○
参考人(小倉謙君) お疲れのところと存じますが、私からも
意見を申述べさして頂きます。
只今田中警視総監からお話がございましたが、私も今回の
改正案の百九十三条第一項及び百九十九条の問題につきまして申述べたいと思うのであります。
私第一線におりまして感じますのに、今回の
改正法律案の
改正理由を読ませて頂いたのでありまするが、何が故にこのような
改正を早急に行わなければならないかということについて非常に疑問を持ち、納得できないのであります。殊に
只今の、現在の
刑事訴訟法の基本的な構造を崩すような慮れのあるような今回の
改正が、何が故に早急に行われなければならないかということについて納得しかねるものがあるのであります。
只今警視総監からお話になりました
趣旨と大体において同じでございまするが、多少ダブる点があると思いますが、できるだけ
捜査の実情といいますか実態といいますか、そういう面に即してお話をいたしたいと思うのであります。
先ず第一に、
逮捕状の問題から申上げたいのでありますが、
逮捕状が
濫用せられておるということが最近言われるようになりました。私たち非常にこの点について真剣な反省をしなければならないと思
つておるのでありまするが、又実態を見ましても、勿論改善の余地があるということを率直に認めておるのであります。併し申されるようにそれほど
濫用せられておるかどうか。又それほど
濫用できるものかどうかという点をお考え頂きたいのであります。その
逮捕状請求の際の実際のやり方という点について、若干お話してみたいと思うのであります。国警のほうにも御承知のように
犯罪捜査規範という訓令が出ておりまして、すべて
犯罪の
捜査につきましてはこれに基いて行われておるのであります。これは私のほうと最高検察庁とお打合せいたしましてその御了解を得まして作つた
規定でございます。東京警視庁及びその他の自治体
警察においてもそれぞれ大体同じような
犯罪捜査規範を持たれまして、これ又地元の検察庁と十分お打合せの上作
つておられる、これに則
つて犯罪捜査を行な
つておるわけであります。これによりますと、これは
刑事訴訟法の精神でもありますが、
犯罪の
捜査は任意
捜査を
原則とする。どうしても任意
捜査により得ない場合に強制
捜査を行うという
建前でございまして、又
令状の
請求には必ず隊長又は
警察署長の承認を得てこれを
請求するということにな
つております。又その
通り行な
つておるのであります。それから
令状を
請求することのできるものは、
刑事訴訟法によりまするならば
司法警察員とな
つております。これは
警察では巡査部長以上ができることにしてありまするけれども、実際にはこの
令状を
請求する者は、私の県で言いますならば刑事係長、或いは職長から
請求するのが大部分であります。それから刑事係の主任、これは警部補又は少数の巡査部長がな
つておりますが、いずれにしましてもそういう面で専門的な教育を受けました者でございます。この署長、刑事係長、刑事係主任、この者に限
つて令状の
請求ができる。而もそれは署長又は隊長の承認を得て
請求するということを励行いたしております。それから
請求書に記載する
事項或いはそれに添付する疏明資料でございますが、これが相当たくさん必要なんでありまして、窃盗
事件なんかでも、被害にかかつた顛末書を被害者から取りまして、それを添える。或いは目撃者があれば目撃者の
供述の調書を添える、或いはその臓品を買い受けた者、古物商なんかでありまするならば、これにこれからの
供述書といいますか、上申書を添えて出す。その他
捜査関係の報告書を添えるというふうに、疏明資料につきまして相当必要なのであります。
それからこれを判事さんに見て頂くわけでありまするが、判事さんは、勿論その人によりまして、非常に細かく御覧になるかたと比較的そうでないかたとございますけれども、いずれにしましても、その疏明資料につきましては十分目を通されて
令状を出されるのであります。このような
段階を通
つて参りますので、
令状の
請求という場合には、
警察としましても、非常に慎重に扱
つておるのであります。又普通の
犯罪、一般
犯罪よりも、主要な
犯罪或いは重要な
犯罪につきましては、これは
捜査全体につきまして部内でもいろいろ検討しますし、又
令状を
請求いたします場合においても、極力検討いたしまして、本部のほうでも重要な
事件につきましては
関係の部課が検討いたしますし、又重要なものの中で、私のところまで持
つて来まして、私が一々
指示をする場合も少くないのであります。そのように、部内で検討いたしました上で、更に検察庁と打合せしまして、検察庁ではその重要の
程度によりまして、或いは刑事係長、或いは署長、或いは本部の部課長が出向きまして、いろいろ打合せをし、検察庁側の御
