○井堀
委員 中小企業の労働対策について
お尋ねいたしたいと思います。通産省、
労働省、法務省に
お尋ねをいたしたいのでありますが、通産省はお見えでないので、
労働省と法務省にお答えをいただこうと思います。
御案内のように、中小企業の労働
関係は、今日非常に重要な問題とな
つておると思うのであります。ことに日本の産業経済の上に占めております中小企業の姿を率直に認めますならば、労務対策はきわめて喫緊な問題だと思うのです。そこで、
政府の中小企業労働対策について
お尋ねをいたすのでありますが、時間の制約がございますので広くわたることは困難と思いますので、重要と思われる二、三の点についてただしておきたいと思います。
まず、中小企業の定義が、いつも問題になるようでありますが、ここで私の
お尋ねいたそうとする中小企業は、まず
雇用人員を基礎にして
お尋ねをしようと思うのであります。
政府の統計の中に、
昭和二十六年七月の統計で、
従業員三十名以下の事業所と
従業員の数が発表されております。パーセントを見ますると、全事業場の九八%が三十人
未満の従業者であるとされております。従業者の総数におきましても全体の六一%に相当することを明らかにしておるわけでありますが、このように三十人
未満の従業者で経営されておるものが中小企業だと仮定いたしますと、きわめて広汎なものになるわけであります。
労働者といたしましても六一%といいますから、労働対策としては、当然ここには
はつきりした
政府の方針があるはずと思うのであります。そこで実際の姿をどう
政府が把握しておるかを
お尋ねしてから、順次私の
質問を進めるべきでありますが、通産省の方がお見えでありませんので、問題は多少あちらこちらいたすのでありますが、
労働省の立場から、まず
雇用の実態について、どのような現実把握をなさ
つておいでになるかを
お尋ねいたしたいと思うのであります。私
どもの見ております中小企業の
雇用の現状というものは、
労働省が発表されました働労白書の中に、たとえば失業者の統計あるいは不完全就業労働数を発表いたしております。また
一般には潜在失業の言葉をも
つて言い表わしておりますが、その潜在失業並びに不完全就業者の最も多く包容されております
作業場は、中小企業であると思います。でありますから、ほんとうに失業対策を樹立しようとすれば、中小企業の
雇用問題を明確に把握しなければ、日本の失業対策は成り立たぬとすらいえると思うのです。そこで、
一体労働省の経済白書の統計を見ますと、不完全
労働者の数をかなり大きく把握されておるようであります、もちろん実態はもつと大きいものであるかわかりませんが。たとえば、失業者の数が
昭和二十六年に三十六万、二十七年には四十七万、二十八年の上半期を想像して五十一万、二十六年から二十八年にかけて失業者の増大の傾向というものは、きわめて恐るべき速度でありますが、これと潜在失業との問題を、われわれは取上げなければならぬと思います。そこで、不完全就業数の二十七年十二月現在の統計によりますと、全労働人口の中から一千百五万人を摘出して、この中から農林
関係を除きまする数三百七十四万人、この三百七十四万人は、おそらく中小企業のもとにある
労働者の実態を把握しておるものと見て大差がないと思う。このような莫大な不完全労働、半失業というものが中小企業の労働実態とい
つても、決して言い過ぎではないと思います。このように日本の全
労働者の六一%を占める多くの
労働者が、かような不完全
雇用の中に、また不安定な
雇用状態の中に放任されておることはいなめないと思うのでありますが、こういう不完全な労働状態のもとに、低劣な労働
条件と低い賃金に甘んじて労働しております人々を、どのように
政府は保護されようとしておるかを伺いたいのであります。
いまさら
労働組合法、労調法、労働
基準法の説明をするまでもないと思いますが、この三つの
法律は、それぞれ
労働者の自主的な労働
条件の改善のための保護と育成を約束しております。労働
基準法のごときは、
労働者の労働
条件というものは、
労働者の人たるに値する生活を満たすに足るものでなければならぬという、きわめて大胆な表明をしておるくらいでありますが、今日中小企業のこのような姿について、
