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1953-11-04 第17回国会 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十一月四日(水曜日)     午後二時四十三分開議  出席委員    委員長 山下 春江君    理事 青柳 一郎君 理事 高橋  等君    理事 庄司 一郎君 理事 臼井 莊一君    理事 柳田 秀一君 理事 受田 新吉君       佐藤洋之助君    中川源一郎君       長谷川 峻君    福田 喜東君       村瀬 宣親君    有田 八郎君  出席政府委員         総理府事務官         (恩給局長)  三橋 則雄君  委員外出席者         総理府事務官         (恩給局次長) 八巻淳之輔君         総理府事務官         (恩給局審議課         長)      畠山 一郎君         総理府事務官         (恩給局審査第         三課長)    中島 忠次君         大蔵事務官         (理財局外債課         長)      上田 克郎君         厚生事務官         (引揚援護庁次         長)      田辺 繁雄君         参  考  人         (日本放送協会         ラジオ局社会部         長)      長沢 泰治君     ――――――――――――― 十一月四日  委員白浜仁吉君辞任につき、その補欠として村  瀬宣親君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  閉会中審査に関する件  海外胞引揚に関する件  引揚者住宅に関する件  在外資産に関する件     ―――――――――――――
  2. 山下春江

    山下委員長 これより会議を開きます。  本日は、海外胞引揚に関する件、遺家族援護に関する件、引揚者住宅に関する件及び在外資産に関する件について議事を進めます。  その前にお諮りいたします。海外同胞引揚げ問題に関しまして、日本放送協会におきましては、従来「引揚者の時間」を設け、引揚げ問題について種種の放送行つて参つたのでありますが、十一月よりこの放送が中止され、留守家族引揚者並びに国民引揚げ問題における事情を周知せしめる貴重なる時間が失われたのであります。この件についてその事情を聴取いたしたいと存じ、日本放送協会よりラジオ局社会部長長沢泰治君の御出席を願つておきましたが、本日ここに本委員会参考人として事情を聴取することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山下春江

    山下委員長 御異議なきものと認め、さよう決定いたします。  それでは、これより参考人から事情を聴取することといたしますが、その前に一言ごあいさつ申し上げます。  長沢泰治さんには御多忙中のところ御出席くださいまして、あつく御礼を申し上げます。本委員会残留同胞のすみやかな引揚げ及び引揚者に対する十分なる援護に終始努力して参つておりますが、これについて「引揚者の時間」という貴重な放送が失われることは残念であります。参考人におきましては、この委員会の意向をお含み願いましてお話し願いたいと思います。  では、長沢社会部長より「引揚者の時間」についての従来の企画及び中止になつた事情についてお話し願います。
  4. 長沢泰治

    長沢参考人 「引揚者の時間」が始まりましたのは昭和二十二年の七月からでございまして、この十月一ぱいまでで六年半ほど実施して参つたわけでございます。もちろん、その目的は、引揚げ促進引揚げ援護と、この大きな二つ目的を持つて進めて参つたのでございますが、第一義的には引揚げ促進、第二義的には援護というふうに、当初すべり出しました。三、四年はその線でいたして参つて、南方、ソ連地区等引揚げ促進問題をほとんど取上げておつたようなわけでございます。そうして二年たち、三年たちいたしまして、私どもの受持つておる分野においてもある程度貢献し得て、もちろん政府を初め各団体等の、あるいは輿論の活発な啓蒙という意味合いも加味されまして、私どもの役割もある程度になし得たのではないかという結果が出て参りました。そこで、放送内容が、当初の引揚げ促進という面からだんだんと今度は引揚げ援護の方に量的にかわつて参りました。そうして両者一体になつてしばらく番組内容が続いておつたのでございます。さらに、昨年、本年と、引揚げの状況も、当初の終戦直後の数六百有余分からだんだん量的に減りまして、十月の第七次帰国船まででその過半数が内地に帰つて来ることができておるというふうに私どもは思つております。そうして、現在残つておりますのは、外務省等の発表もございますが、非常に減少しておるわけでございます。もちろん、引揚げ問題は、最後の一人まで私の方としては当然放送に取上げなければならないのでございますが、量的には相当減つております。深さにおいては別問題といたしましても、量は減つて参つたと思うのでございます。そうして当然この幅も縮まつたような結果が出て参りました。現在未引揚者がまだ相当残つておりますのは発表せられて私たちは存じておりまして、今後引続いて放送面でもさらに取上げまして役立てねばならないということはもちろん言えますけれども、これを大きくわけて、第一段階、第二段階、第三段階とするならば、第二段階くらいまで今のところ終つて、第三段階にこれから入ろうとしているところじやないかと思います。そこで、今までの推移から見まして、これからは引揚げ問題を援護促進問題とにわけ――当初は促進中心になり、その後援護促進が一丸になつて、もちろんこの関係は不可分の関係であることも承知しておりますけれども、この二つをわけまして、未引揚者促進のためには、今後適時タイムリーなものを取上げ、また必要に応じ必要な時期に、聴取者の要望する時間等に随時挿入いたしまして実施したい、援護の方は、戦犯釈放の問題とか、在外資産の問題とか、いろいろと大きな問題がまだ残つておりますけれども、大体引揚げた方の多くは一般市民層に入つたのではないかという意味で、大きな社会問題として、各種のたくさんございます番組に取入れて、ほかのものと関連させて実施したいというふうに考えているわけでございます。たとえば「社会の窓」とか「街頭録音」とか、いろいろたくさんの番組がございますが、そういうものに適時取上げてこの援護の方は実施いたしまして、促進の方は、今度新たに「今日の広報板」というものが五日間――毎週土曜、日曜を除きましてできましたが、これを初めとして、そういうふうな各種団体官庁等広報とかの啓蒙番組がございますが、その中に随時取入れて行く。これは今の情勢から申しましてももちろん軽視は絶対できませんので、名前は「引揚者の時間」というものはなくなりましたけれども、そのほかの番組で、旧来実施していたより以上の効果があげ得るものと思つておりますし、またこれがなくなりました十一月、十二月の番組予定から見ましても、時間的にも量的にもたくさん挿入しておりますので、「引揚者の時間」がなくなりましても、決して軽視しているというわけではなく、さらにわれわれの方としては努力したいというふうに考えている次第でございます。
  5. 山下春江

    山下委員長 これより参考人に対する質問を許します。
  6. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 今長沢参考人の御意見をお伺いしたのですが、私たち地方を歩いておりましても、最近はいろいろと民間放送などが出て来ましたので競争が激甚になつておりますが、しかし、NHKで非常に喜ばれているものの一つとしては「引揚者の時間」が一定の時間に放送されることであります。今のあなたのお話ですと、第三段階に入りまして、カレント・トピツクスとしていろいろなものを取上げる、「社会の窓」とかいろいろなものでユースとして取上げて行つて一定の時間はとらないで行こうというように私は拝承したのでありますが、これは、農村の場合ですと、朝早くから出て夜おそく帰つて立来たりするので、カレント・トピツクスそのものを、たとい思いついておつても、そこにダイヤルを入れて聞くひまがない。そうすると、これはやはり一定の時間に引揚げ遺家族援護のようなニュースを一本でずつと流してもらうことの方が、NHKとしても商売関係においても非常にいいし、また非常に喜ばれる面が出て来るのじやないか。これが一つであります。  もう一つは、政治的な問題から考えますと、日本放送を各国が傍受している。その中において、たとえば中共などにおいてもこの「引揚者の時間」などは傍受しておつた。そこに、最近十一月一日以来完全にそういう時間がなくなつたということになれば、今向うがあともう日本引揚者はいなくなつたという声明などを出しているのを見ても、もう日本はすつかりあきらめているのだというふうな、彼らに対する政治的な口実にもなるわけです。そこで、最近商業放送などにより競争が非常に激甚になり、いろいろな面で放送のプログラムをくふうされる点がありましようけれども、これは日本全体の聴取者を相手とするNHKとして、商売の方から言つても、一定の「引揚者の時間」を持つていると非常に感謝をされるわけだし、さらに、もう一つ政治的な面からいたしましても、多少何と言いますか、民間放送と違つて公益的なものも考えられるNHKの立場からいたしましても、政治的なそういう背景と配慮があなた方の放送を通じて非常に考慮されるということになれば、そこに大きな公益性が出て来るのじやないかと私は思う。こういう点において、これはぜひひとつ一定わくの中においてこの引揚者援護なり促進の問題を一つニュースとして編集されてやつていただく方が非常に効果的ではないか、こういうふうに私は思いますが、いかがでありましようか。
  7. 長沢泰治

