運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-11-07 第17回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月七日(土曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 富田 健治君 理事 福田 篤泰君    理事 並木 芳雄君 理事 穗積 七郎君    理事 戸叶 里子君       佐々木盛雄君    増田甲子七君       岡田 勢一君    須磨彌吉郎君       神近 市子君    帆足  計君       加藤 勘十君  出席政府委員         外務政務次官  小滝  彬君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         水産庁長官   清井  正君  委員外出席者         検     事         (矯正局長)  中尾 文策君         法務事務官         (保護局長)  齋藤 三郎君         外務省参事官  古内 広雄君         農林事務官         (水産庁生産部         長)      永野 正二君         海上保安官         (警備救難部         長)      砂本 周一君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 十一月六日  委員佐々木盛雄君及び川上貫一辞任につき、  その補欠として林讓治君及び大橋忠一君が議長  の指名委員に選任された。 同月七日  委員林讓治君及び勝間田清一辞任につき、そ  の補欠として佐々木盛雄君及び帆足計君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員佐々木盛雄辞任につき、その補欠として  林讓治君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十一月五日  李ライン等国際漁場問題解決促進に関する請  願(鈴木善幸紹介)(第八五号) の審査を本委員会に付託された。 同日  李ライン等国際漁場問題解決促進に関する陳  情書(第八九号)  同(第九〇号)  同(第九一号)  同(第九二号)  同(第九三  号)  同(第九四号)  同(第九五号)  李ライン撤廃並びにだ捕漁船及び乗組員即時  帰還等促進に関する陳情書  (第九六号)  同(第九七号)  同  (第九八号)  同  (第九九号)  同(第一〇〇号)  同  (第一〇一号)  同(第一〇二号)  同  (第一〇三号)  同  (第一〇四号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  外交に関する件   請 願  一 李ライン等国際漁場問題解決促進に関す    る請願鈴木善幸紹介)(第八五号)   陳情書  一 李ライン等国際漁場問題解決促進に関す    る陳情書(第    八九号)  二 同(第九〇号)  三 同(第九一    号)  四 同(第九二    号)  五 同(第    九三号)  六 同(第九四    号)  七 同(第九五    号)  八 李ライン撤廃並びにだ捕漁船及び乗組員の    即時帰還等促進に関する陳情書    (第九六号)  九 同(第九七    号) 一〇 同    (第九八号) 一一 同    (第九九    号) 一二 同(第一〇〇    号) 一三 同    (第一〇一号) 一四 同(第一〇二    号) 一五 同    (第一〇三号) 一五 同    (第一〇四号)     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。まず請願審査をいたします。李ライン等国際漁場問題解決促進に関する請願鈴木善幸紹介、第八五号を議題といたします。  紹介議員説明を求めます。——紹介議員が出席しておりませんので、専門員よりかわつて趣旨説明を求めます。
  3. 村瀬忠夫

    村瀬専門員 李承晩ラインその他の国際漁場紛争即時解決し、公海自由の原則を貫くとともに、漁業経営安定の基礎を確立し、関係国漁民の友好かつ共存共栄をはかられたいという趣旨であります。  本件は、ひとりその漁場出漁する漁民の生活、経済を脅威するばかりでなく、ひいては本邦漁業調整上重大なる障害となるおそれが多いのであります。すなわち国際漁場失つた多数の漁民は、さなきだに狭隘を告げつつある国内沿岸海域に殺到して、ますます漁業調整を困難ならしめるばかりでなく、遂には濫獲と操業秩序の混乱から、きわめて好ましくない窮状に追い込まれる懸念があるのであります。われわれは現在直接の利害なしとして、これを傍観するわけには参らないのであります。であるから、独立国家として不当に国権を侵害されるがごとき傾向は、国際信義の上からも黙視するに忍びないし、われわれは漁業者としての立場を離れても、国民としてかかる事態の早急な解決を念願してやまないという趣旨であります。
  4. 上塚司

    上塚委員長 ただいまの請願につい、政府側より御意見はございませんか。
  5. 小滝彬

    小滝政府委員 ただいまの御趣旨まことにごもつともでありまして、せつかくその方面努力いたしておる次第であります。
  6. 並木芳雄

    並木委員 それについて、海上警備隊フリゲート艦を出動することに政府ではきめたというような報道が、昨日だつたと思うのですが、あるのです。当然きめていいわけですけれども外務次官はその点関知しているはずであります。どうなつていますか。
  7. 小滝彬

    小滝政府委員 フリゲート艦を出すことが適当であるか、また法律的に見ればいかに解釈すべきかというような点を、慎重に検討しているのでありまして、出すという決定をいたした次第ではございません。
  8. 並木芳雄

    並木委員 もう一つ。その海上警備隊と並んで海上保安庁の方、この方で現在の巡視船が勢力が足らないものだから、アメリカに火器を貸してもらうように要求しているのです。その点についてどういう交渉過程にあるか、どのような火器をどのくらい借りる計画であるか、明らかにしてもらいたい。
  9. 砂本周一

    砂本説明員 お答えいたします。海上保安庁巡視船につきます火器の問題は、李ラインの問題が発生したために、特にその措置を講ずるというのでなくして、従前からその傾向がございましたので、従来もこの準備といたしまして基礎工事をやつたのが若干ございます。そうして火器内容につきまして今ここに正確な資料を持つておりませんが、こまかい点につきましてこういうところで発表していいかどうかも私承知しておりませんが、今まで御報告いたしました程度ならここで申し上げたいのであります。それは四百五十トン、二百七十トン、これが大体装備される対象の船でございますが、大きい方には大体三インチ砲を備えつける予定であります。それからあとは四十ミリ機銃と二十ミリ機銃、この三種のように伺つております。なお借りる方法あるいは現在どうなつているかにつきましては、これは外務省の方の関係でございまして、多分国際協力局の方でいろいろ折衝していただいている、こういうふうに了解いたしております。
  10. 並木芳雄

    並木委員 当然それを借りる場合には、フリゲート艦を借りたと同じように協定が結ばれると思われますが、いかがですか。
  11. 小滝彬

    小滝政府委員 その点は先方との話合いの結果にもよりますのでただいまいずれともはつきりしておりません。
  12. 並木芳雄

    並木委員 それから李ラインの問題の解決には、政府は初め強いようなことを言つておりましたけれども、最近は態度が少しかわつて来て、平和的な手段解決したいというようなことを言つております。平和的な手段解決するといつても、どういうふうにするのですか。国際司法裁判所に提訴するといつても、この間私が聞いてみましたら、政府答弁では、なかなか司法裁判韓国の方で受諾を与える形勢も見えないから、実際上はむずかしいという。一体どういう具体的な方法で平和的な手段に訴えるつもりであるか、この際明らかにしていただきたいと思います。ただ抽象的に平和的手段解決するということでは、ますます日本立場が弱くなつて、この解決が困難になるのではないかと思います。
  13. 小滝彬

    小滝政府委員 政府態度が軟化したとおつしやいますけれども政府は、もともと直接交渉によつて円満裡解決しようと努力して参つたものであります。ただ現場における保護措置をどうするということは、別なのでありますが、外務省といたしましては、あくまで平和的にこの問題を解決すべく、現在も努力しておるわけであります。従いまして態度が軟化したのではなくて、現在も従来の方針によつてあらゆる可能性を検討して、双方話合い解決し得る道を開こうと努力いたしておるのであります。それにつきまして司法裁判にかけるのは非常に困難があるということをだれかが声明したとおつしやいますが、事実それは非常に困難であります。しかし司法裁判にかけるのが唯一の方法ではなくて、いろいろな点が考慮せられるわけであります。たとえば国連に訴えるのもその一つでありましようし、また第三国のあつせんを求める方法もあるでありましようし、別途の交渉の仕方というようなことも考えられるわけであります。いろいろな可能性を検討いたしております。検討しておるのみならず、事実そうした方面に対する実際上の努力が払われております。ただいま交渉過程にありますので、せつかく並木委員からの御質問でありますけれども、これをこの際具体的に申し上げることができないのを遺憾に存じます。しかし事実やつておるということは、私はここで確言いたすものであります。
  14. 並木芳雄

    並木委員 やつておるならば大いにそれを推進してもらいたい。それとともに、私の方の須磨委員から強く要望しておつたところの、現地吉田総理なり外務大臣が飛んで行つて交渉すべきだという点については、外務省として考えておるのですか。外務大臣がだめなら次官でもいいでしよう。そういうことがやはり解決一つの目途でないかと思います。それから大韓民国に日本大使を送るという問題もあるのです。こちらにいる金公使ですか、あの資格だつてはつきりわれわれはまだ認めているわけではないのですが、久保田参与に対してかなりいろいろなことを言つておる。この間みたいにその声明を撤回しろと言つてみたりしておる。ああいうことをほつておく手はないと思います。こつちから向う大使館をつくるとか、あるいは大臣が飛んで行くとか、そういう糸口が開かれていれば別ですけれども、そういうことをしないで、現状のままあるいう公使を認めて行くつもりなのですかどうか、あわせて伺いたい。
  15. 小滝彬

    小滝政府委員 現地に要人を派遣したらどうかというお話でありますが、こういう問題は、すべて時期もあるし方法もありますので、効果の上らないような際に、非常に困りきつて泣きを入れたというようなかつこうになつても困るのであります。これは外交上の問題といたしまして、慎重に考慮しなければならぬ問題であります。かつまた相手国の方で、そういうことを認めないということがはつきりしておるような場合に、そうした申入れをすることが、はたして外交上適当な措置であるかどうかということは、考えなければならぬところだろうと考えます。また大使を派遣しないかということでありますが、これはすでに日韓の間に暫定的なとりきめをいたします際から、韓国ミツシヨンを認めるかわりに、同時に双務的に日本ミツシヨンを認めるように要求はしてあるのでございますが、しかし先方はまだ生命、財産保護を十分に保障することができないとかいうようなことで、非常に延引いたしまして、いまだに解決いたしていないのであります。そこで過般もさらにこの点を向うに申し入れまして、日本の方で韓国ミツシヨンを置く以上、日本側ミツシヨンも当然双務的に認めらるべきものであるということを理由に申し入れているのでありますけれども、遺憾ながらまだ回答に接しておりません。どうしてもこうした点を認めないということになれば、あるいは日本にある韓国ミツシヨンに対する態度ということについても、再考しなければならない必要が生ずるかもしれませんが、現在のところは、でき得る限り双務的に日本ミツシヨンのが向うに行き得るようにしようという努力を、継続しているような次第でございます。
  16. 並木芳雄

    並木委員 それではもう一点お尋ねしておきます。どこかの委員会であつたかあるいは参議院であつたかもしれませんが、ちよつと岡崎外務大臣が気になる答弁をしている。それは韓国における財産請求権の問題で、権利はあくまで主張するけれども、必ずしも最後までがんばるものとは限らない、場合によつてはこの権利を放棄することもあり得る、という答弁つたと思うのです。政府としては場合によつて韓国との交渉において、円満妥結のためには、財産請求権というものを権利としては認めるけれども、その行使は遠慮する、差控えるということを考えているのですかどうか。
  17. 小滝彬

    小滝政府委員 この権利を放棄すると申しますか、これを実際に請求しないということは、場合によつてはあり得るであろうと存じます。と申しますのは、たとえば相手方の方でも日本に対する請求権を放棄するということになれば、そういうフオーミユラによつて円満妥結をはかることも考え得るのでありまして、そういうことはあり得ると存じますが、現在のところ、これを放棄するということにきまつたというわけではなくて、交渉過程において相互的な措置がとり得るという場合においては、そうした点も十分考慮して、問題の解決をはかるべきであろうというふうに考えています。
  18. 戸叶里子

    ○戸叶委員 新聞によりますと、近々六十何隻かの漁船韓国の方につまり魚をとりに出て行くというようなことが報道されておりましたけれども、再び拿捕されるということがないように、何らかの方法をそれまでに政府はとられる御意思があるか。何らかの形で政府がこれを保護しなければならないと思いますが、その前に話合いをつけるとか、何らかの方法を考えられるかどうかを承りたいと思います。
  19. 小滝彬

    小滝政府委員 外務当局といたしましては、一日も早くこの問題を話合いによつて解決いたしたいと考えておりますが、しかしそれにどうしても時日がかかることになれば、日本側が一方的に保護措置をとらなければならないだろうと考えます。その点につきましては、水産当局なりあるいは海上保安庁あたりから御答弁申し上げることにいたします。
  20. 清井正

    清井政府委員 ただいまの御質問の点でありますが、新聞に出ておりました情報は私も聞いておりますが、まだ正確な地元からの報告はございません。しかし同方面の底びきの組合が主として今月の下旬から来月の上旬にかけまして、朝鮮の主として南部東海岸方面出漁する。底びきの組合でございますから、おそらくああいう決定があつたのであろうと私は思つております。私どもはかねてから、一時問題になりましたさば船はもう時期が過ぎましたので、全部他の基地に参つておりますが、今度は底びきの船がこの下旬から十二月初候にかけて盛漁期になるわけであります。従つてその盛漁期になるに従つて、底びき関係漁業者が、ぜひ出漁いたしたいという熱心な希望を持つたわけであります。  従いまして、特に私ども水産庁立場といたしましては、ぜひともこれは、一旦この方面漁業者出漁するという御決意になりましたならば、あらゆる努力を払いまして、安全に漁業ができますように、保護いたさなければならない、こう考えているのであります。その問題につきましては、私ども従来におきましても、海上保安庁その他関係の役所と緊密に連絡をとりまして、どういうような方法によつて漁船保護に当るかということについて、今相談をいたしているのであります。なお実際において漁業者出漁いたすという時期になるまでに、何とか具体的な方法を検討いたしまして、安全に出漁できるようにいたさなければならぬというふうに考えまして、引続き関係各省相談をいたしている最中であります。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 漁業者出漁のために、何らかの保護措置をとられるというお話でございましたが、それが漁業者出漁するまでに間に合えばいいですけれども、もし間に合わなかつた場合には、政府はそれをまさかおとめになることもできまいと思いますが、どういうふうになさるおつもりでしよう。
  22. 清井正

    清井政府委員 漁業者は十二月初旬にかけて出たいということを言つているのでありまして、従つてまだ間のあることでございます。私どもはできるだけこの問題については、早急に結論を得るようにせつかく努力中でございます。何とかいたしたいと思つております。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その具体的な内容は今はお聞きすることができないのですか。それともまだわかつていないわけなんですか。
  24. 清井正

    清井政府委員 ただいま相談をいたしている最中でございまして、まだ何とも結論に到達いたしておりませんので申し上げられませんが、何とかどもといたしましては、漁船が安全に出漁できるようにいたしたいと考えております。
  25. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 先ほど来のお答えを聞いていると、何とかしなければならないということだけはわかるのですが、その何とかが一体どういう内容であるか。それでは私は業者の諸君も安心できぬと思う。進んでその何とかということの内容を明らかにされて、それが妥当なものであるかどうか、こういうことになつて行かなければ、同じようなことばかり繰返しておつても、何にもならぬと思うのですが、その何とかいうことの内容について、いま少しく立ち入つた説明をしてもらいたい。
  26. 清井正

