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1953-06-29 第16回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年六月二十九日(月曜日)    午前十時二十五分開会   ―――――――――――――   委員の異動 六月十八日委員佐藤清一郎君及び高野 一夫君辞任につき、その補欠として瀧 井治三郎及び上原正吉君を議長におい て指名した。 六月二十六日委員天田勝正君及び村上 義一君辞任につき、その補欠として戸 叶武君及び柏木庫治君を議長において 指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            西郷吉之助君            高橋進太郎君            小林 武治君            森 八三一君            中田 吉雄君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君            三浦 義男君    委員            伊能 芳雄君            石坂 豊一君            石原幹市郎君            泉山 三六君            岩沢 忠恭君            上原 正吉君            小野 義夫君            大谷 贇雄君            鹿島守之助君            白波瀬米吉君            高橋  衛君            吉田 萬次君            井野 碩哉君            柏木 庫治君            岸  良一君            新谷寅三郎君            田村 文吉君            高木 正夫君            中山 福藏君            戸叶  武君            永井純一郎君            武藤 常介君            最上 英子君   国務大臣    内閣総理大臣  吉田  茂君    法 務 大 臣 犬養  健君    外 務 大 臣 岡崎 勝男君   大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君    文 部 大 臣 大達 茂雄君    厚 生 大 臣 山縣 勝見君    農 林 大 臣 保利  茂君    郵 政 大 臣 塚田十一郎君    国 務 大 臣 安藤 正純君   国 務 大 臣 大野木秀次郎君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    内閣官房長官 江口見登留君    法制局長官   佐藤 達夫君    法制局次長   林  修三君    大蔵省主計局長 河野 一之君    農林大臣官房長 渡部 伍良君    食糧庁長官   前谷 重夫君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件理事補欠選任の件 ○昭和二十八年度一般会計暫定予算補  正(第2号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和二十八年度特別会計暫定予算補  正(特第2号)(内閣提出、衆議院  送付) ○昭和二十八年度政府関係機関暫定予  算補正(機第2号)(内閣提出、衆  議院送付)   ―――――――――――――
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより予算委員会を開きます。  去る二十六日理事井野碩哉君より理事辞任いたしたい旨の申出がありました。これを許可することに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 青木一男

    委員長青木一男君) 御異議ないと認めます。  それでは欠員となりました理事補欠互選を行いますが、先例によりまして委員長において指名することに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 青木一男

    委員長青木一男君) 御異議ないと認めます。よつて理事小林武治君を指名いたします。
  5. 青木一男

    委員長青木一男君) それではこれより昭和二十八年度暫定予算補正第二号について審議いたします。先ず内閣総理大臣に対する質疑を許します。
  6. 中山福藏

    中山福藏君 先ず質疑に入るに先立ちまして、私は重要な二つの問題について政府の御構想を拝聴したいと思います。  第一には、現下非常な問題となつておりまする九州の水害対策について差当りにどういう手を打たれるおつもりであるか、簡単に、時間がございませんから梗概だけを承わつておきたいと思います。
  7. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答をいたします。只今差当り政府から関係大臣その他大野国務大臣等を派遣し、実地の状況を取調べさしにおります。だんだん報告が参りますその報告従つて、現地において応急処置ができるものは直ちにするなり、又それができないものであるならば、臨機の処置考えたいと思つて政府は極力この応急処置をするために準備を整えております。
  8. 中山福藏

    中山福藏君 今回の水害は或る意味において不可抗力でありますが、併し或る部分につきましては、治山治水関係に関する平常からの政府施策相当怠慢だつたというような感もいたしますので、そういう点も一応御勘考の上善処されるようにお願いいたしておきます。  第二に、今般フイリピン政府キリ大統領の署名によつて、我々同胞の戦犯釈放減刑に関する誠に喜ぶべき処置をとられたということでありますが、これに対し何らか感謝方法を私は国民としてとらねばならぬと考えておりますが、政府はどういう対策をこれについては考えておられますか。
  9. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはそのお考えは非常に結構と思います。フィリピン戦争の結果といいますか、従来の日本の政策に対して相当反感を持ち、又戦争中いろいろな面白からざる事件の起つたために、我々から考えてみてもフィリピン国民が不愉快な感情を持ち、或いは戦争による被害に対して最も緊切にその損害を考えておるということもありましようし、対日感情は甚だよくないことは、これは当然のことと思います。従つてフイリピンに対してはその感情をやわらげるために、従来もできるだけのことはいたし、又どういう方法をとれば最もよく日本国民気持相手国印象付けるかというような方法考えさせておりますが、十分のことはできませんが、できるだけのことはいたすつもりであり、その結果多少なりとも対日感情をやわらげたのではないかと想像するわけは、従来は八十億ペソでありましたか、ドルでありましたか、日本賠償を要求する、政府としては無論できるだけの賠償役務賠償名前を付けておりますが、気持は、場合によつてはそれ以上のこともしたいと考えております。一に日本政府賠償が払えるような地位においてもらいたいという極く漠然たる話でありますが、その気持の中には役務賠償以上のことも場合によつてはしたいものであるという考えを交えて、成るべく向う感情に訴えるような処置を講じております。このたびのキリ大統領がこういう処置に出るについては、国内において先ず相当日感情が宥和したというよりも、宥和せしめるために非常な努力を払われたことであり、この処置をとるについては、大統領としては相当の苦心があるのであろうと思いますということも考えに入れて、この先般の処置に対しては国民として、又国会として十分感謝の念を表して頂きたいと政府自身も切に考えます。
  10. 中山福藏

    中山福藏君 第三にお尋ねしたい問題は、東南アジアに対する経済貿易伸展に関する問題でございますが、大体政府の従来の施政方針演説を承わつておりますると、我が国としていわゆる輸入原料相手国、或いは輸出の対象としての東南アジアという問題がしばしば述べられておるのでありますが、殊に首相中共に対する貿易について非常な慎重な考慮を払われておる立場から、戦前支那に対しては、対外総輸出高の三〇%というものが支那に向けられておつたのである。そのうち中共の本土には僅かに六%であると供述せられておるのであります。併しその六%を差引いた二四%というものは満洲向けであつたというような話でありますが、いずれも今日では中共の治下に入つておるのでありますから、肩代りを東南アジアに求めるということになつて来るのであります。ところが日本輸出入銀行副総裁統計上の発表を見てみますというと、プラント総輸出高に対する東南アジア比率が、昭和二十三年には六七九、昭和二十四年になりますと六〇五となつており、昭和二十五年になりますると五九四であります。昭和二十六年が三二五となつており、二十七年は九月までの統計が三九ということになつておる。この比率から見ますというと、政府施策というものは少しも結果において善徴を示していないように私は考えるのであります。そこで昨年の十二月二十七日であつたと思うのですが、世界復興輸出入銀行総裁ガーナー氏が日本に来られたときに、大体日本東南アジア向け輸出が不振なのは、コストの高いこと、品質の悪いことである。併しながら東南アジアというものは日本に対する最もよいお得意さんでなければならんこういうふうに言つて帰つたように私は記憶しておるのでありますが、この不振の原因は我が国内の単なる金利の引下げとか、内地における融資の関係とか、労働条件とか、そういうふうなものが災いしているばかりでなく、これは要するに経済外交の非常な不手際から来る点が多々あると考えるのであります。政府はこの不振の原因をどういうところに吐いておられるのでありましようか。政府の所見を聞いておきたいと考えます。
  11. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは私からお答えするよりも外務大臣からお答えをしたほうが的確な実情に基いてお話ができると思いますが、大体の方針を述べますと、日本貿易不振の原因として、コスト高ということも勿論あります。そのコスト高になる原因は、勿論安い原料を確保しておらない。原料はことごとく輸入による。食糧又然りで、安い食糧なり原料なりを確保するためには、東南アジア方面が最も日本に近接したところで、日本が安い原料或いは食糧を入手するには最も適当な土地であると考えられるので、日本の安い原料なり食糧なりを豊富に近くのところから受入れるとすれば、東南アジアを第一の候補に考えなければならない。これは日本の生存のためであり、或いは又日本貿易のためでありますが、我々が東南アジア開発と申すと、相手国からは、今日まで日本戦前においては武力侵略考えておつた、今度は経済征服考えておるというような悪い印象といいますか、誤解を与えつあるやにも聞いております。でありますから、政府としてよほど慎重に考えて、経済征服というような気持で以て臨むというような印象を与えたくない。問題は、日本経済自立のためにも豊富な安い原料を入手する、これによつて相手国利益する、相互利益という形において、つまり政治的な意味合いではなくして、経済上といいますか、やはりコマーシャル・ビジネスビジネス・ベイシスで以て話を進めて行くというようにして、相手方猜疑心を成るべく刺激しないというような慎重な態度をとるようにいたしておりますが、その結果未だ著しい効果の現われないということは残念でありますが、暫らくこれはかすに時を以て、相手国を余り刺激しない、気持よく互いに経済的相互利益を増進するというような趣意の徹底いたすようにいたしたいと考えております。できるだけ相手国に対して敵意を挑発しないように、そうして日本東南アジアに求むる資源は、経済的又相互利益の精神で進むという気持を徹底せしむるように、先ず以て指導指導というとおかしいですが、出張所、領事館とか、海外事務所の所員を指導するようにいたしたい。気持はそういうふうに持つております。微細のことは外務大臣からお答えいたします。
  12. 中山福藏

    中山福藏君 誠に遺憾でありますが、私はその点について相当異議を持つておるのであります。それは単に経済或いは財政という観点からだけを見るということは、東南アジア貿易に関する限りにおいては非常にまずい果が現われて来るのじやないか。要するに外交の手の打ち方が悪いのじやないかと私は考えておるのであります。御承知通りドイツ東南アジア進出の非常な努力をしておるその状況を見ておりますというと、サウジアラビアだけに総領事館を設けて、シシリアとかレバノンとかトランスヨルダンとかイエーメンとか、こういうアラビア主幹をなしておる国に対しては六つの公使館を設けて、そうしてエジプトカイロ大使館を置いて、曾つてヒットラー時代財政経済の大家と言われておるシヤハトエジプトカイロ及びイランに派遣して、そうして東南アジア経済状況というものを逐一検討してこのシヤハトから政府を通じて東南アジア貿易伸展に関する指令が出ておるように私は見ておるのであります。そうして日本のこの東南アジアにおける外交の布石を見てみますると、先立つてトルコ大使として上村伸一という人が派遣され、エジプトカイロには與謝野秀氏が公使としておられるのです。イギリスからはスチーブンソンという人が大使として駐在いたしており、又現イラン駐在アメリカ大使ヘンダーソンがここに転任して来るということを聞いておるのですが、こういうふうな相当重みのある外交官をここに出して、そうして将来のイスラム民族の動向というものがどういうふうに結果が現われて来るかということに深甚の考慮払つて輸出経済上の施策に供しておるように見られるのであります。殊に私どもとしては、東アフリカのローレンスマルケスを中心として北上する経済伸展というものにも相当これは力を入れなければならんのであります。ところが一昨年でありましたか、大公使館設置並びに呼称に関する法律案改正案が議会に上程せられましたときに、私はエジプトカイロ大使館設置すべしと申したのであります。これはアラブ民族団結中心がアレキサンドリア・プロトコールに発足し、その主幹をなしておるのはカイロでありますから、ここに洞察力の強い外交官を派遣して置いて将来の東南アジア発展を図らなければならんということを言つて、なぜ大使館を置かないかということを質問したときに、外務省は、公館も大使も大した違いはない、これくらいのお答えであつたのであります。その後二カ年を経過して日本貿易がどういうふうに伸びておるかということを静かに見ておりますと、只今統計によつて首相に私が申上げた通りの結果になつておるのであります。これは要するに、単に外交官だけにこの東南アジア発展というものを委しておくわけにはいかん。これを要するに外交の衝に当られる外務省において、殊に外交界の大先達を以て自他共に許しておる首相においては、是非思いをここにいたして欲しいのである。若しエジプト大使を置かないというならば、ドイツと角遂するのに敗けないためにも予算関係からこのアラビア七カ国に公使大使を派遣することができないならば、この際日本移動大使というようなものを置いて、始終これを検討させる必要があるのじやないか、こういう点について何らかのお考えがあるのでありましようか。これは首相に特にお尋ねいたしておきます。
  13. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 移動大使という名前はともかくとしまして、いわゆるアンバサダー・アトラージというような意味合いで必要な方面には時々出すことにいたしております。南米とか或いはアメリカというような所には。今お話のような東南アジア等に対してもそういうことをなすことが向うも希望し、又こちらも利益があるというような場合には無論出していいのでありますが、先ほど申した通り、頻りに東南アジア開発と言うものでありますから、相手方も多少の誤解を生じておるのではないかと思います。ドイツアラビア或いはエジプト等に対する態度は、私はよく存じませんが、御指摘の通りであります。併しドイツトルコその他に意を用いておることはこれは長年の話で、今日に始まつたことではなし、従つて相当連絡があるでありましよう。又あれは、たしかフォン・バーテンも曾つてトルコ行つてつたようであります。その以前からもトルコドイツとの間の関係相当深い親善関係で、政治的にも深い関係があつて、その関係に頼つて行くのでありましよう。日本の場合はうつかりしますと、経済征伐というような誤解を生ずるので、御趣意そのものについては一向異論はありませんが、適当な時期に適当な人を出すためには、多少相手方気持がどう受けるかということも考えなければなりませんと思います。それ以外のことについては外務大臣からお答えいたします。
  14. 中山福藏

    中山福藏君 何とぞ一つそういう点御善処をお願いいたします。私が曾つて、先ほど申しましたカイロ大使館設置の質問をしたときに、外務省のかたが五、六人来ておられた。そのときに私の大使館設置の問題について非常に共感された。共鳴されたと思うのですが、高橋という総務部長が一人名刺を持つて、非常にいいお考えであるということを私におつしやつたのであります。私はたくさん、五、六人外務省のかたが来ておられたからいま少し多く共鳴して頂くと思つたらただ一人だけが私の説に共鳴されたということを今でも覚えておりますが、どうかこういう点は誠に重大な点で、東南アジア貿易というものは単純な考え方じや駄目だと思うのです。殊に一九四五年の三月二十二日のアレキサンドリア・プラトコールによつて結盟したアラブ七カ国を見ますと、アフガニスタンのジヤマール・アッゲインの提唱になるイスラム主義というものに国境を超越して団結するということが宗教的に現れておる。だからこのイスラム主義によつて団結したものは、これは政治であり同時に宗教であるから、イスラム主義というものを頭にしつかり叩き込んでおる外交官でなければ、この団体動きに対して日本の商売というものは伸びて行かないと見ておる。実は御承知通りに先立つてあのイスラエル共和国アラブ民族と対立しておる結果、ドイツが先般三十四億マルクの賠億金を払うと言つたときに、アラビア各国はこれに反対して、若しドイツが三十四億マルクの賠償イスラエルに払うならば経済的にカイロから指令を与えてドイツ品物を買わないようにするということを宣言しておるのであります。即ちこのイスラム教の団体の連中が団結を組んでおるのであるから、いずれのアラブの国でもその一つの国の動きは七カ国に同一行動をとらしむるのである。これは経済上の現われた一断面でございますから、今後この方面には単なる政治経済だけの頭の人では東南アジア外交はできんと考えておる。なお御参考のために申上げますが、一九一七年でありましたか、イギリスのバルフオアがイスラエルを独立させると宣言したため、一九四五年の三月二十二日のアレキサンドリア・プラトコールに基いて団結したアラブの国々はイスラエル共和国うしろ英米ありとしてこれに反抗しておる。英米に反抗しておりまするから、米国と手を握つておる日本品物というものはどうなつて行くかということは、心理的にも考慮する必要があるのじやないかと思つておる。この東南アジアに派遣される外交官選任というものは、今までたういう経歴があつこから、これだけの学識があるからというような選任方法では駄目だと見ておるのであります。少くともこのイスラム主義というものを十分頭に叩き込んでおかなければ、東南アジア経済発展は到底できない相談じやないかと私は考えておるのであり、これに対して首相はどういうお考えをお持ちでございましようか、承わつておきたいのであります。
  15. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) お話のような点は我々も考えております。併し先般、中東地方経済使節を派遣しまして、郵船の淺尾君を団長としてずつと廻つてもらいました。その報告によりますると、日本経済的な提携については相当に歓迎の意を表しておるようでありまして、この点で我々もやや意を強うしておるような次第であります。で、今度予算通りますると、イランとイラクには公使館を設けようという予定にしております。又アフリカ沿岸にもモンバサその他に領事館を設けるつもりで今計画をいたしております。なおエジプトその他におきまする公使等人選につきましては、我々のほうは、ドイツその他のヨーロッパの諸国と違いまして、語学の制度がありまして、エジプト等でもやはりフランス語が十分でないと仕事ができかねるものでありますから、その点でかなり人選に制約を受けております。併し、お話のような点は我々も全く同感でありまして、単に従来の普通の外交官経歴だけではあすこいらはなかなか思うような活躍ができないと思つて、その点は十分注意しております。イランやその他に今後代表者を送るというときにも、お話のような趣旨を頭に入れて人選をいたしたいと考えております。
  16. 中山福藏

    中山福藏君 委員長、まだ時間がございますか。
  17. 青木一男

    委員長青木一男君) まだ六分ほどございます。
  18. 中山福藏

    中山福藏君 それではもう一つだけお願いやらお尋ねやらいたしておきます。大体一九四三年のカイロ宣言或いは一九四五年のヤルタ協定、これらの文言を見てみますると、日本が泥棒して取つたのだというような言葉を使つております。それから背信的に侵略したというような言葉ヤルタ協定には使つておるのであります。ところが、御承知通りに、下関条約はダレスのおじいさんに当る人が仲裁人になつておるし、或いは日露戦争の時にはセオドールルーズヅエルトが仲裁に立つておりまして、決して泥棒でもなければ侵略でもないと私は考えております。今こそ我が日本政府世界に対して、このヤルタ協定並びカイロ宣言のこういうふうな誤つた言葉の使用について、日本態度をしつかりと声明すべき時が来たと思ひますが、こういう点について政府はどういうふうにお考えになつておりましようか。
  19. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをする前に、東南アジア関係について一言申上げておきます。  従来役人、官吏だけで以て事務的の交渉をする以前に、先ほど申したように、ビジネス中心として両方の、両方と申すよりも、隣国との間の経済的提携のどれだけそこに機会があるか、又見込があるかということを視察するため、或いは現実に見て実際の報告を得たいと考えて、役人以外の、例えば稻垣平太郎君であるとか、或いは又その他二、三の実業家、或いは実業関係実業に注意の深い人を出して、そうして単に事務的の交渉以外に、何かその間に経済提携ができる問題がないかと思つて出しておるのであります。又更に今後出したいと考えております。又出すために、例えば鉄の問題であるとか、石油の問題であるとか、沈船引揚げでありますとかいうようないろいろな問題があります。これらの問題について、実際的の話の基礎が、話合いができないだろうかというような考えで、単に行政事務外交事務以外の人を出して、成るべく広く意見を徴して政府参考に供したいという用意はいたしておつたことを申添えます。  今のヤルタ協定、この点につきましては、これは如何なる態度をとるべきか。やがて字句等において、従来の事実と違つておることを訂正したいと考えております。どういうふうな方法で訂正の方法をとつたらいいか、これはよほど考慮を要することでありまして、徒らに相手方感情を刺激するということになつても面白くありませんし、又ヤルタ協定文字等の使い方について、或いはその結果、日本の領土を侵略したというのもおかしいですが、奪われたというような事実に対してどう処置するか、相手方考え方十分参考にして、その措置を適当な機会にとりたいと考えて、用意はいたしておりますが、今日こういうふうにしたいとか、こういうふうにしようとかいうことの政府考え方をここに公開するのもどうかと考えますが、併し政府としては、そういう善後策については考えておりますことだけ申上げておさます。
  20. 中山福藏

