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1953-10-31 第17回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十月二十九日  森三樹二君が委員長に、大村清一君、鍛冶良作  君、綱島正興君、高瀬傳君、島上善五郎君、竹  谷源太郎君及び松永東君が理事に当選した。     ————————————— 昭和二十八年十月三十一日(土曜日)     午前十一時十八分開議  出席委員    委員長 森 三樹二君    理事 大村 清一君 理事 鍛冶 良作君    理事 田嶋 好文君 理事 高瀬  傳君    理事 島上善五郎君 理事 竹谷源太郎君    理事 松永  東君       羽田武嗣郎君    原 健三郎君       松山 義雄君    山中 貞則君       中嶋 太郎君    並木 芳雄君       石村 英雄君    加藤 鐐造君  出席政府委員         総理府事務官         (自治庁次長) 鈴木 俊一君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁選挙         部選挙課長)  佐久間 彊君         衆議院法制局参         事         (第一部長)  三浦 義男君     ————————————— 十月三十日  委員三輪壽壯君辞任につき、その補欠として加  藤鐐造君が議長の指名で委員に選任された。 同月三十一日  理事綱島正興君の補欠として田嶋好文君が理事  に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  修学のため寮、寄宿舎等に居住する学生生徒  等の住所認定に関する問題  連合審査会開会申入れの件     —————————————
  2. 森三樹二

    森委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたしますが、理事綱島正興君より理事を辞任いたしたいとの申出がありますので、これを許可することに御異議ありませんが。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 森三樹二

    森委員長 異議なきものと認め、これを許可いたします。  次に、理事補欠を選任いたさなければなりませんが、これは先例により委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 森三樹二

    森委員長 御異議なければ理事田嶋好文君を指名いたします。
  5. 森三樹二

    森委員長 次に、奄美群島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律案について、地方行政委員会連合審査会開会する点についてお諮りいたします。同法律案には衆議院議員選挙について暫定的に特例を設ける規定があります。本委員会調査事件と重大な関連がありますので、同法律案審査中の地方行政委員会連合審査会開会を申し入れることといたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。     〔「異一議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 森三樹二

    森委員長 御異議なしと認めます。よつてそのように決しました。
  7. 森三樹二

    森委員長 これより修学のため寮、寄宿舎等に居住している学生生徒住所認定に関する自治庁通達について質疑を許します。——会議が開かれましたので、一応休憩いたしまして、本会議が終了いたしましてから、当委員会を続行したいと思います。  暫時休憩いたします。     午前十一時三十一分休憩      ————◇—————     午前十一時四十三分開議
  8. 森三樹二

    森委員長 それでは休憩前に引続き会議を開きます。  自治庁通達問題についての質疑を許します。島上善五郎君。
  9. 島上善五郎

    島上委員 前回九月二十一日の当委員会において、学生選挙権に関する自治庁選挙部長通達、すなわち昭和二十八年六月十八日付の通達に対して質疑及び論議をいたしまして、その際私どもは、学生選挙権は当然修学地にあるべきものである、最も投票しやすい場所の修学地選挙権認むべきものであるというふうに考え、かつそれは在来そのように取扱つて来たことでありまするから、そうすべきものであるという見地から、自治庁通達は不当である、こういうことが委員会議論の大勢でございました。委員会最後動議を提出しまして、六月二十八日の自治庁選挙部長通達は撤回すべきものであるということが、多数によつて決定されたのであります。当然自治庁においては、この委員会決定を尊重しまして、取消しの通達を出すことを期待しておりましたが、その後九月二十九日に自治庁次長の名によつて出された通達を見ますと、取消してはいないのです。「世間にはあたかも専ら学資出所如何によつて住所認定が行われるやに誤解している向が極めて多いと思われるので、」ということで通達を出しておりますが、その趣旨においては六月二十八日の選挙部長通達を認めておる。こういうものでありますから、何ら選挙委員会における意思を尊重していない、こういうふうに解せざるを得ないわけであります。その後、この自治庁次長の二十九日の通達後、各地選挙管理委員会は一層取扱い混乱を来しておるという状況も聞いておりますので、自治庁は一体当委員会動議を尊重する御意思があるかどうか、それから九月二十九日に通達を出された趣旨を、私どもその簡単な文書だけではまだ十分に了解できませんので、この際あらためてここで御説明を願いたいと思います。それを伺つてからさらに質問を続けたいと思います。
  10. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 ただいま先般の当委員会修学中の学生選挙権の問題につきましての動議について、その後どういう措置をいたしたか、またそれを尊重する考えがあるかどうかということのお尋ねでございますが、先般当委員会で御議論のございました点等にかんがみまして、ただいま御指摘がございましたように、政府といたしましては去る六月十八日の選挙部長通達について、必ずしも通達真意が正しく一般に了解せられていないというふうに考えましたので、九月二十九日に次長名もちまして通達を出したのでございます。その通達趣旨は、ただいま御指摘のございましたように、六月十八日の選挙部長通達と根本の趣旨においては何らかわりはないのでございますが、ただ六月十八日の通達の中で、いかにもこの学生選挙権等学資出どころいかんによつてのみ事が決せられるように言われておりますので、それは通達真意ではない。通達真意は、居住地学生住所がある、下宿等に居住しておる者に対してはその居住地に当然住所があるんだという抽象的な、形式的なきめ方ではなくて、個々の場合について具体的に生活の本拠がどこにあるかを調査して認定すべきであるというふうに言つておりますその言葉がこの通達本旨でございますので、その本旨をさらに敷衍するような意味通達を出したのであります。学資だけでものを決することにならないようにしてほしい、こういう意味の本来の通達趣旨をさらに明らかに敷衍しよう、こういうことで出した次第であります。しかしながら、これは、現行法の解釈といたしましては、政府として六月十八日並びに九月二十九日に出しました通達のごとく解するほかないと考えておる次第でございすまが、その後いろいろ各方面で御論議もあつた次第でありますので、政府といたしましては、これをさらに立法的に解決をしていただくのにはどういうふうに解決をしていただくのがよろしいのであろうかということを考えまして、総理府に設置されておりまする選挙制度調査会を開きまして、それに先般この学生選挙権等につきましての諮問を発しまして、先月の二十一日その第一回の会合を開いたわけでございます。関係資料等を配付いたしまして、今関係委員の各位に鋭意研究を願つておる次第でございます。大体さようなふうに政府といたしましては処理いたしたい次第であります。
  11. 鍛冶良作

    鍛冶委員 議事進行について。今の島上君の質問に関連して委員長質問したい。今島上君は、何か九月二十一日に決議したと言われるが、私も出ておつたのだが、そんな決議はないと思うのだが、委員長決議ありという主張ですが。
  12. 森三樹二

    森委員長 委員長といたしては、当時の出席の率その他——私は採決いたしましたのですが、あの九月二十一日の動議に対しましては適法に成立したものと考えております。
  13. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それははなはだどうも……。私は委員会審議するのには定足数なくてやつていいと思うが、あのときは、決議するには全部賛成しても定足数はないのですよ。何か政党的のかけひきにやられてはたいへんだと思うから私は退席したので、残つた委員はたしか五名か六名だつたと思います。
  14. 森三樹二

    森委員長 退席はしておりません。可決されてから……。
  15. 鍛冶良作

    鍛冶委員 じようだん言つては困る。委員長、そういうことをやるならわれわれは退席するぞと言つておる。
  16. 島上善五郎

    島上委員 委員長……。
  17. 鍛冶良作

    鍛冶委員 ちよつと待ちたまえ、こつちの発言中だ。われわれそういうことをまじめに審議することはちつともかまわぬのですよ。これは重大な問題であるし、審議はもつと十分にしようじやないかというのに、無理やりにそんな決議をして押そうとされるなら、これは党利党略にこの委員会を用いられることになるから困る。われわれはこの審議についてはもつとまじめに研究してみたい。どういうことがいいものか、また事実上どういうことであるか……。
  18. 森三樹二

