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1953-07-27 第16回国会 参議院 法務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十七日(月曜日)    午前十時二十六分開会   —————————————   委員の異動 本日委員青木一男君及び小林亦治君辞 任につき、その補欠として中川幸平君 及び赤松常子君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     郡  祐一君    理事            加藤 武徳君            宮城タマヨ君            亀田 得治君    委員            小野 義夫君            中川 幸平君            楠見 義男君            三橋八次郎君            赤松 常子君            一松 定吉君   国務大臣    法 務 大 臣 犬養  健君   政府委員    国家地方警察本    部長官     斎藤  昇君    国家地方警察本    部刑事部長   中川 董治君    法務政務次官  三浦寅之助君    法務省刑事局長 岡原 昌男君    法務省矯正局長 中尾 文策君    法務省保護局長 斎藤 三郎君    法務省人権擁護    局長      戸田 正直君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○小委員補欠選任の件 ○刑事訴訟法の一部を改正する法律案  (内閣送付)   —————————————
  2. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 只今から本日の委員会を開会いたします。  売春対策に関する小委員補欠選定の件ですが、先般小委員赤松君が委員を辞任されましたので、小委員の資格は自然消滅いたしておつたのであります。本日赤松君が再び法務委員になられましたので、小委員に再び指名いたします。  なお、刑事訴訟法の一部を改正する法律案に関して地方行政委員会より委員長名を以て申入れがございましたから、御配布申上げておきましたから、申入書によつて御了承願います。   —————————————
  3. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 前回に引続き刑事訴訟法の一部を改正する法律案について質疑を続行いたします。
  4. 亀田得治

    亀田得治君 この刑訴質疑に入ります前に二、三、丁度法務大臣が来られましたからお聞きしたい問題がございますがよろしいでしようか。
  5. 郡祐一

    委員長郡祐一君) どうぞ。
  6. 亀田得治

    亀田得治君 今度の予算案修正で、例の裁判所関係費用ですね、これも一律に削られて来ておるんです。これは当然予算委員会分科会あたりで問題になるべき問題なんです。予算委員会としては今一般的ないろいろな問題に触れておりますから、そういう問題にまではまだ入つてつておりませんが、併しこれは法務委員会としては特に検察関係或いは裁判所関係仕事がうまく進むようにということについては、絶えず配慮しておるわけですから、これは重大な問題だと実は思つておるんです。それで今まで法務委員会でこれが問題になつておるのかどうか、ちよつと私暫く予算委員会のほうで、御無沙汰いたしておりましたので、委員長法務大臣かちよつとお聞きしたいと思います。
  7. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 私から委員会関係は申上げましよう。この問題については法案審議を終りました機会に、一つ法務当局から、更に広いいろいろな面を含めて御説明を聞きたいという工合に考えておりました。今日までの状態では予算委員会審議と併行して、この問題が本委員会において論じられたことはありません。
  8. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 亀田委員にお答え申上げます。お尋ねの点は誠に御尤もと思います。衆議院法務委員会におきましても刑事訴訟法逐条審議、討論に主に時間が費されまして、裁判所予算が果して、刑事訴訟法改正修正によつて足りるか足りないかというような御質疑は直接にはなかつたのであります。裁判所事務の停頓とか、特に百九十九条は今度衆議院法務委員会におきまして修正せられ、その結果裁判官が逮捕状の請求について、適法性のみならず妥当性も判断し、合せて事実上は裁判所のルールによつて相当検察官なり検察官の請求した逮捕状内容について、問合せたり連絡されたりする事務も多くなり、私は予算は相当今までより多額を要するのではないかと想像されているのでありますが、この問題は只今委員長がお述べになりましたように逐条の御審議、御質疑のありましたあとで、改めて当局から申述べさして頂きたい思つておりますから、さように御了承願います。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 刑事訴訟法改正に関連しての予算の問題は一応刑訴審議終つてからでもいいかとも思いますが、先だつて予算のこの行政費削減ですね、これが裁判所にも幾らかの削減というものが割当になつていると思います。で、私の申上げたい、又法務委員会として特にこれは重大な関心を持つてもらいたいと思つておることは、御承知のように、この国会関係会計検査院裁判所関係、この関係費用はですね、予算編成のときにも大蔵大臣は特殊な手続をとつて編成をしておるのであります。裁判所関係費用削減する場合は、要求に対してそれだけの要求を見積らないという場合には、その理由なんかも特に明らかになるような方法予算委員会に資料を廻して来ているわけなんです。これは結局、会計検査院国会、最高裁判所というものが政府とは独立又はそれ以上の機関である、こういうふうな立場で、予算上の措置においてもそういう方法をとつておりますね。ところが、今度予算修正した場合に、裁判所に対してもほかの行政官庁と同じように、頭割りで行政費削減ぱつとつているのですね。これはどの党がこういうことをやられましても、法務大臣法務委員会裁判所としてはちよつと御納得が行かない措置じやないかと考えております。その点を実はお聞きしたのです
  10. 犬養健

    国務大臣犬養健君) これは誠に御尤もでございまして、天引き的な削減ということは裁判所というものの性質上、極めて裁判所の当事者は困るのじやないかとこう考えます。御質問の御趣旨は全く御同感でございます。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 困るということになりますと、その方面担当しておられる法務大臣といたしましては、現にあの裁判所のほうに予算削減が示されておるわけですから、金額は私今覚えておりませんが、裁判所独立性という立場から併せ考えて何かこう処置をする必要があるのではないかと私は思つておるのですが、どうでしようか。
  12. 犬養健

    国務大臣犬養健君) まともにそういう御質問があれば全くその通りなんであります。あの当時政府の手と別に政党関係大局から予算削減を行なつたのでありまして、私どもはそれぞれ裁判所或いは検察庁というものは特殊な役所の性質上、一概にただ割当で削られておることの不当を述べて、或る意味で多少削減の程度が緩んだのでありますが、これで満足かという直接の御質問であれば、勿論満足することではございませんが、ただ政府衆議院の各政党大局からきめたのであるということでございますから、不満ながらその中で何とか辻褄を合わしてみようかといつて目下苦慮しているというのが偽わらざる実情でございます。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 そうしたらその問題は経費削減によつてどのような点がどのように支障を起して来るのであるか、こういうふうなことを、これは二、二日先でも結構ですが、もう少し具体的に知りたいと思うのです。これは私ども法務委員会の初まりに裁判所並びに法務関係予算を特に私ども説明を受けておるくらいに、裁判所関係のこの予算については単なる法律案審議のほかに是非関心を持つてもらいたい、こういうふうにその方面からも我々言われ、又現在の機構では法務委員会だけしか、そういう問題については、国会内で悪い点があつたならば改めるということはできないのではなかろうか。そういう意味でもう少し具体的にその点を知りたいと思う。でずつと前からも問題になつておりますように、この法務関係費用では随分何といいますか、謝礼にも該当しないような僅かな費用が出ておるような方面もある。若しこの費用削減というものが少しでもそういうような方面にでも及ぶということは私はなかろうかと思いますが、若しその具体案としてそんなようなことでも考えられていたなら私大変だと実は考えておるのです。でそういう意味でもう少し詳しい説明関係政府委員からでもさして頂きたいことを要望いたして置きます。
  14. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 必ずそのように計らいたいと考えます。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 それからこれは七月八日頃の法務委員会であつたと思うのですが、法務大臣がおられなくて人権擁護局長刑事局長がおられたときに実は要望しておいたものでありますが、それは衆議院議員八木一男君が五月三日暴行された事件があるのです。でこれは事件そのものとしては極めて簡単明瞭な事件です。見ておつた人もあつたのであります。ただそれに関する背後関係などが非常にうるさいものですから手間坂つている事件です。それでその後の国警側報告を私承わりますと、国警のほうは、これはもう極めて事態明瞭だからもう、二、三日のうちに全部書類を検察側へ送りました。こういうことを言つてつた、事実又その通りです。私ども地元からの要求がありまして六月二十三日に奈良県の私ども関係者と共に奈良検事正にお会いしました。そうしてそのときには事件内容もよくお話をしまして先方も知つておりましたが、決して故意に延ばすようなことはないので、そうして事案そのもの検事正としても簡単明瞭だと思うし、ただ担当後藤検事というのはこれは性格的に非常に物事を慎重にやる人であるから、そういう意味で起訴したあとに崩れては却つて困るのであるということでおやりになつておるのだろうと思う。こういうふうなお話でした。で私ども非常にそのことをお言葉の通り受けまして、それは慎重にやつてもらうことにこしたことはない、五日、六日あせつたために却つてどこかに欠陥があつたというようなことでは、結局は人権保護にはならないということでお願いをして実は帰つて来たのです。でその後幾らたつても問題が進まないし、それでいたし方なく私は今月の十日、前の委員会でそのことの調査方をお願いしておるのですが、それでその後予算委員会等関係でこちらへ余り出なかつたのですが、一昨日この奈良のほうからこういう文書が私のほうに送られて来たのです。でこれは簡単ですかうちよつと申上げますと、去る六月二十三日党本部派遣亀田得治氏と共に山内奈良検事正に対し、八木事件の早急にして厳正なる扱いをするよう申入れを行い、その後当県連としては検察当局の公正なる取扱を期待して静観して来たが、何ら変化なきにより、去る十四日、今月の十四日ですね、去る十四日日下書記長事件主任後藤検事に会見、その後の経過について訳したるところ、検事は現在他の事件のためにそう急には解決できないと思うこういうことを言つている。事件については関係者を約百名調べたがどうもきめ手がないなど依然たる回答で、何ら誠意を認めることができない。そのために巷間の噂として被疑者服部村長は、これがまあ暴力を振つた男ですが、被疑者服部村長木村法務総裁のお声がかりだから、検察庁は絶対に手を付けない。これはまあ地元の人ですから、現在法務総裁は違つているのですが、前に法務総裁であつたから、そのことの意味でしよう。手をつけないとうそぶいていて、このことが村民の間に暴力に対する恐怖心となつて現われている事実は看過できないのであります。あといろいろ書いてございますが、これは私この前調査要求したときにはもつと具体的に非常に無茶な男である事実を申上げておいたはずなんです。ところがその後何ら……。
  16. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 服部村長というのが無茶苦茶なんですか。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 無茶普茶なんですね。前に例えば何か物の値段の関係でもつれて、バツターで女の人を毆りつけたとか、そんなようなことがあるのですね。ちよいちよいそういことある。それでまあ非常なボスなんですが、非常にみんな嫌つておるわけなんです。
  18. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 甚だ恐れ入りますが何村なんですか。
  19. 亀田得治

    亀田得治君 北葛城郡上牧村ですな。
  20. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 上の牧ですか。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 上の牧です。これは私、検事正にお会いしたときにも、私どもはこの検察官やり方の悪いことを殊更に公表して、ごちやごちややろうというなら、すぐこんな問題は法務委員会で取上げるなり、或いはもつと別個な方法もあろうと思うのです。併しそんなことをするのが主体じやないので、八木代議士事件を契機にして地元では非常にやはり恐れているのですねますます……。代議士でも毆られてもそのままになつている。で私こんなことは大変だと思うのです。それで若し後藤検事が現在ほかの重要事件のためにそう急には解決できないというのは、どういう一体重要事件を抱えているのか、いやしくも一国の代議士暴力団に毆られている。どういう党派の者にしろ、そういう事件を放つておくということは、これは大変なことです。その影響するところは随分大きいと思う。八木自身つて絶対にこの問題では譲歩しませんが譲歩しないのはそういう気持でやつているわけでしよう。ますます調子に乗るわけですね、そういうことを放つておくものですから……。世間では私が調べに行つたときにもそういうことは聞きましたが、ますます服部村長政府中央部関係があるから、それはもう問題ないだろうとこういうふうなことになつて来る。これはその後何かお調べになつているでしようか。
  22. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 前回お話がございました直後、電報を打ちまして、早速調査いたしました。丁度今日御質問あるとは思いませんので、その電報の写しを持つて参りませんで、大変恐縮ですが、私の記憶しておりますところでは、大体今亀田さんのお話のように後藤検事主任となつて調べて、関係者も相当調べたような事実を報告してありました。ただたしかあれは、それは今月の十日前後、とにかくすぐ電報打ちましたのですから、翌日あたり返事が来ましたので、恐らく十日前後の状況じやなかつたかと思いますが、その当時の状況としては、まだ最終的な決定をするわけに行かないので、引続き捜査中であるというような報告が参つておりました。只今私もその後忙しいままに成行きを催促せず来つたのでございますが、只今お話の点もございますので、至急今日又電報でその後の状況、打合せ、早急処理について善処したいと思います。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 地元からの要求としてはですれ。再三担当検事にも会い、又検事正にも会つている。常識的に誰が考えても明白な問題であるし、警察にしたつてもう簡単明瞭だと思つて二、三日でぱつと検事に送つているような事件なんです。何か検察庁の庁舎を造るときの寄付の問題とか、いろんな噂をされているのです。私はこれはこういうことを放つておくことはいけないと思う。それで後藤検事法務委員会に私喚問してもらいたいと思うのです。僕はどうも初めからそういうようなことを言うのも不穏当だと思いまして黙つていたんですが、いやしくもこの国会議員が毆られているのに、もつと重要な事件があるからもう少し後廻わしだというようなものの言い方をする検事であつては、絶対にこういう事件というものは成立ちません。私ども何にも徒らに人を縛るのが目的じやない。私の仕事つて弁護士なんですから……。併しですね、こういう重大な人権蹂躪が行われているのに、こんな馬鹿げたことを言うてうそぶいているのは以ての外だと思う。委員長のほうで一つこの後藤検事喚問されて法務委員会でその間の事情を正式に聞くとか……、法務省を通じておやりになつても、なかなか真相はつかめないだろうと思うのです。私どももこれは正式の、速記録なんかをはずしたところの懇談会でこういう問題を取上げましても、ややもするとお座なり雑談になつてしまうきらいがありますので、特に実はこれを申上げているのです。今まで私はこういうふうにしないような段階で解決したいと思つていたのですが、それがどうもできない。この状態ですとそのうちに国会が終了になつたらというようなことも考えられているかも知れない。ますます私どもは怪しからんと思うのですね。そういう意味で、一つこれを喚問するようにお願いしたいと思つているのです。
  24. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 御喚問のことは何にも私差出ることはございませんが、一応これまでの私のやり方を申上げて御了解を得たいと思います。実はこの事件私今初めてなんです。ところが私のやり口は、同僚諸君に、亀田さんからあなたのほうの同僚諸君にお調べ下さればわかるのですが、非公式でも何でも伺つたことは私は大体その日のうちに手続しまして、そうして今までの経験で、一週間経つてもあいまいな御返事をしたことはないのであります。例えば佐賀県の電産ストの関係ちよつと行き過ぎがありまして勾留された事件も、非公式の速記も何にも残らない御陳情によつて直ちに私は外へ御本人が出るように処置したこともあるので、これは刑事訴訟のごたごたで、私は今初めて伺つたのですが、大体ほかに重要な事件があるから当分延びるというような返事が若し本当だとすれば、極めて異例であつて、私自身も多少真意がわかりません。従つて今日早速私の法務大臣としての務めでありますから、真相を究明いたしたいと存じます。勿論そのために後藤検事を御喚問になることを阻止するという意味ではありません。私のやり口を一応御了解願えば私も大変満足でありますので発言の許可を求めた次第でございます。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 まあこの一般的に何か検事の方が教養が高くて、人権というような問題については非常に皆さん理解があるというふうなことを法務省はどうも今度の刑訴を出すまではお考えになつてつたようですが、併しこれなんかを見ますと、警察の方がもう簡単明瞭な問題として殆んど即決のようなやり方で送つておりますね。それ以後随分日数が経つておる、三ヵ月にもなんなんとしておる。その間私もいきなり参議院法務委員というような肩書を持つて圧力を加えるというようなことは、私自身も今までいろんな運動をやつて来た者ですから、却つてそういうことは嫌いなんです。そういうことにならんようにして行つていてもこういう状態なんです。私随分奈良の地検の扱い方は怪しからんと実は思つておるのです。こいつは一つ厳重にあなたのほうからおつしやるということなら、もう少し待つてもいいのですが、併しこれは国会が済んでしまいますから、それは責任を持てますか。
  26. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 私はまあうやむやにして国会が過ぎてごまかすというようなことは嫌いな性分でありますから、今日早速昼飯のときにでも現地に相当厳重な照会をいたします。特に東京のえらい人がどうしだこうしたというようなことは、私甚だ伺つていても不本意でありますから、徹底的にこの問題はきれいにしたいと思いますから、どうぞ私の法務大臣としての心がまえを一つ御了承願いたいと思います。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 それじやまあ一応法務大臣がそこまでおつしやるのですから、その照会の結果を待つことにいたします。その上で委員長のほうで然るべく御心配を願いたいと思います。  それから丁度国警長官がお見えになりましたから、これもどうも警察検事局に対して何か八つ当りのような恰好になりますが、京都の例の井手町の町有林の問題ですね、先達つてちよつとお伺いした……。その後刑事部長からも警察としては当然調べるべきものは調べておるという御報告も私ども受けております。でこれは人権蹂躪はしてはならないが調べるべきものは調べる。これはもう当り前ですから、大いにまあ感謝はしておるのですが、ところがこれがやつぱり日が経つと長くなるのですね。甚だこれも言いにくいことなんですが、井手町の町長政府の某高官と非常に親しくしておるのです。これは事実らしいのです。それで二、三日前にも国会に陳情に来ておるのですね。会つたか会わないかそれは知りません。町民の人がそういうことを見ておるのです。町長東京に出かけて行くと、今取調べの最中ですから、それは大変だということで私どものほうに連絡に来たのです。併しそんなことは君らの臆測だろうと言つていたのだが、別に今町長として東京に来る必要もないし国会に来ているのはさつき会つた言つているのですね。ちよいちよいそういうとを私ども聞くのですが、この京都の問題ですね。何かそういう圧力が加わつておるんじやないか。一生懸命やつておられるときに、こういう質問をするのは甚だ苦しいのですけれども町民の何といいますか、熱意、ただそのことだけでも、噂を聞いたというだけでも三人ぐらいの町の代表の人が飛んで来ておる。この経費とか時間なんかを考えたら、私は気の毒だと思います。たつたそれだけのことを言うために来るのです。大変な問題だと思います。それで一体どうなつておるのか、まあちよつとお聞きしたいのです。
  28. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 京都井手町の町政関係をいたしました事件町政が非常に紛糾して警察調べるべき事件もどうも十分調べていないようだというような噂を聞きましたので、私のほうから早速調査府本部に対して命じたのであります。当時地区署におきましては、山林立木の売買問題についていろいろ噂があるので、調査内偵をいたしておつたようでありました、が、当時ははつきりした容疑がつかめないという状況であつたのであります。その後国警府本部で直接更に調べるようになりました。その後若干の犯罪容疑事実が出て参りましたので、たしか吏員一、二名をすでに逮捕をいたしたはずだと思つております。これが町長関係があるかどうか、只今十分視察中でございます。一両日前にも更に状況を聞き合せたのでありますが、特に大阪の管区本部から人をやりまして、そして本当に実態をよく把握をさせたいと思つておるのであります。私の只今まで見ておりまするところでは、不当な圧力のために捜査を遅延せしめておるという事情はないように考えるのでありますが、管区本部から更に実情調査を人をやつてさせたい。一昨日その指示をいたしておきましたから詳細はその報告によつて更に明らかになると思つております。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 まあそういう圧力が加わつておることがないということであれば私も安心いたしますが、そういう一つ疑惑というものは、やはり人が普通の常識以上にのびて行くということになりますと、自然に起きて来るのです。そんな疑惑を持つのは怪しからんと言うほうが無理だろうと思うのです。そういう意味で、一つ手をかけておられる問題については至急処理をしてもらいたい、重ねてこれはお願いしておきます。  それから次に刑事訴訟法関係質疑に入りたいと思います。私初めに刑事訴訟法改正案審議方法、これについて、実は委員長なり、それから参考に更に政府側にもお聞きしておきたいと思います。というのは、衆議院先議になつておるような法案ですね、そういう場合に私ども予備審査をする。予備審査はよろしいのですが、本格的な審議というものはやはり衆議院審査が終らないとできないのではないかと、私はこう考えております。その点委員長はどうお考えでしようか。
  30. 郡祐一

