○
藤田進君 私は午前中速記録を調査いたしました後に、それぞれ確かめたいと申上げておりましたが、
只今速記録が手許に入りましたので、
犬養法務大臣並に
小坂労働大臣に対しまして、確認的な
質問をいたしたいと思います。
先ず第一に指摘いたしたいのは、昨年のあの長期深刻に
なつた
争議の過程におきまして、しばしば
争議行為として電源職場の労務提供拒否その他の
方法がとられておるが、殊に電源職場の労務提供拒否については治安当局としてはこれは違法ではないという主張を持たれ、その方針で事に処して来られたと思うのに、午前中の法務
大臣の御
答弁では、つとに違法であるという
考え方でいたんだ、こういうふうに窺えたのでございます。これに対する人的な、いわゆる人証はここに特に挙げません。場合によれば又改めてやりますが、少くとも
昭和二十七年十一月の八日、昨年の電産
争議終盤に当る時期でございます。第十五国会参議院の本
会議におきまして、岩木哲夫君の
質問に対しまして、当時の池田
通産大臣が答えていることがございます。その
質問の要旨は、「池田
通産大臣に追加いたしてお尋ねいたしたいことは、」ということで、「今回の
争議が
政府の失態、怠慢によ
つて、いつ解決するかわからないのであるが、」といろいろ事情を述べられて、そういう場合に損害が
ストライキの結果あるが、そういうものに対して
政府が責任を持つのか、会社なのか、労働組合なのかという点が
質問の中心であ
つたように思われます。長いからこれは省略いたします。これに対しまして池田
通産大臣は、「次にストによりまするその被害は誰が負担するかという、こういう問題でございますが、正当な
争議行為によりまする被害は、労働組合法の八条によりまして、使用者にも或いは組合側にもその責任はないということにな
つておるのであります。而してストをした組合側が第三者に対する責任如何ということになりますると、組合側と第三者とは
関係はございませんから、そこに損害賠償その他の権利義務
関係は起らぬと思います。なお又、ストによりまして
電気事業者と使用者との
関係におきましては、これは不可抗力による場合におきましては、
電気事業者はその被害の責を負わないということが
電気供給規程に規定してあるのでありまして、
電気供給規程による不可抗力というものが、正当な労働
争議を不可抗力と見るか見ないかという問題につきましては、厄介な問題でございまするが、この点につきましては、以前に慣例として不可抗力と見るという解釈をしておるのであります。つまりこの
質問は、今申上げた
通産大臣の
答弁にありまするように、昨年のあの丁度
質問の当時
争議行為が行われていた。あの
争議が一体どうなのかという、正当、不当、或いは違法、合法の問題から発しているように窺われるのであります。全体を流れている精神が、これに対して損害賠償の責はないんだというのが当時の
通産大臣の
答弁でございます。更に
国務大臣犬養氏は「岩木君にお答えいたします。」ということで、短かい
答弁でありますが、次のように答えております。なおこの
質問の要点は、「最後に
犬養法相にお尋ねいたしたいことは、今後のスト
行為の成り行き次第によ
つて全面的に更に悪化」する、非常に広汎にな
つて来る、これは一体法務
大臣としてどうなのか、当然刑法上の適用があると
考えるがどうか、こういう
質問なんです。これに対しまして
国務大臣犬養氏は、「岩木君にお答えいたします。
経営者側が業務の引継ぎを要求いたしまして、業務の入れ替りを経ませました後に、
争議団が電源スイツチを切りました場合は、多くの場合、御承知のように刑法に規定せられました威力業務妨害に当てはまるのであります。多くの場合と申しまして、全部と申しませんことについて、或いは御不審があるかも知れませんが、当局といたしましては、
一つ一つのさような場合に、その
状況を勘案いたしまして、労働組合法の第一条第二項に当てはまるかどうか、
一つ一つ現に慎重に、起りつつある場合を検討しておるのであります。併し多くの場合、威力業務妨害に当てはまると解釈いたしております。」……よろしゆうございますか。これは要するに電源職場などにおけるウーキング・アウトそのものは問うてはいない、それは違法ではない、けれども会社が業務を引継いでいるにかかわらず、その後闖入したりしてスイツチを切