    清井政府委員 ただいまの御質問でございますが、これは従前におきましても御承知通り水産庁監視船が出まして漁船保護に当つてつたわけであります。すでに御承知のように、水産庁監視船の第二京丸が先方につかまつているような状況であります。私どもといたしましても、漁業者が無事に出漁いたしたいということをきめております以上は、何とかして安全に出漁できるようにいたしたいと考えているわけであります。その問題につきましては、ただいま申し上げましたように、具体的に申し上げられないのははなはた遺憾でこざしますけれども、うまく安全操業できるようにしたいというように考えているわけであります。
  27. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 私がお尋ねするのは、水産庁の方は何とかしたいということ以上には出られないかもしれませんが、外務当局として一体どういう外交的手段に出ようとされているのか。現在のところでは日韓会談も決裂したままで、ただ両方ともすくんだ状態かあるいはにらみ合つた状態かしれませんが、とにかく手も足も出ぬ状態である。こういうようなことがいつまでも繰返されて、やがてフリゲート艦でも護衛のために出すというようなことになつたならば、とんでもないことになつて、みずから国際紛争の渦中に飛び込むということになつてしまう。そうでなくして、もう一歩外交的な方法で積極的に出かける方法はありませんか。たとえば日米加漁業協定というものが、魚族保護を目的とするという名目でつくられている。李承晩ラインというものは、本来朝鮮の内乱といいますか朝鮮戦線の必要上、朝鮮自国防衛の必要から設けた線であるというが、今それが朝鮮が実際において休戦になつておれば、その海上からの危険は朝鮮にはなくなつているわけです。そういうことから、たとえば先般の新聞によれば、何か魚族保護ということであるならば、日本においても韓国側申出を受けて立つということが発表されておつたようでありますが、それならばむしろ日本から、日米加漁業協定のようなものに見習つて日韓両国の間における魚族保護協定を結ぶ意思はある、従つて、その協定が成立するまでは場従来のごとく日本漁業操業を認めるというように、積極的に外交的な手段をとるということを、外務省はお考えになつておられるのかどうか、それをひとつ承りたいと思います。
  28. 小滝彬

    小滝政府委員 私今のようなお話加藤委員から承りますのは、実はふしぎに思う次第であります。もちろん朝鮮は、あれは平和のラインだというようなことを言つておりますけれども、現在強く主張しているのは、あそこに対しては漁業管轄権を持つておるといつておるのでありまして、これについては、日本側は、今のお説の通り日米加条約におけるがごとく、調査の委員会をつくろうとか、あるいは魚族については保護措置をとろうとか、いろいろ今加藤委員のおつしやつたようなことを昨年来申しておるのであります。ところが具体的問題に入ろうといたしますと、ほかの問題が出て参りまして、漁業部会話合いが進まないというのが、これまでの実情であります、この点は外務省からも公表して皆様に申し上げておるところでございます。たとえば十月六日に開かれましたきわめて最近の会談においても、具体案を出そうというので、いわゆる第三回目の漁業部会において具体案を出そうとしたのに、逃げられてしまつたというような状態でありまして、私ども加藤委員のおつしやいますように、まさしくその方向に向つて努力したと考えます。ところが第一点で、ほかの方法で何かしなければいかぬじやないか、何とかというようなことじや困るとおつしやいました。この点はすでに先ほど並木委員にもお答え申しました通り、現実に措置をとつておりますが、外交上のここでありますから、ただいまこのような公開の席で申し上げにくいのですけれども、現にその措置をとりつつあるということは、確言するものであるということを申し上げた次第であります。
  29. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 日韓会談で、そういう具体的な問題が持ち出されると、向うから避けるような態度をとるということは、われわれも新聞報道でおよそのことは知つておりますけれども、問題はそこだと思うのです。たとえば、日韓会談へこちらから漁業問題を持ち出せば向うが避けるということは、日本人の言葉でいえば敵本主義、他の、それと引きかえに話合いをしようという、たとえば在鮮日本人財産返還問題等がからみ合つて来るとか、感情問題等については、私はこういう席で言うべきでないと思いますから触れませんけれども、しかしながら、そういうこともひとつ重要な要素として考慮しなければならぬということは考えられるのです。しかしながら具体的に交渉ということになれば、そういう感情問題を抜きにして、率直に——たとえば在鮮日本人財産返還問題等とからみ合つて、これを入れるならばどうというようなことが交渉過程にあつて、その点について日本が色よい返事をしませんから、こつちの方においても向うがそつぽを向いてしまうということになつておると思うのです。実際問題としては、われわれ外部から見ておると、何かそれを打開するために百尺竿頭一歩を進めて、交渉をもつと積極化することはできないかどうか、こういう点なのです。
  30. 小滝彬

    小滝政府委員 先ほどの並木委員質問に対しても、日本請求権も場合によつては放棄することはあり得るとはつきり申しました通り互譲妥協の精神によつて、この問題を円満に解決したいということは、私どもが念願しておるところでありまして、そうした財産権の問題につきましても十分話合いをしたい。そうした点は、過般、十月六日に開かれました会談において、久保田代表からもそうした趣旨のことを申し述べておるのであります。しかし、そこに非常に大きな開きがありまして、ただ原則論に走りましてああいう結果になつたことは、はなはだ遺憾でありますが、御説の通り日韓両国は東亜の平和のためにも、また双方の国の将来のためにも、相提携して行かなければならない運命にある。そうした地理的な位置にもありますので、加藤委員のおつしやるような趣旨によつてこれからも十分努力したいと考えております。
  31. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私はただいまのお話に関連して、二、三の点をお尋ね申し上げたいと思います。ただいま問題になつておりますのは、兵庫県の香住港で、この間沿岸漁民、底びき漁船が十二月一日を期して、李承晩ラインを突破して強行出漁するということを申し合せたことでございます。これは私の選挙区で地元関係もございますから、はつきりと承つておきたいと思うのであります。ただいまの水産庁お話によりますと、何とかして安全出漁ができるように解決をいたしたい、こういうお話でございます。何とかしてという具体的の内容について、先ほど来いろいろお話がございましたが、外交交渉によつて、事前に円満出漁に行けるようた事態に到達することは、現状から申しまして、ほとんど不可能に近いほどに困難な問題ではなかろうかと思います。そこで私は、もう残された安全に出漁できるようにする方法は、結局出漁する漁船保護する以外に、道がないのじやないかと思うのです。この前の委員会に私も出席いたしまして、水産庁政府委員の方から御説明を承つたのでありますが、政府としてはすでに強行出漁を考慮している、その方針であるのだというお話であつたのであります。私が、漁民たちが李承晩ラインを突破して強行出漁をするということを申した場合において、やめてくれというのかどうかということを質問したのに対して、政府も強行出漁の方針であるのだという言明をせられたと思うのであります。そこでただいま水産庁政府委員の方に御質問申し上げますが、何とかして安全に出漁できるようにするということは、これを保護するということでありますか。つまり、水産庁監視船でありますか、あるいは海上保安庁巡視船でありますか、あるいはフリゲート艦でありますか、とにかくそういつたことによつて保護するということでございますかどうか、承りたいと思います。
  32. 清井正

    清井政府委員 ただいま御質問の点は、先ほどの御質問の点と同様の問題でございますが、私どもも香住の組合が十二月一日から出漁することを決定いたしたということの正式の通知は受けておりませんけれども、おそらくそれは事実だろうと思うのです。先ほど申しました通り、その方面漁業者は底びき漁業者でございまして、毎年時期になりますと、朝鮮の東南の海岸に出漁いたしておるわけでありますから、今年も時期に際会して出漁したい、こういうことによつてそういう決議をしたのだろうと思つております。そこで、先ほど来外務政務次官からも申し上げておるのでありますが、政府全般として、外交交渉を強力に推進して行くことはもちろんでありますが、水産庁といたしましては、従来からいたしている通り、どういう方面漁船出漁するということを決議されますれば、私どもの職務といたしまして、当然漁船保護しなければならぬのであります。過般の済州島の南部方面に御出漁の場合におきましても、当水産庁におまましてはできる限りの能力を使いまして、五隻の監視船を派遣いたしまして、漁船保護に当つて来ているわけでございます。今後も同方面の海域に漁船出漁いたす場合におきましては、私どもといたしましては、当然監視船を派遣いたしまして、漁船保護に当りたい、実はこう考えておる次第でございます。
  33. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 水産庁監視船漁船保護立場をとられるということは、これはもとより当然のことであると私は思います。ところが実際問題といたしまして、水産庁監視船は、先ほどあなた自身もお認めになつたように、船自身が拿捕されておる状態なのでありまして、悲しいかな、水産庁の船だけによつて、完全に保護されることができないという現状に実はあるわけであります。この点は一体どういうふうになさるお考えであるか。私の考えでは、当然水産庁自体によつては、武力をもつて日本漁船を拿捕する韓国船に対抗することはできない、このように考えるわけでありますが、海上保安庁の方が御出席のようでありますから、海上保安庁としてはどういうふうになさるか。水産庁の船では十分ではありません。この前も私は海上保安庁の山口長官とも話をいたしたわけでありますが、もう香住の漁船が十二月一日を期して決死の出漁をするということは事実であります。私は現地の事情を知つておるが、これは死を賭して出かけて行くのであります。従つて海上保安庁としては、当然これを命がけで保護して行かなければならぬわけであります。このことを私は特に希望するわけでありますが、どのような対策をお持ちになつているか、この点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  34. 砂本周一

    砂本説明員 香住の会議の模様につきましては、すでに私の方に電報が入つております。漁民方面から、巡視船の出動について強い要請があります。今回の会合以前からも、すでに、十二月に入りましたならば、相当数の漁船出漁することはよくわかつておりましたので、寄り寄りどうすればよいかということは検討しておりました。それで完全保護につきましては、すでに前々から関係各庁と連絡もしておりますし、目下いろいろ協議も進めておるようでございますが、さしあたつてどものできる範囲におきまして、はたして完全に保護できますかどうですか、これは大体今までの経過によりましてほぼわかるのでございますが、現在の巡視船の勢力のできる限りを該方面にさいて、従来の方法によりまして保護をやりたい、こういうふうに考えております。現地から、さしあたつて少くとも常時三隻ぐらいの巡視船をもつて保護に当つてくれるようにという要望がありますし、またその程度が限度だと現在考えておるので、直接管轄しております舞鶴の本部の方からも三隻の要望がございます。現在におきまして、はたして常時三隻がすぐととのいますかどうですか。しかしなるべくその要望にこたえるべく、すでに他の地区の巡視船李ライン問題の保護と兼ねまして、九州方面に配航するように若干の手配をいたしました。しかし重ねて申しますが、完全な意味におきまして保護ができますかどうですか、私どものできる限りの力を尽しまして、保護に当りたいと決心をいたしております。
  35. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 新聞報道でございましたが、つい数日前のことだと思います。巡視船が、たまたま日本漁船が拿捕されるというときに、これを阻止すべく韓国の艦艇にやめてくれというような交渉をした、これに対して韓国艦艇の方からは、ぐずぐず言うならこの海上保安庁巡視船もともに拿捕してしまうぞと言つておどかされて、そのまま引揚げて帰つて来た、こういう報道もつい数日前にあつたようであります。そういう現状におきましては、もとより海上保安庁巡視船に出動してもらわなければなりませんけれども、これまた巡視船だけによつて、完全に護衛できるというわけではないようであります。そういう場合におきましては、まず一点承つておきたいことは、先般来も外務省を通して火器を、つまり機関銃であるとか小規模の大砲と申しますか、これを各巡視船に装備するという方針で、すでにアメリカにその火器の貸与方について交渉しておるというような話でありましたが、一体その後の模様はどうなつておるのか、これが十二月一日に出漁するならば、はたしてそれまでにこれが間に合うのかどうかという点をひとつ承つておきたいことと、それから私の考えでは、どうせ海上保安庁巡視船だけでは不十分であるから、当局への要望にはフリゲート艦まで出動してくれるようにしてくれ、こういうようなことを素朴な漁民の声として切実に訴えて来ているわけであります。あなたの方では、海上保安庁巡視船でもつて不十分であるというような場合におきましては、このフリゲート艦の警備艇の出動を要請するというようなお考えであるのかどうか、その点をひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  36. 砂本周一

    砂本説明員 火器の点でありますが、以前の機会に長官からお答え申しましたあの程度です。なおその後の促進状況も当つてみておりますが、まだはつきりとここでお答えする具体的なものはないようです。ただ話が早く済みましても、とうてい十二月一日に間に合うという状態ではございません。それからとうてい巡視船保護しきれないから、保安庁の方のフリゲートの出動を要するかどうかにつきましては、まだ私の存じておる範囲におきまして、海上保安庁としてはそういう考えは現在のところ持つておりません。なおこれは保安庁に特に要請するという以前に、いろいろ根本的なほご政策につきましては、密接な連絡を各官庁ととつておりますので、その方面でも適当な措置か講ぜられると思います。重ねて申しますが、具体的なフリゲートの出動を要請する考えは、今のところないようでございます。
  37. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 もう一点だけ私承つておきますが、そうすると、従来と同じような方法によつて、同じ程度の巡視船が出動するのでありまして、これをもつてしては、私は今日の韓国側の攻勢に対抗することはできないのじやないかと実は思つて出漁する漁民の心情を考えて不安なきを得ないのであります。この前も保安庁長官との間に私は質疑応答を反復したわけでありますが、いよいよ十二月一日を期して出漁するのであつて、これらの漁民にとつては生死の問題でありますから、私はもう一度はつきり承つておきたいと思います。もしも日本漁船が砲撃を加えられているような場合におきましては、この巡視船というものはどういう処置をとつてくれるのか、ほんとうに巡視船そのものが命がけになつてこれを保護してくれるのかどうか。単に一応の交渉はして、連れて行くのをやめてくれというようなことを言うけれども、それを強行して持つて行くならいたし方ない、手をこまねいて連れて行かれるうしろ姿を見送る以外に方法がない、こういうような状態であるのかどうか、この問題はいよいよ出漁するにあたつては、重大な問題でありますから、もう一度私は当局の決意のほどを明らかにしたい。無責任に、強行出漁をすることをあなた方はお許しになるのではないと思います。水産庁長官もあんなふうに強行出漁の方針の決定を明らかにしておるわけであります。ですからどういうような御方針で、どういうような決意をもつて臨まれるのか、そのことを、私は水産庁長官にもあわせて承つておきたいと思います。
  38. 清井正

    清井政府委員 ただいまのお話でありますが、私どもといたしましては、漁業者の方が同方面の海域に出漁するということにつきまして、従来の任務上当然出漁保護しなければならぬ、こういうように考えております。従つてどもの方といたしましては、私どもの能力の許す限り全力を尽してこれに当りたい、かように考えます。
  39. 砂本周一

    砂本説明員 先ほどお話のありました目の前でひつぱつて行かれた事実は最近の羽衣丸事件でありまして、私どもも非常に遺憾しごくに存じます。ただ現在といたしましては、向うが実力をもつてひつぱつて参りますときには、遺憾ながらこれを実力をもつて完全に阻止するわけに参りません。決して卑怯な気持でそういうことになるのではないのでございます。現地乗組員もできるだけのことを尽しまして、それ以上のことはどうにもならない現状でございます。
  40. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 そこで漁船が砲撃を加えられるというような場合におきましては、当然そこに正当防衛の権利が発生して来る。従つてその正当防衛の権利の上に立つて海上保安庁巡視船のとり得るすべての対抗措置をとり、体当りも辞せないというような基本的な考えの上に立つておるのではないのでありますか。こちらから何とかやめてくれないかと言つても、向うが強硬に、無理やりに、いや連れて行くんだと言うなれば、手をこまねいて連れて行かれるのを見送るというのでは従来の方針とちつともかわらないのであつて、それが決して強行出漁する漁民保護するゆえんではないと私は考えるのであります。そういう場合において、一体どのような決意をもつてこの強行出漁する船を護衛しようとするのか、正当防衛の場合にどうするのか、漁船が砲撃をこうむつたような場合におきましては、海上保安庁としても正当防衛の権利が発生するという立場をとらないのかどうか、その点をひとつお伺いいたします。
  41. 砂本周一

