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1953-11-07 第17回国会 衆議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月七日(土曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 千葉 三郎君    理事 淺香 忠雄君 理事 大上  司君    理事 坊  秀男君 理事 春日 一幸君    理事 山本 勝市君       有田 二郎君    黒金 泰美君       小西 寅松君    苫米地英俊君       藤枝 泉介君    宮原幸三郎君       三和 精一君    福田 繁芳君       本名  武君    小川 豊明君       久保田鶴松君    柴田 義男君       井上 良二君    平岡忠次郎君       島村 一郎君    福田 赳夫君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         大蔵事務官         (主税局長)  渡辺喜久造君  委員外出席者         議     員 芳賀  貢君         検     事         (刑事局刑事課         長)      長戸 寛美君         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    白石 正雄君         大蔵事務官         (管財局長)  窪谷 直光君         大蔵事務官         (管財局国有財         産第二課長)  牧野 誠一君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君         農林事務官         (大臣官房調査         課長)     田中  覺君         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 十一月六日  昭和二十八年における冷害等による被害農業者  及び被害農業協同組合等に対する所得税及び法  人税臨時特例に関する法律案千葉三郎君外  十四名提出衆法第四号)  昭和二十八年における冷害による被害たばこ耕  作者に対する資金融通に関する特別措置法案  (吉川久衛君外十三名提出衆法第九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員及び小委員長選任に関する件  閉会中審査に関する件  委員派遣に関する件  議員古屋貞雄出席要求に関する件  昭和二十八年における冷害等による被害農業者  及び被害農業協同組合等に対する所得税及び法  人税臨時特例に関する法律案千葉三郎君外  十四名提出衆法第四号)  昭和二十八年における冷害による被害たばこ耕  作者に対する資金融通に関する特別措置法案  (吉川久衛君外十三名提出衆法第九号)  金融に関する件  国有財産管理状況に関する件     —————————————
  2. 千葉三郎

    千葉委員長 これより会議を開きます。  本日議題になつておりまする昭和二十八年における冷害等による被害農業者及び被害農業協同組合等に対する所得税及び法人税臨時特例に関する法律案その他一件につきまして、提案者がまだお見えになりませんから、これはあとまわしにいたします。そこで金融に関する件もございまするが、まず第一に、国有財産管理状況について審議をしたいと思います。
  3. 福田繁芳

    福田(繁)委員 私はその問題に移るに先だちまして、先般来問題になつておりました枚方造兵廠調査委員の一人として、委員長を通じて同僚委員諸君の御了承を求めたいがために発言を求めたわけなのであります。同僚諸君から何かと御配慮願つておりましたところの調査団のその後の事務遂行に関しまして、最終段階打合せ会を昨日四時半から、島村調査員を除く全員が出席いたしまして、約一時間にわたりましてなごやかに意見の交換をいたしました。たいへん遅ればせでありますが、非常に御熱心な各委員の御発言もありましたので、それを織り込みまして、一応の調査書の用意ができましたから、その調査書に関して、調査委員でありまするところの大上司君からこの際御説明を申し上げて、各位の御配慮にあずかりたい、こういうように思いまするから、大上君の発言を許可せられんことをお願いいたします。
  4. 大上司

    大上委員 ただいま議題となりました旧大阪陸軍造兵廠枚方製造所払下げに関する調査報告書の件につきまして、さいぜん福田委員からお話がありました通り、大体のきのうの協議の結果、模様等を御報告申し上げます。なおさらに昨日の報告書等の再訂正等を考慮いたしましたが、もうすぐ印刷ができて参りますので、すぐお手元まで配付したいと思います。  まずきのう大体の協議の事項につきましては、苫米地委員から調査団各位に対して、いわゆるこういう問題を惹起したことについては申訳ないという陳謝がございました。その次に、まず改進党の福田委員からは、先般出された報告書は、なるほど自分は再検討してみたが、大体は了承できるが、最後の結論の次に付記として、平岡並び佐藤委員等がいろいろ意見をつけ加えておられますので、これ等も加味して大体了承しておつた、こういう御発言がございまして、次に平岡委員からは、本調査書に対しては、農地または土地等の問題、たとえばこの基準を那辺に置くかということは非常に問題である。なお一応払下げ価格払下げ基準とすることについては、いろいろ調査方法等もあるだろうが、自分としては特に自分意見を了とせられたい、こういうふうな御意見がございました。次に、佐藤委員からは、本件についても事前に調査して、自分たちはいろいろこの書類は見たが、特に付記した点を留意願いたい、こういうふうな、大体の大わくとしては了解をしておつたように察知できたのですが、但し根本的に再検討するということになりまして、特に福田委員から御発言がございまして、本件については、平岡委員不肖大上とでさらに案文を十分再検討さしてもらいたい、従つて第一回に出された結論、あるいはこれに付記すべきものを本文の中に当然加えるべきである、こういうふうな御趣旨がございまして、皆さんの御了解を得て、昨日平岡委員と私とがその案文をつくつたのでございます。  そこで、それがまだ印刷ができ上つておりませんので、大略を申し上げてみまると、いろいろございまするが、特に織り込ましていただいたのは、結論というものは当然報告書としては本委員会で出すべきが至当でございます。従つてこの報告は大体の経過報告にして、これがいい悪いの結論は本委員会に問う。なおこれの報告書につきましては、他の大蔵委員からも、当時の調査団に対しての御質疑等もあろうかと思いますので、その点が十分できておりませんので、本委員会質疑等によつてさらに完全なものにして行く、こういうような結論を得ました。  以上簡単でございますが、御報告申し上りげます。
  5. 井上良二

    井上委員 調査団調査報告書はいずれ後ほど印刷ができるそうでありますからこれを見ました上でいろいろまた御質疑をいたしたいと考えておりますが、この際政府に伺いたいのです。昨日伺うと、調査団報告書大蔵大臣手元提出されて、大蔵大臣から管財局長にそれが手渡されたによつて管財局大蔵委員会本件に関して一応の結論をつけたものと誤認をして、払下げ所要手続をとられたようでございますが、これが委員会結論でない報告書であるとわかつた今日、一体管財局としてはどういう処置をこの払下げに対しておとりになるつもりでありますか、やむを得ないと考えますか、それとも払下げ手続は一時中止をするつもりでありますか、それを伺いたい。
  6. 窪谷直光

    窪谷説明員 当委員会におきます審議の過程におきまして、その文書を、注意が十分でなかつたために、あたかも当委員会の御意向であるかのごとく早合点をいたしまして処理をいたしましたことにつきましては、深くおわびを申し上げる次第でございます。お尋ねの契約の問題でございますが、これは昨日も御報告申し上げましたように、すでに正式の契約も完了いたしましたし、なお契約要件にありまする二割の即納金納入済みになつておりまして、今の段階におきましては、契約を元にもどすということはできないような状況に相なつておりますことを御了承賜わりたいと思います。
  7. 井上良二

    井上委員 この問題は、単に書類上の事務手続の問題と違います。御存じのように、一応国会で取上げられて、大蔵大臣と本委員会との間における政治的な意味の公約がございます。その公約がいわゆる怪文書的な報告によつて裏切られておるのであります。これに対して一体当局としては何ら責任をお考えになりませんか。問題はあなたの方で——しかもあなたは、新しく阪田前局長の後を襲つて就任をされたのでありますが、この事務をとつておる人はかわつておらないのであります。かわつていません。そうしますと、当然国会でさような論議があり、大臣国会との間において約束がされておるということは、事務当局はよく存じておることであります。しからばこの問題に関連して国会がいつ委員会を開いて、いつ妥当な結論をつけたかということを調べる義務があります。それを怠つております。どういうわけでそういうことをせずに、一片の報告書によつて払下げ手続をとられたのですか。それを伺いたいのです。
  8. 窪谷直光

    窪谷説明員 国会側手続を十分に承知をいたしておりませんで、こういうことに相なりました次第であります。私の注意が不十分でございましたことを、われわれおわび申し上げる以外にはないのでありまして、今後におきましては十分に注意をいたしまして、こういうことを繰り返さないようにいたして行きたいというふうに考えております。
  9. 井上良二

    井上委員 率直にその非を認めて謝罪をされておりますから、私は局長の個人的なといいますか、局長としての立場はよく了承いたします。しかしながら従来国会の決議に対して、国会意思に対して、ことごとく当局はその意思を無視する行動がとられております。少くとも国会において意思表示をはつきりした以上は、その意思を尊重するというのが、事務を担当するあなた方としてはとらなければならぬ責任がかかつておるわけであります。だから、そういう単にあやまつたら事は済むという問題と違うのです。問題はわれわれの血税によつてできておるわれわれの国有財産を、民間の営利会社に払い下げておることでありますから、単にあやまつた問題で事は済まぬ、そうお思いになりませんか。これがもし妥当な価格という判定は、あなた方個人にはあなた方の関係でつけておるわけであります。妥当であるか妥当でないかということは、国会結論を出すことになつておる。その結論がつかないうちに、そういうような手続を何ゆえにそんなに急ぐのです。十年もの年賦で払い下げるということになつておるじやありませんか。十年もの年賦で払い下げるというものを、何ゆえ手続をそんなに急ぐのです。現に立入り作業を許して、作業を継続しておるじやありませんか。作業を停止しておるというならば、それは向うもいろいろな都合があつて、早くしてやらなければ相手も迷惑するだろうということは考えられるけれども、現に立入り作業を許して、どんどん生産を続けておる相手ではありませんか。そこでこういうような問題になつて国会所要結論を出すまでは断じて登記はいたしません、手続は進めません、国会意思は尊重しますということを、たびたび大臣はここで言明しておる。それらのことを全然あなたは無視して、一体どういうわけでそんなに手続を急がなければならぬですか。私はこの考えが非常におかしいと思つているのです。現にあなた方大蔵省の一幹部であつた者小松製作所幹部になつて大阪工場のこの払下げ担当官でおるじやありませんか。そういう者を相手にして払下げをやつてつて、一体国民が見た場合に、それが妥当な払下げとお考えになりますか。私はさような手続のやり方に非常に不満を持つておるのであります。あなたに責任を追究しても、あなたは大臣の決裁を得ておる以上は、それでいいかしらぬけれども、これはわれわれ国民財産手から、そう簡単にうやむやのうちに登記をされたんじやたまつたものではありません。そうお考えになりませんか、もう一ぺん答弁を求めます。
  10. 窪谷直光

    窪谷説明員 私どもといたしまして、国会の御意向を無視するとか、あるいは軽視するとかいうふうな考えは毛頭持つておりません。御報告をいただきましたので、これを早合点をいたしましたところに、不注意であつたところがあるわけであります。この点はおわびをほんとうに申し上げるほかにございません。先ほど申し上げましたように、今後におきましては、こういう行き違いの起りませんように十分に注意を行き届かせまして、事柄を処理して参りたいというふうに考えております。
  11. 有田二郎

    有田(二)委員 井上君と私は党が違うけれども井上君のおつしやることは当然のことであつて、しかもこの問題は、井上君が主体になつて前の委員会でいろいろ論議をした。そのときの管財局長がどう間違つたの栄転をした。そしてそれの連絡が十分に行つておれば、私はこんな事態は起らなかつたと思う。結局前の管財局長から今度の管財局長への連絡も不十分であつたように思う。一体大蔵委員会の中でだれがこの問題で一番うるさかつたかということを、十分次管財局長に伝えてあれば、まず井上さんに意見を聞いてみて、こういう報告書がありますが、いかがでございますかと聞いてから処理しても、私は決しておそくなかつたのではないか。そういう点が、国会軽視とは思いませんか。やはりこの問題については井上委員が非常に熱心に御検討になつて、あのときは管財局長答弁大蔵大臣答弁とが食い違つた管財局長はあのときに当然やめるべきなんです。やめるべきだけれども、情状酌量してやめずにおいておいたところが、栄転をした。こういうまことに古今未曽有のことが行われた。そのあとにこういう問題が出て来たわけです。まつたく奇々怪々と言わざるを得ない。こういう問題が起つてしまつて、今管財局長から非常に陳謝の意を表されたから、それ以上は追究いたしませんが、しかし将来は、特に国有財産払下げについては、十分ひとつ慎重にやつていただいて、こういうことが再びないように御注意を願いたいと思います。
  12. 井上良二

    井上委員 払下げ形式の問題がひつかかつておるようでございますけれども、私どもの真意は、さような形式論ではございません。問題は払下げをした物件が、いわゆる時価評価といいますが、時価評価で正当な価格払下げられておるかおらないかというところにある。すでに売渡し予定物件に対しての評価が、われわれの見ますところによれば、今日の評価からすれば安いという断定を下しておるのであります。そのことが問題であります。だから、少くとも社会一般評価をいたしました場合、政府払下げ価格社会評価よりも安く払下げられておるということになつた場合の責任はだれがお持ちになりますか、だれがそれをとりますか、私の一番問題にしようとするのはそこであります。つまりあなたの手元へ出されておるいわゆる委員長報告といいますか、団長報告なるものは、まつた当局説明を御無理ごもつともなりという考え方に立つてつくられた報告書なんです。それを元にしてやれば、あなた方はかつてこの委員会報告されました予定価格で払い下げておるに違いない。何ぼに払い下げたとかいうことはまだ聞いておりませんが、おそらくその予定価格で払い下げたのではないかと思う。総額九億四千万円幾らで払い下げたと思う。それがもしそれよりもつと高く売れるということにかりに評価された場合、一体その責任はだれがおとりになりますか。問題は単なる事務手続の問題でない。国有財産を不当に処分したということになります。その責任はだれがおとりになりますか、それを伺いたい。
  13. 窪谷直光

    窪谷説明員 まず有田委員の御注意に対しましてお答え申し上げますが、前局長から、この問題その他につきまして、事務の引継ぎを受けたのでございますが、特にこの問題については、当委員会におきまして慎重に審議がなされておるということから、特に慎重に処理をするようにというお話がございました。なお速記録もよく読んでおけというお話がございました。私も就任後間もなく、この問題を処理いたす前に、さつそくこの御審議経過を十分に拝見をいたしたのでございます。そういうような心構えをもちまして、誤りなきを期したつもりでございますが、先ほど申し上げましたように、早合点の点がございまして、この点はまことに申訳ない次第でございます。なお今後におきましては、こういう行き違いのないようにと重ねて申し上げたいと思います。  なお国有財産払下げが不当に安いということになつた場合の責任はだれが負うかというお話でございますが、これはあげて私の責任であろうと考えております。大臣数字のこまかい中身まで一々御検討になる時間的な御余裕はお持ちになりません。従いまして、こういう数字の問題になりますれば、その補佐の責任を持つております部局長であろうと私は考えております。あげて私の責任であろうというふうに考えております。
  14. 井上良二

