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1953-06-30 第16回国会 参議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年六月三十日(火曜日)    午後一時三十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     郡  祐一君    理事            加藤 武徳君            宮城タマヨ君            亀田 得治君    委員            小野 義夫君            楠見 義男君            中山 福藏君            一松 定吉君   政府委員    法務政務次官  三浦寅之助君    法務大臣官房調    査課長     位野木益雄君    法務省矯正局長 中尾 文策君    法務省保護局長 斎藤 三郎君    法務省人権擁護    局長      戸田 正直君    運輸省航空局監    理部長     粟沢 一男君   説明員    最高裁判所長官    代理者    (事務総局人事    局長)     鈴木 忠一君   —————————————   本日の会議に付した事件判事補職権特例等に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提  出) ○人権擁護委員法の一部を改正する法  律案内閣提出) ○司法試験法の一部を改正する法律案  (内閣送付) ○航空機抵当法案内閣提出、衆議院  送付) ○刑法等の一部を改正する法律案(内  閣送付)   —————————————
  2. 郡祐一

    委員長郡祐一君) それでは只今より委員会を開きます。  本日は先ず判事補職権特例等に関する法律の一部を改正する法律案、本院先議議題に供します。本案につきまして政府の御説明を願います。
  3. 三浦寅之助

    政府委員三浦寅之助君) 只今議題となりました判事補職権特例等に関する法律の一部を改正する法律案について提案理由を申上げます。  この法律は、御承知通り判事補職権特例裁判官任命資格特例とを定めたものでありますが、今回の改正案は、前国会に提案しましたものと全く同じ内容のものでありまして、もと法務官公正取引委員会事務局審判官、満洲国律師等の職にあつた者のその在職年数一定の条件の下に裁判官任命されるに必要な職歴年数等に通算しようとするものであります。即ちその要点は次の六点であります。  第一点は、旧裁判所構成法による判事又は検事たる資格を有する者が、もと法務官の職にあつたときは、その在職年数を、裁判官任命資格に関する法定職歴年数及び職権制限を受けない判事補として指名されるに必要な法定職歴年数に通算することができるようにしようとするもので、第二条第二項の改正規定及び第五条の改正規定の前半の部分は、この趣旨から立案したものであります。  第二点は、旧裁判所構成法による司法官試補たる資格を有し、もと法務官在職年数が通算して三年以上になる者の、その三年に達した時以後の在職年数を、裁判官任命資格に関する法定職歴年数に通算することができるようにしようとするもので、新たに第二条の二第二項として加えた規定は、この趣旨から立案したものであります。  第三点は、旧弁護士法による弁護士試補として一年六月以上の実務修習を終え考試を経た者の、その考試を経た時以後のものと法務官等在職年数裁判官任命資格に関する法定職歴年数に通算することができるようにしようとするもので、新たに第二条の二第一項として加えた規定は、この趣旨から立案したものであります。  第四点は、旧裁判所構成法による判事又は検事たる資格を有する者が、公正取引委員会事務局審判官等の職にあつたときは、その在職年数を、裁判官任命資格に関する法定職歴年数及び職権制限を受けない判事補として指名されるに必要な法定職歴年数に通算することができるようにしようとするもので、第二条第三項の改正規定及び第五条の改正規定の後半の部分は、この趣旨から立案したものであります。  第五点は、司法修習生修習を終えた者が、公正取引委員会事務局審判官等の職にあつたときは、その在職年数を、裁判官任命資格に関する法定職歴年数及び職権制限を受けない判事補として指名されるに必要な法定職歴年数に通算することができるようにしようとするもので、第三条の二の改正規定は、この趣旨から立案したものであります。  第六点は、弁護士たる資格を有する者が、満洲国律師の職にあつたときは、その在職年数裁判官任命資格に関する法定職歴年数及び職権制限を受けない判事補として指名されるに必要な法定職歴年数に通算することができるようにしようとするもので、第三条の改正規定は、この趣旨から立案したものであります。  以上申上げました各職については、その職務の性質上、その在職年数裁判官任命又は職権制限を受けない判事補の指名に必要な法定職歴年数に通算することができるようにすることが極めて適切であると考えるのでありまして、これによりまして、裁判官任命できる者の範囲及び職権制限を受けない判事補として指名できる者の範囲を拡張し、以て裁判官充実に資するとともに、人事の交流を一層円滑ならしめようとするものであります。  以上簡単にこの法律案提案理由を申上げました。何とぞよろしく御審議の程をお願いいたします。
  4. 郡祐一

    委員長郡祐一君) これより質疑に入ります。御質疑のおありの方は御発言を願います。
  5. 一松定吉

    一松定吉君 これは何ですか、判事補の採用が現行の法律によればよほど制限を受けておるために、人を殖やさなければならない必要上、かような立法をしなければならないようになつたものと思うのですが、それはそうでしようね。
  6. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 只今お尋ねの点でございます判事補のほうは、これも御指摘のように補充は必ずしも容易ではないのでありますが、この法案趣旨は、判事補よりもむしろ判事のほうの補充が困難なので、そちらの欠陥と申しますか、必要を満たすということを主眼といたしておるのであります。今提案理由で触れられたのでありますが、第一点第二点以下第六点まで主としては裁判所法の四十一条それから四十二条及び四十四条に定める裁判官任命資格に関する法定職歴年数法務官等在職年数を通算しようというのでありまして、これら裁判所法の条文は、最高裁判所裁判官それから高等裁判所長官及び判事並びに簡易裁判所判事に関するものでございまして、判事補のほうは入つておらないのであります。
  7. 一松定吉

    一松定吉君 私どもが実際に携わつてみますと、どうも近頃判事補若しくは検事というような人々の若い人々がどうもまだ私どもどうかと思うような、平口で言うと、お粗末な人の数が大分殖えたように思うのですが、そういうような点についてこういうような便宜な方法を用うることは現状止むを得ないといたしましても、もう少し実地修習等について当局は力を入れて、そういう世の中の人の非難を受けないような人物を養成するということが急務であると私は思うのですが、そういうことに対して当局のお考え一つ承わつてみたい。
  8. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 御指摘の点は誠に御尤もであるのであります。ただ何分にも新憲法の施行後、司法職務の分野が非常に拡大されたということがございます。それから又手続が非常に複雑化したということがございます。これらの関係から裁判官の数が非常に不足して参つて来ておるのであります。これの補充につきましては、これは一定資格制限がございまして、たやすくやり得ないということがございますので、なかなか御希望のような老練な熟達した裁判官ですべてのポストを満たすというところまで参つておりませんのであります。こういうふうな関係から現在御審議を願つております判事補職権特例等に関する法律の一部を改正する法律案というようなものが設けられて、判事補でも五年以上の経験を持てば一人前の判事と同じような職務をとれるというような応急的な措置を講じておるのであります。併しながらこれは勿論好ましい状況ではありませんので、可能な限りにおきましてそのような状態を早く除去したいというふうなことを考えておるのであります。ただ遺憾ながらいろいろな原因で裁判官補充が思うに任せないのであります。当委員会等の非常な御尽力によりまして、裁判官報酬等も非常に改善されて来ておるのでありますが、まだ必ずしも、例えば第一流の弁護士のかたに裁判官になつてもらうというふうな点について、必ずしもうまく行かないというふうな状況にあるのでありまして、我々といたしましても、できるだけ何らかの方法裁判官充実ということを法制局にも考えたいと存じておりますので、御協力のほどをお願いいたす次第であります。
  9. 一松定吉