    森委員長 もちろん委員長といたしましては公平に、まじめに審議をして……。
  19. 鍛冶良作

    鍛冶委員 しかしその発言をしておるのにもかかわらず、人の発言を聞かずにむちやくちやに決議をするというのなら、われわれは退席をします——それで残つたのはたしか五名……。
  20. 森三樹二

    森委員長 高橋英吉君の発言を許して、しかる後に私は採決したのです。
  21. 鍛冶良作

    鍛冶委員 ぼくが発言を求めたのに君は聞き入れようとしないのですよ。
  22. 森三樹二

    森委員長 高橋英吉君をあなた方の代表の御意見と認めて、それが済んだから私は採決をいたしたのです。
  23. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そういうことじやこの委員会は困る。     〔「議事進行について」と呼ぶ者あり〕
  24. 森三樹二

    森委員長 順序としては島上君の発言を許します。
  25. 鍛冶良作

    鍛冶委員 ちよつと待ちたまえ
  26. 島上善五郎

    島上委員 ぼくは委員長の許可を得て、大体……。
  27. 鍛冶良作

    鍛冶委員 ちよつとぼくの言うことを聞きたまえ……。
  28. 島上善五郎

    島上委員 これからまじめに審議するということなら、これはもちろんけつこうですよ。しかしこの前の二十一日の審議もちろんまじめな審議で、委員会が成立してちやんと採決しているのですよ。採決したとしたら——採決を不成立にしようと思つて高橋君が立つて、この辺まで行つたが、しかし委員会は……。
  29. 鍛冶良作

    鍛冶委員 いや、ぼくらはそんなことをやるなら出るぞと言つたのです。
  30. 島上善五郎

    島上委員 速記録に載つている。委員会ちやんと成立している。そんなことを今成立しているとかなんとか言う必要はない。きようの委員会及び今後どうすればよいのかということをやればいいので、さかのぼつてこれを否定するということは断じて許さない。適法採決しておるのです。
  31. 鍛冶良作

    鍛冶委員 委員長はあの決議をどこまでも決議だと言われるなら、われわれは正式に決議にあらずという抗議を申し込みます。従つて私は、ここに政府委員に、さような決議のないことを宣言しておきます。その点御了承を願います。
  32. 並木芳雄

    並木委員 鍛冶さん、それは少しいきり立つておるようだけれども、この委員会は大体超党派で、実際穏やかに結論を出しておるわけなんで、実際ぼくはこの間現場にいて、多少あのやり方に無理があつたということは、これは率直に認める。少くとも最後採決をする前には、一応みな党へ帰つて、出れる者を全部そろえて満員にしてやるべきだとは、私も良識ある委員の一人ですから、感じはいたします。しかし、事柄の性質上あまりに急いだのと、決議は、私は自由党の方も、論議を尽したあとならば、もちろん結論的には賛成だと思うのです、もちろん政府を攻撃するとかなんとかいうことではなくて、ぼくらもそう思うので、もしそういう抗議が出たならば、一応速記録も調べていただいて——速記録に載つているわけなんですから……。私としては、これは希望なんですけれども、この間の委員会権威にかけて、あれは一応成立していたものと認めていただいて、今後は委員長運営において留意するということだけを一言述べていただいて、この間のはやはり委員会権威として、正当であつたというふうにしていただきたい。今の鍛冶さんの抗議は撤回していただきたい。そうして今後の運営において円満を期すということで行こうじやないですか。もしそれが違法だつたということになると、やつかいなことになりますから……。
  33. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そういうことを白紙に返して……。
  34. 並木芳雄

    並木委員 いや、白紙に返さないで……。多少運営に遺憾な点もあるけれども、今後は十分注意するということで行こうじやないですか、これは超党派的な委員会なんですから。ぼくはそれを提案いたします。(鍛冶委員反対」と呼ぶ)反対するなよ、当面の問題を解決するために。
  35. 大村清一

    大村委員 私はただいま問題になつております委員会に欠席をいたしましたから、発言権はないのでありますが、しかしあの取消すという趣旨が、住所いかんにかかわらず、学生寄宿舎なり下宿で登録すべしというようにあの決議があつたものといたしますと、これは法律に反する決議でありますから、私はそういう決議はないはずだと考えております。しかし、これについてはよく調べてここで発言しようと思いますが、遺憾ながらまだ速記録を私は入手するに至つていないのであります。願わくばひとつ早く速記録をおつくりになりまして、われわれ欠席した者も、どのような審議がなされたかということがわかるようにしてもらいたい。このことは私は委員長にお願いを申し上げておきたいと思います。
  36. 森三樹二

    森委員長 ただいまの大村さんの発言に対しまして、速記録を至急つくることにいたします。
  37. 並木芳雄

    並木委員 それは大村大人意見もわかりますが、野党、与党の対立する委員会じやないのだから、委員長がやつたことを認めてやろうじやないですか。私たちあなた方と反対立場をとつたけれども、多少遺憾な点があつたということは、認めているのですから——やはり私自身としてもこれは確かに認めます。その点は今後運営に円滑を期するということを委員長から一言言つてもらつて、この間はこの間で成立しておつたということにしていただけませんでしようか。そうお願いします。
  38. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これはひとつまじめに研究しましよう。今大村さんの言われたように、住所ということで選挙権があるということは、これは法律上動かぬことなんだから、問題は住所をどこに認めるかということなんです。そこで、学生が学校へ来ておる場合に、今居所であるからといつてただちに住所というわけには行かない。ところがまた、この決議のように、学費を送つて来ておるからということだけで住所がないということを認めるということは不穏当だ。だから慎重に住所を調べてやるというならよくわかる。学費を送つてもらつておるから住所がそこにないのだというきめ方も少々行き過ぎであると同時に、ここに今おるから必ずここに住所があるのだ、これはなおさらの行き過ぎだ。だからそういうことをよく実地において調べること、調べるについては、どういう材料を持つて行くかということがここできめるべき一番の焦点なんだ。それをもつと慎重に調べてやろうじやないか。学生はここにおつたらここにあるものとせい、そういう決議をすることは、今大村さんがおつしやつたように、やつてみたところが行われぬことですよ。だから、もつとまじめにここで研究しようじやないですか。
  39. 島上善五郎

    島上委員 ここでまじめに研究するということについては、私ももちろん同感であります。せんだつて動議は、六月十八日の自治庁選挙部長通達を撤回すべし、こういう動議なんです。そうしてこの疑義の問題は、この委員会において十分研究して結論を出そうということにおいては何らかわりない。つまり従前通り昭和二十一年五月二十二日の通達で、「修学のため寮、寄宿舎又は下宿等に居住している学生生徒の住居は、原則としてその寮、寄宿舎又は下宿等の所在地にあるものとする。」この通達在来つてつたのです。それに対して二十八日の通達が出たので、事態が非常に混乱しておる。疑義を起しておる。その混乱疑義を法的に十分検討して解決するという問題は残されておる。残されておるけれども、ひとまず自治庁選挙部長通達は撤回すべしというのがせんだつて動議趣旨であつて、残されている問題一切をその動議によつて解決しようというのではない。残されている問題はここで、今あなたが言うように十分検討しようというのです。
  40. 鍛冶良作

    鍛冶委員 撤回すれば、前の通りもどせというんだろう。
  41. 島上善五郎

    島上委員 そうです。
  42. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それがいけない。
  43. 並木芳雄

