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1953-11-07 第17回国会 衆議院 水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月七日(土曜日)     午前十一時十六分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 田渕 光一君 理事 中村庸一郎君    理事 辻  文雄君 理事 濱地 文平君       田中 龍夫君    中村  清君       濱田 幸雄君    吉武 惠市君       赤路 友藏君    佐竹 新市君       田中幾三郎君    中村 英男君  出席政府委員         水産庁長官   清井  正君  委員外出席者         専  門  員 徳久 三種君     ————————————— 十一月六日  委員大橋忠一辞任につき、その補欠として久  保田豊君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員高橋英吉君及び久保田豊辞任につき、そ  の補欠として濱田幸雄君及び中村英男君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員長より報告聴取  閉会審査に関する件  委員派遣承認申請に関する件     —————————————
  2. 田口長治郎

    田口委員長 これより会議を開きます。  この際、漁業制度に関する小委員長並びに水産金融に関する小委員長よりそれぞれ発言を求められております。順次これを許します。中村庸一郎君。
  3. 中村庸一郎

    中村(庸)委員 私は漁業制度に関する小委員会審議の件について御報告いたします。  昨日小委員会を開きまして、漁船損害補償法の一部改正の件並びに漁船乗組員給与保険法の一部改正の件について審議をいたしたのであります。まず水産庁より大体の構想の説明を聴取し、各委員より種々意見が述べられましたが、結果は出なかつた次第でございます。そのため小委員会といたしましては、明日から国会閉会となりますが、その間に審議の必要が生じたときには小委員会を開けるようにしておくべきものであるとの決定がなされた次第であります。委員長におかれましては各委員にお諮りくださいまして、小委員会決定通り決議されんことを望みます。  以上報告を終ります。
  4. 田口長治郎

  5. 赤路友藏

    赤路委員 水産金融小委員会経過を御報告申し上げます。主として昨日小委員会で論議いたしましたものは、李・ライン問題によりますところの融資関係でございます。まず第一点は拿捕漁船の代船建造資金の問題であります。第二点は中小漁業家転業資金の問題であります。第三点に拿捕漁船並びに操業不可能になつ業者償還期の参つておりますところの借入金の延期の問題であります。  大体以上の三点を主題にいたしまして協議し、水産庁の方の今までの経過を聞いたのでありますが、水産庁の方の報告によりますと、大蔵省の方との折衝の過程でまず重点を置いておりますのは、拿捕船の代船建造の面でございます。これは大体大蔵省との折衝も順調に進んでおるようでございます。第二の転換資金の面におきましても、大体大蔵省の方では、かなりこの面に対しましても好意的に出ておるようでざごいまして、近くこの二点につきましては何らかの措置がとられると思うのであります。特に転換資金だけでなしに、一応これとからみまして臨時措置としてかつお、まぐろ等の許可をも考慮しておる。こういうようなことになつております。第三点の、今までの借入れ資金償還延期の問題でございますが、これは非常にやつかいな問題でございまして、救済措置になるというようなことで、財政的な措置をとるのにはいささか大蔵省側でも難色があるようでございまして、結局結論が出ないでおるわけでございます。従つて閉会中ではございまいすが、引続きこれらに対する調査をすることに決定いたしましたので、さよう御了承解くださいまして、小委員会の方の決定を御承認願いたいと思います。以上でございます。     —————————————
  6. 田口長治郎

    田口委員長 ただいま漁業制度に関する小委員長並びに水産金融に関する小委員長よりの御意見もありますし、この際閉会審査の件についてお諮りをいたしたいと思います。今国会の会期も本日をもつて終了となりますが、本委員会といたしましては、先刻の理事会で御協議願つた通り加工水産物輸出振興に関する法律案公海漁業に関する件、水産金融に関する件、漁業制度に関する件、以上の各件につきまして、閉会中もなお委員会審査活動ができるようにいたしたいと存じます。  つきましては、以上各件について閉会審査申出書を議長に提出いたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 田口長治郎

    田口委員長 御異議なしと認め、そのように決定いたします。     —————————————
  8. 田口長治郎

    田口委員長 引続きお諮りいたします。ただいま議長に申し出ることに決しました閉会審査事項院議によりまして当委員会に付託されましたならば、その調査のため設置せられております各小委員会閉会中も引続き設置し、その調査に当ることにいたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 田口長治郎

    田口委員長 異議なしと認め、そのように決定いたします。  なお閉会中の小委員補欠選任につきましては、委員長においてその補欠指名いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 田口長治郎

    田口委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  11. 田口長治郎

    田口委員長 次に委員派遣承認の件についてお諮りいたします。先刻御決定を願いました閉会審査事件院議によりまして当委員会に付託されましたならば、その調査の一環といたしまして、先刻の理事会で御協議願つた通り李承晩ラインにおける漁船拿捕抑留による漁業救済及び留守家族援助等につきまして、現地委員派遣し、つぶさにその実態調査いたしたいと考えます。  つきましては派遣委員の数、その人選、派遣地及び期間等委員長に御一任を願つた上、議長委員派遣承認を申請いたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 田口長治郎

    田口委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  13. 田口長治郎

    田口委員長 次に、本委員会といたしましては、先般の閉会中に各地に委員派遣し、つぶさにその実情調査いたして参りましたが、今後の調査の参考に資するため、この機会派遣委員よりその報告を聴取いたしたいと存じます。中村清君。
  14. 中村清

