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穗積委員 実は私はこの前の水産
委員会以来、
政府の重大な発言を伺いまして、たとえば
警備船をつけて集団的な出漁をする場合もあるかのごとく、また自由党の議員諸君の中には、そういうことをやらせるための決議案をやろうじやないかというようなお含みもございますし、それから前申しましたように、この事件を、
政府の意図だとは私は申しませんが、財界なり民間の一部におきましては、
日本の再軍備問題とからんで、朝鮮問題をむしろ力の
外交で
解決してしまえという式な意見もあるわけです。たまたま昨日の本
会議におきまして、この問題
解決のための決議案を各党共同提案でやろうという話があ
つて、その最初に出されました案文を見ましても、
解決する目的についてはだれも異存はございませんが、目的に至ります途中における政治的な意図または方法については、相当の食い違いを感じて、私はこの問題が非常に小さい問題のようで、実はアジア的に見て大きな問題になることを憂えておるわけでございます。そこでたまたま今申しました報道がございましたので、私はすぐ麻布の韓国代表団の本部といいますか、正式な名前は知りませんが、そこをたずねまして、これはむろんプライヴエートでございますが、あのステートメントが正式に入
つておるかどうか、そしてまたそれをわれわれはどういうふうに理解したらいいかという意見を聞こうと思いまして参りました。そういたしましたら、金公使はおられませんで、お目にかかれませんでしたが、崔総領事が出て来て、非常に快く会
つて、そして同じく――それは昨日の午後でございましたが、それまでにはまだ入
つていないということを言
つておりました。しかしおそらくはこれは事実であろうとわれわれは想像するに足るだけの材料を持
つているというような話をいたしまして、さらに続いて、――私はそれだけのことを実は尋ねに行
つたんです。そうしたら向うから進んで、今までの
日韓会談の経過とわれわれの
考え方について知
つておいていただきたいとい
つて、いろいろ
説明がございました。その
説明を伺いますと、この間のこの
委員会で
下田さんから御
説明いただきました韓国側の態度または
会談のいきさつとは、大分違
つた印象を私は受けたわけです。私は崔総領事とはもとより切対面でございます。私がどういう政治的な意図を持ち、どういう
考えで聞きに行
つたかということを、むろん知る由もない突然の訪問でございました。
従つてそういう謀略的な
意味で私にそういう放送なり談話をしたとは
考えられません。それによりますと、大分話が食い違
つておりまして、
条約局長の御
報告によりますと、非常にけんかをふつかけて来た、そして決裂せしめることが当初からの
会談のときの結論であ
つたかのごとき印象を、私
どもは御
説明の中で受けたのです。そして平和的にこの話を進めることは、非常に困難だというふうな御趣旨に受取れましたが、実は昨日私と崔総領事との会見から受けました印象から行きますと、実はそれとはま
つたく逆な印象を受けたのでありまして、たとえば私が
日韓会談が決裂していることに対して、非常に憂えておるのだという話をいたしましたら、決裂という
言葉をお使いに
なつたが、そういうふうに理解されることは、われわれはなはだ遺憾であ
つて、実は決裂したとは
考えていない。そしてまたそういう
言葉を使
つた覚えもない。そこで二十日の本
会議でございますが、続いて二十一日に本
会議があ
つた。その席上でわれわれの
言つたことは、人間は感情の動物であるから、ときには激してお互いに言い過ぎがある。そのことに対しては一々その責任をどうこうということじやなくて、お互いにそのために相手に誤解を与えるようなこともあるからどうも残念であ
つた、遺憾であ
つたということで、この
言葉はないことにしてもらいたいというような話合いというのは個人の間でもいくらでもあることです。そういう
意味で、二十日、二十一日の本
会議でも
つてそういうことをわれわれ
言つたのだ。ところが、それに対して
日本側の態度は、何らそういうものじやなくて、これは代表としても正式な意見であり、同時に
日本政府の確固たる意見であるというふうに言われたので、それでは独立した韓国の立場、基礎そのものに対する認識において相当食い違いがある。そういうことでは議題にな
つておる問題はもとより、こまかいことについても話を進めるわけには行かない、不可能なことじやないかということで、実は再考を求める
意味で
日韓会談をわかれておるのだという、
言葉を節約いたしますが、そういう趣旨の話があ
つたわけです。私は、ここの
委員会で世界の人々が聞くことの予想されるその
政府の正式な
説明で受けました印象、またはわれわれの手元にいただきました
説明書でございますが、それから受けた印象とは非常に食い違いがあ
つて、私たちはやはり朝鮮の民族が歴史的に見まして、長年同情すべき植民地状態に置かれてお
つた。そういうことから来ます民族感情、これはわれわれとしては理解しなければいけないのじやないか。何もわれわれが戦争に負けたからとい
つて、どこの国に対してもむやみに卑屈になる必要はない。だからとい
つて逆にばかに強がる必要もないと思う。向うの趣旨はそういうことを言
つてお
つたので、これは個人的に見ましても、崔総領事の
言葉はま
つたく同感であ
つた。ときには言い過ぎもある。そのために相手の感情を激せしめることもあるので、そういうことを
言つたのをひつ込めることは、よく面子にかかわるとが、主権の権威にかかわるというように、あまり感情的に見てお
考えにならないで、この話は進め得る話ではないか。というのはさつき申しましたように、この前の
委員会で、
局長は目の色を見たり態度を見て、要するにそんなことは感情のエレメントでございますが、それから見てすらこれはとても話にならぬという印象を得たということを言
つておられました。
会談継続の成否の中に感情的エレメントがあるということも認めているわけであります。そういう点から見ますと、その後一週間ないしは十日でございますが、その間に今
言つたようなお互いの変化を認めていいのではないか、冷却期間にこの期間がな
つたのではないかということを私は
希望して、いるわけでございます。
そこで
大臣に
お尋ねいたしたいのは、私
ども考えますのに、
李承晩ラインの問題は、結局、
李承晩ラインそのものだけを切り離して
解決さるべきものではなくして、おそらく韓国側の腹の中は、もつと主要な問題は請求権の問題ではないかと思う。特に久保田発言が、その問題に関連したような、急所に触れるような発言であ
つたので、非常に強く響いただろう、そういうふうにも推測されるわけでありますが、問題をもう少し善意に、そして今までお互い隣国との
関係、それから
日本が朝鮮を占領し、相当の圧力を加えた過去の反省からいいましても、この際むしろ私は
日本側から少し、辞を低くすると言
つては語弊がありますが、あまり感情や面子にとらわれないで、話をされる努力の余地があるように実は
考えるわけであります。たまたまこういう今の話もあり、
交渉の衝に当
つた東京にある代表部の人々の中にも、そういう空気が流れているわけでありますから、ぜひこれは――それだけをも
つてすべても推測するというわけではありませんが、この際もう少し大きな態度をも
つて、かつ積極的な態度をも
つて、話を進めていただくべきではないかということを、強く思うわけでございますが、そういうことでひとつもう少し問題をしぼ
つた外務
大臣のこの
日韓問題推進についての御意見を、伺わせていただきたいと思うのであります。