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参考人(三富博君) 御指名によりまして御
質問の第一項から述べさして頂きます。
第一項は、
現行人事条項が七月一日から同封の
人事条項案に改訂される
模様である、
従つて労働者は
従前よりも一層不安定な雇用上の地位におかれるかどうか、この点であります。この点につきましては現在においても身分保全上不安定であることは幾多の事例で判明しておりますように、それよりも加わるということはより明らかに不安定であるということは申上げられます。更に
従前と比較して有利、不利な点を述べられたい、この点でありますが、
只今申上げましたように、これに加えまして七月一日から第八条の
A項が加わり、請負
業者がその事項を同意したとするならば、スパイ行為とか怠業若しくは破壊活動とかという字句が使用されておりまして、時期の規定がありません。従いまして常時これが現況報告というものが要求されるという
関係上、而もその情報一切が完全な
秘密報告によるとな
つております。こういうことになりますと、特高に類するところの特定の
調査活動を
会社に許すということになります。その結果するところのものは良心的なものでありましても、
契約担当官からの要求により無理にでも該当事実を作り上げて行くという慮れがないとは申上げられません。更に
労使の争議行為或いは双方の悪感情による場合のことを想像するならば、一層この感を深くするばかりか、労組員或いは
従業員が
如何に不利な
立場になるかは推して知るべしであると思います。延いては憲法に定めるところの基本人権の侵害ともなり、
労働三法の保護思想がより一層曲げられるのではないかと考えております。
更に第二項の、
労働協約、
就業規則その他労組
関係法の
運用と
人事条項との
関係について
組合の
立場からの
見解を述べられたい、このようなことでありますが、特に富士におきましては、お
手許にありますように、
会社から出されました労働
事情のF項を参照して頂ければわかりますが、昭和二十四年の九月二十九日に当時の工場
監督官の指令と申しますか、指示と申しますか、構内における政治活動が禁止されておりまして、その
効力が未だあるものとこういう
見解を
会社が現在と
つております
関係上、非常にあらゆる
協約の審議にいたしましても、又
就業規則の上においても、
会社の
就業規則の罰則、制裁、それ以上にそういうようなものが含まれるという
関係上、どうしても審議運営に当
つても
会社はなかなかその線を越えてまでも我々に、
協約にいたしましてもそういうような点に触れて来られない、そういう憾みがあるわけであります。そういう
関係上この
人事条項については更に、
只今工場長からも言われたのですが、昨年私のほうにも
軍命解雇というものが発生しております。これについてはなお後ほど発表したいと思
つております。それにつきましてまだ
見解としましては、こういう状態で我々の主張と
会社の主張が明らかに相反するというような状態において、それを守らなければ
会社は
契約上のキヤンセルということもあるということで、先ほど申しましたように現実的にはなかなか
協約も進展しない、もう三年近くこの問題について取組んでおりますが、やはり基本的な問題が解決されないために、未だ進展しておらないというような状態であります。このような状態にありまして、
組合の
立場から申上げますると、みずからの労働条件を有利にするには
会社自身自主的により強い状態に置かれてほしいということであります。それがためには過去のごとく軍基地内における私
契約上の問題であるからと申しまして、政府なり或いは国会が、弱い
業者を孤立させておくような放任主義であ
つてはならないということであります。だから
参議院の
労働委員会がこの問題を具体的に取上げるに至
つたことを深く感謝いたしますが、必ず結論を得て頂きたいと、こういう
見解を持
つております。
更に次の
質問事項でありますところの、なお
現行の
人事条項は
会社側より
通告されていたかどうか、あ
つたときそれに
労働組合はどう対処されたか、この問題でありますが、これはこの
人事条項につきましては
只今申しましたように、昨年の六月十八日、更に二十七日と初めて
軍命解雇が富士で発生しております。その以前に私
たちはこの
人事条項があるということはすでに承知しておりまして、これに対するところの撤回
運動をすでに、先ほど関特の
坂本議長が言いましたように
運動を起しておりましたが、それまでは
会社としての通知といいますか、そういうようなものはなか
つたわけでありますが、そのときに初めてその
条項が示されたわけであります。それで今も申上げましたように、それに労組はどう対処したかの問題でありますが、この問題につきまして私
たちは、昭和二十六年十一月頃よりこの問題に取組みまして、やがて起るであろうところの行政協定、そういうような問題について、
如何にこの
人事条項を撤回しなければならないかというようなことについて、先ほど
関特労の
議長から縷々
説明がありましたように大きな活動を続けて来たつもりでありました。そういう中においてこれが発生したということで、而も
講和発効後にできたということからして、より強いことを政府は勿論、国会又
アメリカ軍
当局、大使館というようなところへも呼びかけてなお且つ活動を続けている状態であります。
それから次の問題であります七月一日から
現行の
人事条項が改訂される
模様について通知されたかどうか、これは