    一松定吉君 私のお尋ねするのは、つまりこういう簡便な方法で人を集めるということは、今日の時勢上止むを得ないことであろうが、そういう人をして国民信頼を受けるような裁判をやらせるようにするについては、何か司法当局として相当な手段方法考えておりますか。考えておるならばその具体的な事実を御説明願いたい、こういうのです。
  10. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) わかりました。答弁がやや的外れであつたかと思いますが、その点は裁判所におきましても御承知のように司法研修所を設けておりまして、ここで若い判事補を順ぐりに相当期間中央に集めまして非常に訓練に力を入れております。最近におきましては裁判所内部におきましてもその指導訓練ということに特に力を注いで、いろいろな方策を講じておるように聞いております。それらの方策によりまして、できる限り裁判官が世間の期待に反しないように措置されるようにということを裁判所当局も大いに努力されておるようでありますが、我々も非常に期待しておる次第であります。なお、その詳細につきましては若し御必要であれば裁判所のほうからお聞き頂けば幸せだと思います。
  11. 一松定吉

    一松定吉君 その詳細を聞きたいのです。私はこういう簡便な方法によつて人裁判所に集めるということであれば、こういうような人がいわゆる裁判実務に携わるというについては、やはり今私が心配しておるようなことが少しでも解消せらるるということが必要である。それならばどういうような方法でそれらの人の、国民信頼に副うように実地修習をするか、若しくは人格の涵養をするかということについて実際の今現在やりつつあること、将来考えておるような構想をこの際承わりたい、こういうのですから裁判所のほうからでも御説明ができますればこの際承わりたい。
  12. 郡祐一

    委員長郡祐一君) そうしますと、最高裁の人事局長が間もなく参るそうですから……。
  13. 一松定吉

    一松定吉君 そこで私の私見ですが、司法研修所とかいうようなものを設けて、そうして人材を養成すべく努力しておるということは私も承知しております。結構です。そういうような研修所において本当に実地裁判事務に携わることのできるように研修をするについては、今までのような研修方法では少しく足りないようなことがありやしないだろうか。あるならばそういう点についていま少しく考慮をめぐらして、実地に当つて国民信頼を受けるような裁判ができるような司法研修をやるということに力を用いなければならんのではないですか。聞くところによると、どうもその裁判官に対しての修習等が多く裁判所若しくは法務省に勤めておる事務官等の人が主としてその研修事務に当つておるということを聞いておるのだが、在野法曹で、そうして有力な人をやはりときどき集めて、それらの人の意見も聞き、それらの人から実地については、自分らはこういう考えを持つておるが、かくありたいものであるというようなことも、それらの研修の科目の中に織り込んで、そうして修習せしむる必要がありやしないだろうか。そういうことがあるとするならば、今現に行われておりますか、行われておりませんか。行われておらんならば、そういうことを一日も速かにやつて、そうして裁判官という建前から実地修習をさせるということは勿論、在野法曹建前からそういうような実務携つて、万遺漏なきを期するように修習させる必要がありやしないか。そういう点について承わつて見たい。こう言うのです。
  14. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 只今一松委員から御質問ありましたことは、一々御尤もと存じます。最高裁判所のいわば外局として司法研修所というのがございまして、そこで将来裁判官検察官弁護士になる司法研修生裁判官事務のみならず、検察官事務のみならず、弁護士事務にも十分馴らすように研修をいたしておりますが、それと同時に、司法研修所においてはただ修習生だけの研修でなく、すでに裁判官となつた者についても、同時に研修を実行しております。これは簡易裁判所判事についてもそれからすでに十年を超えた判事についても実行をいたしておりますが、主に力を注いでおるところは、簡易裁判所判事に対する研修と、それから判事補に対する研修に力を注いでおるわけであります。そうしてそういう人たちに対する研修はできるだけ多くの人を、できるだけ回数を多くして研修機会を与えるように実行しております。その研修に当つて只今指摘になりましたように、ただこの検察官或いは裁判官というような一方に偏した人たちのみの講義を聞き、体験を聞くということのみをしないで、司法研修所の中には御承知のように現在弁護士をやられておると同時に教官任務を勤めておるかたもございます。そういう弁護士教官のかたをも、その研修に参加して頂いて、いろいろ体験或いは在野法曹としての立場からのお話も伺わせるようにいたしておりますし、それと同時に教官でない弁護士の、殊に先輩弁護士を招いて、そしてそういう人たちからも在野法曹立場から見た、法律家立場から見た裁判所に対する註文というようなものをできる限り聞くようにしております。
  15. 一松定吉

    一松定吉君 今お話を承わりまして、私は大変安心しておるのですが、どうか一つそういうようなことを成るたけ数多く回数を重ねて、本当に立派な裁判官であり、立派な裁判であるというような国民信頼を受けるようにやつて頂きたいということを特にお願いをしておきます。  それから伺いたいのは、今五年やつた人、十年やつた人、或いは十年以上やつたというような人に対しましても、そういう修習をさしておるのだということは大変結構でありまするが、そういうかたが大概何回ぐらいの修習を重ねるわけでしようか。例えば五年経つてから一回東京に招集する、そうして又五年経つてから又一回招集する、こういうような区切りをやつておるのでしようか、若しくは人によつて何回でも何回でも、五年に一遍、三年に一遍というように集めておるのでしようか。その辺はどうなつておりましよう。もうあれは十年前にやつたから、もう一遍やらなきやならんというようなことでやつておるのか、或いは人によつて、あの男は三年前にやつたのだが、もう一遍東京に集めてやつてみようどいうようなことでやるのか、そういう点はどうなつておる。
  16. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 十年以上になつておるところの判事については、これは多分三年くらい前からそういう計画を始めまして、今年で全国判事が全部一回はそういう研修に参加することになると思います。判事については今年で全部一回やるようなことになつておると思います。それから判事補については、これは全部の判事補が全部研修をまだしておらないと思います。けれども、ただこれと並行いたしまして、東京に集めないで、高等管内で集めて研修機会を与える、これはもう何回もやつております。一、二回にとどまらず、各管内でやつておると思います。  それから一番裁判官に対していろいろ註文の多いのは、御承知のように、簡易裁判所判事であります。簡易裁判所判事は、多いのはもう二回くらい中央に集めてやつております。恐らく二回、多い人は三回ぐらい来ておるかも知れません。これもまあその管内人数によつて管内人数が少いところは割合に多く出ておりましようし、東京のように多い人は一時にそう多く招致いたしますと、事務のほうに差支えますから、そういう関係回数が若干少いかも知れませんですけれども、これは殆んど全部やつておることは間違いございません。それと同時にやはり高等管内で年に一回、二回と簡易裁判所判事を集めて、これも判事、場合によつて弁護士のかたなどに来て頂いて研修をいたしておりますから、これは少くとも二、三回ずつはみんな受けておるような状況であります。
  17. 一松定吉

