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井堀繁雄君 ただいま議題になりました
仲裁裁定につきまして、二つの角度からお尋ねをいたそうと思うのであります。
一つは、
仲裁裁定に関する
政府の
態度と、それがやがて
影響いたしまする民間産業、ことに産業並びに労働政策についてお尋ねをいたそうと思うのであります。次は、具体的な事実について一、二お尋ねをいたすのであります。
去る第十六
国会におきまして、
吉田総理は
政府の
所信を次のように明らかにされております。日本の再建基盤は経済の自立にあると述べ、次いで、内に自給度の
向上、外には貿易の振興、これと並行して最も緊要なるは、実に民生の安定であると強調されたのであります。この言が正しいものでありますならば、ただいま
政府の提案されました
仲裁裁定を否定してもらうという提案の趣旨は、どうしても納得のできがたい事柄であります。(
拍手)申すまでもなく、今
仲裁裁定を受けました
政府の直轄する
八つの職場の従業員は、とりもなおさず、国が雇用主であります。みずから雇用しておりまする従業員の労働
条件について、
法律が定めておりまする
団体交渉によ
つて円満解決することを望んでおるのであります。
団体交渉が
労働者の
努力と誠意によ
つて妥結し得ない場合に、やむを得ざる
措置として
調停なり
仲裁の
制度を
規定しておるのでありまするから、正しい労務管理、誠実なる
労働者に対する労働
条件を施行しようとする雇い主でありまするならば、当然
団体交渉の過程において、かかる問題を解決する
義務があると言わなければならないのであります。(
拍手)この
法律は、申すまでもなく、吉田
政府の
関係する立法に関するものでありまして、いまさらこの
法律の
精神を説こうとするものではありません。私どもの最も遺憾に思いますことは、このような
法律が
政府みずからによ
つて無視されるということになりますると、その結果を恐れるものであります。(
拍手)
申すまでもなく、
仲裁裁定については、先ほども同僚から述べられましたように、今日の公務員や公
企業体のもとにおる
労働者は、当然民主主義のもとにおける人権の
基礎をなしまする自由を経済的に社会的に保障する意味において、団結権、罷業権が与えられておるものをば、公
企業体であるという意味において、これを制約されておるのであります。でありまするならば、それにかわるべきない主は、道徳的にかつ
法律の定める
精神に基いて、
一般が
仲裁や
裁定を求むるような事態が発生するような事項についても、みずから誠意を示して、
団体交渉の過程において、よき労働
条件を施行すべき
義務があると喝破しなければなりません。
拍手)かような意味からいたしまして、かかる提案がなされるということは、吉田
政府のもとにおける産業政策、労働政策というものがま
つたく無為無策であるということをみずから暴露するものにほかならぬと思うのであります。ついででありまするが、
公労法三十五条について、先ほど
労働大臣から弁解がありました。
公労法第三十五条によりますると、
当事者双方とも
最終決定として服従しなければならないという、すなわち裁判の判決と同様の服従の
義務を
規定しておるのであります。ところが、これと十六条の、すなわち
予算上、
資金上不可能な
——労働大臣は、
国会にそのしりを向けて、
予算審議権と天びんにかけて
説明をされましたが、きわめて狡猾なる詭弁と言わなければならぬのであります。(
拍手)少くとも
法律を理解し、労働法に対しましてまじめに取組む者といたしますならば、かかる詭弁は恐るべき
責任を背負うべき将来があることを私は予言いたします。申すまでもなく、
労働者の団結権、罷業権というものは、むやみに奪い去られる筋のものでないことは、この
法律の立法当時の論議を皆さん御案内、御
承知のことと思うのでありますが、ことに、この
法律については連合国の示唆に基いたものが多いのでありますが、この中にも強調されております、公務員、
政府の
職員に対する雇い主の立場である
政府が、いやしくも民間産業に行われておるような紛議をかもし出す原因を除去することのために、労働
条件については率先して
政府が善処しなければならぬことを前提といたして警告されたものであることは、いまさら言うまでもないのである。こういう