    砂本説明員 正当防衛の範囲におきまして、あらゆる防護の措置を講じますが、現在におきましては御承知のように完全にまる腰でございまして、その効果のある場合にはもちろん体当りもやるでしよう、しかしそういう事態が効果のない場合には、やはり現在やつておりますようにあくまで食い下りまして、できれば向うに乗り込んで行つて交渉もいたしましようし、それができなければいろいろ通信機能を発揮して——今回は赤信号を使つてつたわけであります。ただ具体的にこれより有効適切な方法があるかどうかは、そのときの状況でございますから、船長の判断によつてやらしております。もちろん今回のケースばかりではございません。必要であれば巡視船の体当りは、従前からその考えを持つております。
  42. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 そこで私は承りたいのですが、もしも韓国側の不法な行為によつて日本漁船に砲撃を加えるとか、あるいは日本漁民が射殺をされる、そういう緊急な事態に立ち至つた場合におきまして、しかも韓国側の不法行為が明らかに不正行為であることが明白である場合に、ただいまのお話のように、死力を尽してこれこ当りましても、なおかつ漁民保護ができないという場合におきましては、フリゲート艦の出動を要請する措置をとるべきではないか、かように考えるわけでありますが、そんな緊急の事態になりましても、そして日本人の生命財産が非常な危殆に瀕するような場合になつても、なおかつフリゲート艦の出動を要請するようなことはなくて、海上保安庁だけでやつて行くという考え方でございますか。
  43. 砂本周一

    砂本説明員 フリゲートの要請につきましては、先ほど申しました通りでございまして、これは海上保安庁以外の機関の決定によつてお考えになることであります。海上保安庁といたしましては、現在の性能をもつて最善を尽すという、これ以上お答えはできないわけであります。
  44. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 保安庁の人は見えておりませんか。
  45. 上塚司

    上塚委員長 見えておりません。
  46. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 それでは私は打切りますが、最後に一言だけ水産庁の方にお聞きしておきたい。新聞にも出ておりましたし、私の方へ参りました決議文の中にも出ておりましたが、いよいよ強行出漁をする、もとより今日の日本の実力をもつてしては、自分たちを守るに十分ではないと覚悟しておる、従つて一つかまつた場合においては、代船の建造についても当局は十分に考えてほしい、そのことを決議いたしておるようでありますが、代船建造について政府は補償するというような考えがあるかどうかという点につきまして伺いたい。出漁する者はあとのことを心配するわけでありますから、これらにつきましても当局の方針を明らかにしていただきたい。
  47. 清井正

    清井政府委員 私どもといたしましては、先ほど来お答え申し上げた通り、できるだけの力を尽して、安全に操業できるように保護したいという決意をもちまして、努力いたしておるのでございますが、不幸にしてそういう事態が起つて、しかもその拿捕された船の代船を建造したいという御希望がありました場合におきましては、その措置につきまして私どもといたしましては全力を尽しまして、融資措置等につきまして適当な措置をとりたいものだと考えております。現在韓国側に拿捕されておる船の措置につきましては、ただいま大蔵省と折衝いたしまして、適当な金融措置を講ずべく考えておる最中でありますから、引続きかようなことが万一不幸にして起りましても、その対策につきましては同様な措置をとつて、代船建造に遺憾のないようにやつて行きたいと思います。
  48. 戸叶里子

    ○戸叶委員 一点確かめておきたいことは、私が先ほど御質問申し上げましたことに対して何とかすると言われた。これについては今説明していただけないと思つたのですが、今の水産庁海上保安庁お話を聞いておりますと、今までにやつておりました程度のことを——たとえば巡視船をつけるとか監視船をつけるというふうなことを今までやつていた、それと同じようなことを、しかたがない場合にはやるというふうに了承したのですけれども、今後漁船が出ようとするときには、何とかもつと安全な方法なりあるいはまた話合いをするとか、これからなおこれ以上に進んだことをお考えになると了承していいのでしようか、それとも今まで説明されていた程度の何とかするということだつたのでしようか、その点をはつきりしておいていただきたいと思います。
  49. 清井正

    清井政府委員 私が申し上げましたのは、すでに外務政務次官からもお答えがありました通り、ただいま打切りになつておるところの漁業会談をできますれば再開いたしまして——何とか外交交渉によりまして、私どもの直接の問題になつております漁業会談を再開いたしまして、そうしてうまく話合いをして、その結果その方面に安全に漁船出漁できるということを願つております。そういう意味におきまして外務省とも十分連絡をいたしまして、何とか外交的な折衝の余地はないかどうか、あるいはさらに進んで中絶しておりました漁業会談を再開せしめまして、何とかどもも具体的な主張もあるわけですから、この問題を議論いたしまして、円満に解決したいという希望にはかわりはないのであります。その努力は現在いたしておるのであります。ただそれが間に合いませんで、漁船が同方面出漁いたすという事態が起るような場合におきましては、私どもといたしましては、従来とつてつたと同様に、全力を尽して漁業の安全を期するように努力したい、こういう決意を申し上げた次第であります。
  50. 上塚司

    上塚委員長 ほかに御質問がなければ、ただいまの請願は採択の上、内閣に送付いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」「委員長」と呼ぶ者あり〕
  51. 上塚司

    上塚委員長 異議ありますか。
  52. 穗積七郎

    穗積委員 異議です。実は政務次官に今の問題についてお尋ねしたいと思つたのですが、参議院の本会議でどうしても三十分ばかり抜けるということでありますから、できればこの質問をさせていただきたい。そのあとで採択するように希望いたします。
  53. 上塚司

    上塚委員長 穗積君異議ですか。
  54. 穗積七郎

    穗積委員 こういうことは、できますならば全会一致で行きたいと委員長も希望されるでしようけれども、私も希望するわけです。従つて延びるわけではありませんから、時間的なことから行きましても同じことでございますから、次官がお帰りになりましてからお願いいたしたいと思います。
  55. 上塚司

    上塚委員長 次官は午前中帰つて来ることはできませんし、きよう一日ですからどうしても採択をして、政府に送付しなければならぬと思いますが。——穗積君の希望によりまして採択を延ばします。     —————————————
  56. 上塚司

    上塚委員長 それでは外交問題に対する質疑を許します。通告順によつて質疑を許しますが、時間の整理の都合もありますから、各委員二十分程度におとめを願いたいと思います。福田篤泰君。
  57. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 外務省にお伺いするのでありますが、大臣次官もおりませんから、下田条約局長に御答弁を願います。先般の池田・ロバートソンの会談に関しまして、十月三十日ワシントンで共同声明が発表されました。それは正式に外務省に報告がありましたか、どうですか、まずその点を伺いたい。
  58. 下田武三

    ○下田政府委員 十月三十日の池田・ロバートソン共同声明は、公電をもつて外務省に報告がございました。
  59. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 公電をもつて外務省に報告があつたとすれば、池田勇人君自身の資格問題でありますが、今国会でいろいろ問題になつておるのは当然でございますが、私この前外務大臣外交旅券についてお伺いした。これは私も外務省におりましたから内規は知つておりますが、外交に行くからといつて、何ら正式に外交的な特権を与えられるとは思いません。しかし共同声明を出し、しかも相手のロバートソンというのは御承知のように、国務次官補という政府の要人であります。こういう公的な資格の者と一緒に共同声明を出す以上、今御答弁のように正式の報告があつたとするならば、一体どういうような正式の資格を池田君自身がお持ちであるか、これをお伺いしておきます。
  60. 下田武三

    ○下田政府委員 先ほど公電をもつて報告がありましたと申し上げましたことは、池田さんの名においての報告ではございませんで、新木駐米大使が自分の管轄下で起つたことについての新木大使の公電をもつてする報告でございます。  それからただいまの御質問の資格でございますが、これは総理大臣も申されております通り吉田総理大臣の個人的の特使という性格であろうと存じております。
  61. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 公電は新木大使からの報告であつて、それは管轄の範囲で起つた事項に対する報告だと言われましたが、どうも筋がはつきりしない点がございます。それは新木大使がアメリカの政府側に対しまして、共同声明に関して池田個人的特使の立場についてオーソライズと申しますか、公には何か権威づけて申入れをしたということでありますが、この点について何か……
  62. 下田武三

    ○下田政府委員 池田・ロバートソン関係の電報は、先ほど申しましたように、在米大使が自己の管轄下に起つたこととしての報告と、もう一つは福田さんはよく御承知のように、外務省に依頼電というのがございますが、池田より総理へということで、在外機関はただそれを取次ぐという意味のものと二種類ございます。私の記憶では、共同声明の方は新木さんの管轄下の事項の報告というものだつたと記憶しております。それ以外のことは池田さんが直接総理に通信される機関、手段をお持ちになりませんので、在米大使館を通じての公電を借用しておるという形式でございます。でございますから外務省の出先機関たる在米大使館といたしましては、この問題の実質は、取次機関にすぎなかつたのでございます。従つて外務省あるいは出先といたしましては、話合いの本質に立ち入つて何ら探求いたしておらないのでございます。あくまで池田さんが総理の個人的特使としての行動で終始されておつた次第でございます。
  63. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 御説明よくわかりますが、もう一度お伺いします。しからばこの国会がまさに終ろうとする大事な非常に微妙なときに、この機会を選んで新木大使が米国政府側に何ゆえにこの間の共同声明について申入れをしたか、その意味をお伺いいたします。
  64. 下田武三

    ○下田政府委員 池田さんは個人的特使の資格で行かれまして、しかも共同声明に出ておりますように、非公式な意見の交換、アンオフイシヤル・エクスチエンジ・オブ・オピニオン、非公式という建前でございます。また別段何もとりきめを結ぶわけでもないということを断わつております。向うは御指摘のように国務次官補が当つております。そこでアメリカ側としましては、自分はいろいろ意見の交換をしたが、個人的の特使と実はした次第である。日本政府としてはどう見ているのかということを知りたいというのが当然だろうと私は思うのであります。そこで外務大臣の訓令をもちまして、要するにこの意見交換ということは、あくまで個人的特使の意見の交換でありますが、その内容についてどうこうというのではなくて、こういう意見の交換という経緯を経て、結局東京の会談に持つて行こうということが実質的内容でございますが、この個人的特使との話合いに引続いで、今度は政府が取上げて東京で話をするということに、異存はないという趣旨のことを、新木大使から意思表示しろという趣旨の訓令が出たものと了解いたしております。
  65. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 それで少しわかつて参りましたが、伝えられておるところによりますと、池田特使の資格が国会で論議され、政府側答弁がこれを非公式、個人的な資格としたために、アメリカ側を刺激した。それで何らかのはつきりした話をしろ、共同声明まで国務次官補としておきながら、個人的資格の空気が一部にあつて、アメリカ側を刺激した。そのために今お話のように訓令を出して、特にその点を向うに断つたといいますか、釈明したといいますか、そういうことが伝えられておりますが、この点はどうでございますか。
  66. 下田武三

    ○下田政府委員 アメリカ側から、個人的特使との話合いで筋が立たぬという不満の気持は、全然ございませんでした。これは総理がわざわざ特使を派遣されて、しかもあらゆる問題と最も関係の深い財政問題の権威を派遣されたということを、それはむしろ丁重な手続であるというふうにアプリーシエートしていると了解しております。従いまして今回の訓令は何もアメリカ側の催促がないことはもちろんでございますが、またアメリカ側の空気を察知しての訓令ではございませんで、全然日本側から自発的に出しました訓令で、その訓令に基いて、新木大使日本側からの自発的申出として申し出たのであります。
  67. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 わが方の自発的な判断でそういう訓令をして、新木大使をして申し出させた、それならそれでけつこうでありますが、いかにも時期がまずかつた、政治的なセンスがゼロであると思う。ちようど本日で国会は終了するというきわめて重大な時期に、何ゆえにそういう訓令を出して、しかも問題の中心の一つでありますが、わざわざ断つたという考え方が、私どもにはちよつと了解ができないのであります。しかしまあ出したことはしかたがありませんから、追究いたしませんが、ここで一つ具体的に御説明を願いたいことは、今のお話によると、池田・ロバートソン会談は、一種の予備会談である。すなわちこの共同声明にもはつきり書いてありますように、一般的了解に達した云々という字を明白に使つておるし、さらに、日本の防衛力並びに米国の軍事援助に関する諸問題については、具体的な了解に達する目的をもつて、近く東京において両国政府の代表が、さらに協議を行うということを明文にうたつておりますが、そうなると、法理的なことはこまかく申しませんが、ただ問題は、内容がきわめて重大であつて、近く東京でさらに協議をするということは、この池田・ロバートソン会談は明らかに国際会談であり、また予備会談という性格を持つておる。そうなれば政府は一体近くとはいつごろの時期をさすか。また討議せらるべき具体的の内容はどういうものであるか。さらに池田・ロバートソンの共同声明では抽象的でわかりませんが、もつと具体的の問題について、国民に国会を通じて、——むしろ質問を受けるのじやなく、これこそ自発的に国会を通じて予備会談内容を発表すべきである。そうすることが外交としても常道であるし、当然の義務であると思いますが、それについての御準備があるかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  68. 下田武三

    ○下田政府委員 仰せのように、池田ロバートソン会談は、東京におきます交渉の予備的性質を持つて来ることに、今回の申出によつてつたことは明らかだと思います。従いまして、アンオフイシヤルな、個人的な特使の話合いでありますが、その話合いの上で、今度オフイシヤルの討議が行われるということは明らかであろうと思います。そうして共同声明に引続いて東京で討議するということになりました問題は、御指摘の日本の自衛力増強の問題と、もう一つは米国の対日援助のセツツルメントの問題、この二つについて東京会談ということが言われております。そして自衛力増強の問題は、MSAの東京の交渉と密接な関連があるのでございまして、これはもうただちにでも東京で始められることになるのではないかと思います。もつともハイ・レベルの話は、池田特使がお帰りになりまして、政府の首脳部ととつくり話されてからだと思いますが、事務的には、従来引続いて行われておりましたものが、やはり継続されて行くということになると思います。それから米国の対日援助の処理の方の話合いは、これは従来から日本は債務と心得ており、適当な時期に交渉するということは前から申しておつたのでございますが、今のところ、それじやいつからどこで話を始めるかということはきまつておりません。従いまして、これは今のところ見通しは申し上げられませんが、いずれにいたしましても、このMSAや自衛力の漸増につきまして、国会でたびたび政府側から御報告申し上げておりますように、今後も国会を通じまして、国民に対してできるだけの範囲で交渉の経緯を報告申し上げるということは、私は政府の御意思であろうとそんたくしております。
  69. 上塚司

    上塚委員長 次は須磨彌吉郎君。
  70. 須磨彌吉郎

    須磨委員 まず最初に私は戦犯の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。ただいままでフイリピンを初めとしまして、戦犯の釈放がだんだん行われたのでございますが、今なお多数の戦犯が巣鴨におるわけでございます。アメリカだけで見ましても、三百三十六名というような多数に上つておるのでございますが、わが国が最も密接な関係のあるアメリカにおいて、すでに三百数十名を数える者がまだ出ておらぬというようなことは、独立いたしました日本に対して、非常におもしろくない感じを与えるわけでございます。これは国際関係の全体としてもそうでございます。また一方で多数帰つて来ておりますときに、帰らない者がおるということは、言うに言われない人道上の微妙なる感情もあるわけでございますが、これらを考慮いたしまして、戦犯の問題についての従来の御交渉の経過並びに現状をお尋ねいたしたいと思います。
  71. 古内広雄