意見もいろいろ承わり、又こちらの
意見も申上げてそうして
令状を
請求するというような極めて慎重に扱
つておるのであります。
私の県で昨年中に
令状請求関係で現われております数字を申上げますならば、昨年中に私のほうで
捜査をいたしました人員が約一万四千名であります。そのうち、在宅
捜査といいますか、任意
捜査によりましたものが七一・五%であります。そして
通常逮捕令状の
請求をいたしましたのは一九・七%、約二千七、八百件になると思いますが、そういうような数であります。そして
令状を却下せられました数は、昨年におきましては二件であります。
緊急逮捕関係が三・四%、
現行犯が五・三%というような数にな
つております。そしてこの
通常逮捕令状を取りましても、更にそれをできるだけ執行をしない、まあ任意で取調のできるものは任意で来て頂いて取調を済ませるという方針で行
つておりますので、執行しましたのは八三%ぐらいになります。そして
通常逮捕令状を執行しました中で、起訴され、或いは起訴猶予となりました数が大体八七%ぐらいであります。不起訴になりましたのは約六%、まあそのほかは未済
事件等であります。こういうような状況でありまして、私は最近非常にやかましく言われておりまするけれども、それほど
濫用できないような
手続にもな
つておりますし、又相当私どもとしましては真剣にこの問題を考えて慎重に扱
つておるということをお含み頂きたいのであります。勿論今後更にできるだけこれを少くしたいということは考えております。後ほど若干その点について触れてみたいと思いますが、例えば任意同行を求めに行つたところが、相手方がこれに応じないという場合に、ちよつと役所へ帰
つて来まして上司と相談し、すでに取
つております逮捕
令状を持
つて行くというような場合に、相手方から見ますると、今任意同行を求めに来て数時間後にすぐ逮捕
令状を持
つて来たというような感じを与えるのでありまして、如何にも逮捕
令状が簡単に出るかのごとき疑いを抱かせる場合もあるのじやないか。或いは任意同行を求めます場合、或いは取調べます場合に、逮捕
令状がすでに出ておるかのごとき口吻を、気振りをするとか、或いはすぐ逮捕
令状が取れるような気振りというか、口吻というような、非常にいけない不用意な言動が如何にもその逮捕
令状が濫発されておるというような疑いを増すようなことがあるのではないかという点を私反省しまして、こういう点には厳重に戒めて行きたいと思
つております。なお、任意で取調べるものまでも、あらかじめ逮捕
令状を取
つて置くことはどうかという先ほどいろいろお話がございましたが、やはり
事件によりましては、どうしても証拠隠滅等を防ぐ
意味から、これはその余罪がいろいろあるという
関係からどうしても来てもらわなければならないという場合には、やはりあらかじめ十分な
捜査をしまして、その
捜査に基いて
令状の
請求をし、
令状を受けまして、その上で任意同行を求める、その場合、任意同行してくれるものはできるだけ任意で調べて成るべく早く帰す。併しこちらに相当証拠があるのに、その取調に対して本当のことを言わないというような場合には、止むを得ず逮捕
令状を執行するというようなこともございます。そういうようなことで非常に余罪が出た事例も相当あるのであります。いずれにいたしましても、
令状の
請求に
当りましては非常に慎重に、又できるだけ少くするように努力いたしておるということを申したいのであります。
それから先ほどちよつと
警察官の教養の
程度が
検察官に比べて低い、だからその逮捕
令状を
警察官に委すのは危いというような御
意見もあ
つたのでございますが、これは
警察官の教養
程度、巡査の中にも非常に立派な人もおります、人間的に立派な人もたくさんおります。その教養
程度がどちらがどうか、上かという点は別問題といたしまして、又
検察官のかたの中にも非常に若い検事さんもおられる、副検事さんなどもいろいろおられる。いずれにいたしましてもこの
令状の
請求という問題から言いますならば、先ほど申し上げましたように
請求する者を本当に限定しております、幹部に殆ど限
つておりますので、そういう教養の
程度如何という点はこの
令状の問題につきましては、私は問題がないのじやないか。これは別個の、
警察全体の別個の問題であるというふうに考えるのであます。
それから次に申し上げたいのは、今回の
改正案のように
逮捕状の
請求に当
つて検事の
同意を要するということにすれば、果して言われておりますような
濫用が防げるかというような問題でございます。果して実効が挙るかという問題でございます。この点で先ず考えてみますのに、先ほど申し上げたように、
令状を
請求する数は全体の
捜査人員から比べますと少数ではありまするけれども、やはり或る