    井上委員 そういたしますと、この甲斐田地区及び中宮地区の両物件をどういう条件で、総体の価格幾らに払い下げたのでありますか、それを伺いたい。
  15. 窪谷直光

    窪谷説明員 この前の国会で、御審議の途中におきましても、事務的な再検討は加えて参りました。その後ごくわずかではございますが、機械評価見方につきまして、現地財務局見方がやや間違つているのじやないかという点がございました。これは金額にいたしますと、ごくわずかのものではございますが、当初財務局から申請をいたして参りましたのは、九億四千三百四十三万六千五百六十四円ということに相なつております。その後管財局におきまして再検討をいたしまして、さらに財務局意見も徴しまして、ごくわずかの金額の増加ではございますが、九億四千五百四十五万一千二十円ということで契約を完了いたしております。
  16. 井上良二

    井上委員 問題は、その総額払下げ価格のうちに含まれておる土地建物工作機械付属設備機械器具等評価の問題でございます。これがいろいろ問題になつておるようでございますが、少くとも今日国としましては、財政的に非常に困難な実情にあつて、特に財源の確保に非常な困難を来しておつて、やむなくこの国有財産の処分を急いでおるような実情もございます。そういうときにおいて国有財産を処分いたします場合、非常に早くからできております払下げ基準を少しも改めることをせずに、昔きめました払下げ基準を今日の地価評価、今日の不動産評価に当てはめて評価しようとする考え方が、あなた方の方では依然として改まつておりません。問題はそこに一つあります。現にあの土地が坪三百円に足らぬというような評価が、一体妥当な評価とお考えになりますか、常識的に考え局長はそうお思いになりませんか。この三百円に足らぬ二百八十何円か二百九十円に評価をしておる。今日日本広しといえども、少くとも都会周辺で、重要工場の敷地にそのまま使える土地が、三百円以下であるというところが常識的に考えてどこの世界にありますか。しかしその三百円という基準を出したのは、こういう評価基準があるから、それによつたと、こう言うておる。一体その評価基準はいつつくつたのです。物の安い絶頂につくつた基準じやありませんか。だから問題は、今日のいわゆる評価から逆算をして、あるいはまた今日の地価評価というものを全体に押えてみてやるべきじやないかと私は思う。局長に伺いますが、あなたはまだ行つて現地を見たか見ないか知りませんが、少くともあの土地が坪二百円そこそこ、三百円に足らぬものだという評価が一体妥当と思いますか。あの整地してりつぱにした土地を、もしあれを切り売りしてごらんなさい、坪何ぼに売れるのです。だから私ども国民から見て、少くとも納得する価格でなければいかぬと思う。なるほどあなたの方は、売払いについては一応いろいろな手続基準がありましよう。ありましようけれども、少くとも国民が見て、特にあの付近の住民が見て、これが非常に安い価格と思われるということは、何としても納得が行かぬことじやないかと思う。ところがあれを三百円以下に売つておるが、三百円以下が正当であるというりくつは何やかにやつけましよう、つけましようけれども、おそらくあの広大地住宅地その他に最も適当な地帯でありますが、これが今日三百円以下であるということは、常識的に納得行かぬじやありませんか。またあの甲斐田地区建物を見ましても、ものすごいりつぱな鉄骨使つて、しかもこれは終戦直前に建てた建物で、まだ腐朽その他はしておりません。そういうものを一万五千円くらいの建坪で押えるということが、一体妥当でありますか。われわれは専門的に建築屋でも何でもありませんからわかりませんが、少くとも今日普通の木造の民家を建てたつて、坪四万円も出さなければ請負い手がない。四万円じやなかなか建たないと言つているのです。普通の公営住宅を建てても、三万円も四万円も出さなければ建ち上らないのですよ。それにあのごつい鉄骨を使つたりつばな建築が、一万五千円や一万そこそこで見積られるいうことが、常識的に考えられますか。問題は、政治は常識ですよ。常識で判断をして結論を出さなければ、世間は納得しませんよ。それをあなたに伺いたい。
  17. 窪谷直光

    窪谷政府委員 土地建物等評価につきまして御意見がございましたが、これは先般の国会で前局長からも御説明を申し上げたと思いますが、私といたしましても、ああいうふうな広大な土地でございまして、非常に市街地に近いところは、なるほど相当高い地価があり得ると思いますけれども、全体的に平均的に見ますれば、前の国会でごひろういたしましたような評価が適当なものであるというふうに、私どもとしても考えております。
  18. 井上良二

    井上委員 それはあなたの方ではそういう答弁をしなければなるまいが、あれを正当な評価を一ぺん出してごらんたさい。おそらく私が言うようなことが一体常識にはずれた質問であるかどうかというこを、一ぺん検討してみてください。私どもとしては、自分血税でつくつた国有財産ですから、そんな不当な安い価格で何ゆえに払い下げるか。しかし十年の年賦にするというのは、どういうことです。どういうわけでそういうことをしなければならないのか。小松製作所株主総会において、年間に八千万円もあそこの工場でもうける報告書が出ておるじやないか。そういう現実にもうける報告株主総会にされておるのに、そんなことも考えずに、一年わずかに一億円足らずの金を年賦で納めてよろしい。そういう甘つちよろい契約が一体ありますか。もつ責任をお感じになりませんか。そもそもあなたと一緒に大蔵省の一地方局長をやつた者が、そこの現場の責任者になつているのです。一ぺん見に行つてごらんなさい。国有財産も民有財産もめちやめちやだ。われわれが見に行つたら、あわてまくつて整理が始まつた状態です。やることがなつてないのですよ。それで正当な評価がされておるなんて、正当な評価じやないですよ。どういうわけで十年年賦にしなければならないのです。どういう理由で小松にそんな甘い契約をしてやらんならぬ義理があるんです。それを伺いたい。
  19. 窪谷直光

    窪谷説明員 別に小松製作所に対して何らの義理合いもございません。国有財産法に基きまして処置をいたしておるわけであります。法律によりますれば、十年の年賦が許されることになつておりまして、この当該の払下げにつきましては、それを一年縮めまして、九年ということで年賦償還にいたしておりまして、年賦償還にいたしました後年度の金額につきましては、年八分の利子をつけて徴収をいたすことにいたしておりますので、特別に小松製作所に不当の利益を与えるというふうな処置にはなつてないというふうに考えております。
  20. 井上良二

    井上委員 なお私は、この問題は私と政府との間において意見が違います。はつきり申し上げます。従つていずれこの調査報告に関する報告書についても、私は意見がございますから、政府に対する質問は一時保留いたしまして、後に大臣の出席を求めて問題を明確にしたいと思いますから、私の事務当局に対する質問は一応保留しておきます。
  21. 福田繁芳

    福田(繁)委員 先ほどから井上委員の非常に詳細な御意見があつたのでありますが、就任早々の局長こそいい御迷惑かと私は思うのですが、また一面考えようによりますと、これに類することがあなたの御就任中にまだ次々あると思われるので、生きたよい教育一参考になつた、こうおぼしめし願いたいと思うのであります。もちろん国有財産処分法に関する今後の改正案にも、りつぱな参考になりましようし、同時にまた今後こういう問題がある場合には、いろいろな法規を基準にしてやられることもけつこうでございまするが、これを経験として、ありとあらゆる角度から可及的すみやかにきめて、そうしてものを早くけじめをつけるというようにしないと、私は非常にまずいのじやなかろうかと思う。ただいま井上委員から、地元だけあつて非常に詳細によく御承知でございますところの、われわれ耳を傾ける御意見の開陳がありましたが、あの価格にしましてでも、これが今日の価格で見積つて売買するならば、あるいはそういう価格が出るかもわからぬ。しかしこれは昨年、一昨年あたりのことであつて、特にこの一両年というものは、不動産の価格の変転がきわまりないときなんです。これは去年おととしぐらいの価格で算定したのでしよう。今日算定するならば安いというそしりを受ける。さればといつてまた経済界が逆転した場合、言いかえれば物価がさつと下落した場合、その当局が慎重審議に一年も二年もかかつたがために、相手方が契約の破棄を申し込んで来た、それがために国家が契約金を倍にして返さなければならぬといつた場合の責任が、どこに起つて来るかというような論にもなつて来ると私は思う。さようでありますから、今後御所管関係でこういうことを処理される場合には、前例に基いて、この際近畿管財局長がやられたように、ありとあらゆる法規をしんしやくしてやられることもけつこうでございますが、これを再検討して可及的すみやかに合法、合理的の手続をおとりあそばされて、なるべく早くこの問題を、こういつたことを解決されて、今後問題にされないようにすることがわれわれ委員会並びに大蔵当局双方のためではなかろうかと、こう思うから、一言苦言を呈しておくのと、委員長に対して申し上げますが、これは前国会において相当長時日にわたつて委員から熱心な御意見があつて、今なお速記録に残つておるわけなんでありますから、これに対する質疑は大体打切りにして、われわれ調査委員が作成しました調査報告書を、一応当委員会で御受理されるということに対する御決定を願いたい、こう思うのであります。
  22. 千葉三郎

    千葉委員長 ただいま福田繁芳君の御提案によりまして、先ほど大上司君から御提案になりました調査報告書でございますが、その小委員会調査報告書を当委員会で受取つて、そこで正式に審議したいという申出がありますが、そういうようにとりはからつてよろしうございますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 千葉三郎

    千葉委員長 その小委員会に対する質疑につきましては、先ほど井上委員からもるる御意見も承りました。そこでこの小委員会報告書を、そのまま本委員会で御異議ないものと認めてよろしゆうございますか。     〔「異議なし」「異議あり」と呼ぶ者あり〕
  24. 千葉三郎

    千葉委員長 異議あるものとして、大多数は御承認してよろしゆうございますか。     〔「採決、採決」と呼ぶ者あり〕
  25. 井上良二

    井上委員 ちよつと一言……。それではしばらく時間をお借りいたします。私この報告書について、この報告書が基礎になつて物件が払い下げられておりますから、従つて報告書は非常に政治的な重要さを持つわけであります。そういう意味で、二、三この報告書を起草された方に御質疑をいたしたい。  そこで第一に伺いまするが、中宮地区を坪二百九十二円に評価している。この評価基準は、一体どこを調査されて二百九十二円と評価をした措置を妥当と認めたかという点であります。その点を御説明を願いたい。そこでそれの一つの参考意見として、枚方当局の見解としても、「この地帯は湿地を含むため坪平均三百円程度が至当であるとの意見であつた。」こういう枚方市の意見をこれにつけ加えておりますが、枚方市はみずから国有財産の一部を借りて病院を経営しておる。さらに近く枚方市は旧香利火薬製造所の敷地の払下げを切望しておる。そういう利害関係を持つておる人の意見を重要な意見として用いることは、一体妥当であるかどうかという点、そういう点を明らかにしてもらいたい。  それから建物については、甲斐田地区が坪一万五千円、中宮地区が九千円となつておるが、これも基準法によつて詳細に計算された表があつて、高価の建物もあるが、他方破損がはなはだしく、きわめて安価なものもあり、小松製作所中宮地区の修理に八千万円を費した点から考えても、まず妥当といえよう。この評価は妥当と言える、こういうことが言われておる。一体小松製作所中宮地区の修理に八千万円をかけたというのは、一体建物及び土地にかけたのか、それとも他に使つておりはせぬか。私の調べたところによると、この八千万円は、立入り作業開始にあたつて、小松が製造しようとする物件機械について、新しい機械をすえつけをしなければならぬ。新しい施設を行わなければならぬ。そういう経費がこの八千万円の中に入つてつて建物の修復費には八千万円使つておりません。そういう不確定な資料によつて、この政府評価を妥当と見るがごとき調査は、はなはだ粗漏な調査であります。この二点についてまず明確に御答弁願いたい。
  26. 福田繁芳

    福田(繁)委員 はなはだ僭越でありますが、その当時調査いたした私から、なおまたその節申し上げましたように、私はかつてああいつた工場を経営し、みずから現在もやつておりますので、多少それに対して若干の経験と知識がありますので、むしろ私から井上委員にお答えさしてもらう方が、本調査書をつくつた者として当を得るのではなかろうかと思いまするから、お許しを願いたいのでありますが、われわれ調査委員が近畿財務局へ参つて、今井上委員がおつしやつたごとくに、坪二百九十二円ではあまりに安いじやないか。これは何を基準にしてこういう算定を出したのかということを、その当時の局長、部長の諸君から詳細に聴取してみましたところが、井上氏も御承知の通り、こういう例によりましたというので、一通りのもつともな基準要綱を示されたので、一応机上ではわれわれは納得いたした。書簡題は、はたしてその現場へ行つて、その土地が安いか、高いか、正確な基準に基いておるけれども、それよりかもまだ若干プラスしなければいかぬのではなかろうかという考えを持つて、現場へ行つて調査したことも井上委員御承知の通り、そこで大体これならばこういうところの——もちろんその時分には、小松製作所というものが工場を再開して七、八箇月、約一年たつてつた。いやしくも一年前の工場建物土地の荒れておる状態はどんな状態であつたであろうか。お互いの住宅も工場も同じで、ことにああいつた工場というものは、八年も十年も荒れてほうりつぱなしになつておるとお話にならぬ。それを再開するのには、しろうと衆の存じないところのありとあらめる犠牲を払つてこそ再開できるのであります。もちろんその再開できるところまで持つてつた努力というものもほぼ評価はできる。同時にその再開前の現状から推してみて、大体この付近ならば反当り十万円ぐらいならこれはいいだろうというように、農村出身の議員として私は反当り十万円とその当時踏んだ。そこでなお参考に、これは私は香川県ですから、香川県の農村の基準で行くのですが、今じやありません。今は反当り二十万円です。去年のおそらく秋あたりです。枚方はどうであろうというので、さいわいその付近に農夫が二、三人おりましたので、あの塀の向うのたんぽは、おつさん、買おうと思えば反当り幾らで買えるかい、こう聞いてみました。大体このあたりで十万円くらいで、向うの方のへつこんでおるところならば七・八万円でございましよう。最も水利のよいところで十四、五万円もしますということを聞いた。それで一応農夫から聞いたことも参考にいたしまして、反当り十万円と踏んだのは間違いないなと自分で自信を強くしながら、帰る途中で市役所に参つて枚方市役所の土木課、税務課の二、三の諸君に会つて、どうだろうというので、意見の交換もしてみました。もつとも反当り十万円くらいならば、枚方市の方が実はほしいのです。かつてあの土地枚方市の土地で、それを国家に取上げられたのであるから、むしろ枚方市にくれというならば、もう少し安くしてもらえるのだ、三百円ぐらいなら枚方市もほしいのですというところの希望意見がありましたけれども、いやしくも小松製作所というのは、日本の富をふやすために、外貨を対象とする受注をして仕事を始めるというのだから、この工場を再開するならば、おそらく固定資産税関係でも市はよくなるだろうと思うというような雑談をしながら、ときにこれは三百円くらいに評価されたのだが、高いと思うか、安いと思うか。まあいいところでございましようなあ。こういう話を聞いて参つたので、そういつた三点を基準にしまして、大体反当り十万円、言いかえれば三百円から三百二、三十円というのが、私たちのあの土地に対する見方です。建物に対しては、なるほど今日つくろうと思えば三万なり五万なり七万なりかかるけれども、しかしながらあの鉄骨建物は、もつとするかもしれません。しかしこれも先ほど申したように、めちやめちやに荒れ抜いたところで、軍需工場などを夢にも考えていなかつた一昨年の十月ごろに、もし私たちに買うてくれぬかというならば、小松製作所評価の一割以下くらいでなければ、ああいつた辺鄙なとてつもない広々とした工場なんだから、少くとも、工場経営者としては、一般のものは飛びついて買うべき筋合いのものでないので、小松製作所がたまたまあの工場を何とかしてみようということで、あの仕事を当てはめたからこそ、ああいう金額が出るのだろう。しかし鉄骨は確かに安い。しかしながらこの間の十三号台風で吹き飛んでおるだろうと思われる、すでに倒れそうな建物があつた、それは建物を平均的に見て坪当りの価格を出してるのだから、まあこんなものだろうというように考えて、私はこの調査書の原案をつくつた意見に大した異議はなく了承したのが、また調査委員としての私の意見なのであります。この点どうぞ井上さん御了承願いたいと思うのであります。
  27. 井上良二

