○阿具根登君 私は、只今
議題とな
つております
電気事業及び
石炭鉱業における
争議行為の
方法の
規制に関する
法律案に対しまして、日本社会党第四控室を代表いたしまして反対の討論をなすものであります。(
拍手)
先ず最初に、本
法案は、昨秋行われた電産
炭労ストが、国民経済と国民の日常生活に与えた脅威と損害が甚大であ
つたという
理由を以て作成提案されたものであります。このことは
政府の
提案理由の
説明に明らかであります。
労働者はたとえ一日でも一時間でも冗談や面白半分にストライキをやるものはありません。よくよく止むに止まれぬ事情がなければ、日々の生活を犠牲にしてストに立ち上ることはないのであります。即ち、前年のストも、事業主の頑迷にして無理解な態度こそが
労働組合をしてあの長期ストに追い込んだのであると確信するものであります。(
拍手)電産
炭労の当然過ぎる賃上げ要求に対し、事業主側は長期に亘る団体交渉にも何ら誠意を示さず、加うるに、炭鉱のごときは、これに対して賃金の切下げと人員整理を以て応えたではありませんか。而もスト突入の四十数日後に現行賃金の四%切下げを回答したのであります。又、電産においても然りであります。かくのごとき状態が、果して誠意ある態度、真剣に
争議を解決せんとする態度と言えるでありまし
ようか。むしろ事業主側は、七百万トンに上る貯炭を抱えながらも、炭価の引上げを狙い、
労働組合の分裂弱体化を企図して、ストの長期化を希望したのであります。事業主側は、品を開けば、ストにより一日三億円の損害だと
言つていたが、スト期間中といえ
ども各社の株価は上昇の一途を辿
つた事実は、これを裏書するものであります。私心なき第三者でさえ、明らかに、長期化の
責任は事業主側にあると判定しているのであります。現に、参議院公聴会において、学者、専門家のみならず、消費者代表の婦人さえも、先ほど赤松議員その他が言われました
ような、「会社は莫大なる利益を上げていると聞いていたし、高額所得者の大
部分が炭鉱主で占めているという新聞記事さえ出たので、もう少し賃金を上げてさえもらえば悲惨なストがあれほどは長引かなか
つたでし
よう」と述べております。仮に百歩を譲
つたとしても、スト長期化の
責任の大半は事業主側にあると言うべきである。然るに
政府はこの
責任をすべて
労働組合側に転嫁し、(「一方的だ」と呼ぶ者あり)
労働者の基本的人権を大幅に剥奪し、事業主側には何らの
規制をも加えていないのであります。(「それが資本家内閣だ」と呼ぶ者あり)この暴戻にして而もお粗末極まる
法案を画策したのであります。この
ような暴法は断じて許すべきでないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、
拍手)
炭鉱の実例を見ましても、地下数千尺の悪条件の下で不完全なる保安
施設の中に働く
労働者は、毎日生命の危険にさらされております。(「何人か死んでいる」と呼ぶ者あり)朝出るときには、笑いながら、かわいい我が子の頭を撫でて坑内に下
つた人が、上
つて来たときには血と炭塵で真黒にな
つて冷たくな
つている。(「よく聞け」と呼ぶ者あり)そういう私のこの
意見を笑いながら聞く
ような人があるから、我々はこういう討論を最後まで続けなければならないのであります。(
拍手)而もその冷たく
なつた死骸に妻子が取り槌
つて泣いている姿は、どこの炭鉱でもまだ繰返されておるのであります。どこにかかる悲惨な
労働がありまし
ようか。かかる
労働者の作業の実態も生活の実態も知らずに、ただ公共の福祉という美名により、団体
行動権を大幅に
制限又は
禁止し、一方、事業主のほうは一切おかまいなしという本法のやり方は、如何に
政府が強弁するも、六百万の目覚めたる
労働者大衆並びにその家族を納得せしめることは絶対にできないのであります。(
拍手)
本
法案が、公共の福祉に名をかり、の実は
憲法上の神聖なる
労働基本権を弾圧し、奪い去り、以て一部資本家の財産権を擁護せんとする醜悪なる
意図に出たものであることは、例えば第三条を見ても明らかであります。(
拍手)第三条においては、保安業務の停廃により、「
鉱山における人に対する危害、鉱物資源の滅失若しくは重大な損壊、
鉱山の重要な
施設の荒廃又は鉱害を生ずるものをしてはならない。」と書いてあります。
労働委員会においては、本条に対する疑義百出いたしまして、
質問が重ねられたのでありますが、統一ある満足な