程度の数に上ります。これを全部検事さんのところに持
つて行
つて、その
同意を受けるというようなことは、これはもう不可能である。これは私は
検察官のかたもお認め頂けると思いますが、私たちの県では検事さんが
警察署の所在地に常駐されておるというようなところは、むしろ少いのであります。又検事さんは非常にその
事件の処理或いは
警察から送られました
事件の補充
捜査、取調べ或いはその他のみずから行われる
犯罪捜査、或いは公判の
仕事というように、非常に御多忙でありまして、そこに一々すべての
事件について
令状の
請求書を持
つて行
つて、その
同意を受けるというようなことは、これは不可能であります。従いまして、まあ今回の
改正の逐条説明の中にもありますが、窃盗とか賭博などは、まああらかじめ
同意を与えるようにしたらどうか。選挙違反、涜職それから破防法違反というようなものは
同意を要することにしたらどうかというような御
意見が出ておりますが、ところがこれらの重要な
事件は実は先ほど申し上げたように、実際においては検事さんと膝を突きあわせて十分に打合せをし、お互いの
意見も言い合
つて、
事件の
捜査に当
つているのであります。これについて今更
同意を要するということにしましても、果してこういうような重要な
事件の
令状請求は非常に慎重でありますから、その数が減るかどうかということもこれも又私はむしろ期待できないというよりも、むしろ余り
意味がないではないかと考えるのであります。私たちが一番やはり心配いたしますのは、重要な
事件は、我々が手からがいろいろな相談にも乗り、或いは
指示もいたしますが、やはり普通の窃盗或いは詐欺というような
事件、こういうようなものがやはりよほど気を付けておらないと、必要以上に
令状を
請求するということになりやすいのでありまして、そういうような面については一々これを本当にその検事さんのところに持
つて行
つて、
同意を求めるということを、これは実際行いましても、殆んど形式的な、何といいますか連絡に過ぎないことにな
つてしまうと思うのであります。又、私のほうの署の実実情から言いましても、或る職などはまあ検事さんの御意向もありまして、できるだけすべての
事件を
検察官にあらかじめ連絡する、
令状を
請求する場合にあらかじめ連絡するということでや
つておりますが、そういうことをや
つております署の方から出ましたいろいろな統計も、そうでない署から出ました統計も、やはり同じようなことでありまして、やはりすべての
事件について
同意を求めるというようなことは、実際実行不可能である。又重要な
事件については、普段から十分連絡をしておるというようなことでありまして、今回の
改正の検事の
同意を必要とするということによ
つて、
逮捕状をなるべく少くしよう、
濫用を防せごうというようなことは、私は実効がないと思います。
それからこの実効がない反面考えなければなりませんことは、マイナスの面が相当出て来るのではないかということを私は非常に心配をいたしております。その
一つはこの
令状の
請求に当
つて同意を求める、この
同意を本当に責任を以てなされるというような場合には、その
事件の全貌、
捜査の
端緒からすべてのことをよく肚に呑み込まなければ、軽々に
同意をするということはできないのであります。申すまでもなく
犯罪の
捜査は非常に複雑でありまして、ただ
令状を持
つて来て、ただそれに
同意を与えるということだけでは、果してそれが適当であるかどうかということの判断はできないのでありまして、どうしても
犯罪の全貌、或いは
捜査の進行状況、その他すべての点を考慮に入れなければ、この
同意をするということはできないのであります。そういうようなことから私は若しこの
改正案が
通りまして、検事の
同意を要するということになりましたならば、自然自然に検事さんが
犯罪捜査の中に深入りして行くというようなことになることは、これは自然の勢いで当然の結果であるというふうに考えるのであります。殊に
改正提案者側の言われているような、重要な
事件について
同意を必要とするということをなされるならば、余計一層そういうような選挙違反、或いは転、破防法違反というような事犯について全面的に検事側が
捜査の中に深入りして行くというような危険が非常にあると思うのであります。このことは、勿論現在の
刑事訴訟法の
建前の
趣旨にも反しているのでありますし、又
捜査と
公訴というものは、これは密接不可分のものでありまするが、やはり
捜査には
捜査の本質があります。私は
犯罪の
捜査は、常にいろいろな証拠に基いて、その真相を明らかにする。事実を明らかにするという点を強調してやらせているのでありまするが、そこにやはり将来の
公訴というようなことを考えて
