○伊藤好道君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、
政府提出の
一般会計予算補正(第1号)に
反対し、
社会党共同
提出の組みかえ
要求の
動議に
賛成の
討論を申し上げたいと存じます。(
拍手)
政府、与党を初め、改進党などの
諸君は、口を開けば救農々々と叫んでおられるようでありますが、はたして
政府提出のこの
補正予算案は救農のための
予算であると呼ばれ得るでありましようか。私は、災害対策費の規模からいたしましても、その
内容から見ましても、救農どころか、農民生活をますます窮乏せしめるものであると断ぜざるを得ないのであります。(
拍手)
政府の
補正予算は、申し上げるまでもなく、
風水害対策費として三百億円を計上しておるにすぎませず、最低限に見積られた
政府査定の災害対策に要する経費一千八百億円に対し一割七分にも足りません。しかも、大蔵省は、か
つてにこの千八百億円の金額を千五百六十五億円に削減し、三百億円はその二割に当ると称しておられるようでありますが、この種
予算の通常の
建前である初年三割計上の
原則をわざわざ二割に引下げるほど、本年度のたび重なる災害は軽微なものでございましようか。
政府及び保守党の
諸君は、本年度は異常な災害であると称しておられますが、その
意味、われわれの常識と違いまして、異常に軽微なものとでも解されているのでございましようか。われわれは
諸君の頭脳が少からず変調を来しておるのではないかと疑わざるを得ません。(
拍手)
社会党の共同組みかえ案は、これに対しまして、
政府の正式に認めておる千八百億円は過少であると思うのでございますが、一応これを
承認し、災害対策費支出の慣例である三・五・二の
原則にのつと
つて五百四十億円の所要経費を算出し、さらに本年の異常災害たる特質を、変調を来さない冷静な頭脳で勘案いたしまして、一割程度、六十億円を加えて、すなわち六百億円、すなわち
政府案の二倍を計上した次第でございます。また、冷害対策費にいたしましても、
政府及び保守三党の
諸君の
承認される
予算案は、農業保険費の四十五億円を削
つて百十五億円にしたにすぎず、両者を合せてわずか二百億円にすぎませんが、共同組みかえ案は、冷害対策費百二十億円、農業共済保険繰入れ百五十億円、合せて二百八十億円を計上いたしております。従いまして、
政府補正案の救農費はわずかに五百億円でありますが、共同組みかえ案は八百八十億円を計上しております。どちらが災害に悩む農民と農業を救わんとする熱意に燃えておるかは、これによ
つて明白であると私は信じます。(
拍手)
しかも、この点に関して見のがすことのできないのは、
政府の原案における既定経費削減の
内容でありまして、
政府案には、公共事業費三十九億円、食糧増産対策費二十億円、合せて五十九億円が削減されておるのであります。
従つて、
政府案の災害対策費の実体といたしましては、この分だけ三百億から差引かなければならないのでありまして、そうすれば、
政府の対策費の総計はわずかに二百四十一億円とかります。(
拍手)これは千八百億円の、
政府の正式に認めた災害対策費に対しまして、実に一割三分にすぎないのでありまして、これをも
つて災害対策費として間に合うなどと言われましては、これは欺瞞と申さなければならないと思うのであります。(
拍手)
政府は、その後、これに対しまして、保守三党の
協定により、復旧事業の進行に伴
つてその必要に応じ、事情調査の上、資金運用部資金等より融資すると称しておりますし、つなぎ融資の利子補給についても同様な
態度をと
つておられるようでありますが、成行きまかせの、このような不確定なやり方によりましては、とうてい
満足な災害対策にならないことは申し上げるまでもないと私は信じます。(
拍手)大蔵大臣の郷里におきましては、いまなお朝夕二回ずつ海水に襲われておる罹災農民が多数あるのでございますが、大臣ははたしてこんなすずめの涙ほどの
予算をお出しになりまして、これで罹災農民に合せるお顔があるのでありましようかと私は申さざるを得ません。(
拍手)これに対しまして、
社会党の共同組みかえ案は、前に申しました災害対策費、冷害対策費、農業共済保険繰入れ、合計八百八十億円に加えまして、農林金融公庫出資の増加や、つなぎ融資の利子補給金をも計上しておる次第でありまして、これらを合計すれば実に九百一億円の財政支出を行わんとするものでありまして、文字通り救農の名に値する
予算であると申し上げる次第でございます。(
