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1953-08-05 第16回国会 参議院 本会議 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年八月五日(水曜日)    午前十一時三分開議     ―――――――――――――  議事日程 第三十三号   昭和二十八年八月五日    午前十時開議  第一 電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案内閣提出衆議院送付)(前会の続)  第二 公職選挙法の一部を改正する法律案両院協議会成案衆議院送付)(協議委員議長報告)  第三 戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第四 らい予防法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第五 法人税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第六 所得税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第七 租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第八 刑法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第九 私的独占禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)     ―――――――――――――
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ─────・─────
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案内閣提出衆議院送付)(前会の続)を議題といたします。
  4. 河井彌八

    議長河井彌八君) 本案に対し質疑通告がございます。順次発言を許します。吉田法晴君。
  5. 吉田法晴

    吉田法晴君 通産大臣出席を願います。
  6. 河井彌八

    議長河井彌八君) 吉田君に申上げますが、内閣総理大臣は後刻出席いたします。その際にその御質疑を願います。なお通商産業大臣病気のために本日は出席ができないということであります。吉田君の御登壇を求めます。    〔「そういう状態で審議ができるか」と呼ぶ者あり〕
  7. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは通産大臣はいつ出席になりますか。両大臣出席があるまでその質問は留保しなければなりませんが。(「労働委員会に一回も総理大臣が出ないで審議ができるか」「議会の延びた責任者じやないか」と呼ぶ者あり)
  8. 河井彌八

    議長河井彌八君) もう一度申します。通商産業大臣は本日は病気のために出席できませんという通知が参つております。
  9. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは、委員会において、労働大臣通産省との意見食い違い等もあつて、今日に至つておりますが、通産大臣答弁が今日得られないとするならば、これはその点に関する質疑は続けることはできませんが、如何ようにお取計らいになりますか。伺いたいと思います。(「答弁者がいないと質問はできません」「もう少し筋のある態勢を整えてもらいたい」「休憩々々」と呼ぶ者あり)
  10. 河井彌八

    議長河井彌八君) 吉田君に申しますが、吉田君の御質疑がありますれば、政府は適当のときにおきまして答弁するであろうと、議長は、さように考えております。
  11. 吉田法晴

    吉田法晴君 本日の本会議において関係大臣答弁を得て審議を進めるということになつておりますが、答弁が本日得られないということであるならば、この本会議質疑を始めるということも、これは時間的に延びざるを得ません。なお又、この会議を延ばすということであるならば了承いたしますけれども、その点について明快な御答弁をお願いしたい。(「休憩々々」と呼ぶ者あり)
  12. 河井彌八

    議長河井彌八君) 吉田君に申しますが、只今出席しておりまする国務大臣に対しまして吉田君の御質疑をなされましたならば如何でありましようか。
  13. 吉田法晴

    吉田法晴君 私どもはこの質問について、時間と三回の登壇という制約を受けております。各省間の、各大臣間の意見食い違いについては、或いは総理が御出席になつて内閣全体の意見を述べられるか、そうでなければ大臣である責任者が出て御答弁にならなければ、権限関係の点は質疑が行えないと思います。(「その通り」と呼ぶ者あり)若し、通産大臣が出られるか出られないか、出られないとするならば、いつまで待つたらいいかという点について、明確になりますまで、暫時休憩せられんことをお願いいたします。(「休憩々々」「異議なし」「賛成」「反対」と呼ぶ者あり)
  14. 河井彌八

    議長河井彌八君) 吉田君に申上げます。先にも申述べました通り内閣総理大臣は後刻出席いたしまするので、その際、吉田君がそれを御質疑になりましたならば、御満足を得るであろうと考えております。    〔藤田進君「通産大臣答弁関連して発言を求めます」と述ぶ〕
  15. 河井彌八

    議長河井彌八君) 吉田君の登壇を望みます。    〔藤田進君「岡野通産大臣は、この前も本会議質問をして答弁はしないでいる」と述ぶ〕
  16. 河井彌八

    議長河井彌八君) 議長発言を許さない議員の発言は許しません。(「その通り」と呼ぶ者あり)
  17. 吉田法晴

    吉田法晴君 通産大臣は本日御出席困難だということでございます。そういたしますと、本日の質疑において通産大臣答弁或いは見解を承わることができないと判断する以外にございません。(「政務次官がいるじやないか」「政務次官でわかるか」と呼ぶ者あり)そういたしますと、各省責任ある答弁は、これは大臣以外に願えないと思うのであります。先ほど申しますように、私ども登壇の回数も制限せられておりますので、私ども通産大臣意見を聞くことが困難であるとするならば、その部分については、それでは他日この会議の続きとして、或いは明日でも御答弁を頂けるということでありますならば了承いたしますけれども、列席もせられない、本日答弁が得られないということでありますならば、これは私ども、その点が明らかになりますまで質疑を始めることが困難でございます。
  18. 河井彌八

    議長河井彌八君) 吉田君に申上げます。議長が本日議院運営小委員会において了承いたしておりまするところによりますれば、吉田君は、総理大臣と、労働大臣法務大臣に対する御質疑をなさるということに了承をいたしております。それで議長は、吉田君が只今の政府の内部における答弁食い違いについて御質疑をなさるという必要がおありになるという事柄は、後刻、吉田総理出席なさいました時におきまして御質疑になりましたならば、それで御了解を得ることと議長了解をいたしております。(「その通り」と呼ぶ者あり)それ故に、吉田君は、この際、御質疑をなさいましたほうがよかろうと、かように考えておるのであります。(「了解」と呼ぶ者あり)
  19. 吉田法晴

    吉田法晴君 私は通産大臣答弁を求めておらぬよう議長から御説明がございましたけれども、それは事実と相違いたします。この点は私からも文書を以て要求をいたしましたし、それに基いたことだと思いますが、通産省からも事前に質疑内容等について問合せに参つております。その点は、これは明らかでございます。それからなお、先般来の委員会或いは本会議等における通産大臣に対する質問も残つております。そういう点を考えますと、通産大臣が本日御出席がなくて質問を続けますことは、これは不可能であるという点は御了承頂けると思うのであります。或いは休憩をしてその点について明確な日程をお組み頂く、言い換えますならば、この質疑を他日に延ばして答弁をせられる機会がありますかどうかを明らかにして、質疑に入りたいと思います。
  20. 河井彌八

    議長河井彌八君) 吉田君が飽くまでさような御主張をなさるならば、議長は、すでに小委員会の決定に基きまして本日の会議を進行しなければならぬことになつておりまするから、この会議休憩する考えを持つておりません。(「了解」と呼ぶ者あり)それ故に、次の質疑順位にあるお方の発言を許そうと思います。(「順位はちやんと小委員会できまつているじやないか」と呼ぶ者あり)
  21. 吉田法晴

    吉田法晴君 議運の小委員会等においても、通産大臣出席問題については、私は出ないでよろしいという了承を与えたように聞いておりません。なお、通産大臣答弁が或いは本会議において或いは委員会において留保せられておるという事実は、これは私がここで初めて申上げておることであります。そこで若し議運の小委員会等との解釈食い違いがございますならば、小委員会等でお質しを願いたいと思います。そういう明らかでないところがございましたら、暫時休憩をして、その見通しについて、或いは通産大臣出席答弁がいつ得られるかを明らかにして頂いて、質疑に入りたいとお願いをしておるわけであります。
  22. 河井彌八

    議長河井彌八君) 吉田君に申上げます。今日の議院運営小委員会におきましては、通商産業大臣病気のため本日は出席ができないということの通告がありまして、議院運営小委員会はこれを了承したと議長は認めております。(「登壇々々」「このままで休憩」と呼ぶ者あり)
  23. 吉田法晴

    吉田法晴君 ここに議運の小委員の諸君がおりますが、今、伺つたのでありますが、通産大臣病気であるということは報告があつたそうでありますが、通産大臣答弁或いは出席を抜きにしてこの会議を進めるということには了承を与えておるとは私ども聞きません。了承を与えられておるとは、私、聞いていないのであります。(「通産大臣衆議院の本会議出席しているじやないか」と呼ぶ者あり)それは先ほども申上げましたように、本会議委員会における通産大臣答弁が留保せられておる、この本会議で、このスト規制法が通るまでに通産大臣から答弁せられなければならん責任が残つております。(「そうだ」と呼ぶ者あり)それを無視して或いは頬被りをしてこのまま参りますということは、私ども労働委員として、その間の事情を知り、或いはまじめに審議をして参り、本会議においてその点等を質さなければならんと考えております者としては、これは堪えがたいところであります。(「暫時休憩」「小委員会再開」「答弁者がいないで質問しろと言つても仕方がない」「通産大臣は全然答弁していないんだ」「衆議院の本会議出席しているじやないですか」「岡崎不信任の時に出ているじやないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  24. 河井彌八

    議長河井彌八君) 議事の都合によりまして、暫時休憩いたします。    午前十一時三十一分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十九分開議
  25. 河井彌八

    議長河井彌八君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。  電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案議題といたしまして、質疑を続行いたします。吉田法晴君の質疑を許します。吉田法晴君。    〔吉田法晴登壇拍手
  26. 吉田法晴

    吉田法晴君 電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律について質問をいたすのでありますが、総理出席が、ございませんし、後刻ということでありますが、通産大臣も御出席がまだございませんので、総理大臣を初め各関係大臣関連いたします質問は後刻に譲りまして今出席をしておられます労働大臣或いは法務大臣その他に対します質問をいたしたいと思うのであります。  委員会審議を通じまして労働大臣と他の省との間に意見食い違いが今まで委員会に現われて参りました。労働大臣法務省出席者の間には、従来の電源職場における、電気事業職場における労務提供の点について、労働大臣は、今までも違法であつたと言い、或いは不当であつたと言い、法務省のほうにおいては、それは判例等もございますし、必ずしも違法であると言えないという答弁がございました。これらの点についてここで両大臣から明らかにそれぞれ所見を承わりたいと思うのであります。  なお、労働大臣説明によりますと、従来も問題となつてつた電源職場労務の不提供或いは保安要員引揚げ等についても不当であるということは、行政的には考えておる、そういう解釈であつたが、これが社会通念が成熟したので、この法律を作る、こういうことでありますけれども、或いは判例に徴しましても、或いは法の解釈からいたしましても、この法律の二条、三条において拒否をいたしました行為が、全部違法であるとされて来なかつたことは事実であります。そこで、この法案に関響いたしまして従来いろいろ質疑をいたして参つたのでありますが、前国会におきまして当時の斎藤労政局長は、仲裁問題に関連をいたしまして、これは或いは仲裁という点が考えられたということを裏書するのかも知れませんが、強制仲裁は、国が調停を上廻る部分について保障をしてやらなければならんから、そういうことはやらないのだ、こういうことを述べられております。これは調停或いは仲裁ということに関連しての労働省の所見であると考えるのであります。或いは労組法労調法関連して、これらの行動如何ように考えられたかということについて委員会で争つて参りましたが、労働組合法或いは労調法が制定せられました際の提案理由、当時の質疑或いは答弁等を検討いたしますというと、労組法一条二項については、これは暴力行為が否定せられるというのであつて、当時の国務大臣木村篤太郎君の答弁によれば、要するに一条一項に掲げられた労働者の地位の向上、経済の興隆に寄与すること、この目的を達成するだめになしたる正当なるものは、これはその行為が多少不当に該当しても刑法では処罰しないということになつておりますと、明らかに答弁をいたしております。  なお、三十六条につきましては、当時の政府委員吉武惠市君から、「三十六条二項の安全保持人命に対する保安維持でございます。それらについては鉱山その他につきまして規則がありまして、そういうものに違反してはならないことになつておる」と答弁し、重ねて中山太一君の質問に答えて、「熔鉱炉等はこれに入らない」と明答をせられております。言い換えますならば、この法律関連をいたして参りますけれども熔鉱炉或いは施設或いは財産、こういうものは三十六条二項の対象として保護するのではないということは、明らかにこれは立案当時言われて参りました。或いはその後、労働大臣官房総務課長と称する富樫君の書かれました労働法規疑義解説全書にも、三十六条第二項が、これは人命に直接関係のあることを規定するのであつて人命保持規定であつて人命に直接影響を及ぼさないよう施設であれば、たとえその停廃が当該企業維持を困難に陥れるようなものであつても、争議行為としてできるのですか」という問に対して、「その通りであります」と答えておるのであります。これは自問自答式解説書でありますが、答えて参つております。そうしますと、明らかに、従来或いは電気事業職場労務付提供或いは鉱山保安法五条、三十条或いは保安規則の四十七条等に規定せられる行為のほかは合法であると考えられて参つたのが、伴来の法の説明であつたことは間違いがございません。それならば、この法律社会通念云々ということであるけれども、従来の行政解釈を、ここに、この法律に盛り込もうというのであつて法関係としては、ここに新らしくこの法律規定するものではない。或いは速記録或いは解説書等を引いて明らかにし、明らかにここに創設的に規定せんとするものであるかどうかという点について答弁を求めるものであります。  更に、これは、争議行為方法の担制に関する法律ということが書いてございますけれども争議行為方法制限する、制限するという言葉は斎藤労政局長も使つておりますが、制限を重ねて参りまするならば、争議権というものがどこに残るのか。争議行為方法規制に関する法律という題目それ自身争議権を否定するものであろことを、制限するものであることを、ごまかさんがために、かようなあいまいな表現を使つたものであるというじとは明らかだと考えるのでありますが、(拍手)この点についての答弁を求めるものであります。  更に、この法律には罰則がございませんが、罰則がないということは、この法律解釈法規であつて、違反の場合には、それぞれ或いは鉱山保安法であるとか或いは公共事業令であるとか、或いは民事、刑事その他の法律云々ということを言われましたが、それならば、或いは端的な意図は、曾つてこの壇上から法務大臣は、威力業務妨害の発動の可能であることを、昨年の電産、炭労争議の際に言われたのでありますけれども、この法律によつて、今後、電産炭労争議行為を、或いは威力業務妨害罪によつて、或いは暴力行為取締に関する法規等、どんどん刑罰法規を適用して行くつもりなのかどうか。或いは鉱山保安法或いは公共事業令等を活用するというのであるならば、それは公共事業令或いは鉱山保安法に任せればいいことであります。或いは鉱山保安法はその施行が通産省に任されております。所管の問題についてはあとで答弁を求めることにいたしますけれども行政法であるというならば、或いは鉱山保安法のごとき警察法であるというならば、これは、かかる法律を別に制定をする必要はない。鉱山保安法等を以て十分に足りるのであります。なお、更に、かかる法律を必要とする理由について明白に答弁を願いたいと思うのであります。  更に、この法律解釈して参りまする場合に、従来、労組法一条によつて、その当時の答弁の中にございますけれども、或いは多少不当と考えられるようなことでも、或いは大勢の人間が面会を求め、或いは交渉をするというようなことが行われても、それは刑法所定構成要件に該当しないものであるという答弁がなされておりますけれども、小さな或いは器物毀棄であるとか、或いは未遂罪処罰は、各刑法の本条に規定がなければ、この処罰をなし得ないということであるけれども、この法律運営に当つて労働大臣或いは法務大臣は、一条二項の立法当時の精神を踏みにじつて処罰して行く所存であるかどうか。具体的に承わりたいと思うのであります。  更に、附則の二項でございますが、三年の限時立法ということになつておりますが、これは、本法案労調法三十六条よりも拡大されておる、或いは公共事業令鉱山保安法によつて経営者の或いは鉱業権者責任を越えて、労働者労働の義務を押付けようとし、そこに憲法苦役禁止規定に違反するという疑問が起つて参るのでありますけれども、これらの公共事業令或いは鉱山保安法が定めており従来解釈されて参つた以上に範囲を拡げようとするものであるからでありましようか。この法律が三年たつたのちに、法関係はどうなるのか。従来の労組法或いは労調法或いは鉱山保安法公共事業令等解釈によるならば、相当、合法として認められて参つた行動行為が、或いは労務の不提供であるとか、或いは鉱山保安法の問題にしましても、保安規則四十七条以外は、これは明らかに合法でありますが、それらはこの法律によつて初めてここに不法或いは非合法と考えられるならば、法律がなくなつた三年後においては如何なる関係に立つのか。或いは、この法律によつてそれを不法とする既成事実を据えようとするのが、真の狙いかとも考えられるのでありますが、今までこの法律制度前において合法と考えられたもの、この法律において不法と考えられるもの、この法律が三年後になくなつたといたしますならば、その三年後の、法律失効後の効果について、如何ように考えておられるのか、承わりたいと思うのであります。これは委員会において梶原委員からも指摘せられたところでありますけれども、これが国会において修正されたというならば別であります。衆議院修正案政府の案として、ここに出して参つておるのでありますから、政府見解と、その責任とを追究しなければなりませんけれども、三年たつてから或いは国会の議決を求めなければならない云々という前例のない法文の規定がしてございますけれども、これは本来常識的に考えて、三年を経過したときはその効力を失うという一条を入れておけば、それで十分であるはずであります。国会自主制を尊重せず、行政権の意向を、この法律案自身にもそうでありますけれども、三年後においても国会を指図するがごとき、国会に対する行政権の優位をなお確保しようという意図であるかどうか。この点についてお伺いをいたしておきたいと思うのであります。  なお、各条文について、或いは「重大な」とか「重要な」とか或いは「正常な」といつたよう表現があり、この法律が拡大解釈され或いは濫用される危険性があることは、先般来、本議場においても指摘されて参りましたけれども、この具体的な内容を示し、この法律が濫用せられないという保証があるかどうか。かかる表現を以てするならば、これは曾つて治安維持法ように、或いは行政法であるという点から曾つて治安警察法のごとき濫用が必然となり、労働組合運動制限せられて参るということは明らかでありますが、かくては、所有権と比べて労働争議権を不当に抑圧し、憲法の二十八条を蹂躪するものであると考えられるが、この点についての両大臣所見を伺うものであります。(拍手)    〔国務大臣小坂善太郎登壇拍手
  27. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 吉田君にお答えいたします。  電源職場労務提供につきまして、労働大臣或いは法務大臣その他に食い違いがあると思うけれども、どうであるかということでございまするが、電源職場におきましても、電気供給の停廃、電気の正常な供給に直接障害を与えるよう労務の不提供は、従来とも社会通念上妥当ならざるものと考えられていたのでありまするが、特に昨年の争議の経験に鑑み、かかる社会通念上許されざる争議行為範囲を明確にする必要が痛感せられるに至つたと考えられまするので、本法案を提案するに至つたものであります。法務大臣の申しまする趣旨もここにあるものでありまして、その間、何ら答弁食い違いはないと存じます。  それから第二の点でありまするが、従来、労組法一条第二項、労調法三十六条に触れる行為以外は、すべて合法であるという解釈をとつたことは、政府はないのであります。(「とつているじやないか」と呼ぶ者あり)例えば、生産管理が違法なることは政府の一貫した解釈でありまして、最高裁判所も又認めるところであります。昨年の炭労争議におきまして、保安放棄に対するところの準備指令が出まして、これに対して政府の行なつた声明の中にも、「あえて労調法三十六条を待つまでもなく」と言つているのであります。法に明文で禁止した以外のことはすべて正当な争議行為であるというよう解釈をとつている人はないと考えすす。本法も又、解釈上、当然、不当なるものの範囲を確認するものでありまして、解釈法規と言うべき性質を持つたものと考えます。(「答弁が百八十度転換しているぞ」と呼ぶ者あり)  更に、争議行為の余地をなくするもので、規制ではなくて、この法案はストライキの行為方法規制に対する法律案ということであるけれども、実は制限である、こういう御質問でございました。それに関しまして御答弁いたしまするが、本法案におきましては、第二条によりまして、電気の正常な供給を停止する行為、その他電気の正常な供給に直接障害を生ぜしむる行為禁止しているのでありまして、従つて間接障害を与えるに過ぎないものは争議行為として行えるものであります。又、第三条におきまして、いわゆる保安放棄等行為が禁ぜられているのに過ぎず、普通の争議行為は何ら禁止しておらないのであります。  以上要しまするに、本法案は、社会通念上、正当ならざる社会通念の(「社会通念をはつきりしろ」と呼ぶ者あり)争議行為方法範囲を明らかにするという趣旨でありまして、何ら争議権の剥奪ということではないのであります。  更に、本法案に何故に罰則を付けないかという御趣旨がありましたが、本法案は、争議行為方法規制につきまして、争議行為としてでも正当でないものの範囲を明らかにするものでありまして本法案の第二条、第三奏に該当する争議行為方法につきましては、労組法一条第二項によりまして、刑法三十五条の適用がありませんので、違法性の阻却がなく、旧公共事業令鉱山保安法等によつて処罰されることになりまするので、本法案罰則を付ける必要がないのであります。この点、例えば労調法三十六条と同様であります。  更に、このスト規制法、ここに御審議を頂いておりまするスト規制法公共事業令及び鉱山保安法との関係について言及されたのでありまするが、本法案と旧公共事業令との関係につきましては、旧公共事業令第八十五条で、正当な事由がないのに電気供給を取扱わず又は不当なる取扱をしたときは罰則が科せられることになつておりまするが、争議行為による場合、正当な事由になるかどうかということに関して、その正当性の限界について疑問を持つ向きがあるのでありまするから、これが本法案第二条で明確にされているというわけであります。鉱山保安法と本法案との関係につきましては、鉱山保安法所定の業務といえども争議行為中は或る程度停廃せられることはこれは止むを得ないことでありまして、正当な争議行為の限度である限りは、これによつて鉱山保安法罰則の適用から免責されるわけであります。本法案は、この争議行為としてでも停廃を許されざる行為範囲を明確にしたものでありまするから、第三条違反の争議行為がありますれば、鉱山保安法上の罰則の適用について免責を受けないことが明らかになるわけであります。電気、石炭両事業とも、政府としては、本法案所定の行為のごときは、社会通念上当然許されざるところと考えるのでありますが、異論の向きもありますから、この際これを明確にしようと、こういうわけであります。  更に、この三年の限時法とした理由とその効果ということについて御質問がございましたが、元来この法案は、今までも申して参りましたように、こうした争議行為方法違法性を確認するものでありまするから、三年後にかかる争議行為方法が正当になるというわけではないのであります、併し、三年の間に、この法律の下に、健全なる労使の慣行、良識の成熟を期待しておるのでありまして、これが三年の限時法とした理由であります。  以上を以て御答弁といたします。(拍手)    〔国務大臣犬養健君登壇拍手
  28. 犬養健

    国務大臣(犬養健君) 吉田議員にお答え申上げます。  只今労働大臣からお答えがありましたように、本法規は、現行法の違法の枠の不明確な点がありますので、これを明確化したという解釈の法規でございます。(「拡大だ」と呼ぶ者あり)更に、この法律ができたからと申して、法務当局が違法性の枠を拡げるというようなことがありましたならば、これは誠によろしくないことであると考えております。吉田議員の御心配の威力業務妨害のことでありますが、これは従来も厳密に個々の具体的な事実を調査いたしまして、起訴の止むを得ない場合には、その前後において、労働組合のかた、その他関係者には、具体的に私又は代理の者から説明を申上げて、勿論、組合と意見の相違を来たすことがありますけれども、当局としては、万止むを得ない事情はこうであるということを申上げるようにいたしておりまして、法の適用を厳正ならしめるということは最善を尽しておるつもりでございますから、今後も、この方針には、この法律ができたからといつて変ることはないという心持でおるのでありますが、これを一つ御了承願いたいと思います。  次に、重複を避けて申上げます。或いは順序が違うかも知れませんが、労働組合法一条第二項の精神をこれからも尊重するかどうか、こういう御質問でございますが、これは勿論でありまして、この趣旨は、やはり本法ができたからといつて動いてはならないと思います。この法律は今御指摘のありましたように三年と限つてある、この点は変じやないかということでございましたが、もともとこの本肇は、只今も述べましたように、争議行為のあります違法性範囲を確認するために作つたものでありまして、三年経つ間に、この法律に盛つてあります精神が一般に労働組合に徹底し、特に法律を用いなくても、違法、合法の限界が明らかになつてもらいたいものと希望し、又なるものと期待しておるのでありまして、(「違うく」と呼ぶ者あり)その趣旨において期限を限定したのであります。もう一つの理由は、第十五国会において衆議院のなされました議決を尊重する意味もあつたのでありましてこの二つの理由から三年間と区切ることに法務省も賛成をいたしたわけであります。  それから、憲法第二十八条のことにつきまして御指摘がありましたが、憲法二十八条は勤労者の団結権と団体交渉権を認めておることは、確かにその通りであります。併し、憲法に認められておりますすべての他の基本的権利と同様に、この権利も無制限的又は絶対的なものではないのでございまして、しばしば委員会でも申上げましたように、憲法第十二条、第十三条で、いわゆる公共の福祉との調和において考えらるべきものであると当局は考えておる次第でございます。(拍手)     ―――――――――――――
  29. 河井彌八