    委員長郡祐一君) お答えいたします。私は現在の新らしい国会予備審査をいたしました性格から考えましても、本審査予備審査衆議院においても参議院においても併行して進めて何ら支障がない。その予備審査というものは、議案についての十分なる審査予備審査段階において尽し得ているものと考えております。今までの慣例でも、いずれもそのように私は扱われておるものであると考えております。且つこのたびの刑事訴訟法の一部改正案につきましては、衆議院修正が起つておりますが、これも亀田委員承知のように、先週二回衆議院参議院と、法務委員がそれぞれ懇談をいたし、衆議院法務委員並びに各党の委員参議院法務委員会に出席して参りまして、双方の意見を交換いたしております。このたびの刑事訴訟法の一部改正につきましては、特に法案審議といたしましては慎重にいたしておると私は考えておる次第でございます。現在の新憲法下における又新らしい国会法におきまする議案の審査としては、この予備審査というものは付託されているかどうかということの問題を除きましては、議案の審査としては十分な審査が尽されるものであると委員長といたしては考えております。
  31. 亀田得治

    亀田得治君 それで実はこれは懇談的にこういうことをお話してもいい事柄なんですが、懇談になると先ほど申上げたように全く雑談になる虞れがある、まあまあということで……。ところが私実は単にこれだけではないんで、全体のいろんな審議の問題について、実は二院制とも関連して非常に疑問を持つているんです。というのは二つの院がある。一方が先に審議する。これはどういう結論を出すかわからないんですね、出て見ないと本当はわからない。ところがそれが出るまでに他の院のほうも参加して行くということになると批判はできないのですね。一方の院で何らかの一つの案に対して結論を出す。出すときにはこれはもう皆いいと思つて出すんですよ。悪いと思つて出す人は一人もない。ところが案を決定して世間に発表してみる。そうするといろいろな議論起こつた来る。真剣な議論が起つて来る。そこに私二院制の妙味があるんだと思うのですね。で、私そういう意味で議事を一つスムースに進めるためにいろんな修正案の問題もあるから一緒に相談したらどうか、委員長からお話がありました。で、私も予算委員会で忙しかつたせいもありますが、根本的には実はその点に疑問を持つておるんです。それであなたにも申上げたと思うんですが、日曜日か或いは普通の日でもいいが、仕事が終つたあとの夜か、そういうときに一つ軽い気持で意見を交換してみるということなら賛成ですと申上げておつたのは、そこに非常にやはり私疑問を持つておるんです。でどうしてもその線を踏越えて、いろいろな相談をすればこれは拘束されます。そうしてしまつたと思つたつて、これはもう取返しはつかない、義理にからまれて……。これは私の党からもそういう誘いがあつた。併し私は断じて、それは自分が二院制という立場参議院に出た以上はそれには応ぜられんから、そういう会合には……。そうして行きませんでした。それで私はこの予備審査参議院自身としていろいろな検討をされて行く。これは結構なんですよ、大いにおやりになつていいのです。私は委員会には途中少し出られない期間はありましたが、研究自身は一生懸命やつております。特に自分が来られない場合は秘書に傍聴させて、そうしてどういう質問があつたか、どういう質問があつたということをみな聞いて、勉強だけはずつと続けております。そういう予備審査委員長がおやりになるということは私は勿論賛成なんです。だけれど果して衆参両議員が一緒に一つの会合を持つて案を作つて行く、これは私今の制度自身を否定して行くようなことになるのじやないかと、その点を実は心配しているのですがね、どうでしようか。熱心にいろいろ掘下げて行くことを私否定しているのじやない、予備審査を否定しているのじやないのです。私の考えが若し間違つてつた一つ教えてもらいたいのですが、この際政府側の御意見を聞いてみたい。
  32. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 私も前段と申しますか、全体の問題としてお述べになつた中で、政府に時々申入れもいたしており、又これから政府全体として考えてもらわなければいけませんのは、政府の議案の付託の仕方であります。これは政府も、法務大臣も、法務省関係では御記憶になつていると思いますが、参議院先議の法案につきましてはいち早く皆さんの御協力を得て、衆議院のほうの委員会が開かれないで放つている時分に参議院法務委員会ではお願いいたし、そうして衆議院のほうに十分なる審議の時間を与えるように努力いたしそ参りました。併しながら政府全体の法律案の付託の仕方が、予算等法律によりまして当然衆議院先議になつておりますのは、これは当然の扱いでありますが、衆議院参議院法案の提出の振合等についてどうも適当でない部分があると思います。衆議院審議やり方そのものは別といたしまして、こういう点については政府考えてもらわなければならん点がたくさんあると思うのでありますが、ただ二院制の立場というものを堅持することと、又一つ法案について両院で同じような点を同じように論じている、そういう場合に実質上のつながりを、又これで個々の委員同士というのもなかなかむずかしい、党の関係やなんかそれぞれむずかしいことがあるようであります。各派各党から出ている委員が一緒に懇談するやり方というものは、法案扱います上では、一つの私はいい方法だと思う。併しそれに余りなれて、筋に反するようなことは勿論いけませんし、又いたすつもりもございませんけれども懇談的にお話合いをするのはまあまあよろしいのじやないかと、こういうふうに思つてつておりました。併し又これらの点については全体の問題として、法務委員という立場よりもむしろ国会議員の我々の立場として、十分これからも考えにやならんと思つております。殊に初めのほうの点どうも法案の付託で、初めからの政府やり方審議に無理が起つている、こんな点は一つ反省をしてもらおうとは思います。
  33. 亀田得治

    亀田得治君 実際経過から見るというと、衆議院審議が随分つ遅いのです。時間がかかり過ぎているのです。そこで私ちよつと漏れ聞きますと、何か今日か明日に参議院のほうで刑事訴訟法を上げてしまえ、そういうこともちよつと聞いたのです。それで、それであれば参議院というものは全然要らんじやないか。これだけ大きな問題を巻起して、而も衆議院の最後決定というものは、今午前中やつているのです。国会のことですから、最後というところで一字一句でも何か附帯決議をつける、決議の内容でも、どういうところが一字一句変るかもわかりません。何にもきまらんうちに、どんどんこつちだけやつて行く、而もこつちが参加してやつて行く、こういう形をとられたと思います。その点非常に間違つていると私実は思つているのですが、政府はどう思いますか。
  34. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 政府の前に、ちよつと一言私から……これは実際に審議が、衆議院参議院ときちんと、会期の半分を衆議院審議し、半分をこつちに廻すというような場合には、おつしやるようにきちんと始めて、丁度いい状態でできるのです。ところが本日あたり採決の運びにいたしたいということは、一応懇談会で各党の委員のかたに申上げ、それから又土曜日の委員会で、正式な委員会懇談会でこのようにお話をいたし、御異存なければ、そういう工合に一つ皆さんで運んで行こうじやございませんかということを委員会の席上申上げましたのも、もうあとどうせこの会期というものは非常に迫つておる。初めからややそんなことが考えられますので、これから仮に三日、四日かけましたところで、これの審議はなかなか完全に審議ができません。どうもこれはおつしやるように根本に適当じやない点があるとは思いますが、併しどうも毎回比較的重い法律であればあるほど、そういう状態に相成りますので、今度は委員のかたに大変御勉強を願いましてもうこれで十二、三回法務委員会刑事訴訟法だけで開きました。そんなふうにしてここまで来れば、本付託になつてから又改めて審議をしなければ参議院として審議を尽さないというものではなくして、予備付託でも本案の審議に関する限りは本付託と変らない。こういうことを衆議院でも、参議院でも、ひとり参議院がそう運用して参らなければならんということでなく、衆議院でもそう運用して参るべきものだ。ところが参議院についてだけ、どうも参議院に会期末ほど殺到して来る現象を呈しますので、法案の付託に原因があるのじやないかと思います。そういう問題も考えなければならんと思いますが、そのように考え、又たびたび皆さんがたに懇談会で二回、正式な委員会で一回、懇談会で御異存がありませんでしたらと土曜日にお話をいたしましたのも、まあまあ皆さまがたが勉強して採決していい状態に入つて来た。その上で無理もない状態に入つて来たと、こう思いましたので、何分一つ御了解を願いたいと思います。又政府のほうから言うことがあれば、政府から一つ
  35. 犬養健

    国務大臣犬養健君) これは固くならずにお答えをいたしたいと思います。両院の審議の仕方については委員長国会に敬意を表して私は差出ることを控えておるのでありますが、衆議院で非常に時間がかかつたことは事実でありまして、その点は多少私も非公式に意見を聞きましたので、この際御参考までに申上げたいと思います。私はこういう問題は資本主義とか社会主義の区別なく、人権と社会の安寧秩序との調和の問題でありますから、できるだけ各党の御意見を十分披瀝して頂こう、数の多い党が打切るというようなことを私好まなかつたのであります。それで法案によつては、よく政府からもういい加減で打切つてくれないかと委員会に内々お願いする習慣もあるようでございますが、私はそれは一度もお願いしなかつたのであります。衆議院で五人ほどの議員を持つておられる会派のかたでもたしか延べ五、六時間質問されたのじやないかと思います。そういうことも私は一向せき立てずに、十分これも一つの角度の御意見だと思つてつてつた。そういうふうなことが予期せずして参議院に御迷惑をかけたということは深く恥じております。又御承知のように検察対警察の問題をできるだけ私の就任の間に円満にして、永年の問題を解決したいと思いますために、法案衆議院に提案してそれからあと大分その調和のために時間がかかつて委員のかたもその調和の目途がついてから審議にかかろうというような御気分があつたようで、かれこれして、亀田さんが参議院という二院制度がある以上、時間が少かつたじやないかというお叱りのお気持は私は少しも無理でないと存じます。ただこの両院の審議やり方については全くこれは委員会の御意思によるものでありまして、私どもは如何ようにも国の最高機関のなさることでありますから、私のほうの都合をできるだけ言わないようにしております。その気持をどうぞ御了承願いたいと思います。
  36. 亀田得治

