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1953-06-19 第16回国会 参議院 労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年六月十九日(金曜日)    午後一時四十六分開会   —————————————   委員の異動 六月十六日委員大山郁夫君辞任につ き、その補欠として堀眞琴君を議長に おいて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     栗山 良夫君    理事            井上 清一君            田畑 金光君    委員            宮澤 喜一君            阿具根 登君            吉田 法晴君            寺本 広作君            堀  眞琴君   国務大臣    郵 政 大 臣 塚田十一郎君   政府委員    郵政大臣官房人    事部長     八藤 東禧君    郵政省経理局長 中村 俊一君    郵政省経理    局主計課長   佐方 信博君    労働政務次官  安井  謙君    労働省労政局長 中西  実君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巌君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   説明員    労働省労政局労    働組合課長   山崎 五郎君   参考人    全逓信従業員組    合中央執行委員    長代理     横川 正市君   —————————————   本日の会議に付した事件労働情勢一般に関する調査の件  (労働争議における強制出荷に伴う  紛争に関する件)  (日本製鋼株式会社赤羽工場におけ  る労働争議に関する件)  (郵政職員給与体系是正に関する  調停案の件) ○連合委員会開会の件   —————————————
  2. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今から労働委員会開会いたします。ちよつと速記をやめて。    〔速記中止
  3. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それじや速記を始めて下さい。郵政職員給与体系の問題は、先ほどお話申上げましたように政府側の都合によりまして、後ほど調査をいたすことにいたしまして、先ず過日労働省調査を依頼してありました労使紛争に対しまして、警察官その他の勢力が介入をしておる疑いのある事件について御報告を願いたい、調査の結果を御報告を願いたいと存ずるわけであります。
  4. 中西実

    政府委員中西実君) この前に最近の争議警察官憲の関与した事案について調査してもらいたいというお話がございましたので、一応私のほうに報告がございました主なものにつきましてお手許に印刷いたしまして配付申上げました。大体御覧頂けばわかるのでありますが、先ず日産化学賃上げ争議におきまして、王子工場と熊本の鏡工場におきまして出荷拒否に絡んで、ピケライン出荷しようとする事業主或いは消費先との間に衝突がありまして、その間に事態を憂慮して警察官が出てその衝突を避けるよう努力しておる事案がございました。更に昭電川崎工場の生産報奨金問題をめぐる争議におきまして、やはり出荷妨害に関連いたしまして警察官の出動がありまして、若干の検束者を出しておるという事件がございます。この詳細は大体これを御覧頂けばわかるかと存じますので、御説明は省略したいと思います。
  5. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 御質疑はございませんか。
  6. 寺本廣作

    寺本広作君 日産化学事件につきましては只今資料を頂戴したばかりでございますが、この事件につきましては先日地方行政委員会で、事件のありました当該府県の知事、国警長官など召喚されまして証言を求められておりますので、その資料があります。この委員会として正式に調査された事件ではありませんが、一応只今拝見しました、頂戴しました資料、並びに地方行政委員会で討議された資料などで一応の資料は揃つておると思います。それからこれは偶然にも私の郷里の事件でありますので、公けの立場ではありませんが、私個人としてはいささか事情承知いたしておりますので、その関係で若干発言を許して頂きたいとこう思います。  この事件は、労使双方争議によつて第三者である農民が迷惑をした事件であると、こういうふうに私は考えております。特に食糧増産の意欲に燃えておる農民が、肥料最盛需要期に入つて肥料が入手できないで非常に迷惑された、特にその肥料が生産され、貯蔵され、而も引渡契約の対象になつておる肥料が目前にありながら、農民が入手できないで非常に焦躁を感じ事件であると考えます。そういう点におきましては、これは労使双方争議のために第三者である一般大衆が非常に迷惑をするという、他の公益事業争議に似た性質を持つておると考えるのであります。事件労働争議としてはすでに解決した事件でございますが、今申上げたような意味におきまして、こういう労働争議によつて第三者が迷惑する事件について、労働省当局がどういうふうな見解を持つておられるかということにつきましては、関係農民諸君が非常な関心を持つているだけでなく、一般国民としてもやはり承知したいところではないかとこう思いますので、私は質問をしてみたいとこう思うのであります。  肥料製造事業と申しますのは、只今労調法では公益事業には指定されておりません。又公益事業に指定すべきものでもないと私も考えております。併し今度の争議対象になりました日産化学のような会社で、一社でこの過燐酸石灰というような重要な肥料の全生産額の三割乃至四割も生産しておる、こういうような場合に、市場には輸入その他によつて肥料を供給する方法が、補う方法がない。而も争議は相当長期に続いて行われておる。そしてこの争議の時期の関係から、肥料需要期に入つておるというような場合には、やはり事態発展如何によつては相当国民経済に及ぼす影響というのは大きくなつて来ると考えられるのでございます。この間の日産化学事件が、そういう国民経済に重大な支障を及ぼす段階まで至つたとは私は判断しておりませんが、我が国のように食糧がいつも恒常的に不足しておる国においてこうした争議が発展するならば、情勢如何によつて肥料製造業であつて労調法の八条二項、三十五条の二などでいう国民経済運行に著しい支障を与えるという事態に発展する場合もあり得ると、かように考えるのでございます。肥料工業については未だこういう事例がないので、議論が戦わされたという前例がありませんが、この点について肥料工業などについてもやはりこの労調法八条二項でいう公益事業の追加、三十五条の二でいう緊急調整対象になり得るような事態が、事態如何によつてはあり得るかどうか、さようなことは絶対にあり得ぬと考えられるか、この際労働者当局所見を伺つておきたい、こう考えます。これが第一点であります。  第二の問題としては、この問題が、警察が出動した、そのためにいろいろ労働争議警察権によつて弾圧されたというような議論を巻き起しております。非常に悲しむべき現象であつたと私は考えます。地方行政委員会で論議されたのは、主として警察権行使が妥当であつたかどうかという面から議論をされておりますので、その点は当委員会でこれを蒸し返す必要がなかろうと思います。当委員会では、この労働争議として行われたピケツト・ライン張り方合法範囲内にとどまつたかどうかという点について労働省所見を明らかにして頂きたい、こう思います。と申しますのは、争議手段として行われる場合には、一切の行為合法的であるという誤解が行われやすいという点を私は恐れるのであります。最近新聞で見ておりますと、北海道の人民裁判事件における争議行為合法性違法性の問題が最高裁判所でまで争われたということが出ております。これが我が国の実情でありますので、ピケツト・ラインについての合法性限界についてやはりこの際労働省所見を明らかにして頂くことは、国民として聞きたいところではないかと考えております。  ピケツト・ライン合法性限界については、御承知通り先年の三越の争議事件で争われたところであります。ピケツト・ラインを通過してお客である第三者が店内に入り得るかどうかということが争われた事件でありますが、この日産化学事件も、肥料の引取契約をしている契約の当事者ピケツト・ラインを通過しようとした、そのために起つた事件であると考えます。ピケツト・ライン当事者の言うように非常に簡単なものであつたか、それとも数列に亘つて厳重に布かれておつたか、この点については事実上いろいろ問題はあろうと思います。説得範囲を超えて、実力を以てそうした正当な業務を遂行しようとする者を阻害する、そういうピケツト・ライン争議行為として合法範囲内にとどまるものであるかどうか、労働組合法上許容された争議行為であるかどうか、この点について労働省の御見解を伺つておきたい。  なお、ここには日産化学事件並びに昭電川崎工場事件など、争議行為が起つて、それが第三者にいろいろの影響を及ぼし、そのために警察沙汰なつ事件だけが、悪い事例というか、不詳な事件だけが挙つているのでありますが、争議行為全体を国民が妥当に判断するためには、こういうまずい事件だけではなく、争議行為の場合に第三者に迷惑をかけないように、労使双方第三者の被害を極度に最小限にとどめるために配慮が行われたといういい事例があるならば、労働教育を担当される労働省としてここで御披露を頂けまするならば、当事者の反省の資料にもなりましようし、又一般国民労働争議の正常な姿というものを批判して行く上の教育資料にもなろうと考えますので、そういう事例がございましたら一つここで御披露を願いたいと思います。  以上三点について私は労働省当局の御見解をこの際明らかにして頂きたい、こう考えます。
  7. 中西実