    議長河井彌八君) 上條愛一君。    〔上條愛一君登壇拍手
  30. 上條愛一

    ○上條愛一君 私は第一に労働大臣にお尋ねを申上げます。  労働省は労使関係の調整が主要任務であることは申すまでもないことであります。労使関係の基本は、労働組合法労働基準法に明記せられてありまして、労使は対等の立場に立つて労働条件の交渉をなすべしといたされておるのであります。労働者経営者と対等の立場に立つためには、憲法第二十八条に規定されておりまする、労働者が団結をし団体行動をするの権利があつて、初めて労働者経営者と対等の立場に立ち得ることは、労働大臣の熟知せられるところであると考えるのであります。然るに本法案は、この労働者の権利に対しまして重大なる制限を加えんといたしておるのであります。労働大臣は、労働委員会審議におきまして、この点に対して、電気産業において、電源スト、停電ストを違法なりとしてこれを禁止いたしましても、電気産業の労働組合には、なお事務ストあり、検針ストあり、集金ストが存在しておるから、労使対等の立場に微塵も支障を来たすものではないと言うておらるるのであります。併しながら、電気事業におきましては、労働大臣も御承知のごとく、発電と送電が電気産業の主体であります。その他のことは、この発電と送電を補助する補助的業務に過ぎないことは明瞭であります。その電気産業の労働組合に対しまして電源ストと停電ストを禁止するということになりまするならば、これは、例えて申しますれば、牛から角を奪い、狼から牙を奪つたものと言わざるを得ないのであります。これで夙て電気産業の労働組合が労使対等の地位を確保する上において微塵も損するところがないということは、これは明らかに労働大臣の詭弁でなければならないと考えざるを得ないのであります。(拍手経営者が正宗の名刀を手挟んで坐つておるのに対しまして、労働者は木に銀紙を貼つた刀を以てこれに対するといたしまするならば、刀を抜く抜かないは別問題といたしまして、経営者は抜けば切れるという正宗の名刀を以て相対しておるのに対しまして、労働者には抜いても切れないという、木に銀紙を貼つた刀を持たして交渉をいたすといたしますたらば、これは明らかに労働者の力は無力であつて経営者は無限の威圧を有しておるということは、これは明瞭であると言わなければならないのであります。  第二に、労働大臣委員会において、電気産業におけるストライキは、労使とも犠牲が少くて、国民である第三者に甚大なる損害を与えるものであるから、労働者のストを禁止しても差支えがないと言うております。言い換えるならば、経営者電気ストや停電ストによつては何らの経済的の打撃を受けないのである。であるからして、電産労働者は、電源ストや停電ストをやる代りに、事務ストや、検針ストや、集金ストをやるほうが威力を発揮すると、こう言うておるのであります。私はこの点について小坂労働大臣にお尋ねをいたすのでありまするが、今日の電気産業の経営者は、これは、労働者と同じく、日本の公益事業でありまして、公共の福祉に重大なる影響を及ぼす経営者であることは明瞭であります。これらの経営者は、自分が経済的の打撃さえこうむらなければ、如何に国民に対して甚大なる生活の脅威を与えても平気でおつてよろしいかどうかという問題であります。私は、労働者がストライキをやる場合に、公共の福祉に影響がある、殊に電気産業のごときはそれが甚だしいということは熟知いたしております。その場合に、ストライキをやつて、公共の福祉、国民の生活に重大な脅威を与えるからこそ、経営者もその責任を負うて、かようなストライキが続かないように、そのようなストライキの原因を除くために、労働条件の公正を期し、労働者の待遇を改善するという責任があるということは、当然ではないかと言わなければならないのであります。私は、公益事業が公共の福祉に重大なる関係があればこそ、経営者も又同等なる責任を持つて、公共の福祉に甚大なる損害を与えないように、労働組合に対しましては、労働条件の適正と争議を未然に防ぐところの方法を講ずるということが、当然なるその責任であると言わたければならないのであります。すでに官公吏から団体交渉権と争議権を剥奪いたしまする際においては、政府は人事院の設置をいたしまして、人事院の勧告によりまして労働条件の適正化を図るの方途を講じたのであります。又、公共企業体から争議権を剥奪いたしまする場合におきましては、仲裁制度を設けまして、仲裁委員会の公正なる判定によつて労働条件の適正化を図るの方途を講ずるに至つたのであります。然るに労働大臣は、本法案の起草に当りまして、電産の労働者に対して争議権の剥奪をし、争議権に対して甚大なる制限を加えるの処置を講じながら、これに代るべき、これを補うべき何らの救済規定を設けなかつたということは、果して公正なる処置であるということができるかどうかということであります。従来、労働省はサービス省と申して参りました。我々は必ずしも労働省に対してサービス省たることを期待はいたしませんけれども、少くとも労働省は、労働者の権利を保障して、労使の調整を図つて、公正なる労使関係の調整を図るという任務を完遂しなければならないのでありまして、断じて労働者の弾圧省であつてはならないと考えるのでありますが、(「その通りと」呼ぶ者あり、拍手労働大臣は如何なるお考えを以てこの立法をせられたかということを御質問を申上げたいのであります。  時間がありませんので、法務大臣に対しまして、一、二の御質問を申上げたい。すでに吉田同僚議員から御質問を申上げましたので、重複を避けたいと思いまするが、私のお尋ねいたしたい第一点は、本法案が独立立法といたしまして制定せられますのに、何らの処罰規定を設けておらないということが妥当であるかどうかという問題であります。只今労働大臣からも、これは、第二条の違反に対しては旧公共事業令、第三条の違反に対しては鉱山保安法、その他に対しましては労組法一条第二項の正当ならざる行為として、刑法第三十五条の免責規定を除外するという、それらの方法によつてこれを処罰するということであるのでありまするが、この法律は、現存しておりまするところの諸法令によりまして、完全に本法の違反が処罰できるようになつておるかどうか。単独立法といたしまして、この法案はこのような措置によつて完璧を期しておるのかどうかという問題でありまして、その処罰方法を異にし、処罰内容を異にしておるのでありまするが、このような単独立法が果して立法としての体系を成しておるかどうかという問題であります。  第二にお尋ねいたしたい問題は、鉱山保安法によりまして、本法第三条の違反の場合におきましては、保安業務に従事するところの労働者職場放棄その他ができないということになつておりまするけれども、併し、若し保安業務に従事いたしまするところの労働者諸君が、その職場を放棄するにあらずして……労働組合がストライキをいたしておるのでありまするから、保安業務に従事しておる労働者諸君が出動しないということになりまするならば、これは果して本法案に違反するものなりや否や、又、出勤しないという場合に、就業命令を出すところの権利があるかどうかという問題であります。  いま一つは、昨日も申上げましたけれども、本法の実施に当りまして、保安要員範囲及び定員をどうしてきめるかという問題であります。この点についても本法案には明確を欠いておるのでありまして従来の慣例によりますれば、労使の協議によりまして行われておつたのでありまするが、ストライキの場合においては、そのよう方法を講ずることが困難なる場合があり得ると考えるのでありまするが、そのような場合に、本法の実施に当りまして、保安要員範囲と定員をどうしてきめるかという問題であります。  以上の点につきまして法務大臣の御所見を承わわたいと存ずるのであります。(拍手)    〔国務大臣小坂善太郎登壇拍手
  31. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 上條議員にお答えいたします。  御質問の主たる点は、本法案に救済措置を規定しないことは公正を失するのではないかという点を基調として論旨を進められたように思いますから、それに副いましてお答えを申上げます。  本法案は、しばしば申上げましたように、従来、社会通念上、不当乃至妥当ならざる行為範囲を明確にしたのに過ぎないのでありますから、争議行為禁止するものでありません。これによりまして労使間の対等の地位がそこなわれるものではないと存じます。従いまして救済措置を講ずるというようなことは考えないのでありまするが、電気事業におきましては、経営者は、単にロックアウトができないのみならず、旧公共事業令によりまして種々の制限があり、本法第二条によりまして労働者が一方的に不利になるということはないと考えておるのであります、上條氏御自身も、電気を消すというストライキは少しもかまわないという御意見ではないと存じます。外国におきましても、電気事業が、多くの場合、停電ストなどを行わないでも対等の交渉を行なつておる点に鑑みましても、この点は明瞭であろうかと考えておるのであります。  なお、憲法第二十八条におきまする労働者の団結権、団体交渉権及び団体行動する権利というものは、十四条を受けておるものでありまするが、さりとて、この団体行動権の中の一つでありまするところのストライキ権というものは、私は、これは尊重すべきものであるけれども万能ではないと考えておるのであります。(「尊重していないよ」と呼ぶ者あり)  なお、十九世紀におきまする労使の関係と、二十世紀、一九五〇年以後におきますところの労使関係というものは又変化しておるのでありまして、労使それぞれの間において、社会的責任というものが、社会的機構の変化と共に人間の考えも変つておるのではないかと思うのであります。電気事業者は公益性が高いということは御指摘の通りでございまするが、先ほども申上げましたように、公益性が高いから、それ故に旧公共事業令によるところの監督を受けておりまするし、又、経営者自身労働者の福祉を招来するように、経営者としての責任を果すべく努め、そうして労使間の相互理解を深めて、ストライキなど、特に矯激な方法を用いずして問題を解決するという方向に向うことに、相互に努力すべきではないかと考えておるのであります。やはり労使はそれぞれの責任におきまして、社会に対して生産或いはサービスを通じて貢献すべき社会的責任があると考えておりまするので、労働省といたしましても、これを十全ならしめるように、各種の角度から労働者に対してサービスいたしたいと考えておるのであります。(「何言つているんだ」「日経連援護省だ」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣犬養健君登壇拍手
  32. 犬養健

    国務大臣(犬養健君) 上條議員にお答え申上げます。  最初に私に対する御質問は、本法案は単独法でありながら処罰規定がなく、現行法の処罰規定をばらくに使つているというようなことは、立法技術としてもおかしいじやないか、こういうような御趣旨であつたと思います。先ほど申上げましたように、この法案は、電気事業石炭鉱業における争議行為の正当性の範囲を明らかにする、逆の言葉で申しまするならば、違法性の枠について従来とかく解釈が不明確でありましたのを今度明確にするという規定でありまして従つて違法性を拡大するとか、罰則をこの機会に拡げるということではございませんで、従つて罰則規定は現行法でよろしいということを、当時、法制局とも打合せまして、これは立法技術としても差支えないと考えている次第でございます。  次に、ストライキ中に保安要員が出勤しない場合についての御質疑がございました。原則的には、労働者が就業するということは、雇傭関係に基く義務でありまして、ストライキが始まつたから特に出勤命令をわざわざ出すというようなものではないと思いますが、実際の場合になりますと、ストライキ中には保安要員範囲について経営者側と労働組合が取極めをするものと思います。従つて保安要員範囲については、その都度きめるということもありますので、必要な保安要員が出動しない場合には、出勤を促すということは考えられると思うのであります。本法案第三条に規定しているような保安業務を停廃させる争議行為は許されないことになつておりますから、この意味では、仕事を休む、言い換えれば労務提供を拒否するという争議行為も違法となるものであると存じます。詳しくは、これは個々の具体的な場合に、私どものほうとしては取扱つて、その場合の性質を取調べるということになると思います。(拍手)     ―――――――――――――
  33. 河井彌八

    議長河井彌八君) 藤田進君。    〔藤田進登壇拍手
  34. 藤田進

    藤田進君 私は、通産大臣、犬養法務大臣及び小坂労働大臣に対して質問するものであります。  私の質問の主なる点は、先ほど吉田議員より質問をいたしました事項に関連をいたしまして更に明確にして頂きたいというふうに考えておりまするので、さよう御承知おき願いたいと思います。  その第一点でありまするが、これについてはそれぞれ三大臣に御答弁を頂きたいのでございます。犬養法相は比較的正直に従来答えられておりますので、どうかこの際、法務大臣がとつて来られた方針を、急角度に本議場で曲げることなく、そのまま御答弁を期待いたしております。(「その通り」と呼ぶ者あり)労働大臣の本法案に対する御答弁と、その他三大臣の御答弁について、強いてここに私がその食い違つているという点を明確にいたしますると、労働大臣の御答弁は、「第二条に書かれておりますように、直接に障害を与えるものは、これは従来違法と考えて参りました。その違法であることを今回明確にするだけであつて、何ら新らしく制限するものでも何でもない、」こう言われております。犬養法務大臣はこれと同様なお答えが先ほど来あつたように思うのであります。この段階においては成るほど食い違いがないというふうにお考えでありましようが、その次に私は掘り下げたところをここに指摘いたしまするので、この点に対して御答弁を願いたいのであります。即ち、労働大臣の言う「直接障害を与えるものは」という、このことは、電源職場におきまして、不作為の、自分は、そういう労働力に対する単価、値段では、一時的にせよ、契約の中断をして、経営者労働力を提供しない、こういう言わばウォーキング・アウト、電源職場におけるウォーキング・アウト、これは直接電気に対する障害を与えるというものではないと考えておりまするが、これについて労働大臣は、「その行為も、不作為も、これは第二条に該当し、今後は違法になるのだ。無論、従来も違法と考えて来たんだ、」こう言われておるのであります。この点につきましては、法務大臣並びにその指揮下にありまする最高検を初め一連の方々は、「みずから持つている労働力を売らない、提供しない、これは本来の争議行為であるから、発電所においても、特に電気産業であるからということで、特にこれが否定されるという筋合いのものではない。ただ、そういう不作為のウォーキング・アウトをする、働かないということを、この域を超えて、スヰツチを切つたり、或いは発電機を会社が止めるなというのに止めたり、これが直接的なことであつていけないのだ。」こう言われておるのであります。従いまして、発電所の電気労働者は、ウォーキング・アウトというものが許されているという、この第二条の御答弁と、それも許されていないという御答弁の違いがあるのであります。このことは、法務大臣の下に、現在幾多の公判闘争を電産がやつておる模様でありますが、この中においてもこの法務大臣の主張は貫かれております。更に、通産大臣にこの点について明確にいたしますると、遺憾ながら、通産大臣の御出席が極めて短時間でございました関係上、政府委員答弁を聞いております。これは、十五国会以来、衆議院においての速記録を調査いたしますと、一貫した通産大臣の、又この代理である政府委員の御答弁でありまするが、これによりますると、「従来、停電スト、電源スト、これについて、政府では違法である、特に停電ストについては違法であると考えていたけれども、たまたま北海道或いは福岡、更に最近におきましては、神奈川、各地方裁判所で、そういつた停電スト等のこの行為が、これが合法である。検事の敗訴になりまして、電産側の勝訴になつております。更にこれは検事控訴によつて、すべておのおの、北海道、九州に至るすべてが、高等裁判所に控訴され、高等裁判所においては、これ又第一審を支持いたしまして無罪の判決、合法なりという判決を下しておる。いわゆるこういう判決の事例にも徴して、その後、政府の内部においては、政府部内においては、合法か非合法であるかについて今日確定していないのだ。不確定である。」こういう趣旨の御答弁通産省政府委員よりあつたのであります。こう相成りますると、本スト禁止法が不幸にして誤まつて通過いたしましたとするならば、一体、政府答弁のどれが正しいか。明白にならなければ、後刻、総理大臣において、これを総括的にお答えを願いたいと考えておりますが、この三者三様の、而も重要なるポイントについての明確な食い違いがあるのであります。法を守つている労働大臣通りにするのか。法務大臣通りに守るのか。通産大臣ように、未だ政府部内では不明確である、違法とは考えていなかつたのであるのを新らしく制限されたという心がまえで、この法を守るのか。こういつた問題に逢着するのであります。この点について明確にして頂きたいのでございます。  更に、第二点についてでございまするが、三年の時限を附してある。この点について、もつと率直に而も法律論として筋の通つた答弁を期待いたしたいのであります。これれついては、法務、労働大臣の御答弁を煩わしたいと考えます。これは、本法は簡単でございます、三条でありまするので。お読みになつているかたはすでにお気付きであろうと思うのであります。この附則を見ますると、極めて丁重に取扱われ、三年という期限を附しているけれども、この附則を読みますると、三年を経過いたしましたのちはこの法律はその効力を失う。そしてその附則の第三項には、「前項の規定によりこの法律がその効力を失つたときは、政府は、速やかにその旨を公示しなければならない」、その失わしめるかどうかについては国会の議決を経ることに附則はなつております。第二項に、通常時限法と称せられるものについては、ここに論議を申し述べ質問ようとは思いません。併し今までの御解釈と只今の御答弁によりますると、「従来違法であつたものを三年を限つて明確にするんだ。なぜなぢば、三カ年間に労使間の良識に訴えて、成るほどそれは違法であつたのかということがわかつて頂けるであろうから、三年あとは規定していないんだ。無論三年後においても、この趣旨、この内容は有効である」と、只今労働大臣答弁したと思いますが、附則には明らかに無効であると書いてあります。私はこの点に関して率直に感じまするのに、第十五国会におきまして、政府の原案にはなかつたものが、改進党の考え方は明らかに、怪しからんから、これは一つ懲罰的な意味で、三カ年間の懲役とはおつしやつておりませんが、三カ年間差しとめよう制限ようという趣旨から、三カ年間が出て来たと考えております。我々の折衝した限りではそのように聞かされております。この修正案三カ年というものを政府原案にくつつけて、説明は旧態依然たる政府原案と同じ説明で貫かれようとするところに、そもそも誤謬があるように思うのであります。従いまして、この附則の無効という点と只今の御答弁は、これ又明確に相反することになつておりまするので、この点を明確にして頂きたいと思います。  更に第三点でございまするが、時間がございませんので……、これは三大臣について今までお尋ねいたしまして、それぞれ明確なる御答弁はなしに、はたと答弁に当惑されている点であります。三大臣ともそうであります。それは、本法案の最後に理由として掲げられておりまするところは「公共の福祉を擁護するため、」これがただ一つの理由として挙げられております。三行書かれておる中に、「公共の福祉を擁護するため」と言いながら、実際に委員会におきまして審議を進めて参りましたその過程においては、具体的に指摘いたしますと、例えば、今日、炭鉱におきましては、極めて多数の鉱山が休廃坑されている。経営者の独自の意思に基いて廃坑され、労働者職場を失つております。保安要員の引揚げによつて国家資源を潰滅するとか滅失するとかいうことは、経営者によつては堂々となされておる。この結果は、保定要員の引揚げによつて、若し保安要員を引揚げたならば、若し事故が起つたならば、起きると同様なことが、現実に今日、北海道におきましても五十致カ所、常磐、北九州、それぞれ多数の炭坑が潰れつつある、このことは公共の福祉に何ら関係がなしに。然るに、労働者が、僅か小さい一つの鉱山において、保安要員を引揚げようとする場合が仮にあるとするならば、それは公共の福祉に反することだ、このように言われているのであります。この点について、経営者がなす場合には公共の福祉に関係がなしに、労働者の場合であれば公共の福祉に関係があるという、この点を、(拍手)是非とも三大臣から明確にして頂きたいのであります。この点は再三御答弁委員会において求めても、御答弁がなかつたり、あつても、経営者が自分が持つている財産権を処分するのだから、それは止むを得ないというような、憲法二十八条と二十九条の関連については上下の関係にはないという答弁をしながら、この私の質問に対しては、あたかも憲法二十九条の財産権に憲法二十八条の労働権が、その隷属下にある、二十九条の下に二十八条の労働権があるということを明確に意思表示されているものと解しているのであります。どうかこの点について、逡巡することなく、明確に法律論としても是非ともお伺いいたしたいのであります。(拍手)  更に労働大臣にのみお伺いいたしたいのは、各国の事例に徴しても、電気産業等においては、ストライキを、電気が停まるようなストライキをするようなことはないし、又その制度もないように言われて参つております。果して、日本のように、石炭もその通り電気におきましても、今日全く私企業として、電気料金を見られてもわかるように、政治力の薄い九州、四国、或いは北海道等、順次三倍、三分の一というよう電気料金の差さえ付いている。而も又、利潤のないところに開発もないし、利潤のないところに石炭鉱業の経営もないし、こういう手放しの状態に一方ではなつていて、而も本法のごとく労働者の側だけは規制をするという、こういうやり方、こういう法制をとつている国がありとするならば、ここに、何という国が、日本と全く、或いは至極似ている、類似している国だという点を御例示願いたいのであります。  以上につきまして御答弁を煩わしたいと考えます。(拍手)    〔国務大臣小坂善太郎登壇拍手
  35. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 藤田君にお答えいたします。  例の食い違いとあなたのおつしやいまする電源職場労務提供の問題につきましては、私の意見は先ほど吉田右にお答えした通りでありまして、電源職場の場合においては、電気の正常な供給に直接障害を与えるよう労務提供は、従来とも社会通念上妥当ならさるものと考えられていたのでありますが、昨年の争議の経験に鑑みまして、こういう社会通念上許されざる争議行為を明確にする必要が痛感されるに至りましたので、この法案を提案した次第であります。これは同じことをお聞きになれば同じことを答えるより仕方がないものと考えます。  なお、三年後の問題でありますが、これも先ほど触れたのでございますか、本法案解釈法規であり、或いは確認法規でありまするから、本法所定の行為が正当と解せられることは三年伐におきましてもない、こういう見解であります。(「進化論か」と呼ぶ者あり)政府としましては、三年間に良識か成熟して、よき慣行ができましてこうした争議行為が行われないようになることを期待いたしておるのであります。  なお附則の三項に規定しているところは、この法律法律としての形式的努力について申しておるのでありまして、本法案に該当するよう行為の当、不当ということが問題になるという意味ではないのであります。  更に、この休山の場合についていろいろ言われましたのでありますが、これについては私も委員会で同じことを申しておりまするが、休山という問題は、これは経済政策の問題でありまするが、さもなくぱ健全に運営されているという鉱山の場合について考えてみますと、他の条件が違つたら問題になりません。他の条件において等しき限りの場合において問題にしてみますると、健全に運営されているものが、ストライキの行為中、保安要員の引揚げというよう行為によりまして石炭鉱山という重要な資源の滅失を来たさす、そして、そのために公共の福祉に著しき損害を与えるというようなことは、これは社会通念上許されないと、こういうのであります。  なお、保安要員の引揚げや、電気の場合の停電スト、電源スト或いは給電指令所の職場放棄、こういうようなものについて、これは争議行為としてでも正当でないと考えていることは、これは世界中の常識であると考える。一方において争議行為としてであれば何をしてもよいという考え方があるので、こうした争議行為は御遠慮を願いたいというのが、この法案趣旨でありすす。(拍手、「答弁になつておらん」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣岡野清豪君登壇拍手〕    〔「御苦労さん」と呼ぶ者あり〕
  36. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。  藤田さんにつきましては、この前、答弁を保留いたしております。それにつきましてお答え申上げます。  その当時、電力行政、石炭行政の根本方針について、殊に電力については再編成が行われておつて、需給調整、地域差の問題が大きく関係しているのであるから、スト規制についても労働者のみに圧力を加えるのは不当じやないか。こういうような御趣旨でございましたが、電気事業につきましては、種々論議の結果、一昨年五月、再編成が実施せられまして、現在の九電力会社が発足いたしたことは御承知の通りであります。これを前提としまして、行政運営の基本方針としましては、電気事業の純民間企業としての私益性と、国家経済及び国民生活に密接な関係を有する基礎産業としての公共性との調整を眼目としておる次第でございまして、その原則は将来ともやはり堅持して参りたいと存じております。  なお電力需給調整につきましては、現下の電力事情の下において電力の合理的配分を行う見地から万全を期している次第でございます。水火力調整金などの制度、更に地域差調整の問題につきましては、今撤廃すべしというような御議論もあるようでございますが、電気事業再編成に伴う過渡的な影響を避ける意味で設けているものでございまして、制度そのものについては将来或いは撤廃の方向に向うべき性質のものとも考えますが、現在の情勢では、著しい経済事情の変動がない限り、現状程度でやつて行きたいと、こう考えております。  それから、藤田さんの第二点の答弁食い違いという点、それから又、昨年の十二月八日に前小笠原通産大臣が行いました答弁、即ち電産ストのケース・バイ・ケースによつて公共事業令第八十五条に違反になつた場合もあるというようなことがありますが、なお「電源スト、停電スト、給電指令所のスト等は違法であるという社会通念が昨年のストの経過に従つて成熟しました」云々、こういう労働省の見解には、私は全く同意見でございます。  その次には、ストで労働者ばかり足手を縛つて、そうして各事業会社がどんどん潰れて行つて労働者はどうなつておるかという点、こういうことは、私は比較すべき性格が違うと思います。と申しますことは、一面におきましては公共の福祉のためにこうしなければならないということ。それからもう一つのほうは、少くとも私企業でございますので、いろいろの事情がございまして、我々といたしましては、できるだけ各業者は倒れないで労働者がいつまでも就職して行くことは望ましいことでありまするけれども、少くとも自由競争の今日の世の中におきまして、或いは又埋蔵量が少くなつたとか、或いは非常にコストが思うようでなくなつて、どうしてもそれでは採算がとれて行けないということも出て来たりして、いろいろな事情がございまして、そういうようなことでやめて行くのを、どうも政府といたしましても如何ともしがたい。併し、それかと申しまして、我々は、もう皆さん御承知の通り、今度九州の水害対策、水害で各炭鉱が非常に困つている、又、殊に中小炭鉱が多く困つている。それに対しては異例な行政措置によりましてこれを助けているのですから、我々としましてはできる限りの努力はいたしておりますけれども、自由競争の原則によつて起きておりますところの結果につきまして、できるだけそういうことのないようにはいたしますが、今のところ我々といたしましては、これを両方比較するということは観点が違うのであります。こう考えます。    〔国務大臣犬養健君登壇拍手
  37. 犬養健

    国務大臣(犬養健君) 藤田議員にお答え申上げます。  最初に、三年間の問題でございますが、本法案を三年間に限つたことについて一体どういう考えを持つてつたのか、卒直に述べろということでありますが、先ほど申上げましたように、もともとこの法案は、争議行為違法性の枠が、私どもの立場から見れば、不明確になつておるきらいがありますので、それを明確化する解釈規定でございます。こういうふうに法務省はとつておるのであります。従つて、この三年間にこの本法の精神が行き渡りまして労働組合その他におかれましても、法を用いなくても、合法、違法との区別がはつきりするということになれば、別に強いてこれが要ることではなくなるのでありまして、我々といたしましては、その三年間にそういう事態になれかしと期待しているということでございます。この点は御承知願いたいと思います。法律がそれでは三年たてば効力を失うという規定をすればどうなるか。法律としては効力を失うのでありますが、その法律趣旨は全然逆になるとか或いは現行法規の解釈が異なつて来るとかいうふうに私どもは考えておりませんし、個々の違法行為についても、かように一貫した態度で行きたいと考えております。さよう御承知願いたいと思うのであります。  それから、労務提供拒否と申しますか、職場放棄と言いますか、藤田さんはウォーキング・アウトとおつしやつたが、この点についてお答えいたしたいと思います。  私はしばく、御承知のように一般論といたしましては、労務提供の拒否は労働争議権の中に入ると申しておるのでございます。(「その通り」と呼ぶ者あり)電気に関しましては、電気の正常な供給を阻害する行為は違法になる。又、阻害すべき行為というのは、判決例もありますように、可能性或いは蓋然性がある行為も含まれている。こういう趣旨でしばしば委員会でも答弁申上げて来たわけでございます。そこで、発電所では、電気の正常な供給を阻害しない、直接関係のない行為、この間、委員会におきましては、「通常の水門の場合とか或いは庶務の場合などは関係がない。経営者労働者関係であつて、一般の電気供給関係がないので、これは違法にならない」。こういうふうに例を挙げて申上げたつもりでございます。そこで一般論といたしましては、電気の正常な供給を阻害するようなスヰツチ・オフは違法になるのであります。法務省といたしましては、個々の具体的な場合について、犯意阻却があるかないか、一つ一つについて厳重に丁重に調べたいと考えております。この点が或いは言葉が行き違いになつておるのではないかと存じます。  それから廃坑の問題、これは重要資源の問題としましても、勤労者の勤労意欲の問題としましても、私も重大だと思います。併し、これは鉱業法や何かに関係する問題でありまして、従つて鉱業政策の問題でございますから、私、決して軽い問題とは重々思つておりませんが、本法案即ちストライキの違法性範囲をきめるこの問題と別個に深く考えたいと存じております。(拍手)     ―――――――――――――
  38. 河井彌八