捜査の中に入
つて来られるという場合には、やはり
捜査の本質からやや外れたような御
意見が出て来るのじやないかという点も懸念いたすのであります。又、実際にいろいろな
事件で検事と落ち合わせをしている場合に、必ずしも検事さんの
意見が適当でない場合があるのであります。併しそういうような場合には、こちらの事情もいろいろ申上げて、それじや
警察側がそういうふうな
意見ならそれでやつたらいいだろう、やろうじやないかということになるのであります。ところが、これを
同意を必要とするとか何とかいう
法律上の要件にな
つて来ますと、非常にその間の結局責任問題が附随いたしますから、その間の話合いがスムースに行かない、何となくぎごちないものにな
つて行く。而も
捜査の本質という面から
言つて甚だ適当な
意見が出て来るかどうかという点をも懸念いたさざるを得ないのであります。
なお
警察は、御承知のように、
犯罪捜査のほかに、防犯、或いは警邏、その他のいろんな
警察部門を持
つておりまするし、全体の活動を通じまして
犯罪を少しでもなくする。又
犯罪の
捜査に
当りまして、いわゆる刑は刑なきを期するというような気持でできるだけやりたいと思
つておりますので、ただ、
犯罪の
捜査は
公訴の前提である。だからどういうというような御
意見は私はどうも納得できないのであります。勿論
関係が深いことはありますけれども、やはり
公訴機関は
公訴機関の本質を守る。又
捜査機関は
捜査機関の本質を守
つて、お互いによく連絡しながら、又或る
程度、或は
意味におきましては、お互いによい
意味の牽制をしながら、反省をしながら進んで行くというところに、人権の保障という面から言いましても、
犯罪捜査の適正という面から言いましても妙味があるのじやないかというふうに考えている次第であります。
なおもう一点、私が非常に心配いたします点は、若し仮に、今度の
改正が行われまして、事実上検事さんが
捜査の過程の重要な部分を握
つてしまう、
同意権という面から握
つてしまうということになりますれば、
警察官のほうの責任感、
犯罪捜査を誤りなくやろうというこの責任感も、やはりどうしても薄らいで来るというのは、これはやはり人情じやなかろうかと思うのであります。やはり自分が責任を持つ。責任のないところに反省と努力はないと思うのであります。やはりどこまでも自分の責任でや
つているから、誤りなくやろうという気持が出ますが、どうせ検事さんの
意見で
同意してくれるかどうかということはきま
つてしまうのだからという気持に
警察官がなりますれば、やはり勉強することも勉強しない、反省する点も真剣な反省をしないということにな
つて、やはり却てて私は全体から
言つて非常にこれはマイナスになるというふうに思うのであります。ただ他に依存して安易な気持になるということから、自然その職権の
運用も繁れて来るというような危険性が多分にあるのじやないか。なお先ほどの
参考人からの御
意見に、何もそう心配することはないじやないか、戦前においても今でも同じであるが、人事権というものは
警察が握
つておるのである、だからそう簡単に検事の言うなりにならんであろうというふうに言われるのであります。併し戦前においては、これは決してよいことではなく、悪いことでありますが、
刑事訴訟法による
刑事手続と申しますか、処理のほかに、いわゆる検束の利用ということが実際行われたのであります。従いまして
警察といたしましては片一方において
刑事訴訟法に縛られておる半面、検束の脱法的な利用といいますか、そういう面から
警察独自の活動が行われてお
つたのであります。そこで
警察側と
検察官側とのバランスといいますか、均衡がとれてお
つたのであります。ところが今日では勿論そういうことは絶対許されない。すべて任意
捜査を
原則とし、而も強制力を用いる場合には
令状によらなければならない。その
令状が全部検事の
同意を要するということにな
つて、検事さんの
意見によ
つてその
捜査が動かされるということになりますと、これは非常に大きな問題になると思うのであります。これは単に人事権をこちらが持
つているということだけで解決できるものではないのでありまして、
警察官の
犯罪捜査に対する熱意も、或いは責任感も、反省と努力も、こういう面で非常に低下して来るのではないかということを恐れるのであります。その他余りこの問題に検事さんが深入りされて来ますと、本来の
公訴の維持、或いは
公訴の提起或いは公判等のほうに非常に手が廻りかねることになりはしないかという点もありまするけれども、この点は省略させて頂きまして、次に百九十三条の第一項の問題に入りたいと思います。
捜査を適正にするために、
一般的指示をなすという
改正であります。これは私、先ほども総監が申されましたが、第一線におりまして、なぜそんな