    中村(清)委員 私の担当いたしました国政調査概要について御報告をいたします。  まず報告に先立ちまして、本調査のため、調査地における各県の御当局はもとより、県議会、地元市町村方々県漁業者団体、並びに関係漁民多数の協力と御便宜とを賜わりましたことに対し、深甚なる感謝の意を表するものであります。  本班において派遣を命じられました委員は、白浜委員山中委員田中委員と私の四人でありまして、専門員室より加藤調査主事を随行いたさせました。  調査の目的といたしましては、去る八月二十八日より九月二日までの六日間にわたり三重岡山香川高知愛媛の六県において、主として漁業経営がどのように合理化されているかということを中心にして、これに伴う諸般の漁業事情実態について熱心なる同僚委員とともに調査いたして参つたのであります。  私は、本班の調査概要について、まず各県共通する点を事項別に一括して申し上げ、特異の点はあとで申し上げることにいたします。  まず第一に、漁業における災害に対する国家補償制度確立して漁業経営の安定をはかることが最も緊要であるから、これがためすみやかに立法措置を行つてほしいという声が強かつたのであります。現在御承知通り漁船損害補償法によつて漁船については一応救済の道が開かれておりますが、漁業のごときは、主として自然を相手といたしまして生産の業を営むのでありますから、他の原始産業に比べて、自然の異変によつて不慮災害をこうむる場合がきわめて激甚であります。そのために生産手段を一朝にして烏有に帰し、漁民生活は根底より失い、再び立ち上ることはとうてい不可能な状態に陥るのでありますから、これらの損害に対して国家補償する道を開き、漁業再起継続をはかるために立法措置を求めているのであります。第二に、漁業金融拡充強化確立の点でありますが、これは漁業原始産業の中で不均一生産というはなはだむらのある条件を最も多く包蔵しておりますだめに、漁業資金が枯渇し、その経営が不安定になるばかりでなく、せつかくの好漁期を迎えても、その機会を失う場合が多々あるのであります。漁船及び漁具の資金について加工及び処理の設備資金について、また漁業経営運転資金について、中小漁業融資保証法あるいは農林漁業金融公庫、農林中央金庫によつて一応救済されていることになつておりますが、これとて国家財源に制約されて、十二分にその恩恵に浴するまでには至つていないのであります。従つてこの点に対しては、もつと積極的に国家資金の増額をはかつてほしいというのであります。  次に、御承知とも存じますが、漁業信用基金協会に対する政府保険の率が二つありまして、一つは、地方公共団体協会に三分の一以上出資すれば七割とし、他の一つは、三分の一以下であれば五割となつているのでありますが、地方公共団体財政状態からして、民間漁業者出資の増加に並行して、常に三分の一以上に出資を持続することはきわめて困難であるから、この出資の割合にかかわらず、政府保険の率は一率に七割と改正する要望県当局からもありました。  また、この中小漁業融資保証法に基いて保証融資にかかる保険料は、零細な中小漁業者にとつては耐えがたき過重負担となり、せつかくの本制度もその使命を十分に発揮できないことになるから、政府は、低利の国家資金金融機関に流入して、基金源を確保するとともに、その上、可及的に保険料を低額に引下げるか、あるいは保証融資に基く貸付に際しては、国庫より利子補給を行うかの措置をとつてほしいというのであります。  第三には、沿岸漁業育成強化について、沿岸漁場の価値を高め、かつ、漁場における生産力持続的合理化をはかり、沿岸漁場における水産資源保護繁殖をもつと積極的に国力をもつてこれを助成すべきであるというのであります。なかんずく京阪神という一大消費地に近接する瀬戸内海における水産資源繁殖保護並びにその育成強化をはかるために、小型底びき網船中型まき網船減船整理を実施したのでありますが、さらに進んで大規模な築磯を国家助成で設置し、魚族繁殖をはかるととともに、有効的かつ強力な漁業取締りの励行と相まつて、疲弊の極度にあるこれら沿岸漁民の生計が立ち直るように、実行力のある国策の確立がほしいというのであります。  第四に、南方におけるまぐろ漁業操業を円滑にするため、これらの漁船南方方面に出漁中、給水、給油、その他の便宜をはかつてもらうため、南方の要所に寄港地が得られるように、政府において交渉してほしいというのであります。  第五に、漁船乗組員保護するために、一元的な保護制度確立してほしいというのであります。これは現在三十トン以上の漁船乗組員は約六万ほどでありまして、この方は、船員法船員保険法に基いて強制適用を受けておるのでありますが、三十トン以下の漁船乗組員は、労働基準法が適用され、労働災害補償保険法失業保険法健康保険法任意適用となつておることは御承知通りであります。この三十トン未満の漁船乗組員の内訳は、おおよそ五トン以上の船に約二十六万、五トン以下の船に約六十九万、合せて約九十五万ほどおります。そのうち約三十六万ほどは雇われている者がおります。このようにして漁船乗組員は、多様の法規のもとに規制されておりますが、そのいずれも漁業の実体に即しない点が多々ありまして、漁業労働者としての真の保護が徹底されておらない向きがあるのであります。これは漁業が他産業と異なり特殊の原始産業であるため、これを他産業と同様一律に規制されることがはなはだ不合理であるというのであります。