    議長河井彌八君) 赤松常子君。    〔赤松常子君登壇拍手
  39. 赤松常子

    ○赤松常子君 私は、日本社会党を代表いたしまして、本法案に対し国民の納得の行かない疑問点が多くございますので、この際、小坂労働大臣並びに犬養法務大臣に対し質問を申上げ、誠意ある御答弁をお願いいたしたいと存じます。  今日この時、電気及び石炭に関係する労働者のみならず、六百万の組織労働者及びその家族、又一般勤労大衆は、本日のこの国会を注目し、本法案の運命を大きな関心を持つて見守つているでございましよう。この法案の行方そのものが日本の将来の運命に通ずるものがあるからでございます。(拍手)かかる重要なる法案であるにもかかわらず、十分に常任委員会において審議されることなく、いわれなき多数の圧力によつていきなり本日の本会議に上程される、この姿の中に、この法案に流れている反動性が臆面もなくさらけ出されていると言わなければなりません。(拍手)故にこそ、私どもは、疑問点を、よりはつきりと政府に質し、国民の前にその正邪を質しておかなければならないと存ずるのでございます。(拍手)  先ず小坂労働大臣に伺います。第一に、昨冬の電産、炭労の両ストの長期化した責任が、政府経営者労働者のいずれにあるかという問題でありましてこの点につき政府のはつきりしたお答えをお伺いいたします。電産、炭労の賃金は、以前に比べますと、必ずしも他の産業の賃金に比べて高位にあるとは言えないのであります。従つて、他産業なみに賃金値上げを要求いたしますのは、労働者といたしまして当然なことと存じます。併し、この要求に対しまして、経営者側は如何なる態度を示したでございましようか。電気事業者は、時間の延長、休暇の縮小、職階制の採用などを強要して、逆に賃金の低下を図り、労働条件の悪化を招いたではございませんか。石炭鉱業者も又、基準作業量、つまりノルマの引上げを強要して逆に賃金の引下げと労働強化を策して参りました。(拍手)当時、公務員さえ二〇%程度のペース引上げが行われましたのに比べまして、電気、石炭両業者がなした妥当なる賃金要求拒否の態度は、誠に理解に苦しむところでございました。(拍手)まして電力会社は配当を復活し、石炭業者は皆様御存じのように長者番付の上位にずらりと並んで、(拍手)資本蓄積の威容を誇つていたではございませんか。かような次第でありますから、昨冬の電産、炭労の両ストの長期化の責任は、断じて労働者になくして、明らかに使用者側にあつたと申せましよう。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)又、政府は、電産、炭労の両ストが始まり、双方とも四、五十日の長い間、労使対峙のまま交渉が行われなかつたにもかかわらず、手を供いて傍観し、何ら解決の努力を講じなかつたので、争議はますます長期化したものと考えます。政府は、電産、炭労両ストの社会に与えた影響を云々する前に、みずからの無為無策、無能を反省して、その責任を感ずべきではないかと思います。(拍手)果して政府は反省の実を、その後、示したで、ございましようか。この点、誠に残念に思うのでございます。かかる意味で、私は、昨冬の電産、炭労両ストの責任政府並びに経営者にありと考えるものでございます。これに対する大臣の率直なる所見を伺いたいと存じます。  第二には、本法案を単独法として労働三法とは別個の建前をとつていること、又、期限付の法律、つまり臨時立法としていること、更に罰則のないことについてお質しいたします。政府労働行政の不手際によつて、昨冬の電産、炭労の両ストを徒らに長期化したにもかかわらず、それを反省することもなく、いきなり法律によつてストを規制して行こうという、こういう安易な方法をとつて来たことに対し、私はその意図が奈辺にあるか疑わざるを得ないのであります。而も公聴会におきまして、少くとも我が国労働法学の権威と言われるほどの方々は、例外なく、現行法規の改正によるべしとして、かかる争議禁止法に絶対反対されている事実を何と考えておられますか。(拍手)更に提案理由を拝見いたしますと、「先ず今回は」ということで、電産、炭労の両組合のみのスト権を制限しているのでありますが、そのことは、電気、石炭と同様に公共性の強い、他の私鉄、ガス、鉄鋼、日通などのストを制限しないことにより、労働運動界をこま切れに分割して政府の支配力を強めることを狙つているものと思われるのでございます。(拍手)三カ年の期限付につきましては、小坂労働大臣が、三カ年の間に、政府の自信ある労働行政によつて、電産の電源スト、停電スト、炭労保安要員の引揚げのようなストライキをなくすように、労働組合の良識の育成を期待する旨の答弁をなさつておりますが、果してその御自信があるでございましようか。期待が実現するか、疑問に存ずるのであります。更に懲罰的な罰則がないことは不気味でありまして、本法に違反した労働組合は、労働組合法上の刑事上、民事上の免責規定の適用を受けられないこととなり、従来の鉱山保安法公共事業令その他の罰則を適用されることになるのであります。本法が労働立法ならば労働立法にふさわしい罰則を設けることが当然と考えますが、この法案には罰則がなくて、統一性を欠いておるのでございます。私は、以上のよう理由によりまして、本法案をなぜ単独立法にしたのか、又三カ年の期限付臨時立法としたのか、又罰則のない点などにつきまして、労働大臣の所信をお伺い申上げます。  第三にお尋ねしたいのは、本法案は、電気事業及び石炭鉱業の特殊性並びに国民経済及び国民の日常生活に関連する重要性に鑑み、公共の福祉を擁護するものを目的としております。そうだといたしますならば、国民経済及び国民生活に対し、さほど大きな影響を与えないような小規模な電源ストとか、或いは小炭鉱の保安要員引揚げまでを禁止なさろうとするのは、甚だ以て理解に苦しむところでございます。現実、電力会社の経営能力の弱体のために、私どもはしばしば螢のようなろうそく送電をされても、会社は何ら罰則規定を受けなかつたのでありますが、一たび、電産の労務提供による電源ストによつて電圧を多少低下する程度のことが、社会的影響が大であるとされて、かかるストは禁止されます。又、炭鉱におきましても、最近多数の中小炭鉱が採算に合わないという理由で休山し、廃鉱し、鉱山を荒廃に帰さしめておりますが、何らこれらには懲罰的規制を受けていないのでございます。然るに、資本家の企業に対しましては利潤追求を無制限に許しておきながら、他方、労働者の唯一の権利でありますところのスト権を無残にも奪い去ろうとなさる、ここに矛盾があると考えます。これで正しい社会正義を打ち立てられましようか。この点について、はつきりした御答弁をお願いいたします。更に又、労働大臣委員会における答弁によりますと、この法案解釈法規であつて、従来非とされていたものを、昨冬の電産、炭労の両ストのにがい経験により社会通念が成熟し、ここに、はつきり違法という烙印を捺していらつしやる御答弁であります。つまり労働者を裁判に立たせてから理非を糺すようなことをしないで、初めから違法なものは違法として、罪を犯さしめないという親心に出たものであるとの説明がありました。併し、本法案規定は甚だ抽象的でありまして、おのおの勝手な解釈ができるのでありますから、労務提供による電源ストなどのできる職場とできない職場との区別をはつきりと具体的に規定し、又、炭鉱の場合で申せば、平時と争議時との保安要員範囲をはつきりと具体的に規定して、ストライキのできる範囲とできない範囲をきめて、労働者行動の自由を与え、法を犯さないようにいたしますことこそ、本当の親心であると信じます。(拍手)どちらが正しい親心であるのか。労働大臣の御所信をお伺いいたしたいのでございます。  第四に、若し本法律が本院を通過するといたしますならば、電気並びに石炭関係労働組合は一方的に主要な争議方法禁止されることになります。労働争議というものは、労働者の基本的人権でありますところのスト権と公共の福祉との衝突と見られるのでございますが、もう一歩深く掘り下げてみますと、労働者は会社の下に働いているものであり、その会社は営利を目的としておるのでありますから、実際には会社の営利と公共の福祉との衝突とも見られるものでございます。かよう関係にありますのに、昨冬の電産、炭労両ストの結果を顧みますと、会社側は何らの規制をも受けないのにかかわらず、労働組合側だけが一方的にストの規制を受けることは、誠に片手落ちと申さなければなりません。その上、本法案においてこれに対する救済の措置が何ら講ぜられていないのは、どういう理由でございましようか、この点、労働大臣の明確な御答弁をお願いいたします。  ここで次に犬養法務大臣にお聞きいたします。電源スト、更に停電ストにいたしましても、地方裁判所、高等裁判所におきましては、違法でないとの判決を受けておるのでございます。そこで、社会通念というものが一つの行為の是非を判断する基準と解しますならば、それが法律的な形に固まつたものが裁判所の判決であると思われます。然るに労働大臣答弁によりますと、下級裁判所の判決は軽視され、最高裁判所の判決でなければ最終決定ではないものとして行政解釈をしておられます。私はこのよう労働省の考え方は如何かと思うのでございますが、この点について、行政解釈と裁判所の判決との関係について、社会通念に対する御見解も含めて犬養法務大臣の御答弁をお願い申上げます。  只今までに申上げましたように、政府は、労使の紛争を都合によつては傍観し、都合によつてはこれに介入するばかりでなく、法律を以て労働者のスト権を制限ようとなさる。こうした例は、先には公務員法、公労法の制定、更に昨年は労調法を改悪して緊急調赦制度を設けるなど、労働者の基本的人権は事あるごとに制限され続けて参つております。今又、本法案によつて更に、電気、石炭関係労働者のスト権を制限しているのであります。これは、まさに時代の流れに逆行する反乱政策の最たるものであると言わなければなりません。  私は本法案に対しましては、他にも種々納得のできがたい点がございますが、最後に、殊にかような重大な法案審議いたしますのに十分な時間を与えないで、審議不十分なまま、これか多数を以て一挙に本会議において採油するようないこの暴挙に対しましては、民主政治をみずからの手において汚辱するものとして、反対せざるを得ないのであります。  最後に私は、院内におきまする野党労働委員の方々が、二旬余に亘りまして慎重審議に懸命な努力を払われましたことに感謝し、更に、院外において、電気、石炭両労働組合を初め、組織労働者大衆が、本法案反対のために熱心な運動を展開されました御苦労に対し、深く敬意を表しまして、私の政府に対する質問を終りたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣小坂善太郎登壇拍手
  40. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 赤松議員の御質問にお答えいたします。  昨年の争議責任政府経営者にあると思うが、どうかという御質問でございます。(その通りだよ」と呼ぶ者あり)政府といたしましては、労使間の事項につきましては、やはり労使双方の関係者の良識に基く健全な慣行の確立に委ぬべきであるという基本的な態度をとつて来たのでありますが、昨年の電産、炭労の両ストライキは、終戦以来、占領終結以来の最初の大ストライキでありまして、特に、自主的な円満な解決によつて、ここで望ましき慣行の先例を作ることを期待したのであります。(「本音を吐きなさい」と呼ぶ者あり)併しながら、その後におきましての争議の実情を見まするに、やはり従来と違つた、一つの独立国としての、両方の、労使双方の権限の主張が非常に強いというよう関係も、ございまして、ここに独立意識を十分伸張しようというような考えからいたしましたのでありますか、ストライキは非常に長期化いたしまして、国民経済、国民生活に重大な障害を与うるようになりました。炭労争議につきましては、十二月十七日、石炭事情の非常な圧迫が国民経済並びに国民生活に重大な影響を現実に与える虞れがあると認められましたので、緊急調整を発動いたしまして、中労委の斡旋努力と相待つて解決を見たのであります。電産につきましても緊急調整の発動を準備いたしたのでありますけれども、解決の見通し等の関係からこれを差控えておりましたところ、これも十二月十八日、この解決を見た次第であります。政府は、その間に処しまして、或いは中労委の斡旋案を受諾するよう、労使双方を招致して種々勧告いたす等、できる限りの措置をとつたのであります。その後におきましての一般の世評も、政府の当時のとつた態度というものは肯定されていると考えます。(「何を言うか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  なお、この法案を出したというのは、その当時の経験に鑑みて、やはり不当なるのは、争議行為としてここまでは不当であるという、争議行為範囲を明らかにしたほうがよろしいという、解釈を明らかにすべきであるという考え方が大方に瀰漫して来たように考えられますので、ここにこの法案を提出した次第でございます。何ら懲罰を科するというふうな趣旨ではないのであります。  なお、この法案がこの三カ年の限時法であるということと関連して種々御意見がございましたが、何故にこの労働争議調停というふうな考え方からして労調法等の労働法規の関係に入れないで単独立法にしたかという御趣旨質問がありましたが、これは、御承知のよう電気と石炭のみに関してその争議方法の一部を規制するものであり、且つ三カ年の限時法でございますから、労働争議の調整とか解決のための一般法、恒久法たるところの労調法とは、別個の単独法として出した次第でございます。(「それが間違つている」と呼ぶ者あり)更に、全般の産業の扱い方等に関しましての御意見が種々ございましてスト権を剥奪するということが強く述べられましたが、これはスト権の剥奪でないということは私も種々申上げております。(「どうしてだ」と呼ぶ者あり)やはり違法である争議行為争議行為としても正当でないものの範囲を明らかにするというのが、この法案趣旨であることを御了承願いたいと存じます。  なお、この保安要員範囲というようなものについての解釈でございますが、これは先ほども法務大臣がお答えをいたしましたが、保安要員というのは、ストの場合に、保安要員というものがあるわけでございますが、ストの場合に個々の場合でそれぞれきまつております。協約等できまつておりまして、従来は、その間に、或いはその範囲についての争いはないのでございます。なお、やはりスト権と申しましても、これは万能のものではない、すべての権利に優先するものではないので、やはり公共の福祉との調和を図らなければならんということは当然と思います。なお、やはり社会の考え方の変化と対応しながら、労使双方の社会的責任というものに対しての考え方も、おのずからその社会におきましての考え方というものは、考えにおいて特殊性のあるべきものと考えます。十八世紀も十九世紀も二十世紀も、それぞれ同じ考え方で労使がやつているということはないのであるということを申上げたいと存じます。  なお、スト制限につきまして公共性を強調しながら、事業主に対しては公益を無視している点があるがどうかという御趣旨でございましたが、本法案争議行為と公共の福祉の調和を図るものであつて、現在の社会構成において経営者の企業経営をどうするということは別の問題であります。本法案とは無関係だと考えます。なお、電気事業者と鉱業権者に対しまして、その事業の公共性に対応して、旧公共事業令や鉱業法或いは鉱山保安法等で、必要な経営上の規則、措置を講じているのでありますが、この内容につきましては、先ほども法務大臣の言いましたように、私どもも決して等閑に付すべき問題ではないと考えております。併し、これは直接このストの範囲をきめる法案審議とは関係ないわけであります。(「関係あるぞ」と呼ぶ者あり)  なお、炭鉱主の長者番付云々のお話がございましたが、これは委員会でも申上げたのですが、これは、炭鉱は個人経営になつておりますので、会社の場合とはおのずから長者番付に出て集る程度が違つて、会社全体の仕事が個人経営になつているために、特にその所得が強調されている面があると思うのであります。  以上お答え申上げます。(拍手)    〔国務大臣犬養健君登壇拍手
  41. 犬養健

    国務大臣(犬養健君) 赤松さんにお答え申上げます。労働大臣の御答弁になりました以外のことで、特に法務省関係の分を申上げたいと思います。  それは、下級裁判所で判決があつたのに上級の裁判所に更に検察側が訴えて意見を聞くということは、やりすぎじやないか、この問題でございます。成るほど、その間、一人の勤労者が神告人として中途半端な生活を送られるということに対しては誠にお気の毒なことでありますが、なぜそういうことをするかということを先ず申上げると同時に、なぜそういう心がまえを持つかということを二つ分けて、できるだけ詳しく申上げてみたいと存じます。裁判所において、有罪無罪いろいろ判決がありますが、私どもとしては、まだ最高裁判所判例が示されておりませんので、政府はこの最高裁判所判例によつて今後の同種の事案に処して行きたい、こういう心がまえなんでございます。その心がまえはどうしてそういうふうになるのか、こういう問題を申上げ工みたいと思うのであります。それは二つあるのでありますが、一つは、下級裁判所において裁判所と検察側と意見が違いましたときには上級審の判決を求めるということは、被告側と同様、検察側にもその権利を保留しているのでありますが、その保留した権利を何故使うかという問題になりますと、我が国のように、労働争議に関する労働運動或いは政府側のこれに関する取締の問題などがまだ歴史が浅く、伝統の浅い国では、特に私どもは必要だと思うのでありますが、最高裁判所の判決例というものを一つく具体的な場合を作つてみまして、その判例に私どもは爾後忠実に従うということが労働問題に関する一つの国の伝統ということになろうと思うのであります。これは私は深く信じている点でございます。(「判決を待てばいいじやないか」と呼ぶ者あり判決を待つには、上告審に訴えなけもば判決は待てません。最高審の判決を得るということは一つの労働問題に間する伝統になるのでありまして、これはどこの国もさようでありますし、赤松さんは特に御承知のように、イギリスなどは判例が一つの重要な司法問題の中心問題になるのでありまして、私は、判例ができて行くということは少しも差支えないのみならず、大切なことであると考えているのであります。ただ別個の問題として、無事な人を意地つ張りから検察側が特に上告審に訴えさせるという問題は政治の誤まりでありまして、これは深く慎しまなければならんと存じます。  以上御了承を願います。(拍手
  42. 河井彌八

    議長河井彌八君) 吉田内閣総理大臣出席されましたので、先ほど総理大臣に対し留保しておりまする質疑を、この際、許可したいと思います。吉田法晴君。    〔吉田法晴登壇拍手
  43. 吉田法晴

    吉田法晴君 留保いたしました吉田総理或いは通産大臣等に関連をいたします点について、質疑を続けたいと思うのであります。  第一は、電産炭労争議の影響と責任、特に政府責任を問わんとするのが第一点であります。提案理由説明の中には、昨年の炭労、電産の争議が国民経済及び国民生活に影響を与えるところが大きかつたから云々という文句がございます。そこで私どもは、この昨年のストは、或いはその争議の長期化については、経営者にも重大な責任があるのではないか、或いは政府にも責任があるのではないかと申して参つたのであります。公聴会においては、一般電灯の消費者或いは小口電力の消費者等は、停電の影響を大部分争議にあつたと考えられる公述をしておられますけれども、私どもが先月二十三、二十四日に亘りまして伺いました公聴会においては、母を護る会の消費者代表としての婦人の、ろうそく代がたくさん要つた、飯も炊くことができず云々という言い分に対して、東電の堀越常務が、東京において二日間合計四時間程度しか停電はしておらんと、    〔議長退席、副議長着席〕  こう公述をせられて、一般消費者の印象と実態が違うということが明らかに公聴会に出て参りました。それでもなお、あの停電その他の原因が、ひたすら電産、炭労にあると言われるかどうか。停電の大部分責任が渇水停電或いは配電の責任を持つている会社側にあつたことは明らかではないか。(拍手)或いは争議の長期化の原因は、この経過を辿つてみますならば、或いは電産の統一交渉を拒否し、労働条件の低下をむりやりに図ろうとし、或いは四十数日間炭鉱の賃下げを以て臨んで参りました資本家団体、特にその背後にあつて、この炭鉱或いは電気事業経営者を正面に立てて鞭撻いたしました日経連にあることも明らかであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手政府は、この争議の最中において、吉田内閣総理大臣が任命した吉武労働大臣は、各社別交渉を勧奨し、組合の分断に協力しようといたしました。或いは貯炭があるから貯炭があるからと言つて争議を長引かしたのも、政府責任に帰せらるべきものがあつたということは、これは国会の各委員会等にも現われて参つたところであります。この争議責任労働組合にのみ転嫁し、ここにその争議行為を大幅に制限せんとする法律の提出に当つて政府自身、その良心に鑑みて責任を感ずるところないかどうか。むしろ責任は、経営者団体、政府にあつたのではないかと(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)私どもは存ずるのでありますが、これについての総理大臣或いは通産大臣等の答弁を求めるものであります。  第二点は、この法律立案の過程において意見の相違が見られた、或いは法案適用の範囲について、政府或いは労働大臣その他と方針がぐらくし、或いはこの適用の範囲について、総理大臣において、ステツプ・バイ・ステップと称して、拡大せられるがごとき意図が従来明らかにせられて参りましたが、法案の適用範囲、或いは解釈上の意見の相違について、総理大臣に質したいと考えるのであります。この法律立案に当つて労働省は反対であつた。然るにこれは、閣議を通じてか或いは吉田総理を通じてか知りませんけれども吉田総理から強くこの立案を命ぜられた。そしてこの立案と適用の範囲については、ステツプ・バイ・ステツプの過程をとるのだ。言い換えるならば、この法案も、先ず炭労についても或いは電気事業についても、できるだけ小範囲にとどめるかも知れんけれども、それを法の運用において拡大して行くという意思もありましよう。或いは電気、炭鉱事業に限らず、公益事業と称せられるものについては、次第にその適用を拡大して行くという意図を明らかに示しているものと考えるのでありますが、小坂労働大臣は、委員会の席上、緑風会の梶原委員質問に答えては、個人の意見を、個人の気持を表現をして、初め、個人としては絶対に他の産業には拡大いたしません。一旦、政治家が言明をした以上、職を賭しても私は他に適用は拡大いたしませんと答弁はいたしましたけれども、併しその後、或いは言を左右にして、仮定の問題には答えられぬという総理の常套語を引用し、或いは提案理由説明には、公益事業はいろいろあるけれども、種々検討の結果、今回、或いはこの際はこの二つに限ると言われた。論理の必然は拡大の危険性を持つていることは明らかでありまするが、この点について総理はどのように考えておられるのか。我々は労働大臣に、或いは閣議の決定を以て或いは総理の明言を以て断言するのでなければ了承しがたいと申して参つたのでありますが、吉田内閣の労働行政の担当者として、出さぬと言つた以上出さぬと明言をせられて参りましたが、これは、内閣の運命の限りにおいて、その責任において、他の産業には拡大しないのかどうか。明言を承わりたいと思うのであります。  なお、先ほど来、論議せられましたけれども電源職場、配電所等の労務の不提供が合法であるか非合法であるか等について、従来、法務省は、労務提供の場合については合法であつたものがあることを委員会で認められて参りました。労働省は、不当であるという社会通念が成熟したから、この解釈法を出すのだと答弁し、或いは鉱山保安法或いは電気供給その他に関連をして、公益事業局長から、電気供給経営者責任であり、労務の不提出は必ずしも非合法ではないと考えるという答弁があり、或いは鉱山保安局員は、「鉱山保安法所定の、言い換えますならば、鉱山保安法五条、三十条、そうして保安規則四十七条等の限りにおいてのみ保安法上の責任が問われるのであつて、その他の点については労働法上の問題はない。或いは外の関係は従来考えられなかつた」というのが、これが鉱山保安局の考え方であつたと思うのでありますが、これらの点について解釈食い違いを来たしております。この点について総理大臣の明答を願いたいと思うのでありますが、特に、労働省等の反対にもかかわらず、或いは日本を挙げての反対、或いは良識ある労働組合等の民主主義を守ろうとする者の反対にもかかわらず、この法律案をあえて提出し、これを多数を以て合理性を押し潰しても進もうというのは、或いは保利労働大臣或いは戸塚労働大臣等、蘇生氏の推薦もあつたと聞きますけれども、この法律案を要望している或いは石炭業界、電気事業界等、或いは労働政策を本年度において打ち出しております日経連の要望に応えて、この法律をあえて強硬に推し進めようとするのか。この点を明確に承わりたいと考えるのであります。  或いは公共の福祉の名において、争議権を、憲法二十八条に保障された争議権制限或いは剥奪しようといたしておりますが、公共の福祉の内容は、この法律においては電力の正常な供給と保安業務の正常な運営のみであります。具体的に言つて、三条について申しますならば、鉱山の重要施設という所有権或いは私有財産がその内容であります。或いは鉱業法或いは温泉法、或いはその他行政法上使われております公共の福祉の内容は、この中に最近においては国民全体の利益でなくして私有財産が入つておることは明らかであります。私有財産を保護するために、憲法二十八条に保障した争議権をこの法律によつて制限ようとするのか。所有権争議権或いは団体行動権の比較は、憲法二十八条と二十九条において比較され、二十九条において公共の福祉の制限は明定せられておりますけれども、二十八条においては公共の福祉の制限はございません。仮にあるとしても、国民全体の利益であるならばとにかく、私有財産のために或いは施設等のために、この争議権を侵害せんとするがごとき、剥奪せんとするがごときは、民主憲法を破るものであり、かくて公共の福祉の名において所有権のために国民の基本的人権を奪つて参りますならば、これは明らかにフアツシヨ法理であります。フアツシヨ法理への途をここに開こうとするものであるかどうか。(拍手吉田総理にお尋ねをするのであります。  最後に、これは通産大臣等にお尋ねをしたいところでありますけれども、電力の供給責任或いは保安業務の確保は、これは経営者責任であります。いわば所有権に基く経営権の中身として供給或いは運営の責任が課せられておると思うのでありますが、若し経営者を飛び越えて労働者に直接労働の義務を課しますならば、これは憲法の苦役を免除する条章にも違反いたしますが、それならば経営権を放棄するのであるかどうか。この点については明答を願いたいと思うのであります。或いは経営権を放棄し、或いは労働者に直接労働関係として義務を課しますならば、これは、労働省、通産省の所管争いをも生ずるで、ございましようが、所有権或いは経営権を否定して、公共の福祉の名において所有権のために労働者に義務を課するという所存てあるかどうかこの点については総理大臣の明答を求めます。  最後に、かかる所有権のために、財産権保護のために、労働者の基本権を制限ようという法律は、五大立法と称して逆コースを辿ろうという諸立法の一つでございますが、この法律によつて憲法時代の労働法関係に戻そうというのであるかどうか。ストの制限をいたして参りまするならば、それは低賃金ダンピングヘの途を開くと言われるでありましよう。MSAの援助を受けて軍需産業の強化を図り、アメリカ一辺倒によつて日本の隷属経済を実現しようとしておりますが、この法案はその体制の一環であるかどうか。労働省が、労働者の保護の省でなくして、サービス省でなくして、弾圧省になるとするならば、労働省も不要でありますが、憲法を破壊しようという政府は、今日において我々その存在を許すわけには参りません。民主主義を否定し、そうしてアメリカの一辺倒政策をとろうとするのであるかどうか。
  44. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 時間が来ました。
  45. 吉田法晴

    吉田法晴君(続) その一環としてこの法律を出さんとするものであるかどうか、明答を求めて質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇拍手
  46. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  過般の電産炭労争議が長期に亘つたその責任いずこにありやという御質問ようでありますが、昨年の電産炭労争議が長期化したのは、労使双方の主張が最後まで対立したということも原因であります。又更に、労使が自主的の責任を持つて交渉し、又は中労委等の公正な調整機関によつて解決する慣行が確立されていなかつたということにも原因をいたすと思うのであります。従つて、その責任いずれにありやと言えば、その原因はいろいろにあるといわざるを得ない、多岐に亘ると言わざるを得ないと思います。  又、次に、このスト規制法をステツプ・バイ・ステツプに拡張するというがごときことを私が崩したということでありますが、これは申した記憶は全然ないのであります。(「将来やらないかどうか」「責任はあるかないか」「他産業に及ぼさぬかということが質問趣旨だ」と呼ぶ者あり)  又、電産関係において労務の不提供は合法なりや否や。――これは明らかに違法であると考えるのであります。即ち、本法案第二条に定めておる行為のごときは、明らかにこれは違法と政府は考えるものであります。(「各省意見の違いを聞いているんだ」「吉田総理、自信がないじやないか」と呼ぶ者あり)その他は所管大臣から……。    〔国務大臣岡野清豪君登壇拍手
  47. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 日経連の要望によつてこういうことができたのじやないか。――そういうことは絶対、ございません。  それから、財産権とスト権の関係を又仰せになりましたが、これは観点が全く違いますことは先ほど申上げました通りであります。  それから過日の労働委員会における中島公益事業局長の答弁は、その中に昨年十一月二十七日の石原公益事業局長の答弁内容を申したのであつて、その内容は、「停電ストは政府は違法としておるが、停電ストに関する刑事事件が殆んど無罪となつたので、現在のところこれが違法であるか否かは政府部内では明らかでないが、判例に無罪となつておるようなケースであつて、その判決が正しいとすれば、八十五条違反にはなるまい」と申したのでありまして、一応判決を尊重する趣旨答弁でありました。併し、判決に対する考え方は法務省見解に私は従うつもりでございます。  それから、電気の正常な供給労働者に命ずるのは経営者の経営権の放棄じやないか、こういう仰せでございますが、経営者は万全の努力を以て供給の義務を遂行すべきであるので、労働者職場放棄をしました場合にはその努力にも大体限界がございまして、本法の措置が経営権の放棄を意味するということは私は考えておりません。  以上御答弁申上げます。(拍手)    〔吉田法晴発言の許可を求む〕
  48. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 吉田君、時間が切れておりまするが、何でございますか。
  49. 吉田法晴

    吉田法晴君 答弁がない。(「再質問」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  50. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) どうぞお静かに。
  51. 吉田法晴

    吉田法晴君 答弁がございません。(「何も答弁になつていないじやないか」「あんな態度は許されぬ」「進行答弁しておらんぞ」「総理が慌てちやつたよ、進行々々」「質問した項目についてはすべて答弁をしなければ議事は進行しないよ」「暫時休憩か」「もう一遍やり直し」「全然わからないならわからないつて言えばいいのだ」「議長このままで「このまま休憩か」と呼ぶ者あり)
  52. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) どうぞお静かに……。    〔「開店休業じや、しようがないじやないか」「答弁原稿書き直しだ「じつくり相談しなさい」「無理をやるからこういうことになるんだよ、自由党」「緊急事態になつたな」「本会議でやろうということになつたから、こういうことになつたのだ、総理は一体どんな原稿を書いているのだ」「総理大臣の停電ストだ」「頑張れ」と呼ぶ者あり、笑声〕    〔国務大臣吉田茂君登壇拍手
  53. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 昨年の秋のストに対しては、政府責任がないと考えるものであります。又、各省間の問に意見の対立、食い違いはありません。財産権を保持するために、保護するために、労働権を制限するがごとき考えは持つておりません。(拍手、笑声、議場騒然)
  54. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) お静かに願います。上條愛一君、御登壇を願います。(発言する者多し)上條愛一君、御登壇を願います。     ―――――――――――――    〔上條愛一君登壇拍手
  55. 上條愛一

