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徳永説明員 御
承知のように、
日本の
繊維産業は、今
お話がございましたように、価格が非常に浮動いたしまして、それが輸出の障害にな
つておることは御
指摘の
通りでございます。ただ、これには、
繊維に
関係する業界人が非常に多いということ、それからまた需注
関係あるいは国際的な価格の変動の推移その他というものが取引所を通じまして非常に敏感に反映する仕組みというものが非常にあるわけであります。この間に、正常な需注
関係の反映のみならず、取引所にいわば投機的な要素の反映ということもあると思います。原因にはいろいろな非常に複雑なものがあると思いますが、しかしこれを経済の正常な形として、今のような自由経済の形で、取引所というような価格の自動調節の最もしやすい
機関というものを設けてや
つている仕組みそのものには、制度的に欠陥があるものとは私は必ずしも
考えないのでありまして、その細部の
運用等につきまして手直しをするようなことはいろいろとあるのだろうと思いますが、それを根本的にかえまして、そういうものをなくし、あるいは人為的なコントロールの手を強めるというような形は、むしろ長い目で見まして健全な発達によいかどうかということには若干の疑問があるのじやないかというふうに私は
考えるわけであります。と申しますのは、
日本の人絹だけを
考えてみましても、御案内の
通り、
世界的に見まして、輸出
関係です、
国内的に批判しますればいろいろの難点もございますけれ
ども、やはり
世界のトツプを行
つておりまして、ことに織物
関係になりますれば、人絹では、インド市場におきましてイタリア人絹に
日本の人絹が圧倒されたというような問題も今起しておりますけれ
ども、しかしイタリアでは、
日本の織物には絶対にかなわないという悲鳴を上げているというような
状況が現状でございます。ということは、
日本の人絹織物
工業というものそれ自身の持
つている力というものはいろいろとすぐれたところがあるということの証明ではないかというふうに
考えるわけであります。以上のようなことを背景に持ちまして、先ほど
お尋ねがございました輸出
関係の価格の安定のために原糸織物輸出というものの一つの特別のルートをつくつたらどうかという御意見でございますが、私、前国会中におきまして
お尋ねがございました際にも、これは不可能だと申し上げた記憶はないのでございまして、ただ問題は、綿や羊毛につきましては似たような制度をすでに実施いたしております。人絹
関係につきましては実施は当時からもう研究はいたしておりましたけれ
ども、
事情の異なる点は大きな点が
二つございまして、その
二つの極端な異なる
事情のために綿や毛のごとく簡単に実施しがたい面があるのだということを
お答えしたように記憶しておるわけでございます。その
二つの点と申しますのは、一つは、原料自身に対する政府のコントロールの力というものが、全然人絹につきましてはないということ、と申しますことは、逆に申しますと、綿
工業及び羊毛
工業につきましては、その原料がほとんどすべてが輸入原料でございますので、その輸入原料の機業者に対する
配分の仕方、その仕方によりましてある
程度輸出を特別
扱いにするようなことが可能になるわけでございますが、人絹につきましては、御
承知のごとく、その原料の大部分というものは国産のパルプによ
つてできておるわけでありまして、これを統制するというようなことはいささか問題でもございまするし、著しく羊毛、綿花の
事情と異
なつた点でございまして、それが一つの難点でございます。それから第二の点は、人絹織物
工業の大半というものが非常に多くの機屋によ
つてつくられておりまして、その機屋からできました織物の原糸がどこの原糸であるかということ、どこの人絹メーカーの原糸が使われるかということが調べ上げにくい
事情があるわけでありまして、その点の難点が綿や羊毛の場合より著しく違う点です。その
二つの難点から、綿
工業につきましては昨年の十二月から始め、羊毛
工業につきましては本年の七月から始めました制度というものが、人絹が
あとまわしにされた
事情でございます。なおほかに技術的にむずかしいいろいろな問題もあるわけでございますが大きな点はその