    政府委員中西実君) 一番初めのお尋ね肥料産業の場合にも労調法の八条二項、或いは緊急調整の章の三十五条の二に該当するような事態が予想されるかどうかというお話に対しましては、御承知のように国民経済を著しく阻害し、又は公衆の日常生活を著しく危くするという事態の生じますのは、概しては公益事業でございます。只今指摘のごとく、肥料は勿論公益事業には指定されておりませんが、公益事業以外のものでも、その事業性質並びに規模によりましてはこれに該当することがないとは言えないのでありまして、現に石炭事業労調法第八一条で公益事業に指定されておりませんけれども、昨年その事業性質並びに規模の大きかつたが故に緊急調整規定の、今申しました三十五条の二の  「国民経済運行を著しく阻害し、又は国民日常生活を著しく危くする虞があると認める事件」、而もその虞が現実に存するという認定がされまして、昨年の暮緊急調整の第一号の決定がなされたようなことがあつたのであります。従つて今にわかに将来のいろいろのことを予測できませんけれども公益事業に限らず、他の産業におきましても、その事業性質上或いはその規模の大きさ等によりまして、やはりそれに該当することがあり得るということは申せるかと思います。但しそれは勿論現実に起つて見まして、具体的な事例で十分検討いたされなければならないと、かように存ずる次第でございます。  第二のピケ合法性限界についてでございますが、先ほど警官の関与しました事例として出しましたものにつきましても、問題の起りますのは、大体において出荷妨害の際でございます。でこの出荷妨害につきましては、従来から具体的にほうぼうに事件が起りまして、すでにこれにつきましては裁判所判例が相当出ております。更に又その場合に馘首その他の問題が起りまして、不当労働事件といたしまして地労委或いは中労委への提訴によりまして、相当多数の決定が出ております。ここに一、二の判例決定があるのでございますが、法律上は労組法の第一条第二項によりまして、「刑法第三十五条の規定は、労働組合団体交渉その他の行為であつて前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。但し、いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為解釈されてはならない。」、この条文があるだけでありまして、然らばどの程度のものが正当かということにつきましては全く解釈問題でございます。従つて最終的には裁判所判例等参考になるわけでございます。  そこで判例といたしまして、例えば一昨年秋の日通柏崎事件出荷妨害判例、これは同時に地労委から中労委までも問題になつたものでございますが、その中に、実力を以て妨害したことが疏明される場合には、そういう行為は到底正当な組合行為とは言い得ない、こういう個所がございます。更に東京地裁の判決で北辰精密工業事件に関するものにつきましては、ピケツテイングにつきましてこういうふうに申しております。本来非組合員である会社重役ストに対抗してみずから出荷しようとすることは、それ自体何ら不当なことではないのであるから、これに対するピケツテイングも原則として平和的説得方法によるべきであり、且つ当該争議の本来の範囲を超えた行為に出ることは許されないということを申しております。そのほかここにあります裁判所判例並びに労働委員会決定は、すべて趣旨は大同小異でありまして、言うところの趣旨は、ピケツテイングを破ろうとする場合、これに対して平和的説得方法で協力を求めるということはいいが、積極的に実力を以て行動を阻止しようというのは、ピケツテイングとして行過ぎであり、正当な争議行為ではないと、こういうことになつております。行政解釈として、私ども大体においてそういうことになるのではなかろうかというふうに解しておるのであります。  それから最後に、第三者争議中迷惑を成るべく軽減するようにした事例がないかというお尋ねでございまするが、的確な事例はちよつと思い付かないのでございますが、争議行為は飽くまで労使双方の間の問題でございまして、その労使双方の間の紛争のために、全然関係のない第三者に迷惑を及ぼすということは、これはもう成るべく避けなければならないこと申すまでもございません。又、組合運動といたしまして、国民大衆から支持を受ける意味におきましても、成るべくそういつたことの避けらるべきは当然でございます。そこで特にこの公益事業、例えば交通機関等におきましては、過去におきましても相当やはり緊急の用務者とか、その他特別な用務のある人には特に電車を出すとかいうようなふうに配慮して行われたスト承知いたしております。成るべくやはり第三者に迷惑をかけないようにストが行われるということが、結局労働組合の健全な発達、又世間から支持される上におきましても必要ではないかということは考えておるのでございます。
  8. 吉田法晴

    吉田法晴君 まあ委員の御発言は御自由でございますし、私ども他委員の方々の御発言についてとやかく申上げようとは思いませんが、折角過去において労働行政を担当せられました寺本さんから悲しむべき御意見を拝聴いたしましたことを私甚だ残念に思つております。それはとにかくといたしまして、第一点の御質問に対する労政局長答弁は多少疑問もございます。それから寺本さんの、公益事業範囲解釈によつて拡げ得るのではないかと、こういうような御質問に答えて、ややそれに近い御答弁がございましたので、重ねて一つ答弁を頂きたいと思います。緊急調整制度適用があります公益事業範囲等は、先ほど御指摘のように八条に明らかに書いてございます。そこで、公益或いは公益事業というものを法律拡大解釈が許されると私ども思わんのであります。今の御答弁の中には多少その点あいまいであつたようでありますが、或いは公益事業範囲を拡げようという御意図に基く、多少立法技術上の意味を含んでの御答弁であつたのか、その点明らかに一つお答え願いたいと思います。
  9. 中西実

    政府委員中西実君) 立法的にどうこうというような意図は全然ございませんで、ただ技術問題といたしまして、まあこの例が適切であるかどうかは別といたしまして、例えばこの間王子製紙ストをやりました。新聞紙の約四割は王子製紙が製造しております。これはまあ相当なストツクもあり、王子製紙一社で済みましたので大したことはございませんでしたが、或いは新聞紙全体が長期に亘つて供給されないというような事態になり、それが果して国民経済或いは国民日常生活に非常なる影響を及ぼすということが認定されるかどうかは、これはまあなつてみませんと今から予測はできませんけれども、相当やはり事業の性格から見まして、国民生活なり或いは国民経済なりに影響が及ぶことの予想されるものにつきましては、三十五条の関係につきましては絶無とは言えないと、ただその事態は勿論、昨年の炭労ストのときにも我々経験いたしましたので、相当な事態でなければそういう認定はできないのでございますので、今直ちにそういうことは予想はできないのでありまするが、併し全然皆無かと言われればそうは言えないのではないかというだけの意味でございます。
  10. 吉田法晴

    吉田法晴君 労調法八条の精神からいいましても、公益事業としてこういう強力な労働関係調整をやる事業範囲については、これは厳重に或いは愼重に取扱わなければならんという精神労調法八条に現われておるのだと思います。それを運用により或いは解釈により範囲を拡げようということは、むしろこれは厳に慎しまなければならん問題ではないかと思います。それを御質問があつたからと言つて、多少厳密ならざる方法で拡げるような御答弁がありましたことは、甚だ私遺憾だと思うし、不謹慎だと思うのですが、その点を私申上げておるのでありますが、労働関係調整を先ず労使双方によつて自主的になされることが望ましい。そうして介入という問題は、労働委員会であろうと、或いは国家機関の場合にはなお更でありますが、これは最善の努力を尽して避けられるのが本当なんで、万止むを得ざる場合の最後方法として、そういう権力の介入が、これはネセサリ・イーブルではありませんが、最後の悪として考えられておるということが従来の関係ではないかと思います。それをたやすく法解釈その他で以て若しなさろうとする態度がおありになるとするならば、これは由々しい問題ではないかと思います。その点重ねてお伺い申上げます。
  11. 中西実

    政府委員中西実君) 先ほども言いましたようによくよくの事態でなければ勿論いたしませんので、御趣旨通りに私どもも考えております。
  12. 吉田法晴

    吉田法晴君 なおその点については現在の政府は、第五次吉田内閣でありますけれどもスト規制法提案等、権力的な介入がまあだんだん殖えておると申しますか、そういう傾向にございます際だけに、労働省として、或いは労働関係調整に当る担当者として、もう少し強い決意をこれは要請したいと思います。それは国家権威というものを裏付ける意味においても必要だと思いますが、若し国家或いは政府が一方的に片寄るということになりますならば、これは権威を失わしめるゆえんであろうと思いますが、その点は特に強く要望いたしておきたいと思います。  それから問題になつております日産化学王子、鏡の両工場、それから昭電川崎工場争議に共通しております問題は、殆んどが強制的な出荷、或いはこれに対する妨害、こういう問題が殆んど共通的な問題でございますが、一応形は農民要請をしてということになつておりますが、或いは鏡の場合にいたしましても特定の会社、或いは鏡の場合には県購連等が入つておりますが、この出荷要請する際に、農民自分の農業をやつて参りますのに止むに止まれず、肥料を今使わなければならんからということで出荷要請参つたという感じよりも、工場から、或る会社から連絡をしてそうして参つたという多少の疑問が残つております。若し農民が本当に自分が今使う肥料が欲しいということであるならば、もう少し穏やかな話がなされなければならんと思います。或いは又なされるのが自然だろうと思うのでありますが、警察官憲伴つて強制出荷をしようとされたところに事件発生の原因があつたのではなかろうか。その証拠には、あとでそれぞれ話合いをして円満に話合いがついております。そこで問題は、そういう警察官憲介入を求めて出荷をする或いは出荷要請するというところに問題があつたのではないかと思うのであります。先ほどピケの問題についてもお話がございましたが、ピケ合法的な限界についての解釈あとの問題として、問題の中心になります出荷についての出荷要請、或いは出荷をしようという態度の強力さに問題があつたのではないかと思います。問題はその中に警察官憲介入することがいいか悪いか、或いは望ましいかどうかという点にかかると思います。先ほど労政局長は、報告文書通りと、こういうことで、全然感想と申しますか、意見を述べられなかつたのでありますが、労政局長感想一つお願いいたしたいと思います。そういう強力的な官憲と申しますか、警察力介入を含んだ関与が望ましいと考えておられるのか、その点だけを先ず承わりたいと思います。
  13. 中西実