    一松定吉君 全国裁判官の数は数千人でありましようが、そのうちの一通り今年で済むということは、いつから始めて今年で一通り済むのですか、それは全員ですか。
  18. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 判事について申上げましたのはこれは全員、全部についてでございます。全部丁度今年で三年くらいになると思いますが、今年中には全部一巡したことになるのです。
  19. 一松定吉

    一松定吉君 その裁判官裁判をする上について、思想方面から非難を受けるような判事もあるように思うのですが、そういう思想方面についてはどういう方法修習若しくは訓練を重ねておりますか、それを一つ
  20. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 思想方面において非難を受けるという御趣旨はよく了解できないのですが……。
  21. 一松定吉

    一松定吉君 共産党みたようなものですがね。
  22. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) そうですか、よくわかりませんでしたが今の御説明でわかりましたが、判事の中にそういうかたよつたイデオロギーを持つておるということが適当なる裁判をなされない、なす資格がないということにもなるかと思いますので、現在の裁判官の中にそういうかたよつた思想を持つておる裁判官というようなものは私は恐らくないのではないかと思います。ただ併しそういうかたよつた思想を持つた者に対する、或いはそういうものに関連した事件は御承知通りたくさんありますので、その点に対して裁判官としてどういう態度で臨むべきか。又そういう思想に対してどういう程度の理解は持つべきかというような観点からして、研修所においてはそういうことをテーマにして外部からそういう思想方面についての講師を招いてその研究を聞くと同時に、法廷においてそういう思想者に対してどういう一体態度をとるべきか、又裁判所が従来とつている態度が果していいか悪いかというような反省の機会をお互いが持つという意味でも、いろいろ経験を俎上に乗せて批判し合い、その批判を聞くということをやつておりますが、具体的な裁判官についてお前の思想がどうもおかしいから改めろというようなことは、実際上その必要がある程度のものがあるとは思えませんので、そういう個人的な、個人の裁判官に対してどうせい、こうせいというような指導はこれはやつておりません。
  23. 一松定吉

    一松定吉君 やはり私はこの裁判をする上において、思想上世の中の非難を受けるような持主であると、それがやはり裁判の実際の上に現われるのですから、そういう点はやはり何らかの方法によつてこれを監督し若しくは是正するというようなことについて力を用いる必要があるように思うのですが、それについてお考えを承わりましようし、いま一つ私の希望としては、御承知通り昔は所長とか院長とかいうものが、その部下判事を、その意に反しては別であるけれども、常に見ておつて、そうして所属を変えたりなんかするようなことをやつておつたのであるが、近頃ではそういうことができないようになつて、いわゆる裁判所会議にかけて所属をきめるというようなことになつたがために、いわゆる長官というものが昔のように監督権というものが十分に行われないようになつたがために、自然判事の中にそういう思想が放縦に流れるようなものがなきにしもあらずというように我々は外部から見て思うのでありますが、今この所長とか若しくは長官とかいう人が、実際その法廷に出て裁判をしているところを監督する意味において、その裁判長うしろから実際の審理を傍聴するというようなことを盛んにやつておりますかどうですか。それからそういう長官がみずから裁判長になつて実際裁判審理に当つておりますかどうですか。それから中央から地方にそういうような任務を果すために出張して、そうして実際の裁判うしろから傍聴して、そのやり方のいいとか悪いとかいうことを批判するというようなことをやつておりますか、どうですか。そういう点について一つ意見を承わりたい。
  24. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 終戦後具体的な裁判について、裁判官としてそういう思想を持つてつては困るというような裁判官があつた例がございませんししますから、具体的にこういう例があつたということを申上げることはできませんけれども、現在の状態におきましては、やはり最初にも申上げましたように、あまりにかたより過ぎている思想持主ということは裁判官たるの適格について疑いがあることはもちろんでございますから、そういうような行動を具体的にいたした場合には、最高裁判所としては、やはり司法行政上の監督権の発動をして、司法行政上の面でやはり個人的な監督をするということにならざるを得ないと思います。  それから所長或いは長官が、法廷うしろに立つて裁判官裁判ぶり監督したり、又は思想的方面について注意をしたりすることが実際行われているかというようなお尋ねでございますが、これは具体的な裁判について仮に監督者地位にありましても、具体的に裁判内容立入つてああせいこうせいということはこれは法律上できないことは御承知通りでございます。ただ一般論抽象論として問題になつた場合には、それを取上げて議論をするということはございますけれども、具体的な事件について内容立入つて云々するということは、これは勿論差控えなければならないことでございます。ただ外面的に法廷執務ぶり仕事ぶりを見るというようなことは、これは非常にたくさん……例外なく行われているとは申上げられないと存じますが、それぞれの所長長官等がいろいろな形で、いろいろな機会において、やはり自分所属裁判官執務ぶりは注意いたしていると存じております。大体その程度であります。
  25. 一松定吉

    一松定吉君 私の希望するところは、つまりその監督地位にあるとか、或いは上司とかいう者が、自分所長室や、長官室にこもつて行政事務だけして盲判だけ捺しているというようなことがよくない。だからしてそういうような室から出て、そうして自分は直接裁判事務に携わつて部下の者に範を示すとか、或いはうしろからその実地裁判ぶりを見て、具体的な事実についてああせい、こうせいという指揮権のないことは、これは議論はないが、抽象的にああいうようなときにはこういうような処置を下すべきじやなかろうか、或いはこういうようにすることのほうが効果的ではなかろうか、こうしたほうが事の真相を把握するのにいいのではなかろうかというふうに、先輩が後輩を指導するような建前にならなければ、本当にこの裁判というものは改善はできんと私は思うが、そういうことを所長とか、或いは高等裁判所長官とかいうようなかたが実際やつておりますか、どうですか。やつておらなければそういうようにやるように一つ仕向けて、そうして裁判改善ということに力を尽すように働きかけてはどうですか。こういうことを私は伺つているわけであります。
  26. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) その点についてお答えを申上げます。御承知通り戦争前の司法省時代裁判所におきましても、控訴院長となり、所長となると、実際司法行政の面で手数が多いので、所長控訴院長が実際自分裁判長となつて裁判をするということの例が殆んど見られなかつたことは御承知通りでありますが、戦争後も司法省裁判所が分離いたしまして、いわゆる裁判所司法行政を、裁判所みずからの手でやらなければならない形になりましたので、所長長官司法行政上の仕事というものはむしろ戦前の裁判所に比して質、量とも多くなつてはおりますけれども、決して少くなつてはおらない状態なんです。そういう状態にありますものですから、事実上所長長官が全部他の裁判官と遜色のない程度仕事の量を引受けてみずから裁判をやり、みずからそれを通じて、後進を裁判面を通じて指導しろ、こう言いましても事実上やれない面がございます。併しながら、それならば全部が司法行政に没頭しておつて何にも裁判をしておらないかと申しますと、これは大体仕事は、四割から五割程度所長長官はそれぞれ民事、刑事又は家庭の事務ということをやつておるようです。統計上から見ますと、百人のうち四十四、五人くらいは事実上裁判長として、或いは単独判事としてやつておるようでございますが、併し今御指摘になりましたように、若い経験の少い裁判官がだんだん経験が豊かになるには、どうしても立派な裁判長の下に陪席として一緒に仕事をする。そういう実務を通じて実際の法律家として成長するのが一番これが確実な方法でありますし、又他に得がたい方法でありまするので、所長長官あたりがみずから陣頭に立つてそういう若い判事を引連れて裁判に専念をするということは、最高裁判所のほうとしてもそうあるべきだとして常に望み、希望をしておる状態でございます。で最近行われました長官の会同においても、そのことをテーマにいたしまして、最高裁判所裁判官としては司法行政事務ということの重荷は確かにあることは認めるが、それはできる限り工夫することによつてその重荷を軽くし、最高裁判所においても又その重荷をできるだけ軽くするような工夫をするから、所長裁判長はできるだけ裁判事務をみずからとつて後進の指導も併せてするように、そういうことを希望しております。
  27. 一松定吉

