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1953-11-01 第17回国会 衆議院 法務委員会 第2号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
二十八年十一月一日(日曜日) 午前十一時八分
開議
出席委員
委員長
小林かなえ
君
理事
鍛冶 良作君
理事
田嶋 好文君
理事
吉田 安君
理事
古屋 貞雄君
理事
井伊 誠一君 大橋 武夫君 押谷 富三君 林 信雄君
飛鳥田一雄
君 木下 郁君 佐竹
晴記
君 中村 梅吉君
出席国務大臣
法 務 大 臣
犬養
健君
出席政府委員
法務政務次官
三浦寅之助
君 検 事 (
刑事局長
)
岡原
昌男君 検 事 (
検事局総務課
長) 津田 実君
外務事務官
(
条約局長
) 下田 武三君
委員外
の
出席者
国家地方警察本
部長官
斎藤 昇君
大蔵事務官
(
銀行局長
) 河野 通一君 専 門 員 村 教三君 専 門 員 小木 貞一君 ――
―――――――――――
十月三十一日
日本国
における
国際連合
の
軍隊
に対する
刑事裁
判権
の
行使
に関する
議定書
の
実施
に伴う
刑事特
別
法案
(
内閣提出
第一一号) の審査を本
委員会
に付託された。 ――
―――――――――――
本日の
会議
に付した
事件
日本国
と
アメリカ合衆国
との間の
安全保障条約
第三条に基づく
行政協定
に伴う
刑事特別法
の一 部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第五号)
日本国
における
国際連合
の
軍隊
に対する
刑事裁
判権
の
行使
に関する
議定書
の
実施
に伴う
刑事特
別
法案
(
内閣提出
第一一号)
法務行政
に関連する
保全経済会等特殊利殖機関
の調査に関する件 ――
―――――――――――
小林錡
1
○
小林委員長
これより
会議
を開きます。 本日はまず
日本国
における
国際連合
の
軍隊
に対する
刑事裁判権
の
行使
に関する
議定書
の
実施
に伴う
刑事特別法案
を
議題
とし、
政府
より
提案
の
理由
を御
説明
願います。
犬養法務大臣
。
犬養健
2
○
犬養国務大臣
ただいま
議題
となりました
日本国
における
国際連合
の
軍隊
に対する
刑事裁判権
の
行使
に関する
議定書
の
実施
に伴う
刑事特別法案
につき
提案
の
理由
を御
説明
申し上げます。
日本国
における
国際連合
の
軍隊
に対する
刑事裁判権
の
行使
に関する
議定書
の発効に伴いまして、一九五〇年六月二十五日、六月二七日及び七月七日の
国際連合安全保障理事会決議
並びに一九五一年二月一日の
国際連合総会決議
に
従つて朝鮮
に
軍隊
を派遣した
アメリカ合衆国
以外の国で
日本国
との間に
右議定書
の
効力
が発生した国が右の諸
決議
に
従つて朝鮮
に派遣した
陸軍
、
海軍
及び
空軍
の
日本国
にある間におけるものに関しまして、
右議定苦
の
趣旨
にのつとり、
刑事
上の
手続法
につきまして若干の
特別規定
を設ける必要が生じましたため、この
法律案
を提出することといたしたものであります。 申すまでもなく、これらの
軍隊
の
構成員
、
軍属
または
家族
に対しましても、
わが国既存
の
法令
は、
原則
としてその
適用
を見るのでありますが、
右議定書
の
附属書
の条項により
刑事手続関係
の
法令
について若干の
特別措置
を必要といたしますので、その
必要最少限度
の
規定
をこの
法律案
に取入れた次第であります。従いまして、この
法律案
に特別に
規定
していない事項につきましては、
原則
として
既存
の各
法令
が
適用
されることと相なるわけであります。この
法律案
は、第一章
総則
、第二章
刑事手続
の二章十二箇条と
附則
からな
つて
おるのでありますが、ここにこの
法律案
の主要点を申し上げます。 まず、第一章
総則
の章は、一箇条でありまして、この
法律
において使用する語の
定義
を定めたのであります。 この
定義
は、
日本国
と
アメリカ合衆国
との間の
安全保障条約
第三条に基く
行政協定
第一条に定められている
定義
に準じたものであります。次に、第二章
刑事手続
の章は十一箇条よりなり、
国際連合
の
軍隊
の
構成員
または
軍属
が
国際連合
の
軍当局
において
裁判権
を
行使
する第一次の権利を有する罪を犯した場合における同
軍隊
への
身柄
の
引渡し
、
国際連合
の
軍隊
がその
権限
に基いて警備している
国際連合
の使用する
施設
内における
逮捕
その他人身を拘束する
処分
及び
差押
え、
捜索等
の
処分
の
執行
、同
施設内等
において
逮捕
された者に対する
日本側
の
受領手続
、
派遣国
の
軍事裁判所
または
国際連合
の
軍隊
の
当局
の
刑事手続
に対する
わが国側
の協力及び
派遣国
の
軍事裁判所
または
国際連合
の
軍隊
による抑留または拘禁についての
刑事補償法
の
適用等
いずれも
刑事手続
に関する
現行
の
法令
をも
つて
しては処置し得ない問題を取り上げて特別の
規定
を置いたものであります。これを要するに、
日本国
と
アメリカ合衆国
との間の
安全保障条約
第三条に基く
行政協定
に伴う
刑事特別法
の場合とほとんど同
趣旨
の
刑事手続
を
規定
したものであります。 以上この
法律案
につきまして概略御
説明
申し上げたのでありますが、何とぞ慎重御
審議
の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。
小林錡
3
○
小林委員長
これにて
提案理由
の
説明
は終りました。 次に、本案並びに昨日
提案理由
の
説明
を聴取いたしました、
日本国
と
アメリカ合衆国
との間の
安全保障条約
第三条に基く
行政協定
に伴う
刑事特別法
の一部を
改正
する
法律案
の両案を一括いたしまして、
政府
から
補足説明
を求めたいと思います。
岡原刑事局長
。
岡原昌男
4
○
岡原政府委員
御
審議
の便宜にと思いまして、別途
法案
の
解説書
をお手元にお配りしたはずでございます。先に
アメリカ関係行政協定
に伴う
刑事特別法
の一部を
改正
する
法律案
の方から御
説明
申し上げたいと思います。 御
承知
の
通り行政協定
の第十七条におきまして、いわゆる
刑事裁判権
の
行使
に関する
規定
が置かれたわけでございます。これに基きまして
刑事特別法
が制定せられ、これが従来動いて参
つたの
でございます。ところがこの
行政協定
の十七条につきましては、その立て方がわが方に不利であるということからいたしまして、かなり各方面の批判の的とな
つて
お
つた
次第でございます。そこで私
ども
は、十七条第一項に、基き、これが
NATO協定
が
アメリカ
について発効した場合に、これと
同一
の歩調をとるようにという方針のもとに、まず本年四月十四日
アメリカ側
に対しましてその
改訂
を申し入れたのでございます。ところが当時
アメリカ
におきましては、この
北大西洋条約
、
NATO協定
を批准するかどうかという国内問題が紛糾いたしておりまして、結局講和一周年の四月二十九日までにはそれが見通しがつかなか
つたの
でございます。その後も
アメリカ
の上院において、この
NATO協定
の批准問題をめぐりましてかなりはげしい
論争
が展開されたやに聞き及んでおるのでございますが、それが本年七月二十三日通過いたしまして、八月の二十三日から
アメリカ
について発効する。ここに
アメリカ
、フランス、ベルジツク並びにノールウエーの四箇国について
NATO協定
が相互に
効力
を発する、さようなことに
なつ
たわけでございます。そこで私
ども
といたしましてはこれに伴い、前に申し入れました線に沿いましてさらに
アメリカ側
と交渉いたしました結果、約一月たちまして、九月の二十九日にその間の
協定
ができたわけでございます。これが今回の
日本国
と
アメリカ合衆国
との間の
安全保障条約
第三条に基く
行政協定
第十七条を
改正
する
議定書
というものでございます。なおこの署名、調印を見ると同時に、これが十月二十九日から発効することになりますので、この
議定書
に基く
公式議事録並び
にこれに伴うこまかい
問題等
につきましても協議をいたしました結果、この細目につきましてもいろいろ話合いが進んで参
つた
わけでございます。今回はこの
NATO協定
に準じて
改訂
せられましたこの
協定
第十七条に基きまして、
わが国
の今まで動いて参りました
刑事特別法
のそれに抵触する
部分
を
改正
しようとするのが、今回の
法律案
であります。 今回の
法律案
の主要なる点は割合に簡単でございますが、従来の十七条の扱い方とがらつとかわりました、最近の
国際公法
のいわばモデル的なものといわれる
NATO協定
をそのままこちらに取入れたものでございますからして、その線に基いて、
身柄
のやりとりその他の問題もかわ
つて
来たわけでございます。 簡単に
NATO協定
の骨子をお話いたしますと、いわゆる
裁判権
の所在について
専属的裁判権
、それから
裁判権
が競合する場合の第一次
裁判権
、それから第二次
裁判権
、こういう観念が入
つて
来たわけでございます。いわゆる
専属的裁判権
と申しますのは、甲の国において処罰できるけれ
ども
乙の国では全然処罰ができないというものは、甲の国において
裁判権
を
行使
する。逆の場合においては乙の国において
行使
する、これはきわめてはつきりいたしております。次に、甲の国の
法律
によ
つて
これを処罰することができ、同時に乙の国においてもこれを処罰することができるという場合にはどうするか。これが大
部分
の場合でございますが、その場合にはどうするか。そこで
裁判権
の競合という問題が生じて来るわけでございます。
専属的裁判権
につきましては、新たなる十七条の第二項にその
規定
がございますが、競合する場合の
規定
は第三項にございます。第一次
裁判権
を
アメリカ
の方で
行使
する場合は、次の場合に限られます。これは
行政協定
十七条を
改正
する
議定書
の
プリント
の
附属書
のところをごらんになりますとよくわかるのでございますが、もつ
ぱら当該国
の
財産
若しくは安全のみに対する罪又はもつ
ぱら合衆国軍隊
の他の
構成員
若しくは
軍属
若しくは
合衆国軍隊
の
構成員
若しくは
軍属
の
家族
の
身体
若しくは
財産
のみに対する罪」いわば
向う
だけの
関係
の罪というふうなものについで
犯罪
が犯された場合、それからもう一つは「
公務執行
中の作為又は不作為から生ずる罪」これは、従来
国際公法
上
公務
中の
犯罪
は
軍隊側
において専属的に処罰するという
考え方
がございましたものですから、それを第一次
裁判権
として取入れて
規定
してあるわけであります。その他の一切の場合はこちら側に第一次
裁判権
がある、かようにきめて参
つた
わけであります。そこで第一次
裁判権
と第二、次
裁判権
を同時に
行使
してもら
つて
は困るので、
最初
に第一次
裁判権
を
行使
する国がその放棄の
意思表示
をや
つた
場合において、
相手側
においてその第二次
裁判権
を
行使
するということになるのでありますから、そこで三項のCというところで第一次
裁判権
を有する国が他方の申出によ
つて
これを放棄する
規定
を置いたわけであります。さような
関係
からいたしまして、今回の
刑事特別法
の
改正
もその線に沿うて諸般の
改正
が加えられたわけであります。
解説書
の第七ページに
逐条解説
というところがございますが、これをちよつと読み上げます。
最初
は第十条
関係
でございますが、
合衆国軍隊
の使用する
施設
又は
区域
を「
合衆国軍隊
がその
権限
に基いて警備している
合衆国軍隊
の使用する
施設
又は
区域
」に、「
承認
を受けて」を「
同意
を得て」に改め、「
検察官
若しくは
司法警察職員
から」を削り、同条に次の一項を加える。」この第一項から申し上げます。 第一項は従来「
施設
又は
区域
」というふうに野放しに
規定
しておりましたものを、「
合衆国軍隊
がその
権限
に基いて警備している
合衆国軍隊
の使用する
施設
又は
区域
」というふうに限定いたしましたのは、第十月a及びbに関する
公式議事録
にその旨の
規定
がされたからであります。
議定書
の
プリント
の十三ページの1というところに、「
合衆国
の
軍当局
は、通常、
合衆国軍隊
が使用し、且つ、その
権限
に基いて警備している
施設
及び
区域
内ですべて
逮捕
を行うものとする。このことは、
合衆国軍隊
の
権限
のある
当局
が
同意
する場合又は重大な罪を犯した
現行犯人
を追跡している場合において
日本国
の
当局
が前記の
施設
又は
区域
内において
逮捕
を行うことを妨げるものではない。」と
規定
してございまして、
合衆国
の
軍当局
の
警察権
というものの
行使
する
範囲
はきわめて限定されて参
つた
わけであります。それに伴いまして、今回の
改正
で、この
権限
に基いて警備している場合だけを
向う
がやれる。その他の場合は一切
日本側
でやるというふうに改ま
つて
来たのに伴いまして、かような
改正
をいたした次第でございます。 次の「
承認
を受けて」を「
同意
を得て」というふうに改めましたのは前の
文字
がアプルーヴという
文字
を
使つてめ
りましたのがコンセントという
文字
にかわりましたので、語の調子から来る響きが若干違
つて
来るだけで、実質的にはさほど違
つて
おりません。 次の「
検察官
又は
司法警察職員
から」という字を削りましたのは、従来の
用語例
に従いますと、
検察事務官
はどうなるのか、
鉄道公安官
はどうなるのかというような問題になりまして、
権限
を持ちながらこれに乗つか
つて
来ない場合も考えられますので、いつそのことそれらの疑念をなくすためにこれを除いておいた方がよかろう。かような
趣旨
であります。 第二項を追加いたしまして、「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは
禁こ
にあたる罪に係る
現行犯人
を追跡して
前項
の
施設
又は
区域
内において
逮捕
する場合には、同項の
同意
を得ることを要しない。」ということにいたしましたのは、比較的重い
現行犯人
が逃走する場合にこれを追跡してその
施設
内に入る場合には
同意
もいらない、引続きおつかけて行
つて
つかまえてよろしい。かような
趣旨
であります。この点は従来も
アメリカ側
との
合同委員会
のとりきめによりまして、
内容
はそのまま認められてお
つたの
であります。これが今回先ほど申し上げました
通り公式議事録
の中に入
つて参
りましたので、それをそのまま今回取入れまして、
同意
なしに
向う
の
施設
内に入
つて
つかまえることができる、かようにいたした次第でございます。 次は第十一条でございます。「第十一条の見出し中「
施設
又は
区域外
で」を削り、「
合衆国軍隊要員
」を「
合衆国軍隊
の
構成員
又は
軍属
」に改め、同条第二項中「
合衆国軍隊
の使用する
施設
又は
区域外
で」を削り、「
合衆国軍隊
の
構成員
、
軍属
又は
家族
(以下「
合衆国軍隊要員
」という。)であることを確認したときは、」を「
合衆国軍隊
の
構成員文
は
軍属
であり、且つ、その者の犯した罪が
行政協定
第十七条つ第三項aに掲げる罪のいずれかに該当すると明らかに認めたときは、「一に改める。一この「
合衆国軍隊
の使用する
施設
又は
区域外
で」ということを削りつまして、そして「
軍属
又は
家族
」としたのは、この、
合衆国軍隊要員
」という従来は広い概念でこの
引渡し
の義務を認められてお
つたの
でございまするが、今回の立て方は
家族
でございますと、先ほど申し上げました
通り
十七条三千項の第一次
裁判権
を
向う側
で持つという場合がないわけでございます。そこでさような
関係
から今回はこれがなくな
つて参
ります。同時にこの十七条三項aに掲げる、つまり
軍人軍属
で第一次
裁判権
を
向う側
で持
つて
おる場合には、とこういうふうにな
つて
来るわけでありまして、この場合には
刑事訴証法
の
規定
にかかわらず、ただちに
向う側
に
引渡
す、かような私
趣旨
にかわ
つて
来たわけでございます。 次は第十二条
関係
でございます。「第十二条第一項中「
行政協定
第十七条第三項b又はcによる