    並木委員 今鍛冶さんからお話があつたように、撤回すれば元へもどるには違いないけれども自治庁の意のあるところもわかるのだから、これは、われわれの一案としては、公職選挙法改正案として提案したらどうですかという案を持つておるのです。そういうようなことについて、ひとつ大いに話合いましよう。とりあえずあの自治庁通達は撤回していただきたい、こういう決議つた。それで、りくつを言うようになりますけれども、あの場合自由党退席して成立しなかつたとおつしやいますけれども、私たち自由党を除く委員の数の方が多いのですから、全部その数を集めて来れば、やはりあの決議が成立してしまうのです。(「それだけいなかつたじやないか」と呼ぶ者あり)あとから一時間も待てば成立してしまうのですから、そこはお互いに五分と五分で、論議を尽し切れなかつたということはわれわれも認めます。だからといつて、あの決議は無効であつたということは言われないようにしていただきたい。そしてただちに審議に入ろうじやないですか。
  44. 森三樹二

    森委員長 速記をやめてください。     〔速記中止
  45. 森三樹二

    森委員長 速記を始めてください。質疑を続行いたします。島上善五郎君。
  46. 島上善五郎

    島上委員 ただいま自治庁次長から、法律改正措置をとりたい、そのために選挙制度調査会に諮問しておるということでしたが、これは私ども考えるに早急を要すると思います。というのは、この選挙法第二十条にもありますように、毎年九月十五日現在で選挙資格調査し、十月三十一日、つまりきようまでに基本選挙人名簿調製しなければならない、こうなつておる。しかし二十五条では「十二月二十日をもつて確定する。」こうなつております。ですから十二月二十日の確定するまでの間にしませんと、来年の十二月二十日に確定するまでの間、この問題が未解決のまま残されるということになる。そういう意味において、私どもは、この問題は、早急に選挙制度調査会の答申を待つて政府から案が出されてから審議するというふうに、ゆつくりやるわけには行かぬと考えておりますので、そのことについては、あらためて当委員会において私ども相談したいと思つておりますが、いずれにしましても、この二十九日の再通達が誤解や疑問を解くという趣旨で出されたということでございますが、一層混迷状態に陥つておるような気がしておる。各地選挙管理委員会取扱いは実にまちまちです。それで、せんだつてどこかの新聞にもちよつと出ておりましたが、ある地方選挙管理委員会では、従前通りすなわち昭和二十一年五月二十二日の通達通りに扱うということの決定申合せをしておるというところもあるそうです。そういう状況をひとつ自治庁からお聞かせ願いたい。各地選挙管理委員会取扱い状況はどうなつておるかということをお聞きいたします。
  47. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 各地方におきまする選挙人名簿の実際の調製状況でございますが、これはそれぞれの市町村選挙管理委員会が直接の責任者といたしまして調製をいたしておるわけでございます。今日まで私どもの手元に参つております資料等によりますれば、先般の通牒の趣旨に従いまして、それぞれ調製をいたしておる。最近までその点について最後まで疑義を持つてつた鎌倉市の選挙管理委員会であります小、ここも、昨日の情報によりますと、通達趣旨従つて調製をするということに決定をした、こういうような連絡があつたのであります。その他の市町村選挙管理委員会におきましては、いろいろ新聞等に報道があつたようでございますけれども調製建前は、やはり自治庁が出しましたような通達趣旨従つておられるように私ども承知いたしております。ただ、あの通達趣旨をどういうふうに実際の名簿調製の上に具現するかというそう手段方法技術の点につきましては、これは各選挙管理委員会が最も自分が適当と考える方法をとつておられるわけでありまして、その方法の実現の上におきまして、あるいは若干、各市町村選挙管理委員会の間におきまして、結果として多少違つたところが出ておるというようなことがありはしないかと思いますけれども、しかし、これは何もこの問題についてだけの問題ではないわけでございまして、他のすべての住所決定名簿の登録の際におきまして若干そのようなことはあろうかと考えますが、建前は、先ほど来申し上げますように、自治庁の通知の趣旨従つて処理せられておるというふうに、私ども報告を得ておる次第でございます。
  48. 島上善五郎

    島上委員 自治庁は、通達を出した方の側ですから、その立場に非常にこだわつているようですが、私は今ここに正確な資料を持つておりませんから、その点に関する質問は留保して、あとでまた正確な材料を集めてもう一ぺん質問したいと思いますが、私どもの聞き及んでいるところによると、地方選挙管理委員会で非常に困つてしまう。今私が読み上げました昭和二十一年、つまり在来通り、六月十八日ですか、十八日の通達のある以前の取扱い通りつているところが大部分である、こういうことを聞いております。ですから、この問題についてはあとでまたあらためて資料を集めてからにして、質問は留保しておきます。たとえば、東京の文京区では、学生が全部調査に応ずることを拒否したというような例も聞いておる。これは、文京区ばかりではなく、ほかの方にも大分あるようです。そうしますと、調査を拒否すると、その学生に関しては、去年は選挙人名簿に登載されておつて、今日も現にそこにおるのに、その人が調査を拒否したという場合には、選挙権を失つてしまうのかどうかという点を伺いたい。
  49. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 調査につきましては、関係選挙管理委員会がカードを配付してその回答を求め、あるいははがきに所要事項を記載して回答を求めるというようなことをやつているところが多いと思うのでございますが、あるいは直接選挙管理委員会の書記が出向いて調査するというようなことをやつておるようなところもあるかと思います。いずれの場合におきましても、お話のように、その調査に対して回答に応じないというようなところも、事実若干はあろうかと考えておりますが、そういうところは、結局、関係選挙管理委員会といたしましては、あくまでも名簿職権調査でございますから、他のあらゆる手段方法を尽して真実を探求して住所決定するというほかはないわけでございまして、その方法を具体的にどういうふうにするかということは、それぞれ関係選挙管理委員会が処理しておることと思います。私ども聞いておりますことでは、たとえば寮とかアパートということでございますならば、そこの管理人からできるだけ実情を明らかにする、あるいは普通の個人下宿におる者でございますならば、そこの家庭の人から事柄を明らかにするというようなことで、真実をあくまでもとらえて調製をする、こういうのが建前であるわけであります。従いまして、具体的の場合にいかようになつておりますか、それぞれにつきましてでなければ具体的なことは申し上げられませんけれども、全体の建前としてはさようなことで処理せられておるものと考えておる次第でございます。
  50. 島上善五郎

    島上委員 これは各地で非常に問題を起しております。あなたの方にも報告が来ているはずだと思います。どうも都合の悪い分はここで答弁されないようですが、各地選挙管理委員会で困つておる。大部分がその調査を拒否されているという状況を私ども承知しておる。もちろん、調査を拒否されましても、昨年の選挙人名簿にも登載しており、現にその人間が今日もおるという場合には、選挙管理委員会においては、その者の選挙権名簿から抹消することはたいへんな問題ですからできないと思いますが、事実においては、今言つたような他の方法をとるか、あるいは現におる者に対しては昨年通り選挙人名簿に登載するという扱いをしておると思いますが、その間にもし遺漏があつて、当然認めらるべき選挙権が認められないというようなことになりますと、これは憲法で認めておる重大な権利を否定する結果にもなりますので、この点については、自治庁に対して、全国の選挙管理委員会調査状況やその結果を正確にしかも早急に集めまして、この法律によつて最終的に確定するまで、そういうような重大な遺漏がないような方法をはつきりとしていただきたいということを、私どもは強く希望する。それから、先ほど申しましたように、若干の資料を集めてからあらためて質問することを保留しておきます。この問題の是非の議論は、すでにこの前の委員会でしましたので、繰返してむし返すことはしませんが、この問題は非常に重大な問題であり、かつ早急に結論をつけなければならぬ問題であると考えておりますので、自治庁といたしましても、全国の管理委員会調査状況に対しては、早急にもつと的確な資料を集めて、少くとも憲法で保障されている選挙権を否定するというようなことがたとい一人であつてもないように、しつかりと処置していただきたいということを強く希望して、今申しました点を留保して、私はこれで終ります。
  51. 鍛冶良作

