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1953-11-03 第17回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月三日(火曜日)     午後二時二十八分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 本間 俊一君 理事 川崎 秀二君    理事 八百板 正君 理事 今澄  勇君    理事 中村 梅吉君       相川 勝六君    植木庚子郎君       尾崎 末吉君    尾関 義一君       小林 絹治君    迫水 久常君       庄司 一郎君    鈴木 正文君       富田 健治君    中村  清君       灘尾 弘吉君    西村 久之君       羽田武嗣郎君    葉梨新五郎君       原 健三郎君    船越  弘君       八木 一郎君    山崎  巖君       稻葉  修君    小山倉之助君       河野 金昇君    河本 敏夫君       櫻内 義雄君    園田  直君       古井 喜實君    松村 謙三君       青野 武一君    伊藤 好道君       上林與市郎君    福田 昌子君       武藤運十郎君    横路 節雄君       和田 博雄君    稲富 稜人君       加藤 鐐造君    小平  忠君       河野  密君    三宅 正一君       吉川 兼光君    安藤  覺君       石橋 湛山君    木村 武雄君       三木 武吉君    森 幸太郎君       山本 勝市君    黒田 寿男君       館  俊三君    福田 赳夫君   出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         文 部 大 臣 大達 茂雄君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         農 林 大 臣 保利  茂君         通商産業大臣  岡野 清豪君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         建 設 大 臣 戸塚九一郎君         国 務 大 臣 安藤 正純君        国 務 大 臣 大野木秀次郎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君         国 務 大 臣 塚田十一郎君   出席政府委員         内閣官房長官  福永 健司君         法制局長官   佐藤 達夫君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局次長) 原  純夫君         大蔵事務官         (主税局長)  渡邊喜久造君  委員外出席者         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 伍良君         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 十一月三日  委員吉川久衛君、井手以誠君石橋湛山君、木  村武雄君及び黒田寿男辞任につき、その補欠  として松村謙三君、武藤運十郎君、三木武吉君、  山本勝市君及び館俊三君が議長の指名で委員に  選任された。 同 日  委員松村謙三君及び三木武吉辞任につき、そ  の補欠として園田直君及び安藤覺君が議長の指  名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算補正(第1号)  昭和二十八年度特別会計予算補正(特第1号)     ―――――――――――――
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を開きます。  昭和二十八年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和二十八年度特別会計予算補正(特第1号)を一括議題といたします。質疑を継続いたします。松村謙三君。
  3. 松村謙三

    松村委員 改進党を代表いたしまして、総理お尋ねをいたします。  今度の臨時国会はこの未曽有の水害、凶作のために特に開かれた国会でありまして、非常に重大なる意義国民生活の上に持つておりますことは申すまでもないことでございます。私ども政府の出されたこの予算で満足するものではございませんけれども、しかしながら今日、日本の国力、日本の財政の上から申して、この程度においてやむを得ないものとして賛成をするつもりでおります。従いましてこの乏しい金額をいかに利用して、そうして最大効果を上げるかということが、今後の政府の大きな責任であろうと考えます。これは、国民、ことにこの被外を受けた人たちが、心から奮い立つて、そうして政府施策と相まつて立ち上らなければ、最大効果を上げることはできません。それは政府やり方いかんによることでありまして、往年、昭和八年ごろの農業恐慌のときでも、当時としては非常に大きな予算を投じて農村の末端に農業土木を興しましたが、その基礎をなすものは、一つの標語をもつて、いわゆる自力更生というその目標のためにみんな奮い立つてつたことが、そのときの匡救の大さな原因をなしております。政府は、予算を出すだけではこれは済みません。やはりそのように国民に奮い立たせるという力を与えなくちやならぬ。それには政府みずから範を示して、非常な熱意をもつてこの予算施行に当られなければならないと考えるのでありますが、政府はこれに対する、すなわちこの予算通つた後の施行に対して、どういう覚悟とどういう方法政策をお持ちになるか、それを総理からまずお聞きいたしたいと思うのであります。
  4. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。お話はごもつともであります。まことにこのたびの災害の大なることについては、罹災者に対しては同情にたえません。また政府としてはできる限りの方法を尽し、国会の審議を願つておりますが、なおこの予算施行については最も能率的に、お話のような線において十分な注意を払うつもりでおります。
  5. 松村謙三

    松村委員 もう一つこれに関連してね尋ねいたしたいことがございます。それは、今度の議会は単に生産者である農民ばかりのことを考え議会ではないと思う。これによつて荒れ果てた耕地を一日もすみやかに回復して、そこで食糧生産の回復をはかり、やがてはそれが消費者のためになる、こういうことも大きな関連を持つておる次第であります。すなわち食糧消費者に対する今後の施策というものが残つておる。食糧問題というものは、この議会予算で解決せられておりません。これは別に政府責任において、今後誤りなき施策をなされなくちやならぬものだと思います。総理は、かつて終戦直後のあの食糧の窮乏が国民のうちから多くの餓死者も出しかねない、そのときの内閣外務大臣とせられて、アメリカに対して、二百万トンの食糧輸入を懇請するために非常に御尽力になつた。そのときの苦しいぞつとするような食糧事情は、総理みずから今も御記憶のことと存ずるのでございます。私は今度の凶作が、あのようなひどいものになろうとはもちろん思いません。思いませんが、もし一歩を誤つたならば、やはり相当な人心の不安、生活の安定を脅かす、こういうところへ落ち込んで来るにきまつておりますので、それでこれもやはり国民の同意の上に、強い政策を行われなくちやならぬと思うのでございます。自由党は御承知通り食糧統制も普通の戦時統制と同様に心得られて、これを解こうとせらるるのでございます。この食糧統制大正年間からの統制であつて戦時統制ではない。統制を必要とするために早くから起つたものであることは御承知通りでございますが、それを解こうとせらるる。私はそれは、今そういうことの間違いをかれこれ申すのではございません。また党の方針となつておるものを、この際おやめなさいと申すわけではございませんが、ただ申し上げますことは、このような凶作の場合には強い統制力を発揮するにあらざれば、八千万の人間がみなその食をひとしゆうすることはできないと考えるものでございます。この意味におきまして総理が体験せられたあの終戦後の食糧危機のときに、もしも従来のあの統制ががつちりと存じておりませなんだならば、もう確かに多くの餓死者を出すような事態なつたことは申すまでもないことであります。従いまして今度のこの凶作に対しても、政府は思い切つて相当統制力をもつて、そうしてすべての人がまずくてもその食をひとしゆうするということをお考えにならなくちやならぬと思うのでございます。これはお尋ねするまでもないと思いますが、これに対する政府ほんとうのお考え方法等について、総理がお考えになつておることを、この際お尋ねいたしたいと存じます。
  6. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。本日の現状は、御指摘のごとくに終戦直後の状態とほぼ似ておるとも申すべきような、はなはだ不幸な状態に陥つておることはお話通りであります。この危機を脱するためには、広く国民の協力を得るということはごもつともであります。そういたしたいと考えます。  さて統制云々お話でありますが、党としてはなるべく統制ははずしたい、これが主義であります。しかしながらこれは事情によることでありまして、いかなる場合においても統制をはずすとか、あるいは統制をやらないとかいうことは申すわけではありません。一に今後の事情によるところであるので、またこの国民食糧確保ということについては、あらゆる方法をもつていたしたいと思つております。たとえば輸入食糧のごときも、できるだけの食糧を集めて国民食糧をゆたかにして、お話のごとく食糧においてひとしく国民が供給を受け、そして足らざることのないようにいたすのが、政府責任と心得ております。
  7. 松村謙三

    松村委員 食糧の問題はこの程度にしておきまして、防衛のことについて総理お尋ねをいたしたいと思います。  今度政府保安隊自衛隊と改められて、直接侵略に対する防衛をその任務に加えらるるはずでございます。そしてアメリカ駐留軍が今に日本からだんだん撤退して行くに伴うて、これをそのかわりに増強してやつて行く、こういうことである。そういたしますれば、以前の保安隊自衛隊とは、まつたく別の使命と性格を持つておるべきはずであります。いずれ近く保安庁法改正せらるることと存じますが、こういうことになりますと、たとえばこの自衛隊というものの力が出て参りますと、以前の保安隊と違いまして、総理の一存でこれをかつてに動かすというわけには行かない。そこに統帥条項保安庁法改正伴つてつて、そして統帥に関する厳重な条項も加わる、こういうことになることと思うのであります。こうなつてみますと、われらの常識から申しますと、これはどういつて軍隊であると言わなければならぬと思うのでありますが、  これについての総理のお考えはいかがでありますか。いやしくも直接侵略外国軍と戦う任務を持つ以上は、軍隊考えることが当然であると思いますが、総理の御見解を承りたいと存じます。
  8. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。自衛隊軍隊であるかどうかということは、軍隊という定義にもよりますが、とにかく憲法においては交戦権がないという制限がある以上は、ただちにこれをもつて普通の意味軍隊と申し得るか、申し得ないか、これは疑問であります。しかしながらお話のように、アメリカ軍が撤退して、日本保安隊自衛隊となつて、そして直接侵略にも備えるということになれば、従来の性質を一歩進めたものと言わざるを得ないと思います。しかしながらそれが軍隊でありやいなやということについては、軍隊という定義にもよりますが、これにいわゆる戦力がないことは明らかであります。それから統帥の点についてはなお研究いたします。
  9. 松村謙三

    松村委員 ちよつと聞えない点もございましたが、今の総理お答えによりますと、その定義によつて軍隊でもあり、定義によつて軍隊でもない、こういうお答えのように了承いたしてさしつかえございませんでしようか。またその定義というのは大体どういうことを意味するのか、その点をお伺いいたしたいのでございます。
  10. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。ここに私の申したいことは、軍隊という意義にもよるが、しかしながら、いかにしても戦力を持の軍隊にはいたさないつもりであります。
  11. 松村謙三

    松村委員 そうすると今のお話では、戦力を持たなくても、軍隊と称するならばこれは軍隊と申してよろしい、こういうことでございますか。
  12. 吉田茂

    吉田国務大臣 その通りであります。
  13. 松村謙三

    松村委員 そういうお答えでありますならば、陸上の部隊を軍隊と称し、あるいは海に浮ぶ船舶を軍艦と称するということでよろしいと思うが、どうでありましようか。
  14. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。これは定義の問題でありますが、しかしながらいかなる名称をつけても戦力に至らしめないという制限のもとに軍隊と言い、軍艦と言うことは自由であると思います。
  15. 松村謙三

    松村委員 そういたしますと、戦力というのは大体どういうことをお考えでありますか。たとえば、総理は再軍備をしないと言われております。しかしながら事実においてアメリカとも交渉をして、そして防衛隊をつくろうということであるが、防衛ということと再軍備ということと、どういうふうな違いがあるのでありますか。それは戦力ということが根底をなしておると思うが、総理のお考えをお聞きしたい。
  16. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。戦力については、常に政府見解としては、いわゆる近代戦を遂行し得るだけの力ということに解釈いたしておるのであります。防衛は、日本の国土を守り、あるいは民生を安定せしめるために必要な手段は、保安隊をもつてこれに任ずるという建前おります。しかしならが直接侵略の場合にどういう様相をなしますか、それはそのときの事態にもよりますが、これによつて近代戦を遂行するというようなことはいたさないつもりであります。しかし、戦力は持たしめないつもりでありますが、これを軍隊と言い軍艦と言うことは、言うてもさしつかえないことであると思います。
  17. 松村謙三

    松村委員 そうしますと、総理の言われることを要約しますと、軍隊と称してもよろしい、しかしながら近代戦の力を持たないがゆえにこれは戦力ではない、こういうことに了解してよろしいのですか。
  18. 吉田茂

    吉田国務大臣 その通りであります。
  19. 松村謙三

    松村委員 もしもそうならば、近代戦というのはどういうことを意味するのか、その点をきつぱりと御説明を願いたい。ことに木村長官からこの点をひとつ明確にお話願いたいと思います。
  20. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。私は常に申し上げております通り、それは憲法第九条の精神から来るものであると思います。御承知通り憲法第九条第一項におきましては、戦争を放棄しております。これと同時に、武力行使武力による威嚇は国際紛争を解決する手段としてはこれを用いない、これであります。しかしこの裏から見ますと、決して憲法において自衛権を放棄しておるわけではありません。自衛権憲法以前のものである。いやしくも独立国家である以上は、自衛権を持つのは当然のことである。その自衛権の裏づけがいわゆる自衛力なのであります。しかしこの自衛力をどこまで保持するかということについては、第二項において制限規定が設けてある。要するに第二項において、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」ここにあります。これを裏から見ますと、近代戦争、いわゆる大きな戦争をするようなことはさせない、し得る力は持たせない、これであります。それと同時に交戦権はこれを保持しない、交戦権ということと戦力二つ制限されておるのであります。  そこで戦力とは何かというと、いわゆる侵略戦争の愚を再び繰返すような、そういう希望を持たしめるような大きな力、だから裏を返しますと、今総理の申されたように、近代戦争を有効的確に遂行し得る能力である。それと同時に交戦権を持たせない。この二つでもつて自衛力の大きくなることを制限するわけであります。どこまでもわれわれはその範囲において自衛力を増加して行こうまた増加しなければならぬという建前で来ておるわけであります。
  21. 松村謙三

    松村委員 今のお話ははなはだ明確を欠きますが、そこでそのようなことになりますと、要するに今木村さんのお話は、侵略的の国防を持つにあらざればこれは戦力とは言えない、従つて憲法改正も必要なし、こういう結論になるのでありますか。
  22. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。侵略戦争を企図せしめ得るような力は持たせない。それと同時に、交戦権を否定されておるのであります。いやしくも表立つて、いわゆる宣戦布告して外国戦争するような場合は、交戦権一つ制限を受けております。これはなかなか大きな問題であろう思います。そこわれわれといたしましては、この憲法範囲内においてやる、しかしながら将来、この交戦権を否定されておるから、自衛権行使においても非常にめんどうなことが起ることがあると思います。この軍隊にいたしましても、今総理から申し上げたように、この定義いかんによるでありましようが、交戦権を否定されておりますから、普通われわれの考えおるような軍隊ということは、保安隊にも使うことはできないと解釈しておるのであります。交戦権行使し得るということになれば、むしろ今の保安隊でも正式の意味において軍隊といつてよかろうと思うのであります。そこにおいてわれわれは、こういう制限を受けることは、将来において大きな支障を来すのではないかと考えておるのであります。そこで国民の輿論がどうしても憲法改正しなくちやならぬということになれば、われわれもそれは反省しなければならぬ、こう考えておる次第であります。
  23. 松村謙三

    松村委員 そこで総理にお伺いいたしますが、今木村氏のお話のようにしますと、ますますわからなくなつて来ます。大体再軍備をするのには憲法改正をしなくちやならぬことは当然ですが、総理は一面において再軍備というものはやらぬと言い、一面においては時が来れば憲法改正をやると言う。大体憲法改正をやるということは、今木村氏の言われたように、侵略的の武力を持つ、そういう軍隊をつくるために憲法改正されるのでありますか。もしもそうでないならば、現在の憲法範囲内においてさしつかえないはずだと思うが、どういうことをお考えになつておりますか。
  24. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。今日の保安隊増強いたして、増強の結果戦力に至るならば憲法改正をしなければならぬし、憲法改正をいたさずして戦力を持つような軍隊といいますか、保安隊というか、自衛隊というか、いずれにしても戦力を有するような軍隊を持つということは憲法の禁ずるところでありますから、増強した結果遂に憲法改正を必要とする場合もあり得るでありましよう。しかし現在のところはそれを考えておらないのであります。保安隊増強せしめるあるいは自衛隊になつて力増強するという考えはいたしております。また米国軍引揚げたりなんかする場合には、それだけ日本防衛力増強しなければならないのでありますから、増強はいたします。増強して遂に戦力を持つようになる場合においては、憲法改正しなければいかぬ、こういうふうに考えております。
  25. 松村謙三

    松村委員 そこでお伺いいたしますのは、侵略的国防を持つにあらざればこれは戦力でないということが、今木村さんの御説明にあつたようでありますが、総理憲法改正するというのは、日本戦力がそこに達したときにおいて初めて改正する、こういうふうに聞えますが、この点は総理いかがですか。
  26. 木村篤太郎

    木村国務大臣 誤解があつたから申し上げておきます。私は侵略戦争と申しましたが。そういう意味で言うのではありません。侵略戦争を起させ得るような企図を、――ややもすると大きな戦力を持つと、侵略戦争に使われることになるから、それだからそういうような戦力を私はなにする、こういう意味であります。憲法建前はまさにその通り、そういう大きな戦力を持つようになればあるいは侵略戦争を起すかもしらぬ。それだから戦力を持つことを禁止しているわけであります。それですから、この戦力に至らざる限度において日本自衛力を増進して行くことが建前である、こういうのであります。
  27. 松村謙三

    松村委員 総理大臣にお伺いいたします。総理大臣がお聞きになりましても、今の木村さんの答弁はわれわれは何だか判断がつかない。それで総理に今までのことをずつと要約して申しますれば、これは軍隊言つてもよろしい、しかし戦力じやないのだ、戦力というのは近代戦に耐え得る軍隊でなければならない、こういう。そこでその近代戦というものはどういうことを意味さるるのでありますか。たとえば原子爆弾を持たなくては近代戦ではない。すなわちそういうものをすべて持つて日本だけの力でどことでも戦えるような大きなものを持つにあらざれば戦力でない、こういうところへ結論が行くのでありましようかどうですか。
  28. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。いずれにしても戦争を遂行するような力を持つ大なる軍備を持つ考えはない、現在の憲法範囲内において許し得る軍隊を持つ、それだけの程度でありまして、それ以上のことになれば、憲法改正しなければならぬ、こう考えております。
  29. 松村謙三

    松村委員 今のお話においてまた違つて来て、私ども考えとよく似て来ている。すなわち、今の憲法の中で許さるる範囲自衛的軍備を持つ、こういう御答弁のようであつたが、そう解釈してよろしいのですか。
  30. 吉田茂

    吉田国務大臣 その通りであります。いろいろ説明をお求めになりますからして、言葉を違えて言つただけの話で、趣意はお話通りであります。
  31. 松村謙三

    松村委員 今のお答えちよつと了解しかねましたので、もう一度明らかにお話を願いたいと思います。すなわち憲法の許さるる範囲内においての戦う力を持つ軍隊、こういうふうに解釈いたしてよろしいかどうか。よろしいならよろしい、よくないならよくないとお答え願いたいと思います。
  32. 吉田茂

    吉田国務大臣 よろしいとお答えをいたします。
  33. 松村謙三

    松村委員 そういたしますと、政府考えとわれわれの考えとは大きく違う。おそらくは国民常識とも非常に違うのではないかと思います。今日日、本の国民のどういう人だつて、そういう大きな戦力を持つて侵略的戦争をやる軍隊を持とうなどと考えているものはどこにもおりません。今総理の肯定せられた、今の憲法範囲内において許さるる程度においての軍隊を持つ、こういうことが常識になつている。これをなお戦力でないと仰せらるる。そうすると戦力というものの見方が、今の政府のお考え方が、われわれというよりも、国民のみんなの考えとぴつたり来ていない独特の解釈のように見受けられますが、こういう点について、特に戦力はそういう非常な大きな力だと見らるる、憲法解釈の上からはそういう点を固執されることとは重々考えておりますが、今やこういう時代なつたならばもう一つ飛躍せられて、ほんとう日本防衛にふさわしい線までお出ましになつたらいかがなものでありますか。昔西園寺内閣のときと記憶しますが、何か政友会のかねての話を西園寺さんが議会において、もうあのことはこの時代に来たからすつかり政府の従来のやり方をやめちまうんだ、こう言つたが、その態度はみんな国民は非常に歓迎をした、そういう態度でなければならないと思うのであります。今時代はだんだんかわつて来ております。かわつて来ておるから総理が以前の主張を改められましても、だれもそれを怪しむ者はないと思う。それをこだわつておいでになるように見受けますが、こういうことはひとつ思い切つて事を鮮明になさつた方がよろしいのじやないかと思いますが、いかがなものでありましようか。
  34. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の考え方ははなはだ明瞭であつて、了解せられないことは私の方において了解ができないのであります。われわれは事情において、そのときの内外の情勢に応じて戦力とするようなことはないのでありまして、増強をして増強をして遂に戦力とも言われるようなものになり、交戦権を使用し得るような力になれば、これは憲法改正しなければならぬと思う、これははなはだ明瞭であります。しかしながらこの際飛躍せよとおつしやるが、飛躍する理由がないと私は思います。海外の事情が違つて来る、あるいは安全保障条約が撤廃せられるとかなんとかいう場合は別でありますけれども、現在安全保障条約のある場合においては、日本防衛力は漸増する、あるいは増強して行くという程度で、さらにこれを再軍備をいたして、そうして攻撃力まで持つ、あるいは国際紛争の具に供するというような力を持つということは、すべきことではないと今なお考えておるのであります。
  35. 松村謙三

    松村委員 これ以上は私は承りません。ただ結論といたしましては、現在の憲法の許す範囲における軍隊をつくるのだ、こういうような意味に先刻肯定をされました。それで、これに対してはわれわれは不満足なところをたくさん持つておる、しかし今は救農、水害の国会でございまして、総理と議論をいたすことは避けまして、事実の総理のお考えを先刻来すなおに聞いたつもりでございます。従つて私はこの程度にいたしまして、以前と違つてまず軍隊である、憲法範囲内に許された意味においての軍隊であるというのでも、一つの変転である、一つの歩みを進められたのであることは、これはもちろんでありまして、いずれは必ずわれわれの主張まで出られることも明らかでございます。かつて総理がわが党の重光氏をおたずねになつて交換せられた文書の上から申しましても、自衛力を持つ軍隊というところまでは、総理は今言明をせられたようでありますが、さらに今後戦力の問題等については、いずれかの機会においてわれわれの主張を宣明する機会があろうと存じまして、これで質問を打切ります。(拍手)
  36. 倉石忠雄

  37. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私は日本社会党を代表いたしまして吉田総理に質問をいたします。  まず私は、先般行われました吉田・重光会議といわれるものについて伺いたいのでありますが、九月二十七日に吉田首相は鎌倉の重光総裁のところにわざわざ行かれて会談をいたしたそうでありますが、そういう事実がございますか。
  38. 吉田茂

    吉田国務大臣 あります。
  39. 武藤運十郎

    ○武藤委員 目的はどういうところにありましたか。吉田首相に伺います。どういう目的で行かれましたか。
  40. 吉田茂

    吉田国務大臣 政局安定のためであります。
  41. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そこで重光さんが会談の後に発表された談話がございます。用事の次第は自衛軍の創設の問題であつた、こう言つておる。そういう話ではないのですか。
  42. 吉田茂

    吉田国務大臣 総裁と話し合つて声明をいたした声明通りであります。
  43. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうしますと、意見の一致を見たという申合せの通りの申合せを今あらためて読んでみます。「現在の国際情勢及び国内に起りつつある民族独立の精神にかんがみ、この際自衛力増強する方針を明確にし、長期の防衛計画を樹立する。そこで保安庁法改正し、保安隊自衛隊に改め、直接侵略に対する防衛をその任務に加えることとする。」と書いてありますが、この通りでございますか。
  44. 吉田茂

    吉田国務大臣 その通りであります。
  45. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そこで伺いますが、今まで政府は何回も繰返しておるのでありますが、保安隊は国内治安のためだけである、直接侵略に対するものは米軍が受持つのであつて保安隊任務ではない、こういうことを言つておられるのですけれども、そうなりますと、いよいよ保安庁法改正して、直接侵略に対抗するということになりますと、今まで政府言つておられた保安隊の性格というものは、先般来言われておる通りかわつて来るわけでありませんか。
  46. 吉田茂

    吉田国務大臣 根本的にかわらないということは昨年申し上げた通りであります。関接侵略とか直接侵略とか申しても、その区別ははなはだ立ちにくいのである。これは直接侵略であるから、保安隊は自分らの任務ではないといつて捨てておくわけにも行かぬでありましようし、実際保安隊任務としても、あるいは国民としても、直接侵略を受けた場合に、保安隊はこれを捨てて逃げるというのも語弊があるが、これに対して対抗しないということはできないわけでありますから、実際保安隊がある以上は、しかも直接侵略がある場合は、これに対抗することは当然の話であります。ただ従来においては米国軍がこれに当る、直接侵略に当るということであるから、保安隊任務としては、国内の問題を主として片づける。しかしながら、アメリカ軍としてはなるべく早く日本引揚げたいという以上は、保安隊なり、国内のこれに対する防衛措置を考えなければならぬ、そういう新しい情勢になつたのであります。ゆえに一歩進めたといえば一歩を進めたのでありますが、実は保安隊自身の任務としては、直接間接というような攻撃に対する区別はできない。これは直接侵略であるからわれわれの職務ではないといつて、捨てておくわけにも行かないのでありますから、実質においては何らかわるところがないとわれわれは解釈しております。
  47. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私は吉田首相にもう一ぺん重ねて伺いますが、二つ伺いたい。直接侵略と間接侵略は区別がないと言いますが、今まで区別をしておりますし、安保条約にも区別して書いてある。私は決して区別がないものじやないと思う。それではこういうことは直接侵略であるか間接侵略であるか、例をあげて伺いたい。かりに外国日本を攻めて来たら、それは直接侵略ですか間接侵略ですか。
  48. 吉田茂

    吉田国務大臣 先ほど申した通り、直接侵略であるから間接侵略であるからといつて保安隊は関係しないというわけには行かないのである。ゆえに侵略には直接も間接もあるであろうが、これは直接だ間接だといつて区別はできない、むずかしいと言うのであります。
  49. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そこで私は聞いておるのだけれども外国が攻めて来た場合は直接侵略というか間接侵略というか、それを聞きたい。いずれであるかはつきりしてもらいたい。
  50. 吉田茂

    吉田国務大臣 むろん直接侵略であります。
  51. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうなりますと、やはりこれは非常に重大な問題になるのであつて……。     〔発言する者多し〕
  52. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。――静粛に願います。
  53. 武藤運十郎

    ○武藤委員 保安隊というものについて、先ほど吉田首相は、もし直接侵略があつたような場合には、保安隊も手をこまねいているのではなく、出て行くのがあたりまえだと言われましたが、予算委員会で問題になるこれに対する大綱は、そういうものではない。制度として国家が一つ武力の組織を持つ、そうしてそれが国家の予算によつて維持される、そうして政府によつて命令されて出動する、進退を決する、というような場合に、その組織が、直接侵略に対して、それを目的として維持されるような場合のことを聞いておるのです。そういうものができた場合には、それはすでに軍隊ではないかというのです。――首相に聞いておるのです。木村さんあなたに聞くのではない。指名されたら出て来なさい。さなたに聞くのではない。
  54. 吉田茂

    吉田国務大臣 木村国務大臣をして答弁せしめます。
  55. 木村篤太郎

    木村国務大臣 昨日も申し上げました通り軍隊というのはこれは定義いかんによるのであります。私はこれははつきりした定義はないものと考えております。そこで直接侵略に対抗できるような実力部隊を軍隊なりと言うのであれば、保安庁法改正したあかつきにおいては、保安隊軍隊といつてよかろうかと思います。しかしながら、あるいは学問的と申しましようか、一般的に軍隊といえば交戦権を持つておる、あるいは軍法会議制限もあるとか、いろいろなものがこれに付随されて、機能は制約されておるのであります。そういう意味においての軍隊であれば、保安庁法改正したあかつきにおいても保安隊軍隊ということはできぬ。しかし今申しました通り軍隊定義いかんによることであります。武藤君が保安庁法改正して、これは外国侵略に耐えて行けるんだから、これは軍隊なりということであれば、軍隊であると言つて一向さしつかえはなかろうかと思います。昨日も言つたように、普通に鉄砲をかついでそこらでやつておる部隊を兵隊さんと言うならば、保安隊は当然私は軍隊と見てよかろうと思います。定義いかんによるのであろうと私はこう考えております。
  56. 武藤運十郎

    ○武藤委員 木村さんに伺いますが、あなたはときどき男だ男だと言われますけれども、たとえば、あなたの言うのは、名前が軍隊でないから軍隊でないというのですけれども木村篤太郎さんというのを木村篤子さんと、(笑声)こういうふうに呼びましたならば、あなたは女になりますか。やはり男でしよう。
  57. 木村篤太郎

    木村国務大臣 名前のいかんによらず木村篤太郎は男であります。木村篤太郎は、木村篤太郎と呼ぼうと、木村篤さんと呼ぼうと、何と言おうとかつてだ、実態は男であるから……。軍隊と呼ぼうと何と呼ぼうとおかつてである、定義いかんによるのだ、こう言うのです。
  58. 武藤運十郎