拍手)
さらに、われわれの持論であります米の生産者価格一万二千円、消費者価格すえ置き等、さらに現在
政府が糊塗されておる食管特別会計の赤字百余億円を埋めますために、共同組みかえ案は食管特別会計繰入金を三百億円計上しております。これこそは、本年
わが国の直面する重大な課題である食糧不足に対しまして、生産者の立場からも、消費者の立場からも、最大の対策でなければならないと信じます。(
拍手)
政府の
補正予算が、この点につきまして、いまだ何の対策をも
予算上講じておらない点につきましては、われわれの案との間にはまさに雲泥の差があると私は申したいのであります。(
拍手)
次に、
政府の
補正予算案は、名を救農にかりまして、その実質はただいま申し上げた次第でございますが、その他の
国民のことは全然考慮しておりません。すなわち、
政府は、公務員に対する人事院のベース・アツプの勧告に対しまして、
法律を蹂躪して、いまだに
予算措置を講じておりません。この勧告は、申すまでもなく、すでに四箇月以前に行われておるのでありまして、
政府の
態度は、怠慢どころか、無法しごくのやり方であると申さなければなりません。(
拍手)また国鉄、全逓、全電通、全専売、全農林、全印刷、造幣、アルコールの八つの分野に対しまして仲裁裁定がつとに行われておりますが、これに対しましても、
政府の
補正予算は一文も計上しておりません。これら公務員や公共企業体の
諸君は、
憲法に保障されたストライキ権を剥奪されたかわりに、勧告や裁定によ
つて生活の不安と悪化を幾らかでも防止することに
法律上きま
つておるのでありまして、それにもかかわらず、
政府がこのように勧告や裁定を無視して
予算措置を講じないといたしますならば、それが
法律を蹂躙する
態度であるのはもちろんのこと、低賃金下に苦悩しておる労働者
諸君の生活を無視いたしまして、苦しければや
つて来いという挑戦的な
態度とも言わなければならないと思うのであります。(
拍手)ことに、
政府は、
補正予算におきまして、その財源において二百億円もの源泉所得税の自然増收を求めておりまして、勤労者の生活はますます困難とならざるを得ません。これに対しまして、共同組みかえ案が、仲裁裁定をそのまま
実施いたしまするとともに、勧告に対しましても本年八月よりこれを
実施するよう
予算措置を講じておりますことは当然のことでございますが、
政府、保守党に対決いたしまて、われわれの大いに誇りとするところであります。(
拍手)そのほか、苦しい年の瀬を迎えまして、期末手当一箇月半分の支給、地域給、寒冷地手当の是正をわれわれが行
つておることは、見のがされてはならないと信じます。
第三に、
政府は、最近における
日本経済の不況の深刻化、また
日本銀行を中心とする金融の引締め政策によりまして、年末を控えてどうして経営難や生活難を切り抜けようかと頭痛はち巻の中小商工業者のことについても何ら考慮しておりません。これは、死んでしまえの放言居士を与党の政調会長に持つ
政府の
補正予算案としては当然のことかもしれませんが、(
拍手)われわれ
国民の利害をみずからの利害と考える政治家にと
つては、とうてい考えられない冷酷な
態度であると私は申さなければならぬと信じます。(
拍手)これに対し、
社会党の共同組みかえ案は、中小企業金融公庫、
国民金融公庫の出資増といたしまして合計百億円を計上しておりますことは、もちろん十分ではございませんが、真に
国民のためにある政治家の
態度であると申さなければならぬと信じます。(
拍手)そのほか、
社会党の共同組みかえ案は、災害のために財政難に陥
つている地方自治体を救うために平衡交付金を計上しております。目下各地方で推進されている町村合併についても考慮して
予算措置を講じております。問題の李ラインの件につきましても、
被害救済費の利子補給等の
関係費を計上しておりますことは、まことにかゆいところに手の届いた
措置であるとわれわれは信ずる次第でございます。(
拍手)
政府は、財源がない、財源がないと称しておられますが、財源はないのではありません。探せば幾らでもあると私は信じます。それは申すまでもなく、防衛
関係の諸費用を削ることであります。すなわち、
社会党の共同組みかえ案は、平和回復善後処理費、保安庁費、防衛支出金、安全保障諸費、連合国
財産補償費に対しまして、その未使用分一千百七十億円と想定されるものを削減しておるのでありまして、このような非生産的な経費を切りとりまして、すでに申し上げましたように、
