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鈴木政府委員 ただいまお尋ねの点は実は問題が逆でございまして、実は、先般仙臺の高等裁判所で、
自治庁と申しますか、前の内務省
地方局長名をも
つて出しておりました、いわば一片の通牒による
住所の解釈の
認定をくつがえされたわけであります。これは仙臺の高等裁判所で、
ちようど今問題にな
つております
学生の
選挙権の問題につきまして、たしか
事件といたしましては二件案件がございまして、そこでは下級の
選挙管理委員会の
決定、
採決とい
つたような段階を経て参りましたいわば事実
認定につきましての高等裁判所の最終の
決定と見るべきであろうと思のでありますが、青森の五戸町から仙臺に遊学をしておりました
学生の
選挙権につきまして、これは、仙臺に
住所があるのではなくて、その者の郷里の五戸町に
選挙権があるという判決をしたのであります。これは、五戸町からたしか仙臺の東北大学かに入学をしておりました
学生が、四月たまたま郷里に
帰つておりまして、五戸町の町
会議員の
選挙に参加をいたしたのであります。ところが、それに対しまして、五戸町の町
会議員の
選挙に参加しても、それは
住所がないから無効である、そういう当選訴訟、
異議の申立てがありまして、それをくつがえしまして、結局、仙臺の高等裁判所におきましては、やはり両親のもとに休暇ごとに
帰つてお
つて、そして両親から独立して生計を営んでいるとは認められない者の
住所は、大学校の所在地である乙市において寮生活をしてお
つても、その者の
住所はなお自分の郷里の町にあると解すべきであるという判決をしたのであります。こういう判決がございましたものですから、そこで従来
地方局長の通牒で出ておりましたものを撤回をして廃止をいたしまして、そのかわりに判決の
趣旨に従
つた通達を六月十八日に出したのであります。
従つて、六月十八日の
通達の
本旨は、やはり二十一年の内務省
地方局長の通知を廃止するということが本体であ
つて、廃止する以上は、ただいま御
指摘になりましたように、個々の場合について、具体的に、この生活の本拠がどこにあるかということを判定をして
住所をきめるべきである、こういうふうなことを本文で
言つているのであります。ただ、その
あとに、ただいま御批判のございましたような
学資の問題、
学資の大半を郷里から仕送りを受けて休暇等に帰省する者の
住所は郷里にあるものと認められる。要するに郷里から
学資を受けているというのは、独立の生計を営んでいないということであります。そういうような者の
住所は郷里にあるのだ、こういう一つの例示を書いたわけでございます。その例示の中の
学資の大半という言葉が、非常に
学資ということだけを抜き出して
論議されまして、
学資の出どころで
住所がきまるのだ、こういうようなことが私
どもから申しますと少し誇大に
議論されたというふうに思いますので、その点は確かに誤解ではないかというふうに考えまして、私
どもは、また重ねて九月二十九日に通知を出しまして、その点を明らかにいたしたのでございます。従いまして、ただいま先生から御
指摘のございました
自治庁の
選挙部長の通知をも
つて裁判を動かすというような考えでは毛頭ございませんで、逆に裁判の制度の
趣旨を尊重いたし、
法律解釈ならば、これは最高裁判所の
決定を見るまでは最終的なものとは考えられませんけれ
ども、事実
認定の問題でございますから、これは仙台高等裁判所の判決でございましようとも、従来の考え方をそのまま踏襲した判決でございますので、むしろ戦後の異常の状態に発せられたあの内務省
地方局長の通牒をこの際廃止して、裁判の
趣旨に従
つた名簿調製の方式をとるべきであるというので出したのであります。