答弁は遂に何らなされなか
つたほどに、(「できないんだ」と呼ぶ者あり)不完全且つ矛盾多き
規定であります。これは暫らくおくとしましても、この
規定が必要とされる
理由を、
政府は、かかる
争議行為は、法益の均衡を著しく失し、又
労働者の復帰すべき
職場を失わしめるものであるから、
争議行為の正当性を欠くものとして
禁止すると言うのであります。(「でたらめだ」と呼ぶ者あり)生命の危害、これは現に
労調法第三十六条に厳然たる
規定が置かれ、何ら本条の必要はありません。鉱害も又然りであります。残るところはすべて炭鉱資本家の財産を保護することのみではないかと言いたいのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり、
拍手)勿論これらは国家の資源として貴重なるものであることは、私も認めるのにやぶさかではありません。いや、国家のため、国民のために貴重なることを認めるが故にこそ、我が党は、かねてから、重要産業、特に
石炭鉱業の国有国管を主張し、重要なる資源の国家的活用を具体化せんとして来たのであります。(「それが真髄だ」と呼ぶ者あり)然るに戦争経済の矛盾は今春来の炭価低下となりまして、中小炭鉱の休廃止、即ち炭鉱の全面的放棄の続出とな
つておるが、何故に
政府はこれを傍観するのかと言いたいのであります。(「資本家のためだ」と呼ぶ者あり)本法において、
政府は、ストライキによる
保安放棄を
禁止し、尤もらしい
理由を付けておりますが、然らば、これらの事業主の休廃坑即ち
鉱山の放棄は重要産業の荒廃にならないのでありまし
ようか。又、廃山と
なつた山を追われた数万の
労働者は、帰るべき
職場はすでにないのであります。(「路頭に迷
つておる」と呼ぶ者あり)
政府が第三条に掲げた
提案理由が正当であるならば、これに対しても同様な
立法措置を何故に講じないのでございまし
ようか。(「資本家のためだ」と呼ぶ者あり)炭鉱の休廃止を放置することによる国家的損害は、一時的なストライキによるものより遥かに大きく、
職場を失
つた現実の失業者の数はすでに厖大であります。なお、今後大企業を含めた企業整備の嵐の犠牲となる
労働者は数万人に上ると案じられておるのであります。而も、このときに当り、
政府は、炭鉱、
電気労働者のスト権のみを一方的に
制限し、現実に炭鉱を荒廃せしめ、数万の
労働者の
職場を奪い、失業のどん底に蹴落しておる資本家側を擁護し、
憲法に保障された
労働権、生活権を、資本家の私有財産権の下に隷属せしめる
政府の弾圧的、欺瞞的態度こそ、断固として糾弾しなければならないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、
拍手)
次に、この
ように理不尽な口実を以て
政府が
制限乃至剥奪せんとしておる
労働者の団体
行動権とは如何なるものでありまし
ようか。
吉田首相より不逞の輩と呼ばれる
労働者に対して、
憲法は、第二十八条で、明らかに「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体
行動をする権利は、これを保障する。」と、明文を以て
規定し、且つこれをその他の基本的人権と併せて、「この
憲法が国民に保障する基本的人権は侵すことができない永久の権利であり、国民の不断の努力によ
つてこれを保持しなければならない」と、特に念入りに
規定しております。即ち、全国民が勤労者であり、勤労することにより、「国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」ことが可能であります。この全国民的要請、全国民に対する
憲法の期待の下に、
憲法第二十八条の
労働者の基本的権利の侵すべからざる最高の価値は更に裏付けられ高められておるのであります。即ち、
労働者の団体
行動権により
労働者の最低生活は初めて保障され、(
拍手)全産業は興隆し、国の繁栄があり得るのであります。これらの
労働者の諸権利は、永年に亘る
労働運動の歴史により、苦難に満ちた闘争の上に築き上げられた動かすことのできない歴史的遺産であり、文化国家、民主国家の最も大切な土台石の一つであることは、いやしくも政治に携わる者のイロハであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、
拍手)更に、