    中山福藏君 最後に一つお尋ねしておきます。私は、先立つてビルマに参りましたときに、ウー・ヌー総理大臣に面会していろいろ話したとときに、通商航海条約というものをすぐ日本と締結する気はないかということをいいましたところが、ウー・ヌー笑つて賠償金さえ払つてくれたら今調印してもいいと私に申しましたが、私は、フィリピン、インドネシア、それからビルマの賠償問題については、この際仲裁を立てたらどうかと考えておるのでありますが、例えば、インドのネールとか、或いはセイロン島の大蔵大臣でありますジャウアル・デーネー、こういう人はサンフランシスコでも日本のために相当努力した人でありますから、こういう人を仲裁に立てて、折角フイリピンの日本に対する感情がやわらいだこのとき誰かを仲裁人として、時の氏神になる人を入れたらどういうものであろうかと考えますが、首相はこういう点について、何か御配慮になつたことはございませんでしようか。
  21. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) そういう話も間接、直接ではありませんけれども、間接には時々耳にいたします。又各国の大統領はこう考えておる、こういいふうにしたらという提案はありますけれども、直ちにこれに応じていいものであるか、応じていけない、ということはおかしい話でありますけれども、応ずることは早計ではないか、一体日本としてどのくらいな賠償を払い、又払い得るかというようなことも只今研究いたしております。又結局におきまして、結論から申すと、多少、多少というと少の字が大きくなるといけませんが、役務賠償以外のことも考えなければ、善隣といいますか、経済的提携も早急に望むこともできなくはないか、その点についてはビルマ、その他相手国気持も間接ながら研究さしております。それで賠償を払うことによつて賠償以上の両国の関係がよくなれば結構な話でありますから、金銭賠償はいたさないとか、役務賠償だけにするとかいう、そういうかたくなな考は持つておりません。できるだけのことはすることによつて、成るべく経済関係なり、又いわゆる善隣外交の実現に努めたいとは考えておりますが、これも今直ちにこういうふうにしたいとか、する用意があるとかということは、交渉関係もありますが、言明はいたしかねますが、併し気持としては相当にこの問題は重要視すると共に、これによつていい関係が打立てられるならば、政府としては、或いは日本政府として考えるべき問題とは考えております。
  22. 中山福藏

    中山福藏君 私はこれで終ります。
  23. 青木一男

    委員長青木一男君) 皆さんにお諮りいたします。只今議長より、本会議を開くについて総理大臣の出席を求められております。予算委員会の審議をそれに順応してくれというお話であります。昨日委員長理事の打合せ会において、本日午前中に総理大臣の質疑を終る予定でおつたのでありますが、議長から正規の要求があります以上は、遺憾ながら応ずるほかないと思います。総理大臣以外の国務大臣に対する質疑はできましようけれども、皆さんは恐らく総理の質問を先に求められておるものと思いますので、如何いたしましようか。この点についてお諮りいたしたいと思います。
  24. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 昨日はこういうことがあると思つて、念を押して委員長に皆さん御相談申上げたのです。こういうことが起ることは当然予想されたから、非常に念に念を入れて、委員長大丈夫ですかと、そうして、そうしなければ非常に狂つて来るのですよ、ずつと日程が……、委員長はそのことに努力すると言われた。自由党のかたは一体どうされたのですか。昨日はあれほどこういう事態が起ることを予想して、念に念を入れて……、非常に私は手ぬかりだと思うのです。
  25. 青木一男

    委員長青木一男君) 木村君にお答答えします。昨日念を押されたことはその通りです。昨日までの状態において、本会議に本日午前中総理の出席を要求されるということは聞いておりません。聞くところによると、先ほど、十時頃ですか、突然小委員会においてそういう話が出たそうでありまして、そういうことを私どもは予期することはできなかつたのであります。
  26. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは、委員長の今のお話は私は一応了承いたします。併し、なぜそんならば早く小委員会を開いて、理事会を開いてそのことをみんなにお諮りしなかつたか、私はそれはどうも一方的に何か進められているようで釈然としないのです。それはまあ皆さんにお諮り下さい。私はこの意見を申述べておきます。
  27. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 暫時休憩したらどうかと思います。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  28. 青木一男

    委員長青木一男君) では休憩にいたします。    午前十一時二分休憩    ―――――・―――――    午後一時四十二分開会
  29. 青木一男

    委員長青木一男君) 休憩前に引続いて会議を開きます。
  30. 亀田得治

    ○亀田得治君 私は日本社会党第四控室を代表いたまして、吉田内閣の綱紀の問題について、若干お尋ねしたいと考えます。細かい点については、いずれ別の機会に、関係の大臣に詳細にお聞きしたいと思つておりますが、本日は大綱について総理の大体の考え方を特に承わつておきたいと思うのであります。これは、話の途中には、個人の名前も出て参りますから、甚だお答えにくい問題もあろうかと思いますが、決して個人の問題ではなく、日本政治の道義を高めて行くという観点から、丁寧にできるだけお答えをお願いしたいことを初めに要望いたします。そこで、総理もよく綱紀粛正ということを品にされます。これは私も誠に同感であります。ただ、こういう問題は、口先だけで幾ら唱えても結果は出て参りません。具体的な問題が起きた場合に、正しくそれに対処する、こういう、百の説法よりも一の実行、こういうことによつて改まつて行く問題であると私は考えるのであります。そこで私としては、先立つての四月の衆参議院議員選挙のことでございますが、これに関してはお尋ねしたいことが非常にたくさんありますけれども、そのうち、私ども最も重要な問題として考えておる二つのことだけを本日は取上げてみたいと思う。その第一の問題は、福永官房長官に関連する事件であります。これは先月の三十日の予算委員会におきまして同僚の岡田宗司君、中田吉雄君からも緒方副総理、或いは当の福永官房長官に、極めて短時間でありましたが、質した問題でありまするけれども、そのときには時間がありませんので、後日更にお尋ねするということになつて、留保をされたままになつておる問題でございます。そこで福永官房長官の問題の重点な点を私三つばかり指摘いたしたいのでございますが、第一の点は、この問題は単なる形式犯ではなく、選挙運動においても最も悪質とされておる実質犯の問題でございます。それからその後いろいろ捜査が進みまして、現在では二十名近くの者がすでに起訴になつておるはずでございます。それから第三の点は、選挙事務長、即ち総括主宰であつたところの竹入貞人氏、この人が最後に起訴を免れないと、こういう段階にまで捜査が進んで参つております。で、私のお尋ねいたしたいことは、或いは証拠の関係からいたしまして、当の福永官房長官は起訴されないで済むかも知れません。併しながら今申上げたような、誰が見ても芳しくない運動、そういう運動の基礎の上に立つて福永官房長官が出て来られて、そうして吉田内閣の重要な地位についておられるというこの点だけは消すことができません。私はこういう今状態になつておると思うのでございますが、総理としてはこれに対して、法律的な問題は司法関係の処理に待つといたしまして、こういう段階にまで来ておるといたしますならば、政治的に何らかの責任がある処置をとるのが正当ではないかと思つておりますが、総理のお考えを先ずお聞きしたいのでございます。
  31. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 綱紀粛正については、年来我が内閣としては綱紀をますます厳重に粛正をいたしたいという方針を堅持いたしておることはしばしば申上げておることでございます。又何か問題が起つた場合に、この責任或いはその罪状を看過しておつたという事実があればお示しを願いたいが、我々として、いやしくも事実が明らかとなり、それが関係者の責任になるべき問題については看過いたしておらないつもりであります。福永君の場合については、私も一応事情を聞きましたが、福永君が当時官房長官として選挙中東京都にとどまつてつて、選挙区に余り注意を払うことができなかつたことは、これは覆うべからざる事実であります。又我々の聞いたところでは、政治的にも何か責任をとるべきほどのところまで進んでいないと承知いたしておりますので、未だ何ら処置をいたしません。
  32. 亀田得治

    ○亀田得治君 福永官房長官の問題に関連して、もう一点お聞きいたします。それは本件の違反関係者の一人である川上長蔵、浦和の市会議員をしておるはずですが、これが五月三十日の午前一時四十分に、御承知のように浦和署で自殺をいたしております。これに対して官房長官並びに緒方副総理が外部に対して、何か苛酷な取調、拷問があつた旨の言明をいたしております。これは政府の重要な地位におる人の言明として大変世間の注目を浴びました。弁護士会の人権擁護委員を初め、法曹関係者が浦和署に行きまして、果してさような事態があつたかどうか、これを調査いたしました。さような事態はなかつた。こういう結論を殆んどが出しておるのでございまして、なお、六月二十三日の衆議院の法務委員会におきましても、閣僚の一人である犬養法相が同じような事実を確認いたしております。そういうことになつて参りますと、いやしくし官房長官たるものの発言としては、これは甚だ当を得ないものではないかと私どもは考えます。先はど総理は、選挙違反そのものに関連しては、長官は余り関係がなかつた。又いろいろ調べたけれども、直ちに政治的な責任なり処置をしなければならない内容ではないと思つた従つて処置をしておらないと言つておるのでございまするけれども、いやしくも政府の下部の機構であるこの浦和の警察、或いは当然検察庁も関連して来ますが、そういうものに対して、今申上げたような官房長官らの発言がなされた。これは十分新聞にもその当時出た問題でありますから、総理としてもどういう事情でそういう発言をしたか、これはお聞きになつておると思いますが、これに対する総理の御見解、或いはこれに対して何か処置をされたのであるならば、どういうふうにされたか。若しこういうことが放つておいてもよろしいという御意向であるならば、なぜ放つておいてよろしいか、その辺の考え方一つお聞きいたしたい。
  33. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 先ほど申した通り、私が聞いたところによると、何らの処置をとる必要がないと認めましたから、処置をいたしません。
  34. 亀田得治

    ○亀田得治君 残りの時間が甚だ僅かになつておりますので、只今の総理の答え、これは大変不満です。私は、世間が誰でも認めておるようなそういう事実が現われておる、それを申上げる。若し処置をしないと言うならば、どういう理由か。処置する理由を認めないから処置しておらん。それでは世間は納得しません。その理由をもう少し詳しくお述べになるのが当り前だと思いますが、時間があと一、二分だけということでありますので、これはいずれの機会に法務大臣なり、或いは機会を得まするならば、更に総理に対してお答え一つ願うことにします。  次に、一点だけ触れたいと思いますことは、佐賀県選出の自由党所属の代議士三池君に関する件であります。これも総理は、すでに新聞等で御存じだと思いますが、佐賀の地方裁判所は、佐賀地方検察庁の請求によりまして、五月二十三日付で三池代議士を、公職選挙法違反で逮捕したいから、衆議院の許諾を得て欲しい、そういう要求書を総理宛に出しております。国会法の精神からするならば、そういう要求が政府に来まするならば、政府は、これを直ちに国会に回付しなければなりません。国会がその要求書をいつ審議するか、或いはこれに対して許諾を与えるかどうか、こういうことは国会自身が独自の立場できめることであつて、いやしくもそういう要求書が出ているのに、内閣がそれを握つたままでいるということは甚だ不当だと思います。ところが本件に関しましては、五月二十三日にそういう要求書が佐賀の地方裁判所から内閣に送られて来た。内閣は、これを握つたままで、五月末の自然休会に入つているのでございます。そうして休会に入つてしまつた後に、これが六月四日の朝日新聞その他によつて取上げられ、世間の話題となつたのでございますが、総理に三つの点について一つお答えを願いたい。第一は、こういう要求書が内閣に参りました場合には、私の考えでは、内閣がそれを自分勝手に握つておくべきものではなく、速かに国会に廻すのが国会法の精神だと考えますが、総理の考えを聞きたい。  それから時間がないから一緒に申上げますが、第二点は、地方裁判所の要求書が五月二十三日に出ておることは、或いは総理大臣は初めの間は知らなかつたのではないかと私は思います。併しながら六月四日には少くともこれはお知りになつたであろうと感じます。従つて総理にお聞きしたいことは、果してこの院の許諾を求める要求書が出ておることをいつお知りになつたか。これを第二点としてお聞きしたい。  それから第三点といたしましては、それを総理が知つた後に、果してどのような処置をこの要求書に対してとられ、この要求書は現在どのようになつているのか、この三つの点についてお答えを願いたい。
  35. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はその事実は詳しく存じませんから、法制局長官からお答えいたさせます。
  36. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 具体的事実については、私もよく承知いたしませんが、今お尋ねの点についての、一般的の建前について一応お答えを申上げたいと思います。申上げるまでもなく、国会議員の開会中における逮捕ということは、憲法上禁止ということが原則になつておりまして、ただ例外として特に院議を以て許可のあつた場合には許すという建前である。而も手続上の問題としては、国会法をお引きになりました通りに、要求は内閣に対して要求をして、内閣がその要求を受けて、今度は国会のほうに内閣の名において御要求申上げるということになつているわけであります。その間において内閣は、結局事案の審査というようなための必要な時間もありましようし、直ちに要求があつたから、そのまま国会に引移してお願い申上げるということでは私はないと思うのであります。実際上の前の例を見ましても、相当の期間そこで内閣が調査なり何なりの時間をとつているという実例になつているわけであります。
  37. 亀田得治

    ○亀田得治君 時間どうですか。
  38. 青木一男

    委員長青木一男君) 時間過ぎましたから……。
  39. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちよつと二十秒ほど……、只今の答弁も甚だ不満です。こういう政府と国会と司法権、これは突込んで考えるならば、この間の大きな権限の問題です。こういうことについて全然知らない、こういうことをおつしやる。私は総理の感覚を疑いたい。それから只今の法制局長官の解釈の問題でございますが、そんなべら棒な解釈は絶対に成り立ちません。この点に関してはいずれ法務委員会なり適当な機会に、重要な問題ですから更にお互いに研究して事態を明らかにしたいと考えております。
  40. 永井純一郎

    永井純一郎君 私は二、三点につきまして総理にお伺いをいたしたいと思います。  御承知のように、目下朝鮮におきまする休戦が成功しようとしておりまする重要な時期であると考えまするが、これを我が国といたしまして、日本国民といたしまして是非ともうまく成功させたい、そうしてアジアにおきまする平和の確立の方向に持つて行きたい、こういうふうに私どもがすべて考えておる時期でございます。そこで私はこの重要な時期に際会しておりまするので、日本の意思として世界の国々に闘明すべきことがあるように国民の多数の中で今考えておる事柄がございますので、これらの点につきまして総理のお考えを伺いいたしたい、こう思うのでございます。私ども殆んどすべての今日本国民考えておりますることは、日本の国の存立というものはただ一つつて、それは絶対の平和の中にのみしかないのであつて、それ以外の場合には何人が如何ような理窟をつけ説明をいたしましても、常に危険な状態の下にあるということを、これはもう理窟や説明抜きにむしろ本能的に国民がこれを知つておるということが実情であると考えます。そこでこういう考えを持ちまする日本国民が、今朝鮮の休戦が成り立とうとしておりますることを非常に喜んでおるわけでございます。そうしてここから特にアジアの平和維持を図るようにしたい、こう考えておるのでございまするが、その意味から行きまして、日本が重要な地歩を占めておるのである、こう又国民考えておるのでございます。そこでこの休戦の機会を捉えて真にこれをアジアの、ひいては世界の平和確立の第一歩とするということと共に、この機会に本当の独立国としての日本の自主外交を確立する一番いい機会である、第一歩である、こういう意味でこの機会を捉えたいということも殆んどすべての国民が今日これを口にいたしております。で、こういう実情が日本国民の実情でございまするが、一面何人も知つておりまするように、米国の外交方針というものは力を過信してのいわゆる強硬積極外交でありまして、今日までもこの態度でアジア並びに日本にも臨んで来ております。で、政府は休戦成立後の新らしい段階以降も依然といたしましてこれらの、特に共和党政権下におきまするところの米国の、我々から言うならば自己中心の積極強硬外交を全面的に受入れて無条件にこれに追随して行くのであろうかどうかということは、国民が又今ひとしく心配をいたしているところでございます。で、私どもは勿論共産側の危険な且つ不当な出方に対しましては常に注意を怠つてはならないと考えているものでございますが、又同時に今日世界の心ある人々がすべて認めているごとくに、単純で野蛮でさえあると見られているところの米国の積極的な力の外交につきましても、国民は非常な危険を応じてこれを見逃しておらないのであります。対欧洲政策、或いはアジア政策等におきまして、米国は軍事的或いは外交的、或いは経済的に強力な圧力を加えまして、そうして欧洲においては再軍備の促進、欧洲軍の創設そのための結合を求め、そうして経済的援助等々の駆引きにおきまして断固とした態度でこれを強要いたしておると考えられます。一方アジアに対しましても、我が国の安全と重大な関係を持つところの台湾の中立化解除、或いは国府軍の解放というような強行方針を一片の紙片を我が政府に届けただけで、何ら発言も相談も十分に我が国にせずにこれを強行をいたして参つて来ておるのであります。国民が今日の日本政治外交権がないのだというゆえんは私はここらにあると思うのでございます。このようにして、やがて日本の本格的再軍備とアジア軍の創設、こういつたようなことが吉田内閣の努力に、私はあえて努力と申しまするが、努力をして下さるのにもかかわらず、或いは又いろいろな理屈や言訳を言つて下さるにもかかわらず、或いは又あのMSAに関する、これは馴合いの往復文書であると私はあの文書を読んで考えましたが、そういつたような往復文書の言葉の綾の如何にかかわらず、米政府の手によつてアジア軍の創設等が、やがて日程に上つて来るであろうということも国民は今見やすいところであると、こういうふうに考えているのでございます。これらの点を考えまして、私は特に昨今の米国の議会等におきまする発言が非常に気になるのでございます。世界の識者は米政府に非常な危険を今日感じております。米国の政府の主要なる閣僚の諸君が軍需資本家で占められておりまするし、これらと繋がつておりまする今日政権を担当する共和党の幹部諸君が明らかに朝鮮休戦を好まないところの発言をいたしておりまするし、或いは又戦争拡大の言動をさえあえてなしておる事情が報ぜられておるからでございます。これら米国の力の外交とその背景をなす米政界、財界の動きはアジアにおきましては勿論のこと、西欧においても今日激しい批判を受けて、漸次私は米国の外交政策というものは世界において孤立化する傾向にあると考えるのでございます。ここに幸にいたしまして、今日朝鮮の休戦が成立しようとしており、今後更にそのための重要な政治的会議において朝鮮問題の平和的な解決が行われようとしておる重要な段階に際会をいたしておりまするので、この好機会を逸せずアジアの平和維持に重要な地歩を占めまするところの我が国といたしましては、朝鮮問題の平和的解決が成功し、且つアジア並びに世界の平和確立に役立つための日本の自主的外交の第一歩を今日を契機として私は展開せしめて行くべきである、こういうふうに信じまするで、このような見地に立ちまして、以下基本的な重要だと考えられます数項に亘りまして、私は総理が世界に向つて闘明されるという意味で、政府の、総理の所信を是非拝聴をいたしたい、このように考えるのでございます。  お尋ねをいたしたい第一は、朝鮮休戦の成立を目指して努力が行われている今日この機会に、朝鮮問題の平和的解決乃至はアジア並びに世界の諸問題の平和的解決の第一歩は、私は米ソを初め英、仏、中共といつたような諸国が一切の軍事基地を放棄して、これをそれぞれの所属国に返還して、そうして同時にあらゆる外国軍隊は朝鮮からは勿論のこと、日本を含むアジアの諸地域から、或いは又世界の諸地域から撤退いたしまして、平和確立への熱意と誠意をここに示して、そうして国連を中心に平和の話合いを進めるための素地を作ることが大前提としてなされなければならん。このことは常識的なことでありまするが、このことを率直にこの際日本の意思として世界に向つて明らかにすることが非常にこの機会に重要なことである、こう考えるのでございまするが、この点について総理のお考えを先ずお伺いをいたしたいのでございます。
  41. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。先ず第一に申したいことは、米国の政策は強力積極外交ですか、という定義を下さつておりますが、その意味合いは私においてよくわかりませんが、あえて私は米国の外交政策をここに批判するのは差控えますが、その次に、日本は飽くまでも追従外交だ、自主外交でないとおつしやる。これは、この点について私は第一の前提において承服いたしません。私は終戦以前においてもそうであります、終戦以前といいますか、独立条約成立以前においてもそうでありますが、日本利益考えておることは極く率直に述べ来たつたのであります。又述べ来たつた結果、占領軍も我々の希望を入れてくれたこともあるのであります。今まで全然追従外交考えてしておつたことはないのであります。  次に、今日世界に向つて日本が重大な発言を自主的にしたらよかろう。これもしたほうがいいか悪いか、利害は共にあると思いますが、一体、お話は結局三国会談とか四国会談等の機会にというお話もあるかも知れませんが、この機会なるものがまだ具体化されておらないのであります。
  42. 永井純一郎