この点漁業という企業実情に即するような漁船乗組員立法措置を求めているのであります。  第六に、漁港の築設、修築等に要する国庫負担額が、毎年予算の査定において削減されているという実情であるから、本年のように風水害のため、漁港施設が再々破壊されて、漁業の基盤を失い、かつ打続く漁業災害によつて漁村における経済は極度に疲弊しており、とうてい地元負担による復旧工事が容易に望めない現状であるから、政府は、漁港の修復に必要な費用を積極的に支出して、漁村経済の再建をはかることが最も緊急な要請として聞いて来たのであります。以上の六点がそのおもなる調査した要点であります。  次に三重県においては、特に真珠養殖を業とする区画漁業権を、協同組合に優先的に認め、母貝生産と一貫した真珠養殖事業の発展をはかれという協同組合側の強い要望と、真珠養殖業者現行制度でよいという意見もあつたのでありますが、これはいずれ漁業法の再検討において問題となるべきものであろうと考えるものであります。さらに伊勢湾におけるバツチ網漁業魚族を枯渇せしめ、その繁殖を妨げるものであるから、これを禁止せよという意見と、これを禁止されては死活問題であるとする業者言い分とを調査いたしましたが、バツチ網業者言い分を聞くと、年々七億円の生産を続け、禁漁期を定めて魚族繁殖をはかり、合理的に資源枯渇を防止しながら、最も経済的な漁法であるというのであります。加うるに、三重県内湾の松坂市において、日本紡績工場からの廃水により、魚族及び貝類、のりの生産が著しく減少して、これらの水産資源が枯渇して、沿岸漁業が絶滅に瀕しているというのであります。この点は、ひとりこればかりではなく、岡山香川愛媛高知の各県も同様の問題があり、すみやかに立法措置を講じて、沿岸漁場の保全をはかつてほしいという意見は、実に切実な叫びとして聞いて来たのであります。また、真珠養殖業者に対して、農林漁業金融公庫運用規程融資の対照にされておらないので、この恩典に浴しないのは不合理であるというのであります。すなわち、この企業多額養殖資金を必要としながら、生産手段が一年以上四年の長期にわたるため、資金回転率がきわめて悪く、担保力の少い海上施設であるため、一般の金融機関が冷淡であるから、真珠輸出によつて外貨を獲得する真珠養殖事業重要性にかんがみ、この面の融資の道を打開してほしいというのであります。  次に各県大体において同様の漁業問題について調査したのでありますが、特に高知県と愛媛県とにおいて、まつたく反対意見を聞いて来たのであります。それは、機船底びき網漁業操業区域改正する水産庁案に対し、愛媛県では大海区制に賛成し、高知県では、大海制はいたずら漁業紛争を激発し、資源の乱獲に陥りやすいから反対であるというのであります。この問題はもつと専門的に十分調査研究する必要があると存じます。  以上が本班が調査いたして来た大要でありますが、委員各位におきましては、よろしく御判断の上、本委員会における一つの資料となりますれば、私の最も光栄とするところであります。  終りに臨みまして、本班の委員諸君並びに加藤主事が、早朝から終日遅くまで御熱心に御調査研究をいたされましたことをつけ加えて、この席より感謝いたします。  次に、九州地方調査について御報告申し上げます。  九州地方は、福岡市から始まり、九月二日を皮切りに、三日は佐世保市、四日は長崎市、湯江町及び島原市と、五日は大牟田市及び串木野市、六日は鹿児島市と枕崎市を、最終日には鹿児島湾を視察し、本九州班調査を完了したのであります。  参加委員は、白浜委員山中委員と私の三人に、中山調査員を随行せしめ、福岡市と佐世保市を私が班長で参りましたが、やむを得ざる事情がありましたので、四日佐世保市より、班長白浜委員にお願いいたしたのであります。長崎県下では、田口委員長地元選出議員として、長崎市、湯江町、島原市と御参加くだされ、串木野市から最後までの鹿児島市、枕崎市には、やはり地元選出議員赤路委員が御参加くだされ、非常に熱心に御調査願い、御協力をいただいたのでありまして、特にその地区にては効果が上つたことを感謝いたす次第であります。それでは日順を追つて調査の結集を申し上げます。  まず最初に、福岡県を調査いたしたのでありますが、福岡県は水産には多様にわたつて問題の多い県でありまして、南に複雑な漁業秩序有明海浅海養殖入会問題等があり、北の対馬海峡から、西の東支那海には、前国会で問題となりました、中間漁区の底びき漁業の入会問題があり、今日本の脚光を浴びている以西底びき網漁業及び朝鮮近海さばつり漁業その他、海の宝庫だけに問題は跡を断たず、また東にも瀬戸内海を控えて、小型底びき問題等があり未解決の問題が山積されているのでありますが、本調査班は、おもに米軍演習による被害実情について、県庁内の知事応接室にて、次に述べますが、三地区関係漁業者と、県庁係官に、調達庁九州地方担当福岡調達局係官のお集まりを願いまして、調査をいたしたのであります。何しろ福岡県は大きな飛行場が三箇所ありまして、博多湾周辺制限区域芦屋対地射撃訓練区域及び築城対空射撃訓練区域等の名のもとに、陸上区域にあわせて海上を広大なる区域制限しているのであります。  各地区について最も簡単に具体的説明を申し上げまするなれば、博多地区は、昭和二十年九月一日より六箇所にわたり常時一・〇九平方キロメートル、演習時二・四六平方キロメートルが制限され、飛行機の着陸が海面すれすれのため、その音響等により、回遊魚は寄りつかなくなつたのはもちろん、底魚さえも非常に少くなつたのであります、湾内を船で一時間あまり巡航して見ましたが、確かに被害の程度が察せられたのであります。