引渡
の
通知
があ
つた
場合」を「
合衆国軍隊
から
日本国
の
法令
による罪を犯した者を引き渡す旨の
通知
があ
つた
場合にさ改める。」これは御
承知
の
通り
十七条全体の方から全部かわ
つて参
つりまして十七条三項のbまたはcという
引渡し
はなくな
つて参
りました。さようなことから今回は
合衆国軍隊
から
日本国
の
法令
による罪を犯した場合に
引渡し
の
通知
があ
つた
場合として、広くあらゆる場合を入れる、かような
趣旨
でございます。次は「第十三条第一項中「
合衆国軍隊
の使用する
施設
若しくは
区域
」を「
合衆国軍隊
がその
権限
に基づいて警備している
合衆国軍隊
の使用する
施設
若しくは
区域
」に改め、「以下同じ。」を削り、「
承認
を受けて」を「
同意
を得て」に改め、同条第二項を削る。」これはま
つた
く先ほど申したと同じ
理由
に基きまして、
差押
え、
捜索
、
検証等
をなす場合に、従来は
施設区域
内には
原則
として入れないという
建前
がとられておりましたのを、同じ
施設区域
でございましても、現に警備しておるという場合に限定いたしまして、その他の場合は、すべてこちらで自由にやれる。「
承認
を受けて」というのを「
同意
を得て」に改めましたのも、先ほど申したのとま
つた
く
同一
でございます。それから第二項は、従来かつような
規定
がございます。「
合衆国軍隊
の使用する
施設
又は
区域外
にある
合衆国軍隊要員
の
身体
又は
財産
についても、
前項
と同様である。但し、
被疑者
を
逮捕
するため
捜索
する場合、
逮捕
の現場で
差押
、
捜索
若しくは
検証
をする場合、又は
行政協定
第十七条第三項aに従
つて
逮捕
することができる「
合衆国軍隊要員
についてその
事件
の
証拠
を収集するための
差押
、
捜索
若しくは
検証
をする場合は、この限りでない。」かような
規定
があ
つた
わけでございます。しかし今回はすべて普通の
刑事訴訟法
の
手続
でこれがやれるということになりましたので削除いたしたわけでございます。 次は二十一ページの第十八条
関係
でございます。「第十八条第一項、第三項及び第四項中「
合衆国軍隊要員
」を「
合衆国軍隊
の
構成員
、
軍属
又は
合衆国
の
軍法
に服する
家族
」に改める。」これは
日本国
の
法令
によ
つて
処罰し得ない
事件
、簡単に申しますと、
向う
だけでやれる
事件
、この
事件
について共助の
規定
が従来あ
つた
わけでございます。ただ従来は「
合衆国軍隊要員
」ということで、
軍人
、
軍族
、それからあらゆる豪族がこれに入
つて
来てお
つた
わけでございますが、今回は
行政協定
の
改訂
に伴いまして、同じ
家族
でもいわゆる
軍法
に服する者というものだけが
行政協定
の対象にな
つて
来るもの、あとはすべて普通の人と同じように取扱う、かようなことにな
つて参
りましたので、それに伴いまして「
軍法
に服する
家族
」というふうに狭めた表現が使
つて
あるわけでございます。 それから
附則
でございますが、二十四ページ
附則
第一項は、「この
法律
は、公布の日から施行する。」第三項は「
検察官
又は
司法警察員
は、
逮捕
された者が
合衆国軍隊
の
構成員
、
軍属
又は
家族
であり、且つ、その者の犯した罪が
昭和
二十八年十月一十九日前の行為に係るものであることを確認したときは、この
法律
による
改正
後の第十一条第一項の
規定
により
引渡
をなすべき場合に該当しない場合においても、
刑事訴訟法
の
規定
にかかわらず、直ちに
被疑者
を
合衆国軍隊
に引き渡さなければならない。」この点は、われわれが従来
訴訟法
の立て方として考えておりました、ことに
刑事訴訟法
につきましては、
法律
の
改正
がありました場合には、罪の犯された日のいかんを問わず、現にその
手続
をする際の
法律
によ
つて
、これを
規定
するというのが大体の立て方であ
つた
わけでございます。ただこの立て方、一種の
法制
につきましては、ま
つた
く反対の
法制
が一つございます。従来のわれのなれておる今の立て方は、いわば
大陸法系
の
考え方
でございます。しかるに
英米法系
におきましては、
むしろ罪
を犯したときを標準にしてそのときの
手続法規
に
従つて事
を律するというのが一般でございます。
アメリカ
の諸州における
立法例
ならびに
裁判例
もそれに従
つて
おるのでございます。さような根本的の
法制
の違いからいたしまして、この点につきましては、
アメリカ側
と
最後
まで
論争
があ
つたの
でございますが、私
ども
としてこの問題についての資料を集めてみましたところ、現在に
至つて
、つまりこの
条約
が発効して後に、さかのぼ
つて
前の
犯罪
を取立てて、これを検挙処罰する
実益
のある
犯罪
というものはほとんど見当らない。つまりさかのぼ
つて
一年前の
事件
を検挙しようというふうな事実はほとんど見当らない。そこでわれわれといたしまては、われわれのなれた
法制
に従わせるのがいいという主張を
最後
までいたしましたが、
最後
にその
実益
がない、むしろ
向う
でやるなら
向う
でつや
つた
らよかろうというところから、
議定書
の
最後
の
適用条文
で、「この
議定書
の
規定
は、
議定書
の
効力発生
前に犯されたいかなる罪にも
適用
されない。それらの
事件
に対しては、この
議定書
の
効力発生
前に存在した
行政協定
第十七条の
規定
が
適用
されるものとする。」
つまり従前
の例で行くというような
建前
をと
つた
わけでございます。それに伴いまして、ただいまのような
経過規定
に
なつ
たわけでございます。 それから第三項は、「
司法警察員
は、
前項
の
規定
により
被疑者
を
合衆国軍隊
に引き渡した場合においても、必要な
捜査
を行い、すみやかに書類及び
証拠物
とともに
事件
を
検察官
に送致しなければならない。」これは要するに
前項
の
規定
によ
つて捜査
をいたした場合の
事件送致
の
規定
でございます。 第四項は、「
日本国
と
アメリカ合衆国
との間の
安全保障条約
第三条に基く
行政協定
の
実施
に伴う
国税犯則取締法等
の
臨時特例
に関する
法律
の一部を次のように
改正
する。第三条第一項
中合衆国軍隊
の使用する
施設
及び
区域
」を「
合衆国軍隊
がその
権限
に基いて警備している
合衆国軍隊
の使用する
施設
及び
区域
」に改める。」、この
改正
の
趣旨
は、今まで十条、十三条
関係
で申し上げたのとま
つた
く同
趣旨
でございます。 次は
国際連合
の
軍隊
に対する
刑事裁判権
の
行使
に関する
議定書
の
実施
に伴う
刑事特別法案
の
解説
をいたします。ただいま大臣からの
提案理由
にもありました
通り
、今回
国際連合
の
軍隊
の地位に関しまして、
刑事裁判権
の
行使
に関する新たなるとりきめが成立したわけでございます。その
考え方
は、今までございました
安全保障条約
第三条に基づく
行政協定
とこれに準じた扱いをしようということなのでございます。そこでそれに基く
アメリカ
以外の、
国際連合
の
軍隊
についての
刑事裁判
の
手続
を
いかよう
にすべきかという点につきまして、
わが国
において現在あります
刑事特別法
、この
法律
と準じた
法律
をつくらなければいけない、かようにな
つて参
つた
わけでございます。
立法
の
経過
におきましては、
刑事特別法
の
規定
を何か簡単に準用するようなことはできないだろうかというふうなことを考えましたけれ
ども
、簡単にこれを準用するということでは、間違いが起きてもいけませんし、そこでほとんど全部同文でございますが、ただ
最初
の
定義
と、それからその後の
合衆国軍隊
というふうな
文字
を
国連
の
軍隊
というふうに書きかえるというような程度において、全部書き直したわけでございます。御
承知
の
通り
、
行政協定
に伴う
刑事特別法
におきましては、第一章において
定義
を掲げ、第二章、第二条から第九条までは
罰則
がございました。ところが
国連関係
ではそのような
罰則
の点は全然不要でございますので、これを落しました。
行政協定
に伴う
特別法
の第三章の第十条、
刑事手続
の移行の
規定
を
そつくり
そのまま今回の
法案
に、第二条以下として取入れて参
つた
わけでございます。でございますからその
内容
は、従来の
刑事特別法
とほとんど
同一
というふうに御
承知願つてけつ
こうだと思います。第一章第一条の
定義
を読みますと、「第一条この
法律
において「
議定書
」とは、
日本国
における
国際連合
の
軍隊
に対する
刑事裁判権
の
行使
に関する
議定書
をいう。」これは簡単でございます。 第二項は、「この
法律
において「
派遣国
」とは、千九百五十年六月二十五日、六月二十七日及び七月七日の
国際連合安全保障理事会決議
並びに千九百五十一年二月一日の
国際連合総会決議
に
従つて朝鮮
に
軍隊
を派遣した
アメリカ合衆国
以外の国であ
つて
、
議定書
に署名し、且つ、
日本国
との間に
議定書
の
効力
が発生したものをいう。」この
派遣国
と申しますのは、現在までに署名いたしましたイギリス、カナダ、オーストラリア、ニユージーランド及び
南アフリカ連邦
、かようにな
つて
おるわけでございます。 次に第三項の、「この
法律
において「
国際連合
の
軍隊
」とは、
派遣国
が
前項
に
規定
する諸
決議
に
従つて朝鮮
に派遣した
陸軍
、
海軍
及び
空軍
であ
つて
、
日本国内
にある間におけるものをいう。」先ほど読み上げましたような諸
決議
に
従つて派遣国
が
朝鮮
に
軍隊
を派遣しておるわけでございますが、それが
日本国内
における間のみを言うのでございます。
日本国内
というのは、もちろん
日本国
の
行政権
の及ぶ
範囲
ということでございます。単純に
朝鮮
に派遣された、
向う
にあるというものはもちろん入
つて
おらないのであります。次に第四項、「この
法律
において、「
国際連合
の
軍隊
の
構成員
」とは
国際連合
の
軍隊
に属する人員で、現に服役中のものをいう。」これはいわゆる簡単に
軍人
という者でございます。 次に第五項、「この
法律
において「
軍属
」とは、
派遣国
の国籍を有する文民(
派遣国
及び
日本国
の二重国籍者については、当該
派遣国
が
日本国内
に入れた者に限る。)で、当該
国際連合
の
軍隊
に雇傭され、これに勤務し、又はこれに随伴するもの(通常
日本国内
に在留する者を除く。)をいう。」これは
行政協定
の際において問題になりましたと同様に、
派遣国
の国籍を有する者であ
つて
、二重国籍の場合には、
向う
がこちらに連れて来た者という場合だけに限るわけでございますが、それで
軍隊
との
関係
は、雇用、勤務、随伴というふうな
関係
がなければいかぬということであります。 第六項は、「この
法律
において「
家族
」とは、左に掲げる者(
日本国
の国籍のみを有する者を除く。)をいう。一、
国際連合
の
軍隊
の
構成員
又は
軍属
の配偶者及び二十一歳未満の子 二、
国際連合
の
軍隊
の
構成員
又は
軍属
の父、母及び二十一歳以上の子で、その生計費の半額以上を当該
国際連合
の
軍隊
の
構成員
又は
軍属
に依存するもの――これも前に
刑事特別法
の際に申し上げた
通り
、
行政協定
の第一条に掲げたと同じ形でございます。 次に、第二章の
刑事手続
でございますが、五ページに第二条がございます。「第二条
国際連合
の
軍隊
がその
権限
に基いて警備している
国際連合
の
軍隊
の使用する
施設
内における
逮捕
、勾引状又は勾留状の
執行
その他人身を拘束する
処分
は、当該
国際連合
の
軍隊
の
権限
ある者の
同意
を得て行い、又は白該
国際連合
の
軍隊
の
権限
ある者に嘱託して行うものとする。2 死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しては
禁こ
にあたる罪に係る
現行犯人
を追跡して
前項
の
施設
内で
逮捕
する場合には、同項の
同意
を得ることを要しない。」これは先ほど十条の
改正
について申し上げました
通り
、
国際連合
につきましても、その
軍隊
がその
権限
に基いて警備しておる
施設
内におけるという場合だけに限
つて
おります。 それからなおこれに入る場合は
同意
を得て行う、あるいは嘱託を要する。第二項は、
現行犯人
を追いかけた場合には、その
同意
もいらない、かような
趣旨
であります。 次は第三条、第八ページでございまして、「
検察官
又は
司法警察員
は、
逮捕
された者が
国際連合
の
軍隊
の
構成員
又は
軍属
であり、且つ、その者の犯した罪が
議定書
の
附属書
第三項aに掲げる罪のいずれかに該当すると明らかに認めたときは、
刑事訴訟法
(
昭和
二十三年
法律
第百三十一号)の
規定
にかかわらず、直ちに
被疑者
を当該
国際連合
の
軍隊
に引き渡さなければならない。2
司法警察員
は、
前項
の
規定
により
被疑者
を
国際連合
の
軍隊
に引き渡した場合においても、必要な
捜査
を行い、すみやかに書類及び
証拠物
とともに
事件
を
検察官
に送致しなければならない。」これも先ほど
行政協定
の第十一条について御
説明
いたしましたとま
つた
く
同一
でございます。ただ今回の「
議定書
の付属書第三項aに掲げる罪」というふうに
文字
がかわ
つて
おりますが、
内容
的には先ほど申し上げました
行政協定
の第十七条の改ま
つた
第三項のaと同様であります。 次は第四条、第十一ページでございます。「
検察官
又は
司法警察員
は、
国際連合
の
軍隊
から
日本国
の
法令
による罪を犯した者を引き渡す旨の
通知
があ
つた
場合には、裁判官の発する
逮捕
状を示して
被疑者
の
引渡
を受け、又は
検察事務官
若しくは
司法警察職員
にその
引渡
を受けさせなければならない。2
検察官
又は
司法警察員
は、引き渡されるべき者が
日本国
の
法令
による罪を犯したことを疑うに足りる充分な
理由
があ
つて
、急速を要し、あらかじめ裁判官の
逮捕
状を求めることができないときは、その
理由
を告げてその者の
引渡
を受け、又は受けさせなければならない。この場合には、直ちに裁判官の
逮捕
状を求める
手続
をしなければならない。
逮捕
状が発せられないときは、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。3 前二項の場合を除く外、
検察官
又は
司法警察員
は、引き渡される者を受け取
つた
後、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。4第一項又は第二項の
規定
による
引渡
があ
つた
場合には、
刑事訴訟法
第百九十九条の
規定
により
被疑者
が
逮捕
された場合に関する
規定
を準用する。但し、同法第二百三条、第二百四条及び第二百五条第二項に
規定
する時間は、
引渡
があ
つた
時から起算する。」これは
行政協定
に伴う
刑事特別法
の第十二条に相応するという
規定
でございます。
国際連合
の
軍隊
が日本の
法令
による罪を犯した者をつかまえて、こちらに
引渡
すという知らせがあ
つた
という場合におきましてこれをどういうふうに
わが国
の
訴訟法
とつなげるかという問題でございます。これを簡単に受取りに行
つて
もら
つて
来るわけに行きませんので、
身柄
拘束の根拠
規定
であるところの
逮捕
状の発行を受けてこれを連れに行くというような
原則
が第一項でございます。その急速を要して
逮捕
状を求めることができない場合の緊急の手配が第二項でございます。それ以外の場合におきましてはこれを釈放するということになりますが、なおこちらに
身柄
の
引渡し
があ
つた
場合の時間の起算点が
逮捕
のときからといたしますと、
刑事訴訟法
の
規定
の四十八時間、あるいは二十四時間、合計七十二時間という時間が非常に制限を受けて参りますので、これはわが方に
身柄
が来たときから起算するというようにいたした次第でございます。すべて
行政協定
に伴う
刑事特別法
の第十二条と同
趣旨
でございます。 次は十六ページ、第五条
関係
、「
国際連合
の
軍隊
がその
権限
に基いて警備している
国際連合
の
軍隊
の使用する
施設
内における、又は
国際連合
の
軍隊
の
財産
についての
捜索
(
捜索
状の
執行
を含む。)、
差押
(
差押