    永井純一郎君 私はなお二つ、三つの事項についてお尋ねするのですが、その私のお尋ねする趣旨というのは、先ほどそのために少しく前置きを長く総理に申上げたわけでございますが、私は只今あるいろいろな具体的な質問を解決するための考え方として総理が意見を述べられるということではなしに、日本がありまする今日の立場から言つて、この機会に非常に重要な立場にあると思いまするから、眼前のいろいろな具体的な問題を解決するための意思表示ではなくして、一般的な日本の基本的な考え方というものは、自由に表明するならばこうなんだというような意味で、今の私の言うことも申述べて頂きたい。そのことが直ちに日本利益になるかならないかということは、具体的な問題として結び付けるとそうなるのですけれども、私が今言うことは、いずれの国民からもこれは歓迎を受くべきはずのものであるのに、日本政府が何らそういうことを言つておらない。自主的に言つたことがないわけです。併しこの際は、私は日本の意思としてそういうことを抽象的に一般的に言うことが私は朝鮮の休戦会談を成功裡に導くためにも非常な効果がある、こういうふうに考えるのです。そうして又いつの議会にも、総理は米国の政策の批判はしないと言われますが、自主外交をやるならば私は批判すべきだと思うのです。これからは……。常に米国の外交政策を批判しないということを国会で言われることは、国民としては非常に不満でございます。批判すべきであつて、自由に批判することこそが私は世界の平和をよかれ悪しかれ、よいことはよいと言つたらよいのでございますが、私はは自由に批判をすることが平和を招来することに非常に役立つ。悪かろうが、よかろうが批判をしないという建前を日本政府がとるにいうことは、これはやはり国民は納得しない。総理は常に私どもが自主外交でないと言うとおきらいになります。その気持は私どもよくわかる。それならばやはり批判を私はして行かなければならん、こう思うのでございます。併しこれは、この点にとどめまして、二番目に時間がありませんから移りたいと思います。  第二お伺いをいたしたいと思いますのは、朝鮮問題の一応の解決ができた暁には、私はできると信じておるわけでございますが、できました暁には、世界においても勿論のこと、特にアジアにおいては相互防衛条約といつたようないろいろなそういう名目の下に他の国の援助によつて新たなる軍事国家を作り上げて行くという方向というものは、この方向はそれは一面休戦を契機としてアジアに燃え始めましたが、折角の平和の将来に暗影を投じ、今後の朝鮮乃至は日本の、又はアジアの諸問題の平和的解決を円滑に導くゆえんでもなく、平和憲法を堅持する日本といたしましては、少くとも平和憲法を今持つておりまする日本といたしましはは、一切これらのやり方というものは歓迎できないところであると私は考えるのでありまするが、このことも私はやはり今日本の国としてはこれを世界に閲明すべきだと思う。そういう意思を持つアジアに他の一国の力の援助によつて軍事国家が新らしく生れるということは、アジア乃至特に日本の今後のいろいろな外交折衝なり、或いは平和を保つ上からいつて、特に平和憲法を持つ日本としては歓迎しない、できない、こう私は率直に今言うべきであると考えますが、この点に対する総理の御所信を承わりたいのでございます。
  43. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ちよつと問題の要点をつかみにくいのですが、あなたのお考えは、朝鮮においてアメリカの援助による国家結合というか、同盟でもできるということについて日本は好まないということを言えというお話なんですか。
  44. 永井純一郎

    永井純一郎君 私は、アメリカのみでないのです。ソ連のほうもそういうことをしていますから。いずれにしてもソ連にしても、アメリカにしても、それらのわざわざ援助をして新らしい軍事国家を作るということは日本は好まない、こういう意味です、
  45. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをしますが、今現にそういう問題が出ているのか、提案されているのかどうかということを第一存じません。又仮に出ているとして、その考えているところ、狙いはどこにあるかということも存じないのでありますから、一切わからない事態において、私は意見を表明するということは差控えたいと思います。
  46. 永井純一郎

    永井純一郎君 私が言わんとするところは、むしろ現実にそういう問題が今ないからこそ、ないうちに日本の意思というものを、日本はこういうことは好まないのだということを言つておく必要が、米ソを初めとする世界の国に言つておく必要があるというのです。出て来てしまつてじや、日本のような実力のない国が言つても遅いと私はやつぱり思うのです。そういう意味なんです、そのことは。又ひいては日韓に、具体的に言うと工合が悪いかも知れないけれども、日韓の間に存在するいろいろな問題を処理する上にも、私は非常に日本のためによくよい。こういう意味で今政府がこういう問題について、率直に純粋な気持世界に訴えておくということが必要だと、こう思うのです。そういう意味で私はお伺いをしておるのです。  まあ、もう一つ先に進みます、時間がないようでありますから……。少し延ばしてもらいたいのですが、次に伺いますが、それと一緒にお答えを願いたいのですが、第三点に私非常に心配になりまするのは、従いまして今後はむしろ逆に既存のこの米ソを初めとする軍事国家が、極力軍縮の方向に急速に進むべきでありまして、特に日本といたしましては、平和憲法をどこまでも世界に向つて緊持して行つて、国連を中心とし世界の一体化を図る、そうしてどうしても世界連邦の具体化をこそ日本としは期するものである。このことは私は当然のことだと思うのでございますが、この際日本としては、日本の意思として、これを平和憲法を持つ日本の意思として、このことを私は今休戦会談ができ上ろうとしておるこの今、このことを閲明すべきであると、こう思うのですが、これに対する総理のお考えをお伺いいたしたいのでございます。
  47. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 第一の問題については、お考えは御尤もであると思いますが、私としては、その輪郭がはつきりいたしておりませんからその点は差控えます。  又第二の問題については、これは日本の憲法を見ても、又国連に加盟せんとする義務、加盟の義務を負つておるとしても、日本は平和を欲し、又軍備に対しては日本のみずから再軍備をしないということを言つておるのでおりますから、軍備縮小か、或いは軍備撤去の方向に行くことについて、日本があえて不賛成を表するわけはないので、日本考え方はこれは開明、声明いたさなくとも、今後においてはすでに明らかであると私は考えます。
  48. 永井純一郎

    永井純一郎君 そこでそれを更に積極的に日本の意思として表明するために、今日の国際連合のやり方だけではなかなか私は、特に平和憲法を持つ日本としてはいろいろな困難があると思いまするから、更に積極的に、世界連邦の具体化こそ日本としては望んでおるのだということを言われたならばどうか。国民はそのことを今一生懸命考えております。こういう意味なんですが、これはもう一度承わりたいのであります。
  49. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御意見として決して反対ではありませんが、特にこの際日本が、声明することのいいか悪いかという問題もあると思います。考え考えております。
  50. 永井純一郎

    永井純一郎君 いいか悪いかということは、私が今聞いていることにはないのです。当然のことなんです。それを米国というものだけを頭に入れて、その意向を忖度しながら発言をしようとされると、そういうことになると思うのですね。特に共和党の政権下においては、共和党の幹部諸君は国連を否認しようとする態度に出る人が今日非常に殖えて来ているのです。それに従つて行くのかなという感じを世界の人が持つことがいけないのである。日本はそうでないのだということのために役立つと思うのです。そういう意味で私はこのことを申上げておるのです。次に移りますが、もう一つ日本としてこの際率直な意見として開陳しておくべきことだと思いまするのは、我が国が完全独立を達するための裏付けをなすものは勿論経済の自立でございまするが、このためには、日本は米国の軍事的乃至経済的の援助を欲するものではなくして、広い市場と自由な貿易を欲するものである、これも当り前のことなんですが、このことをこの際はつきり言つておくことがいいのじやないか、私はこう思うのですが、総理のお考えを承わりたいのであります。
  51. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは政府としても、私としても、広く市場を持つということは、始終申しておるので、市場を制限したいなんというような考えは一度も申したことはございません。
  52. 永井純一郎

    永井純一郎君 この世界市場の問題は、御承知通り第二次大戦が生んだ一番の悪い面でございます。世界市場がそのために二分されたわけでございます。その上私どもに自由な貿易が許されなくなりましたために、貿易の不振を衝いて行きますと、結局政府東南アジアということを言いまするけれども、東南アジアにおいても、日本がここで貿易伸展させて行くことが不可能なことはもう明らかでございます。それは今日すでに東南アジア中心とする国際入札に、重化学工業品を初め、綿糸、人絹糸、化学繊維一切の競争に敗れておるのです。それは狭い市場が二分化された。狭い市場に他のドイツイギリス、今後はアメリカも入つて来るでありましようが、結局それらと競争をしなければならんから、原料アメリカから殆んど得ていながら、そういう狭い市場で競争をするということをやるのでございます。特に私がここで総理にお伺いをしたいと思いまするのは、東南アジア貿易を真に成功せしめようと思うならば、華僑の存在を無視しては一切できないと思います。今東南アジアに華僑がどのくらいおるかというと、最低八百万乃至一千万と言われております。この人たちの殆んどすべては貿易商社を初め、生産、販売すべを殆んどこの華僑が牛耳つておるのであります。そしてこの華僑の今日の政治的並びに民族的動向というものを政府がどの程度把握しておるかが私は問題であると思いまするが、これが順次台湾政府を相手にしなくなりつつあるのです。中共政権の商売の上からいつても、どうしてもこれと繋がつて行くという傾向、この政治的或いは民族的動向というものが非常にだんだんはつきりして参りましたから、私どもが実際に考えまして、中共との貿易をせずして、東南アジア貿易というものは日本には成立たない。東南アジアではすでに今日日本人の入つて来ることさえも拒絶しておる国がたくさんあることは御承知通りでございます。こういう華僑の、実際の実業の実権を握る華僑の動向なり、あの民族の動きなりを知らないで、東南アジア東南アジアと逃げ口上を言つて見ても私は何の足しにもならない。ただ政府は議会で計い逃がれをするために行きどころがなくなつて、追い詰められて、議論のしどろがないから、東南アジアということを二年も三年も前から言つて来ておるのでありますが、そこで私はここに簡単な言葉で申上げたのでありますが、日本としては、どうしても軍事的、経済的援助を欲しては自立ができないのであつて、そうではなしに広い市場と自由な貿易を欲するということの意思を私は率直に、やはり常にこの方向へ進もうという努力日本はするのだということを私は明らかにしないと進みようがない、こう思うのですが、もう一度この点は世事でありまするので、総理からお伺いしたいのであります。
  53. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 華僑の問題については、私も御同感であります。華僑の勢力は認めざるを得ず、又認めるもよろしい。これといい関係に入つて行くということも、日本貿易の前途から言つてみて大事であることも認めます。又華僑については、私から言うとおかしな話でありますが、できるだけの連絡をとらんといたしております。どれだけ把握しておるか、これだけ把握しておるという事実を申述べる自由は持つておりませんが、決してこれを度外視いたしておるのではないのであります。又東南アジア貿易はただ一時逃れの議論として考えておるのではなくて、東南アジアとの関係はますます親密なる関係に入りたいと努力をいたしております。
  54. 永井純一郎

    永井純一郎君 今申上げました華僑の動向なり、これと繋がることにあらざれば東南アジア貿易は幾ら言つて見たつてできないということは或る程度総理も認められておるようでありますが、この点は非常に私は日本といたしましては重要だと考えまするので、何か連絡をとつてやりつつあるような口吻でございましたが、極力これは一つ力を入れて頂かなければならん問題だと思います。そのためには政治的ないろいろな問題がその前提としてあると思いまするから、この点を、私から申上げるまでもないことだと思いまするが、附加えるわけです。  最後にもう一つお伺いをしたいのですが、それは日本中共の国連加入の問題についてございます。幸いにして休戦協定が成立をいたしまして、その後の政治会議における朝鮮問題の平和的解決が成功するためにも必要であると考えるのでございまするが、又特に朝鮮問題解決後のアジアの平和を維持して行くためには、私はどうしても日本中共が国連に加入をして、この中でお互いが手をよく握つて平和確保のために努力をするということは、これはもうどうしてもアジアの平和を維持して行く上に私は必要なことであると考えます。これは今差当つていろいろな問題とは別に、そういうことを基本の考えとしては日本は持つのだ、こういう意味で私はここに率直に総理がその考えを明らかにされることが私はいい、こう考えるのですが、日本の国の自由な意思というものを世界に向つて明らかにする、こういう意味で私はいいと思うのですが、これに対する所信を総理から承わりたいのであります。
  55. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は日本も中国も、又その他の国も成るべく多数の国が国連に入つて、そうして世界の平和を確保すべきであり、又するがいいと考えております。併し今お話中共か国連に入ることについて、日本が自由にこれに賛成の意思を発表せよというお考えであるならば、これは私としては暫らく差控えます。何となれば、この中共国連加入の問題は、今アメリカ或いはイギリスその他における微妙な問題の一つになつておりますから、特に我々が好んでこの微妙な国際関係に突入する事由はない、こう私は考えますから、これに対する意見は差控えます。併し中共が真に自由を愛し、又平和を愛して国連に加入するという考えならば誠に結構なことであるということをはつきり申します。
  56. 武藤常介

    ○武藤常介君 改進党を代表いたしまて、すでに出ました問題に関連がありまするが、委員会におきまして、総理大臣からじつくり実はお伺いいたしたいと考える次第でございます。  現在の日本の根本的な病弊とでも申しますか、国民が真剣に国の将来に対して考えるというような精神が非常に今乏しくなつて来ておるようであります。これは敗戦という事実、又その後の占領、これらが長く続きまして、国民が依頼心ばかり強くなつて来た。こういうことにも原因がありましようが、これには政府態度が非常に私は関係があると思うのであります。例えば政府は安全保障条約において、防衛力、自衛力の漸増ということを約束してありまするが、これに対しましては国民に何ら具体的な案を示さない。そんならば何の計画もないのかというと、そうでもなくつて、御承知のように、先般は木村試案というようなものが準備されてあつたどいうことがわかつたのであります。それが個人の案であろうと、又何であろうと、それは問題ではないのでありまするが、いやしくも現職の国務大臣が保安庁という正式の機関を通じて調査したのでありましようが、而もその問題に関しまして世論が非常にやかましくなりましたけれども、政府は未だにこれに対しまして、その内容が何であるかということを公表されておりません。保安隊は軍隊にあらずというようなことを申しまして、その蔭ではいろいろと案を練つておる。これでは国民政府を信頼しない。又国内に疑心暗鬼のものがたくさん出て来る、こういうことになることは私は当然であろうと思うのであります。現状では何日国会で質疑応答をいたしましても、国民は一体政府はどういうことを考えておるか、政府はどういう方針でいるかということが国民によくわからない。そうして置きながら、国民には真剣に将来に向つて努力せよというようなことを言われましても、国民の本当の協力はでき得ないのが当然であろうと私は思うのであります。私は政府日本の防衛について真剣に研究するということは、これ又当然のことでありましようし、これは決して私は悪いとは思つておりません。ただ問題は政府態度が今日のようでは我々国民が納得が行かない、こういうところにあるのでございます。大体現在この保安隊が軍隊にあらずというようなことなどは、今日の場合ではもはや通用しなくなつたのではないかと私は考えるのであります。それで、これは昭和の初めの軍隊のことと比較すれば明瞭にわかるのでありまするが、昭和の初めには兵は陸軍が十八万、警察が六万、これを合計すれば二十四万人であります。然るに現在では国警或いは自治警、保安庁を含めますると二十九万人多きに達しておる。尤も保安庁には海上もありまするから、これを差引いてもその当時よりは四万人も殖えておる。従つて政府は軍にこの国内の治安のためにだけ戦前の陸軍並びに警察の人員より以上の人間を使わないというと治安が保てられない、こういうふうなことになるのでありまして、これは朗らかに私は詭弁を繰返しておるのであろうと考えるのであります。最近は富士山のふもとで演習をされたというのでありまするが、これなども国内の治安としてはちよつと受取れない。とにかくも数字の点からしても政府の説明がどうも嘘であるということは、もう我々はどうしてもそれしか受取れない。で、一国の総理大臣がこのような見えすいたようことを毎日繰返しておりまして、そうして一面においては道義の高揚を説いておる。こういうことでは到底その結果は期待するものは得られない。こういうふうに私は考えるのであります。而もこのような態度を毎日続けて参りますならば、国内的に私は憂慮すべき問題がどんどん起つて来るのではないかと考えるのであります。旧軍人がひそかに防衛計画を作成するというような危険は申すまでもないのであります。又他方米国は一方的に日本に軍需の発注をやつて参りました。そうして日本に対しまして軍需工業の拡大を策するようになりましよう。で、政府はこれに対して全く受身であつて何ら施す策もないと、こういうふうな状態であります。これを第二次大戦に鑑みますならば、丁度英国、フランスが、どうしても米国が乗り気にならないので、米国に対しまして多数の飛行機その他の軍需品の製造を注文いたしまして、米国に軍備の拡大を悠涌したのでありまするが、ところがその場合米国は軍のほうで気がつきまして、軍が非常に慌てて種々なる干渉をやつたのでありまするが、日本の場合はどうも干渉もできない。全く自主的の部面がなくて、アメリカの言うがままに任せるようになるのではないか。こういうふうに考えるときに、誠にこれは将来に対して恐しいものが来るのではないか、こういうふうに考えるのであります。で、このようなことによりまして軍需産業が起りましても、一旦発注が杜絶いたしますならば、忽ちにして倒産の危機に直面する。そうするというと非常に慌てまして、これを免れるために、或いは政府に向つてあらゆる運動を開始するでありましよう。かようにして日本の軍備は、日本国民があまり関知しないうちにアメリカ方針によりまして置かれるようになり、又一面から見るというと、米国の外資によりまして、いわゆる調達によりましてできたところの軍需産業、その軍需産業に引廻されてだんだん軍隊も発達するような結果になるだろうと私は思うのであります。更に又私は保安隊が徒らに人員ばかり多くて更に士気が上らない、そうして非常に無駄が多いという話であります。これは将来に向つて何ら国家的な計画がなく、その日その日のこと糊塗しておるという態度がそうした結果を招来するようになることであろうと、こういうふうに私は考えるのであります。これは防衛の問題は一例でありまするが、このようなその都度的な政治の弊害は至るところに現われて参ります。かようでありますので、総理大臣は現在の政治態度の誤まり、現在の政治態度の誤まりを深く反省されまして、真に国民にその進むべき方向と見通しを明らかにし、国民が希望を以て而も積極的に努力し得るように速かにこの計画を作成して、これが実現するように具体的な方策を立てることが最も大切であろうと私は深く信ずるのでありますが、これに対しまして総理大臣の御所見、御意見をどうぞ忌輝なくお聞かせ頂きますならば結構だと思う次第であります。
  57. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。  政府は如何なる計画を持つておるか、これは予算に明らかな通りでございます。予算が最も明らかにいたしておるので、私がとやこう申すよりも、予算政府の計画を明瞭に示しておるのであります。その計画において再軍備とか、増強とかいう計画は現在持つておりません。木村国務大臣が自分の、国務大臣としての研究をされたこともありましよう。又研究されるのが当然であつて、その私見を述べられたことを、これを直ちに政府の政策といたすことはできないのであります。閣議において財政全局から考えて、又日本の国力、経済力から考えて見て、その案が是なりと考えれば、ここに初めて政府の政策となるのでありますが、木村大臣が自分の責任において、主管事務であるから主管事務として研究される、それは研究は自由でありますが、それを以て直ちに政府の政策というわけには行かないのであります。国民は知らないと言わるるが、予算において計画は明瞭に年々議会に提示いたしておるのでありますから、国民が知らないはずはないのであります。然るに政府はひそかに頬かぶりで再軍備をしつつある、これは言がかりであつて政府としてはそういう考えは毛頭ないのみならず、米国がこうしろ、ああしろという指図をするはずはない。日本政府の義務としては、安全保障条約が規定してある通りを実行するのが義務である。それ以上の計画は何ら持つておりません。これははつきり申上げます。それがために国民が疑惑を抱くとおつしやるが、国民が果して疑惑を抱いておるかおらないか、私は若し国民が誠実に政府の言うところを知り、又予算面を研究せらるるならば、その疑惑は自然消散いたすことと思います。
  58. 武藤常介