最近まで湾の中央海面は、水上飛行機発着区域として制限され、使用されていたとのことであります。  第二の芦屋地区でありますが、ここは特に深刻でありまして、昭和二十四年八月二十九日に総面積五十六・五平方キロメートルが制限を受け、拡大時には百八・八平方キロメートルの禁止区域が設定されるわけであります。この地区漁業者諸君の現在最も傷手をこうむつていることは、この区域制限を受ける少し前に、この地方主要加工物であるいわし加工場を建設すべく、中央機関にも働きかけ、やつと農林中金から半額、自己資金として現地金融機関等から半額を借り入れ、三千万円の多額を投じた工場が完成したのでありますが、一度も使用しない間に、地上及びその前方の好漁場はほとんど全部使用禁止を受け、魚つき林は伐採され、そのため漁獲高は十分の一以下に減じ、関係漁民生活に追われ、三千万円の返済どころか、利子さえも支払えない深刻な状況であつたのであります。  第三の地区は、県の東方に当る瀬戸内海に面した海岸線の三分の二を含む実に四百六十三・六三平方キロメートルにも及ぶ築城地区であります。内海は日本漁業中でも最も小規模なまた最も零細な漁民でありまして、海岸からわずかな海面漁場とする共同漁業権にたよつているものであつて、その漁場をほとんど毎日連続で制限されているので、漁家に与える経済的な打撃は、まさに言語に絶するものがあり、私がここに喋々と説明する必要はないと存じます。この地区は最も新しい接収箇所でありまして、二十六年九月十二日であります。そのため漁民のこの区域使用の期限が永久的であるか、交渉次第では解除になるかによつて転業その他職業及び生活決定を急速に迫られているため、精神的にも大きな打撃をこうむつているのであります。以上演習被害の件につきましてごく簡単に申し述べました。  その他本年六月に襲つた豪雨による被害のため有明海漁業は大損害を受け、特に浅海増殖はほとんど全滅の打撃をこうむり、政府にて何らかの措置を講じなければ立ち上れない状態であります。種付のときを控えて早急の解決を望んでやまないものであります。  次に長崎県について申し上げます。長崎県は北海道に次ぐ水産県でありまして、その海岸線対馬海峡から九州西方広く散在する無数の島嶼からなり、九州西方漁場の半分以上を制し、いわしさば等回遊魚交遊場となり、また産卵場に適し、その上水深浅く二百メートルに達せず、広大なる東支那海という数多くの魚族産卵成育、成長に最も適した海域に連なる非常に恵まれたる漁場を持つ県であります。わが国近代文化発祥地だけに、水産業もこれに準じ古くから発達し、底びき網漁業を初め多種多様の近代的漁業が盛んに行われ、これに従つて陸上にても水産物加工製造も見るべきものが多く、解決さるべき問題も多々あつたのであります。しかし調査米軍演習被害を主として行つたのであります。調査には佐世保市は魚市場にて大村湾関係漁業者組合市当局が、長崎市にては県庁会議室を借り、漁業者各種組合及び連合会、市、県当局並びに長崎大学の水産学部教授が、有明海沿岸湯江町にては漁協の二階にて町漁業組合員ほとんど全員と町当局が、島原市にては有明海に面する十数個市町村代表等方々がお集まりを願い、熱心なる御意見、御要望を承つたのであります。演習区域として指定されているものには、五島列島の北方にジヨージ艦砲射撃制限区域南方フオツクス艦砲射撃制限区域佐世保湾制限区域の四箇所があり、それから昨年解除になりましたが、大村湾内双島という爆撃演習区域があつたのであります。この中で佐世保湾は、終戦の二十年九月連合国軍の進駐と同時に湾内全域にわたり漁業禁止となり、二十五年九月湾口に防潜網が張られ最近夜間航行が緩和されるに至りましたが、事実上操業は完全禁止同様であつて、その被害昭和二十五年、六年両年合せて、県水産部確認額は一億一千六百万円に上り、これに対する政府見舞金は九百二十五万円と、実に十二分の一の交付にしかすぎないのであります。またわれわれ水産委員のこの種の補償についてよく考えなければならない問題としては、この佐世保湾口をともに湾口とする大村湾内にある双島についてでありますが、この島は昨年をもつて爆撃は中止となり解放されましたが、接収解除と同時に補償は打切られ、漁場は破壊され、この島の周辺には魚貝藻類は棲息しなくなり、自然復旧には長年月の日子と相当額費用を必要とするし、この打切り後の漁場復旧までの補償及び復旧に要する事業費調達を何らかの方法で解決を考えるべきであろうかと存じます。海面制限区域ジヨージは二千百平方キロメートル、フオツクスは二千二百八十平方キロメートルの広大なるもので、この区域はちようどいわし、あじ、さばその他の回遊魚魚道に当り、産卵場好適場であるのであります。この区域制限されたためあらゆる魚族は、産卵場は奪われ、魚道変更または散逸し、その影響は漁獲の著しき低下を来し、特にこの区域漁場としていた漁船は、漁場変更のため航行距離が延長されよけいな経費が非常にかさむことになつたのであります。  この二つの区域昭和二十七年一月に設定されたもので、損害の額は未定でありますが、昭和二十五、六両年の県下総損害額七億五千万円に対し五千二百万円の見舞金というきわめて僅少なる補償額から見て、再びこのような補償を繰返さぬように、この演習漁民の物、心両面に黙し得ない関係を持つていることを考慮し、補償法完全適用による完全補償を強く期待していた次第であります。