    亀田得治君 政府側のほうから、国会のおやりになることには余り意見を述べないというような御趣旨のようですが、私はこれはいろいろな問題を明らかにするために審議されることはいいが、結論までを一緒に出すことはこれは現在の機構の違反だと思つております。本案は知らず知らずおやりになつている。単に法務委員会だけではなしにほかでもあるのじやないかと思いますが、非常なやはり間違いだと私は思う。実際審議権を放棄した恰好になりますよ、参議院としての審議権ですよ。恐らくあれに同意された人たちは弁護士会やいろいろな方面からの御注意によつて相当反省しておるはずです。それを参議院でやつてくれと、こう逆に言われておる、賛成した人は……。そこが我々がそれ以前に参議院も参加しておつたということであつてはこれは重大な問題だと思う。それからあすこでいろいろな問題が相当論議されておりますが、論議された問題については意見を何とか出すのだ。ところが誰も気が付かないでおる問題があるのですよ。気が付かんやつは論議の対象にもならんのですが、法律のことですから、一言一句だつて問題が残ることはありますよ。触れられておらない問題で私も一、二持つております。ところがそんな問題は何か非常に軽く思われるのですね、誰も気が付かなかつたということになると……。ところがこれが一旦法律になつて実際に施行するとか何とかいうことになると問題を起して来る。参議院というものはそういうところを拾うのがむしろ参議院だと思う。わんわん世間のほうで言つておるようなことは、これは何ですよ、いろいろな方面から意見がたくさん出て来るから大体常識的なところに結論がつくだろうと思いますね。それでも目こぼしがあるのですよ。それを参議院であなたやらなければどうするのですか。そうするためにはもう少しこう控えめな態度じやないと非常に何か私ども割切れない気がする。衆議院で今法務大臣お話だと四時間時間を通じて何か質問された。私も実は総括質問のときに法務大臣はおられなかつたけれども、午前午後引続いて殆んど全体に亙つて四時間余りやつておるはずです。各条について言えば疑問がたくさんある。併しあの審議状況は私は出れないときでも聞いておりますから、そんな無駄な重複は避けたとしても、相当問題がある。本当にこれを良心的に皆の議論を聞けば聞くほど、誰も確信がないのですよ。まあこの辺でやつておけばいいだろう、こういうところに行くと思う。そんなことでこういう一つの制度を変えるようなことを取扱つてもらつては困ると思う。だからそういう意味でやはり審議は私は三十一日までやつてもらいたいと思つておるのです、ほかの問題も片付けながら……。私は予算委員会のほうはやめてもいのですから、何か参議院審議を放棄するというような印象を与えておりますから、これはもう参議院の名誉にかけてもそんなことではいけないと思う。三十一日までがんばるつもりです。三十一日にこれは勿論討論採決して、どうしても皆が今国会できめるということなら三十一日にきめて下さい。私はそんな流すとか何とか、そんなことは考えませんね。併しこんな重大な問題ですから、審議をする以上は十分私はやらしてもらいたいと思つております。問題はたくさん持つておりますので一遍にはとても申上げられませんから、一つずつ法務大臣質問して行きたいと思つておるのですが、そういう点について委員長どういうようにお考えですか。
  37. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 亀田君に申上げます。私は本委員会は努めて公正に運営いたして参りたいと思つております。従いまして私は幾たびか繰返して申したように、速記を用いないほうがいいと言われれば速記を用いずに懇談をいたしました。又懇談いたしました結果、全部の御意向が今まで一度も数で法務委員会のようなものを政治的に扱わずに、法律的に扱うということで、委員会で数できめるということはできるだけ避けて参りました。又そういう御要求もございませんでした。従つて速記に残さなければならんときは大体の皆様の御意向がきまつたというところで皆さんにお諮りをいたし、委員長、理事の打合会にお任せを願うというやり方も避けて参りました。従いましておつしやるような、いついつまでやらなければ審議権を放棄いたしたのだとかというような工合には私は考えて頂きたくないのであります。そのような私は委員長扱いをいたしたとも考えておりません。又たびたび、随分各委員の御出席をうるさく、少しうるさ過ぎるじやないかという……、まあ質問のある人間がしていたらいいので、そう毎日うるさく言わんでということさえお叱言を頂きながら、各委員の御出席を要求いたし、そうして繰返していたして参りまして、もう質疑も大体ない、ただ衆議院修正について質すべきものを質すのだというような御意向もありましたので、政府の御意向も聞き、衆議院側の委員長の意向も聞き、こうして進めて参つたわけでございます。従いましてここで何か私ども委員会の中で審議を十分尽しておらんというような御意見の出ることは誠に私の扱いが悪かつた点は恐縮ですからお詫びを申上げますが、そういうことでなしに、大体亀田さんがいらつしやらないときは亀田さんの党のほかのかたが来ていて下さいましたし、従いまして、これは全体の意向がもう採決に入つてよろしいじやないかということで、金曜日も土曜日も、但しそれは衆議院修正を中身をよく聞くということで、聞いた上で土曜日あたり御出席の皆さんがそうおつしやつてさように扱いましようというところまで来ました問題は、そのように一つ御協力を私は願いたい。それは委員長から亀田君のほうに改めてお願いをいたします。
  38. 亀田得治

    亀田得治君 私が申上げているのは、我々が審議の対象にするのは衆議院修正案なんですよ。だからそれが出て来ないうちに何か結論まで出してしまつて、私三橋さんからそれを聞いて実は驚いたのですが、あまりにも懸隔があり過ぎるものですから、私も何も言わなかつたのです。併し正式の場合にはつきりこれは国会としてしておくべき問題と思うからいたしましようというので三橋さんと別れておりますが、これは修正案は、一体何も絶対的なものじやない。これを原案に戻せという意見だつてあるでしよう。一部分については相当異議のあるものもあります。もつと修正せいというものもあります。それから大体修正案がここの原案になるということになりますと、いろいろなことで私ども聞き直したい点があるのですよ、第一法務大臣に対しても……。私どもが最初提案理由の説明を受けた場合、ちやんと理由書に書いてあります。大きな理由が五つになつている。その大きく分けて五つの中で一つだけです、そのままになつているのは……。あとのやつは全部、何というか傷がついているのですね。改正案というものは一つの、一体になつたものでしようだからつやはりこういう問題についての法務大臣考え方だつて私お聞きしたいと思いますし、やはりそういうふうに修正案を一つ我々が正式に受取つて、そうして修正案に対する本当の肚の中を聞かしてもらいたい。それに対して私ども質問もしたい、半日なら半日、一日なら一日でいいですよ、修正案に関連してやはり逐条、問題があるところがあるのです。指摘しますがね、これは恐らく刑事局長つて賛成されるでしよう。私ちよつとあれした場合、上訴権の放棄の問題、私もその後調べましたが、あんなことは私の主張するのでいいのですよ。それがこのままこの改正案でしたら行くでしよう。それも半日なら半日、一日なら一日やつてもらつてそうして三十日、三十一日とどうするか。こういうふうに、こういう重大な法案についてはやはりやつてもらうのが当り前だと思う、そう思いませんか。
  39. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 亀田君に申上げますが、国会というものは私がそういうことを申上げるまでもなく、いろいろの議案が輻輳している。それから、それぞれの委員がいろいろな委員会関係をいたしておられる。政府のほうもそうでございますし、従いまして恐らく衆議院から修正した法案が廻つて来ても、それは亀田さんは非常な専門家でいうつしやるから関心を持たれる点が違うかも知れませんが、委員の皆さんも恐らくあなたと同じような気持で、修正案が出て参つたときに、それによつて全体の構造というものに矛盾が起りはせんか。そういう工合の御質疑をして下さつたものもおつたのです。これからあなたがそういうお気持をお持ちになる、そのお気持の点についての御幕は、会期もだんだん迫つて来ましたから、成るべく要約して御質疑を願いたい。それが今日冒頭からあなたに御質疑を願つている点でありますから、関連した御質疑がありましたら早速御質疑に入つて頂きたいと思います。
  40. 亀田得治

    亀田得治君 そうであれば午後にしてもらいたいと思います。私は一時なら一時でいいです。ともかく衆議院の案が通つてからにして頂きたい。これは私ども責任を以て最後の質疑応答だということなら、もつと私血の出るような質疑応答をしなければならん問題がたくさんある。それを通つているのかいないのかわからんような状態質疑をするということは、私おかしいと思うのですよ。終りの時間は延ばしてもらつていいのですよ、散会の時間は……。私どもは決して理由のないのに審議を延ばすなんとかいうことじやない。明日は十時がなんだつたら九時半からでも結構です。いよいよ正式にやるということなら、衆議院の案が過つて、これが衆議院改正案ですと、ちやんと順序を正して説明して下さい。それから私、この重大な問題ですから軽々しく扱わないようにしてやつてもらいたい。私は、たとえ自分の主張が破れるにしても、こういう重大な問題であれば、自分としても初めて参議院に出て来て、一法曹として簡単にこういうことで絶対に同意できるものじやございません。だからどうか私の本心を酌み取つてもらつて、私も委員長が議事の進行上こういうふうにしてくれんかと言えば、ほかの問題を放つておいてもこれはいたします。だから是非そういう正式の進め方をお願いしたい。
  41. 郡祐一

    委員長郡祐一君) よくお気持はわかります。ただ亀田君に申上げますが、あなたは正式だとかなんとか言うておられますけれども参議院審議は、衆議院の議案が衆議院の本会議で議決されて本付託にならない間の予備審査というものは正式の審議でないという工合にお考えでありますならば、私は国会法はさようにはとつていないところだと思います。従いまして、現に正式に審議を慎重に進めているということの信念だけを申上げておきます。
  42. 加藤武徳

    ○加藤武徳君 亀田君の御発言の点、私全く了承できない点も多うございます。又その反対に了承できる、成るほどと肯づける点も若干ございます。併し本案の取扱については、一昨日私たちが亀田君の会派の委員をも交えて異論なく取りきめた議事の日程であるわけであります。従いまして、私は委員長には原則的には一昨日取りきめたあの日程で進めて頂きたい、このように思うわけです。ただ一昨日の話合いは、一昨日衆議院で本会議をお持ちになり、又その本会議で修正案が議決されてこちらへ送付されるということを前提としての話合いであつたという工合に私は了解をするのであります。それがそのときの了解とは若干違いまして、今日の本会議で議了される、こういう見通しでございますので、この会期においては委員長が適宜お取計らいになつて、一昨日きめました議事の日程を、審査の日程を御変更なさるということは支障はないかと考えますが、併し飽くまで一昨日お取りきめになつた線を基本にお考え願いたい。成るほど会期はこの三十一日まででございます。併し会期末になりまといろいろの法案が輻輳いたしますることはわかりきりたことでありまして、委員長の先ほど来の御発言のように、すでに殆んど前例を見ない程度の慎重な審議が重ねられておるのでありますから、速かに委員会では討論採決を終られてそうして本会議に持込むという運びを願いたい。従いまして、私はここで委員長が改めて本委員会の運営に関しまする御相談をなさることは了承いたしますが、重ねて一昨日きめた基本線はそのまま堅持して欲しいということを附加えておきます。
  43. 亀田得治

    亀田得治君 これはそんな多数でどうこうという問題ではないのです。私は自分の意見が通らなければ最後には否決してもらつていいんですよ。いいけれども参議院自身あとから人に笑われんような審議をやつてもらいたい。衆議院がきめてもおらんときにちやんと結論を出してしまつて、そうしていついつかに討論採決と、こんな不見識なことは絶対ありませんから、私はこういうことを記録にとどめてもらうだけでも随分不名誉なことだと思つている。私も議事進行に協力してもらいたい点は十分しますが、誰かが成るほどそうだと思うような御意見があれば、理事会で一旦きめたことであろうが何であろうが、これは訂正して行つたほうがいいですよ。私もほかの御意見のあるかたでそういう問題があれば、いつでもそれは賛成して行くのです。それはもつとそういうふうな気持でやつてもらわなければ困ります。そんな形式的なことをいろいろ言われるのでしたら、一体定足数の問題なんかもしよつちゆうあるのですよ。そういう問題なんかどうするのですか。一々そんなここを言うのだつたら、これはやはり筋が通るように、これは重大な法案ですからやつて欲しい。納得しませんよ。
  44. 郡祐一

    委員長郡祐一君) ちよつと速記をとめて。    午前十一時四十四分速記中止    —————・—————    午後零時四分速記開始
  45. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記を始めて。  午前はこの程度を以て休憩いたしまして、午後一時から再開いたします。    午後零時五分休憩    —————・—————    午後二時五分開会
  46. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 只今より午前に引続き委員会を再開いたします。  法務大臣衆議院の本会議が開会されますと、そのほうへ出席されますので、その場合は他の政府委員に御質疑を願いたい思います。
  47. 赤松常子

    赤松常子君 私は法務大臣に一、二ちよつとお尋ねいたしたいのでございます。昨日の予算委員会におきまして同僚議員が売春問題に関しいろいろ質問いたしましたことに対しまして誠に熱意ある御答弁を頂いて心から感謝申上げます。それに関連いたしましてでございますけれども、先般刑法の一部改正に関する質疑をいろいろいたしております間に疑問も出て参りましたし、又心配な点が出て参つたのでございます。それは言うまでもございませんが、執行猶予を七年を五年にいたしますと、相当のかたが保護観察に廻されるわけですが、それを受取る側の保護観察官或いは保護司の網の目というものが誠に荒くて、折角法律ができても、その成果を挙げるということから考えますと非常に心配なのでございます。ところがそれにもかかわらず刑法の一部改正は進められているわけですが、あの売春法に関しましては第二国会でこれが一応問題になつたのでございますが、それがいろいろ支障で実現できなかつたいう、そのいろいろな支障の中に、検察庁及び警察側がこういう法律ができても、一々取締ることにはとても熱意をお持ちにならない。むしろそういう側がこの売春法の制定に御反対なさつたということもそのいろいろな理由の中の大きな理由だつたわけでございますが、今なおその考え方はずつしと根を張つておりまして、折角作つても、検察側及び警察側がその法の実施に当ることに非常に躊躇しておいでになる。先ほど申しましたように、刑法の一部改正の結果今日までこれに関しては私どもは本当に心配しておりますにかかわらず、それが進行しているような形と、そうして今の売春法のそれを阻んでいる問題と比べてみますと、非常にちぐはぐと申しましようか、一貫性がないと申しましようか、非常にそこに私どもは疑問が感じられるわけでございますが、こういうことに対して法務大臣どういうふうにお考えでございましようか。
  48. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 昨日加藤シヅエ議員から、御質疑がありましてすぐ控室へ帰りましてから、この仕事担当している課長と一時間くらい話をしてみたのであります。私の感じでは検察庁が渋つているということはございません。ただ法務省としては、法律を作つた以上守られなければ困る、これは当然だと思います。それから率直に申しまして、昭和二十一年に各省次官会議で、どうもこれは売春というのは社会として止むを得ないじやないかと言わんばかりの申合せがあるのであります。今日から見ると随分おかしな申合せだと思うのでありますが、さて昭和二十一年という年を考えて参りますと非常に社会の混乱期でありまして、ほかにまだたくさん社会秩序の根抵から崩れそうなときであるのに、売春という、よほど社会が治まつてからでないと手の付けにくい問題は今は無理ではないかという意味なのですが、そういうニユアンスが残らずに文字だけ残つておりますから、随分思い切つたことをきめた次官会議だと我々は今日になると思うわけです。そこでこれは法務省警察がそうだというのでは直接ありませんけれども、大体終戦の混乱期から昨年くらいまでは、どうも困つたことだが、何というか、社会の、一偶にはああいうものも仕方がないのだという気持が何となくあつて、その考え方が連続して今日来ていたのじやないかと思うのです。私は外国軍隊が入つて来て、女性とのつき合いの観念、習慣の異る民族が入つて来て、一層拍車をかけて相当これは必要な悪だとか、黙認主義でいいとかいう問題を再検討すべきときがとうとう来た、こういうふうに私は感じておるのであります。従つてそれを機としてこの問題を改めて、過去のいきさつにこだわらずに、真剣に真正面からとり上げてみよう。そしてとり上げ方は昨日課長に申しましたのは、全部どこもかしこもうまく行くということはなかなかむずかしいから、まあ売春という問題を相当甘く大目に見ている国でないのだということを外国にも認識させることを主眼にして、そしてそれに従つて一つ書いてみて、それに附随する弊害は二次的に今度研究しよう。万事初めからいいことばかりしようと思うと、なかなか捗らない、こういうように方針を授けたわけであります。ただ、昨日予算委員会でまあ私ははつきり言いませんでしたのは、これはほかの省の協力を是非お願いする仕事なんでありまして、法務大臣だけがいい子になつて俺だけはいい考えを持つているというふうな発言は、事を円満に運ぶ必要上、模しむべきだ、こう思つて余りはつきり言わなかつたのであります。私一個は一個の方針を持つて下僚に命じておるつもりでございます。できればやはり各省協同の委員会のようなものでも作つて行きませんと、法務省でいいと思つたことがほかの省でいけないとか、いろいろ問題が起つてますいと思います。総合的にやつて行きたいと思います。そうしないとなかなか仕事は捗らないのじやないか、こういうふうに思つております。
  49. 赤松常子

