○
政府委員(
亀井光君) 労働基準
行政の最近の動向につきまして御
説明を申上げておきます。現在労働局
基準法の適用を受けておりまする
事業場は約八十一万、その
労働者の数は一千八十万にな
つております。これらの適用
事業場におきまする
労働基準法の違反の問題は逐年減少して参
つております。ことに従来その違反の大半を占めておりました形式違反が逐次減
つて参
つております。そのことは
基準法の浸透というものを物語るのではないかと思います。
次に賃金不払の問題でございますが、この問題は
労働者の
生活の基礎を脅かしまする大きな問題でございますので、
昭和二十四年からこの問題につきまして力を入れて今日まで
解決をして参
つて来ておるのでありますが、基準
行政におきまして賃金不払事件を
解決いたしました割合を申上げますと、今日まで件数としまして約八万四百件、そのうち七万七千四百件を
解決いたしております。その
解決率は九六%金額にいたしますると三百三十四億四千万円でございまして、
解決したものが三百三十一億二千万円、
解決率とたしましては九九%という
状況でございます。この問題は今後もなお引続き毎月新しい事件として起
つておるのでございます。基準
行政だけでこの問題を
解決することは非常にむずかしい問題ではございまするが、
関係方面と連絡いたしながら
解決に目下
努力いたしておるわけであります。
次に
労働者の
福祉増進に関しまするいろいろと
施策でございまして、先ほども
大臣の御
説明の中にございましたように、基準
行政の問題におきまするこういう積極的な
方面につきまして目下
努力をいたしております。又今後もそういう方向に向いまして
努力を続けたいと
考えておるのでございまして、の
一つは、
労働者の住宅の問題でございます。この問題は先般の
国会におきまして、建設省から
産業労働者住宅資金融通法案として提案を見ましたのでございますが、解散によりまして廃案になりました。直接の
所管は建設省でございますが、
労働者の保護の面からいたしまして、我々は十分
意見を提出いたしまして、この促進方に
努力をいたしておるような
状況でございます。又
福祉の問題の一環といたしまして、
産業災害を撲滅して参りますることは、これは
労働者の
生活不安を除去して行く、或いは職場の改善というふうな問題からいたしまして
努力をして参
つて来ております。これも逐年成績を挙げて参
つております。一昨年に比べますると、
昭和二十七年度におきましては度数率におきまして二二%程度の減少を見ておるのでございます。併しながらなお
電源開発或いは港湾荷揚げ或いは土建、林業というような屋外
作業につきましては、災害が滅
つていないのでございます。従いまして今後こういう面に重点を置いて、
産業災害の減少に
努力をいたして参りたいと共に、又昨年暮東亜合成におきまする爆発事件を契機としまして、化学工業におきまする災害が瀕発して参りました。従いましてこの面につきましても大きな力をいたしまして、今後の災害防止に
努力をいたして参りたいと、かように思
つているのでございまして、ただこの問題は
行政だけの力では満足な結果を得られないのでございまして、
労使双方の御協力を得ましてこの問題の処理に当りたいと
考えているのでございます。
次に
福祉の一環としましての職業病
対策の問題でございます。職業病の問題につきましては、その現われます結果が緩慢でありまするために、とかく怠りがちの問題でございます。そこで我々としまして使用者のかたがたの注意を喚起いたしまして、職場の環境の改善、健康診断というような
一般的な労働衛生の浸透に
努力いたしますると共に、特に職業病
関係の珪肺の問題につきましては、
国会におきましてかねて御
研究を頂いておりますると共に、我々も又
研究を進めているのでございまして、できるだけこの問題につきましても早く結論を出しまして、その保護の完璧を期したいと
考えておるのであります。幸い昨年の
労働基準法の
改正によりまして、休業補償費のスライドにつきましては一応の進歩を見たわけであります。今後更にこの問題を真剣に検討して参りたいと思
つております。
又
福祉の一環としましての
技能者養成につきましては、この問題は当初徒弟排除という目的のために制定されました制度でございまするが、現在におきましてはそういう消極的な面だけでけなくしまして、更に積極的な国際貿易に打ち克つための
技能水準の
向上という積極的な意義を持
つて参
つておるのであります。現在におきましては百二十四の職種につきまして養成を行な
つておるのであります。
全国で実施をいたしておりまする
事業場の数は一万九千五百六十六、それに携わ
つている
技能習得者は五万人という
状況でございます。特に中小企業におきまする
技能者養成につきましては、使用者の
経済的負担が十分な余力を持
つておりませんために、共同養成の
施設を
全国に設けましてや
つているわけであります。この画に対しまする国庫助成の問題がかねてから懸案にな
つていたのでございます。前回の
国会に提案しました
予算案におきましては、一千万円の国庫助成金の
予算が組まれたわけでございまして、今
国会に提案される本
予算におきましてもこの面の
努力をいたしたいと
考えておる次第でございます。
又
福祉の一環としましての
労災保険の
関係におきましては、
昭和二十五年までは赤字の財政で苦しんで参りました。その結果、
労働者の皆様方にも御迷惑をかけていた面もございましたのでございまするが、
産業災害が逐次減少して参りますると共に、保険
経済が安定をして参りまして、
昭和二十六年、二十七年と相当の黒字を残すようになりました。現在におきましては補償費の支払につきまして迅速な処理が行われておるのでございまして、過去におけるような御迷惑は現在におきましては
労働者におかけしていない
状況でございます。この事業におきましては特殊なものとしまして、保険
施設としまして労災病院の設置、経営の問題がございます。これは傷害を受けました
労働者に対しまして適正な医療を施す機関としまして目下
全国的に我々設置の
努力をいたしておる次第でございまして、これができますならば、更に一段と傷害を受けました
労働者の
福祉の
向上に役立つものと
考えておる次第でございます。
最後に最低賃金の問題でございまするが、この問題は、ここ数年来中央賃金審議会におきまして種々検討して参りまして、第十回の審議会におきまして
日本における最低賃金は、全
産業を通じまする一本の最低賃金と、低賃金
産業を主体としまする最低賃金、二本建で行くべきであるという結論が出たのでございます。従いましてこの結論に基きまして、現在におきましては低賃金
産業とみなされまする四つの業種、絹人絹織物製造業、家具建具製造業、手漉紙製造業、玉糸坐繰生糸製造業、この四つの業種につきまして専門審議会を設置いたしまして、専門的な
調査を目下いたしておる次第でございまして、この専門審議会の
調査並びに審議会の結論を得まして十分検討をいたしたい、かように思
つておる次第でございます。
以上簡単でございまするが、基準
行政のあらましにつきまして……。