    鍛冶委員 われわれは、よほどこれは慎重にやらなければならぬと思う。今かりに九月二十九日の通達のようにせられたとしても、地方選挙管理委員会で実際にこれを把握することは困難ではないかと思うが、その点は関係当局でどうお考えになつておりますか。
  52. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 選挙人名簿調製する関係当局の者が具体的に各選挙人の住所認定することは、御指摘のごとく非常に重大な問題であり、かつむずかしい問題であると思うのであります。しかしこれは、ひとり学生に限らず、すべての長期不在者、その他何年となくそこに固定をして住んでおる以外の者で流動の多いような部分につきましては、いずれも同じような困難があるわけであります。その点に関しましては、先般も申し上げましたごとく、私ども、将来の問題として、住民登録制度をいま少しく明確にし、居所と住所を、両方にまたがつてあるような感じもいたしますので、両方にわけたいと思います。実際問題といたしまして、食糧の配給を受ける所がすなわち住所であるというようになつているような感じもいたしますので、戦争直後あるいは戦争中のように住所と居所がほとんど合一してしまつてつたような時代なら別でありますけれども、今日においてはやはりその点を明らかにいたす必要があると思います。従つて、住民登録の制度についてさらに改善を加え、さようなあかつきにおきましては、この選挙人の資格が住民登録を基礎にしてきめられるとか、あるいはその他の公法上の各種の住所の問題もすべて住民登録制度によつて実際上片がつくということができると思うのでございまして、何かそういうような点について今後改善ができはしないかと私ども考えております。ただ、具体的の今回の問題に関しましては、やはり学生の個々につきまして、選挙管理委員会といたしましても、かような世論をかもした問題でもございますので、相当慎重に事に当つており、決して軽々に処理はいたしていないというふうに私ども報告も受けておりまするし、さような結果にもなつておるというふうに考えておるのであります。
  53. 鍛冶良作

    鍛冶委員 この前も私は言つたのですが、今言われた住民登録の場合、居所と住所を区別して、かりに居所が相当長きにわたつてつてつて住所が移らぬという者があれば、それはどういうふうにしておるか御承知ありませんか。住民登録にあたつて……。
  54. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 これは住民登録法自体の建前から申しますれば、今御指摘のように、住所を離れて相当長く他に居所を持つておるという者は、やはり住所に登録すべきが本筋であろうと思いますが、しかし長期にわたつて他に居所を持つておりますれば、結局食糧配給はそこで受けなければならぬというふうなことで、やはりその居所のところに住民として登録せられておるといつたような事例があるいは若干ありはしないかというように、私どもはこれはそんたくいたしておるのでございます。
  55. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これはいろいろな場合が考えられるが、配給の点は、どうも住民登録がないと配給せないのじやありませんか。それで、住所はないが、居所があるとして配給を受けておりますか。これはあなた方でわからなければしかたがないが、この点はいかがです。
  56. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 これは配給が他省所管でございますので、私ども的確なことを申し上げかねますが、居所でも、あるいは長期の旅行者というふうな者でも、そこで配給を受けることができるという建前になつておるわけでございます。
  57. 鍛冶良作

    鍛冶委員 今ちよつとその辺で議論が出ましたが、二百七十条のようなものを規定しておく——これは当然のことを当然に書いたんだが、こういう規定を設けると非常に選挙権が制限されると思います。そこで私が聞きたいのは、病院に長く入つておる——一番いい例は結核患者だ。これは二年、三年と入つておる。そういう場合には、住民登録には登録させずに、配給だけしておるということになつているか、いかがですか。
  58. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 これはやはり、現在の住民登録制度の建前から申しますると、住民登録はいたさないで配給だけ受けるという建前になつておりますから、さようなことになつておるのではないかと考えております。
  59. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そこでこれは、この前変更したときに、投票の方法として、病院に長くおつてもそこに住所がない、住所がないとすれば、そこに選挙権がないということに規定したわけであります。ところが、この前の選挙法の改正のときに、病院に特別の投票区を設けて、そうしてそこで投票させる、そうすれば一票でも多く選挙権の行使ができるということで改めたのです。それを覚えておるのだが、こうなりますと、せつかくそういうものを設けても、これは選挙権はそこにないということが、法律二百七十条で決定したのですから、そうすると、選挙権がない者がおもになつてしまう。ところが、病人だと、村へ帰れる者はよろしいが、動けぬ病人だつたとすれば、おのずからそこで選挙権の行使ができないことになつておると思うが、この点は実情はどうですか。それは非常な制限になると思う。
  60. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 今の病院におります者の選挙権の行使でございますが、これは、大きな病院等は、病院長が不在者投票の特別投票の管理者になりまして、そこで投票をさせる、そうしてそれをそれぞれ所属の投票区に送致する、こういうふうなかつこうになつておるわけでございます。
  61. 鍛冶良作

    鍛冶委員 せつかくああいうものをこしらえたけれども、その病院のある市町村選挙権を持つておる者でなかつたら、そこで投票できないわけですね。そうすると、よその町村でうちへ帰ることのできない病人だつたら、おのずから選挙権の行使はできないということになつておると思いますが、それは間違いないわけですか。もつとも、不在投票で郵便ででも送ればこれは別ですが、やはりそういうことになつておりますか。
  62. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 御指摘のようになつております。
  63. 鍛冶良作

    鍛冶委員 もう一つ、住民登録について、所轄以外だが、おわかりなら聞きたいのは、学生諸君が東京へ来ておりますというと、住民登録は大体どういうことになつておるか、御承知ありませんか。元のところに住所があるとして、住民登録では向うの登録にしておりますか、それともこつちへ住所が移つたとして、こつちの住民登録に載つておるか、その点は御承知ありませんか。
  64. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 その点は、おそらく住民登録制度の建前といたしましては、選挙人の要件である住所というものと合一することを建前としておりまするから、従つて今日まで、学生に対して、現在居住しておる居所であろうと、居住しておるところに選挙権を認めるという建前になつておりますので、従つてその趣旨では、それぞれのところにそれぞれの今現住しておりまする居住地の住民登録に登録いたしておるというふうに、建前はなつておるわけであります。実際はどのようになつておりますか、明らかにいたしておりませんが、建前ばさようになつておると考えます。
  65. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 御指摘の点につきましては、住民登録法にいいます住所と、公職選挙法に申します住所と、本来は一致すべき建前だということであります。住所につきまして問題が起りました場合には、法務省の担当の部局と私どもの方で解釈の統一をはかつております。それで、六月十八日の通達が出ます前に、昭和一十一年の地方局長通牒によりまして、選挙人名簿住所認定いたしておつたのでございますが、根本となる住民登録は、発足当時にはその扱いで住民登録をいたしておりました。従いまして現在までのところは、修学区のところに住所ありとして登録いたしております。ただ今回の自治庁通達が出ました際に、なおまた民事局の方と解釈の統一につきまして協議をいたしまして、民事局の方でも、自治庁通達と同様の趣旨通達を地方法務局に出しております。従いまして、現在まだ過渡期でありますから、選挙人名簿と住民登録と一致しない部分があると思いますが、現在一致させて、今度の通達通り住所の認知、登録をするように向うの方も努力をいたしております。
  66. 鍛冶良作