状の
執行
を含む。)又は
検証
は、当該
国際連合
の
軍隊
の
権限
ある者の
同意
を得て行い、又は
検察官
若しくは
司法警察員
から当該
国際連合
の
軍隊
の
権限
ある者に嘱託して行うものとする。但し、裁判所又は裁判官が必要とする
検証
の嘱託は、その裁判所又はり裁判官からするものとする。」これは
行政協定
に伴う
刑事特別法
の第十三条に相応する
規定
でございます。先ほ
ども
申し上げました
通り
、
施設
内の
差押
え
捜索等
につきましてはそれが
国連
の
軍隊
の
権限
に基いて警備されておるというものでなければいかぬわけであります。それからそれに看守する場合の
同意
あるいは嘱託を得て行うこと、これも先ほど第十条あるいは今回の第二条について御
説明
いたしたと同じでございます。 次は第十七ページの第六条
関係
でございます。「第六条
議定書
により
派遣国
の
軍事裁判所
が
裁判権
を
行使
する
事件
であ
つて
も、
日本国
の
法令
による罪に係る
事件
については、
検察官
、
検察事務官
又は
司法警察職員
(鉄道公安職員を含む。)は
捜査
をすることができる。2
前項
の
捜査
に関しては、裁判所又は裁判官は、令状の発付その他
刑事
訴訟に関する
法令
に定める
権限
を
行使
することができる。」これは
行政協定
に伴う
刑事特別法
の第十四条に相応する
規定
でございます。
向う
で
裁判権
を
行使
する
事件
であ
つて
も、日本の
法令
に違反する限り、日本の
捜査
官においても
捜査
の
権限
を持
つて
おるということを明らかにした。これはもう当然のことだと思いますけれ
ども
、念のために明らかにした次第でございます。これは従来の第十四条
関係
とま
つた
く同じでございます。 次は十九ページの第七条、「第七条
派遣国
の
軍事裁判所
の嘱託により、裁判官から
派遣国
の
軍事裁判所
に証人として出頭すべき旨を命せられ又は
派遣国
の
軍事裁判所
において宣誓若しくは証言を求められた者は、これに応じなければならない。2
前項
の者が、正当な
理由
がないのに、出頭せず、又は宣誓若しくは証言を拒んだときは、一万円以下の過料に処する。」これは
行政協定
に伴う
刑事特別法
の第十五条に相応する
規定
でございます。
向う
の
軍事裁判所
からある人間を証人として調べる必要があ
つて
呼出しをかける場合がございます。ところが、かんじんの証人が言うことを聞かない。従
つて
それについての裁判が適正に、あるいは迅速に進行しないということがありましては困るのでありまして
行政協定
の際と同様に、今回も
国連
協定
の六項のaにあります
趣旨
をそのまま取り入れたものであります。 次は第二十ページの第八条
関係
でございます。「第八条正当な
理由
がないのに、前条第一項の
規定
による裁判つ官の出頭命令に応じない証人について
派遣国
の
軍事裁判所
から嘱託があ
つた
ときは、裁判官は、その証人に対して勾引状を発して、これを、
派遣国
の
軍事裁判所
に勾引することができる。2
前項
の勾引状には、
派遣国
の
軍事裁判所
の嘱託の
趣旨
を記載しなければならない。3 第一項の勾引状は、
検察官
の指揮により、
司法警察職員
が
執行
する。4
刑事訴訟法
第七十一条及び第七十三条第一項前段の
規定
は、第一項の
規定
による勾引に準用する。」これも
行政協定
に伴う
刑事特別法
の第十六条にま
つた
く相応する
規定
でございます。これは何としても出て来ない、しかしその
事件
の証人として一度はぜひ調べなければいかぬというような場合には、日本の裁判所において、証人について特別な条件のもとに勾引状を発するのと同様に、この際も勾引状を発して証人を連れて行
つて
証言させるという
趣旨
でございます。2項、3項、4項はいずれもそれの
手続
でございますが、これもま
つた
く前の
刑事特別法
と同じ
趣旨
でございます。 第二十二ページの第九条、「第九条裁判所、
検察官
又は
司法警察員
は、その保管する書類又は
証拠物
について
派遣国
の
軍事裁判所
又は
国際連合
の
軍隊
から、
刑事
事件
の審判又は
捜査
のため必要があるものとして申出があ
つた
ときは、その閲覧若しくは謄写を許し、謄本を作成して交付し、又はこれを一時貸与し、若しくは引き渡すことができる。」これは先ほど申したと同じ協力義務の一つの面でございまして、裁判所、
検察官
もしくは
司法警察員
は、その保管する書類、
証拠物
を、
向う
の裁判所の
捜査
のためあるいは審判のために必要であるから貸してくれと言われた場合、これに応じて
向う
に貸し出すという
趣旨
でございます。これは
行政協定
に伴う
刑事特別法
の第十七条と同じ
規定
でございます。 次は二十四ページの第十条でございます。「第十条
検察官
又は
司法警察員
は
国際連合
の
軍隊
から、
日本国
の
法令
による罪に係る
事件
以外の
刑事
事件
につき、当該
国際連合
の
軍隊
の
構成員
、
軍属
又は当該
派遣国
の
軍法
に服する
家族
の
逮捕
の要請を受けたときは、これを
逮捕
し、又は
検察事務官
若しくは
司法警察職員
に
逮捕
させることができる。2
国際連合
の
軍隊
から
逮捕
の要請があ
つた
者が、人の住居は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内にいることを疑うに足りる相当な
理由
かあるときは、裁判官の許可を得て、その場所に入りその者を
捜索
することができる。但し、追跡されている者がその場所に入
つた
ことが明らかであ
つて
、急速を要し裁判官の許可を得ることができないときは、その許可を得ることを要しない。3 第一項の
規定
により
国際連合
の厚生員、
軍隊
の
構成員
、
軍属
又は当該派遣い国の
軍法
に服する
家族
を
逮捕
したときは、直ちに
検察官
又は
司法警察員
から、その者を当該
国際連合
の
軍隊
に引き渡さなければならない。4
司法警察員
は、
前項
の
規定
により
国際連合
の
軍隊
の
構成員
、
軍属
又は当該
派遣国
の
軍法
に服する
家族
を引き渡したときは、その旨を
検察官
に通報しなければならない。」これは
行政協定
に伴う
刑事特別法
の第十八条とま
つた
く同
趣旨
で、
向う
の
刑事
事件
であ
つて
日本国
の
法令
にはひつかからぬ
事件
、さような場合の共助的な
規定
でございます。一項は
向う
の要請がありました場合の
逮捕
の
手続
、二項は
捜索
を例外的にできるという
規定
でございます。三項は
引渡し
の
規定
、つまり
向う
からの要請に基いてつかまえたのを、うまく手に入
つた
からというので
引渡
す際の
規定
、四項は
引渡し
た場合の通報の
規定
でございます。 次は第二十六ページの第十一条、「第十一条
検察官
又は
司法警察員
は、
派遣国
の
軍事裁判所
又は
国際連合
の
軍隊
から、
日本国
の
法令
による罪に係る
事件
以外の
刑事
事件
につき、協力の要請を受けたときは、参考人を取り調べ、実況見分をし、又は書類その他の物の所有者、所持者、若しくは保管者にその物の提出を求めることができる。2
検察官
又は
司法警察員
は、
検察事務官
又は
司法警察職員
に
前項
の
処分
をさるせことができる。3 前二項の
処分
に際しては、
検察官
、
検察事務官
又は
司法警察職員
は、その
処分
を受ける者に対して
派遣国
の
軍事裁判所
又は
国際連合
の
軍隊
の要請による旨を明らかにしなければならない。4 正当な
理由
がないのに、第一項又は第二項の
規定
による
検察官
、
検察事務官
又は
司法警察職員
の
処分
を拒み、妨げ、又は忌避した者は、一万円以下の過料に処する。」これはやはり先ほどと同じように、日本の
法令
による罪にかかる
事件
以外の
刑事
事件
、
向う
の
犯罪
の
事件
について協力の要請を受けた場合に、参考人を取調べたりあるいは実況見分をしたり、その他任意の提出を求めることができるという、いわゆる任意
捜査
の根拠
規定
でございます。二項は
司法警察員
、
検察官
、
検察事務官
なり、
司法警察職員
に関する
規定
でございます。三項は、その
処分
をする際には、
国際連合
の
軍隊
の要請によるものだという
趣旨
を明らかにしてやるということでございます。四項は、それらの
処分
を妨害したり忌避した者に対する行政的な過料でございます。これは
行政協定
に伴う
刑事特別法
の第十九条にこれと相応する
規定
がございます。 次は二十九ページ、
刑事
補償に関する第十二条の
規定
でございます。「
刑事補償法
(
昭和
二十五年
法律
第一号)の
適用
については、
派遣国
の
軍事裁判所
又は
国際連合
の
軍隊
による抑留又は拘禁は、
刑事訴訟法
による抑留又は拘禁とみなす。」御
承知
の
通り
刑事補償法
におきましては、
刑事訴訟法
による抑留または拘禁でなければ補償の
規定
が働いて参りません。そこで今回の
国連
との
協定
に基きまして、
向う
で
身柄
を
逮捕
してこちらによこすとい
つた
ような場合、
向う
にある期間はこちらの
刑事補償法
には乗
つて
来ないわけでございますが、その期間をこの
規定
によ
つて
刑事
補償の対象に入れるという
趣旨
の
規定
でございまして、これはやはり
行政協定
に伴う
刑事特別法
の第二十条と相応する
規定
でございます。
附則
は、公布の日から施行するということでございます。 以上簡単でございますが、詳細は
解説書
に述べてある
通り
でございます。
小林錡
5
○
小林委員長
これをも
つて
政府
の
説明
は全部終了いたしました。 本
会議
における採決がありますので、午前中の
会議
はこの程度にとどめ、午後一時三十分より再開して両案に対する質疑に入りたいと思います。それまで休憩いたします。 午後雰時三分休憩 ――――◇――――― 午後二時二分
開議
小林錡
6
○
小林委員長
休憩前に引続き
会議
を開きます。 午前中
政府
の
説明
を聴取した
日本国
と
アメリカ合衆国
との間の
安全保障条約
第三条に基く
行政協定
に伴う
刑事特別法
の一部を
改正
する
法律案
及び
日本国
における
国際連合
の
軍隊
に対する
刑事裁判権
の
行使
に関する
議定書
の
実施
に伴う
刑事特別法案
を一括して質疑に入ります。質疑の通告がありますから、順次これを許します。林信雄君。
林信雄
7
○林(信)委員
当局
より
説明
せられましたそれぞれの
法案
について簡単な質疑を試みたいと思うのであります。まず前提といたしまして、この
議定書
に現われて参りましたいわゆる
裁判権
の問題がかような段階に到達いたしましたことは、国家として大きな慶祝すべきことであろうと思うのであります。われわれといたしましても国民の一人として深く喜びの意を表するものであります。治外法権的な裁判の姿であ
つた
ということで強い憤懣の意を漏らしてお
つた
諸君におきましても、さだめし満足の意を表しておることであろうと思うのであります。かような意味をもちまして、外務及び法務の御
当局
の格段の御努力に対して、ここにまた深い敬意を表する次第であります。かような意味をもちまして、究極いたしまするところ、われわれはこの
法案
を通過せしめることにやぶさかなものではありません。いな賛意を表するものであります。従いまして、私の御質問申し上げますることも、さような根本的な問題ではないことをまず御了承くだす
つて
けつこうであります。言いかえますれば、用語の概念等の二、三、あるいは
実施
上の面について心得ておらなければならないのではないかと思うような諸点についての質疑なんであります。 まず両
法案
のうち、これはたいへん長いので略称いたしますが、連合国軍の
刑事裁判権
に関する
刑事特別法
関係
において、いわゆる対象と相なりまする
軍隊
あるいはその他の人々に対する前提であるべきところの
派遣国
の
範囲
の問題なんですが、われわれの聞くところでは、結局それは十六箇国とか聞いておるのであります。しかるに、そのうちすでに
議定書
に調印せられておりまするのは、
説明
書によりますれば、
アメリカ
を加えて五箇国程度のごとくでありますが、これはいかなる事情でかように目下のところ少いのでございますか。あるいはこの文書以後において、着々累加されておるものなんでございましようか。あるいはそれは非常にうるさい、やつかい、めんどうな問題で、その余の
派遣国
の調印は遅れるものなんでしようか。かりにそういうものであ
つた
とすれば、それら
派遣国
の国々はこの議定
関係
についてどういう感じを持
つて
対処しているのか、あるいは憂慮すべきものがあるように思うのでありますが、これらの点を簡単に御
説明
願います。
津田実
8
○津田
政府
委員 現在
国連
の
決議
によりまして
朝鮮
へ今まで派遣しました国一は、連合王国、カナダ、オーストラリーア、ニユージーランド、南ア連邦、デンマーク、スエーデン、ベルギー、ルクセンベルグ、コロンビア、エチオピア、フランス、ギリシア、インド、イタリア、オランダ、ノールウエー、フイリピン、タイ、トルコ、こういうことにな
つて
おります。このうち現在まで署名いたしましたものは、米国を除きましたイギリス、カナダ、オーストラリア、ニユージーランド、南ア連邦、これだけにな
つて
おります。これだけにつきましては、直接この
議定書
の
効力
が及んでいるわけであります。南ア連邦につきましては、当初の署名国でありませんで、二十九日に初めて署名をいたして加盟いたした、かように相な
つて
おります。これら署しております以外の国が加入を申し込みました場合におきまして
日本側
がこれに
同意
をし得るならば
同意
いたします。
同意
いたしますれば、署名ができるわけでありまして、それによりまして、この
議定書
の
効力
を受けることができるわけであります。現在日本に駐留いたしまする
軍隊
は、ただいま署名いたしている国が大
部分
でありまして、あとの諸国はほとんど言うに足らない、数名あるいは十数名というような程度の数でございます。従いまして、本国における
手続
等の
関係
もありまして、急に署名ができないというような事情もあるようでございまして、署名が遅れている次第であります。しからば、署名をしていない国の
軍隊
の
構成員
、
軍属
等が
犯罪
を犯しました場合はいかなる法規によるかということに相なると思いますが、これはすでに御
承知
の
通り
、
北大西洋条約
当事国間の
協定
はすでに十四箇国において結ばれており、その上今回日米におきましてこれと同じ方式の
条約
が結ばれた次第であります。さらに今回日本と、ただいま申し上げましたカナダ、オーストラリア、ニユージーランド、イギリス、南阿連邦とも同じNATO方式によ
つて
結ばれたわけでありまして、もはやかような
条約
は国際法の水準に達しておるということがいえる、かように考える次第であります。大体におきまして従来の国際法の線と相違がないわけでありますので、これらの加入いたしていません諸国に対しましても、この
議定書
の
趣旨
に従
つて
運用することは当然さしつかえないことと思われるのであります。のみならずこれらの諸国は、先ほど申しました五箇国が調印いたします調印式にも異議なく参列いたしておりますので、その意味におきましても、もはや日本がこの
議定書
の
趣旨
に従
つて
運用することに、何ら異議はないものと認め得る次第であります。さような方針で参ることになると思います。
林信雄
9
○林(信)委員 あまり憂慮すべき状況もうかがわれないと思うのであります。一応納得申し上げる次第であります。 次に日米
行政協定
に伴う
刑事特別法
の一部
改正
法案
の第十条あるいは十三条に現われて参ります「
合衆国軍隊
がその
権限
に基いて警備している
合衆国軍隊
の使用する
施設
又は
区域
」云々という、軍が警備しておる
施設
、こういうことが新しく現われて参りました。従いまして警備してない
施設
との間に
適用
程度を異にしておる、こういうことでありますと、具体的にそういう警備しておる
施設
もしくは
区域
、しからざるもの、こういうことが実務
執行
上におきまして問題ないことに今日より予定されなければ、
執行
者においては多大の不便があると思うのであります。概念的な
説明
は一応
説明
書に見えてお
つた
ようであります。この点をやや詳細にあるいは具体的に御
説明
を願いたい、こう思うのであります。 これと牽連いたしまして、かような
軍隊
の
権限
に基いて警備しておる
区域
は、
施設
及び
区域