    赤松常子君 只今の大臣は、検察庁側の反対の理由といたしまして折角法律ができても、それが守ることが不可能だというようなことが検察庁あたりのまあ反対の主な理由だとおつしやつたのでございますが、それならばそれででございますね、法律が本当によく守られる、遵法精神が本当に徹底するように、どうすればよろしうございましようか。その点について、検察庁側の御意見を率直にお聞きでございましたでしようか。
  50. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 作る以上守られる法律でなくてはならないというのは検察側の意見であり、気分でありまして、そのために反対だというのではございません。ただこの問題、各省一緒に手をつないで目的に進まなければなりませんので、その点が、どこの省だけ飛び出すということのできない、そこに今まで三すくみか四すくみぐらいになつていた原因があるのじやないか、こう思います。私はほかの省の大臣にも御了解を願つて、まあ直接私が、ほかの省の下にいる局長や課長さんにも会つてみたいと思つております。できるだけこれは新らしい、終戦後の新らしい、そして悲しむべき国情から生じた大問題であるという意味でとり上げてみたいと思います。
  51. 赤松常子

    赤松常子君 よく了解いたしました。そのことにつきましては、二、三回前の委員会でも大臣にお願いして、総合的に売春特別対策を政府部内にもお設け頂くということはお答え頂いておりますので、是非それの促進を早くお願いいたしたいと思います。つそれからもう一つは、勿論総合的にいろいろの手が打たれなければ、この法律を作つても十分成果は挙げ得ないということはわかつておりますけれども法務省関係といたしまして、例えば第一線に働いておいでになる方々の人員が足りない、つまり人手が足りないとかいうようなことがおありだろうと思うのでございます。そういう点についても十分なる対策をお練り頂いて、そうして人手が足りなければそういう人を十分にお殖やしになるというようなことをどうぞ具体的にお考え願いたい。そうして法務省はこれほどの準備をしているのだということを十分お示し頂くように希望いたしておきます。
  52. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お話のように各省にそれぞれ関係した問題というのは、とかく遅れがちでありますから、法務省としてはこういう考えとこういう考えというふうに、それは余り遠慮しないで省内のことは進めて行きたい。それだけで各省に連絡しないので、総合的になりませんので、それのたんびに各省と連絡したいという意味でございます。ただ赤松さんのお話になりました意味の売春問題の総合的な委員会というようなことになりますと、例えば法務大臣が会長になるというようなことが適当であるかどうか、これもまあ話合つているわけでございます。そうなるとむしろ厚生省ではないか。併し主体者でない、つまり言い換えれば法務大臣が会長でなくても熱意は少しも変りませんから、その点は御安心願いたいと思います。それからここに国警長官もおられますし、又警視総監とも話して見たいと思いますが、そういう売春というようなものを真向からもつと厳しく取締対象とする場合、恐らくすりをつかまえる序でに売春問題も扱う、そうしたことは不適当なんじやないか、売春問題を扱う人は又それの表裏をよく呑込んだ人がいいのでないかとも思います。これは結論ではありません。そういうことの可否についても警側察とも相談いたして行きたいと思います。
  53. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  54. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記を始めて。
  55. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 刑事訴訟法の一部を改正する法律案が随分長い回数を重ねて審議されております間、今法務大臣にも伺いたいと思つておりましたのでございますが、ずつと審議されておりまして、逐条説明などを聞き、逐条的に審議されております間に私の感じましたことは、どうも少年に対しまする問題が考えられないでこの法案を作成されたのじやないかというような感じなのでございます。実はこの間団藤参考人に私が一、二の点について質問いたしたのでございますが、あの少年法に対しましても、権威者であられるかたでさへも、私の質問に対してその問題をうつかりしておつたが、併しこの問題は重大問題で引続き自分が研究しているけれども、もつと一つ突つ込んで見て欲しいというようなお手紙を頂きまして、しみじみと子供の問題というようなものはすべて第二の、次と申しますか、ときに忘れられているのではないかというような感じをいたしましたが、その点につきましては私は法務大臣法務省としてのお考えを伺いたいと思つておりますが、今日二、三の条文につきまして矯正局長保護局長ちよつとそのお考えを伺いたいと思つております。  この条文の第二百九十一条の二は「被告人が、前条第二項の手続に際し、起訴状に記載された訴因について有罪である旨を陳述したときは、裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、有罪である旨の陳述のあつた訴因に限り、簡易手続によつて審判をする旨の決定をすることができる。但し、死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮にあたる事件については、この限りでない。」という、この条文につきましてこれはこの通りを施行されましたときに一体家庭裁判所から逆送されました犯罪少年に対しまして何も問題はございませんとお考えでいらつしやいましようか。如何でしようか。私はただ検察官及び被告人、それから弁護人の意思を聞いてというだけでは不足じやないかということをこの前から申しておるのでございますが、そこでどうしても少年でございますときには、保護者の同意がある場合に限りとかいうようなことを入れておきませんと、少年が非常に不利ではないかということを心配しておるのでございますが、両局長の御意見を伺いたいと思います。
  56. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 簡易手続がどういうようなことでやられるか、そのやり方によると存じます。全く簡易に殆んど調べるところを調べないということでやられるとすれば、少年の保護」困るようなことがあるかも知れませんが、弁護人が付いて、弁護人から十分主張したいことは主張するしか、或いは簡易とは言いながら、そういう点について裁判所が事実上において適切な配慮を加えると、こういうことにやられるならば支障はないのじやないかと、又そういうふうにやつて頂きたいということを私たちは考えます。
  57. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 矯正局長はどうでしよう。
  58. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) 只今の答弁と同意見でございまして、又、実際の場を見ておりまして、事実上少年が単独でこういう訴訟行為をやつておるというようなことはございませんで、もうそのような場には親権者であるとかいろいろ本人の保護者が大体助言をいたしまして、始終面会に参りまして援助もいたしておりますし、又なお弁護人も付いておることでございまして、実際問題といたしましては私どもの見ましたところでは支障がないように思つております。
  59. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この間政府の御答弁もそれと同じようなことでございまして、一応は私もそれで了承したようでございますが、いろいろな場合を考えてみますというと、刑事訴訟法でこうしておきまして、或いは少年法に手を入れるつもりではなかつたかというようなことを考えましたがために今日お伺いしたわけでございますが、別にそういう御意図はないのでございますね。
  60. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 少年保護上どうしても必要なことは、少年法の刑事訴訟法に関する件りのところに書いてございますが、この点につきましては専ら裁判所がそれについてそつのない考慮を払つて頂くこういうことによろうという考えで、別に少年法においてすぐにこれに伴つて改正しようというようなことはまだきめておりませんです。
  61. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それではこの運営によつてこの点は心配なしというふうに結論を出してもよろしうございますか。
  62. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 実際上の運営について私もそういう点に十分に注意いたしたい。そうして支障のあるようなことが仮にあるとすれば、すぐに措置を講じたいし、又現在では支障がないものと、かように考えております。
  63. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この同じような要点でございますが、第三百五十九条の上訴権の放棄につきましても、やはり同様に被告人が少年でございますときには保護者の同意を得るというようなことを私は必要としませんかと思つておりますが、やはり先ほどの御解釈と同じでございましようか。どうでございましようか。
  64. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) 保護観察に参つております少年、刑事手続から保護観察に廻つて来る少年は、十八才未満で執行猶予になつた少年及び仮出獄の少年でございます。数が、大体仮出獄の少年が昨年の上期が、持つて参りました資料によりますと、三千四百人くらいございます。それから執行猶予の少年が四百人ほどございます。これにつきまして私ここへ参ります際に特に観察課の意見を聞いて参りまして現状において取消について保護者の意見を聞かないでもいいというような措置になつておる。今度の上訴権の放棄について同様の立法が考えられておるということについて、保護観察の途中において不用意に取消したというような事例があるかどうかということを聞いて参りまして、勿論統計等においてはないそうでございまして、観察課長は京都の観察所長を長くいたしておりまして実際の保護観察の経験もございますので、意見を聞きました。実際のそういう不平といいますか、非難といいますかなかつたということでございまして実際上において本人の不用意のうちに取消したようなことはない、実際上の措置において支障なく行われて来たということを聞いて参りましたので、今度も同様にやつて頂きたい、かように存じております。
  65. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) 同様に私どものほうの刑がきまりまして、そうして少年刑務所に入つておりまする者につきまして、その少年刑務所の扱つた関係にあります職員が矯正局にもいますので、いろいろ意見も聞いてみました。事実上少年はさつき申上げましたようにいろいろな人の援助を受けております。十分そういうことにつきましても慎重にやれるようなチヤンスがあるようでございますから、別に今回のことも大丈夫じやないかというふうに考えておる次第であります。
  66. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それから第八十九条の権利保釈の除外される理由につきまして第四号の「被告人が多衆共同して罪を犯したものであるとき。」という規定を少年に適用されておりますということについてのお考えは如何でしようか。それはよろしうございますか。
  67. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) これは実際問題といたしましては、衆議院修正なつたそうでございまして、まあ実益はないかと存じますが、まあやはりこの点につきましても、仮に修正がなかつたといたしましても、これでやはり、さつき申上げましたような理由で差支えはないのじやないかと考えております
  68. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 修正しないでこの条文を生かしておつても、子供に不利はございませんというお考えでございますか。
  69. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) さような考えでございます。
  70. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 まあ子供でございますから……この間私質問のときにはメーデーの例をとりましたのでございますけれども、あんな多勢のものが長い間拘束されておりましたのですが、結局本当に起訴されましたうのは十分の一にも足らないといつたような、千二百人くらくい縛られておりまして、そのうちの十人足らず起訴されたようでございますが、そういう場合にこれがそのまま生きて参りますというと、非常に見せたくない場面を長い間子供に見せおいて、そのために悪くない者が刑務所の中で、或いは警察の中で悪い者に染まつてといいますか、いろいろならつて、結局は縛られたために、結果から申しますというと、非常に悪くなるというような心配をいたすものでございますから、私は若しこの規定をそのまま活かすとしますならば、なんとか手当をしなければならないというように考えております。どうぞお考えを頂きたいと思います。
  71. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) 少年を或る事件で未決拘禁にいたしますにつきましては、これはもう勿論慎重な取扱が必要でございまして、そういう点につきましてはまあ理想を申しますると、成るべく拘禁しないで審理するということが一番望ましいわけでございますが、その少年につきましてこれを勾留するといいます場合には、やはりそういう条件をしも犠牲にしなければならないほど、ほかに重要な事由があつた場合とまあ考えられますので、そういう点につきまして十分検察当局の慎重な態度というものを期待いたすほかないと思うのでありますが、やはり拘禁いたしました場合、できるだけ少年のためには、今おつしやいましたような悪い影響のあるような措置は成るべくとらないようにいたしますが、それにいたしましてもやはり拘禁はしなければならんといつたような事由のあります場合には、止むを得ないのじやないかというふうに考えております。
  72. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちよつとこの際にもう一点両局長に伺いたいのでございますが、最近少年法が改正されまして、十八才以下の少年には死刑の宣告が与えられないことになりましたのでございますが、これをもう少し年令を引上げるというようなお考えはございませんでしようか。
  73. 斎藤三郎

    政府委員斎藤三郎君) これは私の所管事項かどうかわかりませんのでございますが、ただお話がございましたので私の考えを一緒に申上げます。死刑の廃止、又これを限度を区切つて廃止するという点、非常に私も関心を持つて考えております。現在十八才以下ということになつて、少年に限つて特に死刑を言渡すことのないようにしたのは非常に大きな意味があるものと考えております。ただ現実問題におきまして、誠に遺憾な現象が多うございまして、この際にやるかどうかというようなことにつきましては、よほど慎重に考慮する必要があるのではないか。普通のノーマルな時代とちよつと事情も違いまして、犯罪の性格の示すところでも、非常に犯罪の年齢層が下つておる。殊に相当悪質な犯罪が少年にもあるというような現状でございまして、この際に先ず考えるかどうかということについては慎重に研究いたしたいと存じております。恩赦などに当つて書類を見ますと、死刑の問題には非常に考えさせられるものが多くございます。さような点から関係方面の意向も聞きまして、そういう点について十分考えを進めて行きたいとかように存じております。
  74. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) この死刑の問題はこれは大変大きな問題でございまして、只今までのところでは、これにつきましてどういう処置をとつたらいいか、或いはとるべきであるかということにつきましては、実はまだ今のところ考えがまとまつておりませんので、結論を申上げる状態に至つておらないのでございます。
  75. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 今年の五月頃に十八才未満の少年で名前はちよつと忘れましたが、運転手を殺した事件がございましたね。今鑑別所に行つているというようなお話を聞いたのでございますが、あの少年はどうなつておりますか。
  76. 中尾文策

    政府委員(中尾文策君) ちよつと私怠けておりまして、そのことについて今ちよつと知識がございませんが、左んならすぐ調査いたしまして御報告申上げます。
  77. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 是非お願いいたします。
  78. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  79. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記始めて。委員長理事の打合せを開きますために暫時休憩いたします。    午後二時四十二分休憩    —————・—————    午後三時八分開会
  80. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 休憩前に引続き委員会を開きます。  この際御披露申上げておきますが、刑事訴訟法の一部を改正する法律案修正に関する陳情書といたしまして、国家地方警察公安委員連絡会、国家公安委員長青木均一君及び新潟県公安委員長布施兄君からそれぞれ陳情書が出ております。これにつきましては皆様のお手許に同様のものかそれぞれ当事者からお届けしてある模様でございますので、陳情が二件、並びに委員長宛に同種の陳情が多数来ておりまするので、これについては目録のようなものでも皆様にお届けすることにいたします。
  81. 亀田得治

    亀田得治君 人権擁護局長ちよつと質問をかねて要求をしたい問題があります。これは大阪の寝屋川市に大阪香里病院、こういう病院があります。これは一部新聞にも、記事が出ていたんですが、その病院は浮浪者で病気を持つておるものを収容しておるのです。そういう特殊な病院です。ここの看護婦さんなりそういう人たちが、まあ浮浪者のくせに病院に入つたらそれだけでも喜んでおり左さいというふうなことで、平常から随分高圧的な態度があつたようなんです。そういうことが爆発いたしまして、七月の十二日に患者たちが病院の院長に対していろいろなお願いをしたわけです。これが団体交渉のような恰好をとつて要求しているらしい。その内容は詳しくは私は知りませんが、ただ局長にお願いしたいのは、この七月十八日にそういう要求をしておる患者たちに対して、寝屋川市警のようですが、武装警官四十名くらいが出動してそうして患者を、病気の人を四名検挙したのです。警察へ連れて行つた者はその日の晩には帰したようですが、四名を検挙し、更にそのほかに足首なんかに重傷を負うたものが相当数、たくさん出たのです。で、私は国警のかたにちよつとお聞きしたのですが、自治警関係の問題ですから直接には国警としては指示ができないというお話でありますので、これは一つ人権問題という立場から速かな御調査をお願いしたい。  で、調査の要点は、そういう患者たちがどういう要求を経営者にしているのか、そういう内容に立入つたことを私ども申上げておるのじやないので、いやしくもそういう病人に対して検挙して警察に連れて行くとか、病人に更に傷を与えるとか、それは少し行過ぎじやないか、この事情にもよりますがね。従つて調査の結果、恐らく人権侵害の事実があろうかと思いますが、それに対する適切な一つ処置をお願いしたいのです。で御参考までに一つこの書類だけは一つお上げしておきます。  じや大臣がお見えになうましたから……。何かありましたうちよつとお聞きしましよう。局長何か答弁ありますか、今の何かありますか。
  82. 戸田正直

    政府委員(戸田正直君) この事案まだ私只今初めて伺いましたので、早速調査いたしまして善処いたしたいと思います。
  83. 亀田得治

    亀田得治君 ちよつと関連して聞いておきますが、何かそういうことでこれは少しむごい行き方があつたというような場合にはどういうふうな御処置になるのですか。あなたの取扱い方としては……。
  84. 戸田正直