    井上委員 私の質問をしておるかんじんの要点についてお答えがございません。といいますのは、ただいま申します通り、枚方市みずから国有地の払下げを受け、国有地の地帯にみずから病院を持つておる利害関係者であります。利害関係者の意見が一体妥当な証言となり得るやいなや、これは明確でございます。そんなものは当てになりません。またただいまお話建物評価にいたしましても、甲斐田地区は全然荒れ果てておりません。これはまだ立入り作業を許しておるところではありませんが、全然荒れ果てておりません。中宮地区の一部建物は非常に損傷したものもございますけれども、これは今お話のように坪九千円に見積つておるのであつて甲斐田地区の一万五千円に比べれば非常に安い評価をいたしております。その安い評価をしたという理由に、小松の修理が八千万円も要した。この八千万円も要したというのは、建物の修理に八千万円使つたというのではありません。いわゆる工場再開、立入りするのについての作業開始に当つての設備に使つているのであつて、もちろん一部は屋根も直さなければなりませんから、直したかもわかりません。そういう理由をもつてこの評価が妥当なりという見解はおよそ当つてない、こういうのが私の質問する根拠でありますから、そこをよく御了解を願わなければいけません。
  28. 千葉三郎

    千葉委員長 私の先ほどの発議に対しまして御異議があるようでもりますが、どういたしますか。採決してよろしゆうございますか。
  29. 井上良二

    井上委員 問題は国有財産の処分の問題であり、しかもこの処分をめぐつてわれわれとしましては非常に納得の行かない関係がたくさんございます。従つて、私としましては遺憾ながらこの報告に基いて処分をするということについては絶対に賛成はできません。もしこれによつてやろうということになりますと、われわれとしては遺憾ながら反対せざるを得ないとともに、なおこのことは非常に及ぼす影響が大きいのでございますから、これはゆつくり委員会として検討した上で、政府に対して、あるいは議長に対して報告を願うようにいたしてもらいたい、私はそう思います。われわれが価格を正当に評価をすることはちつともさしつかえはありません。われわれの評価政府が執行いたします評価との間に食い違いがあつても、これはおのおのの立場の違うところでありますから、そこを私は追究しようとはいたしません。しかし少くとも国会として、国民財産を管理する重要な立場に置かれておるものといたしましては、もう少し慎重に扱つてもらいたい、私はさよう申し上げておきます。従つて委員長がここで即決をするなら、それはやむを得ませんが、私としてはもう少し検討をした上で結論を出すべきではないか、こう思います。
  30. 有田二郎

    有田(二)委員 井上さんのおつしやることも非常にごもつともなんです。しかも国有財産のこれからの払下げその他の問題については、またすでに払下げが決定したものに対しましても、将来のために十分検討することは当然だと思う。しかしながら今委員長からお諮りになつたのは、調査団報告書を一応採決することなのであつて、この払い下げたことについての問題については、これからまだ国有財産はたくさんあることですから、この一つの事態についても将来ともわれわれは検討して、いけないところはいけないとして、いいところはいいところとして決定すべきだと思うのでありますが、今委員長からお諮りになつ調査報告書については、この際採決をもつて御決定あらんことをお願いいたします。
  31. 苫米地英俊

    苫米地委員 井上委員から、甲斐田地区払下げを市が受けて病院をつくつている、なお払下げを希望している、そういうものの意見を徴して何になるか。しかしこれは法規にそうしろと書いてある。地元の役所の意見を聞いてきめろと書いてある。ですからこれは当然のことと思います。
  32. 有田二郎

    有田(二)委員 私の動議を採択願います。
  33. 千葉三郎

    千葉委員長 井上さんに申し上げますが、実はこの調査団の四名の方が昨夕お集まりになりましてさらに起草委員を設けまして、一応の結論ができたのであります。そこでその派遣調査団報告書が本委員会に出ております。それを採択する、同時にその報告書をこの委員会で取上げまして、本委員会報告書とする。で、その内容の点については、井上さんは御反対のようでありまするけれども、多数の方がこの報告書に御異議がないようでありますから、この際採決をしたいと思いますが、どうでしようか。
  34. 井上良二

    井上委員 ちよつと待つてください。一応委員間で相談されて、報告書を作成されて委員長手元へ出された。そこで委員長はこれを私どもに諮られておるのでしよう。だからわれわれはこの内容に対して、字句その他においても異議があるということを言うておるわけです。いろいろ同僚委員でつくられたから、われわれは同僚の立場もよくわかりますが、少くとも公正な報告書ということで委員会としてきめるにつきましては、われわれとしてはもう少し検討を要する点がある。従つて最終結論はしばらく待つてくれという意見です。しかしそれを待てぬ、この際どうしても委員会として結論をつけたいということでございますなら、それは押し切つておやりになつてもかまいません。私はこの案には賛成はできません。
  35. 春日一幸

    ○春日委員 ずつと一部始終伺つておりましたが、私は井上さんの説が筋が通つていると思います。ただいま管財局長も、この書類の取扱いに手落ちがあつた。このことは率直に言つておられますし、さらにその責任はみずから負うものであるという責任のありかも厳粛に宣言されております。私どもが今考えますのに、もはやこの報告書によつて黒くなるとか白くなるとかいうものではなくして、これは管財局長責任において万事の処置が進められてあるのでありますから、問題は、もうすでにこの報告書の内容そのものに権威を持たしめるかどうかにあろうと思うのであります。こういうような意味合いから考えますると、この報告書が早く出されようとおそく出されようと、大蔵省の取扱いに何らの変化をもたらすものではないことが明らかにされております。せつかく井上さんが当初からこの問題を指摘して、熱心に内容にわたつて検討を加えられておりますし、今御指摘の通り、三十分か一時間前に配付されたこの報告書を見て、われわれもこれ正しい報告書であるかどうか十分検討する時間もありませんから、従つて委員としてその賛否の意見を表明するために、職責が尽しがたいと思います。本日一日委員会もありまするし、さらにまた後日委員会が持たれる機会もありましようから、適当な機会においてわれわれはこの内容を検討することにいたしまして——せつかく発議された井上委員が釈然と了解されていないばかりか、まつこうから反対されておりますものを、多数でもつて押し切ることは事態が穏やかでないと思いますし、文書を提出する緊急性というものは、もはや管財局長の宣言によつて意味がないと思いますから、井上君が御提議のごとくしばらく時間をかして、われわれ議員がその内容にわたつて検討する余裕を与えられたい、このことを提議いたします。
  36. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 いろいろ井上さんからもお話がありましたが、この問題については、まだ私たち出されました報告書について納得が行かない。これは立入りを許可されたのは二十七年九月二十五日です。その立入りだけを許可することは局長の権限においてできる。ところがあの土地は、二十四年におきましては三十一級といたしまして二十三銭でしたが、二十六年においてはこれの千百倍という計算になるのですが、しかし実際においてこの払下げを許可されたのは二十八年八月二十九日であります。このときですと二千四百倍というようなことになつて、われわれ計算いたして参りますと、相当大きな隔たりが出て来るわけであります。そういうような点は、この報告書には十分調査されておりません。だからこういう問題について、私たちはもつ検討しなくちやならぬ、こう思います。こういうような意味合いにおいて今、井上さんが申されました御意見に私は同感でございます。そういう意味において、今日この決定をされることは私は反対であります。
  37. 大上司

    大上委員 今、有田さんの動議でございますが、これに関連しまして一言私の所見をこの際申し上げておきたいと思います。各委員の御熱心な御質疑を聞いておりまして、国政審議の熱心さに打たれるのであります。しかしながら私は、国会と行政権の間の問題につきまして苦干考えなければならぬ問題があるかと思うのであります。たとえば今の地区の土地払下げが二百九十二円で安いとか、三百円以上でなければならぬとかいうようなことまで国会が一々干渉するということになりますと、行政権については一日として安泰に執行ができないと思います。従つて国会が取上げるべき問題は、評価基準をどこに置くか、全国有財産に通ずるような評価基準をいつきめたか、それを規定すべきかどうかというような大きな問題をこそ取上げるべきでありまして個々のはしの上げ下げまで一々委員会が行政当局に干渉するということは、国会のあり方として決して健全じやない。この問題だけでありませんで、最近の国会のあり方について、われわれ多少反省しなければならぬところがあるのではなかろうかと思うのであります。皆さんの熱心な御審議に水をさす意味ではございませんけれども国会のあり方と行政権のあり方という問題につきまして、各委員が公正な立場から御考慮を願えれば、私の目的は達するわけでありまして、そういつたお心持で御審議を願いたいと思います。
  38. 春日一幸

    ○春日委員 それは重大な根本の問題に触れておりますので、私は反対の見解を述べてみたいと思います。もとより審議権と行政権との間には画然たる区画があることは論をまちません。けれどもそもそもこの問題が発端いたしましたことは、大蔵大臣がみずから、この問題は大きな政治問題であるから、ひとつ国会の方で十分御検討を願いたい、そうしてその処分については、国会が御納得行けるような方法をもつて処理したいと思うから、国会の御意見をまとめてもらいたいという、大蔵大臣みずからがその執行権を本委員会にゆだねたということではありませんけれども、結果においてそういうような形態をたどつておると思うのであります。それを私どもが、その執行権を干犯する形において、そういう単価にまでわたつてわざわざやつておるわけのものではなくして、大蔵大臣の言明で期せずしてこういうような結果になつて来たことでありましてこの問題は審議権と行政権とをめぐる大きな政治的な一つの事柄として取扱つておるわけでありまして、これは特殊の中の特殊のケースであろうと考えるのであります。これはただいま親愛なる大平委員が、これを最初に言われればいいのでありますけれども審議して結論に入ろうとしたときに、これは行政権の干犯だと今ごろ言われてもどうも聞えない話でありまして、これは大蔵大臣のそういう発言に基いて問題が起きたのでありますから、どうかそういう意味でひとつお取扱いを願いたい。そこで今久保田委員からもそういう御主張があり、井上さんの提議はこれは専門的なものであり、私は最も権威のある意見であろうと思います。私の申しましたことは、管財局長責任をもつて、とにかく信念を披瀝しての意見が述べられておりますので、報告書を早期に出そうと、あるいは遅れて出そうと、これは物事の処理に影響を与えるものではないのであつて、それこそ行政権の権威をもつて執行されるべきであろうと思います。いけないということならば、後日その結果に対してわれわれは批判ができるのでありますから、従つてわれわれが未熟な意見書をわれわれの委員会意見として提出することは、これは後日そしりを受ける場合がありといたしますれば、これは全委員責任にもなり、国会の権威にもかかわる問題であろうと思います。従いまして、この問題は満を持して放たず、しばらくこれを留保されたいということを重ねて申し上げます。
  39. 有田二郎

    有田(二)委員 久保田委員、春日委員井上委員のおつしやることはごもつともで、本日この説明書が出て、先刻皆さんの手元にまわしたものでありますから、この問題についての私の今の動議は撤回いたしまして、理事会に一任されることの動議をあらためて提出いたします。
  40. 千葉三郎

    千葉委員長 皆さんにお諮りいたします。この問題は御承知のように二つありまして、調査団報告書を本委員会で採択することには御異議ありませんね。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 千葉三郎

    千葉委員長 それからとの調査団報告書を本委員会意思として認めるかどうかということにつきましては、ただいま有田委員の御提案のごとく、理事会に一任するということでありますが、これは御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 千葉三郎

    千葉委員長 それではさよう決定いたします。     —————————————
  43. 千葉三郎

    千葉委員長 それから昨日の委員会におきまして、閉会中審査事件の申出の件につきまして御決定願つた次第でありまするが、なお接収貴金属ダイヤモンドの件、さらに不用機械工具の調査の件、これもあわせて閉会中の審査事件として追加をいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 千葉三郎

    千葉委員長 御異議ないようでありますから、さよう決定いたします。     —————————————
  45. 千葉三郎

    千葉委員長 なお金融に関する件を議題といたします。本件に関しましては先般来調査を進めて参りましたが、特に最近の保全経済会に関する問題につきましては、世上の関心並びにその影響にかんがみまして、本委員会としても引続き熱心に調査を進めておる次第でございまするが、たまたま本院の法務委員会におきましても、当委員会とは別個の観点から本問題についての調査が進められているようでありまして、これはまことにけつこうなことであると思います。ところで会議録によりますと、去る十一月一日の法務委員会におきまして、法務委員の古屋貞雄君が、その政府に対する質疑の中に、いろいろ保全経済会についての意見を開陳せられ、また第十三国会における本委員会のことにも言及されているようであります。従つて委員会としては、今後保全経済会の問題の調査を進めて参りまするについて参考といたしたく、本問題につきましては特に意見を有する議員として古屋貞雄君から先般法務委員会において述べられた点について御意見を承ることに昨日の理事会で決定されたのでありまするが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 千葉三郎