    政府委員中西実君) 私ども実は正直に言つて、ここに印刷してあります以上のことは報告を受けておりませんので、わからないのでございます。警察官の入り方としまして、それがいやしくも正当なストに対して弾圧を加えるというようなことがあつてはならないということにつきましては、全く異議はないのでありますが、果してこの事案の場合、具体的にどうであつたか、これについては実は真相はつきりわからないのであります。
  14. 吉田法晴

    吉田法晴君 真相がわからんと言つて報告書は、これは労働省から渡された報告書であります。文書は下の者が書いた、中身はおれは知らんというなら別ですが、まさかそういうことはおつしやらないと思う。この文書、この報告書を見てみておつても或る程度事情はわかります。私どもも伝え聞いたぐらいのことで、正確な報告はこれを見るのが初めてです。これを見てでも警察出荷に関する介入はつきりしておる。トラツクについて来て、警察がその出荷を、警察援護の下にやろうとした、これははつきりしておる。そういう基礎の上に今の質問を申上げたのでありますが、中身は知らんとおつしやるのですか、それともこの程度報告の上で感想を述べられるのか。
  15. 中西実

    政府委員中西実君) ここに書いてある以上に、その際に果して穏和にもつと方法があつたかどうか、或いは警察官に行過ぎがあつたか、そういう点につきましての実相を見ておつたわけでもございませんし、それから一応の報告ではその点がはつきりしなかつた、こういうことでございます。これを見ました感じは、大体誰もが受ける感じ、恐らく読まれた方と同じ感じで、私も違つた感じは持たない、こういうだけのことでございます。
  16. 吉田法晴

    吉田法晴君 文書を見ておられ、事情は聞いておられると思いますが、報告に出て来る範囲内においても出荷について警察権が関与して、そうして警察援護をして出そうとした、それに対してピケ隊と申しますか、その出荷を阻止しようという者があつたということだけはこの文書で明らかであります。第三者的に公正に見てみて、そういう労使間の紛争があります際に、問題は出荷という問題でありますが、その出荷警察権が関与して、そうして警察権実力行使をも伴つて出荷援護するということが望ましいと考えておられるのかどうか、その点を労政担当者としてお伺いするわけであります。
  17. 中西実

    政府委員中西実君) 先ほど判例或いは労働委員会決定の際に申しましたが、現に出荷妨害におきまして、正当ならざる行為認定されておるものが相当あるのでありまして、その場合にやはり片方は品物を出そうとする、片方は出させまいとする、そこにそのまま行きますれば実力実力のぶつかりで不祥事件が起るという場合に、その不祥事件を避けるために警察官が出るということは従来とも事例のあつたことでありまして、警察官憲がどういう方針でそういう場合にやりますか、詳細は承知いたしておりませんけれども、そういう事態はあり得るということは、これは予想しております。
  18. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ず第一にピケ正当性を認められるかどうか、これを承わりたい。
  19. 中西実

    政府委員中西実君) 先ほど申しましたように、ピケそのものはこれは禁止されておりません。そうして又ピケは、その目的として結局スト破りを防ぐのでございます。その場合に平和的な説得によつてその目的を達するやり方によるピケは、これはもう当然正当な行為として認められるものと思つております。
  20. 吉田法晴

    吉田法晴君 私ども現実にそういう場面にタツチしたことはございますが、スト破りが行われようとする、それにピケを張る、そのピケ正当性は今述べられた通りであります。そういう場合に警察官憲介入するということが望ましいかどうか、これを聞いておるわけです。もう少し具体的に申しますが、実力或いは暴力を以て、或いは労働者側から或いは警察官側から、或いは会社側から行われるということは望ましいことではない。これも先ほど伺いました。ところがピケが張られている場合に例えば警察官が大挙してこれに介入するならば、むしろ警察と或いは労働組合側に紛争が起るということは想定できると思うのであります。現に私は見た事例でありますが、昨年の炭労争議の際に嘉穂炭鉱でスト破りが行われた。これは組合員じやなく第三者、特に請負その他別な意味のそれを雇つて来てスト破りをやる。それに対して警察の出動が起ろうとしたわけであります。私はむしろそういうことが行われることは紛争を起す、或いは労働組合警察との間に紛争を起すことだからやめてもらいたいということを言つてとめた。これは御協力を得て終つたのですが、今日の労使関係の中に、警察官実力を以て介入することが望ましいかどうか、その点について労政局長の一般的な御見解を承わろうとしているのであります。
  21. 中西実

    政府委員中西実君) 労使紛争は成るべく労使双方話合いで解決すべきが本筋でございまして、それに外部からの干渉、殊に官憲の干渉があることの望ましくないことは申すまでもございません。ただ先ほども申しましたように正当性を越えた争議行為、これは勢い伴い勝ちの場合が多かろうと思うのでありますが、そういう場合に、単に治安維持というような立場から警察官が出るということは予想されるのでありまして、原則として何もそういうこともないときに官憲が出るということは、これは勿論好ましくもなく、又なすべきことでもないというふうに考えております。
  22. 吉田法晴

    吉田法晴君 治安維持ということが言われましたが、問題は、労使関係の問題が経済的な要求をめぐつて行われております場合に、治安という問題が起る心配のありますのは稀有の問題だと思うのであります。問題は日産化学或いは昭和電工等の場合でありますが、これは直接労使関係だけでなしに、第三者農民なり或いは運送業者等が入つておりますが、それもお話のように話合いで或いは交渉で解決することが望ましいのであつて、その搬出について警察の出動を要請するといつたようなことが、そうして又それに応じて警察官憲が出動することは望ましいと言われるのですか、それとも望ましくないというか、私は労使関係の円満な解決のためには望ましくないと思うのであります。現にこれらの問題については警察の出動が運送会社なり或いは会社からなさつたのかも知れませんが、要請されて警察官が出動している、そうして問題となつている。そういうふうな警察官の出動を求めるということは望ましいことでもないし、むしろ労働者の立場から、そういう労使関係について警察官の出るというのは御遠慮を願いたいというのが労働省の立場だと、かように考えますが、その点伺います。
  23. 中西実

    政府委員中西実君) 先ほどの治安というふうに申しましたのは、私広い意味で申しましたのでありますが、警察官憲争議の最中に出入りしますことは、まあ往々にして非常に刺激しやすい、従つて使用者によりましては如何に厳重なピケが張られましてもこれには対抗することなく、飽くまで忍んで、話合いで解決しようという態度に出る使用者もございますが、併しときに使用者としてどうしてもこの際或いは出荷しなければならない、或いは人の出入りを或る程度しなければならないという場合には、これはときに救いを求めるということもあるのじやなかろうかと思う。ただ労組だけの観点から申しますると、而も労使間を円満に解決するという意味から言いますれば、如何なる場合でも成るべくそういつた官憲の出動を要請したりすることは避けたほうが望ましいということは、抽象的には申せます。が、併し個々の場合にはそう言つて済ましておれない場合もありはしないかということも又言えるんじやないかと思います。
  24. 堀眞琴

    堀眞琴君 今のに関連して……。警官の出動の問題ですが、只今労政局長お話ではまだ若干納得が行かない点があるのです。それは大体の場合警官の出動を要請するのは使用者側から要請するわけです。それで又出荷拒否の場合のピケを突破するというような場合も、これも会社側の実は要請によつてやる場合が多いのですね。そうすると出動した警官というのは、これは第三者であるべきはずなのが、使用者側のともすると味方になり勝ちであり、又現実に今までのストを見ましてもそういう傾向が非常に強いのです。殊になんですね、暴力団などを使つてそうしてピケ・ラインを破つたりなどするということはたまたま見られるわけです。その暴力団の背後には警官が付いておるというような場合が多いのです。そういつた事態を私たちは見ておりますので、警官の出動ということについてはもう少し具体的に労働省としては、どういう場合には警官の出動が認められるのだ、どういう場合には認められないのだということを、もう少し具体的なお話を願いたいと思うのです。
  25. 中西実