    ○古内説明員 お答えいたします。ただいま須磨議員のおつしやつたように、講和発効後二年たつて、今日なお八百名以上の戦犯者が巣鴨におるということは、われわれとして非常に遺憾な不幸なことであると存じております。もちろん政府といたしましては、法律的には、講和条約及びそれに基く法律によつて、戦犯者を巣鴨に拘留する義務を負つておるのでありますが、その法律論は別といたしまして、国民の一員として、われわれもこれらの方方のお立場に非常に同情いたしております。政府といたしましても、吉田総理以下岡崎外務大臣、法務大臣その他関係各閣僚も、この問題には非常に頭を悩ましておられるようでありまして、従来私の承知いたしておりますところによれば、吉田総理も、かつてダレス長官がおいでになつたときに、この問題にもお触れになつたと漏れ承つておりますし、その後吉田総理大臣の御指示によつて外務大臣もこの問題の解決に非常に苦心をしておられ、従つて関係国の在外公館には、随時必要な訓令を出しておられる模様でありまして、アメリカを初め、イギリス、オランダ、濠州では、各在外大使が任国の政府とこの問題について折衝をしておられるようであります。なお吉田総理岡崎外務大臣以下関係の方々は、そういうような在外公館を通じての交渉のみではなく、まだもう少しその上にやつてみたいという御趣旨で、先般国際連合の俘虜特別委員会に御出席のため御渡欧なさいました有田、山下両議員にも、その委員会の帰途、関係国をおまわりの節に、国会議員の立場から、この問題を関係国の政府首脳部に説明し、また彼らの同情ある解決促進してくださるように政府からもお願いしたわけでありまして、その後政府といたしましては、日本から欧州、アメリカにおいでになる著名な方には随時お願いして、向うの要人とお会いになるときにこの問題を提起していただくよう、たとえば池田さんやあるいは愛知大蔵政務次官の渡米に際しても、外務省からもこの問題をお願いしてあるはずであります。それから戦犯室から見ておりますと、民間諸団体、ことにキリスト教の団体からも、直接アメリカのキリスト教団体あたりに働きかけて、この問題の即時解決促進するよう頼んでいるようであります。問題は、私の見るところによりますと、りくつを申せば、日本側にも法律論、人道論のりくつはございますが、それを強硬に立てて参りますと、やはり向うにも法律論があり、人道論があるようでありまして、たとえば人道論で申してみますれば、日本側がこの問題を人道的に非常に遺憾なことだと申せば、関係国の方ではやはり戦争中の彼らの国民に対する虐待を取上げて、自分の方にも人道問題があるのだという調子でございまして、法律論、人道論ではあまりこちらからのきめ手がないような次第でございます。ただ、要するに戦争後八年経過して、ただわれわれと運命を異にして外地におつたがゆえに戦犯に問われ、長く自由を拘束されている人が大部分である、こういう事実はわれわれ日本人一般として、非常に耐えがたいというその衷情を、関係政府並びに国民に訴えて、この問題を解決する必要があると現在では考えております。それでわれわれこそわれわれの同胞が巣鴨に拘留されているということに対して、非常に同情を感ずるのでありますが、いろいろの手を用いませんと、関係国の国民及び政府では、どうせ八百名少しばかりの日本人の戦犯の問題でありまして、忘れがちなのであります。従つてほおつておけば、その関係国の政府の係の課長あたりが、この問題をまあゆつくり取扱つているという事情に陥りがちなのでありまして、私どもといたしましては、先ほど来申しましたように、在外公館を通じて随時折衝すると同時に、日本から出て行かれる著名の方々に、関係国の要人とお会いの節に、その都度この問題を提起していただくことを希望いたしておりますし、その他いろいろな手を用いて、関係国の首脳部の本問題に対する注意を喚起して行くことが大事だと思つております。  この現在残つている八百六十名の戦犯の全面釈放というのが、戦犯関係者並びにわれわれ日本国民一般の切に希望するところでございますが、現状におきましては関係国の政府では、戦犯釈放ということを非常に明らかに表面に出すことは、自分の方の国内の対日感情からはなはだ実施しにくい、そこで現在のところでは、とにかく戦犯者個人々々の個別的な審査で、再審査というような形でできるだけ多くの人を釈放して行きたい、こう言つているようであります。そのような要望に沿うために、最近法務省の中央更生保護審査会の委員長の土田豊氏を関係国に派遣いたしました。土田氏はワシントン、ニユーヨークの旅を終えて、現在ロンドンにおられます。これからオランダ、フランス、西独をまわつて今月の末に帰られるわけでありますが、土田さんはそのような仕事の関係上、戦犯者の個々のケースについて、だれよりも一番詳しく通じておられますので、土田さんが関係国の首脳部とお話になることによつて、このケース・バイ・ケースによる解決方法を、できるだけスピード・アツプするというふうに、非常な貢献がなされるのではないかと期待しております。現に御承知のように、土田氏がワシントンを出発するに際して、スノー委員長は、土田氏の要請をアメリカとしても受入れて、この審査をできるだけ早めて行きたいということを言明しておられるようであります。
  72. 須磨彌吉郎

    須磨委員 大体御説明によつて明らかになりましたが、本年のクリスマスくらいを期してどこかで釈放するという気勢はございませんでしようか。
  73. 古内広雄

    ○古内説明員 お答えいたします。巣鴨の戦犯者並びにそれの関係者一同は、内心クリスマスまでにこの問題が片づいてほしいというふうに非常に希望しておりますけれども、率直に申しまして、現状ではクリスマスまでに大部分が解決するということは、非常に可能性が少いのじやなかろうかと思います。
  74. 須磨彌吉郎

    須磨委員 ただいまの御説明のお言葉にもありましたが、随時注意を喚起することが非常に必要であるということは、われわれも認めるわけでありますが、さような筋を通すことに対しましては、今の戦犯係のスタツフでは間に合わない、もつとやはり手広にやることが必要ではないかという考えを持つものであります。実は終戦直後におきましては、相当の数を置かれて、大分いろいろな方向に手をまわされたようでございますが、最近はこれがだんだん忘れられがちである。ところがそれに逆比例しまして、この戦犯問題は国民感情に非常に鋭く当つて来るわけでありますから、かような点を考えられまして、もつとこの戦犯関係の機構を大きくされまして、一日も早くこの問題の解決に当るという御用意はないものでしようか。
  75. 古内広雄

    ○古内説明員 お答えいたします。外務省に関する限りは、現在の機構で間に合つていると思います。と申しますのは、いろいろの手を通じて関係国の輿論に働きかけて行くという点に、われわれ外務省といたしましては最も関心を持つているのでございますが、その点に関しては、あえて外務省内部の機構を現在以上にふやさなくとも、いろいろな方にお願いするという道が講ぜられていると思います。もちろんその他巣鴨における戦犯者の取扱い、その釈放、減刑に対する勧告文の作成、そういうことの問題に関して現在の機構が十分であるかいなかに関しては法務関係の方からお答え願いたいと思います。
  76. 齋藤三郎

    ○齋藤説明員 法務省におきまして、巣鴨プリズンの管理及び巣鴨在所者の赦免その他の勧告の決定をいたしております。巣鴨の管理につきましては、矯正局がこれを担当いたしております。勧告の決定につきましては、先ほど古内戦犯室長から申し上げました通りに、法務省の付属機関でございます中央更生保護審査会というものが調査をいたし、そこで決定をいたしております。構成員は先ほど申し上げましたように、外務省に長年おられました士田豊さんが委員長で、現在外遊中でございます。なおその事務につきましては、私ども保護局がそれを担当いたして、その処理をいたしております。大体昨年の四月巣鴨プリズンがこちらの管理に移りまして、すぐ即日から調査を開始いたしまして、現在まで仮出所につきましては、資格を有する人ほとんど全部につきまして勧告を終了いたしております。また赦免その他につきましてもほとんど全部済みまして、現在は、昨年の初めあたりに急いでやりましたために、現在から見れば、まだ足りなかつたと思う点、もつと強調すればよかつたのではないかというような点を補足いたし、またその後の状況の変化等につきまして調査をいたしまして、外務省を通じてそれぞれの関係国にその状況を伝えて、一日もすみやかにこちらの希望するような決定の得られるように努力いたしております。さような関係で一年以上事務をいたしまして、係の者もなれて参りまして、現在のところ現状で間に合うのではないか、かように考えております。
  77. 須磨彌吉郎

    須磨委員 本日の午後の本会議において、わが党の並木委員から大質問があるわけでございますから、ただ簡単に先ほどの福田委員に対する条約局長のお答えに関連して、ちよつとお伺いしておきたいと思うのであります。条約局長は今回の池田・ロバートソン会談は非公式な意見の交換であつて、それから始まつたことであると申されるのでございます。世界のいろいろな交渉というものは、それぞれ式があるわけでございまして、その中でアメリカの方式は、私もアメリカの大使館に在勤をいたしておりまして、そのことはよく存じておるものだと申し上げてよろしいと思いますが、常にアンオフイシヤル・エクスチエンジ・オブ・ヴユーとか、あるいはノンコミツタルであつて、さようなことで、最後の瞬間までやつているのが例でございます。これは今回東京で行われました行政協定の問題でありますとか、国連軍の地位に関する問題でありますとか、さような交渉においても同様であることは、もちろんだろうと思うのでございます。その点においては、今度の池田・ロバートソン会談が非公式に行われたということは、すなわちこれは、だれかがあとで目をつければ、全体が生きるという標本であると申し上げねばならぬのでございます。それでありますから、先ほどの条約局長の御説明は、いかにもあのままにお聞きすればごもつともなのでございますが、それすなわち今回の、この新木大使に対する訓令一本で全部が生き返つたと申されても、いたし方のないことであろうと思う。私は今までの対米交渉の経過からいたしまして、実際に当つたことのある体験から見まして、さように思いますが、その点いかがなものでありましようか。
  78. 下田武三

    ○下田政府委員 仰せの通りだと存じます。アンオフイシヤル、非公式な特使が、公式の相手国政府の意向を打診する、これは私から申し上げるまでもなく、非常にいい方法だと存じます。つまりアンオフイシヤルであるということは、その特使が何か個人的に行かれましても、ただちに日本政府がそれによつて拘束されないという、日本政府がフリー・ハンドを保持し続けられるというところが、私は妙味だろうと思うのでございます。そこで個人的な資格で、特使として行かれましても、その方が与党の政調会長であり、前大蔵大臣であり、財政通であるという重みは、相手国にはアプリシエートされておるのでございまして、従つて非公式ではございましても、そういう方が総理の個人的の代表的な資格でおいでになりまして、そして日本政府の手は決して縛らないで、話が自由にできるという点で、私は妙味があつたのだろうと思います。そこで今般政府から訓令が出まして、引続いて東京会談をやることに異存ないという意思表示をされましたことは、やはり今まで非公式な資格で自由に話された、その基礎において、これからひとつ東京で話をしよう、そういう政府のお考えではないかと私は想像いたすのでございます。
  79. 須磨彌吉郎

    須磨委員 重大な点に到達いたしましたが、さような交渉の形式を利用して、今回東京会談を認めた。これは明らかな事実でございましよう。あのロバートソンとの会談のコミユニケを認めるなどということを、向うのUP電報は言つて来ておりますが、世界の外交史上、コミユニケを認めたということはあり得ないことでありますから、これは誤報であるか何であるか、私にはわかりませんが、東京会談を認めたことは、外務大臣がきのう参議院の予算委員会かにおいて申されておるのでございます。東京会談を認めることは、すなわちあの池田・ロバートソン会談のコミユニケ全体の重みが、東京においてやがて会談をいたしましようという一点にかかつておるのでございます。それを認めるということは、あの全体の精神を認め、今までアンオフイシヤルであるそのキヤラクターを、すつかりオフイシヤルにしたということになる。さように解してよろしいですか。
  80. 下田武三

    ○下田政府委員 今まで非公式の資格でおいでになりました池田特使のやられましたことが、すべてアンオフイシヤルからオフイシヤルに立ちかわるのだという、そこまでは私は申し上げられないのではないかと思うのでございます。それはあくまで池田さんが話されましたことは、アンオフイシヤルな特使の資格の話であり、またその長所を利用しての話でございますから、話合い過程において、まだいろいろなことを——この共同コミユニケにないことも、言われただろうと思います。また、ただちにそれを日本政府意思ととられることを避けたいようなことも、言われたかもしれません。しかしそれはあくまで、当時の非公式な資格でのフリー・トーキングでございまして、要するに今般の訓令は、いろいろなことを言われましたその最後の締めくくりをつけました共同声明に、同意を与えたというような新聞報道でありますが、私は同意を与えるべき何ものもないと思うのでございます。ただ意見の表明にすぎないのでございまして、別段何らとりきめをいたしたということもないのでございます。結局政府として取上げられることは、須磨さんのおつしやいますように、引続き東京で話をするということが、実質的な中身でございますから、その点は異存ないという返事だけであつて、必要にして十分な点を意思表示したのではないか、そういうふうに私は考えます。     〔委員長退席、並木委員長代理着席〕
  81. 須磨彌吉郎

    須磨委員 いよいよ重要な点に達したわけでございます。たとえば条約局長が行政協定その他についてアメリカと御交渉になるときにも、常にアンオフイシヤル・エクスチエンジ・トークスというものが最後まで行われる。そうするとどういうことになるかと申しますと、最後に調印することになつたときに、今までのアン・オフイシヤルなものがほんとうのオフイシヤルなものにかわるわけでございます。その点において今までの了解事項は、そういう内容を申しておるのではありませんが、ああいうものを同意したということはありません。コミユニケを同意したということは、世界の外交史上にございません。しかし池田勇人君が向うと話をされたという一点を認めるということは、今までのアンオフイシヤルな話をオフイシヤルにしたということは、これはアメリカの慣例によりますと、私は外交上消すことのできないことだと思います。そこに非常な問題がある。そういう手続をとることは、いかにも池田・ロバートソン会談というものは、国会に発表しないでやる便宜な方法としてとつたかのごとく、われわれは受取らなければならなくなつたことが、重点でございます。その点についてどういうようにお考えになりますか。
  82. 下田武三

    ○下田政府委員 私ども事務当局にはその間の事情はわかりませんが、非公式の特使を派遣しておる間の話合いという形をとれば、国会に報告しないで済むというようなねらいでなさつたのではあくまでもないと思います。むしろ先ほど申しましたパーソナル・レプリゼンタテイヴと申しますか、非公式な特使が自由に政府を拘束することなく話をするという長所が、実は大きなねらいとして派遣されたのではないか、こう存ずる次第でございます。
  83. 須磨彌吉郎

    須磨委員 もう一ぺん念を押しておきます。私はもちろん将来うそをつくつもりでやつたと言つておるのではありません。今の結果から申しますと、アメリカのやり方から言うと、最後の瞬間にアンオフイシヤル・トーキングをオフインヤルに認めたということから見ますと、実は今度政府は、池田勇人君という人の今おつしやつた非常ないろいろな経験を利用して、やりやすいようにしたのでございますが、この話合いそのものは、この瞬間から前にさかのぼつてこれがほんとうになるわけでございます。生きて来るわけでございます。今までのアンオフイシヤル・エクスチエンジ・オブ・ヴユーがオフインヤル・エクスチエンジ・レブ・ヴユーになるわけでございます。そういうことにしたことは事実でありましよう。まずそれをお伺いしたい。これは条約局長としては冷静な客観的御答弁を願いたい。     〔並木委員長代理退席、委員長着席〕
  84. 下田武三

    ○下田政府委員 私は、この会談のあと、引続いて東京でやるという意思表示をいたしましたことは、池田さんのおつしやつたことはすべて過去にさかのぼつて日本政府のオフイシヤルな見解になるという遡及効までは持たないものである、そういうように考えます。
  85. 並木芳雄

    並木委員 それはおかしい。それでは一々どことどこだけは日本政府としては認める、あの共同声明の中で、どことどこは保留しておくというように、はつきりわけてやらなければ、新木大使現地の声明と食い違つて来るのですから、先方は困ります。今、何も協定のようなものはないと局長は答弁したけれども協定はありませんが、この共同声明を読めば、了解事項に達した点が書いてある。その了解事項の中で、三、三の点は、具体的のことその他細目について、さらに東京で会談を続行いたしましよう、こういう形をとつております。ですから、東京で続行するということだけを認めるということは、その他のことは当然前提として認めたことにならなければおかしい。それとも、それじや池田特使の言つたことは全然御破算にして、初めから東京であらためてやり直すということですか。そこをはつきりしていたただかないと、判断に苦しむわけです。
  86. 下田武三