    ○上條愛一君 私は第一に総理大臣にお尋ねいたします。  本法の第一条には、公共の福祉を擁護するため、争議行為方法に関して必要な措置をとつたと述べられております。又、労働大臣の本案提案理由説明には、本法案において争議権は否定せず、争議権に基く争議行為の一部方法規制したものであると説明をいたしております。然るに、本法案審議中における衆参の労働委員会において公述人の公述したところによりますれば、労働法学者の多くは、本法案争議権の否定であつて憲法第二十八条に抵触すると述べておるのであります。一方、本院の労働委員会におきまする政府当局の見解は、憲法第二十八条の労働基本権は無制限のものではない、憲法第十二条の公共の福祉を害しないという範囲において存在するものであると述べておるのであります。そこで問題は、憲法第二十八条は、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」と明記いたしております。然るに憲法第二十九条には「財産権は、これを侵してはならない。財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」と規定いたしておりまして、憲法第二十八条には労働権は無条件に認められておるのでありまするが、第二十九条においては、財産権、私有財産は、公共の福祉という限定を付されておるのであります。然るに、政府の言う憲法の第十二条は、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」と明記せられておるのであります。従つて、私ども解釈によりまするならば、この憲法の第二十八条において規定せられておりまする労働権は、公共の福祉に反するからというて、この二十八条の労働いというものではないと考えざるを得ないのであります。労働基本権は飽くまで尊重すべきであつて、ただこれを濫用して公共の福祉を害することは不可であると解釈すべきものであると信ずるのであります。例えば一部分のストや数分間の停電ストのごときは、これは公共の福祉に反するものではないのでありまして、当然ストライキの権利は認められるべきものであると考えるのであります。ただ併し、この憲法第二十八条で保障せられておりまする労働基本権を濫用して、公共の福祉を無制限にこれを害するようなことは、これは慣しむべきものであると考えざるを得ないのであります。(拍手)公共の福祉とは、いずれの産業におきましても、長期に亘るストライキ、規模の拡大されたストライキは当然公共の福祉を害するに至るのでありまして、若し公共の福祉ということを以てストライキ権を制限するということになりまするならば、単に、電産、炭労のストのみならず、多くの産業においてストライキ権が禁止せられなければならないことは明白であると考えざるを得ないのであります。  そこで私は総理大臣にお尋ねいたしたいのは、公共の福祉が害されまして、国民の生活が重大な脅威をこうむるようになりまするならば、これは、政府が先般労調法を改正いたしまして、緊急調整の途を講じているのであります。我々は労調法の改正には反対でありましたけれども政府は当時、この緊急調整によつて、将来、国民の生活に重大なる影響を及ぼすがごときストライキは調整し得ると明言いたし権限は総理大臣に属しているのでありまするが故に、このよう憲法学者或いは輿論によりまして本案が憲法違反の疑いが濃厚でありまするのに、その憲法第二十八条において保障をせられておりまする労働権に対して禁止若しくは重大な規則を加えるというようなことは、この緊急調整によつて不必要であると考えるのであるけれども総理大臣のお考えはどうでるか。殊に今日、本法案に対しまして、全労働階級が、単に本法案関係を有する電産及び炭労労働者のみならず、あらゆる組織労働者が本法案に反対をいたしまするゆえんのものは、吉田内閣の手によりまして、憲法において保障せられておりまする労働基本権に制限を加え禁止を加えるというような重大な弾圧の措置を講ずることになりまするならば、これを橋頭堡といたしまして吉田内閣が今後において必ず労働基準法の改正改悪その他労働者の権利を剥奪するがごとき弾圧法が続いて起つて来るであろうということを信じているからである、と言わざるを得ないのであります。私は従つて総理大臣にお尋ねいたしたい点は、総理大臣は、本法案憲法第二十八条の労働基本権に牴触するものと考えないかどうかという点であります。第二点は、現在、労働者の保有するところの権利は今後これを尊重して行く意思があるかという、この二点をお伺いいたしたいのであります。  次に通産大臣にお尋ねいたしたい点は、電産、石炭鉱業のごとく、通産大臣の主管でありまするが、本法案の提案の趣旨は、労働争議労働者責任において起るという考え方が強いという点であります。岡野通産大臣は、労働争議労働者のみの責任において起るものであるとお考えになるか、或いは経営者も同等なる責任を有するものであるとお考えになるか。本法の制定の原因をなしておりまする昨年冬の電産、炭労のストにおきましても、先ほど赤松議員の申上げましたごとく、その原因は、電産の労働組合が賃上げを要求したのに対して、経営者側は時間短縮を以て事実上の賃金引下げを企図いたしたという点でありまして、炭労についてはノルマの引上げによつて同様賃金の低下を企図いたしておるのであります。このよう経営者の態度というものが、昨年冬の電産、炭労のストを必要以上に長期化し激化せしめた一つの原因であると、我々は考えておるけれども岡野通産大臣は同様に考えられるかどうかという点であります。いま一つは、我が国の産業が健全に発達するか否かという問題は、労使関係が合理化されるかどうかという点でありまするが、今日までの日本の労使関係を通観いたしまするときに、日本の経営者は、頑迷、保守、反動的の態度が濃厚でありまして、(拍手労働組合の存在すらをも無視し、労働基準法の何たるかも解しない経営者が多いという事実を、通産大臣は御存じであるかどうかということであります。吉田首相は、労働者は不逞の輩と申しました。又、日本の現状においてストライキは贅沢であるとも申したのでありまするが、岡野通産大臣は同様な考えを以て今後の日本の労使関係を取扱つて行くお考えであるかどうかという問題であります。  なお、次に私がお尋ねいたしたい問題は、一方において本法案によりまして労働者の基本権に制限を加えて参つておるのでありまするが、このような処置を講ずる以前に、岡野通産大臣は、みずから主管大臣としての責任において、このよう争議が起らないような労使関係の合理化を図るべきではないかという点であります。例えば西ドイツにおける経営機構法のごとき、労働者も又経営に参加せしめて、そして経営の合理化を図らなければならないという点であります。然るに電産においては、先般、日発が三十六億の含み資産を有しておることが明らかになりました。(拍手)又、炭鉱経営者は、先ほど同僚議員からも繰返しておりまするがごとく、(「三十六億の清算勘定はどうした」「選挙に使つたのか」と呼ぶ者あり)二十六名の長者のうちに十数名も炭鉱経営者が含まれているという点は、これは如何に日本の経営が不合理に不健全に行われつつあるかという事実の一端を現わすものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手岡野通産大臣は、このような現在の経営状態が不合理不健全で労働者のみに犠牲を払わせるような現状に放置して、而も本法案を提出せざるを得ないような現状を引起す重大なる現状を放置いたしまして、それでよいとお考えになるかどうかということであります。  いま一つお尋ねいたしたい問題は、一体、公共の福祉に重大なる関係を有しておつて、本法案を提出せざるを得ないよう公共事業において、営利主義に経営を放任しておいてよいかどうかという問題であります。(「然り」と呼ぶ者あり)私は、先ず企業の社会化を図り、進んで国営にいたすべきが、かかる公益事業の本来の姿でなければならないと考えるのでありますが、([その通りだ」と呼ぶ者あり)岡野通産大臣は将来そのような計画意図を有しておられるかどうかということをお尋ね申したいのであります。
  56. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 時間が参りました。
  57. 上條愛一

    ○上條愛一君(続) 時間がありませんので、以上を総理大臣通産大臣質問をいたす次第であります。(「三十六億をはつきりしてくれよ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣吉田茂君登壇
  58. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  先ず、本法案憲法二十八条に保障している労働基本権の侵害であるという御見解でありますが、政府はそうは解釈いたさないのであります。即ち、基本人権と公共の福祉との間に限界を立てんとするものでありまして、このたびのこの法案は即ちその限界を立てたものであります。従つて、この法案憲法違反なりとは直ちに我々は信ぜざるのみならず、この法案によつて争議権と、争議行為と、或いは公共の福祉との間の限界を確立し得るものと考えて提案いたしたものであります。  又、政府労働基本権を尊重するのかしないのかという御質問でありますが、これは明らかに尊重いたします。(「尊重してない」と呼ぶ者あり、拍手)    〔政府委員古池信三君登壇拍手
  59. 古池信三

    政府委員(古池信三君) 岡野通商産業大臣が高熱のために退席をいたしましたので、私から大臣に代りまして御答弁申上げます。  先ず、電気事業につきましては、御承知のごとく、供給規程その他法令に基きまする諸種の認可権を運用することによりまして、電気事業の経営はこれを適正ならしめて参ると同時に、今後電源の開発をいよいよ促進いたしまして、供給力の増加を図ることを政府は急務と考えておるのでございます。  石炭鉱業につきましては、竪坑の開さくを促進するところの方策によりまして、今後コストの割高を是正して参りたいと考えております。  その次に、労働者の経営参加の制度についてお尋ねがございましたが、経営参加は、その運用よろしきを得る場合には研究の価値ありと考えまするけれども、労使の関係が円滑を欠くような場合におきましては、徒らに労使の紛争の場となり、得るところが少いと考えられるのであります。現在の状況におきましては、労働大臣の構想にかかる労働問題協議会の健全な運営等を通じまして、先ず労使関係の円滑な基盤が形成されることを期待することといたしたいと考えるのであります。  次に、将来、電気事業の企業形態をどういうふうに考えるかという問題でございまするが、    〔副議長退席、議長着席〕  我々といたしましては、電気事業は将来とも飽くまで自由競争という精神を失わないで、そこに事業家の創意と工夫を十分に活かし、(「そんなことできるか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)そうして独立採算の下に事業能率を発揮させることに主眼を置き、勿論、公益性を確保することは申すまでもないのであります。かような意味におきまして、必要がある場合、政府は十分に監督指導につとめ(「指導されるほうだ」と呼ぶ者あり)運用の全きを得て参りたい、かように考えております。(拍手)     ―――――――――――――
  60. 河井彌八

    議長河井彌八君) 藤田進君。    〔藤田道君登壇拍手
  61. 藤田進

    藤田進君 私は内閣総理大臣に対しまして質問をいたすものであります。  先ほど吉田議員の質問に答えられまして、昨年の電産、炭労などの争議に対しては、政府はその責任なしと言い切られたと考えるのであります。この点につきまして、私は、今日の吉田内閣、その与党が掲げた政策というものは、民生の安定という具体的な内容があつたと考えております。昨年の電産、炭労の紛争議は、この政策と全く背反した現実の前に、かような深刻長期に亘る紛争議が発生したと考えられるのであります。従いまして、昨年の争議自体の具体的な経過を把握願つているならば、政府に全く関係がない、法治国家の政府として全く責任もなし、かかわりがないと言う、このことは了解ができないのでありまして、この点に関連いたしまして、現在の内閣の政策と民生の安定、延いては労使間の紛争議関連して当然責任があると考えるが、この点については責任なしとする具体的な裏付け、理由をお伺いいたしたいのであります。  第二の点といたしましては、どうしても吉田総理大臣でなければお答えができないという点だけを摘出いたしまして、ここに答弁を求めるものであります。と申しますのは、本スト規制法、いわゆるスト禁止法は、どういうところから生れて来たかということを考えまするときに、長い間の衆議院及び本院におきまする委員会審議の経過から把握いたしまするに、大よそ二つの要素が本スト規制法所産の実態として把握できたのであります。  その第一は、今日、公共の福祉を云云と称せられておりまするけれども、昨年の争議にたまたま際会いたしまして、吉田総理が某歯医者に歯の治療においでになつたと聞いております。勿論、電気労働者があらゆる家庭やお部屋の電気を修繕したり、もろもろの事情を知つていることはもとよりでありますけれども、これからの私生活について論及するものではありません。昨年のその歯の治療においでになりまして、たまたま電気が止まつて歯の治療ができなくなつて、非常に御立腹のままお帰りになりまして、たまたま戸塚当時の労働大臣がおいでになりませんので、相にく、居あわせた寺本当時の次官が、この旨を聞いて、慌てふためいて、中労委に電話をかけて、たまたま私も当時中労委に居あわせたわけでありますが、けしからん、早くこの争議を何とかしろというようなことで、中労委としても、当時非常に、そのお叱り、お怒りに触れたようであります。(笑声)そこでいろいろ当時の模様を考えてみますと、ストライキによる停電ではなしに、これは渇水停電であつたように当時の実情はあつたのであります。この怒りが元となりまして、(笑声)いよいよ施政方針演説の中に一筆加えられ、急拠、主務当局といたしましては、どういう法律を作るかということで、ともあれ、理窟は後で、法律を作ることが先だというようなことで、今日、答弁も実は非常にまちまちな、労働大臣或いはその他の大臣のまちまちな答案がここにあるのであります。果してさように伝えられておりますようなところに本スト規制法の動機があつたのかどうか。確かにあのときは怒りを催したけれども、そうではなかつたのかどうか。(「そんなことが質問になるか」と呼ぶ者あり)こんな簡単なことで出て来たのだ、この規制法が……。  第二の点は、これと五分々々のウエイトを持つて現われて来ているものがあります。それは、吉田内閣とその与党が、今日、電気事業並びに石炭産業等、多くの産業資本や金融資本と全く忌わしい繋がりにあるのではないかという事実があるのであります。私の調査によりますると、約四十八団体を調べております、公式に届出せられ、発表されている……。昨年と今年の選挙に際会いたしまして、二億七千四百万円余の寄附金を、産業資本並びに金融資本家から、それらの団体から受けておられるのであります。これを見ますると、殆んどその全部が政府の融資、或いは東京証券業協会を初め、この七団体については譲渡所得税の廃止などをその当時行われておりますが、その見返りかどうか、一千万円、又石炭鉱業については合計一千八百万円、(拍手、「ほんの一部だ」と呼ぶ者あり)又電気産業につきましては前後二千万円、この政府融資その他の関連をつぶさに見ますと、政府融資の一割を献金しておるというようにも見えまするし、或いは大口になりますと、そこまで実は高くないようにも思われるのであります。従いまして、こういうときの政権と、そうして、その政策、立法が直結いたしているように、どうしても考えられるのでございますが、この点について如何なる所見を持つておられるか。更に電気事業につきましても、吉田総理とは極めて関係の深い方方が、突如としてあの一昨年の再編成と共に雪崩を打つて電気事業に入つて来られておるのであります。従いまして、吉田総理の影響のある、例えば星島さんの叔父さんか兄さんか知りませんが、星島儀平さんが中国電力のこれまた取締役に就任するというように、九つの電力会社を一々調べて見ますと、誠に電気事業には全く関係がなかつたというような人々が大量的に入り込んでおられる。こういつたような点が、今日、電気並びに石炭産業に対して、かような一方的な弾圧をする法律案が出た大きな動因であると考えられるのであります。(拍手)これについてどういうお考えであるか。  以上二つの点について明確なる御答弁を願い、更にまだ半分の持ち時間がございますので、この貴重な時間に再質問をいたしたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇拍手
  62. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。  電産或いは炭労ストが政府責任があると言われるが、私は責任がないと考えます。政府の政策によつてあたかもこのストが起つたように言われるが、私はそうは考えません。若し果して関連性があるならば具体的事実を以てお示しを願いたいと思う。  もう一つ、政府責任は、このストに当つて如何なる処置をとつたか。その処置が悪ければこれ又政府責任でありますが、政府としては、自主的に労使協調なり或いはその他の適当な機関によつてこのストを収めようとはいたしましたが、不正な方法その他によつて政府責任になるがごとき方法によつて収めようといたしたことはないのであります。(拍手)又、本法案に何かスキヤンダルがあるようなお話でありますが、(「大ありだ」と呼ぶ者あり)スキヤンダルがあるとするならば、これは適当な方法を以て法的の処置をお求めになるがいいと考えるのであります。  又このスト規制法と私の歯医者の治療と関係があるようなことがありますが、私は全然かかる記憶はないのであります。(拍手)    〔藤田進発言の許可を求む〕
  63. 河井彌八

    議長河井彌八君) 藤田進君。    〔藤田進登壇拍手
  64. 藤田進

    藤田進君 再質問いたします。只今の政府に、日本の国内で起きた紛争について全く関係がない、責任がないということについては、賢明なる諸君の御判断に任す以外にはないと思います。私は、少くともさような無責任政府であろうとは、今日まで如何に思つても考え及ばなかつたところでありました。そこで、次に質問いたしたい点は、昨年の争議のみならず、労使間の紛争に当つては公正なる立場を堅持して、労使の紛争自体を自主的に解決せしめるべく、政府はそういつた態度をとつて来たし、今後もとるという意味の御答弁があつたと考えます。然らば、昨年の電産争議に当りまして、先刻吉田議員よりの質問内容にもありました通り、時の吉武労働大臣は、部下を使い、更にみずからが行動をいたしまして、一方的に日経連や電気経営者が主張している、その意図している事柄を、政府の外局として何者にも影響を受けないで調停をし或いは斡旋仲裁をする中央労働委員会に対して、積極的な干渉をした事実は御存じないかどうか。このことについてはすでに当時の労働大臣吉武惠市君自身もよく知つているところであります。このような、裏においては、長期深刻になるところの作用を政府みずから行なつて、その出て来た現象を一方的に労働側に押しやつて……よく聞いて頂きたいのです、(笑声)このようなストライキ制限禁止法案を出すということは、如何なるセンスに基いておられるのか。事実とそして今の御答弁とは全く食い雇つているのであります。若しそのよう総理大臣の御答弁と違つた行動が昨年の争議においてあつたならば、如何なる処置を総理大臣としてはおとりになるか。この点を明確にして頂きたいのであります。  更に第二の点は、昨年の本法案を出すかどうかの問題が提起されるに至り、更に本年に入りましてこの具体化についていろいろな報道がなされておりまする中に、吉田総理大臣は、大幅な制限をする、或いは又ステツプ・バイ・ステツプの方式をとる、とらない、こういうことで、胸につくづく思い当るものがあろうと思います。これも記憶がないとおつしやるかも知れませんが、どうか記憶を呼び起して頂きたい。その大幅な制限という当時の構想は、二つの意味が含まれておると聞いております。即ち、電産乃至炭労に対しまして今のこの法案以上にもつと大幅なストライキを禁止するという構想、これが一つであります。第二の内容は、電産、炭労のみでなしに、他の産業に対してもこれを及ぼす。只今の御答弁は他産業には及ぼさないと言もれておりますけれども、この論議のあつたことは事実のようでありまするが、その構想、考え方というものを全く放棄されて、只今のような他産業にはこれを拡大しないという御答弁であるのか。この点について、当時の吉田総理の胸中、お考えと、今日の変更された事情について、明白にして頂きたいと思います。  更にお伺いいたしたいことは、今後の労働政策についてであります。緊急調整は、副総理の御答弁を過般聞きますと、直接、吉田総理がおきめになつたそうでありまするし、今後もその通りようであります。つきましては、今の労働政策は、何人もこの政策を称して、労働組合や労働者を保護助成する、こういう政策でないということは明白であります。然らば今後についてもかような弾圧を旨とする方針で行かれるのか。労働者労働組合の協力を得よう、こういう考え方は今後もおとりにならないのか。この点を具体的にお示し願いたいのであります。  次にお答えを願いたいのは、ストライキの制限法に関連いたしまして、その内容をことごとく申上げる時間を持ち合せませんが、先ほど来、関係各省大臣に伺いますると、一歩掘り下げて参りまするときに、おのおのこの法案に対する御答弁、御主張が食い違つているのでおります。どの点が食い違つているかはお調べ願いたいと思います。そこで私といたしましては、又、我が会派といたしましても、このスト規制法の本当の解釈はどうなのであるか、統一した御答弁総理大臣から求めたいのであります。この食い違いについては先刻それぞれ具体的に指摘をいたしておりまするので、お聞き願いたいと思います。  以上それぞれの点について御答弁を煩わしたいと考える次第でございます。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇拍手
  65. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  昨年のストの場合に当時の労働大臣行為不法であつたと言われるのでありますか、とにかく適当でなかつたというようなお話でありますが、私はその当時そういうことは耳にいたしておりません。又、労働問題についてますます規制、抑圧と言いますか、労働争議に対してこれを弾圧し若しくは規制することをますます拡大するといつたように、私が放送したというのでありますか、それはそういう事実はありません。又、考えたこともありません。このスト規制法を拡大するような考えは只今持つておりません。  又、各大臣の言うことが食い違つておる。――これは私の承知いたすところでは食い違つておりません。(「どのように食い違つてないか」と呼ぶ者あり)  又、労働者を弾圧するというのみであつて、今後労働者の協力を求める考えはないか。――これは労使協調を以て主義といたしますのでありますから、労働者の協力はますます求める考えであります。(拍手)     ―――――――――――――
  66. 河井彌八

    議長河井彌八君) 赤松常子君。    〔赤松常子君登壇拍手
  67. 赤松常子

    ○赤松常子君 私が総理大臣に対してお尋ねいたしたい第一点は、この法案が提案されるに至りましたその経緯についてでございます。総理大臣も御承知のように、昨冬の電産、炭労のあの大争議の際、政府は不介入がよいという御判断の下に、殆んど手を供いて傍観しておられました。然るに、その争議が終りまするや否や、間もなく、本年一月三十日、第十五国会の再開劈頭なされました総理の施政方針演説の中において、はつきりと公共的事業のスト制限を今国会中に上程する旨を明言されていらつしやいます。そこで私がお尋ねいたしたいことは、このようにスト制限を特に施政演説に語われましたことによつて、事務当局でありますところの労働省が、この総理意図を受けて直ちにスト規制法案を準備するに至つたものと存じますが、その際、労働省当局において考えられておりました対案というのは、必ずしも今日のスト規制法案のようなものではなかつたと伝え聞いておるのでございます。その当時の労働省当局の案と申しますのは、仲裁制度、職権調停制度などを採用することによつて、昨年のストのような国民生活に甚だしい影響を与える争議制限することを考慮されていたと聞いております。然るに、いつの間にか本法案ように変つたのでございましようか。そのいきさつを伺いたいのでございます。又、聞くところによりますと、スト制限を大幅にするか、小幅にするか、或いはステツプ・バイ・ステツプというようなことにするか、いろいろと政府当局の間で論議されていたように当時の新聞は伝えておりました。ところが結局、総理大臣でございますあなたの鶴の一声によりまして、本案のような反動的で片手落ちの形に落ちついたと聞いておるのでありますが、果してその通りでありますか。(拍手)同時に又、さようだといたしますと、如何なるお考えで仲裁制度などを除かれたか。そうしてかよう法案になりましたか。その理由を、総理大臣として、はつきりおつしやつて頂きたいのでございます。  第二に、特に総理大臣にお伺いいたしたいことは、このスト規制を他の産業に及ぼす考えがあるかどうかということでございます。この点につきまして私は今思い起すことがございます。曾つて私が、第三国会当時、人事委員をいたしておりましたとき、同委員会におきまして国家公務員法案審議されました際、私は吉田総理大臣直接に、同法案中の国家公務員の基本的人権の制限規定を他の方面にも及ぼすようなお考えがあるかどうかをお尋ねいたしたことがございます。このとき総理は、その意思はない旨のはつきりした御答弁をなされたのでございました。ところが、その御答弁にかかわらず、その後、間もなく他の公務員にも及ぼされたことは、明らかな事実でございます。更に、小坂労働大臣のこの問題に関する労働委員会における答弁は、昨日の労働委員長の中間報告中にもありますように、明確を欠いておりますので、私どもはどう解釈してよいかわかりません。取りわけこの点について、はつきりお答えをお願いいたしたいと存じます。  更に第三点といたしまして、我が国は、去る七月二十四日、本院におきまして、団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約外二件の国際労働条約を批准し、又、本年の国際労働機関の年次総会におきましては、常任理事国に選任され、日本の国際的地位は向上し、信用は回復されようといたしております。従つて、日本の労働者並びに労働組合の事情には特に国際的な関心と交流が高まりつつあるのでございますが、この際におきまして、逆に労働者の基本的人権でありますこのスト権を制限し、民主化しつつある労使関係を破壊いたします。ことは、国際社会の不信を招く虞れが多いのではないかと、私は非常に恐れ、心配しておる次第でございます。こういう点につきましての総理大臣の御所見をお伺い申上げたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇拍手
  68. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  このスト規制法は、労働省で立案をいたして、私が何ら干渉する余地はなかつたのであります。又、干渉いたす考えもなかつたのでございます。これはあなたのお聞きのところが大いに違つておると考えますから、訂正をいたします。  又、このスト規制法をますます他にも及ぼす、拡大するという考えはないことは、先ほど申した通りであります。  又、労働権と申しますか、争議権範囲を狭め若しくは制限することのないことは、先ほど申した通りでありますから、列国もこの政府の考え方については了承いたすと思います。(拍手
  69. 赤松常子

    ○赤松常子君 まだ時間が残つておりますか。
  70. 河井彌八

    議長河井彌八君) 四分あります。赤松常子君。    〔赤松常子君登壇拍手
  71. 赤松常子

    ○赤松常子君 私が質問申上げました点に対し、少しも具体的なお答えがございませんでした。(「その通り」と呼ぶ者あり)特に第二点に対しまして、第三国会は二十三年に開かれておりまして、私、速記録も今調べて参りました。十一月二十五日の委員会で、はつきりと、先ほど繰返しお尋ねいたしましたように、他の公務員には及ぼさないということをおつしやつたのです。そのときの法案内容は、国家公務員に対するいろいろ権利を縮小をする規定審議でございました。これを私は恐れまして、こういうことが今規定されますと、これに右へならえというような傾向が起きはしないかという心配を繰返し申上げ、総理大臣にお尋ねいたしましたところ、今申しましたように、はつきり、ないとおつしやつたのですが、その後続々と作られた法律がどういう傾向にあつたかということは、私が繰返して言う必要はございません。こういうことに対して、もつと総理大臣がその事実をはつきりとお辛し頂き、又、本法案の将来に対して国民が疑惑を持つておりまする点に対しても、もつと親切に御答弁を願いたいと思う次第でございます。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇拍手
  72. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。  私の先ほど申した通り労働権若しくは争議権制限する考えは毛頭ないのであります。(「制限するじやないか」と呼ぶ者あり)又、将来においてこれを拡張する考えはないのである。無論、必要が……公共の福祉に違反するような場合があれば別でありますが、只今のところは考えておらない。(拍手)     ―――――――――――――
  73. 河井彌八

    議長河井彌八君) 堀眞琴君。    〔堀眞琴君登壇拍手
  74. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私は吉田総理大臣に対しまして次の諸点について質問をいたしだいのであります。  先ず第一に、この法案審議に際しまして、政府見解があらゆる点において矛盾を来たし、不一致を示しているのであります。この点に関しまして、吉田法晴君の質問に対し、吉田首相は、「絶対に政府は矛盾してはおりません。」こう、ただ述べているだけでありまして、具体的に、例えば停電ストや、電源ストその他に関して、高等裁判所、或いは地方裁判所等において、判決がこれを違法ではないと出しており、通産省当局においても、この判決を尊重して、電気産業等におけるところの労務提供は違法ではないという解釈をとつている。然るに労働大臣は、これは従来とも違法であると述べておられる。首相はこれに対して、食い違いはありませんというだけお話になつている。私は、その食い違いはないというあなたの理由を、先ず第一にお尋ねいたしたいと思うのであります。  それから、第二にお尋ねしたいのは、ほかの産業には拡大しない、今、赤松君の質問に対しましても、只今は他の産業には拡大しない、こう答弁されている。赤松君は重ねて、公務員に関する二十三年当時の速記録を引用されて、そうして再質問されたのでありまするが、只今は拡大しない、こう言うだけでありまして、若しも、その他の公益事業、例えば私鉄であるとか、目通であるとか、或いは又ガスであるとかいうような公益事業が、長期に亘り且つ第三者に対して非常に大きな迷惑を与えたという場合に、果して首相は、これに対して拡大解釈しないという保障を今日できるだろうか。吉田君からもこの点については強く質問されたのでありまするが、あなたは、只今は拡大しないというだけでありまして、その拡大しないということを将来に向つてあなたは十分確信を以て言い切れるかどうか。この点を第二にお尋ねいたしたいのであります。  それから第三には、基本的人権と公共の福祉に関する問題であります。基本的人権は永久不可侵の権利であります。憲法の条章には、従つて国政の上においても立法の上においても最大の尊重を払わなければならんと規定してあります。この基本的人権と公共の福祉との関係、なぜ公共の福祉というものが基本的人権の行使を調整するか。どういう理由によつて公共の福祉はそのような役割を成し遂げることができるのであるか。それから、電気が消えれば困るとか、或いは又、電車がとまれば困るということが、これは公共の福祉という概念に当てはまるのかどうか。この点を第三番目にお尋ねいたしたいのであります。  それから、第四番目にお尋ねいたしたいのは、国際的な観点からの問題であります。吉田内閣は数次に亘つて組織され、而も労働者に対しては、その都度、弾圧的な政策をとつて参りました。曾つて日本は労働者に対して低賃金政策を強行し、そのために外国からはいわゆるソシアル・ダンピングとして排斥されている。ポツダム宣言等において、そういうようなソシアル・ダンピングは世界の通商に対してこれを阻害するものであるとして排斥されている。ところが吉田内閣は数度に亘つて労働者に対して低賃金政策を押しつけ、これを以て、戦後の資本主義再建の、或いは資本家再建の「てこ」としようとしている。若しもこのような政策が強行されるならば、恐らく世界の国々は、日本を再び戦前の日本に帰るものとして見るでありましよう。而も電産や炭労労働者の諸君の基本的権利であるところの団体行動権、取りわけ争議権を、全面的に否定するに等しい規制をここで行わんとするのであります。電産や炭労労働者は、如何ようにして彼らの生活を守り、彼らの労働条件の改善を行うことができるでありましよう。世界の自由を愛好する国々の労働者は、非常に大きな関心をこの際スト規制法に寄せているのであります。内閣総理大臣は果してこの事実をどのように考えておられるか。御所見を伺いたいと思うのであります。  なお、時間が残つておりまするから、再質問を保留しておきます。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇拍手
  75. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  電産スト等に関して、政府部内の見解が矛盾不一致であるということでありますが、私の承知いたしておるところ、又、関係大臣答弁を虚心坦懐にお考えになりましたならば、私は、そうお考えになるのが間違いであつて何ら矛盾はないと考えるのであります。  はた又、日本の労働スト規制法を出したがために、世界労働会議その他において、日本に対する誤解が、即ちダンピング、労働ダンピングというような誤解が起るであろうという御心配でありますが、これは断じて私はないと思います。委細の経過は、労働会議における経過を御覧になりましたらわかると思います。その他は所管大臣から……。    〔堀眞琴君発言の許可を求む〕
  76. 河井彌八