    一松定吉君 そういう方針で行われておれば結構ですが、今あなたのお答えのうちに、司法事務が非常に多いので、法廷に出て自分から裁判に携わるということは困難な事情がたくさんあるのだというようなことは、これは一つ法制の上において改めたらいい。そういう司法事務は他の属僚に任せるような法律をこしらえて、成るたけ所長とか長官とかいうような人は、裁判事務に重きを置くというような方針に法制上の建前を切替えるようにしたらいいのじやないか。又そういう司法事務というものは何も所長長官に任せなくても、昔のように単独判事とか、今で言えば何々官とかいうような人の上のほうに任せればいいので、成るたけ我々の望むところは、裁判官裁判に力を入れるというようなことにして、今おつしやるような、四十何%ぐらいは法廷に出ているが、その他のものは司法事務が多いから、そのほうに没頭されているというようなことは、それは法制を改めて、そういうような司法行政というようなものは成るたけほかのほうの事務官に委せるというような法制にして、所長とか、長官というようなものは法廷に出て、そうして自分が直接裁判の衝に当つて範を示し、国民信頼を得るというようなふうに法制を変えればいい。そういうようなことは、今現行法があなたの言うようなことになつておれば、それを一つ是正して、立法の手続によつて変えて、成るたけ今あなたが所長長官に訓示をして成るだけそういうようにしてもらいたいということを、成るたけではなくて、法制上そういうようなふうに仕向けるように法律を変えればいいわけだからそれを一つ考えてもらいたい。  それからその次に一つ伺いたいのは、判事補の補というような字をこの前改正されるときにこしらえて、十年間は判事補であつて十年以上が判事になるのだというようなことは、国民の、裁判を受ける上から判事補裁判を受けるというようなことは甚だ面白くないから、この判事補の補というような字は取つて、やはり判事とする。補という字があつて、如何にも本当の判事でないような感じを国民に与えるのはよくないからこれも一つ考えてもらいたい。これも又裁判官には判事補という補をつけて、検事には検事補という補がない。こういうことは面白くないから、判事補に補があれば検事補でもいいが、補というのは面白くないから、やはり検事検事判事判事として昔のようにやることがいいと思う。これが三つ。  長くなるから一問一答をしませんが、私の考えでは裁判官というものが役人のうちで一番地位が高い、国民が一番信頼すべきものが裁判官だというような考を持たせるには、裁判官の待遇をよくしなければならない。それがために今裁判官は他の官吏と変つて別表になつて待遇がよくなつているようでありますが、まだ足りない。私の言うのはもつと裁判官の待遇をよくし、旅費とか日当というような、出張についても体面を汚さないような待遇をすれば、だんだん人材が集つて来る。今はこういうような朝鮮で弁護士をしておつた人とか、満洲におつて律師をしておつたというような人を集めて来てやるのも結構ですが、内地にいる弁護士で、進んで俺は裁判官になろう検事になろうという考えを起させるには、裁判官なり検事の待遇が上げれば進んでやつて来る。今のような待遇では弁護士のほうがいいからというのでなかなか人材が集まりませんので、そういうような待遇をよくするほうにも考慮をめぐらしてもらいたい。必要があれば予算もたくさん取り、法律も改正するというくらいな気概を以ておやりになることは、司法の向上発展に寄与すること甚大なりと私は思いますが、一つそういう方面にお力を尽して頂きたい。我々はおのずから自分司法官であつたから言うのじやなくて、本当に役人の中で一番信頼すべきものは司法官、裁判官だからそういうような人の待遇をよくして人材を集めるということに力を用いるようにして頂いて、法制の上においてこれはこうするよりこうしたほうが国民信頼を集める上に適当だと思うようなことがあれば、どしどし法律を改正してやるように御留意を賜りたいことを特にお願いして私の質問を終ります。これについてあなたの御意見があればなお承わることができれば幸いです。
  28. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 大変裁判所に対して御理解のあるお言葉を頂きまして感謝いたしております。裁判官の待遇についても、結局裁判官の人材補充をどこから求めるかということになれば、御指摘になりましたように在野法曹からその人材をもつて来る以外にないわけでございますが、そのためには現在の裁判官の給与が、すぐに在野法曹から優秀な弁護士を招致するについては障害となるのは御承知通りでございます。で裁判所としてはできる限り給与の面も機会あるごとに議会のほうにもお願いをし、大蔵省のほうにもお願いをしているわけでありますけれども、なかなか実現ができないわけであります。将来ともそういう面については私どもといたしましてもできるだけ努力して、裁判官の待遇方法についてもよりいい待遇を実現するように努力いたすつもりでございますので、議会においても一つよろしく御援助を願いたいと思います。
  29. 一松定吉

    一松定吉君 その執務の点について、長官所長が直接裁判をやるということも……。
  30. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 今申し落しましたが、裁判官会議司法行政の主体となつているという建前上、その総括者たるところの長官所長司法行政事務が殺到するという面が法制上あることは、これは否定できないわけでございます。それならこの司法行政事務をすべて長官所長又は他の裁判官から除いて、これを一般の事務官の任務としてさせる、そうして全部の裁判官裁判事務にのみ専念をするということは、これは確かに理想の形でありまして、私どももその理想にできるだけ早く近付きたいと努力しておりますけれども、これは一方においてやはり司法行政事務を全部引受けるところの裁判官以外の職員の素質というようなことも無視することができませんもので、そういう裁判所内部の職員の質というようなこととも睨み合せつつ、徐々にその理想に近付いて行かなければならないというような現状でございますけれども、これはなお我々としてもでき得る限り工夫をして、その理想形にできるだけ早く到達をするように努力いたしております。
  31. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 本案については更に質疑を続行することにいたしまして、本日はこの程度にいたします。   —————————————
  32. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 次に、人権擁護委員法の一部を改正する法律案議題に供します。  本案については、前回提案理由説明を聴取いたしておりますので、これより直ちに質疑に入りたいと存じます。  本案については更に質疑を続行いたすことにいたします。   —————————————
  33. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 次に、司法試験法の一部を改正する法律案議題に供します。  本案につきましても、前回の委員会において提案理由説明を聴取しておりますので、質疑に入りたいと思います。質疑のおありのかたの御発言を願います。  本案につきましては更に質疑を続行することにいたします。   —————————————
  34. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 次に、航空機抵当法案議題に供します。  本法につきましては、前回提案理由及び内容説明を聴取いたしたのでありまするが、本日は更に我が国の民間航空の現況につきまして政府より説明を聴取したいと存じます。粟沢航空局監理部長
  35. 粟沢一男