    ○武藤委員 首相に伺いますが、大分日本軍隊のことについて、軍隊であるかないかということが議論になりましたが、諸外国軍隊があることを御存じでしようか。
  59. 吉田茂

    吉田国務大臣 知つております。
  60. 武藤運十郎

    ○武藤委員 とたえば韓国にもありますし、フランスにもあると思いますけれども、それは戦力ということになりますか、伺います。
  61. 吉田茂

    吉田国務大臣 戦力を持つ兵隊もあれば、ない兵隊もあります。
  62. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私は外交界の先輩である首相に伺いたいのですが、それではどことどこの軍隊戦力というのであつて、どことどこの軍隊戦力でないというのですか伺います。
  63. 吉田茂

    吉田国務大臣 そんなことは私は答弁責任をとりません。
  64. 武藤運十郎

    ○武藤委員 木村長官に伺いますが、最近李ラインで問題になつておりますけれども、韓国には軍隊がありますか。
  65. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。韓国でそれを軍隊言つておるかどうかわかりません。
  66. 武藤運十郎

    ○武藤委員 あなたの意見を聞くのです。
  67. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私はよその国のことは申し上げることはできません。
  68. 武藤運十郎

    ○武藤委員 先ほど来侵略戦をするものでなければ軍隊でないというようなお説を伺いました。そうして大きな戦力であるかないかによつて軍隊と言い得るか言えないかというふうなお説でございますけれども、今度は日本のことを聞きます。日本保安隊を中心とする場合に、一体大きさはどのくらいになれば軍隊戦力と言い得ることになりますか、限界をひとつ示してもらいたい。予算の規模において、員数において、装備において……。大体その辺を木村さんに聞きたい。
  69. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えをいたします。戦力ということについては、もう前の国会においてもしばしば私は繰込しておる通りであります。いわゆる近代戦を遂行し得る編成装備を持つた実力部隊、こういうのであります。但し近代戦の遂行ということについては、そのときの情勢と時いかんによつて変化するのであります。一定不変のものでないということであります。昔戦力であつたものでも、近代においては戦力でない、こう言えるだろうと思います。時と場合によつてかわつて来るのであります。いかなる程度まで行けば戦力になるかならないか、そういう一定の限界が引けるものではないのであります。そのときの情勢いかんによつてかわる、こう私は考えております。従つて保安隊はいかなる程度までこれを増強すれば戦力になるか、こういうことは今申し上げるわけのものでない、これが増強され、そのときのいろいろな情勢とにらみ合せて、それが戦力になるかならぬか判断すべきものであろう、こう考えます。
  70. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私はそういう戦力に関する抽象的な話を聞いているのではありません。そういうあなたの言われる抽象的な定義に基いて、今とか昔とかいうことを聞いているのではございません。日本の今の場合を問題にしているのです。今の場合にどのくらいの大きさになつたならば、戦力と言い得るかということを聞いているのです。今の場合です。それを答えてもらいたい。
  71. 木村篤太郎

    木村国務大臣 今の場合は、要するに国際情勢その他外国と比較してやるのでありますが、的確なものをここであげることは私はできません。
  72. 武藤運十郎

    ○武藤委員 問題は、すでに直接侵略に対する防衛のために保安庁法改正しようということまで木村さんは言われている。その責任者であり、相当な予算を要求している人が、今の段階でどのくらいがどうだという話ができないはずは私はあるまいと思うけれども、もう一ぺんひとつその点を明らかにしてもらいたい。
  73. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。もしもわれわれの考えておる計画が立つて、そしてそれを議会に提出して御審願う場合において、それは戦力であるかどうかということは、よろしく議会においておきめになることであろうと私は考えます。われわれの考えておるところによりますと、今計画しておる――いずれ二十九年度において御審議を願うでしようが、それらのものについては戦力に至らないと考え程度において、われわれはこれを計画しておるのであります。
  74. 武藤運十郎

    ○武藤委員 もう一ぺん私は念を押して聞きます。どのくらいになりましたならば戦力と言えるかというのでなくて、それではどのくらいまでは戦力でないと言うのですか、こういうふうに聞きます。まず人数を言つてください。
  75. 木村篤太郎

    木村国務大臣 申し上げます。今申し上げました通り、そういう正確な人数でもつて判断すべきものでない、こう考えております。すべての情勢を考えて、われわれはそれが戦力に至るか至らないか――結局は国会においてその判断を願う、こう考えております。
  76. 武藤運十郎

    ○武藤委員 もう一ぺん木村さんに伺いますが、あなたのお考えでは保安庁法改正することは間違いございませんか。
  77. 木村篤太郎

    木村国務大臣 きのうも申し上げました通り保安庁法はぜひ改正いたしたいと考えております。
  78. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そこで、直接侵略に対する任務を明らかにするために、改正するいうとふうに私は伺つておりますけれども、そうですが。
  79. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。ただいまのところは、国内の平和と株、序を維持するためというこの任務はかわりません。その任務に附加して、直接侵略に対しても対処し得るように私は考えておるのであります。
  80. 武藤運十郎

    ○武藤委員 今度は吉田さんに伺いますが、諸外国軍隊があるかないかよくわからぬ、またどうして軍隊であるかないかということもはつきりしないようなお話でございますけれども侵略を目的とするということを言つている軍隊は私はないと思う。諸外国軍隊でも、みな侵略はしない、自衛のためだと言つている。それ以上に出ている軍隊はないと思う。そうすると、諸外国のある軍隊と、日本の今度保安庁法改正して直接侵略に対抗し得る自衛のための軍隊というものとの違いは、どこにあるのでしよう。
  81. 木村篤太郎

    木村国務大臣 もちろん今仰せの通り、どこの国も侵略を目的とするということを頭に掲げてつくつておる国は、私もなかろうと思います。大きな実力を持てば、とかくこれを侵略戦争に使われるようなことになるからと言うのです。それなんであります。初めから侵略戦争に使うからと言つてつておるところはどこもなかろうかと思います。しかし従来の経験にかんがみてみますと、とかくすると、大きな部隊を持つとこれを侵略戦争に使われる、そういう意図を起させる危険がある、それだから日本憲法において、さような大きな部隊は持つことを禁止するということをきめておる、私にこう了承しておる。
  82. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうしますと、念を押しておきますけれども、将来そういう時期が来れば憲法改正するほかはあるまいというお話ですが、日本憲法改正するというときは、これはもうその軍隊、その武力というものは、侵略戦をするためのものということになるのですか。
  83. 木村篤太郎

    木村国務大臣 侵略するために軍隊を持つということは決して私は考えておりません。また将来日本国民はさようなことは考えないだろうと思います。私は日本の子々孫々が再びさようなことを起すような危険はないと、こう考えております。
  84. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうではないのであつて憲法改正するという場合のその部隊は、すでは侵略戦を遂行し得る状態に立ち至つたものであるかどうかということです。
  85. 木村篤太郎

    木村国務大臣 そうでしよう。大きな戦力を持つということになれば、あるいはこれは外国戦争するという危険い十分あると考える。しかし私は繰返して申します。日本国民は、日本憲法改正してさような軍備を持つようなことにかりになつたといたしましても、再びさようなことをする危険は私は毛頭ないと考えております。
  86. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私は将来日本侵略戦争をする軍備を持つであろうとか、持たなければいけないとか、持つてはいけないとか、そういうことを言つておるのではありません。もしこれがだんだん大きくなつてつて憲法改正するところまで行けばすると、こう言うのですから、そうしますとそのときには、すでにその部隊は侵略戦争を遂行するおそれのある、し得る部隊になるのかということなのです。
  87. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします、それはそういうことにあるいはなるかもわかりません。
  88. 武藤運十郎

    ○武藤委員 念を押しておきますけれども吉田総理大臣の御意見は、今の木村保安庁長官の答弁通りでございますか。食い違いがないようにお願いいたします。
  89. 吉田茂

    吉田国務大臣 その通りです。
  90. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そこで今度は、私は池田・ロバートソン会談のことを伺います。池田さんは吉田首相個人の特使とかいう話ですけれども、これは私の公の性質を持つものであると考えますが、いかがですか、吉田さん。
  91. 吉田茂

    吉田国務大臣 これはしばしば私が言つております通り、個人の代表として派遣いたしたのであります。
  92. 武藤運十郎

    ○武藤委員 池田さんは――私は吉田さんが隠居されておるのなら別だと思うが、とにかく日本の首相である。その特使であります。それから政府の一員である愛知大蔵政務次官を随行しております。相手は国務次官補であります。交渉は公然と国務省で行われておるようであります。こういうふうな実情を考えると、決してそれは私的なものではないかと思いますが、いかがでしようか。
  93. 吉田茂

    吉田国務大臣 しばしば申す通り、池田特使は日本事情説明に行つたのであつて、交渉に行つたのではないのであります。またロバートソン国務次官補からもアメリカ事情を聞いておるのであります。すなわちその要するところは、一方的に交渉をいたしておるのではなくして、内外の事情を研究に行つておるのであります。
  94. 武藤運十郎

    ○武藤委員 協議された――吉田さんに言わせると説明か協議か知りませんが、問題というのは、コミユニケによりますと、会談は日米両国にとつて共通の関心事であり、かつ相互に関連した諸問題、すなわち日本防衛力増強、米国の援助、米国の終戦後の対日経済援助などの処理、対日投資及び中共貿易などに及んだ、これはもう日本の政治にとりましても現在重要な問題ばかりであると思う。こういう問題が国務省において討議され、そうして議事録がつくられ、そうしてコミユニケが発表されておるというような実情のもとにおいて、なおこれを私のものであり、単なる説明であるとは言えないと私は思うが、いかがでしようか。
  95. 吉田茂

    吉田国務大臣 そういう重要な問題について、彼我の意見を交換するために、また彼我の立場を研究するために、派遣いたしたのであります。
  96. 武藤運十郎

    ○武藤委員 それではこの問題について吉田さんは、何らの責任も持たないのでしようか、それを伺いたい。
  97. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは私の個人代表として派遣せられたものでありますから、ゆえに池田特使が言われたことは私はすべて責任を持ちます。
  98. 武藤運十郎

    ○武藤委員 責任を持つということになりますとこれは重大だと思うのですか、とにかく先ほど申し上げましたよりに、日本の現在当面しておる重大な問題ばかりでございます。それについて大体こういうような話合いが行われたのであります。これはコミュニケに基きますが、日本侵略の危険から守るために日本自衛力増強する。こういうことでありますが、それはどういう意味ですか。言いかえれば、保安隊自衛隊に切りかえて直接侵略に対抗し得るという意味をなすものですか。
  99. 吉田茂

    吉田国務大臣 重ねて申しますが、これは個人代表であります。私は個人としての責任を持つのであります。ゆえに私は、総理大臣としての話ではなくして個人の代表でありますが、しかしながら、池田君の言つていることはすなわちやがて私の政策になるはずです。日本政府政策ではないが、私としてはその言つたことについては責任を持ちます。
  100. 武藤運十郎

    ○武藤委員 コミユニケをさらに追究いたしますと、アメリカ日本の陸海空の部隊の装備に要する主要品目を提供する。もう一ぺん言いますと、アメリカ日本の陸海空の部隊の装備に要する主要品目を提供する。日本防衛力、米国の軍事援助について東京で両国政府の代表がさらに協議をするということになつておる。そうしますと、すでに池田さんはあなたの代理としてアメリカへ行つて日本の陸海空の部隊、この軍隊をつくり、それに対して必要な品目を提供する、このことをさらに具体化するために、東京で両国政府の代表――これは吉田さん個人ではありません。両国政府代表がさらに協議をするということになつておりますが、そこまで話合いが進んだわけですか。
  101. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えします。彼我の意見を土台として東京において今後正式に交渉をするわけであります。
  102. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そこで私は、もう少しそり会談の経過をこまかく報告をしてもらいたい。これは吉田さんの今までの話にも出ておりませんし、岡崎さんの外交演説にも現われておりませんが、このことは、先ほど申した通り、非常に重要な関係を日本に持つものでありますからして、その概略の経過をお話をいただきたい。
  103. 吉田茂

    吉田国務大臣 コミュニケで尽しておるはずであります。それ以上のことは、相手方もありますからして、かつてに発表はできません。
  104. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私は、防衛について案を持つてつたろうと思う。MSAの交渉もすでに十数回行われておるわけでありますから、おそらく防衛についての防衛計画というものを池田さんは持つて行かれたと思う。これが政府の案であるか、吉田個人の案であるかは知りませんけれども、とにかく持つてつたに相違ない。これをひとつ明らかにしてもらいたい。
  105. 吉田茂

    吉田国務大臣 今申す通り、交渉の内容は発表できない。
  106. 武藤運十郎

    ○武藤委員 恐るべき秘密外交であり、国会の軽視だと私は思う。とにかく外国にはすでにコミユニケが発表され、刻々として外電が今までいろいろなことを伝えて来ている。私は外電の伝えるところ以外に立ち入つて聞いているわけではないが、すでにこれは外電に伝えられて、日本国民がみな了解していることであり、その確認を私は今求おようとしているのである。それをさらにあなたが発表する限りでないと言うのは一体どういう意味でしようか。非常な国会軽視であり、秘密外交であると私は思う。ひとつ心境を一転しましてもう一ぺん伺いますが、防衛計画の内容をはつきりしてもらいたい。もしあなたが防衛計画の内容ということで具体的に御答弁ができないならば、日本は地上軍を十八万から二十万くらい、海軍は十四万から十五万トンくらい、空軍は千機から千五百機くらいというような話ではないかと思うのですが、その程度ですか。
  107. 吉田茂

    吉田国務大臣 日本防衛計画はただいま慎重に研究中であります。
  108. 武藤運十郎

    ○武藤委員 こちらの方は研究中だそうでございますから、これ以上追究しませんが、アメリカからはどういう案が出たのでしようか。聞くところによると三十二万から三十五万くらいの地上軍はあたりまえだという要求をされたそうでありますけれども、そういうことはありますか。
  109. 吉田茂

    吉田国務大臣 コミユニケ以上のことはお話ができない。
  110. 武藤運十郎

    ○武藤委員 もう一ぺん念を押しておきますけれども、どうもアメリカ日本軍備に関する要求の通りに押されて、大体アメリカ考えていることに承知をいたような状態でございますが、そうでしようか。
  111. 吉田茂

    吉田国務大臣 日本防衛については、ただいま慎重に研究中であります。
  112. 武藤運十郎

    ○武藤委員 これ以上追究しましてももうむだですから、私は質問を打切ります。
  113. 倉石忠雄

    倉石委員長 河野密君。
  114. 河野密

    河野(密)委員 私は、ただいま問題となつております防衛力の問題につきまして、集中的に総理大臣にお伺いをいたしたいと存じます。  今まで本国会を通しまして、総理大臣がわれわれに明らかにせられました点は、憲法改正については、国民がこれを希望するに至るまではやらない、軍隊を持つことは、今はその時期でないようだ、自衛力については、軍隊にならない程度において、自衛力の漸増をやりたい、保安隊軍隊ではない、直接侵略、間接侵略については、直接侵略は米軍がこれに当り、間接侵略保安隊がこれに当る、こういうことを前国会、あるいは前々国会以来、繰返し繰返し御答弁になつて参り、おそらくこれが政府防衛力に対する根本方針であつたとわれわれも了解し、国民も了解して参つたのであります。これに対しまして、改進党の諸君からは、この保安隊を、軍隊の域に達しておるならば、これを当然、軍隊だと言える、こういう御意見も出ました。鳩山自由党の諸君からは、憲法改正をすみやかに行つて軍隊を持つということをはつきりせよ、こういう積極的な御意見も出ました。これに対して、政府は、表現におのずから違いはありますけれども、今までは、今私が申し上げたことを終始一貫お述べになつてつたのであります。しかるに去る九月の二十七日に吉田・重光会談が行われましたときに、その覚書なるものを見ますと、保安庁法改正して、保安隊自衛隊に改める、直接侵略に対する防衛をその任務に加えることとすると、明瞭に覚書に述べておられます。また、十月三十日に発表いたされました、いわゆる池田・ロバートソン会談の結果によるところの共同声明によりますと、ただいま武藤君も指摘せられましたように、日本陸海空軍を建設する、そのために必要なる装備はアメリカの方から供給するという話が出ておる。米軍が引揚げたあとは、日本がそれの自衛力の穴を埋めるのだ。こういうことを共同コミユニクとして発表いたしております。  私はまず吉田総理大臣お尋ねをいたしたいのでありますが、国会を通して再三再四言明され、国民もこれを信じ、国会もこれを信じて予算に協賛を与え、あるいは法律に賛意を表した。この国会の方針を、国会外の行動において改めて、いまだかつて一ぺんも、方針はかように改まつたということを国会に報告しないというそのやり方は、政治の常道として正しいとお考えになるか、お考えにならないか、この点をまず明確に伺いたいのであります。
  115. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。今日国防の問題については、外界の事情のために、国際の関係ははなはだ緊張しておる。また朝鮮事変その他から考えてみまして、それに対応する措置をとることが必要であり、また改進党その他においては防衛力増強すべきであるという議論も出、また政府としてこれを考えてみましても、内外の情勢に応じて日本国防についてはさらに研究する必要がある。ともにともに研究しようというのが、この間の重光会談の内容であります。また米国側から申せば、米国としては予算の編成上なるべく軍事費も少くしたい、ここういうのがアメリカ建前であります。アメリカ建前としては日本における駐留軍をなるべく少くしたい、なるべく早く引揚げたい、こういう希望を持つておる。これは米国側としてはもつともな希望といわざるを得ない。またわれわれとしても、米国軍隊の世話になるというか、保護のもとにいるということは、なるべく早くやめたい。こういうことが両国の希望であります。ゆえに保安隊についても、なるべくこれを増強する、そうして将来の国防の計画を確立するそういう考えのもとに、政府としては防衛計画を進めております。これはただちに国会を通じてとか――国会の協賛を経るのには、来年度予算において国会の承認を受け、十分御意見も伺うつもりでありますが、とにかく目下の状況はそういう状況でありますから、防衛力増強ということはやむを得ざることであると考えておるのであります。これは外界の事情がかわつて来ましたから、これに対応して政府としてもこれに対する措置をいたさなければならないのであります。
  116. 河野密

    河野(密)委員 私の言わんとするところは、吉田総理大臣は先般の重光会談において、従来保安隊は間接侵略に当るものであり、直接侵略にはアメリカ軍に当つてもらうのだ、こういうことを申しているのを改めておる。また軍隊と名のつくものはつくらぬのだ、こういうことを申しております。もしそういうことはないとおつしやるならば、私は私自身の総理大臣との応答でありますから、証拠をあげてもよろしいのでありますが、そういうふうに述べて来られて、しかもその方針がほとんどわれわれから見れば、雪と炭というように大きな変化を来した後であるから、総理大臣としてはまず今国会の劈頭にあたつて、施政方針の演説なりなさつて、その方針が政府としてはかようにかわつたのだということを表明せられるのが私は当然だと思う。先ほど改進党の松村さんは、了承をせられたようでありますけれども……。     〔「改進党は了承しなていぞ」と呼ぶ者あり〕
  117. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  118. 河野密

    河野(密)委員 われわれは先ほどの答弁では、とうてい納得することができないのであります。そこでそういう重大な変化を来す方針を、吉田・重光会談とか、池田・ロバートソン会談とか、そういうことでなさつて、その方針が変化したものをあたかも既成の事実として押しつけられるということは、私は国会軽視これよりはなはだしきものはないと思いますが、この点に対する吉田総理大臣の信念を実は承りたいのであります。
  119. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の信念を申し上げますが、これはこの次の国会において予算その他において御審議を願う、またいかなる計画を立てるか、ただいま研究中であります。この計画は結局内外における情勢に応じたものを立てて、そうして国会の協賛を経る、今日はまだ研究中でありますから、方針がかわつたとかあるいは予算がかわつたとかいうのではありませんので、この次の議会の問題になるべきはずだと私は了解しておるのであります。
  120. 河野密

    河野(密)委員 私はただいまの総理大臣の御意見では満足することはできませんが、なお次の質問に移りたいと思うのであります。  従来の政府憲法解釈の問題は、保安隊は間接侵略に当るものであつて、直接侵略に当るものでないから、これは憲法にいうところの戦力ではない、その目的が違うから戦力ではない、こういうことをしばしばこれは憲法解釈として言われて参りました。次に政府の方では、近代戦に耐え得るような装備を有するものではないからして戦力ではない、こういうことも答弁されて来たのであります。さらに安保条約の前文にある自衛力の漸増というものも、これは単にアメリカ側の期待にすぎないのであつて日本としては自衛力の漸増をすると約束をしたわけではない、であるからして、保安隊その他のものをつくつても、これは憲法違反ではない、こういうことを繰返して、憲法論としてお述べになつて来たのであります。これに対しまして、先ほど私が申し上げましたように、鳩山自由党の諸君は、この段階に至つたならば、すみやかに憲法改正しなければならないのだ、憲法改正しなければ、現在の状態はすでに憲法違反であるのだ、憲法改正して軍隊をつくれと、こういう御主張をなさつて参りました。それから改進党の諸君方は、自衛軍ならば憲法改正しなくてもつくれるじやないか、だから憲法改正しなくても自衛軍をつくれ、自衛軍として、はつきりした名目的な軍隊であるということを打出せ、こういうことを主張して参られたのであります。私は吉田総理大臣並びに政府は、この二つ憲法論の間において、どつちの憲法論に御同意になるつもりなのか。最近における重光・吉田会談におけるところのあの覚書というものは、改進党の主張せられる憲法論というものに、同調せられるのであるかどうであるか、その点を明確に伺いたいと思います。
  121. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。この間の重光総裁との会談において、憲法論はいたしておりません。また現在、昨日も申した通り、間接侵略とか直接侵略とかと言つて、たまたま区別をなすために、保安隊をして去就に迷わせるようなことはないでありましようけれども、――直接侵略があつた場合に、保安隊は銃をかついで逃げ出すというようなことは、むろんありますまい。しかし実際の問題としては、直接侵略でも、いやしくも外国軍隊が侵入した場合には、これに対して国土を防衛することは、これは保安隊のみならず、すべての国民の義務でありますから、保安隊としても、これを見捨てて逃げるということはむろんありますまいが、しかしながらこれは保安隊任務として、明白にしておく方がよろしいという考えもありまして、そこで保安庁法改正して、直接侵略にも当るという意味も含ましめることが適当であると考えて、今考慮いたしておるわけであります。私は今のところ、保安隊増強いたしましても、いわゆる憲法に抵触しない範囲内で増強するという方針で進みたいと考えております。
  122. 河野密

    河野(密)委員 次にお尋ねしますが、共同声明とか覚書の中には、自衛隊日本軍、防衛軍、日本防衛軍、こういう言葉が使われておるのであります。今総理の言われるところによりますと、憲法改正しないで行くということでありますが、憲法改正しないで行き得る限度とこれは考えておるのでありましようか。自衛隊日本軍、防衛軍、日本防衛軍、こういうような共同コミユニケにある文字、あるいは吉田・重光会談にある覚書の言葉というようなものは、これはみな憲法範囲内、こういう趣旨なのでありますか。それと現在の保安隊の関係をどうなさるつもりであるか、この点を伺いたいのであります。
  123. 吉田茂

    吉田国務大臣 それはお話通り、すべて憲法範囲内においてという考えであります。
  124. 河野密

    河野(密)委員 そこで私は総理大臣憲法のことを伺わなければならないのであります。私は日本防衛の問題、日本自衛力及び自衛権の問題について、そのよりどころとなるものは、憲法第九条、平和条約第五条、安全保障条約の前文と第一条であると存じます。そこで私はお尋ねいたします。が、憲法第九条を率直にこれを読んでみますのに、一切の戦力を持たないということであります。国際紛争の解決の手段として戦争を放棄することはもちろんのこと、陸海空軍その他の一切の戦力は持たない、しかもそれらの戦力を、かりに日本が何らかの形においてやみ戦力を持つたとしても、交戦権は認めないぞ、念まで押して憲法第九条は規定しておるのであります。この点においては吉田総理大臣は、自衛のための軍隊といえどもつくることはできない建前であると、しばしばこの国会においても声明をされ、言明をされておる通りであります。私は憲法第九条はきわめて厳格なる規定である、かように考えるのであります。ところがこれに対して、平和条約の第五条、いわゆるサンフランシスコ平和条約の第五条によりますと、その点をやや緩和したと私には考えられます。やや緩和いたしまして、集団的及び個別的自衛権はこれを認める。しかも国連憲章第五十一条によるところの権利を認めると、こう書いてあるのであります。国連憲章第五十一条とは何を規定しておるか。外国から侵略して来た場合において、その侵略を受けた国は、安全保障理事会に対してこれを提訴すべきである、こういうことを言つておるのであります。安全保障理事会に提訴するまで、外国侵略を受けた国が、そこで持ちこたえておることは、これはある程度まで認めよう、こういうのが国連憲章第五十一条の規定だと私は思うであります。さらに安全保障条約の前文には、軍備となることを避けつつ、自衛の責任を漸増的に負うことを期待すると、こう書いてあつて、その第一条には、先ほども私が申しましたように、直接侵略に対しては米軍が当るのである、間接侵略の大きいものにも米軍がむろん出動するが、その間接侵略日本保安隊がこれに当るのだ、こういうことが書いてあるのであります。しかもその軍備となることを避けつつということに、いろいろな文字がついておりますが、この文字はいろいろに解釈がいたされます。攻撃的な軍備を避けるとも解釈されるが、軍備すべては攻撃的に用いられるものであるから、軍備一般を否定するとも解釈いたされるのであります。いずれにいたしましても、軍備になることを避けつつ、自衛の責任を負うのだ、こう書いてある。この安全保障条約の前文に書いておることが、やや日本自衛力に対する緩和規定であると私は解釈する。しかしこのいずれを見ても、直接侵略に対抗して、常設的なる兵力を持つとか、軍隊のようなものを持つとか いうことが許されるということには、どこにも根拠がないのであります。総理大臣憲法範囲内において許されるということを仰せられますが、総理大臣の言う憲法範囲内において許されるとは、一体どの程度を言われるのか、明確に御答弁が願いたい。
  125. 吉田茂

    吉田国務大臣 日本国が独立した以上は、自衛権があることは当然のことであります。また憲法には陸海軍等の戦力を持つことは許されないといつておるのであつて戦力に相当するものは持つことができないことは当然であり、またこれによつて交戦権もしくは国際紛争の具に戦力を供することも、これまた禁止せられておりますが、自衛権は独立した以上は持つのが当然であります。自衛権というのは必ずしも軍隊ばかりではありませんが、すべての方法によつて国の自衛をはかる、防禦防衛をはかる、これは独立国として当然の行為であります、その範囲において日本防衛権なり、防衛力を持つ、これまた当然な話であると思います。条約いかんにかかわらず、独立した以上は、これを国連その他において認めるのも当然であり、講和条約において認めるのも当然であると私は思います。
  126. 河野密

    河野(密)委員 私の言わんとするところは、自衛権のあることはこれは当然であります。自衛権は当然であるが、その自衛権の裏づけであるところの自衛力というものには、条約においても憲法においてもちやんと制限が加えられておる。どの程度自衛力を持つかということに対して、国際的にもすでに制限が加えられ、憲法においても制限が加えられておる。それを総理はどういう根拠によつて、直接侵略に当るものまでもこれはさしつかえないのだという解釈をなさるか。どこにもその根拠がないじやないか。その根拠があるならばお示しを願いたい。常識的な言葉でなしに、憲法のどこにあるとか。条約のどこによつて、自分はその程度自衛力を持つてもいいのだという信念がおありになるならば、それをお示し願いたい。こういうのが私の質問であります。
  127. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えしますが、憲法に禁じておることは戦力を禁ずておるのであります。自衛権を禁止しておるわけでもなければ、防衛権を禁止しておるわけでもない。直接侵略に対しては対抗してはいけない、防衛してはいけないということは書いてないのであります。独立国である以上は、当然自衛権があることは常識論であり、これは法理論であるべきはずであります。独立国である以上は、条約その他において日本自衛権を認めておるのであります。これが私の解釈であります。
  128. 河野密

    河野(密)委員 それでは総理大臣に重ねてお尋ねしますが、先般の吉田・重光会談において、覚書の中に吉田総理大臣はこういうことをお認めになつておられるのであります。アメリカ軍隊が撤退をしたあとは、日本自衛力増強してそうしてこの穴を埋めるのだ、こういうことが言われておるのでありますが、現在日本に駐留しておるアメリカ軍隊は、総理大臣のあれでは戦力でないのでありますか。そうするともしこれが戦力であるとするならば、その穴を埋めるものも当然戦力でなければならぬと思います。(「ヒヤヒヤ」)
  129. 吉田茂