    政府委員(戸田正直君) 抽象的なお答えになりますが、人権侵害事件があつたというような場合は早速調査いたしまして、法務局或いは人権擁護局が協力して調査いたしまして、事案によりましてそれが刑事問題になりますような場合は告発をいたします。それからまだ告発するまでに至りませんでも、公務員としてふさわしくないというような場合には、処分勧告をいたします。処分まで勧告する必要がないというような場合には、将来再びそういうことがないようにという一般勧告、それから事案は或る程度認められますが、あえて責任を追求するまでの必要がないというようなことが諸般の事情から認められます場合は、検察庁で起訴猶予いたしますような場合に該当いたしまする場合に不問処理、なお調査しましてそういう事実がない、又あるが立証ができないというような場合に非該当処分をいたすというような場合があります。
  85. 亀田得治

    亀田得治君 これは私が知つている範囲では何か被害者のほうからすでに告訴もしておるようですね。そうすると恐らく大阪の検察庁が……、警察の問題ですから、恐らく告訴するとすれば、検察庁にしていると思う。でそういう事態になつておれば、これは当然あなたのほうもそうだが、刑事局のほうにも事案をお伝え願つて、やはりいろいろ真相を明らかにしてもらうように要求一ついたしておきます。  大臣にお伺いします。刑訴法の一部改正が非常な修正衆議院で受けました。でこれに対する大臣としての考え方を最初お聞きしたいと思います。
  86. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 御承知のようにこのたび衆議院に提出いたしまして御審議を願いました刑事訴訟法改正案は、長い間法制審議会に諮問いたしまして、その答申を待つてその答申の通り国会に又審議をお願いしたのであります。もともと刑事訴訟法のような刑事手続の基本法の改正に際しては、官庁の都合、或いは言葉を換えますならば、検察庁の都合のいいようにということだけでは又如何かと思われましたので、さればこそ各界の権威を網羅した法制審議会にかけまして、その答申を尊重して原案として御審議を願つたわけでありますが、いろいろ国民の代表としての立場から、改正案の条文を法制審議会が答申した黄味もわかるけれども、併し一般国民の直接代表としての立場から言うと、主として濫用を恐れられる点がある。法務大臣がそう思つても、数ある第一線では又ともすれば行き過ぎがある。国民代表としてはそこまで心して進みたい、こういう意味で数々の御修正があつたわけです。私のほうとしましては、官庁の都合から言えば原案のほうがよいのでありますけれども、それは官庁の立場ばかり申しておるべきではないのでありまして、国の最高機関である国会の御修正に対して、多少事務的に不便な点が仮にありましても、それは忍んで国会の御修正に応ずるということが適宜であろう、こう考えた次第でございます。
  87. 亀田得治

    亀田得治君 法務大臣刑事訴訟法改正を出されるときに、提案理由の中に五つほど項目を分けて簡単におつしやつております。私この修正案を見ますると殆んど各項目とも大修正を受けたような結果になつておるのですね。私こういう状態で、而も今は法務大臣がおつしやつたように、原案のほうがいいとは思つているんだが、国会修正するんだからいたし方がないと、こう言われておりまするけれども、そこに非常に聞賭があろうと思います。一ヵ年の予算案のような問題であれば、次の年度には又直して行くという方法もございますが、こういう何といいますか、国民の基本的な人権に関するような某つ礎的な制度ですね。こういうものに関して果してそのようなことで処理されていいのかどうか、非常に私疑問に思つているのですが、もう少しその間の気持を詳しくお話を願いたいと思います。
  88. 犬養健

    国務大臣犬養健君) その点はこちらからも申上げたいと思つてつたのでありますが、御承知のように法制審議会に諮問いたしますが、諮問の仕方は刑事訴訟法の根本的見直し、言葉を換えれば根本的な改革ということも、これは真剣にやつて行かなければならんと思います。それは急いではならず、又通常な熱意とスピードでやりましても、相当年月のかかることでございます。一方新刑事訴訟法が施行せられて四年有半、何といいますか、突然なる英米法的な考え方の注入によつて、よいおみやげもありましたけれども、どうも我が国の国情及び国民性に咀嚼しきれない部分もありますので、根本的な改正は他日に譲つて、運用の妙を尽してもどうしてもうまく行かない点だけ一つ差当り直す点はどことどこでありましようか、こういう諮問の仕方を法制審議会にしたわけであります。その結果が法制審議会の答申になつた点が今度の改正点の殆んど全部の内容になつているわけであります。従つてもともと根本精神の再反省というような問題は他日に譲りまして、運用の点でさし障る、如何にもさし障る点はどこである、こういう諮問の仕方であり答申の仕方でございますから、主に運用を主としたものでございます。運用を主といたしますならば役所としてはできるだけ便利なほうを望むのであります。併し国会の御修正を拝見しますと、この、より便利なという点だけを取上げれば勿論原案のほうがやりいいのでありますが、官庁だけがやりいいということが政治ではないのでありまして、殊にこと人権にかかわることでございますから、少しくらいの不便とか少しくらいのもの足りなさということは、ここで運用のそれこそ妙味を研究しまして、埋合せて行こう、こういう考えなんでございます。さよう御承知を願いたいと思います。
  89. 亀田得治

    亀田得治君 何かそうしたらいずれ折を見てあなたが今度お出しになつた原案、そこで訂正された部分、そういうところをそのときの情勢を見てぼつぼつ又出して行こう、そういうふうなお考えのようにちよつととれたのですが、さようでしようか。
  90. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 御質問の趣旨がよくわかりませんが、今度直されて少し困つた。併し又もう一つ又再改正でほかに出すときもあるから、それまでの辛抱だと、こういう私たちもの意見かとおつしやるのですか。
  91. 亀田得治

    亀田得治君 まあそうですね。
  92. 犬養健

    国務大臣犬養健君) これはこの二、三日で若しうまく行けば国会もすみますから、五、六日でもいいのでありますが、あとでゆつくり今度直された部分で不便だ不便だと言うが、そんなに致命的に不便でない点と、本当に困つているならば困つている点を、もつと分析したいと思つております。今日でもやつておりますが、なかなか事務が多いのでゆつくりそれだけの閑がございませんが、国会のすまない前でもその研究をしてみたいと思つておりますが、私ども国会が、殊にまあ亀田さんは御不満のようではありますが、与党だけが押切つたとか何とかいうのでなくて、国会の小会派を除いて、とにかく全部のかたが揃つて修正になつたのであります。これは相当ちつとやそつとで無視するのは、私は国会を無視することになると思います。私は只今の気持では根本改正のほうに直ちに熱情を注ぎたいと思つております。そういうように御承知願いたいと思います。
  93. 亀田得治

    亀田得治君 それからこれは予備審査の最初に私この改正案のでき上つた経過を刑事局長にお聞きしましてまあそのときにも今大臣と同じようなお話がありましたが、根本的ないろんな問題、これは今回の改正からは抜けておる。そういうふうに今大臣もおつしやつたようでございますが、私はそうでないように実は感じておるのです。これは各条の問題になりますが、併し方針としては極めて大事な点ですから控訴審の取扱いの問題とか、これなんかは根本的だと私は考えておるのです。それで決してそういう一つ一つの具体的な制度なり、個々の条文を離れて根本的というようなものはあり得ないのですからね、必ずその条文に根本的な精神が出て来るわけなんです。それで又この各法曹関係者も心配しているのだと思うのです。御提案なさるかたは根本的に大改正をやるというようなことを言うたら、あまりみんながびつくりして、何といいますか、眼を廻すものですから、そのいうものには触れないのだ。こういう説明の仕方をする気持はわかりますけれどもね、併し決してそんなものじやないと思う。そうして学者もやはりそういう立場で批判をしております。そうして慎重審議を願いたいという御議論がよく出るのはやはりそういう立場に立つていると思います。一つの何といいますか門を開けばあとはどんどんそれが進行して行くのが順序だと思う。それでそういう意味で現行刑訴で大して不便がないのであれば、そうして国会へ持つて来ても、あれだけ各関係者がすつたもんだやらなきや、決議文一つででももうできない。そんなふうなことだつたら、なぜいろいろな考え方が固まらないままにこれを押し切る必要があるのか、私は本当にそう考えるのですね。で国民に忠実だというのは、私、そういう気持が少しでも審議の過程で起きて来た場合には率直にこれは暫く考うようとか、いや一旦出したんだから、意地ででも何とか恰好を付けなければならんのだとか、そんなことは私なかろうと思う。この問題についてはどうもそう思うのですけれども、私のそういう考え方は法務大臣どうでしようか。間違いだとお考えでしようか。
  94. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 大体肯定をいたします。ただ附帯決議があんなすつたもんだするならば、出さないほうがよかつたというあの点は異論が実はあるのでありまして、私の在任中に大汗をかきましたが、ああいう結論がついた前の白の検察対国警関係、翌る日の検察対国警というような関係というものはとにかくどつちに不満があるにせよ、あの問題が片付いて、これから一つ前のことは忘れて一緒にやろうというような気分になつておる点で、やはり幾ら操めてもやつておいてよかつた。そういう感じを持つておりまして、附帯決議の点は多少亀田さんの御意見と違つておると思いますが、ほかの点はおつしやる点御尤もだと思います。私が修繕だと申しましたのは、根本的な建築のやり直しではなく、修繕だと申しましたのは、刑事訴訟法というものを日本はどういう構造でどういう基礎においてやるかという大問題、これが残つておる、で、それは先にしよう。只今の第一審第二審の点でも、第二審の事実取調べの範囲を拡げまして、事後審を続審的なものに変えな。これも真剣に審級制度の根本問題からいえば、あの程度の壁塗りのようなことでいいか悪いか、大いにこれは法律学者に議論があると思う。そういう根本的な議論は他日にお願いして、ともかくも余りに純粋な事後審的な不便さを除くにはどうしたらいいか、こういう諮問の仕方がもともと限定されておるのであります。ところが亀田さんのおつしやるのはやはり一理あると思いますのは、例えば黙秘権の問題であります。これは司法官試験に及第して司法修習生になるフレツシユマンに、刑事訴訟法を読んで、勉強してみて、どういう点が一番印象が深いかというと、何でもまあしやべらないでいいんだと言つておいて、その舌の根が乾かないうちにものを尋ねる。如何にも矛盾を人間として感じるというような、これはまあすれつからしでない青年の言うことで私も印象に残るのであります。そういう点、つまり自白を強要されないが、何でもかでも言わないほうがいいんだというのはやり過ぎではないか考えましてあれをいじつた。ところがまかり間違えば憲法の根本に触れる問題だ、こういう意味で、修繕事業の手段を間違えれば根本改革にメスをつ入れたのと等しい、こういうお気持はよくわかるのであります。それで亀田さんが今日午前も委員長に対してなかなか自説を固執された意味も私は拝聴していてわかるのであります。併しもともとの入口が、刑事訴訟法改正に一歩前進した入口が根本の建築を作つて下さいと諮問したのか、或いは取りあえず運用の余りやりにいく点を直して下さいと諮問したのかと言えば、後者である、こういう言い方なんであります。従つて運用のことにだけさわつたのであるから、根本問題について関係ありませんなどという白々しい答弁は私はいたさないつもりであります。従つて運用の門かち入つた問題ではあるが、こと間違えば憲法の根本問題にも触れるというところが、衆議院でも一番問題になつたのでありまして、この問題になるという意味は私もよく理解できるのであります。このように私は考えたのであります。
  95. 亀田得治

    亀田得治君 私予備審査の最初に刑事局長にいろいろな面から概略的に質問たしました、そのときも、若し根本問題に触れて行くというような危険性が出て来た場合にはものによつて考えるに吝かではないという意味のお答えがあつたようです。で私まあそれは非常にざつくばらんないい態度だと思つて、そのときも申上げておつたんですが、今度の改正案を見まして改正案以外になお且つこれはもう党派とかそういう感情を抜きにしてみてもそういう疑いのあるものがございます。これは私明日十分私の御意見を申上げて又お考えを頂きたいと思うのですが、そういうことが明らかになれば、あなたのほうでその点を考慮されるお気持はあるのでしようか。
  96. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 私ども衆議院委員会に臨みまして、終始自分たちが御審議を願う原案はこういう試みでやつておるのであつて、違う角度からしてこれは実に困るというお話が真理であると感ずるならば、これを又更に変えて頂くことは異存がないという率直な態度を終始とつて来たわけであります。従つてよく主管大臣としてはもういい加減に審議を打切つてくれ、与党という関係のなにで委員長に頼んだりするような、そういうことは私は一度もそういうことをいたしません。どなたの委員でも少しでも異議が残つておると言えば、まお伺おうじやないか、こういう態度で終始やつて来たのであります。事柄によりけりでございますけれども委員の御論議によつて全くその通りだと……。本案に対しては決して私どもの心の謙虚さと柔軟性を失つていないつもりでございます。
  97. 亀田得治

    亀田得治君 それはまあ審議をいろいろ参議院としてした後に又言うことにいたします。それでこれも法務総裁一つお気持を聞いておきたいのですが、今度の修正案を見ますると、まあ半分以上問題点が改正されたと思うのですね。普通このような大きな改正がありますと、ちよつと待つてくれ、俺のほうもそれだつたら少し考え方を切り替えてみなきやならない、これが今成立しなければ日本がひつくり返るとか、そんな問題じやないのですから、そういうお気持を持つておられるんじやないかと思うのですがそれはどうでしよう。
  98. 犬養健

    国務大臣犬養健君) つまりざつくばらんに言うと、流されれば流してしまえこういうことでございましようか。よくある手ですが。
  99. 亀田得治

    亀田得治君 もう少し考え方を調整するためにどうしても国会へ来てやつておればああだこうだと言つてもう突張り合いだからこの辺にしておこう、これはこうなつておると思うのです。それでは若し悪く行けば被害者はたくさん出て来る。少し冷静に考えて、ちよつと出直そう、国会法からいつたつて提案者はそういうふうに処理はできるんですから、考えようによつては何かそんなようなお考え私あるんじやないかと実は思つてつたんですがね。私どもとしては自分の出したものはこれほど大修正を受ければ、ちぐはぐになつてしまうですからね、考え方が……。それからここに提案されるにしても随分いろいろな法制審議会なり各方面の御迷惑もかけて来ておるのでしようから、その人たちに御挨拶もいるでしようし、そういう態度をとられるのが、私どうしてもいろいろな立場から成立させなければならない問題だということで一番正しいようにも思つているのですがね。
  100. 犬養健

    国務大臣犬養健君) これは本改正案の大部分が法制審議会にかかつておりますときは、私の就任前でございますが、その後法制審議会にもたびたび出席して見ておりますと、法制審議会そのものがいろいろな議論が出まして、結局結論はバランスをとるかたが出て来まして、そのお話で大体をまとめる、こういうことになつているのでありますから国会委員会も御承知のように、そうなるのでありまして、その両方の公約数をここへ出して来て、その差を見て、政府がこんなに直されるものなら、一つ政府としても断固として拒否するやはり政治的措置が起るのじやないかと思つております。只今ども考えております点はこれは多少役所としてはやりにくい点があるのであります。併し何とか努力してこの範囲でやれる、不可能でない、こういうふうに大体おおまかな話でありますが、見まして修正案に応じたわけでございます。
  101. 亀田得治