    政府委員(粟沢一男君) お手許にお配りしました民間航空の現状と申しますプリントによつて説明申上げたいと思います。  御承知のように、日本の民間航空は今次戦争の終結いたしましてから、連合軍によりまして一切禁止を受けました。航空機を生産してもいけない、飛ばしてもいけない、研究してもいけない、所有してもいけないというふうな、非常にきつい制限を受けました。航空活動というものは一切禁止されたわけでございます。その後御承知通り平和条約の発効と同時にその制限が解除せられまして、只今は一切の制限が撤廃されております。従いまして、航空活動は完全に自由であるという現状になつております。併しながら、この禁止制限を受けました期間がすでに七年になんなんとしておりまして、この空白時代に各諸外国は非常な進歩発達をいたしております。従いまして、我が国といたしましては、この遅れを取戻すために非常な努力をしなければ世界各国に伍して行けないというふうな実情でございます。  例えば、この二頁にも書いてございますように、すでに世界各国から現在日本に乗入れております民間航空の定期運送事業者が十一社ございます。英、米の先進国は勿論、オランダ、濠洲、更には極東のフイリピン、タイ、台湾の中国等からさえ、すでに週何回という定期航空が乗り入れておる現状でございます。御承知のように、最近日本でも成るべく速かにこの国際航空界に乗出したいということで準備を進めておりまして、本国会にも航空会社の法案を提出いたしております。それに対しまして政府から十億の出資をいたして、民間の現在十億の予算を持つております日本航空会社の営業を全部これに出資せしめて、約二十億の新会社で国際線を始めたい、大体現在の予定ではこの十一月に第一番機を飛ばしたいというような予定で、只今法案を提出し、会社の準備を進めております。  現在日本にございます定期航空運送事業者といたしましては、御承知のように日本航空一社でございます。これは極く最近まではアメリカのノースウエストという会社の飛行機をチヤーターいたしまして、操縦士もアメリカ人を乗せまして、毎日運航しておつたわけでございます。昨年来この飛行機を日航は自分で買入れまして、遺憾ながらまだ操縦士は日本人にはできませんけれども、現在操縦士につきましても日本人を養成中でございまして、成るべく速かにパイロツトも日本人を使うということで努力を続けております。現在の線は、日航の線といたしましては、御承知のように、南は九州福岡、北は札幌まで、毎日二往復運航いたしております。幸にいたしまして、最近の営業成績は非常に良好でございます。今まで伝えられておりましたような、日航は赤字会社であるというふうな状態を逐次改善いたしまして、現在の状況が進めば、国内線を行なつておる限りでは、だんだん黒字ができるような状態になるのではないかというような程度にまで改善いたしております。最近は欠航も殆んどございません。九八%、九%という運行率を挙げております。この資料には今までの損失が一億二千万円ということになつております。営業状態は、只今申上げましたように、逐次改善されております。なお、ここに書いてございますように、諸税その他を適当に減免いたしまして或る程度の補助政策をとるならば、十分成り立ち得るのではないかという程度の現状に至つております。  次に日本航空以外の会社でございますが、昨年施行せられました航空法によりますと、定期航空運送事業以外に、不定期事業、或いはそのほかの宣伝航空、或いは魚群探見、写真測量等の使用事業と申すのがございまして、不定期といたしましては現在日航を含めまして四社、それから使用事業等はここに十五社と書いてございますが、現在では十六社免許を受けて、それぞれ宣伝飛行その他の事業に従事いたしております。  次に飛行場の現状でございますが、この八頁にも書いてございますように、我が国には約九十余りのいわゆる飛行場というものがございまして、そのうち五十余の飛行場は御承知のように米軍の管理下に現在ございまして、民間飛行場としましては極くまだ数が限定されております。勿論米軍の管理しておりまする飛行場も、例えば板付、札幌或いは大阪のようにそれぞれ共同使用にはなつてございますが、なお今後ここに書いてございますように、現在の幹線以外の地方ローカル線を実施するといたしますと、まだまだ地方主要都市の近所の飛行場というものは不十分でございますが、これらの整備を今後十分いたして行かなければならんという実情でございます。  次には、飛行場以外に現在の少くとも定期航空運送というふうなものを実施いたしますためには、航空無線標識或いは航空燈台その他の航空保安施設というものが絶対必要な条件になつております。これも遺憾ながら現在アメリカの空軍が使用いたしております飛行場以外の飛行場では未だ十分ではございません。今後やはりそれらの整備を相当いたしませんと、いわゆる民間ローカル線といつたようなものはなかなか発達しないというふうな状況ございます。特に航空保安施設の中でいわゆる航空交通管制というのがございます。これは多少御説明を要するかと思いますが、相当航空事業の発達しておりました日本におきましても、戦争前には殆んど行われておらなかつたものでございまして、これは簡単に申上げますと、現在航空機が空を飛びますのに最も適当な航空路というものを指定してございます。幅約十マイル程度の空間でございますが、これを例えば東京、大阪間であれば館山へ出まして、大島の上空を通つて、焼津の上空を通つて伊丹飛行場のほうへ入るというふうな航空路を指定してございます。その航空路の要所々々にそれぞれラジオ・ビーコン或いは航空燈台といつたような、必要な保安施設を完備いたしましてそのビーコンなり燈台なりを頼りに飛行機が飛べば、曇天の日でも或いは夜でも安全に飛べるというような施設がいたしてございます。併し一方そういう航空路を指定いたしますために、航空機は上りも下りも全部その航空路を、殆んどその航空路を飛ぶという状況でございまして、これが雲の中を飛ぶ、或いは夜飛びますときには衝突を防止し、その他の危険を防止する必要がございます。そのために現在日本全国の空を大体二分いたしまして、東のほうは東京の近所の入間川という所にございます、西のほうは福岡の板付に航空交通管制局というものを作りまして、日本全国の空を飛んでおる飛行機は全部その管制局でその所在をキヤツチいたしまして航空交通の安全を図つております。なお各飛行場につきましては主要飛行場に全部航空管制燈がございまして、飛行場に入ります場合の待機或いは滑走路の発港その他につきまして全部一機々々管制官の指導によつて航空機が行動する、こういう建前になつております。従いましてその航空交通管制官を、今までなかつたものを、新らしく日本といたしましては養成し、これを配置しなければならんという問題がございます。只今全部米軍の要員がやつております。それをできるだけ早くこちらへ移管を受けますために、只今交通管制官の養成を行なつております。この養成ができまして、米軍としても、アメリカの空軍機を日本の管制官の管制によつて動かしても差支えないという認定を得ました暁は、全部日本側にこれを移管されるという申合せになつております。  次にパイロツトその他の乗組員の現状でございます。これは御承知のように戦争まではいわゆるパイロツトというものも相当ございましたが、只今申上げましたような交通管制、或いは今までのように殆んど飛行機というものは勘で飛ぶというようなものでなくて、すべてレーダーその他計器によつて或いはラジオ・ビーコン等の助けによつて飛んでおります現在の状況では、曾てのパイロツトも相当の或いは再訓練を受けなければ、そのまま旅客機その他に使えないのであります。現在それらの再訓練に努めております。なお一部の定期航空用の操縦士は、アメリカにも派遣いたしましてそれぞれ養成している状況でございます。今年度予算に約五千万円の養成補助費を提出いたしております。  次に現在の登録航空機の現状でございます。