    吉田国務大臣 私はこの間の重光総裁との会談において、アメリカ軍の穴を埋めるなどということは申しておりません。ただ日本国防について研究しようということ、また防衛体制を樹立したいということを言つたのであります。
  130. 河野密

    河野(密)委員 これは総理大臣自身がおそらくその責任においてお書きになつたと思うのでありますが、「駐留軍の漸減に即応し、かつ国力に応じた長期の防衛計画を樹立する、」こう書いてあるのでありまして、駐留軍の漸減に即応しというのでありますから、その穴を埋めることは当然であるし、池田・ロバートソン会談の共同コミユニケになりますと、その点はさらに明確に書いてあるのであります。吉田総理大臣がいかにここで詭弁を弄されても、残念なことにははつきり文書になつて出ておるので、これはいかんとも取消しができないと思います。もしアメリカ軍隊を現在戦力と認めないというならば、われまた何をか言わんや。戦力にかわる穴を埋めるものが戦力でないという議論は一体どこから出て来るか。(「ヒヤヒヤ」相手)
  131. 吉田茂

    吉田国務大臣 穴を含めるというような言葉をお使いになつたものですから私はまごついたのであります。ここには、「駐留軍の漸減に即応し」つまり駐留軍の漸減をいうことは安全保障条約の中にも規定された通りで、これは予期しておることであります。アメリカ軍が漸減するといいますか、引揚げる、これに即応する防衛計画を立てるのが国として当然な行為であります。その計画を研究しようということを重光総裁と相談をしたのであります。
  132. 河野密

    河野(密)委員 戦力の問題を別の角度から伺いたいのですが、総理大臣は先ほどから、軍隊はつくるけれどもこれは戦力を持たない軍隊だということをしきりに言つておられましたが、ちようどこれはまむしだけれども毒がないというのと同じでありまして、毒のないまむしはすでにまむしではないと私は思います。(笑声)戦力を持たない軍隊ということは、私は意味をなさないと思うのであります。そこで政府の言うところを聞いておりますと、軍隊という名前を使つてもそれは戦力にならないから憲法違反にはならないのだ、こうお逃げになる。ところが今度は武力の方を言つて武力をかりに持つたとしても、軍隊という名前がついてなければこれは憲法違反にならないのだ。これは今まで主張して来られたことです。前の方はきよう御主張になつたことです。このいずれから見ても言いのがれであるとしか思えません。そこで私は総理大臣お尋ねするのでありますが、一九五一年十二月十八日の国連において、軍備縮小の対象となる兵力というものを規定いたしましたときに、その中に正規軍、保安隊、警察隊を向む、こいうことが書いてあるのであります。そうしますと、軍隊という名前があつてもこれは武力を持たないのだというような言いのがれはできないのであつて、兵力といい、あるいは武力という中には、正規軍あるいは保安隊、警察隊というものもすでに武力と認めるというのであつて、これは全世界の国々の一致した決定であります。吉田総理大臣は全世界一致の決定をなお認めないという立場をとられるのでありますか。
  133. 吉田茂

    吉田国務大臣 いろいろな条約等を用いられてるるお話でありますが、とにかく日本政府考えとしては、戦力に至らざる軍隊といいますか、防衛力が必要である、それ以上の戦力を持つ軍隊はつくりません。また防衛力をつくらないということを申しておきます。
  134. 河野密

    河野(密)委員 私は、総理大臣が国際的な規定を無視されて御主張になつておることは、おそらく日本で納得できないばかりでなく、もしこの問答を英語に翻訳してアメリカに渡つたとしても、おそらくアメリカの何人もこれを理解するものはないだろうと思うのであります。そういう国際的に通用しない議論をここでいくら議論をしても私はむだだと思うのでありますが、そういう態度でもつてこれはほおかむりすべき問題ではないと私は思うのであります。もつと真剣な問題であると思うのであります。  そこで私は最後に総理大臣お尋ねるすのでありますが、私がなぜそういうことをお尋ねするかといえば、今度の国会はいわゆる救農国会という、だれがつけたか存じませんが、救農国会という名前で出て参りました。救農国会であるけれども、その予算すら、すでに大蔵大臣は財源がないからと言つて、二千数百億の災害を千五百億幾らかに圧縮して、その三割というようなことにしておるのであります。もしこれこの国会において防衛の問題が率直に論議されて、一体日本がこの国際情勢に対していかなる防衛政策をとるべきであるかということをもつと率直に論議されるならば、私は財源必ずしもなきに苦しまなないと思うのであります。そういう政府態度自身に、私はすべての政治の貧困の根源があるということを考え、単なる区々なる憲法論議をしようということを私は考えておるのではないのであります。その点は総理大臣も十分御理解をなさつて、もり少しはつきりとした態度をもつて私はこの問題に臨まれるべきものだと思うのであります。そういう意味合いにおきまして私は防衛の問題は、吉田総理大臣が今度の国会を通じて、かわつたものはかわつたということを率直にして、それについて賛成、不賛成をするのは、これはわれわれが自由に決定することであります。これは総理大臣のおさしずは受けないのでありますが、かわつたならばかわつたということを率直に天下の公衆に明確にされることが、私は立憲政治家の態度であろうと存ずるのであります。そういう意味合いにおきましてもう一ぺん、総理大臣国会を通ぜずしてなされた方針の変更に対する態度、その責任というものをどういうようにおとりになるか、ことに池田・ロバートソン会談によつて共同コミュニケという形において発表されたものに対する責任、一体総理大臣個人がおとりになると言つても、総理大臣個人が責任をおとりになれば、吉田内閣は倒れなければならない。そういうことは、これはナンセンスであります。そういう問題はこれはもう少し率直に、国際的に約束をすることを国内における国会議員がつんぼさじきにいて知らないというようなことでは、私はこれから政治というものはうまく行くはずはないと思うのでありますこの点についての吉田総理大臣の所信を重ねて伺つて、私の質問を終りたいと思うのであります。
  135. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は重ねて申しますが、防衛計画はこれは予算の形もしくは法律の形において国会に必ず付議いたしますから、そのとき慎重な御審議をお願いいたします。
  136. 倉石忠雄

  137. 三木武吉

    三木(武)委員 私は自由党を代表しまして、主として吉田総理木村長官に質疑をいたしたいと存じます。  前もつてお断り申し上げておきますが、昨日来私が質問をするということを発表いたしましたら、自由党の私どもの友人あるいは内閣に関係のある方方が繰返し繰返し、一体、三木は何の質問をするかと言うて、しきりに私の質問の要旨をお尋ねになりました。どうもおかしなことを聞きに来るものだと思いましたけれども、よくよく考えてみますると、前国会予算委員会に河野君が、例の世間のいわゆる爆弾質問というものをやつた総理も通産大臣も外務大臣もむろん大して意に介しておられなかつたのであろうけれども、私どもから見れば、何か暗やみの中から鉄砲を撃たれたような気持になられて、どうも河野があれだから、三木もまたくらやみに鉄砲を撃つのじやないかという御心配があつたので、お尋ねに来ておるのじやないか、こう思いましたので、私はその人々には、決して御心配はいりません。再軍備の問題と憲法改正の問題についてお尋ねするのだということをお答えをしておきました。  私は吉田内閣に対しては、聞くべき、ただすべき、非難すべき幾多の問題を持つております。しかしながらこの国会は、国民のために一刻も早く終末を告げなければならぬいわゆる救農院国会でございます。つとめてそういう混雑をこの国会で来して、国民の焦眉の急に迫つておる問題を延引さそうという考えはございません。また吉田内閣に対してただしいこと、非難したいことも多々持つておりまするけれども、この憲法改正と再軍備の問題は、吉田内閣の打倒とか吉田自由党の攻撃に用いるほど小さい問題じやないのであります。だから私は、いかにこの問題が重大であるかということを痛感しておりまするから、しばらく、ただしたいこと、非難もしてみたいと思うことも遠慮をいたしまして、誠心誠意、この憲法改正と再軍備のことについてお尋ねしてみたい、こう考えるのであります。     〔発言する者あり〕
  138. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  139. 三木武吉

    三木(武)委員 多分、私がかように申しますると、はなはだ気に入らぬ方々もあるかもわかりません。しかしこれは国家の重大事に際してはやむを得ない。この点に限局しようと思うが、しかしその私がお尋ねしたいという事柄を申し上げる前に一言申し上げておきたいのは、そもそもこの再軍備というようなことが問題になりましたのは、朝鮮事変が勃発して、日本におけるアメリカ進駐軍がその方に移動しなければならぬ、この移動があつたあとは、日本の国内の治安というものは、単なるその当時の警察力では十分でないというところから、単純なる警察力の補充といいますか、その意味であの警察予備隊が、吉田総理の発案であるか、アメリカ進駐軍の慫慂であるか、それは私は存じませんが、できたものと解します。それがもととなりまして、次には保安隊となり、やがては自衛隊となる。そうしてただいま聞いておりますと、そのうちには憲法改正もしなくちやならぬようになることは政府も予期しておるようだ。憲法改正をするという場合においては、侵略戦争をするに耐えるほどの軍隊をつくるというようなことも、一応想定せられるようなただいまの質疑応答であつたのであります。ところがそもそも今日の保安隊、やがて来るべき自衛隊の最初の警察予備隊というものをつくられた当時の吉田総理大臣考え方というものは、憲法上から言つても、また実際の必要から言うても、私はまことに適切なる考え方であつたのじやないか、こう思うのです。吉田総理大臣は、もはや御記憶から消えておるかもわかりませんが、私が最近人に聞き――その人というのは金森君でございますが、金森君に聞き、はてそんなことがあつたのかというので、当時の速記録、これは明治憲法を今の日本憲法改正した当時の吉田総理大臣憲法問答、この衆議院における憲法問答の中に、この憲法第九条では、軍隊というようなものは一つも持てぬことになつておるが、いやしくも人寄つて国をなしておる以上は、自衛権というものはあるはずだが、自衛権はあるのかないのかという質問をせられた方がある。それに対する答えとして、吉田総理大臣は、はつきり自衛権はあるのだという答えをせられておるのであります。その自衛権があるのだというその答えは、今日なお終始一貫しておるのでございまするが、その自衛権があるのだというその答えに対して、議員の方からは、自衛権がある以上は当然自衛力、すなわち自衛軍を創設することができるのであろう、こういう問いが出ておるのです。それに対して吉田総理大臣は、自衛権はあるけれども自衛力、それをつくることはできないのだという答えをせられておる。そうしてその答えには、憲法第九条の第一項及び第二項を見れば、武力は持てない、戦力は持てない、国際紛争の解決とかその他すべての問題について、いかなる場合においても自衛力軍隊は持てないと書いてあるのだから、持てないということを明説せられておる。私はこれは速記録ではつきり見た。実は速記録を持つて来るつもりだつたが、どこかへ落しちやつた。(笑声)ここで読み上げればはつきりするんだが落しちやつた。しかしこれは吉田総理御自身が、大事なところで問答せられたのだから御記憶にあるだろうと思う。だが金森君がわれわれに対し、われわれが金森君の憲法論、憲法の歴史の話を聞いたときに、ほんの十日ほど前でございますか、公開の席ですからここにおられる新聞記者も聞いておるが、皆で聞いた、この話は。私はこの吉田総理大臣考え方というものは正しいのだ。はつきり私は正しいと思つておるのです。そしてこれは今日そう解釈するここも正しいが、その当時はなお正しかなつたのです。何となれば、その当時は中共――中共というんじやなかつたから、そのときは国民政府でしようが、中国もソビエトもアメリカも、いわゆる国際連合の一員であつた。世界における戦争その他の紛争というものを、もう武力で解決するというようなことは考えてはいかぬのだ。世界はもう今日限り、日本とドイツとイタリアが往生をした限りは、もう武力戦争なんというものは起るものでないんだというような考え方を当時は持つてつた。だから国家の性格、性質上から言うて、いやしくも国あれば自衛権があるのだということは当然のことであるが、その自衛権行使する武力なんというものは必要ないんだ。いわんや日本というような物騒な国に、たとい自衛権というものを持たしても、いずれのときにかまた自衛の名のもとに出兵をする、侵略するというようなおそれがあるから、これには絶対持たせないんだという観念がこの憲法の上に現われておる。そしてこれはアメリカに押しつけられたんだかどうか知りませんが、こういう憲法ができたわけです。その当時の歴史からも、その当時の環境から言うても、また憲法それ自体から言うても、自衛力を持てないということは、この日本憲法の精神であるということだけでははつきりしておるのです。だから私は、アメリカ進駐軍が朝鮮に移動せられたあとでつくつた、いわゆる警察予備隊というものは、名実ともに警察力によつて日本国内の治安が維持のできない場合に、これを補充する、強化するという意味であつたのであつて、これは吉田総理大臣の発案であるかどうか知らぬが、非常にけつこうなものであつたのです。ところがだんだんと、日本をとり囲む国々との間の国際情勢というものが危険になり、人によればあの朝鮮戦争は、日本侵略の足場をつくるものだというようなことを公々然と言うておる人すらもあるのであります。日本は共産国家群に対して、非常な危険な状態にある。そこで同時に、特に国内ににおける共産勢力の地下運動というものが、ほとんど軍事組織を持つ程度にまで進展しつつあるというようなことからして、この警察力では間に合わぬ。もう少しこれを強化せなければいかぬ。これも吉田総理考えたのか、アメリカ考えたのかそれは知りませんが、そういうところからこの警察予備隊というものを増強して、名も保安隊と改めた。この保安隊と改めたときはすでに警察予備隊とはやや性格が異なつたもの、ところがやや性格が異つておるのが、今度は外敵の侵入に当ることのできるような自衛隊、こう来たのだから、これには一体飛躍がある。よく新聞なんかで、おたまじやくしとかえるのことが日本軍備のことについて出ておりますが、私はあれは実にいいたとえだと思う。最初の警察予備隊ができたときには卵です。だれが見ても、この卵がかえるになるのか魚になるのかわかるものじやありません。これはかえる専門家ならばともかく、普通の人にはわからない。ところがこのだれが見ても一応これは魚の卵かと思うような卵が、だんだん進歩して今度はおたまじやくしになつた。おたまじやくしになつたときには、ははあ、これはかえるになるのじやないかというくらいのことは、だれもが考えるのでございますが、しかしおたまじやくしはどこまでもおたまじやくしで、かえるじやないのです。これは強弁せぬでも、これはかえるになるのじやないのだ、あるいはかえるじやないのだということが、言い切ろうとすれば言い切れると思うのです。しかし私は当時の新聞を見て、またこの前の国会のどなたかとの質問応答を見て、吉田総理大臣が、保安隊の何かのときに言つていた、諸君は国軍の基礎である、将来の国軍の基礎であるとか言われたという。これは吉田さんからいえば、そんなことはありやせぬぞというかもしらぬが、とにかく新聞にそういうことが出ておりました。あの国軍の基礎だというこのおたまじやくしは、やがてかえるになるのだという程度のことは、もう大体わかつておる。しかしそんなことは言うたことはないと言い、またこれは軍隊になるのじやない、戦力になるのじやないと言い切れば、まだおたまじやくしで通るかもしらぬ。ところが今度は自衛隊となつて外敵の侵入に対処するのだ、こう来ますと、もうおたまじやくしで済まぬのじやないか。おたまじやしくがかえるになる途中の、あのおたまじやくしに手か生えたり、だんだん足がついて、しつぽが抜けた程度に行くのじやないか。そうしてそれがまた日がたてば、もう隠そうにも隠されない厳然たる軍隊になる。そこで吉田総理の最初の考え方はいいのだけれども、もう保安隊のときに何らか考え直さなければならぬのであつた。今日になつたならば、いわゆる心機一転、よく世間で君子の豹変とかいいますが、君子だろう君子でなかろうが、もう豹変しなければならぬときになつておるのだ、私はこう思うのです。私はきよう議論をしようというのじやない。そこでこうなりますと、今日までの吉田総理の言責というもの、ここには木村君おられるが、木村君の言責というものが、さらに問題になるというおそれがありますけれども、そういう一内閣や一閣僚の責任というような小さな問題ではない。その責任なんということを声高らかに叫ぶ人も、あまりに再軍備の問題を軽々しく見過ぎる。またそれを恐れるにしても、あまりに自己の立場に汲汲として、国家の大事を誤るというきらいがあるから、そんなことはかれこれ言わぬで、もうこの辺で心機一転をして、思い切つて、今までのことはよろしい、今まで軍隊でないと言うたのだから軍隊でなくてよろしい、戦力ではないと言うたのだから戦力でなくてもよろしい、とにかくせつかくここまで言い張つて来たのだから。この程度まで来たならば、もうこれは軍隊だ、これは戦力だということをはつきり言うて、この問題の解決に当ることがよろしいのである。私はそれを非常に願う。なぜ私がこういうことを言うかといえば、今日これを軍隊だ、戦力だということを言うて、しがもはつきりそれを表わして、もし憲法改正をしなければならぬければ、憲法改正をするもよろしい。大体において衆議院の三分の二あるのです。これは私ははつきり申し上げる。社会党両派の諸君ははなはだお気に召さぬかもしらぬが、(笑声)社会党以外のいわゆる保守三党というものは、はつきりこれを軍備ということにしたらいいのじやないかということを言うておる。もちろう改進党は憲法改正せぬでもやれるじやないかと言われておるが、(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)改進党の中の一部では。(笑声、拍手)これもせんじ詰めてみれば、国民の間において、憲法改正しなければいかぬとかいいとかいう議論があることはよく御承知通りである。いやしくも軍備をつくるという以上は、議論のあるようなことはいかぬ。すつきりして、それで再軍備をするのはよろしい、自衛軍をつくるのはよろしいという意見に同意しないはずはない。むしろそのことを言われておる人は、憲法改正というと、また反対が出てうるさいぞ、あるいは国民投票というやつは今まで試験してみたことがないから、うまく行くかどうかわからぬ、だからそんなことをやると言うて、憲法改正でストップを食つたときにはたいへんなことになる、憲法改正はしなくとも、今言つたように単なる自衛ならできるという解釈もできるのだから、まずそれで行うじやないかという程度解釈論で、いわゆる保守三党というものはこぞつて軍備を持たなければいかぬ、持つときには憲法改正が必要なんばということに一致ができるのでございます。むろん社会党は、そういうことになると、(「反対」と呼ぶ者あり)盛んな反対をしましよう。責任論も出しましよう。しかし衆議院でわれわれには三分の二以上のこれに対する同意者があるのです。参議院のことは私は存じませんが、参議院においても、社会党、共産党以外の人は、もちろんわれわれと同じ意見になり得べき可能性が十分あるのでございます。すでに衆参両院で三分の二以上ある。これが国民に訴えた場合に、何で国民の過半数が同意しないということが考えられましようか。もちろんこれは今までやつたことのないことだし、確信をもつて申し上げるわけには行かぬが、少くとも私どもは昨年以来、再軍備ただ一本で日本国中遊説をいたしておりまするが、初めは非常な反対もあるようでございますが、じゆんじゆん乎として説けば、反対する婦人のごときは大多数われわれよりも熱心な賛成者になる。また徴兵という制度は青年はいやでございましようが、いわゆる義勇兵制度、志願兵制度ならば、断じて青年諸君も反対であるとは私は思わない。もう情勢がそうなつておる。そうして憲法論も、軍備であるとかないとかいう論も、もはや終局点に来ておるんです。私はあえてこの鉄は熱しておるとは言いませんが、閣僚及び保守三党が結束して国民の理解を求めたならば、立ちどころにこの鉄は灼熱状態になる。灼熱状態になることは大体において疑いがないのだから、ここで思い切つて憲法改正、自衛軍の創設というところに邁進していただきたい。これは自衛軍のためにも、国防のためにも、また国民をして安心せしむるためにも必要である。また吉田総理初め閣僚諸君は、憲法改正する必要がないんだ、戦力がどうだ、交戦権がどうだ、ずいぶん聞いておつてもお気の毒なように苦しい、この苦しみからも脱却して朗らかに国の政治に当ることができる、さよう私は考えておりまするから、どうかそういうふうにおやりになる気持になつてほしい。なりますかなりませんか、それに対する答弁を聞きたいと言うと、ここでかどが立つて、うんそうか、それじやそうしようとはむろん言えますまいし、せぬと言えばまた議論になりますから、私はそれに対する答弁は聞きませんが、私のこの言葉というものはいわゆる他山の石として慎重に考えてもらいたい。前口上が少々長くなりましたが、これだけまず申し上げておきます。  それから質問応答でずいぶんお苦しみになつておるがということを申し上げたのは、これは総理に申し上げるよりは、木村長官に申し上げた方がいいと思う。木村長官はただいま戦力とは侵略戦争可能な武力を言うのだ、私の聞き違いかもしらぬが私はそう聞いた。言葉は違うが侵略戦争可能な武力戦力というものだ、従つて侵略戦争可能な状態にまで行けば憲法改正をするが、そうでなければ憲法改正の必要はない、こういうことを言われた。これだけは私は取消してもらいたい。いずれは憲法改正しなければならぬことはわかつておる。だれが考えてもわかつておる。ところが総理及び木村君のこの答弁が速記録になつて永久に伝えられる、またこれが海外、特にアジアの諸国に伝わつたときに、日本憲法改正をしようとするときに、いよいよ日本侵略の準備にかかつたという疑心暗鬼を生ずるおそれがあるのであります。もちろん今の日本人は侵略戦争をやろうなんということは考えている者は一人もありません。絶対にない。あの軍国主義の権化とわれわれが見ておる旧軍人ですらも、侵略戦争というようなことを考えておる者は一人も今日ありません。その日本人にかりそめにも諸外国のものが侵略戦争にいよいよかかろうとするつもりで憲法改正をする――むろん外国の人もそんなことを思う人はないかもしらぬが、そういう口実を与える、それを与えた場合の日本におるわれわれ日本人はどうなるか。だから木村君の答弁総理大臣答弁の中のこの言葉が、どういう意味で言われたのか、どういう言いまわしをしたのか存じませんが、少くともここで聞いておつた人人の耳には、私が申し上げたように響いた。これだけはお取消しになつたらいい。これを私は国家のために忠告申し上げる。(「男なら取消しできないぞ」と呼ぶ者あり)いや、できないことはありません。なに人間というものはあやまちを改むるにはばかることなかれで、このためにもやつぱりすつきりした方がいいのだ。思い切つておやりになつた方がいい。社会党の諸君はこれをとがめますが、私どもはこれをとがめません。  それからなぜ私はそういうことを特に言うかというと、木村君は何のふしぎもないで侵略戦争に対処できるような軍備はいけないのだ、また聞く方も侵略戦争侵略戦争でむちゆうになつておられる。侵略戦争といつたつて一体だれを相手の侵略戦争を想定しているのか、だれを想定するのか。ソビエト中共というものに侵略するというようなことになれば、一体そんな軍備日本にできるのか。こんなことはできると世界中の人たれも考えてやしない。今の侵略戦争侵略戦争というのは小さい弱いものというものを目標に想定せられる、そうするとそもそも侵略戦争は何を相手に言うかと言われた場合にどうします。今の南朝鮮を相手にする、南朝鮮を相手にすると言つたつて、きのうも木村君もここで話があつたようだが、外務委員会で外務省の局長とかが速記をとめてまで言うたからよほど重大だと思つたのですが、そんなもの速記をとめるとかいう重大なものじやない、朝鮮には陸上部隊四十万あり、ジェット戦闘機が百四十機ある、巡洋艦が何ぼある、フリゲート艦が何ぼある、とうてい日本の及ぶものじやないのだ、その上によけいなことを言う、武力の背景がなければ外交などというものはやれるものではない、今日本にはそれに対応できるだけの武力がない、だから朝鮮があんなことを言うても外交的にかつてに行きませんというような答弁をしたというような、これは属僚ですから大してとがめなくもいいが、岡崎君も気をつけなければならない。その朝鮮を相手に侵略戦争するといつてもたいへんだ。あなた方は日本の地上部隊を二十万いるか二十二万いるか、アメリカが大きなことを言つたつて四十万も五十万もつくれというのではない、それではたして朝鮮に侵略ができるか、すると日本が三十万や四十万の軍隊をつくつても、朝鮮に対する侵略戦争はできぬのだからかまわぬ。もしそれ台湾の国民政府を相手だというのならば、これよりうんと小さくていい。さらにインドネシア、ビルマということになれば、輸送する船さえあれば十万か二十万でいい。そうするとどこを相手に侵略戦争というものを言うのか、何とこれを木村君及び総理も認めなければならぬ、侵略戦争のできない範囲軍備憲法でやつてもいいのだ、あるいは戦力でないのだということも非常に大きな間違いと同時に誤解を持つ、これをおやめになつたらいい。そこでそう何もかもやめたら戦力は何かわけがわからなくなる、どだいこれはわけのわからぬことなのだ、一体戦力なんというものは法律上の言葉かどうか、法律上の言葉でない、法律上の言葉でないものをどさくさまぎれにふつと使つて戦力という言葉もあれば、武力という言葉もある、わけのわからぬ言葉になつた、わけのわからない言葉を無理に意義づけようということそれ自体が根本的に間違つている。その観点からこの再軍備論争というものは、もう一回出直して行く方がいいと思う。それから えらい忠告ばかりするが、忠告から先へ申し上げておく。これは総理に、ほんとうに真剣だから攻撃するのではなくて、忠告です。国民の義務だ。外敵が日本を侵したときには、国民の義務として今の保安隊がこれに対処することはむろんのこと、国民全体がそうすべきなのだ。何も保安庁法は何であろうが、かんであろうが、そんなことは問題じやない、こう言うたが、これも考え直してもらわなければならない。国民の義務とは何ぞや、私ども日本国民として、日本の安全を保持するという道義上の責任は持つております。また法律で規定せられた行為の責任は持つております。しかし法律上の義務といわゆる国民の義務とは違うのです。むろん総理国民の義務といえば法律の義務のようなお考えで言われたのだろうが、国民の義務すなわち法律の義務というのでないということをはつきりしてもらいたい。これは昨日の防衛問答の中でも、総理は多少混同しておつたようだ。木村君は最初は混同しておつたようだが、しまいには法制上の職務、責任、それから人間として、日本人としての責任というか道義ということをはつきりわけて言われたようだから、木村君はそれでいいが、その同じ気持がきようここの答弁にやはり出ている。職責上国家から日本防衛責任を持たされておる者は、法律上の義務として当然国難に一身を賭して殉ずべきものであるけれども、一般国民は法律上の責任はない。ただ日本人としての道義上の責任はあるのだ。しかしいやしくも一国の政治をあずかつておる者が、道義上の責任があるから国民はいざというときにはみな行つて死ね、敵のたまに当つて来いということは、言うべきことじやないのじやないか、これは慎まなければいかぬ。そういう考え方が、太平洋戦争の途中から敗戦の終末に至るまで、あの軍閥官僚を支配しておつたことが、日本の今日をしてこのまことに情ない境遇に陥らしめた一つの大きな原因になつておる。むしろそういう人間があつても、いやこれは国軍によつて守るのだ、お前さんたちは後方でもつて兵隊が戦いいいように、一生懸命に商売に励んでくれ、産業に従事してくれ、それぞれの仕事に夢中になつていそしんでくれ、職場には行く必要がないぞ、これを政府というものは言うべきものじやないか。もしそうでない考え方というと――ちようどあの琉球が最後のときに、琉球の娘さんたちが白百合部隊、ひめゆり部隊とかいうて悲壮な最後を遂げた、あれはある意味においては、日本としてはまことに後世に伝うべき美談であるかもしらぬが、ああいう美談を残すような日本の政治というものは、根本的に間違つていたと思う。(拍手)ああいう悲惨なことは、二度と再び日本国民の中では起さないようにしてもらいたいというのが、私の念願であるし、また政治をあずかつておる人の心構えでなくちやいかぬ。そこで国民の義務であるからみな守るべきだということは、これは学校の先生か何かが道徳的に言うのならいいが、総理大臣とか保安庁長官はこういう言葉は慎んでもらいたい。  ここで私は最後にお尋ねしたい。これはお尋ねです。簡単に申し上げますが、ただいま申した通り、もはや、現在の保安隊、やがて生れかわるべき自衛隊軍隊でない、戦力でないということを言い張ることのできる限界点に達したのだから、この限界点を越えてまでも、国民に疑問を持たせ、また参衆両院で相かわらずの議論をするというようなことをさせないように、きれいさつぱり朗らかな空気の中で自衛軍を創設するのだ、これは軍隊だ、だから憲法改正しなければいかぬ、憲法改正するには多少の時日を要するのみならず、環境が必要になつて来るのだから、ただちに憲法改正の準備――これを研究と言おうが、調査と言おうが、そんな言葉はどうでもいいが、ただちにその挙に出て、そうして諸般の準備が整つたならば、憲法改正をするのだということをここで言明してもらいたい。もし今ただちに言明できないとするならば――これをするとまた責任問題になると言われはせぬかというおそれも多少あるから、私はそれを心配する。年寄りというものは先の先まで心配してあげるもので、(笑声)それがさしつかえるなれば、少くとも、憲法改正のことについては考えないこともないのだ、また自衛軍の創設というか名前がえというか、それをするときにはそれはやらなくちやならぬ、だが、それには間に合うか合わないかわからぬから、努めて迅速にそういうことをするということの言明を伺いたい。なさるかなさらぬか、なさらなければなさらないとここではつきりおつしやればよろしい。ただいままで新聞等で伝えるところを見ておりますと、憲法改正するかせぬかということは、まだまだこれから先の模様だ、しかし憲法の研究だけはしてもよいというようなことは言われておる。改正するかせぬかの方向をつけないで、憲法の研究だけをするというが、ここは学校じやない、法律学生の集会じやない。憲法の研究をするなんということは、いまさら始まつたことじやない。政治家があるいは政党が憲法の研究をする、調査するということなら、憲法改正すべきものだという前提のもとに、いついかなる方法で、いかなる内容で改正するかということの研究をするのが憲法改正の研究なんであります。その意味において、憲法改正する、ただ、それにはいかなる範囲で、いかなる方法で、いかなる時期でやるかということを研究するのだという程度のごとくらいは、お話になることはできるのであります。それができない。研究するということは言えるが、憲法改正するかせぬかわからぬ、改正するのは日本侵略武力ができるときになつたらやる、そんなことでは何が何だかわかりませんから、その点、私は苦情を言うのでもない、怒るのでもない、また責任を問おうというのでもない、ほんとう日本の自衛軍をりつぱに育て上げたい、国民歓呼の中で自衛軍はつくり上げたい、これは社会党の諸君は怒るかもしれない、(笑声)怒るならかつてに怒つてもよいが、そういうことにしたいというほんとうの誠心誠意であります。答弁はただこの一点でよい。御答弁を願いたい(拍手)。     〔「総理から答えろ」「総理が先だ」と呼び、その他発言する者、離席する者多し〕
  140. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。三木さんは木村国務大臣を要求しているのであります。     〔発言する者、離席する者あり〕
  141. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいま三木君から、切々たる衷情を吐露せられた発言を承りました。先刻私が侵略戦争云々と申したのは、侵略戦争たると自衛戦争たるとを問わず、近代戦争遂行に可能な実力を持たせない、こう申したのであります。万一もしこの侵略戦争という言葉が誤解を生ずるおそれ、きらいありとすれば、私はここで喜んでお取消しいたしたいと思います。  その次に申し上げたいことは、保安庁法改正の問題であります。もとより保安庁法の第四条によりますと、わが国の平和と秩序を維持し、人命、財産擁護のためと書いて反りますから、もちろん国内の治安の問題であつて、あるいは大動乱、反乱とかいうものに対処をして行く法制上の建前になつております。これを外敵の侵略に対して対応して行く建前はとつておらないのはもとよりであります。従いまして、きのう総理が、また私が発言したのは、かりにさような建前をとつてつても、事実上万一外国からの侵略があつたような場合においては、保安隊も安閑としていないのだ、必ずやこれに立ち向うであろうという事実上のことを申し上げたのであります。これは当然なことであります。そこで、さような建前になつておるが、将来は外国侵略に対処するようにこれを改正いたしたい、これが保安庁法改正の趣旨であるのであります。この意味においてわれわれは、せつかく今検討して、近き将来において成案を得た以上は国会に提出して審議を求めたい、かような趣旨であるのであります。国民に対して、さような侵略があつた場合に、だれもかれも進んで行く義務があるのだと申したわけではないのであります。その点は誤解のないようにお願いいたしたい、こう思うのであります。
  142. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。保安隊増強して増強して遂に戦力に至つた場合には、憲法改正するということを常に申しておりまして、この線で政府は進めたいと思います。  次に憲法改正のことでありますが、この憲法は一国の基本法制でありますからして、軽々しく改正することはできませんから、慎重に考慮いたします。
  143. 三木武吉