    政府委員中西実君) これは具体的には非常にむずかしいのでございますが、併し全くその必要がないということもどうかと存ずるのでありまして、例えば最近も、大分古い話で今頃はもうございませんが、北海道の人民裁判に関しまして最高裁の判例が出ました。これはやはり明らかに違法であり、あの場合やはりああいつた事態のときには一応警察官が救出するということも必要の場合がある。今後ああいう問題は恐らく予想し得ないのでありますが、そこでまあ争議の解決、つまり労使双方労働関係ということから見ますれば、もう極力やはり警察官介入ということはしないほうがいいと思いますけれども、そういつたいわゆる緊急避難的な場合には、これはやはり止むを得ないのじやなかろうか。まあ抽象的でございますけれども、それ以上には言えないのでございますが。
  26. 堀眞琴

    堀眞琴君 緊急避難の場合は止むを得ない。これは私ども別に全部警官を出動しちやいかんというわけではないのですけれども、ところがですね、これまでの争議を見ますと、実際においては使用者の側から警官に出動を要請する場合が多いんです。決して治安の必要上、警官の自己の判断で以て出動したという場合は殆んどないといつていいと思うんです。今日私ども拝見しております日産化学の場合について見ましても、恐らく使用者側から警官との間に事前に連絡があつたんじやないかという感じも受けるんですね。そういうことになりますと警官の立場というものは非常に私は微妙になつて参りまして、労働組合と当然対立することになると思うのです。そういう点で労働省としては、やはりはつきりした態度をここでおきめ願つて、そうして労使双方に自主的な解決が促進されるような方向に持つてつて頂きたいと思いますが、どうでございますか。
  27. 中西実

    政府委員中西実君) 結局具体的に、こういう場合はこういう場合はというようなことになるかと思うのでございますが、非常にこれはむずかしいんで、例えばピケについてはどの限度かと申しますと、先ほど申しましたように、平和的説得によつてその目的を達すべきで、実力或いは強力によつてピケの目的を達しようとするのはすでに行過ぎである。それから又、例えば仮処分が出ました場合、これに従うのはやはり民主主義の労働運動として当然でございまして、執達吏の行いましたものに対してこれを破棄するような行動に出るのも、これはやはり行過ぎではなかろうか。その他判例には相当出ているんでありまして、結局まあ最終的には先ほど言いましたように、法律では労組法の一条二項しかございませんので、結局最終決定権を持つ判例の積み重ねによつて、おのずからそこに限界が出て行くのじやないかというふうに考えております。
  28. 堀眞琴

    堀眞琴君 ちよつと念を押しておきたいのですが、警官の出動を、できるだけ労働省としては出てもらいたくないという御意向のように伺つているわけなんですがね。ところが先に申上げたように、警官の出動した場合というのは、一般の場合として、大体において使用者側から要請されて出て来るということになります。出て来ますと、そこに要らない紛争も起つて来るわけです。そして又労働組合の側でピケ・ラインを張つて実力を以てこれを阻止する、こう言いますが、実際においては警官のほうがそのピケ・ラインを破つて実力を以てむしろ警官のほうが行動するという場合が多いのです。そこで労働組合が止むを得ずしてこれとの間に紛争を起す。こういう場合なんですね。警官のほうがおとなしく、これは止むを得ないものだかして、ピケ・ラインを解いてくれと言つて、その上でなお聞かないというような場合は割合に少いのですよ。あの武装警官がやつて来ましてね、ぱつとピケ・ラインの中に突入して行くわけなんです。そこで労働組合の側ではこれを阻止するということになつている。ですから労働省とすれば、労使双方調整という立場からして、警官の出動はできるだけせないようにするというような通達なり或いは方針なりを決定されるのが私は望ましいのじやないかと思いますが、その一点だけをお伺いいたします。
  29. 中西実

    政府委員中西実君) これは占領当初からで、今日も変つておりません。何とかそういう趣旨のことは末端に出ておりまして、我々のほうからしますれば、警官の出動はもう最小限度でなければならないというふうに考えておりまして、あと警察当局の心がまえなり或いは方針、そういうことになるのじやないかと思いますので、労働省としましては、今申しましたように、必要最小限度の出動以外は好ましくないというふうに考えております。
  30. 堀眞琴

    堀眞琴君 確かな何かを出しておられるのですか。
  31. 中西実

    政府委員中西実君) いつかちよつと年度は忘れましたが、何度かそういうことは私のほうからもたしか出たと思いますが、警察当局からもたしか出ておつたと思います。
  32. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今事件等につきましては、寺本吉田、堀委員からそれぞれの立場で熱心な御意見がございました。併し労働省当局からは、この状況に対して一応御報告を頂きましたが、これ以上の突込んだところまではまだ調査していないかにお話もあつたのであります。それでこの問題の取扱い方をどうするかを一つおきめを頂きたいと思うのです。ちよつと速記をやめて。    〔速記中止
  33. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて。
  34. 田畑金光

    ○田畑金光君 今までの質問に対する労働省側の答弁によりますと、単なる事件の経過を報告したと、単に事実を羅列掲載しているに過ぎないという印象を受けるわけであります。すでにこの報告された事項を前後判読いたしましても、労働省側の答弁というものは、当然に結論として出すべきことすらも平面的な言い逃れで態度を明らかにしていない、こういう感を深くするわけであります。従いましてこのケースというものは、単に日産化学の一会社工場における問題じやなくして、今日の労働運動全体に対する問題であり、又労働省側の考え方というものは、労働運動全体に対する無方針というか、或いは殊更に事実を曲げて解釈する態度を我々は印象として受けましたということは非常に遺憾であります。従いましてこの問題に関しましては、地方行政委員会においてそのような現地からの関係者を上京してもらつて事情を聴取し調査を進めるということでありますならば、労働委員会といたしましてもこの際いろいろな時間的な関係もありましようし、又上京される方々の立場もありますので、例えば合同調査委員会、こういうふうな形において関係当事者から事の真相を明らかにして、その上に立つて労働委員会としてはどうこれを取扱うか、どう処理するか、これに対しまして本日の労働省側の答弁というものは一体事実に即して答弁なされているのか、単に抽象的、平面化して責任逃れの立場をとつているのか、殊に最近の風潮である労働者側の組合運動に対する官憲の圧力、干渉に対してともするとこれを擁護するような傾向に対しまして、我々は事実に基いてこれを究明して参りたい、かように考えますので、この際一つ地方行政委員会と共に上京された方から事実を聴取し、その上に立つてこの問題の処理方を図つて頂きたいと、こう考えます。
  35. 吉田法晴

    吉田法晴君 田畑君の御意見も伺いましたが、連合審査云々ということについては連合審査を申入れるようにお取運びを願いたい。それから今田畑君からもお話ございましたが、調査報告を求められた労働省側として、書物に書いて経過この通り、書いたもの以上に知らん、こういう態度については甚だ不まじめと申しましようか、責任を尽しておるものとは思いません。特に労働争議官憲介入を事実として取上げて、然るにそういう角度から十分調査し、報告書の中にもございますけれども、「威力業務妨害現行犯として組合員八名を検挙した。」ということもございます。恐らく中西さんは先ほどの御答弁で、こういう点はお見逃しになつておるのではないか。昨年の電産争議の際に或いは炭鉱争議の場合に、威力業務妨害というものは残つておる。これは警察だけでなく、裁判所介入しておる。すでに労働争議国家或いは官憲介入という大きな問題として望ましいかどうか。それを昔あつたかも知れませんといつたような御答弁で、甚だ責任を尽しておるものとは思いません。追つて一つ愼重に審議することにして、あとの議案もございますので、本日はこの問題はこの程度に…。
  36. 寺本廣作

    寺本広作君 地方行政委員会で本事件調査をやられるということでありますので、地方行政委員会労働委員会の合同の審査会を開くことは結構だと思います。建前から申しましても、公共委員会の所管に属する事項は地方行政委員会労働省の所管に属する事項は労働委員会ということになつていますし、公安委員会の治安に関する政策と労働に関する政策面の交錯面であろうと思いますので、合同審査会を開かれることは非常に結構だと思います。ただ先ほどから、今日労働省から出された資料を基礎にして討議が行なわれておつて、この労働省から出された資料の検討がこの場で行なわれておりませんので、速記録からこの労働省資料が抜ける虞れがありますので、会議録には労働省資料を付けておいて頂くようにお願いいたします。後日に……。
  37. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今私がお諮りをいたしました地方行政との連合委員会、或いは労働委員会として単独に現地の事情を伺うかという問題につきましては、諸君の御発言によりまして、地方行政委員会との連合審査の申入れをしろ、こういうことでございますからさように取計いたいと存じますので、さよう御了承を願いたいと思います。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  38. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて。では次に第二の案件に移りたいと思いますが、実は関国際協力局次長においで願つておるのでありますが、非常にお急ぎの会議があるそうでございまして、もつと早くやつてもらいたいという要請があつて、若干時間が延びて申訳ないと思います。従いまして早速日本製鋼の赤羽工場におけるところの紛争につきまして労働省並びに直接御関係のあられる外務省としてその経過の大要を一つ説明を頂きたいと思うわけであります。
  39. 山崎五郎

