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説明員(
塩見友之助君)
只今の御
質問に、そのままではございませんが、一応今年の今までわか
つております
病害虫の
発生状況等について一応の御
説明をして、その問題に移りたいと思います。第一の「
いもち」病におきましては、本年は五月下旬と六月上旬、六月下旬、七月中旬と、その後も七月の下旬、八月の上旬、しばしば未曾有の豪雨が襲来いたしまして、これは高気圧の配置の
関係が主でございます。
低温寡照と同様に、それらの
地方の
苗代又は
本田は
長期に亙
つて相当面積が浸
冠水をしております。これらの
地帯の稲の中で生残
つたものは浸
冠水の
程度によ
つて違うのでありますが、各種の
病害虫に対する抵抗力が著しく弱く
なつたばかりではなく、浸
冠水によりまして、
被害激甚のため、或いは再植をやるとか、或いは種を蒔き直すとかいうふうなことをやりまして、その場合の稲は勿論、又苗不足のために他
地方から移送しました苗も、特に各種の
病害に対する抵抗力は著しく減退するのであります。
従つてこれらのいろいろな理由から
水害跡地の稲は「
いもち」病の激発が必至でございますので、これが防除につきましては、当局において強力に指導をしておるような
状態でございます。又一方本年のつゆは著しく不順でございまして、例年に比べますると、
相当長期に亙
つて低温寡照の悪
天候が
経過いたしました。そのために稲の
生育は軟弱で且つ非常に遅れ気味であ
つたので、そのために「
いもち」病はすでに
苗代時期から
発生しまして、その
発生の型も最も憂慮すべきととろの激発型であ
つたわけであります。殊に
関東、
北陸以西の
地帯では
発生面積が著しく広汎に亙りまして、局部的には
相当の激甚の所もありまして、罹病苗をそのまま
本田に持込んで、
本田においてずり込み
状態を呈した
本田も
相当あ
つたわけであります。
従つて相当広汎に葉「
いもち」病の
発生を見まして、八月十五日現在の県の
報告の
発生面積は百十八万
町歩に達するという
状態でございます。次に二化瞑虫について申上げますと、前述いたしましたような悪
天候のために、
発生が
一般に遅れまして、六月下旬、
地方によりましては七月上旬にかか
つたところもありまして、即ちだらだらと例年に比べますと長い期間に亙
つて発生しておる、こういう
状態で、而も後期のつゆが比較的多くありましたわけです。
従つて一
化期の
発生面積の
程度においても、例年の数倍に達したところもあ
つたわけでございます。更に七月上旬の
低温寡照は娯虫の
生育に非常に好条件を与えたので、一
化期における
被害、即ち稲の
生育時期における
被害は極めて多く、今後八月中下旬から九月の上旬に亙りますところの二
化期における瞑虫の
発生は
相当に多いと予想されるわけです。現在も
発生をしておる
報告がどんどん来ておりますが、そこで二
化期における防除については万全の対策を講じつつあるような
状態で、八月十五日現在の県の
報告の
発生面積は八十九万
町歩というふうにな
つております。そのほかの
病害虫におきましても、今年の悪
天候に乗じまして、広
面積に異常
発生した
病害虫の主なものを申上げますと、
北陸、中国
地方の一部及び
四国地方の一部に稲の「くろかめ」虫、それから
北陸地方に「つまぐろよこばい」、中国
地方の一部に「いねどろおい」虫、各地の
水害跡地に白葉枯病がありましたわけでございます。このような近年稀に見る悪
天候に伴いまして異常
発生した主要
病害虫防除につきましては、「
いもち」病等の
病害に水銀粉剤即ちセレサソ石灰でございます。そういうようなものとか、
二化螟虫の害虫に対するところのパラチオン剤というような新農薬の有効なものの出現があ
つたわけで、これによりますれば防除は十分に行い得るような農薬が出現しておるわけでありますが、非常に突発的な異常な
発生であ
つたために、一時これらの農薬の
全国的な需給の不均衡によりまして、比較的に時期的に農薬の不足を招来したという
状態でございますが、現在は大体において県のほうにおいても農薬のできるだけの確保に努めまして、
穂首「
いもち」及び二化瞑虫の防除に努力しておる、こういうような
状態にな
つております。大体八月十五日までの
状態を申しますと、「
いもち」病につきましては、この赤の区域のほうがまあ大体ひどい
地帯でございます。県の
報告によりますと、四五%以上の
地帯でございます。青が三〇%から四五%までであります。北のほうに参りますと、その白いところが三〇%、併しながらこれは
穂首「
いもち」を含んでおらないのでございますから、今後
穂首「
いもち」が出やすい
地帯において、どれくらい出るかということははつきりいたしておりません。二化瞑虫につきましても同様に西南部においては今年度においてはずつとひどく出ております。これも青い線と、それから白いところが北に
従つて少くな
つておりますが、これもなお二化瞑虫のほうはこのうちには入
つておらないのであります。これは八月十五日現在の
状態でございます。それで
発生面積につきまして申上げますと、大体二十四年から五カ年間を申上げます。大体「
いもち」病につきましては二十四年が七十五万四千
町歩、それから二十五年が七十九万九千
町歩、二十六年が六十一万二千
町歩、二十七年が五十五万一千
町歩、それから二十久年、本年でございまするが、八月十五日現在でまだ
穂首「