内のうちどの程度のものであるか、その比率が高いのか、すなわち広さ等において広いのかあるいは狭いのかとい
つた
ようなこと、なかんずく大衆に最も
関係
を持つものとして具体的の例として私は一つ頭に浮んで参りまするのは、国際空港として最も親しまれておる羽田の空港のごとき、すでに軍自体の専用を解かれて現に使用しておるとはいいながら、まだこれに接続いたします地域あるいはそのうちに軍要員等の配置があるのではないか、かような点も思いまして、一つの具体的な場所としましてそういうものはこの
法案
の
実施
上においてはいずれの地域であると考えてよろしいのかとい
つた
ような点をひつくるめまして御
説明
願いたい。
津田実
10
○津田
政府
委員 「
合衆国軍隊
がその
権限
に基いて警備している
合衆国軍隊
の使用する
施設
又は
区域
」、かような表現をしておりますのは、念的にはすでに
説明
書に書いてある
通り
でございますが、実質的に申しますと大体どういうものが当るかと申すわけでありますが、逆に警備していないものをあげて申し上げつる方がよろしいかと思います。 まず全国にあります飛行場のうち不時着飛行場等はふだんは要求がないわけでありまして、全然警備員等を置いておりません。そういうところはもちろんこれに入るわけであります。それから演習場、射撃場等につきましても、平常使用しない場合は全然
合衆国軍隊
がおりません。従
つて
そこは警備されておりません。さような場所が全国に相当散在しております。大体そういうような場所をさしておるのでありまして、常駐しておる場合は
軍隊
の本質から申しまして、歩哨を立て、あるいはその他の方法によ
つて
警備をいたしておる場合が大
部分
でございますので、常駐いたしておる場合はこの警備しておる
施設
または
区域
というようになると大体考えてよろしいと思います。もとよりただいま申し上げました不時着飛行場あるいは射撃場、演習場等におきましても、演習期間あるいは使用期間は大体において警備しておるようでございます。 それから空港の問題でございますが、羽田は私はちよつとつまびらかにはいたしませんが、大体聞いておるところによりますと、
日本側
の専用
区域
と、それから
合衆国軍隊
との共用
区域
と、
合衆国軍隊
の専用
区域
の三つにわかれておるように聞いております。従いまして専用
区域
はもちろん
日本側
でありますが、共用
区域
も大体において日本の警察官と
アメリカ側
の警備員とが警備しておるようでありましてこの場合共用
部分
につきましては、従来ともこれは
日本側
の自由にいたしておりますので、共用
部分
は大体問題がないというふうに考えております。従いまして羽田のうちの専用分につきましては大体において
アメリカ
が警備しておるようでありますので、これは警備しておる
施設
に入る、かように考えております。
林信雄
11
○林(信)委員 結局
説明
書に現われました概括的な
説明
多く出ないようでありますが、具体的に言
つて
、たとえば常駐の見まわりをしておればこれは警備とい
つた
程度になると思うのでありますが、随時の見張り程度のものあるいは臨時的の見まわり程度のもの、そんなものがどんなふうに解釈せられるのか、あるいは場所によ
つて
は一定の区画をなしてお
つて
、外の自由の出入りはもちろん禁止してあるし、特にその上に警戒を厳重にする意味におきまして警戒電鈴等をつけてその旨を強調しているとい
つた
ようなものが警備
区域
と見られるかどうかというような点で、私はかなりきわどい
部分
があると思うのです。全国的な一切の土地ではないので、限られた
施設区域
なのですから、これはあらかじめ
協定
いたしまして、これに
関係
を持ちまする官憲その他において万一必要といたします場合に戸い惑しないように、具体的な
協定
がなごされておることが一番便利じやないか。そういうものをまた変更することもございましようから、そういう変更に従
つて
随時その地域を
協定
しておくということが、実際の場面にぶつかりました場合にまことに適当じやないかと思うのでありますか、そういう必要はないのございましようか。そのときどきだということになりますと、一体だれがその地域の区別を判定するのか、双万てんではてんやわんやにな
つて
しまう等々の
関係
から、その辺の措置が考えられておりましようか。
津田実
12
○津田
政府
委員 この点でございますが、従来演習場射撃場等におきまして年間引続いて使用しないような場所、すなわち随時期間を区切
つて
使用するような場所につきましては、その使用開始前にこれを
日本側
の
関係
当局
すなわち
関係
の市町村長及び
関係
地区の警察機関に、
アメリカ側
の部隊長から
通知
して来るというふうに
合同委員会
でとりきめができております。それ以外に事実の問題といたしまして現地の警察機関あるいは検察機関と、部隊長あるいは憲兵司令官との間に随時連絡がございまして、どのような状況において使用しておるかということは、
日本側
に相当了知されておるような実情にあ
つた
わけであります。従いまして今後におきましても、警備しておるかどうかという問題につきましては、
日本側
の
捜査
機関には当然はつきりわかるわけでありまして、その点におきまして
アメリカ側
とトラブルが起るということは、ほとんど考えられないのではないかというふうに考えております。この警備しておるかどうかの判定の問題で必要な点は、
日本側
といたしましては
捜査
機関が知
つて
おればいいわけでございまして、その辺は大体それでまかなえるというふうに考えております。
林信雄
13
○林(信)委員 その点はその程度で一応了承しておきましよう。 続いて第十八条に見えます
関係
でありますが、「
日本国
の
法令
による罪に係る
事件
以外の
刑事
事件
とよ
つて
来るところの
議定書
の第二項aその他にも及ぶのでありますが、この
関係
について「
日本国
の
法令
による罪に係る
事件
以外の
刑事
事件
」ということでありますれば、大体その
範囲
はどんな
範囲
であるのか、そでの具体的な全部について調査がおできにをな
つて
おるか――おそらくできておるんじやないかと思いますが、その
範囲
とその罪の成立要件など御調査にな
つて
おります
範囲
について伺
つて
おきたいと思います。
津田実
14
○津田
政府
委員 「
日本国
の
法令
による罪に係る
事件
以外の
刑事
事件
」の例といたしましては、今ほど御指摘にありました
議定書
の2項のaに当る場合でありまして、たとえば
合衆国
に対する叛乱罪でありますとか、あるいは
軍人
に関しましては逃亡罪ということが普通考えられるのでありますが、そのほか
合衆国
には構成要件があるのに日本には構成要件が示されてないというような
犯罪
が考えられるわけであります。これらの
内容
につきましては、
合同委員会
の話合いによりまして随時
アメリカ側
からその
法令
並びにその
内容
を知らして参ることに相な
つて
おりますが、ただいまはまだできたばかりでありますのみならず、新しいものにつきましてはまだ通告がございません。従来のものにいたしましても大体は
日本側
で
犯罪
であるというふうに思われる
事件
が大
部分
でありますので、十八条を働かして要請があ
つた
事件
は実績においてはほとんどなか
つた
ようでございます。これはもとより
日本側
では
アメリカ
の
法律
に詳しくないわけでありますが、少くとも
アメリカ
の
当局
からかような構成要件に当る
刑事
事件
として要請がありました場合には、十八条によりまして一応
行使
するということになろうと思いますが、しかしさような構成要件がないと判明いたしておる場合には当然これに応ずべきでないというふうに考えておる次第であります。
林信雄
15
○林(信)委員 ただいまの場面はいずれにしましても専属管轄
関係
で多くの
適用
例も見ないかと思うのでありますが、続いて一般的であります
裁判権
を
行使
する権利が競合する場合、この場合について
議定書
におきましても3項aⅲとありまして、その除外例が
規定
せられております。その中のⅰにおきましてはこれはいわば外地同様のものでありますから、特に疑義はないのであります。ⅱに掲げられまする
合衆国軍隊
の
構成員
または
軍属
の「
公務執行
中の作為又は不作為から生ずる罪」これについては私かなり疑義を持つのであります。単に「
公務執行
中の作為又は不作為から生ずる罪」と書いてあるのみでありますが、これは当然被害法域はいわゆる日本人あるいはその他の第三国人を含むかどうか、日本人に加えられたる
犯罪
行為であろうと思うのです、この点も伺
つて
おきたのいのですが、最も重要でありますものは
公務執行
中というその事柄、これは具体的な場合になりますとかなりはつきりしないものができて来るのじやないか、これは日本の刑法の解釈の場合におきましても具体的な場合としてあいまいなものができて来ると同様のことであろうと思う。この
公務執行
中の行為であるということは起訴に
なつ
た場合は別に何か議定されたものがあ
つた
ようであります、起訴前におきましては何人がこれを判定し、それによ
つて
行動して行くのか、やや漠然としたお尋ねでありますが、要はそれらに関する一般の持ちそうな疑義の一斑について御
説明
願いたいと思います。
津田実
16
○津田
政府
委員 この
条約
の日本文によりますると「
公務執行
中の作為又は不作為から生ずる罪」とあります。英文によりますと
公務執行
中と申しますのは、「イン・ザ・パフオーマンス・オブ・オフイシヤル・デユーテイ」という表現にな
つて
おりますが、
公務執行
中と申しますのは概念的にはかなり狭い意味でありまして、
公務執行
時間中という意味ではないのであります。
公務
の過程においてということであります、
公務
の過程において行われる行為から必然的に生じて来るような
犯罪
、かように考えるわけでありまして、たとえば軍といたしまして戦車を運転中に、過失によりまして人に傷害を与えたというような場合、これは典型的な場合であります。それからまた
アメリカ
軍の歩哨が立
つて
おりまして、歩哨の準則に従いまして人を誰何した、その場合に相手が逃げ出したので、それを停止せしめるために威嚇射撃をした、空へ向けて発砲した、こういうような場合に、誤
つて
第三者を傷つけたというような場合、こういうような場合は明らかに
公務執行
の過程におきまして必然的に起る
犯罪
である。従いまして、そういうものをさすのであります。これに反しまして、
公務
時間中に起
つた
犯罪
、たとえば
公務執行
中と申しますか、
公務
時間中に、タバコの吸がらを不用意に捨てたために火事を起した、こういうようなのは、
公務
時間中でありましても、「
公務執行
中の作為又は不作為から生じた
犯罪
」というふうには言えないというふうに考える次第でございます。この
公務執行
中の
犯罪
は、そういう概念でございますから、被害者が日本人その他日本に一般に居住する外国人である場合は、当然あり得るわけであります。なおこの
公務執行
中の罪につきまして、
軍隊
派遣国
が第一次の
裁判権
を持つ。第一次と申しますか、あるいは
裁判権
を持つということは、これは長く国際法上認められた
原則
であります。大体それをそのまま表現されているところでございます。この点をつけ加えて申し上げます。 なお、しからば起訴前におきまするところの
公務
であるかどうかの判断はいかにするかという問題でございますが、
公務執行
中の
犯罪
であるかどうか、すなわちそのことが
犯罪
であれば、
公務執行
中のものであるということにつきましては、
アメリカ側
の指揮官が、あるいは指揮官にかわるべき者が証明書を出すということにな
つて
おります。
日本側
の
捜査
機関がこの点につきまして疑いを持つ場合は、当然証明書を要求するということに相な
つて
おります。しかしながら、疑いを全然持ち得ない場合があり得ます。たとえばMPが、巡回中にもかかわらず、料理店等に入り込みまして、酒を飲んで人に傷害を与えたり、けんかをしたというような場合に起ります
犯罪
は、これは
犯罪
そのものから見て、すでにもう
公務
と言えない。その点につきましては、もはや
公務
であるかどうかということを議論する余地がほとんどない。このような場合には、日本の
捜査
機関はもとより証明書を要求しませんが、ただ戦車を運転中である、あるいは自助車を運転中であるという場合には、それがはたして
公務
として行われたかどうかという点に疑念がある場合があります。その場合は証明書を要求することになります。また積極的に
アメリカ側
から、これは
公務
に当るとして証明書を出して来る場合もあり得ると考えます。さような場合に、日本の
捜査
機関が判断をいたしまして、
アメリカ側
の証明書に対して
同意
をいたしますといいますか、証明書と
同意
見であります場合には、問題はないのでありますが、証明書と異
なつ
た意見を持ち、異
なつ
た判断をいたしたというような場合にはいかがいたすかと申しますと、これは
合同委員会
におきますところの話合いによりまして、一応
合同委員会
において議論をする、こういうことにいたしております。大体議論をいたしますれば、何らかの結論が得られるということになるわけでありますが、これは議論をいたすわけでありまして、
合同委員会
が最終決定をするということにはならないと思います。でありますから、結局最終決定は、それを起訴する
権限
のある
日本側
の
当局
にある、
日本側
で、検挙した
事件
については、
日本側
の
当局
にある。しかしながら、
アメリカ側
で検挙しておる
事件
につきましては、それは
アメリカ側
がそれを判断いたしまして、
アメリカ側
において第一次
裁判権
がありとして起訴する場合もあり得ると思いますが、しかしさような両方の争いが
最後
まで解決がつかないということは、予想されないのでありまして
合同委員会
で議論をいたしますれば、何らかの結論を得られるというように考えております。
林信雄
17
○林(信)委員 常識的にもそういうことであろうかと思
つたの
でありますけれ
ども
、資料として渡されました
議定書
並びにその
公式議事録
では、特に
合衆国軍隊
または
軍属
が起訴せられた場合という場合の措置が記載されております。その程度の
公式議事録
にすぎないのでありまして、事前の点はまことに不明瞭であると思うのであります。そこで起訴された場合云々のこの場合に、その旨の証明書すなわち「
公務執行
中の作為又は不作為から生じたものである旨を記載した証明書」、それが適当な者より発行せられる、それが非常に重要なものとして扱われる意味に定められておるようであります。すなわち言葉をかえて申し上げますならば、「反証がない限り、
刑事手続
のいかなる段階においてもその事実の充分な
証拠
資料となる。」これだけ権威づけられておるのであります。もつとも言訳のように、それは
わが国
の
刑事訴訟法
第三百十八条すなわち自由心証に関する
規定
を害するものではない、こんなふうの意味も付されておるのでありますけれ
ども
、あくまで自由心証そのものであればけつこうですけれ
ども
、これに対して反証のない限りは、段階を問わずに事実の十分な
証拠
資料となる、それだけの力が与えられました以上、それだけやはり日本の
刑事訴訟法
第三百十八条は制約せられ、言葉は適当でないかもしれませんが、ある意味では侵犯せられておる、こうも考えられなければならない。画龍点睛を欠くとまでは行かないかもしれませんが、せつかく国民が歓喜して受入れつつあるこの
改正
にあたりまして、さような点があるということは、どうも不愉快に思われるのであります。外務
当局
も来ておられるようですが、これらに対する実際上の折衝
関係
はどうであ
つた
でありましようか。これも先例か何かで、それきり簡単に取扱われたものなんでありましようか。あるいは今後に残された折衝でもあるのでありましようか。この辺について重ねて伺
つて
おきたい。
津田実
18
○津田
政府
委員 その点でございますが、
公務執行
中であるかどうかということは、これは
軍隊
の内部の問題であります。一応
考え方
といたしましては、指揮官がその者にいかなる
公務
を命じたかということは、第三者はうかがい知ることができないということが一応考えられるわけであります。従いまして、かりに自助車を運転して、甲地から乙地まで行けという命令があ
つた
かなか
つた
かということは、当該指揮官以外は一応知らないといわざるを得ない。従いまして、
日本側
がかりに裁判をいたします場合におきましても、当該指揮官を証人として呼ぶか何かいたさなければならぬということは当然だと思います。そこでこの証明書にかような一応の十分な
証拠