    鍛冶委員 われわれは、住民登録と選挙権と一致させるために、今度選挙法の改正で、住民登録に基いて決定するものということに改めようという考えを持つておる。それがどうもぐれて来ると根本までぐれて来るので、あなた方の方で住民登録をするときに、もう少し選挙法の改正のことも十分考えてやられぬと、市町村によつてはあべこべになつたりいろいろになりますから、まず住民登録というものは、住所のない者は住民登録する必要はない、かえる必要はない。この点からやることが根本だと思われますが、単に通達ぐらいでなく、もつと地方の実際において指導し、実際において調べる基準ぐらいを、法務省とあなたの方と両方で一致したものをこしらえてやられぬと、これは非常な迷いが出ると思いますが、その点はどうですか。
  67. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 住所の問題は、選挙権もちろん最も重要な問題の一つでございますけれども地方自治体の住民として地方自治体を構成しております住民は、同時に納税の義務もあるわけでありまして、そういう意味で、たとえば市町村税を納めるという場合には、どこに住所があるかということがその基本になつておるわけであります。そういう関係地方自治という点から申しますと、その地方団体における市町村長、あるいは地方議会の議員の選挙権とその市町村民税を納める納税義務というものは、表裏、うらはらをなす問題であると思います。国会議員の選挙権も、選挙権という意味では地方議会の選挙権と同じでありますけれども、性質から申せば、国会議員の選挙権というものは、およそ日本国民であれば、どこに住んでおろうと、あるいは日本国内に住んでなくても、外国におりましても、選挙権を与えるというのが筋であろうと思います。そこがやはり地方自治という立場からの地方選挙権、あるいは地方の納税義務を生ずる場合の住民としての地位というものと、性格上はやはり若干の違いがあろうと思うのでありまして、公職選挙法として一本に統合せられる前は、市制、町村制と、衆議院議員選挙法律というふうにわかれておつたのでありますが、その時代の名簿の登録の方法といたしましては、衆議院の方は名簿登録要件として六箇月住居期間が必要でありましたけれども地方の市制、町村制という制度におきましては、これは本来そこに六箇月住んでおることが選挙権行使の要件であつたわけであります。ですから、名簿に載る、載らないということについて六箇月必要であるということでなく、およそ地方の住民と自治に参与するためには六箇月現実に住むことが要件であるということで、やはりそこに、国の選挙地方選挙とでは、法制の上からも若干違いがあつたわけでありますが、今回と言いますか、公職選挙法に統一せられました関係で、名簿登録の居住要件と申しますか、それがすべて同じような形に統一せられましたものですから、その辺は若干感じが違つて来ておると思うのであります。しかし、私どもといたしましては、理論はさようになつて、国の選挙地方選挙とは若干違いますけれども選挙執行の技術、あるいは投票せられます人たちの便利から申しますれば、やはり一箇所でやるということの方が便利であろうと考えますので、住民登録制度というものは、そういう意味から、結局公法上の住所はすべて一ところにして、そこに登録をして、それを基本にしてすべて行政を運営する、こういう建前からできておるものだろうと思うのでありまして、その点、ただいま御指摘がございましたように、住民登録制度が、ほんとうに住所というものを適確に登録をするというふうに、現実に運営がなつて来るということでありますならば、これは地方選挙権あるいは地方の納税義務判定のための住所というものも、国会議員の選挙の基本になる住所というものも、みな同じくそこに基かしめることができる、こう思うのであります。ただ、今日の実情におきましては、そういうことが制度の建前になり理想にはなつておりますけれども、どうもまだそこまで行つていないのではないかというふうに私ども観察しておるのであります。これをできるだけすみやかに、実態に即するようにし、すべてそれを基礎にして選挙をするというふうに進むべきであろうと考えております。
  68. 鍛冶良作

    鍛冶委員 この点は次会に民事局長あるいは係の課長を呼んではつきりしておいてもらいたいと思います。
  69. 森三樹二

  70. 松永東

    松永(東)委員 ちよつと一、二点お伺いしたいのですが、一体今度出された通牒、すなわち二十八年六月十八日の通牒と判決との関係はどうなるかということであります。こういう通牒が出されて、その後裁判をなすべき判決がこの通牒に左右されるものであるかどうか。すなわち、法律でない一片の通牒が裁判所を動かすだけの力を持つておるとお考えになつておるかどうか、こういうことが第一点。私は動かすことはできぬと思う。住所という解釈は裁判所が自由に認定すべきものであつて、われわれの住所というものは、一片の通牒があつたからと言つて、それに左右されることはないと思う。戦後はその解釈かどうかわつたか知りませんが、われわれの今日までの法律上の住所としての常識は、一定の期間常住している、起臥している、生活の本拠がある、これが住所でなければならない。そこで、どこから仕送りを受けているとかなんとかいうことは、そんなことは問題になろうはずはない。それは郷里から仕送りを受けてやつているから、そういうものは郷里に住所があるのだと言う。ところが、郷里からでなくて、他府県の親戚から仕送りを受けているのは一体どこに住所を置くべきか、そしてまたその仕送りを受けているという認定はだれがするのですか、そういうことが非常にめんどうになる。ぼくはまことにまぎらわしい通牒だと思う。そこで、先ほど各党の代表と言つては語弊があるかもしれないが、各党の方々から、これは一旦撤回してやり直して、御破算で新たに研究しようじやないかという御説が出るのはまことにごもつともだ。ですからその点をまずあらかじめ承つておきたい。第一に裁判との関係について……。
  71. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 ただいまお尋ねの点は実は問題が逆でございまして、実は、先般仙臺の高等裁判所で、自治庁と申しますか、前の内務省地方局長名をもつて出しておりました、いわば一片の通牒による住所の解釈の認定をくつがえされたわけであります。これは仙臺の高等裁判所で、ちようど今問題になつております学生選挙権の問題につきまして、たしか事件といたしましては二件案件がございまして、そこでは下級の選挙管理委員会決定採決といつたような段階を経て参りましたいわば事実認定につきましての高等裁判所の最終の決定と見るべきであろうと思のでありますが、青森の五戸町から仙臺に遊学をしておりました学生選挙権につきまして、これは、仙臺に住所があるのではなくて、その者の郷里の五戸町に選挙権があるという判決をしたのであります。これは、五戸町からたしか仙臺の東北大学かに入学をしておりました学生が、四月たまたま郷里に帰つておりまして、五戸町の町会議員の選挙に参加をいたしたのであります。ところが、それに対しまして、五戸町の町会議員の選挙に参加しても、それは住所がないから無効である、そういう当選訴訟、異議の申立てがありまして、それをくつがえしまして、結局、仙臺の高等裁判所におきましては、やはり両親のもとに休暇ごとに帰つてつて、そして両親から独立して生計を営んでいるとは認められない者の住所は、大学校の所在地である乙市において寮生活をしておつても、その者の住所はなお自分の郷里の町にあると解すべきであるという判決をしたのであります。こういう判決がございましたものですから、そこで従来地方局長の通牒で出ておりましたものを撤回をして廃止をいたしまして、そのかわりに判決の趣旨に従つた通達を六月十八日に出したのであります。従つて、六月十八日の通達本旨は、やはり二十一年の内務省地方局長の通知を廃止するということが本体であつて、廃止する以上は、ただいま御指摘になりましたように、個々の場合について、具体的に、この生活の本拠がどこにあるかということを判定をして住所をきめるべきである、こういうふうなことを本文で言つているのであります。ただ、そのあとに、ただいま御批判のございましたような学資の問題、学資の大半を郷里から仕送りを受けて休暇等に帰省する者の住所は郷里にあるものと認められる。要するに郷里から学資を受けているというのは、独立の生計を営んでいないということであります。そういうような者の住所は郷里にあるのだ、こういう一つの例示を書いたわけでございます。その例示の中の学資の大半という言葉が、非常に学資ということだけを抜き出して論議されまして、学資の出どころで住所がきまるのだ、こういうようなことが私どもから申しますと少し誇大に議論されたというふうに思いますので、その点は確かに誤解ではないかというふうに考えまして、私どもは、また重ねて九月二十九日に通知を出しまして、その点を明らかにいたしたのでございます。従いまして、ただいま先生から御指摘のございました自治庁選挙部長の通知をもつて裁判を動かすというような考えでは毛頭ございませんで、逆に裁判の制度の趣旨を尊重いたし、法律解釈ならば、これは最高裁判所の決定を見るまでは最終的なものとは考えられませんけれども、事実認定の問題でございますから、これは仙台高等裁判所の判決でございましようとも、従来の考え方をそのまま踏襲した判決でございますので、むしろ戦後の異常の状態に発せられたあの内務省地方局長の通牒をこの際廃止して、裁判の趣旨に従つた名簿調製の方式をとるべきであるというので出したのであります。
  72. 松永東