    千葉委員長 御異議がなければ、古屋議員より保全経済会に関する問題について意見を聴取することに決定いたしました。なお意見を聴取する日時等につきましては、委員長及び理事に御一任を願いたいと存じますが、この点御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 千葉三郎

    千葉委員長 御異議がないようでありまするから、御一任願うことに決定いたしました。     —————————————
  48. 千葉三郎

    千葉委員長 次に、昨六日本委員会に付託されました昭和二十八年における冷害等による被害農業者及び被害農業協同組合等に対する所得税及び法人税臨時特例に関する法律案及び昭和二十八年における冷害による被害たばこ耕作者に対する資金融通に関する特別措置法案の両案を一括議題として、まず提出者より提案趣旨の説明を聴取いたします。提出者芳賀貢君。
  49. 芳賀貢

    ○芳賀貢君 ただいま議題に供せられました昭和二十八年における冷害等による被害農業者及び被害農業協同組合等に対する所得税及び法人税臨時特例に関する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  御承知のごとく、今年の相次ぐ農業災害によりまして、農家及び農協はそれぞれ農作物または資産に被害をこうむりまして、今後の経営上、相当の打撃となることを免れないと存ずるのであります。  現行所得税法上、個人の資産の災害について雑損控除の規定がありますが、法人に対しましては、この種の規定を欠いております。また、農家及び農協において、いまなお相当数のものが青色申告の申請をいたしておらないのが現状であります。従いまして、数十年来の大凶作といわれまする本年度の特殊性にかんがみまして、税法上においても農家、農協に救済の手を差延べ、今後における食糧増産に寄与せしめますることが肝要かと存じます。  よつてこの際、二十八年に農業災害を受けました農家に対しましては、農作物蚕繭共済の共済金に対しては所得税を課さないこととし、また農家及び農協の青色申告書の申請書の提出期限をいずれも本年末とすることにより青色申告の恩典に浴せしめたいと存じまして、ここに本案を提出した次第であります。  会期切迫の折柄ではありますが、何とぞ慎重審議、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。  次に昭和二十八年における冷害による被害たばこ耕作者に対する資金融通に関する特別措置法案につきまして、提案の理由を申上げます。  御承知のごとく、今次冷害による農作物の被害は広汎かつ激烈でありましたが、タバコもまた一般農作物と同様多大の被害を受けておりますので、これらタバコ耕作者の経営の安定上必要とする資金融通をはかりますことは、タバコの生産確保上はもちろん、タバコ耕作農民の民心安定上不可欠のことと存じます。このため日本専売公社が当該資金融通について損失補償及び利子補給を行うことを目的とする本法案を提出いたし、ここに御審議をお願い申す次第であります。  なお本案の内容につき概要を申し上げますと、農林中央金庫その他政令で定める金融機関が被害タバコ耕作者に対し営農資金融通する場合、またはタバコ耕作者の加入する農業協同組合であつて、組合員のために営農資金の貸付を行う組合に対し、それに必要な資金融通をなす場合において、その金融機関に対し、日本専売公社が利子補給または損失補償を行おうものとするものでありまして、大体におきまして、去る十六国会に成立を見た昭和二十八年六月及び七月における水害による被害タバコ耕作者に対する資金融通に関する特別措置法を準用いたしております。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを御願い申し上げます。
  50. 千葉三郎

    千葉委員長 提案趣旨の説明は終りました。  これより質疑に入りますが、実は銀行局長が今参議院の方から来てもらいたいという要望があるのです。それで先にお願いしたいと思います。銀行局長に対しましては本名君から先ほどから質疑の通告がありますから、これをひとつ簡単にお願いいたしまして、それから本問題の質疑に移りたいと思います。本名君。
  51. 本名武

    ○本名委員 実はただいま提案になりました一案に関連もいたしますので、幸い銀行局長がお見えになつておりますが、お急ぎのようですから、一応先に局長に伺います。  この間この委員会で中小企業金融公庫の総裁から伺つたのでありますが、今回の冷害によりまして、農村地帯を中心にした中小商業者が、冷害による農村の減収のために非常に売上げ代金の回収に困つている、同時にまつたく回収不能に近いような現況に置かれている金額が相当ある。御承知の通り来年のしたく、あるいは東北、北海道は冬じたくをするために、農家は冬じたくの買い物をしなければならない。買う金はないのはもちろんだし、同時に買う金がかりに共済その他によつて農家に入つても、商人は次の商品を仕入れる資力がない、こういうようなことから考えまして、この中小商人の金融難を打開するために、一応冷害対策の一環として、国があずける各金融機関への増額、ないしは特別わくの設定、あるいは借入金、それらによつて商人に対する融資をしてほしいということを特に中小企業金融公庫の面からお願いいたしまして、幸い百万円を限つて小口の運転資金の融資をすることになつている、それはけつこうです。けつこうですが、それが十分になされるかということになると、特に緊急を要するこういう冷害地の商人にはあまり使われないのではないかというので、実は今のお願いをするわけなのでありますが、これに対して銀行局長の御意見を簡単に承りたい。
  52. 河野通一

    ○河野説明員 冷害地、特に北海道、東北地方における中小企業の金融の問題でございますが、私どももかねがねこれらの中小企業が、農家における非常な凶作を受けて間接に非常な影響を受けておられることはよく承知いたしておるのであります。ただこの問題は、先般この委員会下申し上げたかどうか私もはつきり覚えておりませんが、国民金融公庫並びに中小企業金融公庫におきましては、特に別わくというような制度をつくることなしに、できるだけそういつた中小企業に対する金融実情に応じた措置を重点的に行つて行くという考え方で参りたいと考えております。と申しますのは、九州及び先般の十三号台風のときのように、この中小企業者自体が直接の被害を受けた、あるいは家がつかつてしまつた、商品がそのまま水ぬれになつてしまつて、商品価値を失つたというような直接の影響を受けましたものとは違いまして、農家は非常に不振であつる。その結果それらの購買力が非常に欠如しましたために、なかなか売行きが悪いというような間接の影響を受ける問題であろうと思います。従つて経済全体の動きから受ける間接の影響の程度は、相当はげしいものであろうと思いますけれども、間接の影響という点におきましては、一般の経済界の波動を受けるのと同じことではないか、そういつた意味におきまして、直接水につかつたといつたような場合に比較いたしましては、やはり別わくといつたような措置をするところまではまだ来てない。しかしながらこれらの問題については、十分に重点的に考えて参りたいと思つておりますし、また先般来いろいろ検討いたしておりますが、冷害地における中小金融機関に対しましては、指定預金の問題につきましても、あるいはこれをある程度延期するとか、あるいは新規の預託ができるかできないかといつたような問題もなるべく早急に結論を得たいということで、今検計いたしておる最中であります。実情につきましては、私ども十分わかつておりますので、実際問題としてできるだけ重点的に実施いたしたいと考えております。
  53. 本名武

    ○本名委員 局長の御意見はよくわかります。ただ東北、北海道の今度の冷害は、大体において商人というようなものは、お百姓さん相手が大半なんです。一例を北海道にとりますと、年間の売上げが、農業協同組合の扱いを除きましても、約五十億一般商人が売つておる。そのうちの十億というものが、一年間というものはまつたく売掛金として残つて、運転資金のないところから生活資金もなくなる状態にある。それが間接災害であるからといつてつておくことは、災害救済の面からはそれでいいでしようけれども、商業者を救済する、特に年末資金をどうするかという問題が起きているときに、あまり間接災害ということにとらわれてやりますと、これは非常に困つて来る。金のほしいのは被害地の商人ばかりではない。全体的にほしいのです。けれどもこういつた特に冷害によつてこうむつたという一つの間接被害でありながら、れつきとした直接被害にもひとしい金融難に陥つておるという面がある。私は北海道に十億あるから十億の金を融資しろというようなことは言いませんが、一応特にまつすぐに何ぼか借りられるのだという道を講じてほしい。そのためには国民金融公庫なり、あるいは中小企業公庫に対して、何億なりのものは冷害地における商人に融資しろ、売掛代金の運転資金としてまわしてやれということではからつていただくことはできないものなんでしようか。先ほどの説明ではよくわかりますけれども、ひとつそういうはからいができないかどうか、聞かせてほしいと思います。
  54. 河野通一

    ○河野説明員 具体的にどういう措置をとりますかは、今ここで申し上げることは差控えさしていただきますが、そういう実情に対して重点的に金融活動をやるようにということで指導いたして参りたい、かように考えております。
  55. 春日一幸

    ○春日委員 関連して……。政府の中小企業向け指定預金というのは、現在高は大体幾らでありますか。
  56. 河野通一

    ○河野説明員 最近定期的に引上げておるものもありますので、はつきりしたことをちよつと覚えておりませんが、四百億くらいではないかと思います。そのうちには銀行等に出ておるものもございますから、これがそのまま中小企業にまわつておるとは必ずしも言えないかもしれませんが、銀行等におきましても、できるだけこういつた資金は、中小企業の金融の疏通のために使うように指導いたしておりますから、大体そういう方に行つておるものと考えます。
  57. 春日一幸

    ○春日委員 そうすると、これは先月でしたか、あなたの述べられた意見であつたか、大蔵大臣意見であつたか、日銀総裁の意見つたか知りませんが、十月中旬における政府の中小企業向け指定預金四百五十億、これは年末までに三百億か三百三十億か引揚げて、年末の現在高は百何十億にする方針である、これは散布超過をその方法によつて吸収して行くのだというようなことが発表されておりました。私心配になつて去年の分をちよつと調べたのですが、去年はたしか四百七十億の指定預金が出されております。去年よりも今年は中小企業金融梗塞状態はその度合いがさらに悪いわけです。十月の東京の手形交換所の資料によると、不渡りが一日平均千六枚、これはことしの五月の最悪のころから、すでに二割くらいふえて、だんだんそれが上昇傾向をたどつております。年末には三千四百五十億でやれなかつたものが、それをインフレ措置という名のもとに、その預託の引揚が三百億もされて参りましたならば、これは年末に向つて手形不渡りというものは激増するものと思う。手形というものは、これは申し上げるまでもなく企業の生命線であつて、不渡りを出せば銀行の金融がつかなくなる、みずからの自殺行為になるわけです。企業家が手形を不渡りにすることは、これは支払い代金を押え賃金を遅欠配しても、なおかつ資金を弁じ切れないものですから、やむを得ず自殺行為である手形不渡りになるわけです。このことを私は銀行局長がどの程度に重視しておられるか。こういうふうに手形がどんどん不渡りにかり、破産、倒産が日を次いで激増して来る、一方あなたの方が予定通り三百億円も年末までに引揚げてしまつたら、本名委員も言われたように、風水害とか、病虫害、冷害にあたかも匹敵するところの大きな災害が中小企業者にかかつて来る。中小企業に従事する労働者は一千万人でございます。これは現実の問題としてそれは総評の攻勢だとか、あるいはその他いろいろの労働攻勢もあるが、この一千万人の中小企業関係労働者はこの被害のもとにさらされておる。これをお考えになるならば、三百億円の引揚げ計画というものは、この際厳にこれを修正し、さらに昨年度の四百五十億に百五十億なり二百億なり、少くとも百億なり、これは増加した立場において中小企業の金融対策を講じないと、ゼネラル、パニツクが起きるおそれがあると思う。これに対して銀行局長は、これは形式的な理論応酬ではなく、ほんとうにどういうふうにお考えになつておるか、どうなさるつもりであるか、この機会にひとつお示しを願いたいと思います。
  58. 河野通一

    ○河野説明員 非常に大きい問題であろうと思います。私どもは全体の金融の問題につきましては、今後の収支の問題ともにらみ合せましてインフレーシヨンを押えるという見地から金融の調整はつけて参りたい。しかしえてしてそういうふうにやつて参りますと、言葉は非常に悪いのでありますが、しわが中小企業によるということも、これはいなめない問題であります。今後年末にかけて、今春日さんから御指摘のような事態の起ることを非常に憂えております。御指摘のありました指定預金の問題につきましても、当初私どもは、今お話がありましたようなラインで計画的に上げて行くつもりでおりましたが、その後における国庫の収支の状況、つまり散布超過の状況が、当初私ども考えておりましたところよりも割合緩和された状況になりそうであります。そういつた点と、国庫の余裕金の残高とをにらみ合せまして、年末にかけて、場合によりましては相当程度指定預金の引揚げを延期する。さらに加えて必要なる方面へは新規の預託をいたしたい、かように考えまして目下これらの方向へ研究を続けておりますが、まだ具体的に金額がどの程度になりますか、国庫収支その他の状況を見た上で、今御指摘のような点については、できるだけ支障のないように努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  59. 福田繁芳

    福田(繁)委員 暫時休憩されて、この両法案に対する提案の説明もわかりましたので、即刻理事会を開かれて、午後一時から再開されんことを望みます。
  60. 井上良二

    井上委員 ただいま提案されております農業協同組合等に対する所得税及び法人税臨時特例に関する法律案、それからタバコ耕作者に対する資金融通に関する特別措置法案、この二つの法律案を私はさいぜんから探しておるのですが、どこにも来ておりません。またそれに対する裏づけの資料もほしいのです。といいますのは、今度の災害で、どういう割合で共済保険が払われるか。その場合の、たとえば一町歩あるいは十町歩、そういう耕作者の場合、どういう保険金が盛られ、それに対してどのくらいの所得税がかかり、同時に基礎控除その他の関係がどうなるかということを、一応調べたのがあるわけですか。それがわかりませんと、全体どのくらい税金でまかるかどうかということがきめられませんから、その資料がありましたらひとつお出しを願いたい。  それからもう一つは、他の保険との関係はどういうぐあいになりますか。そのことは全然関係なしに考えておりますか。他の保険には所得税がこういうぐあいに免税された例があるかどうかということも、あわせて資料として出していただきたい。ここの審議の上必要ですから、法案とその資料をそろえて出していただきたいということをお願いしておきたい。できなければできないでしようがない。
  61. 芳賀貢

