○古内
説明員 お答えいたします。ただいま
須磨議員のおつしや
つたように、講和発効後二年た
つて、今日なお八百名以上の戦犯者が巣鴨におるということは、われわれとして非常に遺憾な不幸なことであると存じております。もちろん
政府といたしましては、法律的には、講和条約及びそれに基く法律によ
つて、戦犯者を巣鴨に拘留する義務を負
つておるのでありますが、その法律論は別といたしまして、国民の一員として、われわれもこれらの方方のお
立場に非常に同情いたしております。
政府といたしましても、
吉田総理以下
岡崎外務大臣、法務
大臣その他
関係各閣僚も、この問題には非常に頭を悩ましておられるようでありまして、従来私の
承知いたしておりますところによれば、
吉田総理も、か
つてダレス長官がおいでにな
つたときに、この問題にもお触れにな
つたと漏れ承
つておりますし、その後
吉田総理大臣の御指示によ
つて、
外務大臣もこの問題の
解決に非常に苦心をしておられ、
従つて関係国の在外公館には、随時必要な訓令を出しておられる模様でありまして、アメリカを初め、イギリス、オランダ、濠州では、各在外
大使が任国の
政府とこの問題について折衝をしておられるようであります。なお
吉田総理、
岡崎外務大臣以下
関係の方々は、そういうような在外公館を通じての
交渉のみではなく、まだもう少しその上にや
つてみたいという御
趣旨で、先般国際連合の俘虜特別
委員会に御出席のため御渡欧なさいました有田、山下両議員にも、その
委員会の帰途、
関係国をおまわりの節に、国
会議員の
立場から、この問題を
関係国の
政府首脳部に
説明し、また彼らの同情ある
解決を
促進してくださるように
政府からもお願いしたわけでありまして、その後
政府といたしましては、
日本から欧州、アメリカにおいでになる著名な方には随時お願いして、
向うの要人とお会いになるときにこの問題を提起していただくよう、たとえば池田さんやあるいは愛知大蔵政務
次官の渡米に際しても、
外務省からもこの問題をお願いしてあるはずであります。それから戦犯室から見ておりますと、民間諸団体、ことにキリスト教の団体からも、直接アメリカのキリスト教団体あたりに働きかけて、この問題の
即時解決を
促進するよう頼んでいるようであります。問題は、私の見るところによりますと、りくつを申せば、
日本側にも法律論、人道論のりくつはございますが、それを強硬に立てて参りますと、やはり
向うにも法律論があり、人道論があるようでありまして、たとえば人道論で申してみますれば、
日本側がこの問題を人道的に非常に遺憾なことだと申せば、
関係国の方ではやはり戦争中の彼らの国民に対する虐待を取上げて、自分の方にも人道問題があるのだという調子でございまして、法律論、人道論ではあまりこちらからのきめ手がないような次第でございます。ただ、要するに戦争後八年経過して、ただわれわれと運命を異にして外地にお
つたがゆえに戦犯に問われ、長く自由を拘束されている人が大部分である、こういう事実はわれわれ
日本人一般として、非常に耐えがたいというその衷情を、
関係国
政府並びに国民に訴えて、この問題を
解決する必要があると現在では考えております。それでわれわれこそわれわれの同胞が巣鴨に拘留されているということに対して、非常に同情を感ずるのでありますが、いろいろの手を用いませんと、
関係国の国民及び
政府では、どうせ八百名少しばかりの
日本人の戦犯の問題でありまして、忘れがちなのであります。
従つてほお
つておけば、その
関係国の
政府の係の課長あたりが、この問題をまあゆつくり取扱
つているという事情に陥りがちなのでありまして、私
どもといたしましては、先ほど来申しましたように、在外公館を通じて随時折衝すると同時に、
日本から出て行かれる著名の方々に、
関係国の要人とお会いの節に、その都度この問題を提起していただくことを希望いたしておりますし、その他いろいろな手を用いて、
関係国の首脳部の本問題に対する注意を喚起して行くことが大事だと思
つております。
この現在残
つている八百六十名の戦犯の全面釈放というのが、戦犯
関係者並びにわれわれ
日本国民一般の切に希望するところでございますが、現状におきましては
関係国の
政府では、戦犯釈放ということを非常に明らかに表面に出すことは、自分の方の国内の対日感情からはなはだ実施しにくい、そこで現在のところでは、とにかく戦犯者個人々々の個別的な
審査で、再
審査というような形でできるだけ多くの人を釈放して行きたい、こう言
つているようであります。そのような要望に沿うために、最近法務省の中央更生
保護審査会の
委員長の土田豊氏を
関係国に派遣いたしました。土田氏はワシントン、ニユーヨークの旅を終えて、現在ロンドンにおられます。これからオランダ、フランス、西独をまわ
つて今月の末に帰られるわけでありますが、土田さんはそのような仕事の
関係上、戦犯者の個々のケースについて、だれよりも一番詳しく通じておられますので、土田さんが
関係国の首脳部と
お話になることによ
つて、このケース・バイ・ケースによる
解決方法を、できるだけスピード・アツプするというふうに、非常な貢献がなされるのではないかと期待しております。現に御
承知のように、土田氏がワシントンを出発するに際して、スノー
委員長は、土田氏の要請をアメリカとしても受入れて、この
審査をできるだけ早めて行きたいということを言明しておられるようであります。