    三木(武)委員 憲法が非常に重要な法律で、軽々しく改正できないというようなことは、御説明をまたぬでもだれもが承知をいたしておる。その憲法あるがために、今日は、この再軍備の問題についても自衛軍創設の問題についても、この騒ぎが起つておるのであります。だから私は、この騒ぎの起らない、この議論の起らない、また政局の不安にならないように、一刻も早く改正という方面にほこ先を向けたらいいのじやないか、こう言うのです。総理は慎重に考慮しておるというが、この慎重に考慮しておるということは、あまりに幅が多過ぎるのです。慎重に考慮した結果、改正せぬでもよろしい、あるいは慎重に考慮した結果、まあまあ三年や五年はどうでもよいという結論も出し得られるのだが、私どもはそういうことでは満足できない、悲しいのであります。慎重な考慮はむろんよいが、慎重な考慮というその考慮の到着点を、憲法改正というところに置いて大急ぎでおやりになつたがよいと、こう言うのであります。吉田総理は、慎重考慮という中には、むろん三木の言うような気持があるのだ、あのじいさん気のきかないやつじや、一体わしをいじめるのかと思うかもしれないが、(笑声)私は口を争おうというのじやない、そういうことはお思いにならないように願いたい。  はつきりこの私の希望に沿うようならば、もはや黙秘権を行使されても私は満足いたしますが、そうでなくて、そんな気はないのだ、ほんとうの慎重の考慮で、まあやらにやならぬが、いつのこつたかわからぬというようならば、それをここではつきり言つていただきたい、私もあきらめようがありますから。(笑声)それから――まあ、木村君には、あまり追究してもお気の毒だからしません。
  144. 吉田茂

    吉田国務大臣 御意見として伺つておきますが、私の申すことは先ほどの説明通りであります。
  145. 三木武吉

    三木(武)委員 私はこれ以上質問をする必要は認めません。私がこれほど誠意を披瀝しておる。これほど誠意を披瀝しておる。礼を厚うして質問をいたしておる。その程度お答えでは私は満足いたしません。これ以上いくら聞いても同じことでございます。どうか吉田さんのおすきなようになさつたらよろしい。やめます。
  146. 倉石忠雄

    倉石委員長 古井喜實君。
  147. 古井喜實

    ○古井委員 私は、この今回の臨時国会の中心議題であります災害対策のための補正予算を中心として、主として大蔵大臣にお伺いをいたしたいと存じます。  まず第一の点は、いわゆる三党協定に基いた百五十七億円のあの財政措置についてであります。このいわゆる三党協定は、今回の補正予算と密接不可分の関係にあることは申すまでもありません。そこで、この補正予算のわれわれの審議にあたりまして、このいわゆる三党協定に基いた政府の措置が、どういうふうに行われるかということは、われわれにとつてまことに重要な問題であります。私どもは、あの協定に基いた百五十七億円の財政措置が、間違いなく実施に移されることを信じております。また、他の党派の方々も、これについては異論がないのみならず、この点を期待しておられると信じております。ところがこの問題について大蔵大臣は、この財政措置は復旧工事、復旧事業の進行とにらみ合せて考えるんだ、実情を調査した上で、これは措置するんだというようなことを繰返しておつしやております。また百五十七億円という金額も、これは最大限なんだということも、たびたびおつしやつております。それから一方にまた資金運用部資金の余裕は百二億しかないんだということも説明をされております。しかもこの資金運用部資金については、今後の財政需要のために保留しなければならぬ部分もあるかのようにおつしやつております。そこでこの百五十七億円というものの財政措置をここに考えます場合に、これはほんとうに実施に移してもなえるものかどうかという点について、やはり一抹の不安なきを得ないのであります。ほんとうにこれは出す気か出さぬ気か、この点が問題なんであります。  そこでまずお伺いをしたいと思いますのは、工事事業ができないならば、これはしようがありません。しかし工事事業ができるということである限りは、財政上あるいは資金上の理由によつてはこれを抑制しないんだ、こういうお考えであるに相違ないと思います。またそれ以上のことは今まで聞いておりません。つまり工事ができないなら、これはしよがない、できるのであるならば財政上質金上の理由、その点からは抑制はしないんだ、こういうお考えに相違ないと思つておりますが、この点について大蔵大臣の御見解を、お伺いしたいと思います。
  148. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 三党協定の趣旨を尊重して予算化したことは御承知通りであります。しかし残余の百五十七億円というのは、復旧事業の進行に伴いまして、実情を調査して、その必要に応じて出すので、これについては過日も申しました通り、資金運用部資金には現在それだけの余裕はございません。従つて資金運用部資金によつて弁じ得るものは弁じますけれども、しかしまた、その他たとえば公募起債等による分については、それによつてできるだけの措置をしたい、しかし百五十七億円があるから、これを全部出すということは、それは事業の実情調査の上、そういうことがきちつと間違いなく起つて来ると私は思いません。それで実情調査の上ということがあり、必要に応じということを申しておるのであつて、この三党協定の心持はよくわかつておるのであるから、これに対しては誠意をもつてやります。それでは全部出すということを約束するかと仰せになると、これはお約束ができぬということを申しておる次第であります。
  149. 古井喜實

    ○古井委員 今お伺いをしておつて、ますます疑念を持つて来たのであります。つまり事業工事が進まないから、これで金がいらないというなら、これは問題ありません。しかし事業工事が進んで必要であるというならば、財政上質金上の理由では制限をしないのかどうかということを聞いておるのであります。事業の方からいえばどんどんやりたいと言つておるのを、財政上資金上の理由の点で押えるということはしないんでしようということを、大蔵大臣に聞いておるのであります。今あなたのお話では、工事事業が進まいだろうとおつしやつておる。それなら問題ない。進んでやりたいやりたいと言つたときに、資金上都合がつかぬからこれはもう取上げないんだ、抑制するんだということをなさるのかなさらないのか、なさらないはずだということをお伺いしておるのであります。
  150. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 たとえば運用部の資金がそれだけない、ないことは最初から申し上げておるのであります。さらに公募起債等が思うにまかせない場合には、資金上もそういう措置がやむを得ぬものと考えます。要するにこの問題は誠意をもつて解決すべき問題であて、議論をつもつて解決すべき問題でないと私は考える。
  151. 古井喜實

    ○古井委員 誠意について疑念があるから伺つておるのであります。つまり資金上の点でもつて制限をなさり、抑制をなさろうというお考えがあるのではありませんか。工事ができないなら問題ありません。やりたいやりたいと今に押しかけて来るにきまつておるのであります。それをこれは資金がないのだ、こういうことで抑制するということは、一切なさらぬかどうかということをお伺いしておるのであります。
  152. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 繰返して申すようでありますが、資金上処置なき場合は方法がございません、従つて現在の運用部資金ではそういうことが許されぬ。そこで私ども貯蓄の増強等を今一生懸命でやつておりますから、それによつて今後余力を生じて来れば、できるだけ最大限を尽すというのであります。今のあなたのお話だと、全部が全部みな予算に達するまでやるようにとれますが、私どもは事業の進行の状況において、必要を調べるのでありますから、全部が全部つまりフル・アマウントに、全部の仕事が行くとは私ども考えておりません。
  153. 古井喜實

    ○古井委員 資金運用部資金の余裕が百二億しかないということは、十分承知いたしております。そこで資金運用部資金だけではなく、公募債の方もあつせんをして行くのだから、百五十七億というものも処置ができのだだというふうに御説明になつておる。はなから資金運用部資金だけのことを私は言つておるのではありません、両方あわせての問題であります。どうも奥歯に物がはさまつたようではつきりしない、今にこれは実行に移してみますれば、全国各府県各市町村から事業をやりたいやりたいといつて、持つて来るにきまつておるのであります。しかも調べてみると実行できる事業がたくさんあるのである、実行できても資金の方の面から押えなさるのかどうかということを言つておるのであります。百五十七億以上ということを言つておるのではありません、百五十七億以内でも、資金の都合上押えるのかということを言つておるのであります。
  154. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 資金についてはできるだけのことをするけれども、資金の都合のつかぬ場合はいたしかたがございません。
  155. 古井喜實

    ○古井委員 資金の都合がつかないとおつしやるのは、どういう場合でありましようか、資金運用部資金だけのことを言つておるのではないのであります。それからまた大蔵大臣も、はなから運用部資金だけのことで御説明にはなつておらぬのであります。公募公債まで考えて都合がつかぬという場合がありましようか、ないはずだと私は思つております。
  156. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 公募公債につきましても、はたしてそれだけ公募ができるかどうか、これは古井さんも知つておられるが、地方の公募公債等なかなか容易ならぬものがあるのであります。都合がつけばつくだけの最善を尽します。
  157. 古井喜實

    ○古井委員 都合をつけるように、できるだけあつせんをするんだ、こういうお考えをお持ちにならぬのかどうか。とにかく各地方とも一刻も早く、そしてできるだけ仕事をやつて、復旧をしたいということを考えておるのであります。でありますからして、運用部資金が都合がつかなければ、できる限りまで一般の金融機関の方面においても、満足させなければならぬのである、不必要なら問題ありません。必ずこれは要望が各地から起つて来るにきまつておるのであります。で私はただいまの問題については実行上のいろいろな手続、扱いによつて、これは事によると、ほごにされるのではないかという必配さえ持つのであります。一体これはどういうふうな扱いをなさるのか、実際の扱いから論じてみると、私は明らかだと思う。おそらく百五十七億というものは、府県あるいは市町村の大部分が起債になると思う。起債をしたいということを各府県、市町村から持つて来るのであります。そこに何のめどもなしに、また何の目安もなしにこれをどう扱つて行くのか、扱えるものではありません。おそらくこれは扱いとしては主として地方自治庁がまず扱うでありましよう。何のめどもなしに扱えるものではありません。めどを置かなければ、百五十七億まで、事業を調べて、できるものを取上げて行くということになるのである。それでよろしいのかどうか。それともまた別に低いめどを置いてやつて行こうというようなことをお考えになつておるのか。それとも一つの事件ごとに扱うのだと称して、結局その手続上の点でもつて、あまり実行ができないということにでも持つて行こうとお考えになつておるのか。私はやたらに金を使うことがいいということを考えているのではありません。しかしこの災害復旧の事業はやらなければならぬのである。ことしやらなければ来年やらなければならぬにきまつているのであります。こういう種類のものを、何もことしを来年に送る必要はないのである。一刻も早い方がいいのであります。できる限り早くやつた方がよろしい。その意味において一体どういうふうにやつておいでになろうとするのか。第一自治庁にどういうわくを与えられるのか。この扱いから得心が行かなければこれは怪しいものだという気がするのであります。いかがでございますか。
  158. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 私はもう少し物を怪しんで考えずに、お考えくださつた方がいいのではないかと思う。私どもはできるだけのことをいたします。これ以上申上げようがない。たとえば百五十七億の余裕金が預金部にございましたら、すぐ御返事ができますが、ないことは繰返し申上げておる通りでありますから、それでは一体地方起債がどこでどうできるか。そんなことも御返事できない。従つてこの点は疑わずに、こちらがやることについて御信頼を願うほかない。もしそれが悪かつたら、そのときに弾劾をされたらよかろう。それ以外に方法はない。あるものを出さないなら、今おつしやるようなことがありますが、ないものを出せと言つてもいたし方がない。ないものを約束しろとおつしやつてもいたし方がない。でありますから、私どもはよく実情に即してやる。また個々の事情を審査してやる。どこに幾らのものをやる、そういうことができないことを繰返して申しておるのでありますから、これは古井さんも少し事情をしんしやくしてお考えくださつたらどうか、こういうふうに思います。
  159. 古井喜實

    ○古井委員 あるものならば出すけれども、ないものは出せないという意味でありますが、一体資金運用部だけでも、百二億は余裕金があるというのであります。資金運用部から一体何ぼお出しになるか。百二億は現に余裕金があるのであります。ないのではない。あるのであります。そのうちどれだけお出しになるお考えか。また百五十七億は資金上出せるか出せぬかわからぬものを、賛成だと言い、また予算の元にして承認をされたのか。出せるか出せぬかわからない数字を一体われわれに論議させようとなさるのか。この点をひとつ伺いたいと思います。
  160. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 最初から、百五十七億は最高限度である、その範囲においてできるだけのことを個々の実情に即して調べて、それでやる、こういうことを言つているのであつて、工事の進歩状況をにらみ合せて、個々の実情を調査してということは、ちやんと書いてあります。その通りにやるのでありますから、最初から何も百五十七億ないものをなぜやつた、そういうことではありません。いわんや、なぜ予算化したか。予算化は一つもいたしておりません。これはいわゆる融資の関係でもりますので、予算とは何ら関係ございません。
  161. 古井喜實

    ○古井委員 どうもこの点が大事な点のように思いますので、少しくどくなつて悪いのでありますが、三党協定自身にしましても、財政上資金上都合がつかなければ、これは押えるかもしれぬということは書いていない。つまり事業が進行しない、事業が実行できない、こういうことであるならば、この点はしんしやくするというのである。事業が実行できる以上は、この百五十七億の限度までは財政上の処置をするというのが私は本旨だと思う。この点私は実情から見て、関係の府県、市町村から、実行のできる事業をたくさん持ち出して来ると思う。実行できる事業をとつて見れば、決して少しの額になるというものではないと私は思つております。そこでただいまの大蔵大臣のお話は、どうにも私には得心が行かない。資金の都合がつかなければ出さないかもしれぬ、こういうふうに響くのであります。この点はもともとお考えがどこか食い違つているというのか。腹にお考えになつている点があるかのように、どうも響いてならぬのでありますけれども、そうでありませんでしようか、お伺いいたしたいと思います。
  162. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 腹には何も考えておりませんが、ただ申し上げたいことは、繰返して申し上げている通りに、あなたが言われるように全部の工事が全部できて、百五十七億足りないのだということが、すぐ起つて来るとは私は考えません。のみならず、個々の実情を調査した上で、実情に応じてやるのでありますから、さようなことが一ぺんにきちんと百五十七億出て来るものとは考えておりません。ただ繰返して申しておきますけれども、私どもも工事の進捗は非常に必要だと認めております。従いまして、これは誠意をもつてやる、こういうこと以外には言いようがない。誠意をもつてやる。これをもつて御了承願う以外には、何度お尋ねがあつてもいたし方がございません。
  163. 古井喜實

    ○古井委員 事業の進行状況を調査するとおつしやつておりますけれども、一体どういうふうに調査をなさるお考えでありましようか。結局これは政府の方から出かけて調べるということができるわけのものではありません。問題は起債なんであります。でありますから、事業を計画し、そうしてこれにこれたけの財源がいるのだということで起債として持ち出して来るのであります。それを審査してこの起債の割当をきめて行くのであります。そうすると、一体そのときにどれだけの起債を全体として認めるとか、できるとかできないというめどがつかなければ、扱いがつかぬのであります。そこで起債のわくを自治庁に対して、一体どれだけお認めになるのでありますか、これを私は伺つておきたいのであります。わくを全然認めないとおつしやるなら、実行はできなくなると思う。またわくを順次与えて行こう、こういうお考えもあるかもしれません。しかしこれも私は最後には実行はできなくなると思つております。そこで工事の進行状況を具体的に調査してとおつしやるけれども、私は今のような形になるのだと思つているのであります。そういう意味において、この起債のわくをお認めにならないと実行できないと思うのであります。この点をどうお考えになりますか。ちびりちびり起債のわくを認めたところで、押され押されて結局百五十七億になる、そこまで行かなければ、関係各地方が満足しないと思うのであります。この起債のわくをどうお認めになるのでありますか、この点を伺つておきたいのであります。
  164. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 これは今の全体のあれをにらみ合せまして、今のような工事の進行行状況がどうか、その必要がどうか、こういうことを見て起債のわくを見るのでありますから、今日まだその申請が一つも出ておりませんので、起債のわくをいかにすべきかということを、今から予約することはできません。     〔発言する者あり〕
  165. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  166. 古井喜實

    ○古井委員 どうも大蔵大臣のただいまのお話は得心が行かぬのであります。この点あまりくどく申し上げておつても何ですけれども、大事な点であるので、たいへんくどくて恐縮であります。まだ申請も出ておらぬ。これは一体どれだけのわくがあるかということがきまらなければ、申請を出してもしようがないから、出さない。これは事務の扱いのできないものは、大臣は御承知ありますまいけれども、しかしこの事務の扱いによつて、この問題が実行されるかされないかということがきまると私は思うのであります。そこで、その意味において御説明をお願いしたいと思つておるのでありますが、あるいは事務の御当局の方で御説明がいただけるならば、それもけつこうであります。事柄がわかればよろしゆうございます。
  167. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 個々の調査をした上にわくがきまるわけで、まだ調査もしないのにわくがきまるわけはないので、これはお答えのしようがない。個個の調査を一つもしないのに、わくはどうだとおつしやられても、これはお答えのしようがないので、私どもが誠意がないのではない。そういうことはうそを言えということになる。
  168. 古井喜實

    ○古井委員 どうもくどくて恐縮でありますが、調査をしておらぬからわからない。調査はどういうふうにしてなさるおつもりでありますか。つまり起債されて、起債の審査ということによつて調査するほかでないのあります。つまり調査ができていないからわからないのだとおつしやるのは、私は逆だと思うのであります。どういうふうにして調査をするのか。調査をするについてわくをきめるとおつしやる、その調査はどういうふうにしてなさるのか。この点を、あるいは自治庁の長官でもどなたでもけつこうでありますから、わかるように教えていただけばけつこうであります。少しも責める意味でも何でもございません。実行してもらいたいから言うのであります。どなたからでもわかるようにひとつ……。
  169. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 私からお答えしますが、個々のものを調査いたしまして、その調査に基いて、それではいわゆる三、五、二の三までにはどれだけの工事費が足らぬかということがわかるので、それについてどの程度起債をするかという問題が起るので、私はあなたのおつしやることはちよつと、私頭が悪いのかもしれないが、最初に起債のわくをきめておかなければ、調査をやつたつてだめだということはわかりかねます。だから調査の上ということが書いてあるので、その通り調査がきまつて出て来たら、三というところが幾らある、それでは起債はどうするかということは、これは三党協定で明らかになつていると思いますが……。
  170. 倉石忠雄

    倉石委員長 古井さん、お手持ちの時間が来ましたから……。
  171. 古井喜實

    ○古井委員 自治庁長官にお伺いいたしますが、一体今大蔵大臣のお話なつたことで扱いがつきますか。それからまた実情を調査したあげく、そこでもつて起債のわくも認めるんだとおつしやるが、これではいつまでたつても間に合わぬ。起債を扱いようがない。起債のわくをきめてかからないと、そこで申請を審査するということでないと、扱いがつかぬと思うのでありますが、自治庁長官はどうお考えになりますか。私は今の大蔵大臣のお話のようなことでは、結局調査ということで時間がつぶされて、この百五十七億は死んでしまうと思う。そこが問題なんです。これは自治庁長官にお伺いしたいと思います。
  172. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 国の方は大蔵大臣及び建設大臣、農林大臣ときめてありますので、私の方は国の方針がきまり、支出の点がきまりました場合に、それに伴う地方負担増というものがきまると考えられるのでありますが、それ以上のことは……。
  173. 古井喜實

    ○古井委員 それで大体わかりました。自治庁の方は、この起債を扱うには、わくがきまつて来ないと扱えないという御趣意に伺いました。ついてはぜひひとつ早く起債のわくをきめていただかぬと、間に合わなくなると思います。大蔵大臣も、どうお考えになつておるか知りませんけれども、今おつしやつたようなお考えで行くならば私は間に合わぬようになると思う。なるべくひとつ早く進めていただいて、早く起債のわくをきめていただいて、そうしてほんとうに事業が実施できるようにしていただきたい。御答弁には十分満足できませんけれども、ぜひひとつそういうふうにしていただきたいということを申して、次の点に移りたいと思います。  そこで次に百五十七億の国庫負担分、これに見合う地方負担分の財源措置はどうなつておりましようか。自治庁長官にお伺いします。
  174. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 これは私からお答え申し上げます。これからの数字は国の方の方針がきまつて、百五十七億円支出されることになりました場合の、地方負担の増加はどういうことになるかということでありますから、そのようにお聞き願いたいと思うのでありますが、大体今私どもが計算いたしておりますのは、災害対策費は三割施行といたしますと、事業量は四百六十九億、国庫補助が三百九十三億、それに伴う地方負担額が五十八億ということになるわけであります。しかしこのうち二十六億円はすでに財源措置がついておりますので、新たに修正によつて増加する負担分は、三十一億円ということになります。そうしてこの措置はどうなるかということでありますが、これは国の方でやるということをおきめになつた場合に、その範囲内においては、必ず地方の負担増というものも一緒に考えられておる。そういうことを一緒に考えて、この範囲でやるということが国においてきまるというように私は了解し、またそうしなければならないと考えております。そのように御了承願います。
  175. 倉石忠雄

    倉石委員長 古井君、お手持ちの時間がなくなりましたが……。
  176. 古井喜實

    ○古井委員 そこでただいまの点について、国の負担分百五十七億、これに見合う地方負担分が、大見当、今のところの計算で三十一億とおつしやつた。三十一億については、これに対してやはり国の負担分同様に財源措置を講ずるというふうに、自治庁長官はおつしやつておりますが、大蔵大臣、それで間違いございませんか。
  177. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 この百五十七億というように数字が確定いたしますれば、今の実情に基いてやることは繰返し申すまでもございません。その場合の措置として、どうもそれはそれ以外に方法はなかろうと思いますが、よく自治庁とも相談した上で善処したいと思います。
  178. 古井喜實

    ○古井委員 そこで冷害対策費の今回の増額分がありますが、これに対応する地方負担分はないお見込みでありますか、どうでありますか。あるとすれば、これに対してはどうお考えになつておるか。
  179. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 これは一応あると考えられますが、ごく概算いたしました自治庁の数字では、二億ないし三億ということになつておるのでありますが、なおまだ正確には数字が出ておりません。
  180. 倉石忠雄

    倉石委員長 お手持ちの時間がなくなりましたが……。
  181. 古井喜實

    ○古井委員 それではかけ足で参ります。  次に今回の補正予算のあとに続く問題として、必ず措置しなければならぬ財政上の諸問題が残つておるわけであります。義務教育費の富裕府県に対する負担分であるとか、あるいは供米の完遂奨励金、あの食管会計に対する問題であるとかへそういうものがあるのみならず、とりわけ公務員の年末手当の問題が残つておるのであります。公務員の給与の問題については、ベース・アップの問題があることはむろんであります。また三公社五現業の従業員について、仲裁裁定の問題があることもむろんでありますが、とにもかくにも年末手当の問題について、七月に〇・二五の繰上げ支給をした穴埋めの問題は、最小限度残つておりますし、また穴埋めをしたと同じ趣意において、この年末において考えなければならぬ問題も残つておると思うのです。これは年末までの問題でありますから、どうしても年末までに措置される必要がある。これについてはどういう時期にこれを措置されるお考えでありますか、これはまた一面においては、今後の臨時国会の問題とも関連すると思いますけれども、とにかく年末までに措置をしなければならぬ。この点についてはどうお考えになつておるか、お伺いいたします。
  182. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ちよつと古井さんに、さつきの数字のうち若干移動があることを御承知つておきます。それは百五十七億という中には、直轄河川の分を含んでおりますから、今の国の直轄河川に融資することもあり得るわけです。従つて融資の額の方は、多少移動を生じて来ると思います。なお従つて御指摘になつた地方起債の額等も多少かわつて来ると思いますので、この点はお含みおきを願いたいと思つております。(「直轄河川はおかしいじやないか」と呼ぶ者あり)いや、工事の方は進行するようにいたします。  それから今お話の点につきましては、昨日もちよつと申し上げました通り、超過供出の八百円のうちの四百円が約七十二億になりますが、そういつたものとか、あるいはべース・アツプの問題等もあつて、これは今検討中でありますが、たとえば〇・五くらいのものを盛るということは、これは年内にやりたいという考えで、いわゆる第二補正予算というべきものでやりたいと思つておりますが、しかもこれは通常国会が十二月の初旬に開かれることでもありますので、その劈頭に出せば間にも合いますので、なるべくそういうふうにいたしたいと考えております。
  183. 倉石忠雄