    松永(東)委員 よくわかりました。出されるまでの経緯はよくわかりましたが、どうでしようか、この通牒に言た反するような判決をどこかの裁判所でやらぬとも限らぬと思いますが、そういう場合にはどうしますか。最高裁判所が全国の裁判所の指針たるべきような判決を下したらどうなるか。そうでない限りにおいては、やはりこれは、裁判所の自由な認定によつて住所認定でこの通牒と違つたような判決を下さぬとも限らない。これを法制化して、住所とは公職選挙法においてはかくかくのごとく認定するのだというりつぱな法律でもおつくりになれば別ですけれども、ただ通牒だけではそうは行かぬと思いますが、この点はどうでしようか。
  73. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 今回のこの通牒は、要するに仙臺高等裁判所の判決の趣旨をそのまま受けたというようにお考えいただいてもいいと思うのですが、仙臺高等裁判所の判決と違つたまた別の判決を他の高等裁判所等において行うというようなことも、またこれは御指摘のようにないとは申しがたいと思います。それがやはりどうも行政の問題としてはいかんともなしがたいわけでございまして、立法によつて行政、司法両者の御調節を願うほかはないというように考えるのでございます。
  74. 並木芳雄

    並木委員 ちよつと今の鈴木さんの説明を聞いている間に気がついたのですけれども、仙臺の高等裁判所の判決をしんしやくして今度の通達を出されたとなると、問題が残ると思うのです。というのは、今までの通達が無効であつたということになりませんか。そうとすると、昭和二十一年でしたか二年でしたか、五月からのあれが無効になると非常な混乱を招くおそれがあると思うのですが、その点はいかかですか。
  75. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 昭和二十一年の内務省地方局長の通牒というのは、これは当時の社会状態において、先ほど申し上げましたように、居所と住所がおおむね合一しておつたような当時の状態におきましては、やはり客観的な現実性を持つてつたと私ども思うのでありますが、今日におきましては、だんだんその事実がその通達とはずれて参りまして、居所、住所というものがおのずからはつきりとして来たのではないか。あのころは、焼け出されて、とにかく行きつく所がその者の居所であり、同時に住所であるといつたような状態、あるいは引揚げて来る者が次々とございまして、おる所がすなわち住所であるというようなことで、公職選挙法の中にも、引揚者については何か特別の規定を御規定になつておるようでありまして、非常に住所とか居所の認定というものがむずかしゆうございましたし、事実また居所と住所というものが合一しておつたというのが実情であつたと思うのであります。従いまして、そういう時代におきましては、あの内務省地方局長の通知はむしろ今回の解釈よりもより実際に即しておつたと思うのであります。しかし、今日におきましては、仙臺高等裁判所の判決の趣旨にございますようなことが、やはりある程度現実性を持つて来ておるのではないかというふうにも考え得るのであります。しかし、私どもは、これは現行法の解釈として、どうもこの高等裁判所の判決あるいはその他の規定等から考えまして、そのように解釈するよりほかないと存じておるのでございますが、立法的な解決方法といたしましては、またおのずから全体を通じまして、いかにすれば最も選挙投票にも便利であるか、実際にも支障がないかということを、努力して研究すべきであるというふうに考えておるのであります。
  76. 並木芳雄

    並木委員 今の答弁では、私が聞こうといたしましたことにちよつとそれておりますが、要するに過去にさかのぼつて無効になるおそれはないかということが私の聞きたいことなんです。そういうことが全然なければいいのですが、あつたらたいへんですから………。
  77. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 私が申し上げましたのは、あの内務省地方局長の通知の趣旨に基いて処理いたしました今日までの選挙の執行というものは、あの通知が実情に即しておつて従つてそこに違法性がない、こういうことであれば当然に選挙は無効にならぬと考えます。ただ、今日までの問題といたしまして、かりに局長の通達が違法性があつたといたしましても、選挙訴訟と当選訴訟のそれぞれの出訴期間というものは三十日と規定されておるわけでございますから、これをいまさら無効ということでひつくり返す方法法律上ないわけでありまして、確定しているということが言い得ると思うのであります。
  78. 並木芳雄

    並木委員 そこまで確信がついておればいいわけです。それをどうしても確かめなければならないので一応質問したわけです。それで今後のことですが、通達を出しておるから問題が起る。私どもは必ずしも通達の内容、趣旨というものを尊重しないわけではないのです。従つて、内容についてはわからないわけではありませんが、ただ、国会が開かれておる最中にもかかわらず、通達をもつてこれを行つちやつた。しかも、先ほど鍛冶委員から御指摘のあつたように、両院の場合にははつきり公職選挙法の中の法律として特別規定ができたわけですが、それと並んで提案してほしかつたとわれわれは考えるわけです。十分論議を尽してやれば、おそらく今度のような混乱は防げたと思うのでありまして、これは今からでもおそくはない。ずいぶんおそいことはおそいのですが、おそくはないので、ぜひひとつ公職選挙法改正案として出してもらいたい。そうすれば十分論議をして混乱を防ぐようにしたいと思うのですが、その御意思があるかどうか。
  79. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 私どもといたしましても、先般申し上げましたように、選挙制度調査会を開きまして、この問題についていかに立法的に解決するかという案をただいま答申を求めておる際でございます。従いまして、その答申が出ますれば、その答申の趣旨に従いまして、政府といたしましては、でき得ますればなお選挙法改正案として提案いたしたいと考えております。従いまして私どもも、あるいは当初から立法をお願いし、立法的解決をお願いした方がよろしかつたかもしれませんけれども、事ここに至りましたので、政府といたしましては、とにかく選挙制度調査会に諮問をし、その結論を早急に求めておるのであります。従つて、できるだけすみやかに、次の国会等の際に提案することができはしないかと考えておる次第でございます。
  80. 並木芳雄

    並木委員 そこまでわかつて来れば、私は結論が割に近いと思うのです。私どもはこの問題ではそんなに政府の責任を追究するようなことはしたくない。金丸さんのごときは首になるのではないかと心配しておるのですが、そういう意味では毛頭ないので、これひとえに基本的人権たる投票権を有効に使つてもらいたい、こういう観念から議論というものは出ているのです。従つて、従来の面子というものもここで気にかけずに、一応この前出した通達というものは一切保留、そして従来通り。できるだけ早く国会の審議にかけるからというので、そこは頭のいい鈴木さんあたりがうまい文章でもつくつて、従来通りということにしておいて、そうして国会にかけるということができませんか。それができると私は簡単だと思うのです。
  81. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 先般の六月十八日、九月二十九日の通知は、これは私ども、判例その他から考えまして、やはりかような解釈をするほかないというふうな考え方をとつております。従いまして、先ほど申し上げましたのは、これを立法的に解決をすることでございますならば、必ずしもかような方式によつて調製をしなければならぬということにはならぬわけでありますから、そういう意味で立法的に解決をお願いしたいというふうに考えているのであります。このいわゆる長期不在者は、学生のみならず、保安官あるいは出かせぎの人たち、あるいは病院に入つている人もそうでございましようが、そういうようないわゆる長期不在者につきまして、いかに統一的に住所認定をいたし、甲の者と乙の者との間において不平等の取扱いがないようにするという憲法第四十四条の選挙人資格の条件に合致するというような方式として、どういう方式が最も適当であるかということを探求をし、それを立法化するということが適当なのではないかというふうに私ども考えているのであります。しかし、それをどういうふうに処理いたすかということにつきましては、選挙制度調査会には各方面の代表者の方々、ことに学生選挙権の問題でございますから、大学の総長の方々にも参加していただいておりますので、適切なる答申が得られるものと考えている次第であります。
  82. 高瀬傳