    ○芳賀貢君 今井上委員から資料の要求がありましたが、実はそういうものを一切とりそろえてお出しするのが建前と思いますが、大体質疑の中においてお答えいたしたいという考えでおりますし、またもう一つは、農林委員会といたしましても、こういう税に関するいろいろな問題等について、短かい会期中において十分掘り下げて検討をしたり資料を是正するという、そう申しては失礼でありますが、実はそれだけのいとまがなかつたわけでありまして、ただ問題は、緊急を要するというような性質でないかという判断の上に立つて、ぜひ御審議を進めていただきたいというふうに考えておるわけでありますが、最初に御指摘になつた本年度の災害等による農業共済保険金等の支払われる状態あるいは水稲であるとか、麦であるとか、そういうものに関する分類された保険金の支払いの額等は、一応判明しておりますし、それからまた昭和二十八年度において推定される農業所得税、あるいはそれが農業人口に対してどのくらいのパーセントを占めるかというようなことは、一応の資料はあるわけでありますが、それを印刷してまたお届けしなければならぬか、質疑の形におけるお答えでがまん願えるか、そういう点をさらにひとつ御表明願いたいと思います。
  62. 井上良二

    井上委員 それでは、私はそれを質疑ですることにいたします。
  63. 千葉三郎

    千葉委員長 休憩いたします。     午後零時二十七分休憩     —————————————     午後三時十八分開議
  64. 千葉三郎

    千葉委員長 休憩前に引続き会議を開きます。福田繁芳君。
  65. 福田繁芳

    福田(繁)委員 私はこれから犬養法務大臣に、世間によくいわれておりますやみ金融問題に対する取締りに関して、金融を中心にしての法案を日夜審議いたしております大蔵常任委員として二、三の質問をいたしたいと思うのであります。  質問に入る前に、前もつて同僚諸君に一応御了承を得ておきたい点があるのであります。それはほかでもありませんが、法務大臣は御承知のように、私自身にしますればかつてのわが党の総裁であられて、わが党総裁数ある中においても一番尊敬しておつた私といたしまして、やみ金融質問をいたすのに関連して、総裁当時の内外に発表されましたところの政策も多少織り込んで質問いたしてみたいと思います。勢いいくらか逸脱をするかもしれませんが、かく質問する私と犬養法務大臣とはそういう関係があつたのでありますから、その点は一応御了承願つておきたいと思うのであります。  犬養大臣はかつてわが党総裁でいらつしやるときに、今から数年前でありましたが、敗戦日本の再建というものはどうしても一は文化国家の再建、一は産業の再建である。産業の再建というても、欧米各国と型を異にして、日本の産業の既往の足跡をたどつてみても、どうしても中小商工業が健全なる発達をしなければ日本の産業は発展しないのだ。勢いこれからの政治というものは、どうしても中小企業の育成強化ということを重点に置かにやいかぬということを、総裁としてわれわれ党員に御教示されたわけであります。今日、私は総裁と不幸にして党籍は異にいたしておりまするけれども、そのときの御教訓がいまなお実は念頭にありまして、幸いに当時の総裁が現内閣に入閣されたので、それが政策面に現われて、いわゆる庶政一新でき得るものだというように、いまなお実は希望を持つておるわけなのであります。そこで伺いたいと思いますが、今申した日本の産業の再建はどうしても中小商工業者の育成強化が先決問題である。中小商工業者の育成強化ということは、何としても金融部面が大事である。しかるに終戦後今日では、海外の事情もありましよう、言いかえれば客観事情もあり、また一面日本の国の財政が貧困であつたという建前もあつた思いますが、非常に中小金融ということが今日までなおざりにされて、産業再建の基礎となるべきところの中小商工業が、あすの日がどうなるかというところの危険にさらされていることは御同感であろうと考えるのであります。そこで私は質問するのでありますが、まず今申し上げました、かつてのわが党総裁として申されたお言葉が、いまなお法務大臣としておられまする大臣の御心境においておかわりがあるかないかということを、一言劈頭に伺つておきたいと思うのであります。
  66. 犬養健

    犬養国務大臣 法務大臣として中小商工業問題のお答えというのはちよつと妙でもありまするけれども、そうでなく、昔考えていたことが今もその通りかという御質問でございますから、それは礼節をもつてお答えすることが筋だと存じます。仰せの通り、中小商工業というものは日本の企業として特殊な伝統と形態を持つておりましてこれはなおざりにできません。これは仰せの通りでございます。そうして中小商工業というものの本質が、ほうつておきますと、ともすれば沒落過程に一番行きやすい本質を持つていると思います。そこにこの問題のむずかしさがあると思いますが、そういうふうでありまして、中小というくらいでありますから、小さいのもたくさんある。引締めて行く銀行の立場から言うと、融資が一番したくないものである、こういうところに諸般の困難さがあると思います。私も大分方々を歩いてみたことがございますが、中小企業というものはなかなか勇敢でございまして、たとえばアフリカにものを売ろう、東京で天然色のアフリカの映画があるということになると、三等の汽車で東京へ来て、スケツチしてすぐその通りの模様をアフリカに送る、実に勇敢な人たちだと私は感心しております。金融が得られないということが彼らの根本の弱点でありまして、福田さんも御努力になつたことを知つておりますが、協同組合的なものにして融資の対象物としての地歩を強めようというなことで、私ずいぶん歩いたことがあります。新機運を知つてつて来る人もありますが、中には個々別々の方がもうかつたときに非常にぼろくもうかる、そのときの味が忘れられない。だから協同組合的な形態でもつて、もうかつたときの楽しみが薄いのはどうも困るというような傾向がまだ相当に残つておることは御承知の通りでございます。私が忌憚なく申しまして、中小企業というものは、これをほうつておきますと没落過程に行きやすい本質を持つておりまするから、何かそこにてこ入れが必要だ。それにはやはり協同組合的なものへ、時代を自覚して行つてもらいたいというようなことが、私の一番のねらいなのであります。いなかの方に行きますと、まだそういう気分になれない土地がたくさんありまして、中には私のこういう言い方に反感を持つ人もあります。私、結局中小商工業というものは、日本の企業体から言つて無視できない特殊なものを持つていると思う。しかし今申し上げたように本質的に弱いところがある。これを救うには、結局銀行を督励したり、何かしても、それは話だけのことでありますから、融資の対象として地歩が強まるように、協同経営的なもの、協同組合的な新しい精神に徹底してもらつて、新しい第一歩を踏み出してもらいたいものだ、こういうふうに考えておる次第でございます。
  67. 福田繁芳

    福田(繁)委員 ただいま大臣の御丁寧な御答弁によりまして、中小企業が決して日本の再建のために無視ができない、むしろ何らか新しい方法でこれを育成強化せにやいかないという御理論と同時に、今日までの大臣御個人のお立場でこれに対して処して来られたことを承つて、数年以前の総裁当時と何らかわりないところの、中小企業に対する御理解が非常に深い、われわれが尊敬しておるだけのことはあるという意味合いにおいて、衷心から敬意を表しておくものであります。そこで私は、これらの実際の問題に入つてみたいと思うのでありますが、そういうように日本の産業再建に大切な中小商工業が、ただいまのお言葉にありましたごとくに、健全なる金融対象にならぬというので、この数年間ほんとうに没落の一歩手前まで歩み寄つたことは御承知の通りなのであります。その結果、必然的と申しまするか、金融の健全な対象にならない手合いが集まつて、さればとて中小企業を継続して行くのにはどうしても資金がいるのだ。もつと具体的に言うならば、その資金は市中銀行にも見離された、あるいはまた相互銀行も相手にならぬ、信用金庫も相手にならぬ。さればとて零細な資金がなければあすの日も継続ができないというところの必然性の結果によつて現われて参つたのが、御承知のような貸金業法によるところの株主相互の金融機関であります。また一面、その当時の政府金融の対策が不完全であつたか、あるいはまた通貨に対する不安でありまするか、あるいは本来不動産金融を会理的に政府の力をむつてつてつたところの勧業銀行がその機能を停止された、そういう関係において、これまたそういうものの資金が必然的に困つた結果、そこへ目をつけて現われて参つたのが例の今問題になつております保全経済会ではなかろうか、こういうように私は考えるのであります。そこで順序としてまず保全経済会の問題に入つてみたいと思うのでありますが、私は今申しましたように、必然的にある二、三の者がそういう企業を営んでできた企業が保全経済会並びにこれに類似した会社、こういうように解釈いたしておるのでありますが、これがすくすくと発達いたしておるものだ、こういうように見ておつたのでありますが、昨今御承知のように、思いもよらないところの一大問題を起しまして、非常に零細なる多数の預金者と申しますか、金を預けた連中が、今不安にさ迷うております。もうすでに今日は十一月の上旬でありまするが、あと一箇月もすれば年末になつて来る。そうすると、年末中小商工業者あるいは地方民は、資金の点において私どもこれ以上思いもよらない社会問題を起すのではないかと思う。こういう点について非常に懸念をいたしております。先ほど私事の話でありましたが、大臣はこの一両日間にあちらこちらの委員会に参つて、保全経済会についての御質問にあわれたことをほのかに伺つたのでありますが、先ほども申したように、当委員会金融を重点的にやつております専門的の委員会でありますので、幸いに総裁から、あちらこちらの委員会に参つて委員諸君から真剣に質問された要点でも一まとめにしてもらつて、この保全経済会はこうなつておるのだ、これに対してこういうような見解を持つておるのだということを聞かしてもらえますれば非常にけつこうと思いますから、あらためて申しますが、法務大臣からひとつお答え願いたいと思うのであります。
  68. 犬養健

    犬養国務大臣 御質問を尊重してお答えしますと、法務大臣から少しはみ出たお答えになるかもしれませんが、できるだけ法務省の立場からお返事をいたしたいと思います。  これは歴史家のような眼から見まして、ああいうやみ金融が何で生れたかという社会的要因を突きとめて行きますと、仰せの通りになると思います。保全経済会的なものが栄えたのは二つの原因があると思います。一つは古い宗教でばどうも日常生活の心のよりどころにならないので、つい卑近ながらああいう新興宗教に引かれると同じよ、うな要素を持つておりまして、銀行の窓口に行つても冷たい、てんで話にならぬ。そこへ貸そうということになつて来る、飛びついた、こういう原因、結果もあるのでございましよう。もう一つは、うんと利息のつくのに飛びつく、こういう心理をうまく利用しているかどがあると思います。私は率直に申し上げまして、保全経済会の破綻後の態度には、きわめて不快の念を持つている一人でございますけれども社会的要因を社会研究家のような立場で見まするならば、確かに金融にあえいでいる中産階級、中産企業家が飛びついたということは、私はそこに企業家自体として恕すべき点があると思います。これが保全経済会の救済問題とは別に、ほかの問題としてやはり深く為政者が考えなければならぬ問題だと思います。そこで保全経済会でございますが、これは匿名組合ということになつておりますが、法務省の法律家の立場から見ますると、厳密な匿名組合と思えない。匿名組合というのは、先ほど委員長からも私的に御意見を伺いましたが、まさにその通りでありまして、あんなに不特定の多数が共同経営という気持になりようがない。四十億に対して一万円とか二万円で十五万人、伊藤斗福の顔も知らない、そういう匿名組合というものはあるものではないと思います。またもうかつたときに利益を配るのが匿名組合でありますが、これは初めから月八分やる、あるいはしまいに二分になつたにしろ、とにかく頭からというところが言うところの匿名組合と違う。そこで対策としましては、匿名組合の人員制限ということも確かに一つの急所ではございますが、そうなると、保全経済会が厳密な意味における匿名組合でないごとく、匿名組合でなくて、しかもその線に沿つたと申しますか崎形的な成規の金融機関がある。そこで法務省としましては、全般的に成規の受信業務を取締るような方向に行きたいものだと考えております。つまりこういうふうに考えておるのでありますが、不特定の多数人からの受信行為、これは金銭、あるいは有価証券を受け入れて、後日金銭を支払い、また有価証券を引渡す、債務を負担する行為であつて、それが預金、貯金、掛金、借入金、出資、信託、その他何らの名儀を持つてしても、それを問わずして、とにかく信用授受の経済的性質を有するものである、これを継続的に行う業務を一般的に取締る。単に匿名組合を規制するというより、大きく網をかぶせた方が、今後零細な金を純朴な人が預けて、とんでもない損害を受けるということが防げるのじやないか、こういうふうに考えております。その点で、若干大蔵省と解釈の違いも事務的に言うとあるのでございますが、それは私は末の末の問題であつて、今申し上げたような規制をして、それが大蔵省が適しているなら大蔵省、かりに法務省の方がよいという内閣の御決定があれば翌日からそれをお引受けして、法務省の仕事としてやりたい。どちらが向いているかということは内閣で閣議でもつてきめてもらう。と申しますのは、ほかの委員会で、大蔵省と法務省で譲り合つているのじやないかという御質問がありましたので、もしも国会に対して大蔵省と法務省がそういう印象を与えますならば、まことにこれは政府として名誉でないことになりますので、どこが管轄かということは二の次にして、こういうよいことをしよう、その管轄はどこだときまりましても、かりに法務省がよいという決定がありましたならば、もう決して躊躇いたさずに、自分たちの義務としてやりたいと思つております。
  69. 福田繁芳

    福田(繁)委員 たいへんよくわかりましたが、ただ今の取締りという点において、どの省が進んでやられるかということを閣議できめられることも非常にけつこうと思いますが、私は残念に思つているのは、少くとも聞くところによりますと、大蔵当局は問題のこう大きくならない間に、あまり犠牲者を出さない間に、種の程度ならばいいが、種が莖に花が咲き実が実るというようなところまで行かない時分に、適宜な方法を講じてみたいと思つてつたのだけれども、何かとその間に意見の食い違いがあつたので、今日まで日を送つて思いもよらないところの結果になつたということを聞いておるのでありますが、そこで私が非常に遺憾なという点は、これが本年に入つてできたものでなくして、少くとも二箇年、三箇年前で、最近の新聞など見ますると、保全経済会のごときは、昨年の今時分は今日お預かりしている金額の十分の一くらいであつた。ただいまの大臣のその御熱意が、あるいはそのお考えなり御気分が一年前におありになつたならば、犠牲者が十分の一で済んだ。何がゆえに早くやつていただけなかつたかと、実は非常に遺憾に思つておるのでございます。そこでこの取締り方法を閣議で云々のきわめてごもつともなお話がありましたが、これは事実率直に閣議で決定ができるのかどうかということを、私承る瞬間に迷つておるわけなのであります。  もちろんこれは何も根拠がない問題でありますが、お手元に御参考に供しようと思つてきよう持つてつたものがあります。昨日われわれ大蔵委員の自宅の方にこういう郵便物が入つて来ておるのです。読み上げればきりはございませんから、お手元に差上げます。二通あるのです。一通の見出しは「法制化を約束した政党主脳、欺かれた伊藤氏捨て身の決心、伊藤氏自身としてはかねてからアメリカの投資銀行の例にならい、積極的に保全経済会のみならず、同種企業に対する法制化を要望していたが、昨年八月の国会解散を前期として、当時の自由党主脳部はこれを正式に党の政務調査会に取上げることを条件に、多額の政治献金を伊藤氏に求めた事実がある。伊藤氏はむしろこれを保守派による共同の政策として扱われることを希望し、自由党のみならず改進党、右派社会党に至るまでそれぞれの要求に応じて献金を承諾し、その総額は本年春の総選挙の分を合せ一億五、六千万の巨額に上ると言われる」あと見ておりますると、われわれ政党人として実に寒心にたえない文句があるのでございます。これがはたしてどの程度の事実の根拠があるか、どういう作為下につくつたかということは、御専門家がおそろいでございますから十分御検討願うことにしまして、もしこういつたことが事実あつたとしまするならば、法務大臣はこれに対していかようにお考えになり、いかような御処置をとられるお考えでございますか。
  70. 犬養健