航空法によりまして登録を受けました飛行機は、六月二十四日現在で百二十九機に上つております。資料では少し古いので少ない数になつておりますが、現在は百二十九機でございます。そのうちで単発の飛行機が四十八機、双発の飛行機が九機、四発が七機、回転航空機、これはヘリコプター、でありますが、十一機、グライダーは五十四機、合計百二十九機が現在の数でございます。  なお御承知のように、飛行機というものは国際航空に乗出しまして殆んど初めてその有効性が出るわけでございます。現在の状況では国際民間航空条約というものがございまして、これによつて殆んど世界主要国全部条約加入国になつております。只今その条約の常設機関であります「国際民間航空機関」とその十七ページに書いてございますが、その総会がイギリスで開かれておりまして、その総会で我が国は加入を認められる予定になつております。なおこの条約に加入いたしまして、更に具体的に例えばアメリカへ乗入れる、或いはイギリスへ乗入れるという場合には、アメリカ或いはイギリスと航空協定というものを結びまして、それによつて事業者を指定して、相互に許可し合うという建前になつております。現在我が国が航空協定の調印をいたしました国は、ここにも書いてございまするようにイギリス、アメリカ、オランダ、スウエーデン、ノルウエー、デンマーク、なお最近タイ国とも調印ができました。いずれも航空協定は今国会に御承認得るべく提出いたしております。なお引続きましてフランス、ヴエトナム或いはベルギー、カナダ、その他フイリピン或いは中国、インドその他ともそれぞれ双務協定を締結すべく目下交渉を進めております。  なおその資料の最後には日本以外の航空事業のことも書いてございます。いずれも御承知のように、初期におきましては相当程度政府の助成をいたしました。例えば資本金も五〇%を超える、或いは百パーセントの政府出資をいたしている。或いは毎年相当の補助金を交付いたしまして、その事業の補助をいたしております。或いは補助の方法といたしまして、航空郵便の逓送料を、例えばアメリカにおきましては最低四十何セントという一トン一マイル当りの補助金、最高は七ドルを超える逓送料を出しております。これは明らかにその差額は航空補助金であるということになると思うのであります。これはアメリカの実例でございます。そういうふうな補助政策をとつて、それぞれ民間航空事業の振興に努めております。我が国といたしましてもできるだけそういう配慮をいたしまして、今後立遅れた日本国際航空事業の振興のために努めたいと存じている次第であります。  甚だ簡単でごいざいますが、現状の説明をいたしました。   —————————————
  36. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 本案に対する質疑は次回より行うことにいたしまして、次に刑法等の一部を改正する法律案議題に供します。本案の内容について政府より御説明願います。斎藤保護局長
  37. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 刑法等の一部を改正する法律案の概要について御説明を申上げます。  第一条は、刑法の一部を改正するもの、第二条は、それに関連する手続を改めるために刑事訴訟法を改正することになつております。第三条は、犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案、第四条は更生緊急保護法の一部を改正する法律案、こういうことになつております。  第一条の刑法二十五条の改正の要点は、刑法の第二十五条は執行猶予の要件を規定いたしておるわけでございます。現行法におきましては、前に禁錮以上の刑に処せられていないこと、更に或いは禁錮以上の刑に処せられておる場合には、刑の執行を終り、或いは免除を得てから七年間事故がないということのいずれかでなければ、執行猶予の言渡ができないことに相成つております。この点を改正いたす第一点といたしまして、前に禁錮以上の刑に処せられて七年以内とありますのを五年というふうに改めて、その期間を短縮いたしたのでございます。この五年につきましては、現行法の累犯に関する刑法第五十六条及び罰金の前科抹消に関する刑法第三十四条ノ二において、いずれも五年と規定いたしておりますし、或いは統計上五年以上経過して再犯を犯す例か少い等を考慮いたしまして五年といたした次第でございます。  次に、執行猶予の条件の緩和の第二といたしまして、現行法におきましては、執行猶予中の者は執行猶予の欠格者と相成つておるのでありまするが、これを改めまして、執行猶予中のものに対して禁錮以上の刑の言渡があつた場合においても、一年以下の懲役又は禁錮の言渡で、情状特に憫諒すべきものがあるときは執行猶予が可能である、こういうように改めようとするものでございます。但し、第二十五条ノ二により、二度目の執行猶予に処せられるというような場合には、必要的に保護観察に付せられますので、その保護観察中に更に罪を犯した、こういう場合には重ねて執行猶予はできない、こういうふうにいたしてあるわけでございます。  次に、この但書に「第二十五条ノ二」ということを特に引用しておりまするのは、現行法におきまして保護観察に付せられる場合には、執行猶予以外の場合でもあるのでございます。現行法によりますると、家庭裁判所から保護観察に廻されるもの、或いは仮出獄中は保護観察に付せられることに相成つております。或いは仮退院中保護観察に付せられることになつております。これらの他の種類の事由により保護観察に付されておる場合は、その期間内において犯した罪についてはこの制約を受けない。従つて仮退院中に保護観察を受けながら犯罪を犯したという場合には、やはり執行猶予は可能である、こういうふうにいたすために、特に但書におきまして「第二十五条ノ二」を引用いたしてある次第でございます。  次に「第二十五条ノ二」は、執行猶予者に対して保護観察をすることを規定いたしておるのでございまして、この内容は、第一回目の執行猶予の場合には、裁判所の認定によつて裁判所が事案を審査いたしまして、必要ありとする場合において初めて付け得る、こういうことにいたしたのでございます。後段におきましては、前条第二項、即ち執行猶予中に重ねて一年以下の懲役又は禁錮の言渡を受け、そして執行猶予に付されるという場合には、必ず保護観察を付ける、こういうふうにいたしておるのでございまして、第二項の「保護観察二付テハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム」とありまするのは、現行法におきましては、犯罪者予防更生法によりまして保護観察の内容手続等を規定いたしております。それを一部改正いたしまして、この執行猶予中の保護観察を規定いたしますることをここに明らかにさしておるのでございます。  次に、第二十六条でございます。現行法の第二十六条は第一項におきまして必要的取消、必ず取消をしなければならない場合を規定し、第二項においては裁量によつて取消をなし得るという場合を規定いたしております。これをこの改正案におきましては第二十六条を必要的取消の場合に限りまして、新たに第二十六条ノ二を設けまして、裁量的取消の場合を規定いたしているのでございます。その概要は一、二とも同様でございますが、執行猶予の期間内に罪を犯した者でありましても、この改正案によりますると執行猶予が可能でございますので、その場合は取消をしない。その実刑の場合において必要的に取消すというふうに執行猶予制度の要件の緩和に応じまして必要的取消の場合を改正いたしたのでございます。  第二十六条ノ二は、只今申上げましたように裁量的な場合でございます。第一号の罰金の場合は現行法と同様でございます。第二号は、新たに入つたものでございます。執行猶予中裁判所の言渡によりまして保護観察に付された者が遵守しなければならない事項を遵守しないときを裁量的取消事項として掲げたのでございます。