労働省はどのような数字を把握し、対策を持
つておるかを、まず
雇用の形態の面についてお答えを願いたい。もし本日御用意がなければ、引続き
労働委員会が開催されておりますから、次の
労働委員会にその数字を明らかに御提示願いたいと希望しておきます。
次は、労働賃金、給与の問題についてでありますが、毎月勤労統計
調査表によりますると、三十人
未満の給与の統計が出ておりません。五百人以上の場合には、二十八年四月現在一万六千六百二円、百人以上の
作業場においては一万四千二百六十八円、三十人以上の場合においては一万二千五百十二円、このように
労働者の
雇用量の規模において、
労働者の収入がかくのごとく逓減して来ておるのであります。三十人
未満のものについては、私の手元にあります資料を総合いたしますと、この当時は九千円から八千円台に下
つておると見てさしつかえないと思います。こういうふうに規模の大小によ
つて労働者の給与が非常な開きを見せておると思います。
労働省において、三十人
未満の事業所、さつきも申し上げたように
労働者の六一%を占める広い
範囲の
労働者の給与状況が調べられていないはずはないと思うのであります。実態を
調査することは困難でありましようが、概数でけつこうでありますから、どのように給与の状況を把握されておるかをお答え願いたい。またこの対策を伺
つておきたい。
次は、これに対する未払い賃金の傾向であります。大きい
工場、
会社等における未払い賃金は、すぐ大きな社会問題になりますし、
労使関係の間にすぐ取上げられて、団体交渉その他によ
つて処置をされるのでありますが、中小企業のもとにおいては、これが非常に困難であります。そこで第三の
質問をいたすのでありますが、三十人
未満の職場において、
労働組合の組織がどの程度にな
つておるかをお答え願いたいと思います。きわめて劣勢であることは、すぐ想像のつくことでありますが、せつかく労働三法という対社会的に
労使関係の対等を保持しようとする
法律があ
つても、その組織が事実において不完全でありますことは、いずれ統計の上でお示し願えると思いますが、そういう場合において、たとえば
労働組合法の中において、
労使関係の健全なものは団体交渉、労働協約とい
つたようなものを助成することを
法律が約束し、そのサービス省である
労働省がこれを指導しておることは疑いをいれぬところでありますが、いかなる具体的な指導とどういう努力が今まで払われて来たかを、具体的にお示しいただきたいと思うのであります。
以上三つの点について、
労働省のお答えをできるだけ具体的にお願いいたしたい。繰返しますが、もし資料が本日用意がなければ、次回の
労働委員会でけつこうであります。
それから法務省に
お尋ねをしておきたいのでありますが、どうも各地に起
つております労働
争議については、先ほ
ども質問がありましたが、中小企業のもとにおける労働
争議、紛議等には、警察の圧力というものが、かなり露骨に響いて来るのであります。輿論になかなかなりがたいのであります。これは
あとで
労働省の方のお答えで明らかになると思いますが、組織がないから
——労働組合がありましても、その
労働組合はきわめて脆弱な基盤の上に立
つて、
労働組合の経営すら困難な
条件の中にあるのでありますから、十分な闘いをするということは望みがたいのであります。そういう弱い劣勢な立場にある
労働組合と雇い主の間に行われております労働
争議に、とかく警察の干渉がふえている。私は事実をあげて
お尋ねいたす資料をたくさん持
つておりますが、
一つだけあげてお答えを願
つておきたいと思います。これは
労働省にも
お尋ねをいたすことになりますが、埼玉県の朝霞町に所在いたします二十五人ばかりの
従業員の金属産業でありますが、電気その他の部分品、ワツシヤのようなものをつく
つております小さな
工場であります。この地方には伸銅
工場が狭い地域に十一ばかりあります。この清水製作所を加えて十二の製作所が
一つにな
つて労働組合が組織されておる。全部で約七百人ばかりの
労働者によ
つて一つの団体ができておる。また使用者側の方も、
工場主の団体である工業会というものを組織されて、その工業会と朝霞の金属
