○山本(勝)
委員 福田委員から、微に入り細にわた
つて適切な
質問があり、また法務
大臣からも非常に懇切は
答弁があ
つて、大体もう申し上げることもないわけでありますけれ
ども、ただ今後対策をとられる御参考までに、私の
考えを聞いておいていただきたい。私は最近に、これと同じような事件だと思うのですけれ
ども、食糧管理法違反で、汽車を急襲して何十俵の俵を押収したということが毎日の新聞に載
つておりますが、あの記事を見るたびに、誤
つた法律をつく
つておいて、つまり
国民の実際の必要というものにマツチしない
法律をつく
つておいて、その法にひつかか
つたものをどんどん上げて行く。食管法を守らぬでいいというのではありませんで、
間違つた悪法でも、法は法で守らねばならぬことはよく承知しておりますが、しかしたまたま
間違つた法律ができたというのじやなくて、あの
法律ができてもう何年にもなるのに、実は一年として法通り守られたことはないし、また守られてお
つたとしたら、たいへんな餓死者が出て来てお
つたかもしれぬ。そういうふうなもので、こういう兇作であ
つたということを理由にして厳重に取締るのでありますが、しかしあれに対してはやみ屋の連中も、どろぼうをしてつかま
つたような後悔の念はほとんどありません。また世間もそうは見ておりません。こういうことを感じておるのであります。この保全経済会というものについては、私よく知りません。どういう
間違いがあ
つたか知りませんが、全般的に
考えて、この種の
金融行為、貸金業法違反という話もありましたし、また匿名組合としても本来の法を逸脱しておるというような話もありましたけれ
ども、全体的に
考えて、私はやはり法に
間違いがあ
つて、その
間違つた法制が、やはりこういうものを生み出しておるのだということを信じておるのです。こまかいことは申しませんが、大体において日本の
金融市場における需要供給のバランスというものを見ますと、
資金需要が非常に多い。この
資金需要には、不健全なる
資金需要もありますが、とにかく
資金需要が強い。それに対して、
資金の供給力というものはきわめて弱い。資本の蓄積というものが、インフレーシヨンのあとでほとんどない。ほんとうの意味の資本蓄積がない。そこで需要供給のバランスから申しますと、金の値打と申しますか、金の働きに対する
価格、要するに金利ですね、この金利が、
法律できま
つているものは安過ぎる。つまり従来の銀行が二銭八厘でなければ貸せないというふうに法制できめられておる。そうすると、二銭八厘などで貸してお
つたのでは、
政府の預託金か何かで安い金利で借りられるとか、あるいは日本銀行から安い金利で借りた金を貸すならば、二銭八厘で貸しても引合
つて行きましよう。しかし一般の
国民から預金を集めて、それを二銭八厘で貸すということをしたら、銀行は立ち行くものではない。ですから、大口の何百万、何千万というものを扱わなければ、小品の五万円や六万円の金を二銭八厘などで貸してお
つたのでは、貯金を集めた金でや
つてお
つたなら、
資金コストが高くついてとうていや
つて行けない。そこで、二銭八厘で貸さなければならぬということを、監督もありますから、守
つて行くということになると、一般庶民の少額の貸出しなんというものはとうていできない。多額のものは、信用がないからもちろん貸せない。そこでそれに対して、相互銀行とか
金融公庫というものをつく
つておりますけれ
ども、これだ
つて、多少金利を高くしておるから、
幾らかは小口も貸せますけれ
ども、しかしこれもとうてい一般の庶民の需要に応ぜられないというところです。要するに需要供給の関係で、百円する米を無理無体に五十円で売らせるということになりますと、やみのところで必ず百二十円とか百三十円という値段を生じて来る。それで百二十円、百三十円で売ろうと思えば、それにちやんと見合うように集めて来るほかはない。ですから、一般の庶民が千円の金を借りて
行つて、一日仕事して千三百円にして来るというようなことで、千円の金、二千円の金を借りたい人はたくさんある。金利は高くても、貸してもらわないよりは、貸してもら
つた方がいい。そういう高い金利で貸すためには、どうしても高い金利で集めるほかはない。こういうことにな
つて来るので、貸金業法という
法律も私は厳密に見ますと、実際に妥当しないと思う。それから銀行において、実際の
金融事情に合わないような金利を公定しておるから、ああいうことになる。もし一般の銀行において、金利は高くてもよろしい、そのかわり預かる方も高くてもよろしいということで、銀行が採算が立
つて行くようにしましたならば、あんなものはできるわけはない。確実性ということにおいては、従来の大銀行が確実だということは、だれ一人知らないものはない。ですから、ああいう
金融機関に訴える人もああいうところに金を預ける人も、一般銀行よりも不安があるということは知らないものはない。それは無知だ無知だと言いますけれ
ども、金利が普通銀行よりも高い。不安はある。しかし必ず
間違いを起すというならば預けませんけれ
ども、あぶないかもしれないが、しかし金利が高い。程度問題ですけれ
ども、多少の不安はあるがそこに預ける。その預か
つた金が、高い金利で貸されて行くけれ
ども、借りた方もそれで喜んで行く。具体的に申しますと、伊藤斗福氏の書いたものにあるように、月給も払えないのに一割配当をしたというようなことを、本人が書物で書いているようですが、そういうようにして人をだまして呼びつけるというふうなことは、まことに不都合千万なことであります。しかし庶民
金融の見地から申しますと、そういう点があるから、違反と申しましても、その法自身が実際に妥当しておるか、あるいは制度そのものが妥当しておるかということもよく
考えられないと、角をためようとして牛を殺してしまう。それから、一般の預金者を保護しようということが、実は取付騒ぎを起して、預金者を元も子もないようにしてしまうおそれがある。それから、これからのものを保護するという一点ではいいけれ
ども、それではこれまでのものが犠牲にな
つてしまう場合がある。これは早急に対策をと
つてほしい。私
どもの党としても、少くとも今度の通常
国会が始ま
つたら、そこで何らかの法的措置を必ずとるという言質をと
つておいてもらいたいとまで、幹事長に言われておる。や
つてもらいたいと同時に、やられるについては、ただ
法律できめたものだからどうとか、きめておいて違反する者は取締
つて行くというようなことでなくて、実際の庶民
金融が円滑になるように、それから一般の銀行で集められないようなたんす預金というものも比較的安全に出て来るように、よくひとつ御研究を願いたい。申し上げるまでもないことですけれ
ども、そのことを申し上げておきたいと
思います。