○田辺説明員 北海道の集団住宅の疎開の問題について
政府の方の考えを申し上げたいと思います。
御承知の
通り、北海道には樺太からの無縁故
引揚者が多数入りました
関係上、これらの方を受入れるために、当地の学校であるとか、あるいは特に兵舎を転用いたしまして、いわゆる集団住宅ができたわけでありますが、これは終戦直後の
引揚者に対する
全国的な状況でありまして、こういうのが各県に多数あ
つたわけであります。だんだんと日にちがたつにつれまして、集団住宅が腐朽して参りまして、衛生上から申しましても、また火災防止の点から申しましても、非常に遺憾でございましたので、引揚同胞対策審議会において特にこの問題を取上げまして、集団住宅に対する措置について検討を加えたのでございます。その結果、それら集団住宅は補修をしても成果があがらないものであるから、
二つにわけまして、基礎堅牢であ
つて補修をするならば当分の間住宅として使えるものと、補修をしても使用にたえないものというふうにわけて、使用にたえるものにつきましては補修費をと
つてちやんと住宅らしく修築をする、使用にたえない腐朽のはなはだしいものにつきましては、すみやかにこれを疎開いたしまして、つまり新しい住宅を建設いたしまして、そこに転居せしめることが最も適切であるということに決定いたしまして、
政府にその旨を建議せられたわけであります。
政府といたしましては、
大蔵省、厚生省、建設省、
一緒にな
つて相談いたしまして、その方針をそのままと
つて予算措置を講じました。二十六年度と二十七年度の二年度にわたりまして、
全国にあるそういう集団住宅の疎開を
実施いたしたわけであります。大部分の集団住宅の疎開はこれによ
つて完了したのでありますが、北海道は何分にも集団住宅の数が多か
つた関係上若干残
つたのであります。それは千数百残
つたわけであります。残
つた分につきましては二十八年度において措置をするということでございましたので、昨年度におきまして大蔵当局に対してその予算の折衝をいたしたのでございますが、いろいろ相談いたしました結果、二十八年以降は公営住宅を大幅に拡張して
実施する方針であるから、公営住宅の中に
引揚者住宅の特別の
わくをつく
つてやる、そういうことで
政府の
意見がまとま
つたわけでございます。公営住宅と申しましても、御承知の
通り第一種と第二種とございます。第二種という公営住宅ができました経緯につきましては、実は
引揚者住宅が根幹となりましてそれが実現したような経緯もございますので、建設省としても、特別に疎開住宅のための
わくをとる点につきましては了解してくださ
つたわけでございます。ところが、昨年度は公営住宅ではうまく行かなか
つたのでございます。いろいろの
事情が重なり合
つたのでございますが、特に北海道は全島全般に疎開住宅がちらば
つているわけではございませんので、たとえて申しますれば、札幌にはなくて、その隣の豊平町に集団住宅がたくさんあるということで、地元にはたいへん御迷惑をかけておるようでございます。
従つて、財政負担の
関係から、一時に多量のものを
実施するということがなかなか困難な実情であ
つたのと、それから、公営住宅でやりますると若干単価が高いために、地元負担が勢い高からざるを得ない。それで、地元としては一層財政負担に耐え得なか
つたという
事情もからみ合いまして、昨年度はわれわれが
希望した
通りの事業が
実施できなか
つたわけであります。しかし、地元の実情は、とうていこれを放置することができないほど差迫
つております。しかも、一方北海道については先般の
国会で成立しました防寒住宅建設法という法律がありまして、特に寒地住宅については特別の装置を持
つた住宅でなければならぬ。つまり単価の高い住宅になるわけでございます。
従つて、今日建設省
関係の公営住宅でも
つて北海道に住宅を建てることになりますと、相当単価の高い住宅にならざるを得ないことになるわけでございます。単価が高い住宅ということになりますと、建設省で補助をいたしますのは三分の二でございますから、残りの三分の一は地元負担でなければならぬ。そうすると、地元負担でまかないますその三分の一の額を根拠として家賃を計算いたしますと、干数百円に上ることになるわけであります。そこで、地元としてもジレンマに陥りまして、どうせ建ててもらうならば防寒住宅が望ましい、しかし防寒住宅であると単価が高くて地元の財政負担が許さない、厚生省
関係の
引揚者住宅ですと、
一般の
引揚者住宅の例から見て、どうしても規模も小さいし、単価も安からざるを得ない、そのかわり建設省
関係の住宅に行
つた場合には補助率が高い、こういうジレンマに陥
つておるわけであります。地元としては、公営住宅、つまり防寒住宅で
行つて、なおかつ国庫から高額の補助をもらいたいということを
言つておるわけでありますが、そのためには法律の改正もいりまするし、また財務当局とも十分な折衝を重ねなければなりませんので、またどちらで行くかということは
最後的には決定をいたしておりませんが、われわれと、しては
大蔵省、建設省とも十分連絡をとり、相談をいたしまして、来年度、もし来年度だけで困難であれば、来年、再来年の継続事業といたしまして、北海道のこういう住宅の疎開を実現するように努力したいと、目下せつかく努力をいたしておるような状況でございます。