    亀田得治君 それでは形事局長に少し御質問いたしたいと思います。これは一つ一例を挙げまして……。八十四条第二項ですね、これは結局書面ということがとれて、但し裁判長が相当と認むるときは意見の陳述に代え、意見を記載した書面を差出すべきことを命ずることができる。これは予備審査のときに私があなたにこの点でお尋ねした際、書面で述べるとなつているが、書面に附加えて意見を述べてもいいかと聞いたはずです。あなたそれはいいでしよう。速記録はそうなつているはずですが……。それから質問は別ですよ。裁判長の説明に対して質問はできるかと、それもできるでしよう、こういう話だつたのですつ、両方とも……。この二つに分けて聞いたのです。それでそうなりますと、私は改正法では、前の原案ですね、原案自身に大して意味のないものだと、書面でも言えると、そういう程度にしかならないのだと、こう考えていたのです。それはどうなんです。確かにそう質疑応答はなつているはずです。
  102. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) そのときの御質問はたしか口頭では全然述べられないのかという御質問のようで、それは裁判長がよしとした場合には、口頭でも意見を陳述することができることになるであろうということを申上げたはずでございます。それから質問の点が御質疑ございました。それじや質問はできるのか。それは彼之不明のところは、質疑として、意見に亙らない質疑としては許し得られるであろうと、さようなことでお答えしたつもりでございます。従いまして只今のように全然同じということではないのでございまして、書面によることが原則として、而も書面によつて陳述することが権利として認められ、あとは裁判長の取計らいで口頭でもやり得る、こういうことに原案を解しておつたわけでございます。
  103. 亀田得治

    亀田得治君 まあこれは議事録を見ればわかるのですが、まあ大同小異だと思うのです。そうするとあなたの御説明のようなことだといたしましても、私大して実益のない規定だと考えていたのです。若しそういう解釈ならばですよ。それはなぜかというと、書面でも出せる、そのほかでも言えると、判事の理由開示に対しても質問できる。質問というのは、国会質疑等と同じように、自分の意見を言わなければ質問の要点はわかりませんから同じになる。全然そんなことは従つて必要ないと、そういう意味で私と各条審議に移つたら十分そこの討議つをしたいと思つていたのです。それで今この改正案は別にして、最初の原案はそういうことになりませんか、あなたの言うような解釈では……。
  104. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 只今申上げました通り、請求者側は権利としては書面で述べるだけである。あとは裁判長が取計らつて、或る場合によつては書面でやることが趣旨を尽さないといつたような場合には、特に口頭で述べ得ることの自由を許すというふうに運用上はなつて来る。つまり権利としては裁判長どうしてもこれを聞いて下さいということはできない。裁判長のほうでちよつとその趣旨は聞いてやろうという場合にはこれができるという違いがございますので、これは大分原案ですと現行法と違つて来ると、かように理解しておつたわけであります。
  105. 亀田得治

    亀田得治君 少しそこの解釈の仕方があなた自身は変つて来ていると思うのです。書面だけで意見が述べれると、そういうふうに原案ではなつておらんでしよう。
  106. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) これは私ども当初から同じ考え方でございまして、法律案逐条説明書にもその趣旨が書いてあるわけでございます。
  107. 亀田得治

    亀田得治君 いや、それはつまりあなたがそう解釈しても通らないのだ。法律が成立すると何でしよう。それに対する独自の解釈というものは出て来ます。つまり憲法における基本的な権利から出発して来るわけでしよう。そういう公判で自由に述べる、口頭であろうが、書面であろうが、自由に述べれるということが憲法の大原則なんだ。その原則に出発して原案のような、ああいう書面で述べることができるという場合には、最初あなたがおつしやつたように書面でも述べれるけれども、口頭でも述れる。そういうことになる。書面のみだとは書いていない。それはあなたがどのように、それは書面だけしか駄目なんだというふうに、提案者の意思はこうだと言つたつて何ですよ。質問もできるは、裁判長が許せば口頭でも言えるはというような解釈をとつている以上は、結局は憲法との関連性を考えればそういう解釈が生れて来ることは必至なんだし、それが正しいと思うのです。原案の場合にはどうです、違いますか、私の考え……。
  108. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) それは大いに違います。憲法について、亀田さんのような解釈を実は我々はとつておりませんことは、前回申上げました通りで、憲法の第三十四条に、口頭による意見の陳述を必らず許さなければならんということを前提として評らないという憲法学者の通説をとつて繁るわけでございます。従いましてそれから流れる改正原案というものも、決してそういうふうにはならないというのが、我々の見解でございます。
  109. 亀田得治

    亀田得治君 それは非常に間違つた憲法の解釈ですね。普通の刑法学者はそういう解釈はとつておりませんよ。そんな弁論主義、当事者主義を否定するような考え方は、これはとてもこの憲法制定当時の事情からは生れては私来ないと思う。  まあそれは別にしましよう。でところで原案はまあそういうことでした。解釈の仕方が少し行違いがありますが、今度はその改正案を見ると、裁判長は相当と認めるときは、面書を差出すべきことを命ずることができる。これは原案を被告人に有利にするつもりで書いたのか、不利にするつもりで書いたのか、どつちなんです。
  110. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 恐らく衆議院においては有利にしたいという考え方じやないかと想像いたします。
  111. 亀田得治

    亀田得治君 そいつは何かちよつと御説明がなかつたのですか、提案者のほうで……。
  112. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 今の点で有利にというのは、政府原案よりは有利にという意味でございます。
  113. 亀田得治

    亀田得治君 それは提案者から十分そういう御説明がありましたか。有利にする立場の提案であるという……。
  114. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) それらしき御説明がございました。非常に簡単でございましたが、要するに現行法と、それから今度の改正案の中間を行くといつたよう考え方のようでございますから、恐らくそういうことだろうと思います。
  115. 亀田得治

    亀田得治君 これは十分注意しませんと、提案者の意思が逆になつて来ます。これはざつくばらんに言うと、読んでみて有利にするつもりの規定が、この但書によりますと、書面に限定できる命令を裁判長が出すと……。こうなつて来ておる、裁判長の考え方で……。私これは原案よりも極めて被告人に不利だと思うのであります。原案のほうが遥かに有利な条文だと考えておりますよ。それは発案者のかたが、有利にするつもりで書いたんだ、書いたんだといつても、ざつくばらんに読んでみて、そうならなきや駄目でしよう。これは極めて限定しておる。これは原案のほうは裁判長が法廷の必要に応じまして、附加的に或いは説明させたり、或いは質疑応答をさせても、法規には違反しない。そういうふうに解釈できます。で私これも何か裁判所側からもつと被告人の立場を拘束するようにしてくれというので、出て来たのかと思つていたのですが……。
  116. 犬養健

    国務大臣犬養健君) そうじやない。
  117. 亀田得治

    亀田得治君 そうじやないでしよう。ところが結果はそういうふうになる虞れがあります。
  118. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) これは現行法とも睨みあわせて頂きますと、この点御疑問が氷解するのじやないかと思いますが、現行法の第八十四条におきましては、第二項ですか、「被告人及び弁護人並びにこれらの者以外の請求者は、意見を述べることができる。」これは従つて口頭で意見を述べることができるという趣旨でございます。検察官も同様でございます。この口頭で意見を述べるということが原則の建前を、そのまま崩さずに、それに但書がつくわけでございます。「但し、裁判長は、相当と認めるときは、意見の陳述に代え意見を記載した書面を差出すべきことを命ずることができる。」つまり口頭の意見陳述に代えて、書面で出してくれということを言うことができる。つまり書面でやるのが例外となりますか、そういうふうなことを命ずることができるというのが修正案の趣旨でございます。政府原案は御承知通り書面でやることを原則とするということになつておりますので、あとはルールかなにかで、或いはそうでなくとも、裁判所の自由の裁量で口頭でやらせることができるということに扱いがなるわけでございますからして、この修正案のほうが本人たちに有利である、かようなことになるわけであります。
  119. 亀田得治

    亀田得治君 それはそういうふうに説明しておつても、そういう解釈が出て来ないのですよ。政府原案のほうが、これは被告人に有利なんだ。意見を述べれるというのは、何も刑事訴訟法に書いてなくても、述べれるのですよ。これは憲法の条項から来ておる。当事者主義は当り前のことです。だから書面で述べれるということは口頭で述べることの下手な人は書面で述べてもいいし、当り前のことですが、どつちみちとにかくそういう解釈が脚り立つんです。必ず憲法を重んずる学者は、原案が成立をすれば、そういう解釈を出して来ますよ。それはあなたも一部認めておりますが、書面以外でも全然言えんことはないだろうということを僕が申上げたときに、それは全然言えないことはないという意味を、さつきの問題は行つておるのですからね。だからそうすればそのほうが遙かに実情に適しておる。ところがこれになつて来ますと、裁判長が、お前は書面でやれ、こういうふうにやつてしまつたら、これはもう動きがとれないようになつてしまう。だから被告人にとつちや私は遥かにこれは制限して来る逆の結果になると思う。で私がつまり改正案自身を、参議院として一つ冷静にざつくばらんに見てみようじや左いかというのは、例えばこれが一番初めに書いてあるから、私はこれを例に取つたわけですが……
  120. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 繰返すようでございますが、憲法三十四条の解釈につきましては、団藤教授が疑問を提出しておることは私ども承知しております。併しいわゆる憲法学者、並びに刑事訴訟法の学者でも、ほかの学者ではその説に同調しておるのは江家さんだけでございます。我々は通説の憲法の三十四条の後段が意見の陳述を権利として認める趣旨ではないということ、その立場に立つて立案もし、修正案も読んでおるわけでございます。従つて八十四条につきましても、現行法の八十四条の第二項のこの原則に但書がつくだけである。原則が口頭でやる、但書で、併し書面を書いて出させることができるというふうに、すなおに読むべきものである。政府原案はこれを丁度逆にいたしまして、書面であることが原則である、而もそれは権利である。そしてそれ以上のことは裁判長の取計らいであるというような、丁度建前が逆になつておる。かように理解しておりますので、意見を書面でやるか、口頭でやるかということは、書面でやるよりも口頭でやるほうが、これはし得る場合が多いと思うので、このほうが本人に有利であろうという意味において、先ほどこちらのほうの修正案のほうが、政府原案よりも有利である、原則と例外が丁度取違つた程度において有利であろう、かように申上げているのであります。
  121. 亀田得治

    亀田得治君 それじやそれは又もう一ぺん別にお聞きしますが、この改正案の但書以下をずつと読んで見ますと、「差出すべきことを命ずることができる。」これは命令が出て来る、それでそういう命令が撤回されなくとも、政府原案で、あなたが認められた程度の口頭による発言というものは、これはお認めになるわけでしよう。
  122. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 政府原案としては、権利としてではないけれども、裁判長の取扱いとしてそれが許される、かような程度において認め得るわけであります。
  123. 亀田得治

    亀田得治君 裁判長が自分の命令を撤回すれば自然に被告人の発言が認められるから別に取計らいというほどのものじやないですよ。被告人の立場からいえば、附加的にはどうしても書面以外で述べれるという解釈でなければ原案よりも悪くなつて来る、そうなりますよ。
  124. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 最初の出だしの憲法論が違つておりますので、御意見がだんだん食い違つて行くわけでございますが、これはどうしても憲法論としては先ほどのように理解しておりますので、これは結果として止むを得ないことじやないかと思います。
  125. 亀田得治

    亀田得治君 憲法論が違つておるとおつしやいますが、あなたはどういう憲法論ですか。三十四条の問題、憲法三十四条。当然にその被告人は法廷で何といいますか、喋べる権利がないと、こういうことですか。
  126. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 憲法三十四条におきまして、「要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。」示さなければならないというのは裁判長のほうでその理由を示す、理由を開示する、説明するとまあ比喩に申しますか、それだけでよろしいというのが憲法三十四条の要請でございまして、こういうふうに理解しておるのでございまして、私どもとしては憲法学者の殆んど全部それから刑事訴訟法の学者のうもでも一、二を除いた人たちが同調しているこの考え方の下に立案いたしたわけでございまして、従いましてさような見解から申上げますと、この意見の陳述というのは言面でやつても口頭でやつてもいいのみならず、全然意見の陳述をさせないでもよろしいというふうに一般の人が言つておる。その見解から言いましてもこれは問題がないと、かように考えておるのでございます。ただ全然意見の陳述をさせる機会を書面でも口頭でも全部省くということはこれは現行法と比べまして著しい飛躍をなすわけでございます。さようなことの飛躍はこの際如何であろうかというのが我々書面でということを考えた理由でございます。
  127. 亀田得治

    亀田得治君 成るほどね、そういう解釈ですか。それからそれじや次に例えば百九十九条の第二項、今度改正されたやつですね。本文の終りのほうに「明らかに逮捕の必要がないと認めるときはこの限りでない。」、こう書いてあるのですね。明らかにというのはこれはどういうことで必要なんです。逮捕の必要がないときにということでは足らないのですか。
  128. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 百九十九条につきまして裁判所でどの程度まで逮捕状の発付について妥当性、必要性の認定ができるかという問題につきましては、御承知通り相当学説上も又実務家の取扱の上でも分れているところでございます。その分れるゆえんのものは、要するに裁判所逮捕状を発する場合に、どの程度までその内容に立入つて判断ができるか、又すべきであるかという理論的な問題と実際上の問題とがかなりむずかしくなつておるからであろうと思います。或る人は逮捕状を発するについては、裁判所がただその適切なりや否や、それが法律に合一致しておるかどうかだけを判断すればよろしい、それ以上の判断はすべきでないというふうな議論を立てております。そのまあ法文上のこれは文理上の根拠で少し細かい点になるのでございますが、百九十九条におきましては現行法は「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるとき」というふうなことにいたしておるのでございまして、それ以上のつまり勾留状の場合の六十条の規定のように証拠隠滅の虞れがある、或いは逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるというふうなことの要件は全然かぶつていないわけでございます。従つてそういうふうな要件がないのでございますから、一応犯罪事実が疑ぐるに足りるような事実があるということ自体で逮捕状を発するのだ。又それでいいのだというふうな議論が一方においてはあるわけでございます。それから他方においてはそれでは裁判官といういわゆる司法官憲に令状の発付を任した今までの趣旨からいつて、それはおかしいじやないか、逮捕の必要性まで一応判断して官憲が責任を持つてそれを判断すべきじやないか。又そうするのが当然だというふうな議論が相対立してこれは殆んど両々相譲らん程度にあるわけでございます。ただ実際の実務上の扱いといたしましてはむしろそのあとの説、つまりあとと言いますか、その必要性の判断をしないというほうの説、そちらのほうの説がむしろ多いのでございます。というのはその逮捕状が出る項の実際の状況を申上げますと、かなり事件の嫌疑ははつきりしておるけれども、それから先の捜査状況の見通しとか何とかいう点についてははつきりしない段階において一応司法官憲が令状を求められるわけでございます。従つてその段階においてこれを判断しなければならないということになりますと、そういうことを裁判所に僅かの資料で判断をせいと言つても、なかなかこれが実際上できないのじやないかというふうな問題がありますために、それでは学者のほうでその点についてどういうふうにそれを調和させるかと言いますと、例えば先ほど申しました妥当性について判断すべきじやないというふうなことを言いましても、これは権利の濫用に亙る程度のものについてはこれは権利の濫用の法理によつてこれをはねるべきであるというふうなことも申しております。又必要性の判断をする、又すべきだというふうな議論を立てるかたも又その必要性があるかないかというようなことは、司法官憲よりも捜査当局のほうが最初は一番よく知つておるので、恐らく請求するからにはその必要ありとして来るのだろうから、一応その要求は尊重すべきだといつたよう考え方が先に立ちまして、結局理論的には甲乙非常に立場が違つておりますけれども、実際上にはあまり違わんといつたようなことになつておるわけでございます。そこで今回この百九十九条の改正考えましたときには在野の法曹のほうから逮捕状の濫発の防止について検察庁を経由したほうがいいという線で参つたのでございます。たださようなことになりますと検察庁が意見をつけて、さようなものは駄目だということでやれるわけでございますが、今度衆議院のほうで考えましたのは、これを裁判所のほうでチエツクする。裁判所のほうの妥当性の判断にこれを任せるということになつたわけでございます。考え方としては、そういう考え方も成り立つわけでございまして、つまり裁判官が責任を持つてそれらの点について判断をする、さようなことになりますと裁判官としては平素逮捕状の発付等について或いは捜査段階等についていちいち一から十まで見ておるわけではございません。僅かの資料でそれを判断しなければならんということになるわけでございます。従つてその際にこれを僅かの資料でとにかく一応結論を出すということになりますると、それは裁判官としては明らかに逮捕の必要がないというふうな段階において初めてこれを発しないことにするということにいたしませんと、裁判官は重大な責任を負つてこれは現行法の建前ではどうしてもやつて行けないということになるわけでございます。これが「明らかに」というふうに四字を入れた趣旨と私は考えております。
  129. 亀田得治