ハウ区域につきましては、鹿児島県のときに譲りたいと存じます。  次に中間漁区違反船の問題でありますが、これは取締りの徹底を期すべしとの結論になりますが、この海区には自県船五万隻、他県船三千五百隻以上が操業しているので、海岸の定置、共同漁業との摩擦を防ぐためにも必要と存じます。  ここ長崎県の水産業で見のがせないものは、水産物加工製造が非常に盛んなことであります。この製品はほとんど輸出に向けられ、外貨獲得に大いに貢献しているのであります。最も大量で有名品としては、いわしのトマトづけカン詰であり、東南アジア全域はもちろん、アフリカ、欧州各国までも輸出され、最高輸出高百六十五万箱、平均百万箱であつて、その六、七十パーセント、今年に入つてからは九〇%を製造輸出している現状であります、しかし前国会の本委員会でも問題になりました、水産貿易のトツプを飾る輸出カン詰の製造に使用するブリキ板は、外国から輸入すれば一トン九万円程度にて入手でき、国内生産のものは原価十三万で、輸出品に対するものは十一万円にて入手と生産者の配慮があるわけでありますが、輸出振興上この点さらに国家的に考慮し、九万円程度に引下げるかまたは直接輸入を業者に許すかにより、格安のカン詰を製造輸出の振興をはかるべきであろうかと存じます。  有明海のことについて一言申添えたいと存じます。島原市を中心とする有明海に面している市町村の漁民は、熊本県の長州町前方海面で長年小型底びき網漁業を営んでいたのでありますが、新漁業法制定に伴い、この種の漁業共同漁業権として知事の免許となり、そのため有明海上の熊本県と長崎県の中央に熊本県側は一線を画し、共同漁業権を設定し、他県の漁業者の操業を禁止したのでありまして、慣習的に操業を続ければ拿捕抑留されることになつたのであります。この結果長崎漁民漁場を失つてしまい、入漁も意ならざる問題が相当大きく漁民を動かしていたのであります。以上で長崎県を終ります。  大牟田市においては有明海漁業調整事務局に立ち寄り、事務局長に有明海における漁業実態と現在の問題点についてその説明を聴取し、福岡有明海浅海養殖漁業者より、水害のためどろが五寸から一尺も海底を埋め、あさり、はまぐりその他の貝類は死滅したが、漁民は必至に漁場の回復に努力しているが、種付期を控えて、種苗購入費等を早急に融通してほしいとのことがまことに真剣であつたのであります。  次に鹿児島県下について申し上げます。日本の最南端に位し、三万海に囲まれ、重要産業として最近特に関心を持ち力を入れ期待をかけている水産業は、長崎県と同様の漁場と太平洋のかつお、まぐろの漁場を控え、特にかつを、まぐろ漁船の根拠地として良港が数港あり、さらに整備されつつあるのであります。  われわれの調査は最初に串木野市において、市漁業協同組合の講堂を拝借し、市及び組合員の方々と懇談し、次に枕崎市にても同様組合会議室にて各種漁業者、漁連、市当局鹿児島市にては漁連会議室において各種漁業者と連合会方々、最後に県知事室にて県水産部の御要望、御意見を受けたのであります。  主題の米軍演習被害については、長崎県のところにて保留してあつたハウ区域においては、鹿児島県は九州各県中被害が最も大きい県であります。これは艦砲、爆撃双方に使用するりために、昭和二十七年一月に面積三百八十六・八平方キロメートルが県西方海上に設定されたもので、この地域はさば、かじき、ふか等が回遊する好漁場でありますが、これら回遊魚はその半分は魚道変更して、行方はわからず、残りは沖繩西方に漁場変更してしまい、このため漁船は大型化を要し、消粍経費及び船価の損失は倍加されたのであります。この問題は九州各県の問題でありますが、特に阿久根、串木野枕崎市付近の漁民には深刻で、前国会において制定した漁業法の特例を適用して大型化しようにも資金に行き詰まつて、昨今の台風、水害等の害に加えての苦しみにあえいでいるのが実情であります。  その他無線士の養成について、九州に一校のみにて、養成数と必要数とがつり合わずその雇い入れに苦慮しているのが現状で、養成機関を増設すると同時に、漁業無線通信士養成制度を設けられたき旨の要望、また奄美大島復帰に際し、水産依存度の大きいことにかんがみ、その振興対策を国の施策として取上げ、特に漁港については北海道同様に、全額国庫負担をもつて急速に整備され、その他においても抜本的に援助されたきこと等があつたのであります。以上をもつて鹿児島県を終ります。  調査の三県の共通の問題は多々ありましたが、李ラインの撤廃、拿捕抑留乗組員及び漁船の返還、漁港の整備の促進、中間漁区の違反の取締り強化、以西底びきの大型化の資金融通、南方漁業進出のため関係国との漁業交渉及び問題の早急解決、沖繩、台湾に漁船寄港許可の件、合成繊維実用化援助の件等、いづれも水産振興上緊急重要なる問題ばかりであります。  李ラインの問題は、未だ悪化していないときの調査であつたため、安全操業確保の強硬意見はありませんでしたが、現在ではわれわれ水産担当委員は、死力を尽してこれらの権益確保に努力しなければならないのは当然であります。演習被害解決策として一致した要求は、即時解放を第一として、区域縮小、盛漁期休止、完全補償及び復旧事業費の支出等であります。  以上で九州班の御報告を終りますが、この機会において一言申し上げたいことは、この班においても委員諸君並びに中山調査員が熱心に調査に当られたことでありまして、ここに深甚の謝意を表する次第であります。
  15. 田口長治郎