労働法学者の理論から申しましても、
労働者のストライキ権とは、即ち、使用者との間に
労働力を売買するに当り、その価格が気に入らねば売らないというに過ぎないのであり、人間本来の権利であり、何人といえ
どもこれを剥奪することはできないのであります。若しこれを
禁止するとすれば、それは
労働者をしてその意に反する苦役を課することになり、いわゆる強制
労働であり、
憲法第十八条にいう「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る
処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」この
規定に真向から違反するのであります。
以上で、電産、
炭労両産業
労働者のスト権を
制限又は
禁止することが
憲法第二十八条その他に違反する違憲
立法であることは明白であります。(「その
通り」と呼ぶ者あり、
拍手)然るに
政府は、基本的人権といえ
ども公共の福祉に反するときは
制限することができるという見え透いたきまり文句を掲げて、公共の福祉という言葉をあたかも基本的人権を
制限する特効薬であるかのごとく考えておるのであります。然らば、私は、以下、公共の福祉なる概念は如何なる
内容のものであるかを順次解剖してみたいと思います。
前に述べた
憲法第十二条、即ち「基本的人権は不断の努力によ
つて保持しなければならない、」これの後段に、「又、国民は、これを濫用してはならないのであ
つて、常に公共の福祉のためにこれを利用する
責任を負ふ。」とあります。これ又貴重なる
憲法の原則であり、与えられた基本的人権の濫用によ
つて、互いに基本的人権の侵害となることのないことを期待したものであり、学界の通説は、これを精神的道徳的
規定と称しておるのであります。或いは白地
規定とも言うのは、つまり公共の福祉という概念によ
つて画一的に基本的人権を
制限する抽象的な
法律を制定することは許されないのであり、これが具体的なケースに当
つて初めて何が具体的に公共の福祉であるかを定めるべきものである、とするのであります。然るに
政府は具体的に何を公共の福祉の
内容としているのでありまし
ようか。
法案第
一条には、「
電気事業及び
石炭鉱業の特殊性並びに国民経済及び国民の日常生活に対する重要性にかんがみ、公共の福祉を擁護するため」
云々と
規定し、又、
提案理由説明には、これを受けて「両産業の特殊性、重要性、並びに労使
関係の現状に鑑みまして、
争議権と公益の調和を図り、以て公共の福祉の擁護を図る」
云々と述べているのであります。これによ
つて見れば、
争議権と公益との調和を図るというのが
政府の言うところの公共の福祉であることがわかるのであります。即ち、公益のために
争議権を抑えることが公共の福祉だということになるのであります。(「一方的だ」と呼ぶ者あり、
拍手、「その
通り」と呼ぶ者あり)
政府の言う公共の福祉とは、実は、終戦前に用いられ、永年我々に馴染の深い悪夢のごときあの公益優先の原則ではないかと考えられるのであります。いわゆる公益のため
争議権を
制限するということが、果して新
憲法下において許されることであるかどうか、諸君においてよくお考え願いたいと思うのであります。若しこれを許されるとするならば、公益優先の名において他のあらゆる基本的人権もすべてこれを
制限乃至剥奪し得るわけであります。思想、言論、結社等々の自由なるべき人権は一片の空文と化するのであります。そうして、そのとき
憲法は生ける屍とな
つてしまうのであります。日本の
労働三法も、やがてはナチス・ドイツの国民
労働秩序法となり、又、フアツシヨ・イタリアの
労働憲章と化するでありまし
よう。(「そうだ」と呼ぶ者あり、
拍手)東条軍閥の専制政治、ヒトラー、ムツソリーのフアツシヨ政治を我々は想起せざるを得ないのであります。そして、これらフアツシヨ政治が必ずもたらした亡国の惨は、一つとしてその例から漏れてはおりません。我々はあの戦争と敗戦ににがい経験を、この骨身に泌みて記憶しておるはずであります。これらのフアツシヨも最初は一歩から始ま
つたのであります。毒草の芽は双葉のうちに摘まねばならないと思うのであります。(
拍手、「その
通り」と呼ぶ者あり)我々は、同僚参議院議員の各員に対し、深甚なる御考慮をお願いしたいと思うのであります。
次に、
政府は、「いわゆる電源スト、停電スト、給電指令所の