    亀田得治君 捜査の際におけるこの逮捕という問題は、これはもう刑事局長はどういうふうにお考えなんです。例外的な措置なんですか。原則なんですか。
  130. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 捜査と申しますのは、およそ刑事訴訟法の全体を通じて言えるのでありますが、身柄拘束、それから押収捜索等の強制措置はしないというのが原則でございます。で身柄を入れ、或いは押収捜索をするというふうなのは例外措置と私は了承いたしております。
  131. 亀田得治

    亀田得治君 そうしたら裁判長が逮捕の必要がないと、こう考えたら逮捕しなければ私済むと思うのですが、こんな明らか、必要があるかないかは明らかも不明瞭もないと思います。不明瞭ならばそれは必要があるということなんだし……。
  132. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) これは例えば現行法の六十条或いは八十九条等に「相当な理由」というふうなことを使つておりますが、或いは今回のお願いしました八十九条の新らしい五号のお礼まわり等については「十分な理由」というふうなことを書いてございまするが、要するにさようないわゆる心証を作るについての限度の問題がそれぞれございます。それの十分な資料があるかないか、或いは相当な程度でいいのかというふうなこといろいろ問題になると同様に、その場合においても逮捕の必要性の有無について裁判長が明らかにという程度に必要がないとの心証を得た場合に、初めてこれを真向から反対し得る、かように理解するわけでございます。
  133. 亀田得治

    亀田得治君 これは被告人を保護するために出したのでしよう。今度は政府以外のほうから意見が出たのでしよう。ところが裁判長も逮捕の必要がないと考えた場合に、逮捕状を出さない人はたくさんあるでしよう。こんなことを書いて来れば実際の運用は、逮捕状を請求するほうが明らかにとなつているんじやないかということが理由になつて却つて限定されて来ますよ。だからこれなんかでも実際の捜査段階というものを、これは一松先生なんかよく我々よりもいろいろ御存じなんでありますが、我々の乏しい経験から見ても、何にも保護にならないですよ。こんなもの入れたら、必要がないと思つておるものに、何も必要がなければ駄目だ、こう言つたらいいでしよう、簡単に……。而も捜査の原則が、あなたのおつしやつたよう逮捕しないで調べるのが原則なんだと言つておるのであれば、明らかにこれは提案者自身の気持が十分生きない結果になると思うのですよ。どういうふうにお考えになるのですか。
  134. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 先ほども申しました通り逮捕の必要があるかないかという判断について、裁判所が何といいますか心証を作るときに、これはどうもいかんというふうな場合と、さあどつちかなあというふうな場合とあろうかと思います。そこでさあどつちかなという場合にどうするかという問題でございますが、恐らくさような場合には、これは裁判所のルールで別に検事の意見を聞くという規定を置くことになつております。検事の意見を聞くことになろうと思います。検事の意見を聞きますと、検事がその書類を全部見まして、わからんところは警察に確かめてそうして意見を付けることになろうと思います。そうしますると裁判所がそれを見まして、ああこれなら必要なんだ、或いはこれはもう問題にならん、逮捕の必要がないというふうな意見が出て参つて、初めてこれで明らかにどつちかの判断がつくことに実際上はなろうかと思いますが、ただ理論的には先に申上げた通り、いわゆる心証を作る段階として明らかに必要がないというふうな認定の場合と、それからたださあどうかな、必要がないように思うがなというふうな場合と、これは理論上御指摘の場合があるわけでございます。さようなどつちかといつたような場合には、一応裁判所としては罪を犯したと認めるに足る相当な理由、これは勿論どつちにせよ必要であります。それ以外の点について、そういうふうな点が問題になつたような場合には、一応発する、警察官のほうでこれは是非必要だといつて来たものから一応発するというふうな考え方だろうと思います。
  135. 亀田得治

    亀田得治君 それは検察官の何か御意見を聞く、少し不明瞭な場合にそれはどういう形でそういう規定を設けるのですか。
  136. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) これは裁判所のいわゆる裁判所規則、刑事訴訟規則でございますが、あの中に入れることが大体打合せが裁判所との間にできております。
  137. 亀田得治

    亀田得治君 それは案文はできているのですか。
  138. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 大体の線は、司法警察職員から逮捕状の請求があつた場合において、裁判官は検事の意見を聞くことができるというようなことで、ただその場合につきましてその必要性の点についてとり入れるかとり入れないかという問題がございますけれども、大体案文はさような趣旨でございます。
  139. 亀田得治

    亀田得治君 それはもうこの修正案ができるときに、そういう案文が作られたわけですか、修正発案者によつて……。
  140. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) こういうこの百九十九条第二項がそういうふうに動くという話が出ましたので、そういうことになれば裁判所との関係を何とかしなければいかん。で、百九十九条の第二項の改正については、最初こういう案が考えられておつたのでございます。この第二項はこのままにいたしまして、第三項は司法警察職員から検事に通知する。その次に裁判所は意見を聞くというこのあとへ二項目あつたわけでございまして、ただそういうふうな考え方になりますと、検事はただ警察から一本の手紙をもらつただけではこれは何のチエツクのしようがございませんので、これはそれで削る。その次の項目といたしまして裁判所がさような判断を委ねられるということになつた以上は、その判断を検察庁でバツクアツプしてやらなければならん場合が多かろう。そこでさような場合にどうするか、それは裁判所検察庁の内部の関係でございますからして、これは裁判所の規則でこの規定をする、そういうような意味であつたわけでございます。
  141. 亀田得治

    亀田得治君 その裁判所規則はこれは勿論最高裁できめることになるんでしようが、案文は明日でもお示し願えませんか。
  142. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 大体の考え方は今申しました通りで、又御存じの通り最高裁判所規則制定諮問委員会というむずかしい会がございまして、そこでまあ決定することになつておりますので、今最終案は確定案というものはお見せするわけには行きませんのですが、趣旨は今申した通りで、別にむずかしいことではないのでございます。
  143. 亀田得治

    亀田得治君 いや、むずかしいものではないというのですが、この法律の上で規定することが非常に政治的に問題だから、実際法律で規定すべきことを、ほかの規則できめてしまうということになると思う。そうしてそのきまつた規則の内容如何によつて、これが実質的には変つたことになる場合が予想されるのです。それで若しそのようなことをお考えになつておるのであれば、これはやはり正式にこういう規則を別個に作るのだというものを出してもらいませんと、そうしませんと必ず悶着が起つて来る、警察検察庁裁判所の間で……。そうして法律を楯にとつたほうが都合のいい側は法律を楯にとるでしようし、規則を楯にとつたほうがいい場合はそれをやりますよ。そうすると規則で少々いいことを書いてあつても、やはりそれは規則だから駄目だ、そういう議論も出て来るでしよう。非常に不明朗になるのですね。解決付かないことになるのです。だからそういうことにも「明らかに」というようなどうにでもとれるような言葉というものが関連して来るのですね。自分勝手に解釈しますよ、こういう言葉は……。常識的に考えて、逮捕ということが例外であれば、判事が逮捕の必要なしと考えた場合にはこの限りでない。こう書いておけばいいのでね。そういう意味で何か新聞にも別個にいろいろな指示があるようなことがちよつと書いてありましたがね。あなたのほうでそういう規則が作られるということが大体内定されておるのであれば、これは裁判所側が作ることだから、早急にどうこうできないかも知れませんが、併し法務大臣のほうから裁判所のほうに交渉をされておるのと違いますか、そういうことであれば……。
  144. 犬養健

    国務大臣犬養健君) まだその交渉はしておりません。
  145. 亀田得治

    亀田得治君 裁判所がいやそんなもの駄目だ、こう言つた場合どうしますか。
  146. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 正式の交渉というのは、法文ができましてから裁判官の規則制定委員会という正式の委員会が始まりまして、その席上で学者とか、弁護士とか、それから今の判検事とか全部集まりまして案文を協議するわけでございます。ただ下相談といたしましては、先ほど申した通り我々の事務屋同士では話がついているというふうなことであります。
  147. 亀田得治

    亀田得治君 極めて頼りないことになりますね。裁判所が、そんなこと必要ない、改正案がこうきまつたのだからこれで運用して行ける、こう言えば、それきりになりますよ。幾ら事務当局でやつてつてもどうなりますか、そうなつた場合……。
  148. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) その点につきましては、裁判所といたしましてもさような判断ではなかなか困難なものである。であるからして検察庁の十分な応援を頂きたいということを申しておりますので、そういう線に定まることは万間違いないと確信いたしております。
  149. 亀田得治

    亀田得治君 それは確信しておると言いましても、ものはいろいろ見方があるのですから、簡単に行かんですよ。併しまあこれは幾ら同じことを議論していてもしようがないから、今度事務当局で大体お考えになつておるこの部分に関連する取扱い方ですね、これを一応成文化してもらえませんか……。今晩でよろしいから、先ほど御説明は聞きましたが、こういうふうな取扱にしたいということを……。
  150. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  151. 郡祐一

    委員長郡祐一君) じや速記付けて……。
  152. 亀田得治

    亀田得治君 そうしたら結局まあ百九十九条第二項の但書に関連して逮捕の必要性を裁判官が判断する参考にするために、別に刑事訴訟規則の中に裁判官の判断によつて検察官の意見を求めることができる旨の規定を置く予定だと、こういうわけですね。
  153. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) その通りでございます。で大体事務当局の間で考えられておる案は、裁判官は逮捕状を発するについて必要があると認めるときは、検察官の意見を聞くことができる、かような案文を用意されております。尤もこれは正式な委員会等を通つた後でなければ確定はいたしませんけれども、大体こんなものでございます。
  154. 亀田得治

    亀田得治君 それでお聞きしますが、そういうものを裁判官が検察官のほうに持つてつた場合に、意見を求める要求を……、これは検察官として簡単に出せますか。
  155. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 恐らく検察官としては裁判所から寄こされた資料を基にして判断のつかない場合も出て来ようと思います。さような場合には又警察に電話でもかけて、こういう事件について逮捕状要求があつたそうだがどうなんだと、今捕えなくてもいいのじやないかというような気もするけれども、実際にはどうかと、こういうふうなことを言いまして、それで打合せを遂げてどうしてもできないということであれば、逮捕の必要ありという意見も付けましようし、それからどうも腑に落ちんと、もう少しこれを固めてから逮捕状要求をしたほうがいいじやないかというような意見の場合には、その旨裁判所に回答する、かようなことになろうかと思います。
  156. 亀田得治

    亀田得治君 それは裁判官が自分で直接書類を持つて来た警察官に確めて……、私そういうことが実は今まで欠け過ぎるのじやないか、直接判を押す人がそのことをおやりになつたほうがよほど責任関係がはつきりするように思うのです。検察官にしたつて警察へ聞かなければ結局わからないのです。そうすれば結局検察官の意見を聞いたということで判事が責任逃がれになるということを私ども恐れているのです。そう思いませんか。判事が直接警察官に聞いたらいいじやないですか。手つ取り早いですよ。はんこも少いし……。
  157. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) それは現在でも一応刑事訴訟規則の百四十三条で、逮捕状の請求の際に必要な書類を、資料を提供することになつておりますので、その資料が不足だということで、まあ幾らでも、何といいますか追加を命ずるとかいうような場合もこれはあり得るわけでございます。ただ一つ検察官の意見を聞くというのは、裁判官はいわば裁判の専門家であつて捜査段階においての逮捕状の必要ということについてなかなか判断がつかない場合もあり得るのではないか。現在の捜査状況で、これは必要があるかどうかというのは、捜査の専門家である検事の意見を聞くことができるというふうにしておいたほうがいいのじやないかという考え方であります。
  158. 亀田得治

    亀田得治君 そこにやはり思想上の混乱があると思うのです。私この問題に関して但書をここへ持つて来られた。これは随分いい考え方だと思います。私も検察官警察官の問題がいろいろ問題になつたときに、それば大体現状でいいのじやないかと思う、それよりも我々の従来の経験から言うと、判事がもう少し責任を持つという態度が欲しいと言つていたのですね。そういう考えのこれは現われだと私は思います。それは極めて適切なんであつて、ところがそれを今度は又そういう規則みたいなものをお作りになつてしまうと駄目になつてしまう、折角のこれが……。判事さんがいろいろな書類を受取るのですからね。この百四十三条に書いてあるような書類を警察官から……。目の前でやつたらいいわけです。判事さんは書類を見ることに馴れていますよ。殊に人の書類を客観的な立場で批判するのはよほど馴れております。わからんことがあつたらそこでぼんぼんやつたらいい、即戦即決で……。なぜそういう……。やはり原案にまだ何か執着されて、折角こういういい案が、改正案の発案者から出ておるのに、それを又あなたたちのほうはこれを崩そうとしておる。そういうふうな感じがしますがね。
  159. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 局長検事だから、私から言うのが一番いいと思います。そういう意味ではないのでありましていろいろな角度からちよつと打割つて申上げてみましよう。この百九十九条は、大体警察の人が満足するような修正になりましたから、修正以前よりは私は警察の人にも気がねしないで言えるわけです。修正以前に警察の批評しますと、大臣それじや最後の肚は警察に不利なことをしておるのじやないかと思われるのも不本意なので、非常にそれは私成る点では十分御説明してなかつたわけであります。今日では言いいい立場でありますから……。一つは今日になれば、ここに刑事局長もおられるのて多少言いにくい点もあるが、警察の希望の通つた修正でありますから、申しますと、従来特に民事事件なんかの場合で逮捕状の請求の濫発というようなことが言われて、亀田委員なんかも属しておられる弁護士会のほうから大変やかましく私のほうに申して来ておるのであります。そういう関係でこの逮捕状の請求を受ける裁判官の立場、心持というものを個人的にも聞き、それから衆議院法務委員会に連日来てもらつたわけであります。そうすると裁判官の立場からも捜査を一緒にやつておるわけでなしに、まあできるだけ、責任は重くなつて来たのだが、将来は日本の警察官もずつと水準が高くなると思うけれども、今までだけのことに限つて言えば、検察官の発する逮捕状の形式のほうがずつと法律的形式を備えておるというような話で、これを要約しますと、違う角度から即ち検察官立場からの意見も参考に聞いたほうが非常に仕事がやりいいようなお話であつたのであります。委員会も、やはり同意を求めるとか、承認を求めるとかいうような検察官が明らかに警察官の立場をチエツクするような形式は不賛成である。裁判官と検察官の間にその個々の意見の範囲が張り合うということは頗る妥当であろうと言い、警察側も承認とか同意とかいう言葉に反対しておる際にも、裁判官が検察官に意見を聞くというようなことは自分のほうでは少しも異存がない、こういうふうな大体衆議院委員会の空気というものは裁判官が検察官に意見をするということはこれは必要でもあり、そういうことなら警察官のプライドを汚さんでもいいことであろう、こういうような空気がずつと最後まであつたのであります。それを本文に書くか、裁判所のルールに書くかという最後の段階に来まして、かようなそのルールのほうがすつきりしていいのではないかということに落もついたわけであります。別に検察側がもつとでも失地回復をしておこうという意味ではなかつたのであります。ほんの御参考までに申上げておきます。
  160. 亀田得治