    長沢参考人 お答えいたします。  初めの、定時のものでやれという御説でございましたが、この二十五年、二十六年、二十七年と「引揚者の時間」はもちろんありましたが、こういう問題はそのときの聴取率だけで断定することは非常にむずかしいと思いますけれども、年々聴取者関心といいますか聴取率は下つて参つておりまして、二十八年度はほとんどゼロというような状態でございます。そこで、協会は、旧来においても、もう十年くらい前になりましようか、定時番組ではどうも聴取者の方がぐあいが悪いという意味で、やめてしまい、随時それを挿入して、時間が一分や二分延びるというようなことも内容によつてはあつたのでありますが、その後また定時番組というものをとつて参りまして、また最近は、必要に応じましてどんどんと、その定時わくをはずした方がより以上いいというような考え方になりまして、この引揚げ関係についても、先般の十月の第七次の引揚げについても、ほとんどわくをはずしまして実施をしておつたというような状態でありまして、今後は夜の三十分なら三十分、トピツクばかりでなく、三十分番組になりますと相当掘り下げもききますし、また聴取者方々関心を持つているときに随時掘り下げたものを実施するわけであります。特に援護の面あるいは援護法解釈等は掘り下げなければなかなかできない問題じやないかというふうに考えているわけでございますので、こういうことを行いたいと思つております。  それから、政治的な面の顧慮ということもございましたが、ただいま申し上げたような意味で、聞いていただかなければならないし、聞く価値のあるものを出すという点から時期ということも私の方で考えて、名称はなくなりましたが、より以上タイムリーに実施し得るというような確信を実は持つてこういうことを行つたわけであります。
  8. 臼井莊一

    臼井委員 ただいま長谷川委員から国際的な政治的影響力から言つて廃止することはどうかという御意見が出ましたが、あなた方放送局が長い間本問題についていろいろと御放送をいただき、そうして一つの灯火をともしていただいたことをについては、われわれも非常に感謝をするのでありますが、これは国際的ばかりでなく国内的にも――現在ソ連方面においても日赤と先方の赤十字とが交渉をやつているわけでありますし、また中共地区にも相当数まだ残つているという日本側見解でありますし、これを心待ちにしている国内の遺族、留守家族人たちがたくさんあるわけであります。それに、これが急になくなつたということは、何かこう断ち切られたような感じを与えはせぬか、そういうふうに考えるのでありまして、なるほど、いろいろのほかの問題と一緒に時事を交えて放送されればいいというお話でありますけれども、そういうときにはかんじんの聞きたい人が聞けないという場合もあろうと思う。その点をわれわれとして非常に心配いたすのであります。衆議院でもやはり当委員会など引続いて存在しておりますし、そこで、もう一つ、この毎日定時において放送するだけの材料がないのかどうかという点をお伺いしたいのです。援護問題等については、いろいろまだまだ報道し、御指導していただく面がたくさんあろうかと思います。決して材料がなくなつたというふうにわれわれは考えないのでありますけれども、その点、毎日定時放送するだけの材料がないという御見解でしようか。
  9. 長沢泰治

    長沢参考人 お答えいたします。「引揚者の時間」には委員会がございまして、月に三回ずつ各団体方々にお集まりいただきまして、お知恵を拝借いたしまして実施して参りました。材料がないということはもちろんございません。大きな問題が相当ございます。一例を申しますと、ここに調べて来た十一月、十二月中のものでも、引揚げ援護愛の運動とか、あるいは未復員者の実態だとか、あるいは今度の引揚げの実況、アンケートによる引揚げの問題、話題の人、留守家族の問題、こういうふうなものが実は予定に組んで、これはもう十日か三十日くらい前に予定されておりまして、時間的にも、量的にも、質的にもふえておるというような実情で、決してないということはございません。
  10. 臼井莊一

    臼井委員 もし材料が相当あるのであり、われわれもそう考えるのでありますが、そうとすれば、時間を多少少くするとか、短かくするとか、そういう点はありますが、全然なくなると、一般にはそういうカレント・トピツクス一緒にやつているということを知らぬ人もありましようし、その点が非常に一般心待ちにしている人とか、あるいは援護についての希望を持つている人、そういう人に何か失望を与えはせぬかと思うので、できることならば、いま少しく存続していただきたい、こう考えますので、希望ちよつと申し添えておきます。
  11. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 結局、長沢さん、私は一定の時間にそういう時間を設けてもらいたいということをお願いしたいのです。なぜならば、国内において、みな忙しいから、聴取者がいつでもラジオの前にしがみついているわけではないのです。関係者自分関係した時間ということになれば、それになれてダイヤルをそのときまわす。私はそういう雰囲気に何べんもぶつかつたことがあるのです。最近手紙が来ないとか、アンケートが来ないといいますが、いなかの者が一枚出すという背後には干名も二千名もの同感者があるのです。ずつとなれてしまえば出さなくなる。従つて、そういうふうにして、とにかく一定の時間を設けてもらいたい。これは国内関係者は非常に感銘します。そうして、あいは最近ニュースがないとおつしやるかもしれませんけれども、これは、編集の方で引揚げ援護とかいろいろな非常の二ユースの中から、それは特に時間的に非常に御苦労でしようけれども、それを編集してもらう努力さえすば、一定の時間穴埋めができるのじやないかと思います。  それから、私、去年東南アジアをまわつたときに、帰つて来て、あなたの方の放送協会会長その他の人々にも申し上げたのですが、ずつと歩いておる間に、ビルマに行きましたところが、ビルマ在外公館では、あなたの方が夜の時間に東南アジアに向つて呼びかけておる、その場合に、「パキスタン、インドあるいはタイ国皆様」と呼びかけておつて、「ビルマ皆様」と言わない、夜の十一時過ぎにダイヤルをまわして、その諸君は、一週間に一ぺんですが、そのときにしよつちゆう聞いておるが、ビルマ諸君はその時間に自分たちに呼びかけられないということを非常に心細がつておる、そこで、あなたが帰つたならば、ぜひ放送局の方の会長に話をしてくれと言うので、私は、NHKに対して、サービスのつもりで、同じ一言しやべるのにも、「パキスタン皆様」と呼んだときに、なぜ「ビルマ皆様」と言つていただけないかと言つたのです。しかも、ビルマはあの通り負けいくさのあとで大勢の邦人がおるわけです。それと同じりくつで、今ソ連にもおるし、中共にもまたおるし、その他東南アジアの場合には、日本の兵隊が脱走したままの姿で山犬のように彷徨して歩いておる。ことにインドネシアなんか、さらにその通り。そういうわけで、これはやはり一定の時間に、今までの通りでもいいですから、第二放送の夜の何時からというふうに二、三分でもきまつて出ますと、そつちこつちの海外におるそういう関係者がそれこそ首を長くして待つておるのです。私たちのような、当事者じやない、外の面において人間の気持の動向を多少見ておる者が申し上げることを、そろばんに乗らないというふうなことをおつしやらずに、一定の時間ぜひこれは入れていただきたい、これはわれわれの利益になることでも何でもない。そういう意味サービスをこの際NHKはお考え願いたいということを重ねて要望申し上げておきます。
  12. 高橋等