資料という力を与えるわけでありますか、これはイギリスにおきましても、イギリスにありますところの外国
軍隊
の指揮官の証明書は、プライマ・フエイシーである、一応十分な
証拠
と見るというような国内法ができております。そのように考えると、今申しましたように、当該行為をした者に与えた命令の
内容
は、指揮官のみしか知らないという
軍隊
特有の機構から来る必然的な結果だろうというふうに考えられるわけであります。しかしながらイギリスにおきましては、判事の自由心証を害してはならないという
規定
は全然なく、裸でこれにな
つて
おる。しかしながら私
ども
と
アメリカ
との交捗の
経過
におきましては、日本におきましては少くとも裁判官についてはこれが
証拠
法上何らかの意味を持つというふうに約束することはできないという意味におきまして、この
公式議事録
には、わざわざ解釈してはならないという
規定
が入
つた
わけであります。そういう
経過
にな
つて
おります。
鍛冶良作
19
○鍛冶委員 関連して。どうも今の
説明
を聞いておると、
公務執行
中という言葉がよくないのじやないですか。「中」といえばどうしても時間的というふうに見られます。今の
説明
から言うなら、むしろ
公務執行
上の作為または不作為ということが新しく考えられる。「中」では時間的のことなんですから、
公務
に当
つて
お
つた
時間ということになる。私が今言うように
執行
上の作為、不作為といえば、原文と何か相反するようなことになりますか。その点を伺いたい。
津田実
20
○津田
政府
委員 その点でありますが、これは日本語の表現といたしましては、若干そういう表現上の問題はあるとも考え得るわけでありますが、従来の国際法における日本におきまする表現は、全部
公務執行
中という表現にな
つて
おります。そこでこれをここで改めまして他の表現にいたしますことは、従来の国際法と違
つた
表現であるかのごとき印象を与えますので、このままを踏襲いたしましたわけでありますが、国際法の解釈といたしましては、その点はほとんど疑いのないところというふうに考えておる次第であります。
林信雄
21
○林(信)委員 ただいまの点と関連して、この際特に承り、要望しておきたいことは、ただいまの
公務執行
中云々にしましても、指揮官のほとんど専断、専権できまるかのごとく相なる危険を感じます。そうなりますと、せつかく
裁判権
を回復したといいますが、そのさ中におきまして、
向う
が自分のやり得る
裁判権
の
範囲
を自由にきめ得る
範囲
が非常に広いということであれば、いかにもたよりなくなる。だからこれらの点については、十分実際面においてこちらからの意見が入
つて
、彼らの専断的な意見のみでなくて、こうあらねばならぬという
議定書
の解釈について、強い発言権を持ち得るようにしておらなければ、実際問題において骨抜きにな
つて
しまう、このことはこの面のみにとどまらず、一切の
実施
面におきまして、今より十分な措置がなされていないと、
条約
改訂
のその
趣旨
を没却することが最も大きいのでありますが、それ以外の面において、
趣旨
の不徹底、解釈の相違等からいたしまして、そこに彼我の摩擦が生じて来る。この特別
刑事訴訟法
の
改正
が見られるに至
つた
その経緯についてわれわれに慶賀しておる一面、彼においては、国といわないまでも、その二部の外国人の中においては、何らか掌中の玉をとられたような誤れる考えを持たないとも限らない。一つのならされたる風潮の結果としましてそういうこともある。そういうさ中に、日本の官憲の力が伸びて行
つた
ということで、非常に不愉快な気持を――誤れる不愉快なんですが、持つことによ
つて
摩擦を生じないとも限らない。そういうところから、
実施
面において十分なる準備態勢が施されていなければ、大へんなことになる場合も私は想像し得るのであります。当然のことだとして考慮なされておるかとも存じますが、しからばどのような措置がなされておるか。措置なしといたしまして今後にやるとすれば、どういうふうにやられるか、れをくくりに伺いましこて私の質問を終ります。
津田実
22
○津田
政府
委員 この
協定
をいたします段階におきましては、先ほど申し上げましたような
経過
によりまして、後段第二項の
規定
、つまり三百十八条を害してはならないという
規定
が入
つた
わけであります。この
協定
ができまして以後、ほとんど隔日くらいに
アメリカ側
と日米
合同委員会
の
刑事裁判権
分科会を開いておりまして、そこで起り得ることが予想される諸般の問題を論議いたしました。そのときもこの問題が出ておりまして、今ここで御
説明
申し上げましたような具体的例についてもやりとりがあ
つた
次第であります。先ほ
ども
申し上げましたように、この点につきまして
アメリカ側
の証明書に納得できない場合は、当然日本の
捜査
機関におきまして、これを
合同委員会
に持ち上げる、また
アメリカ側
におきましても、
日本側
の判断に異議がある場合には、
合同委員会
に持ち上げる、かように相なるわけでありまして、
合同委員会
あるいはその分科会におきまして十分討議を遂げまするならば、
アメリカ側
におきましても、この
刑事裁判権
分科
委員会
に出ておりまする委員は、ほとんど
法律
家でありますので、彼我の主張に非常な開きを生ずるということはおよそ考えられません。従いまして個々の運用によりますれば何らトラブルなく処理して行けるというふうに確信しておる次第でございます。
小林錡
23
○
小林委員長
それではこの両案に対する質疑はこの程度にとどめます。 ――
―――――――――――
小林錡
24
○
小林委員長
次に、
法務行政
に関連する
保全経済会等特殊利殖機関
に関し調査を進めます。質疑の通告がありますから、これを許します。田嶋好文君。
田嶋好文
25
○田嶋委員 きようは大蔵省の
銀行局長
がおいでにな
つて
おりますから、今
議題
となりました保全経済会の問題についてお尋ねを申し上げたいと存じます。 昨日当
委員会
におきまして、
捜査
関係
、法務
関係
の御出席を願いまして、われわれから保全経済会問題に対する質疑があり、その御答弁があ
つた
ことに対しましてはおそらく御
承知
のことだと思います。従
つて
きのうの質問とあまり重複することをお尋ねすることは省かしていただきたいと思いますが、きのうの
委員会
において結局問題として残されました問題は、この保全経済会に対して大蔵省がいかなる態度で臨んでお
つた
か。大蔵省が
いかよう
にこの保全経済会に対しての監督権と申しますか、監督の対象になるかならないかということに対して調査をしてお
つた
かということが残された問題でございます。特に私たちの今日耳に残
つて
おる問題は、ことしの二月でしたか、日にちは速記記録を見ないとわかりませんが、最高検察庁におきまして大蔵
当局
、法務
当局
、それから警察
関係
者、主としてそういう方々がお集りになりまして、保全経済会を具体的に取上げたのではないが、これと同種類の行動をしておるものに対して、一つの話合いが進められた。そのときに警視庁、法務
当局
からは、これは明らかに違反行為だということが出たのにかかわらず、これに対して大蔵
当局
の意見は、非常に消極的であ
つた
というように私たちは伺
つて
おるのであります。この点前も
つて
いかよう
であ
つた
か、お伺いをいたしたいと思います。
河野通一
26
○河野
説明
員 お答え申し上げます。問題にな
つて
おります保全経済会につきましては、過去二年間にわたりましていろいろ私
ども
の方といたしましても調査をして参りました。特に一番
関係
の深い法務省
当局
とは長い間累次にわたりましてお打合せをして参
つたの
であります。その累次のお打合せをいたしました中に、今お話がありましたような二月でありますか、各
関係
の方々のお集まりの席上で議論されたこともたしかあ
つた
やに私は記憶いたしております。しかしその
内容
につきましてどこがどう言
つた
かということは、この際としては私から申し上げることは差控えたい。ただいろいろお打せをいたしました結論といたしまして、私が皆さんにかわ
つて
ことしの三月四日に衆議院の大蔵
委員会
においてこれらの利殖機関でありますとか、あるいは貸金業者でありますとか、いわゆる金融法規と
関係
があるかないか、つまりその
関係
が非常にデリケートな各種のこうい
つた
類似の機関につきまして、各
関係
当局
とお打合せをいたしました結果を私から
説明
いたしたことがあるのであります。これは速記録で御
承知
いただいておると思いますが、その
趣旨
はあるいは必要がございましたら概略申し上げていいと思いますが、その中に私から
説明
申し上げました限りにおきましては、これは各
関係
当局
、特に法務省
当局
とは十分に事前のお打合せをしてできたものであります。ただこれはたとえば個々の保全経済会自体がどういう形にな
つて
おるかということは、私
ども
はもちろん、法務省におかれましても十分に具体的な調査はされていない。一つのそうい
つた
やり方自体がどういうふうな
法律
的な解釈になるかということだけを私からは答弁いたしております。しかしその御答弁を申し上げるにあたりまして、いろいろ研究をいたした過程におきましては、いわゆる匿名組合方式あるいはこれに準ずる無名契約方式の出資を受入れた形、特にその当時は具体的に保全経済会を対象としてデータをと
つた
ということは申しませんでしたが、実際は保全経済会についてわれわれが手に入れ得るたとえば事業案内書でありますとか、あるいはいろいろな契約書の写しでありますとか、あるいは出資証券のひな型でありますとか、手に入れ得るものをあらゆる方法で手に入れまして、その限りにおいては実はこれを具体的に対象として、その結果が先ほど申し上げましたように、三月四日、主として金融法規の
関係
が問題にな
つて
お
つた
ところでありますから、私が各省にかわりまして御答弁申し上げた次第であります。その
内容
につきましてもし必要がありましたら後ほど御
説明
いたしたいと思います。
田嶋好文
27
○田嶋委員
内容
はある程度新聞で報道されておりましたので、ほかの委員からお聞きがありましたらお答えを願い、私は聞かないことにいたしますが、新聞の報道によりますと、何か保全経済会の問題に対しましては、大蔵
当局
では匿名契約方式による組合であ
つて
、これは現在取締の対象にならないというような御解釈を述べておるかのごとく私は見受けたのでありますが、この点は
いかよう
にお考えになりますか。
河野通一
28
○河野
説明
員 この点も先般来他の
委員会
においてたびたび御質問を受けておる次第でありますが、私は実は商法、そういう方の専門家でございませんので、はたしてこの保全経済会というものが現実に匿名組合そのものであるか、あるいは匿名組合に準ずる、何というか、無名契約であるか、その点につきましては私としてはつきりした調べをしたことはございませんのでわかりませんが、この点はむしろ法務省の方が専門の方々がたくさんおられるのでありまして、そちらの御見解に私は従うよりしかたがないと思いますが、ただ私
ども
が関心を持ちましたのは、ああいう形のものがはたして匿名組合であるか、――もちろん匿名組合と称しておりますが、あるいは匿名組合に準ずる無各契約であるか、ということよりも、ああいう形で金を集めておるやり方が出資なのか、預金行為であるかというところに問題があると思うのであります。私
ども
はやはりこれは預金行為とは言いがたいというのが結論であります。これは法務省とも打合せた結論がそうな
つて
おるのであります。先ほどお断り申しましたように、私
ども
自分たちが直接検査をしたことはない、検査をする
権限
はございませんから、現実にその実態を正確に完全に調べ上げた結果ではございませんが、今申しましたように、私
ども
が入手し得た資料に基いて出した結論でありますから、それ以上のことは私
ども
としてもなかなか最終的結論をはつきり申し上げることはむずかしいと思いますけれ
ども
、私
ども
が関心を持ちましたのは、これが匿名組合であるか、あるいは匿名組合に準ずるものであるか、その点ではなくして、むしろそういう形で不特定多数の者から出資を受ける形が一体預金行為であるかどうか、こういう点に実は私
ども
としては関心を持
つて
お
つたの
であります。これは金融法規に言
つて
おる預かり金禁止の
規定
に違反するとは言い得ないというのが去る三月四日に私から皆様にかわ
つて
御答弁申し上げた
趣旨
であります。
田嶋好文
29
○田嶋委員 預金行為であるということになればこれは問題はございませんが、預金行為でないと認められたというお言葉ですが、預金行為でないとすればこれは当然あなたの方で監督権を
行使
して、また検察庁なり
捜査
機関に連絡して、あなたの方自体から乗り出すべき必要があ
つたの
ではないかと思いますが、預金行為だとお認めに
なつ
たとおつしやるのですか。
河野通一
30
○河野
説明
員 その点今お答え申し上げましたように、私
ども
預金行為と認めがたいということで、金融法規の立場から私金融行政の責任者として少くとも
現行
法の
建前
におきまして――私の関知する、しないとこう申し上げることは非常に行き過ぎと思いますが、むしろ出資一般に対する問題としてこれを考えたのであります。
田嶋好文
31
○田嶋委員 預金行為でないということになれば、これは一体大蔵
当局
がまた調査して、ほかの
関係
においてこれを監督して行く、また法規に照して処罰する方法が考えられなか
つたの
でしようか
河野通一
32
○河野
説明
員 いわゆる今言われております保全経済会的な利殖機関と申しますか投資機関につきましては、いろいろな形態が実はあるのでありまして、これは二つにわけて考えて参りたいと思います。 第一は、どういう形で資金を受入れておるか、その受入れの面についてが一つと、もう一つはその受入れた資金をどういうところに融資しておるか、この二面が問題になると思います。前者につきましてはただいま申し上げました
通り
であります。もちろんこれは非常に失礼な言い分でありますがわかりやすく申し上げたいと思うのであります。たとえば匿名組合方式であるかどうか、これはいろいろ議論があると思います。かりに匿名組合方式によるものが金融法規に違反はしないと認めました場合におきましても、個個のものにつきましてはこれは金融法規に違反しておるものがあり得る。これはそのとき、三月四日に私もはつきり答弁しておる。これは株主相互金融につきまして特に問題があるのでありますが、株主相互金融そのものはこれは出資の受入れであ
つて
決して預金行為ではない。しかし株主相互金融自体が金融法規にあらゆる場合において違反しないかというとそうではなくて、現に私
ども
は検査の結果相当数金融法規に違反した株主相互金融を摘発しておるのであります。そうい
つた
ものにつきましては、これは具体的に見なければわからないと思います。資金の受入れの面は今申し上げたような
通り
であります。 それからそれを運用いたしておる方面はどういうものかと申しますと、これは不動産投資と有価証券投資、大体それがおもなもののように聞いております。貸金業をや
つて
いるかや
つて
いないかの問題でありますが、これは貸金業の届出はいたしておりません。それから私
ども
が調べました
範囲
においては、貸金業と称するようなところまで貸金をや
つて
おるとは認めがたいわけであります。この点は私もまだ調査が不十分でありますから確信の持てるところまで行
つて
おりませんが、貸金業をや
つて
いるというところまで行
つて
いない。そういたしますと不動産の投資と有価証券の投資――一般の人が資金を集めて、あるいは一人の金持ちがお
つて
、自分の金を不動産投資に充てる、あるいは有価証券を買う、その有価証券を持
つて
おること自体、これは金融行政からい
つて
私
ども
直接には
関係
はない。ただもちろんこれが資金量が大きくなりますと、金融界全体に、あるいは証券界に対して相当影響力を実質的に持つのでありますが、制度としては有価証券投資をしようとあるいは不動産投資をしようと、これは私
ども
金融行政の立場からは、制度としては
関係
のないことであるというのが私
ども
の考えであります。
田嶋好文
33
○田嶋委員 河野さん私よく存じ上げておりますので、あまり露骨な質問はしたくないと思うのでありますが、とにかく大蔵省というのは今日銀行の設立その他に対しては日本の金融の円滑化を期するというので、非常に厳重な行き方をして、主として銀行からむしろ大蔵省に対して、一つの非難すら放たれておる。これは私から申し上げるまでもない。この保全経済会類似の事業というのは、地方銀行に匹敵するような資金を集めておる。これではあなた方がいくら銀行に対して強制的な行動をと