    高瀬委員 私はちよつと角度をかえて伺いたいのですが、こういう自治庁選挙部長から各都道府県の選挙管理委員会委員長に出した通達などは、結局来年度選挙人名簿を適当に調製する、こういう目的で出したわけなんですね。そうすると、特にその中でこれが問題になるのは、どういうわけで学生諸君が問題にしたのか、私もその点は結論がはつきりしておりませんからわかりませんけれども、いろいろ自治庁次長鈴木さんだのあるいは選挙部長通達を見ますと、その中にこんなことが書いてあるのです。「学生生徒住所も一般選挙人と同様にその生活の本拠と認めらるべき場所にあるとすべしとの趣旨であつて、貴委員会においては、勿論万遺漏なきを期せられているごとと信ずるが」云々、それから片一方には、「次に、一部には、この通達によつて学生生徒がその選挙権行使について持に一般人より不利な取扱いを受け、選挙権の行使が不能となるようにいわれているが、そうではなく、学生生徒についてむしろ一般人に比し、特別に便宜な取扱いをしていたのを、一般の有権者なみの取扱いに復することとしたにすぎないのである。」こういうことを言つておられるわけです。そこで、私が非常に疑問に思うのは、一体学生というのは親のすねかじりである、と言うとあそこにいる諸君に当ることになるかもしれませんが、まあそんなものなのです。私も大学生の子供を持つているが、それは結局、どつちかというと、社会人として法律的には二十幾つかになれば一人前の取扱いを受けるでしようが、まあ中途半端な存在なんです。そこで結局この中途半端な存在の諸君に、いろいろな点で、たとえば民法二十一条の定義に住所というものは各人の生活の本拠だというが、学生はやはり親のすねかじりだから、そう生活の本拠と言つたつて、アルバイトをしてかせいでいるのは、自分で金をとつているのだから、そこが生活の本拠だ、寄宿舎で親から送金を受けているのは親のすねかじりである、こういうことにも行かぬと思うのです。そこで、この趣旨の中に入つていることで特に私が注意を喚起したいのは、むしろ一般人に比し特別に便宜な取扱い学生が受けておつたのを、一般の有権者並の取扱いに復すると言いましても、一般有権者並に学生を一体取扱うことができるのかどうか。私は、選挙権の行使そのものについては、もし選挙権を与えれば、学生諸君は、一般の有権者並に、独立の生計を営んでちやんとした住居を持つている人と同じように選挙権の行使はできるでしようが、一体その学生諸君を一般の有権者並に取扱うということがはたして妥当かどうか。私は選挙権の行使についてはいいのですが、その認定の場合に一体そういうことができるのかどうか、私は非常に疑問に思う。そこで六月十八日の通達にある「個々の場合につき具体的に生活の本拠がどこにあるかを調査して認定すべきものである。」と書いてありますが、こういうことをやるとすると、非常に手数がかかつて、とうてい明年度の選挙人名簿調製に着手する時期までに改正なんかできないと思う。だから私は、そこの点をひとつはつきりと伺つておきたい。私は、この学生選挙法の改正については、まだはつきり結論は持つておりませんけれども、非常にそういう点疑義に思うのです。
  83. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 学生住所決定の原則とその他の選挙人の住所決定の原則とを、同一にしたと言いますか、同じような取扱いにしたということが、実は六月十八日の通達趣旨であります。と申しますことは、学生とは寮とか寄宿舎住所があるものと推定する、こういうことになつているわけでございますが、たとえば病院とか療養所に入つております者につきましては、これは法律の上で、明らかに、入院加療中の場所にその住所があるものと推定してはならない、こう書いてあるわけです。これはまるで逆のことが規定をされているわけでございますが、しかし実態は、学生も二年三年郷里を離れまして遊学地にある。病院とか結核療養所等に入つている君たちも、やはり同様に二年なり三年そこを離れて病院にいるという、長期不在者の点においては同じわけであります。従つて、そういう意味では、やはり同じように住所がきめられなければならぬと思うのであります。それからまた、たとえば保安隊に入つております保安官あるいは警備官というようなものにつきましても、これは家族は郷里なりあるいは近郊の町にある、しかし本人は営内居住で保安隊がある所にいるというような場合においては、どこに住所があるかと判定をいたしますれば、これはやはり家族がいる営外の隣の町にある、こういうのが現在の扱いでございます。これは税金の上でもそういうような扱いをしているわけであります。ことに、たとえば北海道の千歳町といつたような保安隊が非常にたくさんありますようなところでは、やはりそれぞれの郷里に家族を置いている。そして郷里の人にそこでもらつた金を送つている。学生とは逆に、仕送りをしている。そういうようなものにつきましては、やはりこれはそういう郷里に住所があるというように判断して、今そういう扱いにいたしているわけであります。ただ、ひとりこの学生につきましてだけ遊学地にあるというのが今日までの解釈であつたわけでありますが、それにつきまして仙臺の判例等がございまして、最後に残されたこの扱いを変更して一般の住所決定の原則に従う、こういうのが今回のいきさつでございます。そういう点が若干言葉の上では荒く現われているものと思いますけれども、今御指摘になりましたような通知の上に出ているのであります。しからば、そういうように個個具体的に生活の本拠がどこにあるかというようにしてものをきめるということになると、非常にめんどうで、やれるかどうかというようなことでございますか、これはしかし今日までそういう原則で住所決定をいたして来ているわけでございますから、各種の裁判所の判例、行政実例あるいは行政判例といつたようなもので積み重ねられた住所決定の原則というものが、今日おのずからあるわけでございます。そういうものできめて行く、こういうことに相なるわけでございます。
  84. 高瀬傳

    高瀬委員 それから、何か「日本民法論」吉田久君著総則編に「学生が、学校の所在地に下宿し、囚人が刑務所に生活してもその下宿屋若しくは刑務所は住所とならない。」こういうのがあるらしいのですな。そこで以上のようなことをずつとやつて行きますと、以上の判例、学説等より見ても、学生生徒修学のため寮、寄宿舎または下宿等に居住しているのは、寄寓であつて、転々する場合が多、家族との総合的な法律関係においては、家族のいる所にその住所があると見る方が自然であり、修学のためにいる所に生活の本拠があるとするのは当らない場合が多い、こういうことを言つておられるわけですね。そうすると、ここにある昭和二十一年五月二十二日の地方自治庁発乙第二五七号各地方長官宛地方局長通達は廃止すると書いてありますが、その廃止する内容は一、二と二つあるわけですね。そうすると、この一の方は別に廃止しなくてもいいと私は思う。たとえば、読んで見ますが、「寮、寄宿舎又は下宿等に居住している学生生徒で、その学資の大半を郷里から仕送りを受け、休暇等に帰省する者の住所は、郷里にあると認められる。」これは何も廃止する必要はないじやないですか。これでかまわぬですよ。全然これでいいと思うのです。おかしいと思うのです。それからその次だつて、私はそういうりくつから言えば、このままでいいと思うのですが、どうですか。
  85. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 今の御指摘の点ですが、二十一年の地方局長通牒は、修学地住所があるというふうにいたしておつたわけですから、それを廃止してそれぞれの生活の本拠で選挙権を行使せしめるべきである、こういうふうにいたしたわけでございますが、今のいろいろの外国の立法例等を見ましても、英米関係では、やはり、同様な場合には、郷里において、たとえば入学直前に投票のための住所があつた所にあるとみなされる、そういつたような立法例が若干あるようでございます。これは、建前といたしましては、国会議員の選挙権を基本にいたしまして、それならどこでやつても日本国民であれば一番便利な所でやらしたらいいじやないか、こういう議論ができるのは当然だと思います。それと、一方地方自治という建前から行きます場合の選挙権というようなものになりますと、やはりそこに少し違つた点が若干出て来ると思うのでございまして、世上でいろいろ御議論されまする点は、主としてさような国会議員の選挙権のみを考えて、そちらの点に重点を置いてお考えになつておるのではないかと私ども考えるのであります。私どもといたしましては、やはり全体の選挙権でありますから、両方の要求を加味し、調整をいたしまして、どこで選挙権を行使せしめるのか、ひとり学生だけではなくて、すべての種類の選挙人に対して最も便利であるか、最も公平であるかというふうに考えるべきではないかと考えております。
  86. 高瀬傳