    議長河井彌八君) 堀眞琴君。    〔堀眞琴君登壇拍手
  77. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 只今の私の質問に対しまして、吉田総理大臣は、ただ二点についてのみ答えておられるのであります。而も、大変失礼な言葉でありまするが、舌足らずの答弁しか与えられておらないのであります。(「答弁がないのだ」と呼ぶ者あり)第一、国際的な観点から申しましても非常に重大な問題であります。吉田首相は外交官出身の首相であります。国際関係については最も通暁している一人ではないかと私は思つておりますが、ところが、残念ながら国際的な知識はお持ち合せがない。外交的な技術の点については、或いは相当の知識をお持ち合せかも知れません。私は、失礼だと思うが、吉田首相は今日の国際関係についての知識は殆んど持つておられないだろうと思う。(拍手)国際的な観点から申しまして、このスト規制法というものがどのように重要な意義を持つかということを私は反省してもらいたいと思う。(拍手)  それから、第三に私がお尋ねいたしましたところの公共の福祉に関する質問であります。これに対しまして少しも御答弁がないんであります。あなたは、電気が消える、或いは電車がとまる、これが公共の福祉と考えるかということを、私は再質問いたす次第であります。  なお他の閣僚に対する質問は留保いたします。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇拍手
  78. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 公共の福祉なるものは、これは常識で考えられるものであつて、単に、電車がとまつた、これが公共の福祉に反するものなりというような断定は、何人もできないはずであります。これは常識で以て考えるべきものであると私はお答えする。(「その通り」と呼ぶ者あり)     ―――――――――――――
  79. 河井彌八

    議長河井彌八君) 市川房枝君。    〔市川房枝君登壇拍手
  80. 市川房枝

    ○市川房枝君 私はどの政党にも関係しませんし、又、資本家には勿論のこと、労働組合にも関係はございません。労働委員会を実は望んだわけではありませんが、到頭所属することになつてしまいました。この立場で委員会においての皆様方の論議を拝聴して参つたわけであります。本会議でもいろいろな御質問が出ておりますので、重複を避けまして、私がどうしても伺いたいと思います常識的な幾つかの点を、総理大臣労働大臣通産大臣にお伺いしたいと思つております。  先ず総理大臣に二つの点についてお尋ねを申上げたいと思います。この法律は、電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案という名称で、これだけを読みますと、別にストライキを禁止する法律ではないようにちよつと見えます。又、労働大臣もしばしば、これはスト禁止するのではない、争議行為のやり方に或る程度の制限を加えるだけだとおつしやつております。併し、まあだんだん伺つておりまするうちに、これは明らかにスト禁止法律であります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手電気供給に直接携わつておられる勤労者或いは鉱山保安要員の方々は、争議を、ストをすることができません。これは勤労者の団体行動を保障しておりまする憲法第二十八条に違反するのではないかというふうに思われます。(拍手、「そうだ」と呼ぶ者あり)尤も労働大臣及び先ほどの総理大臣のお答えにもあつたかと思いますが、同じ憲法の十二条による公共の福祉を守るためには、スト権を取上げてもよいというように、まあ、おつしやつたんではないかと聞えました。公共の福祉という言葉は、今もお答えがありましたが、非常に抽象的で、漠然としておつて委員会においても結局どうもよくわからないというのが本当だと思います。まあ、これを悪く解釈しますと、まあ都合の悪いときには、公共の福祉という名前で、憲法で保障されておりまする基本的人権がだんだんと取上げられて行くんではないかという心配も出て参るわけであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)新憲法が明治憲法と違います大きな点の一つは、勤労者と婦人の基本的権利が認められた点にあると思います。(「その通り」と呼ぶ者あり)勤労者は、憲法二十八条で団結権、団体交渉権その他団体行動権を認められ、使用者と対等の立場に置かれることになつたわけであります。婦人は、憲法第十四条、第二十四条、第四十四条におきまして、男子と平等の立場に置かれることになつたのであります。然るに勤労者は、現在審議されておりまするこの規制法によりまして、その権利の一部を取上げられることに実はなるわけであります。そうしますると、私ども帰人の権利も、公共の福祉或いはその他の理由で将来取上げられることになるかも知れないという(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)心配があるのであります。私がそういう心配を持つ理由の一つは、これは憲法ではございませんが、現在、労働省に婦人少年局という小さい局があります。予算がたつた一年に六千万円ばかりでありますが、行政整理の話が出ますたびに槍玉に上つて潰されそうに実はなつております。(「小坂君、聞いておけ」と呼ぶ者あり)この婦人少年局に対しましては、自由党から社会党まで支持されている局でありますけれども、まあ、こういう現状でありますので実は心配をするわけであります。総理大臣は婦人には理解を持つていると聞いております。先だつて自由党の婦人部の会合で、大いに婦人を激励なさいましたように新聞で拝見いたしました。総理大臣は、憲法で保障されておりまする婦人の基本的権利を取上げるようなことはないかどうか。或いは今申しました婦人のための行政機関を潰すようなことはしないかどうか。それを伺いたいと思います。  次にお伺いしたいのは、この法律が成立実施されました後の日本の労働運動乃至は思想の動向についての御見解を伺いたいと思います。この法律は、前にも申上げましたように、事実として労働者のスト権を取上げるものであります。而もそれに対して何らの救済策も講ぜられておりません。(拍手)又、これによつて電気産業及び炭鉱の組合は使用者との対等の立場に立てなくなります。で、これは組合員としては私は死活の問題だ。他の労働立法等の改悪なんかと比べものにならないほど重大な内容を持つている法律だと思うのであります。(拍手)従つて、組合が、単にこの法律で直接規制されまする組合だけでなく、各労働組合がこれに反対するのは、私は当然だと思います。又、組合を代表しておられる社会党の方々が必死に反対されるのも無理もないことだと思います。(拍手)組合の納得なしに、(「労働大臣わかつたか」と呼ぶ者あり)この反対を押切つて、而も強引にこれを成立させた後、一体どういうことが起るか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)総評がこの間の総会で今までよりも左へ行つたと、こう新聞なんかにも言われておりまするが、その理由の一つは、こういう法案を出し、これを成立させようとしている情勢の結果だと聞いております。(「そうだ、その通り」「よく聞いておけ」と呼ぶ者あり、拍手)そうしますと、この法律が成立しました後、更に組合を左のほうへ私は追いやるのではないか。或いは破壊的な暴力を肯定する方向へ向わせるようなことになりはしないか。で、この法案は三年の期限付で、労働大臣は、その間に労使の問のよき慣行を作りたい、そのために努力するとおつしやつておりますが、私は、組合を信用しない、そうしてこの法案を出したのだ。そうして組合はこれに納得していない。こういう情勢の下で法律案が成立して、あと、うまく行くかどうかということは、私はどうも期待が持てないのであります。私の非常にこれは常識的な考え方でありますけれども、この労使間の対立はいよいよ激化して社会不安を醸成することになるのではないかという心配を持つております。(「吉田内閣の罪だ」と呼ぶ者あり)日本の経済の自立再建のためには、資本も必要でありまするが、同時に労働力が絶対に必要だと思います。労働者の協力なしにはできないと思います。総理大臣は、このスト規制法成立後の日本の社会情勢、労働運動の情勢というようなものについて、どういうふうなお考えを持つておいでになりますか、お伺いをしたいと思います。ほかの大臣に対する質問は留保いたします。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇拍手
  81. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  政府として、憲法規定せられておる基本人権、又婦人の地位等については、何らこれを侵す考えは毛頭ないのであります。又この地位が、或いはこの権利が、無制限に行使し得ると考えることも、これは間違いであります。即ち、国家公共の福祉という制限の下に行われることは当然である。然らば、その福祉は憲法その他に何らの規定がないじやないかと或いはおつしやるかも知れないが、これらの法律に書いてあることそのものは、結局、国民の常識、或いは又国民の行為によつて打ち立てられ、社会通念等によつて自然規制せられるのであります。故に、労働規制法等によつて、或る行為が、これはなすべからざる行為であると規定することによつて、国民の通念、社会通念、或いは又常識というものが養われて行くのであつて法律が出た結果、悪くなるとのみお考えになるのは、これは少し極端ではないかと思います。(「詭弁だ」と呼ぶ者あり)正当なる法律が出た結果、社会通念が正当化し若しくは常識が高まるということは、これは常に見る現象であります。(「逆だよ」と呼ぶ者あり、拍手
  82. 河井彌八

    議長河井彌八君) 内閣総理大臣に対する質疑は終了いたしました。(「答弁がまだ残つているじやないか」と呼ぶ者あり)  なお、労働大臣法務大臣等に対する質疑の残りを続行いたします。堀眞琴君。     ―――――――――――――    〔堀眞琴君登壇拍手
  83. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私は、先ず労働大臣に対しまして、提案理由説明に関する部分について若干の質問をいたしたいと思うのであります。提案理由説明につきましては、労働委員会等におきましてもこれまで幾度かその内容説明されたのであります。併しながら、その説明は必ずしも今日まで十分には行われておらんのであります。何となれば、例えば昨年のストライキが国民経済に或いは国民生活に対して非常に重大な脅威と損害を与えた、こう説明されておりまするが、例えば電気の場合について見まして、この国民生活なり国民経済なりに与えたその影響が、渇水停電等による損害と極めてその間の区別が明瞭を欠いており、果してストによるところの脅威と損害であるかということがまだ明確になつておりませんし、それから又、社会通念が、ストライキ等を非とするその社会通念が成熟したと申しておりまするが、それらについてもまだ必ずしも明確になつておりません。私はこれらの問題は一応ここでは省きますが、ただ一つ輿論の問題について労働大臣にお尋ねいたしたいのであります。  労働大臣は、輿論を尊重する、素朴な輿論は神の声であるというよう表現を用いられて、私があたかもこの輿論を尊重しないかのごとき説明をなされているのでありまするが、併し私は、ここで、ただ一つ、労働大臣は果して、素朴な輿論と、或いは素朴な消費者の声と、有識者や学者の意見と、どちらを尊重されるか、恐らく労働大臣としても学者の意見等は尊重されると申されるでありましよう。このスト規制法に対する見解を見まするというと、有識者や学者は大半これに対して反対をしているのであります。これに対して賛成をいたしておりますところの有識者や学者は極めて少数なのであります。大半の学者が反対をしているところのその学者の意見は尊重しないで、素朴な、例えばろうそく代が幾ら要つたとか、或いは又ガスが出なかつたとかいうような泣き言を並べているところの消費者の一部の人々の意見を尊重しようとするのか。この点について明確な答弁をお願いしたいと思うのであります。  次に労働大臣にお伺いしたいのは、この法案を単独立法とした理由についてであります。提案説明によりますると、単独法の形をとつた理由としては、「本法案は、労使関係の調整とは別個に、もつぱら公益擁護の見地から、争議行為の正当性の範囲を必要な限度で明らかにするものでありますので、今回の措置は既存法律の改正を以てせず、単独法の形をとつたものであります。」このよう説明しているのであります。これは併しながら、よく考えてみると、何も単独法の形をとらなければならない理由とはならんのであります。むしろ政府の立場から言うならば、労使関係の調整とは別個にと言いながら、もともと争議行為方法に関する規制をこの法律は取扱つておるのでありまするからして、若し政府の立場を貫くとするならば、これを労調法の改正その他において意図すべきではなかつたかと思うのでありまするが、この点に関して労働大臣見解を承わりたいのであります。  それから、従来、電産等において行われたストについて、これを違法とする見解であります。只今、私は吉田首相にお尋ねいたしたのでありまするが、この見解については、労働委員会において審議の際に明らかになりましたように、必ずしも意見はまとまつてはおらないのであります。政府部内に矛盾があり不統一があるのであります。なお、これに関連しまして梶原君から、違法性を明確化したのではなくて、却つてこのスト規制法によつて違法性を創造したのではないかという質問がなされたのでありまするが、これに対しまして、労働大臣はまだ明確に回答を与えておられないのであります。思うに、電産等のストについて、従来、違法とする考え方があると同時に、違法としない考え方もある。つまり政府部内において見解が一致してみらんということ、このことを考えてみるならば、政府としては、そこから一気にこれを違法とする方向へ持つて行こうとするには非常な無理があるわけであります。そういうような無理をおかしてまで違法性を明確化しようとして、ここに違法性をむしろ創造する、こういう手段を講ぜられる。この点はどうも私どもとしては納得が行かないのであります。この点に関しまして労働大臣の御答弁をお願いしたいのであります。  それから、通産大臣はお見えになりませんか……通産政務次官で結構でありまするからして御答弁を願いたいと思いますのは、公益事業におけるストの問題であります。先ず第一点は、電気の事業におけるところの業務の正当な運営とは何を意味するか。若しそれが電気の正常な供給であるとするならば、労調法第七条に言うところの「業務の正常な運営」というあの字句と、このスト法を中心としてどのよう関連があるか、これが第一点。それから「電気の正常な供給」というが、その限界はどこにあるか。これが第二点。第一点、第二点とも、電産のストライキを違法とする立場においてこの法案規定した側から言うならば、労調法第七条の「業務の正常な運営を阻害する」いわゆる争議というものに対しては、全面的にこれを否定しなければならんし、そうなれば労調法第七条の規定を更に改正しなければならんというような必要も起つて来るでありましようし、それから又、電気の正常な供給の限界という点については、その限界が明確化しないために如何ようにも拡張解釈される危険がそこに含まれておる。こういうことを私は憂えまするので、先ず電気の事業におけるところの業務の正当な運営とは何か、それから電気の正常な供給の限界というものはどの点にあるかということをお尋ねいたしたいのであります。  それから第三番目に、同じく通産政務次官にお尋ねいたしたいのは、この電気事業にしろ、石炭鉱業にしろ、私的企業であるということであります。言い換えるならば、利潤を追求するところの資本家的な経営だということであります。而もこの電気事業石炭鉱業に対しましては莫大な国家の保護が資金面において与えられておるということであります。而も驚くべきことには、電気の場合は独占事業でありまするが、石炭鉱業の場合における国家の莫大な資金的保護というものは大企業に集中されて、中小企業には殆んど向けられておらない。そのために最近の石炭鉱業界においては中小企業が崩壊するという悲運に際会しておるのであります。これは、労働委員会においても、「炭鉱業者の国家資源の滅失損壊等に対しては何ら国家の資源を保護するという建前からしてこれに対して措置をとらない。労働者が石炭資源の滅失に対しストを以てこれを破壊するというような場合においては、これをこの法によつて規制する。極めて不当ではないか」ということが幾たびか論議されたのでありまするが、今日、中小炭鉱は次から次へと崩壊の憂き目に立つております。いわゆる石炭業界の今日の不況であります。而も政府では、石炭業者に対してはますます合理化政策を遂行するように努力しております。例えば、先ほども通産政務次官答弁によりまするというと、竪坑を何本か掘る、そうして大手筋の優秀な炭鉱を非常に国家では保護してやる。そのために何十億かの金も融資しよう、こういう話がありましたが、政府の計画によりまするというと、昭和三十二年には石炭の生産は五千三百万トンから五千四百万トン、而もこれに対しまする需要はどのくらいかというと五千万トン、結局三百万トン乃至四百万トンは過剰であるという結果を招くのであります。若し石炭鉱業というもの、特に大企業としての石炭鉱業というものを保護するという建前から行くならば、どうしても中小企業としての炭鉱を整理しなければならん、こういう問題が起つて来るわけです。そこで政府としては、最近の例えば九州における水害等によるところの中小炭鉱の休廃坑等に対しても何ら積極的な手段を講じようとしない、むしろこれを合理化政策の一環として推進しようとする傾向すら見られる。電気事業石炭鉱業に対するこのようないわゆる独占、或いは大企業等に対して莫大な保護を与えながら、他方、労働者に対しては極端にこれを抑圧するという政策をとつているのではないか、このことは極めて重大な問題だと申さなければならんのであります。この点について通産省答弁を願いたい。  更に又通産省答弁をお願いしたいのは、電気の正常な供給、それから現在行われているところの供給とが果して矛盾しないか。例えば大口と一般電燈との需用量、料金の関係、こういうものは果して矛盾しておらないだろうか。私は九州電力の場合の例を申上げますが、大口電力の需用量は全体の七八・七%であります。一般電燈は一五・九%であります。料金を見まするというと、大口電力のほうは全体の料金の五五・三%を占めておるが、一般電燈のほうは二七・八%を占めております。つまり高い料金を一般消費者は払わされて、大口消費者はむしろたくさんの電気を使いながら料金は安いという結果になつている。これは、公共事業令三十九条或いは四十条の規定、特に第二項の規定と矛盾するものではないか。このように考えることができると思うのでありますが、この点に関して果して通産省はどのように考えられているか。電気の正常な供給をしなければならないと言いながら、実際においてその供給が正常に行われておらない。而もその電燈会社のすべての負担は一般消費者並びにその電気産業に働くところの労働者の上に転嫁されている。この事実を何と見るか。このことを通産省責任者に御答弁願いたいのであります。  それから最後に、鉱山保安法との関係について再び小坂労働大臣答弁をお願いしたいと思うのであります。鉱山保安法の第四条によるというと、鉱山業者が鉱山保安の責任者だと思うのでありますが、果して労働大臣はそのように考えるか。労働者は単に保安のため必要な事項を守る義務を課されている。ところが鉱山保安の責任者鉱山業者であるとするならば、鉱山保安法との関連においてこの第三条をどのように考えるか。この点を小坂労働大臣に御答弁を願いたいと思うのであります。  なお最後にもう一つ小坂労働大臣にお尋ねしたいのは外国の立法例であります。先ほど上條君からドイツの場合についての経営者協議会の話が出ました。私、不敏にして、外国の中で小さな若干の国、或いはアメリカの二、三の州を除いて、このように電産や石炭の労働者のストライキを制限し或いは殆んど全面的に禁止するよう立法例を見ることができないのであります。西ドイツに若干の例があると言うかも知れません。併し西ドイツは公益事業について労働者のストライキを決して禁止してはおりません。但し、それが例えば暴力的な行為に出た場合については、これを刑法上の対象として処罰するということは出ておりまするが、全面的に、公益事業一般について、或いは又、電気産業、石炭鉱業等について、労働者のストライキを制限し或いは禁止するというような法令を持つておらないのであります。若干の小さな国においてはありまするが、少くとも文明国と言われる国々の中においては、むしろ労働者の権利を尊重する、労働者の権利を尊重することが、その国の民主化のバロメーターであるという考え方が一般に行われているのでありまして、外国の立法例においてそういう例が果してあるかないか。この点を小坂労働大臣にお伺いいたしまして、私の質問を終るものであります。(拍手)    〔国務大臣小坂善太郎登壇拍手
  84. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 堀議員にお答え申上げます。  輿論の問題につきましては委員会でも種々御質疑にお答えしたわけでございますが、私は輿論というものは非常な素朴な形で自然発生的に出て来るものを尊重すべきである。輿論は作られるというような考えも一部にありますが、これは非常に強権的なフアシズムに通ずる道ではないかということをむしろ恐れるものであります。そこで素朴な輿論と有識者或いは学者の輿論とどちらを重く見るかということでございますが、これは総合的に把握すベきものであろうと思います。学者の中には、その見解が、或る意味では一方的、抽象的であり、或いは特定の意図を持つものもないではないと考えらもるので、やはり大衆の声というものを謙虚に受入れるのが政府の態度であろうと考えます。  第二は単独法とした理由如何ということでありますが、これは繰返して申上げることになりますが、石炭と電気の場合の争議行為方法の一部を規制するということでありまして、不当のものを不当であるとして範囲を明確にするのであります。而も三年の時限法でございますから、労働関係の調整といつたような恒久法である労調法の中に入れるということは適当でない、こう考えております。  それから、更に本法案は、委員会でも申上げたのでございますが、違法性の創造とは私どもは考えておりません。従来から違法と考えられていたものについて、昨年の経験に鑑みて、社会通念上許されざる争議行為違法性範囲を明確にしたものでありまして、いわば確認法、解釈法というべきものでありまして、創造規定ではないと考えております。  第四点は鉱山保安法の場合の保安義務に関してでございましたが、御指摘のごとく、私は保安義務は鉱業権者にあると考えております。同法第三条におきまして労働者が保安上必要な事項を守つているというのは、自分の生命のこともございまするが、労働者一人一人が協力しなければ保安が保てないということによりまして、保安に必要な事項の遵守を命じ、以て保安の確保を図つておるということは、石炭鉱山保安規則第四十七条三項に徴しても明らかなところであります。(「範囲が狭い」と呼ぶあり)  更に、外国における立法例としまして、先ほど上條議員の言われました同意決定法と言いますか、共同決定法のことにも触れられましたが、西ドイツの場合の共同決定法は、御承知の通り一九五〇年に施行せられまして未だ鉄鋼において緒についたばかり、その後における状況はどうなるかということにつきましては、まだ多くの結論を得る段階になつておらぬように考えます。更にそれに関連して、この法案が世界のどの国にあるかということでございましたが、これは、国によつてそれぞれ経済事情も違い、又、労働法規関係も違うと思うのでありまするが、大体、労働権というものは、日本の憲法でも、十四条の平等権に対しまして、弱者保護の規定ということで二十八条が入れられたということでございますが、そうした弱者保護という考え方はむしろ十九世紀におきまして、レーセフエール(自然自由放任主義)的なものにしておいた場合にこうなるから保護するという規定でありまして、非常に労働権というものを極端にあらゆるものに対して尊重せよという考え方は古い考え方かと思うのであります。現今のあらゆる近代的な民主主義国家におきましては、むしろこういう労働権を尊重するその建前から、こうした、ここに議題になつておりまするよう争議行為というものは当然しないという常識になつておる。かように考えておる次第でございます。(拍手)    〔政府委員古池信三君登壇拍手
  85. 古池信三

    政府委員(古池信三君) お答え申上げます。  電気の正常な供給とはどういうことを意味するかというお尋ねでございますが、これは、法令の許す範囲内におきまして、事業者の適法な指揮系統に従い政府が認可いたしました供給料金或いは供給条件等に従つて電気供給することが正常な供給でございまして、これが異常渇水でありますとか或いは天災等によつて供給に支障を生ずるというような場合は、正常な供給の限界であろうと考えるのであります。  次に、電気事業石炭鉱業は私的企業であるから、利潤を無制限に認めるようなお話がありましたが、電気事業に関しましては、御承知のように利益処分は政府の認可にかかつておりまするので、そこにおいて利潤の制限が認められるのであります。それから電気料金につきまして、大口の電力と小品の電力電燈等との間に不公平がありはしないかというお尋ねでございます。これは御承知のように、従来長い歴史の下に今日の電気料金が形成されて参つたのでありますが、電気料金は原則としてコスト主義によるべきものと考えますので、(「大口はそうじやないではないか」と呼ぶ者あり)原価計算の結果、十分にその間の大口、小口の調整は取つて参りたいと考えるのでありますけれども、これにつきましては、例えば供給の条件或いは電気の性質というようなことを加味して考えねばならんことは申すまでもないと存じます。  次に石炭鉱業につきましては、御承知のように許可制をとつておりませんので、企業者が休廃止するような場合にこれを差止めるという法律的な方法はないのでございます。併しながら中小炭鉱等が非常に困つて来られるというような場合には、政府は行政上の措置といたしまして十分これが救済を図る考えで、現在までもすでにできる限りそれをやつてつておるのであります。     ―――――――――――――  それから先ほど私が上條議員の御質問に対しましてお答えを申上げました中で、簡潔に申上げましたので、言葉が足りず、誤解を招いた点もあつたようでありますので、ここに補充説明をさして頂きたいと存じます。  今日、電気事業の形態につきましては、その発生の当時から相当な年数が経つて今日に至つておるのでありまするが、その発達に伴いまして企業形態として非常な経営上の変化を来たし、今日の段階に至つておりますることは、御承知の通りでございます。電気事業が他の産業に比べまして非常に高度な公益性を持ち、又いわゆる自然的独占性を持つておるということは、世界の学者も認めておりまするし、一般社会通念として当然に考えられておることでございます。そこで、このことは今更申上げるまでもないのでございまするから、その公益事業であり、又、自然的な独占的性質を持つ事業であるという前提の下におきまして、この事業に関係いたされまする或いは経営者なり従業員の方々が、その枠内において十分自由な活動をして頂く、企業の努力をし、能率の発揮に努めて頂いて、事業本来の目的であるサービスの向上を期して頂きたい。こういう意味合いから、私は先ほど自由競争の精神ということを申したのでありまして、電気事業全体がそういう自由な企業であり得べきものでないということは、これはもう当然のことでございます。従いまして、今後この企業形態をどうするかというような問題は、要するに、電気事業の有する高度の公益性、独占性と又その事業を最も能率よく運営するにはどうしたらよいかという、その両者の調和をうまく図つて行くところに問題があろうと考えるのであります。  この点を先ほどの答弁に追加して申上げる次第であります。(拍手)     ―――――――――――――
  86. 河井彌八