職場放棄等のスト
行為が、従来から不当であり、従
つて違法である。又、石炭
鉱山における
保安要員の引揚げが同じく従来から違法であ
つた。本
法案はこれを明確にするためのいわゆる確認
立法であり、
解釈立法である」と
説明しておるのであります。併しながら、右に掲げた
行為が違法であ
つたという
解釈は
吉田政府の独断的
解釈であ
つて、(「その
通り」と呼ぶ者あり)一般に通用する学説及び
判例とは甚だしく異な
つておるのであります。(
拍手)停電ストにしても、電源ストにしても、一つとして違法であると決定した
判例はないのであります。川崎発電所の停電に対する東京高等裁判所、横浜地方裁判所の判決のごときは、停電ストをして、「重大な事故発生の危険の伴いやすい
職場放棄等の手段を避け、比較的安全にして効果的な停電ストの
方法に出たことは、
電気事業の性質上機宜に適した措置であ
つたものと言うべく、従
つて本件停電
行為を以て必ずしも正当な
争議行為の
範囲を逸脱したものと認められない」と判示しているのであります。(
拍手)電産のストが違法であるならば、なぜ昨秋の
争議の際、違法であると警告しなか
つたか。むしろ
政府では、池田
通産大臣を初め
政府委員は、正当な
争議行為であると
答弁しているではありませんか。(「その
通り」と呼ぶ者あり)殊に、電源スト、給電指令所の
職場放棄、即ちオウーク・アウトは、
政府の
行政解釈でさえも、明らかにこれら単なる退去は違法としていなか
つたのであります。このことは、たまたま或る日の
委員会において
労働大臣と同席した
通産省政府委員の
答弁に
食い違いが生じたことによ
つても明らかであります。(
拍手)又、
保安要員の引揚げについても、
鉱山保安法第五条に
規定する
労働者の義務は、スト権行使の際には適用のないものであることは、学者の通説であり、又、
政府当局ですら、その
ように
解釈していることは疑いのないところであります。尤も、
保安要員の引揚げにより
鉱山を破壊してもよいのだと私は言うのではありません。ストライキ権はこの
ように強力なものであります。国家のため必要であればこそ、この
ように強力なものが認められているのだということを認識されたいのであります。故に、それ以上は
労働者の良識と労使双方のフエア・プレイに任すことが最も穏当且つ安全であるというべきでありまし
よう。
右のごとく、本
法案は、
政府の言う
ように、従来から不当違法であ
つたものの確認等ではなく、新たに、正当なる
争議の
範囲を無に近くまで縮小するものであります。(「欺瞞だ」「けしからんぞ、全く」と呼ぶ者あり)これを、確認
立法であるとか、
社会通念の成熟により従来非とされていたものが
違法性を獲得したという
ような
説明を以て議員並びに国民を欺瞞せんとする
政府の態度は、最も卑劣にして悪辣なるものと言わざるを得ないのであります。
政府は確認
規定であると強弁しているが、若し現在上訴中の事案が
最高裁判所で無罪になり、停電、電源ストが正当な
争議行為であると判示されたならば、そのときは
政府は如何なる
責任をとるつもりか。(「手を挙げろ」と呼ぶ者あり)
政府のごまかし
理由の提案によ
つて可決された
法律の効力は如何になるものでありまし
ようか。そのときの政治上の
責任について
政府は今から十分研究されていても早過ぎはしないと思うのであります。(
拍手)一応御注意申上げておきます。(「
吉田内閣潰れてる」「宣告にも等しい」と呼ぶ者あり)
卑劣ついでに一言申し添えれば、第一、本
法案の名称は、「
電気事業及び
石炭鉱業における
争議行為の
方法の
規制に関する
法律案」とあ
つて、舌を噛みそうな長い名前でありますが、これが曲者であります。
争議権の
制限ならば、現存する
労働法規の中にちやんと挿入すべきでありまし
よう、いわんや、
政府の主張するごとく
解釈法規であるならば、
労働組合法第二条第一項に、「本条の適用について何々は正当なる
行為と見ない」と書けば、最も簡単又妥当ではないでし
ようか。それをあえてなさず、殊更に仰々しい単行法を作成したのは、
労組法に挿入すれば本法が如何に無理で珍妙なものであるかが一目で明瞭になるからであります。どなたでも一度
労組法に書き入れて読んでみられたらわかります。それほどひどい
法律なのであります。又、語義も明らかでない。「
規制」という妙な字句を作り出して、
制限でもなく
禁止でもない