    説明員(山崎五郎君) 日本製鋼赤羽工場労働争議の概要を説明いたします。  赤羽工場は特需工場で、従業員約六千名からなつております。同工場内にはT・O・D、東京兵器業務署、この従業員が約三千名おります。このほかにブリツジストン・タイヤ工場の従業員が約三百名おります。日本製鋼赤羽工場労働組合、約六千名の組合は、関東特需労協に加盟しております。この組合が五月四日、二月以降一律四千円べース・アツプの賃上げ要求を行いまして、なお現行は一万七千円であります。五月十三日以後六月十六日の団体交渉まで約十三回に亘つて団体交渉を持つております。その間会社は五月二十日に千五百円のベース・アツプ、五月二十八日に二千百円のベース・アツプの最後回答を提示したのでありますが、組合側は額に不満の意を表しまして、更に増額を要望した結果、会社側は六月八日に更に三百円を加給しまして二千四百円の回答を出したのであります。組合は六月三、四日以後、いつでもストライキに入り得るような情勢を整えておつたのでありますが、六月十日の闘争委員会において、十六日を目標に解決しなければ重大な決議を行う旨の決定を行いまして、六月十六日の団体交渉において会社側は、前回回答、即ち二千四百円の回答以上は出せない、配分上の問題は、五割を一律に、三割を年令給に、二割を成績給とする、実施する期日は七月一日として、二月には遡及しないという回答をしたため、団体交渉は物別れになりました。組合は、十六日午後八時より七十二時間のストライキに突入したのであります。会社側は組合ストライキ決行と同時に全面ロツク・アウトを実施する旨を通告し、ロツク・アウトを行いました。このロツク・アウトは約一週間の予定を以てなされたものと聞いております。組合ストと同時にピケ・ラインを張り、スト破りを阻止すると共に、TOD東京兵器業務署従業員の協力を要望したのでありまして、そこでこのTOD従業員の入門につきましていろいろ問題があつたのであります。日本製鋼赤羽工場労働組合ピケのためにこのTOD従業員の入門は十七日、十八日の所定の時間、これは大体八時より就業することになつておるのでありますが、この所定の時間を遅れるようになつたのであります。即ち日本製鋼労組のピケ隊はTOD従業員の入門を飽くまで阻止するというのではないのでありますが、TOD従業員であることを確認した上でなければ通さないという態度をとりまして、十七日は入門が午前十一頃まで、十八日は午前九時頃までかかつたような状態になりました。  で、今問題になつておる事件に入るのでありますが、昨日午前七時三十分頃、ピケ隊、大体七十乃至八十名がピケ・ラインを張つていたところへ赤羽工場内のTODの小銃試射場に勤務している米国民間人のキーストン及びTODの婦人従業員、これは日本人でありますが、二、五名を乗せた自動車が相当なスピードで疾走して来たが、ピケを張つていたために急停車をした。ピケ隊は右自動車が通行しようとしたためにこれを阻止しようとしたのであります。この点は明らかでありませんが、或いは車に触れたり蹴つたということを言つているようでありますが、組合側はそんな蹴つたりしたのでなく、蹴るまねをしただけだと言つているようでもあります。この点明確ではありませんが、とにかくピケ隊は日本婦人に対して労組のストライキに協力して帰るよう説得したのであります。このようなピケ隊態度に対して、米人は車外に出て、米人とは先ほど申上げましたキーストンだと思います。ピケ隊員のうち二、三名を殴打した。そのとき工場警備兵が、米兵でありますが、二発の威嚇射撃を空に向けて発砲したため、組合員は道を開き、自動車を米人が運転して工場内に入つた。なお日本婦人はそこから赤羽の方向へ引返した、こういう事件であります。併し現地から取りあえずの報告でありまして、若干の相違があるかもわかりませんが、大要はこういうふうに報告に来ております。  以上説明を終ります。
  40. 吉田法晴

    吉田法晴君 今説明員から事件の大要の御説明がございましたが、幸いにこの委員会の席上、赤羽工場の労組の委員長が傍聴に御出席を願つておるので、参考人として事情を聞くことができるように一つお取計らい願いたいと思います。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  41. 寺本廣作

    寺本広作君 委員でない議員の発言に関することが参議院規則として書いてあるようですが、証人として正式の手続を経ないで来ている人に証言を求める前例なり規則があつたらお聞きしたいと思います。
  42. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記をとめて。    午後三時十二分速記中止    —————・—————    午後三時四十六分速記開始
  43. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて下さい。  それでは次の調査案件に、移ります。労働情勢一般に関する調査といたしまして、本日は郵政職員給与体系是正に関する調停案に関する件につき、手続上の関係からあらかじめ委員長において公共企業体等中央調停委員会委員、東京大学教授石井照久君及び全逓信従業員組合中央執行委員長代理横川正市君を参考人として御出席をお願いしておきましたが、参考人として両君から意見を聴取することにいたして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 御異議ないものと認めそのように取計らうことにいたします。なお、郵政省からは政府委員に御出席を願つております。  それからお断り申上げますが、只今事務当局から、調停委員会委員である石井君は、先ほど非常な重要な用件があるのを無理にお引きとめしておきましたが、二時間以上待ちまして、先ほどの会議の空気からして、まだ長引くというので、どうしても待てないということで御退席になりましたそうですから、この点御了承を願いたいと思います。  それでは郵政職員給与体系是正に関する調停案に関しまして順次発言を願います。
  45. 横川正市