    高橋(等)委員 ただいまの長谷川君の要望は、委員会としてNHKの方に希望をお願いするということにしていただきたいと思います。
  13. 山下春江

    山下委員長 ただいま高橋委員よりのお申出委員会として了承することに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 山下春江

    山下委員長 では、さようとりはからいます。
  15. 有田八郎

    有田(八)委員 私から一言つけ加えさせていただきます。それは、この時間を継続してもらいたいというこに対して、長谷川臼井委員から今お話があつたことは、私、まつた同感であります。ただ一言私から申し加えておきたいことは、この時間を今まで長くやつて来たのをこの際やめるということについての世界的影響でして、大きく言えば引揚げ問題の解決に非常に関係のあることと存じております。私は今在外同胞帰還促進全国協議会会長をしております。前には顧問をしておりましたが、引揚げを開始した当時はみな引揚げの問題について熱意を持つてつたが、それが両三年になつてから、留守家族団体は非常に維持が困難になつて来た。そのときちようど私はこの団体関係し始めたのでありますが、わずかな金のために留守家族団体がなくなるというようなことがあつてはならない、引揚げ問題というのはだんだんむずかしくなるに違いないから、むずかしくなるにつれて自然と世間から忘れられがちになつて来る、そういうふうな際に、政府に、国会に、あるいは一般国民に対して呼びかけて、この問題の重大性ということを知つていただくには、何といつて留守家族というものが中心になつてつて行かなければならぬことである、留守家族団体が解体したときには、この問題が世間から忘れられてしまうおそれがある、こういうふうなことで、この団体を今日まで持ち続けて来たわけであります。最近私どもジユネーヴに行つたときに感じたことは、やはり同様なことであります。われわれが今年の夏ジユネーヴに参りましたのは、御承知のように国連捕虜特別委員会、あれは昨年の会合のときに、かんじんソ連代表者が来ない本会議を何度続けておつてもしようがないから、来年すなわち今年の会議最後にしてやめてしまう、こういうふうなことを一応きめたらしかつた。ところが、ドイツでもイタリアでも、また日本でも、これを今やめられるということは、おもしろくないから、ぜひ継続してもらいたいという非常な熱望があつたわけです。私どもはそういうふうな日本希望も聞いて行つたのでありますが、ちようど国連本部の方でも同じような気持を持つてつたらしいのであります。ことに国連本部の方に関係のあるアメリカ代表も、この問題を非常に重要視して、すなわち特別委員会というものが今年きりでなくなつてしまうということはおもしろくない、そういうふうなことで、今年は、昨年の決議をひるがえして、この問題が完全に解決をするまでは、特別委員会というものを存続しておく、こういう決議になつたわけであります。これは、私どもから見ますると、特別委員会というものがなくなれば国連との関係も薄くなる、特別委員会というものがあり、また国連がこの問題に対して非常に関心を持つておる間は、常に世界に向つて呼びかけて、忘れられがちになるのを呼び起して、そうして問題の解決促進するということにもなるわけであります。私はそういうふうな点でことしの会議アメリカ代表の演説に非常に感謝したのでありますが、その点を非常に力説しておつたわけであります。私は、そういうようなことから推して、これを継続することについては、あるいはNHKの方から言えば、経済的に合うとか、合わぬとかいう問題があるかもしれぬのでありまするけれども、国家的に考えますと、ぜひこれは継続しておいていただきたい。外国から見ると、ことに、ソ連あるいは中共というふうな、日本人を相当多数抑留しておる国では、なるべくこの問題を忘れてもらいたい、世界から忘れてもらいたい、日本国民から忘れてもらいたいというふうな気持を持つていないとも限らない。その際に、今まで長い間続けて来たNHK放送がなくなるということになつて来ると、日本の内部でも、もうこの問題をあきらめてしまつているという感じを強く関係国に与えるおそれがあると思うのであります。これは家族にとつても非常に影響のある問題であります。おそらくすべての家族がこの放送時間を従来通り続けていただきたいと思つておることは、問わなくてもわかつておるので、みな熱望しておると思うのでありますから、ひとつその点は、いろいろのご不便もあるかもしれないと思うのでありまするが、ぜひ継続していただくようにお願いしたいと思うのであります。これだけつけ加えさしていただきます。
  16. 山下春江

    山下委員長 他に御質問がなければ、参考人よりの事情聴取を終ります。  参考人には、御多忙中御出席になり、お話くださいまして、まことにありがたく、委員長より厚くお礼を申し上げます。     ―――――――――――――
  17. 山下春江

    山下委員長 次に、在外資産に関する件について発言を求められております。これを許します。村瀬宣親君。
  18. 村瀬宣親

    村瀬委員 私は、七月の十日でありましたが、第十六特別国会におきまして、予算委員会在外資産処理と補償問題につき緒方総理小笠原、岡崎両大臣に対して政府の方針をただしたのでありますが、当時は何一つ明確な御答弁は得られず、緒方さんも小笠原さんも、今までは何もしていなかつた、これからは必ずやるから政府を信用してもらいたいと、力をこめて言つてつたのでありまするが、その後政府はどのような処置をしたかということにつきましては緒方総理から直接お聞きしたいのでありますが、きようは大臣がお見えになりませんから、事務的な点のみについて、箇条ごとにお尋ねをいたします。  当時大蔵大臣は、引揚者が上陸港において強制的に取上げられました証券類を早急に返還するとおつしやつたのでありまするが、その後八月三十一日の全国新聞にその方法等御掲載になつたようでありまするが、その後の処理はどのようになつておりますか。
  19. 上田克郎

    上田説明員 ただいま村瀬先生からお話になりましたように、八月三十日と三十一日、原則として三十日でございましたが、全国新聞に、政府日本銀行、大蔵省理財局、そういうところで引揚者の方からお預かりしております証書類をお返しするという公告をいたしました。現在、公告に基きまして、税関並び大蔵省の出先であります財務局財務局がない場合には財務部というのが各県に一つずつありますが、そこ及び大蔵省返還請求の受付を実施中でございます。その際新聞にも書きましたように、大体九月一日から九月、十月は整理期間といたしまして、整理がつき次第十一月ないしは十二月早々から返還を始める、そういう手配になつております。予想以上に順調に進んでおりますので、もう間もなく実際の返還ができるようになろうかと考えております。税関の問題につきましては、ここ両日中に関係の課長を東京に集めまして、実施状況並びに今後の促進ということについて、さらに打合せるという手配になつておるようでございますし、それから財務局関係につきましても、大体日本銀行で扱つておりました証書類の引渡しを受けまして、その整理が順調に進んでいる、そういう段階でございます。
  20. 村瀬宣親

    村瀬委員 新聞、並びに九月の六日でありましたかのラジオでも対談式に周知徹底をされたようでありまするが、なおいなかの方ではそのことを知らないで、みじめな生活をしている者もあると思うのでありますが、市町村等を通じてさらに一層周知徹底させる必要があると思いまするが、そういう方法を講じになるおつもりはあるのでございますか。
  21. 上田克郎