    犬養国務大臣 まず最初の御質問にお答えを申し上げたいと思います。法務省の立場、あるいは検察庁の立場から申しますと、これは犯罪を疑うに足る明白な事実というものがありませんと、手入れ、あるいは書類の押収ということはできません。これは刑事訴訟法の規定するところでございます。内偵ということになりますと、この保全経済会というのはなかなかさるものでありまして、奥行きが深くて内偵がなかなかむずかしかつたわけでございます。たとえばかりに例をとりまして、昨年の暮れごろからよほど業態が悪くなつた。それにもかかわらず、業態がいいかのごとく言つて、多額の新しい預託者を集めたとすれば、もしそれがほんとうだとすれば、取込み詐欺の容疑というようなことも浮んで来るのであります。ところが昭和二十四年からの業態を逐一分析的に調べるだけの書類が手に入りませんから、取込み詐欺という断定をする根拠が生じない。そういうわけで一年以上内偵をやつてつたのでありますが、犯罪を疑うに足る明瞭な事実というところまで参りませんで、荏苒——荏苒ではないのでありますが、日を送つてつて、こういうことになつた。まことにこれは政府としても世間に相済まぬと思つております。せめて今後こういうことを繰返すことのないようにというわけで、先日ほど申し上げたような対応策を考えているわけでございます。  それから第二、今お読み上げくだすつたその文書ば、さつき地方行政委員会でも同じところを読み上げられまして、方々に配つてあるということを承知したわけでありますが、私の知つている範囲では、自由党の政調会が法制化することに、決定はもちろん、そういう気分を持つているということもかつて聞いたことがありません。むしろ聞いておりましたのは、こうなつては一ぺんひとつつぶれて、世間が目がさめるよりしようがあるまいというような、これは雑談的な議論ですが、これが圧倒的に多かつたわけであります。ですからそれはだれが書いているのか知りませんが、私の承知している限りでは、そういうことは存じません。しかし私は昭和六、七年の議会政治信用失墜のごろの実は犠牲者の家族でありまして、こういうことがありますと、どの党ということはなく、国会というものは非常にくだらない、かつきたないということになりましたならば、これはたいへんなことだと思います。ので、これに対しては法務大臣としては相当覚悟をきめております。かつそういうふうに、政治家というのは金で何でも動くのだということは、まことに私は不愉快きわまる話だと思つております。検察当局にも、断固として犯罪容疑に対しては躊躇してはいかぬということを申してある次第であります。
  71. 福田繁芳

    福田(繁)委員 非常によくわかりました。ことに私の後段の質問に対するお答えのごときは、われわれ政界に足を入れたばかりの若い者として、実に涙ぐましい経験のある御答弁をいただきましたので、非常に感銘を深くいたしておるわけなのであります。どうぞ大臣はそういう御決心をお持ちになりまして、少くとも会承りますと、すでに衆議院においても二つの委員会委員諸君にこれが配付されておるという。おそらくこういつたことならば、日を置かない時分に思いも及ばないところの世間の誤解をこうむることになりますから、断固としてこの事実を御調査になられて、そうして厳重にこれに対する善処を願いたいと思うのでございます。  それともう一つは、先ほどお話がありましたところの取締りの問題でございますが、これも閣議が決定しますれば、断固勇往邁進して、社会に害毒を流すおそれがあるならば、これ以上拡大されないうちに、今からでもおそくございませんから、適当な方法を一面でとつていただきたい。同時にもう一つの面においては、相なるべくは少くとも一般国民が相当犠牲になるのでございますから、一般国民にも正しい意味合いにおいて啓蒙するような方法も何らか考えてもらう。  それと話のついでだから申し上げますが、昨今新聞を見ておりますと、先ほどの匿名組合というのは商法五百三十五条によつてできているところの匿名組合の会社でございますが、これとは全然違いますところの例の貸金業法によりますところの株主相互金融、これがぼつぼつ閉鎖しかかつて思いも寄らない零細な庶民階級に迷惑をかけておる。これはゆゆしき問題である。何がゆえに閉鎖をいたしておるか、閉鎖した原因がどこにあるかということを、当委員会委員諸君は超党派的に専門調査員を動員して調べて参つたわけなのであります。そうしますと、目下のところ判明いたしておるのは、ある二、三のものは経営よろしきを得ない、いわゆるインチキ的な何があつたという点もありますけれども、事の根本の起りは、今年の六月か七月に検察当局の業界に対するお手入れがあつたので、それが非常に同業者なり株主に動揺を来して、言いかえれば不安な状態が深刻になつた結果、取付騒ぎが多くなつたので、つい預かり金がぐるぐるまわらなくなつてしまつて、閉鎖しかかつているのが多いのだ。ことに案ずるのは、五月、六月のお手入れのしわ寄せの結果が現われて来るのがこの十一月、十二月の年末だろう。とすれば、年末には非常に深刻な状態になる、こういうことを実は私たちは聞き及んでおります。そういたしますと、この五月、六月に、なるほど記憶をたどつて見ますと、新聞にも出ておりました。御当局のお手入れがあつたと聞いていますか、あの六月の株主相互金融に対するお手入れのその後の結果がどうなつているかということを伺えれば参考になると思いますので、もし大臣のお手元に資料がそろいませんなら、係官でもけつこうでございますから、一応その後の経過を聞かしてもらいたいと思います。
  72. 犬養健

    犬養国務大臣 これはお許しを得れば、便宜上ここに刑事課長が来ておりますから、説明いたさせます。
  73. 長戸寛美

    ○長戸説明員 お答えを申し上げます。ただいまお尋ねのありました株主相互金融の一、三の社に対しまして仰せの六月ごろでありましたか、検挙いたしております。これにつきましては、現在なお捜査中でございまして、大体の捜査は終つたのでございますが、その一般に及ぼす影響その他の観点から、いましばらく慎重な態度で臨むということで、今のところ未済になつております。近く書類を決する予定でございます。
  74. 福田繁芳

    福田(繁)委員 ただいまの刑事課長のお答えで、その後の経緯はわかりましたが、ここで私率直に所感を申し上げて、今後の御参考に、もしなるとするならば、非常にけつこうと思うのでございます。これはほかの傷害事件とか窃盗事件と違いまして、事いやしくも金融経済に及ぼす問題でございまするから、検挙した後御慎重な態度をとられるのもけつこうでございますつるが、かかるまでの間に、申すまでもなく、相当慎重にあらゆる点から御検討されて、事件をなるべく短時日のうちに適当に御解決つけられる、言いかえれば、そういつたお手入れがされて、より以上業界が粛正し、なおまた金融方面が安定することになれば非常にけつこうでございまするけれども、業界の粛正ということがありましても、一般の金融界が大きな波紋を起して、それがために金融恐慌でも来すようなことがありますれば、大きな社会問題になりますから、この点は今後とも御慎重にやつていただきたいと思うのでございます。ことにこういうやみ金融ができて、いやしくも法務当局を煩わすということは、あなたたちの責任でなくしてわれわれの大きな責任責任、なかんずく時の天下をとつている政府の重大な責任なんです。政府の事実上の庶民金融対策の政治がよろしきを得たならば、何をかもつてこういうところのやみ金融なんか起りはしなかつた。これは話が論外になりますが、どうぞそういつた金融経済界にこれ以上波紋を起さないように、それを念頭に置かれて御善処願いたいと思うのであります。  それと法務大臣にもう一言申し上げたいのでありますが、もちろん取締りは厳重にやつてもらいために私はきよう大臣をお招きして質問しておるわけであります。どうぞひとつ、犬養法務大臣になつてなるほど政界が粛正できた、なおまた三権分立の建前において法務省もりつぱに昔に返つたと言われるようにやつていただきたいと思うのであります。大臣が御就任される前のそれまでの内閣はどこの内閣はどこの内閣であつたか存じませんけれども、えてして法務省の方においてやることにも非常に片手落ちの点が多分にあつた。たとえばわれわれの選挙違反の例をとつてもその通り、世間御承知の大物、たとえば、具体的に言うならば、岡崎さんのような世間にごうごうたる問題が起つた選挙違反の摘発があの通り。ことに昨年の十月の選挙のごときは、まつたく零細なもので、一、二軒戸別訪問をしたからといつて起訴されておつて、いまなお罰に処せられておる、こういう事実があるのであります。かく申しまする私も、昨年十月、私は検挙されませんでしたけれども、私の愚妻初め十二、三人の者が、二、三の家を訪問したからというので起訴になつて、そうして目下裁判をやられて、月一回東京から高松の裁判所に行つている。このわれわれ庶民階級が、年末の金詰まりの時分に、これだけに要する経費でもたいへんなものでありまして、そういつたえてして不公平のそしりを受けるようなことがある。ことに金融に対する手入れでもその通りです。零細な株主金融とか、あるいはそういう点で検挙する点もありましようけれども、大きなところの、いわゆる表向き合法、合理的にやつていると称するところの銀行、財閥もあながち法に触れないような金融をやつているかということには大きな疑問があるのであります。こういつた事いやしくも命より大切だといわれておるところのこの金に関する問題で、えてして当局が不公平のそしりを受けるような事実がもしあるようなことになりますれば、それが大きいところの社会問題になり、ことに大蔵当局が盛んに言うておるところの預貯金の吸収、貯金奨励とといつたところのものと反対の結果になるような点もあるのでございますから、今後その点はいとも公平におやりくださることを犬養法務大臣に懇請いたしまして、そうして大臣に対する私の質問はこれで打切つて、他の委員に譲ります。
  75. 井上良二

    井上委員 私は、ただいま福田委員から質問がありました保全経済会の問題に関しまして、先般本委員会で、保全経済会が行つておりまするいわゆる匿名組合に対する解釈についで、たしかあなたの所管の民事局長と刑事局長ですか、この二人の人に本委員会に出ていただいていろいろ質疑をいたしました。そのときに私は、匿名組合というものは、あの民法に規定してあります規定の趣旨は、株式会社または合名、合資等の組織に行く前提の一つの組織である。つまりごく知人、友人間において外部に名前を発表することを遠慮し、かつ特定な人を絶対信用して出資をする組織が匿名組合と考えられる。従つてその範囲はごく少部分に限るというのが匿名組合の常識的な解釈でないか。ところが保全経済会のような全国に多数の支店その他出張所を持ち、しかもその主宰者たる伊藤氏と会うたこともなければ物を言うたこともない、そういう人に出資をするということは常識考えられぬじやないか。従つてこれは明らかに株式会社法なり、あるいは信託法といいますか、そういう法律に完全にこれはひつかかることになると考えるという議論をいたしたのであります。当時あなたの方の局長さんは、私のこの意見に大体賛成をされております。ところが爾来ちつともそれに対する何のお取調べもなければ調査もされぬ、そのままやつてつております。これはどうもどういう御都合か、お忙しいから、そういうことでほうつておいたのかどうか知らぬが、今日保全経済会がああいう不始末をいたしましてからにわかに大きな問題になつて来ておりますけれども、本委員会が取上げた当時、すでにそういう一つの話合いができておりますから、当然その具体的な措置が行われておれば、今日の非常事態は相当防がれたのではないかとわれわれも想像いたします。現にまた他の委員会でもお取上げになつて、いろいろ審議を進めておるようでございますが、あの会のやり方は三月に限つております。三月金を預ければ二分の配当をするという。ところが、出資をいたしまして三月そこそこで、一体その業態の一々の清算報告をして、二分の配当がそもそも可能なりやいなやということがおわかりになるかならないか。とにかく出資をするときに二分を配当すると言つているが、そんなむちやなことが実際あり得るでしようかね。そういうことが常識的に刑事局の方でもおわかりになりませんか。どうですか刑事課長、あなたも大学を出て、相当その道を専門におやりになつているだろうと思うが、そういうところへ出資をしてもうかるかもうからぬか。その後にもうかつたからこれだけ配当するというのが常識でしよう。それを契約と同時に月二分をやる、三月で限つておる。そういうもうかるかもうからないかわかりやせぬところへ出資をする、そいうことが、一体常識で正当なやり方だとお考えになつておりますか、あなたの解釈はいかがですか。そこを一ぺんはつきり聞かしておいてもらいたい。
  76. 犬養健

    犬養国務大臣 井上さんお聞きくだすつたかどうか知りませんが、さつき福田さんに対しても、まつたくあなたと同じロジツクで、しかるがゆえに厳密な匿名組合とは解しないという法務省の見解を述べたのであります。まつたくあなたと解釈は同じであります。それから、初めから二分ということを言うのも匿名組合の定石と違います。しかるがゆえにこれは厳密な匿名組合ではない、こういう解釈でございます。そこで二分というものを渡して行つて無理があるかないかということですが、これは私しろうと考えでございますが、昨年、一昨年あたりの一種のブームに乗ずると、それが成功するある期間はある。しかし景気が下まわると、とたんにこの無理が出て来る。つまりこま切れ的にある期間をとつてみれば、その間だけは何とか行ける期間がある。しかしそれが長く続くものじやない、世の中はそんな甘いものじやないということで、私どもは、犯罪容疑があればすぐ検挙しようという態度で参つたわけでございます。井上さんの御指摘の通り、これは一種の預金みたいなかつこうになつておるのであつて、共同経営だと、山奥のおかみさんが、顔を見たこともない伊藤斗福を相手に共同経営なんてことはないので、とにかく、よくまわつて来るから預けておこうというので、信託的なもの、銀行的なものです。そこでなぜそんなことをほうつておいたかということになりますと、これから先はまことにけちくさい議論を申し上げることになるのでありますが、信託業法の改正とか銀行法の改正とかいうことになりますと、これは大蔵省の御範囲になるわけであります。匿名組合だけを取締る商法の五百三十五条その他を改正するということになると、これは法務省なんであります。ところが、今まさに井上さんが私にお話なつたと同じりくつで、私どもは、匿名組合の取締りだけやつてもだめだ、法の抜け穴的な変態的なものができると思う。そこで先ほど申し上げましたように、広く不正規の受信業務に対して取締りをやろう、大きく網をかぶせようというのが、法務省の考えでございます。そこで部分的に申し上げますと、銀行法とか信託業法の改正ということになると、大蔵省お話をする。大蔵省としては、これは匿名組合なんで、商法の改正で事足りるという御意見も持つておられる。結局そんなことを言つていたのでは、困るのは大衆でありますから、どつちの範囲ということはあとまわしにして、とにかくよいことをやろうというところへたどりついたわけであります。その間若干時間がたつたことは、まことに政府の怠慢とおしかりを受けてもしかたがない。私に重々責任があります。
  77. 井上良二