    議長河井彌八君) 市川房枝君。    〔市川房枝君登壇拍手
  87. 市川房枝

    ○市川房枝君 労働大臣に二点ほどお伺いをしたいと思います。  今までたびたび委員会労働大臣から、「この法律は、昨年の電産、炭労のストによつて一般公衆が非常に迷惑をした。それで、こういう争議禁止して欲しい、禁止したほうがいい、こういう社会通念が成熟したから、公共の福祉を擁護するためにこの法律を出したのだ。新聞も、公聴会での消費者代表も全部賛成している。」こうおつしやつておいでになりました。一応御尤ものように聞えますが、だんだん検討して参りますると、この重大な法案を提案する理由としてはどうも薄弱だ。筋が通らない。何かはかにもう少し理由があるのじやないかということを感じさせられたのであります。(その通りしと呼ぶ者あり)何かごまかしというと大変言葉が悪いのですが、そんな感じも私は実は受けておるのであります。まあ併し、それらについてはすでに皆様から御質問がいろいろありましたので、私は、一般の消費者の立場、迷惑をいたしました消費者の立場で二点だけお伺いをしたいと思つております。  第一番目には、私ども一般の消費者家庭の婦人は、昨年のストライキで迷惑をいたしました。これは事実であります。併し、電気について申しますれば、迷惑をしたのは争議の結果だけではない。渇水の停電が相当混つております。私は、争議中において、争議のために遮断された電力量と、渇水のために遮断された電力の数字を、組合と資本家側の東京電力と両方から数字を頂いております。その詳しいことは省きますけれども、資本家側の東京電力から頂きました数字、それを少しだけちよつと申上げておきます。争議が一番激しかつたのは十二月でありますが、東京電力では、十二月の十一、十二、十三の三日間だけ夜間停電を行なつたのだとおつしやつております。この十二月一カ月間における遮断の電力量は、渇水によるものが三万九千三十二メガワツト、ストによるものが三万八百二十メガワツトとなつております。ストよりも渇水のほうが多いのであります。ところが、まあ労働大臣のおつしやるその神のごとき一般大衆はそれがよくわかつておりません。(拍手)大多数の大衆は、あれはストの結果だ、こう思つていると言つてもよいと思う。(「自由党がそういう宣伝をしているからだ」と呼ぶ者あり)昨日の委員長の中間報告で、消費者代表として強力にストを禁止することに賛成されたと言つて御紹介がありました小笠原嘉子さん、実は私の友人の一人で、これは自由党婦人部の幹部のかたであります。それで自由党側から御推薦で出席されたかと思うのでありますが、私がこの人に、公述をされましたあと、あなたはその停電の際に、あれはストばかりでなくて、渇水のが相当混つてつたのだけれども、それを知つていますかと質問した。そうしましたら、そんなことは知らないというのであります。(「大した神の声だ」と呼ぶ者あり)なお、先だつて、実はお名前を出しては少し悪いかも知れませんが、そこにおいでになります安井政務次官が私にこういうことをおつしやいました。「この法律を作らないと電気が切られますよ。消えますよ」というお話が実はありました。(「恫喝だよ」と呼ぶ者あり)これは別にその悪意があつておつしやつたのではなくて、話のついでのときにそういう言葉が出たのですが、実は私はそのお話を伺つて、何だか侮辱されたような、いやな感じを持ちました。あの争議のために迷惑をいたしましたけれども、それはストだけでなく、その中に渇水も大きな原因をしておつたことを大臣はお認めになつていらつしやるかどうか。(拍手)それをはつきり伺いたい。それから、お認めになつているとしたら、その争議だけを禁止しても、私どもの福祉は守られない。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)その点はどういうふうにお考にえなつておいでになるか、お伺いをしたい。  それから第二には、今申しましたように、いわゆる大衆という人たちは、停電をストのせいだと考えている。スト禁止法を作らなければ又停電となると言われれば、そうかというわけで賛成をします。スト権というものはどういうものかということの理解がなかなかできておりません。いわんや、憲法で保障されているスト権を禁止しなくても緊急調整でその福祉が守られるのだということなんぞは勿論知りません。こういう人たちが多いことは事実であります。併し一方、この消費者代表としての婦人の中にも、昨日委員長が紹介されました石垣氏、それからいま一人の代表、又北海道の懇談会で聴取しました婦人の消費者代表は、いずれも、「ストで私たちは迷惑をした。併し働く人たちの生活を守るために止むを得ないストならば我慢をする。こうした法律を作るのは賛成をしない」こういうふうなことを申しております。(拍手)こうした考え方は私は少いとは思います。前者に比べて少いとは思いますけれども、そういう考えも相当存在しておることも事実であります。大臣は、一般消費者の中に、右のような二通り意見があるのだということをお認めにならないのかどうか。消費者は全部これを禁止することに賛成しておるというお言葉を聞いておるのですけれども、今申したように二通りあるということをお認めにならないか。又、新しい憲法の下においての、いわゆる民主主義国日本としては、一体どちらの意見のほうがいいのか。どちらの意見を育てて行かなくちやならないのか。(「そうだ」「よく聞いておけ」と呼ぶ者あり、拍手)これは一般の消費者としての私は名誉のために大臣にお伺いをいたします。(拍手)  なお、通産大臣に対して一言お伺いを申上げたいと思います。それは、先ほど申上げましたように、この間の電産ストの際の停電には、渇水の原因が相当ありました。そうすると、公共の福祉を守るためには、スト禁止だけではなく、渇水のないようにしてもらわないと困ります。渇水は不可抗力だという、こういう御説明では、ちよつと納得が参りません。私ども消費者は、ストによる停電も勿論でありますが、渇水によるたびたびの停電、而も次々と電気料金を値上げしておりまするその会社のやり方にも腹を立てております。渇水だからといつても、一般家庭へ送る電力量はあるはずであります。これも大口の需要者に廻すから足りなくなるわけであります。公共の福祉というなら、会社にも一般家庭への送電を法律を以て義務づけて欲しい。それでなければ筋道が立たないし、片手落ちである、こう思います。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)そういう考えが、通産省通産大臣におありになるかどうか伺いたい。それからなお、電力の配分、大口には何パーセント、一般家庭には何パーセント、小口にはこういう配分の仕方、或いは料金その他につきまして、公共の福祉を守るために、一般の消費者を加えた一つの機関を設ける意思はないかどうか。それを伺いたいと思います。(拍手)    〔国務大臣小坂善太郎登壇拍手
  88. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 市川議員にお答えいたします。  昨冬、渇水による停電が三万九千三十二メガワツト、争議によるところの停電が三万八百二十メガワットであるから、渇水による停電のほうが多いので、昨冬の争議の停電は、余り争議々々と言われるが、そういうものでもないじやないかというお話でございました。私も、他の条件にして等しい限り、渇水があつた場合に、争議がなければこれだけのものがちるわけであります。三万ミリワツトばかりのものがあるのであります。それがやはり全然争議の影響を無視していたというふうには思えないのであります。終戦以後、昭和二十一年以来、停電ストというものはしばしば行われたのであります。併しながら、当時渇水停電というものが非常に多く行われておりましたので、停電ストをやりましても、その影響があまり国民大衆に響かなかつた。ですから、停電ストというものがあるのだか、ないのだか、というくらいに思つていた国民が相当ある。ところが昨年の争議では、非常にその影響が大きかつたので、成るほどこれはいけない、こういう気持が起きたのだろうと思うのであります。これは私どもの言う社会通念であります。その社会通念の成熟を、まじめに謙虚に取上げて、不当なる争議行為範囲をここに明確にしよう、こういうのが私どもの趣意であります。  第二の、スト権を理解しておる人は多いかどうか、一般の神の声と言われる大衆の声の中に、争議権というものを本当に理解している人が多いかどうかということでありますが、ストライキというものが業務妨害を伴うということは当然の常識でありまして、さればこそストライキの違法性は阻却されるでありましよう。そこで、一般の大衆の中に、本能的にストというものに理解を持つている人とない人とあるということは事実でありましようけれども、そこで私は、さればというて、この大衆の考え方からして、やはり争議権というものは公共の福祉と調和を図ることが必要だという考えは、これは大衆一般が持つていると思うのであります。先日の公聴会でも、アメリカから帰つたばかりで、非常にジヤーナリズムが騒いでいる有名な御婦人が、スト権の本能主義ということを言われたと聞きましたけれども、やはりストライキ至上主義といつても、他のあらゆる権利に優先してあるということは、これは人間が社会的に存在している以上、ストであれば何をしてもかまわないという議論も、これも極端だと思うのであります。要するにスト権と公共の福祉との調和を図るということが必要であろう、こう思うのであります。
  89. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて質疑通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終局したものと認めます。  暫時休憩いたします。    午後五時五十七分休憩      ―――――・―――――    午後六時六分開議
  90. 河井彌八

    議長河井彌八君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。  議長は、先刻、質疑通告者の発言は全部終了いたしました、質疑は終局したものと認めますと宣告いたしましたことは、間違いでありました。(「了解了解」と呼ぶ者あり)なお、政府側におきまして答弁が残つておりました。よつて政府発言を許します。古池通問産業政務次官。    〔政府委員古池信三君登壇拍手
  91. 古池信三

    政府委員(古池信三君) 市川議員のお尋ねに対しまして、通商産業大臣に代つてお答えを申上げます。  現在の日本は、御承知のように電力の需給が非常にアンバランスになつておりますることは、誠に遺憾に存じます。政府といたしましては、電気供給力を速やかに増強したいというので、電源開発の促進につきましては異常な努力をいたしておるのであります。特に今後の水力電源といたしましては、従来の水路式に加えてダム式の発電を多くするように努力をいたしております。従いまして、これらが完成いたしまするならば、渇水による停電ということはおのずから消滅するものと考えております。お言葉のように、渇水によつてその都度停電をするということは、誠に残念のことであると考えます。なお、かような場合に現在は止むなく制限を行なつております。この制限電気需給調整規則に基いて行われておるのでありまするが、その際に大口の電力と小口或いは家庭の電燈電力等との間の調整を図るべきであるという御意見は、誠に御尤もに存じます。政府といたしましては、従来はかような場合には極力大口を抑制して家庭の電力の確保に努めておりますが、今後もその線を強化いたしまして、十分御期待に副うようにして参りたいと考えております。  それから消費者を加えて、かような場合に、行政上の機関を設ける考えはないかというお話でございますが、この点につきましては、只今通商産業省におきまして法令改正審議会を設け、法令の改正につきまして審議中でございます。従いまして、この問題も同時に検討を加えて、その研究の結果に待ち、適当な措置を講じたいと考えております。(拍手
  92. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて質疑通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終局したものと認めます。  議長は、先刻の取扱につきまして粗漏の点を諸君に謝する次第であります。(「了解々々」と呼ぶ者あり)  暫時休憩いたします。    午後六時九分休憩      ―――――・―――――    午後七時三十六分開議
  93. 河井彌八

    議長河井彌八君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。  電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案、本案につきまして討論に入ります。順次発言を許します。阿具根登君。    〔阿具根登君登壇拍手
  94. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は、只今議題となつております電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案に対しまして、日本社会党第四控室を代表いたしまして反対の討論をなすものであります。(拍手)  先ず最初に、本法案は、昨秋行われた電産炭労ストが、国民経済と国民の日常生活に与えた脅威と損害が甚大であつたという理由を以て作成提案されたものであります。このことは政府提案理由説明に明らかであります。労働者はたとえ一日でも一時間でも冗談や面白半分にストライキをやるものはありません。よくよく止むに止まれぬ事情がなければ、日々の生活を犠牲にしてストに立ち上ることはないのであります。即ち、前年のストも、事業主の頑迷にして無理解な態度こそが労働組合をしてあの長期ストに追い込んだのであると確信するものであります。(拍手)電産炭労の当然過ぎる賃上げ要求に対し、事業主側は長期に亘る団体交渉にも何ら誠意を示さず、加うるに、炭鉱のごときは、これに対して賃金の切下げと人員整理を以て応えたではありませんか。而もスト突入の四十数日後に現行賃金の四%切下げを回答したのであります。又、電産においても然りであります。かくのごとき状態が、果して誠意ある態度、真剣に争議を解決せんとする態度と言えるでありましようか。むしろ事業主側は、七百万トンに上る貯炭を抱えながらも、炭価の引上げを狙い、労働組合の分裂弱体化を企図して、ストの長期化を希望したのであります。事業主側は、品を開けば、ストにより一日三億円の損害だと言つていたが、スト期間中といえども各社の株価は上昇の一途を辿つた事実は、これを裏書するものであります。私心なき第三者でさえ、明らかに、長期化の責任は事業主側にあると判定しているのであります。現に、参議院公聴会において、学者、専門家のみならず、消費者代表の婦人さえも、先ほど赤松議員その他が言われましたような、「会社は莫大なる利益を上げていると聞いていたし、高額所得者の大部分が炭鉱主で占めているという新聞記事さえ出たので、もう少し賃金を上げてさえもらえば悲惨なストがあれほどは長引かなかつたでしよう」と述べております。仮に百歩を譲つたとしても、スト長期化の責任の大半は事業主側にあると言うべきである。然るに政府はこの責任をすべて労働組合側に転嫁し、(「一方的だ」と呼ぶ者あり)労働者の基本的人権を大幅に剥奪し、事業主側には何らの規制をも加えていないのであります。(「それが資本家内閣だ」と呼ぶ者あり)この暴戻にして而もお粗末極まる法案を画策したのであります。このような暴法は断じて許すべきでないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)  炭鉱の実例を見ましても、地下数千尺の悪条件の下で不完全なる保安施設の中に働く労働者は、毎日生命の危険にさらされております。(「何人か死んでいる」と呼ぶ者あり)朝出るときには、笑いながら、かわいい我が子の頭を撫でて坑内に下つた人が、上つて来たときには血と炭塵で真黒になつて冷たくなつている。(「よく聞け」と呼ぶ者あり)そういう私のこの意見を笑いながら聞くような人があるから、我々はこういう討論を最後まで続けなければならないのであります。(拍手)而もその冷たくなつた死骸に妻子が取り槌つて泣いている姿は、どこの炭鉱でもまだ繰返されておるのであります。どこにかかる悲惨な労働がありましようか。かかる労働者の作業の実態も生活の実態も知らずに、ただ公共の福祉という美名により、団体行動権を大幅に制限又は禁止し、一方、事業主のほうは一切おかまいなしという本法のやり方は、如何に政府が強弁するも、六百万の目覚めたる労働者大衆並びにその家族を納得せしめることは絶対にできないのであります。(拍手)  本法案が、公共の福祉に名をかり、の実は憲法上の神聖なる労働基本権を弾圧し、奪い去り、以て一部資本家の財産権を擁護せんとする醜悪なる意図に出たものであることは、例えば第三条を見ても明らかであります。(拍手)第三条においては、保安業務の停廃により、「鉱山における人に対する危害、鉱物資源の滅失若しくは重大な損壊、鉱山の重要な施設の荒廃又は鉱害を生ずるものをしてはならない。」と書いてあります。労働委員会においては、本条に対する疑義百出いたしまして、質問が重ねられたのでありますが、統一ある満足な答弁は遂に何らなされなかつたほどに、(「できないんだ」と呼ぶ者あり)不完全且つ矛盾多き規定であります。これは暫らくおくとしましても、この規定が必要とされる理由を、政府は、かかる争議行為は、法益の均衡を著しく失し、又労働者の復帰すべき職場を失わしめるものであるから、争議行為の正当性を欠くものとして禁止すると言うのであります。(「でたらめだ」と呼ぶ者あり)生命の危害、これは現に労調法第三十六条に厳然たる規定が置かれ、何ら本条の必要はありません。鉱害も又然りであります。残るところはすべて炭鉱資本家の財産を保護することのみではないかと言いたいのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)勿論これらは国家の資源として貴重なるものであることは、私も認めるのにやぶさかではありません。いや、国家のため、国民のために貴重なることを認めるが故にこそ、我が党は、かねてから、重要産業、特に石炭鉱業の国有国管を主張し、重要なる資源の国家的活用を具体化せんとして来たのであります。(「それが真髄だ」と呼ぶ者あり)然るに戦争経済の矛盾は今春来の炭価低下となりまして、中小炭鉱の休廃止、即ち炭鉱の全面的放棄の続出となつておるが、何故に政府はこれを傍観するのかと言いたいのであります。(「資本家のためだ」と呼ぶ者あり)本法において、政府は、ストライキによる保安放棄禁止し、尤もらしい理由を付けておりますが、然らば、これらの事業主の休廃坑即ち鉱山の放棄は重要産業の荒廃にならないのでありましようか。又、廃山となつた山を追われた数万の労働者は、帰るべき職場はすでにないのであります。(「路頭に迷つておる」と呼ぶ者あり)政府が第三条に掲げた提案理由が正当であるならば、これに対しても同様な立法措置を何故に講じないのでございましようか。(「資本家のためだ」と呼ぶ者あり)炭鉱の休廃止を放置することによる国家的損害は、一時的なストライキによるものより遥かに大きく、職場を失つた現実の失業者の数はすでに厖大であります。なお、今後大企業を含めた企業整備の嵐の犠牲となる労働者は数万人に上ると案じられておるのであります。而も、このときに当り、政府は、炭鉱、電気労働者のスト権のみを一方的に制限し、現実に炭鉱を荒廃せしめ、数万の労働者職場を奪い、失業のどん底に蹴落しておる資本家側を擁護し、憲法に保障された労働権、生活権を、資本家の私有財産権の下に隷属せしめる政府の弾圧的、欺瞞的態度こそ、断固として糾弾しなければならないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)  次に、このように理不尽な口実を以て政府制限乃至剥奪せんとしておる労働者の団体行動権とは如何なるものでありましようか。吉田首相より不逞の輩と呼ばれる労働者に対して、憲法は、第二十八条で、明らかに「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」と、明文を以て規定し、且つこれをその他の基本的人権と併せて、「この憲法が国民に保障する基本的人権は侵すことができない永久の権利であり、国民の不断の努力によつてこれを保持しなければならない」と、特に念入りに規定しております。即ち、全国民が勤労者であり、勤労することにより、「国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」ことが可能であります。この全国民的要請、全国民に対する憲法の期待の下に、憲法第二十八条の労働者の基本的権利の侵すべからざる最高の価値は更に裏付けられ高められておるのであります。即ち、労働者の団体行動権により労働者の最低生活は初めて保障され、(拍手)全産業は興隆し、国の繁栄があり得るのであります。これらの労働者の諸権利は、永年に亘る労働運動の歴史により、苦難に満ちた闘争の上に築き上げられた動かすことのできない歴史的遺産であり、文化国家、民主国家の最も大切な土台石の一つであることは、いやしくも政治に携わる者のイロハであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)更に、労働法学者の理論から申しましても、労働者のストライキ権とは、即ち、使用者との間に労働力を売買するに当り、その価格が気に入らねば売らないというに過ぎないのであり、人間本来の権利であり、何人といえどもこれを剥奪することはできないのであります。若しこれを禁止するとすれば、それは労働者をしてその意に反する苦役を課することになり、いわゆる強制労働であり、憲法第十八条にいう「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」この規定に真向から違反するのであります。  以上で、電産、炭労両産業労働者のスト権を制限又は禁止することが憲法第二十八条その他に違反する違憲立法であることは明白であります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)然るに政府は、基本的人権といえども公共の福祉に反するときは制限することができるという見え透いたきまり文句を掲げて、公共の福祉という言葉をあたかも基本的人権を制限する特効薬であるかのごとく考えておるのであります。然らば、私は、以下、公共の福祉なる概念は如何なる内容のものであるかを順次解剖してみたいと思います。  前に述べた憲法第十二条、即ち「基本的人権は不断の努力によつて保持しなければならない、」これの後段に、「又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」とあります。これ又貴重なる憲法の原則であり、与えられた基本的人権の濫用によつて、互いに基本的人権の侵害となることのないことを期待したものであり、学界の通説は、これを精神的道徳的規定と称しておるのであります。或いは白地規定とも言うのは、つまり公共の福祉という概念によつて画一的に基本的人権を制限する抽象的な法律を制定することは許されないのであり、これが具体的なケースに当つて初めて何が具体的に公共の福祉であるかを定めるべきものである、とするのであります。然るに政府は具体的に何を公共の福祉の内容としているのでありましようか。法案一条には、「電気事業及び石炭鉱業の特殊性並びに国民経済及び国民の日常生活に対する重要性にかんがみ、公共の福祉を擁護するため」云々規定し、又、提案理由説明には、これを受けて「両産業の特殊性、重要性、並びに労使関係の現状に鑑みまして、争議権と公益の調和を図り、以て公共の福祉の擁護を図る」云々と述べているのであります。これによつて見れば、争議権と公益との調和を図るというのが政府の言うところの公共の福祉であることがわかるのであります。即ち、公益のために争議権を抑えることが公共の福祉だということになるのであります。(「一方的だ」と呼ぶ者あり、拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)政府の言う公共の福祉とは、実は、終戦前に用いられ、永年我々に馴染の深い悪夢のごときあの公益優先の原則ではないかと考えられるのであります。いわゆる公益のため争議権制限するということが、果して新憲法下において許されることであるかどうか、諸君においてよくお考え願いたいと思うのであります。若しこれを許されるとするならば、公益優先の名において他のあらゆる基本的人権もすべてこれを制限乃至剥奪し得るわけであります。思想、言論、結社等々の自由なるべき人権は一片の空文と化するのであります。そうして、そのとき憲法は生ける屍となつてしまうのであります。日本の労働三法も、やがてはナチス・ドイツの国民労働秩序法となり、又、フアツシヨ・イタリアの労働憲章と化するでありましよう。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)東条軍閥の専制政治、ヒトラー、ムツソリーのフアツシヨ政治を我々は想起せざるを得ないのであります。そして、これらフアツシヨ政治が必ずもたらした亡国の惨は、一つとしてその例から漏れてはおりません。我々はあの戦争と敗戦ににがい経験を、この骨身に泌みて記憶しておるはずであります。これらのフアツシヨも最初は一歩から始まつたのであります。毒草の芽は双葉のうちに摘まねばならないと思うのであります。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)我々は、同僚参議院議員の各員に対し、深甚なる御考慮をお願いしたいと思うのであります。  次に、政府は、「いわゆる電源スト、停電スト、給電指令所の職場放棄等のスト行為が、従来から不当であり、従つて違法である。又、石炭鉱山における保安要員の引揚げが同じく従来から違法であつた。本法案はこれを明確にするためのいわゆる確認立法であり、解釈立法である」と説明しておるのであります。併しながら、右に掲げた行為が違法であつたという解釈吉田政府の独断的解釈であつて、(「その通り」と呼ぶ者あり)一般に通用する学説及び判例とは甚だしく異なつておるのであります。(拍手)停電ストにしても、電源ストにしても、一つとして違法であると決定した判例はないのであります。川崎発電所の停電に対する東京高等裁判所、横浜地方裁判所の判決のごときは、停電ストをして、「重大な事故発生の危険の伴いやすい職場放棄等の手段を避け、比較的安全にして効果的な停電ストの方法に出たことは、電気事業の性質上機宜に適した措置であつたものと言うべく、従つて本件停電行為を以て必ずしも正当な争議行為範囲を逸脱したものと認められない」と判示しているのであります。(拍手)電産のストが違法であるならば、なぜ昨秋の争議の際、違法であると警告しなかつたか。むしろ政府では、池田通産大臣を初め政府委員は、正当な争議行為であると答弁しているではありませんか。(「その通り」と呼ぶ者あり)殊に、電源スト、給電指令所の職場放棄、即ちオウーク・アウトは、政府行政解釈でさえも、明らかにこれら単なる退去は違法としていなかつたのであります。このことは、たまたま或る日の委員会において労働大臣と同席した通産省政府委員答弁食い違いが生じたことによつても明らかであります。(拍手)又、保安要員の引揚げについても、鉱山保安法第五条に規定する労働者の義務は、スト権行使の際には適用のないものであることは、学者の通説であり、又、政府当局ですら、そのよう解釈していることは疑いのないところであります。尤も、保安要員の引揚げにより鉱山を破壊してもよいのだと私は言うのではありません。ストライキ権はこのように強力なものであります。国家のため必要であればこそ、このように強力なものが認められているのだということを認識されたいのであります。故に、それ以上は労働者の良識と労使双方のフエア・プレイに任すことが最も穏当且つ安全であるというべきでありましよう。  右のごとく、本法案は、政府の言うように、従来から不当違法であつたものの確認等ではなく、新たに、正当なる争議範囲を無に近くまで縮小するものであります。(「欺瞞だ」「けしからんぞ、全く」と呼ぶ者あり)これを、確認立法であるとか、社会通念の成熟により従来非とされていたものが違法性を獲得したというよう説明を以て議員並びに国民を欺瞞せんとする政府の態度は、最も卑劣にして悪辣なるものと言わざるを得ないのであります。政府は確認規定であると強弁しているが、若し現在上訴中の事案が最高裁判所で無罪になり、停電、電源ストが正当な争議行為であると判示されたならば、そのときは政府は如何なる責任をとるつもりか。(「手を挙げろ」と呼ぶ者あり)政府のごまかし理由の提案によつて可決された法律の効力は如何になるものでありましようか。そのときの政治上の責任について政府は今から十分研究されていても早過ぎはしないと思うのであります。(拍手)一応御注意申上げておきます。(「吉田内閣潰れてる」「宣告にも等しい」と呼ぶ者あり)  卑劣ついでに一言申し添えれば、第一、本法案の名称は、「電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案」とあつて、舌を噛みそうな長い名前でありますが、これが曲者であります。争議権制限ならば、現存する労働法規の中にちやんと挿入すべきでありましよう、いわんや、政府の主張するごとく解釈法規であるならば、労働組合法第二条第一項に、「本条の適用について何々は正当なる行為と見ない」と書けば、最も簡単又妥当ではないでしようか。それをあえてなさず、殊更に仰々しい単行法を作成したのは、労組法に挿入すれば本法が如何に無理で珍妙なものであるかが一目で明瞭になるからであります。どなたでも一度労組法に書き入れて読んでみられたらわかります。それほどひどい法律なのであります。又、語義も明らかでない。「規制」という妙な字句を作り出して、制限でもなく禁止でもないようにぼかそうとしているのであります。その上、「争議行為方法規制」と、持つてつたような言い方をするのは、方法規制するだけであつて争議権そのものは従来通りだという、見えすいた答弁にも現われたことく、(「ごまかしだ」と呼ぶ者あり)全く政府の態度は一片の誠意もなく、インチキな万年筆を売りつけんとするテキ屋の嘘八百と何ら選ぶところがないのであります。(拍手)我らの祖国日本をあずかる政府として情けない限りではありませんか。  最後に、私は、本法案が日本の労働運動及び民主主義の発達に及ぼす影響について論及いたしたいと思うのであります。(「今が民主主義の全盛期だ」と呼ぶ者あり)  労働大臣は本法案説明に際しまして、英国の、一九二六年、炭坑に対する英国政府の補給金打切りに伴う賃金値下げと労働時間の延長を契機として起つた一九二六年の大ゼネスト後において、ボールドウイン内閣によつて提出された世界最初の改悪法案である一九二七年の「労働争議及び労働組合法」を引用いたしますけれども、然らば果して一九二七年のこの法律は、英国の労働運動に如何なる役割を果したでありましようか。一九四六年、この法律を廃止するに際し、検事総長ハートレイ・シヨウクロス卿は、英国下院において次のよう説明しているのであります。「一九二七年法について見ると、この法律の効果は殆んど失敗と見てよい。争議権の行使に対する実際的な効果は全くなかつた。そして労働大衆の間には、不正が行われていると激しい気持と、法廷は労働大衆に対抗しているという感情が出、法律労働大衆の不利益になるように復讐的に作られたという観念、そして労働権が次々に奪われて行くという感じを労働大衆に与えたのであつた。即ち、一九二七年法は未だ曾つてない明瞭にして不正な差別的な階級立法である」と断じているのであります。(拍手)一九二七年法についてハートレイ・シヨウクロス卿が指摘しているごとく、本法案も又、労働大衆に対し、法律労働大衆を弾圧するものであり、報復的に作られるものであり、裁判所は資本家擁護の階級裁判であるという観念を与えることは、火を見るよりも明らかであります。(拍手)  私は、本法案が、争議権を剥奪され、制限された電気並びに炭鉱労働組合を初め、日本の労働運動をして極力的な方向に走らしめ、議会政治を否認し、暴力革命への方向を辿らすことを、心から憂えるものであります。(拍手)又、私は、本法案が日本の民主主義を崩壊せしめるものであることを指摘したいのであります。或る人は欧州諸国において争議の少いことを述べ、日本の労働組合は行き過ぎであると糾弾しておりますけれども、それらの国々における社会保障制度の発達は、日本の場合とは比ぶべくもないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)この社会保障制度の発達の故に争議も少いと言わざるを得ないのであります。社会保障制度の発達は民主主義の発達の結果であります。(拍手)而してこの民主主義発達の推進力は労働組合であることは、歴史の証明するところであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)民主主義の推進力である労働組合を弾圧するならば、日本の民主主義は必ずや後退するでありましよう。(「フアツシヨだよ」と呼ぶ者あり、拍手政府は、社会通念が成熟したと言つて、一般消費者の一時的な感情や、無責任にして冷酷なる第三者の声を悪用して、本法案を提出いたしておりますけれども、私は、百年の計を立てて大所高所から判断すべきが政府の態度であらねばならないと思うのであります。(拍手)現在、日本の政治家の最も大なる課題は、日本の民主主義を如何に実現するかということであります。若し、与党並びに一部の議員諸公がこのことを忘れて、本法案の可決をあえて強行するならば、日本の民主主義の萌芽は摘み取られ、日本の民主主義は永遠に葬り去られるでありましよう。(「歴史的段階だ」と呼ぶ者あり)これは角を矯めて牛を殺すの愚であり、悔を千歳に残すであろうことを警告いたしまして、私の反対討論を結ぶ次第であります。(拍手)     ―――――――――――――
  95. 河井彌八