    参考人(横川正市君) 只今委員長から御指名頂きました全逓の中央執行委員長代理をしております横川でございます。本日は非常に御多用にかかわりませず、私ども調停案の問題に関して委員会で諮問される機会、私のほうからお答えする機会を得ましたことを心から感謝申上げます。  五月二十八日に私どもの給与の非常に不合理な点を是正するための調停申請をしておつた内容が、調停案として提示されまして、それに基いてその後省との間で解決のために鋭意努力をいたして参つたわけでありますが、公企労法適用職員である私どもの法的な盲点と申しますか、或いはそのこと自体が相当無理がある問題を運用だけでこれを解決して行こうというような、そういう当初からの意思であろうかとも存じますが、細かな問題まで解決するところの手続上のことが規定されておらないということもありまして、当面の私ども団体交渉の相手方であるところの省側、いわゆる郵政大臣或いはそれらの責任者の人たちと私どもが話合う中で、例えば今度の調停案を提示されまして、組合側は非常に内容として不満ではあるのでありますけれども、これを受諾するという態度決定したにもかかわらず、これは省側としてはこれに対する回答をまだ出されておらない。而もこのことは当面の責任者である郵政大臣の能力によつて解決するということではなしに、郵政大臣は閣僚の一員でありますし、政府を代表しておるということから、政府がこれを決定しなければいけない。又その中の一員であるところの大蔵省がこれに相当大きくウエイトを持つておるという、こういう複雑な内容から、当然閣議で二十八年度予算乃至七月分の暫定予算が決定されるまでには正式の回答が寄せられる問題であろうかと思うのでありますが、併しながら国会の開会されておる現在、その国会において審議され、その結論が出なければ回答にならないというような、そういう立場にあるわけであります。  私どもは公企労法を適用された職員といたしまして、曾つては公務員法下の団結権だけで組合運動を続けて参つたのでありますけれども、この公務員法下の組合運動を推進して行く過程に非常に大きな念願と不合理を感じて参りました。そうして公企労法適用職員となることを非常に切なる願いとして現在まで参つたわけであります。併しそれが法的に本年の一月一日から適用されるという段階になりまして、当初の問題として出されたことがこういう羽目に陥つておることについて、非常に私どもとしてこれは遺憾だと考えておるわけであります。併しながらこの問題を解決するために、組合といたしましては公正な、法に定められた規定に、ルールに従いまして問題を解決すべく現在まで努力いたして参りました。そのためにはあらゆる手段を講じてこれの実施方について努力して参つたのでありますが、遂にこれは閣議の決定とならず、予算の上にこれは明らかとならずままに、皆さんのお手許に二十八年度予算の内容が渡され、乃至七月暫定予算がもうすでに決定されて国会に提出されるような事態にあるわけであります。徒にこのような長い期間に亘つて紛争を行わなければならないということは私どもも非常に不本意でありまして、この問題の解決については皆さんの是非一つ御努力によりまして、新しく設けられたルールを、これを活かして、而も労使間の問題をスムースに解決するために是非特段の御支援をお願いしたいと、かように思うわけであります。  全逓の今度の給与是正のための調停申請を行いましたその内容について簡単に説明いたしたいと思いますが、実はこの問題の起因するところは、実に日本の組合運動が始りまして、全逓という組合が何かすると一般社会人や或いはその他の方々の間にあつても左傾した組合である、或いは共産党に牛耳られた組合である、こういうような印象を与えておつたことは、これは事実であろうと思います。そういうふうな組合の形体の中でたびたび行いました賃金闘争のこの闘いが、全日本の官公庁の共同の中で闘われたのが、二十三年の二千九百二十円ベースを決定する当時に大体集約された形として出て参つたわけであります。その二千九百二十円ベース決定当時の全逓の組合の闘いというものは、これは私どもも一員として闘つたことでありまして、今ここであえて回顧的に申上げるわけではありませんけれども、水を飲んでも闘わなければならんというような闘いの指導の下におかれておりました。そのために私どもはこういうような組合の行き方について大いに疑義を持ち、そういうことであつては当然組合員の経済的利益を擁護することはできないではないか、こういうことからこの行き方に反対をいたしまして、その後全逓は、二十三年の七月に上諏訪の中央委員会で遂に分裂をするという憂目に会つたわけであります。併しその当時の賃金の内容といたしましては、もうすでに国鉄であるとか専売であるとか、或いはその他の官公庁の方々が早く政府から提示された二千九百二十円ベースを呑むことによつて、現在までの不合理というものは或る程度是正されておつたわけであります。ところが全逓の場合には、その闘争を契機といたしまして、而もそれが公務員法の枠内で組合運動が続けられるというような経緯の中から、どうしてもこれらを是正するところの機会を逸しておつたというの現状であります。たまたま先年の十一月に公社関係最後組合となりました全電通が、八月一日から公企労法適用職員となりまして、現在全電通は一万三千四百円のベースを実施いたしておるわけであります。併し私どもはこのような全電通が賃金をもらうようになつたその段階において、私たちも同じように同一庁舎の中で、同じ仕事に位し、而も学歴その他においても同一の学歴を持ち、而も永年歴史的な中で同じように暮して来ておつた全電通との中でこのような差違を生ずることについては非常に納得が行かないということを申上げましたところ、政府の当時の閣員の人たちや或いは郵政省の当面の責任者であるところの大臣から、公企労法適用が全電通は八月一日から適用された、郵政省は一月一日から適用されるというようなそういう段階にありましたので、公企労法適用職員となつたときには当然公企労法を適用しなければならないという現実に立つてそのような不合理は是正するだろう、こういうことが言われたのであります。当時労働省のそれぞれの幹部でありました方も、この点については御存じだろうと思いますが、そういうことから私どもは、一月一日から公企労法適用職員になつたということを契機といたしまして、給与の体系の是正についての要求を大臣に出しまして、而もそれが到底その場で解決ができないというところから、調停案を申請し、五月二十八日にその調停案が提示された、こういう結果になつておるわけであります。  その是正されようとする給与の内容でありますが、その内審はこの二千九百二十円ベース決定当時に、郵政省の場合には、御承知のように学歴と申しますと、講習所卒或いは中学卒、高等小学校卒、こういうように学歴の点では、丁度終戦後のあの当時の何といいますか、他の公けの学校、これと同等の学歴を持つということが一応これは阻止されまして、改正されまして、講習所というのはトレーニングというような形に変つてつておりましたし、当時の内容はそういうことから非常に学歴が低位に考えられて来ておつたというふうに考えます。又郵政省というのは御存じのように機械化することもできませんし、それから近代化するといたしましても、なかなかそれは困難な仕事でありまして、やはり従業員の手とか足とかによつて一通々々処理して行かなければならない、こういう事業でありますので、その事業のそれぞれの格付けというものはこれは非常に低位な形で格付けされておりました。又郵政省の内部機構というものは、御存じのようにそれぞれ役付職員というのが少いと、こういうようなことから、それぞれこういう実情の上に副つた体系ではなしに、一般諸官庁と同じような形でそれらが一律に律せられた結果、大きく他官庁に見られない俸給のストツプ、いわゆる頭打ちというのが出て参つております。それからその当時国鉄あたりでは二千九百二十円ベース決定当時に、賃金の体系の立て方の中に特勤の各種の問題を本俸の中に入れまして、それが現在までそれぞれスライドして現行に至つておりますけれども、郵政の場合にはそれらはその当時据え置かれまして、二十六年にいささかこれが修正されたといたしましても、まだ非常に低い単価で特勤というものがきめられておるわけであります。こういうようなこの内容を一日も早く修正しない限り、私どものもらつておりますところの賃金というものは、これは到底他官庁或いは公社関係と同一の賃金になるということはできませんし、又同じような職務でありながら、同じ学歴でありながら、同一職場で働いておるところの電電の職員との間のアンバランスというものは、これは到底是正されるものではないわけであります。私どもはこういう立場から早期にこれを解決して頂きまして、そして皆と一線の、そろつた形で賃金の問題が同時に解決されて行くようにならなければならないというふうに考えておるわけであります。こういうような考え方で出されましたその内容は、大体四十五億程度の財源を以ちまして、附加給を入れますと五十八億程度になりますが、これを以て一般の俸給の中だるみ、頭打ち、こういうものを是正したい、かように考えまして調停申請をいたしました。ところが、調停案の内容は、現在郵政のこの給与体系是正の問題は郵政独自のものであり、それが例えば法的処置を講じなければならないとか、或いは他官庁に影響のあるものであるというふうなことであつては、これは到底早期に解決することはできない、そういうことから郵政独自の問題に限定してこれは解決しなければいけない、こういう立場を堅持いたしまして調停案が提示されました。そしてその内容とするところは、予算としては大体私どもが要求いたしました五割五分とか乃至六割程度のもので、本俸、基本給に対して二十七億、付加給を入れまして三十五億七千万円という金額に対して、それぞれ団交の形の中からこれを解決すべきであると、こういうような調停案が提示されたわけであります。一部内容を読んでみますと、他官庁又は官公庁職員等の間における給与のアンバランス是正を第一義的目的としたものではなく、又一般公務員等についても共通の問題になり得るような給与体系の一般的問題についての解決を試みたものでもない、こういうものが調停委員会から提示されて出されたわけであります。  私どもは先ほども申しましたように、公企労法が適用されて、新たな労働慣行が生れて、これを尊重しなければならないということは勿論であります。あたら紛争を続けることによつて無益な時間を浪費するということも、これは非常に好ましくないことでありますので、この問題を早期に解決したいということから、これを受諾いたして、その実施方を省側に要請して参つたわけであります。ただここまで参りまする中で省側の態度、或いは列席されております塚田郵政大臣の今まで私どもとの交渉の中の態度の中にも、私どもの要求については筋が通つており、而もその内容とするところは了解ができる。併しながらそれは予算上の問題であろうということで、受諾の態度を示されておらないのでありますが、その予算上の問題について私どもといたしましては非常に了解のできない意味で拒否されておるということを卒直に感じておるわけであります。大蔵省の主計局の次長をしております正示氏に会いまして、私どもがいろいろ問題を提起いたしましたところが、卑俗な言葉でありますけれども、隣りの家でいわしを焼いておる香いがにおつて来れば、そのいわしを食いたいというのはそれは当然ではないか、こういうような意味で予算にこれを組込みできないことを答弁いたしております。それは例えて、一波万波を呼ぶといわれておりますが、この郵政の給与体系是正をすることによつてベース・アツプのような形になり、ベース・アツプという形をとられる限りこれは企業公務員乃至一般公務員と地方公務員に波及するだろう、そういうことから一般予算化するならば五百億もかかる、こういうようなことが言われて予算化されておらないということであります。併しながらこの内容とするところは、私は非常に納得できないのは、私どもの職場にあるような頭打ち、或いは役付職員が少い、或いは電電と同じ職場にありながら現在こういう差別待遇が出て来た。ちなみに申しますと、電電の前年の十一月以前における俸給というものは、郵政が家族構成が多い、或いは勤続年数が長い、或いは平均年齢が高いという、こういうことから大体六、七百円程度は高かつたわけであります。それが前年の十一月から直ちに一千百円程度差がついて、私どもの今の給与体系というものは一千百円低くなつておるわけであります。その合計された数字は、少くとも千七、八百円くらいは大きな差となつて出て来ておるというのが現実であります。こういうような実情というものは他の官庁に的確に当てはまるような実情があるかどうか、或いは一波万波のいわゆる基準になつて来るのではないかと思うのであります。即ちこれがいわゆるすべての公務員、すべての地方公務員に及ぼすところのベース・アツプであると考えるか、それともそうでないかということに問題があろうかと思います。私どもはこれはベース・アツプではなしに、まさに今まで給与体系の中で御存じのように私ども公企労職員では一号から六十一号までそれぞれ伸びて行つておりますけれども、その六十一号までの一線というものを、これは繋ぎ合せますと、直線からやや中だるみをしたところの線が出て参るわけであります。併しながら郵政職員の個々に人間に当つて参りますと、その直線というものは非常にぎざぎざになつて来ております。そのぎざぎざを是正しようというのが私どもの意思であります。その直線からやや中だるみいたしましたその線を、平均ベースを、これを引上げよう、こういう考え方を以てなされたものではなく、そのためにこれはベース・アツプではなしに、飽くまで現在まで私どもがもらつてつた賃金が過去のいろいろな給与の闘争や、或いはそのときの状態によつて出て来ておりましたところの不合理差、これを是正したい、かように考えて出しておるものでありまして、このことが一波万波を呼ぶというような通俗的な、或いは予算の編成の技術上の問題だけでは片付けられる問題ではないと考えておるわけであります。  勿論私どもは、これを受諾いたしたときの態度から申しますれば、現在郵政の職場には、例えば電電と同じ職務を行なつておりますところの者が、例えばこれは監視員のような職務になりますけれども、その監視員の職務にある者が、電電の五、六年勤めた者と、郵政で十二、三年勤めた者の給与というものが大体同じような内容になつて来ておるわけであります。こういうような職場の中で不明朗に職務を遂行するということは、我々として全く納得の行かないことでありまして、又俸給生活をいたしておる者はすぐわかることであります。曾つては二銭とか三銭とかいうような非常に微々たる金額が昇給されるような時期がございました。そういうときでも同じような学歴を持ち同じような経験を持つた者が、先に三カ月でも或いは六カ月でも先に給与が上るということになれば、そのことは怨恨沙汰にならないまでも、非常に不明朗な職場の空気となつてスムーズに仕事が行われないというのが通例であります。併し現在同じような庁舎の中にある電電と私どもの中で千百円というような大巾の差があつて、而もそれが公社と或いは郵政というように分れたからだ、こういうようなことでは到底納得の行かない内容なのでございます。こういうことから、私どもはこれを解決するためにどんなあらゆる困難を克服いたしましても、これをこの場で解決しない限り将来永久にこの問題を解決する時期は或いは到来しないのではないかというふうに考えております。幸いにして一月一日から公企労法適用職員になり、団体交渉が復活され、新しいルールの下で、国会できめられた法律のその定めに従つて、而もその定めによつてども最後の結論を出して頂こうというのが現状であるのでありまして、どうぞ法を私どもも尊重して新しい労働慣行は守つて行きたいと考えます。その意味において皆さんの特段の御支援によりましてこの問題を長く紛争することなく、早期に解決されるよう何とぞ御支援頂くようお願いいたしまして、私の参考人としての意見を終りたいと思います。
  46. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それでは調停委員の石井君は残念ながら退席せられましたので、御意見を伺うわけに参りませんが、引続きまして郵政大臣の所信を伺いたいと思います。
  47. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) 全逓のこの調停の問題につきましては、只今横川君からいろいろお話がありましたが、私といたしましても、二十八年度の予算が閣議において最終的決定を見ますまでは、何とかしてこの調停案を本年度の予算に組み入れることができないものかということで鋭意努力をして参つたわけであります。そういうように努力をいたしました理由は、勿論私もいろいろと調停案の主張しておりますいろいろ論点、それからそれに対する大蔵省側のいろいろな意見というようなものを聞きまして、やはりこれはこの調停案の考え方に相当な理由があるのじやないかというように考えたからであることは申すまでもありません。併しすでに予算が決定いたしまして、国会に提出されてあります以上は、今日の段階におきましては、政府の意向としては勿論調停案を呑むわけには行かないという形になつておることも申すまでもないことであります。それではそのように政府の意向が決定しているのにどうして郵政大臣が調停案を拒否しないのか、調停案は御承知のように組合側からは受諾されてあり、私としてはまだ受諾の意思を表示しておらんのでありますが、併し私といたしましては今日の段階においてもなおもう少し努力をすることによつて、この私が理由ありと考え、大蔵省側が無理があると考えられるその両方の考え方に妥協点を見出して、何とかこれを二十八年度の予算の上に措置する工夫があるのではないかという強い希望を持つておりますので、なお拒否するという意思を表示せずに、いろいろと各方面に当つて自分の考え方を述べて、そうして同意を求めるように努力をいたしておるわけであります。併しまだ残念ながら今日までの段階におきましては政府の意向を改めるというところまで行つておらないので、非常に自分も苦慮いたしておるのでありますが、なお個々の細かい点についての考え方は、これは大蔵省側にもいろいろ意見があり、私も個人の意見を持つているのでありますが、これらの点につきましては、お尋ねがあればそれらの問題等について個々にお答えすることといたしまして、一般的な今までの経過と、そして私が調停案を拒否しておらない事情だけについて簡単に申上げたのであります。
  48. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 大蔵省のほうからも政府委員が出ておりますので、併せまして御質疑を願います。
  49. 吉田法晴

