織がないから——労働組合がありましても、その労働組合はきわめて脆弱な基盤の上に立つて労働組合の経営すら困難な条件の中にあるのでありますから、十分な闘いをするということは望みがたいのであります。そういう弱い劣勢な立場にある労働組合と雇い主の間に行われております労働争議に、とかく警察の干渉がふえている。私は事実をあげてお尋ねいたす資料をたくさん持つておりますが、一つだけあげてお答えを願つておきたいと思います。これは労働省にもお尋ねをいたすことになりますが、埼玉県の朝霞町に所在いたします二十五人ばかりの従業員の金属産業でありますが、電気その他の部分品、ワツシヤのようなものをつくつております小さな工場であります。この地方には伸銅工場が狭い地域に十一ばかりあります。この清水製作所を加えて十二の製作所が一つになつて労働組合が組織されておる。全部で約七百人ばかりの労働者によつて一つの団体ができておる。また使用者側の方も、工場主の団体である工業会というものを組織されて、その工業会と朝霞の金属労働組合とが労働協約を結んでおるわけであります。こういう点は、確かに労働法にいう労使関係の最もよきかつこうになると私どもつておりますが、こういう組織ができましたのは、かなり長い間の労使間における努力が実を結んだものでありますことは相違ありません。その中で、清水製作所だけがもう一年半にわたつて未払い賃金を中心にする労働争議が続いております。長期にわたるストライキでありますから、その間にいろいろな事態が発生しております。そこで警察の関係した大きな事件が二つ折り重つて出ておる。その真相は、一つはもうすでに法廷に出て来ておりますが、そのいきさつについて、法務省がどれだけお調べになつておるか知りませんが、私はお調べになることを希望しておきたいと思います。私のお尋ねせんとするところは、一つお伺いすれば全体がわかると思うのですが、この工場の未払い賃金は、すでに三百万円を突破いたしておる。相当長期にわたるものでありますが、一般の給与に比較いたしますならば、今日の一万七千、一万八千というような給与に比較いたしまして、九千円から一万台の当時から未払い賃金が続いておるのでありますから、かなりひどいもので、それが三百万もたまつて、経営者側が工場を投げ出すという事態に当面いたしまして、労働組合工場閉鎖に反対して交渉が開始されたのであります。こういう事態はつきり認識しておりますならば、この問題に対する扱い方も、私がこれからお尋ねするようなことにならなかつたと思うのです。それは、一つ事件はこういうことであります。その反対にあいまして、団体協約が今申し上げましたように十二の工場主による工業会と、その下に働いておる労働者がつくつておる朝霞金属労働組合という連合的な組織でありますが、それとの間に結んでいる団体協約でありますから、工業会と労働組合との間の話合いで、経営者側の態度がよくないということを経営者側も認めておる。従つて、工業会も陰になりひなたになり援助をいたしておる。たとえば手形の決済でありますとか、あるいは材料、融資でありますとかいつたようなものまで、工業会が協力してその工場の再建を助けておる。こういうように、一つのブロツクをなして一つ工場の再建をはかろうとする労働者に援助を与えておるときに、たまたま経営者の長男が——これは少し頭が狂つていると一般では言つていて、まあ普通人ではないのでありますが、それが、たまたま学友であるというので、かつて農林省でレツド・パージを受けた若い青年をひつぱり込んで来て、労働組合の切りくずしを始めました。それがきつかけになりまして、工場主の長男だというので、その工場を自分の手に収めるために、暴力団を雇い込んで、労働組合の幹部を一室に軟禁して、さんざん脅迫をして組合脱退を強要した。これを聞きつけて、労働組合の幹部がそれを救出に参つた。ところが、そのときにはもう警察とちやんと打合せをいたしてありまして、救出に来た労働組合の幹部を警察が検挙しておるのであります。あとになつてわかつたことでありますが、すぐにもちろん釈放はいたしました。その後引続いて、今度は逆にこういう手を使つて——どもから言うなら、明らかにそうでありますが、また再びそれと同じように、工場の中に労働組合の幹部をカン詰にして、脱退を強要するために署名、捺印を求めた。これを拒んで押し合いへし合いをいたしまして、傷をしたとか、しないとかいうことを理由にして、片一方は傷害の訴えを出しておる。その傷が、はたしてそういうときにでるような事態かどうかということが問題でありますが、軟禁を受けた方が六、七人であり、軟禁した方が十人くらいであります。一方はそういう知識がありませんし、まさかそういうことをやろうとは思いませんから、何らの対策を講じない。一週間ほどしてから初めて警察から呼び出しがあつて、聞いてみたところが、一週間ほど前にこういうことがあつたじやないかということで、調書をとる。調書をとつてから一月もしてから検察庁に告発状が出ておる。その結果、労働組合の幹部は五人とも検挙されました。その検挙したのも、逮捕状を出したのもおかしいと思うのであります。私は逮捕状を出しました判事にも会い、あるいは要求した検事にも会つて話をしたのでありますが、会つて話を聞いてみると、そういう事実はチンプンカンプンで、ただ警察の告訴状に現われた事実だけをもつて検挙しておる。私はこういう裁判があるものかということを驚いておるくらいでありますが、しかしそういう手続がずつと進みますると、法律というものは、いかにも形式だけによつて物を処理するものであることを、私はこれほどはつきり見たことはありません。最低ではありますけれども罰金刺をつけている。今控訴をするかしないかでありますが、控訴をしたりして裁判所に引出されておりますと、二十五人かそこそこの従業員のうちで、五人も六人もが裁判所に毎日通つてつたのでは、ほかの者が食えなくなる。そのために、わずかの罰金なら納めてもこの際解決をしよう、泣き寝入りをしようという態度に今出ておる。こういうような事柄をもつと詳しく説明すればよくわかると思うのであります。おそらくこれは警察の過失だろうと思うのでありますが、一つには今日の警察官はまだ労働問題に対する知識が鈍いのであります。労働法と治安法に対する理解が足りないと私は思つております。この事柄についてはぜひひとつ十分な御調査を願いたいと思います。  その後また一つ事件が起きておる。その事件は奇怪しごくと言わなければなりません。私も事実調査に参つておりますが、その後そういう状態でありますから、工業会と労働組合との間の団体交渉の結果、結局地労委に提訴することになりまして、地労委のあつせんによつて、そういう状態が明らかにされました結果、雇い主と労働組合との間に話合いをつけて、社長が経営能力を喪失し、債権者に対するがんじがらめの形から、これ以上経営ができぬというので、社長を除いて、常務とその息子、それと労働組合側から二人、四人の実行委員をあげて、当分の間この四人の実行委員のもとに再建計画を立てることが望ましいという債権者のおもなる意見を加えまして、そういう調停案ができたわけであります。その調停案に基いて、その後四人の実行委員のもとに経営が続けられておるわけでありますが、その経営について、朝霞金属労働組合がなけなしの預金を集めまして、労働金庫から三百万円の融資を受けて今日事業を継続しております。ところが、このような経営をしておるものに対して、その息子と称する実行委員の一人が、最初からこれに協力をしないのみならず、社長の変更登記をいたしましたり、あるいは重役会議、株主会議と称して、作為的な手段によつていろいろと妨害を企て、遂には、これはごく近くでありまするが、先月の初めごろでありましたか、中ごろでありましたか、暴力団を十何人か連れて夜送電線を切断しております。動力線を切つて操業を中止せしめるような妨害をしております。これに対して、警察に訴えても、警察が出動して来ない。どういうわけかといつて聞いてみますと、それは労働争議に関与してはならないと上からおしかりを受けたから、取控え中だから出て行かぬという。私は法律をよく知りませんが、きつとこれは何か電気の関係ですから、その方の事業法の関係でも、切つた場合は処分があるはずです。ところが、そういうことがあり、それから労働組合が夜でもピケをつけている。そのピケを暴力団が来て襲つておる。これも訴えたけれども、出て来ない。暴行を加えておる、傷害を受けた。ところが、告訴すれば取上げるから告訴してくれというようなことを、今になつて警察が言つておる。これはどう考えても警察の内部に、誤解だけではないのじやないかという感じがいたすのでありまして、こういう事実について十分御調査をなすつて、全体の中小企業における労資関係というものを——労働組合があつてもこれです。ないところにあつては、おそらく労働者は権利に眠つておる姿を想像するにかたくないのであります。こういう事実をひとつ検察庁、法務省といたしましては、十分御調査なすつて、私の今の質問をいたしておりまする内容に相違があるならば御指摘願い、なお足りないものを明らかにしてもらつて、詳しい経過をお調べになつた結果を、この委員会に御報告願いたいと思つておるのであります。たいへん質問が長時間にわたりまして、不得要領になりましたが、お答えを願いたいと思います。
  109. 安井謙