    ○下田政府委員 共同声明の内容は、実は池田特使が行かれる前から日米間に話合いがあつた事項の範囲を、一つ歩も出ておりません。ただその内容で、具体的な決定は何もなかつたわけでありまして、双方の意見が共同声明ににじみ出ておるように見られるのでございます。そこで、共同声明は一つの経緯を認めたというものでございまして、従つてこういう経緯があつたということを了承いたしまして、その上で東京で話をする。つまり並木さんのおつしやることを私はこう解すれば、ごもつともだと思うのです。つまり、せつかく池田特使がワシントンまで行かれて、いろいろ話された。それを再び初めからむし返して議論をし直すということはおそらく必要ないことでありましよう。つまりむし返しをしないで、一応池田さんが話された経緯の上に立つた上で、東京で話をしようという効果は、私はあると思うのでございます。
  87. 上塚司

    上塚委員長 穗積七郎君。
  88. 穗積七郎

    穗積委員 私は時間がありませんから、池田・ロバートソン会談声明に対して、政府がこれを認める、これに異存のないという意思表示をされたことは、重大なことだと思うので、それに対して形式論がいろいろ行われましたが、それはあとにして、内容について二、三お尋ねいたしたいと思います。  まず第一に、この池田・ロバートソンの会談は、情報の交換だけでなしに、一般的了解事項に達したというとりきめになつておりますが、これらを認めるといたしますと、それの内容を見ますと、主要なものはほとんどMSA協定に関連する問題になるのです。予定されております東京会談に、これが引継がれるわけだと思いますが、そうなりますと、今までのMSA交渉と、次に予定される東京会談とは、一体どういう関係になるのか。
  89. 下田武三

    ○下田政府委員 ちよつとお断りいたしますが、了解事項とおつしやいましたが、了解事項と申しますと、条約の付属的とりきめによく使う言葉でありまして、これは約束、とりきめの意思になります。共同声明では、了解事項とは申しませんで、デフイニツト・アンダースタンデイングという字を使つておりますので、そういう意味ではないのでございます。そこで御質問の点でありますが、そこはまだはつきりきまつておりません。つまり、MSA協定交渉——日本が援助を受けられるようにし、アメリカが援助を与えられるようにするための水道の管でありますところのMSA協定交渉は、ただちにと申しますが、現にやつております。ところで、この共同声明の初めにございます自衛力増強の内容の問題は、協定という水道の管を何が流れて来るかという実質問題でありますが、これも早晩具体的な話が東京で行われるものと了解しております。そうして協定ができますのも、中身の具体的な問題の大筋がきまりますのも、おそらく同時ではないか。つまりただ水道の管だけこういうものができましたといつて、文句だけ並べたものを先につくつても、意味がないのでございますから、日本政府としては、管を流れる実体を大筋について話をきめて、それがわかつた上で、協定の方も調印する、そういう段取りになると存じます。
  90. 穗積七郎

    穗積委員 私のお尋ねいたしましたのは、ここでうたつております討議されたいろいろな問題が列記されただけでなしに、それに対する意見の一致した点が声明されております。そしてそれを日本政府は了承したわけですね。そういたしますと、この中で予定されておる東京会談まで、こちら側は了承しておるわけになると思いますが、ここで言われておる東京会談と、今までずつと継続して東京でやつておりますMSAの交渉会談との関係を、私はお尋ねしておるのです。そうすると、私のさらにお尋ねしておるのは、ここで予定されておる東京会談は、今まで池田・ロバートソンの話で了解に達した問題に対しては、すべて今まで東京で現に継続しつつあるMSA協定会談にそのまま移されるのか。今まで行われておつたMSA協定に関する会談とは別個に、東京において会談を始められるつもりか。その点をお尋ねしておるわけです。
  91. 下田武三

    ○下田政府委員 池田・ロバートソン会談に引続いての東京会談に対しましては、現在まで行われておりましたMSA協定は、その東京会談の一部にしかすぎない、そういうように了解いたします。
  92. 穗積七郎

    穗積委員 しかもこの了解に達しましたいろいろな問題は、すべてMSAの協定の骨格をなす問題ばかりでございます。そうなりますと、今言われました通り、もつと高度な政治的な東京会談が予定され、いつか知らぬが、これから始められる。そしてその中の一部として、MSA協定に関する交渉が行われる。その内容は、本会議と分科委員会みたいなかつこうになるのかどうか知りませんが、その関係を私はお尋ねしておるのです。それをもう少し明確にしていただきたい。
  93. 下田武三

    ○下田政府委員 共同声明に取上げております問題の範囲の方が、現在までの東京におけるMSA協定の問題で取上げられた問題の範囲よりも、はるかに広いわけでございます。そこで先ほど申しましたように、今までのMSA協定交渉は、今後行われる東京会談の全体の一部にすぎない、そういうことを申し上げたのであります。
  94. 穗積七郎

    穗積委員 そういたしますと、今まで行われましたMSA協定に関する会談は、ここで一ぺん新しい事態が起きて、これから予想される東京会談に移されるという意味ですか。
  95. 下田武三

    ○下田政府委員 別に切りかえとか移しかえは全然なくて、おそらく今まで話しておる人間同士がまた話し合うということになりはしないかと思います。もちろん今のレベルよりも高いレベルの話合いも必要に応じて行われるとは存じますが、交渉の仕方、手続等は今までのが踏襲されるのではないかと考えております。
  96. 穗積七郎

    穗積委員 そこのところがあいまいなのです。もつと具体的にお尋ねいたしますが、この池田・ロバートソン会談で討議された内容は、おつしやる通り、今までのMSA交渉会談内容よりも範囲が広くなつております。しかし重要な問題は、全部MSA交渉の骨骼をなすものが討議されておる。そこで私がさらに具体的にお尋ねいたしますならば、今まで行われておつたMSAに関する会議がございますが、これは一定のメンバーをもつて構成されておる。それでそれ以外に別の構成員をもつて会談をお始めになるのかどうかということを聞いておるのですが、その点を明らかにしていただきたい。
  97. 下田武三

    ○下田政府委員 別に交渉の機関を設けるということはおそらくないと思います。ただ共同声明では、たとえばMSA法五百五十条に農産物の購入なんかがございます。そうしますと、今まで出ておりませんでした農林当局の代表者も加える必要もございましよう。そういうような意味で新たな顔ぶれが入るということはあると思いますが、別の交渉のためのオーガニゼーシヨンをつくるということは、私には考えられません。
  98. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、ここで言つておる東京会談とは、すなわちMSA交渉の今までの継続されておる機関、それに移して東京で会談をするという意味なのですか。そうでなしに別個の外務大臣あるいは総理大臣も入つて話をする、あるいはまた他の」関係省の代表者も入つて別個にMSAの交渉の機関を拡大するのか、あるいはそれとは別個にするのか、この三つの場合についてどれをとられるのか伺つておるわけです。すなわちもう一ぺん言いますと、今まで通りのMSAの会議機関がございますが、それへ全部持ち込んで、多少の人員の補足はしても、それで行くのか、あるいはそれとは別個の性格のものをつくておやりになるのかどうかということを、私はお尋ねしておるわけです。
  99. 下田武三

    ○下田政府委員 お話のような外務大臣あるいは総理大臣までも加えた顔ぶれの交渉をやるかどうかという点、これは政府の御意向を伺つておりません。池田特使が話されたあとだから、あるいは初めから首脳部が出るというお考えも理論的には考えられますが、そういうものにするか、あるいは今まで通りの事務的な予備会談でやるかどうかという点の決定は、私はまだ伺つておりません。しかしやはりいきなり大物の首脳部の話よりも、現在通りの顔ぶれでやるという公算の方が、多いのではないかと事務的に考えております。
  100. 並木芳雄

    並木委員 ちよつと関連して。今の局長の答弁は重要な答弁だと思います。と申しますのは、岡崎外務大臣はMSAの調印をするためには、防衛の問題ということは関係がない、こういうことをしばしば言つておつのです。ところが今度の池田特使の話合い内容というものは防衛一本やりで、あとのことは一切つけ足しで、これは小麦の話もありますし、またガリオアの話も出出て来ておるし、中共貿易の話も出て来ておりますが、それはさつき局長が言う通り、今まで話合いの出て来たことにすぎない、結局池田会談は失敗に帰したので、何かおみやげを持つて行かなければならないだろうということで、あと一つか三つついたにすぎないと思います。借款の問題だつてそうです。問題は防衛計画を持つて行つて、それをアメリカとの間で調整することが使命であつた。ですからこそ今度帰つて来て、今の局長のような答弁になるわけなのです。それで今度は東京で開かれる会談の中に、MSAの交渉が含まれるであろうと最初に答弁された、私はその答弁が大事だと思うのです。これは岡崎外務大臣がしばしば防衛計画は関係がないので、MSA協定というものはそれとは別個に調印しようと思えば、いつでもできるのだという答弁をして来たのとまつたく食い違うのです。ですから穗積委員も今ああいうふうにこういうふうにといろいろくふうをして質問をしておるわけなのですが、そうすると結局その食い違いをどう局長は説明されるか。そうだとすれば池田特使の今度の使命なんというものは、単に腹の探り合いとか意見の交換の程度ではなくて、MSA調印の前提となる防衛計画についての重要な会談にはつたわけなのです。そうでないというなら、それじや会談とは別個にMSAの協定をやつて、そしてきようあすにでもその調印をしますか。東京会談が済んでからでなければ、MSAの調印ができないのじやないですか、その点をはつきりしておいてもらいたいと思います。
  101. 下田武三

    ○下田政府委員 私の申し上げることは、岡崎大臣の申し上げておりますことと、まつたく一致しておるのでありまして、これを大臣は土管と言つておられますが、援助が流れる土管をつくるという仕事と、もう一つは土管から何が流れて来るかという中身の問題と二つございます。そこでこれは理論的には土管だけ先につくるということは可能でございます。しかし政治的には土管だけつくつて、こういう文句の協定ができましたと言つて、それだけ先に国会に御承認を求めましても、国会側としては何が流れて来るかということを知らずして、承認のしようがないじやないかとおつしやると思います。でありますから、つい最近の機会にも岡崎大臣が言つておられますが、土管だけ先につくるということはいたしません。中身についての機関銃何ちようという細目は後のことでありますけれども、大づかみの点だけは明らかにしまして、それを確かめた上で調印するということが適当だというお考えだと思います。
  102. 穗積七郎

    穗積委員 今の点は大臣または次官がお見えになつてから、政府の御方針を伺うことにいたしまして、前に進みたいと思います。  そういたしますと、共同声明の中で、並木委員も触れましたが、重要な問題は防衛力の量並びに内容の問題ですが、それについては増強する原則をお互いに了承したというだけであつて内容については話がございませんでした。そこでこういうことによつて、とにかく政治的に見ますと行き詰まつたMSAの交渉を、池田・ロバートソン会談で打開の道を発見しようとした、その結果もう一ぺん東京へ持つてつて、話が継続されるわけですがそうなると近い時期でありますか、さつきはちよつとあいまいな御答弁でしたが、東京会談はいつごろの予定になりますか。
  103. 下田武三

    ○下田政府委員 これはちようど来るべき通常国会前に、政府の来年度予算案というものがどうしても決定される段階にございます。そこで来年度予算と大きな関係のございます日本の防衛計画というものは、大体予算案が策定される日までには、どうしてもきまらなければならない問題でございますから、その点で予算案の策定と、それを国会に提出する時期とのにらみ合せで、大体見当がつくのではないかと存じます。
  104. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、来月初めまでと予定してよろしゆうございますね。
  105. 下田武三

    ○下田政府委員 これは私から何とも申し上げられませんが、本年の末あるいは明年早々というような時期ではないかと思います。
  106. 穗積七郎

    穗積委員 それほど近い将来でありますならば、ここでは結論が出ておりませんが、日本側の東京会談において結論を出そうとする防衛計画は、その後どういうふうになつているか。局長にお尋ねするのはちよつと無理かもしれませんが、きようは保安庁長官は出られませんか。
  107. 上塚司

    上塚委員長 保安庁長官は参議院の方に出席して出られません。
  108. 穗積七郎

    穗積委員 それではもう一点内容について重要な点だけ——どうも所管大臣がおられないので質問のしようがないのですが、中共貿易の問題でございます。これは前の十六国会におきまして中共貿易促進決議案が行われて、本委員会におきましても、MSA交渉従つて中共貿易を制限しようとする意思がアメリカにあることは困るということをわれわれが表明いたしましたら、中共貿易は制限されないようにするということを言明されておつた。ところが向うから強く要望されて、こちらから応じたのは前の国会の八月初めでございましたが、促進決議案が出て政府にそのことを渡しておいたわけです。それに努力することを誓われたわけですが、ここでは驚くべき「高度の対中共貿易の統制を維持すること、」——高度という形容詞まで加えて、非常に中共貿易を押えて、日本の経済を無理やりにアメリカの軍需経済に縛りつけておこうということを了承しておるわけなのです。そうしますと、これは今までの国民または国会の要望とまつたく逆行する話をされて、その共同声明を出されて、さらにそれを政府が認めて異存はございませんというような声明をされる。この声明をオフイシヤルなものにすることは、同時に政治的に義務を持たなければなりません。そういうことをせられることは、われわれとしては政府は責任上大きな矛盾に到達していると思うのですが、その間の事情なり御方針についてお尋ねいたしておきたいと思います。
  109. 下田武三

    ○下田政府委員 共同声明の内容についてコメントする地位にないのでございますが、先ほど申しましたようにこの声明を読みますと、了解ということになつておりますが、実はこの部分はどつちの意見だ、この部分はどつちの意見だということが、実によく推察がおつきになるのじやないかと思いますが、御指摘の「高度の」云々のあとに「しかし同時に」という部分がまたございます。そこで中共貿易統制の問題は、平和条約以来の日本は、国連の措置に対して反対する侵略勢力にはいかなる援助も与えない。また侵略勢力に対抗しておる方にはあらゆる援助を与えるというのが、平和条約で明確にされました日本の根本的な建前でございます。そこで民主主義諸国で各国が共通の措置として、侵略勢力に対する貿易制限をやるという制度がありましたら、日本はやはり国連協力の建前から、これに協力せざるを得ないという大きな制約がございます。そこで問題となるのは、日本は西欧並にほかの国がやつているのと同じ程度の統制をやるならいいが、ほかの国よりも強度の統制を日本がやり続けるということは、これはジヤステイフアイできない。これが政府の考えでありまして、共同声明にも書いてありますように、「日米両国は統制品目の検討につき、現在の協議を更に続けることとした」——現在の協議というのは申すまでもなく、統制を強化する方の協議ではなくして、逆に統制を緩和して行こうという協議でございますから、ここに書いてありますことも日本政府の行き方とマツチしておると思うのでございます。
  110. 上塚司