つたらこれが威力業務妨害なんだ、この威力業務妨害に当てはまるという、多くの場合こういう
立場をと
つておいでになります。更にこれを裏付けるかのごとく、第十五国会、十一月二十七日、いよいよ
争議解決の直前に近い時ですが、
衆議院の通産
委員会におきまして次のようなことが
政府から
答弁されております。高木
委員の
質問に対しまして……、高木
委員は、
争議行為に対して
公共事業令の八十五条というものを適用することができないのかどうかという点が重点でございます。これに対しまして当時の公益
事業局長、石原(武)
政府委員が答えております。「まず第一にお尋ねの第八十五条がかりに有効であるとして、今回の電産ストの
関係でありますが、八十五条は今
お話がありましたように、正当の
理由なく云々というように書いてありますが、正当の労働
行為であれば当然これの適用外に当るのであります。不当な労働
行為が行われた場合に、初めて八十五条が問題になるということでございますが、今回の
争議の中に不当労働
行為があるかないかによ
つて、この規定の適用があるかないかということになるわけであります。そこでお尋ねの停電ストは、違法な労働
行為であるかどうかという点がいろいろ問題になるわけでありますが、従来
昭和二十五年の当時におきましては、
政府としては停電ストは違法の
行為で」……停電ですよ、電源ストじやないんだ。「停電ストは違法の
行為であるという解釈をいたしておりまして、それに基いてさような事件が起きた場合に告発をいたしております。」これからです。「しかしながらそれらの事件につきましては、刑事事件になりましたものについては、ほとんど無羅の判決がございましたので、現在におきましても停電
行為が違法な労働
行為と認むべきやいなやについては、実は
政府部内でも現在のところ
はつきりいたしておりません。」と言
つておるのです。「従いまして今のお尋ねについて
はつきりしたお答えを申し上げかねるのではなはだ恐縮でありますが、不当労働
行為であるということになりますれば八十五条違反になりますので、この規定が有効でありますれば当然これは違反
行為を形成し得ることになります。」こういうようなことを言
つております。更に、これは通産
政務次官ですが、山手
委員の
質問に対しまして答えております。今のこの電産
争議を一体どうするかというようなことに対しまして、小平
政府委員は「
お話のような事態が起らないことをわれわれは
希望しておるわけであります。万一にもそのような事態が起りました際におきましては、労調法のいわゆる緊急調整という遣も開けておるわけでありまして、一般国民生活をはなはだしく危うくする、あるいは
産業をはなはだしく危うくするという事態にまで行きますならば、」まだ行
つていないですね、この時。「行きますならば、緊急調整の措置に出るということも当然予想されるわけだと思います。」更に、まあ長いので読み上げませんが、
公共事業令八十五条は
争議を目的には作
つていないということが明確にな
つております。
要約いたしますると、以上申上げたように法務
大臣並びに
労働大臣が本当に
スト規制法に対しては、すではもう前々からそういう
行為には違法であると
考えていた。違法であ
つた。これを今回
労働者に対して親切な
意味で、間違
つては困るので、違法であるということを明確にするだけなんだ、決して新らしく制限するものでも何でもないのだ、こういうことが言われているのでありますが、た
つた、この間の国会では以上のような
答弁がなされているので、全く突然変異というか、変
つている。而も法務
関係につきましては、
只今法務
大臣が言われて初めて
労働大臣のほうに何らか近付いたような御
答弁にな
つて、これ又誠に変貌を来しておるようでございまするので、以上の御
答弁は全く何かの
都合であれが間違いであ
つたのかどうか、
はつきり
一つして頂きたいと思いまして出したのでございます。