    安井説明員 中小企業に関する全般の問題から、さらに個々の問題まで、広汎な御質問でございますので、ただいま御答弁できる限りのものはいたし  まして、さらに調査を要するものは調査いたしまして、次回の委員会で御答弁いたしたいと考えております。   まず第一問の、失業者の傾向でございますが、潜在失業者につきましては、手元に的確な資料もございませんし、これが推計を要するかと存ずるのであります。完全失業者の傾向につきましては、御承知の通り、本年の三月前後を中心といたしまして、相当ふえて参つたという傾向が強かつたのであります。参考までに申し上げますと、三月が六十一万の完全失業者ということになつております。四月からずつと八月にかけまして、だんだんと減少いたして参つておりまして、八月はちようど昨年の八月と同数の四十三万という数字になつております。さらに失業者に対する失業保険の給付人員についてみましても、昨年の八月は三十四万八千、これが今年の八月では三十三万五千台といつた傾向に相なつておるようであります。で、全般の中小企業の対策につきましては、これはもう緊急を要することお説の通りでございますが、これは通産省ともよく会議いたしまして御満足の行く御答弁をしたいと存じております。労働省としましては、技能養成あるいは社会福祉、労働保険その他万端の福祉関係の施設で、万全を期したいと思つておる次第でございます。  それから給与につきましては、三十人未満の小工場につきましても、ただいまちよつと手元に資料がございませんが、おそらく御説の一万円前後のものであろうと存じております。さらに、参考までに申し上げますと、これはペースのとり方によつて多少違いますが、三十人以上百人のものが一万二千円、それから百人以上五百人くらいのものが一万四千円、五百人以上が一万六千円、こういつたべースを、最近のベースとしては調査しておる次第でございます。  それから賃金未払いが、中小企業に特に多いのじやなかろうかという御質問でございますが、これも傾向といたしましては、調べておりますものでは目下横ばいの状況にありまして、大体件数から申しますならば、九九%は完全支払いといつた数字になつております。  それから、さらに埼玉県の例等で、具体的なお話のありました件につきましては、後刻取調べをいたしまして、また御答弁したいと思います。
  110. 桃澤全司

    桃澤説明員 朝霞の問題につきましては、後刻調査をした上で申し上げたいと存じます。
  111. 井堀繁雄

    ○井堀委員 たいへん多岐にわたつてお尋ねいたしましたので、御答弁を急にいただけないと思いますし、時間の都合もあるようでありますから、次の委員会まで質問を保留いたしておきます。
  112. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員長代理 本日はこの程度にとどめまして、次会は来る二十四日午前十時より開会いたすこととし、本日はこれにて散会いたします。     午後三時三十二分散会