    亀田得治君 改正案自身問題があると思うのは、例えばこういう点なんです。原案で行けば検察官が決定権といいますか、同意権ですか決定すると思う。それじや実際問題としていけないということで戻つて来たわけです。そうしたら戻つた制度をやはり活かすように関係者考えて行かなければいかんと思いますね。実際問題として判事がいろいろな書類をもらつて検察官よりも詳しいんですもの……。もらつた瞬間に詳しい者が検察官に意見を聞くというのは私おかしいと思いますね。それは例外の場合もあるでしようけどね。それから例外的にそれは検察官が詳しい事件もあるでしよう。併しそういうことについて裁判官が意見を聞いたつて別に少しも差支えないと思うのでね。書いてあろうがなかろうが、自分の職責を全うするためにはそんな例外のことを法律に書くのはどうも工合悪いから規則に書いておくということになりますれば、やはり裁判官の従来の態度も変らなければいかん。同じようなことになつて来ると私思うのですがね、刑事局長、絶対にそういうことにならんのですか、確信しますか。
  161. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) これはちよつとやつて見なければわかりませんが、恐らく現在より妥当性の判断についてこの根拠法規ができたという点だけは、よくなるのではないかと思つております。
  162. 亀田得治

    亀田得治君 それから法務大臣ちよつとお聞きしますがね、この「明らかに」というのはあなた必要だと思いますか。これはむしろ専門家でない人がさつとお読み頂けばいいんですよ。
  163. 犬養健

    国務大臣犬養健君) これは「明らかに」ということの当不当は刑事局長の言われたようなことでありますが、私ずつとこれにかかりあつていたものとして解釈する場合、明らかならば検事に聞く必要もない。ただどうかな、違法性ではあるが今つかまえていいかな、違法なんだが、このくらいは見逃して逮捕しないでいいのではないか。例えば選挙違反でこの間も一松先生からお尋ねを受けたのですが、戸別訪問、二軒でも戸別訪問です。ところが私のほうでは戸別訪問で表沙汰にするのは或る水準を作つております。三軒、四軒、この違法は、はつきりしておるけれどもどうなんだろう、そういうことは検察官に聞いて悪いことがないのみならず、聞いたほうがなお判事としては判断の資料になる。併し何から何まで聞かなければならんということになりますれば、亀田さんの一番御心配になる裁判官の判断は検事がいいと言つたからということになると、元の木阿彌になる虞れがありますから、聞くことができる。はてな、このケースは聞いて見ようというだけの裁量、取捨判断を裁判官に委してあるから、これはあまり御心配のようなことはないと思います。折角裁判官が今までよりも自主的な判断を与えられた立場において、元の木阿彌になるという虞はないじやないか、こういうふうに見ておるのであります。これが私の立場からの見解であります。
  164. 亀田得治

    亀田得治君 私お尋ねした要点は、その検事の意見を聞く問題じやないのです。つまり逮捕の必要なしと裁判官が考えれば、蹴つたらいい、そう書いておけばいいのですね。なぜ「明らかに」ということを書くかというのです。必要ないものに明らかも不明かもないでしよう。必要がない、その上にもう一つ限定されたもつと強い必要がないというのがあるのか、こういう考え方ですよ。必ず運用して裁判官に圧力をかけて、できるだけ逮捕しようというような方面は、そういう考え方で判事に当つて来ます。判事は必要ないというけれども「明らかに」と書いてあるじやないですか。そんな程度では駄目ですと必ず来ますよ。判事だつてこれはこんなことを特に書いてあれば、やはり裁判官は非常に条文に忠実ですから、すぐそこは考えます。それでは現行法の下においても逮捕状必要なしと考える場合、決定の判事に対しては却つて窮窟になるのじやないか。「明らかに」なんて私は要らんと思いますがね。逮捕ということが犯罪捜査の原則ならそれは別ですけれどもも、逮捕ということが例外だとそうおつしやる。そんなものになぜ「明らか」なんという字を入れるのですか。要らつんのですよ。これは修正案を提出された人たちの気持に立つてこれを考えるとそう言わざるを、得ない。その点は法務大臣どうお考えでしようか。
  165. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答え申上げます。修正案をいじつたかたの気持になつて見ると、「明らかに」という字を入れる気持になつていると思うのです。それは二つあると思うのです。捜査を一緒にやつたのでない、裁判官に全部の責任を委ねるのは、裁判所から来た岸説明員のたびたびの御説明のニユーアンスから見ても、少し重荷だ修正をなすつた全部の委員がお感じになつているようであります。従つてそういう場合に初めから委員全部気持に流れていた、裁判官なり検察官のそういう場合の気持には極めて適したことだ。こういう気持がありましたので、もう何も問題のないことははねのけなさい、疑義のあることは一応検察官に聞く、そのほうがいもどきに重みを受ける裁判官も、観念論的に言えば亀田さんの言う通りです。いもどきにそういう重みは、裁判所としても少し困難である。この場合どつちかなあと思う場合は、違法性ははつきりしても、妥当性のことについては検事に聞く。それも警官が検事にどう思うということは少し強過ぎるけれども、裁判官が検察官に、君これどう思うということを聞くことは差支えないのではないか。時宜に適しているし、一方この条項について大問題であつた警察官のプライドも傷つけることはない。こういうのが修正をやつて頂いた委員の、その場の現実の空気であると、こう思うのでありまして、その空気を知つていると、成るほど「明らかに」とお入れになるのは、そういう意味だなと、こういうふうに極くすなおに感じて、ここに上つたわけであります。
  166. 亀田得治

    亀田得治君 そこなんです。私最初申上げましたように提案者というものと、それができ上つたものを、第三者がとらわれない気持で見て行くということが必要なのであります。衆議院で成るほどそういうものをお作りになるときは、今大臣がおつしやつたようなことが問題になつていたので、あれやこれやを考えてこれが入つて来た、こういうそのいきさつ、お気持はよくわかります。併しこれだけを平たくこう見た場合に、これは判事の権限が随分拘束される、こういうふうに……。従つて又被告人の立場がこれは悪くなるというふうに感ずるのもこれは大事なことなんですよ。それからこの点に対する法律解釈は、何と言つても、そん左衆議院でそういう改正案ができるときの事情を知つているのは、これは少数なんですから、一般の判事さんなり警察官、弁護士さん、みん左やはりこのでき上つたものだけで平たく解釈しておるのでありますから、それで一つこれはやつぱり十分考えて欲しいと思うのです。考えるといつても、では具体的にどうするかということになるのですが、まあこれはそういう点を指摘しただけです、改正案に対する考慮を願いたいような例示を、もう少しね。
  167. 犬養健

    国務大臣犬養健君) これは亀田さんのお気持、おつしやつている意味はよくわかるのですが、衆議院を随分長くかかりましたけれども逮捕状の請求に当つて検察官と裁判官だけで全部済ましちやう、そのほうが一番いいじやないか、こういう意見は殆んどなかつたのです。恐らくあなたの御叱正が初めてのような感じを私は受けております。
  168. 亀田得治

    亀田得治君 はあ、そうですが。
  169. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 濫発はある、言いにくいが、警察官の濫発はあるが、それを検察官がチエツクする、抑えるというのでは又検察官の弊害が起る。裁判官がはてなと思つつたときには、次の段階の責任者である公訴官として、やはり捜査の問題も逮捕権のある検察官に裁判官が聞く、これは丁度万事収まつていいじやないか、且つ必要じやないか。こういう空気が圧倒的だつたように私は思います。
  170. 赤松常子

    赤松常子君 私は素人なんですけれども捜査権というものは先ず警察にあるわけでございますね。そうしていろいろ材料を作りましてそれによつて逮捕するかどうかということの疑義がかなり生じたときに、検察側の同意を得るということになりました場合に、やはりその検察側の判断の資料というものは警察が作つたものによるのでございますね。それで私は又裁判官も警察側が作つた材料で判断をするというのでありますから、検察側に聞く必要はなく、裁判官がその警察側の作つた資料によつて判断をすればよろしいのじやないかと思うのでございますが、どうして検察側の同意を得なくてはならないということになるのか、或いはその警察側の作つた資料によつて検察側がただそれによつて判断をする、これだけのことであるならばでございますね、検察側の同意を得る必要もないじや互いですか、何か手数が余計かかるようにちよつと思うのでありますが……。
  171. 犬養健

    国務大臣犬養健君) こういうことは手数がかかつたほうが私はよろしいと思つておるのでございます。もう一つは今申上げたように、警察のほうには、少し申しにくいのでありますが、逮捕状の請求の濫発ということも、これは弁護士会がなかなかやかましいのであります。今までの考え方は、それは検察官が先ず警察官の逮捕状を見てそこで抑えればいい、こういう考え方で進んで来ましたが、それはどうもよくない……、私は衆議院委員会では終始その場合裁判官もなかなか重荷であられるから、検察側の同じ事件内容に関する意見の反映がその場合あつたほうがよろしいのであつて、その意味から同意とか承認とかいう字が一番適当とも思わないが、明らかに意見を聞くぐらいのところで落ちついて当局は異存はありませんとまあ謎をかけて来たわけでございます。そこで、逮捕状濫発ということを防ぐ意味から言つても、検察官の意見を聞くということが私は大切だと思うと同時に、捜査を一緒にしたこともない裁判官が自分の判断の責任を以て誰にも聞いてはいけないのだということは私は行き過ぎだと思うのであります。  又、これも申しにくい点もありますが、そういう、人をふん縛るというようなことは、できるだけ一つの権力を持つている人がしないで、そこにやはり別の角度からの意見の反映があつたほうが縛られる人に対しても十全な計らいをしたことになる。手数がかからないということを主にして逮捕状の請求の事件を扱つたら、私は却つて危険じやないか。つかまえたいが、これはなかなかつかまえると決定までにはそれぞれ手順があるというほうが私はいいのじやないか、こういうふうに思つておるのであります。
  172. 赤松常子

    赤松常子君 それでは私の先入観念か存じませんけれども、何か検察側考え方というものが、つかまえたいという気持の強い先入観を、そういう考え方を持つていたら、私の先入観かも存じませんけれども、何かそこに一つ圧力というものが余計に加わるような危惧を感じるわけなのでございます。それは手数を省くというだけではないことは、勿論私手数を省くということを強く申しましたのですが、そんなことはどうでもいいことであつて、結局は被告人の殊に人権が守られるということが土台でなければいかないが、何か検察側に意見を聞くと、そこにもう一つ圧力が加えられて余計縛られる数が多いじやないかという危惧が私に生じていることであります。まああの余計いろいろな人の意見聞くということはよりいいことでありますが、それが検察側の意見ということが加わつた、併しそこに一つの余計縛られる点が多くなるのではないかという気持があるということを正直に申上げて、それから裁判官が一々あらゆる事件の場合にいろいろ聞いてそして逮捕すべきか、すべからざるかということの判断をするのでございますが、それが果して事務の過重にならないものですか。それが正当に行われるお見通しがございましようか。
  173. 犬養健

    国務大臣犬養健君) そこが御尤もな点でございまして、さればこそ亀田さんが御指摘になる明らかに必要がないときには自分でやつてくれというこういう文句がそのために出ておるのであります。それからどつちがつかまえたがるかという問題ですが、これはやはり人まちまちですが、警察のほうが絶対つかまえたがつておるという委員も相当衆議院におりましたが、今の赤松さんのようにおつしやるかたもあるので、まあそれの悪いほうを比べたら丁度あいこではないかと思います。それがお互いにだんだん斉藤長官なども警察大学などを作つて質の向上を図つております。検察の名士を呼んで講演を聞いたりしておりまして、だんだんその落第生の部分が減ると思いますが、悪いほうの比べつこしたら私はあいこではないかと思います。検察官だけがつかまえたがつておる、警察官だけがつかまえたがつておるというのではなくて悪い方は両方つかまえたがる危険性がある、こう私は見ております。これはあいこの問題ではないかと思います。
  174. 一松定吉

    ○一松定吉君 これは結局私の考えでは「明らかに」という文字を衆議院で入れたのは、少しく思い過ぎて却つて解釈上おかしくなつたんじやないかと思う、亀田君のおつしやつたのは尤もだと思う。疑問は一体現行法にはその逮捕状要求すると、裁判官は盲判でも何でもどんどん押すのだ、出すということになつておるが、それを是正しなければならない。これは盲判を押すようなことをしてはいけないので、逮捕状を請求した時分にはその請求事実の内容調査してそうしてこれは逮捕状を出さねばならない、これは逮捕状を出すことはできないのであるということを、裁判官に多少の判断権を与えた上で逮捕状を出すということにすれば、逮捕状の濫発ということがなくなるというのがこの改正案の趣旨である。又学者の公聴会、公聴会を開いて学者の意見を聞いても、そういう意見で、とにかく裁判官がもう少し逮捕状を発付する際、犯罪事実の内容調査させるだけの権限を与えなければいかないじやないかということ、これは公聴会の皆さんの意見で、その意見をとつて「明らかに」ということを入れて誰が見ても逮捕状を出すことができないものだと思うときには出さないということであるが、これは思いやり過ぎて却つて疑問がある。そうするとあれは逮捕状を出しません、こう裁判官が言つた時分に、今度は請求する側の者が何故そういうことを言うか、逮捕状を出すことができないというような明らかな証拠があるかと言つて逆効果を生ずる、「明らかに」という文字があるから……。「明らかに」という文字がなければ裁判官の判断によつて逮捕の必要がないと認めるから私は出しませんと、こう言えばいい。ところがその上に「明らかに」という文字があるために逮捕状を請求する者はあなたはそういうことを言うけれども逮捕状を出すことはできないという何か明らかな証拠がありますか、明らかにそういうことが言えますかと言つて逆効果を生ずる。これは衆議院では裁判官に非常な権限を持たしてそうして逮捕状を濫発しないようにするということの親心でつけた文字でありますけれども却つて逆効果を生ずるのであるから、亀田君の言う議論は尤もだと私はさつきも聞いておつたが、これはもう一遍当局のほうで研究して、我々も考えてみますからできるならば一つ刑事局等で衆議院の例の連中に小林かなえ君に、それからこの間来た連中に、亀田や一松は、こういうことを言うがどうかと言つて相談して見なさい。成るほどそれはそうだということを必ず言いますよ。明らかという文字があるために、なければいいが、あるとおれは出さんと言うと、何故出しません、明らかに逮捕状を出さないという理由がないじやないか。だからあいまいであつても出せと、こう言うと逆効果になるから……。今日はもう時間も来ておるのでこの程度にとどめて置いて更に明日続行して明らかにしようじやありませんか。(笑声)私も本当に亀田君の説明は尤もだと思つて聞いておりました。
  175. 亀田得治

    亀田得治君 只今一松さんから経験に基いた意見を出して頂いて、私は本当に余計自信を持つたのですが、本当に知つておるのは、警察官のほうはよく知つているから、判事のほうはあつちからもらつた材料ですからそれは突つ込まれたら、「明らかに」ということを突つ込まれたら、こつちのほうは余計知つておるのではないので駄目ですよ。
  176. 犬養健

    国務大臣犬養健君) そういう場合には検察官に事実聞くことになつて警官対裁判官の二人勝負でなくなる場合になつて来るのじやないですか。
  177. 一松定吉

    ○一松定吉君 それならないほうがいい。
  178. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 私は「明らかに」という文字が入るときには丁度居なかつたのです。委員がお直しになつたが、その前後の空気を見ていると「明らかに」という字がない場合は、割合に機械的な感じになり、「明らかに」と言えば判事の事後認定を相当強く要望しておる、こういう空気ではなかつたかと思う。「明らかに」という字が入る前の空気を見ていましたが……。
  179. 一松定吉

    ○一松定吉君 それはその通りです趣旨はその通りです。従つて逆効果になつて来る、そのことを一つ今晩お互いに研究して明日続行しようじやありませんか。
  180. 郡祐一

    委員長郡祐一君) それでは本日はこの程度を以て散会いたします。    午後五時五分散会