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参考人(横川正市君)
只今委員長から御指名頂きました全逓の中央執行
委員長代理をしております横川でございます。本日は非常に御多用にかかわりませず、私
どもの
調停案の問題に関して
委員会で諮問される機会、私のほうからお答えする機会を得ましたことを心から感謝申上げます。
五月二十八日に私
どもの給与の非常に不合理な点を是正するための調停申請をしてお
つた内容が、
調停案として提示されまして、それに基いてその後省との間で解決のために鋭意努力をいたして参
つたわけでありますが、公企労法
適用職員である私
どもの法的な盲点と申しますか、或いはそのこと自体が相当無理がある問題を運用だけでこれを解決して行こうというような、そういう当初からの意思であろうかとも存じますが、細かな問題まで解決するところの手続上のことが
規定されておらないということもありまして、当面の私
どもの
団体交渉の相手方であるところの省側、いわゆる郵政大臣或いはそれらの責任者の人たちと私
どもが話合う中で、例えば今度の
調停案を提示されまして、
組合側は非常に内容として不満ではあるのでありますけれ
ども、これを受諾するという
態度を
決定したにもかかわらず、これは省側としてはこれに対する回答をまだ出されておらない。而もこのことは当面の責任者である郵政大臣の能力によ
つて解決するということではなしに、郵政大臣は閣僚の一員でありますし、
政府を代表しておるということから、
政府がこれを
決定しなければいけない。又その中の一員であるところの大蔵省がこれに相当大きくウエイトを持
つておるという、こういう複雑な内容から、当然閣議で二十八年度予算乃至七月分の暫定予算が
決定されるまでには正式の回答が寄せられる問題であろうかと思うのでありますが、併しながら国会の
開会されておる現在、その国会において審議され、その結論が出なければ回答にならないというような、そういう立場にあるわけであります。
私
どもは公企労法を
適用された職員といたしまして、曾
つては公務員法下の団結権だけで
組合運動を続けて
参つたのでありますけれ
ども、この公務員法下の
組合運動を推進して行く過程に非常に大きな念願と不合理を
感じて参りました。そうして公企労法
適用職員となることを非常に切なる願いとして現在まで参
つたわけであります。併しそれが法的に本年の一月一日から
適用されるという段階になりまして、当初の問題として出されたことがこういう羽目に陥
つておることについて、非常に私
どもとしてこれは遺憾だと考えておるわけであります。併しながらこの問題を解決するために、
組合といたしましては公正な、法に定められた
規定に、ルールに従いまして問題を解決すべく現在まで努力いたして参りました。そのためにはあらゆる手段を講じてこれの実施方について努力して
参つたのでありますが、遂にこれは閣議の
決定とならず、予算の上にこれは明らかとならずままに、皆さんのお手許に二十八年度予算の内容が渡され、乃至七月暫定予算がもうすでに
決定されて国会に提出されるような
事態にあるわけであります。徒にこのような長い期間に亘
つて紛争を行わなければならないということは私
どもも非常に不本意でありまして、この問題の解決については皆さんの是非
一つ御努力によりまして、新しく設けられたルールを、これを活かして、而も
労使間の問題をスムースに解決するために是非特段の御支援をお願いしたいと、かように思うわけであります。
全逓の今度の給与是正のための調停申請を行いましたその内容について簡単に
説明いたしたいと思いますが、実はこの問題の起因するところは、実に日本の
組合運動が始りまして、全逓という
組合が何かすると一般社会人や或いはその他の方々の間にあ
つても左傾した
組合である、或いは共産党に牛耳られた
組合である、こういうような印象を与えてお
つたことは、これは事実であろうと思います。そういうふうな
組合の形体の中でたびたび行いました賃金闘争のこの闘いが、全日本の官公庁の共同の中で闘われたのが、二十三年の二千九百二十円ベースを
決定する当時に大体集約された形として出て参
つたわけであります。その二千九百二十円ベース
決定当時の全逓の
組合の闘いというものは、これは私
どもも一員として闘
つたことでありまして、今ここであえて回顧的に申上げるわけではありませんけれ
ども、水を飲んでも闘わなければならんというような闘いの指導の下におかれておりました。そのために私
どもはこういうような
組合の行き方について大いに疑義を持ち、そういうことであ
つては当然
組合員の経済的利益を擁護することはできないではないか、こういうことからこの行き方に反対をいたしまして、その後全逓は、二十三年の七月に上諏訪の中央
委員会で遂に分裂をするという憂目に会
つたわけであります。併しその当時の賃金の内容といたしましては、もうすでに国鉄であるとか専売であるとか、或いはその他の官公庁の方々が早く
政府から提示された二千九百二十円ベースを呑むことによ
つて、現在までの不合理というものは或る
程度是正されてお
つたわけであります。ところが全逓の場合には、その闘争を契機といたしまして、而もそれが公務員法の枠内で
組合運動が続けられるというような経緯の中から、どうしてもこれらを是正するところの機会を逸してお
つたというの現状であります。たまたま先年の十一月に公社
関係の
最後の
組合となりました全電通が、八月一日から公企労法