    上田説明員 周知徹底の件につきましては、今先生がおつしやいましたように、いささか欠けばしないかという懸念もないではございませんが、財務部その他の意見を聞きまして、たとえば市町村の方に、一つの県で三箇所なら三箇所というようなところに集まつてもらつて、そこに財務局なり財務部の職員が参りまして説明をするというような方法をとつてみたらどうかということも考えてはおりますが、まだ実施するまでには至つておりません。市町村に対しましての徹底方としましては、大蔵省から各府県知事に厚生省を通じましてお願いいたしまして、世話課の方で引揚者の方からそういう問合せがありますと御返事申し上げるというような措置はとつてございますが、特に市町村の末端まで、たとえば在外公館借入金のような形での事務のお願いということはいたしておりません。
  22. 村瀬宣親

    村瀬委員 ほとんど全国市町村では広報というものを発行しておるようでありますから、この広報及び地方五十六紙にも御発表になつて――八百万円もの広告費を使われたそうでありますが、なお何らかの通牒なり方法によつて、何も詳細なことを書かぬでも、こういう方法になつておるから届出をすれば返してもらえるのだということだけを、一層市町村で徹底する方法を講じていただきたいということを希望いたしておく次第であります。  第二の問題は、やはり七月十日の予算委員会でいろいろな問題を提起しておいたのでありますが、送金小切手、預貯金、旧通貨等の払いもどしの点であります。一体この政令二百二号というものはいつ解除なさるおもつりでありますか。もう独立して二年にもなろうかと思うのでありますが、この政令二百二号を解除すれば、この問題は一番さつぱりするわけでありますが、これらに対する処置はどのようにお考えになつておりますか。
  23. 上田克郎

    上田説明員 送金小切手、持ち込まれました旧円、それから預貯金という問題につきましては、現在の進行状況を申し上げますと、関係の部局が私たちの方では管財局と銀行局となつております。これは何かと申しますと、たとえば正金銀行、あるいは朝鮮銀行、台湾銀行というような、かつて海外に出ておりました大きな銀行を経由して送金されたものが多いのでありますが、そういう銀行の国内資産の整理が、御承知のように閉鎖機関令というもので規制されております。従いまして、送金小切手が現実に支払われるためには、ただいま申されました二百二号の関係というよりも、むしろ閉鎖機関令の関係の規制を解かなければならぬ、そういう問題が一つあるわけであります。それから、その他の銀行、特に中支方面には市中銀行が出ておりましたが、その銀行経由の送金の問題につきましても、これも御承知のように、金融機関、再建整備法というものがございまして、従来のところ、こういつた外国から仕向けられた送金小切手等は、在外財産と同様な整理をしておりまして、国内的な整理の対象になつていなかつた。そういう点を解決しないとできない、そういうことになつております。二百二号の関係は、税関でそのままお預かりするというだけでございますから、その点は、先ほど申し上げましたように、税関なり日本銀行なりでお預かりするという趣旨で、一応その段階は解けておりますが、あとは支払いをどうするかという問題であります。その普通の市中銀行と閉鎖機関の送金小切手の扱い方につきましては、現在、他の在外財産一般の問題とは切り離して、その支払い方法なりその他につきまして、来るべき国会に御審議をお願いするための法案を作成中でございます。今度の国会にはまだ間に合いませんでございましたが、今の予定では、通常国会には早い機会に御提出申し上げて御審議をお願いしたい、さように考えております。それから、旧円の問題につきましても、これは銀行局が取扱つておりますが、これも、送金小切手の問題と同様に、なるべく早い機会に国会に御提出して御審議をお願いするという段取りになつております。預貯金をどうするかという問題につきましては、実は送金小切手の問題と一般の在外財産――土地とか建物を主として考えますと、それと送金小切手との中間くらいの性質のものではないかと考えますので、送金小切手の問題解決の際に同時に解決するか、それとも在外財産問題一般の問題として、段取りとしては幾らか遅れるか、そういう点で現在検討中でございます。
  24. 村瀬宣親

    村瀬委員 八年間捨てて顧みられなかつたこの問題が、ようやく法律化されるということを聞きまして、はなはだおそきには失するのでありますが、ともかく一歩段階を踏み上ることのできたのは、七百万引揚げ同胞の喜びとするところでありましよう。これは早急にひとつ国会に出していただきたいと思います。旧貨幣に関する限りは、いわゆる政府予算というものと多少の関係が出て来るかわかりませんが、送金小切手の支払いということは、政府の予算とは関係のないことであると思うのでありますが、何でさように遅れたのでありますか。
  25. 上田克郎

    上田説明員 おつしやいます通りに送金小切手の問題は、政府とは直接関係がないというような考え方で現在法案を急ぎつつあるのでございますが、考え方にとりましては、金融機関再建整備法の場合に、御承知のように政府補償というものをやつておりました。従いまして、この問題の取扱い方いかんによりましては、政府補償の問題が理論的には考え得るそういうような問題があつたかと存じます。私、直接金融機関再建整備法の衝にありませんので、観測として申し上げるのでございますが、金融機関に対する、たとえば第二封鎖の限度までの損失に対しては政府が補償をするというようなことが、たしかあつたかと私は記憶しております。そういう問題との関連がございます。それから、先ほど申しました閉鎖機関の問題につきましては渉外関係がございます。御承知の日韓会談というような問題で、朝鮮銀行の問題なんかやはり主要な項目をなしておる。何かここである手を打つということになりますと、政府がある程度の覚悟をして手を打たねばならぬ、そういうことも考慮に入つてつたかと私は考えております。
  26. 村瀬宣親

    村瀬委員 この法案の骨子がわかりますれば、御発表願いたいのであります。たとえば換算率等であります。台湾銀行、朝鮮銀行の場合は円で送金されておつたかと思いますが、中支、南支、北支は連銀券あるいは儲備券で正金銀行へ送金をしておる。そういう場合に、今度出されようとするその換算率はどうなつておりますか。
  27. 上田克郎

    上田説明員 先生が今おつしやいましたように、大部分は円で組まれておる場合が多いかと思います。朝鮮、台湾はもちろん円でございますが、在外公館借入金等の返済に関する問題で一番問題になりました調整料込みの送金というものは、御承知のように円表示になつております。大体円表示の問題は、今おつしやいましたような換算率の問題はない。しかし、現地通貨建の当時のものにつきましては、その当時すでに厳重な為替管理がございまして、そういう送金を組まれても、内地に帰つて来られる場合には円と現地通貨建の二本建の形で、内地で封鎖されておつたというような事情がございますので、その点など十分勘案いたしまして、今後法案がつくられることになろうかと思います。その詳しいことにつきましては、ただいまのところちよつとまだはつきりきまつたものもございませんので、まだ申し上げられない段階ではなかろうと思います。
  28. 村瀬宣親

    村瀬委員 通常国会の早い時期にこの法律を出したいと先ほど申されたのでありますが、そうしますと、もう一月ないわけであります。従つて、そういう点は、やや固まつておらねばならぬ。さしつかえない点を御発表願いたいのでありますが、それも支障があれば、あえてお伺いいたしません。  ところで、引揚者は、実際八年間まつたく放置され、法律上の保護その他を受けずにおりまして、もう一日千秋の思いで待ちこがれていおる。そういう御答弁をあなたがなされば、明日は全国の人がああ払つてもらえると思つて喜ぶのであります。ところが、実際法律は出てみたが一向金は払つてもらえないということになると困るのでありまして、その法案の内容をもう少し伺いませんと、わかりませんが、その法律が通りますならば――換算率等があれば、いろいろ審議に手間どりましようが、そうでなければこの法案は必ず通るのであります。別にこれを通さぬという政党は私はないと思う。そうすると、法律はすぐ通る。通るが、なかなか金は出ないというのでは困るのでありまして、法律が通ればすぐ手に入るような措置が講じてあるのでしようか、どうでありましようか。
  29. 上田克郎