改正が現在必要なのか全くわかくらないのであります。私たちは検事さんとはしよつちゆうよく連絡をいたし、
仕事のほうも又公私共にいろいろつき合
つておりまするが、又は署長会議の場合とか係長会議、その他いろいろな講習会の場合とかに、検事正以下次席さん、各検事さん極力来て頂きまして、いろいろ議についての教えを受けておるのであります。
公訴の維持上得られました
捜査上の欠陥とか、その他
法律の疑義、或いは適用に関する問題等、いろいろ私たちは事実問題として非常に貴重にアドバイスを受けておるのでおります。そのようなアドバイスを受けながら、而も我々の責任において反省と努力をしながら
捜査をいたしておるというのが現在の実情であります。そういうような際に何が故にこのような
捜査を適正にするために
一般的指示をなすということが必要であるかどうかということは、まるで私たちとしましてはどうもぴんと来ないのであります。私前に本部の
捜査課長をいたしておりましたので、若干経緯を存じておるのでありますが、この百九十三条の
一般的指示権に基づく
指示といたしましては、
司法警察職員捜査書類様式例に出ております。その他において検察庁からお話が、これは正式にではございませんが、いろいろありましたのは、
犯罪捜査規範として現在私たちが持
つておりまする規程と同じような、
捜査をやるときにはどういう心がまえでやらなければならないかというような、昔の
司法警察職員職務規範と殆んど同じようなものを
一つ出そうというような話があ
つたのであります。併しそれはおかしいじやないか、非常に現在の
刑事訴訟法の
建前が変
つて来ているので、
警察は
警察として、責任を以て
捜査をやるという
建前にな
つて来ているから、そういうような心がまえとか、規程とか、いろいろな点、そういうような従来旧刑訴時代の職務規範として
規定されておつたような事柄はやはり
警察独自できめたほうがいいのではないかというような話合いをいたしまして、最岡検の御了解も得まして、これが我々のほうの
犯罪捜査規範という規程に
なつ填おるのであります。そのような
司法警察職員職務規範というような昔の旧刑訴時代のようなものを出そうというような話があ
つたのが回あります。それからもう一度は、先ほどお話がありましたが、破防法の適用についてのことであります。これは総監のお話で御了解を得ておると思いますが、これは破防法
関係の
事件についてはすべて所轄の検事正の承認を得てから
捜査をせよということであります。このようなことは百九十三条の文面から行きます石と、一般的準則と書いてございまして、個々の
捜査の指揮はやらないということを極言といいますか、極力言われておりまするが、実際こういうような
一般的指示及び破防法
関係の
事件はすべて検事正の承認を得てからやれというようなことは、事実問題として個々の
事件の
捜査を検察庁が握るということになるのでありまして、どうもそのようなお考えが今あるのじやないかというような懸念を私たちが抱いても、これは納得して頂けるのじやないかと考えるのであります。そのほかに、この
一般的指示権に基いてお申入れのあつたことは全然ないように私は聞いております。現在の法文の
規定から言いましても、それがただ法の精神を変えるわけではない、
解釈を明瞭にするという
意味だけで果してこのような重大な、
捜査を適正にするために
一般的指示をなし得るという
改正をする必要があるのだろうか、どういう意図でそういうことをお考えにな
つたのか。又この
改正が通つた場合に果してどういうような具体的な事柄を
一般的指示をされる意図があるのだろうかという点の御説明が全然ありませんので、私たちといたしましては、どういう
意味でこのような
改正をされるのか、全く見当がつかない。折角今気持よく
警察と、検察庁との間がや
つて行こうというこの空気を不必要に紊されると思うのでありますが、そういうような感じがするのみであります。この点も全く納得できないのであります。又
捜査の、いろいろな
捜査機関があるから
捜査の調整のために
一般的指示を出すのだという御説明が先ほどありましたけれども、
捜査の調整のためでありますならば、これは百九十三条第三項の問題にな
つて来ると思います。この第二項に基いて必要なる
捜査の調整ができますし、その他たびたび申上げましたように第一線では極めて緊密にや
つておりますので、談笑の問にいろいろな検察庁側の御好意というものは
警察に反映するのじやないかというふうに考えるのであります。
大分時間が経ちましたので、
逮捕状の
濫用防止すると言いますか、少しでも
逮捕状の不必要な
請求のなくなるようにというような方法としまして、私若干考えておりますことを極めて簡単に申上げて見たいのであります。先ほど申上げましたように、やはりこれはどうしても