労働組合とが労働協約を結んでおるわけであります。こういう点は、確かに
労働法にいう
労使関係の最もよきかつこうになると私
ども思
つておりますが、こういう組織ができましたのは、かなり長い間の労使間における努力が実を結んだものでありますことは相違ありません。その中で、清水製作所だけがもう一年半にわた
つて未払い賃金を中心にする労働
争議が続いております。長期にわたる
ストライキでありますから、その間にいろいろな
事態が発生しております。そこで警察の
関係した大きな
事件が二つ折り重
つて出ておる。その真相は、
一つはもうすでに法廷に出て来ておりますが、そのいきさつについて、法務省がどれだけお調べにな
つておるか知りませんが、私はお調べになることを希望しておきたいと思います。私の
お尋ねせんとするところは、
一つお伺いすれば全体がわかると思うのですが、この
工場の未払い賃金は、すでに三百万円を突破いたしておる。相当長期にわたるものでありますが、
一般の給与に比較いたしますならば、今日の一万七千、一万八千というような給与に比較いたしまして、九千円から一万台の当時から未払い賃金が続いておるのでありますから、かなりひどいもので、それが三百万もたま
つて、経営者側が
工場を投げ出すという
事態に当面いたしまして、
労働組合が
工場閉鎖に反対して交渉が開始されたのであります。こういう
事態を
はつきり認識しておりますならば、この問題に対する扱い方も、私がこれから
お尋ねするようなことにならなか
つたと思うのです。それは、
一つの
事件はこういうことであります。その反対にあいまして、団体協約が今申し上げましたように十二の
工場主による工業会と、その下に働いておる
労働者がつく
つておる朝霞金属
労働組合という連合的な組織でありますが、それとの間に結んでいる団体協約でありますから、工業会と
労働組合との間の話合いで、経営者側の態度がよくないということを経営者側も認めておる。従
つて、工業会も陰になりひなたになり援助をいたしておる。たとえば手形の決済でありますとか、あるいは材料、融資でありますとかい
つたようなものまで、工業会が協力してその
工場の再建を助けておる。こういうように、
一つのブロツクをなして
一つの
工場の再建をはかろうとする
労働者に援助を与えておるときに、たまたま経営者の長男が
——これは少し頭が狂
つていると
一般では言
つていて、まあ普通人ではないのでありますが、それが、たまたま学友であるというので、か
つて農林省でレツド・パージを受けた若い青年をひつぱり込んで来て、
労働組合の切りくずしを始めました。それがきつかけになりまして、
工場主の長男だというので、その
工場を自分の手に収めるために、暴力団を雇い込んで、
労働組合の幹部を一室に軟禁して、さんざん脅迫をして
組合脱退を強要した。これを聞きつけて、
労働組合の幹部がそれを救出に参
つた。ところが、そのときにはもう警察とちやんと
打合せをいたしてありまして、救出に来た
労働組合の幹部を警察が検挙しておるのであります。
あとにな
つてわか
つたことでありますが、すぐにもちろん釈放はいたしました。その後引続いて、今度は逆にこういう手を使
つて——私
どもから言うなら、明らかにそうでありますが、また再びそれと同じように、
工場の中に
労働組合の幹部を
カン詰にして、脱退を強要するために署名、捺印を求めた。これを拒んで押し合いへし合いをいたしまして、傷をしたとか、しないとかいうことを理由にして、片一方は傷害の訴えを出しておる。その傷が、はたしてそういうときにでるような
事態かどうかということが問題でありますが、軟禁を受けた方が六、七人であり、軟禁した方が十人くらいであります。一方はそういう知識がありませんし、まさかそういうことをやろうとは思いませんから、何らの対策を講じない。一週間ほどしてから初めて警察から呼び出しがあ
つて、聞いてみたところが、一週間ほど前にこういうことがあ
つたじやないかということで、調書をとる。調書をと
つてから一月もしてから検察庁に告発状が出ておる。その結果、
労働組合の幹部は五人とも検挙されました。その検挙したのも、逮捕状を出したのもおかしいと思うのであります。私は逮捕状を出しました判事にも会い、あるいは要求した検事にも会