つて
も、これは経済安定のためには無意味だと思います。むしろそういうことが見られれば積極的に私はこれに対して手をつけるべきだという理論が常識的に、専門家でなくても生れると思うのですが、そうした点に対するお考えはいかがなものでありますか。
河野通一
34
○河野
説明
員 先ほど申し上げましたように非常に大きな資金量を持
つて
いることは事実であります。それが金融に対して影響を持つことは事実でありますが、私
ども
といたしましては
法律
の制度としては、これは今申し上げました与信の面からいいましても受信の面からいいましても、一種の金融の対象ではないと考えております。しかしながらこれが非常に大きな事業になり、かつ何と申しますか、それが一たび不幸にして破綻する。という場合におきましては、その数多い出資者に対して相当な迷惑を及ぼすおそれがあるという危険が痛感される現在におきまして、何かそうい
つた
面からこれらの問題について取締りと申しますか、そうい
つた
善意の出資者を保護する――保護ということは非常に語弊がありますが、善意の出資者が不当に損失を受けることを防止するような措置があるいは必要ではないのだろうか。しかしこれは完全に私だけの所管の問題ではございませんので、十分法務省の方々ともお打合せした上でなければ、私としては公式な見解として表明するだけの自信はございませんが、私見としてはそうい
つた
措置をとらなければいけないじやないかということはかねがね考えて参
つて
お
つたの
であります。そうい
つた
意味でこのまま放置していいかどうかの問題については、現在のような社会に対する影響が大きくな
つて
来ている現実を前提にいたします限りにおいて何かこの措置がいるじやないかという気はいたしております。
田嶋好文
35
○田嶋委員 この点ほかの委員からおそらく追究があるじやないかと思うのですが、私もあまり納得できませんが、とにかくこの匿名組合形式で行けば、営業をして利潤を与えるということが前提である。ところがこの保全経済会というのは利潤だけでなくしてこれだけの配当をするということがある。二分から八分の配当、そして三月後には現金を返すというのです。利益があ
つて
利益の分配をしてやるのが匿名組合である。ところが利益があるないにかかわらずこの匿名組合は、営業してこれだけの配当をするというのですから、これは預金の利子に匹敵するわけです。結局銀行業に対して世の中の低金利政策とか高金利政策とか、とにかく利息政策に対して第一に挑戦をしかけている。それから次に利殖
関係
になるとどうかといいますと、あなたから今おつしや
つた
ように株式投資の形をとり、日本の有価証券業界、日本の経済の心臓部ともいうべきこれに対する一つの大なる挑戦をしておる。利息の点に対して大なる挑戦をし、そして投資
関係
に対して大なる挑戦をして、要するに日本経済に第三国人が挑戦している。日本の経済を破壊しようと考えてお
つたの
ではないかと思えば思われないことはない。行動をと
つて
お
つた
と見れば見られないことはない。そこに私は非常な関心を持
つたの
であります。日本人ならそこまでやれるか。第三国人だから日本人なんかどうでもいいじやないかということは思わぬでしようが、悪く考えればそこまで考えなければならぬことになる。大きな日本の心臓部に対して挑戦して来るような、要するに心臓に対して短刀をつつ込んだのです。突きつけようとしたのではなくて完全に心臓部に突きつけていると見られぬことはないでしよう。これはいろいろな見解の相違もございましようが、見られないことはない。その点に対してあまりにお考えが単純じやなか
つたの
でございましようか。
河野通一
36
○河野
説明
員 この問題を検討いたします過程におきましては、私
ども
はそんなに単純にこの問題を割切
つて
おりません。そのために非常に皆様からはおしかりを受けるだけの実は値打ちがあると思うのでありますけれ
ども
、法務省その他とお打合せをいたしますために一年以上かか
つて
いる。どうしてそんなに時間を要したかというと、事柄が非常に簡単でないからでありまして私
ども
そう簡単に――結論は今申し上げたような結論でありますけれ
ども
、この結論を出しますまでにはいろいろな見地から内部にはいろいろ意見もございまして、その過程を経て、結論は今申し上げました簡単な結論ではありますけれ
ども
、
経過
から申し上げましてそう簡単に問題を割切
つて
しま
つて
お
つたの
ではございません。それから今お話のように個々の個人が一体いいか悪いか。その業者がどういう気持で仕事をいたしておるかということでありますが、私
ども
が金融制度なり金融に準ずるような制度を考える場合には、これはやはり制度のことと、その個々の一つの問題は、また別に考えなければならぬ。私
ども
は先ほど来申しましたような意味で、確かに保全経済会というものは、出資は三箇月た
つて
、もし申入れがあれば払いもどすということもあるし、明らかに二分とか三分とかいう利益の配当を約束するようなことにな
つて
おるというようなことは、私
ども
は今申しましたような三月四日に結論を出しますまでの過程において、ちやんとわか
つて
お
つた
。それらをいろいろ分析し、研究各方面よりしていただきました結果が、今申し上げましたような結果に
なつ
たわけであります。しからばこれは非常に営業が大きくな
つたの
で、金融界に対して非常に大きな影響力を持
つて
おるのを放置しておくのはいけないじやないかという議論があるかと思うのでありますが、この点は結局これらの業態を
法律
制度としてどういうふうにコントロールして行くのがいいかという問題になると思います。資金を集める形態にはいろいろな形がある思いますが、これらの資金を集める形態を、全部不特定多数から出資を集めるのはそれは株式会社組織に限
つて
認めるという議論とか、あるいは株式会社組織に準ずるようなこれらのものを認める以上は、出資者にある程度その経営自体に対する監視権と申しますか、そうい
つた
制度を加えて出資者が十分にその営業自体に監視をして行く道を開くべきではないかとい
つた
ような議論もあるのであります。今の制度といたしましてこれは何か金融行政の対象として取上げるということにつきましては、私は今まで申し上げましたような観点から、私
ども
はこれは適当でないという結論に到達しておるわけであります。
田嶋好文
37
○田嶋委員 それではあと二、三点でほかの委員にかわ
つて
いただきますが、かいつまんで申し上げますと、結局大蔵省の今日の見解は、匿名組合であるかないかの解釈は、自分の方では法務省の意見に味方する、その解釈に従うということであるか、ひとつお確かめいたします。
河野通一
38
○河野
説明
員 誤解のございませんように、ひとつ三月四日にその問題について私からお答え申し上げました点を読ましていただく方がいいと思います。匿名組合契約による資金の受入方式はどう考えたらいいかという問題で、その業態には匿名組合契約による金銭出資を広
範囲
につの
つて
金銭を受入れ、これに対しては特定利息をする形態がある。その出資された資金は通常株式、不動産投資を目的としておる、こういう業態である。これに対して金融法規との
関係
はどうかという問題につきましては、この方式については、商法に
規定
する匿名組合契約でないと言い切るだけの根拠がない。従
つて
この方式による出資は、預かり金に準ずる資金の受入れとは言いがたい。つまり預金とは言いがたい。こういうのが先般申し上げました三月四日の答弁でございます。従いまして今日言
つて
おります匿名組合契約そのものであるかどうかにつきましては、実は私
ども
専門家でありませんので、はつきりしたことを申し上げることはできませんが、法務省の御見解に従
つて
さしつかえないと思ついます。
田嶋好文
39
○田嶋委員 そうすると、昨日お聞でございましようが、法務省は見解をここで述べました。保全経済会は商法のいう匿名組合形式とは認めがたい、こうおつしや
つて
おりますが、これは御納得できるでありましようか。
河野通一
40
○河野
説明
員 私は先ほど申し上げましたように、おそらく法務省
当局
におきましても保全経済会の実態を十分にお調べにな
つて
おるかどうか存じません。ただ問題を研究いたしますのに私
ども
が手に入れた資料として調査のデータといたしましたものは保全経済会であ
つたの
であります。しかもその結果ここにもちろん具体的に保全経済会とは申しておりません。ごく抽象的には申しておりますが、その結論が今申しましたように商法に
規定
する匿名組合契約でないと言い切るだけの根拠がないという結論にそのときな
つたの
だと思います。しかもそれは十分完全なる資料ではございません。私
ども
が手に入れ得る資料だけでありますし、検査をいたしたことがございませんから、その限りおいてはつきりしたことは私
ども
申し上げられませんが、少くとも保全経済会の入手し得るデータをすべて検討の対象にいたした結果、こういう結論が出ておるということだけは申し上げておきたいと思います。
田嶋好文
41
○田嶋委員 そこで私は聞いておるわけなんですが、昨日そういう意見が出たのです。そうすると意見の調整ができておらない、こう解釈する以外にないと思いますが、これはぜひとも至急に意見の調整をはか
つて
いただきたいと思います。それに関連して今日の日本経済新聞に「利殖金融の弊害一掃へ、匿名組合の悪用禁止、単独
法制
定に乗出す」大蔵省として、今後法務省と連絡して、こうしたことをやりたいということがここに書いてございます。これが一体現在の大蔵省のお考えでございましようか。それとも単なる新聞の想像記事でございましようか。
河野通一
42
○河野
説明
員 この点は先ほど申し上げましたように、大蔵省全体としての意見として申し上げる段階にまだ
至つて
おらないのであります。と申しますのは、この問題は、これは非常に誤解を起しますので言いたくないのでありますが、法務省の所管の問題ではないかと思
つて
おります。何か職務的に
権限
争いをしておるような印象が皆さん方におありになるのではないかと思いますので、そういうことを言いたくないのですが、そういうように私は考えております。それでありますから、先般大蔵
委員会
でこの問題が出されたときに、私は私見としてはそういうふうなことをやるべきではないかということを申し上げたのでありますが、しかし、
政府
の一省としての大蔵省全体としてそういう意見にまとま
つた
と申し上げる段階にはまだないのであります。私といたしましては、今後法務省
当局
とこれらの問題について十分にお打合せをいたして参りたい。そうして私
ども
専門でありませんので、商法のそうい
つた
方の専門家の御意見を伺いながら、どういうふうにしたらいいかということを研究して参りたい。私個人としては何らかそういう手を打つべきではないかと固く信じております。
田嶋好文
43
○田嶋委員 非常に私たちもこの記事を見て、敬意を表して今日局長がおいでに
なつ
たらそういうことをやるという御答弁がいただけると期待してお
つたの
ですが、多少期待はずれにな
つたの
ですが、これはぜひ局長個人の御意見でなくして大蔵省全体の意見としてもちろん局長の意見は大蔵省全体の意見になると思うのです。だから早急におはかりが願いたい。それから法務省との意見の調整、これはまことに遺憾な点で、これはここで聞いたことによ
つて
生れたことですから、私たちも考えなくちやならないのですが、とにかく意見調整ができておらないということが、はつきり現われたような形になりました。昨日法務省では、保全経済会は匿名組合とは認めがたいとはつきり確認してお答えにな
つて
おります。それに対して大蔵省が承服しておらないということは意見の調整ができておらないということである。国家の大事な政治をやる大蔵省と法務省との意見が調整できていないということは、保全経済会の弊害、組合員に与えた損害それから国の経済に与えた大きなマイナス、これらを今後急速に解決するために非常に障害がはつきりと現われておると思うこの点は今日でもひとつおはかりにな
つて
いただいてただちに意見調整をしてさつそく解決をするようにお願いしたいと思います。
最後
に保全経済会の方では、聞くところによりますと、大蔵省が助けてくれるから心配はいらぬ、国が助けてくれるから待てこういうことを言うので、結局各会員がそれにたよ
つて
や
つて
くれるであろうということで安易な気持を抱いて今日なお
財産
保全だとか、持
つて
おるものの隠匿を防止するとかいうようなことに対して消極的であるということが伝えられておるのですが、一体大蔵省はそうしたお考え、要するに援助をしてやろうとか、救済策を講じようとかいうようなお考えをお持ちでございましようか。ひとつこの点を伺いたいと思います。
河野通一
44
○河野
説明
員 私も新聞でそういうことを、伊藤さんと言われましたか、
理事
長が
政府
に対して救済融資を申入れてあるという話をされているように見ております。しかし私
ども
大蔵省といたしましては、大蔵大臣はもちろん、私
ども
一切そういう申入れを受けたことはございませんし、またかりに申入れがありましても、そうい
つた
ことを保全経済会についてとるべき何らの
理由
はない、私ははつきり申し上げておきます。
田嶋好文
45
○田嶋委員 私はこれで終ります。
小林錡
46
○
小林委員長
古屋貞雄君
古屋貞雄
47
○古屋(貞)委員 ただいま田嶋委員に、入手した材料によ
つて
預金でないという結論が出たという御
説明
がございましたが、特に保全経済会からと
つて
来た材料、これはどんな材料でございますか。その材料と、それからもつと具体的にこういう事実だから預金でないという御
説明
をいただきたいと思うのです。どうも納得が行きません。
河野通一
48
○河野
説明
員 材料は、たとえば営業案内、それから出資証書の写しと申しますか、見本、それからその裏に書いてあります契約と、いろいろございますが、そうい
つた
パンフレツトとか、あるいは印刷物等手に入りますものをできるだけ入手いたしました。これは保全経済会から直接と
つた
ものは、ほとんどないと思います。全部間接に手に入るものを集めたということでございます。これが一番問題になりましたのは、やはり今お話のように、こういう形で出資の受入れをいたしますことが一体預金であるかどうかという点にあ
つた
わけであります。しかもその出資には確定率の配当を約束するようなことまで実はや
つて
おる。そうい
つた
点は、形式は出資とい
つて
おるけれ
ども
、実際は預金ではないかという議論が相当内部でもありましてこれらの点で見解の調整をはか
つて参
るために、実は非常に時間を要したわけでありますが、やはりいろいろな資料から研究いたしました結果、これは出資でないとは言えない。従
つて
今申し上げましたように、出資であるとすれば、それは預金でないわけであります。これは私がここで諸先生に申し上げるまでもなく、出資と言えばこれは自己資本を構成するものであるし、預金と言えば他への資金といいますか、そういうことになるわけであります。これはやはり両方の性質を持つということはあり得ないわけであります。これが出資である以上は、やはり預金行為とは言えない、こういうふうな結論に私
ども
は到達いたしたわけであります。
古屋貞雄
49
○古屋(貞)委員 保全経済会の契約の
内容
並びに定款などから見ますると、こういう点が匿名組合でないことは明確になると思うのですが、まず第一に利益があ
つた
場合以外に損失をした場合でも――損をした場合には損失を補填しなければ利益の配当をすることができないのは匿名組合の性質でありますが、初めから利益の有無にかかわらず、損害がございましても補填をせずに、一定の利益を交付する契約が一つある。従いまして銀行に預金して預金に対する、預金利子を定期的にもらえると同じ結果になる。 もう一つは、出資とするならば、営業主に対する出資でございまするから、その営業自身の問題があるわけでございます。ところが保全経済会では三箇月ということに契約ができておる。でございますから、その三箇月以内に営業の利潤の有無というようなものは結論が出て来ない。さような短期間に営業が行われている営業い。ではな不動産の売買であり、株の投資ということになりますると、どうも三箇月の期限を切られておりまするというに、いわゆる出資の性格がなくな
つて
来る。それからもう一つは、匿名組合は御
承知
の
通り
、営業主に対する信頼ということが前提になるわけであります。保全経済会のように、不特定多数の全国の者の
理事
長の伊藤そのものに対する信頼の観念、さような観念は出資の条件にはならない。いわゆる金を出しておりまするものの条件にな
つて