    ○武藤常介君 私の申しましたことにつきまして、相当育児の相違はありますが、なお重ねて伺つても同じ結果であろうと思いますので、私の質問はこれで打切ります。
  59. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理にお伺いしたいのですが、MSAの問題や日本の防衛の問題は、私はこれは密接不可分のものであろうと思いますし、又こういう問題を進めるに当つて日本政府だけでできる問題でははない。従つてアメリカ側と政府においては相当前からこういう問題はついて話合つて来ておる、折衝しておる。そういうふうに私は考えられるのでありますけれども、総理はこの点について、MSAの問題や防衛問題についてアメリカ側とこれまでいろいろ非公式に折衝して来ておると思いますが、総理はこの点についてどういうふうに考えになつておりますか。
  60. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この問題はしばしば聞かるところでありますが、外務省としてMSAの問題については研究はいたしており、又その研究についての疑問は米国側に聞いたことはありますが、交渉は何らいたしてもおらないことは、外務大臣がしばしば言明いだした通りであります。
  61. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いろいろな折衝です。研究だけでなくて折衝、意見の交換、それは防衛問題についてもそういうことはされておらないかどうですかね。
  62. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 折衝とか、交渉とかいう意味合がわかりませんが、只今申した通り政府としては疑問の点を尋ねてやつて意見を聞いたということはあるでありましよう。併しながらMSAの補助を受けるか受けないか、これに対して日本態度をどうするか、或いは米国政府に対してその意味合で交渉したことは曾つてないのであります。今日までは研究という程度以上に出ておりません。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 防衛問題については如何でしようか、防衛の問題です。今MSAについて答弁をされましたが。
  64. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 防衛問題についても何ら交渉いたしておりません。従来の線以上の交渉はいたしておりません。
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 三月一日の産業経済新聞にこういことが出ております。「再軍備問題の動向が注目されている折から、来阪中の外務省伊関国際協力局長は、二十八日午後一時から大阪クラブで約二時間にわたり、兵器工業界主脳者と懇談したが、席上、今年度の保安隊増員予定は四万人、米国側の日本再軍備要請規模は三十二万五千人である、再軍備が本格化する場合は、日米相互援助条約、又は地域防衛同盟の締結に発展するものとされるだろう、すでに両国関係者間で検討中であると、大要次の諸点を明らかにした模様である。  一、保安隊の増員については、米国側は現在の十一万を十八万に拡充することを要請しておるが、強制的でないので、四万人の増員が適当と検討している。  一、兵舎は現在余裕があるので、四万人増員で以て、二万人分を新設すれば足りる。  一、将来の再軍備規模について、米国案は地上軍三十二万五千人としておる模様で、これに要する資金は年間三千二百五十億円である、(一人当り百万円である)。  一、再軍備には、軍備、経済、技術の各面に亘つての援助が期待されるが、これを本格化するについて、まず日米相互援助条約の締結が基本となる、この実現には両国の国会通過が必要なので、早急に実現は困難であり、従つて差当り米国援助費の繰越と、特需発注などを通じて再軍備費が賄われて行くだろうが、相互援助条約問題は関係者の間で検討が加えられておる模様である。  一、一九五二―三年米会計年度の完成兵器特需発注予想は一億ドルであるが、現在までの実績は約三千万ドルである。  一、米国の対外援助は、一九五三―四年米会計年度より米陸軍省管轄からMSAに切りかえられるが、MSAの兵器対外買付は一九五二年六月末で六億二千百万ドル、五三年末予想十二億ドルと増加しており、五四年六月までに更に増加が予想される、これまでは対欧買付が約八割を占めてきたが、欧洲諸国は自国装備の拡充並びに米国は、兵器工業がフル運転しておる実情から必要が従来以上に自国生産並びに対欧買付を行うことは困難視されるので、今年七月から始まる一九五四米会計年度からの一時買付は相当増加することが予想される。」、こういう意味の相当詳細な談話が伊関外務省国際協力局長からなされておるのです。これは総理は関知されないというようなことは、こんな重大なあらかじめ総理が相談されたとは申しませんが、こういう談話を発表したということ、これは重大でありますから、総理はお聞きになつたでありましよう、若しこれが事実であれば、これまでMSAや防衛計画について折衝していないと言われますが、これらにおいて折衝しているということが明らかであります。この点について私は総理の答弁を煩わしたいと思うのであります。
  66. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お察しの通り政府は関知いたしておりません。又私は聞きもいたしません。
  67. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 外務省の伊関局長が発表されている談話、これについて総理は責任をお持ちになりませんか。
  68. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 責任は持ちません。
  69. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は委員長に要求いたします。この懇談会には住友金属、大阪金属、新三菱重工、神戸製鋼、新明和興業、川崎機械、小松製作、旭化成、日本化薬、日本油脂、こういつたメーカーの人たちが出席しております。従つてこういうメーカーの諸君及び産業経済新聞の記者、その人たちから私はこの実情を聞きたい。このことを委員長はお諮り願いたい。総理はそういうことについて関知しないと言いますが、私はこの記事が取消されたことを知りません。総理はこんな、重大なことについて全然関知しないということは重大問題であると思います。従つて委員長、この点についてあとでお諮り願いたい。こういう人たちを参考人に呼んでこの実情を私はお聞きしたいと思いますが、委員長にこの点を先ず伺つておきます。
  70. 青木一男

    委員長青木一男君) 後刻又協議いたしますから。
  71. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それではあとで理事会に諮つて頂きたいと思います。  それから総理は昨年の八月七日午後、箱根の小涌谷の三井別邸におきまして、マーフイー大使、クラーク大将と、家族同伴でお会いになつております。このクラーク大将とマーフィー大使と会われてお話されたことは、これは日本の防衛に関する問題についてお話されたのではないかどうか、この点について伺います。
  72. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) あつたかも知れませんが、記憶はありません。
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 当時総理は保安庁長官であつたはずであります。従いまし義々のいろいろ新聞その他の発表したものを調査しましたところ、総理はマーフイー大使、クラーク大将と会見後、増原保安庁次長と相談されて、保安庁内に防衛委員会というものをお作りになつたと思いますが、この点については総理は如何でございましようか。
  74. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) そういう記憶はありません。
  75. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは総理が保安庁長官のときにそういうものができているのです。これは保安庁長官として知らないで済まされますか、この点について伺います。
  76. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) マーフイ大使その他と会つた結果云々ということの事実は私は承知しておりません。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは防衛委員会というものを保安庁内に作られたことは、この点は事実なんでございますね。
  78. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) のちほど調べた上でお知らせいたします。
  79. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その防衛委員会において、我々の調べたところでは、いろいろ防衛問題を研究しておりましたが、どうも私の推察では、防衛委員会では穏やかでないというので、制度調査会というものに切替え、この制度調査会において木村保安庁長官が九州で言われたような、ああいう防衛計画を着々研究して来た、こういうことになつているのですが、この制度調査委員会というものを、総理は当時やはり保安庁長官でありましたが、そういうものの存在は総理はお知りになつておられますか。
  80. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今記憶はありませんが、調べた上ではお知らせいたします。
  81. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は非常に僅かの質問時間しかないのですが、そういう答弁でありますと、この予算審議中、明日しかもうありませんが、小会派でありますから実に時間がないのです。そういう場合に、やはりここで総理がお答えできなければ、関係閣僚でも来て、これは答弁してくれなければ困るんです。我々はただ徒らに政府を困らせるために質問しているんではないのであります。日本の運命に重大であるから質問しているんです。こういう無責任な私は答弁をされては甚だ遺憾であります。それでは十分お調べの上御返事願いたい。  次にお伺いいたしますが、総理は木村保安庁長官が作られたと言われるあの防衛計画の試案は、総理がこれは指示されたんではないか、私はそう思うのですが、この点如何ですか。
  82. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 指示したものではありません。
  83. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは衆議院の委員会におきまして、これは社会党右派の中村高一氏が木村保安庁長官に質問しているのですが、木村保安庁長官は、総理に対してこの試案を出したところが、総理は、まだこれは成案ではないから、成案を得たら出して来い、こう言われているという。それなら総理が成案を木村保安庁長官に命じて作つたところが、まだ本当の成案でないからもつと研究して持つて来い。元は、総理がこれを命じなければ、こういう問題が起るはずがないと思う。この点総理は如何ですか。
  84. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) はつきり申しますが、木村保安庁長官に命じたことはありません。
  85. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この防衛計画と言われるものは、単に総理の下に出されただけでなく、在京アメリカ大使館並びに在日米軍当局に極秘試案として提出されたと言われております。更に又保安隊の軍事顧問であるワトソン氏、アメリカのワトソン氏がこれを渡されて携えてアメリカに行かれて、持帰つておる。こういうことが言われておりますが、この点について総理に、こういうことがあるかどうかお伺いいたしたいんです。
  86. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) そういう事実は知りません。
  87. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは重大なことでございますから、私が若しこういうことを無責任で言つておることになると私自身に非常に責任がございます。そこで私がこういう質問をしている以上、相当私も責任を感じておりますから、総理もこの点については責任を持つて十分調べてこれは御答弁願いたいと思います。  次にお伺いいたしたいのですが、五月の初句に、次官会議において秘密保全に関する内訓というものをきめた。これを実施していると言われますが、こういう事実があるかどうかお伺いいたしたい。
  88. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 次官会議において何ですか。
  89. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 保密秘全に関する内訓です。
  90. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) それは知らないんです。
  91. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 誰が答弁されるんですか。知らないでは済まされません。委員長注意して下さい、私はそれまで待ちますから。知らんではいかん。関係者がいなければなりません。(「関係者を呼ばなければ進みませんよ」「休憩して全部揃えなさい、人を」「そんな必要はないよ、総理に対する質問だから要らない」「総理がわからなければ誰か代りの人がいなければならん」と呼ぶ者あり)
  92. 永井純一郎

    永井純一郎君 議事進行について。折角のこの時間のないところでの予算の審議ですから、余り審議権が無視されたような恰好になつて来ますと、参議院の権威のためにいけないと思いますから、ちよつと休憩をしまして、そうして総理がすべてお答えになるということは無理な点もあると思いまするから、関係の閣僚なり、官房長官なり来ておつて、木村君の審議が進むようにしてもらいたい。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  93. 青木一男

    委員長青木一男君) 私はほかの閣僚にも本会議に出ておられないかたは出席を要求してあります。恐らく今の問題は、どなたの所管ですか……、休憩せずにこのまま出席を要求します。休憩せずに進行します。(「続行々々」と呼ぶ者あり)だから今の問題はあとで政府のはうでどなたか適当なかたが来るまでそれを留保して進行してくれませんか。
  94. 亀田得治

    ○亀田得治君 総理は今日昼からのずつと審議に臨んで、知らないということを十回近く言つております。自分の都合のいいこと存はべらく答えて都合の悪いことは知らない、こういうことが慣例になれば、大事な我々の審議というものはこれは進まないのが当り前です。だから本当に知らない、それほどたくさん知らないのであれば、知つた者を連れて来て、そうしてここに総理が臨むのが当り前だろうと思う。どちらかはつきりしなければ審議はできませんよ。知らないと言いさえすれば次の問題に移つて行くのだ。こんなべら棒な審議は、私は今度初めて参議院に出て来ましたが、ほかの会合では知りません。ここは休憩してはつきりして下さい。(「続行」と呼ぶ者あり)
  95. 青木一男

    委員長青木一男君) 所管大臣に今出席を求めておりますから、総理の知らんことはほかの大臣に聞けば……。
  96. 亀田得治

    ○亀田得治君 議事進行。そうたくさん連発して知らないと言われたのでは、恐らく質問者の次に持つておられる質問が出て来ないだろうと思うのです。そういうことは、私は我々質問者が十分用意していろいろやつて来ている質問の糸口というものを全然塞いでしまうことになるだろう。そういうやり方は……。だから私はやはり休憩をして、はつきり揃えるものを揃えて、それからやつて下さい。これは委員長単独でやるべき問題じやないのであります。たくさん委員がいるのですから諮つて下さい。
  97. 青木一男

    委員長青木一男君) 今担当者が直ぐ来るそういうであります。それによつてつて頂きたいと思います。
  98. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 議事進行。これは私がさつき質問しましたことが事実であるか事実でないかを質問しているのに、事実であるかないかさえ知らん。これでは今の御意見のように質問も出て来ようがない。次官会議で秘密保全に関する内訓があつたか、これが事実であるがどうか、これも知らん。誰も政府委員で知らない。それでは進行ができませんので……。
  99. 青木一男

    委員長青木一男君) 今担当者を呼びに行つておりますから暫らくつて下さい。(「動議が出ているのです」と呼ぶ者あり)
  100. 亀田得治

    ○亀田得治君 それほどに僅かの時間で来るのであれば、質問者は大事な質問をやつているのでありますから、暫時休憩をして頂きたいと思います。二時間も三時間も来ないということであれば、これはむしろほかの議題に変えて質問をしてもらうのが適当かも知れませんが、直ぐ来るのであれば少し休憩したらどうですか。
  101. 青木一男

    委員長青木一男君) それではこのままちよつとお待ちを願います。今直ぐ来るそうでありますから。
  102. 亀田得治

    ○亀田得治君 委員長動議を諮らんというのですか。
  103. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 議事進行。大体一般質問の問題は、これは総理の所管と各省の所管に属するものと分けて、そこで総理の所管でこれは質問しているのですから、やはりその中に或いは次官会議のことや何か、要するに総理にわからんようなことまで質問して、それに対して回答がないからと言つて時同を伸ばすということは、これは不適当だと思います。それはこのまま続行されることを願います。
  104. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次官会議できめた内容が秘密保全に関する重大な内容です。こういうものを総理が知らんはずがない。ただそれが、あたたがたは次官会議であるから、次官の会議であるから総理の知らんのは当り前だと、(「見解の相違」だと呼ぶ者あり)そんなばかなことはない、そんな無責任なことはない。それを諮つて下さい。
  105. 亀田得治

    ○亀田得治君 議事進行。来るから暫らくつてつてくれと、こういう慣例は私はなかろうと思うのです。休憩なら休憩、はつきりして下さい。
  106. 青木一男

    委員長青木一男君) お答えしますが、私は要求があつた場合に、その担当者が来るまで待つた例はあると思います。(「諮つて下さい」「動議が出ているんですから」「休憩の動議が出ているんだ」「賛成意見もあるんだ」と呼ぶ者あり)動議なら、それではお諮りいたします。  それでは休憩の動議に賛成のかたの起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  107. 青木一男

    委員長青木一男君) 少数と認めますから、続行いたします。(「異議なし」「続行」「決を採ればそれでいいんだ」と呼ぶ者あり)  それじやもう一度簡単に質問を、木村君。
  108. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは今まで質問したことを……。
  109. 青木一男

    委員長青木一男君) 簡単に最後の点を。
  110. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは五月の初旬です。秘密保全に関する内訓というものを次官会議できめて、各省にこれは実施されたと思います。これは五月初旬と記憶しますが、幾日にその次官会議できめたか、秘密保全に関する内訓の内容を、どういうものを出されたか。これを私は伺いたい。なぜ伺いますかというと、これは一種の取材統制になる。それが又ニュース統制になつて来、だんだん軍機保護の形になつて来るので非常に心配しておるのです。それでなぜ最近わざわざ秘密保全に関する内訓というものを各省で出すに至つたか、その実情をお伺いいたしたい。
  111. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) お答えいたします。次官会議におきまして機密文書等の取扱規程の制定方について打合せをいたしました。これは本年の四月三十日でございます。その趣旨といたしまするところは、各行政機関におきまするところの機密が、未だ公表してはならない時期に漏れたりするようなことがしばしばございまして、それらの文書の扱いについて統一的な申合せを行なつていなかつたのであります。従いまして、戦後乱れておりますそういう書類の扱い方などにつきまして、各省共同した規程を設けようじやないかということで相談して設けたものでございます。中味といたしましては、大体文書としての種類は、機密によつて何種類くらいに分けようとか、或いは管理者をはつきりきめて保存して置こうとか、そういう極めて事務的なものだけを相談し合つて、一回、二回の次官会議できめまして、それから先は各省で随時そういう規程を作つて部内に通知をするということにいたした次第でございます。
  112. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その各省で作つたものを資料として出して頂きたい。よろしうございますか。その資料を私は見てから更に質問いたしたいと思います。なぜこの際祕密保全に関するそういう内訓を必要としたか。官吏には服務規程というものがあるのです。やたらに秘密を漏らしてはならないのです。服務規程でいいんで、その上なぜわざわざそういうものを作つたか。時間がないから私は次に移りたいと思いますが、木村長官はいわゆる防衛計画というものを、これを防衛計画ではない、いわゆる警備計画である。こういうふうに言つておりますが、又その中味は発表されませんが、私はこれは早く発表されたはうが誤解がなくていいと思う。総理はやはり木村長官お話合いがあつたんです、すでに……。その案をすでに御覧になつておるんですから、総理はこれを早く、仮に木村試案であつても何でも公表されて、国民と共に、再軍備賛成論者も、反対論者も、こういう問題をオープンに、分けに討議するという意味でこれを発表されるように、総理から木村保安庁長官に言われるお考えはありませんか。
  113. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はそういう考えはありません。
  114. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじや木村保安庁長官が参つたときに私は重ねて伺います。  もう時間がございませんから、最後に伺いますが、今度の暫定予算の予算補正総則の第六条について伺います。暫定予算は新規計画を原則として織込まないというのに、この六条にあるように、これは国際開発銀行から外資を受入れるためのこの債務保証、元本百四十八億、手数料及び利子百十一億円の、この元本の保証の規定をここに出している。これは非常に大きな新らしい政策です。これを総理はなぜ補正予算に……、暫定予算はこういうものを織り込むべきはではないと思うのですが、どうして暫定予算に織込んだか。この点について伺いたい。
  115. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 政府委員より答弁いたさせます。
  116. 河野一之