    井上委員 そう礼を低うして答弁されたら、ちつとも質問ができぬことになりますが、問題は、あなたの今のお話を伺つておると、何か法的な改正をすることで手間取つておるような解釈、それは一応そういうことも考えられましようが、問題は、現実に匿名組合の行為というものを逸脱し、銀行法または信託業法に完全に抵触するということが今日では立証されておりますから、それなら何であの行為を禁止しませんか、当然信託行為であり、銀行法にひつかかる解釈が法務省として立つておる以上は、当然そういう類似行為は禁止するという、断固たる措置をとるべきであります。私ども大蔵委員会でもいろいろこれに対する対策を検討いたしておりましたが、問題は、さきに福田さんからもお話がありました通り、何も知らずに、口先にごまかされて高利につられて投資いたしておりまする預金者の迷惑ということを考えるから、できるだけこの問題を公にしない方がいい、できるだけ敏速果敢な措置を何とか適当にとれる方法はないあかより嘉一われわれとして政治的に考えて来た一つの考えでございますが、取締当局としては、今お話になりましたように、不特定多数の者から金を預かるということはこれは銀行法に抵触し、また投資的に禁じておれば、信託業法にひつかかることは明白でありますから、当然取締りをすべきであるのに、どういうわけで一体取締りをやらぬのか。またあれら類似のいろいろな匿名組合様式の金融的な仕事は、あのままほつておくつもりでありますか。それが私の聞きたい第一点。それからもう一つ、福田さんから株主相互金融の問題をお話になりましたが、私は株主相互金融においても、ただいま福田さんが申しましたように、はつきり貸金業務の許可を受けてやつておりますものならば、何らこれは取締りをする必要はない。問題は、貸金業の許可も受けず、あるいは金融その他の諸関係の法的な許可も受けずに、付到底多数の者から出資を求めてやはり高利でもつて金を集める、あの行為が非常に危険があるということについては、これはお互い全体の金融の安定をはかり、物価を引下げ、この国の全体の生産力を高めて行こうという見地から考えたときに、決して正常な金融行為とは私は考えておりません。だから貸金業に規定してあります条章によつてやられるものは、これは天下公認でやれるのであります。どうぞそれによつてつてもらいたい。その他の行為というものは、これはあくまで違反になる行為である。だからそこの筋道をよく徹底させて、預金者にもよくその道を明らかにしてやるべきじやないかと私は考えております。その点についてどうお考えになりますか、この際伺つておきたいのであります。
  78. 犬養健

    犬養国務大臣 法務省としましては、決してなおざりにはいたしておりませんで、たとえば今井土さんの仰せになりました貸金業法違反という事件で受理したのは、三十二件ございます。そのうち刑事訴訟法上の立証が明らかで起訴したものが八件、相互銀行法違反で受理したのが八件、起訴したのが三件、その他これに関係する詐欺、横領、背任等の容疑で受理したのが五件、これは全部五件とも起訴になりました。純粋の匿名組合形式による受理は二件、これは二件とも起訴をいたしております。そのほかのは、どうも相手もなかなかさる者でありまして、法の実にうまいところをくぐつておりまして、刑事訴訟法の立証が的確というところまで行きません。公訴の提起にどうも欠けるところがかなりあります。残念ながら、あるいはそれがほんとうの態度であるかもしれませんが、不起訴にいたしております。
  79. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 福田委員から、微に入り細にわたつて適切な質問があり、また法務大臣からも非常に懇切は答弁があつて、大体もう申し上げることもないわけでありますけれども、ただ今後対策をとられる御参考までに、私の考えを聞いておいていただきたい。私は最近に、これと同じような事件だと思うのですけれども、食糧管理法違反で、汽車を急襲して何十俵の俵を押収したということが毎日の新聞に載つておりますが、あの記事を見るたびに、誤つた法律をつくつておいて、つまり国民の実際の必要というものにマツチしない法律をつくつておいて、その法にひつかかつたものをどんどん上げて行く。食管法を守らぬでいいというのではありませんで、間違つた悪法でも、法は法で守らねばならぬことはよく承知しておりますが、しかしたまたま間違つた法律ができたというのじやなくて、あの法律ができてもう何年にもなるのに、実は一年として法通り守られたことはないし、また守られておつたとしたら、たいへんな餓死者が出て来ておつたかもしれぬ。そういうふうなもので、こういう兇作であつたということを理由にして厳重に取締るのでありますが、しかしあれに対してはやみ屋の連中も、どろぼうをしてつかまつたような後悔の念はほとんどありません。また世間もそうは見ておりません。こういうことを感じておるのであります。この保全経済会というものについては、私よく知りません。どういう間違いがあつたか知りませんが、全般的に考えて、この種の金融行為、貸金業法違反という話もありましたし、また匿名組合としても本来の法を逸脱しておるというような話もありましたけれども、全体的に考えて、私はやはり法に間違いがあつて、その間違つた法制が、やはりこういうものを生み出しておるのだということを信じておるのです。こまかいことは申しませんが、大体において日本の金融市場における需要供給のバランスというものを見ますと、資金需要が非常に多い。この資金需要には、不健全なる資金需要もありますが、とにかく資金需要が強い。それに対して、資金の供給力というものはきわめて弱い。資本の蓄積というものが、インフレーシヨンのあとでほとんどない。ほんとうの意味の資本蓄積がない。そこで需要供給のバランスから申しますと、金の値打と申しますか、金の働きに対する価格、要するに金利ですね、この金利が、法律できまつているものは安過ぎる。つまり従来の銀行が二銭八厘でなければ貸せないというふうに法制できめられておる。そうすると、二銭八厘などで貸しておつたのでは、政府の預託金か何かで安い金利で借りられるとか、あるいは日本銀行から安い金利で借りた金を貸すならば、二銭八厘で貸しても引合つて行きましよう。しかし一般の国民から預金を集めて、それを二銭八厘で貸すということをしたら、銀行は立ち行くものではない。ですから、大口の何百万、何千万というものを扱わなければ、小品の五万円や六万円の金を二銭八厘などで貸しておつたのでは、貯金を集めた金でやつてつたなら、資金コストが高くついてとうていやつて行けない。そこで、二銭八厘で貸さなければならぬということを、監督もありますから、守つて行くということになると、一般庶民の少額の貸出しなんというものはとうていできない。多額のものは、信用がないからもちろん貸せない。そこでそれに対して、相互銀行とか金融公庫というものをつくつておりますけれども、これだつて、多少金利を高くしておるから、幾らかは小口も貸せますけれども、しかしこれもとうてい一般の庶民の需要に応ぜられないというところです。要するに需要供給の関係で、百円する米を無理無体に五十円で売らせるということになりますと、やみのところで必ず百二十円とか百三十円という値段を生じて来る。それで百二十円、百三十円で売ろうと思えば、それにちやんと見合うように集めて来るほかはない。ですから、一般の庶民が千円の金を借りて行つて、一日仕事して千三百円にして来るというようなことで、千円の金、二千円の金を借りたい人はたくさんある。金利は高くても、貸してもらわないよりは、貸してもらつた方がいい。そういう高い金利で貸すためには、どうしても高い金利で集めるほかはない。こういうことになつて来るので、貸金業法という法律も私は厳密に見ますと、実際に妥当しないと思う。それから銀行において、実際の金融事情に合わないような金利を公定しておるから、ああいうことになる。もし一般の銀行において、金利は高くてもよろしい、そのかわり預かる方も高くてもよろしいということで、銀行が採算が立つて行くようにしましたならば、あんなものはできるわけはない。確実性ということにおいては、従来の大銀行が確実だということは、だれ一人知らないものはない。ですから、ああいう金融機関に訴える人もああいうところに金を預ける人も、一般銀行よりも不安があるということは知らないものはない。それは無知だ無知だと言いますけれども、金利が普通銀行よりも高い。不安はある。しかし必ず間違いを起すというならば預けませんけれども、あぶないかもしれないが、しかし金利が高い。程度問題ですけれども、多少の不安はあるがそこに預ける。その預かつた金が、高い金利で貸されて行くけれども、借りた方もそれで喜んで行く。具体的に申しますと、伊藤斗福氏の書いたものにあるように、月給も払えないのに一割配当をしたというようなことを、本人が書物で書いているようですが、そういうようにして人をだまして呼びつけるというふうなことは、まことに不都合千万なことであります。しかし庶民金融の見地から申しますと、そういう点があるから、違反と申しましても、その法自身が実際に妥当しておるか、あるいは制度そのものが妥当しておるかということもよく考えられないと、角をためようとして牛を殺してしまう。それから、一般の預金者を保護しようということが、実は取付騒ぎを起して、預金者を元も子もないようにしてしまうおそれがある。それから、これからのものを保護するという一点ではいいけれども、それではこれまでのものが犠牲になつてしまう場合がある。これは早急に対策をとつてほしい。私どもの党としても、少くとも今度の通常国会が始まつたら、そこで何らかの法的措置を必ずとるという言質をとつておいてもらいたいとまで、幹事長に言われておる。やつてもらいたいと同時に、やられるについては、ただ法律できめたものだからどうとか、きめておいて違反する者は取締つて行くというようなことでなくて、実際の庶民金融が円滑になるように、それから一般の銀行で集められないようなたんす預金というものも比較的安全に出て来るように、よくひとつ御研究を願いたい。申し上げるまでもないことですけれども、そのことを申し上げておきたいと思います。
  80. 犬養健

    犬養国務大臣 法務省に関係した範囲のことでお答え申し上げますと、私どもの民事局で、今利息制限法の再検討をやつております。金融政策から申しますと、山本さんのお話は実に核心に触れておると思いますが、法務省としては、やはり産業のコストとか、社会政策の面でいろいろ総合的に見ておるのですから、今すぐ結論は出て来ませんが、なかなか核心をついた御議論だと私は拝聴いたします。しかしこれ以上になると、大蔵省の範囲でございますから、大蔵大臣にも私から伝えます。私の方としては、利息制限法を改正する役目がございますから、十分に敬意を表して拝聴いたします。
  81. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 犬養大臣はよくもののわかつた方ですから、ただ法務大臣としての権限だけでなしに、国務大臣として、内閣全体の処置が誤らないように努力を願いたいと思うのです。
  82. 犬養健

    犬養国務大臣 冒頭に申し上げましたように、新興宗教というものをみな笑いますけれども、それならば伝統的な宗教が何をしておるかということを考えないと、やはり全般の解決にならないのと同じように、保全経済会のその後の態度について、私は同情のない一人なんでありますけれども、ああいうものを生んだものは、何か庶民金融らしいものがあるのかないのか、こういう問題をやはりまじめに考えなければならぬと思います。その観点から、国務大臣として真剣に取組んで行きたいと思います。
  83. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 保全経済会は貸金をやつていないということを、たびたびここで聞いておりますが、はたしてやつていないのかどうかよく知りませんけれども、インヴエストをやつてつたといたしましても、ああいう日本の今の経済状況の中では、金利と利潤との間に、相互に適当のバランスがとれない。ほんとうに金利と一般企業の利まわりというものとの間にバランスがとれて、——くずれれば、すぐバランスをとるという機構があれば、ああいう飛び離れたことにもならないと思う。やはりある一定の期間においては、先ほどおつしやつた通り、べらぼうなブームも出て来て、短期間には引合う場合もある。それから貸金の場合には、一般の金利が低過ぎるために、そういうものが必然に生れて来る、そういうことになるのじやないかと思います。
  84. 犬養健

    犬養国務大臣 その通りだと思います。
  85. 福田繁芳

    福田(繁)委員 今日は問題も大体終了いたしましたし、当委員会の管轄外になるのですが、二度とない絶好の機会でありますから、刑事課長にちよつと伺いたいと思います。  先ほどちよつと申し上げたのですが、去年の十月の選挙違反の問題であります。その後今年四月にも選挙がありまして、選挙違反を扱つております裁判所はもうてんやわんやで閉口しております。おそらく犬養大臣の心中には、ひそかにお考えでありましようが、来春もおそらく解散で選挙です。すると三べんの選挙違反を、予算を削つておる法務省のわずかな費用でやるということも残酷きわまるものだと思う。裁判官の基本的人権云々ということにでもなれば、これほどおいたわしいことはない。しかも去年の十月の解散無効ということは、わが党の苫米地君が裁判を起してあの通りに政府は負けておる。もちろん控訴いたしております。判決は確定いたしておりませんが、一審ではもののみごとに政府は負けておつて、あの解散は無効ということになつておる。そこで去年の十月のこの選挙違反の微罪だが、野党だからというて起訴して目下裁判をやつておる連中くらいは、この際公訴放棄でもしてやつて、裁判の簡易化をはかつてやることが国民の遵法精神を徹底さすことにもなりはしないかと思うが、これに対して率直なあなたの所感はいかがでありましようか、お伺いいたします。
  86. 長戸寛美

    ○長戸説明員 新憲法下において選挙が公正でなければならないということは、根本の問題であると私は思つております。従いまして、仰せの通り検察庁も忙しくてたまらぬわけでありますし、裁判所も非常に忙しいわけでありますが、これはこれとして、われわれとしては職責を尽して行かなければならない。従つて現在公訴放棄の意思はありません。
  87. 犬養健

    犬養国務大臣 ちよつと一言申し上げます。野党をねらうということは絶対ありません。大体統計をとつてみますと、自由党の方がずつと多い。改進党も、事情の了とすべき事件についてはずいぶん不起訴にいたしましたことは、御承知の通りであります。ですから党派の観念は、どうも私にそういう区別をしないくせがございますので、それは御了承を願います。それから戸別訪問も、あれは常識で判断するようにしております。ちよつとそれを申し上げると、これから以下はよいのだということでまずいのですが、ある常識の範囲で、たとえば一軒行つたらもう戸別訪問だというような解釈はしないようにしております。できるだけだれが見ても常識上おかしくないというように選挙違反問題は扱いたいと思つております。
  88. 福田繁芳