    上田説明員 八年間も待つておられたお気持はよくわかるのでございまして、法律が通れば一日も早くお手元に届くようにというのがわれわれの念願でございます。ただ技術的にちよつと心配いたしておりますのは、御承知のように、送金小切手なら送金小切手をそのままお持ち帰りになつておれば問題はないのでございますが、多くの場合に送金小切手そのものは現地へ置いて来なければならなかつたという事情があるようでございます。それに対しまして、たとえば現地の世話人の方の預かり証であるとか、あるいは在外公館の預かり証であるとかいうものが発行されておりますので、そういうものをどういう形で処理するか――先ほど申しましたように、これは政府関係しないで、一銀行と一私人との一種の民法上の契約ということになろうかと思いますので、そこの関係を、法律をつくる以上は、免責するとか、あるいは将来の保証と申しますか、将来本物が出て来た場合にどうするとか、そういつた技術的な困難が出て来る場合が相当多かろうと思います。その点で現在かなりいろいろと技術的な面の検討を続けている段階でございますので、本物をそのままお持ち帰りの方には比較的早い機会にお手元に行くことになると思います。まだ、法律のつくり方いかんによりますが、こういう証拠書類があればよろしいというような法律になりますれば、これも割に簡単に行くかと思います。そういう段階でございます。気持としては、法律が通ればすぐにも払えるような形に持つて行きたい、そう考えております。
  30. 村瀬宣親

    村瀬委員 やや明らかになりまして、そういうことになれば関係者は非常に喜ぶと思うのであります。  次にお尋ねいたしたいことは、向うで送金手形を取組みまして、その手形を終戦の年の九月二十三日までに取組み銀行に持つて参りまして提示をして登録した者は、全部払いもどしを受けておる。ところが、それまでに郵送したが届かなかつたとか、帰国してちやんとポケツトに入れておつても、まあいいだろうというので提示をしていなかつた者は、九月二十三日を境にして全然払つてもらつておらない。これは非常に不合理なことと思うのでありますが、せめてこの分だけでもすぐに支払つてよいという御処置をおとりになるお考えはありませんか。
  31. 上田克郎

    上田説明員 先ほど申し上げましたように、閉鎖機関令なりあるいは金融機関再建整備法なりの規定がありまして、そういつたそれまでに支払われてなかつたものは、一応支払えないような法律の規定になつておりますので、そういうものも、法律の改正をまたないと現在支払うわけには参らないようなことになつておりますから、御了承願いたいと思います。
  32. 村瀬宣親

    村瀬委員 次は満州国の郵便貯金の問題であります。満州国、蒙疆等におきましては、日満議定書、日蒙議定書等によつて、野戦郵便局の郵便貯金を強制的に満州国または蒙疆の郵政局に切りかえたのであります。その金額は四十億と言われている。これは実に、赤紙でひつぱり出された兵隊さんが、月に二十七円くらいの給料の中から、家族への送金とか何とかにわずかずつを貯蓄して行つた、まことにつめで火をともすような金の累積であります。ところが、これを四十億でしたか全部強制的に切りかえてしまつた。満州国は終戦時にあたりまして良心的に一億五千万円だけ日本の郵便局に寄託しております。この金は一体どうなつておりましようか。
  33. 上田克郎

    上田説明員 その点、残念ながら、私、詳しく存じておりませんので、お答えを留保さしていただきたいと思います。私の方で関係の郵政省に御連絡するなり何なりしてもよろしゆうございますが、私はよく存じておりません。
  34. 村瀬宣親

    村瀬委員 幸いにそういう点も支払う法律をおつくりになるのでありまするから、これはひとつお考えおきを願いたい。何でも、このうち数千万円、すなわちGHQの体制が整うまでの期間に何ぼか払いもどしたようであります。しかし、そのあとの金は一億何ぼか残つているわけでありまするから、そういう点もお見落しのないように法案の御処置を願いたいと思います。  その次にお尋ねいたしたいと思いますることは、そうやつて法律ができましても、今度は閉鎖機関で処理されておりまする朝鮮銀行、台湾銀行等に金がなければ払えませんが、その金はずいぶんあるようであります。十月の日本週報に松永安左衛門氏が発表しているところによりますると、朝鮮銀行、殖産銀行、台湾銀行の関係で閉鎖機関に保管されているものが三百億円はある、こんなに死蔵しておくならば電源開発に使えというようなことを日本週報にちやんと出しているようであります。私が調べましたところによると、そうはないのではないかと思うのでありますが、少くとも朝鮮銀行で六十五億くらいは整理の金ができたのではなかろうか、台湾銀行で二十億円くらい、合して八十五億円くらいはあるはずだと思います。そうして、これは二十年からずつと無利子でただ保管されている。二十二年に初めて、食糧証券を買つたのでありましたか、三%ほどの利子がつくような方法で今日に及んで、閉鎖機関の事務経費など、みなこの利子から出ている、こういう状態でありまするから、金がないというわけはないのであります。また一方の計算によりますると、台湾銀行の二十億の利子が八億ほどになつている、朝鮮銀行の六十五億の利子が積り積つて二十億ほどになつている、だから、その元金の二十億と六十五億は使えないにしても、利子が積つた八億と二十億は、ひとつ第二会社でもつくらしてほしい、こういう意見も出ているやに聞いているのでありまするが、この点についてはどのような御処理になつておりまするか。
  35. 上田克郎

    上田説明員 閉鎖機関の整理のことにつきましては、私、ちようどその衝にございませんので、その運用方法なりあるいは現在の資産状況なりは詳細に存じておりませんですが、先ほど申しましたような形で、送金小切手に関連する問題としては、そういう資産のあるということは前提にして今度の法案はつくられ、あるいはものによつては資産が不足するという問題を前提にして今度の法案がつくられている、さように考えております。
  36. 村瀬宣親

    村瀬委員 法案をつくる以上は、閉鎖機関はよその関係だからといつて調べずにおくということでは、いろいろ困つた問題が起ると思うのでありまして、その点、ひとつ御勉強を願いまして、よく御調査を願いたいと思うのであります。たとえば、利子だからといつて、台湾銀行に八億、朝鮮銀行に二十億第二会社をつくらしてしまいますと、元金で支払いができればよろしゆうございますけれども、元金では支払いができないということになりますと、第二会社をつくらしておくのでなかつたということになるかもわかりません。従つて、こういう調査につきましては、十分連絡をとつて、預金者保護に万全の措置をとつていただきたいと思います。  その次の問題といたしましては、閉鎖機関令に関係のない銀行の金であります。いわゆる在外会社令によつて押えられている朝鮮並びに台湾の銀行の問題であります。たとえば、台湾の例をとつてみますると、商工銀行、貯蓄銀行、彰化銀行と三つあるようでありまするが、これをこの在外会社令によつて押えたというところに私は無理があると思う。在外会社令というものの自体は、その政令の本質から言いまして、いわゆる在外会社の株主の保護といいますか、ともかくも整理して株主にどうするというのが眼目なんであります。ところが、この銀行を、単なるそういう株主のみを対象にしてつくつた政令によつて縛ろうといたすところに、非常な無理があるわけであります。普通の株式会社ならば、別に預金者というものは出て来ないのでありますが、この商工、貯蓄、彰化の三銀行には預金者があるわけであります。この三銀行の今までの整理の状況を見ますと、大体三銀行を合して四億円ほどになつておるのであります。詳細な金額はここにございますけれども、省略いたします。そうして、これに対する預金の今はつきりしている分が大体一億二千万円くらいあります。バランス・シートによる分を考えてみましても、三億円もあれば十分預金者には全部支払える。なお、この三つの銀行が合計四億円と言いましたが、まだ未整理のものが約一億円あると関係者言つておるのであります。そうしますと、十分いつでも支払えるわけであります。政府の腹も痛むわけでもありませす、だれも得も損もないのでありまして、預金者には当然払つてもらえる。これをやはり在外会社令で押えておられるのでありますが、もともと在外会社令というのは、ポツダム政令、いわゆる占領治下によつてやむを得ずこうされたのでありまして、早急にこれなどは解除なさつて、いわゆる普通の商法による清算を開始していいのではないか。それが当然の行き道であると私は考えるのであります。そうして清算をやりますならば、今まで言つた通り四億円もあるのでありますから、そうすれば、特殊の整理委員が第二会社をつくる、また今までの預金も支払う、すべてはこれで円満に行くわけでありますが、これをあえてとめておるというのはどういうお考えであるか。これはただちに私の言う通りの御処置をなさる御方針でありますか、この点を伺いたいと思います。
  37. 上田克郎

