○
長崎説明員 民営あるいは国営、あるいは今の
公共企業体の形態による経営、いろいろなことが
考えられるのであります。し
かし私は、要するにそれらの議論がなされるということは、現在の
国有鉄道の
運営そのものの実態がきわめて不
満足な形である。これを一日も早くりつぱなものにいたしまして、
国民全体の期待に沿い、信頼にこたえるような
方向に持
つて行きたいというお心持ちからではないかと思います。それについて私のまことにまずい経験でございますが、その経験から割出して
考えますと、要するにこの企業の改善あるいは企業の拡張というようなことは、いずれにいたしましても企業が繁栄する
方向に持
つて行かなければならないと思うのであります。しかるに、忌憚ない
言葉で申しますと、採算とか企業とかいう
見地から申しますと、新線の建設とい
つたしのは企業の拡張でございますが、これは明らかに損失の行く企業を拡張することに相なるのであります。し
かしながら一方、公共性あるいは
国家の伸展発達、電力の開発あるいは国土の開発という観点から申しますれば、私はやはり新線建設はある程度やらなければならぬ問題であると思います。そういう責任もわれわれに負わされる。さらに運賃等の問題につきましては、先ほど川島
委員から御指摘がありましたように、一般
国民経済の観点もしくは社会経済の観点から、これを極度に低い線で押えるということにな
つておる。減価償却その他のことも十分にできない。その損失の行く新幹線は、われわれの利息のつく借金でまかなわなければならぬ。これには
政府の出資が当然だと思いますが、それともできない。し
かしこれまた
国家全体の財政の上からは、やむを得ないということにな
つておるようでありまして、敗戦
日本の現状はそうであるかもしれませんが、まあずいぶんつらい経理財政企業ということにな
つておりますので、私は決して経営形態の問題ではなくて、そういうところに
日本国有鉄道が皆さんから
満足をいただけないところ、特にもがいているところ、そういう苦難の道があるのではないかと思うのであります。その点を何とか打開いたさなければ、私は民営になりましても、国営になりましても、同じことじやないかと思います。
よけいなことを長々と申し述べて恐縮でありますが、過般私ヨーロツパヘ参りましたとろこ、ヨーロツパの各国ともほとんど全部国有であります。そして大体において
公共企業体のようなものが経営をいたしております。イギリスは多少違います。これがやはり、われわれほどではございませんけれ
ども、運賃はある程度物価の水準までは上
つていない。し
かし一方においてはバス、トラツクその他の競争と相対抗しまして、経営の現代化と申しますか、合理化と申しますか、そういうことをどんどんや
つて行かなければならぬ。それには
相当金がいるが、その金の出場がないというようなことで、非常に苦しんでおります。ただフランスにおきましては、先ほど川島さんからお話がありましたように、運賃の低下を
政府が要請する場合においては、それに対する補償を払うことにな
つております。傷痍軍人あるいは多数家族の割引というようなものに対しましては、やはり
政府が補償いたしております。さらに平面交叉の踏切りは、国と
国鉄とが半々に費用を負担しております。それからさらに線路、
建物、ホームというような地上設備につきましては、
政府がある程度の割合の負担をいたしております。これはし
かし後に至りまして、道路の使用料のようなものを
国鉄から
政府にお払いして返すという建前でありますが、そういうふうにや
つておるそうであります。これについては、多少
意見がましいことを申し上げて恐縮でありますが、運送業というものを見ますと、海運業は船だけ持
つておるの、であります。港その他の設備は、国または県が負担しておるのが現状であります。それから航空機も、空港は国がや
つておる。航空企業というのは飛行機だけしか持
つていない。バス、トラツクも同様でございます。道路というものは国あるいは県がつくる。ただ一つ
鉄道だけは、何から何まで全部やらなければならぬということで、非常に欧州では問題にな
つております。と申しますことは、
鉄道が
政府独占の企業であ
つた時代はそれでよいと思うのでありますが、今や独占というものは大分ゆらいで参りまして、バス、トラツクにどんどん食われて参りますという場合に、何から何まで全部やらなければならぬのかということが、非常にヨーロツパでは議論にな
つておりまして、漸次これが是正の
方向に向
つておる傾向でございます。そういう点は今後
日本においても
考えて行かなければならぬ。そうして
日本においては、バス、トラツクと
鉄道との競争というようなことはやめまして、それをどうして手をつないで、最も能率のいい
運営をするかという点に
重点を置いて行かなければならぬ。要するに
国鉄の問題にしましても、経営機構の問題ではなくて、そういう根本的な観点を十分に考究しまして、そして改善をはか
つて行かなければならぬ、かように
考えております。