    政府委員(河野一之君) お答え申上げます。暫定予算にどういうものを盛るか。その性格については、四、五月分のごとく、選挙管理内閣におけるものと、新らしく本予算が編成されてからあとのものとでは、その性格が多少違うであろうということはこの前申上げた通りであります。従いまして、七月分の暫定予算におきましては、本予算のうち急速に実施すべきものについて計上いたしているわけでございます。この本件の問題につきましては、すでに法律案を今国会に提出いたしまして、この外資の導入について政府が保証することができるという法律を提出いたしているわけでございます。そしてその額は予算で定めるということになつているんでございまして、本予算にもこの規定は乗つかつているのでございまして、従いまして七月の暫定期間の間におきまして、世界銀行におきまして、火力発電関係で七月中にもそういう契約が成立しそうな見込みでございますので、その法律案成立の暁におきましては、それができるように、こういう規定をわざわざ予算措置にいたした次第でございます。
  117. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今の御説明は、これまで政府が暫定予算をきめて説明して来た説明の仕方と違います。そこでこれは議論になりますからやめますが、それならばワールド・バンクからこれだけ金を借りるというなら、それの元利保証がここに出て来ているんですから、その条件、どれだけの円を借りるか、どういう条件で借りるのか、その内容です。それからその使途です。それを何に使うのか、火力発工というけれども何に使うのか、そうして又世界銀行から受けたドルで以て外国物を輸入するのか、或いは純然たるドルとしておいて、それを見合いに日本国内のいわゆる火力発電機械を作るのか、それから更に具体的には佐久間ダムの七百万ドルのこの建設費は、この中に入つているのかどうか、含まれるのかどうか。こういうことを併せて伺つておきたい。その条件をここで発表して頂きたい。
  118. 河野一之

    政府委員(河野一之君) この点につきましては、暫定予算の説明のときに一応申上げたはずでありますが、元本につきましては、四千九十万八千ドル、利子につきましては、三千七十八万五千ドルということで一応計算いたしているのでございますが、条件等はまだ現在折衝中でございまして、きまつておりませんが、一応計算の基礎といたしましては、年五分、それから契約手数料七厘三毛、償還期限は五年据置の二十五年ということで一応計算いたしております。併しこれは実際の具体的の交渉によりまして変つて来ると思いますが、それまでの幅をとつているわけでございます。それかれこれはすべて火力発電関係でございまして、佐久間ダムのものはございません。開発銀行を通じまして借りるところは、関西電力、中部電力及び九州電力でございまして、これによりまして、火力発電関係の機械を直接米国から輸入することになつております。
  119. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ですから非常に私は重要だというのです。今のお話では全部アメリカから火力発電機械を買うのじやありまませんか、重大問題ですよ、政府は特需依存を不合理だからやめる。だんだん特需依存をやめて正常な貿易にやつて行くというんです。そのアメリカから借りた外貨を、これを殆んどアメリカから火力発電機械輸入に使つてしまつたのでは意味がないじやありませんか。日本のこの電力機械を造るところは、それでは困つて来るじやありませんか。いわゆる電源開発景気というものを期待しておつて、何ら出て来ない。アメリカから借りた外貨はみんなアメリカから機械を買つてしまう。こういう重大な中で、これは一体誰が行つて折衝しているのか、この折衝の過程も私は詳しく聞かなければ、こんな簡単なことでこれは私承服できない。十分これは検討しなければならない。それなのに暫定で出て来るということはどうですか。こんな重大な問題はこれは十分検討しなければならん。これにはいろいろな問題が私は伏在していると思うのです。今日は私は時間がございませんから、今私が質問した範囲において、これはどういう人が行つて、そうしてどういう交渉しているのか、その点なお私はあとで一般質問のとき、この点についてもつと具体的に質問したいと思いますので、今質問した程度の範囲で御答弁願いたいと思います。
  120. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) この問題は大使館を通じてずつとやつておりまして、その後開発銀行の中山理事が行きまして、向うと折衝いたしたのであります。なお条件等は今具体的に取極中でありまして、折衝中の分がございますが、なおその機械そのものは非常に優れたもので、日本のほうでもその機械を入れることが必要だという技術者の証明等の結果、そういうふうになつておる次第であります。
  121. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今大蔵大臣からそういう御答弁があつたので、やめようと思つたのですが、私もこの問題、多少調べて見ましたので、今技術者がみんな日本輸入しなければならん必要があると言いますが、日本でできるものはたくさんあるのです。中山理事も或る座談会において、四千万ドル程度のものを、この際は日本アメリカに金利を払つて借りる必要がない。日本は外貨が今九億何千万ドルあるのです。それを使わないで、わざわざアメリカから金利の付くそういうものを、而もアメリカの機械を輸入するためにこういう外資導入をやるのか、この点伺いたい。
  122. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 非常な性能の優れたもので、サンプル輸入の意味で特にこれを輸入することにいたしてあるのであります。
  123. 小林孝平

    小林孝平君 私は農政問題について二、三総理大臣にお尋ねいたします。首相施政方針演説において、国民生活の基本をなす食糧については総合的な自給度向上を図ることが必要であると述べられ、食糧増産に対する政府の決意を示されたのであります。而も日頃、首相みずから農政の権威を集め、顧問会議を開き、その意見を聞いて需給調整の確立に並々ならん努力を払つておられるのであります。ところがこの顧問会議を初めとしまして、農林省或いは農業関係団体つて一致しての要望は、食糧増産に対する基本法を制定せよという声であります。そこで増産を達成するためにこの食糧増産に対する基本法が必要とお考えになるか、必要でないとお考えになるか、総理大臣の御所見をお伺いしたい。
  124. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) いわゆる基本法なるものの考え方については多少議論があるかと思いますが、併しこの点については、いずれ当局大臣から説明いたさしたいと思います。
  125. 小林孝平

    小林孝平君 私はこの施政方針演説において、総理が特にこの食糧増産の問題について言明され、なお今申しましたように、日頃から農政の権威を集めて、首相みずから意見を聞いておられる。而もその農政の顧問会議の意見といたしましては、是非この基本法が必要であるという主張をされているのでありますから、私は総理大臣として、一体どういうふうにお考えになるかということを特にお尋ねしたいと思うのであります。
  126. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今申しました通り、この基本法を考えることは必要であろうと思います。が併しながら、どういうふうな構想にするかについてはまだ今研究中であります。
  127. 小林孝平

    小林孝平君 研究中ということでございますけれども、大体それはいつ頃結果はわかるんですか。この国会に提案することができるのでございますか。どうですか。
  128. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今研究がどの程度進んでおるか、私も実は知りませんが、いずれ成るべく早く研究の結果を提出して、この議会に間に合いますれば提案いたします。間に合わなければ、この次の議会に提案いたします。
  129. 小林孝平

    小林孝平君 次に米の統制撤廃についてお尋ねいたします。詳しいことは後ほど所管大臣にお尋ねいたしますが、基本的な極く簡単なことを首相にお尋ねいたしたいと思います。この暫定予算並びに本予算を見ますと、米の統制は継続するという建前で編成されているのであります。そこで首相はしばしば衆議院の予算委員会その他において、速かに統制を撤廃したいと、こういうふうに言明されておりますけれども、この予算の建前からいたしますと、来年の三月まで、本年度中は米の統制は継続すると、こういうふうに了解してよろしうございますかどうか、お伺いいたします。
  130. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 統制は成るべく早い機会に撤廃いたしたいと思いますが、撤廃する前に政府としては相当用意を必要といたしますから、その用意ができれば撤廃を考えますが、さてその用意がいつでき上るか、これは所管大臣にお尋ね願います。
  131. 小林孝平

    小林孝平君 先ほど総理は木村君の質問に対しまして、予算に全部政府の計画は明らかにされていると、こういうふうに御答弁されているのであります。従つてこの暫定予算並びに本予算を見ますと、明らかに米の統制は来年三月まで継続するという建前で組立てられておりまするから、私はこの予算の建前から米の統制は三月まで継続する、こういうふうに了解いたしたいのでありますが、それで差支えありませんか。
  132. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 予算関係がありますので私から御答弁いたします。一応来年三月まで統制を継続するものとして予算を編成いたしております。
  133. 小林孝平

    小林孝平君 最後に、内田前農相は衆議院の本会議において、井上良二君の質問に答えまして、肥料の生産費調査を法制化すると言明されているのであります。その後内田前農相は突然辞任されましたけれども、その辞任原因についてはともかくといたしまして、この内田前農相の言明は政治的に生きているものと私は解釈したいのでありまするけれども、そういうふうに了解してよろしうございますか、総理大臣の御所見を伺いたいと思います。
  134. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 前農林大臣がどういう声明をしたか、内容を私は知りませんから、取調べた上でお答えいたします。
  135. 小林孝平

    小林孝平君 どういう声明とおつしやいましても、今申上げましたように、肥料の生産費調査を法制化する、こういう声明であります。極めて簡単でございまして、而もこれは予算委員会において言明されているのであります。これは総理大臣は、その内容を調べなくても、これは第五次吉田内閣の閣僚であり、而もそれを単に吉田総理大臣によりますれば、病気の結果辞めたことになつておりますが、これは当然政治的にこの声明は生きていると、こういうふうに考えるのでありますが、別に調べる必要はないと思います。
  136. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今のお尋ねは、そういう統制を課するという考えが内部においてあるというので、やると言つたのではないそうであります。
  137. 小林孝平

    小林孝平君 私は今ここで丁度速記録はありませんが、ともかく衆議院で言明したことを、現在第五次吉田内閣の前農相として言明されていることは、政治的に生きているかどうかということをお尋ねいたしておるのであります。その内容がどうであるか、こうであるかというのではないのであります。
  138. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 肥料審議会等でそういう意見があつて、内部的にそういう意見があるが、これを法制化するかどうかということの言明で、内部的にそういう意見があるから考えてみるということについて御答弁申上げているそうであります。
  139. 小林孝平

    小林孝平君 繰返して申上げますけれども、その内容は速記録を見れば明らかですから、今大蔵大臣が、あやふやなことをおつしやるまでもないのであります。ただそういうふうに予算委員会で言明された農相の言明というものが、而も農相は総理大臣の見解によれば単に病気でやめられた、こういう事情でありますから私はこの言明が政治的に生きているかどうか、生きていないということになれば、どんどん大臣が次々に変つて行く、前の大臣の言つたことは、これはもうかわらん、こういうことになつたら大変なことですから私は聞いているのです。その内容を聞いているのではありません。
  140. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) それでは主管大臣から正確な御答弁を申上げることにいたします。
  141. 小林孝平

    小林孝平君 これは所管大臣が生きている、生きていないと言つても駄目なんで、第五次吉田内閣の農相が突如辞任された、その農相が言われたことを政治的にこれは生きているかどうかという一般的の質問でありまして、一つの例を挙げて私は申上げている。だから総理大臣からお答えを願いたい。
  142. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたしますが、これは私は引継ぎを受けておりません。従つてこれに対する考え方は持つておりません。でありますから白紙に返したものと御承知を願います。(笑声)
  143. 小林孝平

    小林孝平君 そういたしますと、閣僚が非常に重要なる発言をされた、それは内閣の都合が悪ければこれをやめさせて、あとはそれは引継いでおらない、或いはこれはやめた大臣だからわしらは知らん、こういうことで済むものであるかどうか、総理大臣の御所見を承わりたい。こういうことになれば私は大変だと思う。少しも責任がない。責任があることを言つたらどんどしやめさせる、こういうことでは困ると思うのです。
  144. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今大蔵大臣の言われたところによつて見ても、そういう意見がある、考えるというだけの話で、考えることは主管大臣が考えるかも知れませんが、内閣全体の問題として我々が取上げているものではないから、白紙に返つたものと御承知下さいと申すのであります。
  145. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は常々総理を初め政府当局から道義の高揚という言葉をしばしば聞いているのでございますが、併しそのことは一片の指示や法律の制定にあるものではなくて、実に政治の貧困に起因するものであると考えられるのでございます。先ずそこで私は首相にお伺いいたしたいと存じますことは、立法府といたしまして、いろいろ国民生活の安定とその擁護のために立法いたして参りましたが、ところが最近におきまして、この法律が十分に適用されていない。先ず私は、法は正しく適用されるべきものと考えておりますが、作文とお考えでございましようか、この法律は正しく守られるべきものとお考えでございましようか、総理の御見解を先ずお伺いいたしたいと存じます。
  146. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ちよつとお伺いしますが、聞き漏らしましたが何、の法律をお尋ねになつておられますか。綱紀粛正はわかりましたが、何の法律を作文と考えておりますか……。
  147. 藤原道子

    ○藤原道子君 あらゆる法律でございます。
  148. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) あらゆる法律を作文とは考えておりません。無論実行いたすつもりでおります。
  149. 藤原道子

    ○藤原道子君 それでは先ず第一にお伺いいたしたいことは、児童福祉法が制定されまして、そうしてこの法律の一条におきましても、「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。」「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。」かように規定しております。又二条におきましては、「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。」かように規定されているのであります。殊に総理は、児童憲章の制定に当りましてはその責任者であられたと思うのでございます。ところがかような立派な法律が制定されておりまする日本におきまして、果して児童がこの法律の謳うごとく守られているとお増えでございましようか、その点をお伺いいたしたいと存じます。総理からの御見解を伺いたい。
  150. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主管大臣からお答えをいたします。
  151. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) 只今お話の児童憲章はすでに出ております。そういう精神に副つて児童福祉法も出ておりまして、これらの法律に基いて政府は年々適当な予算で、勿論十分とは申上げかねまするが、児童福祉に関する或いは施設或いは保護、これらに対して十分やつて来ているのでありまして、勿論法的にはいろんな問題がありまするけれども、最初児童福祉に関しましては特に重点的に施設の増強或いは更生法等に対して努力をいたして参つている次第であります。
  152. 藤原道子

    ○藤原道子君 不満足でございます。最近総理並びに厚相は、基地周辺における状態を御視察になつた経験がおありでございましようか。こういう立派な法律がありながら、実に日本の子供の福祉は紙屑のようにうつちやられているのでございます。基地附近におきましては、どういう理由で制定されたか存じませんけれども、学校の間近に飛行場ができている、学校の間近に試射場がございます。従いまして爆音或いは雑音によりまして子供が落ちついて勉強ができているとお考えでございましようか。或いは又基地附近の風紀の紊乱によりまして童心が蝕まれている。この事実を果して御認識になつたことがあるでございましようか。子供は次の時代の主人公でございます。この子供たちが或いは風紀の問題に心が蝕まれる、学問は低下して来る、或いは性犯罪等が行われる、こういう状態に放置いたしまして、次の日本の実情がどうなるとお考えでございましようか。これらに対して何らか具体的な方法をお考えであるかどうかということについてお伺いいたしたいと思います。総理から聞きたいのです。
  153. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主管大臣からお答えをします。(「総理に対する質問時間だ」と呼ぶ者あり)
  154. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) お答えを申上げます。お話の基地におきまする児童福祉或いは児童の保護の問題は、政府といたしましても心を痛めておりまするのであります。この問題はなかなかむずかしい問題でありまして、或いは保育所を設置いたしまするとか、或いは児童遊園地を作りまするとか、いろんな措置を講じて参つておりまするが、問題は根本的にこれらの問題をできるだけ可及的に解決いたしたい(「根本的な問題だ」と呼ぶ者あり)ということで、これは先般委員会において申上げましたので、重ねて申上げるようなことに相成りまするが、昨年の十月頃から日米合同委員会の下部に何らかこれらの基地におきまする風紀の問題或いは公衆衛生の問題等の解決を根本的にいたしたいということで交渉をいたして、本年の三月に、第一回の分科会を設けまして、そうしてこの六月十六日に一応の成案を得ましたので、これを関係都道府県知事等にも通達をいたしました。その内容を簡単に申上げますると、これらの問題については広く駐留軍と日本人との社会関係につい例えば公衆衛生の問題或いは風紀の問て、題等を根本的に取上げて、そうしてこれらの対策を樹立する。そのために地方に連絡協議会を設ける。勿論この地方連絡協議会の構成も問題でありますが、そこで取上げまする問題は主として今仰せの風紀の問題、或いはこれに伴いまする犯罪の防止、これらに対して従来実は公衆衛生、性病予防という点にむしろ重点を置いて施策が講じられておりましたので、今後はそれだけではなかなか問題が解決いたしませんから、今後は或る程度必要な場合には警察力もこの方面に用いて解決を図ろう。若しもそれが解決いたしませんときには中央の合同委員会に持つて来る。若しもなおそれでも解決つきません際におきましては、駐留軍の要員の適当な地域に立入禁止をいたしますとか、或いは建物に立入禁止をいたします等、適当な措置を講じて行くように実は案を立てて只今通達をいたして、その方面における善処を期しておる次第であります。
  155. 亀田得治

    ○亀田得治君 議事進行について。質問者は総理の意見を聞いておるのです。だから、答えられない問題ではなかろうと思います。こういう問題は主管大臣だけではなかなかやれない。主管大臣だけが考えつてやれない問題がある。細かい点についてはこれは当然質問者が更に主管大臣に質して行く機会考えていると思う。基本的にこの総理大臣の考え方が明確にならなければいけないから尋ねておる。それをさつきから少しも総理みずからが答えないで、そうしてほかの者にしやべらしておる。それでは質問者に納得が行かないと思う。これは委員長のほうで、総理がそういう態度を続けられる場合に厳重にこれは注意をしてもらいたい。
  156. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 内閣の閣僚の主管大臣が私に代つて答えることは、私の考えと、言論と……、責任を以て私が、その表明した意見に対しては責任を持つものとお考え下さい。
  157. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は只今の総理の御答弁は不満足です。先ほど農林大臣のときには大臣の考えと私とは違うというようなことを言つた。それから私は所管大臣には過日の委員会で聞いておる。そこで私は総理大臣がこれほど国内的に、全国の母が心を痛めておる問題に対して、総理みずから基地附近を御視察になつたことがあるかどうか、そうしてその子供の福祉があのままに放置されていいとお考えかどうか、今後どういう対策をお持ちかどうかということを、全国の母に代つて総理にお伺いしているのです。
  158. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主管大臣が責任を持つてお答えすることは即ち私の責任において答えることだと思います。(「それは形式論だ」と呼ぶ者あり)
  159. 藤原道子