    議長河井彌八君) 田中啓一君。    〔田中啓一君登壇拍手
  96. 田中啓一

    ○田中啓一君 私は自由党を代表して、本法案に対し衷心より賛成の意を表するものであります。  本法案について第一に明らかになさねばならぬと思いますのは、この法律憲法に違反することなきやの点であります。只今阿具根君の御意見を伺つておりますると、炭労並びに電産の争議権の一部を制限するのは、憲法第一十八条の違反ではないか、(「その通り」と呼ぶ者あり)こういう御議論でございました。(「違反だよ」「間違いない」と呼ぶ者あり)恐らく、これは憲法二十八条と二十九条とを比較されて、憲法二十九条には、「財産権は、これを侵してはならない。」と書いてあるだけでなく、更に「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。」と、同条の第二項で制限が附してあるのに、第二十八条においては、ただ「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」とのみ書いてありまして、何ら制限が附してない。故に、財産権については法律を以てすれば公共の福祉のために制限できるが、労働者の団体行動権は、そのようなことはできない。若し制限をする法律を作れば憲法違反なりという御議論であろうかと思うのであります。併し、憲法乃至法律解釈は、ただ隣り合つている二つの条文だけ読めばいいというものでは私はなかろうと思います。よろしく全文を論理的体系的に読まねばならぬものであることは、私が申すまでもなく、すべての論者の首肯せられるところであろうと思います。  憲法において、国民の権利義務に関することは、主として第三章におきまして第十条乃至第四十条に亘つて規定してあるのでありますが、先ず第十一条及び第十二条には、「基本的人権はこれを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う。」只今も阿具根君の御引用になりました通りに、総括的に規定をしてございます。この第十一条及び第十二条が、以下少くとも第四十条までの各種の基本的人権を規定した条文にかかつて行くものであることは、疑いなき明白な法理であると存じます。なお第十三条には、別の見地から書いた、前二条のいわば補完的の意味をも持つた、やはり総括的規定解釈すべき条文がありましてここにも「生命、自由、幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他国政の上で最大の尊重を必要とする」ということが書いてあります。問題になつております第二十八条の勤労者の団結権及び団体行動権が、国民の生命、自由、幸福追求権の一種であることは明らかでありまして、それであればこそ、日本の労働法の合憲性が初めて立証できるのではありますまいか。(「わけがわからんぞ」と呼ぶ者あり)現在のいわゆる労働三法を誰も違憲立法なりと考えておるものはございますまい。先ず第一に労働基準法については、これは、一番、論がないのでありましよう憲法第二十七条に、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」と規定すると共に、(「失業者はどうする」と呼ぶ者あり)賃金、就業時間、休憩時間、その他の労働条件の基準は、法律でこれを定めると書いてあります。恐らく憲法を追うてこの労働基準法を作ることについては誰も異存がないでございましよう。ところが労働法並びに労調法になりますと、これは勤労者の団結権や或いは団体行動権に対する幾多の制限規定を含んでおりますから、若しこれらの権利を全く無制限な天賦人権論的なものと解するならば、何としても憲法違反ということになるのでありましよう。併し私はそうは思いません。第十一条乃至第十三条の総括規定は、この第二十八条へもかかつて来るのでありまして、現在の労働法も労調法も立派に憲法に合致した法律であります。  今ここに議題となつておる本法案も、電気の正常な供給に直接に障害を生ぜしめる行為、又は炭鉱保安業務の正常な運営な停廃して重大な結果を招く行為は、公共の福祉に反することとなるので、勤労者の団体は争議行為としてやるなということなんでありますが、(「同情するよ、あなたの気持には」と呼ぶ者あり)かように考えてみますれば、あたかも、先ほど、なぜこの今回の法律労働法或いは労調法の中に入れぬかというようなお話もありました通り、全く同様の趣旨のものでありまして、憲法の条章には毫末も違反するところはないと思います。(「論理が立つていないじやないか」と呼ぶ者あり)誠にかような講釈的の憲法論を申上げて恐縮でありますが、私は、とかくこの法律について違憲論が出ますので、この点は、はつきりと我々の解釈を申上げておく必要があると存じまして、あえて申上げた次第であります。  又、本法を、或いは片手落ち、労働者ばかり弾圧をする法律だと、(「その通り」と呼ぶ者あり)かように申されるのでありますが、本法は御覧の通り、(「御覧の通り規制している」と呼ぶ者あり)電気経営者も、又炭鉱の経営者も(「儲けておる」と呼ぶ者あり)同じく規制を受けるのでありまして、御承知の通り皆さまがしばしば言われる通りです。(「でたらめだ」「嘘だ」と呼ぶ者あり)およそ労働争議というものは労使がおのおの対等の立場で揉み合うところにある、自主的にやらしてもらいたい、こういうことでありますが、経営者側は財産権に基いたロツク・アウトを禁じられることになります。従業者のほうは御覧の通り争議方法の一部を規制されることになるわけであります。どの点にも片手落ちにならぬと思うわけであります。(「どこの国の話をしているか」「少し頭が変だよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)又、本法は電気と炭鉱の保安業務と両方の規制に亘るのでありますが、炭鉱へ参つてみますると、「我々は山を愛する。じやによつて自分の首をくくるような、保安業務を捨てるようなことはない。我々は捨てやしません。無用な法律であります。」かようなことを随分私どもは聞いて参りましたが、併し公聴会において、炭労の阿部君は「やはり止むを得ぬときには、やる決心であります」、こうはつきり言つておる。いわんや今日(「自衛権の発動だ」と呼ぶ者あり━━━━━━━━━━━━━━━━━総評の指導原理はどこにありますか(「取消せ」「何を言うか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)かような状態で、我々はどうして一体……。山におられる方々が己れの仕事に熱心なことはよく存じておりますが、(「頑張れ」「懲罰だ、でたらめだ」「取消せ」と呼ぶ者あり)よし、よし。(「それなら取消せ」と呼ぶ者あり)激昂することはありません。かような状態で、我々は山におられる方々が、山を愛することはわかりますが、それだというて、かような状態で私どもは絶対に炭鉱における保安業務の停廃がないということを保証を受けるわけには参りません。我が国におきまして、今回かよう法律を出すに至りましたことは、折角、労使双方の良識に待つて争議は自主的に解決してもらいたいことは、やまやまであるのでありますが、英米を初め、外国におきましても、一度も曾つてような電源ストとか停電ストとか保安業務の放棄ということは起つておりません。どうか我々はこの三年間の間に何とかして国民の間における良識によりまして本法が不要になることを期待してやまないのであります。先ほど炭鉱は休廃鉱が起きておることを申しておられましたが、昨年の電源或いは停電ストによりまして、他の産業なり或いは日常生活に及ぼしました影響は如何ばかりでありましようか。どうか諸君は、いわゆる諸君の組織労働者のほかにも幾多の未組織の労働者がおられ、又幾多の中小企業に属しておる人がおられて、大きな損失をこうむつても訴えるに所なき多くの人々のあることに思いをいたして頂きたい(拍手)かように考えて参りますれば、もともと山を愛し仕事を愛する労働者諸君だと思います。(「当り前だ」「それを圧迫するな」と呼ぶ者あり)ただ、その時の勢いに押されて、(「勢いとは何だ」と呼ぶ者あり)或いは電源、或いは停電ストをやる、或いは保安業務を放棄するというようなことは、(「君たちこそアメリカに押されているのじやないか」と呼ぶ者あり)本当に思いを国民に寄せられるならば、私は、必ずやだんだんに修正をし、やがてこの法律を不要にする時が来るだろうと、私は期待をいたすものであります。どうか政府は、積極的に経済政策をとられ、企業規模を拡大し、国民生活の水準の向上を図られ、断々乎として所信に邁進せられんことを望みます。必ずや我が国民はこの所信を私は支持することを確信して疑わぬのであります。(拍手、「所信とは何だ」「反対か賛成か」「ピンぼけピンぼけ」「絶対取消せ」と呼ぶ者あり)     ―――――――――――――    〔田中啓一君発言の許可を求む〕
  97. 河井彌八

    議長河井彌八君) 田中君、何ですか
  98. 田中啓一

    ○田中啓一君 只今の私の発言中に不穏当の発言がございましたならば、議長において速記録をお取調べの上、適当に措置されることをお願いいたします。
  99. 河井彌八

    議長河井彌八君) 承知いたしました。田畑金光君。     ―――――――――――――    〔田畑金光君登壇拍手
  100. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は日本社会党を代表し、只今議題となりました電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案に対し、絶対反対の意思を表明するものであります。(拍手)  本法案は、民主憲法の精神を蹂躙し、全体主義的旧日本逆行への一里塚であり、独占資本に奉仕する反動立法以外の何ものでもありません。労働者の団結権、団体行動権は、近代市民社会における社会権としてその地歩を確保し、今日の文明国家におきましては、憲法その他の立法を通じ、或いは又制度の上におきましても、労働者の基本権として保障されておることは周知の事実であります。然るに公務員に対しましては、公務員は全体の奉仕者であつて一部の奉仕者ではないとして、団体行動権を禁止し、公共企業体職員については、公共の福祉と企業の重要性に名をかり、争議権を剥奪し、名目的には人事院の勧告と調停仲裁制度を以てこれを補充しているが、事実は予算上資金上の故を以て空文化し去つたの吉田内閣の一貫せる方針であつたのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)国会のたびごとに労働法を改悪し、独占資本の歓心を買うに汲々たるものが吉田内閣であり、昭和二十四年の労働法の大幅改悪、昭和二十七年における改正等は、そのうちの最たるものでありまするが、今次のいわゆる争議規制法案に至つては、その反動性と露骨化をいよいよ明確ならしめて参つたのであります。このままに推移いたしますならば、吉田内閣とその与党の悪政は、労働者の基本的人権を根こそぎに剥奪し、日本の民主主義を抹殺するでありましよう。私は、日本の民主主義の前進と擁護のために、本法案は飽くまでも葬らねばならんと考えるものであります。(拍手)  第二に私が指摘したいことは、本法案は、昨年のストに鑑み、電気事業及び石炭鉱業の特殊性及び重要性並びに労使関係の現状に照らし、争議権と公益の調和を図り、以て公共の福祉を擁護するために、両産業における争議行為方法について必要なる規制を図ることを以て政府提案理由といたしておりまするが、憲法二十八条の労働者の基本権は、しかく容易に公共の福祉の名の下に制限できるものでありましようか。政府は、憲法第十二条、第十三条に基く公共の福祉に関する規定によつて憲法第二十八条に基く労働基本権は制限されるものだといたしておりますが、併し、憲法第十二条の、いわゆる「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。」という、この規定こそは、全体主義国家におきましては国家権力により国民の自由と権利を剥奪されがちでありますが故に、国民自身の努力によつて飽くまでもこれを守り抜かねばならぬとする精神規定と見るのが通説でありまして、殊に今日フアツシヨ化しつつあります我が国現在の政治状況に対し、いみじくも符合する宣言規定であると私は申上げたいのであります。(拍手労働者も一個の自由な人格者として尊厳を認められる、この大精神が即ち憲法第十三条の「すべて国民は、個人として尊重される。」という規定でありまして、公共の福祉の概念も又このような社会を基盤として初めて成り立つものであり、言葉を換えて言いまするならば、公共の福祉とは基本的人権の調整機能を指すものであつて、それ自身が基本的人権の侵害者であつてはならないのであります。何人も電気がとまることを欲する者はありません。電気は常に明るくあつて欲しい。何人も汽車電車のとまることを欲する者はありません。いつも欲するときに常に動く電車であつて欲しい。これらは社会一般の便利であり、便益にほかなりません。併しながら、労働者が人間的な生活をしたい、経済的地位の向上を図りたい、これは生存権の欲求であります。即ち絶対的なものであります。この絶対的な要請が、社会一般の便益を図るという相対的要請によつて、しかく容易に制限され得るものでありましようか。政府は、「停電スト、電源スト或いは給電ストを初め、いわゆるウオーク・アウトの争議方法は、従来とも不当、妥当ならざる争議行為であり、違法な争議行為であつたが、昨年、両産業のストを通じいよいよ社会通念は成熟したのである。この成熟した社会通念に基き本法案を制定し、違法性を明確化した宣言規定である」と説明いたしております。社会通念といわれるものが、僅か一両月のストライキを通じ、しかく容易に而も単純に成熟するものでありましようか。一定年数を経過し、社会的慣行或いは経験を通じ、一般の法的確信或いは法的意識が成長し、初めてそこに健全なる法規範としての社会通念は形成されるものと言わねばなりません。政府の言う社会通念とは、ストによつて便益を害された国民の単純素朴な反感の感情に過ぎないのであります。労働者に団体行動権が認められておりまする以上、争議の際、社会公衆に或る程度の迷惑を及ぼすことは労働立法の当然の前提でなければなりません。一般的便宜、便利、国民の反感を巧みに利用し、あえて公共の福祉の名の下に本法案を制定されんとしておるのであります。まさに、吉田反動内閣の手に成れる諸立法中、その反動性と違憲性においては曾つての破防法とその性格を一にする立法であると私は断言いたしたいのであります。(拍手)  第三の反対の理由は、本法案は懲罰立法であり、労働者に対してのみその争議責任を追及せんとする弾圧立法であるということであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)そもそも争議行為は、労使双方が意見の不一致に基き相互の主張を貫徹することを目的として行う行為及びこれに対抗する行為であつて、業務の正常な運営を阻害する行為にほかなりません。従つて労使関係は相関関係であり、いずれか一方にのみその非を着せ、責任を転嫁することは、労使関係という相対関係においては絶対に許されぬ考え方と申さなければなりません。(拍手)現に、昨年末における争議を通じ我々の知り得たことは、独立後最初の基幹産業における争議として、使用者側におきましては、日経連の支持と吉田内閣の黙示の狡猾極まる支援とにより、必要以上の圧力と力を以て臨んで参りましたことは明白な事実であります。使用者側のこの権力的な態度こそ、両争議を長期且つ困難ならしめた重要な原因となつておるのであります。争議行為に入らなければ団体交渉に応じなかつたというのが過去永年に亘る電気事業の態度であり、電力九分割後、自立採算制に立たされましてからは、更にこの傾向が強くなつてつたのであります。又、石炭産業におきましては、これ又、近代以前の封建的主従意識、一山一家的、前世的な観念にとわられておるのが多くの炭鉱資本家の実情でありまして、昨年の争議におきましては、客観的諸条件を背景に、近代的な労使関係を旧代のそれに逆行せんとする意図の下に、併せて、貯炭に悩み、貯炭のゆえに炭価の暴落をストに便乗して防止しようとしたのが、炭鉱資本家の態度でありました。まさに昨年の争議をして深刻長期化ならしめました大半の原因は使用者側にあつたことは否定できない事実であります。(拍手)国民大衆の便益をそこね、便利を拒否して来ましたものは、つまるところは、この経営陣における利潤追求の貧欲であり、利潤確保のためには、公衆の便益を犠牲にし、公共の福祉を抹殺せんとするものが資本家陣営の一貫せる態度であつたのであります。昨年の争議に鑑み、その責任を追及し、又はその態度について規制するを要するものがありといたしますならば、使用者側の責任こそ関わるべきであり、これらの企業こそ社会的規制を受けなければならないのであります。本立法は、争議規制の名に隠れて独占資本の利潤をますます強固ならしめ、利潤追求の自由を保障し、公共の福祉の名において所有権の不可侵性を再び確立しようとする前世紀的立法であると私は申上げたいのであります。(「反動立法だ」と呼ぶ者あり)労働者の基本的権利を制限するならば、同時に他方において労働者の救済措置を講じ、又、他面、企業の民主化と社会的規制を図ることこそ、国民全体のための政府であるとせば当然とるべき措置と言えるでありましよう。然るにこれらの企業におきましては自由主義的経営に放任し、利潤追求にはその手段方法を選ばずこれを放任しておきながら、遂に労働者の基本権のみを剥奪せんとするのが本立法であるのであります。  第四に私の反対する理由は、本立法は、これら両産業における労働者争議権を実質的に制限乃至禁止し、労使対等の原則を破壊し、財産権の下に労働権を屈服せしめておるという点であります。本法案が制定されるといたしますならば、雲気産業労働者は如何なる内容争議権を以て使用者に対抗できるでありましようか。政府は、事務スト、集金スト、検針ストを以て使用者に対抗し得るというのでありますが、これらのスト行為を以てして幾ばくの圧力を使用者側に加えることができましようか。完全な争議権が保障されていたからこそ、漸く電気産業労働者は独占的企業家に対し対等の地位を築き得ましたことは、経験的事実であると私は申上げたいのであります。(拍手)  又石炭産業について少しく検討いたしますならば、政府は昨年末における炭労ストに鑑み本法案を制定したと申しておりますが、一体、昨年末、炭労においては実際に保安要員引揚げが行われましたかどうか。成るほど保安要員引揚げの準備指令は出されておりまするが、飽くまでも準備指令であり、一つの炭坑といえども現実には保安要員を引揚げていない。一体、炭鉱労働者が自己の職場を失うような自殺的な破壊行為ができると政府の諸君はお考えであるかどうか。観念としてはあり得ましても、少しく、炭鉱の実態、坑内の保安、炭鉱労働者の気質を知る者であるならば、その不可能なことはおのずから明らかであります。本法案最大の罪悪は、未だ一度も実行せられなかつた保安放棄闘争に関し、たまたま昨年末の炭労の指令を奇貨といたしまして、これが争議時の一戦術として用いられたいきさつがあるにもかかわらず、国民の錯覚を巧みに利用し、あえて立法を以て禁止措置に出て参つたのであります。保安要員引揚げの指令と公共の便益との間に何らの因果関係もありません。(「そうだ」と呼ぶ者あり)公衆に迷惑を及ぼしましたのは、争議のため出炭がとまり、汽車の運行が制限され、ガスがとまつたところにあるのであります。究明すべきは保安要員引揚げの準備指令ではなく、何が故に争議行為がかくのごとく長期化したかというこの点であります。ここに問題の中心があることから政府は故意に逃げ廻つておるのがこの立法なのであります。(拍手)  私は更にお伺いいたしたいことは、殊に私が指摘いたしたいことは、本法案によりますならば、争議の場合、炭鉱保安と鉱害とは密接な因果関係を持つような前提となつておりまするが、鉱山保安法、石炭鉱山保安規則の条文に照らしましても、又、技術的観点から実際上の経験に徴しましても、これは牽強附会の規定であることは明らかであります。単に、個人財産保護の便宜のために、あえて鬼面人を驚かす用語を用いているに過ぎません。今日、中小炭鉱は勿論、大手筋炭鉱においても、企業整備の名において人員整理は続出し、一方、貯炭は六月末すでに五百万トンに及び、石炭産業危機の声はすでに周知の事実であります。山元、駅頭、港頭には貯炭の山がうず高く積り、自然発火のため重要な鉱物資源は日々刻々滅失いたしておるのであります。炭鉱労働者のストライキによつて失う石炭の一塊は、直ちに国家の重要なる資源であり公共の福祉に繋がるものと申しまして、争議権を抑圧しながら、みずからの政治の貧困、政策の失敗から来た石炭産業の危機については、拱手傍観をきめ込んでいる。政府は一体この事実を何と釈明しようとするのであるか。(拍手)まさに本法案は、財産権の下に労働基本権を屈服せしめ、労使対策の原則を根柢から破壊し去るものであることを私は指摘しなければならんと思うのであります。(「同感」と呼ぶ者あり)  第五に私の反対する理由は、行政権を以て司法権に優位せしめておる点であります。政府は、本立法は、従来とも社会通念上不当である、又は妥当ならざるものであると考えられておつた争議行為方法範囲を明らかにしたものであつて、何ら労働者を弾圧するものではないと申しておりまするが、併し従前とも、電気産業におけるこれらストライキは違法の判決を受けたことは一度もないのであります。先ほど阿具根君の引例されました東京高裁の、昭和二十五年、川崎市の変電所におけるスイツチ・オフ行為に対しましての判決も、まさに正当な争議行為と認められておるのであります。(拍手)石炭産業に例をとりますならば、昭和二十四年九月二十九日、札幌高等裁判所は、北海道の井華鉱業における水利妨害被告事件に関連し、次のような判決を下しております。即ち、「被告人らはいずれも当公廷において、保安を放棄したのは、それにより世論を喚起し、会社に対し団体交渉に応じさせようとするための単なるゼスチユアに過ぎず、もとより溢水せしむるような意思はなく、労組保安要員が引揚げても、これに代る職組において保安を確保することになつてつたから、実害の発生はないと信じていた」と印しております。更に又、被告人らの当公廷における供述態度並びにその態度により窺える被告人らの思想的傾向は、比較的穏健である事実、いずれも相当数の家族を抱え、思慮分別のあるべき年齢に達している事実、及びこれらの事実より推して、当然長く鉱山に生きる、それ故にこそ鉱山を愛する鉱山労働者であると考えらるる被告人らが、団体交渉により、飢餓突破資金等の名目はともあれ、よりよき生活を希求するため、会社に対し待遇改善を主張しながら、却つてみずからの手により坑内を温水せしめて鉱山を破壊し、みずからの糧道を断つような自殺的行動に出ずることは到底考えられない」として、無罪の判決を下しております。私は、これらの判例に徴しましても、従来、合法的組合活動と認められて参りました争議行為が、本法律案が制定されました暁には、一切、違法の争議行為として断罪され、処罰の対象になつて参るのであります。明らかに行政権による司法権の侵犯であり、違憲の立法と申さねばなりません。行政万能の思想こそは全体主義国家の特色であり、まさに反動とフアッシヨ化の方向を走りつつある吉田内閣の施策を雄弁に物語つている立法と申さなければなりません。(拍手)  第六として私が本法案に反対する理由は、本法制定の動機と根拠が誠に薄弱であるということであります。否、立法の直接の動機は、本年一月三十日、第十五国会休会明けにおける吉田首相の演説草稿から出発していることは明らかであります。この間の事情は、先般の労働委員会における公聴会、質疑応答を通じ、明らかにされたのであります。専制国家におきましては、専制君主の意思が一に法の渕源を形成することは、歴史的事実であります。今日、民主主義政治形態の我が国におきまして、一首相の意思と独断、或いは少数者の意思により、憲法の基本的人権が自由に左右されるということは、党派を超えて、悲しむべき傾向と私は申上げたいのであります。而も質疑応答を通じ明らかにされましたことは、時と条件、事情の変更如何によりましては、いつでも、他産業、私鉄、日通、ガス、水道事業難にも波及させる意図があることは、吉田首相のステツプ・バイ・ステツプの意思表示の中に明確に観察することができたのでありまして、我々は、本法案の阻止こそ、憲法と民主主義を擁護する当面の課題でありまするが故に、本法案に飽くまでも反対しなければならんと考えるものであります。(拍手)小坂労相は去る六月二十九日の本会議におきまして、改進党の石川清一君から、「若し労組側が自粛声明を出したといたしましたら、この法案を撤回する用意があるかどうか」との質問に対しまして「関係組合においてここに議題となつておるような公益を害する争議行為をなすべきでないという自粛声明を発することが仮にありとすれば、当然これは考慮せねばならぬ」と答弁しておりますが、誠に自信のない法案提出の態度であり、他律的立法であることは、所管大臣のこの言葉の中に明確に現われておると指摘しなければならないのであります。(拍手)  私は、以上幾つかの観点から、本法案に対し反対の理由を指摘して参りましたが、殊に重大なことは、労使関係を飽くまでも労使の良識と健全な慣行の成熟に委ねることが基本的な立場でありまして、徒らに政府や行政機関がこれに介入すべきではないと考えるものであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)殊に、我が国労働組合運動は終戦後僅か数年に過ぎません。健全な労使慣行の確立は、いま少しく寛容を以てこれを見守り、政府はこれに協力することこそ、健全なる民主的労働組合運動の前進を期するゆえんであると私は考えるものであります。  思うに、本法案の成否は国民挙げて注視しておるのであります。なぜならば、本立法は日本の将来の進路を暗示するが故であります。我々は委員会におきまして、吉田首相自身出席を要求し、吉田首相みずからの口を通じ、自由党内閣の労働方針を質すと共に、本法案提案理由を明らかにすべく、再三再四出席を求めたにもかかわらず、遂に一回の出席も見ず、自由党とこれに同調する諸君によつて重大な審議の機会を失するに至つたことは、誠に遺憾の極みと言わなければなりません。(拍手)先ほど本会議におきまする吉田首相の出席は初めて実現いたしましたが、本会議における彼の形式的答弁によつて何ものも我々はつかみ取ることができなかつたのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)一週間の会期延長も慎重審議のためとられた措置であるにかかわらず、衆議院におけると同じ手練手管を以て臨んで来たのが与党諸君の態度であつたのであります。(拍手)いずこに第二院としての参議院の使命を見出すことができましようか。而も、今日、将来の我が国議会政治運営のために返す返すも残念に存ずることは、委員会における結論を待つことなく、而も会期はなお数日を残し、当該労働委員会は真剣に本案の質疑を抵抗中にもかかわらず、委員会審議を強引に一方的に打切り、これを本会議に取上げるに至つた。一体今日までこのような事例があつたかどうか。委員会の権威と機能は与党みずからの手によつて破壊し去られたのであります。議会政治の威信地に墜ちたと申しても過言でありません。而も本法案は改進党の修正により質的転換を遂げたものであり、自由党と政府は、その主体的立場を放擲し、これに同調した、曰く付きの悪法なのであります。政策と主張を中心として出所進退を明らかにするのが政党政治のあるべき姿であるといたしまするならば、いずこに健全な政党政治の姿を発見することができるでありましようか。(拍手)まさに、政権維持のためには主義も節操も外聞も忘れた前世紀的資本主義政党、ウルトラ保守政党の末路の姿と断定しなければならないのであります。(拍手)  歴史は流転いたします。進歩と成長は如何なる力を以てするもこれを阻止することはできません。歴史に悼さす日本を保障し、独立と平和のために闘う労働者の基本的権利を守り抜くことこそ、憲法と民主主義を擁護する道に繋がるが故に、私は心底から本法案反対を叫ばなければならいのであります。同僚諸君、再び我が祖国と民族をあのどん底の悲運に際会せしめぬよう、諸君の良識と叡智に訴え、本法案阻止のため協力されますことを衷心より希望し、殊に自由党諸君の知性と叡智に訴えまして、私は私の反対討論を終ることにいたします。(拍手)     ―――――――――――――
  101. 河井彌八

    議長河井彌八君) 柏木庫治君。    〔柏木庫治君登壇拍手
  102. 柏木庫治

    ○柏木庫治君 私は、(「恐れよ、神の力を」と呼ぶ者あり)決して本案に満足するものではありません。止むなく賛成をするのであります。(「神様に叱られます」と呼ぶ者あり)  その理由は、労使を初め日本民族の幸福に若干役立つからであります。人類みずから行動する範囲において一番悲惨なのが戦争であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)これは私たちが一番よく身にしみて承知いたしております。愚かの絶頂とは、国際間の紛争を戦争によつて処理することであると私は信じております。育つて日本の国法が戦争を許しておつたとき、しばしば行われて、如何に愚かであつたかは、諸君もよく御承知でありましよう。大きな意味において共通する利害を持ちながら、目先のことに囚われて、紛争を労使間がストライキによつて解決することは、労使はもとより、第三者も多大の害をこうむりますので、(「戦争と関係ないよ」と呼ぶ者あり)賢明とは私は思いません。乏しき国日本においては、(「ひのきしんでやれ、そんなことは」と呼ぶ者あり)断じてなさないことを望ましし思うものは私一人でありますまい  昨年行われました電産ストの被害は、深刻に国民生活の上に悲惨そのものとなつて、今なお覆いかぶさつております。有史以来と称せられますこのたびの九州地方の水害の被害者はその数が百六十万、電産ストの被害者はその五十倍の八千万人であると思うのであります。(笑声)精神的、そうして物質的の損害は、水害の損害を数段上廻るものでありまして、資本家の不心得と、政府の(「怠慢だ」と呼ぶ者あり)怠慢と、労働組合の行き過ぎが、その責任を負うべきであると思います。(拍手)最もお気の毒で哀れをとどめたのが、文化の地を離れた北海道の田園、東北のお百姓です。朝早くから両手両足を泥田に埋めて、目に泌む汗を拭きもあえず、日没した夜道を足重く家に踊りまして、乏しい夕餉を前にして、一家の者が膳の前に顔を揃えましたときに、一瞬にして目を奪い闇夜の世界に投げやつたのが電産のストであります。この方々たちの(「天理教は金持だよ」「天理教は資本家だよ」と呼ぶ者あり)ただ一つの楽しみは、ラジオを聞くことなのです。明日の活動に資せんとして、心慰めるために耳を放送に傾けたときに、その耳を奪つて楽しみを失わしめたのも電産ストでありました。(笑声)中小企業家の中で、(「筋道じやない、感情じやないか、それは」と呼ぶ者あり)苦境に苦しみつつも、労使が心を一にして、辛うじて事業を守ることに懸命の努力をいたしておりまするときに、突如として打ち続く停電は、如何ともすることができず、(「現象ばかり見るな、元を見ろ、元を」と呼ぶ者あり)仕事が捗らず、これが原因となつて少しく借金ができ、借金はやがて高利貸の毒牙に槌つて、果ては事業を投げ出し、労働者は失業をいたしまして、職を求めて街頭に出て得られず、非常にお気の毒な者が今たくさんあります。私は、心ある者は、電産ストの所産である、小さい工場に勤務しておつた労働者の方々が失業をいたしまして、お気の毒な現状を見せ付けられましたとき、一つの大きな労働組合が、みずからの権利としてストライキをやりまして、それがために小さな工場のたくさんの労働者たちが失業をする元をなすとするならば、(「哀れなるかな」と呼ぶ者あり)私は労働指導者に一掬の涙があつて然るべきだと存ずるのであります。(「天理教に救つてもらえ「神様何しているか」と呼ぶ者あり)  石炭鉱業のストライキにおける保安要員の引揚げについてでありますが、鉱山保安法第三条の保安の意義を解明して、鉱山における人に対する(「時間が勿体ない」と呼ぶ者あり)危害の防止、鉱物資源の保護、鉱山施設の保全、鉱害防止、これらが完全に守られなければならないことは当然であります。これが完全に守られてこそ、争議が済んだあとでも、労働者自身なじみ深い職場に帰つて楽しく営みを続けられるのであります。私は、曾つての日、北海道の炭山の地下千尺に、後山として(「説教に行きました」と呼ぶ者あり)炭運びに働いた経験を持つておおります。(「それにしては同情がない」と呼ぶ者あり)労働者の気持は相当によくわかるつもりであります。(「それは奴隷時代の労働者だ」と呼ぶ者あり)  従来の改正には、あたかも腫れ物にさわるように事なかれ主義に終始されて来たが、これは、経営者労働者にとつて甚だ不幸なるのみならず、(「さわらぬ神に崇りなしじやないか」と呼ぶ者あり、笑声)国民も堪えがたい迷惑を感ずるのであります。本案は間に合せの膏薬張りで、甚だ不満であるが、三年間の立法であり、在来の労働行政を若干正道に戻す意味において賛成するものであります。政府は(「旧憲法の思想だ」と呼ぶ者あり)これらの点に十分思いをいたされ、飽くまでも公共の福祉の重大性を認識され、一方に権利を制限するのであるから、これを改めて、労働者の幸福を少しも傷つけない、適当の立法とその運用を至急に研究徹底されることを強く要望いたしまして、賛成討論を終ります。(拍手)    〔「神様の罰があたるぞ」「中山会長さんに帰つて聞いて来い」と呼ぶ者あり〕
  103. 河井彌八