適用職員となりまして、現在全電通は一万三千四百円のベースを実施いたしておるわけであります。併し私
どもはこのような全電通が賃金をもらうように
なつたその段階において、私たちも同じように同一庁舎の中で、同じ仕事に位し、而も学歴その他においても同一の学歴を持ち、而も永年歴史的な中で同じように暮して来てお
つた全電通との中でこのような差違を生ずることについては非常に納得が行かないということを申上げましたところ、
政府の当時の閣員の人たちや或いは郵政省の当面の責任者であるところの大臣から、公企労法
適用が全電通は八月一日から
適用された、郵政省は一月一日から
適用されるというようなそういう段階にありましたので、公企労法
適用職員と
なつたときには当然公企労法を
適用しなければならないという
現実に立
つてそのような不合理は是正するだろう、こういうことが言われたのであります。当時
労働省のそれぞれの幹部でありました方も、この点については御存じだろうと思いますが、そういうことから私
どもは、一月一日から公企労法
適用職員に
なつたということを契機といたしまして、給与の体系の是正についての要求を大臣に出しまして、而もそれが到底その場で解決ができないというところから、
調停案を申請し、五月二十八日にその
調停案が提示された、こういう結果にな
つておるわけであります。
その是正されようとする給与の内容でありますが、その内審はこの二千九百二十円ベース
決定当時に、郵政省の場合には、御
承知のように学歴と申しますと、講習所卒或いは中学卒、高等小学校卒、こういうように学歴の点では、丁度終戦後のあの当時の何といいますか、他の公けの学校、これと同等の学歴を持つということが一応これは阻止されまして、改正されまして、講習所というのはトレーニングというような形に変
つて参
つておりましたし、当時の内容はそういうことから非常に学歴が低位に考えられて来てお
つたというふうに考えます。又郵政省というのは御存じのように機械化することもできませんし、それから近代化するといたしましても、なかなかそれは困難な仕事でありまして、やはり従業員の手とか足とかによ
つて一通々々処理して行かなければならない、こういう
事業でありますので、その
事業のそれぞれの格付けというものはこれは非常に低位な形で格付けされておりました。又郵政省の内部機構というものは、御存じのようにそれぞれ役付職員というのが少いと、こういうようなことから、それぞれこういう実情の上に副
つた体系ではなしに、一般諸官庁と同じような形でそれらが一律に律せられた結果、大きく他官庁に見られない俸給の
ストツプ、いわゆる頭打ちというのが出て参
つております。それからその当時国鉄あたりでは二千九百二十円ベース
決定当時に、賃金の体系の立て方の中に特勤の各種の問題を本俸の中に入れまして、それが現在までそれぞれスライドして現行に至
つておりますけれ
ども、郵政の場合にはそれらはその当時据え置かれまして、二十六年にいささかこれが修正されたといたしましても、まだ非常に低い単価で特勤というものがきめられておるわけであります。こういうようなこの内容を一日も早く修正しない限り、私
どものもら
つておりますところの賃金というものは、これは到底他官庁或いは公社
関係と同一の賃金になるということはできませんし、又同じような職務でありながら、同じ学歴でありながら、同一職場で働いておるところの電電の職員との間のアンバランスというものは、これは到底是正されるものではないわけであります。私
どもはこういう立場から早期にこれを解決して頂きまして、そして皆と一線の、そろ
つた形で賃金の問題が同時に解決されて行くようにならなければならないというふうに考えておるわけであります。こういうような考え方で出されましたその内容は、大体四十五億
程度の財源を以ちまして、附加給を入れますと五十八億
程度になりますが、これを以て一般の俸給の中だるみ、頭打ち、こういうものを是正したい、かように考えまして調停申請をいたしました。ところが、
調停案の内容は、現在郵政のこの
給与体系是正の問題は郵政独自のものであり、それが例えば法的処置を講じなければならないとか、或いは他官庁に
影響のあるものであるというふうなことであ
つては、これは到底早期に解決することはできない、そういうことから郵政独自の問題に限定してこれは解決しなければいけない、こういう立場を堅持いたしまして
調停案が提示されました。そしてその内容とするところは、予算としては大体私
どもが要求いたしました五割五分とか乃至六割
程度のもので、本俸、基本給に対して二十七億、付加給を入れまして三十五億七千万円という金額に対して、それぞれ団交の形の中からこれを解決すべきであると、こういうような
調停案が提示されたわけであります。一部内容を読んでみますと、他官庁又は官公庁職員等の間における給与のアンバランス是正を第一義的目的としたものではなく、又一般公務員等についても共通の問題になり得るような
給与体系の一般的問題についての解決を試みたものでもない、こういうものが調停
委員会から提示されて出されたわけであります。
私
どもは先ほ
ども申しましたように、公企労法が
適用されて、新たな労働慣行が生れて、これを尊重しなければならないということは勿論であります。あたら
紛争を続けることによ
つて無益な時間を浪費するということも、これは非常に好ましくないことでありますので、この問題を早期に解決したいということから、これを受諾いたして、その実施方を省側に
要請して参