    福田(繁)委員 私は黙つていようと思つたのでありますが、今犬養大臣お話を伺つて、別に口答えするのではないのですが、事実が違つておるので、こういう事実もあるということを御認識してもらいたいために申し上げます。  なるほど法務省におられて一部二府四十三県の選挙の状態をごらんになりますれば、いとも公平に、党派観念がないことになると思います。同時に比率から行きましても、自由党が多いというお言葉がありましようけれども、われわれ率直に申しまして、去年の十月は地区によつてちやめちやなのであります。私どもの香川県のごときは、あなたも何回も行かれて御承知の通り、あれだけ自由党の諸君が実に悪質きわまるところの選挙違反をやつたのであります。もちろん落選した諸君でありまして、ここにおりませんけれども、そういう者の違反が一向に出ません。私らは、去年の十月の選挙などは、抜打ち解散だつたのだから、その解散になることを予期しない一箇月も前くらい、数名の家にあいさつまわりしたというので、これを何と起訴にしておるのです。候補者の妻が一年近く、十何回というものは裁判所に行つておるのです。お互い国事多端の折でありますから、これほどつまらぬ問題はない。法的にはそういうことになりましようが、ひとつ裁判の合理化、簡易化と遵法精神の育成ということで、十分今度の選挙にはよく正しくその情報をおとりなすつて、せつかく犬養法務大臣の御意図されておるところが完全に行けますように、心からお祈りいたしまして、私の質問を終ります。     —————————————
  89. 千葉三郎

    千葉委員長 次に、昭和二十八年における冷害等による被害農業者及び被害農業協同組合等に対する所得税及び法人税臨時特例に関する法律案昭和二十八年における冷害による被害たばこ耕作者に対する資金融通に関する特別措置法案の二案を議題に供します。提案者として芳賀貢君並びに農林省の官房調査課長の田中覚君が出席しております。小川君。
  90. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 提案者にお尋ねしますが、今年の災害は非常に深刻下あることは、日がたつに従つて大きくなつて来ることからもわかるのであります。従つてこういう二つの法案が提案されたことに対して、私どもは非常にその労を多とするものであります。この法案の中に二十八年度の冷害による被害、そうなつておるのですけれども冷害ということになつて来ると、今年の凍上霜害等はこの中に入つて来ないことになつて来るのですか。凍霜害の被害も相当広範囲に、しかもかなりその惨害が大きかつた。こういうことから、この中に凍霜害に対する被害を入れるようなお考えがあつたのかないのか。あるいは今後これを挿入する御意思があるかどうか、ちよつとお伺いいたします。
  91. 芳賀貢

    ○芳賀貢君 お答えいたします。凍霜害の問題は四月、五月、これの特殊立法が出たようなわけで、相当甚大な被害があつたようなわけでありますが、提案者の趣旨といたしましては六月、七月の大水害並びに今度の冷害、これらを主たる対象の被害として考えて行きたいというふうに考えておるわけでありますが、これらは今後の審議の過程を経まして、当委員会等において、どうしても四、五の凍霜害等がこの中に挿入せらるべきものであるというような御判断に達した場合においては、あえてそれは除外すべきであるというような考えは持つておらぬわけです。
  92. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 了解しました。
  93. 井上良二

    井上委員 二、三点伺いたいですが、ちよつと変なことを聞くようですけれども、共済金について所得税を免除してくれるというのです。共済金は農家にとつては収入になりますが、それを所得税を課さないということにするのは、共済掛金との関係でどうお考えになつておりますか。それをちよつとお伺いいたします。
  94. 芳賀貢

    ○芳賀貢君 まずお答え申し上げる前に、お断りしておきますけれども、特に何十年来にない異例の災害によつて被害を受けた農家を税の負担からいかにして救済するかということが立案の精神なのであります。でありますからして、これを恒久的にこうしなければならぬという考え方でなくて、特に二十八年における稀有の災害によつて被害を受けた農家の受ける共済金に対しては、税の対象にさせたくないというような配慮であります。これはもちろん税法上の一つの骨格からいいますと、異例なことであるとは考えますけれども、ただ現実の問題としまして、この農業共済の保険金を収入の中に算入するとしないとによつて、所得の税の対象になる農家とならない農家というような、そういう限界にある被害農家は相当多数に及ぶのではないかと考えられるわけであります。なお井上さんも御承知の通り、農業共済の制度の中において指定されておるところの品目は、主として米麦であります。これらは、結局米においては完全に国が価格を決定して、しかも供出の制度のもとに行われておる。麦に対しても、やはり米価審議会において価格を決定しておるということで、それが農家にとつて再生産を償うことの可能なる価格であるかどうかという点には、まだまだ疑点が残つておるのであります。こういうように国家の意思においてその価格が抑制されておる。しかも必要生産であつて、これが甚大なる被害によつて、たとえば米だけでも前年度に比べると一千三百万石近い減収であるというような明確な、被害による減収に対して、当然共済金は来るわけでありますけれども、これは被害額に対すると、おおよそその二分の一以内の額しか共済金としてはおりて来ないわけであります。そういう点を十分勘案いたしまして、この際被害農家に対してはできるだけ所得税とか、そういう税の負担の面からも特別の配慮を講じたいというような考え方でおるわけでございます。
  95. 井上良二

    井上委員 ちよつとここで伺いたいのは、私の調べたところによると、かりに収穫皆無の場合、保険金は反当六千八百円くらいでないかと考えております。七割以内の場合四千七百六十円くらい。そこでこの六千八百円から、収穫皆無でございますから、当然その必要経費五千六百円は差引かれます。そうなりますと、ここに千二百円しか現実には税の対象になりません。反当で千二百円の税の対象になるということにすると、一町の場合一万二千円であります。さらにこれを十町にして十二万円であります。そういたしますと、かりに主として冷害地帯の米作一本の農家の実情考えてみましても、かりに十町つくつておるとすれば、相当大きな農家でありますが、そんなものは内地にはほとんどないと言つてもいいくらいであります。それに対して基礎控除が六万円でございます。それから扶養控除が最初の一人に三万五千円、次が二万五千円、家族平均いたしますと、大体六人というのが日本の農家人口の平均家族になつておりますから、そうすると、かりに五入扶養控除を引かれるということになりますならば、全体でもつて十九万五千円も所得がない場合は税金はかからぬことになります。大体のおよその計算でございますが…。ところがさきに申しますように、十町で十二万円ですから、そういう計算で行くと、税金をとろうにもとれないことになりますが、まだ税金のかかる余地のある農家が何ぼあるというのです。それを一ぺん教えていただきたい。
  96. 芳賀貢

    ○芳賀貢君 農業関係については、私よりもむしろ先輩である井上さんがよく御承知の上での、質問思いますが、今年の場合だけは、この災害が全国に相当広汎でありますので、二十八年度に予想された農業所得税を一応資料として申し上げますと、大体農家戸数の一六、二%くらいがこの対象の戸数になるわけであつて、これによつて生ずる農業所得税額は、およそ七十七億程度ではないかということが推定されるわけであります。ただこういうような異例の災害の場合においては、当然農業共済から出る保険金の額も多いのでありまして、これを品目別に区分すると、水稲に対して約二百三十六億、陸稲が四億、麦類が四十七億、蚕繭が二十三億で、合せて三百十億円程度がこの保険金として支払われることになると思うのでございます。これらは当然一応収入として、所得税の対象になるわけでございますけれども、これらの保険金を対象にしないという今年だけの考え方でなく、この法律案の中にもあります通り、青色申告の申告の期限を年末まで延長していただきたいという趣旨は、現在において農業所得税の場合における青色申告の率はおよそ一、三%くらい、百人に対して二人足らずくらいしか青色申告を行つておらないわけであります。御承知のように、青色申告を行つた場合には、当然のこととして専従者の控除も認められますし、また年度内において所得に欠損が生じた場合におきましては、それは次年度に損失の繰越し加算が認められるような制度になつておるわけであります。  それでこの法律案の趣旨は、まず青色申告が現在まだ普及されているという段階にまで行つておりませんので、申告の期限を十二月三十一日まで延長していただいて、それによつて、できるだけ農家は収支計算をつけて申告をするということになりますと、今年の所得に生じた欠損は、この青色申告の申告を延期するということで、来年度にその赤字を算入することができますし、特にこの法律案が成立いたしました場合において、この保険金が税の対象にならぬという場合に、さらに次年長に農業経営の中から生じた欠損を繰越して、そこで控除してもらうことが可能になる条件が出て参りますので、この青色申告の申告の延期という問題と、保険金を税の対象から除くという、この二つの点を並行して法律として成立させていただきたいというのが趣旨であります。
  97. 井上良二

    井上委員 私自身本案に反対の立場ではありません。できるだけ被害を受けました農家が再生産を全国的に行つてもらう措置を国としても考えなければなりませんので、税の面においても、できるだけの対策を講じてやることは当然であろうと思います。  ただ問題は、この前たしか本委員会において災害地の所得税その他地方税の免税の問題、それから冷害地に対する免税の問題等の議論がございましたときに、政府当局は、それぞれ法の示すところによつて免税するということを答弁されており、また冷害地の方においても、当然この免税の処置を講じなければならないということを言われております。そういう見地から実際上考えてみますると、これはあなたの方の資料はどこから出ておるか知らぬが、私の計算から行くと、非常に少数の人しか今度の冷害によつてもらう共済保険金に税のかかる者はないというような見通しを私は持つておる。ただあなたの心配しておるのは、そうではなしに、実は農業外の収入、あるいはまた他の農作物の収入があつて、その保険金に累進賦課される、だからわずかであつてもそれは切落しておいた方が税が実は少くて済む、こういうねらいじやないですか。保険金自身は、実際の計算からいたしまして、必要経費を差引いたら、収穫皆無の場合においても反当たつた千二百円しか残りません。今申します通りに、十町歩であつても十二万円です。十町歩収穫皆無の面積というものは、一農家においては、内地にはほとんどそんなものはないというていいのです。だから、それだけじやなしに、実は他の農業収入があるので保険金に賦課徴収される、累進課税をされるというところから、これをとつておいた方がいい、こういうのじやないでしようか。そういうことになつて来ますと、実際税の徴収の技術の上に非常に煩雑な問題が出て来ます。だから、実際国としては農民を助けるというよりも、逆に、そういういらぬ計算の事務的費用ばかりよけいかかつてしまつて、かえつて何の利益も農民に対して与えないで、国としては逆に費用の負担をふやすということが起つて参りますから、もう少しこの問題はよく検討してみないというと、実際それをやつてもぬか喜びで、農民がちつとも利益を得ないということであつたのでは、それは何の役にも立ちません。それからいま一つ、われわれ大蔵委員会の立場から言いますと、一応そういう特別に冷害、災害等で被害を受けた農家の深刻な窮状はわかりますが、同時に、この保険金を免税するというような措置を講じまするというと、当然他の火災、水害等によつて住宅を失つたものについてもらう保険、それから恩給等によつて支払われまする恩給、年金、これらもやはり一口に言えば社会保障的な意義を持つているので、所得税を免税してやらなければならぬという立場に立つて来る。だから、それとこれとは違う、こう言うでしようけれども、法の公正さを基礎とします場合には、できるだけ一方から文句を言われないだけの考え方を、一応立法者としては考えておかなければなりませんので、そういう点から、ほんとうに生きた政策が農民に実際潤うということなら私は賛成をいたしますが、実際はうなぎ屋のかどを通るように、においだけであつて、ちつとも腹一瞬ふくれぬということでは一体何をしておるかと言われるから、そこらのところをもう少しよく数字的に検討して、実際あなたのお示しになつたような事実に基くかどうか、この点もう少し私としては検討してみたいと思います。それよりももつと実際利益のある税制の改正をやるべきじやないか、こういうふうにも考えておりますから、これ以上私は質問を申しませんが、私としてはさように考えております。
  98. 千葉三郎

    千葉委員長 いかがでございましようか。芳賀さんにお答えをいただく前に、大蔵当局にも御質問があるようでありますが、この両案につきましては、本会議審議を完了することは少し無理なように思われますので、これを閉会中の審査事項として十分審査したいと思うので、そのことを議長に申し出たいと思いますが、どうでしよう。
  99. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 私はその点については異議ないのですが、ちよつと提案者にお尋ねしたいことは、この提案されている第二条の青色申告の問題ですが、これは別に法律を改正しなくてもできることじやないですか。
  100. 芳賀貢

    ○芳賀貢君 この点については、当然主税局等の御見解もあると思いますけれども、この青色申告の申請の時期を延ばすという程度のはからいは、あるいは法律の制定等によらないでも可能ではないかというふうに考えているわけでありますが、この提案のねらいは、申請を延期すると同時に、この保険金を税の対象から除くという二つの考えを持つているので、これが両立して行くようなところにぜひ持つて行つていただきたいと考えるわけであります。
  101. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 さように、今お尋ねしましたことから、この問題は十二月末まで延期してもらいたい、こういうように解釈をされますので、継続審議はけつこうですけれども従つて、この継続審議をするについても、なるべく期間を早めてやるように願いたいというように考えます。
  102. 千葉三郎

    千葉委員長 なおこの問題につきましては、実際上支障のないように大蔵当局に考慮してもらおうと思つております。そこで、右両案をこの際閉会中の審議事件といたしまして処理してよろしゆうございますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  103. 千葉三郎

    千葉委員長 御異議ないようでありますから、さように決定いたします。     —————————————
  104. 千葉三郎

    千葉委員長 次に、閉会中審査に関する件につきましてお諮りいたします。昨日の委員会におきまして御決定を願いました閉会中審査事件が付託された場合に、その審査の都合上、実地調査の必要が生ずることも予想されますので、その場合の委員派遣に関しましては、あらかじめ委員長に、御一任を願つておきたいと存じますが、この点御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 千葉三郎

    千葉委員長 御異議ないようでありますから、さよう御一任を願うことにいたします。     —————————————
  106. 千葉三郎

    千葉委員長 なお、閉会中審査のため参考人及び意見を有する議員等の出席を求むる必要を生ずることが予想されまするので、この点についても委員長及び理事に御一任願つておきたいと存じますが、この点御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 千葉三郎

    千葉委員長 御異議なければさように決定いたします。  次は十七、十八の両日に委員会を開きたいと思います。本日はこの程度で散会いたします。     午後四時四十九分散会