いない。とにかく出しさえすれば一定の契約上の利潤がもらえる。しかもその利潤が非常に莫大に、現在の社会通念から考えましても、さような営業による利潤というものは考えられない。言いかえますならば、株式の売買並びに不動産に対する投資が、三箇月の間に保全経済会の場合では最低月二分でございます。年に二割四分という莫大な利潤が得られる。さような営業に対する利潤の有無にかかわらず出資者は出資をしている。従いましてこ回は出資にあらずして預金であるというように考えられるのであります。かような点から考えますならば、どう解釈いたしましても、匿名組合契約にならないと考えます。法務省の解釈も昨日さような結論を出されたのでございますが、大蔵省といたしましては、そういう点はどう考えられますか。たとえば保全経済会の契約の当事者が、社会通念上考えられる
原則
に立脚いたしましてのただいまの結論を得たかどうか、その点の御
説明
を願いたいと思います。
河野通一
50
○河野
説明
員 保全経済会が匿名組合そのものであるかどうかにつきましては、先ほどから御
説明
申し上げましたように、私としても的確に申し上げる自信はございません。しかし少くも私
ども
は匿名組合そのものであるか、あるいは匿名組合に準ずる無名契約ではないかと考えております。それで今お話のように匿名組合そのものは
立法
の
趣旨
から言いますれば、やはり少数の人々の対人信頼
関係
というものがあ
つて
おそらくそこに営業主を信頼して初めて匿名組合というものが成り立つということであろうと思うのであります。その辺から言いますと、顔を見たこともないような不特定多数の人が出資をするという形は、あるいは本来の匿名組合そのものではないという議論も当然成り立つと思うのであります。しかしながら少くとも私
ども
が関心を持
つて
おりますのは、その出資の形が一体出資であるか、あるいは預金であるかというところに実は問題がある。その点は先ほど来いろいろお話がありました、見解も実はわれわれ検討しております過程におきましてはございましたが、それらをいろいろ研究した結果、先ほど来申し上げておりますような結論を出したわけであります。しかしそれは私
ども
の手に入れた材料に関する限りでありましてさらにこれを詳細に
内容
を調べた場合におきましては、違
つた
結論が出ることもあり得ないとは保しがたいのでありますけれ
ども
、少くも今お示しになりましたような程度のデータは、大体私
ども
研究いたします過程におきまして入手をいたしております。それを前提にしていろいろ研究をいたして参
つた
結果が先ほど来申し上げましたような結論に
なつ
たわけであります。
古屋貞雄
51
○古屋(貞)委員 ただ私
ども
がしつこく御
説明
を願
つて
おりますゆえんは、あんなに大きな資金が集まり、そうして日本の経済界に相当な影響を及ぼす結果が生じ得ることは、私
ども
大体社会通念上考えられる。従いまして金融政策の大御所である大蔵省、ことに金融に対する監督権をお持ちにな
つて
いる大蔵省
当局
がもつとつつ込んで、ぽんとうにどういう気持であの出資をしてお
つた
かという点、さらに承りますと、どうも自分たちの入手した程度の材料で判断をしたのだというようなお答えでございまするが、私
ども
から申しまするならば、少くとも預金の類似行為ではないかという疑いだけはお持ちに
なつ
たらしい。さような疑いをお持ちあそばすならば、具体的な事実に対するもつとつつ込んだ御調査というものが行われなければならぬじやないか。その御調査をする
権限
は、監督官庁でございますから、おそらくあると私は思う。
犯罪
の
捜査
ではございませんが、取引の
内容
に関する問題であります。預金の類似行為である疑いがあるという点について本件についても、もう少し親切に十分なる御審査を願
つた
具体的事実において御判断が願えるのではないか、かように思うことが一つ。それから三月の各
関係
省の会合席上で仄聞するところによりますと、警視庁あたりでは相当積極的な意見を持たれて、これは預金類似行為であるかどうか知りませんが、いずれにいたしましても、大蔵省の態度いかんでは手をつけられる状態に置かれてお
つた
ように聞き及んでおるのでありますが、さような点について大蔵省は非常に消極的であり、責任回避をするような態度をとられておる点について私
ども
どうしても納得が行かない。その点についてもつと積極的な事実調査をされなか
つた
という
理由
を承りたい。
河野通一
52
○河野
説明
員
最初
に第一点のお尋ねであります。少くとも預金行為としての疑いかあ
つた
、それについてつさらに積極的に調査をすべきではなか
つた
かというお話でございます。これは私
ども
任意調査の形でできるだけ調査をいたしたいと思いましたけれ
ども
、法的にいかなる
権限
に基いてこれを調査するかという点で、結局私
ども
といたしましては、法的な
権限
がないという結論に到達いたしたのであります。たしか保全経済会そのものでありましたか、あるいは同種の投資機関でありましたか、私
ども
任意に調査をいたしたいと思いまして申し入れた場合に、これを断られた事実がございます。これはどういう意味かと申しますと、銀行法の解解釈につきまて、いろいろ法務省、
法制
局ともお打合せをいたしたのでありますが、預金を預かることは銀行法等によ
つて
免許を受けなければならぬ、禁止をされておる。しからば預金行為の疑いのあ
つた
ものに対してそれを検査したり調べたりする
権限
が、銀行法上あるいは金融行政の立場から法的に根拠があるのかという点につきましては、ないということが
法律
の解釈としてきま
つて
おります。しかしながら、私は別に
法律
根拠がないのでやむを得ぬじやないかということでほう
つて
おいたつもりはございません。そういう直接な検査によ
つて
調べる以外の方法でできるだけの材料は集めたのでありますけれ
ども
、乗り込んで行
つて
検査をするということには、私
ども
法的に根拠を持
つて
おらぬ、こういう事態であ
つた
わけであります。 それから三月でありましたか二月でありましたか、各
関係
当局
の方の会合がありました席においてだれがどう言
つた
ということはお互いに差控えるべき問題ではないかと思うのであります。
経過
を申し上げれば、それは私
ども
といたしましても、その一年の間に法務省その他とも見解についていろいろお打合せをして来て参
つて
おります。私
ども
は、何か自分たちだけが事なかれ主義の非常に弱い立場をと
つて参
つた
とは決して考えておりません。各
関係
の
当局
のこの問題を預金行為として取上げなければならぬという説に対して大蔵省だけがそれに反対してつ参
つた
結果そういう結論に
なつ
たとは、私は毛頭考えておらぬのであります。しかしそういう
政府
部内の会同においてどこがどう言
つた
ということは、私はあまり申し上げることは適当でないと思いますから、私からはお答え申し上げることを差控えさしていただきたいと思います。
古屋貞雄
53
○古屋(貞)委員 かようなことを申してよいかどうかはわかりませんが、私直接本人から承
つたの
で一応お尋ねしたいのであります。今の大蔵省の消極的な態度をとるに至
つた
原因があ
つた
かどうか。たとえば十三国会のときに、大蔵
委員会
で保全経済会から委員が招待を受けたときに、莫大な現金をおみやげにもら
つて
持
つて
帰
つた
。そのときの委員の一人から名前を言いませんが、ある私の友人の委員から、そういう事実があ
つた
かどうか知りませんが承
つた
。そうして保全経済会から大蔵省その他に相当金をばらまいている、なおその他
関係
方面に相当資金をばらまいているということを聞いたのであります。しかも昨日か一昨日、委員のどなたかからもお尋ねがあ
つた
ように、伊藤さんは新聞記者に向
つて
かようなことのあることを予想して問題の起きたときに金をばらまくわけに行かない、従いまして普段まいておくのだが、これは何とか回収がつくと言
つた
ということを新聞で承
つたの
でありますが、ある上からとか、あるいは大きな力によ
つて
今の御判断をする場合、あるいは消極的な態度をとらなければならぬような状況に置かれた事実がございましたかございませんか、それを承りたいと思います。
河野通一
54
○河野
説明
員 はつきり申し上げておきます。そうい
つた
事実はございません。それから大蔵省が、一係に至るまで保全経済会から、いやしくも一銭でも金をもら
つた
ということは全然ございませんから、もしそういうお疑いがございますならば、はつきりここで、そういうことの事実はないということを申し上げておきたいと思います。
古屋貞雄
55
○古屋(貞)委員 これだけは大蔵省の
銀行局長
といたしまして本件は相当大きな社会問題であり、日本の経済界に相当いろいろな影響を及ぼすのみならず、ややもすると治安が非常に危険な状態に置かれることになるについて、金融行政をつかさど
つて
いるあなた方の立場からいかにお考えになりますか、その点を承りたい。
河野通一
56
○河野
説明
員 保全経済界に対しましては、十五万あるいは二十万近くの零細なる出資者があ
つて
、かりに払いもどしを受けられないという事態に相なりましたならば非常にお気の毒であるので、私
ども
としてはできるだけこれらの方々に迷惑がかからないことを心から願う次第であります。しかしながら、これはるる申し上げましたように、金融全体に間接的な影響のあることはもちろん認めますが、保全経済会のや
つて
おりますこと自体は、先ほど来申し上げておりますような観点から、与信の面におきましても受信の面におきましても、これは金融業務でないという
考え方
に私
ども
立
つて
おるのであります。従いましてそれ自体金融の立場からいろいろ処置をとらなければならぬということには相ならぬと考えております。その限りにおきましては、従来からと
つて
おります態度をかえるつもりはないのであります。ただ問題は、先ほど来申し上げましたように、それ自体が金融業務でないからとい
つて
も、金融に対して相当影響のある問題でありますから、私
ども
は非常に強い関心を持
つて
おり、それらが金融全体の安定と言いますか、そうい
つた
ことに悪い影響を持たないように、今後金融全体に対する影響の波及をできるだけ押えて行く、少くとも正規の金融機関についてこれらの影響が及ぶということは、いかなる方法をと
つて
でも全力を尽してこれを防止いたして行くつもりで大蔵省としては努力をいたしたいと考えている次第であります。
古屋貞雄
57
○古屋(貞)委員 済みました。
小林錡
58
○
小林委員長
押谷富三君。
押谷富三
59
○押谷委員 保全経済会の実態については、いまだ大蔵省
当局
におかれても把握しておられないらしい。真相はおわかりでないらしいのでありますが、しかし保全経済会が十五、六万という不特定多数の大衆から零細な資金を集めて、その総額が四十五、六億にも達して、いるというこの事実は御
承知
でありますか。
河野通一
60
○河野
説明
員 これも私は、実は直接に確信を持
つて
その程度あるということはなかなか申し上げかねます。しかし私
ども
の手に入り得るいろいろの調査及び情報等からしまして、今お話のような程度の加入者及び資金量を持
つて
おるのじやないか、かように考えております。
押谷富三
61
○押谷委員 そこで十五、六万という大勢の人から四十五、六億というたくさんな金を集める。これが投資であるかあるいは預金であるかという問題になるのですが、現実は十数万である。集ま
つた
ものは五十億にも近いものである。この事実と、そうしてその金は一定の利潤――利益配当という言葉は使われているかもわかりませんが、一定の金額を利潤という名前で渡されて行くということと、その金にはいわゆる弁済の期限といいますか、言葉はいろいろカモフラージユされていましようが、結局は利息と期限、こういうものがついておる。そうして大衆から四十数億を集めている、こう考えたときに、今日のあなたの考えとして前の協議をせられた当時の考えは別として、今日ただいまやはり預金行為とは見られないですか。
河野通一
62
○河野
説明
員 お話の点は先ほど来他の委員にお答え申し上げました
通り
であります。実は協議を進めて参りました間に御
承知
のように保全経済会の資金量が急激にふえたのであります。しかし私
ども
がこれらの問題について結論をこの三月に出しました当時においては、大体その程度の資金量及び加入者数はあ
つた
と私は思います。これは先ほど申しましたように的確にはわかりませんが、むしろ今よりも多か
つたの
じやなかろうかという気もいたしておるくらいでありまして、その当時から出資者の数にいたしましても、その集めた出資の総額にいたしましても、相当多額に上
つて
おります。相当多数の人がこれに加入いたしておるという現実は、研究いたしておりました当時にも大体私
ども
は想定できたのであります。その後、去る三月以降においてそれが非常に資金量もふえ、加入者もふえたというような事実は私はないと考えております。
押谷富三
63
○押谷委員 こういう機構の利殖機関といいますか、あるいは金融機関ともいうべきものが、これは預金行為ではないという
考え方
を今なお持
つて
おられるとすると、今後もこういう機構のものができて来るというときには、今日の状況ではよいといわなければならぬと思うのであります。端的にいえば、この保全経済会の組織機構は今日 大蔵省がお考えにな
つて
、これは違法ないしは脱法のもので、よくないというお考えか、あるいはこれは日本の
法制
のもとにおいては適法のものである、こうお考えにな
つて
いるか、結論的に御意見を求めるのはどうかと思いますが、一応参考の意見をひとつ聞かしてもらいたいと思います。
河野通一
64
○河野
説明
員 私はこれが何か特別な
法律
のもとにおいて認められておるということに必ずしもなるとは思いませんが、少くともこれを取締りの対象とすべき
法律
がないか、あるいは何らか
法律
に基いて適法にや
つて
おるか、どつちかではないか。従いましてその点につきましては先ほど来ちよつと申し上げましたように、こういうふうな不特定多数の人から資金を集めるという形態で何ら出資の保護の
規定
もない。その営業に対する監視の
規定
もないような状態がいいか、悪いかにつきましては、これは相当私は考えなければならぬと思う。そのためにどういう
立法
がいいかという点につきましては、これはやはり専門の方々とも十分に御相談しなければならないと思いますが、何かそうい
つた
立法
措置がいるのではないかということを私は申し上げたのであります。
押谷富三
65
○押谷委員 私のお尋ねをいたしておるところは今のお答えのところではないのであります。これから
立法
をしてかようなものを取締ろう、またかようなものは日本の国内において金融行政の面からは害毒が多いからやめてもらおうというこの
考え方
は一応うなずけるのですが、今日の日本の
法制
のもとにおいて、かようなことは私
ども
の常識から行くと許されない、これは預金行為ではない、これは匿名組合の契約であると考えられるような御意見でありますが、しかしそれは匿名組合と考られるような言葉は文書の上に現わし得るのです。いろいろなことばをも
つて
カモフラージユする、脱法的な言葉をいろいろと営業案内なり、あるいは約款なりに書き得ると思いますが、しかしその実態は何であるか、われわれは
政府
に要求いたしておりますのは、常に文書に現われた営業案内であるとか、あるいは契約書であるとかいうその文面の字句ではなくして実際にや
つて
おることは大衆から預金を集めておるのだ、大勢の勧誘員を使
つて
集めておる。であるからわずかの期間の間に十数万という者から数十億つのものが集ま
つて
来る、これは私ははつきり預金だと言い得ると思う。あなたの考えは預金ではないという、預金でないということを
建前
にすれば、今日の日本の
法制
においてはこれは自由であ
つて
、あるいは適法であるというお言葉ができて来るかもしれぬと思う私の考えをも
つて
すればさようなものではない、実態は一々文書を調べられればいろいろな脱法、逃げ道はつく
つて
おられるでしようが、何ぼいかなる逃げ道をつく
つて
お
つて
も、実態というものは、厳然と動かし得ないものは、十数万の人から数十億のものを集めておる。そうしてそれは事業というものはどんな事業をやるかということを知らないのです。匿名組合員が営業者が何をやるかということを実際に知らない。また文書の定款の上からもいかなることをや
つて
おるかということもはつきりしてはおらぬ。ただ利殖に眼がくらんで、利益だけに眼がくらんで金を渡して行く、これは投資と言われましよう。けれ
ども