国民生活の安定と
日本経済再建のための緊要不可欠な経費に充てましたことは、
社会党共同組みかえ案の全体を貫く基本的
建前でございまして、
政府の
補正予算案及びこれに
賛成される保守党の
諸君に対しまして、われわれ
社会党が正面から大いに対決したいところであります。(
拍手)今や未
曽有ともいうべき全
日本を襲
つた災害の中において、われわれは大砲かバターかそのいずれをとるかの重大なる岐路に立たされていると信じます。そうして、われわれは、断固として
国民大衆とともにバターの道を選ぶことによ
つて生活の安定と経済の再建をはかりたいと信じます。
なお、共同組みかえ案は、
政府補正予算とは違いまして、公共事業費や食糧増産費の削減をいたしませんかわりに、ともすれば濫費されやすい物件費、旅費を一割削減して財源に充当しております。また
政府案のように、住宅金融公庫の出資を減らして、たださえ困難な住宅問題を悪化させるような大衆生活圧迫の
態度をと
つておりません。
皆さん、われわれは、
日本の経済と財政の
現状及び前途に対しまして、今日重大なる危惧の念を禁じ得ないものがあります。その中心的な問題は、申すまでもなくインフレーシヨンの危険であります。
政府の
補正予算案は、一兆円をわずかに九千二百四十四万一千円下まわる数字を掲げることによりましてあたかもこのインフレーシヨンの危機を押えようとするかのようでございます。しかしながら、インフレーシヨンがこのような児戯に類した
措置によ
つて抑止することができるものでありますならば、われわれは何も危険だの危機だのと申す必要はございません。インフレーシヨンの危機は、生産に役立たないどころか、それをむしろ阻害する防衛
関係費、われわれの言う実質上の再軍備費が、現在すでに財政の中において巨額に上
つております上に、今後さらにそれが急速に膨脹せんとするところに根本的な原因があるのでございます。
吉田内閣が今全力を傾けて獲得しようとするいわゆるMSAの援助は、
日本の財政にとりましては、
従つて経済にとりましても、何らの援助ではありません。MSAによる援助は、完成兵器の供与と兵員の訓練費にすぎません。が、それも手ぶらではもらえないのであります。われわれがその兵器を使い、訓練を受ける兵員を増加することを条件とし、その度合い、程度に応じまして、あるいは若干の経済援助、それも特需的性質の援助が与えられることもあるというにすぎないのでありありまして、他方における兵員の増加に伴う
日本財政の膨脹、それを負担する
日本の経済のマイナス、輸出貿易の対米一辺倒のための不振、
従つて生ずべき
国民生活の悪化をとうていカバーできるものではございません。(
拍手)従いまして、われわれは、今日MSAの援助を受けることによ
つて、さらに増税を強化されるか、公債を発行されるか、それとも両者が並行的に行われるかという重大な局面に直面しているのであります。(
拍手)しかも、自衛隊とか自衛軍とかいう言葉をも
つてそうした軍事費を制限できるもののように、
政府与党や保守党の
諸君は考えておられるようでございますが、相手に対してみずからを軍事力によ
つて守ろうとする以上、軍事費が相手次第で無制限に増加するであろうことは、その本質上当然でありますし、また古今の歴史がこれを証明しております。(
拍手)
加うるに、国の財政は、今日、増税ではなくて、逆に減税を強く
要求されております。特に所得税その他直接税がしかりでございまして、
政府は、
従つて間接税、消費税の増徴に手を染めようとしているように見られますが、それは大衆生活の重大な圧迫であることは申すまでもありませんし、それにはおのずから限度があります。また、特にこの際われわれは、それが物価を引上げるものであるということを強調しなければなりません。(
拍手)
日本財政は、次第に無制限に増加するであろう公債発行と、さらに輸出貿易の不振による為替の低落という根本的なインフレーシヨンの原因に加えまして、この増税面もまたインフレーシヨンの原因を持つものでありまして、われわれは、
政府補正案に対しましては、インフレーシヨンを招来するものであるという点から、強くこれに
反対しなければならないのであります。(
拍手)
これに対しまして、
社会党の共同組みかえ案は、働く者の生活を安定させ、その基礎の上に直接生産の増加、特に食糧の増産をはかり、進んでは経済再建をはからんとするものでありまして、まさにインフレーシヨンの危機を打開し得る唯一の道であると信じて疑いません。どうか御
賛成を希望いたします。(
拍手)