この遵守すべき事項といいまするのは、犯罪者予防更生法によりまして保護観察中の者が必ず守らなければならない事項を四項目掲げてございます。それを指しているのでございます。その内容は、第一号といたしまして、「一定の住居に居住し、正業に従事すること。」、第二号といたしましては、「善行を保持すること。」、第三といたしまして、「犯罪性のある者又は素行不良の者と交際しないこと。」、第四といたしまして、「住居を転じ、又は長期の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察を行う者の許可を求めること。」この四項目を遵守すべき事項といたしております。この遵守すべき事項を遵守しないという場合には、取消しをし得るといたしております。実際におきましては遵守すべき事項を遵守せず再犯の虞れが多分にあるという場合に初めて執行猶予の取消ということが行われ得るものと考えております。  第二十六条ノ三は今回の改正によりまして執行猶予中重ねて執行猶予の言渡を受けるということがあるわけでございます。この場合に一つの罪については執行を受け、一つの罪については執行猶予中である。即ち刑の執行中に執行猶予期間が同時に進行するということは、制度上その本旨に合わないものと考えられますので、一つの執行猶予について取消のあつた場合には他の執行猶予についても同時に取消さなければならない、こういうことにいたしたのでございます。実際問題といたしまして一例を挙げますれば、一つの執行猶予の判決を受けておつて重ねて罪を犯して、そうしてそれが一年以下の言渡を受け、而も情状が酌量されまして重ねて執行猶予に相成り、而もこの法律の第二十五条ノ二の規定によりまして、保護観察が付けられたその場合に、その保護観察期間中に遵守事項に違反し、而も重大なる遵守事項違反であつたというために取消すということがございますが、その場合には第二の執行猶予についてのみ取消ができる、そうして第一のものについては取消ができない、二十六条の三がございませんと取消ができない、こういうことに相成りまして、制度の趣旨から言つておかしいというふうに考えられますので、二十六条の三をこういうふうに置いたのでございます。  二十九条の改正は、これは仮出獄の取消事由でございます。現行法は仮出獄の取消事由の四といたしまして、仮出獄取締規則に違背したとき、こういう趣旨にございますが、御承知のように改正案におきまして、二十六条の二の第二項が同一の事項を指しているのでございまして、即ち二十九条の一項第四号の仮出獄取締規則というふうに申しておりまするのは、現行法の犯罪者予防更生法の遵守事項を守らなければならないというのが仮出獄取締規則である、こういうふうになつているのでございまして、これと同じ刑法の二十六条の二におきましては遵守すべき事項を遵守しない、こういうふうにはつきりと表現いたしましたので、同じ刑法の中で同じ事柄を別に表現するということは甚だ体裁がおかしいので、この二十六条の二の第二号と項目を合せまして二十九条の第一項の四号をかように改めたのでございます。  次に第二条、刑事訴訟法の一部改正について申上げます。刑事訴訟法三百三十三条は判決の言渡しについての規定でございます。三百三十三条の第一項は、被告事件について犯罪の証明があつたときは判決で言渡しをしなければならない。第二項といたしまして刑の執行猶予は、言渡しと同時に判決で言渡しをしなければならないというのであります。その二項の後段に刑事訴訟法二十五条の二、第一項の規定により保護観察に付する場合も同様、こういうふうにしまして、執行猶予の判決で言渡しをする、又執行猶予に伴う保護観察も同じように判決でその言渡しをしなければならない、こういうふうに改めたのでございます。  第三百四十九条の改正点は、現行の三百四十九条の第一項は執行猶予の取消の手続を規定いたし、検察官裁判所に請求をする、そうして第二項におきまして、検察官の請求があつたときは裁判所が被告人又はその代理人の意見を聞いて決定をする、こういう規定に相成つております。その第二項を次の新設の第三百四十九条の二に譲りまして、新らたな三百四十九条の第二項といたしまして、保護観察中のものが遵守事項に違背をして取消すという場合には、検察官から裁判所に請求をする建前でございますが、保護観察中のことでございますので、その検事裁判所に対する執行猶予取消の請求は、保護観察所長の申出によつて検事裁判所に請求するというふうにいたしたわけでございます。結局保護観察中遵守事項に違背したかしないかということについて、最も責任を持ち最もよく内容を知つている者は、その保護観察の責任者でございます。保護観察所の長でございますので、その保護観察所長の申出に基いて、検事裁判所に遵守事項違背により執行猶予の取消をするようにいたしたのでございます。  新設の第三百四十九条の二は、執行猶予取消の裁判所の決定の手続を規定いたしたのでございます。第一項は現行法通りでありまして、通常の場合今度の遵守事項違背でない、遵守事項違背の理由以外の確定判決による執行猶予の取消の場合、在来からでございます執行猶予の取消の場合には現在の三百四十九条第二項と同様に、裁判所検察官の請求によつて本人又はその代理人の意見を聞いて決定をしなければならない。第二項以下におきましてその理由が遵守事項違背であるという場合には、特に慎重な手続を規定いたした次第でございます。その趣旨は在来の執行猶予の取消は確定判決によつて取消をいたすのでございますから、内容等が非常にはつきりはいたしておりますが、遵守事項違背ということにつきましては、内容についていろいろな角度からいろいろな見方をなされ得ることになりますので、本人に不利益を与えることのないように慎重な手続を規定いたしたのでございます。即ち第二項におきましては検察官の請求が刑法二十六条の二の第二号即ち遵守すべき事項を遵守しないという規定による執行猶予の取消を求める場合であつて、本人からの請求がある場合には、口頭弁論を経なければならない。第三項におきましては、口頭弁論を経る場合には、弁護人を選任することができる。更に第四項におきまして、口頭弁論の場合におきましては検察官裁判所の許可を得て保護観察官に意見を述べさせることができる。保護観察について責任を持つ、保護観察をいたして来た保護観察官に当該事件についての意見を述べさせることができる、こういうふうにいたした次第でございます。末項は第一項の執行猶予の取消の決定に対しては、即時抗告を認めた次第でございます。  次に第三百五十条は、これは犯罪の併合罪の一部が大赦になつた場合に、残つた大赦にならなかつた分について分離決定をして新たに刑をきめてもらう、この手続でございますが、これは前の条文三百四十九条の改正によりまして条項を整理したにとどまります。内容は現行法と同一でございます。  次に第三は、犯罪者予防更生法の一部を改正するものでございまして、三十三条は保護観察の対象として現行法三十三条が四種類のものについて規定をいたしております。第一号が少年法による家庭裁判所の保護観察に付せられた者、第二号が少年院から仮退院中の者、第三号が仮出獄を許されている者、そうして第四号が現行法におきましては十八歳未満で執行猶予の言渡しを受け執行猶予中の者、こういうふうになつておりまするものを刑法の改正によりまして、十八歳以上の一般成人につきましても保護観察に付せられることに相成りましたので、刑法二十五条の二第一項の規定により保護観察に付せられたるものと改正をいたした次第でございます。  次に、第四十一条の改正は、現行法は保護観察を受けている者について審理の必要なある場合には、保護観察所の保護観察の責任者が裁判官の発する引致状によりまして引致をすることができる、こういうふうに相成つております。