    吉田法晴君 大臣から非常に良心的な御発言を頂いたのでありますが、中身については、調停案中身については質問に答えるというお話でありますが、先ほどお話の出ました調停案中身が、要求のうち調整号俸問題を除いた、言い換えると理由書の中にありますが、給与体系上の一般的な問題について解決を試みるのではない、ベース・アツプの問題ではなくて、いわば今の給与水準、給与体系の中でアンバランスを是正するにあるという調停案趣旨は、これは郵政大臣としても同感の意を表されるのでありましようか、どうですか。
  50. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) 私が調停案の考え方についてむしろ自分も同感であると考えます点は、幾らか調停案が主張しておるところとは違うのでありまして、私といたしましては、むしろあの考え方に理由があるというのは、電電公社の職員と全逓の従業員の間にこのような違いがあるということは、結局逓信業務という、郵政業務というものが円満に遂行されるのに大きな支障になる。これは直すべきが妥当ではないか、こういうふうにむしろその点に重点を置いて考えておるのであります。
  51. 吉田法晴

    吉田法晴君 多少議論めきますけれども、電電との近接関係、これは事情としてわかりますが、これは委託した業務もありますし、委託をあなたのほうで受けられてやつておるところもありますし、同じ庁舎の中で同じような仕事を机を接してやつておる。従つて電電の給与とそれから逓信の、郵政の仕事の近接性とその給与のアンバランスが困る、これはわかります、わかりますが、問題は実現の努力にどれだけの役割を演ずるかという意味で、今の点をお尋ねしたのでありますが、この給与体系の中の一般的な問題ではなくて、頭打とそれから手当の問題について調停案を取上げた、こういういわば今の給与体系の中でのアンバランス、アンバランスの是正、これに限る、これが調停案趣旨ではないかと思う。その点については、それは電電との関係は認められましたけれども、電電とほかとの関係にも実はなるわけで、そういう意味においてはでこぼこ調整という意味においては大臣もお認めになるのかどうか。
  52. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) その点は勿論そういうものがあるので、こういうアンバランが出て来たものであるということにおいて、前提をなしておるという意味においては勿論認めております。
  53. 吉田法晴

    吉田法晴君 それからこれは労働政務次官もおられますが、公企労法が適用されてそして調停が出た。なお仲裁制度も勿論残つておるわけでありますが、昨年の電電の給与の際にもたしか調停案で実施になつたと思つております。公企労法の精神従つて、問題が最終的な段階まで行かないで実現するほうが国としても当然であるという点は、それはお認めになると思います。
  54. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) 私もその考え方においては全く同感であります。こういうように調停が起り、調停がうまく行かないときに仲裁が起るというような場合に、調停の案が相当な理由があるものであるならば、仲裁まで行かずに調停で問題を片付けるというほうがむしろ適当なんじやないか、そういうふうに思います。勿論その場合、大蔵省が財政という立場からしてしぼられるという考え方も、一応それは大蔵省の立場としては了解ができる面もあるのでありますが、少くとも私は郵政大臣として物を考えます場合に、殊にこの問題について考えます場合には、仲裁まで持つて行かずに調停で片付けるというほうが妥当じやないか、こういうふうに自分としては考えております。
  55. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうしますと実態は、公企労法に従つて塚田大臣としても妥当だと思う調停案が出たが、財政事情と申しますか、大蔵省の事情で実施が二十八年度予算の中には今のところできないようになつておる事実の説明はわかるのでありますが、私ども給与の問題について、こういう双方の主張、それからそれを調停委員会という一応第三者的な裁判官で結論が出ている。それを郵政省として或いは郵政大臣としては実施したい。こういうむしろ気持がおありのようです。それを大蔵省の意見と主張だけで実施ができない。これは過去においてもございました。幾たびかこれが調停或いは裁定の実施が延びまして、国会に諮つた問題でありまして、それが望ましくないということには間違いない。大蔵省の意見だけで実施ができないというのは甚だ遺憾である。これだけは恐らく塚田大臣或いは安井労働政務次官も考えておられるのだろうと思いますが、その点は如何ですか。
  56. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) 遺憾であるかどうかというこの最終の決定は、大蔵省の意見だけでなしに閣議全体、政府意見として当然きまるべきものである。最終の決定をいたします場合には、従つてこれは大蔵省だけが責任を負うべき問題ではない。併し今日の段階といたしましてはなお大いに説明をし、大いに了解を求めることによつて閣議全体の意見というものを、これを受諾するという形に持つて行けるのではないかという、そういう希望を持ち、そういうふうに今郵政大臣としては努力をしておる、こういうふうに御了解を願います。
  57. 吉田法晴