    上塚委員長 穗積君時間が経過しましたから簡単に……。
  111. 穗積七郎

    穗積委員 この文章は実は中共貿易の統制を維持することが主題になつてつて、それでかすかにこちらの要望、しかしそれには日本の経済に大きなインフルエンスを持つからというのでございますが、これは大臣がお見えになつてから少しお尋ねしたいと思います。それでそれまで大臣並びに次官に対する質問は留保いたしまして、局長がお見えになつておりますから、別の問題についてお尋ねいたしたいと思います。  きようは上屋欧米局長がお見えになるかと思いましたが、ひとつ下田局長がかわつてお答えくださいませんか。それは何かといいますと、先ほど請願書の問題を取扱う場合におきましても、それからこの間の本会議における李ラインの問題につきましても、日本の国民の間、議会の中、また政府の中にも重大な二つの潮流がございます。一つはこの韓国問題を実力をもつて解決しろ、むしろ暴力をもつて解決したらどうかというふうに、むしろそちらを好まれるような空気が強いのであります。一方においては平和的方法においてぜひこれを解決したいという動きもあるわけでございますが、一昨日の委員会におきまして、局長も御同席でございましたが、大臣にこの間の久保田失言を率直にお取消しになつて財産請求権問題が交渉の中心と思われるから、問題を早くそちらに移して、李ライン問題、漁業問題を一挙に解決されるように希望をして、なるべくそういうふうに努力するという御答弁があつたのです。そういう情勢の中で私ども考えますのに、政府だけを督励しておくだけでなしに、われわれもその平和的解決に協力しなければならぬと思います。幸いにいたしまして休戦以来日韓間におきまして、平和的に国民外交促進したい。そして国民生活に関連しておる諸問題をも同時に解決の糸口を出して行きたい。たとえば中共の戦犯者の引揚げ、あるいはソ連の戦犯者の引揚げのごときに対しましても、政府としてはできなかつたことを民間外交でこれの糸口を出し、進んで遂に成功せしめるところまで持つてつたわけです。そういうことで韓国または北鮮に対しまして、日本側からそういう平和親善使節を送りたいという意向をわれわれ強く持つておるわけです。その場合に問題は旅券の問題でございますが、そういうことで今までの中共やソ連との関係等も考えまして、この民間人の旅行というものが旅券法に言います国家の利益を害する旅行ではなくて、また国家の利益を伸張せしめるどころか、政府の無能、行き詰まりを応援する役割を果して来たのでございます。これは国のために非常によいので、ぜひひとつ旅券を発行して、民間外交、平和外交促進するようにしていただきたいと思うのでございますが、それに対しての政府の御方針をお尋ねいたしたいと思います。
  112. 下田武三

    ○下田政府委員 私実は旅券問題は全然関知しておりませんので、間違つた答弁を申し上げるといけませんし、政務次官がよく御存じですから、政務次官がおいでになりましてから、お答えをさせていただきたいと思います。
  113. 穗積七郎

    穗積委員 それでは私の質問はあと留保いたします。
  114. 並木芳雄

    並木委員 今穗積委員の言われた暴力というのは何ですか。私は穗積委員質問しておきたいと思うのですが、暴力をもつて解決しようという政府あるいは政党というふうに聞いたのですけれども、それは具体的にどういう事実があるのですか。ただ言葉の上で暴力という言葉を使われて、われわれそばにいる外務委員が黙つているわけには行かない。
  115. 上塚司

    上塚委員長 穗積委員、何か御返事がありますか。
  116. 穗積七郎

    穗積委員 戦争というものには自衛戦争というものと侵略戦争とがあるといいますが、自衛戦争は正当防衛であつて、侵略戦争は暴力であるわけです。それを並木委員が認めるか認めないか聞いてから……。
  117. 並木芳雄

    並木委員 私が言つているのは、その議論はもうこの外務委員会でしばしばやつてつて尽きている。それをそんな認めるとか認めないとか言うのは、私の質問に対しての体かわしであつて、私は現実の問題を聞いているのです。そういう政府の内部あるいは政党の中、国民の間が二つの潮流にわかれておつて、中には暴力をもつて解決手段としよう、そういうものもあるということであるから、そういうふうに言われる以上は、具体的にどういうものがあるのかを聞くのは当然ではありませんか。それを先に答えてください。
  118. 穗積七郎

    穗積委員 暴力というのは要するに合理的ならざる実力を暴力と言うのです。合理的な話合いなり納得の上ではなしに、理論的構成なくしてやるのを暴力と言うのです。議会においても多数の暴力があります。それから政治におきましても官僚の行政の中におきましても、道理に従うすなわち合法的な手段によるもの以外によることを暴力と言う。そんなことはわかり切つたことでありまして、従つてこの場合韓国の問題におきましては当然、今向うの国際法における正当な国家の権利の主張をする建前と、それから日本側の建前というものが食い違つている。そこでもつて交渉が行き詰まつている。こちら側は向うの言うことは道理にかなわない、合法的なものではないと言う。向うは大陸だなの宣言その他を援用いたしまして、これは合法的なものだと主張している。こういうことなんです。従つてそれを客観的にどちらに基準を置くかということをきめるのが会議なんです。平和的方法外交手段なんです。それを解決しないでおいて、そうして力をもつて解決して行こうというようなことになりますれば、これは明らかに暴力なんです。
  119. 並木芳雄

    並木委員 だからだれなんです。どういう政党がそういうことを言つているのか。
  120. 穗積七郎

    穗積委員 それはみずから反省して自明の理でございます。
  121. 上塚司

    上塚委員長 この程度でひとつ。大体穗積君の説明はわかつたようでありますから……。
  122. 並木芳雄

    並木委員 わかつたといつても、ああいう発言は一応取消しておかれる方がいいと思うのです。具体的にどういう政党とかどういう国民とかがあげられないで、ただ暴力という言葉を使われると、やはり外務委員会の議事録に載れば、これは公式のものなんですから、知らない外国人というものはそんなものがあるのかと思つて、びつくりします。だから私は言つているのです。だからその取消しを要求してください。具体的にどの政党とかだれとかということを言えないのでしたら、この際私は穗積委員の良識に訴えて、あの言葉だけは取消してもらつた方がいいと思うのです。そういう意味で言つているのです。
  123. 上塚司

    上塚委員長 穗積委員は先ほどの暴力という発言を取消す御意思がありますか。
  124. 穗積七郎

    穗積委員 ありません。それは並木君がその暴力とは何ぞやということに対して精密な概念を持つておらぬからああいうことを言うのであつて、私は正確な意味で使つているのです。
  125. 並木芳雄

    並木委員 その定義を言つているのじやない。定義論から一歩先に入つて、その定義のもとにおける暴力によつて解決をはかろうとする者がいると言うから、それではだれだということを聞いているのですよ。これはあたりまえではないですか。そういう無責任なことをただ抽象論で言われたのであつては、はなはだ迷惑であるからそういうことをお尋ねしている。
  126. 上塚司

    上塚委員長 御両君の御議論は大体今までのところで了承されたと思いますからしてこの程度でとめていただきたいと思います。  次に戸叶里子君。
  127. 戸叶里子

    ○戸叶委員 先ごろからの池田・ロバートソン会談にいたしましても、それからまた共同声明にしても、また今回政府が新木大使をして発表したこの共同声明に対しての同意の問題にいたしましても、国民は非常にいやなあと味の悪い気持をたくさん持つております。何か知らない間に、政府がどんどん国民の好まざる方向に持つて行くのじやないかという危惧の念も非常に抱いているのでありまして、やはりできるだけそういうことを秘密にしないで、はつきりした内容説明して行くことが、私は今一番大切なことだと思います。そこで私は二、三点条約局長にお伺いしたいのですが、まず第一に伺いたいことは、昨日の委員会岡崎外務大臣答弁を伺つておりましても、この共同声明に対しての同意ということではなくして、東京会談を行うことに対しての政府が訓令を与えたんだ、こういうふうに答弁せられておりますが、そういうような抽象的な言い方では私どもわからないのでありまして、一体どういうふうな文句をもつて訓令を出されたか、その内容をまず伺いたいと思います。
  128. 下田武三

    ○下田政府委員 政府の出先使臣に対する訓令の内容は、これは憲法上行政府にまかせられました事項に属しますので、事実私はその訓令を承知しておりせんが、御説明を避けたいのでございます。問題はその訓令に基いて、新木大使がどういうふうに言われたかという点なのでありますが、その点の公電がきわめて簡単でわかりませんので、昨日さつそく新木大使がどういうふうに言つたのかという点の問合せの電報が出ております。私がここに参りますまでに、まだその返事が到達いたしておりませんが、それが着きますと、事態は非常に明らかになると存じます。
  129. 戸叶里子

    ○戸叶委員 新木大使からの返電ももちろん必要でございますけれども、やはりこちら側から出した文句というものも私どもは知りたいと思います。そこで条約局長にお願いしておきますが、ぜひこれを委員会なり何なりで公表していただきたいと思いますが、その点はいかかでございましようか。
  130. 下田武三

    ○下田政府委員 これは私からはお答え申し上げられませんが、要するに内容は、大臣が昨日も言われましたように、この共同コミユニケのあとを受けて東京で会談することに異存がないという意思を、米国政府に表示しろという荒筋の訓令だつたと聞いております。
  131. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それではもしも大臣の言つたこと、考えられたことを取違えて新木大使が共同声明を向うに伝えたといたしましたならば、新木大使の責任は一体どういうことになるのでしようか。
  132. 下田武三

    ○下田政府委員 新木大使は練達の士であられますので、訓令を取違えて申されるというようなことは、私は想像つかないのであります。ただ実際に米側に、ロバートソン次官補に言つたことと、それからこういうように言つたといつて今度プレス・コンフアレンスで言われたことと、正確に一致していなかつたか、あるいはそのプレスの情報が東京に参ります過程においてやはり誤解が生じたか、どちらかでないかと思うのであります。
  133. 戸叶里子

    ○戸叶委員 たいへん不満な答弁でございますが、私は条約局長にどうかそういう御答弁をしないで済むように、はつきりとこちらから出した訓令の内容をなるべく早い機会に見せていただきたいということを希望として申し上げます。  その次に伺いたいのですけれども、池田さんの資格は個人特使ということはわかりました。そうしますと相手方のロバートソン氏はどういう資格で、池田さんと会談されたのでしよう。
  134. 下田武三

    ○下田政府委員 ロバートソン次官補も米国政府の官吏でございますが、ただロバートソンが官吏として出席したがゆえに会談がオフイシヤルなものになつたわけではございません。この共同声明にもはつきり書いてありますように、あくまで会談はアンオフイシヤルなものである、こういうことはよくございます。ただいまMSAの交渉をやつておりますが、これもアンオフイシヤルでございます。また両方の政府は何ら拘束されないという了解の上 で、私どもは話しておるのでございまして、これもアンオフイシヤルなものでございます。
  135. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私にはその点が了解できないのですけれども、そうしますと、ロバートソン氏も自分の官吏としての職ではなくて、池田さんのパーソナ ル・レプリゼンタテイヴに相当するような何か地位を受けて、そこで会談をされたというふうに了解するわけでしようか。自分の官職というものを離れての会談ということになるのですか。
  136. 下田武三

    ○下田政府委員 国務省の役人も日本外務省の役人でもそうでございますが、話をやります前にはつきり断るのでございます。これは政府意思を体して話すのだという場合と、これは政府を絶対に拘束しないけれども、個人的の意見として申し上げるという断りで話をすることがたくさんございます。ロバートソンも国務次官補ではございますが、池田さんと同じように、 これは米国政府の意見として言うのでなくて、ほんとうに個人としての話だということで自由な討議をやつてつた、そいう建前をとつていると了解しております。
  137. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、こういうふうな両方ともアンオフイシヤルなものとしての会談として考えまして、そのときに出された共同声明というものは、どういう性質を持つものでしようか。たとえば共同声明というものは、だれかに知らせる目的を持つたものだと思うのです。そうすると、だれに知らせるつもりですかと聞けば、これは当然アメリカ側と日本側両方に知らせるということになると思うのです。そうしますと、こういうような形で発せられた共同声明というものは、一体今までの国際法から考えてみて、どういう資格なり何なりがあるのでしよう。
  138. 下田武三

    ○下田政府委員 共同声明は、コンフアリーと申しますか、非公式の会談を行つた会談参加者が、外部に対してどういうことを話したかということを発表する目的で、会談参加者の発表でございます。
  139. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、これは何も公的な色彩を帯びていない、こうおつしやるわけなんですが、どういうことをもつて公的な色彩を帯びていないということが証明されるわけなんでしようか。
  140. 下田武三

    ○下田政府委員 たとえば外務省発表ですとか、情報文化局長談ということで発表いたしますと、これはオフイシヤル・ドキユメントとなりますが、松平参与とパーソンズ参事官が非公式の会談をいたしまして——非公式会談のあとはあまり外務省では発表いたしませんが、もし何かやろうとしますと、その発表は外務省または日本政府の発表ではございませんで、会談参加者限りの発表ということになるわけでございます。
  141. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、今の問題ですが、両方ともアンオフイシヤルな形で会談をしたのに共同声明が出された——今度もしも新木さんが日本政府意思を代表して、それに対して一つの共同声明を出されます、共同声明に同意したというふうに申入れをされたとします。そうすると、結局それは日本の国を代表している新木大使がそういう意見を出したということで、非常な権威を持たされたことになると思うのです。そういうふうな例というものは、今までにたびたびあつたものなんでしようか、どうでしようか。
  142. 下田武三

    ○下田政府委員 これは例のないことではないと思いますが、新木大使がこの共同声明に現われた経緯を承知して、これに引続いて東京で会談をしようということは、今まで行われた非公式の会談を公式にする意味ではないと思います。ただこの非公式の会談が行われていろいろな意見の交換が行われました経緯を了承して、その上でそれに引続いて東京で話合いをしようという意思表示をする、これは日本政府を代表しての大使の公式な意思表示でございます。
  143. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私どもから考えますと、非公式でやられた声明というものに対して、あとから新木大使日本政府を通してそれを受諾するということを言つて、つまり追認という形になると思うのですが、そういうふうなことは国際法上あるのでしようか。たとえば今まで政府説明されましたように、この内容じやないのだ、東京で会談するということだけを日本政府が考えて訓令したのだ、そういうふうにおつしやるものといたしまして、これとは別個にもしもこういうようなことがほかにあつた場合、たとえばたれか個人的な特使として行つて向う側と共同声明を出して、それは個人の資格だからというので、あらためて日本の国から大使を通して、これに対して追認するというふうな形をとつた例は今まであつたでしようか。これと別個の問題として考えたときにあつたでしようか、どうでしようか。そういうことは国際法上許されるかどうか。この二点を伺いたい。
  144. 下田武三

    ○下田政府委員 あまり非公式会談というのは発表されないのが大部分の場合でございますし、発表されたものを追認した例というものは思い起せませんが、これと同じことは非常に頻繁に行われております。たとえばMSA協定におきましても、国連軍協定におきましても、今もいろいろほかの何をやつておりますが、全部非公式な予備的な話合いをやつております。それで非公式な話合いの結果何かまとまりますと、これでいいかということを両方の政府に伺いを立てるわけであります。そして伺いを立てて、いいということになつて、初めて政府間に公式の話合いをやるということの意思決定するわけでございまして、いきなり公式の建前で話合いをやるということはむしろ少うございます。
  145. 戸叶里子

    ○戸叶委員 すると共同声明なら共同声明を出す場合には、お互いの政府の問合せということは必要ないのですか。
  146. 下田武三

    ○下田政府委員 この共同声明をつくる前に、両国政府の事前の同意を得たかどうかという点だろうと思いますが、これは政府相談があつてつくられたのではなくて、会談参加音同士が相談してつくつた共同声明でございます。
  147. 並木芳雄

    並木委員 ちよつと関連して。アメリカの政府の方からはロバートソン・池田会談に対しての確認は日本政府に来ましたか。
  148. 下田武三

    ○下田政府委員 これはまだと申しますか、確認する必要が必ずしもある問題ではございませんので、まだそういうような意思表示があつたということは聞いておりません。
  149. 並木芳雄

    並木委員 それじや日本つてあえて確認しなくたつていいわけではないですか。
  150. 下田武三

    ○下田政府委員 むろん日本つて確認しなくてもいいのでありますけれども、池田特使がわざわざ行かれまして、それきり日本側が知らぬ顔をしておるというのも変でございますし、ことに中には東京で引続き会談をやると言つておりますから、その点だけについては、日本政府がどう思つているかということは、これは意思表示をする方がいいだろうと思います。
  151. 並木芳雄