    高瀬委員 特にこの二番目の「寮、寄宿舎又は下宿等に居住している学生生徒でその居住地において主として自己の収入によつて生計を維持している者の住所は、」云々とありますが、これなどは、やはり今で言うアルバイトなんかをやつておる学生だと思う。そうすると、アルバイトだつて、完全に自分で、親なんかかまわずに、全部生計の基礎をアルバイトによつて得ておるという学生もありましようし、その半分しか持つてないのもあると思うのです。こういう点の定義が非常にむずかしくなりますし、もちろん私どもは、この学生選挙権の行使を学生諸君はどう考えておるかわかりません。おそらく衆議院議員選挙で自分たちの支持する社会党の諸君とか、あるいはわれわれを出してやろうというのかもしれません。それは知りませんけれども、総選挙ばかりではありません。確かに今鈴木さんが言われたように、市町村長の選挙もあれば、その他府県会の選挙もあれば、リコールもあれば、いろいろあるのです。裁判官のあれもあるでしよう。だからわれわれは単に衆議院の選挙だけを中心に考えておるのではないですが、あまり学生選挙権についてめんどうくさくして、そうしてこうい問題をいろいろ社会的に、あるいは共産党の連中のアジテーシヨンに利用されたりすることのないように、私どもはよくやりたいと思う。結論は私まだ出ておりませんが、一応そういう点もわれわれは積重に対処して考えておるということを申し述べて、私は質問を終ります。
  87. 並木芳雄

    並木委員 一点確かめておきます。私は、選挙の本質から言つて、これをどういうふうに改正するかということは、本人の意思を尊重するというのがいいんじやないかと思うのです。これは住所、居所ということで、いろいろ学説さえわかれておるくらいですから、今後、単に学生のみならず、あらゆる階層の有権者に対して、本人の意思がどこで投票することがいいという表明ができた場合に、それをいれてやることが一番選挙法趣旨に合つて行くと思います。  そこでお伺いしたいのですが、そういう場合が出て来たとして、学生の申告によつて、郷里であろうと現在寄留しておるところの居所であろうと、どちらでもいいという立法ができた場合に、当局としてその手続上非常に困るようなことはありませんかどうか。ちつともさしつかえありませんか。
  88. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 住所につきまして、本人の意思のみによつてどこにきめるかを定めるということは、やはり客観的事実として、はたしてそこに住所があるかどうかということが、今日住所決定の法令、学説等の大体主たる傾向になつておるように思うのであります。かりに本人の意思というものを材料として見ます場合におきましても、それらの客観的事実の一つとして見る。やはり具体的に生活がそこで行われておるかどうか、そこに実際の住まいがあるかどうか、ことに衆議院の選挙権等につきましては、住所でなく、住居といつたような具体的の住まいということまでかつては要件であつたわけでございますが、とにかく、客観的事実として生活の本拠と認められるべきものがあるかどうかということで、すべて制度の上で住所というものを定めておりますので、もしお話のように本人の意思のみによつて住所をきめるということになると、相当いろいろの点において影響を及ぼして来るのではないか。ことに、地方自治制の関係におきましては、その点相当やはり影響が大きいのではないか、国会議員の選挙につきましては、御指摘のように必ずしも住所においてのみ選挙権を行使せしめなければならないということはないわけで、一番便利なところで行わしめるということが、りくつからだけ申せば言えると思うのであります。ただ、それと、実際の選挙人自体の便宜と、いま一つは選挙執行、あるいは選挙法の運動といいますか、そういう選挙人以外の選挙関係する部面の便宜というものとか、両方を考えていただきたいと思うのであります。大体さように考えております。
  89. 並木芳雄

    並木委員 その点を具体的に……。学生の場合に、もし本人の意思従つて投票場所をきめるという立法ができた場合に、具体的にどういうふうな混乱を生ずるか、障害を生ずるかということをひとつ資料にして、今度出していただきたいと思います。現実の問題ですから……。このようなこんがらかつたいろいろの要素が含まれておる場合に、私ども立法府にある者は、本人の意思を尊重するということが一番妥当な解決方法のように思うのです。そういう立法もできるわけですから……。そういう場合に、現実の問題として起つて困りますから、ひとつ資料をつくつていただきたい。
  90. 島上善五郎

    島上委員 さつき質問しましたが、一つ重要な問題があとでわかつたので、一つだけお伺いましす。先ほどの御答弁で、調査は大体通達趣旨で行われておるということでしたが、現に調査不能ということで、去年の選挙人名簿に登録されており、現実に本人がそこにいるのに、調査不能ということで選挙人名簿からどんどん抹消しておるという事実があるということを聞いておるのです。(「そのかわりその人は郷里にある」と呼ぶ者あり)調査不能ですからそんなことはない。そのかわり郷里にあるとおつしやいますが、調査不能で郷里にあるという決定は一体どこでできるか。そうなれば、憲法で認められた選挙権を否定するという重大な結果を生む。先ほどは、そんなことはない、そういう場合には寮で聞いたり近所の人から聞いたりして、結局調査している、こうおつしやいましたが、そうでないという事実を私は聞いておるのです。調査不能ということで、昨年の名簿に載つており、現にそこに本人が住んでいるということがわかりながら、ただ学資の出所がどこであるか、こう聞いて、これに対して答えない、拒否したというその一つの事実をもつて調査不能ということで名簿から抹消している。こうなつたらこれは重大な問題です。(「しかしそれは選挙権行使の放棄じやないか「調査させないのだから」と呼ぶ者あり)「しかしさつきは、その場合にも、寮にとまつておれば寮の管理人に聞くとか、近所に聞くとかして、本人がいるということを確かめて調査ちやんとやつておる、こういう答弁だつだ。
  91. 森三樹二

    森委員長 質問するのですか、
  92. 島上善五郎

    島上委員 その場合に対してどうするかということです。
  93. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 ただいま御指摘のような、調査をしたところが応じない、従つて調査不能であるということで、たとえば名簿に付箋をして抹消してしまつているといつたようなことは、私そういう非常識なことはまずあり得ないと思いますけれども、しかし、かりにあつたといたしますならば、その関係学生の人が、はたして調査不能であるということで抹消しているというような事実までを確かめるほどの熱心さがあれば、やはり異議の申立てをして、これは脱漏である、これは選挙権があるのだという申立てをする道がちやんと開かれております。それで当然解決せられる問題であろうと思います。それから、もしもそういうことをやらなくて、いよいよ選挙が迫つて来た、こういう場合において、現実に選挙権があるということが明らかでありまして、しかも名簿を見たところが載つていないという場合には、これは、選挙直前に、御承知のような補充名簿調製の時期がございますから、そういうようなときに、またこれは救い得るのであります。ですから、そこまで確かめるだけの熱意があるならば、当然解決する問題であろうと思います。
  94. 森三樹二

    森委員長 他に御発言がなければ、本日はこの程度にて散会いたします。  なお次会は来る十一月二日午後一時より開会いたします。     午後一時十四分散会