    吉田法晴君 隣りで安井政務次官が聞いておられるから耳に入ると思つてつたのでありますが、これは、この場合には労使、郵政省とそれから全逓になりますけれども、そのそれぞれの主張に対して調停がなされた、調停案が出た。それを大蔵省の……或いは調停案についての意見等は大蔵省の主計局その他で具体的に案が出ておりますが、そういう第三者の判定があつたにかかわらず、大蔵省の主計局その他の意見で以て実施ができないというのは甚だ私どもは残念だと思います。それは法を守る覚悟は組合のほうは立派にできておるけれども政府のほうが実施できないという結果になつておる。これは全体の労働関係から見まして、一日も早く直さなければならん。自由党の絶対多数の時代のあの専売裁定の問題等をめぐりました事例からすれば、今日多少の前進があつたのではないか、或いは電電公社の調停案の問題のごときもその一つ事例ではないかと思う。従つて塚田大臣の努力によつて調停案が速かに実施されることを要望するものでありますが、努力をいたしておるというお話でございますが、その具体的な見通しといいますか、例えば暫定予算で実現するように努力しておられますか、或いは本予算で実現するように努力しておられまするか、その点をもう少し具体的に承わりたいと思います。
  58. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) これはどこまでも実現する場合には本予算において措置される、こういうふうに御了解願います。
  59. 田畑金光

    ○田畑金光君 今の御答弁で、大体郵政大臣も考えておられると了承されるわけですが、本予算と申しますと、例えば現在の特別国会中において実現するという見通し、或いはそのような肚で以ておやりになつておるのかどうか、その点伺つておきます。
  60. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) 実現するという見通しと申しますか、それよりも実現させたいという強い希望を持つて努力しておる、こういうふうに御了解願います。
  61. 田畑金光

    ○田畑金光君 郵政大臣としてはそのように努力をしておるけれども政府全体においてはなかなかそこまで行き得ない。こういうところに問題があるように観察されるのであります。それで先ほど来の質疑応答から見ましても、公労法の精神から申しますならば、当然政府は今郵政大臣がお話しの主張通りに予算措置を講ずべきだと、こう考えられるわけであります。我々といたしましても実現さしたいというのではなくして、飽くまでも実現をさせるのだと、こういう肚がまえで本特別国会中に予算措置を図つて頂きたいと、かように要望するわけでありますけれども、こういうような問題につきまして、先ほど吉田君からもいろいろ労働省に対しての御意見があつたわけでありますが、労働省としてはこの問題についてどういう考え方に基き、どういう態度で協力されておるか、この際労働政務次官から一言承わつておきたいと思います。
  62. 安井謙

    政府委員(安井謙君) 只今塚田郵政大臣からいろいろ具体的にお答えがあつた経過と大きな変りはないのであります。調停が成立いたしまして、何とか実現することが望ましいと考えており、でき得る限り御協力申上げる考えであります。
  63. 寺本廣作

    寺本広作君 郵政大臣にお伺いいたします。国会に提出されておる予算には調停実施のための費用は計上されていない。併し実現させたいというお気持で努力しておられるというお話であります。そのお気持の現われとして、調停案の拒否をしていない。恐らく受諾の回答を期限を付けて留保しておられると思う。その期限は恐らく国会の審議状況と睨み合せておきめになつていると思いますが、更に国会の審議状況では、この期限をお延ばしになる御意思がおありになるのかどうか、その点お伺いしたい。
  64. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) 取りあえず四十日延ばしているのでありますが、今のところ国会の審議状況でそれを延ばすかどうかというような具体的な考えは持つておらない。ただ希望としては四十日も延ばしておれば、大体話合いがつくものならばつくだろうし、私のものの考え方に間違いがなくて、それが一般の支持が得られれば、筋のある通りに問題が解決するのではないか、かようなことを考えて、まだこれ以上延ばすかどうかという点については考えておりません。
  65. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちよつと先ほど修正をして出るとすれば二十八年度予算でという話で、暫定予算ではないというお話でした。二十八年度予算はすでに提出されている。七月暫定予算はまだ出ておらない。二十二日の予定だというのでありますが、そうすると政府の責任においてというか、或いは郵政大臣の責任において出されるとするならば、むしろ二十八年度よりも七月暫定予算のほうがこれは可能性がある。すでに二十八年度予算は政府原案はきまつているわけです。可及的に支給を実現したい、その努力をしているというならば、暫定予算の中に組入れてお出しになるのが私は当然じやないかと思う。その点は先ほどの御答弁とそれから実現させるための努力しているというお話とに実際に多少食い違いがありますが、これはどうですか。
  66. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) これは実際問題としては実は七月暫定も閣議決定ができて近くお手許に行くことになると思います。併し七月暫定予算に組入れましても、結局本予算を組みませんければこれは解決しない問題でありますから、どちらにしても本予算で解決しなければならない。ただ当面七月暫定がきまるまでに態度はつきりいたしますならば、その一部分が七月暫定ででき得るということになると思いますが、問題は、やはりこの問題に関しては実質的に二十八年度で解決する、こういうふうに考えております。
  67. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうしますと七月暫定にも或いは二十八年度予算にも関連はいたしますが、四十日の間に解決するだろうというお話でありましたが、四十日の間に郵政大臣としては予算の修正案を作つて出すつもりだ、こういう御答弁と解してよろしうございますか。
  68. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) ここはその政府態度がもうすでにきまつておりまして、ただ私が郵政大臣として二十六万郵政従業員のために、政府態度がきまつているのではあるが、なお努力して、理由があると思うから何とかこれを実現するようにしてやりたいと考えている立場と、非常に微妙にこんがらがつておりますから説明がつきにくいのでありますけれども、私としましてはどこまでも成るべく早い機会に筋のあるところをよく説明をして、了解を得て、政府態度を改めて、従つて政府態度としてこれが予算の組替というようなことになるなら非常に結構だと、そういうふうに考えております。私としましては勿論予算を修正をする権限もございませんし、これはどこまでも内閣全体としてきまり、大蔵省が修正をしなければならんものと考えております。
  69. 吉田法晴

    吉田法晴君 まあ速記をとめてもかまいませんが、自分としては実現のために努力をしておられる、したい、こういうお気持と、それから先ほどの政府決定を動かす努力をしているというお話ですが、今までのお話だけではただ誠意は持つている、努力をしているというだけで、それが実際にその予算の修正になつて来なければまあ誠意は認められない。そこでもう少し具体的な誠意をお示しを願いたいと思います。若し速記をとめて言うことがあるならばそれでも結構でございますが、ただ今までの努力する、誠意があるだけでは、どうもここで引下がるわけには参りません。
  70. 塚田十一郎

    ○国務大臣(塚田十一郎君) これはまあ微妙な政治の問題でありますから、この目的を実現さすために私としては、こういう手を打つたらいいかああいう手を打つたらいいかといろいろ思案し、考えられるいろいろな手を使つて、非常に強く反対をいたしておられる方々には個々に当つて議論を戦わす、又同情してもらえるようなそういうような手を打つて事態を好転させるように努力をしておりますわけで、誠意だけは持つている。但しこの努力が実を結ぶかどうかは、何とも微力から如何ともしがたいという結果になるかも知れませんが、とにかく自分としては誠意を持つて努力している、こういうのであります。
  71. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記をとめて。    〔速記中止
  72. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて。  郵政職員給与体系是正に関する調停案の件につきましては、直接関係者でありまする全逓の従業員組合の代表並びに行政官庁の長でありまする塚田郵政大臣或いは労働省の安井政務次官等の御意見を伺いましたところ、それぞれ熱心にその実現に努力をしておられることがわかつたわけであります。従いまして只今国会においては二十八年度の予算案が審議の途中にあるわけでありまするから、従つて是非ともこの中において是正の実現を図ることが望ましいと考えるわけであります。  そこで私ども労働委員会といたしましては、その旨を政府並びに予算委員会に申入れをいたしたい、こういう工合に考えますが、かよう取計いましてよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それではさように取扱いを決定いたします。  本日の委員会はこれにて散会いたします。    午後四時四十八分散会