二つであるわけであります。しかしいずれにいたしましても、私
ども、今御
指摘がございましたように、
日本の人絹
産業、ことにその輸出価格を極力安定せしめるというような
効果の生ずるような施策というものを何らかやるべきであるということは、御説の
通りでございまして、私
どもも、それにはできるだけの力を尽すべきではないかということには、全然同じ
考えで、ない知恵をいろいろしぼ
つておるというような
事情であつたわけでございます。そこで実はいささか
事情が綿と羊毛と違いますけれ
ども、御
承知のように最近になりまして人絹、スフの生面が伸びて参りまして、他方その原料であります。パルプというものは、すでに一つの飽和点に達しております。一部のパルプ原料というものを輸出いたしておるわけでありまして、この輸入量がたまたまでございますけれ
ども、数字といたしまして輸出品の製造に必要とするであろう原料くらいのものを輸入しておるというような、量的にそういう
事情にもな
つて参
つておりますし、また輸入されますパルプの価格というものが、国産のパルプの価格より若干安い。割合にいたしまして一割か一割五分見当でございますが、割安であるというような点に着目いたしまして、ある
程度パルプを輸入しなければならぬということであり、しかもその輸入されるものが、国産より安いのだというならば、輸出を優遇する
意味におきまして、輸出品は輸入原料でつくられるというように持
つて行つた方が、少しでも輸出の価格の引下げに役立つのではないか。先ほ
ども申し上げました
通り、アジアにおきまする大きな市場の一つでありますインドにおきまして、イタリア人絹に
日本の人絹が負けておるというような
事情もあ
つたのであります。そういう国際的の競争力を少しでもつけるというような
意味で、輸入原料は輸出の原料として渡すというように着眼してすることが輸出振興の見地から必要であり、適当であるのじやなかろうかということも
考えまして、その輸入原料の
配分にあたりまして、輸出用の糸の製造に、輸入原料をお渡ししますと、そういう実はやり方を始めました。十月一日以降のものからこれを適用するということで、要綱はすでに発表いたしまして、現実には為替
資金をおろす操作は、まだ若干
準備の
関係で延びております。しかしそれもきわめて近々のうちに措置されるという段階に来ておるわけでございまして、これはまあ業界に十分の用意なしにと言つたら語弊がありますけれ
ども、いろいろ資料の不備な点もございましたけれ
ども、それを一日も早くやるべきであるということで、要綱をきめて今業界の方でそれに即応する資料の整備その他の
準備をいたしておるということで、実施がちよつと遅れておりますようなわけであります。この
意味におきまして、今
長谷川先生から
お話のございました
趣旨の
通りには、百パーセント参らないかもしれませんが、ほぼ同じ目的のために、ほぼ同じような結果になるごとく、事態は動いて参るんじやないかというふうに
考えるわけであります。と申しますのは、人絹会社は輸入パルプをもらいますためには、自分のところの糸がどれだけ直接糸のまま輸出した、あるいは織物にな
つて輸出されたという証明書というものを、税関の輸出からバツクしましたものを、輸出商を通じて手に入れて来なければ、その製造に要する原料でありますパルプが手に入らないということにな
つておりますので、人絹会社としましては、輸出を出すことに興味を
感じ、またそれでなければ安いパルプがもらえない。従
つて自分が原糸のまま輸出します場合には、当然輸出商にこの証明書を自分のところに返してくれというふうに要求し、またそれが織物として出ます場合には、機屋さんに対しまして、輸出であれば輸出の採算に合うように原糸を供給し、そのかわりそれを輸出商を通
つて輸出ができたら、その分はこれは自分の原糸なんだから、証明書を返してくれるようにしろよという条件づきで出すようになると思います。そういうふうに事態は動くと思いますので、今
長谷川先生が御
指摘にな
つたのとほとんど同じ
効果が、この輸入パルプの人絹あるいはスフ製品の輸出に対するリンク制というものの実施によりまして、実現し得るのではないかというふうに
考えておるわけであります。