○青木一男君
只今議題となりました
昭和二十八年度一般会計暫定
予算補正、(第2号)
昭和二十八年度特別会計暫定
予算補正(特第2号)及び
昭和二十八年度
政府関係機関暫定
予算補正(機第2号)の
予算委員会における審査の経過並びに結果を御報告申上げます。
本件は、去る十三日、本
国会に提出せられ、目下衆議院において審議中の
昭和二十八年度本
予算が成立いたしますまでの暫定措置として、七月分に必要なる経費を、今までの暫定
予算には追加いたしまして、暫定
予算補正第2号として提出されたものでございます。この七月分暫定
予算は、
昭和二十八年度本
予算を基礎として編成されたものでありまして、四月乃至六月分の暫定
予算とは、やや趣を異にしておる次第であります。即ち、暫定
予算の性質上、新規事業のうち後年度に相当な
財政負担を及ぼすような大規模な事業に対する経費は計上を見合せてありますけれども、その他の経営的経費につきましては、本
予算計上額の月割一カ月分を計上し、又、本
予算において七月分より実施を予定しております新規事業及び単価の改訂につきましても、原則としてこれを織り込むこととしているのであります。要するに、暫定
予算の域を脱しない
限度を目途としつつ、而もでき得る限り本
予算の
趣旨を織り込むという方針の下に編成されたものであります。かくて七月分の暫定
予算一般会計において、歳入一千四億五千八百余万円、歳出九百六十七億八千四百余万円でありまして、その
内容につきましては、
只今申上げましたように、歳出は原則として本
予算計上額の月割一カ月分を計上いたしておるのでありますが、公共事業費、食糧増産対策費、住宅対策費等で、従来より継続の事業費につきましては、事業施行の時期的
関係を考慮して、その促進を確保するに必要な額を計上すると共に、新規事業についても、急施を要するもの又は時期的の
関係あるもの等は七月中に必要とする金額を計上しておる点が、従来と異なる特徴とな
つておるのであります。特別会計及び
政府関係機関につきましても、一般会計と同様、二十八年度本
予算を基礎として七月分の所要額を計上いたしておるのであります。
さて、本案の審査に当りましては、六月二十三日に予備審査を開始したのでありますが、
政府側の出席の都合を考慮し、衆議院よりの送付を待
つて、二十九日及び三十日の両日、
総理大臣並びに
関係者
大臣の出席を求めて審査を行
なつたのであります。委員会における
質疑応答は国政全般に
亘つておりますが、ここにはそのうち特に重要と思われる若干の問題について、その要旨を御報告することにとどめたいと思います。
先ず第一は外交
関係であります。即ち、「フイリピン
政府の今回我が戦犯者に対しとられた措置について
政府として何らか謝意を表すべきであると思うがどうか。
朝鮮休戦によるアジアの平和復興は
世界の望むところであると思うが、
日本は、いつまでも
アメリカの外交方針に追随することをせず、
朝鮮和平の急速なる成立について、更に進んで諸国軍隊のアジアからの撤兵や中共の
国連加入促進について、
政府の意図を表明する意思はないか」との
質疑に対しましては、「フイリピン
政府の今回の措置には
政府は深く感謝しておるが、
国会でも十分に謝意を披瀝してもらいたい。
朝鮮における和平の成立につき、
我が国が強くこれを希望しておることは
世界もよく
承知しておるので、特に声明する必要は認めない。中共の
国連加入問題は
関係国間で検討され、目下微妙な
関係にあるし、
日本自体が未だ
国連加入を許されておらぬので、
日本として促進の手段がない」旨の
答弁がありました。又、「東南アジアの
貿易や東南アジアとの経済協力が強調されているが、中共との
貿易を拡大することなしにはアジア
貿易は
考えられないこと、東南アジア
各国における華僑の動向を正しくつかむことが、この方面の
貿易拡大に重要な
関係があると思わないか。経済外交には、在来の外交官のみでなく、民間経済人や技術者を起用したり、経済アタツシエを置くつもりはないが」との
質疑に対し、「東南アジアとの提携については、経済
侵略の印象を与えないよう慎重なる注意を払う。又、経済外交の方法については種々努力している」との
答弁がありました。、
「
安保条約に基く
自衛力漸増計画に」ついては、今まで
国民に何ら具体的な案が示されていなかつたのであるが、過般、
木村保安庁長官によ
つて具体案が用意されている事実が明らかと
なつた。
政府は速やかにこれを発表する
考えはないか。又、
MSA援助について、
政府は
アメリカ側と折衝をしていないと
言つていたが、非公式に交渉をしているではないか」との
質疑に対し、
政府側から、「
保安庁長官が所管事務について研究をし、意見を述べることがあるのは当然であるが、それは閣議の決定を経ない限り
政府の政策ではない。
自衛力漸増について
政府が
如何なる
計画を持
つているかは、
予算に現われている
通りである。又、
MSAについては、外務省としては従来研究はしておつたが、交渉をしたことはない」との
答弁がありました。
次に経済問題について、「最近の経済情勢の悪化、特に本邦品の割高による輸出不振に対処する
政府の施策については、三百六十円の円為替レートを以て果して輸出競争に堪えるかどうか。輸出
増進政策が
国内で物価を吊り上げ、
海外にダンピングを行
なつたり、労働者の
犠牲の上に行われるのではないか」との
質疑がありましたが、
政府は、「
朝鮮事変の勃発により
我が国の産業がなすべき産業合理化を怠
つていたので、これが促進に努め、電源その他の資源開発を行い、経済基盤の強化とコストの引下げに努力している。輸出はポンド圏