  16. 濱田幸雄

    濱田委員 国政調査の北海道班を代表いたしまして、その調査概要を御報告いたします。この調査に参加いたしましたのは川村、山中、淡谷及び濱田の四委員でございまして、なお随行として水産常任委員会の菅原調査主事が同行いたしたのであります。調査期間は九月三日から十六日までの二週間でありまして、今回は主として漁業災害実情、北海道北部及び東部海域における漁船拿捕の現況、駐留軍の演習による漁業損害実情、港湾修築事業の進捗状況を中心にいたしまして、その他一般的な漁業に関する事項を調査して参つたのであります。調査中は日程の関係もありましたので、道内石狩その他九支庁管内に限定せざるを得なかつたのであります。先ほども中村委員からお話のありましたように、北海道の今回の調査にあたりましても、道庁当局はもちろん、関係市町村あるいは関係漁業協同組合等から、非常な御協力と御便宜を賜わりましたために、非常に迅速かつ詳細なる調査を行うことができましたことは、衷心欣快とするところでありまして、特にこの際に私も地元各位に対して深甚なる感謝の意を表したい次第であります。以下調査の内容について申し上げなければなりませんが、時間の都合もありますので、なるべく重要と思われますことを、簡単に申し上げたいと思いますが、なお今回の調査にあたりましては、今手元に報告書も準備してございますから、この報告書を委員長のお手元に差上げたいと思います。できればそれによつて速記の方に御登載いただければけつこうではないかと思います。  まず北海道庁において、道内の漁業全般についての説明とか、あるいはその陳情を受けたのでありますが、申すまでもなく、従来北海道は世界三大漁場一つに数えられるほどの漁獲量がありました。わが国蛋白資源の補給の面からいいますると、大きつ一つの宝庫であつたのでありますが、終戦後における定着性魚族の濫獲とか、あるいは千島、歯舞諸島の漁場を喪失したこととか、あるいは海流の変化その他いろいろの事情によりまして、近年漁獲高が減少しておるのであります。一々数字について申し上げる必要もないと思いますが、たとえば昭和十年から十六年にかけての戦前七箇年にわたる平均の漁獲高を見ますると、三億二千四百万貫くらいに達しておりますが、戦後二十年から二十六年までの統計を見ますると、平均して一箇年二億四千四百万貫程度に達しておる次第であります。戦前に比べて約七割五分という程度であります。最近二、三年の統計を見ましても、戦前に比べて八割程度に回復しておると言えるのですが、そういうような事情になつておる。また今回私北海道の漁場を親しく見せてもらいましてから痛切に感じたことでございますが、漁村経済の面について見て参りますると、北海道の漁業経営の主体というものは、専業者が全体の大体三割六分、大部分が兼業的のいわゆる沿岸の零細な漁業者であると言えると思います。しかも漁業制度が改革せられましてから後、弱小漁業協同組合の濫立があり、また組合経営そのものも必ずしも全部がうまく行つていなかつたというようなこと、また戦後、国内市場における有効需要がかなりかわつて来ておること、さらにまた世界市場を失つたというようなこと、特に今申しました、漁獲高が近年減つておるにかかわらず、漁業者はかえつて増加しておる、そういうような関係から見まして、北海道の漁村経済というものは、かなり逼迫しておるように見受けたのであります。遺憾ながら不安定なる状態であると考えなければならぬと思います。ことに北海道の南部、道南地区の渡島、日高、胆振というような支庁の管内におきましては、近年不漁が続きまして、その経済事情は非常に窮状にあると見受けて参つたものであります。たとえて申しますと、そういう方面の漁業所得一月当りを見ますると、年十五万円未満というような、比較的所得の低い漁業者というものが、全体の八割二分を占めておるというような状態であります。そういう点から考えましても、今後の北海道の漁業というものは、かなり問題が蔵せられておるのではないかというふうに私は見て参りました。こういう窮状打開のために、国はもちろんでありまするが、北海道庁におきましても、いろいろの対策を講じております。漁業権証券の資金化の好機をとらえて北海道水産振興五箇年計画というものの作成を今年からいたしておるのですが、その骨子は、言うまでもないが、水産資源の培養とか、保護助長、これによつて増産をはかるとか、あるいは系統共同販売機構の強化と販路の確保、自己資本の造成並びに貯蓄の増進を推進するということ、生産施設の拡充あるいは経営技術面の指導というような点に重点を置いておるようであります。これによりまして、昭和二十八年度以降昭和三十二年度までの五箇年間に、戦前以上の漁獲高を予想いたしまして、漁民生活の安定を期しておるのですが、私どもはそういうような理想が十分に達成せられまするように念願をしておる次第でございます。  調査の内容について多少具体的に申したいと思いまするが、まず漁業災害の点であります。本年北海道における漁業災害は、御承知通り、七月のあの四号台風による水害、そうしてちようどあの直後に高潮の影響もありましてかなり広い地域つにわたつて被害漁業面においても受けております。大体十勝、日高、胆振、渡島、檜山、そういうような支庁の管内でありますが、その被害の状況は、これももうすでにこれまで当委員会でも調査が済んでおる次第でありますが、総額において大体五億五千万円程度になつておると思います。これがための復旧は、おそらく六億前後は当然必要ではないかと思います。今回の災害におきましては、幸いに漁船被害はあまりなかつたようでございますが、漁具とかあるいは漁網の流失、それから浅海養殖施設、こんぶなんかの採取をやるための施設でございますが、そういうもの、あるいはこんぶをほす場所、いわゆる海藻の干場、そういうものの被害がかなり大きいものがありました。北海道といたしましても、これに対してさつそく緊急対策を講じて、漁具とか漁網なんかの被害につきましては、北海道漁連を通じて、かれこれ二千七百万円程度の資材を現物補給するというようなこと、あるいは道の漁業信用基金協会融資保証のもとに、道の信漁連から約六千四百万円のつなぎ資金を融通したり、あるいは海藻の干場につきましては、道の信漁連から三千四百万円程度の融資が行われておるというようなことをすでにやつておりますが、しかし今申しましたようなかなり大きな災害がありましたので、単に道庁だけの対策によつて十分にこれが復旧をはかることは、もちろんできないのです。