    倉石委員長 古井さん、理事会の申合せの時間を大分過ぎておりますので、次の八百板さんにお願いいたします。
  184. 古井喜實

    ○古井委員 ちよつと今の大蔵大臣の仰せになつた点で、今の百五十七億の問題について、大蔵大臣は直轄河川の問題があるということをおつしやいました。これは国の直轄事業に対する分が百五十七億の中に含んでおるという意味でありましようか。そうだとしますならば、一体これはどういうふうにして支出されるのか。私は支出の方法がないと思う。
  185. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 直轄河川は実は五割以上進んでおります。従いましてそういう三割ということには何ら関係がないという意味で申し上げたのであります。直轄河川の進行状況は古井さんご承知通りであります。
  186. 倉石忠雄

    倉石委員長 八百板正君に発言を許します。
  187. 古井喜實

    ○古井委員 今の大蔵大臣のお話の点を、はつきりしておきたいと思います。はつきりしておかぬと話は困ると思います。どうですか、新しいことを言うのじやありませんから……。
  188. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは古井喜實君どうぞ
  189. 古井喜實

    ○古井委員 それでは恐縮でありますが、大蔵大臣のおつしやる意味は、百五十七億の中には含んでおるのではない、これとは別で、直轄河川の方は工事がずいぶん進んでおるので、いわゆる三・五・二という割合から見て、三以上進んでおるから、百五十七億とは別の問題だ、こういう意味に了解してよろしいのですか。
  190. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 直轄河川の分も含まれておるから百五十七億のうちにはゆとりがあるという意味を申し上げたのですが、あるいは事務的に説明する方が、よくおわかりが願えると思いますから、主計局長答弁させます。
  191. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 三割とか二割とか申します場合の数字は、千五百六十五億であります。その中には直轄工事は入つております。従つて百五十七億と申します場合にも、その中には直轄工事も入つておるわけであります。しかし、現在計上しております三百億の予算ないしは今までに出しました予備金で、直轄の分は本年度に五割くらい進捗が期待できる予定でございますから、直轄の分には融資をつける道もございませんし、またその必要もございません。従いまして、わくといたしましては、その中には地方負担分は優に消化できるゆとりがある、そういう意味でございます。
  192. 古井喜實

    ○古井委員 わかりました。
  193. 倉石忠雄

    倉石委員長 八百板正君。
  194. 八百板正

    ○八百板委員 大蔵大臣に、お疲れのところお気の毒に存じますが、少しお尋ねをいたしたいと存じます。時間も短かいことですから、簡潔なお尋ねをいたしますが、大蔵大臣は、農業の災害について救済すべきものであるとお考えであるかどうか、まずこの点を伺つておきます。
  195. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 国費の許す範囲において救済すべきものなりと考えております。
  196. 八百板正

    ○八百板委員 国が救済すべきものであると考えますならば、当然に国の予算をもつて救済するということが、予算の性格の上に現われて来なければならないものと思います。     〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕 まずそういう点で予算の性格を明らかにする必要があると思うのでありますが、財源から見て参りますと、今度の財源はほとんど税の自然増収にたよつております。その自然増収は一応三百億をとつておりますが、そのうちの二百億、あるいは百八十億という数字も、百七十億という数字も出ておりますが、とにかく約二百億という金は源泉所得であります。これは当然に月給袋から天引きした税金を主とするものであります。としますと、このお金の使い方は、別にひもがついておるわけではありませんが、給与の改善にまわすという筋合いの財源ではないかと思うのでありますが、この点について大蔵大臣の見解を伺います。
  197. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 救済を要することはわかりますが、さつき申した通り、国費の許す範囲ということは、国費のあんばい上から出て来るものであるということを国費の許す範囲と申し上げましたので、御了承願つておきたいと思います。  それから二番目のお話でありますが、これは今のお話通り、ひもがついておるものではない。これは全体を総合してすべて歳入となるものをあんばいする次第でありまして、その点からいろいろな資金のあんばい、歳出が生れて来るのでありますから、これは源泉所得であるから給与に向くべきものなりとは考えておりません。
  198. 八百板正

    ○八百板委員 もちろんひもがついておるものでありませんが、給与所得を主とする源泉所得の予想以上に上つた分でありますから、従つて給与の改善、べースの改訂、裁定等が問題になつておるやさきでありますから、そういうお金はそういう方面に使うのが筋だこういう考え方であります。そういう問題のありますときに、間もなく第二次補正が出されるというような情勢のもとにおいて、給与と災害を切り離したのはどういうところにあるのか。今申し上げましたような点について二つに切り離した理由は、給与の財源を源泉所得の自然増収に求めよという意見を消すような感じがいたされてならないのでありますが、この点いかようにお考えでございましようか。
  199. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 御承知のごとく、今度の補正予算はすべて災害対策費のみに限らられ、ただ奄美大島の関係で十億を加えたのみであります。
  200. 八百板正

    ○八百板委員 ほかの方の財源を見ますと、公共事業費の節約――もちろんそのほかに砂糖とか、物品税、関税の自然増収がありますが、いずれも源泉所得の自然増収と似たような性格の財源であります。別の方を見て参りますと、公共事業費の節約、食糧増産対策費の節約に財源を求めております。ここで、これは言葉にとらわれるようでありますが、政府が出しました説明書を見ますと、「公共事業費等の節約」と、こう書いてありまして、本来なれば重要費目として公共事業費、食糧増産対策費は並べて出るものでありまして、今度の場合においても、金額の点においてもいずれも並んでおるくらいの大きな金額を節約しておるにもかかわらず、わざわざ「公共事業費等」といつて食糧増産対策費という文字を説明の中で出しておらないのでありますが、こういう考え方は何かしら役人の悪い考え方で、ごまかすような印象を与えるのであります。こういう点について、たとえば住宅金融公庫のお金はちやんと住宅金融公庫と出しておいて、食糧増産の費目だけを「公共事業費等」と入れたのは、どういう気持でこんなふうにせられたのか、この点を伺つておきます。
  201. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 それは印刷整理等の都合でありまして、内容をごらんになればすぐおわかりになると思いますが、何らそこには作為を用いてどうこうということはございません。
  202. 八百板正

    ○八百板委員 作為がないものであつても、そういう重要費目を活字の上で「等」として隠したということは何かしら不明朗な感じを与えるのでありますからして、こういうような点については今後十分な注意を払つてもらいたいと存じます。  さらに使い方を財源との関連において見てみますと、あとで三党の協定でまたいくらかかわつておりますが、一応最初の政府の案を見てみますと、食糧増産費の中の土地改良費の十二億を削つて、これを冷害対策の救農事業費に入れて、九億六千五百万円、つまり食糧増産の費目から冷害対策の費目に移して、同じ土地改良の金額を減らしておる。また食糧増産費の中の開拓費は七億九千二百万円でありますが、これを削つて、今度は冷害対策費のために同じ開拓の項に六億として入れておる。こう見て参りますと、救農と言いながら、予算的、財源的に見て参りますと、片一方を削つて片一方へやつた、これだけのことになつてつて、何ら農業の危急に対して救済するという予算上の意思が現われておらないと思われるのでありますが、この点についてなおかつそういう誠意を数字の上に示したとお考えでありましようか。
  203. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 その点は繰返して申し上げましたように、本年度二十八年度の予算の通過が、七月三十一日であつて、その実施その他の関係上から多少遅れておるので、資金的に余裕を生ずるところがある。工事その他の関係から余裕を生ずる分があるので、それをさいた次第でありまして、かつ冷害地方と食糧増産対策あるいは公共事業が行われておるところとは全部地域が違うのでありまして、同じところもありますが、大体地域が違うのでありますから、従つて被害を受けた地域に厚くする意味でこれはやられたことで、その点をお考えくださればよくおわかりになると思うのであります。
  204. 八百板正

    ○八百板委員 そういう点はそういうふうに言えば言えないことはないのでありますが、私は予算の全体の性格としてこういう点を大蔵大臣にお尋ねをいたさなければならないのであります。食糧増産費が大事でなくて冷害対策費の方が大事だ、時間的にはそういうことが言えるでございましようけれども、農業の全体から見て参りますと、これはいずれも兄たりがたく弟たりがたいものであります。でありますから、こういう予算やり方を見ておりますと、何か弟がかぜを引いたので兄貴の着物をむしつて来て着せたというような感じがせられてならないのであります。また一方においては労働者の、主として勤労者の源泉所得の自然増収によけい財源を求めておいて、それに今度の救農国会の財源を依存し、新しい財源といえばほとんど勤労所得の源泉徴収の自然増収、その他のものは兄貴の分をはがして来て弟にやる、こういうふうなかつこうでは、いわゆる救農の性格に合致した予算の性格と認めることはできないのであります。右のポケツトの方から抜き取つておいて、左のポケツトの方に入れて、どうだ、もうかつたろうというふうな感じがするのであります。なるほど今のうちは左の方のポケットだけを見ておりますから気がつきませんが、二、三箇月たち、半年たちまするならばだんだんわかつて来ることでありまして、こういうふうなことをやつては救農国会は名ばかりであつて、いわゆる農民を欺くものだという結果に相なるのであります。そしてこれを救農々々と宣伝いたしますならば、これは虚偽の宣伝をするという結果になつて、非常にあとでまずい結果が大きく出て来るだろうということを私は心配するのであります。極端に申しますと、こういう予算では何か裏木戸の方から逃げて行つたどろぼうが玄関にまわつて見舞いに来たような感じがいたします。(笑声)私はそういうふうに凶作地に説明するほかないのでざごいますが、こういうふうに考えてよろしゆうございましようか。
  205. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 それはきちんと予算書をよくごらんくだされば、さように相なつておらんことがわかるのでありまして、さように御説明に相なることは、その人を誤解に、導くものだと思います。なおまた源泉所得税をどうこうということでありますが、もしそういう議論をせんじ詰めて行きますと、国の財政計画というものはすべて立ちません。国庫の歳入は歳入一体として考え、国庫の歳出となるものは国庫の歳出のあんばいよろしきを得なければならないのでありまして、さようなお考えは私どもの何としても了承いたしかねるところであります。
  206. 八百板正

    ○八百板委員 そういうことを私も期待をいたしておりますが、そういうことになりますためには、今度組みました財源が、二十九年度の上にどういうふうに現われて来るかということで、その結論が出て参るわけであります。二十八年度では食糧増産対策費を削りました。公共事業費を削り、住宅のお金を削つたわけでありますが。このお金は二十九年度の予算の上に削つた分だけを加えて計上せられるのか、それとも二十八年度と同じ割合の予算を組まれるのか、あるいはまた二十八年度において削つたこの予算を、足りなくなつたものを、実績としてそのままに二十九年度に組まれるのか、この点を明らかにしていただきたいと存じます。
  207. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 私どもは本年度において削つたものが来年当然プラスになるものとは考えておりません。目下二十九年度予算につきましては、各省からそれぞれ要求が出ておりまして、これに査定をいたしております。従いまして二十九年度の予算はその財源等の見地からいろいろこれを配分すべきでありまして、従つて今仰せになつた本年度マイナスにしたものを来年度すぐプラスにするかということに対しましては、さように相なる場合があるかもしれませんが、ただいまのところはさように相ならぬ公算大なりと申し上げるほかはありません。
  208. 八百板正

    ○八百板委員 本年の削つた分をプラスにならぬとしますならば、今年きめております、たとえば二十八年度予算上に食糖増産費と公共事業費はそれぞれ五・二%だ、一〇・五%だというふうな割合がそのまま二十九年度に現われて来るというふうに考えてよろしいか、そういうふうにお考えになつておられるかどうか、これを伺います。
  209. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 二十九年度の歳出予算の編成にあたつては、二十九年度の歳入財源等によりまして、そのときの必要とするものから、資金のあんばいをするわけでございますので何パーセントになるというようなこと等は、全体の歳入歳出面から出すのでございますから、今日まだ二十九年度予算の編成を終らぬときに御返事を申し上げかねるのであります。
  210. 八百板正

    ○八百板委員 私が心配いたしまする点は、救農国会だと言いながら、その財源を見つけるにあだつて食糧増産費を削り、公共事業費を削り、住宅のお金を削つて、その削つた分が二十九年度の実績になるといたしますと、これを削られた方の側から見ますと、救農国会をチャンスにして、農林予算が削られ、住宅公庫のお金が削られ、公共事業費が削られるということに相なるわけであります。この点について、そういうことにならないという保証がなければ、今度の救農国会予算は、財源的に農民をよくするための金の出し方であると言えないわけですが、この点をはつきり伺つておきたいのであります。
  211. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 同じ科目の金が同じ科目に使われなければ、ただちにそれがその予算から削られたとは申されません。災害その他冷害対策等に巨額の金が使われておる際でありまして、もしあなたのような論法で行けば、これはもう何ともやりようがございません。国全般の上からものを見るのであつて、本年度減つただけ来年度プラスになるということは申されません。
  212. 八百板正

    ○八百板委員 農林大臣にお尋ねいたします。今、大蔵大臣はお聞きの通りのことを言つておられるのでありますが、救農国会食糧増産費や農業関係の予算が削られて、その削られた状態が二十九年度の実績になつて行くというふうになつても、さしつかえないのですか。この点はいかがですか。
  213. 保利茂

    ○保利国務大臣 この間からの御質問でございますが、誤解を持たれてもいかがかと存じますので、むしろ数字を申し上げた方がよかろうと思います。既定経費の百六十六億の節約の中に、農林省所管として三十億近いものが入つております。その中であなたの言われる食糧増産の関係から二十億出ておるわけでありますが、当初出しました予算の中におきまして、それに見合うべき支出として三十六億ほど計上いたしております。決して左のポケツトから右のポケツトへ移したというだけではむろんないわけであります。さらに今回の修正によりまして、六十八億ほどがこの経費になるわけであります。それはそれとして、来年度はどうなるのかということですが、来年度はこれからの問題でございますから、これは大蔵大臣の申し上げた通りだと思います。
  214. 八百板正

    ○八百板委員 時間がありませんから、少し横道に入りまして、総理大臣に簡単にお尋ねいたします。総理大臣ちよつとはつきりしていただきたいのですが、まず先ほど木村長官は、侵略を企図し得る軍隊なつたときは憲法改正する、こういうふうなことについて取消すという意味の意思を言われましたが、これは武藤君がこの意見は総理大臣も同じかと念を押して尋ねましたところが、総理大臣もそうだ、とこう言つたのですから、総理大臣もこれはやはり一緒にお取消しになるというふうに考えてよろしゆうございましようか。
  215. 吉田茂

    吉田国務大臣 質問がわからないのですが……。
  216. 八百板正

    ○八百板委員 木村保安庁長官は侵略を企図し得るような軍隊なつたときは憲法改正をする、こう言つたのですが、その通り総理大臣もお考えになるか。私どもの武藤君が念を押したところが、吉田さんもその通りだとこう言われた。そこで前の方は木村さんが取消したのですが、総理大臣の方から何の意思表示もなかつた………。
  217. 吉田茂

    吉田国務大臣 侵略を企図するような軍隊をこしらえた場合には憲法改正するか、こういうのですか。侵略を企図するような軍隊をつくるということを取消したと言うのですか。
  218. 八百板正

    ○八百板委員 いや、侵略を企図するような軍隊なつたときには、憲法改正をしなければならないであろうというふうな答弁をされたので、その侵略を企図し得るような軍隊なつたときに憲法改正するということになると、それは事重大であるからといつて三木君の注意といいましようか忠告があつて、そこで木村さんの方ではそれは取消しますという意思表示があつたのです。
  219. 吉田茂

    吉田国務大臣 侵略を企図し得るような軍隊はつくらないということですよ。
  220. 八百板正

    ○八百板委員 そうではないのです。侵略を企図するような軍隊なつたときには憲法改正をする、そういうふうに述べられたのです。
  221. 吉田茂

    吉田国務大臣 いずれにしましても、侵略を企図するような軍隊はつくりません。
  222. 八百板正

    ○八百板委員 お取消しになりますね。
  223. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 保安庁長官の答弁のように取消すということでよろしゆうございましようね。
  224. 八百板正

    ○八百板委員 それはお取消しになりますね。
  225. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 ええ。
  226. 八百板正

    ○八百板委員 時間がないから総理大臣に伺いますか、東北冷害凶作を契機にして、東北後進地に特別にこれを引上げるための法律なり、処置なりをお考え願わなければならぬと思うのでありますが、この点について総理の御見解を承つておきたい。
  227. 吉田茂

    吉田国務大臣 ちよつと聞えなかつたのですが………。
  228. 八百板正

    ○八百板委員 どうもお疲れのようですが、東北の農業、産業全体がほかに比べて非常に遅れているのです。遅れたところは引上げて、ほかと同じにするために特別の考慮を払われるというお考えが、今度の冷害凶作をきつかけにしておありであるかどうか、これを伺いたい。
  229. 吉田茂

    吉田国務大臣 現在……。     〔「書いてないじやないかと。」と呼ぶ者あり〕
  230. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 静粛に願います。
  231. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは私の専門外でありますが、常識お答えします。ただいまのところそういう考えは、特にこの際は企図いたしておりません。
  232. 八百板正

    ○八百板委員 北海道には特別のお考えがとられておるのですから、東北の場合も、そういう点御考慮いただきたいと思うのです。
  233. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 かわつてお答えします。ただいまのお説は、東北地方で特別の後進地として開発するようなことを考えておるかどうかという御質問かと思います。ただいまのところ北海道は、御承知通り、北海道開発法によつてつております。それから東北地方につきましては、国土総合開発法によりまして、ただいまのところでは北上川、阿仁田沢、それから最上の地区にそれぞれ特定地域を指定しまして、開発計画は決定しておりまして、実施の段階にあります。  それから東北地方全域の振興につきましては、これは東北地方開発計画というものが、すでにその地方庁から総合計画が政府に出ておりまして、ただいま政府では検討中であります。これができますれば、御趣旨に沿うような計画になるだろうと思います。ただいまのところそれ以外につくる考えは持つておりません。
  234. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 八百板君、時間ですから結論をお願いいたします。     〔小峯委員代理退席、委員長着席〕
  235. 八百板正

    ○八百板委員 緒方さんに要求してあつたのですが、いらつしやいませんね。(「総理大臣がいるじやないか。」と呼ぶ者あり)総理ならなおけつこうでありますが、総理大臣お答えいただけますか。――情報機関のことなんですが、ちよつとお伺いしますが、その後どういうふうになつているか、内閣情報機関は、憲法改正などという問題、いろいろそういうものとの関連において憲法改正の事前運動というような意味で、広報機関というふうなお考えがだんだん出て来るようなにおいがするのでありますが、そういうような点について内閣調査室を来年度からふやす、縮めるというような考え方に立つておられるのか、あるいは直接にお役所がそういう情報機関をお持ちにならない場合に、民間の情報機関に何か特別の関係をつくつて、そういう方面で同じ趣旨のことをやつて行くというお考えがあられるかどうか、この点をちよつとお伺いします。
  236. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の代理もすこぶる怪しいのですが、詳しいことは……。概念としては情報機関が憲法改正の研究をするということはありません。それからまた情報機関ができた場合には、なるべく民間の機関を利用することになるであろうと思います。これは私の想像でございますからして、主管者たる緒方君が見えたときに御質問願いたいと思います。
  237. 八百板正

    ○八百板委員 それではあとで答弁していただけますか。
  238. 倉石忠雄

    倉石委員長 答弁をしていただくようにとりはからいます。
  239. 八百板正

    ○八百板委員 それから外務大臣ちよつと伺いたいのですが、南方に行かれましたが、何しに行かれたのですか。(笑声)ちよつと……。
  240. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 条約関係のない南方諸国と早く条約を結んで正式な友好関係に入りたい。それとよく南方の事情を調査したい、そういうことで行つたわけでございます。
  241. 八百板正

    ○八百板委員 行つた結果、幾らかよくなつた点があるのでございましようか、具体的にお願いします。
  242. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 いろいろの点でよくなつた点があると思いますが、それは相手国との関係もありますから、漸次事実になつて現われて来ると思います。そのときに御了承願いたいと思いますが、たとえば沈船引揚げ協定はその後間もなくフイリピンとの間に締結されました。またインドシナとは沈船引揚げ協定をやつている最中であります。それからインドネシアからもただいま使節団が来ていることは御承知通りであります。漸次具体化して来ると思います。
  243. 倉石忠雄

    倉石委員長 八百板君時間がありませんから……。
  244. 八百板正

    ○八百板委員 外務大臣が行かれてさつぱり役に立たなかつたということが多いのでありますが、フイリピン、インドネシア、いずれもものにならず、ビルマの場合は、何か十二月中にあちらから賠償のためにおいでになるとかいう話があつたとかいうことでございますが、これも具体的には何ということもなし、東南アジアの協力という立場に立つて、わざわざ外務大臣が行かれながら何もなかつたということでは非常に困るのであります。賠償等について相当大きい使命を持つて行かれたように伺つておるのでありますが、この点は幾らか話が進んだのでございましようか。あなたの持つて行かれた賠償の案や、フイリピン、インドネシア、ビルマ、それから相手方の言つております賠償の額なども、私のところに今資料がありますが、全然何もならないで手ぶらで帰つたように感じられるのですが、何かその点少しよくなつたところが具体的にあるのでしようか。
  245. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 賠償の額と言つて先方から申し入れて来たものは、お手元にはないはずであります。それは損害額だろうと思います。賠償額は別問題であります。いずれにしましても、非常に実際的な考え方で双方で解決に向つて進みつつありますから、ある程度効果はもちろんあつた考えております。
  246. 八百板正

    ○八百板委員 時間がなくて、あと一問ということでお話のしようもないのでありますが、今度の救農予算全体を通じまして、救農というこの国会を機会にして、救農予算ではない農村予算が減らされるような措置がなされて行く、あるいは給与の財源をつぶして、今度の給与改訂の際には、使つちやつたからないという足場にされる、あるいはまた住宅のお金を減らして、これの実施のために二十九年度の住宅対策の上にまずい結果になるというようなことになると、これはとんでもないことになりますから、そういう点でそういうことのないように十分な処置を願わなければならないのであります。これは二十九年度予算並びに第二補正に関連いたして参りますが、補正予算をいつごろお出しになるか、そのための臨時国会をお開きになるかどうか、この点もあわせて伺つておきます。
  247. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 特に農林予算等を削つた事実はございません。それから住宅の方の出資は削りましたけれども、これはしかし延ばしたのでありまして、契約その他には何ら支障はない。現実の契約の面から申しまして、金が余つておるのでそう処置をした次第でございますので、住宅の必要なることは十分よく承知しております。それからさつきお話がありました期末手当等の問題もあり、いろいろございますが、これは年間にやれば間に合うことでございますので、大体第二補正予算は十二月初旬に開かれるべき通常国会の劈頭に出せばと考えておる次第でございます。但しこれはまだ閣議でそういうふうに決定したわけではございませんので、一応私の考え方を申し上げておきます。
  248. 倉石忠雄

    倉石委員長 小平忠君。
  249. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私はおもに冷害対策につきまして、総理を初め関係大臣にお伺いいたしたいと思うのであります。  まず第一に、今回の風水害並びに冷害による被害はきわめて深刻でありまして、農林省におきましても、この実態の調査は随時行われておりますし、いろいろ新聞その他において発表されておるのでありますが、農林省が最も最近において把握されておりまする風水害並びに冷害別の被害の状況を承りたいと思うのであります。
  250. 保利茂

    ○保利国務大臣 本年の作況は、直接的に冷害の被害による米の減収を約四百万石、十三号台風による被害減収額を百九十万石くらいに推定をいたしておりますが、むろんこれは各郡、各町村の積み上げた正確なものではございません。私は冷害対策として最も重点を置かなければならぬという三分作以下の、あるいは三分作から収穫皆無地帯、こういう町村を至急とりまとめて、重点を置いた対策を講じて行きたいと思つておりますが、冷害によるそういう町村は、百五十から二百くらいに及ぶんじやないかというように考えております。
  251. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私が冒頭になぜ被害状況を承りましたかといいますと、今回の国会そのものがすなわち救農国会、あるいは救災国会と称されております関係上、これから私のお伺いいたします基礎資料になりますので、どうぞ今のようなあいまいな数字でなくて、的確なる数字をまずお聞かせいたたきたいと思うのであります。大臣お知りでなかつたならば、政府委員からでもけつこうであります。
  252. 保利茂

    ○保利国務大臣 渡部官房長から御説明を申し上げます。
  253. 渡部伍良

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。米につきましては、十月五日の中間報告によりますと五千四百四十一万石になつております。そのほかにも、雑穀等につきましても、それぞれ被害を受けているのでありますが、これらの数字は、米の収穫調査と同程度の正確度を持つておませんが、金額にしてみますと、被害金額が大体千二百九十五億円程度になつております。そのうちで、千百億程度は米でありまして、そのほかかんしよ、雑穀等が残りの金額になつております。なおこのうち病虫害を含みます冷害関係の被害は、約一千億になつておりまして、そのほかの風水害の関係が残りの金額、こういうふうに私どもの方では考えております。
  254. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいま官房長から報告いただきました数字は、去る十月五日農林省の統計調査部より出された数字と若干食い違いがあるように思うのでありますが、これはまた別途の機会に詳細に承ることにいたしまして、農林大臣にお伺いいたします。  今回の風水害並びに冷害によりまする水稲についての全被害の石数並びに金額、合計でけつこうでありますが、どういう数字を把握されておりますか。
  255. 保利茂

    ○保利国務大臣 米につきましては、ただいま申しておりますように、十月五日の中間調査によりますと、五千四百四十万石、そこで今年の相次ぎます災害により、全国農家の昨年よりも現金収入が減るであろうと目せられるものは、およそ次のように推定をいたしております。これは価格差もむろん含めてのことでございますが、米につきまして六百七十五億、麦について百七億、雑穀、いもについて百八億、合計八百九十億ほどの現金が昨年よりも――昨年は非常に豊作であつたわけですが、現金収入がそれだけ減る、こういうふうに考えております。
  256. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの数字につきましては、先般の農林省の発表の数字と若干違うのでありますが、これはどういうわけか、これもあとでけつこうでありますから……。私の伺つておりますのは、いわゆる予想収穫高の五千四百四十万石はその通りでありますが、全体を通じまして、水稲だけの被害の総石数が千二百九十二万石と聞いております。若干数字が違うようであります。その数字の問題は別といたしまして、問題は、本年は厖大なる食糧の不足を見たのでありますが、現に風水害並びに冷害によりまして減収いたしましたこの不足食糧を、政府はどのようにして補うお考えか。本年度のこの護については、いろいろな施策の万全を講じておるから、絶対に配給量を減らすようなことはないということを本会議あるいはこの委員会でもおつしやつたのでありますが、どういう方法によつてこの不足食糧を補つて行くか、配給量を確保するか、お聞かせいただきたいのであります。
  257. 保利茂

    ○保利国務大臣 五千四百四十万石というような凶作ではございますけれども、内地農家の御協力をいただきまして、最大限の内地の供出を確保するということが第一でございます。しかしこれをもつてして国民食糧を確保するというわけに参りません。しかし今年は、日本以外の米産地は比較的豊作のようでありますし、その足らざるところは外米を輸入いたし、さらにまた麦につきましても輸入計画を拡大いたしまして、何とか不安のない処置を講じて参るつもりでおります。
  258. 小平忠

    ○小平(忠)委員 食糧の不足分をまず輸入に仰ぐというのでありますが、農林大臣は大体どのような数量を輸入せんと考えているのか。さらに先般の農林省の緊急災害対策の発表を見ますると、粉食の奨励の問題も出ておりまするし、人造米の問題も出ております。輸入食糧につきましてはどれだけの数量を予定されておるのか、粉食についてはどのような構想のもとにやつて行くのか、人造米についてはいろいろ問題になつておりますが、これは国家管理でやるのか、あるいは民間にやらせるのか、民間でやらせる場合にはどういう方法でやるのか、こういう問題について承りたいと存じます。
  259. 保利茂