貿易が後半からややよくなる予定であること、輸出促進を勤労者の
犠牲の上に行うつもりはない」という
答弁がありました。更に、今回の暫定算総則に盛られている
世界銀行よりの借款に関連して、「発電機械や土木機械のごとき、
国内でも
生産可能のものを強いて外債により購入するのは、経済自立を図るという
政府の根本政策と矛盾しないか。なお、このような重大な政策的
意味のあるものを何故暫定
予算に入れねばならないか」という
質疑がありましたに対し、「
日本開発銀行が
世界銀行から借入さる外債の
政府元利
保証については、別に
法律案を
国会に提出しており、この交渉が七月中に成立する見通しであること、
世界銀行からの外債による分は、
日本で
生産したことのない高性能の発電機械であり、二十五年という長期資金で、
日本経済の自立に役立つと思われる」旨の
答弁がありました。
次に農業問題でありますが、「最近における闇米高騰の原因並びに対策はどうか。早場米奨励金を打切るという噂が流布されているが真相はどうか。今回の麦価決定は、事実上、麦の二重価格制を認めたことであり、政策上の大転換を行
なつたものと思うが、
政府の所見はどうか」等の
質疑に対しまして、
政府側より、「闇米高騰の原因については目下調査中である。対策として繰上げ配給については
只今のところ
考えていないが、ただ精麦は必要に応じ適当な措置をとりたい。早場米奨励金は統制を継続する限りこれを打切る
考えはない。今回の麦価については、見方によ
つては二重価格制と言うかも知れないが、麦には統制がなく、その価格は自由にな
つているので、いわゆる二重価格ではない」という
答弁がありました。
又、「今回の西
日本の大水害についの
政府の対策並びにその
予算措置はどうな
つているか」という
質疑に対しまして、
政府側から、「取りあえず実情を調査し、適当な対策を立てるため、大野国務相を現地に派遣し、現地で応急措置のできるものは速やかに実行に移す
考えである。災害対策予備費は、今回の七月分暫定
予算に計上した十五億円を含めると、未使用残額が二十五億円ほどあり、差当り直轄河川の決壊堤防せきとめのため六億円を支出してもなお十八、九億円の残りがある。二十八年度本
予算には、暫定
予算に計上済みの三十億円を含め百億円の災害対策予備費が計上されているので、一応は賄い得ると思う。」なお、「このような当面の応急な対策とは別に、根本対策については
如何に
考えているか。災害が未処理のまま累積され、その復旧が遅々として進まない
現状に鑑み、災害を未然に防止するため、たとえ
防衛費をあと廻しにしても、災害防除、国土保全のための経費を増額すべきではないか」との
質疑に対し、
政府側から、「二十八年度
予算に計上した公共事業費は今までに曾
つてない巨額のもので、これで十分とは言えないとしても、資金の効率的使用の面からすればこのくらいが適当と思う。又、
保安庁経費等はこれ以上削減の余地はない」という
答弁がありました。
最後に森委員から、公務員の夏季手当増額の問題につきまして、人事院勧告が十分に採用されていないことや、号俸区分が均衡を失しているので是正すべしとする我々の要請が不問に付されていることや、最近の一般的な経済事情及び民間給与との関連等から見て、何らかの考慮が必要と思う。
大蔵大臣は、六月分暫定
予算の際は篤と考慮すると
答弁され、昨日は本当に考慮すると
答弁されているが、察するに、昨日の
答弁は、最近の機会において増額支給するように取計らうの
意味と理解するが、重ねて
大臣の所見を明確にいたしておきたいとの
質疑に対し、
大蔵大臣から、重ねての
質疑の御
趣旨もあるので善処することといたしますという
答弁がありました。なお、湯山、松澤両委員からも関連
質問がありまして、
大蔵大臣から右と同様の
答弁がありました。又、緒方
国務大臣からも
大蔵大臣と同
趣旨の
答弁がありました。
かくて
質疑を終了し、討論に入りましたところ、先ず、小林委員から
日本社会党第四控室を代表して、
防衛関係費が計上されておること、凍霜害並びに風水害対策経費が不十分であること、公務員の夏季手当増額を織り込んでいないこと等を理由として反対、高橋委員から自由党を代表して、各項目ともいずれも緊急止むを得ない経費のみであるとして賛成、加藤委員から
日本社会党第二控室を代表して、本
予算には、西
日本災害対策費、夏季手当増額等、緊急な経費の計上に何ら見るべきものがない半面、再
軍備的性格を持
つておるとの理由で反対、森委員から緑風会を代表して、
予算執行に当り災害応急対策の実を速やかに挙げるべく最善の努力を払うよう希望を付して賛成、無所属クラブの木村委員から、本暫定
予算は二十八年度
予算の一部であるから、本
予算と切り離してこれだけを承認することはできない、
世界銀行からの外資導入は、その性質上暫定
予算に織り込むべきではない、夏季手当については篤と考慮するとの言明があつたのにもかかわらず、誠意が認められない等の理由で反対、堀木委員から改進党を代表して、おおむね妥当な暫定
予算と認められるので、将来に対する我が党の態度を拘束するものではないとの留保を付して賛成、最後に、純無所属クラブの三浦委員から、現在の国政運用上必要なる
最小限度のものであるとの理由で賛成の旨を述べられました。
かくて討倫を終局し、採決の結果、
予算委員会に付託せられました
昭和二十八年度暫定
予算補正第2号三案は、多数を以て可決すべきものと決定いたしました。詳細は速記録によ
つて御
承知を願います。
以上御報告を申上げます。(
拍手)