    ○藤原道子君 それではしかとさように承わつておきます。今後そういう場合にはこれは所管大臣が言つたことだから私は存じませんということのございませんようにお願い申上げます。  それでは次にお伺いいたします。(「関連」「発言中」と呼ぶ者あり)
  160. 永井純一郎

    永井純一郎君 総理大臣に念を押しておくのですが、これは国務大臣の任免権を憲法は総理大臣に非常に大きな権限を与えておるのであります。それに基きまして私どもは明らかに不当であり、或いは憲法違反であり、或いは権利の濫用であると思われるような罷免権をも発動をさして来られたと考えます。ところが今の総理のお答えによると、内閣が一体となつて、その中の閣僚がしやべつたことは責任を持つということでありますので、或る程度物事がはつきりして来たと思いまするが、先ほど小林君が盛んに……、肥料会社の原価計算等を検査するところの権限を農林省あたりが持つようなことを立法化するということを内田農林大臣が発言をしておるようでございます。こういう点についても、これはもう今のお答えによりまして、明らかにこれについて責任を持たれるものと私どもは解しまするので、ここで御了承を頂いておきたいと思います。
  161. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) そうは行きません。(笑声)農林大臣が何を言つたか私は知らないから、それで農林大臣、主管大臣からお答えをするか、或いはその当時の事情を知つた人から一応の説明をいたしたので、それについて私が全責任を持つとは申しません。(「進行々々」と呼ぶ者あり)
  162. 永井純一郎

    永井純一郎君 簡単に申上げます。内田農林大臣がどういう内容のことを言つたかはいずれにしてもよろしいとして、農林大臣が言つたことについてはこれはもう内閣が責任を持つ、こういう一般論をお開きしておるのです。
  163. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) はつきり申しますが、私の面前において言われたことは私が責任を持つ…。(笑声)
  164. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は続いていま一、二点お伺いいたしたいと思います。大臣とやりとりをしておるうちに時間も失ないそうでありますので、条項的においをいたしますが、それならば地方の伺審議会においていろいろ対策を立てておるという言葉でございましたが、それが困るのでございまして、北海道の千歳では英文と日本語によりまして淫売の広告を入口にはつきり掲げることが条例として今まさに制定されんとしておる。そこで人身売買の件につきましては、昭和二十一年の十一月たしか十四日と記憶いたしますが、そのときに公娼は厳として廃止されておるはずでございます。ところが現在赤線区域とやら称するものによつて公々然と売春が行われており、これに対して総理はどのようにお考えであるか。而もこの中に未成年者が人身売買によりまして売られて来ておる。そうしてそういう事実が人権擁護局の調査だけにおきましても、莫大な数字になつております。そこでこれらの人たちが持つておりまする前借は、これはどう解釈しておいでになるか。これは重大な問題でございます。殊に三万五千円の前借を持つておる者が保護者から救済の訴えが出ております。これに対してその父親は長男戦死の弔慰金が近く四万五千円借りられるから、これによつて娘を救い出したい、こういうことが言われておる。国家のために戦死した長男の弔慰金を以てこの人身売買を救い出さなければならない。こういうことが日本で行われておるわけであります。従いまして私はこれらのことを法を犯してやつておることに対して、なお前借で行けるかどうか、これをどう総理はお考えであるか。今後人身売買に対してどういう措置をおとりになるかということを、私は誠意ある御答弁をお伺いいたしたい。  それから全国的に住宅で困つておる人がたくさんある。今住宅はどのくらい足りない。現代防空壕になお十一万余の人が住んでおりますが、これらに対しまして、国の基本的な住宅対策についてここで明快なる御答弁をお伺いいたしたいと思います。なお又これら諸問題は国民の悲劇を解消いたしまするには社会保障制度の実施こそ大切であると存じますが、この社会保障制度の実施について総理のお考えを明確にお伺いいたしたいと存じます……。駄目です、総理からお伺いいたします。
  165. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主管大臣からお答えいたします。(「いつも総理は言わないじやないか。」と呼ぶ者あり)(藤原道子君「主管大臣なら厚生委員会でしばしば聞いております。」と述ぶ)
  166. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) 御答弁申上げます。先ほど来数項の点について御質問がございましたが、若しもお答え漏れがございましたら追加いたしますが、最初の千歳地区におけるビラ云々等のお話がございましたが、実は最近千歳地区からそういうような問題に関して北海道庁でありましたか、何かそういう条例を出したということがございましたが、いろいろ調べてみますると、従来の法令等とは関係もあつてなお検討を要する点もありますし、又只今仰せの赤線地域というのは、これ又たびたびこの委員会等においても申上げておりまする通り決して規定は設けておりません。従つてこの条例等を出すことについても、今そういうことは困ると言つておるのでありまして、先ほどのビラ等に対しても決して政府はそういうものを認めて、赤線区域を認めておるとか何とかいうことにございません。  それからいわゆる只今仰せの弔慰金というお話でございましたが、恐らくこれは遺族国債の話であろうと思うのであります。これはさすがに現在の遺族のかたがた、従つて未亡人のかたがた等がそういうふうな困難な環境の下にあつてそれらの……。
  167. 藤原道子

    ○藤原道子君 そういう前借に対して……。
  168. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) その前に遺族国債に対して……この弔慰金というのは要するに遺族国債のことでございますから、これは前借に対しまして先ず申上げますと、これは正式に申上げますれば脱法行為であつて、そういうふうな法律行為というものは一応無効でありますが、これはもうそう形式的に只今御答弁を申上げることはいたしません。ただ私の関係において弔慰金と申しますか、いわゆる弔慰金は遺族国債でありますが、遺族国債の担保は御承知通りこれは国民金融公庫を通じてのみ担保貸付をいたしておるのであつて、その他にいわゆる担保に供与いたして金を借りることは一応法律で認めておりません。併し実際の困難な今の社会の下においては、そういう困難なこともありましようから、或いは十億円の範囲において低利補給の途を開き、又昭和二十七年度においては二十億円の範囲において買上げをいたし或いは来年度予算において大体三十億くらいまでは買上げたいと思います。
  169. 藤原道子

    ○藤原道子君 私の言うこととは違います。
  170. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) 違いますれば一応御答弁申上げますが、それから社会保障の点でございますが、これはたびたび各委員会、本会議で申上げております通り政府といたしましては、この社会保障制度審議会答申のあの四つの項目を主にいたしまして、善処いたしておることは御承知通りであります。
  171. 藤原道子

    ○藤原道子君 委員長、今の答弁は違いますから……私が伺いたいのは、公娼廃止のときには娼婦の持つておりました前借が棒引きになつたのでありますが、現に人肉を対象としての前借は認めないという根本的な扱いがあつたと思うのです。そこで今日こうした売春婦が業者から負わされている前借は生きるのかどうなのか、これに対しての御見解を伺いたい。従いまして中には弔慰金を出してさえも娘を身請けしようという親がある。こういうむごいことが許されるのかどうか、その点を伺つておく。それから住宅問題に対して御答弁を伺います。
  172. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) 前の公娼廃止の際におけることも承知いたしておりますが、今回の場合とは一応違つておることは、御承知通り従来は公娼廃止の際には政府方針として、法律等に基いていたしたことであつて、今回のいわゆる遺族国債等を担保に出して買うとか、或いは人身売買のときにおいて前借をいたすということは一応脱法行為でありますから、これは一応無効の行為とみなければならん。併しながら私の只今あなたに御答弁を申上げておるのは、さような形式的のことではなくして、この社会悪をなくするためにはいろいろのことをしなければいかんということを申上げておるのであります。  それから住宅の対策については、これは建設大臣から御答弁をいたすものであつて、私としては第二種の公営住宅に対してはできるだけ関係閣僚と……。
  173. 藤原道子

    ○藤原道子君 前借はいけないということになるのですね。
  174. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) これは法律論といたしましてはそうなりますが、厚生大臣としての御答弁は、只今申上げた通りさような聞苦しいことではなくて、根本的に社会悪をなくしたいと思います。
  175. 藤原道子

    ○藤原道子君 その点だけでも総理の御見解を承わりたい。その点だけお伺いいたしたい。
  176. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 厚生大臣の意見通りであります。(笑声)
  177. 青木一男

    委員長青木一男君)次に総理大臣以外の質問に移ります。
  178. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 議事進行。総理大臣以外の質問に移ることは不賛成でありませんが、併しこれまで予算委員会の建前として、総理に対する質問の日にちと時間と、こういうものを特に申合せできめてあるのです。そういう際に、只今のように総理に対する質問を厚生大臣が長々と答弁されると、質問した藤原委員はすでに厚生委員会においてそういうことは詳細聞いておる。それに関連して総理の意見を聞きたいから質問しておるのに、総理は又厚生大臣に答弁させたら、何のために総理大臣に対する質問の日にちをきめて、総理に対する質問時間を割り振る必要がございますか。非常に公平を失しております。理事会のいわゆる申合せ、そういうものに対して私は当を得ていない、余りに与党的な扱いをし過ぎておると思う。この点について理事会でも一つ又相談しなければなりませんが、私は委員長の反省を求めたいと思う。そういう、申合せになつたこの点を十分私は考えられたい。この点私は委員長に要求しておきます。(「進行進行」と呼ぶ者あり)
  179. 森八三一

    ○森八三一君 大蔵大臣にお伺いいたします。  今朝総理に対しまして災得対策の問題について中山委員から御質問がありまして、目下関係の大臣を現地に派遣をして調査中であるというようなお答えであつたのでありますが、予算を主管せられる大蔵大臣として具体的にどういう構想を持つていらつしやるかお尋ねをいたしたいと存じますわけであります。この四月に凍霜害被害がありまして、かなり全国的に広範囲な被害がありました。そこで取りあえずの応急措置といたしまして、六月までの暫定予算に組まれておりまする災害対策の予備費から支出をいたしまして、当面の対策が進行中であるわけであります。その凍霜害の善後処理にいたしましても、一応決定を見ておりまする五億数千万円の金では、到底十分というわけには参りません。そういうような不満足な施策が進行中でありますところに持つて参りまして、更に全国的な雨水害による被害が発生いたしましたことも御承知通りであります。その被害は相当これ又激甚でありまして、恐らく数百億に上る損害が起きておることと思います。この災害対策はまだ実施をされておりません。前段申上げました通りに、やつと四月の末に凍霜害対策が不満足ながらも一部実施に移されました。その後に起きました雨水害対策が、何ら具体的に進行いたしておりませんような状況でありますところに持つて参りまして、今回更に福岡、佐賀、熊本、山口、広島など房中心といたしまして巻起りました風木害、新聞に伝えておりますところでは六十何年振りかの異常なる大災害であります。この善後処理は一日も放棄するわけには参らんと存じます。誠に遺憾な残念なことでございます。政府におきましては、今朝総理が御答弁になりましたように、目下現地の実情を調査中であるということでありまして、ここに具体的な対策は立つておりませんのでありますが、大蔵大臣として、この調査が完了をいたしまして、現地の事情がはつきりして参りました、その場合に只今審議をいたしておりまする七月までのこの暫定予算でそれらの対策が進められて行くというようには到底お考えになつておらんと思います。更に引続いて審議せられまする二十八年度予算が確定をいたしましたのちにおきましても、提出されておりまする予算面から見ますれば到底この厖大な災害を復旧して参る、少くとも当面の応急対策だけでも遺憾なきを期するというわけには参りかねるのではないかこう考えるのであります。或いは将来予算の補正追加等をやる機会において足らんところを補う、こういうようにおつしやるかとも思うのでありますが、事態はそういうように悠長に考えていることを許さないほどに非常に深刻なものがあるのではないかと思いまするのであります。被害者諸君の生活が破壊をせられておりまするし、それに引続きまして、関連いたしまして新らしい産業活動の復興を講ずるというようなことは到底不可能と思われまするのであります。この際早急に具体的な対策を樹立いたしまして、取り進めて行かなければならんと存じまするが、只今審議中の暫定予算なり、或いは今後本院において審議されるであろう昭和二十八年度のこの予算で、そういうような諸般の対策を十分進めて行くことができるとお考えになるのか、足らざるところはどういう方法で具体的に考えて行かれるお気持であるのかをお伺いいたします。従来建設方面の事業におきましてもこういうような災害が起きることを未然に防止しなければならんというような観点に立つて国土の保安と産業の発達を目途といたしまして五カ年計画というものが樹立をされ、その実行を図ることになつてつておることは御承知と存じます。聞きまするとそれが単に机上の五カ年計画に終つてしまつて、具体的に計画は進められておらん、漸くその計画に対しましては、数カ年を経過いたしましたにかかわらず、僅かに十二、三%の程度の施設を見たに過ぎないというような状態であると聞くのでありまするが、こういうような足取りで今後もこういうことが進められて行くと仮定いたしますれば、この五カ年計画を達成するのに今後四十数年もかからなければならんというようにも承知をいたしております。その間に年々歳々次から次へと災害が発生をいたし、その災害の復旧が未処理のままに累積をして行くというようなことになりますので、結局国土の保全はこういうあんばいではいつまでたつても完成をしない。結局国土は荒れるままに放置をされなければならんというような極めて憂慮すべき状態になるのではないかと思いまするのであります。国は独立をしたと申しましても、この独立を十分に守り通して行くということすらできなくなるような極めて憂慮すべき結果になるのではないかというように考えられるのでありまして、一面に莫大な経費を投じまして治安の対策が講ぜられましても、或いは又しばしば御説明になつておりまする産業の合理化だとか、食糧の自給確立であるとか、輸出の振興対策であるというような経済自立対策が唱えられましても、結局かくのごとくにして国土が荒らされるままに放置されるということになれば、その結果は実に憂慮すべき問題が起きると思います。極端に議論をいたしますれば、勿論国民の生命財産を完全に守り通して参りまする治安対策も忘れてはならんことではございますが、そのことよりも国土を十分に守つて、こういうように頻発して参りまする災害を未然に防止をする、起きた災害は速かに復旧をして行くという方向になけなしの国家財政が投ぜられて然るべきではないかというようにも考えるのであります。このことが行われませんければ、自衛対策が如何に取り進められましても、それは国民の納得ができない、国民の生活、産業を破壊するという結果になるのではないか。こう思うのでありますが、当面するこの災害対策に臨みまして予算を預られまする大蔵大臣としてどういうようにお考えになりまするかを先ずお伺いをいたします。
  180. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 災害対策の予備金につきましては、丁度二十八年度には本予算に百億円を計上してございます。そのうち四、五の両月に十億円、それから六月に五億円、更にこのお出ししておる七月の暫定予算に十五億円、合計三十億円の災害対策予価金を計上しておる次第でございます。そのうち只今までに使いましたのが、先般の、今仰せになりました凍霜対策四億九千たしか六百万円かと存じておりまするが、そういたしまするとこの七月分を合せますると二十五億数千万円残ることになるのであります。そこで私どもはまあ一応これで、まだ災害の程度がよくわかりませんが、凌ぎはついて行くのではないか、こういうふうに考えておるのでございまするが、併し今次の災害につきましては、まだ丁度大蔵省からもいろいろな関係がございまするから、主計、理財、或いは銀行その他五人ほど人を派しまして、実地の調査に当らせることに、明日出発して頂くことにいたしております。それでそのうち取り急ぎますものは筑後川等が堤防が決壊したものでありまして、これを早く何とか川止めするということが必要なのでこれについては六億円の金を即時出すことにしまして、川止めをさすことにいたしております。そのほかのものは実情に即しましてお出しして行こうと考えておるのであります。  更にこの前の災害につきましては、農林省の方面からだんだん資料が参りまして、目下農林当局との間に検討中でありますが、これも数日中にそれぞれ結論を得ることと考えております。全体につきまして日本のような災害の多いところについては、今の森さんの御意見は私ども誠に傾聴すべきものだと思うのでありますが、併し御承知の公共事業費のところにも災害対策その他に相当大きな本年度予算を盛つておるのでありまして、今の日本財政規模から申しますとこの程度がまあ凌ぎ得る、凌んで頂かなければならん点ではないかと考えておるのでございますが、併し今後とも調査の結果に基きまして実情に即するだけのことは、これは是非やつて参らなければならん、かように考えておる次第でございます。まあ差当り対策は只今申上げました予備金がこの七月分まで通りますと二十五億からまだ余つておりますから、それを使つておく。    〔委員長退席、理事西郷吉之助委員長席に着く)そのうち六億円を以て筑後川その他堤防の破壊したところを堰止めることに使う、あとは実情に基いてできるだけ早くいろいろの措置をとりたい、かように考えておる次第でございます。そのほか災害復旧に必要な金融とかその他各般の措置も必要だと思いましたので、理財局、銀行局等の人間も明日派遣することにいたしております。そういうことにつきましても又それぞれ案が立ちますればそれに基いての対策を講じたいと考えております。いずれにいたしましても非常に大きな災害で、私ども心から御同情申上げておる次第でございまして、でき得るだけのことをいたしたいと考えておる次第でございます。
  181. 森八三一

    ○森八三一君 私のお聞きいたしましたのは、当面の対策の問題もありまするが、予算を預かられまする大蔵大臣として基本的な考えを実はお伺いをいたしたのであります。と申上げまするのは、国土の保全に関するしつかりした五カ年計画というものが立つておりましても、進行の状況というものは殆んど見るべきものがない。それは結局年度の予算の編成に際しまして、全体的な財政の都合からそういう結果になつて来ておると思います。そこで当面する災害の問題もさようでありまするが、今後こういう問題が未然に防止されて行くというようなことに取り運ばれなければならん筋であろうと思います。そういうときにも又財政上のやりくりがつかないということで、今日までのような経過を辿つて行くものとすれば、到幾日本のような宿命的に災害の頻発を受けなきやならんという地位にありまする国では、これは永久に、まあ永久という言葉に当らんかも知れませんが、常識的には永久に復旧ということにはなりませんし、未然に防止するというようなことにならない。そこで極論としては、このことを優先するためには或る程度他の方面、極端に申しますれば自衛力の問題なんかはあと廻しにしても考えるべきではないか。そのことが本当に国の独立を守つ行くのには大切な問題ではないか。ところが現状は、十分あれこれ総合して考えておるとおつしやるだろうけれども、災害対策のほう、或いは国土保全に関するほうがあと廻しになつておるというようなことではないか、こうも考えられまするので、そういう点について一体どうお考えになるかという点をお伺いいたしたのであります。
  182. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 御承知のように、まあこの二十八年度の予算は公共事業費も又災害復旧費その他も今までに見ない相当巨額の計上をいたしまして、そうしてその公共事業費のうちには各種の河川或いは砂防、林道その他いろいろな治岩治水に関する問題等も多大に含まれておるのでありまして、私ども資金を効率的にやつて行く上から見るとこの程度が実は一ぱいじやないかくらいにこれは率直に申すと考えております。金だけの面では十分とは申されませんが、一番効率的に仕事を進める上から言えば大体この程度じやないかというふうに見ておるのでありますが、併し今仰せの通りに、日本のような非常な細長い各種の気候の、気候と言いまするか、風水各種のものを受けやすい所では、そういつた根本策も極めて必要と考えられまするが、併しさればと言つてそれでは一つ今仰せになつたような保安庁の予算等をもつと削るか、こう仰せになりますると、この点も実は削られるだけ削つたのでありまして、只今のところこれをもう少し削つて向うへ持つて行くということは現在の段階では少し困難だ、こういうふうに私は率直に申上げざるを得ないと存じます。併しながら仰せになつた御趣意はよくわかりまするから、この方面に力を尽して参りたいとは考えております。
  183. 森八三一