    ○保利国務大臣 米につきましては、内地米の確保が第一の要件にはなりますけれども、大体今米穀年度の計画は、百六十万トンを目標にいたしております。なお麦につきましては、来年の四月までに百五十万トンの小麦、六十二万トンの大麦の輸入の計画でございましたが、それを小麦を二百万トンまで、大麦を八十五万トンくらいまで輸入をいたしたい。これはむろん今後の例のMSAの問題のものを含んでいないわけですから、それが入つて参りますとすれば、それは差引いてもいいことになるわけであります。それから申し上げるまでもなく、日本食糧問題の解決というものは、結局麦食、すなわち粉食の奨励をして、そうして麦にウエートを置いた食糧政策を強く推進して行かなければ解決の道がないと私は考えております。そういう上から、この粉食奨励については特段の措置を講じたいのでございますが、お話の人造米につきましては、相当製造技術が進歩して、そういう特許もある。一般にいろいろ御意見もあります。百人が百人決してけつこうだと言われることはございませんけれども、しかし最近の相当品質の向上した人造米を召し上つておられる方は、けつこうじやないかということも、これは私ども消費者の実際から見ましてもそう思いますし、そこで本来粉食奨励の一本で行くべきであつて、そういうものは邪道だという御意見もございますが、しかし食べ物は万人それぞれ嗜好が違うわけでございますが、そういうものもけつこうだという方が相当あるわけでございますから、これはむろん需要に応ずるようにして、米以外のものでございますから奨励するようにいたしたいということで措置をいたしております。しかしそれらを国が管理するとか、あるいは統制するとかいう考えは、食べ物はできるだけ各人の自由にまかせる、選択にまかせるということしが一番正しいと思いますから、こんなものを決して統制するというような考えはちつとも持つておりません。
  260. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それは農林大臣きわめて重要な問題でありまして、人造米を民間に振りまかせるということを簡単にお考えになつておるようでありますけれども、これは現に人造米の中には、統制されております主食である米を混ぜるという点から見まして、これは軽々に処理されては重大なる問題が起きると思います。ただいまの大臣の説明の中で、米、小麦、大麦について相当輸入量を増額するわけでありますが、この増額された場合に、今度の補正予算には何ら輸入食糧の価格差補給金というものを計上してないのでありますが、この関係はどういうふうに処理されておるのでありますか。それから農林大臣にお願いしたいことは、時間が二十五分しか与えられておらないので、御答弁は要点だけ簡単にお願いします。
  261. 保利茂

    ○保利国務大臣 おそらく米の輸入補給金が計上せられていないということを仰せになつたと思いますが、これは私は、本年度内にはその必要はないと思います。
  262. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それは農林大臣は暴言だと思う。少くとも米について百六十万トンの計画を持つており、小麦についても四月まで百五十七万トンのも山のを二百万トンにする。それから大麦についても六十二万トンを八十五万トンにするのだという、このように厖大に輸入食糧をふやそうと考えておる際に、補給金を全然考えないで、国内の需給操作が円滑に行くかどうかということは、これは常識的に考えてみましても不可能であります。大臣がただいま言明されたことは、必ず次の通常国会においても大きな問題となつて取上げられるということを警告しておきたいと思います。  次に、大蔵省が提出されました今回の予算説明の中には、風水害関係の国家負担額を、問題はありましたが、一応千五百六十五億円と計上いたして、保守三党の協定によつて最終的な予算を出されたわけでありますが、冷害の際の説明にはこの詳しい基礎を説明されていないのであります。そこで大蔵大臣にお伺いいたしますが、当初政府が計上されました冷害対策の算定は、どういうものを基礎にして算定されましたかお伺いいたしたいのであります。
  263. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 一応出された冷害の被害額について調べたのでありますが、こまかい数字のことでありますから、政府委員より答弁いたします。
  264. 原純夫

    ○原政府委員 当初提出いたしました中身の七十億円の冷害対策費の内訳をお尋ねでございますから、お答え申し上げます。まず農林関係におきまして四十億、うち十億は、所管といたしましては大蔵省所管に計上いたしまして、農林漁業金融公庫の出資と……。
  265. 小平忠

    ○小平(忠)委員 発言中でありますか、答弁の趣旨が違う。そういう内容を聞いておるのじやない。算定の基礎を伺つておるのです。
  266. 原純夫

    ○原政府委員 算定の基礎といたしましては、冷害の被害を考え、それに対する対策としてどういうことをやつたらよろしいかというと、必要的に大きく出て参りますのは、土木事業をやる、しかもなるべく労賃が入るようにというような形での土木事業をやる。そういうような考え方で救農土木の関係に重きを置きまして、これに五十億というわくを考えたわけであります。その五十億を、ただいま申し上げかけましたように、農林関係と建設関係にわける、それを算定いたします場合に、補助率等から考えますと、ある意味では、補助率が低ければ地元の負担が多い、事業量は多くなる、従いまして、労賃もそれだけ多くなるわけでありますが、一方であまりに地元に負担をかけますことは、冷害で地元の財政全体がいたんでおるというようなことから、その辺微妙な関係がありますので、それらを彼此勘案いたしまして、結論におきましては、補助率を通常の場合よりも上げまして、事業の種類においてなるべく労賃が行くようにというような配慮をしていただくようなつもりで、この臨時救農施設というような、通常の際には国費からは出しませんような、若干こまかいスケールの土地改良等も行うようにいたしたわけであります。そのほかいろいろ農家に米を生産者価格で配るというようなこまかい関係のもの十億、それから厚生、労働関係で十億というものを、それらとバランスをとりまして計算いたしましたのが七十億円でございます。
  267. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいま私が伺いましたのは、その内容と違います。ただいま御説明のことは、政府から示されております説明書なり、あるいは内容を詳しく説明されておりますから、承知いたしております。私の伺つておるのはそうじやなくて、当初政府が提出いたしました七十億を一応計上いたします際に、どういう資料に基いて、どういう算定で、どういう方法で七十億というものをここに割出したか、これを伺つておる。
  268. 保利茂

    ○保利国務大臣 つぶさに冷害地の深刻な状況を見まして、深刻な打撃を受けている冷害地に対して、何らか現金収入の道を得られるよう手段を講じなければならぬ。これはむろん多いほどいいに越したことはございませんけれども、一面また財政の関係もございますものですから、一応七十億を当初に計上いたしたわけであります。
  269. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私はそういうことをお聞きしておるのではなくて、そんなことは一つ常識論というか、政府として確固たる腹がないということなんです。風水害の場合には一応被害金額――いろいろ水害緊急対策特別委員会においても、百八十億の線とか――あるいは千八百億、あるいは二千億を超過した数字が出ておりますけれども、最終は国庫負担額は千五百六十五億という数字を一応つかまえ、この負担の率を三、五、二の割合で、初年度三割出すというようなことがこの説明書に明らかになつておりますから、私はそれは了承できる。反面水害の場合には、七十億を算定したところの基礎がない。この説明を今まで聞いていない。ですからそれを伺つておる。
  270. 保利茂

    ○保利国務大臣 これはもう御説明するまでもなく、これを算定の基礎を固めて対策を講じて来るということになれば、とても今年中には間に合わない。それでも冷害地の状況は深刻だから、早くこの対策を講じなければならぬというのが、私は輿論だつたと思います。そういう上から、むろんこれはおよそのめどはございますけれども、災害水害のようなぐあいに、きちんとした基礎があつて積み上げるというわけには、これは事実上いかなかつたということは御了承願えるだろうと思います。
  271. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの大臣の説明はきわめて無定見なる、そして冷害に対する何らの確固たる根本的なお考えがなかつたということなんです。全体の国の――今回はどうしても、大蔵大臣が、一兆億を上まわらないというようなことから、一応その中味を計算した結果、どうしても七十億しか出なかつたという漠たる考えのもとに出されておるのであります。まことに遺憾であります。こういう考え方で行くなれば、おそらく全国の深刻なる冷害地における被害農民を救うということは不可能でありましよう、  私は引続きお伺いいたしますが、しからば当初予算にいわゆる農業保険金不足補填額百三十億を計上いたしておりますが、この百三十億の基礎を承りたいと思います。
  272. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 当初いまだ実は水稲の被害の査定等が出ておりませんので、一応百六十億くらいを要するものと見て、それで百三十億を一般会計から繰入れ、さらは基金である二十五億円、今度の立法措置で積立金を五億円とりくずした、こういうことで百六十億円を農業保険の支払いに振り向ける、こういうことにした次第であります。またこの政府の方針が出ていないことは、今度の水稲の被害が査定されませんので、はつきりしませんが、しかし取急ぐ事情があるので、大体早くお渡しするという考え方でそういうふうに措置いたしておる次第であります。
  273. 倉石忠雄

    倉石委員長 小平君、持ちの時間です。どうぞ……。
  274. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいま大蔵大臣が、漠たる百二十億計上の基礎をおつしやいましたが、まことに漠たるものでありまして、漠たるものであるからして、三党協定によつて百三十億から――冷害対策費の七十億では少いから、百十五億にする。その際に、この農業保険金不足補填金に充当いたしておりました百三十億からこれを四十五億削つた。四十五億削つて、その金額を八十五億にして一体支障があるのかないかというのであります。私は少くとももし修正がない場合、百三十億を出すという場合においては、これは絶対必要であるという確信のもとに予算編成をされておると思うのです。それをこの予算を提出されて三日の後に、保守三党の話合いによつてこれを減額するということは、まことにこの百三十億というものについては、確固たる基礎がないということを私はあえて追究しなければならぬ。同時にこの減額いたしましたそのうち三十億は、冷害の災害対策予備費に充当いたしております。残りの十五億を農林漁業金融公庫の特別出資金として特別会計に繰入れておる。しからばこの三十億は予備費であります。予備費というものはきわめて弾力性がありまして、新聞紙上にも、さらにここにも私は持つておりますが、この三十億の内訳について、三党が申合せをいたしておりますが、この申合せは、大蔵大臣はすでに了承されておられるのでありますか、そうでないのでありますか。  時間がありませんから、まとめて私はお伺いしたいことを申し上げたいと思います。この点を明確に大蔵大臣並びに農林大臣から承つておきたいと思います。  さらに今回の補正予算の編成にあたりまして、水害地緊急対策特別委員会においてもしかり、農林委員会においてもしかり、まつたく与党たる自由党の議員諸公も同一の感慨を持つたことは、本年の既定経費の削減の中で、公共事業費と食糧増産費五十九億を削減したことが問題となつております。少くとも長い間、公共事業費とか食糧増産費は吉田内閣の一枚看板であつた。特に本年度の場合には、流産によつてこの成立が遅れ、特に東北、北海道の地方においては、雪が降つて工事ができなくなるという現状から、相当ピツチを上げて工事しておるか、その工事を現にやつておるものを削減するという暴挙に出ている。一体こういうことを吉田内閣がやることについては、私はまつたく遺憾にたえません。同時に保守三党の間において、今回の開会当日に提出されました予算を、三日目には内容を修正して参つた。保守三党の間においてこの内容を修正するという際に、まずこの既定経費の削減の中に含まれておる公共事業費、食糧増産費は、一応これを撤回するだろうということを私は期待しておりました。ところが遺憾ながらこの削減には何ら触れていない。もしこの金額をこのまま通すならば、全国の災害農民、全国の土地改良、開拓あるいは公共事業の予算を増額いたしまして、生産力を高めるために日夜懸命の努力をしている国民が、ほんとうに憂えるでありましよう。
  275. 倉石忠雄

    倉石委員長 小平君、簡潔に願います。
  276. 小平忠

    ○小平(忠)委員 これをどういう理由によつて削減されたのか、お伺いをいたしたい。私ただいまの問題について、事きわめて重大でありますから、この減額について総理大臣の御意見を承りたいのであります。と申しますのは、この削減の閣議の際、北海道開発庁長官でありますところの戸塚建設大臣は、建設省関係の予算が、特に災害の場合、これを存置しなければならない治山治水関係の予算も減らされたということから、非常にこう奮してこの閣議に出席しなかつた。私はその意気込みのほどはまつたく了承できますが、その結果においてはどうか。治山治水関係や北海道の総合開発というのは、吉田内閣ほんとうに肝入りの問題であろうと思う。私があえてこの問題をこの席上で申し上げるのは、私は現在右派社会党の党籍を持つておりますが、かつて農民協同党時代に、この北海道開発局の現地の設置について、私は自由党、与党の提案したこの問題に賛成した。それは北海道開発は国策としてやるのだ、北海道の未開発資源を開発することが、わが国の自立経済の確立、わが国の国民生活の安定に寄与するのだという、あの大上段に振りかぶつた猛烈な自由党の考え方に同調して、この議案に賛成した。ところがこの今回の五十九億の削減の中で、北海道の土地改良、開拓、その他公共事業費九億三千万円という厖大なる金額を削減して、一体北海道の開発ができるのですか。建設関係の予算が削られる率が非常に多かつたから、建設大臣は憤激して席をけつて出なかつたという気持はわかるけれども、私はそれでは大臣の職は勤まらぬと思う。私がやはり昨年からいろいろ問題にいたしておることは、総理大臣にいつも言つていることでありますが、北海道の開発が国策としてせられるならば、専任大臣を置く考えはないかということを承つておく。私はこの点につきましても総理大臣のお考えを率直に承つておきたいと思う。  最後に一点、最近の新聞で発表されました……。
  277. 倉石忠雄

    倉石委員長 小平君、お持ちの時間が大分過ぎましたから、簡潔に願います。
  278. 小平忠

    ○小平(忠)委員 最近の新聞紙上に、再びまた、バターの輸入を計画されておるようであります。政府が酪農振興の見地でいろいろ施策を立てられ、予算にも計上して懸命の努力をされておる折から、特にこの輸入バターについては、ポンド地域から相当量の輸入をされるということを聞いております。このことはただちに、国内におけるところの乳価、あるいはバター、チーズ等の乳製品が一大打撃をこうむることは必然でありまして、その結果、有畜農家が無畜農家に転向するという事態を惹起する危険性があります。この問題について、農林大臣、通産大臣がどのような考えでおられるか。この問題はすでに決定されたのか、あるいはまだ未決定であるのか、この点について伺つておきたいと思います。時間をオーバーしたことで、与党の諸君からいろいろおしかりを受けましたけれどもも、初めてこの機会に、わずか五分や十分の時間が超過したことは御了承願いたい。
  279. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。北海道開拓のことは、政府として最も重要に考えている政策一つであります。現在の建設大臣は、かつて北海道長官として北海道の事情に精通しておられる人でもあり、また開拓の多くは建設省の所管であります。それで現在の建設大臣を兼任せしめておることが適当と考えるのであります。今日のところは、そのために別に専任大臣をつくる考えは持つておりません。
  280. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 最初の農業災害保険の関係百三十億が減つたというお話でありますが、この点につきましては、すでに申しました通り、百六十億はいるものと見ておりますので、従つてこれは別に融資その他の方法を講じて、支払いには何ら支障を来すことはない所存であります。さらに冷害対策費をそこから四十五億持つて来て、それがどうなるかということにつきましては、過日来この席上ですでに詳しく申し上げましたから、申し上げません。ただ予備費五億円の使途については、自作農資金、農薬補助等の関係もありますので、この点については今後十分検討するという考えでおります。その他の点は、すでに御発表申し上げておりますから、ここに繰返して申し上げたくないのであります。なお公共事業費、あるいは食糧増産対策費等が今度の災害、冷害対策費等の計上のために若干減じられたことは、まことに遺憾でありますけれども、全体として、また予算のでき上つた時期等もお考えくだされば、まずこの程度は忍んでいただきたいと考えるのであります。
  281. 保利茂

    ○保利国務大臣 粉食の普及をはかつて参りますためには、どうしても酪農が相伴つて行かなければなりません。従つて酪農の振興は粉食の普及と両輪のごとく考えて行かなければならぬ。従つて日本の酪農を圧迫するような政策は断じてとれないと思いますが、今日のような粉食を急速に普及しなければならぬという場合には、ある程度の外地バターを輸入する必要もあろうかと存じます。それらは十分勘案してやつて行きたいと考えます。
  282. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。ただいま農林大臣が申し上げました通りに、粉食を奨励するためにはバターも必要でございますので、できるだけ国内でやつて行きますけれども、一方食糧事情によりまして不足を生ずるような場合には、外国からも入れなければならぬと思いますが、まだ入れるか入れぬかどんな程度入れるかということはきめておりません。
  283. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 お答え申し上げます。北海道の公共事業費について節減が非常に多いというお話でありました。これは内容を詳しくお調べいただければわかると思いますが、ごく少々ではありますが、他の公共事業費よりは節約の率は少くなつておることを御了承いただけると存じます。  なお私が閣議に欠席したことをいろいろお話がありましたが、これはほんとうに病気で休んだのであります。
  284. 倉石忠雄

    倉石委員長 この際先ほどの八百板正君の質疑に対して、緒方国務大臣よ、り発言を求められております。これを許します。緒方国務大臣。
  285. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 八百板君の御質問の際に中座しておりまして失礼いたしましたが、いわゆる情報機関の構想につきましては、解散前の国会で同じ八百板委員から御質問がありましたときに申し上げた構想をそのまま少しもかえておりません。予算が月割になりましたことと、仕事の性質上民間の人間を集める、その人間を集めることがなかなかむずかしくて、それで遅れております。これは憲法改正の準備というようなこととは全然関係がございません。
  286. 倉石忠雄

    倉石委員長 森幸太郎君。
  287. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 非常に時間が少く与えられておりますので、要領だけをかいつまんで先に申し上げたいと存じます。主として農林大臣、厚生大臣に御意見を承りたいのでありますが、閣僚全部おそろいくださるので、内閣全体の皆様方がひとつ耳を傾けていただきたいのであります。本年はわが国にとりまして、非常な損害をこうむり、九州から北海道までほとんど被害のない府県のないような水害、風害、冷害を多くこうむりまして、まことに遺憾千万なことであります。この善後処置は一日も早くつけなければならないというので、われわれは早く臨時国会の召集を願つたのでありまするが、とにかく今回この臨時国会が開かれまして、一日も早くこの善後処置を講じて、国民が要望いたしておることに沿うことのできますことは、おそきといえどもまずわれわれはての意を受けたことと存ずるのであります。このことにつきまして、私は九州川の一半、東海、北陸、関東、東北地方の被害状態をつぶさに見たのであります。いずれも、水害にいたしましても風害にいたしましても、また冷害にいたしましても、実に言語に絶するさんたんたる状態でありました。ことに私は東北の冷害について、かくも惨状を呈しておるかということは見て驚いたのであります。保利農林大臣も親しく被害地を調査されまして、政府を信頼して政府にまかせろ、できるだけの処置を早くとるから安心しろという慰めの言葉を残してお帰りになつておりました。実に福島県のごときは相馬郡大舘村でありますが、一村に一粒の米もありません。まことにさんたんたる冷害でありました。この冷害のよつて来るところは人為のいかんともすることはできませんけれども、この冷害に対処するところの手段はいろいろ残されておると私は思います。今後農林当局がこの方面について指導されることを必要と存じますが、この正月をどうして越そうか、明日からの日何を食おうかというまことに零細な農家があるのであります。ことに山村でありまして、私の痛感いたしましたことは、東北地方は五箇月が雪の下にあるのであります。この五箇月の雪が解けると、道が泥土に化してしまいまして、思うように働くことができません。私は農林大臣がこの東北、ことに冷害地帯に対してどういう救済の手を差延べんとせられておるか、それがまず第一に農林大臣に伺いたい点であります。農林委員会におきましては、三割収穫以下の被害村に対してはそれぞれの救農土木事業を与えるということもおつしやつたようであります。今日救農土木ということはまことに彼らを救う一つの道ではありますが、どういう方法でこれをおやりになるか、すでにこの十一月の末に雪が参ります。もうあちらでの救農土木と申しますれば、客土よりほかにないのであります。客土はそれによつてやられますが、それよりほかに道がない。まことにさんたんたる地方に行きますと、牛も売らなければならぬという状態、ことに収穫いたしましたわらは家畜に食べさせられぬのであります。わら細工もできぬ。こういう悲惨な状態を私見て参つたのでありますが、一日も早くこういう被害者には現金を渡さなければならぬ。食糧を救援いたしましても、その食糧を買うところの金がない。今農家はちようど農業協同組合によりまして肥料を買いまして、そうして今年は非常に農薬を使つております。この農薬と肥料代は農業協同組合の手形となつて決済されておるのであります。救農土木なりあるいは救援金として金が交付される場合、農業協同組合を経由せられる場合において、農業協同組合に債務を負う組合員はここに差引せられ、相殺されるところのおそれがあるのであります。それでます農林省といたしましては、この農業協同組合が再建整備の途上にあつて資金は少いのであります。少いこの農業協同組合が農家に債権を持つておる。この手形の決済を何とか便法をもつてこれを延期し、そうして救農土木費その他の救援の金を農家に直接交付するような方法考えなければ農家は助からぬ。こう私は思うのでありますが、農林大臣はこの点についてどういう施策をお考えになつておるか、まずこれを承りたいのであります。
  288. 保利茂

    ○保利国務大臣 今回の激甚なる冷害地帯に対しまする印象と申しますか感じは、まつたく私も森さんと同じ考えを持つております。まず第一には、何としても先ほど御指摘の、たとえば相馬郡大舘村のごとき、こういうところにはまず来年じやなしにことしこれから何を立てるかということは非常な不安であり、切実な要求である。私は帰りましてさつそく事務当局を督励しまして、収穫皆無地帯に近いそういう地帯には、できるだけ急速に、もう即刻麦でも小麦粉でも、あるものをとにかく緊急に手配するということで、これは着々そういう手配をして、今後におきましてはそういう地帯に対して、とにかく来年の新米ができますまでの間食糧の手当をして、代金の延納をして行くという措置をとつて、まず食べることに対しての不安をなからしめるということが第一である。  第二は、お話のようにこれはどうしても何らかの現金収入の手段を講じなければならぬ。これば今回の冷害対策の中心をなすわけでございます。もとよりお話のように村々でそれじやどういうことをやるんだ、今度私は農林省なら農林省で計画を立て、あるいは村を離れて県なら県で計画を立てたものに乗らないように、村自身がひとつ着実に効果的な計画を立てでいただいて、それを実施していただくようにいたしたい。それを急速に計画を立てるようにすでに各県にも手配をいたしておるのであります。そういう措置を講じ、さらにまたいわゆる農業手形の問題、これも先日も申し上げますように、農業共済を少くも冷害地帯では年内には本格的な支払いを済ましたい。それで一つ農業手形はそれを済ませまして、同時に少くも十五万円までの営農資金を長期かつ低利の融資をいたしたいということで、また法律案もお願いいたしておるようなわけであります。さしあたりそういう考えを持つてやろうと思つております。
  289. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 この災害救援につきましては、各地区いろいろの事情がありまするから、その地方の事情に即した救護の手を下さなければならぬと思うのでありまするが、農林当局は一生懸命にやつてくれておられることをわれわれは感謝いたします。そこで私の農林大臣にお聞きいたしたいことは、十月五日現在の収穫予想を五千四百十万石と御発表になりました。私はこれは実に勇敢なる御発表と考えておるのでありまするが、総理はただちに農林大臣に向つて国民一般に食糧の不安をなからしめよ、その施策をとれという指示をされたように聞いておりますが、国民生産者だけではありません。消費者一般が五千四百四十万石という発表を聞いたときにはどうしようかという不安があるのであります。御承知通り三千六百万戸の農家が自家保有をいたしますと三千六百万石いります。そうするとあと残りの分が配給にまわるわけであります。今麦の輸入あるいは米の輸入、粉食の奨励等をお考えになつておるようにお話になりましたが、この粉食ということについて、このごろ盛んに粉食が進んで参りましたらバターが上つて来たのであります。これは今小平君から北海道のバターを援護する意味においてあまり輸入するなというお話がありましたが、何もバターを濠州から輸入する必要はない。くじらの油が余つて滞貨しておるのであります。それでマーガリン・バターをつくればよい。なぜ政府はこの人造バターの生産に目をおつけにならないのか、私は厚生大臣にあわせてお伺いするのでありますが、このことあるを予想したわけではありませんけれども、十五国会予算委員室において私はこのことを閣僚の皆様に申し上げた。今日人が生れぬ生れぬと申しましても、この間の統計を見ますと、日本では十六秒に一人ずつ生れるそうであります。十六秒に一人ずつ生れる人間をどうして養つて行くかということは人口と食糧の問題です。これを今から考えなければ、日本は貿易を盛んにして金持ちになれない。まづもつて人口と食糧問題を解決しなければならない。こういうことを私は常に申し上げておる。十五国会におきましても皆さんに私はこれを申し上げました。ということは、この粉食をやるということについてバターの必要が当然起つて来ますが、今政府のお考えになつておることは、日本人が粒食に執着しておるということによつて人造米というものをお取上げになつておる。事実か、事実でないかは知らないが、新聞で三千七百五十万円を松浦という特許者に年々渡すのだ、こういうことが新聞に発表されております。なぜこういうばかなことをする。この粒食に執着するという国民生活の習慣が日本を貧乏にしてしまうのであります。国民の体位を下げてしまうのであります。それでありますから、私はこういう飢饉を、災いを転じて福となす意味において、食糧はこういうふうにきゆうくつだ、それであるから粉食にかわらなければ日本の将来は行けない、その粉食によつて栄養失調になつてはならない、栄養不足になつてはならないから食生活はこういうふうに改善して行くのだ、こういうふうに指導していただければよいのではないか。厚生省においてもいろいろ栄養食について研究されておりますけれどももつもつと徹底して、そうして国民に食生活についての安心を与え、そうして国民の体位を向上する意味において今回こういう飢饉にあいまして不仕合せにあつたことによつて、これを機会として粒食の執着を離れて、そうして粉食、パン食に移るべきではないかと私は思います。三千七百五十万円もやる金がありましたら、そのものでバターの製造を奨励したらどうでありましようか。この人造米というものを捨てておいたらどうなります。普通の米よりは高い。高いものであつてもものずきに食おうとしたら食わしたらよい。それで企業が成り立とうと成り立つまいと向うのことだ。政府は三千七百五十万円という補給金のようなものを渡して、それを食糧として考えさせるようなことは、まつたく指導を誤つておるのではないかと私は思う。この点について私は農林大臣の食糧事情、あるいは厚生大臣の食生活についての御意見をこの機会に承つておきたい。
  290. 保利茂

    ○保利国務大臣 私は御所論には全部同感でございます。ただ人造米につきましては粉食普及奨励の方をほつたらかして、人造米の方に手をやつておるわけでは決してありません。もともと何とか外米を幾らかでも防ぐ方法はないものかということからいたしますと、まあ外米に執着を持つくらいなら、人造米が年々消費者の嗜好にあるいは受けていないというならばこれは別でございますけれども、今日の人造米というものは相当人すきずきでございますから、これはそれの一助として取上げて行くのに決して不適当なものではない。むろん本筋はどこまでもお話のように粉食と申しますか、パン等の粉食の普及が第一義であるということはよく承知いたしております。その方に力を入れて参りますことは申し上げるまでもありません。
  291. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 お答えを申し上げますが、人口問題については前国会の当委員会においてもお答えいたしたような次第であります。従つて厚生省としては、食糧の対策――量の対策とともに、栄養の見地から仰せのような政策をとつてつておるのであります。従つて国会におきましても、畜場法を制定いたしまして、たとえば現在米倉偏重になつておりますのを動物性蛋白質とか、あるいはビタミンとか、あるいは無機質の摂取に努力をいたす、あるいはまた乳製品の方にも、御承知通り人造バター等についても農林省と連絡をとつてその増産に資しておるのであります。お説は大体われわれも同感でありますから、その方針に従つて今後進んで参りたいと考えております。
  292. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 農林大臣も反対でもないようです。厚生大臣も非常に御協力くださるようでありますが、三千七百五十万円という金を何のためにやるのですか。あれはうそです。三千七百五十万円というものを松浦とかいう特許者に渡すということでございますが、農林省の食糧関係にその金があつたらなぜ人造バターの生産におまわしにならないか。この人造米については政府がいも澱粉の始末に困るからいも澱粉とくず米、それから麦の粉とこの三つをまぜるというのでありますが、いも澱粉は戦争当時からりつぱなうどんになつておる。そうしてこのくず米を渡すというところに、どうもそこにトリツクがありはしないかといううわさがある。それでありまするから、この人造米というようなものについては何だかんだとか、だれが関係しているとかいう問題が起つて来る。三千七百五十万円の金をやるようなこんなばかげたことはやめて、とにかく今日の国民の粉食に対する執着を離さなければならぬ。これを私は強調したいのであります。そうしてわれわれは米を食わないでも、うどんやパンでもよいのです。そうして栄養失調にならないように、栄養不足にならないように、厚生省が指導して行く、これはきのう三宅委員からもお話になりましたが、学校給食を徹底させて、子供のときから食生活においてわれわれは何を食べなければならぬのか、食べるにはどういうものを食べたらよいかという、こういう食に対する考え方を教える。ただ量のみ考えて質を考えないような昔の食生活を根本的に改めなければならぬことは今始まつたことではない。それであるから私はおととしから、先の国会からこれを主張しておるのでありますが、こういう飢餓があつたことを幸いに、こういうふうに農林省も厚生省も内閣全体が指導していただきたいことを私は非常に熱望するものであります。
  293. 保利茂