第十六国会において、本年の水害地に対する対策についての種々の法律が制定せられたのですが、これに基きまして国家が積極的にこれに対する施策を講じなければならぬ立場に立つておることは、もうすでにここで私が申すまでもありません。なお災害地の漁業者からの要望といたしまして、復旧に要する自己資金の充足ということをやらなければならぬのですが、その一つの方法といたしまして、例の手持ち漁業権証券でございますが、これを金にかえるのに大体一億五千万円程度のものがいるのでございますが、これを早く資金化してもらいたいというような要望が強くあつたことを御報告申し上げます。  以上は大体本年の七月の災害についての概要でありますが、昨年の十二月のあのオホーツク海のしけ、それからカムチヤツカ沖の地震、これによる漁業災害がありましたことは言うまで心ないところであります。これにつきましては、第十五回国会におきまして、当委員会におきましても立法いたしたのでございますが、特別措置法に基いて、すでに約八億円程度の資金が農林中央金庫より融資をせられております。この災害復旧につきましては、大体順調に今日まで行われておるように見受けまして、地元の漁民からも政府の施策に対して感謝の意を述べられたことを、特にこの際御報告いたします。  次に北海道の北部とそれから東部の海区において、日本漁船がソ連側に拿捕せられておりますが、その様子を概略申し述べたいと思います。私どもは九月六日に稚内に参りまして、北部海区といいますか樺太に面した方面のあの海区、あの海区の拿捕の様子を調査したのです。昭和二十三年から最近まで、ソ連側へあの方面で拿捕せられました漁船が二十七隻、人員が二百九十六名であります。そのうちまだ帰つていないのが十三隻、おそらく途中で死亡した人もあるだろうと思われますが、そういう人を入れましてまだ帰つてない人が三十名ということになつております。拿捕されました場所は、おもに亜庭湾内であるとか、あるいは能登呂半島の南の方に二丈岩という島があるのですが、その島の南方数海里の付近とか、あるいは海馬島南方十数海里あたりで、これまでよく拿捕せられておるようであります。そのほか元のマツカーサー・ラインと、樺太沿岸十二海里以上離れた地点との間においても、これまで拿捕されております。いろいろこれについて現地の様子も聞いて参つたのですが、もちろん地元におきましては、この拿捕については、非常な重大な関心を寄せておるのです。また九月の二日ですか、この拿捕問題を議題といたしまして、稚内市におきまして、宗谷方面の漁民大会を開いておる。そしてこの大会におきまして、日ソ講和の促進とか、不慮の災禍によりまして、いろいろの被害を受けた者に対する国家からの補償をやるべしというようなこととか、あるいは現にソ連の方に拿捕せられております抑留者、あるいはその船舶、これを至急釈放させるようにすべしというような事柄について、決議をいたしたりしておるのですけれども、これはもちろん稚内方面だけではありません。北海道全体の漁民要望であるかとも、私ども見ていいと思います。今、北方における漁業につきましては、このソ連との関係を真剣に、早く解決をするような方向に進むべしというような要望が強くなつておることを御報告申します。  北方の海域における拿捕の様子は、以上の通りでありますが、さらにこの東部海域であります根室方面でありますが、あの方面における漁船の拿捕は、北方の海域におけるよりも、さらにこれまで多く行われております。私どもは、九月の八日、九日ごろに、釧路とか、根室方面に参りまして、現地の様子を見て参つたのです。この東の方の海域におきましては、二十三年から本年の七月の末までに、漁船が二百五隻拿捕せられておるのであります。人員が千六百九十七名ということになつております。そのうち、私らが参りました当時に、まだ帰つてないのが三十隻、人員で四十三名ということになつておつた。いろいろその拿捕されました船の種類などについて御報告申したいこともございますが、これは省略いたします。  結局、こういうような北部及び東部海域における日本漁船の拿捕の状況を総合してみますると、一般にこの宗谷海峡方面ですが、北の方における拿捕は、東の海域における拿捕に比べましては、件数は少いのです。しかしどうもこれまでの例を見ますると、拿捕せられましたものの抑留期間と言いますか、割合に長いようです。そして漁船の没収なども多く行われております。そして聞いてみますると、全体を通じて、通信士の釈放というものが、どうもよく行われてないようです。そういう人が割合に長く抑留せられておるようであります。ソ連側の拿捕の理由としてあげておりますることは、言うまでもなく、スパイに対する嫌疑とか、あるいは越境というようなこととか、あるいは密漁の罪というようなことによつて、ソ連側の刑法に照らして抑留をし、拿捕しておるようであります。当時現地に行きまして、いろいろの話も聞き、また特に私どもがあの歯舞という村に参りまして、ちようど天気もよかつたのですが、歯舞諸島の様子を、割合に詳細に見ることもできました。よく問題になつておりますが、あの貝殻島という島なんかも、私どもが参りました納沙布燈台——岬のとつぱなにある小さい燈台ですが、その燈台から見ますと、すぐ目の前に望まれるようなところであります。聞いてみますると、終戦直後は、あの貝殻島のようなものは、いわゆる日本の領土として、日本漁船が自由に出漁しておつたようですが、マツカーサー・ラインが引かれた際に、その貝殻島とこちらの陸地の方との中間に、その境界線が設けられたために、事実上貝殻島その他の歯舞諸島というものは、ソ連の支配下に入つておるのです。これまでその方面では、今申しましたような、かなり日本漁船に対する拿捕が行われたのですが、最近、本年に入りましてから、日本漁業家のうちには、かなり大胆に、あの方面に出漁しておる者もあるようです。そしてあの海域における漁業というものは、かなりの漁獲高をあげておるのです。そういうような微妙なる情勢に現在あることを御報告申し上げます。  次に駐留軍の演習による漁業損害のことについて申し上げますが、これも九州における今の中村委員からの報告と、大体似たようなことで、私どもは、ちようど今度の調査期間中に、日高管内の門別町における実情を聴取することができたのです。昭和二十六年から、この門別町のシノダイ岬を中心にしたところの海岸地でありますが、七十三町歩を高射砲の対空射撃演習場として、米軍で使用しております。