    上田説明員 この問題も、実は私の同僚がやつておる問題でありまして、私自身が関与いたしておりますのは、そういう問題一般についての会議に参加して意見を言うことになつておりますので、あるいは隔靴掻痒の感じをなさるかもしれませんが、私の考えておりますところでは、こういつた会社、たとえば台湾の金融機関にいたしましても、朝鮮の金融機関にいたしましても――台湾銀行並びに朝鮮銀行を除いた金融機関にいたしましても、御承知のサンフランシスコ条約では、四条でございましたか、相互とりきめによつてこの問題は解決する形式的には一応そういうような対象になつておる関係もございまして、現在までのところ一応伏せてあるという形のように考えております。もちろん、在外会社令そのものの目的と、こういつた金融機関なんかに対するその適用の当否につきましては、いろいろ御意見もあろうかと思いますが、御意見はよく私ども同僚に善処するように伝えたいと思います。
  38. 村瀬宣親

    村瀬委員 私は、これはぜひはつきりしてもらいたいのであります。それは、同様なことで、殖産金庫というものがありましたが、それに対しては政府はちやんと第三会社をお許しになつておる。これは銀行ではありませんで一種の統制機関みたいなものでありましたが、政府の出資二百万円と民間団体の出資六十万円とで台湾でやつてつたのであります。そうして、整理をするとその残りが五千二百万円ある。未整理がほかに数千万円あるようであります。そうすると、この五千二百万円は、ちようど出資金の二十倍になるわけでありまして、政府出資金の二百万円に対してはちやんと四千万円おとりになつておる。それから民間団体の六十万円に対しては千二百万円を渡して第二会社をお許しになつておる。こういうことがあつたわけであります。こういう道があるのです。あるにもかかわらず、台湾の三銀行にはそれを教えない。そして、サンフランシスコのとりきめであるとか、あるいは当事者同士できめたらいいとか何とかおつしやつておりますが、こういう処置ができるのに、台湾及び朝鮮なんかの他の銀行ができないというのは実に不公平な処置である。そしてこれは別に政府の金ではないのであります。政府の予算を必要とするならば、少し押えておこうということもあるけれども、これは、この銀行の関係人たちがつくつて、その人たちが納めた預金であります。そこに金もある。あなたの方でぽんと判を押せば、それが預金者にも返つて来るし、銀行の株主も、あとで第二会社をつくる剰余金もできる。これくらいのことは、在外引揚者に対して親切に御処置ができるはずと思うのでありますが、そういう御処置をおとりになるお考えはありませんか。
  39. 上田克郎

    上田説明員 送金小切手や旧円の問題が法案としてできますころになりますと、今村瀬委員がおつしやいましたような問題についても、もつとすつきりした考え方が打出されるかと考えておりますが、現在のところ、私、その担当の課長ではございませんので、一応御意見を承つて、担当の課長に伝えることにいたして行きたいと思います。
  40. 村瀬宣親

    村瀬委員 担当の部課長でない以上は、十分部内で御研究願い、早急に処置していただきたい。  三番目に、非常に重大な問題を――これが一番大事なことでありますが、こんな小さい小切手や証券類のことではありません。これは全般にわたる大きな問題でありますが、これは予算委員会でも緒方さんがちやんと御答弁をなさつた問題であります。すなわち、在外資産全般について調査審議会を設けるお約束をなさつて、一向まだできたと聞いておりません。そこで、あなたは大臣でないのであるけれども緒方総理が私にお約束をなさつたこの問題はどういうふうに進んでいるか、そしてこの審議会の構想も、大蔵省内に置くと言われるが、私は、大蔵省内に置いたつてだめだと言つておいたのでありますが、いわゆる国会の議を経て置くのであるか、総理府に置くのであるか、大蔵省に置くのであるか、この草案はできているのであるか、いつごろ発足するのであるか等についてお尋ねいたします。
  41. 上田克郎

    上田説明員 その問題につきましては、先ごろ引揚同胞対策審議会の方でも御決議はまだございまして、法律による審議会を設置してこの問題を処理するようにという御要望もあつたわけでございます。現在の事務処理段階を申しますと、関係庁は、御承知のように外務省、厚生省、大蔵省が一番主要な関係庁でございますので、もちろん内閣もそうでございますが、それぞれの事務段階では十分連絡をとりまして話合いを進めております。また緒方総理ちようど大蔵大臣を兼ねておられますときもそのお話を申し上げて御了解はとつたのでございます。あとは形式的に閣議の決定ということにして発足したい、そういうことでございます。  発足します構想としましては、これはまだ閣議決定前でございますから、言うのをはばかりますが、あえて事務試案として考えていただく意味で申し上げますと、大体人数は十名内外、あるいはもつと少くというような構想でございます。それから、それぞれ外務省、厚生省、大蔵省で候補者をつくりまして、これも閣議の御了解を得た上でその候補者の方に懇請する、そういう状況になつております。それぞれ外務省、厚生省からも御推薦をいただきましたので、候補者の名簿はすでにでき上つております。あとは形式的に内閣総理大臣の決裁を得た上で候補者の方に御快諾願うという段取りになつております。  大蔵省に置くかというお話でございますが、現在の考え方としては大蔵省に置くつもりはございません。問題はきわめて大きな問題でございますので、総理府に置いていただこうという案で進んでおります。これは、閣議に出す前でございますから、あまりおしやべりするわけに参らないのでありますが、大体そういう方針で当局は進んでおります。  それから、出発はいつからできるかという問題でございますが、審議会といたしますと、どうしても法律をまたなければならない。われわれとしては、もちろんなるべく早い機会に審議会という法律上の機関にしたい、そう考えておりますが、それより前に発足できたら発足いたしたい。そうすると調査会という名前で発足することになろうかと思います。それで、将来審議会という法律上の機関に切りかえて行く、そういう構想でやつております。  閣議にいつごろ出せるかという問題でございますが、現在国会もございますので、少し遅れておりましたが、なるべく早い機会に――もう原稿はできておりますので、早い機会に大蔵大臣にお願いして閣議に出していただこうか、さように考えておる次第でございます。第一回の会合はできれば今月の中旬くらいには持ちたいと考えておりますが、何しろ問題がきわめて重大な問題でございますので、委員の候補者の方がすぐお引受け願えるかどうか、その点をちよつと心配しておりますが、できるだけ早い機会に調査会としてでも出発したいと思つております。  それから、通常国会が始まりましたら、単行法にするか、あるいは内閣なら内閣の官制の改正ということで行くか、その点はまだはつきり決定しておりません。いずれにしても法律上の審議会にしたい、こういうラインです。
  42. 村瀬宣親

