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加藤シヅエ君 大変私の持ち時間が少いので、この問題はここで打切りまして、昨日、緑風会の
委員の議員が
総理大臣に人口問題についての御
質問がおありに
なつたようでございましたが、私があいにくそのときほかの
委員会に出ておりまして席をはずしましたので、
総理大臣の御
答弁は、二、三の新聞紙上で拝見をいたしましただけで、誠に残念でございましたが、それを拝見いたしますと、
総理大臣の、この日本の今日の人口の負担過剰、人口の圧力というようなものに対する御認識は、どうも誠に失礼でございますけれ
ども、今から五十年ぐらい前の政治家が持
つていた
意見を、今日まだお持ちにな
つていらつしやるというような印象を受けたのでございます。それで、今日は御承知のように、この人口問題について
考えておりますのは、何も日本が敗戦国で貧乏だからこの問題をどうこう
言つているような、そういう狭い問題ではございませんで、これはもう世界の問題にな
つておりまして、最近アメリカの或る人口問題研究所の発表によりますと、世界中で一時間に七千人の人間がどんどんと生れつつある。こういうようなことになりますと、どんなに今後科学が発達するかわかりませんけれ
ども、
只今のような
状態でございますと、将来は太陽と空気と水だけで人間が生きなければならないような時代が来るというような、そういう心配さえもあるというような
考え方から、この問題をいろいろと心配いたしておるのでございます。
従つて、日本も特に地球上で最も人口の密度の高い国であるというようなことから、この問題については、特に科学的に真剣に
総理大臣としても国策をお立てにな
つて頂かなくてはならないと
考えます。殊に言田
総理大臣は、まあ非常に民主的な、世論に副うて政治をしたいというようなお
考えを始終お述べにな
つていらつしやるので、ちよつと御参考までに申上げたいのでございますが、
只今毎日新聞の人口問題調査会が、一昨年と昨年の二回に亘りまして、四十九才以下の妻を持つた夫婦三千五百組につきまして、非常な科学的な世論調査といたしました。全国に
亘つていろいろと、こういう選ばれた夫婦へ
質問を発しまして回答を得ましたところ。その九〇%が回答を与えまして、その回答の中の七割というものは、
政府が何らかの人口対策をしてもらいたい、こういうことを述べているのでございます。七〇%がこういうことを述べているということは、これは世論がこれを支持していると見て差支えないと思うのでございます。殊にこの実行を必要とするという理由が、
総理大臣は、問題を国内移民とか、或いは生産の増強によ
つてこれを解決すればいいとおつしやいますけれ
ども、将来は、そういうことは確かに解決の方法ではございますけれ
ども、現在においてすでに失業者に対しては、今度の
予算にも十七万人の失業対策費を当てなければなりませんし、生活保護費のほうは、二百五十五億というこうなものが
予算の中に盛られておるのでございます。こういうようなことを
考え、又
総理大臣が今後行政整理ということを非常に熱心にお
考えになるのでございますが、結局この行政整理が成功できないというのも、日本に人間が多過ぎるところに一番の隘路があるというようなことをお
考え下さいましたら、どうかもつと科学的にこの人口問題の研究をして頂かなければならない。勿論、
総理大臣は、そのために厚生省に人口問題
審議会を今度作るとおつしやるかも知れませんけれ
ども、たつた八百万円ばかりの
予算を組んだ、こういうような
審議会というものはなかなか本当の科学的な調査をするのにはこれでは誠に不十分でございますので、こういう点も
とくとお
考えにな
つて頂いて、この輿論に応えるという
意味で、この問題をもつと真剣に、いろいろと
予算措置もこれは
大蔵大臣にお願いいたしておきますが、来
年度は
予算措置も、もつともつと十分なものをここに盛り込んでこの問題と真剣に取組んで頂きたいと思います。殊に私は女性の立場から
総理大臣に特に申上げておかなければならないのは、今日この家族計画、
産児制限というような言葉が今日では家族計画という言葉にまで発展いたしておるのでございますが、この家族計画運動の必要性が非常に叫ばれているにもかかわらず、厚生省のその対策としての準備も誠に不十分であり、要用も甚だ貧弱であるために、その結果といたしまして日本の多くの母親が誠に道徳的にも衛生的にも好ましくない妊娠中絶というようなことをいたしておるのでございます。それで、この厚生省の発表を見ましても、この妊娠中絶をする数が年々実に驚くほど殖えて参
つております。
昭和二十四
年度には二十四万、それが二十五
年度には五十万に殖え、二十六
年度には六十三万に殖えて、そうして昨
年度には八十万に殖えている。これだけは合法的に届出でをしてこういうことをしているのでございますが、届出でをしないものを入れたならば優に百万人以上の日本の婦人たちがこの妊娠の中絶をしているというようなことが、道徳的にも衛生的にも、又民族の将来を
考えましても、実に由々しき問題でございますので、
総理大臣は特にこの問題についてお
考えにな
つて頂きたい。殊に
総理大臣は最も親しくお交わりにな
つていらつしやると承わ
つております田中最高裁判所長官、このお方から或いはこういうような問題についていろいろ御
意見をお聞きになるのではないかと思いますが、この最高裁判所長官は私も古くからよく存じ上げて、最も尊敬しておるかたでありますが、このお方は或る宗教的な立場からこういうようなものを非常に反対していらつしやる。この宗教の問題から反対をなさるということは、これはそれぞれのお立場で御自由でございますけれ
ども、これは今日国策としても又社会
政策としても、又この婦人に対する大きな問題としても、
政府当局として、どうしても、もつと真剣に
考えて頂かなくてはならない。これを厚生省につきまして、いろいろ私は絶えず厚生省当局にもつと一生懸命にや
つて頂きたいということをお願いするのでございますけれ
ども、どうしても
総理大臣がこれに対して非常に積極的であられるか或いは消極的であられるかというその御
意見によ
つて、厚生省に非常に大きい影響力を持
つておりまして、今日のところ
総理大臣が余りこの問題について積極的であられないということが、すべてこれが消極的に影響いたしておりますので、この際、私は大変長々と
意見を申上げまして恐縮でありましたけれ
ども、今日こういうような輿論の上に立
つておる問題であ
つて、科学上の問題であるという
見地から、
総理大臣にもう一度御
所見を承わりまして私の
質問を終りたいと存じます。