精神からいたしまして今の
労働大臣の
説明は、あまりにも卑劣な、故意にこの
要求を通さんがための主張であると私は思いまして、はなはだ残念に思う次第であります。
国鉄、全逓の問題につきましては、多少
予算上の問題について
検討を要すべきものがありますが、その他の六つの
企業体におきましては、独立採算の上に立
つて、十分組合側の
要求を満たすに足る
内容のものであります。これは一々今後具体的にわれわれが
検討を続けて行く問題でありますが、この独立採算においてすら可能であるということを、先ほども労働
委員会における
審議の状況で
説明されましたように、当然その
当事者は労働組合の
要求を妥当なりと認めてこれを容認し、労働
条件として施行して行きたいという傾向は、
団体交渉の中にもよく見られております。
仲裁裁定の理由書の中にも、きわめて明瞭にな
つておるのであります。こういう問題を無視するがごとき本日の提案であります。私どもは、
政府と直接従業員に接しておりまする使用者の立場を
考えます場合に、何としても納得のできない労務管理の
態度であると言わなければならぬのであります。もしこういうような
態度が許されまするならば、これがただちに民間産業に
影響を与えますることは議論を要しないところでありまして、最近これが反映したかの傾向は露骨にな
つて、民間におきまする
労使関係というものはきわめて対立的なものになり、産業の平和はま
つたく保障しがたく、
労使関係というものがだんだんに荒れて参
つておりますことは否定できないのであります。
政府は、一方におきましては
労使関係の安定を主張し、産業平和を主張しておるのであります。ことに日本経済の再建が日本の復興の基盤になるという大きな建前からいたしましても、その産業のにない手である生産の場所において、
労使関係がはげしく対立し、かみ合うような状態をかもし出して、どこに産業平和が求められましようか。(
拍手)真に
労働者の人格を認めると同時に、
労働者の人格的組織である労働組合を正しく理解して、その間に労働
条件を
団体交渉の形において成立せしめて行くところに、民主主義を貫く労務管理があると言わなければならぬのであります。(
拍手)その点をゆるがせにし、これを否定するがごとき労務管理がもしあるといたしまするならば、それはきわめて封建的な、きわめて一方的な、因業きわまる
労使関係と言わなければならぬのでありまして、かかる
態度の許されないことは、あえて申すまでもないのであります。それを
政府がみずから範をたれるがごとき今回の
仲裁裁定に対する
態度は、どうしてもわれわれの納得の行かないところであります。
以下、
政府に具体的な
答弁を求めようといたしまするのは、もし
政府に誠意があるといたしますならば
——仲裁委員会の構成は、おわかりのように、経営者側の利益を代表する者、もしくは雇い主側の利益を代表する者、それに学識経験者等をも
つて構成しておりまするところの労働
委員会にならいまして、それよりはやや官僚化された組織にはな
つておりまするが、この
仲裁委員会の性格についてわれわれは議論があるところでありまするが、その
仲裁委員会においてすら、これは、
労働者側の
要求はきわめてもつともであるけれども、これでがまんしてもらうという意味での
裁定でありますることは、いずれの
裁定の理由書の中においてもきわめて明瞭に知ることができるのであります。こういう
裁定に対しまして、もし
政府がほんとうに誠意を持ちまするならば、数字的な問題を
政府は明らかにされておりませんから、このことについて
説明を求めたいと思いますが、もし
予算上、
資金上困難であるということでありまするならば、もの
予算上、
資金上の困難な理由を具体的に
国会に提出して
審議を求めるということが正しいやり方であります。(
拍手)ところが、最もそのよき
機会を与えましたのは
補正予算でありますが、この
補正予算の中に、
政府は、
仲裁裁定に対する尊重を口にしながら、額の問題については、
意見の相違とか、立場の相違があることはやむを得ぬといたしましても、一銭も
予算化しないということは、口に
仲裁裁定を尊重し
法律を守ると言いながら、
法律を無視し、
仲裁裁定を蹂躪する
行為を
政府は露骨に示したものと言わざるを得ないのであります。(
拍手)従いまして、
政府は、