    並木委員 少しおかしいと思うのですけれども、それではアメリカからコンフアームしてくれという何かあつたのですか。
  152. 下田武三

    ○下田政府委員 アメリカから何も申しておりません。日本側の自発的な措置でございます。
  153. 並木芳雄

    並木委員 くどいですが、そうすると共同声明というものには、アメリカの政府は全然拘束されないわけですか。今回日本政府から新木大使に訓令を発したような同意の通知をよこさない限り、アメリカ政府というものはロバートソン・池田会談からは完全にフリー・ハンドである、拘束されない、こういうことが言えるわけですか。
  154. 下田武三

    ○下田政府委員 この共同声明の中には、決定とか約束とかとりきめがちつともないのでありまして、非公式な会談でいろいろな意見が出たのを拾い上げておるのでございますから、双方ともそれを通じて相手国がどういう考えであるかということがよくわかつた次第でございます。それでまた目的は達した次第であります。ですからもうわかつたのですから、それをあらためて確認するとかどうとかいうことは、問題にならないと思うのであります。
  155. 戸叶里子

    ○戸叶委員 さつきどなたかもお触れになつたかと思いますが、日本から自発的にこういうものを認めますなどといつて出すそのこと自体が非常におかしいと思うのです。それからもう一つは、先ほどから条約局長は、非公式に話合いをするということはフリー・トーキングの形でやつて行くので、何か一つのことが起きた場合にも、個人の資格で話した場合には、政府が責任をとらないから、外交上非常に有利だ、こういうことをおつしやいました。それからまたいつかは吉田総理大臣が、この池田・ロバートソン会談に対しては、国際的道義的責任は負うけれども、内閣としてはこれに拘束されることはない、こういうようなことを言われたのでございます。けれども私は今回のこれが政府が拘束されたものでないということが言えないと思う。その一つの理由は、たとえば例を引いてみますと、今度のガリオアの問題等も、この中に含まれているようでございます。どういうふうにして日本が払うかというような問題もたしか入つていたと思うのですけれども、そういうふうなことに触れる、そういうことを含めた東京会談を次にするということを約束したことは、つまりそういうことをその次の東京会談にはしなければならない。そういう意味から言うならば、拘束されるものだと思うのであります。もしもそういうことの内容を全部否定してしまつて、そうして東京会談が始められるならば、何も拘束されるものじやないと思いますけれども、この内容に、たとえばこういうようなことをするのだ、こういう問題を討議したのだということがあるならば、当然それは東京会談で持ち出されなければならないと思うのです。そういう意味では政府は拘束されるものだと思うのですが、その点はいかがですか。
  156. 下田武三

    ○下田政府委員 でございますから、実質的な中身は東京において、初めの自衛力増強の問題とガリオアの問題について話合いをするということが——これについてはやはり何らかの意思表示を必要とする問題だろうと思うわけでございます。そこでただガリオアにつきましても、米国側の会議出席者はガリオア援助の可及的早期解決の重要性を強調したと書いてございます。でございますから東京会談が開かれました場合に、一体アメリカ側はこの問題を早く解決することが重要だと考えておるのかどうかということは、あらためて聞く必要がないことであります。これはつまり重要性が強調されておるのでありますから、そういう会談の経緯は、日本政府はもうこれでのみ込んでおるわけでございますから、そこでもうむし返しはやらないが、この共同声明の経緯を了承した上で、東京会談をやるということが、私は唯一のこのたびの政府意思表示の意義だろうと思います。
  157. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、重要性を強調すると書いてありますから、そのことには触れずにそつとしておけばいいというので、たとえば向うからそういう話が出ても、別にそれに応ずる義務はないわけなんでしようか。
  158. 下田武三

    ○下田政府委員 ところがこの問題につきましては、今度ワシントンで始まつた問題でございませんで、もう前から東京でも日米間の話合いが行われておつた問題でございます。もし全然新問題でございましたら、これは非常に大きな問題でございますけれども、そうでなくて、もう前から話し合つてつた問題でございますから、それをまた東京で話すということは、何ら新しい問題ではないわけでございます。     〔並木委員「前から話し合つていなかつたらどうする」と呼ぶ〕
  159. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今並木さんがおつしやいましたが、前から話し合つていなかつたらどうするかという点か一点と、下田条約局長のきのうの答弁新聞で拝見いたしましても、またきよう伺いましても、別に新しいことは何もないのだから、だから何も拘束されることはない、新しい義務は何もない、こういうふうにお答えになつていらつしやいますけれども、それならなぜ池田さんがわざわざ向うまで行つて日本で討議されておると同じようなことをあそこで討議して、また共同コミユニケを出すようなことをしなければならなかつたか、その理由を承りたい。
  160. 下田武三

    ○下田政府委員 取上げた問題自体は、何ら目新しい問題ではないのでございますけれども、先ほど申しましたお互いに相手国の意向を知るという打診の方法といたしましては、ああいう方が非公式な資格で自由に話されるということは、私は非常にいい打診の考え方で、向う側もまたそう思つたでございましよう。政府の公式の建前と違いまして、自由に話されるのでございますから。そこで自由討議による相互の意向打診ということが、これが私は今度の会談の非常な意義だろう、そうしてその意義は十分に果された、そういうふうに存ずるのであります。
  161. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしまと、いろいろ問題はありますけれども、今度は池田さんが日本へ帰つていらつしやいましたときに、東京会談には池田さんが入られた方がいいとお思いになるのですか、どうでしようか。
  162. 下田武三

    ○下田政府委員 池田さんはワシントンに行かれるときは個人的の特使で行かれまして、日本にお帰りになりましたら、また党の政調会長として御活躍をなさるでございましようが、少くとも政府首脳部におかれまして、十分経緯を聞かれるということは行われるでございましよう。しかし今までのつながりでもつて、東京で今度は池田さんが日本政府の代表となつて話されるということは、これは政府がどうお考えになるか私存じませんが、通常の場合何も個人的の資格で行かれた方が、今度帰つてそのままやはり公式に話をするというように、必ずしもつながるものではないということを私はお答え申し上げます。     —————————————
  163. 上塚司

    上塚委員長 この際先ほど中断いたしました李ライン問題に関する請願を議題にいたします。穗積七郎君。
  164. 穗積七郎

    穗積委員 簡潔に請願に関連いたしまして次官にお尋ねいたします。実は先ほどもちよつと局長に申し上げましたが、対韓問題あるいは李承晩ライン問題の解決につきましては、国民の間、議会の中におきましても、実力をもつて解決すべしという意見と、平和的外交手段によつて解決すべきことを熱望する意見と、二つの潮流があることをわれわれは見のがすことはできません。それはそれとして、思想なり国際情勢の認識の違いは、それは遺憾なことでありますが、民主主義の世の中にはあり得ることであります。問題はこれを執行する政府でございます。政府の中に、先般も水産委員会におきましてこの問題が問題になりましたときに、保安庁長官は、場合によるならば、実力をもつて出漁をするというような意見を示唆され、それから外務大臣は、われわれの要望を体されまして、平和的方法をもつて解決する意思がある、そうしてまたその望みは十分あるということを言われたのであります。きようも実はこの請願書の取扱いにつきまして、各委員から質問がありましたときに、政府部内におきまして、特に外務省外の水産庁あるいは保安庁等の御意向を伺いますと、やはり力なきを嘆ずるのであつて、力さえあれば力の解決方法を考えるという式の御意向でございます。これは明らかに矛盾したお考えでございまして、われわれが考えますのに、こういう請願書をどういうふうにお取扱いになるのか知りませんが、これは単に漁業問題だけではなくて、日韓関係における全体の国交調整の問題に関連した外交の問題だと思うのです。従つて出漁を欲し、また出漁されないために困つておる漁民等の生活の保障の問題は、これは別途に考えるとして、あくまで外務省の毅然たる平和的外交手段によつて、問題を解決するという態度で統一していただきたいと思うのですが、そのことに対する外務省の御所見と御信念を承つておきたいのであります。
  165. 小滝彬

    小滝政府委員 この点はいまさら御注意を受けるまでもなく、平和条約の前文をお読みになりましても、第五条をお読みになりましても、私どもは世界に向つて明らかにしておる点であります。こういう李ラインの問題も、一つの国際的紛争と見ることができます。それを武力的に解決するというようなことは、日本の憲法もこれを許さないところでありまして、私どもはあくまでもこれが平和的に解決されることを望み、またその方面に最善の努力をいたしたいと考えております。おそらく一部の方で述べられました意見というものは、現実の問題として保護措置をいかにするかという点において、その保護の程度というものに関し、あるいはいろいろ関係省によつて意見の違うところがあつたかもしれませんが、これは何も力でもつて解決しようというような趣旨で述べられたものではなくして、保護措置に万全を期したいという当局者の気持から言われたことであろうと考える次第であります。
  166. 穗積七郎

    穗積委員 そこで具体的に続いてお尋ねいたします。その原則をあくまで堅持していただくことにして、われわれは信頼を裏切らないようにしていただきたいと思うのですが、続いてお尋ねしたいのは、来月初め盛漁期にあたりまして集団出漁をして、場合によればこれの安全をはかるために、警備船をつけるというようなことも、先ほど来お話があつたのでございますが、もしそういうことを今の日韓交渉の状況の中で行うとすると、われわれがおそれますことは、その行為そのものが、かえつて日本漁業権を確保することではなく、また漁業による経済的利益を獲得することではなくて、大きな外交上のトラブルであります日韓交渉を、もつと紛争せしめる結果になりはしないか。そしてその結果は、漁民出漁を希望しておられる方々が希望される状態とはまつたく逆になりまして、一種の事実上の戦争状態を巻き起す、そうなりますとこの李ラインから向う側におきましては、漁業はなおさら困難になる。今の状態よりはさらに困難な、長期化した悪性の状態になることすら考えられるわけでございますが、そういうわけで水産庁あるいは海上保安庁が、出漁を希望する漁民の要請にこたえて、その面からだけで外交的な成行きや見通し、あとの責任等については、いささか思い落すところがあつて、そういう措置をとられるようなことがあるとすると、われわれそれを憂うるわけです。従つてこういう集団的な出漁問題に対しましても、これはすべての決定を、むしろ外務省で統一していただきたいと思うのです。水産庁なりあるいは保安庁にまかせないで、それらの意見も十分聞きますが外交上の対韓問題解決は、責任にある外務省の平和的、外交的な判断に立つて、その措置をとつていただきたいと思うわけですが、その点についてはどういうことでございましようか。
  167. 小滝彬

    小滝政府委員 先ほど申しましたように、日本人の公海における生命、財産保護に万全を期さなければならないという考え方から、いろいろその具体的な問題について研究されておるわけであります。そしてあるいは非常に緊急手段の必要があるという場合には、実力的な行動が必要になるかもしれないけれども、私どもとしては、できるだけそういうことの起らないように万全を期して、そういう事態になれば、穗積委員もおつしやいますように非常に紛糾して参りますので、そういうことが起らないようにして、なおかつ日本人の生命、財産保護し、そうして公海における漁業が、できるだけこれまで通りに遂行し得るような措置を考えておるわけであります。そこに非常に困難な問題もありますが、現場で思いがけない紛争を起すというようなことは、あくまでこれを回避して行かなかつたならば、せつかく話合いをしようといたしましても、そうした話合いもできないわけであります。そういう点は十分に注意するように、外務省といたしましても、そうした話合いには一緒に協議いたしまして、そうしたことの起らないように注意いたす考えであります。
  168. 穗積七郎

    穗積委員 そこでこれに関連してもう一点お尋ねいたしますが、実は二、三日前の外務委員会で、次官は御欠席でございましたが、日韓会談再開のために、たとえば具体的に申し上げるならば、久保田さんの発言、あの占領中日本の行政について云々ということでございますが、あれは確かに不適当な言葉でございますので、この際むしろ率直に失言をお取消しになつて、そして問題はやはり財産請求権の問題が、交渉の大きな焦点になつておると思いますので、むしろそれに対する、せつかくのしかも寛大な態度解決案というものをこちらが持つて、そしてこの日韓会談出漁期前に再開される御用意があるかないか。そのことを実は大臣にお尋ねいたしましたら、その趣旨をよく体して考慮しようという御答弁で、その後おわかれしておるわけです。しかもきようこういう請願書が出て参りまして、それで水産庁あるいは保安庁におきましては、今申しました集団出漁の場合も、場合によれば考えるというような考え方や研究が一方において進んでおるわけですから、それと即応いたしまして、今の外務省の御意見を生かすためには、どうしても私は出漁期前に、停頓しております日韓会談を、急速に平和的あるいはお互いに善意と友情の間で再開されるような促進をさるべきだ、そしたまたわれわれはその可能性があるというように考えておるわけでございますが、そのことに対して少し具体的な御方針を伺つておきたいと思うのです。
  169. 小滝彬

    小滝政府委員 過般の会談において、もつと具体的な案を出して、そうして互譲妥協の精神でやるべきであつたという御趣旨と存じますが、まことにその通りでありまして、日本側としても具体案を最初からでも出そうという気持でおりましたけれども先方の方でああいう理論的な面に話を持つて行かれましたので、不幸にしてたとえば漁業に関しても具体案が出せなかつたということは、けさほどもこの委員会で御答弁申し上げました通りであります。そこでこうなつたのだから、一日も早く先ほど私が申し上げましたような趣旨によつて会談を再開する用意があるかどうか、それについて具体案を持つて当る用意があるかどうかということでありますが、これは並木委員にもお答え申しました通り、われわれはぜひ早く平和的にこの問題が解決するようにというので、現に努力をいたしておるわけであります。ただその方法なり、またどこでやるか、どういうやり方をするかというような点につきましては、現実の問題としていろいろ考慮しなければならない点がありますために、ただ一本筋にまた東京で開こうというような方法でなしに、ほかの方法をとるかもしれません。その内容についてはすでに申し上げました通り、今現に交渉中でありますので、ここで言明することができないのを遺憾に存じますけれども、必ず近いうちにわれわれの努力が実を結んで、そうした機会が来るようになるだろう。そうしてでき得べくんば出漁の前に、そうした事態に到達せんことを望んでおりますが、これは相手もあることでありまして、はたして必ず十二月一日までにできるかどうかということは約束できませんけれども、必ずわれわれの努力が実を結ぶであろうというように期待いたしておる次第でございます。
  170. 並木芳雄

    並木委員 関連ですが、さつき次官は紛争解決のために武力を使うことはできないと言われた。これはわれわれも初めからそう思つたのですけれども政府の戦力の定義に関する問題から、多少ここに疑問が出て参ります。憲法第九条は、武力の行使あるいは武力による威嚇は国際紛争解決する手段としてはやらない。それで前に私は政府に、武力と戦力とはどう違うのかと聞いたら、同じだと政府は答えております。そうすると、武力すなわち戦力に至らないものであるならば、国際紛争解決する手段としても用いてよいのか。これはへりくつになるわけなんです。へりくつですけれども政府の戦力という解釈を固執されるならば、私はそういう法理上の反対解釈も成り立つのではないかと思います。つまり戦力と武力とは同じ性質のものである。何でも武力の方は動的、戦力の方は静的、そういうふうにわけて実質は同じだと言つておりました。そうすると憲法第九条の武力に至らないもの、つまり戦力に至らないものは、国際紛争解決手段として用いていいということになれば、今の保安隊や警備隊またできる自衛隊、海上自衛隊は政府は戦力でないと言つておるのですから、そういうものは国際紛争に使つても憲法違反にならない、こういうことは言えますか。
  171. 小滝彬