日経連の発表もありましたし、又更に
会社のほうからもこういうような
模様であるということが示されております。その中から第九条
関係は
会社としても強く削除して行くと、削除できる
模様であるという
内容が知らされております。その間
会社にも
軍命解雇というような醜い姿があ
つた関係上、この点については
会社からも特に
組合のほうに対して通知をしてくれておるようでありますから承知しておりました。
それから
現行人事条項による
契約担当官の
通告の
内容、その
理由、
根拠についてどう考えられるか、この問題でありますが、冨士で
軍命解雇になりましたときも、これは
組合としてはその不当性を
会社に対しまして言
つたわけでありますが、明らかにされたものは、やはり先ほどのように軍保安上という
言葉だけであります。従いまして特に不明確であるというお答えができます。これは我々の仲間では共産党のことをマル共と一言で
言つておりますが、そういう容疑者を
一つの線上に挙げると二千円乃至三千円の報酬がある。而もそれがマル共というところの断定がついて、そうしてその線上にはつきりして来ると一万円何がしの報酬ももらえるのである、こういうようなことがありまして、場合によ
つてはこのような悪質なブローカー、情報ブローカーといいますか、そういうようなブローカーの我々
労働者が餌になる、そういうことによ
つて根拠のないところの
軍命解雇の対象者が出る、こういう虞れがないわけではないのであります。
一つの例を言いますと、同姓同名であ
つてその者が首にな
つてしまう、名前もうつかりつけられない、こういうような事態であります。それでもそういう
根拠を突いて行くならば必ずや明るみに出るのではないかと思いますが、不幸にして我々にはそれに与えられたところの力もありません。そういうことでそのように私
たちは考えております。
更に、
現行人事条項は
解雇約款と解されないが、非
通告者はどう取扱われたか、これも先ほど
会社の工場長のほうからも言われましたようにいわゆる
軍命解雇ということに対し
会社としてもその間に立
つて非常に苦慮された、そういう
事情は当時の
組合の三役をしておりました者としてもよくわか
つておるわけであります。そういう結果からして
就業規則の何条でしたか、先ほど言いましたけれども、それによ
つて業務上止むを得ないところの
解雇である。要するに
契約がキヤンセルせられて七千の
従業員が路頭に迷うか、又その特定の僅かの人によ
つて救われるか、こういうような問題に立至るわけであります。さようなときに
労働者はどうなるかと言われれば、やはり皆のためだ、こういうことにな
つてそのことを承諾しなければならない、必ず結果は悪いことはわか
つております、が、併しそうしなければならない悲しい現実でありまするが、そういうことになります。よしんばこれを提訴し、又裁判所のほうへ訴えるとしても、資金というような面、生活上の保障というような問題も起るというような
観点から、どうしても弱くなるということによりまして、大部分の者が
解雇を認めておる、認めなければならない、こういうような状態であります。では必ずしもその人が
軍命解雇の対象になり、本当に保安上危険であ
つたかどうか、こういうことについては大きな疑問が残
つております。そうしてそれの身分上取扱われたところのものは、
会社としては事故退職という形をと
つております。そうして対外的にも社会的にも本人の救済というような面が大きく考慮されまして、依願退職の形をと
つておりますが、退職規定によるところの
会社の
都合として支払
つたものは倍額の金が払われました。そうしてなお
会社自身が、明らかに
会社の業務を執行して行く上に不当な人間であると思うかということについて大きな疑問があるということからして、そういうものでないというような感じ方もあるという点から、それらの就職の斡旋にも当
つてくれております。そういう事態であるわけであります。
以上でありますが、申し遅れました中に、
軍命解雇のあ
つたとき、それに
労働組合はどう対処されたかという問題についてであります。このときの問題は、又この問題と同時に
組合のと
つたところの態度でありますので、それを
説明いたしますと、七月の十八日並びに二十一日の両日に亘りまして、
組合委員を含めた八名の者が
会社より
契約明細書の第八項、即ち
人事条項を呈示されまして、
会社より、
就業規則の第五十四条第二項の
会社の業務上止むを得ない場合として
解雇を申渡されたのでありますが、
組合は
委員を含む八名の
軍命解雇の発表を重大視いたしまして、
会社に対しては直ちに
解雇不当の意思表示をいたすと共に、被
解雇者の処理については機関の決定によりまして、個人救済のため地労委提訴並びに法廷闘争の費用の準備をしたわけでありまして、更に生活保障等の万全の態勢を整えたわけであります。が、併しながら被
解雇者は、そういうような
組合の動き、又こういうようなものを通じて
一つの事態を我々自身が生み出して行こうというような強い決心にもかかわらず、その
解雇の事実を認めまして、提訴を取りやめることとなりました。
組合といたしましては闘争の
内容が直接身近に感じない憾みは生じましたけれども、我々特需
労働者としての大きい問題といたしまして、必ず
関特労働を通じましてレーバー・クローズ
条項撤廃のために中央における対政府或いは国会、或いは更に
日米合同委員会に対するところのその闘いを起したというのが実情であります。
以上を以ちまして
組合側に対する
質問を明らかにいたしまして私は終ります。