ようにぼかそうとしているのであります。その上、「
争議行為の
方法の
規制」と、持
つて廻
つたような言い方をするのは、
方法を
規制するだけであ
つて争議権そのものは従来
通りだという、見えすいた
答弁にも現われたことく、(「ごまかしだ」と呼ぶ者あり)全く
政府の態度は一片の誠意もなく、インチキな万年筆を売りつけんとするテキ屋の嘘八百と何ら選ぶところがないのであります。(
拍手)我らの祖国日本をあずかる
政府として情けない限りではありませんか。
最後に、私は、本
法案が日本の
労働運動及び民主主義の発達に及ぼす影響について論及いたしたいと思うのであります。(「今が民主主義の全盛期だ」と呼ぶ者あり)
労働大臣は本
法案の
説明に際しまして、英国の、一九二六年、炭坑に対する英国
政府の補給金打切りに伴う賃金値下げと
労働時間の延長を契機として起
つた一九二六年の大ゼネスト後において、ボールドウイン内閣によ
つて提出された世界最初の改悪
法案である一九二七年の「
労働争議及び
労働組合法」を引用いたしますけれ
ども、然らば果して一九二七年のこの
法律は、英国の
労働運動に如何なる役割を果したでありまし
ようか。一九四六年、この
法律を廃止するに際し、検事総長ハートレイ・シヨウクロス卿は、英国下院において次の
ように
説明しているのであります。「一九二七年法について見ると、この
法律の効果は殆んど失敗と見てよい。
争議権の行使に対する実際的な効果は全くなか
つた。そして
労働大衆の間には、不正が行われていると激しい気持と、法廷は
労働大衆に対抗しているという感情が出、
法律が
労働大衆の不利益になる
ように復讐的に作られたという観念、そして
労働権が次々に奪われて行くという感じを
労働大衆に与えたのであ
つた。即ち、一九二七年法は未だ
曾つてない明瞭にして不正な差別的な階級
立法である」と断じているのであります。(
拍手)一九二七年法についてハートレイ・シヨウクロス卿が指摘しているごとく、本
法案も又、
労働大衆に対し、
法律は
労働大衆を弾圧するものであり、報復的に作られるものであり、裁判所は資本家擁護の階級裁判であるという観念を与えることは、火を見るよりも明らかであります。(
拍手)
私は、本
法案が、
争議権を剥奪され、
制限された
電気並びに炭鉱
労働組合を初め、日本の
労働運動をして極力的な方向に走らしめ、議会政治を否認し、暴力革命への方向を辿らすことを、心から憂えるものであります。(
拍手)又、私は、本
法案が日本の民主主義を崩壊せしめるものであることを指摘したいのであります。或る人は欧州諸国において
争議の少いことを述べ、日本の
労働組合は行き過ぎであると糾弾しておりますけれ
ども、それらの国々における社会保障制度の発達は、日本の場合とは比ぶべくもないのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり、
拍手)この社会保障制度の発達の故に
争議も少いと言わざるを得ないのであります。社会保障制度の発達は民主主義の発達の結果であります。(
拍手)而してこの民主主義発達の推進力は
労働組合であることは、歴史の証明するところであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり、
拍手)民主主義の推進力である
労働組合を弾圧するならば、日本の民主主義は必ずや後退するでありまし
よう。(「フアツシヨだよ」と呼ぶ者あり、
拍手)
政府は、
社会通念が成熟したと
言つて、一般消費者の一時的な感情や、無
責任にして冷酷なる第三者の声を悪用して、本
法案を提出いたしておりますけれ
ども、私は、百年の計を立てて大所高所から判断すべきが
政府の態度であらねばならないと思うのであります。(
拍手)現在、日本の政治家の最も大なる課題は、日本の民主主義を如何に実現するかということであります。若し、与党並びに一部の議員諸公がこのことを忘れて、本
法案の可決をあえて強行するならば、日本の民主主義の萌芽は摘み取られ、日本の民主主義は永遠に葬り去られるでありまし
よう。(「歴史的段階だ」と呼ぶ者あり)これは角を矯めて牛を殺すの愚であり、悔を千歳に残すであろうことを警告いたしまして、私の反対討論を結ぶ次第であります。(
拍手)
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