警察官自身の責任感を一層強めまして、而もこれに対する教養指導という点を、従来も勿論や
つておりまするが、従来以上に一層深めて行くということが一番のこれは根本問題であると思うのであります。私たちの県でも司法
警察官の人選、教養ということは一般の
警察官と更に別に特別の関心を以てこれを行な
つております。又最近ではこれは国警本部の御
指示もありまして、なお有能な係官を指導係ということにいたしまして、これが各署を廻りましてこういうような場合の間違いのないことを期するためにいろいろ指導をいたさせております。又講習会等の場合には判事さん、検事さんに極力来て頂いて講習をして頂いているというようなことをや
つておりますが、この責任感を持たして、これをもつと教養するという点はどうしても今後私自身としてもや
つて行きたいと考えております。それから
令状の
請求書、これを場合によれば
請求者を更に上級の幹部、例えば署長或いはその代理者或いは刑事係長といいますか、そういうような者に限定するというような措置も考えていいのじやないか。或いは
令状の
請求書に署長なり、署長の代理者が認印を押しまして、署長や代理者がちやんとこれを見て、而も責任を以て
令状を
請求するというような形にするということも考えられるのじやないかというふうに思います。それから
裁判官のほうでいろいろ
審査をされますが、これはだんだん私細かく見て頂いている傾向にあるということは、非常に私としましては幸いであると思います。やはりそういうような面からも、できるだけこの
濫用というようなことの
一つでもありませんように、よく
審査をして頂く必要があると思います。その他検察庁との密接な連絡等は申すまでもありませんが、こういうような方法によ
つてやはり
警察側がこの問題を自主的に、真剣に考えて反省するという面で解決する以外に方法は私はないというふうに考えております。
最後にこの今回の
改正事項につきましては警視総監も申されましたように、
警察官の全員が非常に関心を持ち、又心配をいたしております。終戦後
警察の側でいろいろな面が改善されましたが、教養施設の面、或いは科学
捜査の研究所でありますとか、或いは鑑識部面、こういうような面は非常に進歩、改善をしております。そういう教養或いは科学
捜査という面を更に一層これを強調し、又施設も改善しまして、それと同時により一層
捜査の第一次責任機関であるというような責任感を強固にいたしまして、運営に当
つて行きたいと思
つているのであります。現にそれが終戦後の
警察官の
状態から言いますならば、今日は相当、本当に白紙で見て頂いたならば相当進歩している。教養の
程度も、又いろいろな技能の面も相当進歩して来ているということを私は断言していいと思います。勿論十分でありませんし、大いに更に改善する余地はありますけれども、相当進歩をいたして来ている。そういうような矢先にこのような
法律を以て、再び事実上
検察官の、検事さんの補助者となるような結果に終らざるを得ないような
改正がなぜ行われなければいかんかという点については、私は慎重にお考え頂きたいということをお願いするのであります。
警察の改むべき点がありますならば、これは更に一層一般の
かたがたから、或いは検事さん、判事さん、或いは弁護士さんの
かたがたから大いにこれはアドバイスをして頂きたいし、又私愛知県におりますると、県会議員、或いはその他の地方のかたがよく私の部屋に来てくれます。そうして
警察の悪い点、こういう点があるというようなことをよく
言つてくれます。又新聞も又必要以上と思われるくらいの、若し
警察の間に誤りのあるという点、悪い点がありました場合には、相当新聞にも善きます。そういうような世論の批判ということを常に考えながら、又反省しながら我々はより一層最善の努力をいたしたいと考えているのであります。そのような批判というものも比較的私は少ないと思いますが、検察庁側に果して直ちに今回の
改正を行いまして
捜査の指揮権を強める、或いは
捜査の実体、一番重要な部分を握るというような措置は必要が果してないのじやないか。仮にその必要があるといたしましても、現在の
段階ではいま一応
警察側の十分な反省を求める。
警察側でなし得ることをもう少しやらして見る。そうして折角第一次
捜査機関として今まで育
つて来ているのでありますから、これをもう少し温い親心で見て頂きまして、よりいい
方向に育てて行くというようなふうに進んで行けるならば、私は非常に幸いであると思うのであります。再び
警察が以前のような
状態に戻る懸念が私多分に考えられますので、どうか慎重にこの点御審議頂きまして、我々の
意見の存するところを十分御了承頂きたいと存ずる次第でございます。
以上であります。