投資ということと預金ということとは、まことに紙一重なのです。預金という気持で預金している人はその十数万の人の大多数だと思いますが、投資したという人、預けたという人、そういうように紙一重で利ざやもとれるというときには、それは大蔵
当局
が日本の金融行政の元締めである、いやしくも日本の経済に重大な影響を与えるようなこの金融機構あるいは利殖機構については相当しつかりした態度をも
つて
取締
つて
もらわなければならぬと私は考えておるのです。そういうようなしつかりした態度をも
つて
臨んでもりらわなければならぬ大蔵
当局
が文書に表われた字句にこだわ
つて
どうも匿名組合でないとは言いかねるというような――ないとは言いかねるというような言葉をも
つて
これが預金でないと断言せられるようなことは、私はどうも受取れないと思うのですが、この点は十分御再考願いたいと思うのであります。日本の国内において現在この種の機構を持
つて
おる利殖機関あるいは株主相互金融の機構をも
つて
や
つて
いる金融機関あるいはこれに類するようなものが、ずいぶん私
承知
しておるのですが、大蔵省も日本の金融行政の元締めで十分調査されていると思うが、一体どれくらいあ
つて
、そうしてその扱
つて
いる資金量は何千億くらいか御
承知
でありますか。
河野通一
66
○河野
説明
員 お答え申し上げ上ます。これもはなはだ私
ども
一々について具体的に調査をいたしておりませんで、相当推定が入
つて
おることを御了承いただきたいと思います。 第一に、今お話の投資利殖機関、つまり簡単に言えば保全経済会式のもの、これは二つのやり方があると思います。一つは株式会社組織でやる、株式会社で株式を集めて来て、それを不動産とか有価証券に投資するという仕組と、それから今のように、匿名組合かあるいはそれに準ずるような一つの出資形式をと
つて
おるもの、この両者がある。大体数は後者の方が若干多いのではないかと思いますが、両者で大体五十社程度と私は踏んでおります。その資金量は保全経済会をへ含めて百億から百五十億程度だろうと思います。それから、貸金業者は、これは今申し上げた利殖機関とまるでカテゴリーの違うものでありますが、貸金業者は大体全国に一万程度ある。そのうち法人と個人が大体半々程度とお考え願えればいいと思います。法人というのは具体的に申し上げれば、大体株式会社組織でや
つて
おる。株式会社組織でや
つて
おる貸金業の一つの形体がいわゆる株主相互金融で、これは私
ども
に届け出られておる文書の表面から言いますならば、これは株式会社組織による貸金業の一つの形体であろう、その株式相互金融という形体をと
つて
おりますものがどの程度あるか私
ども
にははつきりわかりませんが、大体全国に二百から三百程度であろうと思います。この資金量は大体二百億前後と私は思
つて
おります。貸金業者全体の資金量が大体四百億程度ではないかと思いますので、大体その半額程度が株主相互金融によ
つて
その資金が占められておる、大体こういうふうに思
つて
おります。この両者、貸金業者と今の利殖機関的なものとを合せて、資金量は大体五百から六百億程度のところではないか。ただこれは今申し上げましたように、一万から貸金業者がございますので、私
ども
は一々の資金をどのくらい持
つて
おるかということはとうてい調べる能力を持
つて
おりません。相当な推定が入
つて
いることは御了承願いたい、かように考えております。
押谷富三
67
○押谷委員 全国における貸金業者あるいは株主相互金融の金融機関、こういうようなものは大体許可を受けておるものですか、今言われました数字は……。
河野通一
68
○河野
説明
員 貸金業者というものに対しては、実は許可とかそういうことはや
つて
おりません。ただ届出の制度があります。届出制度をさしておりますのはどういう意味かといいますと、これは公の金融機関としてどうするという問題ではないので、貸金業というのは私
ども
は本来自由経営業だと考えております。言葉は非常に悪いのですが、貸金法というのは昔からあ
つた
。自分の金を貸すということは自由な営業であ
つたの
であります。現在においても私はその本来の
趣旨
はいいと思
つて
おります。ただなぜ届出をさせ、これに対して特別な
法律
があるかと申しますと、これはやはり
法律
違反をしてはいかぬ。その
法律
違反ということはどういう点かと申しますと、それは二つあると思います。一つは弱者保護の見地から、不当に反社会的な暴利と申しますか、高利をとることを取締らなければならないということが一点。それからもう一点は、これらの貸金業者というものは自己資本でやれ、自己資本で貸金業をやることはこれは本来自由である。ところが本来えてして預金を受入たりするような、いわゆる
法律
違反行為があるから、これらの点についてやはり取締りを必要とする、つまり貸金業等の取締に関する
法律
というのは取締り法規である。そういう
法律
違反とか弱者保護に欠けるような高利暴利をとるとい
つた
ようなこの二点を取締るためにできておる
法律
だと私は考えております。従
つて
免許するとか、認可するとい
つた
ような種類の業態ではない、こう私
ども
ははつきり割切
つて
考えておる次第であります。
押谷富三
69
○押谷委員 一般の問題はこれくらいにして私はこの保全経済会の扱
つて
いる資金の集め方その他につきましては、相当疑義があると思いますから、今の局長の御答弁をも
つて
しては実は満足をいたしません。私の
考え方
と相当距離がありますし、また昨日法務
当局
から伺いました御意見とも大分食い違
つて
おりますから、そこでわれわれはこの実体をいま少し調査をいたしたいと思いますので、先ほ
ども
御答弁の中にいろいろな資料をお持ちにな
つて
いるようであります。保全経済会の実つ態を調査するに必要な資料を現在お持ちであると思いますから、そこでこれは
委員長
から言
つて
もらうのが正しいと思いますが、私からも要請をいたしますことは、保全経済会の定款あるいは営業案内、出資
関係
を明らかにするもの、あるいは資産
関係
が明らかになるもの、配当利益、かような
関係
に関する
説明
の書類、その他保全経済会の組織、営業、あるいは契約者との間における契約
内容
を知り得るような一切の書類、かようなものがありましたならばぜひ当
委員会
に御提供を願いたいと思います。
委員長
からも特にその点御配慮をお願いいたしまして私の質問を打切ります。
小林錡
70
○
小林委員長
ありましたら次会までに御提出を願います。なおそのほかにも参考になるものがありましたらお願いいたします。木下郁君。
木下郁
71
○木下委員 私は国税庁の長官にひとつ聞きたいと思
つて
お
つたの
ですが、
銀行局長
が見えておりますから……。
銀行局長
は御勉強なさ
つて
日曜にお出にな
つて
国税庁長官は日曜だからどこへ行
つた
かわからぬ。国会は今休日も休まぬでや
つて
いることは御
承知
のはずだ。はなはだ遺憾に思
つて
おるが、あなたはお出にな
つて
いるからその点だけ満足いたします。 ただ先ほど以来繰返された御答弁で、なおきわめてふに落ちぬ点があるのですが、今取扱
つた
金額の総額というものが大体五百億くらいということを伺いました。こういうえたいの知れない――まあどうも匿名組合の疑いがあるとかいうような判断で取扱われて来た、そういうえたいの知れない金融機関が出て来て五百億の金を動かしておる。これはどうかしなければ、日本の経済界、ことに金融の面に非常に危険なことになりはしないかということは、やはりその一年前、御相談があ
つた
ころからお考えにはな
つて
おりましたか。お考えにな
つて
お
つた
ならば、その点についてただこの保全経済会のいろいろな資料で、そこ確信を持
つた
銀行法上の、あるいにその他の金融の取締りの規則で手を入れることができないのか、どうかしなければならぬということで、いろいろの手はお考えになりましたかどうか、その点をちよつと伺いたい。
河野通一
72
○河野
説明
員 今お話のような観点からも、この問題についてはいろいろ考えました。ことにこうい
つた
いわゆる利殖機関とか正規の金融機関以外に、相当資金が集ま
つて
来るという事態、そういう原因等は、やはり私
ども
としては相当いろいろな観点から研究して参
つた
わけであります。ただ問題は、金融全体の立場に対してどの程度の影響を持
つて
おるかという問題につきましては、私が先ほど来申し上げておりますように、資金量全体が大体五百億程度でありまして資金量は決して小さくありませんが、金融全体を撹乱するというほどの問題ではない。むしろ問題があるとすれば、自分のなけなしの資金を出資しておるこれらの加入者の方々が、万一の場合にはそれがとれなくなるかもしれぬとい
つた
ような危険にさらされてお
つて
その最悪の事一態においてそれがとれないという場合には、相当社会的に問題を起すということが非常に心配される問題であるのであります。それが金融全体の大きな動きに非常に大きな撹乱を起すということは、私はその当時からもないと考えておりましたし、またそういうことをあらしめるべきではないという
建前
において考えて参りました。今御指摘のように、これらの影響を無視して参
つて
もいいというふうなルーズな
考え方
には、私
ども
は決して立
つて
おらぬのであります。さればいかなる方法がそれに対して講じられるかという点につきましては、先ほど来申し上げましたように、結局これは各出資者が出資をするという形において加入して行く。従
つて
その形では、いわば非常に例が悪いのでありますが、一般の事業会社、株式会社等の株を引受けて行くというふうな
法律
関係
とかわりはない。従
つて
それに対しては、預金者に対すると同じような保護は与えられない、こういうことをはつきりわか
つて
いただいて、その上でこれらの出資なりあるいは投資なりをしていただくことが望ましいということで、私
ども
もいろいろな観点から、そうい
つた
事実を、新聞社にもお願いして新聞紙等を通じましてできるだけ皆さん方にわか
つて
いただくような措置は講じて参
つた
つもりでありますけれ
ども
、不幸にしてそういうことが十分に徹底しなか
つた
といううらみが、あるいはあるかもしれませんが、できるだけそういうことはや
つて参
つた
つもりでございます。ただ問題は、かりにこれらの業態というものが相当危険なものであるとしても、私
ども
としてはこれが危険なものであるということは言うことはできないと思います。また危険であるかどうかはや
つて
みなければわからぬという問題でもありますし、言葉は非常に悪いのでありますけれ
ども
、場合によ
つて
は一種の営業妨害行為になるかもしれない。そういう点も十分私
ども
として考えて参らなければならないということで、これらの言動については相当私
ども
は慎重を期さなければならないという問題があると思います。従いましてその出資者には、それは出資という形であ
つて
、決して預金でないということをよくわか
つて
これに加入していただきたいということも、できるだけ徹底するように私
ども
は努力をして参りました。それよりほかあの際私
ども
としては方法はなか
つた
、このように私
ども
は考えております。
木下郁
73
○木下委員 こういうことに
なつ
たから私は言うのではありませんけれ
ども
、私
ども
みたいな金融のことになると縁のない者でも、月二分、はなはだしいのは八分という配当をするようなばかげたことが行き詰まるということは、常識的にわか
つて
おる。それを今、万一の場合には零細な何万、何十万の出資者に迷惑をかけるから――万一ではありません。万に万、いつ来るかが問題だ。そういうような態度がはなはだ今日をあらしめている。一年前その方のくろうとの法務省と金融面の大蔵省が集ま
つて
相談して、結局わけのわからぬような結論にな
つて
こういう次第にな
つて
おるわけであります。その点をここでやかましく言
つて
もしようがないので、これ以上言いませんが、直接いろいろの資料を持
つて
来いと言
つて
やるだけの権能がないから、間接に集めてお調べに
なつ
たというが、便利なことに大蔵省には国税庁がある。一体この伊藤なにがしという名も知れぬ人間が一人で、そうして月二分、はなはだしいのは八分という高率な配当をして行く。匿名組合ではなくて、匿名組合に準ずる一種の無名契約という御解釈にはな
つて
いるのですが、それならその配当たるや、伊藤なにがしの営業による利益の配当であることは間違いない。そうしたならば、伊藤なにがしが、
日本国
中に大きなビルデイングを建て、二百箇所の出張所、支応を設けておるという点について、税金は十分おとりにな
つて
いると思います。零細な親兄弟そろ
つて
働いておるようなしがない、店には税務署の署員が三日も四日も来て帳簿の端から端まで調べております。それが現実であります。一年前からそれほどに疑問をお持ちにな
つて
お
つた
ならば、この点については必ずお調べにな
つて
おると思いますが、一体国税庁とその点についてお打合せになりましたかどうか。そうしてこれからどのくらいの利益をあげているということはお知りにな
つて
おりますか。お知りにな
つて
おるならば伺いたいと思います。
河野通一
74
○河野
説明
員 私は国税庁におきまして、保全経済会と申しますか、伊藤斗福個人の営業にな
つて
おりますから、おそらく個人の問題だと思いますが、その税金の問題で現在調査を進めておる段階だと聞いております。それでいろいろ
経過
的に話を聞かないでもありませんけれ
ども
、今おしかりを受けてはなはだ恐縮でありますが、国税庁長官から直接お聞取り願うべきであろうと思いますので、私からお答え申し上げることは差控えたいと考えております。あしたでもお呼出し願いまして御質問願いたいと思います。
木下郁
75
○木下委員 国税庁に聞いた方がなおはつきりするわけでありますから、
銀行局長
にはもうこれ以上聞きません。ただ一言、ほかの委員からも希望が述べられましたが、事実を調べるには、複雑した事実だから相当時間がかかるということは了承されます。しかしこの問題は、匿名組合であるやいなや、あるいはこれが準匿名組合の無名契約であるかどうか。それからそれに対する態度も、常識的に考えて、このものがいつかしつぽを出すことはわか
つて
いるのに、それに対して、大蔵省の重要な職にある人なのですから、やはり考えるにも程度がありまして、裁判をして結審した事実について
法律
の判断をするのに、最高裁判所が三年も四年も考えておるが、しかし考えるにも程度がある。そういう点が国民には納得が行きません。事なかれ主義だというので、いつまでも結論を出さないでじつとしておるなら、御本人はそれでいいかもしれませんが、国民はたまりません。かような意味で、どうかはつきりした、そうして高い政治的観点から善処されんことを希望いたしておきます。
押谷富三
76
○押谷委員 ちよつと一点聞き漏らしましたので伺います。保全経済会の問題について、重要な事後処理といいますか、途方に暮れております十数万の資投者に対して一つの利益を擁護せんければ重大な社会問題にもな
つて
来るわけですが、それがためには、この保全経済会の伊藤が持
つて
おる
財産
の散逸を防がなければならぬのです。特に新聞に伝えられたところでは、伊藤はこの金を外国へ持
つて
行
つて
分散するという計画があるがごとく言われているのです。何でも二十六年の秋
アメリカ
に行
つた
際に、二箇月間に、当時の金で七千万円使
つて
来た、どこかへ分散しているのだろう、こう新聞に書いてあるのです。実際はわかりませんが、今日の事態からはさようなことも考えられます。外国へ金を持ち出すことは、もちろんいろいろな法規上の
手続
があり、それは大蔵省所管の事務でありますから、そういうことにつきましても御警戒を願わなければならないことだと思いますが、そういうことはお考えになりましたか。またそれに対して将来御警戒を願いたいと思いますが、御意見を一口でいいから伺
つて
おきたいと思います。
河野通一
77
○河野
説明
員 押谷さんからの御質問の点は私もうわさで聞かないではございませんが、真相については、私まだはつきりしたことを申し上げるわけに行きません。ただ今お話もありましたように、最悪の場合において出資者の保護に欠けるということは、これは非常に困
つた
ことでありますから、そうい
つた
財産
の保全という見地から、彼が外国へ投資する等のことがもしかりにありとすれば、大蔵省としては為替管理法その他の
規定
によ
つて
これらの点は十分に監視ができるわけであります。これらの
法律
の運用によりまして万全を期したい、かように考えている次第であります。
小林錡
78
○
小林委員長
本日はこの程度にとどめまして、明日午前十時から開会することにいたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時十五分散会