    ○森八三一君 その次にお伺いいたしたいのは投融資の関係の問題であります。政府では社会政策なり文教なり産業等の発達推進のために積極的な投融資対策を取り進められておりますことは甚だ多とするところでありまするが、特に奇異に感じますることは、更に非常に遺憾と存じますることは、輸出入銀行に関する問題であります。これは申すまでもなく輸出入銀行は日本経済自立の達成を目途といたしまして。プラントものの輸出促進のために非常な期待の下に特殊な金融機関として発達を見たのでありますが、    〔理事西郷吉之助君退席、委員長着席〕 最近におきまする国際的な貿易の実情なり日本の物価の実態なりというようなことに禍いをせられまして、所期の輸出が振興いたしておりませんことは甚だ残念であります。前途も楽観のできないような見通しに立たざるを得ないということは誠に遺憾であると存じます。こういうような状況を打開いたしまするために国を挙げて努力をいたしまして輸出入銀行の本来の目的が十分に効果を発するように望むものでありますが、輸出入銀行の現況は以上申上げましたような輸出の不振、特にプラントものの関係輸出に禍いをせられまして、只今百数十億の金が簡単に申しますれば遊んでおるというような状況にあると聞くのであります。これをこのままに遊ばせておくということは、それでなくても非常に行詰つておりまする現段階におきましては、非常に無駄なことのよりにも思われるのであります。今回の予算について見ましても、中小企業金融公庫を設置いたしまして、かねがね両院におきましても要請されておる非常に困つておる中小企業者の金融の問題の打開に充てるということでありまするが、予算の額では到底枯渇をいたしておりまする中小企業者を救つて行くというわけには参りかねる。或いは庶民大衆の住宅の問題にいたしましても、非常に要請はありまするが、金庫の資量が少いということで、それ又足踏みをしておるというような状況にある。一面に今申上げましたように輸出入銀行の関係におきましては百数十億の金が眠つておる。まさに極論をいたしますれば、輸出入銀行は開店休業のような状態になつておるのじやないか。この遊んでおりまする金を銀行法を改正いたしますれば一般に活用ができるのじやないかというように考えられまするのでありますが、所管の大蔵大臣として輸出入銀行法の改正をする、そうして遊んでおりまする金を今申上げましたような中小企業金融のほうへ振り向けるとか、或いは住宅関係のほうへ振り振り向けるとかといつたよう施策に廻して行くお考えをお持ちになるかどうかという一点をお伺いをいたしたい。若しそういうような施策が講ぜられたといたしましても、幸いに輸出が増進をして資金を必要とする場合には、申上げまするまでもなく借入の方途も輸出入銀行には認められておりますので、当座の急発いたしまする資金の需要はそういうような銀行法上認めておる制度によつて凌いで行くという途もあるのではないか。設立以来今日まで二カ年、すでに経過はわかつておりますので、更に今度のプラントものの輸出についてもそんなにここで手の平を返すように急速に進展して行くような見通もこれは立ちかねるとも考考えられまするので今申上げましたようなことをお考えになるお気持があるかどうかという一点をお伺いいたしたい思います。
  184. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 輸出入銀行が今百数十億の金を余しておるということについては、御指摘の通りであります。併しながらこの輸出入銀行につきましては本国会に提出しておりまする輸出入銀行法の改正によりまして、海外における投資ができる、比較的長い資金を出すことができることになつておるのであります。これができますると、実はプラント輸出等が相当活発になつて参るのであります。只今のところは、輸出入銀行は余り長期的にこれがやれなかつた。又向うへ持つて行つて向こうで投資をしたり、いろいろすることができなかつた等の事柄が昨年度の半ば頃までですか、相当多量にプラントその他のものが輸出されたにかかわらず、最近減つておる主たる原因であります。これが今後出て参りますれば、今持つておるぐらいの資金はじきに又使うことになります。そういうふうに考えまするので、ちよつと目先のところは今お話通りでございますけれども、これを以て輸出入銀行法の、或いは資金構成を変えるとか、或いは又他に転用するとかいう考え方は、今のところは実はいたしておりません。むしろ輸出入銀行に与えられておる使命を活発に遂行してもらいたい。その点で今本国会に、先の解散国会では衆議院のほうは通過いたしたのでございましたが、輸出入銀行法の改正の主として狙つておるところは、そういつたプラント輸出等に利便を与える、こういうことで、海外における長期の投資を狙つて法律の改正をお願いいたしておるような次第でございます。なお輸出入銀行につきましては、御承知のごとく本年三月、利息の点も普通七分、更に特殊なものについては、五分まで利下げをして、勉強して、貿易関係に働きをするようにというふうにもいたさせておるのでありまして、このところ少し貿易関係は不活発でございますけれども、これは私はそう長い現象ではない。特に例えて申しますると、南米のほうなどにつきましても、先般御承知の八千万ドルずつの相互の貿易の協定ができておる。なおそれは表面でありますが、そのほかにも内実の協定も若干できておるというような工合でございまして、一時的に御覧になると全くその通りでございまするが、併しそういう点もありますので、今回の財政投融資に当つては森さん御承知のように十億も二十億もどこに充てましたか、この分だけでは少しも割当をいたさなかつた次第でございます。
  185. 森八三一

    ○森八三一君 今新らしく輸出入銀行の業務の拡張に関する法案を提案しておるが、それが或立すれば、現在余裕金として日本銀行に預けられ、或いは食糧証券等を取得いたしております百数十億の金は十分消化せられて行くというような御説明でありますので、その通りに行くことを実は期待をいたしたのでありまするが、この銀行が創設せられました当時におきましても、勿論事業の内容には相違はございますが、この二百四十億でありましたかの資本金は非常に不足を生ずる、到底これだけの資金ではやり切れるものではないが、一応国家財政の都合もあるのでこの程度にしたのだというような御説明があり、一年たつたあとで経過を振返つて見てやはり今後は伸びて行くのだというような御説明があり、そうして結果におきましては、只今大臣もお認めになりましたように、政府のほうで御説明になつたこととは違つた、実は結論が出ておるのであります。今お話のようなことで今後は明るく進んで行けるということに実は期待を持ちたいのではありますが、置かれておる日本経済的な事情からいたしまして、必ずしも海外に投資をするという途が開かれたかと申しまして基本的に物価の相違しておる点を打開するというわけには、簡単に参りかねるのではないか、そういたしますると、そういうことは今後の問題として進めて行きたい希望は、これは万人ひとしく持つと思いますが、早急にその実績を収めるということは困難ではないか、といたしますれば、非常な期待を以てここに生れまする中小企業金融公庫のあの資金量では、非常に枯渇をいたしておりまする中小企業者を救うというわけには参りませんし、その中小企業者の困難を助けて行くということが、これ又輸出貿易に関連をする下請的な仕事を育成して行く、伸ばして行くという結果になりまして、そこを培かつて行くということが、延いて要請される輸出の振興を根本的にも直して行くことであるというようにも思われますので、これは一つそういうように輸出入銀行の業務範囲を拡大して行くということと併せて、当面眠つておる資金をそういうことが実現するまで眠らせておくというようなことでは如何かと思いますので、御考慮を願いたい。若し輸出入銀行のほうが御期待のように、計画のように事業が振興して参りますれば、その当面を切抜けて参りまするためには、借入制度も開かれておりますので、当面の対策は立とうと思うのでございます。幸いにそういうように進行して参りますれば、それに応ずる対策は立てることに法律はなつておりますので、措置を講じ、次回の議会等におきましてその根本的な措置を裏付けするというように考えて頂くことが、当面する住宅なり或いは中小企業者の困難に対処するゆえんであり、それはやがて輸出貿易の振興にも繋がつて来る、民生の安定に繋がつて来る、非常に当面する重要な課題を解決するということであると思われますので、十分一つその点について御考慮を願いたいと問います。  次にもう一つお伺いいたしたいのは、これは過日の衆議院の決議にもございました公務員諸君の夏季手当の問題であり、本院におきましても、六月分の暫定予算をきめまする場合に、その趣旨はとくと考慮、研究をすると大臣は答弁をされました。大臣がとくと研究、考慮るするとおつしやいましたことは、勿論これを実現するという約束をなさつたのではないことは十分了承しておるのでございますが、とくと考慮をするという、あの熱のこもつた御発言は、できるだけその実現が見られるように考えてみましようというような意思であつたと思いますので、多数の関係諸君は非常な期待を持つてつたと思います。で、それが今まだ実現をしておらんというわけで、甚だ残念なことでありまするが、いろいろの陳情なり、運動が巻き起つておる。一体我々はこういうようなことが起きないように、こういうようないろいろな陳情や運動が起きますることは、結局国の行政が遅滞することであり、延いて産業の発展を阻害することでありますので、こういうことが起きませんように、少くとも勧告であるとか、裁定であるとか、その結論は十分な説明がついて関係者も納得ができるという、これは呼び水でありますが、そういうような説明が与えられません、或いは関係者が十分に納得をして頂けんような場合には、仲裁とか、勧告とかいうようなものはこれはそのまま忠実に履行さるべきである。そうしませんというと、いつまでたつてもこういうような不祥なことがあとを断たんのじやないかということで、昭和二十七年度の予算の採決に当りもしても、このことを強く要請と申しまするか、注意を促すと申しまするか、希望を申上げてあつたのでありまするが、その後の事情は遺憾ながらそういう結果にはなつておりません。  更に公務員諸君の俸給上における号俸区分の問題につきましても、いろいろ不合理がある。これは早く是正すべきであるというようなことも、それぞれの委員会等においては十分政府に申上げておりますのに、このこともまだ十分取り運びがついておらんというような問題やら、近く国会及び政府に勧告せらるるであろう人事院の勧告も、現在から相当の、相当と申上げますると、これも解釈上いろいろな問題が起きると思いますが、或る程度の増額を勧告せられるというような状況でもある。或いはこれらの問題がここに相関連いたしまして、夏季手当の問題が巻き起つておると私は了承いたしておるのであります。そこで過日の衆議院の議決に対しましても、とくと考慮をするというように答弁をされておるのでありますが、その後数日の経過もあることでありまするが、とくと考慮をするというそのとくと考慮の結果は、現状どういうように進行いたしておりましようかを拝承いたしたいと思います。
  186. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 実はこの前の六月分の暫定予算をここでお願いします時分に、私もとくと考慮をする旨をお答え申上げまして、爾来何とかできんものかと思つていろいろとやつてみたのでございまするが、全く財政上の理由で何ともやる法がないということがわかつたので、この点非常に心を苦しめたような次第でございます。一昨日衆議院のほうの予算委員会で、この七月分の暫定予算通過後特に〇・二五の十二月十五日に支給すべき分の〇・五の中から〇・二五を繰上げ支給する途はないかと、こういうことで御決議があつたのであります。それで多数の委員のかたの御決議でもありましたので、更に考慮する。こういうことに実はお約束申上げた次第でございます。どういうふうに持つて行きまするか、実はなかなか容易ならん問題で、只今のところは財源が全然ございません。併し繰上げ支給が可能かどうかという問題につきましても、これは只今の七月分にもこれは見てございませんし、尤も御決議には七月の末、つまりこの本予算が通つたあとという意味でございましよう。そういうような関係もありまして七月の末、又は八月の初まりというような皆様の御決議でございましたが、この点については一つ私も更に本当に考えてみたい、かように考えておる次第でございます。(笑声)
  187. 森八三一

    ○森八三一君 只今の問題につきましては多数の公務員諸君なり関連する教職員の諸君も非常に期待をいたしておることであり、実情まさに何とかしなければならんということも只今の大臣のお話で当局も御承知のことでありますので、今度は特に真剣に、今までも勿論真剣にお考えつたことだと思いますが、今度は実現する方向へと相当誠意を持つて考慮を願うというようなことと拝承いたしまして、その結果を期待いたしたいと思います。  更に私食糧問題、肥料問題等につきましてもお伺いをいたしたいのでありまするが、時間の関係もありますので、農林大臣にただ一点だけお伺いをいたしたいと思うのです。それは六月分の暫定予算に関する質疑の際に、内田前農林大臣にかねがね農業関係者或いはその団体の諸君から要請されておりました重要農産物の価格安定の立法化をすべきではないかと、大臣はこの問題についてどういうようにお考えになつておるかというような意味の御質問を申上げましたときに、現在政府のほうで買上措置をいたしておりまする澱粉であるとか、北海道産の甜菜糖など重要な農産物については早急に価格安定対策を立法化したいという御意見の開陳がございました。これは恐らく新大臣も当時の速記録を御覧になつておると存じます。この問題に対しましてまだ国会にもそういうような具体的な法案の提案はありませんし、我々非常に心配をしておるのであります。関係者は前大臣の議会における答弁に対して、非常に期待を持つておるというわけでありまするが、その後の模様はどうなつておるのか、近く取り運びになりまするかどうか、新大臣の御所見をお伺いをいたしたいと思います。
  188. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) お答え申上げます。食糧増産を強く要請する上から行きましても、重要農産物の価格が著しく変動しないように、安定するようにいたしますことは、即ちそれ農家経済の安定を促して行くことでありますから、私といたしましても、重要農産物に対しましてはどうしてもこの価格安定の方策を強くとつて行く必要があると、個人としても全く同感でございますり前大臣がお答えせられております趣意は私も全然同感でございますが、只今関係当局と農林当局との間に折衝をいたしておりまして、今日只今この国会に法律案を出しますかどうか、そこまで私は実はまだはつきり言明をいたしかねますけれども、趣意といたしましては、又方針としましては私は御同様の線をとつて行きたいと考えておる次第でございます。
  189. 森八三一

    ○森八三一君 今申上げました農政関係につきましてはまだいろいろお伺いいたしたいし、只今の重要農産物の価格安定法の問題につきましても、この問題は恐らくもうすでに農林当局では検討が済んでおる問題であつて、ただ予算上大蔵省との関係で折衝をいたしておるという程度のことだと私は想像いたしております。その程度のことであるといたしますれば、現に申上げました澱粉及び甜菜糖等については買上げの措置も講ぜられておるので予算も出ております。ただそれを立法化するかどうかというだけの問題でございますので、これは予算的にも大した問題はない。ただ新らしい品目を追加するというところに一応の問題があろうと思うのであります。そういうような問題のあることについては、これはまあ十分国会の論議もあろうと思いますが、とにかくまあできておる、実行されておるものだけでも早く一つ安定せられるように措置されることが好ましいと思いますので、少くともこの国会に実現をせられますように配慮をされることを希望いたしまして、その他の問題につきましては、昭和二十八年度の本予算の審議の際に十分お伺いいたすことにいたしまして、私の質問はこれで終ります。
  190. 小林孝平

    小林孝平君 私は大蔵大臣に補給金政策についてお尋ねいたします。  大蔵大臣は財政演説で安易な補給金政策はとらないと言明されております。この点は我々も同感でございます。併し一万田日銀総裁が昨日京都で、何でもかんでも補給金はいけないと断定するのはどうかと思うというような談話を発表されておるのであります。  そこで大蔵大臣にお尋ねしたいのは、補給金と名の付くものはすべて安易と解しておられるのかどうか。安易でない補給金政策というものはあると思われるかどうかということをお尋ねします。
  191. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) これは補給金という意味が少し……例えば助成金とか補助金という意味で考えますれば、この種の安易な補給金とこういう意味でございますが、このほか例えばこの頃よく新聞に出ておる外貨割当等の問題がございます。そういうようなことは多少助成してもいいということになるのじやないかというような意味とか、特に外貨割当等にはそういう問題が相当ございますが、そういう広い意味でありますとか、或いは又直接ではございませんが、税制その他の措置によつて物を出やすく、やりやすくしてやるという程度の広い意味の補給金でありますれば、これはまあそう言えるのでありますが、いわゆる私が安易なと申しますのは助成金とか補助金とか言いまして金をやる、こういうやり方はこれは避くべきものである、こういうふうに考えておる次第でございます。
  192. 小林孝平

    小林孝平君 まあ広い意味に解釈いたしまして、若しも仮に安易でない補給金政策というものがありといたしますれば、それは大蔵大臣は採用してもいいとお考えになつておるのかどうかお伺いいたします。
  193. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 只今私が申上げましたような、例えば輸出商社に対して、ほかの商社と違つて特別の税制措置をとつてやるとか、或いは炭鉱その他のものに対して特別な税制措置を講じてやる、こういうことが仮に広い意味の補給という意味になりますれば、その程度のことは私は差支えないのじやないかと思いますが、私はいわゆる補給金と世間で言われておる、金で以て援助する、こういう形のものはこれは絶対に避くべきものであると私は考えておる次第でございます。
  194. 小林孝平

    小林孝平君 大蔵大臣は絶対避くべきものであるとはつきり言い切られたのでありますけれども、今後如何なる事態に至りましても、その方針を貫かれるのかどうかお伺いいたします。
  195. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 或いは言葉が少し過ぎたかも知れません。現在の段階においては絶対にと信じておりまするが、併し両三年、尤も私が両三年大蔵大臣をするかどうかわかりませんが、情勢が変つて参りまして、何らかの措置をとらばなけれならんときまでという意味でございましたらば、絶対にという言葉は避けます。現在の段階においては補給金制度はとるべきものでないと、かように固く信じております。
  196. 小林孝平

    小林孝平君 次は早場米奨励金について大蔵、農林両大臣にお尋ねいたします。早場米奨励金は端境期対策、それからこの早場米の集散地である積雪寒冷地帯の恵まれざる農民救済の意味を有する極めて重大なる制度でございます。前年度まではこの重要性を政府においてもみずから確認されまして、又現に今年度の予算において八十一億円計上されておるのであります。そこで当然今年度もこの予算に計上されてある金額は出ると思うのでありまするけれども、これは本当の念のためにお伺いいたします。
  197. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) お説の通りに、この統制を続けておる間は早場米に対する奨励金は必要と考えております。丁度お話になりましたごとく、本年の予算も八十一億円計上いたしてございます。これは前年度と同じ数量という見込でございまするが、数量如何によつては多少これは変るかも知れませんが、予算では前年度と同様の数量ということで八十一億円を計上してある次第でございます。
  198. 小林孝平

    小林孝平君 これはもう質問するまでもないのでございまするけれども念のため……、要するに前年度と同様の数量を買上げれば八十一億円出す、それより多くなれば又この金が殖える、こういうふうに了解していいものだと思うのでありまするけれども、念のためお尋ねいたします。
  199. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 只今の予算の範囲ではそういうことになつておりまするが、これはそのときに一つ又別に考えなければいかんのだろうと存じます。
  200. 小林孝平

    小林孝平君 別というのはどういう意味でございますか。先ほども政府の計画はすべて予算に明らかにされておる、こういうことでございますので、これは数量が同じであれば八十一億円出す、こういうふうに了解していいものかどうか。これは聞く必要がないのですけれども、念のためにお尋ねいたします。
  201. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 早場米供出の奨励金はたしか二百七十五万石でざいましたか、そういうことで組んでおると思います。これが変つて参りますれば勿論変つて来るわけでございまして、これにはこの金は食管会計に載つておるのでありまして、予備費も百億円あることでございますので、処置できると思つております。
  202. 小林孝平