つて話をしたのでありますが、会
つて話を聞いてみると、そういう事実はチンプンカンプンで、ただ警察の告訴状に現われた事実だけをも
つて検挙しておる。私はこういう裁判があるものかということを驚いておるくらいでありますが、しかしそういう
手続がずつと進みますると、
法律というものは、いかにも形式だけによ
つて物を処理するものであることを、私はこれほど
はつきり見たことはありません。最低ではありますけれ
ども罰金刺をつけている。今控訴をするかしないかでありますが、控訴をしたりして裁判所に引出されておりますと、二十五人かそこそこの
従業員のうちで、五人も六人もが裁判所に毎日通
つてお
つたのでは、ほかの者が食えなくなる。そのために、わずかの罰金なら納めてもこの際解決をしよう、泣き寝入りをしようという態度に今出ておる。こういうような事柄をもつと詳しく説明すればよくわかると思うのであります。おそらくこれは警察の過失だろうと思うのでありますが、
一つには今日の警察官はまだ労働問題に対する知識が鈍いのであります。
労働法と治安法に対する理解が足りないと私は思
つております。この事柄についてはぜひひ
とつ十分な御
調査を願いたいと思います。
その後また
一つ事件が起きておる。その
事件は奇怪しごくと言わなければなりません。私も事実
調査に参
つておりますが、その後そういう状態でありますから、工業会と
労働組合との間の団体交渉の結果、結局地労委に提訴することになりまして、地労委のあつせんによ
つて、そういう状態が明らかにされました結果、雇い主と
労働組合との間に話合いをつけて、社長が経営能力を喪失し、債権者に対するがんじがらめの形から、これ以上経営ができぬというので、社長を除いて、常務とその息子、それと
労働組合側から二人、四人の実行
委員をあげて、当分の間この四人の実行
委員のもとに再建計画を立てることが望ましいという債権者のおもなる意見を加えまして、そういう調停案ができたわけであります。その調停案に基いて、その後四人の実行
委員のもとに経営が続けられておるわけでありますが、その経営について、朝霞金属
労働組合がなけなしの預金を集めまして、労働金庫から三百万円の融資を受けて今日事業を継続しております。ところが、このような経営をしておるものに対して、その息子と称する実行
委員の一人が、最初からこれに協力をしないのみならず、社長の変更登記をいたしましたり、あるいは重役
会議、株主
会議と称して、作為的な手段によ
つていろいろと妨害を企て、遂には、これはごく近くでありまするが、先月の初めごろでありましたか、中ごろでありましたか、暴力団を十何人か連れて夜送電線を切断しております。動力線を
切つて操業を中止せしめるような妨害をしております。これに対して、警察に訴えても、警察が出動して来ない。どういうわけかとい
つて聞いてみますと、それは労働
争議に関与してはならないと上からおしかりを受けたから、取控え中だから出て行かぬという。私は
法律をよく知りませんが、きつとこれは何か電気の
関係ですから、その方の事業法の
関係でも、切
つた場合は処分があるはずです。ところが、そういうことがあり、それから
労働組合が夜でもピケをつけている。そのピケを暴力団が来て襲
つておる。これも訴えたけれ
ども、出て来ない。暴行を加えておる、傷害を受けた。ところが、告訴すれば取上げるから告訴してくれというようなことを、今にな
つて警察が言
つておる。これはどう
考えても警察の内部に、誤解だけではないのじやないかという感じがいたすのでありまして、こういう事実について十分御
調査をなす
つて、全体の中小企業における労資
関係というものを
——労働組合があ
つてもこれです。ないところにあ
つては、おそらく
労働者は権利に眠
つておる姿を想像するにかたくないのであります。こういう事実をひ
とつ検察庁、法務省といたしましては、十分御
調査なす
つて、私の今の
質問をいたしておりまする内容に相違があるならば御指摘願い、なお足りないものを明らかにしてもら
つて、詳しい経過をお調べに
なつた結果を、この
委員会に御
報告願いたいと思
つておるのであります。たいへん
質問が長時間にわたりまして、不得要領になりましたが、お答えを願いたいと思います。