    ○保利国務大臣 ただいま申し上げました通りでございます。ただ一点三千七百五十万円に細工があるのじやないかということ。もしあればこれはたいへんであると思います。さような事実がございましたならば私は必ず究明いたしますから、お気づきがございましたらぜひお知らせをいただきたいと思います。
  294. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 最後に農林大臣に伺つておきますが、五千万円で特許を買取るという話がありましたが、それが二千五百万円、そうしてそこに千二百五十万円というものは今年の年度で渡すというように新聞に載つておりますが、けれども新聞の記事はあなた方責任を持たぬというのでありますからこれは信用いたしませんけれども、一応記事に載つた以上は国民はさように考える。そうして三千七百五十万円をやつてまでなぜこんなばかげた人造米をこしらえなければならぬのか。そんなことならくじらの油が余つているのですから、これで人造バターをつくつた方がいい。この新聞の記事に対し責任を持たぬというなら、もしこれがうそだつたらなぜ取消さないのか。そうしなければ国民は非常に心配しておりますよ。それがこの内閣責任であると私は思います。
  295. 保利茂

    ○保利国務大臣 三千七百五十万円は、お話のようにあれは一年間で五千万円とか言つているようでございますが、私はあえて金額の大小は少しも申しておりませんが、要するに来年三月までの年度中の特許権の借上げが二千五百万円、それにあるいは御承知かと存じますが、何か実施権とか何とかいうようなややこしいものになつているようですが、実施権の賠償が千二百五十万円でございますから、そういうことに話をいたしております。これは何かあるならば、ほんとうにそういうことに何かまつわつているものがあるとするならば、これは私は断じて捨て置かないつもりでございます。
  296. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 最後に一点農林大臣に要望をし、私の、質問を終ります。もしそれが全然ないならばあの新聞の記事について農林大臣は訂正しなければならない。(「そんなこと必要ないよ」と呼ぶ者あり)、何が必要がないか、失礼なことを言うな。君は仲間か。     〔発言する者多し〕
  297. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  298. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 三千七百五十万というものを農林省が出したという、その記事がもし違うならば取消さなければならない。取消しなさい。そうして何も特許を農林省が借り上げる必要はありません。ほつておいたらいい。自由企業にしておけばいい。何も人造米のことを総理大臣が言うたからといつて、あなた方のりみたいなものを食べてもしようがない。それは特許者の自由にまかせたらいい、松浦なら松浦に。それを何も農林省がおせわになつて、粉食を食わせないという法はない。これは、もしそういうことは全然ないというならば、新聞で明らかに農林大臣は知らないということをはつきりさせないと、国民は非常に心配しております。九州に行つてごらんなさい。東北に行つてごらんなさい。人造米々々々とたいへんなものです。うどんのごまかしまでできておりますよ。これは食生活の重大な問題でありますから、これをあずかつている農林大臣は慎重の上にも慎重な態度でやつていただきませんとえらい問題が起ると思います。とにかく食生活の不安をみなに感じさせないような善政をやつていただきたいことをお願いして、私の質問を終ります。
  299. 倉石忠雄

    倉石委員長 古井委員の質疑に関連いたしまして櫻内義雄君から発言を求められております。これを許します。
  300. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 古井委員の質疑の際において、風水害対策費の融資の分につきまして、いろいろ大臣の御答弁の点から誤解を生じているようでございますので、この際明らかにしたおきたいと思うのであります。三党の協定の線は残余すなわち百五十七億円は復旧事業の進行に伴い、その必要に応じ実情調査の上資金運用部資金またはその他の方法たとえば市中融資のあつせん等により、極力支障なからしめるという趣旨であつたと存じますが、それに相違はございませんでしようか。
  301. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 この点は櫻内委員の仰せの通りでございます。
  302. 倉石忠雄

    倉石委員長 これにて補正予算両案に対する質疑は終了いたしました。  この際日本社会党両派の共同提案として八百板正君外十四名より昭和二十八年度般会計予算補正(第1号)の編成替を求めるの動議が提出されておりますので、その趣旨弁明を求めます。上林與市郎君。
  303. 上林與市郎

    ○上林委員 私は日本社会党両派を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和二十八年度一般会計予算補正政府原案に対し、政府はただちにこれを撤回し、わが社会党両派の共同組替案の方針とその内容に即しましてこれを組みかえ、すみやかに再提出すべきであるとの動議を提出し、以下簡明にその趣旨を弁明せんとするものであります。われわれは第十六回国会中における未解決な諸案件並びにその後における現下の山積せる幾多重要なる諸問題を解決するためには、どうしても早期臨時国会の開催の必要を痛感いたしまして、それぞれ成規の手続をふんで、今日までしばしば政府に開催を要求して来たのでありますが、政府はこれまでMSA援助あるいは李ライン等の政治問題化をおそれたのでありましようか、あるいは現下の中小企業に対する、また労働問題等に対する成案とこれを処理する政治的能力を持ち合せないためであろうか、われわれの全国民を代表する要求には耳をかさなかつたのであります。しかしわが国経済と、国民生活に重大な危機をもたらしつつある今次大水害、風水害、さらに冷害、病虫害などの異常な災害と凶作という緊迫せる現実に直面し、もはやこれ以上ほおかむりを許さない段階に追い込まれて、今回短期臨時国会を召集し、そうしてその対策と予算的措置を国会に諮つたのであります。しかしながら当初における予算補正政府原案に比較して、やや努力の片鱗が見られるかのごとき自由党両派及び改進党の妥協に成る補正修正案によりましても、よく今日の事態を処理し、国民的要望にこたえるものとしては、はるかに遠いものがあると言つて、決して過言でないと存じます。端的に言えば、遺憾なくその無為無策を暴露したというにすぎません。われわれは今六月及び七月における大水害並びに八月及び九月における風水害のために、筆舌に尽しがたい甚大なる被害等に苦しむ罹災民の保護と、罹災地の復興を急ぐとともに、さらに風水害、冷害、病虫害など異常な凶作に見舞われ、破綻のどん底に突き落された農業と農民生活を守るために、一日も早くこれが諸対策を樹立して、そしてすみやかに財政的、金融的措置を講じなければならないことは言をまたないところであります。  そこでわれわれは、今回補正予算の編成がえを要求するにあたりまして、その基本方針を、まず第一に罹災地を復興し、罹災民、凶作農民の切なる要望にこたえるために、何よりも先んじて災害対策に重点を置きましたことは当然であると思います。しかし緊急当面せる災害対策を中心にしておるけれども、今日崩壊寸前にある中小企業対策を放置することは許されないと思います。そこで危機に瀕する中小企業を救済し、その育成をはかるため、金融対策に重点を置いた中小企業金融公庫並びに国民金融公庫に対する資金の大幅増額を行うことを、第二の方針といたした次第であります。さらに年末に際し、般労働者の生活の安定の措置として、公務員の期末手当箇月分、また公共企業体に対しては、仲裁裁定の完全実施に必要なる経費を計上することは、絶対に必要であろうかと存じます。  このようにわれわれ社党両派は、今回の国会をして真の救農国会たらしめるために、最近数次にわたる風水害及び冷害に対し、十分なる対策費を計上、災害予算についてはその緊急性にかんがみ、早期成立を期するとともに、それだけの問題にとどめず、中小企業対策、労働対策等あわせて予算編成の三本の柱とし、これに重点を置き、迫り来る深刻なる不況を克服せんとするところに、予算編成がえの基本方針を置いた次第であります。  しかしながら、かくのごとき国民生活の安定のために、はたまた平和経済を基盤とする経済自立と、緊急当面の食糧問題を含めた災害対策を中心とする中小企業及び労働、これら三施策は、決して現自由党内閣考えておるがごとき安易な財政経済政策と、重大なる予算編成上の信念をば一日にして修正豹変して、国民国会に対してでんとして恥じない大蔵大臣のもとにおいて、とうていなし得ざるところであると存じます。そこでわが社会党両派は、以上申し述べました基本方針に基いて、本年度予算補正の組みかえを政府に強く要求し、これが動議を提出した次第であります。  さて組みかえ案の歳入、歳出の全般にわたる詳細なる具体的内容については、すでにお手元に議案として配付してありますので、これをごらん願うこととして、特に重要と認むる数点について、簡単に説明申し上げたいと存じます。  第一の点は、予算規模の増大とインフレーシヨン要因の問題についてであります。わが社会党両派の共同組みかえ案では、食糧問題を含めた災害対策を中心とする中小企業対策、労働対策、これら三対策に緊急必要なる支出として、総額二千百六十八億を計上いたしておるのであります。従つて会計年度全体を通ずる予算規模は多少の膨脹を見て、一兆四百億程度に達することになります。今日予想される政府予算規模一兆二、三百億円から、多少膨脹を見ることになつております。政府予算補正にあたつて、第一次補正と第二次補正との二つの分割方式をとり、今国会には、第一次補正のみを提出しただけでありますので、今のところ第二次補正の全貌を明らかにすることはできないのであります。従いまして、政府の第一次、第二次補正を通ずる補正予算と、全体としての予算総額はつまびらかにできませんが、政府予算規模の増大はインフレ要因になるからといつて、その点を極度に警戒し、また強く主張しておるのであります。われわれもまた、その限りにおいては了解されるのでありますが、しかしながら、現実の予算を分析する場合に、一例を申し上げますならば、今年度末使用だけでも千二百億円に上る厖大なる防衛関係費、すなわち非生産的費用をかかえていることは言うまでもないのでありまして、このような非生産的厖大な防衛関係費をかかえて、これからの解放なしにインフレ懸念を云云することは、私は当らないと思うのであります。われわれは予算規模の増大によつて懸念されるインフレ要因を阻止し、しこうして災害対策を中心とする中小企業、労働諸施策を裏づけるに足る必要額を予算的に措置するためには、極力不要不急なる既定経費を節約するとともに、この際断固として、厖大なる非生産的防衛関係費を削減して、一方においては、徹底せるインフレ阻止対策とし、他方においては、これを財源として緊急必要なる経費を予算化することによつて国民生活安定に抜本的施策を講ずることにいたしたのでございます。  そこで、歳入における具体的問題としては、公務員給与改善期末手当増によるはね返り百十億円を含めて、租税の自然増収四百十億円、物件費、旅費の一割削減の半箇年分を含めて既定経費の節約二百億円、その他専売益金、雑収入増収合せまして百五十億円を見込んでおります。政府が前年度より繰越明許費として今使つている防衛関係費については、未使用と今年度予算に盛られた未使用分を合計いたしますると、平和回復善後処理費七十億円、保安庁費六百十五億円、防衛支出金未使用分削減二百三十九億円、安全保障諸費未使用分削減三百四十九億円、連合国財産補償費未使用分削減七十二億円となつております。但し、その中の保安庁経費については、社会党左右両派とも、保安隊を認めざる立場において四百四十億円を削減し、百七十五億円はこれを残置し、この残額の百七十五億円の使途につきましては、わが党は保安隊解散に伴う善後処理費として右派社会党は、旧警察予備隊程度の経費として、これを留保することに相なつたのであります。住宅公庫出資減のとりやめ、さらに特定道路節減による繰入減、その他前年度剰余金等についての説明は、この際省略いたします。そのほかまた日銀の倉庫にある接収解除のダイヤモンド、貴金属が千三百億円、事実もつと多いとも言われておりますが、千三百億円、その中の一部が財源として考えられるし、また短期証券の売却分が若干計上されるのでありますが、財源の正確を期しまして、これらは一切計上しないでまかなうことにいたしました。従つて以上計上いたしました財源は、十分に捻出し得るものばかりであり、しかもまた政府の第二次補正を合計いたしますれば、一兆二、三百億円程度になると思われますので、全体として貧弱な政府予算と同程度になるものと予想されるのであります。  最後に歳出について若干申し上げますが、特に配慮を加えました特徴的な事項は、第一に、今国会の主要なる目的の一つでもある災害対策費並びに冷害対策費についてであります。第二は、食糧問題を解決するための措置についてであります。第三は給与改善であり、第四は中小企業対策及び前国会の特例法を認めない立場からの義務教育費国庫負担増の問題、最後は政府関係機関の特別会計の問題でございます。しかしこれらにつきましては、他の機会に同僚議員の討論もあると存じますので、特に二、三の点について触れたいと思います。  第一の災害対策費は、損害総額千八百億円の三割として五百四十億円、緊急支出分として六十億円を加えまして六百億円、冷害対策費百三十億円、その他等々でございまするが、この際省略いたしたいと思います。  食糧問題解決のためには、農民に対しては米価一万二千円の確保、消費者価格は現行十キロ六百八十円のすえ置きで、すなわち二重価格制の実現を期そうといたしておるのでございます。  第三の中小企業対策その他につきましては、基本方針を説明するにあたりまして申し上げましたので、この際省略いたしたいと存じます。  給与問題といたしましては、人事院勧告による給与改訂は八月より実施ということになつておりますので、これは仲裁裁定という厳とした法律の規定を実施するため、公社はいずれも八月より実施とされておりますので、これに足並をそろえることが法律上も当然であるという趣旨のもとに、八月分といたしましこれは当然のことであると思います。  なお公労関係八公社の給与改善についてはすでにに法律に基く仲裁裁定か下つておるのでございます。この際この完全実施をなすべきは政府の当然の義務であります。わが社会党両派の組みかえ案では、この点に関し国鉄、全逓(郵政)の二公社については一般会計より、それぞれ国鉄は二十億円、電通は二十五億円の繰入貸付を行い、なお国鉄と電電通の災害復旧のための建設公債を二百億円認め、至急預金部資金その他によつてめんどうを見ることを提案いたしましたが、他の仲裁裁定の下つた公社関係につきましても、それぞれの公社でみずから予算上資金上財源の捻出が可能でありますから、早速それらの政府関係機関及び各特別会計についても、それぞれ予算措置を講ずることにいたしたのでございます。  期末手当、地域給、寒冷地手当の是正資金、この問題につきましても、基本方針を説明つする際に説明を加えておりますので省略をいたしたいと存じます。  以上、私は政府原案すなわち実質的には自由党両派及び改進党三派の妥協によつて修正せられた今次の予算補正修正案に対し、日本社会党両派が組みがえ動議を提出いたしました重要なる諸点について御説明を申し上げたのでありますが、当面緊急の課題としては、あくまで本年六月及び七月における大水害、並びに同年八月及び九月における風水害のために、大いなる被害を受けた罹災民の生活の保護対策、今次冷害のために不況下に苦しむ農民の生活の保護を重点とし予算を編成いたしたのでございます。われわれは今次の大風水害凶作に苦しむ罹災民、農民の現実に目をおおうことなく、勇気をもつてよく現実を直視しこれが生活の保護と罹災地域の復興に対する諸対策の実現を裏づけるに足る予算的措置を講じ、一面においては罹災農民と凶作農民の切実なる要望にこたえるとともに、他面において、これを足がかりとして、平和経済を基礎とする経済自立の達成と、わが国の真の独立の完成をはからなければならないと存じます。このような立場から、ここに予算組みかえの動議を提出した次第であります。本補正修正案編成に協力いたしました自由党両派並びに改進党は、この際その無方針、無性格なる態度を改めて、虚心担懐にわれわれの示した方針に協力し、すみやかに原案を撤回し、その内容を根本的に組みかえ、再提出することに協力せられんことを強く要求いたしまして、趣旨弁明を終りたいと存じます。
  304. 倉石忠雄

    倉石委員長 これにて一般会計補正予算に対する編成がえを求めるの動議の趣旨説明は終了いたしました。  これより昭和二十八年度一般会計予算補正(第1号)に対する編成がえを求めるの動議及び政府原案の補正予算両案を一括して討論に付します。西村直己君。     〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕
  305. 西村直己

    西村(直)委員 ただいま議題となつております補正予算案に対しまし自由党を代表して、政府の原案に賛成、両派社会党提案の共同組みかえ案につきましては、反対をいたします。  災害地の窮状に思いをいたしますれば、災害対策にできるだけ費用を出すということは、だれも異存のないところでありますが、他面この経費をインフレを引き起さない範囲で、どうまかなつて行くかというところに、苦労があつたと思うのでございます。またこの国会を通じても、これが重要な課題になつているのは御存じの通りであります。政府におきましては、災害対策のみを中心とする補正予算を今回出され、特に諸般の事情から三党協定の線に沿つて、原案を提出せられたのであります。われわれはこの災害復旧の面から考えますれば、必ずしもこの予算だけをもつて十分とは考えておりませんが、他面今次災害の特異性にかんがみられまして、各種特別措置法の適用や、復旧工事の年度割三、五、二の基準をとつて、いたずらに工事の遅滞とか、重要箇所の復旧の阻害がないように、不足分に対しては進んで融資等の考慮を払つておられる点を考えまするときには、わが国の財政、国力等の現状から見ましてこれは一応妥当だと考えられるのであります。また財源のとり方にあたりましても、税の自然増収、既定経費の節約等によりまして前年度剰余金の使用等新たなインフレ要因とるものを避けておられるのは、健全財政の基本だけはくずさないようにということの御苦心だと存ずるのであります。ただこの際特に私どもが一言申し上げたいのは、次の二次補正や来年度予算の編成にあたりまして、今回異常の措置としておとりになりました融資や利子補給等の形体によります復旧策はすみやかに常道に復帰することを望むのであります。今日内外の事情が非常に多事多端でありまして、わが国が独立独歩の地歩を占めるにあたつて、その苦しみが財政や経済の面にも著しく出て来ておるのでありますが、政府におかれましては、この事態を大胆率直に国民にも披瀝されまして、強力な輿論の背景のもとに、強固な決意で支出資金の適正、効率あるところの使用をはかられるとともに、今後の予算編成に際しましても、経費の重点的な配分と申しますか、いわゆる健全財政の確立と再生産の基盤を確立することに御尽力願うべきではないかと痛感するのであります。  最後に両派社会党組みかえ案であります。これはわれわれが今回の国会を特に災害地の人たちの緊急な要望にかんがみまして、災害対策の予算審議に限定いたしておるのであります。組みかえ案にいろいろな経費が盛られておる点につきましては、問題を後日に譲りたいと思うのであります。特にこの組みかえ案につきまして批評を端的に申し上げますと、財源のところでもつて、社会党におかれましては、恒例によりまして防衛費の財源を持つて来て、そして歳出に充てようというお考えでありますが、私どもは良識を持つて考えますれば、今日の内外の事情から、かかる防衛費を全面的に削限するというような考え方はとうてい同調はできないのであります。いわんやこの組みかえ案を拝見しますと、一つ奇妙なる点は、右派社会党は保安庁費を四百四十億削減して、残り百七十五億をもつて旧警察予備隊程度の維持に充てるのだとおつしやる、それから左派社会党の方は、保安隊解散の跡始末に充てるのだ、両社がばらばらであります。私はこの共同組みかえ案は、精神分裂によるところの共同組みかえ案であるという意味で断固として反対を申し上げます。  以上が私の討論でございます。
  306. 倉石忠雄

    倉石委員長 櫻内義雄君。
  307. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 私は改進党を代表いたしまして、ただいま議題となつております補正予算諸案に対し、政府案に賛成、両派社会党の組みかえ要求に対して反対の意を表明するものであります。  今回の補正予算案は六、七月の西日本一帯の豪雨より九月下旬の十三号台風による全国的被害と、東北、北海道を中心とする冷害の救済に対処するものでありまして、一日もすみやかに本予算案が成立し、実行に移されることが、甚大なる被害にあえぐ罹災地の方々に報いる道と考えるのであります。本案の審議に際する論議を通じまして、二、三主要なる点についてわが党の態度を明白にいたしておきたいと存じます。  その第一点は、水害地の被害額の決定と融資の点についてでございます。風水害対策費の国の負担となるべき総額の基準は千五百六十五億円でありますが、これは十月五日現在の大蔵省の机上査定によるものでありまして、建設省、農林省その他の関係各省との間に意見の相違があるのでございます。従つてすみやかに各省間の意見の統一をなし、紛議の起らざることを要望するとともに、査定にあたつて厳に過ぎ、事業の遂行をはばむがごときことのないことを警告をするものであります。今回の融資は百五十七億円でありますが、千五百六十五億円に対する三割の四百六十九億円に対して、補正計上分は風水害対策費といたしまして三百億円と、冷害関係費中災害充当の十二億円でありまして、その差額を融資に仰ぐわけでありますが、われわれの主張の第一は、でき得る限り補正増額をすべきであるということでありましたが、しかるに政府は、補正予算総額五百十億円にとらわれて、本年度予算の既定経費中には一般公共事業費、官庁営繕費、各省雑件費等幾多削減でき得るものがあるにもかかわらず、その熱意を欠いたのでございます。その結果資金運用部資金より融資することとなりましたが、必要額百五十七億円に見合うものは、現在の計画では繰越額百二億円よりないのでありまして、運用計画を変更いたしましても全額の支弁は不可能であります。政府もこの事実を認め、不足額は市中融資によると言われておるのであります。この場合、政府の言明せられている年度末までに利子補給、あるいは免除の措置を講ぜられるということはきわめて重要であります。次国会中には、利子補給あるいは免除の立法と予算措置を講ぜられ、罹災各府県の復旧事業遂行に支障なきようせらるべきであります。  第二点は、冷害対策費の増額についてであります。当初の方針を変更して、農業共済基金より四十五億円を冷害対策費にまわして増額をいたしたのでありますが、農林漁業金融公庫出資金二十五億円中の伐採調整資金は三億円とし、予備費の三十億円は、小規模土地改良費七億円増、開拓費四億円増、温水ため池に一億円増、臨時救農施設に八億円増、なお保温折衷苗しろ五億円とし、残額五億円は自作農資金及び農薬代に割当てることをこの機会に確認をいたしたいのであります。  第三点は、補正予算をめぐるインフレ論議であります。大蔵大臣がインフレをおそれて、これが対策に万全を尽すのは当然ではありますが、政府の補正予算に対する態度はきわめてあいまいであつて、これがためにインフレ論議をかもしていることは遺憾千万であります。今回の予算を通じて考えるべきことは、災害復旧と救済を迅速に行うことは当然でありますが、同時に災害の結果食糧不足を招来して、諸物価の騰貴を見つつあることが問題であります。食糧増産をいかにするかを考うべきであります。時期的に見て、早期の麦の増産対策の樹立が必要であつたのであり、さらには明年の稲の作付のでき得るように対処しなければならないのであります。このことがインフレ対策の重点でなくてはならない。しかるに政府は、麦の増産について格別の施策を講ぜず、補正予算においては食糧増産対策費の二十億三千万円を削除する、あるいは税の自然増にたよつて、行政費や不急不要事業の既定経費の削減に対する努力に欠け、政府みずからが電力料、消費者米価、鉄道運賃の値上げを企図するようなことで、インフレ論を起しつつあるのであります。大蔵大臣は、インフレ対策として国際収支の悪化を指摘し、財政金融両方面からインフレを警戒し、産業の合理化、コストの引下げによる貿易振興等を強調いたすのでありますが、このようなインフレ防止の一般的な方針は了承するのでありますが、わが国経済界の実情をもう一歩踏み込んで把握してもらいたいのであります。その最も大切なることは、国民の過半を占める農民は不況にあえいでいるということです。概算で申し上げまして、今年は米が一千万石も減収をいたしますならば、農家へ落ちる金は豊凶加算を考えましても八百億円の減少を来すのであります。しかもそれは米だけで、他の農作物の減収を加えますならば、一層深刻であります。一方食糧不足をカバーするために大幅な米の輸入計画をし、当初の考えより七十万トン増加しよう、六百六十二万石をさらに入れようというのであります。国際収支を悪化するとともに、国民のふところより四百六十二億円の金を外為会計へ吸い上げることになるのでありまして、これらのことが原因となつて内需の頭打ちを招来し、あるいは世界景気の後退による輸出の不振や、国内の生産過剰や合理化の進展による雇用の減少等を考えてもらわなければならない。現に起りつつある繊維商社の倒産、不渡り手形の増加や、金融引締めによる下請工場たる中小企業者の金融難、不健全金融機関の破綻等から、農民や中小企業者や勤労者が不況にあえぐ実情の把握が、政府にはないのではないかと疑問を持つのであります。今般の補正予算から、かりにインフレ要因が起り得るとするならば、官僚行政の弊害たる事務的な総花主義がその責めの一端を負うべきであります。災害復旧費を出し渋つたり、食糧増産対策が手遅れになつた場合、せつかくの資金が有効に使えない、事実が中途半端になる、作付に間に合わないということが起つて、貴重なる国費が生産のために生きて来ないのであります。さらには官僚行政の欠陥は、全国から多数の陳情者が上京して、それによる時間をむだにし、費用の浪費をなくし、地方行政の事務渋滞は目に余るものがあつて、これらのことから考えまして、案外インフレは政府の足元から起りつつあることを指摘するものであります。  最後に両派社会党の組みかえ要求につきましては、その財源を防衛費の削減に主として求めております。これは私どもの立場から本質的に違うのでございまして、反対の意を表明するものでございます。  政権担当すでに五年余に及ぶ吉田内閣は、現下の困難なる国情に対して、国民の負託にこたえる創意に乏しきは憂慮にたえませんが、全国の羅災民の窮状にこたえるために、本補正予算案が一日もすみやかに成立し、諸施策の遂行されることを期待いたしまして、政府案に賛成、組みかえ要求に反対して、討論を終了いたします。(拍手)
  308. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 青野武一君。
  309. 青野武一