    小滝政府委員 法律的なことは、今条約局長が来ておりますから、条約局長から説明するでありましようが、私はこの武力を用いないという精神は、あくまでこれを尊重しなければならないと思うのでありまして、少くともこの国際的な紛争を実力行為によつて解決するということは、あくまで阻止しなければならないのであります。ただ現地的な保護措置というものは、決して紛争を解決する手段でも何でもない、ただ単なる保護の問題であつて、場合によつては正当防衛とかあるいは緊急避難というようなために、やむを得ない場合実力を行使されることがあるかもしれないが、これは国際紛争の問題とは全然別個のものであつて日本人の生命財産保護するための保護措置にすぎないわけでありますから、これまで論じ来つた現地保護措置の問題とは別のことだと思つております。
  172. 並木芳雄

    並木委員 現地保護措置とは別なんです。私の言うのは、実力行為に訴えてはいけないというのは、よく精神  ではわかるのです。わかりますけれども、ではどこまでが実力だ、国際紛争解決手段として実力行使に訴えてはいけないという、その実力の限度というのはどこまでだということがはつきりしていないと、それこそさらに国際紛争国際紛争を重ねて行くおそれも出て参ります。ですから私は聞いているのです。たとえばどんな小規模のものでも、ちよつとしたことでこれが力というものに訴えた場合には、それが国際紛争解決する手段として実力を行使した、武力を行使したということになると、これはやつかいな問題になると思います。案外そんなことをきつかけとして戦端を開くようなことがありますから、私はその点をお聞きしておるのです。条約局長からその点をはつきりお聞きしたい。
  173. 下田武三

    ○下田政府委員 憲法第九条にも「武力の行使は、国際紛争解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と書いてございますので、戦力と申しておりません。従いまして戦力に至らざる武力といえども国際紛争解決の具として行使できないことは、きわめて明らかであろうと思います。
  174. 並木芳雄

    並木委員 前の答弁を調べてください。たしか武力と戦力は同じだと言つてつた
  175. 上塚司

    上塚委員長 それでは本請願を採決いたします。本請願を採択の上、内閣に送付いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  176. 上塚司

    上塚委員長 御異議なければさよう決定いたします。  なお、右の報告書作成については委員長に御一任を願います。     —————————————
  177. 上塚司

    上塚委員長 次に陳情書審査に移ります。日程第一ないし第一六を一括議題といたします。  これら各陳情書趣旨は、ただいま審議いたしました請願とほとんど同趣旨でありますので、その審議を省略、これを了承することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  178. 上塚司

    上塚委員長 御異議なければさよう決定いたします。     —————————————
  179. 上塚司

    上塚委員長 再び外交質問に移ります。
  180. 穗積七郎

    穗積委員 次官にお尋ねいたします。先ほど局長にお尋ねして不明な点がちよつと残つておりますので、局長にごく簡単にお尋ね申し上げたい。一つは池田・ロバートソン会談の声明の内容に関することですが、ここで予定されております東京会談と、今まで継続しておりましたMSAの交渉会談との関係を明らかにしていただきたい。
  181. 小滝彬

    小滝政府委員 私は今後会談が開かれるようになつてから、どのようになるかはまだ存じません。これから具体的な話をしなければならないのでわかりませんけれども、たとえばMSAの五百五十条によるところの小麦の協定というものは、このMSAの従来の交渉関係がないわけです。ガリオアの問題ということになれば、もちろん日本の財政負担というような面において関連がないとも言えませんが、これは別個の問題であり、これから論じられる問題の性質、問題の課題によつて異なつて来るだろうと考えます。
  182. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、もう少し具体的にお尋ねすれば、たとえば防衛力の問題、アメリカの援助の問題、対中共貿易の問題、それから対日投資はどつちになるかわかりませんが、そういつたようなMSA協定を取結ぶためには、当然とりきめなければならない内容にわたつております。そういうものは、つまり今までのMSA協定交渉いたして参りました会議にかけて、それ以外の今言われました今までのガリオア資金をどういうふうに処理するとか、あるいは小麦の買付をどういうふうにするとか、そういう問題は別個の会議でやる、こういう御趣旨でございますか。
  183. 小滝彬

    小滝政府委員 今までやつております交渉は、このMSAの援助を受けるについての一つのわくをきめるような、その抽象的な原則をきめるような会合であつたわけでありまして、この方はもう近く片づくことになつておる次第であります。でありますからほかのもう少し具体的な問題につきましては、別個に話合いをしようということにならざるを得ないのだろうと思います。もちろん対日投資の問題、投資保証の問題などは、MSAに関係はありますけれども、役者もかわらなければならないし、いろいろもつと具体的にそうした日本の財政とか経済に深い関係のある問題でありますから、これまで外務省でやつておりましたような条約文というようなものよりも、さらに具体化して来るわけなので、そういう会合が行われるようになりましたならば、別個の形でやられるようになるのではないかと考えますけれども、先ほど申しましたように、まだ具体的な話が進んでおるのではないので、今後の話合いによつてきまることと考えます。
  184. 穗積七郎

    穗積委員 そういう御答弁でございましたなら、これ以上お尋ねしてもやむを得ないのですが、ただ今まで池田・ロバートソン会談は、言うまでもなく政治的にはMSA交渉に関連してその打開策を見つけ、これがまた受継がれて東京に帰つて、そこでこの会談が継続されて、その内容いかんによつてMSAの協定が成立するかしないか結論を出す結果になるだろうと思うのです。従つて先ほど局長も言われるように、来年度予算にも関連をいたしておりますので、そこで近く来月あたりまでにそのことが行われる結果になろうと思うのです。従つて政府としては、この声明の内容従つて東京会談をすることについて異存がないと言つた以上は、何かもつと具体的な御意見がおありだろうと思う。さらにその会談の形式だけでなしに、防衛力の問題、こちらから向うに求めるところの援助の問題——援助の問題については、この中では議会に譲つております。議会の承認を経た上でということで何らの確約を得ていない。それから中共貿易の問題、こういうような重要なものが含まれておつて、しかも交渉がすでに  されておる。今までもされたし、ワシントンでもされた。それを承知の上で返事をされる以上は、会談の形式をどういうふうに持つて行くかということだけでなしに、防衛力その他の問題の内容について、はつきりしたこつち側の腹案があるだろうと思うのです。それをきようお示しいただけませんか。
  185. 小滝彬

    小滝政府委員 新聞報道では、会談の共同声明書に同意を与えたというようなことが出ておりますけれども、私の承知しておるところでは、そういう趣旨の訓令が出ておるというようには存じません。今後会談が行われますならば、その会談によつてこちらの立場、また向う立場を勘案して、いろいろ話合いが進められるのであつて、あの声明は何もそういう束縛的なものでないと私は了解いたしております。これまで政府委員からも説明しておることと思いますが、共同声明の最初をごらんになつてもわかりますように「会談は相互の意向を打診することを目的としたものであり、従つて別段の取極めを結ばなかつた」とありまして、約束されたものでございませんで、ただ双方が情報を交換したわけでありますから、その情報が交換されたことは、今後の会談に役立つであろうと期待いたしております。
  186. 穗積七郎

    穗積委員 それではこの問題の内容は次の機会に譲るといたしまして、先ほど下田局長にお尋ねしたのですが、次官がお帰りになつてから聞いてくれということで留保された問題があります。それは朝鮮戦争が休戦状態になりまして、われわれの喜びとするところでありますが、日韓間に相当煩わしいトラブルも起きておるやさきであるし、同時にまた北鮮側に対しましては、これまた隣国としてわれわれが、交わりを深くし、同時に経済的な提携もしなければならない関係の国でございます。そこでこれを機会に政府だけの努力にまかせておかないで、われわれ国民側におきましても、その国交調整または親善友好を深めるために協力したい。そういう意味で朝鮮の地域に、日本側から民間の使節団が渡航を希望しておるわけでございますが、これに対して外務省はぜひ旅券を出していただきたいと思うのです。この際御方針をちよつと承つておきたいと思います。
  187. 小滝彬

    小滝政府委員 外務省の従来の方針は、別段かわつておる次第ではございません。ことに北鮮と南鮮の問題は、近く開かれるであろう政治会議でその最も重要なる議題となろうというような状況でありまして、まだはつきりした事態に到達いたしておりません。その際にそういう使節を出すことがはたして有利であるかどうか、現在国際情勢がぼやけた状態でありますので、この際渡航を認めるということについては、もつと慎重に考えなければならぬ点があるだろうと思います。
  188. 穗積七郎

    穗積委員 その問題はこういうことじやないでしようか。たとえば中国、ソ連に対して旅行いたします場合も、その意味については政府と国民あるいは国民の間におきましても、今おつしやつたように認識が異なると思うのです。今の国際情勢——日本と両地域における朝鮮全体を含みますが、それとの関連において日本から行くことが、はたして国の利益になるかならぬか疑わしいというむしろ否定的な御判断で、中国、ソ連に対しても政府は同様の判断をされたのですが、必ずしもそれが正しいとは限らないわけでございます。従つてそういう判断だけで旅券を出す出さぬということをきめることは、必ずしも旅券法の命ずる精神ではなかろうと思う。国の利益を害するようなものはいかぬということでありますが、国交調整に対する効果が疑わしいというような程度の認識で、旅行の自由を抑制することは、旅券法には規定してないように思うのですが、どういうものでございましようか。
  189. 小滝彬

    小滝政府委員 旅券法には仰せの通り国の利益云々と書いてありますが、これは外交上の立場からも十分考えなければならないことでありまして、この点あるいは保積委員とわれわれの見解は異なつておるかもしれませんが、私どもの方では現在の国交状態から見て、ここへ日本人を自由に渡航さすということは、国の利益に反するという見解をとつております。但し特殊の場合、たとえば中共へ貿易関係の使節を出すとか、あるいはソ連に対して戦犯者の引揚げのため日赤の代表者を出すというような場合は別でありますが、一般にこれらの国へ日本人の渡航を認めるということは、外交上から見て国の利益に反するという見解をとつておるのであります。
  190. 穗積七郎

    穗積委員 その点はいささか職権濫用ではございませんでしようか。つまり国の利益を害するという確たる証明をするに足るだけの事実がないのに、漠然と国の利益に反するというふうな口実をおつくりになつて、この旅券法を執行されるということは、明らかにそのときの政府の主観によるものであつて、これは客観的に申しますならば、職権濫用も相当問題になるのじやないかと思います。たとえば今までの例で申しますと、中国なり、ソ連に対する旅行は国の利益に反するということを理由にして、感情的にも実はこれをきらつておられた。ところがかの地に渡航されました民間使節団なるものが、政府がなすあたわざるところの貿易の推進をし、政府がなすあたわざるところの戦犯釈放の功績を上げております。このように見ますならば、かつてこれらの国々へ旅券を出すことは、国の利益に反するというような主観的判断をされた政府の判断というものは、根拠のないものであり、独善的であつたということを証明しておるわけである。従つて南鮮または北鮮に対する旅行にいたしましても——これは実はあとでお尋ねしたいと思つたのですが、北鮮地域におきましても、かの地に残留する日本人がおるということすらその家族の通信等で聞き及んでおります。そしてそれらの帰還のために、または貿易の促進のために、また同時にさらに大きくは、今問題になつております日韓会談の行き詰まりを、何とか民間でひとつ調整あるいは糸口を出す雰囲気をつくつて行く、あるいはまた北鮮の場合におきましては全朝鮮統一の問題がからんで参つておりますが、これからの政治会議におきまする意見、国民外交を調整する意味におきましても功績があり得ると思うのです。それらの人たちだけが行けば必ずできて、政府がやればできない、私の方でもそう独断的に言うわけではありません。中にはむだな旅行者も出るかもしらぬが、全体として見ますならば、プラスも相当ある。それは過去のソ連、中共の旅行者の実績でもつて十分証明されておるのであつて従つて特に忌憚なくものを言えば、今日本としては、日本の平和と経済の自立を守るためには、アメリカとだけの国交を深めるのではなしに、ソ連、中共陣営とも国交を深め、平和的な貿易を促進することが必要だと思うのです。そういう点からいえば、アメリカとの交渉におきましては、現政府はいささか好ましい存在になつておるようですが、ソ連陣営から見ますと、好ましからざる存在になつておる。しかしそれが日本国民のすべてではございません。従つて外交というものは、国の中の一部みものの利益、一部のものの意見を代表して行われるべきではなくて、民主的な外交の原理に従いますならば、国民全体の意見、国民全体の利益を守るために行うものであります。そういう意味では、私はむしろ政府のそういう不利な立場をカバーする、あるいはまた政府のなしあたわざるところをお手伝いするという結果にすらなると思います。自分たちと多少国際情勢の判断やものの考え方が違うものは、すべてこれを感情的に敵視して押えるということは、非常に狭い了見であつて外交の面においては特にそういう点はとらざるところであると思うので、ぜひもう一度——政治会談がこれから推進されようとするやさきでもあるし、日韓交渉についても、先ほどお話通り、平和的方法で今の行き詰まりを打開しようとする熱意を持つておられる政府でありますから、従つてこれらの情勢をかみ合せまして、今申し上げました通りに、残留邦人の引揚げあるいはまた貿易の促進のために役立つような、日本の国民を代表する使節団をぜひ出していただきたい、旅券を下付されるよう御再考をいただきたいと思うのですが、いかがでございましようか。
  191. 小滝彬

    小滝政府委員 今のお話、非常に感情的主観的な考えでもつて旅券を出さないというふうにおつしやいましたけれども、実は私どもは客観的事実があるからこそ、旅券を出さないのであります。いろいろソ連と中共のこれまでとつて来た道、また平和会議の際におけるソ連の態度、その後におけるいろいろなやり口から見まして、ある特定の目的を持つて、明瞭にこれが国家の利益になるという場合にはもちろん旅券も出しますし、そういうときには一党一派に偏することなく、現に共産党の須藤君もこの前の視察団に加わつているくらいでありまして、決してへんぱなことをする考えはありません。しかし先ほど申しましたように、今人を出しても、北鮮の方が必ず日本人を返してくれるという意思表示をしているかというと、必ずしもそうではない、あるいはほかの目的にこうした使節が使われるかもしれない、こういう状態であります。また南鮮へなぜ出さないかというようなこともおつしやいましたけれども、南鮮の方は、日本は出そうとしておるけれども向うが生命の危険を十分保護することができる自信がないからということで、なかなか許してくれないというのが実情であります。しかしながら今後ほんとうにこうしたソ連なり北鮮なり中共あたりで、日本と提携して行こうという意向が顕著に出て参りますならば、そうして先方日本と平和条約に加入して進んで行こうという意向になりますならば、何も日本はアメリカと関係を結んでおればいい、一部の国と関係を結んでおればいいというのではなくして、できるだけ広く国交を開きたい熱望に燃えているものであります。そうした際には十分考慮できると思いますが、現在のところはそういう事情もありまして、方針をかえるに至つておらないのであります。
  192. 上塚司

    上塚委員長 穗積君に対しましては、もはや十分の時間を与え、かつ十分論議を尽されたと思います。それにこの部屋は決算委員会が午後一時から使うことになつているのを、特に外務委員会から相談しまして、午後二時には返さなくてはならぬ、そういう事態になつて、あと五分ほどしか残つておりませんから、これをもつて質問を打切ります。この際委員長より一言ごあいさつを申し上げます。本委員会といたしましては、今臨時国会中会議を開くこと六回、この間国連軍との刑事裁判権に関する議定書を承認し、MSA問題、李ライン問題等については、終始熱心なる論議がかわされました。本日第十七回国会の終了にあたりまして、委員各位の御奮闘御協力に対し、厚く感謝いたします。  なおただいま席におられませんが、本委員会の論議を広く内外に報道せられました記者各位に対しましても厚く感謝いたします。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後一時五十七分散会