    小林孝平君 ところが最近政府部内、特に自由党の政調会、この自由党の政調会は先般の内田農林大臣の辞任以来極めて政調会の意見というものが世間に強く、必要以上に強くとられておるのでありますので、それで政府部内、特に自由党の政調会内においてこの早場米奨励金の打切りが考えられているように伝えられて、このために新潟県とか或いはその他の早場米地帯においては非常に衝撃を受けているのです。これはどこからそういうことが出たかわかりませんけれども、ともかくこれらの地帯はてんやわんや、連日会議をやつたり陳情や莫大な経費と労力を費しているのであります。それで今政府がおつしやつたよう方針通りこの金が出るものだと思いますけれども、こういうことが伝わる以上、これがデマであるか或いはデマでないか、若しデマでありとすれば、政府はこの際打消しの声明なり或いは通牒を出される必要があると思います。この声明をお出しになるか或いは通牒を出されるか、この点をはつきりとお答えを願います。
  203. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 早場米奨励金の問題につきましては、只今大蔵大臣との問答の通りでありまして、今年度は前年度と同様の早場米奨励金を以て取扱つて参りまするように予算措置を講じておりますから、これを変更する考えは只今のところございません。どうぞそれで御了承願いたいと思います。
  204. 小林孝平

    小林孝平君 そういうことだろうと思うのでありまするけれども、今申上げたように、末端ではこれが徹底しないで、なかなか今申上げましたように、莫大な経費と労力を犠牲にして、この打切反対という会合をやつたり、陳情をやつたりいろいろやつておるのです。そこでこの際、政府としては親切に、これはデマであるという声明を出されても少しも不都合でないと思うのです。だから声明を出すか、通牒を出すかして、速かにこのデマを打消される必要があるのではないか、そこでどうされますか、伺いたいと思います。
  205. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 小林さんの御懸念御尤もだと思いますから、必要な措置はとらせるようにいたします。
  206. 小林孝平

    小林孝平君 次は闇米の問題でございまするけれども、今非常に問題になつております闇米の原因は、一体闇米の価格の値上りの原因は何であるかということを農林大臣にお尋ねいたします。
  207. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) お答えいたしますが、最近のこの東京を中心とします闇米の騰貴は承知いたしておりまして、必ずしも従来のような、例えばこの供給地が枯れて来たとか、端境期に入つて来たとかというような理由だけではないのじやないかと思われる節がございまして、取締当局とも連絡をいたして、原因のつき止めをいたしておりまするけれども、まだ的確にこれをつき止めることができないような状態でありますが、的確につき止めるようにいたしまして、一時的な現象なのか、長期的な現象なのか、それによりまして対策を講じなければならんと思います。ただこの食糧の絶対不足から、需給の逼迫から来ておりますものとは一概に断じ難い。一方この麦の価格等は殆んど横ばいの状態を続けているようでありますから、原因を至急取調べまして、対策を講じて参りたいと思うのであります。
  208. 小林孝平

    小林孝平君 この原因が判明いたしましたときは、当委員会にその結果を報告して頂けると思いますけれども、念のためにお伺いします。
  209. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) それはそういうふうにいたします。
  210. 小林孝平

    小林孝平君 然らば、今調査中であるようでございますが、一体闇値は幾らくらい値上りしているということをお答え願いたい。これは事務当局からで結構です。
  211. 渡部伍良

    政府委員(渡部伍良君) 東京近辺で大体二百円前後だと思います。
  212. 小林孝平

    小林孝平君 これは闇米の値上りは、東京だけではないのでありまして、かなり広汎囲に亘つておるのでありますが、それは大体どのくらいになつておるか。又東京の値上りは今二百円というようにお答えなつたけれども、私たちの調査いたしておる範囲では二百二十円に現在すでになつております。それで、もう少し広範囲にどういうふうになつておるかということをお答え願いたい。
  213. 渡部伍良

    政府委員(渡部伍良君) 二百十円、二百二十円といつたときもあります。この二、三日前ちよつと下つたことがありますが、やはり二百円を中心として上下しておる、その他の地方ではまあ例年春先きから夏にかけて二十円、三十円と闇米が上つて来ておりますが、大阪、名古屋では東京ほどの値上りはないようであります。
  214. 小林孝平

    小林孝平君 この闇米は現在相当の値上りをしているのに、只今のところ、何らこれに対して対策が立てられておらないのであります。そこで、農業大臣は、今原因を調査中と言われますけれども、原因がはつきりしなければ対策は打たれない。手が打たれない。そこで、原因がわからなければいつまで待つていても手が打たれたいと思う。その点をお尋ねいたします。
  215. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 現行の食糧制度の下におきましては、配給を要すべき米につきましては十分の備えがございますから、その心配はないものと思います。御承知のように、配給以外のものにつきましては、代替食糧を以てこれをやつて頂くという建前になつております。従いまして、その代替食糧も確保できないというような事態には、先ほど申しまするように全然ございません。無論これは端境期としての一般的な現象もございますから、それで決してそうやつて頂きたいとは申しませんけれども、消費者側におかれましても共に御協力を頂かなければ、闇の供給をするということは、これはできないと思いますから、私は消費者側におきましても、一般的現象に対しても、又現行食糧制度につきましても、十分御協力を頂きたい。食糧全体が逼迫するというような憂いは全然ないということも御安心を願いたいと思うのであります。
  216. 小林孝平

    小林孝平君 この問題は、理窟はどうあろうとも、ともかく主婦が非常に悩んでおる問題でありますので、そこで、政府はこの際この値上り防止のために増配をする意思があるか、又増配ができなければ、繰上げ配給をする意思はないかどうか、これをお尋ねいたします。
  217. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) この米を増配するという考えは、只今のところはございません。これは今後の問題であろうと思います。ただ併し、精麦等につきましては、その必要に応じまして、適切な措置をとつて参るつもりでおります。
  218. 小林孝平

    小林孝平君 繰上げ配給。
  219. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 只今のところは、繰上げ配給は研究はいたしておりますけれども、他面、それはこの原因を突き止めますのと合せて研究をしております。只今その考えは持つておりません。
  220. 小林孝平

    小林孝平君 そういたしますと、只今のところは増配する意思はないけれども、これは今後の問題としてやられるかもわからん、こういうことに大体了解していいかどうか。繰上げ配給についても、今後必要があればやられる場合もあるというふうに了解してよろしうございますか。
  221. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 小林さんに私の申上げたのが誤解を抱かしめるようなふうに申上げておるようでありますから……、増配をする考えはございません。繰上げ配給ということは、一部から意見も出ておるのでございますけれども、そのことはこの原因を突き止めますのと合せて研究をいたして参りたいと思います。
  222. 小林孝平

    小林孝平君 今政府は、予算では外米の輸入削減の方針をとつておられるのであります。この米を麦に代えるという方針政府はとられつあるのでありまするけれども、私はこの際むしろこの闇米の値上り防止の対策のため一に、むしろ外米を入れるという対策を立てるべきでないか、こういうふうに考えるのでありますが、その点如何ですか。
  223. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 御尤もなお尋ねだと思いますが、今日の管理制度下におきまする今年度の需給関係を見通しまして、九十万トンの外米を確保いたしますれば、所要の食糧配給、食糧を確保することに十分だという見通しの下に九十万トンという算定をいたしておる次第であります。
  224. 小林孝平

    小林孝平君 これは昨年も大体そういうことで計画を立てられたのに、現在こういう闇米の市場の値上りが生じておるわけです。そこで、私は、今も計画ではそれでいいというけれども、現在こういうことになつておるから、この外米を麦に切換えるというのをやめて、外米を入れるという方針をとるべきでないかということをお尋ねいたしておる。こういうことでなければ、これから研究して政府対策を立てられるというけれども、増配はしない、繰上げ配給はまあ研究をするけれども、大体困難らしい、外米の輸入は余りしない、削減する、こういうことになれば、政府はいろいろ対策考えられても、打つ手が殆んどなくなるではないか、せめてこれぐらいが唯一の手ではないかと思つて御親切に申上げた。
  225. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 配給食糧が不足をするということでございますれば、その通りでございます。これはもう内地米が足りなければ配給量はどうしても確保しなければなりませんのでございますから、それは外米で不足を補なつて行かなければなりませんけれども、九十万トンの輸入を確保いたしますれば、今年度の配給食糧は十分賄い得るという見通しの下にいたしておるわけでございますから、それはそういうふうに御承知を願いたいと思います。
  226. 小林孝平

    小林孝平君 次に麦の値段について大蔵大臣にお尋ねいたします。この度の新麦の価格の決定によりまして、一般会計から特別会計へいくら繰入れられることになるのでありますか、これは事務当局から御説明願いたい。
  227. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 今回の麦価の決定に当つて、大体昨年の買入数量と同じといたしますれば、十五億ぐらいの損になるかと考えます。併し実は買入数量がきまりませんと、どれだけの損になるかということがわからんことは御承知通りであります。従つて、まだどれだけを今後買入れるか。つまり買入れる、反対を言えば売渡しを受入れるかということがわかりませんので、それで一般会計にはこれを計上してございません。そのきまつたときに食管会計でこれをやつてつたらよかろうと、かように考えておる次第でございます。
  228. 小林孝平

    小林孝平君 昨年は十億円のが今回同じ数量であれば十五億円、こういうことになつて来るようでありますが、そうすれば、これは一種の麦の二重価格制を政府はとられておると、こういうふうに私は考えるのでありますけれども、大蔵大臣は、これは二重価格制でないとお考えになりますか。
  229. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) これはそれによる行政府の見方如何にもよりますが、二重価格とも言えますし、行政費は全部、そうして売るほうなら価格は現行通りでありまして、買入価格よりは少しでも差があるからそう言えんこともないと思いますが、まあ正直に申したら二重価格と、こう言うほうが実際だろうと思います。
  230. 小林孝平

    小林孝平君 先般大蔵大臣にしばしば二重価格制をどういうふうにお考えになるか。いいのか悪いのか、これは前は悪いと思つたけれども、最近の情勢によつて今後の研究問題だというようなことで、非常にあいまいに答えられておつたのでありまするが、突如今回二重価格制というものを政府ははつきりと実施され、これを二重価格制であるとお認めになつたわけであります。これは今後現吉田政府の重大なる食糧政策の転換であると私たちは考えるのであります。これによりまして、吉田政府食糧の自由販売という政策を転換されて、飽くまでも統制を継続されるという方針をとられるということを今回はつきりと声明されたものだろうと思うのであります。従つて、これは今後政府はこの吉田内閣といたしましては、第一次吉田内閣以来、米の自由販売というのは自由党の金看板でもあり、唯一の重大政策であつたのであります。それをここで転換されたのでありますから、末端の農民は飽くまでも自由党は自由販売を速やかにやると、先ほども首相はそういうふうにおつしやつたのでありますが、いつの間にか二重価格制を実施し、而もこれを恒久的にやる重大なる政策の転換をしたのでありますから、末端の農民にこれを周知徹底させる必要があると思うのであります。これは政治的の責任であろうと思うのでありますが、この点大蔵大臣並びに農林大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  231. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) ちよつと私の申上げ方が悪かつたかと存じますが、私は御承知のように麦というものは自由価格になつており、需給の関係で価格がきまるのでありますから、その点から見ますると、去年よりは四億数千万円、約五億ほど損失が殖えておるけれども、まあ二重価格という言葉がそういう意義ならば二重価格でないと又申上げなければいかんのじやないかと思います。むしろ常識的な言葉で言えば、つまりこれは自由な価格になつておるのに、それが需給関係によつてきまつて行くのに価格が二重になるじやないか、そう言われればそうだなあと思つてお答えしたのでありまして、政策の大きな転換と言うならこれは二重価格でないと申すよりほかないと思います。恐らく農林大臣から更に答弁があると思いますが、麦が自由価格になつて需給関係であの価格がきまるのでありますから、私自身はそういうように考えるのであります。(「苦しい苦しい」と呼ぶ者あり)
  232. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 大蔵大臣からお答えいたしました通りでございますから、さように御了承願います。
  233. 小林孝平

    小林孝平君 大蔵大臣はこの二重価格制というものは今非常に重大なる政治問題になつておる。これは自由党と改進党が政策協定をやる唯一のポイントになつておるのでありまして、二重価格制がどういうものであるかということは十分御承知だろうと思う。それが私がちよつと言つただけで二重価格になつたりならんだりするようでは、これは極めて怪しいと言わざるを得ない。これは自由党が吉田総理大臣以下保安隊が軍隊でないと言うのと全く同様であつて、詭弁であつてごまかしであろうと思う。それならどれだけの場合は二重価格制である。どれだけ財政負担がある場合は二重価格制でない場合か、二重価格制でないということを御答弁願いたい。
  234. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 私はまあ、最も的確に言えば、二重価格とは高く買つて安く売るというなら二重価格ではつきりします。そうでなくて買うことによつて損はしまするけれども、価格は別に動いていないのでありますから、これは需給の関係で変えて行くのだから、その点から別に強弁でなく、二重価格でないとこう申上げざるを得ないと思つております。
  235. 小林孝平

    小林孝平君 そういうことは答弁に私はならんと思うのであつて、これは保安隊の問題と同じで、木村法務総裁が鷺を烏と言いくるめるのは困難であると、こういうふうに閣僚室で言われたのと揆を一にしておるのでありまして、これ以上は議論になりますから申上げませんが、これは何ほど自由党の政策が一大転換したということは少し農政のかるものなら誰も認めるところであろうと存じて、これ以上お尋ねしないことにいたします。  次に国際小麦協定について農林大臣にお尋ねいたします。この年度変りで小麦の輸入は五十万トンから百万トンになりまして、更に二十万トン追加の見込みがあると伝えられておるのであります。これは事実でございましようか。
  236. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 昨年五十万トンでありましたのを百万トン買入れるという協定はできておりますけれども、その上に二十万トンを買うということはまだきまつておりません。
  237. 小林孝平

    小林孝平君 次に小麦は今国際的に値下りの傾向にあるのでございます。そういうときにこの協定に加入しているのが日本にとつて不利であるか有利であるか。どういうふうにお考えになりますか。
  238. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 小麦輸入相当しなければならないという事情でございますから、従つて小麦協定による比較的安い価格で以て輸入をするということは、私は結構なことだと思います。
  239. 小林孝平

    小林孝平君 相当量買うからこの協定に入つているのが有利である、こういうふうに御答弁のようでございまするけれども、小麦の輸入国の買う最も大手筋である英国は、今回の買付けの申込みをしなかつたのであります。最も大手筋の英国は申込みをしておらんのであります。これは世界的に小麦価格の低落の現況からいたしまして不利と考えまして私は一応英国は申込みをしなかつたのだろうと思うのであります。このような問題は一体経済外交と同じで、相手かたの出方を見て、そうして日本態度をきめるべきであつて、加入したり加入しなかつたり非常に柔軟性を以てこれに対処すべきが当然であろうと思うのでありまして、現にこういうふうな一方的な世界の情勢を判断しないでやつておるのでありまするから、日本世界の過剰の麦の芥捨場であるというようなことが今言われておるのであります。そういうふうにこういうことが言われておる、そうして英国の出方はこうだ、そこで先ほどおつしやつたのは、こういう情勢をお考えになつてもまだ有利とお考えになりますかどうか。
  240. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) お答え申上げます。小麦協定につきましては御承知のように輸入国の義務といたしましては、最低価格の一ドル五十五セントによつて輸入の義務がございますので、現在の市価から考えまして、又将来考えましてもここ一、二、三年の間に最低価格を下廻るというふうな憂えはないかと存ぜられますので、それ以上におきましては有利だと思います。
  241. 小林孝平

    小林孝平君 これは先ほど申落したのでありまするけれども、朝鮮の休戦が成功いたしますれば一層この小麦価格は下落するだろうと思うのであります。そういうような情勢をも加味してねおそういうことを御主張されるのかどうか、この点をお伺いしたいのでありまするけれども、まあ時間もございませんのでこの程度にいたしまして、最後に極く簡単に肥料問題についてお尋ねいたします。  先ほどの総理に対する質問で、私は総理大臣に対しまして、先般の衆議院の予算総会におきまして井上良二君が肥料の生産費調査を法制化するということを言明されておるのであります。それで私はこの言明は総理として、これは政治的にこの言明が生きているかどうかということをお尋ねしたのであります。ところが総理の答弁は極めてあいまいであつて、自分の目の前で答弁した場合は各大臣の言明は責任を持つけれども、陰で答弁をした場合は責任を持たんというような極めてあいまいな答弁であつたのであります。  そこでこれは私の農林大臣といたしまして、この首相の答弁に極めてこれはあいまいであつて困るのでありまするけれども、それはともかくとして、新農林大臣はこの前内田農相の言明をどういうふうにお考えになるか。今後これを続けておやりになる意思があるかどうかという点お尋ねしたい。
  242. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 御承知のように、只今肥料価格につきましては安定帯価格を設定して措置を講じておるわけでございますが、この妥当な安定帯価格を設定して参ります上から見ましても、生産費の、生産コストの調査がなければ私は完全だと言えないと思うのであります。そういう意味からいたしまして前大臣が申しておられますように生産コストの調査はできるような措置を講じたいという考えでおります。
  243. 小林孝平

    小林孝平君 その具体的の結論はいつ頃出るお見込ですか。
  244. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) お答えいたしますが、御承知のように肥料問題につきましては肥料対策委員会のほうに諮問をいたしまして、今日まで御審議を願つて来ておるわけであります。七月の三日に委員会が開催せられる予定であるようでございますから、この七月三日の委員会の結論に期待をいたしておる次第でございまして、それまでは委員会の審議をできるだけ一つ進めて頂くようにしたい、その上で一つ処理いたしたいと思います。
  245. 小林孝平

    小林孝平君 その法制化に対する具体的の要するに政府対策というものは、大体本国会中に間に合うものであるかどうかということを最後に一つお尋ねいたします。
  246. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) これは非常に重大な問題でございますから、私としましては何とかこの国会で間に合うようにしなければならんじやないかという考えで今日おります。
  247. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 小麦輸入の問題について、簡単に一つ関連質問いたしたいのです。それはMSAの協定と関連がある問題ですが、最近のロンドン・エコノミストで見ますと、イギリスはMSAの附帯条項によつていわゆる転売が困難である。あの条項によつて最近綿花とか小麦が豊作で非常に暴落する。併しながらあのMSA協定の附帯条項によつて、非常に市価が安くなるにかかわらず高く綿花とか小麦を輸入せざるを得ない、こういうことになつているのでイギリスはこの点非常に不利である、こういうことを最近のロンドン・エコノミストで論じているのです。この点MSAの援助の問題と関連してそういう点を研究しておられるかどうか。過剰物資の輸入について、MSAと関連して政府はそういう点を研究しておられるかどうか、この点について伺つておきたいと思うのです。
  248. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) お答え申上げます。我々といたしましては、小麦の輸入につきましては国際小麦協定の数量と、そのほかには自由麦として普通の取引において輸入することになつておりまして、現在MSAとの関係考慮いたしております。
  249. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 MSAとの関連を研究しておるか。
  250. 前谷重夫

    政府委員(前谷重夫君) お答え申し上げますが、現在のところまだ研究いたしておりません。
  251. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 研究して御答弁願いたい、大きい問題ですよ。
  252. 青木一男

    委員長青木一男君) 本日はこれにて散会いたします。明日十時より開会いたします。    午後五時十八分散会