    ○青野委員 私は日本社会党を代表して、昭和二十八年度一般会計予算補正  (第1号)すなわち政府原案に反対、社会党両派の提出による編成がえを求める動議に賛成するものであります。  討論に先だつて私が遺憾に思いますのは、特別国会が八月十日に八十六日ぶりに終つて、その間数箇用間たつており、各政党から臨時国会召集の要求があつたにもかかからず、今日まで荏苒日を送つて、そうして最後に冷害、災害だけの臨時国会を開くということは、今櫻内氏も言つておりましたように、この予算を一日も早く通さなければならないからという御意見がありましたが、すでに特別国会のさ中に五月の下旬、六月の初旬、それから七月、九月と豪雨災害、風水害、その他の災害が相続いて起つておりますることは明瞭な事実であります。それが善後処理あるいは風水害に対する専建復興、被災者に対する保護救済の道を講じたいというので、熱意を持つてこれを実行しようといたしまするならば、何も好んでこんなに長く臨時国会を開かず荏苒日を送る必要はなかつたのであります。風水害による災害は、今申し上げました通り、引続いて起つております。従つて私はこの点に関して、この国会でどの程度予算的措置をとるかということについて、政府の提出されました原案に対して熟読をいたしましたが、遺憾ながら反対せざるを得ません。  私どもが組みかえ案を出しましたのは、歳入に十三項目、歳出の面で二十項目であります。そのうち特に歳出の第一項でございまする災害対策費は、政府原案は三百億であり、われわれの方で出しておりまする災害対策費は、倍の六百億円になつております。損害の総額は一千八百億と一応政府は決定したということは、昨日大蔵大臣が言つております。正確な数字は一千七百九十九億円であるということを繰返し申されております。私どもはこれに対して、この一千八百億の三割に相当する五百四十億円、緊急支出金として六十億、合計六百億円を計上しておるのでありますが、引続き開かれた予算委員会で、各委員からの質問に大蔵大臣はたびたび答弁しておられますが、二千六百二十億という報告の被害総額が出て参りましたのを、政府は一応一千七百九十九億と決定しておきながら、最後になつて公共事業関係で一千五百六十九億ということを決定いたしました。その差額は二百三十四億円になるのであります。私どもが懸念いたしますことは、大蔵大臣が何度委員の質問に御答弁なさいましても、資金運用部資金の中からの百五十七億、これは最高額であるということをたびたび申されております。これを融資し足らざるところを補填するということを申しておりますが、これは私どもはいまだに疑問を持ち、これが実施には危惧の念を持つております。私どもはこの点について、九州の被害地にあります私の市だけでも二十二億の損害を受けておりますが、全部の損害額を政府に支弁してくれとは言つておりません。少くとも救農国会と銘打つて――明日で終ります、二、三日は延期になるかもわかりませんが、救農国会と銘を打つた以上は、このような姑息なことでなしに、気の毒な被災者の徹底的な保護と救済、それから破壊せられた公共事業に対しては、予算を限定せずに、少くとも保安隊やあるいは防衛支出金等を大幅に削除して、めつたにない、九州にあつては六十一年ぶりの水害といわれている。関門トンネルは瞬時にして水びたしになり、門司のごときは山崩れにあつて非常な災害を受けておるこの六十一年ぶりの災害に対しては、相当大幅に、政府は熱意を持つてこれが復旧再建のために予算的措置をとるのが当然であります。ことに犬養さんがおられるかどうか知りませんが、東京の大震災のときには、二百円か、三百円、あるいは五百円郵便局に貯金しておつたと思う者は、各人郵便局に行つてつてよろしい、当時の犬養大臣はそういう宣言をされた。めつたにない大きな災害に対しては、予算がない予算がないの一点ばりでは、被害を受けて生活に苦しんでおる被害者の諸君は納得をしないと私は考えます。冷害対策費にいたしましても、政府は百十五億、私どもの両派社会党組みかえの内容におつきましてはこれを百三十億、十五億の増に見積つております。こういう点に関しましても、財源はつくれば相当私はできるのではないかという確信を持つております。  この点につきまして最後に申し上げたいと思いますが、私どもがただいま申し上げましたように、歳入で十三、歳出で二十項目を並べておりますのは、何もこれは架空の予算ではありません。私どもは信念をもちましてこの組みかえ案というものをつくつたのでございますが、その中で特に強調しておきたいと思いますのは、昨日の本院に仲裁裁定が提出をされました。この仲裁裁定に対するところの予算政府の原案には救農国会で冷害、災害だけの予算でございまするから、ないのがあるいは当然かもしれませんが、私どもの組みかえ案の中には四十五億円を見積つております。念のためにここで数字を申し上げておきますが、仲裁裁定が下つておりますのは、三公社、五現業であります。国鉄が、今度裁定がくだりましたのが一万五千三百七十円、現行給与ベースが一万三千四百円でございますから、ベース・アツプになつた数字は一千九百七十円である。電通、これが裁定が一万五千円、現行が一万四千円で、千円のベース・アツプ、全専売は一万四千八百五十円、現行ベースが一万三千百円で、千七百五十円の値上げになります。その他全逓、印刷、アルコール、林野あるいは造幣等に関しても、それぞれ初めて今度、仲裁裁定が出たのでございますが、このうち私どもの組みかえは、国鉄二十億、電通二十五億、合計四十五億を予算化し、ほかに国鉄、電通の災害復旧のためにはそれに適当なる公債を認めるという方針をとつておるのでございますが、そういうものは政府原案には何もございません。私たちは、この仲裁裁定についても、聞くところによれば保守派の諸君は反対の態度をとられるやに聞いております。あるいは会期が延長になりましてもこれが継続審議に持ち込まれる危険がございます。公労法の第三十五条には、最後的に仲裁委員会が裁定を下した場合は、当事者双方がこれに服従することを規定しておりますが、吉田内閣のときに公共企業体労働関係法というものが制定をせられたのであります。いつの場合でも政府与党の諸君はそれを無視して、公労法律十六条による資金上予算上支出不可能なりという条文をたてにして、完全にこれを実施したことはございません。国鉄についてすでに三回の仲裁裁定が下りましたが、その一部分であります。私どもは今回これについても、地方公務員の諸君や国家公務員の諸君のベース・アツプに対して各党の諸君に同情と理解があるならば、この仲裁裁定は公労法の精神によつて尊重して、余すところわずかな会期ではございますが、衆議院でこれを決定することが当であるということを主張してやまないのでございます。  その次に私はここに労働大臣が出ておられますから一言申し上げておきますが、これは質問のときに申し上げようと思いましたが、こういうことが争議の陰に行われておるということを申し上げて適切なる処置をとつてもらうために、一言私は討論の中に加えておきたいと思います。福岡県の八幡市で三菱系統の旭硝子の二千八百名の工員が、去る九月十日から十月二十五日まで四十六日間の争議をいたしました。争議の内容は、一年間は八十三人の諸君が自然退職をいたしました。それを半分でも補充してくれという要求をいたしましたが、会社側は一日に苛性ソーダを三百七十トンつくつておるのをこれから五百トンつくれ、一箇に四万五千箱のガラスを生産しておりましたのを、今度から一箇月八万箱つくれ、ほとんど倍近いものを要求されて、おとなしい組合はこれを聞いたのでございますが、八十三人の一年間の自然退職者を、わずかに四十七名程度認めぬあるいは認めろと対立いたしまして、四十六日間というものの争議が続いたものであります。そのときに会社側の要請によつて市役所の諸君や食糧協同組合の諸君が第二組合をつくつた。労働組合の諸君がみずからの生活防衛のために血の出るような闘争をしておるときに、千名近くの第二組合、裏切者を組織して、それに向つて十数日の間緊急米という形式をとつて百九十七俵の米を流し込んだのであります。第二組合の諸君の中には暴力団も数百人おれば、職員もおる、加配米の前渡しとは断じて私どもは認めません。  上野駅や浅草の駅あたりに行きますと、きのうの新聞では三十俵取上げた、七十俵押えたという記事が出て農林省なんかはやみ米に対しては厳重な取締りをしておるが、天下の三菱の工場が、争議を裏切るためにつくつた第二組合に、十数日間百九十七俵の理由のつかない米を収得してこれに食わしたという事実、検察庁や警察がこの会社とぐるになつて四十二名の不当検束をして今問題になつております。こういうことが行われておりまする半面に、ベース・アツプの問題は終始一貫政府はこれに冷淡なる態度をとつておることは、私どもは不可解にたえないのでございます。人事院の勧告に対しましても、一千百八十三億を私どもは計上しております。現行賃金あるいは勧告ベースに決定いたしました金額を八月より実施することを私どもの組みかえ案の中にきめております。期末手当が一箇月半で、金額が百五五億、政府原案は八十八億でございます。私どもはそれに伴つて国家公務員の七五億、地方公務員や教職員の諸君の八十億、これを加えて御承知通り百五十五億になるのでございます。  私は与えられております討論時間が短いのでございまし最後に一言申し上げておきたいと思いますのは、この予算委員会で非常に火花の散る論戦を通じて問題になりましたのは、MSAの問題でございます。私ども保安隊を認めざる立場において、保安庁費を四百四十億円削る、これを冷害、災害の復旧費あるいは被災者の保護救済費にまわすということを決定しておるのでございますが、問題になつたMSA援助というもの、保守派の一部の諸君、政府の諸君が言つておりますように、こういうものを条件つきでもらつてはたして日本国民に何の利益をもたらすのか。朝鮮休戦によつて日本の軍需資本家が行き詰まつておるのに多少の役に立つことはありましても、全国民的には百害あつて一利ございません。保安隊増強は、今吉田総理の個人的特使である池田特使が、懐中の奥深く十八万の保安隊増強の案を持つて、きのうかロンドンに飛んだそうでございますが、なかなか話がうまくまとまらなかつたそうでございます。十一万で七百十八億円の初めの予算と比較いたしますならば、十八万になれば少くとも保安隊の経費は一年間一千二百億円程度になります。私は原爆、水爆、そういうものが投下される場合のことを考えると、一部の特需によつてもうけておつた諸君が、朝鮮休戦によつて大きな打撃を受けた、それを一億ドルMSAの援助をアメリカからもらつたとしても、邦貨に換算してわずかに三百六十億円、一億五千万ドルもらつて五百四十億円、二億ドルもらつても七百二十億円にすぎません。そういうものをもらうことによつて保安隊増強あるいは戦車、大砲、飛行機等いろいろな防衛兵器を持つて、そうして一年間国民が三千億円以上の負担にはたして耐え得るか。池田・ロバートンンの会談の共同声明を読んでみましても、これは個人的な使いであるということは認めることができません。私ども保安隊増強はすなわち再軍備に通じると思います。再軍備すなわち外国の特定の雇い兵になる。国民生活の不安と困窮、国土の荒廃、民族の壊滅ということに思いをいたしまするならば、今度の政府原案はすべて特定の外国の隷属的な予算がここに現われたものだと思いますので、われわれは日本の平和と独立と国民生活の安定のために今の憲法を守りつつ、吉田政府の再軍備政策と対抗してこの予算案に断固として反対をするものであります。  最後に私は先ほど同僚議員の質問に吉田総理が御答弁をしておりました最後に、戦力のない軍隊――これはみな笑つておりましたが、戦力のない軍隊とは一体どんなものであるか、木村保安長官は、ひよつとすると、この軍隊が充実しあるいは自衛隊が充実して行けば、あるいは外国侵略を企てる場合もありますといつたような重大な発言をいたしましたが、吉田総理言つておりまするような戦力のない軍隊などというものは、翼のない飛行機であり、腰の抜けた相撲取りであり、両手のない野球選手みたいなものである。それでは何のためにこれだけ莫大な軍事費をとるか。この軍事費がインフレの原因になる。災害費が少額に削られておるのは、防衛分担金であるとか、保安庁の経費であるとか、外国人の財産の補償費であるとかいつたような、不生産的なばかげた金をたくさん出しておるからだ。それがインフレの原因になるのであります。おそらく百億や二百億この政府原案より余分に予算を組まれても断じてインフレにはなりません。こういう点に立つて社会党はあくまでも国民生活の安定と祖国日本の独立と平和のために、アメリカの隷属的立場に立つて提出いたしました三党協定を骨子にするこの政府原案に対しては、絶対に反対であります。  私どもの主張いたしております両派社会党の組みかえ動議による組みかえ案に全面的に賛成の意を表しまして、私の討論を終る次第であります。 (拍手)
  310. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 加藤鐐造君。
  311. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐)委員 私は日本社会党を代表して、政府提出の二十八年度一般会計補正予算案に反対し、左右両社会党協同提案になる編成がえを求める動議に賛成の意を表するものであります。  今上程されておる補正予算案は、例のごとく改進党と自由党とのやみ取引によつてでき上つた政府原案に対する修正案であります。改進党は、外に対しては常に健全野党を呼号して来たのでありますが、真に野党としての誇りを持つならば、この委員会において堂堂と論議を闘わせ、修正案を提出すべきであります。改進党がやみ取引に終始したことは今や完全与党と化したものといわなければなりません。(拍手)  政府は本臨時国会に当然提出しなければならない予算として、災害、冷害対策費のほかに、人事院勧告による官公庁の公務員のベース・アツプ、仲裁裁定の実施の問題があります。人事院の勧告を尊重し、ただちに予算的措置を講じなければならないことは法律に規定されたところであります。政府の義務であります。しかるにこれを来年度に延ばそうとする政府は、民主主義の原理である遵法精神を欠くものといわなければなりません。しかも物価は昨年十一月に比べて現在食糧、繊維等において一五%、消費財において平均一三%騰貴しておるのであります。国民生活の安定を考えるならば、当然労働者給与の引上げを行わなければなりません。また前古来未曽有の災害にあつて、多数の罹災者は非常な苦境に陥つておるのであります。この重大な社会問題を緩和し、国土の保全をはかることは刻下の急務であります。政府は財源がないという理由で、五百億円そこそこの予算しか出そうとしておらないのでありますが、この際できるだけ不急の経費を節減して、災害対策費に充てるべきであります。風水害総額は関係各省の報告を総合すると二千七百億円を越えております。大蔵省の査定は、これを極度に圧縮して千八百億円と決定したのでありますが、これを認めて、本年度内の復旧を最小限度三割としても、なお五百六十億円は当然必要であります。冷害対策としては、まず農家の損失補償と、はなはだしい収入減に対して営農資金の供給が必要であります。われわれが組みかえ案に要求しておるごとく、三百億円程度予算的措置と、五百億円以上の特別融資は絶対に必要であるといわなければなりません。政府は財閥や大企業に対して一千七百億円を越える財政投資をして、利子補給までしておきながら、三千二百万の農民の大災厄に対してわずか百億円の金を惜しむのは、片手落ちもはなはだしいといわなければなりません。しかも一方において五十九億円の公共事業費、食糧増産対策費を削減いたしておりますが、これは災害対策費を削つたも同様であります。まつた国民を欺瞞するものといわなければなりません。  さらに、この際復旧、救助対策と併行して考えなければならぬ問題は食糧需給対策であります。農林省の発表によれば、前年度に比較して米作は一千二百万石の減産でありますから、供出確保量は一千八百万石が精一ぱいであります。これに見合う需給計画の一環として農林大臣は百六十万トンの外米輸入計画を発表しておりますが、貧乏人は麦を食えといつて不評を買つた吉田内閣としては、米の配給量ば滅らさないということで大いに腕を見せようというのでありましようが、米の輸入は昨年度百万トンが精一ぱいであつたと思います。これは世界の米の貿易量の四分の一に当つております。これから見ましても、百六十万トンの輸入はまず不可能であるといわなければなりません。かりに輸入が可能であつたといたしましても、補給金はたいへんな額となります。しかも過去において黄変米、病変米に悩まされた国民は、外米には懲りごりしておりますから、あまり歓迎しておらないのであります。国民は今年度の米の供給量の減少はすでに観念して、粉食に切りかえる意欲を持ちつつあるのでありますから、政府が粉食に必要なベター、牛乳等の確保について格段の考慮を払うならば、国民は喜んである程度粉食に切りかえることができるのであります。粉をわざわざ加工して栄養価値の少い人造米を奨励するがごときは、愚の骨頂といわなければなりません。外米は現在トン当り二百十三ドルでありますが、小麦は九十ドルであります。従つてその差額は一億二千三百万ドルとなるのであります。この金で牛乳、バターその他の蛋白質の食糧確保施策を講じても、相当の効果が上るわけであります。政府は未曽有凶作に当面して、思い切つた革命的施策を立てて、国民の協力によつて将来の食糧自給目的達成へのチヤンスを、この際握るべきであると考えるのであります。  さらにまたこの際防衛関係費の削減によつて、災いを転じて福とするような大経綸、いわゆる災害防除対策を行うべきであると存じます。政府はMSAの援助を受けることに汲々として、防衛力増強を災害対策よりも重視しておりまするが、かくのごとき大災害は毎年来るものではありません。しかしこの際、抜本的災害防除対策を講じなければ、近くさらにまたこれ以上の災害が襲い来るでありましよう。私はもちろん無防備、無抵抗主義を主張するものではありません。わが国の防衛は、われわれ日本人が第一に責任を負うべきものと考えるものでありますが、しかしほとんど国をあげて大災害に見舞われておりまするときに、防衛力強化に狂奔して何の利益がありましようか。国民生活の安定が自衛の第一条件であることは、何人といえども否定し得ないでありましよう。日米安全保障条約に日本自衛力の漸増を約束しておるのであるから、防衛費の削減は、国際信義に反すると岡崎外務大臣言つておりますが、安保条約における自衛力の漸増は、義務づけではありませんから、国がいかなる事態に直面してもやらなければならないものとは考えられないのであります。岡崎外相の真意はむしろMSA援助にあろうと考えるのでございます。軍事援助としてのMSAに対しては従来強く反対して来たことはすでに御承知通りでありますから、今さら申し述べませんが、厖大な防衛計画を日本に強要するMSAの援助は、この点からも反対せざるを得ないのであります。  さらに政府がこの補正予算提出に際してとつた態度については、われわれは国民とともに納得しがたいものがあります。小笠原大蔵大臣は、本会議答弁において強い信念を持つて予算を提出したと、声を励まして断言しておりますが、信念という以上は百万人といえどもこれを侵すことはできないはずであります。しかるにその翌日ほんとうにまだ舌の根もかわかないうちに、保守三党の共同になる修正案を突きつけられるや、唯々諾々としてこれをのんだのみならずこれを政府原案として、前日信念を叫んだ同じ演壇において説明をしておるのであります。私は前十六国会において、自由、改進両党の修正案に賛成した政府の無責任と無定見を責めたのでありますが、今度はもつとひどい、これを政府自身の修正案として提出して来たのであります。     〔小峯委員長代理退席委員長着席〕 まつたく厚顔無恥あきれるのほかはありません。  以上、私が国民生活の安定をますます不安に陥れ、国内不安を醸成して顧みない政府提出原案に反対して、国民生活の安定と国土保全の見地に立つて、抜本的な災害防除対策を立てんとするところの両社会党の共同組みかえ要求案に賛成する理由であります。(拍手)
  312. 倉石忠雄

    倉石委員長 中村梅吉君。
  313. 中村梅吉

    中村(梅)委員 私は自由党鳩山派を代表いたしまして、ただいま議題となつております政府提出の補正予算案に対して賛成の意を表するものであります。  若干これについて意見を申し加えておきたいと思いますがわれわれは災害対策の特別委員会におきまして、災害対策の原則、すなわち特例法の適用地域の指定並びに年度割等につきまし  て、各党の委員各位が熱心に論議、調査をされました結果、超党派的に一致いたしました意見、その原則、すなわち年度割については三、五、二の割合、初年度を三とし、次年度を五とし、三年度を二とする年度割並びに指定せられた適用地域、これらの原則をわれわれは実現に移すべく努力をいたしたのでございます。その結果支出のわくといたしましては、大要その目的を達することができたわけであります。もちろんこの政府提出にかかる原案をもちましては、十分とは申しかねるのでございますが、しかしながら今次の災害並びに冷害の特異性並びに緊急性にかんがみまして、私どもはまず支出の面においてはこの程度においてがまんせざるを得ない、かように存ずるのであります。ただ政府責任に属しまする財源措置の点につきましては、若干われわれは別個の意見を持つております。また若干不安の念なきを得ないのであります。すなわちわれわれの意見をもつていたしまするならば、現に政府が認められておりまするごとくに、現在のわが国国政上の予算は、いわゆる総花予算に堕しておりまして、不要不急の経費がはなはだしく多いと思われるのであります。われわれはこの未曽有の大災害、冷害を受けたこの国民の窮状を救う機会、打開する機会にこそ、思い切つて不要不急の経費を削減して、その財源を十分に捻出すべきものと考えるのでございますが、これらの財源措置については、政府は別個の処置をとられたのでございます。また一部百五十七億円につきましては、融資の措置をとられたのでございます。この百五十七億円の融資の点につきましては、いささかこれは不安がないわけではありませんが、政府として間違いなくこの措置を実行するという言明も承つておりますので、とりあえずわれわれといたしましては政府のこの言明を一応信頼をいたしまして、冷害、災害の現況にかんがみまして、われわれはここに賛成の意を表する次第でございます。なお冷害に伴う、またまた災害に伴う食糧の問題、米の収穫減、かような点にかんがみまして、現下わが国の食糧問題は政治上最も大きな問題でございます。つきましては、政府におかれましては、この食糧対策については万全の処置をとられることを、私どもは強くここに要望いたすのであります。ことに米価の問題等につきましては、冷害、災害の事態を救うために、米価対策のみに依存するということは、これは非常に好ましくない現象であると思います。すなわち全国的に見まするならば、冷害、災害によつてはなはだしく減収を来し、あるいは壊滅をしておる地帯があるかと思いますると、一部にはそれと反対に豊作の地域があるのであります。にもかかわらず、米の減収ということに照して米価を引上げるという一本の策で参りますと、この豊作地帯はむしろそれによつて不当の所得を得られるという結果すら考えられるのでございまして、従つて食糧対策については、米価対策にのみたようないで、これらの冷害、災害を受けました地域に対する別途の処置については、今回の予算措置のほかに、なお政府は今後十分の措置を講じましてその零細農民の窮状を救い、全国的にこれらの窮状にある農民が立ち上ることのできるような、万全の措置を講ぜられんことを切望してやまない次第でございます。  なお八百板正君外十四名の提出にかかる昭和二十八年度一般会計予算補正(第1号)の編成替を求めるの動議、これにつきましては、私ども遺憾ながらここに反対の意を表する次第でございます。  この組みかえの動議を見ますると、差迫つておりまする冷害、災害の問題以外にかなり広範囲な問題を取上げておるようであります。これらにつきましては、私どもとしては、いずれ別途の機会に検討を加えることといたしまして、とにかくこの差迫つておる冷害、災害の問題を解決することが妥当である、かような見地に立ちまして遺憾ながら組みかえの動議に対しては、反対の意を表する次第でございます。
  314. 倉石忠雄

  315. 館俊三

    ○館委員 私はただいま議題となりました昭和二十八年度の政府の補正予算原案並びに両社会党の提出した組みかえ案に対しては、双方に対し反対をいたすものであります。  私ども国民各層の現在望んでおる次のごとき緊急諸要求をあくまで守り、これを貫徹することを私どもの基本の態度といたしております。すなわち冷害、災害緊急対策費三千億円、米の二重価格制による食管会計への繰入れ三百三十億円、公務員給与要求一万八千八百円、年末手当二箇月、国鉄等八公社仲裁裁定の完全実施、失業対策費の増額、生活保護費の増額、住宅対策費及び住宅金融公庫への出資増額、中小企業金融強化のため国民金融公庫及び中小企業金融公庫への貸出しを増加するなどであります。  これらの国民の緊急要求は、直接及び間接の軍事費を中心とする次のごとき財源措置によつて、実施し得るものであると信じております。直接軍事費の本年度予算額及び昨年度からの繰越額は、防衛支出金、予算額六百二十億円、繰越額九十一億円、保安庁費、予算額六百十三億円、繰越額二百八十一億円、安全保障諸費はございませんが、繰越額五百三十億円で、合計二千百三十六億円であります。この支出実績は第一及び第二・四半期計四百五億九千二百万円であり、この差引千七百三十億円を切り捨てることであります。第二番目としては、平和回復善後処理費の未支払い分の推定はわれわれとしては百二十九億円と考えております。これはもちろん前年度繰越し分五十九億円を含んでおるのでございます。連合国財産補償諸費約七十億円、旧軍人等恩給費の未支払い推定分約四百億円があります。第三番目には道路費、港湾費を中心とする公共事業費中の軍事的、植民地的経費の推定約二百億円、これは当初の予算の約二割であります。第四番目には警察機構及び人員の大幅縮減、徴税費の削減等で約百億円、第五番目としては、資金運用部資金、開発銀行等政府関係機関の資金を初め国家資金の軍事的使用の停止、  これによつて国鉄公社等への融資ないし起債が可能であります。第六番目には、外国為替特別会計の蓄積ドルのうち、少くとも三億ドル、千八十億円。第七番目には、軍需利得と独占利潤に対する高率累進特別課税、法人超過利得税の復活、個人所得の高級所得に対する累進率の強化及び外資への特別高率課税等を内容とする税制改正による増収を考えております。第八番目には国費の濫費、不正に対する厳罰と粛正、会計規律の確立をやるものであります。  第二に政府案に反対する理由を申し述べます。以上の基本態度から政府提出案に反対するのでありますが、この臨時国会に対するアメリカ日本の独占資本のねらい、従つてこれに対する吉田政府任務は、その冷害、水害対策費を初め、国民の諸要求を徹底的に押えつけることにあり、そのために救農国会などという名前をつけておるのでありますが、救農国会という名前をつけて労働者と農民の提携にくさびを打ち込んでおるのであり、MSA下における救農がどんなものであるかは、予算の内容を見ればわかるのであります。冷水害の被害の総額はとうてい調べ尽すことはできませんが、民主団体水害対策協議会や全国知事会及び各府県による調査分だけでも優に一兆億円に達していると考えるのであります。しかるに政府各省の被害報告額はわずかに二千六百二十億円であり、これに付する大蔵省査定額はさらに下つて一千七百七十五億円にすぎないのであります。大蔵省の査定作業は何ら合理的な調査を基礎としておらず、官僚の大見当で各省要求をさらに天引きしたものであります。大蔵省被害査定額一千七百七十五億円のうち、国庫の負担分は一千五百六十五億円となるのでありますが、これを従来の目安に従つて、初年度分十分の三とすると四百七十億円になる。しかるに政府予算では、災害復旧と冷害対策を合せて四百十五億円にしかすぎない。しかもこの間、被害数字も査定額もどんどん切り下げられておるのでありまして、かかるでたらめな各省要求に始まり、これが大蔵省の査定を経てさらにでたらめな初年度の予算化が行われておるのであります。しかも過去の災害の未復旧分は、治山関係一千五百億円、治水関係三千億円の巨額に上つており、また農地関係の未復旧分を年度別比率に見ると、二十四年度災害は二四%、二十五年度災害は二四%、二十六年度災害は七二%という驚くべき状態で、これらの上にさらに本年の災害が加わるのであります。  次に政府は、官公庁労働者及び国鉄等八公社の給与改訂については、まつたく無視しておるのでありまして、給与改訂の無視は従来の例を破つたものであります。これはまさしく既得権の蹂躙であるだけでなく、MSA段階における公然たる賃金ストツプを意味し、いわゆる特別待命制度の実施に現われた天引き整理に対応するものであります。  さらに補正予算案の財源はどうか。周知のように租税の自然増収のほとんどは勤労源泉所得税の増収であります。物価の上昇を追いかけて、しかもその小刻みにしか上らない賃金の名目額ははげしい労働強化の苦渋を条件としておるのであります。この苦渋への課税こそ、自然増収の源泉であります。専売益金の増収はもちろん、いわゆる雑収入の増加もまた同様国民収奪の強化を意味しておるものであります。既定経費の削減のうち、特に住宅金融公庫への政府出資を公然と削つたことは、さきの給与改訂の無視とともに、明らかに国民既得権の剥奪であり、予算における政府の新しい手口を示すものといわなければなりません。こういう意味政府の案に賛成を表することができないのであります。  第三番目には、両社の共同組みかえ案に反対する理由を申し述べます。自由、改進、分目三派の支持する政府案に対し、両社会党が国民の利益の立場に立つて、共同の組みかえ案をつくるために努力されたことについては、敬意を表するものでありますが、われわれはできればこれに同調し、これを支持するために、資料によつてこれを綿密に検討したのであるが、はなはだ残念ながらわれわれの基本態度と重要な相違点があるため、これに反対せざるを得なくなつたのであります。われわれは災害対策費を初め国民各層の現在の諸要求をめぐつて、あくまでこれを貫徹する立場に立つておる。もちろんこのことはいかなる場合、いかなる妥協をも絶対にしないということを意味しない。妥協すべき条件がある場合には、一時われわれもこれをするでありましよう。問題は現在その条件があるかないかであるが、明らかにないのであります。それは国民の要求をこの共同案が引下げておるのでありまして、いかに妥協案がこういう引下げ方をいたしましても、政府がこれに応ずる理由はどこにも見当らないのであります。政府のこのような強引な態度を改めさせ、これに譲歩させ、その政策を粉砕する道は、国会外における労働者、農民、市民大衆の組織闘争を強化し、拡大するほかにはないのであります。そのた覆われわれは国民の現在の要求をあくまでも守り、これを貫徹する立場を堅持するのであります。  次に両社党の共同組みかえ案につき、われわれと相違する点を指摘しておきたい。歳出について申しますと、災害対策費六百億円は被害総額千八百億円という認定の上に立つており、大蔵省査定額の千五百六十五億円と実質的には何らかわらないのでありまして、大衆の声は何ら反映されておらない。給与問題については、官公庁労働者の一万八千八百円要求が、人事院勧告の線までおろされておる。かつ期末手当二箇月要求も一・五箇月に切下げられておるのであります。そのほか政府案を基礎に作業されたために、不景気下における失業対策、生活保護等については、まつた国民の声が表明されず、住宅対策についてもこれを無視しておると見られるのであります。財源については軍事費を大幅に削減したことは賛成なのでありますが、このうち保安庁費百七十五億円を残置したこと、間接軍事費たる旧軍人等恩給賀四百億円以上及び公共事業費中の道路、港湾関係にひそんでおる軍事的、植民地的経費を不問に付していることには反対せざるを得ません。警察費等国民弾圧経費についても、これを放置しておるようである。輸入食糧補給金二十三億円は、米を麦に転換する政策であるが、これは過剰に悩む米国小麦の処理と関連する政府の人造米政策と  一致するやり方である。最後に四百十億円を租税の自然増収によつているのでありますが、これは政府やり方にさらに輪をかけたものであり、国民の重税反対、減税要求の正当性を没却したものであるといわなければなりません。専売益金五十億円及び雑収入増百億円も同様と私たちは断ずるのであります。そういう意味において、この共同組みかえ案に対しても賛成しかねることを申し述べ、討論を終りたいと思ます。
  316. 倉石忠雄

    倉石委員長 これにて討論は終局いたしました。  採決に入ります。まず八百板正君外十四名より提出されました昭和二十八年度一般会計予算補正(第1号)の編成替を求めるの動議を採決いたします。右動議に賛成の諸君の御起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  317. 倉石忠雄

    倉石委員長 起立少数。よつて昭和二十八年度一般会計予算補正(第1号)の編成替を求めるの動議は否決されました。  次に昭和二十八年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和二十八年度特別会計予算補正(特第1号)を一括して採決いたします。右両案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  318. 倉石忠雄

    倉石委員長 起立多数。よつて昭和二十八年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和二十八年度特別会計予算補正(特第1号)は、いずれも原案の通り可決いたしました。(拍手)  委員会報告書の作成については、先例によりまして委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  319. 倉石忠雄

    倉石委員長 それではさように決定いたします。  この際一言ごあいさつ申し上げます。補正予算両案に対する審議を開始いたしまして以来、本予算案の緊急性にかんがみまして、委員各位におかせられましては議事の進行に理解ある御協力を示されまして、ここにその議事を終了いたしましたことに対しまして、委員長として厚くお礼を申し上げ、衷心たり感謝の意を表する次第であります。一言ごあいさつといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後八時五十八分散会