補正予算の中になぜこれを組まなか
つたのか、その
金額の大小は別として、なぜ組まなか
つたかということについて
答弁を求めたいと思うのであります。
もし
金額についてでありますならば、
補正予算の中におきましては、最も
政府が重視されております国防費、すなわち保安庁費や防衛
関係の費用などにつきましては、かなり莫大な
金額を
予算化いたしたのでありますが、私どもは決して独立国の自衛を軽視するものではありません。自衛上の問題につきましては、われわれは十分なる対策を望むものでありますけれども、われわれの主張しなければなりませんことは、今日の防衛の最も重要なる事柄はどこにあるか、私はあえて
政府の
態度をただしたいと思います。従来、いずれの事態をわれわれが想像いたしましても、まず今日国内の治安を無視し、すなわち国内におけるはげしい対立や不安動揺や、ことに今日の物価高における低
賃金、低収入のごとき不安きわまる労働
条件をそのままに放置して、また
労使のはげしい対立が激化しつつある現状を見送りまして、いかに保安隊を強化いたしましても、国内における不統一、思想上の不安や、あるいは
生活から起るところの予測せざる不祥事態というものが、いずれの民族をも滅ぼし、その国の防衛を危うくいたしておりますことは顕著な事実であります。万里の長城を築きましても、国内に対立不安がありましては決して牢固たる防衛ではございません。今日の
人事院の
勧告は、
労働者の最低の
生活を維持するに満たない低い
条件でありまして、この
条件に対しても、
政府は軍事費に一千五百億に近い
予算を組む熱意を示しながら、
労働者の最低
生活を蹂躪しても顧みないというような国防があるといたしますならば、ま
つたく本末転倒と言わなければならないのであります。(
拍手)われわれは、かかる意味におきまして、
政府が財政的あるいは
資金的理由をも
つてこれを拒否することはま
つたく成り立たないと思うのでありますが、この点に対する
責任ある御
答弁を願おうと思うのであります。
最後に、やや具体的の点についてお尋ねをいたそうと思いますが、これらの
事業庁は、御案内のように、それぞれ性質を異にいたします。あるものは生産、あるものはサービス、あるものは輸送であります。この個々ばらばらな性格を持つ
事業の労務管理を担当されますそれぞれの所管大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、こういうそれぞれの特徴を持
つております
事業場の労働
条件、ことに
給与水準等について、
政府として統一した均衡のとれたものにするという
考え方を了解されるのであるか、またそれぞれの特徴を発揮した、いわゆる労働の担当量に見合うような
賃金を独立して定めて行くという
考え方であるのかについては、今後の
裁定実施にあた
つて重大な
関係を持つと思いますから、それぞれの所管大臣の
見解をただしておきたいと思います。ことに
団体交渉につきまして、所管大臣がどのような
努力をされ、どの
程度具体的な事実に
関係されたかについて、参考のために伺
つておきたいと思うのであります。
いま
一つの問題は、
アルコール専売並びに林野
関係におきましては、すでに
委員会において
当事者から数字的な
説明を伺
つておるのでありますが、その他、
専売にいたしましても、
印刷庁にいたしましても、電気通信にいたしましても、それぞれ
事業庁の特質といたしましての採算があるわけでありますが、こういうような採算を、国の
予算と、さらに
資金上という
政府の統轄した方針のもとに、もし労働
条件に
関係する
予算を取扱うというのでありまするならば、今日各省ごとに行われておりまする
団体交渉、あるいは各
事業庁ごとに取扱われておりまする
仲裁裁定というものは意義を失うものでありまするが、(
拍手)もしそれを一本にしておやりになるというのでありますならば、ばらばらな
団体交渉をおやめにな
つて、総理ないしは
政府を代表される
責任ある人が、各労組の代表者を一堂に集めて
団体交渉をやるのが正しい行き方と思うのであります。(
拍手)そのいずれをとられるかにつきまして、
政府の総括
責任者並びに所管大臣のそれぞれ異な
つた御
意見があると思いまするから、それぞれ伺
つておきたいと思います。(
拍手)
〔
国務大臣小笠原三
九郎君
登壇]