    村瀬委員 この問題は七月十日の予算委員会緒方総理が約束をなさつたことでありますから、中旬にすでに第一回が開けるだろうという御答弁でありますから、了といたしますが、一応発足は調査会でもけつこうでありますから、事は急を要しますので、今御答弁の通りお運びを願いたいと思うのであります。なお、いよいよ調査会が発足をし、それが法律によつて審議会と切りかえられて、本格的に在外資産補償処理の問題が軌道に上るといたしますならば、根本でありますところの憲法二十九条第三項との関係に対して政府の所信をはつきり言明していただきたいと思うのでありまするが、この問題につきましては後日大蔵大臣緒方総理等の出席をまつて質問いたしたいと思いますので、本日はこの程度で一応打切つておきます。
  43. 受田新吉

    ○受田委員 ただいまの調査機関の予算はどの程度で出発されるのであるか。もう間もなく委員の任命はあろうという御用意がある以上は、予算措置について十分御検討が加えられておると思います。この点について構想を伺つておきます。
  44. 上田克郎

    上田説明員 委員会は、先ほど申し上げましたように、大体十名内外で組織されることになつております。委員のうち、もし大学の先生ということになりますと委員会手当はなく、民間の方々委員会手当はきわめて軽少でございますので、委員会そのものにはさほど予算はいらないと思います。従つて、あるいは善後処理費なり、その点は予算技術になりますが、おそらく予備費でなかろうかと思うのでございますが、それによつて十分まかなえるのでなかろうか、かように考えております。
  45. 受田新吉

    ○受田委員 もう一つ、この在外資産について、今の村瀬さんの御質疑の中に残されている問題で、外国における生命保険あるいは、これは御担当が違いますが、郵政省所管の郵便貯金、簡易生命保険というような問題は、一括して在外資産処理をするような連絡調整機関がいるのではないか。各省の代表者をそれぞれ呼ばなければわからないということではなく、在外資産の総括処理者というものがこの際必要ではないか。その人に聞けば一切がわかるというような政府の責任者が必要ではないか。各省の代表者を一々呼び出して、生命保険協会まで呼び出してやるような煩瑣なことをしなくとも、そういうようなやり方ができないものでございましようか。
  46. 上田克郎

    上田説明員 ごもつともなお話でございまして、従来、その関係の連絡と申しますか、窓口と申しますか、そういうものは私どもの方の外債課で一応当つてつたわけであります。今後、たとえばこの調査会なり審議会ができるといたしますと、この事務は在外公館借入金の問題よりもさらに重要な問題でございますので、外債課で扱いますかどうか、その点を心配いたしております。何かそういう審議会でいろいろな問題を審議される場合に、どこか一箇所に行けばわかるというような機関が必要だということは、ごもつともな御意見でございますので、さらに連絡を緊密にするなり、あるいはそういうような構想を上司に進言するなりいたしまして、御迷惑ができるだけかからぬようにいたしたいと存じます。
  47. 受田新吉

    ○受田委員 今の問題につきましての関係法律を来国会に提出なさろうということでございますが、その際には、先ほど以来御説明のありましたような単なる送金小切手あるいは預貯金とかいうような問題のみならず、郵便貯金、生命保険、簡易生命保険などもそれへ含めるような措置をとるわけに行かないか。別々の単行法にしないと、渉外的にもむずかしいところがあり、また国内法的にも困るような問題になるんですか。ここをひとつ……。
  48. 上田克郎

    上田説明員 今度の送金小切手の問題は、先ほど村瀬先生がおつしやつたように、どちらかと言えば、政府は、債権者と債務者の間に立つてこういう特殊な条件のもとでのそういつた債権債務関係を法律で規整して差上げるというか、そういうような立場に立つておるわけであります。郵便貯金などの問題になりますと、直接国が債務者とも言えるわけであります。その点で、処理の難易からいたしますと、民間同士のものからます先にといつた考え方でございまして、決してこれを打捨てておくというつもりではもちろんございませんし、それから、在外資産全般の問題に関するそういつたいわゆる軍事郵便貯金あるいは普通郵便貯金の十月一日以降及び八月十六日以降の預入された分の処理というものが、もつと早い段階に、送金小切手の次の段階に来るということは考えられるのであります。さしあたつて、まずたやすいものからというラインで、今度の国会には、送金小切手という問題と、それから旧円の問題というものは大体出せるというような見通しでございます。
  49. 受田新吉

    ○受田委員 郵便貯金、簡易生命保険のごときは、これは国が当つた仕事なんですから、こちらが通帳を持つておれば確認できる事項ですね。従つて、送金小切手よりはもつとたやすく支払いができるはずです。それが、外地の郵便局に預けた貯金は千円までしか払出しができないで、あとはそのままになつている。この額は全額を総計したつて数億円程度のちよつぴりなものです。朝鮮などの場合も六億幾らといわれている程度です。そのわずかな貯金を払い出してあげる方が手取り早いと思います。それが、国内の郵便貯金を持つていたのはそれで簡単に済んだのが、朝鮮になるとむずかしい、簡易生命保険もむずかしいことになつている。しかし、朝鮮で服務しておつたところの公務員の恩給などは、帰つたらさつそく国内の人と同じように復活しておる。この点は大いに不公平があると思うのです。従つて、これに前後をつけることに対しても私たちとしてはあきたらないものがある。同時に在外財産の処理に関する法律案を一括して出され、その際には、今申し上げたように、国が責任者である場合と個人が責任者である場合とありますが、国だろうと個人だろうとを問わず、それらを一貫した、国家の責任、個人の責任というものを果させるような措置に持つて行かれる必要はないか。まず個人的な関係のものを片づけて、それから国家のものをやるというのも一つの方法でしようが、その額はたかが知れているのです。一括してやられるような態度に変更できないものですか。
  50. 上田克郎

    上田説明員 今朝鮮の簡易保険の例が出ましたので申し上げますが、御承知のように、朝鮮については総督府が向うで簡易保険をやつてつたので、金額は今おつしやいましたように少いといたしましても、いわゆる日韓交渉の請求権の問題として取上げられておる問題でありまして、現在の段階としては、その問題が解決しない限り、一応たな上げと申しますか、全般的な請求権の問題が片づくまでは、こつちの方は朝鮮総督府が払うべきであるというような考え方をして来たのが実情でございます。それから、金額が少いとおつしやいましたが、朝鮮は今言われたような程度の金でございますが、郵便貯金等零細貯金を合せましてもかなりの額に上るのであります。御承知と思いますが、終戦の年の九月三十日までにお預けになつた郵便貯金は全額払い出しております。九月三十日以後、ある意味から言えば送金ができなくなつて以後の郵便貯金の残高、それから軍事郵便貯金につきましては八月十六日以後のもの、そういうものが未解決になつておりますが、この金額はなかなか小さいものではないのであります。在外財産一般の問題を処理する法案は望ましいことでございますので、なるべくそういうものを早く出さなければならぬと思いますが、そういうものができ上りますのは、先ほど申しましたように、審議会でいろいろな法律問題なり実際問題なりの議論をして、そのあとになります。なるべく手のつけやすいものから一日も早くというのがわれわれの念願であります。
  51. 受田新吉