そして現行法は地方委員会に限つておりまするが、今回の改正によりまして裁判所の執行猶予によりまして保護観察に付せられた者は保護観察所の長が保護観察の責任を負うことに相成りましたので、この引致の権限を地方委員会に加えまして保護観察所の長を加えた次第でございます。  次に、第四十五条は留置の規定でございます。非常に条文が前後いたしまして非常に読みにくいと存じますので、大体の趣旨を御説明申上げたいと存じます。現在保護観察中に留置を許されている場合がございます。これは仮出獄中のものが仮出獄の取消の必要を生じまして、その審理をする必要を生じまして、どうしても身柄をとめて置かなければならないという場合、或いは仮退院になつた少年がどうしても保護観察ではうまく行かない、このままに置くならば、更に大きな犯罪を犯す虞れもあるというような場合におきまして、さような仮退院中のものについて少年院に戻し収容を家庭裁判所に申出でなければならないという場合がございまして、これらの申請をしなければならない場合がございまして、これらの戻し収容、或いは仮出獄の取消のために審理を行う必要がある場合に留置をなし得ることに相成つております。今回執行猶予中の者につきまして保護観察をいたすことに相成り、而も執行猶予の取消の一つ理由といたしまして遵守事項の違背による取消事由を認めようとしたのでございます。現在執行猶予の取消は確定判決を受けた者についてのみ取消ができるということに相成つておりまするので、現在までは執行猶予の取消は対象者が全部刑務所に現実に入つているという場合に取消ということの問題が起つて参りましたので、身柄をとめるという必要はなかつたのでございますが、今回執行猶予の要件を緩和し、同時に執行猶予中必要なるものについて保護観察を受ける、而も遵守事項違背によつて犯罪を犯す前に、取消をするということになりますると、場合によりましては身柄を拘束しなければならない場合がございますので、この身柄の拘束の留置の規定に、この保護観察中検察官に保護観察所長が取消の申出をするという場合に、必要に応じまして、やはり裁判官の発する引致状によつて引致のできる規定に改正いたそうとするものでございます。その期間は従来仮退院の戻し収容、或いは仮出獄の取消の場合に、十日又は二十日というふうに期間が定めてございます。この十日と申しまするのは、仮出獄の場合は十日でございます。これは委員会自体が仮出獄の取消権がございまするので十日といたしておりまするが、家庭裁判所の決定を待たなければならない仮退院の南し収容につきましては二十日といたしております。これを大体において踏襲いたしまして、そうして執行猶予中の者について遵守事項違背で取消をするという場合には、保護観察所におきまして十日、そうして裁判所において十日、最長二十日を原則といたし、現在の家庭裁判所が仮退院の少年についてやるのと同様にいたしております。但し第四項以下におきまして、口頭弁論を経なければならない。本人の請求があつた場合には口頭弁論を開かなければならないことにいたしましたので、若干その間裁判所の決定に日数を要するものと想定されますので、更に十日、結局口頭弁論のない場合には現行法通り通じて二十日、併し口頭弁論の請求を本人がいたし、口頭弁論の手続をやるというふうになつた場合には、更に裁判所は決定で十日間に限つて延長する、結局通じて三十日、こういうふうにいたしたのでございます。  更に第五項におきまして、先ほど御説明申上げました中にございましたように、執行猶予の取消の決定につきまして、即時抗告を認めましたので、本人から即時抗告があつた場合には、抗告裁判所の決定があつて、そうして確定するまでの留置することができる、こういうふうに第五項をいたしたのでございます。但しその原決定が取消すという決定である場合においてのみ抗告裁判所の決定まで留置ができる。即ち換言すれば、原裁判所検察官の請求に対して取消さないというような決定をいたし、更にそれに対して抗告するという場合には留置は継続できない、こういうふうにいたした次第でございます。  第六項は、かような留置の規定によつて現実に留置された日数は、執行猶予が取消される場合におきましても刑期に算入する、こういう規定にいたしたのでございます。  第四十六条の規定は、これは保護観察所の長が遵守事項違背で検察官に申出をする場合の手続規定でございます。  次に、第四条の更生緊急保護法の改正でございます。更生緊急保護法と申しまするのは、刑事事件によつて身体の拘束を受けた者が刑務所から出されたという場合、而もその場合が満期で出た、或いは執行猶予の判決を受けて出たという場合には、保護観察ということはできませんので、本人の申出によつて本人に必要な保護を加えるという法律でございまして、結局満期で出たが、どうも行くところがないという場合に、本人の申出があれば、本人に対して国が本人の再犯なからしむるために保護をなし得る、こういう法律でございます。この法律の第一条の第三号におきまして、現行法におきましては十八歳以上の執行猶予者は保護観察がつきませんので、この法律がなければ、国としては保護したくてもできない。それでその保護は本人の申出によつて保護ができるために、十八歳以上で執行猶予の言渡を受けた者について、本人の申出によつて保護がなし得る、こういう規定でございますが、これを改正いたしまして第三号を「懲役又は禁こにつき刑の執行猶予の言渡を受け、保護観察に付されなかつた者」こういうふうにいたしたのでございます。この趣旨は、保護観察に付された者は、保護観察の内容といたしまして本人に指導と共に必要な保護を加えるということでございます。併しながら保護観察に付されなかつた者に対しましては、国として保護を加えるわけに行きませんので、保護観察の付かなかつた者は本人の申出によつて保護をなし得る、こういうふうに改正しようとするものでございます。  次に附則でございまするが、附則の第一項は、施行期日に関する規定でございます。  第二項は、経過規定でございまして、現行法によりますると、執行猶予になつた場合には保護観察を付けない、十八歳以上の者については保護観察が付かないことに相成つております。この法律によりまして初めて裁判所が任意的に、裁量的に、或いは必要的に保護観察を付けるのでございますが、このうちの任意の保護観察即ち第一回の保護観察につきましては、施行前の犯罪については適用しない。即ち保護観察が付けられることになりますると、遵守事項違背という従来にない取消しの理由も附加されることに相成りまして、不利益というふうに見られまするので、この第一回の任意の保護観察は法律施行後の犯罪に限つて適用する。但し第二度目の保護観察、即ち現行法では二度目の執行猶予は、執行猶予中の者については執行猶予をなし得ないものでございますが、二度目の保護観察は現行法ででき得ない有利な規定でございまするので、この点については適用がされることにいたしました。但し併合罪の場合を除外いたしたのでございます。  次に、第三項も非常に細かい点でございまするが、この法律施行の際に、現行法の犯罪者予防更生法第三十三条第一項第四号の規定によりまして、保護観察に付されている、即ち十八歳未満で懲役又は禁錮につき執行猶予の刑の言渡を受けて、そうして保護観察に付せられておるという者につきましては、現行法通り保護観察は付け得られる。併しその保護観察中に犯罪を犯したという場合には、第二十五条の二の規定による保護観察ではございませんて、この附則第三項による保護観察でございますので、重ねて執行猶予をなし得る、こういうふうにいたしまして本人に対して不利益な点は全然なく、本人に必要な指導と保護だけを在来通り加えよう、こういう趣旨でございます。  以上がこの法案の逐条に亙りまして概要を御説明申上げた次第であります。
  38. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 本日はこの程度にいたし、次回より質疑に入りたいと思います。  本日はこれを以て散会いたします。    午後三時十四分散会