つたわけであります。ただここまで参りまする中で省側の
態度、或いは列席されております塚田郵政大臣の今まで私
どもとの交渉の中の
態度の中にも、私
どもの要求については筋が通
つており、而もその内容とするところは了解ができる。併しながらそれは予算上の問題であろうということで、受諾の
態度を示されておらないのでありますが、その予算上の問題について私
どもといたしましては非常に了解のできない
意味で拒否されておるということを卒直に
感じておるわけであります。大蔵省の主計局の次長をしております正示氏に会いまして、私
どもがいろいろ問題を提起いたしましたところが、卑俗な言葉でありますけれ
ども、隣りの家でいわしを焼いておる香いがにお
つて来れば、そのいわしを食いたいというのはそれは当然ではないか、こういうような
意味で予算にこれを組込みできないことを
答弁いたしております。それは例えて、一波万波を呼ぶといわれておりますが、この郵政の
給与体系是正をすることによ
つてベース・アツプのような形になり、ベース・アツプという形をとられる限りこれは企業公務員乃至一般公務員と地方公務員に波及するだろう、そういうことから一般予算化するならば五百億もかかる、こういうようなことが言われて予算化されておらないということであります。併しながらこの内容とするところは、私は非常に納得できないのは、私
どもの職場にあるような頭打ち、或いは役付職員が少い、或いは電電と同じ職場にありながら現在こういう差別待遇が出て来た。ちなみに申しますと、電電の前年の十一月以前における俸給というものは、郵政が家族構成が多い、或いは勤続年数が長い、或いは平均年齢が高いという、こういうことから大体六、七百円
程度は高か
つたわけであります。それが前年の十一月から直ちに一千百円
程度差がついて、私
どもの今の
給与体系というものは一千百円低くな
つておるわけであります。その合計された数字は、少くとも千七、八百円くらいは大きな差とな
つて出て来ておるというのが
現実であります。こういうような実情というものは他の官庁に的確に当てはまるような実情があるかどうか、或いは一波万波のいわゆる基準にな
つて来るのではないかと思うのであります。即ちこれがいわゆるすべての公務員、すべての地方公務員に及ぼすところのベース・アツプであると考えるか、それともそうでないかということに問題があろうかと思います。私
どもはこれはベース・アツプではなしに、まさに今まで
給与体系の中で御存じのように私
ども公企労職員では一号から六十一号までそれぞれ伸びて行
つておりますけれ
ども、その六十一号までの一線というものを、これは繋ぎ合せますと、直線からやや中だるみをしたところの線が出て参るわけであります。併しながら
郵政職員の個々に人間に当
つて参りますと、その直線というものは非常にぎざぎざにな
つて来ております。そのぎざぎざを是正しようというのが私
どもの意思であります。その直線からやや中だるみいたしましたその線を、平均ベースを、これを引上げよう、こういう考え方を以てなされたものではなく、そのためにこれはベース・アツプではなしに、飽くまで現在まで私
どもがもら
つてお
つた賃金が過去のいろいろな給与の闘争や、或いはそのときの状態によ
つて出て来ておりましたところの不合理差、これを是正したい、かように考えて出しておるものでありまして、このことが一波万波を呼ぶというような通俗的な、或いは予算の編成の技術上の問題だけでは片付けられる問題ではないと考えておるわけであります。
勿論私
どもは、これを受諾いたしたときの
態度から申しますれば、現在郵政の職場には、例えば電電と同じ職務を行な
つておりますところの者が、例えばこれは監視員のような職務になりますけれ
ども、その監視員の職務にある者が、電電の五、六年勤めた者と、郵政で十二、三年勤めた者の給与というものが大体同じような内容にな
つて来ておるわけであります。こういうような職場の中で不明朗に職務を遂行するということは、我々として全く納得の行かないことでありまして、又俸給生活をいたしておる者はすぐわかることであります。曾
つては二銭とか三銭とかいうような非常に微々たる金額が昇給されるような時期がございました。そういうときでも同じような学歴を持ち同じような経験を持
つた者が、先に三カ月でも或いは六カ月でも先に給与が上るということになれば、そのことは怨恨沙汰にならないまでも、非常に不明朗な職場の空気とな
つてスムーズに仕事が行われないというのが通例であります。併し現在同じような庁舎の中にある電電と私
どもの中で千百円というような大巾の差があ
つて、而もそれが公社と或いは郵政というように分れたからだ、こういうようなことでは到底納得の行かない内容なのでございます。こういうことから、私
どもはこれを解決するためにどんなあらゆる困難を克服いたしましても、これをこの場で解決しない限り将来永久にこの問題を解決する時期は或いは到来しないのではないかというふうに考えております。幸いにして一月一日から公企労法
適用職員になり、
団体交渉が復活され、新しいルールの下で、国会できめられた
法律のその定めに
従つて、而もその定めによ
つて私
どもは
最後の結論を出して頂こうというのが現状であるのでありまして、どうぞ法を私
どもも尊重して新しい労働慣行は守
つて行きたいと考えます。その
意味において皆さんの特段の御支援によりましてこの問題を長く
紛争することなく、早期に解決されるよう何とぞ御支援頂くようお願いいたしまして、私の
参考人としての
意見を終りたいと思います。