    ○受田委員 わかりました。     ―――――――――――――
  52. 山下春江

    山下委員長 次に、引揚者住宅の問題について政府当局より説明を聴取することにいたします。
  53. 田辺繁雄

    ○田辺説明員 北海道の集団住宅の疎開の問題について政府の方の考えを申し上げたいと思います。  御承知の通り、北海道には樺太からの無縁故引揚者が多数入りました関係上、これらの方を受入れるために、当地の学校であるとか、あるいは特に兵舎を転用いたしまして、いわゆる集団住宅ができたわけでありますが、これは終戦直後の引揚者に対する全国的な状況でありまして、こういうのが各県に多数あつたわけであります。だんだんと日にちがたつにつれまして、集団住宅が腐朽して参りまして、衛生上から申しましても、また火災防止の点から申しましても、非常に遺憾でございましたので、引揚同胞対策審議会において特にこの問題を取上げまして、集団住宅に対する措置について検討を加えたのでございます。その結果、それら集団住宅は補修をしても成果があがらないものであるから、二つにわけまして、基礎堅牢であつて補修をするならば当分の間住宅として使えるものと、補修をしても使用にたえないものというふうにわけて、使用にたえるものにつきましては補修費をとつてちやんと住宅らしく修築をする、使用にたえない腐朽のはなはだしいものにつきましては、すみやかにこれを疎開いたしまして、つまり新しい住宅を建設いたしまして、そこに転居せしめることが最も適切であるということに決定いたしまして、政府にその旨を建議せられたわけであります。政府といたしましては、大蔵省、厚生省、建設省、一緒になつて相談いたしまして、その方針をそのままとつて予算措置を講じました。二十六年度と二十七年度の二年度にわたりまして、全国にあるそういう集団住宅の疎開を実施いたしたわけであります。大部分の集団住宅の疎開はこれによつて完了したのでありますが、北海道は何分にも集団住宅の数が多かつた関係上若干残つたのであります。それは千数百残つたわけであります。残つた分につきましては二十八年度において措置をするということでございましたので、昨年度におきまして大蔵当局に対してその予算の折衝をいたしたのでございますが、いろいろ相談いたしました結果、二十八年以降は公営住宅を大幅に拡張して実施する方針であるから、公営住宅の中に引揚者住宅の特別のわくをつくつてやる、そういうことで政府意見がまとまつたわけでございます。公営住宅と申しましても、御承知の通り第一種と第二種とございます。第二種という公営住宅ができました経緯につきましては、実は引揚者住宅が根幹となりましてそれが実現したような経緯もございますので、建設省としても、特別に疎開住宅のためのわくをとる点につきましては了解してくださつたわけでございます。ところが、昨年度は公営住宅ではうまく行かなかつたのでございます。いろいろの事情が重なり合つたのでございますが、特に北海道は全島全般に疎開住宅がちらばつているわけではございませんので、たとえて申しますれば、札幌にはなくて、その隣の豊平町に集団住宅がたくさんあるということで、地元にはたいへん御迷惑をかけておるようでございます。従つて、財政負担の関係から、一時に多量のものを実施するということがなかなか困難な実情であつたのと、それから、公営住宅でやりますると若干単価が高いために、地元負担が勢い高からざるを得ない。それで、地元としては一層財政負担に耐え得なかつたという事情もからみ合いまして、昨年度はわれわれが希望した通りの事業が実施できなかつたわけであります。しかし、地元の実情は、とうていこれを放置することができないほど差迫つております。しかも、一方北海道については先般の国会で成立しました防寒住宅建設法という法律がありまして、特に寒地住宅については特別の装置を持つた住宅でなければならぬ。つまり単価の高い住宅になるわけでございます。従つて、今日建設省関係の公営住宅でもつて北海道に住宅を建てることになりますと、相当単価の高い住宅にならざるを得ないことになるわけでございます。単価が高い住宅ということになりますと、建設省で補助をいたしますのは三分の二でございますから、残りの三分の一は地元負担でなければならぬ。そうすると、地元負担でまかないますその三分の一の額を根拠として家賃を計算いたしますと、干数百円に上ることになるわけであります。そこで、地元としてもジレンマに陥りまして、どうせ建ててもらうならば防寒住宅が望ましい、しかし防寒住宅であると単価が高くて地元の財政負担が許さない、厚生省関係引揚者住宅ですと、一般引揚者住宅の例から見て、どうしても規模も小さいし、単価も安からざるを得ない、そのかわり建設省関係の住宅に行つた場合には補助率が高い、こういうジレンマに陥つておるわけであります。地元としては、公営住宅、つまり防寒住宅で行つて、なおかつ国庫から高額の補助をもらいたいということを言つておるわけでありますが、そのためには法律の改正もいりまするし、また財務当局とも十分な折衝を重ねなければなりませんので、またどちらで行くかということは最後的には決定をいたしておりませんが、われわれと、しては大蔵省、建設省とも十分連絡をとり、相談をいたしまして、来年度、もし来年度だけで困難であれば、来年、再来年の継続事業といたしまして、北海道のこういう住宅の疎開を実現するように努力したいと、目下せつかく努力をいたしておるような状況でございます。
  54. 受田新吉

    ○受田委員 私は、北海道の豊平には二度ほど視察に行きまして、札幌の近郊の町が財政負担に耐えかねている実情をよく見て来ました。そうしてあそこはまことに不衛生で居住者の苦痛もつて思うべしであつたのであります。こういうところが千数百残されたということは、その人々に相当影響を与えているだろうと思うし、またそれに対して来年度、再来年度というようなゆつくりした気持でこれに当ろうとすると、これはまたますます時は延びて行くという感じがするだろうと思うのです。ああいうところの衛生状態から見ても、ああいうところの苦労は一刻も早く除去しなければならぬことだろうと思うのですが、今予算的にどうでしようか。千数百戸の程度であれば、七、八坪から十坪程度のもので、地元負担が総額で一億か一億かの程度で済むのじやありませんか。そうであれば、ここで何とかこのがんを除いた方がいいと思います。そう大した予算にはならぬようですから、これに対する所要経費を正確に計算して、基準何坪のものを堅牢住宅でつくつてどれだけかかるのか、その要求予算はどれくらいになつておるのかを考えて、処理できればこの際大急ぎでやつていただいたらと思います。
  55. 田辺繁雄

    ○田辺説明員 総額幾らの金額になるか、計算したものは持つておりませんが、できるだけ早く実施する必要があるということは仰せの通りでございます。実は、北海道には、昨二十七年度は、割当てましても地元で財政事情のために百五十戸ばかり実現が不可能であつたわけです。今日まで北海道で疎開を実施しました住宅の戸数は二千百三十三戸になつております。二十六年度が一番多かつたわけでありますが、二十七年度において七百五十数戸割当てました中で、実は百五十戸ばかり、地元の財政の関係から断つて来たという例もございますので、一挙にやることは望ましいのでございますが、地元とよく相談いたしまして、できるだけたくさん早くできるようにしたいと思います。     ―――――――――――――
  56. 山下春江

    山下委員長 この際お諮りいたします。今国会は短期でありますので、引続き閉会中も国会法第四十七条の二項によりまして継続して審議して行きたいと思うのであります。つきましては、閉会中審査すべき案件として、海外胞引揚に関する件並びに遺家族援護に関する件につき、閉会中審査の旨を議長に申し出たいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 山下春江

    山下委員長 御異議なしと認め、さよう手続いたすことにいたします。  なお、遺家族援護に関する件及び在外資産に関する件の質疑については次会に延期したいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十分散会