かなり広い海面にわたつてこれを射撃演習に使つておるのです。これがために当地の漁業にいろいろな影響があることは申すまでもありません。二十六年、二十七年、本年と、この三年にわたりまして、実弾射撃をいたします演習の実際の日数がだんだん多くなつて来ておる傾向にあります。これに対する漁業損害補償ということにつきましても、地元の方の要望は必ずしも十分に通つていません。またこれに対する現実の補償金の支給でありますが、これも百済的な事情もありましようが、かなり時期がずれて行われておるというようなことであります。今後こういうような面について、国家的にもよほど善処する必要のある点が少くないのじやないだろうかというふうに考えております。特にこの門別方面では、現在使つておりまする演習用地としてのこの七十三町歩のほかに、近ごろさらに三千五百町歩くらいの上陸演習地を提供するかせぬかというようなことにつきまして、日米合同委員会において、今折衝中であるようでありますが、もちろん地元の方におきましては、そういうような広大な上陸演習地の提供には非常に反対をしておるのです。今後これをどういうふうに国の方で処理して行きまするか、私どもは十分関心を払うべきものじやないかと思います。またこれと似たようなことでありますが、渡島支庁管内の例の大島—大島村のあの大島という離島でありますが、これをも演習のために使いたいというような話合いが、日米両国間にあるように聞いております。この大島という島は、御承知通りに、あの海域が一つの大きな漁場になつておりまして、最盛期になりますると、単に北海道方面の漁船だけでなくて、東北あるいは北陸地方の本州側の漁船もあそこにたくさん出漁するようであります。これをもし艦砲射撃なんかの目標として使うということになりますれば、単に北海道の一部の地方的な漁業問題というよりも、かなり大きな範囲にわたつての影響があることになるのでありまして、これもよほど慎重に研究を要すべき点じやないかと思うものでございます。北海道で今回、駐留軍の演習による漁業損害の問題といたしまして、おもにその二箇所を直接現地に行つて視察することができたのですが、これは全国的な問題でもありまするので、私どもは国全体として、これをよく慎重に研究をし、将来日本漁業という面について、十分適当な措置が講ぜられることを希望しておるものでございます。  次に漁港でありますが、私は今回の視察にあたりまして、かなり広い地域にわたつて漁港を見て参りました。現在漁港の指定港が二百二十二港となつておりますが、そのほかに将来指定を受けたいというような要望をいたしておりまする予定地が約二十港くらいありますが、そのうちのかれこれ九十港くらいの漁港を見ることができました。そしてこの北海道の漁港の改修につきまして、いろいろ感じた点がありますが、二十六年度の漁港法制定に基きまして、二十六年度以降第一次整備計画に入つておるものが七十七港でありまして、二十八年度において、そのうちの一港は改修を完成する見込みになつておる。そして二十八年度以降継続してまだ改修を続けて行くべきものが五十二港、二十八年度から新しく着工するようになりましたのが十二港、そういうふうなわけになつております。未着工の分——二十八年度になお着工のできてない漁港が十二港、そしてこれまでに着工したものの総計が六十五港であります。六十五港の工事量でありますが、改修に対する工事量が、金額にいたしますると約百二十億円程度であります。ところが、この二十八年度までに工事をいたしまする金額がわずか十九億に達しない状態であります。もしこういうような状態でずつとあの改修を続けて行くとすれば、今後おそらくこういう指定を受けまして、現に着工いたしておりまする漁港の改修につきましても、十年以上、十数年の年数を要することと思うのです。これはもちろん全国的な現象であるのです。この問題につきましては、いわゆる集中的に漁港の改修をやるべしというような意見も強く唱えられておるのですが、今後国の全体の経費を効果的に使うためにはどうするか、こうするかというような問題もありまするし、かなりむずかしい問題でありまするが、何かの措置をとるべきものでないだろうかというふうに私どもは見て参りました。  そのほかに北海道のいわゆる単独事業といたしまして、比較的小さい港湾を、北海道自体の事業といたしまして、約三十港くらいこれまで改修をやつております。これもやはり全体の工事量がかれこれ六億数千万円かかるものが、二十八年度までには、その半分以下二億七千万円程度しか仕事が進行していません。いろいろ漁港のことについて感じたこともありますが、あとの時間の都合もありますので、全部省略さしてもらいたいと思います。  ただ一言感じたことをつけ加えて申したいと思いますが、北海道の漁港の改修につきましては、第一種港は、北海道庁で工事をやつております。二種港、三種港は、北海道開発庁の方でやつておりますが、こういう行き方が、はたして適当であるかどうか、いわゆる港湾の改修につきましては、いろいろの機械とかあるいは施設を十分に活用しなければならぬのですが、工事の主体が二つにわかれておりますために、その間の融通というものが、必ずしも円滑に行われないようなことがあるのじやないかということを感じた次第であります。いろいろのほかの事情もあると思いますが、この点につきましても、将来国としては研究をしておくべきものでないかというような感想を抱いておるものであります。漁業金融のことにつきましては、これも先ほど中村委員から四国、九州方面の事情について報告がありました。大体北海道におきましても、同じような問題があるのであります。その他北海道といたしましては、魚田の開発あるいは魚族の保存というような観点から、本州側からの東北地方の底びき網漁船の入会操業に対する地元の反対の空気もかなり強いのですが、しかし、これは国家的に見まして、必ずしも地元の要望通りに処理すべきものであるかどうか、私どもは必ずしもそういうことについては全面的に賛成ができないのでありまして、いろいろそういう点について意見の交換もいたしたいと思つたものでございます。なお詳細は先ほど申しましたように、報告書にまとめてありますので、ごらんをいただきたいと思います。以上御報告申し上げます。
  17. 田口長治郎

    田口委員長 本日はこれをもつて散会いたします。     午後零時三十分散会