    議長河井彌八君) 堀眞琴君。    〔堀眞琴君登壇拍手〕     ―――――――――――――
  104. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私は只今議題となつておりますスト規制法案に対しまして反対をいたすものであります。  その第一の理由は、この法案提案理由が極めて不明確であるということであります。(「でたらめだよ」と呼ぶ者あり)先般来の労働委員会並びに本日の本会議における質疑を通じて皆様にすでに明らかになりましたように、政府説明は必ずしも首尾一貫いたしておりません。例えば、国民生活、国民経済に与える影響が極めて大であると申しているのでありまするが、併しストによる例えば停電と渇水その他による停電とが、その間、極めて明確な区別が行われておりません。一市井の主婦たちは、渇水によるところの停電もストによる停電として理解しているのであります。私は只今柏木君の賛成討論を拝聴いたしたのでありまするが、良識のある柏木君にしてすらが、昨年のストの際におけるところの停電が全部ストによるところの停電であり、渇水によるところの停電はないものとするかのごとき賛成の演説を行われているのであります。良識のある柏木君にしてすらが、こうであります。ましてや、市井の庶民たちが、(笑声)果して十分にあのストの際におけるところの、ストによる停電と渇水によるところの停電とを十分に区別してこれを理解しておつただろうか。又、政府説明によりまするというと、いわゆる電気産業におけるストライキは従来非とするところの社会通念があつた、これが昨年のストによつて成熟をしたのだ、こう申しております。併しながら、社会通念というものは、単にストライキが起つたから、或いは停電が続いたから、或いはそのストライキが長期に亘つたからということのために社会通念が成熟するものと言うことはできません。少くとも、社会的な慣行が積み重ねられ、これに対する判例等が集まりまして、初めて社会通念というものが確定いたすのであります。従つて政府の提案しましたところの理由社会通念の成熟などと早計に言うことはできないのであります。  又、提案理由説明といたしまして、政府は、輿論がこれを支持していると申しております。(「支持していない」と呼ぶ者あり)その根拠として、自由党が今般の選挙において多数を占めたということを挙げているのであります。昨年の十月の選挙においては成るほど圧倒的な多数を占めました。投票率も四七%を占めております。ところが今年の四月の選挙においては三八%に落ちているのであります。而も、この選挙における投票は、スト規制法案を唯一の看板として投票されたものではなくて、ほかのいろいろの政策もあつて投票されたものであり、而も又完全に輿論が自由党を支持しておるとは申すことができません。日本のようにまだ民主的な慣行の浅い国におきましては、完全な輿論の反映が投票の上に現われるということを申すことはできないのであります。その証拠には、買収であるとか、或いはその他の忌わしい選挙の不正が行われておつたことは、選挙中乃至は選挙後におけるところのあの不正事実によつて明らかであると申さなければならんのであります。(拍手)このように、政府提案理由は極めて不明確であり、且つその当を得ないものであるということは、もはや明らかであると言わなければなりません。  第二の反対の理由は、憲法上違憲の疑いがあるということであります。労働権は基本的人権の一つであり、永久不可侵の権利であります。従つて、国政上、立法上、最大の尊重を要するものであります。先ほど田中君は憲法十二条、十三条におけるところの公共の福祉というものは、基本的な権利に対し、これを抑制するものであると説明されておりました。そうして、この労働権を規定した二十八条、並びに財産権を規定したところの二十九条とを比較され、二十九条に、その第二項並びに第三項において、その内容法律によつてこれを定めることができるとする制限があるが、二十八条のほうにはそれがなくとも、やはり十二条、十三条の公共の福祉によつてこれを制限し得るものだと説明されておるのであります。併しながら、公共の福祉は決して基本的人権を制限し得るものではありません。若しこれを制限し得るものであるとするならば、基本的人権を以て永久不可侵の最高の権利とすることは矛盾を来たすことになるからであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)公共の福祉というのは、文字通り公共の福祉であります。即ち、国民の生活が確保されることが公共の福祉であります。その国民の生活が確保されるために基本的人権の行使が調整されるということが、公共の福祉の意味であると申さなければなりません。従つて、公共の福祉そのものが基本的人権を尊重するということの上に成り立つものと考えなければならぬ。だからこそ基本的人権の行使に対してこれを調整し得るのだ、こういう結論になつて来るのであります。ところが、政府説明によりまするというと、電気がとまつたから困る、電車がとまるから困る、これが公共の福祉に反するのだ、こういう説明であります。これは公共の便宜であります。国民の生活が非常に不便だということでありまして、公共の福祉とは何らの関係をも持たないのであります。而も公共の福祉によつて権利を調整するという場合、ただ一人の権利も殺されてはならんのであります。権利は飽くまでも尊重され活かされる、そのことによつて初めて基本的人権と公共の福祉との調整があり得るのだと考えなければならんのであります。従つて、この法案に示されているところの人権と、労働権と、公共の福祉に関する考え方は、極めて妥当を欠いたものであり、極言するならば、憲法上の労働権を抑制しようとするものであると申さなければならんのであります。その意味において私どもは反対するのであります。  それから第三に、この法案は資本家擁護の反動立法であるということであります。労働権の最もケルンをなすものは申すまでもなく争議権であります。争議権のないよう労働権というものは無力にひとしいと申さなければなりません。この労働者にとつて唯一ともいうべきところのスト権を奪いながら、而も他方では資本家に対して莫大な擁護を行おうといたしておるのであります。特に電気産業は独占企業であります。含み資産等の問題も本日のこの本会議場における質疑のときに他の同僚議員によつて行われたのでありまするが、電気の事業ばかりではありません。石炭の事業におきましても、私が先ほど質疑のときに申上げましたように、大企業に対しては莫大な保護を与え、中小炭鉱に対してはむしろこれを整理するという方向をすらとつていることが明らかであります。いわゆる企業整備に名をかりて、大企業を飽くまでも保護しよう、こういう態度を現在の政府はとつているのであります。従つてこの法案は資本家擁護の立法であります。さればこそ、日経連を初めとする資本家団体がこの法案の通過に全力を挙げているというのも決して偶然ではないと申さなければならんのであります。而も、単に資本家の擁護の立法であるというばかりでなく、日本の民主主義に逆行する反動立法であります。この意味では、この法案は昨年の破防法を初めとするところの一連の反動立法とその系列を等しくするものだと申さなければならんのであります。  更に第四の反対理由といたしましては、電産労働者のスト権はこの法律によりまして殆んど全部否認されるという結果になるということであります。前述のように、電源スト、停電スト等、政府の内部においては、これを違法とし或いは違法としないという見解が行われ、食い違い、不一致が暴露されたのでありまするが、労働大臣は、これらの見解を明確化するということを理由にしてこの法案を提出したのだ、こう申しております。併しながら、こういうような対立する見解が行われている、つまりストに対する一致した見解がないというために、本法によつて新たにストを違法とするところの違法性を創造しようというのが今度の法案であります。特に電気の場合について申しまするというと、政府の側においては、電源ストや或いは給電指令所の職場放棄等以外に、労働者としてとり得るところの争議手段があるということを説明しております。その一例として、集金スト、検針スト、事務ストとか、それらを挙げておるのでありまするが、併し、例えば、九州電力の場合について見まするというと、検針或いは集金等の事務は請負制度になつておりまして、組合員ではないのであります。従つて、組合がストライキをやりましても、集金に従事するところの人々は非組合員であり、ストには参加いたすことができないのであります。従つて、検針ストとか或いは集金ストというようなことを行おうとしても行い得ない。結局は、電産としてやり得る争議の手段というものは、事務スト以外にはないということであります。而もその事務ストすらも、電気の正常な供給に影響を与えるという場合には、拡張解釈されまして、これ又、本法の適用を受けるという結果にならざるを得ないのであります。更に又、電気の正常な供給のことであります。今日果して正常適正に電気供給されているでありましようか。先ほど私が質疑のときに申上げました大品工場、特に軍需工場等には、電力の四分の三が供給され、そして、あとの四分の一が大体一般消費者の電燈に供給される、こういうことになつているのです。併しながら、料金のほうを見まするというと、大口需用者のほうは一般の電燈料金に比べて遥かに安い電力料金を払つているというのが今日の実情であります。即ち、電力会社は、大口需用者には安い電力を供給しながら、一方、一般消費者には高い電燈料で電気供給している。つまり電力会社の利潤は、或いは儲けは、挙げて労働者の低賃金と一般消費者の高い電燈料に依存しているという結果になつていると申さなければならんのであります。  それから第五に反対する理由といたしましては、第三条についてであります。すでに鉱山保安法によつて規定されておるところの保安要員に関する規定がここで繰返されているのであります。従つて、何を進んであえて第三条を規定し、そうして、この鉱山保安法によつて定められているところのものを、ここに挿入しなければならないか、その理由を見出すことができないのであります。要するに、政府労働者を信用しておらんのであります。昨年のストに際しての保安要員引揚げの指令も実際には行われなかつた。併し、先般の公聴会等において、炭労委員長は、保安要員引揚げは今後絶対にやらないことはないと、こう言つておるから、或いは保安要員の引揚げをやるかも知れん。従つて第三条の規定は必要だ。これが大体政府側の意向であります。併しながら、若し労働者を信頼するならば、このよう規定を設けるがごときは全く的外れと申さなければなりません。他産業に対する拡大の危険はないかという質疑に対しまして、労働大臣は、労働者を信頼し、そのよう争議が起らないことを期待するということを申されております。何故、炭労や電産の労働者に対して、他の労働者と同じように、政府労働者を信用することができないのでありましようか。私どもは、このよう法案の持つところの意味を考え、そうして又これが通過した後におけるところの労働者の立場を考えるときに、どうしても反対せざるを得ないのであります。  次に、この法案政府並びに与党が遮二無二通過させようとするところの意図はどこにあるか。これは、一方ではMSAの受入体制を整備し、そうしてこれに反対するところの労働者の反対を封殺しようというところに狙いがあり、他方においては、独禁法の改正等により、独占資本家の利益を擁護し、企業整備を着々行おうとするところに狙いがあると申さなければなりません。かくして日本の再軍備を進め、新たに国際的な隷属の強化を図ろうとするのが本法案の狙いだと申さなければならんのであります。  なお、国際的にも申上げたいと思いますが、時間が参りましたので、これで反対討論を終ることにいたします。(拍手)     ―――――――――――――
  105. 河井彌八

    議長河井彌八君) 石川清一君。    〔石川清一君登壇拍手
  106. 石川清一

    ○石川清一君 私は改進党を代表いたしまして、只今議題となつております電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案につきまして、極めて簡単に賛成の討論をいたしたいと思います。  本法律案につきましては、前国会以来、党を挙げて、当時の経済情勢並びに労働情勢等を勘案いたしまして、慎重な態度をとりつつ、公共の秩序と福祉を守るために対処いたして参つたのでございます。従いまして、私は本案に欣然賛意を表することができないものも若干持つておるのでございます。先に本議場におきまして、総理並びに労働大臣に、提出の冒頭において質問いたしました通り、遂に与党野党の鋭い対立と全労働組合を向うに廻す様相の中で本会議場における審議並びに採決と相成りました。かかる事態を会期延長までいたして解決しなければならなかつた点につきましては、第十六国会における首班指名の際に、現有国会勢力の全力が集中要約されていない点にも原因が伏在いたしておるのでありまして、誠に遺憾に存ずる次第でございます。すでに、審議の道程における私の質問に対しまして、先ほど田畑議員も指摘いたしましたごとく、労働大臣答弁が問題になりましたように、真に政府が現下の労働情勢を理解し、我が国経済情勢と行政機構に許された最大の効率的労働政策を実施いたしました場合には、今日のごとくスト行為規制法律によらずして解決でき得たと信ずるのでございます。労働組合も又、大衆の利益を真に擁護する社会性を運動の中に内包しつつ展開いたしておりましたといたしましたら、今日の事態に立ち至らずして何らかの意思表示もあり得たと信じます。特に本議場における予備審査に附されました際、労働大臣労働組合に対し大衆に迷惑のかかる争議手段の自粛を強要されました点に関連し、かかる自粛声明が発せられました場合には、政府は本法案撤回のため考慮を払うという答弁をいたしました。私は常に、労使間の問題については、できるだけ当事者の良識と正しき情勢分析による判断と自粛によつで、第三者たる一般大衆に対しての迷惑と不利益を軽減し、でき得れば、労使間に深い溝を築くがごとき法律は、たとえそれが時限法であつても、これを避けるべきであるという一貫した点にあつたのでございます。(「それなら反対しろ」と呼ぶ者あり)その後、不幸にして、かかる気運の醸成については何ら問題の進展とその成果を見ることなく、遂に本法律案が今日ここに採決を求められる事態に立ち至つたのでございます。このことは、曾つての破防法のときと異なり、何らかの解決策も妥協によつてはでき得るものでありましようし、又、労働運動の経過から見て、妥協の必要なことが認められながら、その妥協に到達することが如何に困難であつたかということを一面例証はいたしておりますが、    〔議長退席、副議長着席〕  私といたしましては重ねて遺憾の念を禁じ得ないところでございます。  我が国における労働争議の一般情勢につきましては、終戦以来、特に労働問題については、労使間、労使当事者だけの問題であるという風潮が余りにも強く、労働争議によつて被害をこうむる一般大衆の立場と利益は、ときには無視され、或いは必要以上に犠牲にされていたと存ずるのでございます。最近における事例にいたしましては、食糧増産にいそしむ農民が肥料を最も欲するときに肥料の出荷ストが行われたり、又、水害復興のために重大な役割を果すべき政府資金を預託しておる銀行でストが行われたりいたしております。私は、ストといえども常に大衆の利害を一応考慮に入れて最大の効果を挙げて欲しいと希望いたすものでございます。労働問題を労使当事者だけの問題であるとする従来からの風潮と概念から脱皮されまして、労使の反省を期さなければならぬ時期が到来しておるのではないかと考えるのでございます。願くは、この法律によつて示される三年のうちに、労使双方が真剣な努力を傾けられまして、大転換によつて国民の共感を得る反省と自粛が起ることに大きな期待を持ちまして、ひたすら、かかる気運の促進剤としてのこの法律の持つ役割について期待いたしたいと存ずるのでございます。(拍手)本法律案内容につきましては、石炭鉱業保安要員問題に関する限り、従来から、賃金引上げという目的のため事業の存続自体を破壊するがごとき争議手段に訴えることは、法益の均衡を失するものとして違法とされていたところであり、あえてここに明示する必要はないのでありまするが、昨年暮の長期に亘る争議の傷痍は、なおこの問題の解決点を消し得ない点を含んでおるのでございます。電気事業におけるいわゆる電源スト、停電ストの禁止については、それが労働組合の争議手段に対する一方的制限であると解されるところに問題があると考えますが、従来行われて来た電源スト、停電ストにおいては、労働組合の失う賃金が極めて少いだけでなく、経営者のこうむる被害も極めて軽微であるのに反し、第三者たる一般大衆は甚大な被害をこうむつて来たのでございます。(「その通り」と呼ぶ者あり)    〔副議長退席、議長着席〕  本法律制定後においては、他の一般産業におけるストライキの場合と同様に、電気事業のストライキにおいても、大多数の従業員が参加せねばならぬことになり、労働組合としても失う賃金が大きい代りに、経営者の受ける実質上の障害も今まで以上大きく、特に輿論の沸騰を見ないままに争議が深刻化して行くことに相成りますので、経営者としてはこの解決に従来より一層重大な責任を自覚せざるを得ないと存じます。私は以上のような見通しを一応いたしつつ、法律の持つ意義の理解されることを希望いたす次第でございます。  なお、従来は停電ストのため、否応なしに世間は、特に電気事業者並びにこの労働者の賃金問題に関心を払い、これが電気料金の認可に影響があり、適正な労務費が考慮されつつあつたのでありますが、今後、停電ストが禁止されることになりますれば、ストによつて果されたような機能は失われますので、この際、政府は、従来、通産大臣の一方的な認可制としておりました電力料金の決定には、企業者の経営面に適当な規正を加えつつ、米価審議会の例に準じ、労働組合、消費者代表を加えた電気料金審議会を設置すべき当然の義務を負わされたものと存じます。  私は、一日も早く平和と繁栄を願えばこそ、このスト規制法を制定した当時の情勢と、本法案審議を通じて杞憂されました問題点を解決し、自立自主経済達成のために、弱体ではあるが、政府は全力を傾けられまして、(笑声)この法案を不必要とする議会の召集に期待をいたしまして、限時法とした党の立場に立ちまして賛意を表する次第でございます。(拍手)     ―――――――――――――
  107. 河井彌八

    議長河井彌八君) 市川房枝君。    〔市川房枝君登壇拍手
  108. 市川房枝

    ○市川房枝君 私は本案に反対いたします。(拍手、「本当の声を聞け」と呼ぶ者あり)なぜ私が本案に賛成できないか。その理由は極めて簡単でございます。  即ち、私は、今わざわざ憲法違反の疑いのあるような、こういう法律を作る必要はないのではないか、(「その通り」「簡単明瞭」と呼ぶ者あり、拍手)公衆の福祉を守るためには現行の緊急調整を発動すればよいんじやないかと思います。組合も反省をしておるようでありますし、ストの記憶も社会から薄らいでおります今日、こういう法律をわざわざ制定して労働者及び社会を刺激する必要はどこにも認められないのであります。(「その通り」「公正な意見だ」と呼ぶ者あり、拍手)而も法案は不備あいまいであり、公共の福祉に名をかりて一方的に組合のみを圧迫し、業者側には何らの制限を附していない、(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)不公平な、片手落ちの法案でありまして、到底賛成することができません。この考え方は私は民主主義国日本の良識であると思います。(「その通り」と呼ぶ者あり)  個人としては私と同じよう意見を持つておいでになられる方が緑風会にも或いは改進党にもおいでになるのであります。又、自由党にもおいでになるのではないかと思います。本案の提出者でおいでになりまする小坂労相も、自由党内の進歩的な方として、個人としては恐らく御賛成になつていられないのではないかと思います。(拍手)ところが、大臣として或いは党員として反対し得ないところに問題があるのではないかと思います。良識を持つている者、その良識によつて自分の信念を自由率直に表明できる者は、この法案に賛成することはできません。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)     ―――――――――――――
  109. 河井彌八

    議長河井彌八君) 須藤五郎君、    〔須藤五郎君登壇拍手
  110. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は日本共産党を代表して、只今上程されました電産炭労のストライキ禁止法案に反対するものであります。  第一に、この法案は日本をアメリカの軍事的植民地にするMSA受入れ法案であります。(拍手)世界平和勢力に押切られ、朝鮮で失敗した侵略者は、MSA軍事援助によつてアメリカの傭兵たる日本土民軍を育成し、産業を軍事化し、軍事基地を更に設置するなど、日本のすべてを挙げてアメリカに奉仕させ、今後も日本を足場にしてアジアヘの侵略体制を作ろうとしているのであります。このため先ず第一に必要なる地ならしこそ、この法案であり、日本労働者のストライキ権の剥奪であります。本法案は電産炭労労働者諸君を対象としている。而もこれが狙つているものは、実に全労働者のストライキ権を奪い、民族の筋金を抜き取ることであります。その証拠に、アメリカの国内法であるMSAの軍事援助法の条文をよく読んで頂きたい。その中には、最近、国鉄、私鉄の労働者諸君がその好戦的性格に反対して大会の名において絶縁状を叩きつけた国際自由労連と同様の労働組合を、自由という名の下に指導育成するとあるのであります。これは明らかに、日本の労働運動を抑圧し、これに干渉することであります。  第二に、この法案は、公共の福祉を守るという美名の下に、労働者の基本的権利を奪おうとしております。政府は口を開けば公共の福祉と言うが、国民をごまかすことも甚だしい。国民の大多数の幸福を図るという名をかりて、実は戦争で大儲けをたくらんでいる一部の特権階級の福祉を図ろうとしているのであります。言い換えれば、アメリカ帝国主義者に最大限の利潤を奉り、そのおこぼれを頂戴しようというのであります。だからこそ、これらの植民地的重圧に抵抗する行動を、すべて公共の福祉に反するとして弾圧せんとするのであります。電力について見まするに、現在最大発電量は戦前の二割も上廻つておるのに、何かというと渇水を口実にし、市民と中小企業に停電を押しつけ、而もアメリカ軍の使用するビルデイングには煌々と電気がつき、大軍需工場には無制限電気が流れておるのであります。本法案第二条にいう電気の正常な供給ということは、このように、アメリカ軍と軍需工場に大量の電気を送り、国民に停電を押しつけることを指しているのであります。我々はむしろかかる停電禁止法案を作る必要ありと思うのであります。  石炭にしても同じであります。国内ではトン二十ドルのものを米軍関係と朝鮮戦線には元値を切つた十六ドルでどんどん持つて行かれ、あまつさえその代金は、先般衆議院で大問題になつたことく、取れないばかりでなく、満足に交渉さえも行なつていないのであります。こんな政府が一体公共の福祉のためなどと口にする資格があるだろうか。(「ない」「その通り」と呼ぶ者あり)  又、本法案第三条にある鉱山の保安問題について、政府は健全なる社会通念という抽象論でごまかしている。昨年の炭労ストで危険に瀕したのは何であつたか。それは戦争を遂行せんとしたアメリカの野望ではなかつたか。国民の利益に反してすべてアメリカ軍の利益に奉仕することが、まさに政府の言う健全なる社会通念なの参であります。更に政府は、今回の大水害で泥水により危機に瀕した中小炭鉱を、一部独占資本の利益のために見殺しにし、保安設備に資金を出さないのみならず、これに便乗した首切りさえ認めているのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)更に重要なことは、昨年十二月、高松炭鉱でスト中の労働者を武力を以て追い出したがごとく、保安確保を理由に、この法案を楯として保安隊やアメリカ軍までも繰り出そうと狙つているのであります。  ここではつきり申上げたいことは、かくのごとき法案によつて、一体、政府は日本の労働者を羊のごとく飼い馴らすことができると思つているのだろうか。若しもそうとするならば、それは全くおめでたい限りであります。労働者は祖国の独立のため又みずからの生活権を守るためには、何ものをも恐れるものではありません。そのことは先頃の軍管理工場日鋼赤羽や全国の基地労働者の闘争が明らかに示しております。電産炭労労働者諸君も、必要な時が来れば、いつでも、このごとき法案を蹴飛ばして、独立と自由のために立上るでありましよう。又、如何に労働者を弾圧しようといたしましても、かくのごとき人権を無視した法案は、一片の反古にも等しいものとなりましよう。生活を守り、平和産業を無制限に発展させ、吉田政府がアメリカに売渡した祖国の独立と自由を、日本国民の手に取戻すストライキこそ、日本国民の福祉のための愛国的行為と言うべきであります。アメリカは、日本経済自活の途である日中、日ソ貿易を禁止しておりますが、このやり方は日本のすべての階級の広範な強い反対を受け、衆参両院において今回日中貿易促進の決議案が全会一致で決議されました。これは全国民のアメリカ支配に対する反抗を意味し、極めて重要なことであります。朝鮮の休戦が成立し、砲火がやみ、世界の問題を話合いで解決せよという平和の声が勝利した現在、今こそアメリカの支配の手を払いのけ、日本国民のための平和と繁栄の道を切り開くべき絶好の時であります。併しこの道は、アメリカとその命令に従う買弁勢力の激しい反対を打破することなくしては成功しないのであります。又この道は祖国の独立を願う日本民族の総団結の力によつてのみ初めて打開し得るのであります。而も日本民族の背骨である労働者の抵抗権こそ、この日中貿易の禁止を初め、すべての植民地的抑圧をはねのける推進力なのであります。私はここに日本の将来を考え、同僚諸君のすべてがこの法律案に反対して、日本の繁栄への第一歩を踏み出されんことを切に望むものであります。(拍手
  111. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案の採決をいたします。本案の表決は記名投票を以て行います。本案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名を点呼〕    〔投票執行〕
  112. 河井彌八

    議長河井彌八君) 投票漏れはございませんか……。投票漏れはないと認めます。  これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票を計算〕
  113. 河井彌八

    議長河井彌八君) 投票の結果を報告いたします。  投票総数二百五票。  白色票百四十票。    〔拍手〕  青色票六十五票。  よつて電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案は可決せられました。(拍手)      ―――――・―――――    〔参照〕  賛成者(白色票)氏名百四十名    佐藤 尚武君  小林 武治君    小林 政夫君  岸  良一君    北 勝太郎君  上林 忠次君    加藤 正人君  片柳 眞吉君    柏木 庫治君  加賀山之雄君    井野 碩哉君  赤木 正雄君    山川 良一君  森 八三一君    村上 義一君  溝口 三郎君    三木與吉郎君  三浦 辰雄君    早川 愼一君  野田 俊作君    中山 福藏君  豊田 雅孝君    土田國太郎君  田村 文吉君    館  哲二君  竹下 豐次君    高橋 道男君  高瀬荘太郎君    高木 正夫君  杉山 昌作君    新谷寅三郎君  島村 軍次君    深水 六郎君  横川 信夫君    雨森 常夫君  安井  謙君    伊能 芳雄君  青柳 秀夫君    高野 一夫君  西川彌平治君    石井  桂君  井上 清一君    関根 久藏君  川口爲之助君    吉田 萬次君  酒井 利雄君    佐藤清一郎君  剱木 亨弘君    森田 豊壽君  谷口弥三郎君    宮本 邦彦君  長島 銀藏君    長谷山行毅君  宮田 重文君    瀧井治三郎君  田中 啓一君    大矢半次郎君  石川 榮一君    松本  昇君  石原幹市郎君    植竹 春彦君  岡田 信次君    松岡 平市君  大谷 瑩潤君    一松 政二君  西郷吉之助君    中川 幸平君  左藤 義詮君    寺尾  豊君  中山 壽彦君    中川 以良君  山縣 勝見君    吉野 信次君  重宗 雄三君    大屋 晋三君  津島 壽一君    大達 茂雄君  青木 一男君   大野木秀次郎君  愛知 揆一君    小滝  彬君  古池 信三君    榊原  亨君  大谷 贇雄君    宮澤 喜一君  高橋  衞君    横山 フク君  西岡 ハル君    重政 庸徳君  小沢久太郎君    鹿島守之助君  木内 四郎君    藤野 繁雄君  石村 幸作君    青山 正一君  秋山俊一郎君    入交 太藏君  高橋進太郎君    仁田 竹一君  松平 勇雄君    加藤 武徳君  上原 正吉君    郡  祐一君  山本 米治君    西川甚五郎君  小野 義夫君    徳川 頼貞君  平井 太郎君    川村 松助君  堀  末治君    白波瀬米吉君 池田宇右衞門君    島津 忠彦君  松野 鶴平君    小林 英三君  草葉 隆圓君    泉山 三六君  黒川 武雄君    石坂 豊一君  井上 知治君    鮎川 義介君  後藤 文夫君    木村篤太郎君  笹森 順造君    野本 品吉君  石川 清一君    最上 英子君  三浦 義男君    三好 英之君  鈴木 強平君    深川タマヱ君  武藤 常介君    寺本 広作君  紅露 みつ君    八木 幸吉君  有馬 英二君    松浦 定義君  鶴見 祐輔君    一松 定吉君  松原 一彦君     ―――――――――――――  反対者(青色票)氏名六十五名    高良 とみ君  近藤 信一君    永岡 光治君  藤田  進君    大和 与一君  湯山  勇君    栗山 良夫君  秋山 長造君    阿具根 登君  永井純一郎君    大倉 精一君  河合 義一君    岡  三郎君  田中  一君    白井  勇君  成瀬 幡治君    小林 亦治君  森下 政一君    小酒井義男君  重盛 壽治君    江田 三郎君  小林 孝平君    久保  等君  田畑 金光君    松澤 兼人君  森崎  隆君    安部キミ子君  矢嶋 三義君    岡田 宗司君  山口 重彦君    堂森 芳夫君  吉田 法晴君    中田 吉雄君  藤原 道子君   小笠原二三男君  菊川 孝夫君    若木 勝藏君  山田 節男君    東   隆君  内村 清次君    松本治一郎君  三橋八次郎君    荒木正三郎君  羽生 三七君    野溝  勝君  千葉  信君    三木 治朗君  山下 義信君    加藤シヅエ君  市川 房枝君    須藤 五郎君  戸叶  武君    赤松 常子君  松永 義雄君    村尾 重雄君  鈴木  一君    加瀬  完君  千田  正君    相馬 助治君  長谷部ひろ君    木村禧八郎君  上條 愛一君    松浦 清一君  棚橋 小虎君    堀  眞琴君      ―――――・―――――
  114. 河井彌八

    議長河井彌八君) 本日はこれにて延会いたします。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後十時三分散会