いもち」が出ておらない時期でございまするが、その時期においてすでに百十八万
町歩という
報告にな
つております。それから二化瞑虫につきましては、二十四年が四十六万九千
町歩、二十五年が八十七万四千
町歩、二十六年が八十七万八千
町歩、二十七年が九十二万三千
町歩、それから二十八年は二
化期の瞑虫はまだ入
つておりませんが、それですでに八十九万三千
町歩というような
数字にな
つておるわけでございます。で、本年大体小笠原の高気圧の発達が遅れ、而も北のほうに
相当強い高気圧が早くから出現して、それで長い間の
低温寡照と
水害を起すような多雨をずつと継続して、八月の上旬にまで梅雨型の気象を続けたというふうな、こういう異状な気象のために稲が非常に軟弱にでき上りまして、それで害虫に対しても非常に湿度が高くていい条件を呈したというふうな
関係からして、今年の
病害虫は近年稀に見る異常な
発生でございます。で、財政的な措置を大体申上げますと、農薬費のほうは、大体全体を通じまして二十五年度が約二億二千万円
程度のものを財政的に出しております。それから二十六年度は三億三千三百万円
程度、それから二十七年が八億四百万円、それから二十八年度は十三億四百万円というふうに逐次増加しておるわけでございます。今御
質問にありましたように、そういうふうに
病虫害の防除については
相当の予算を組み、努力が払われておるわけでございます。それで本年の
被害が大きく
なつたのは如何なる理由かというふうな点の御
質問と思いまするが、稲につきまして申上げますると、大体二十六年が一億四千万円、それから二十七年が四億四千万円、本年は二号台風ですでに配付しました予算を含めまして八億五千万円というふうに逐年非常に多くの予算を補助しておると、こういう
状態にあるわけでございます。で、それらの
関係から見まして、何故に
被害が多く出たかというふうなことを御
質問なさ
つたと思いまするが、大体その傾向といたしまして、我々が見ておりまするのは、本年度は先ほど申上げましたように特にその気象配置その他から見まして、異常な
発生を来たしたということが
数字的にもはつきりと出て来るわけでございます。それと農薬のほうにおいて、
相当時期的、
地方的に見まして、その農薬入手において不足
状態があ
つたというふうなことも申せるわけでございます。八月十三日現在で、県の
報告によりまするところの農薬の大体の使用数量等から推定いたしますると、これは今後使用する分も或る
程度含んでおると思いまするが、大体全
面積といたしまして、「
いもち」病については先ほどの百十八万
町歩に対しまして百四十二万
町歩分を防除できるだけの農薬が大体手に入
つているのでございます。それから二化瞑虫につきましては大体八十九万二千
町歩、このほかに二
化期の瞑虫が勿論加わるわけですけれ
ども、百二十三万七千
町歩を大体防除できるだけの農薬が手配されておる、こういう
状態でございまして、大体において農薬の手配のほうは
数字的には、その
発生の
状態から見ますると、何とか足りるという
状態にな
つておるように考えられるわけでございまするが、この中で最近出現しましたところの水銀粉剤、セレサソ石灰のようなものでございます。これが「
いもち」病全体の
面積の中で以て大体二十七万九千
町歩というものだけが、水銀粉剤によ
つて確保されておる、こういう
状態でございまして、その水銀粉剤のほうを昨年県の
試験場等で以て
試験をし、その成果が非常に高いというふうな
関係で、それを特に欲しいという
地帯が
相当大きくありまして、それでその合成剤ならば初めのうちは要らん、どうしてもセレサソ石灰が欲しいというふうな
関係で、セレサソ石灰に殺到して来たというふうな
状態でございまして、この水銀粉剤につきましては、政府の備蓄も十分になか
つたために、それについては不足を生じましたが、又
地帯的に見まして、それから時期的に見まして、適期に流れなか
つたとか、或る所は少したつぷり目に持ち過ぎて、或る所が不足していたとか、そういう需給の調整というものにつきましては、これは極力政府のほうでもメーカーのほうに話をいたしまして、大体時期的に早いような県のほうに早く流すようにというふうな調整をいたしまして、これは時々打合会を持ちまして、それでそういうふうな指導をや
つたわけでございまするが、そういうふうな
部分において十分に参らなか
つたというふうな所もございます。それから又農機具もなお進んだところは共同防除が非常に徹底して、動力噴霧器或いは撒粉器というようなものを以ちまして、それで急速に適期に防除をするというふうな進んだところもございますし、又個人の手動式農機具でも主体にして非常に共同防除の進んでいないようなところもありますしいたしますので、そういう
関係からして適期を外したというような
部分もございます。それで私らのほうといたしましては、本年度の
災害等の予算に絡みまして、大体農機具の整備ということが農薬以上に又緊急である、こういう見解を以ちまして、それで大蔵省に対しまして五カ年計画で五千台動力機を整備するというのを、今年が三年目に当
つておるわけですから、三、四、五年の全部を
一つ今年一年で出す、それでも足りないから、更に一千台出して四年分を一遍に出してくれ、こういうことを要求いたしまして、大体それに近い
数字を農機具としては廻し得る、こう
思つておりまするし、来年度におきましては、更に私のほうの計算では、大体その県をして非常に山に
なつた村の防除については、県の持
つている防除機具で以て防除をさせるというふうな仕組を考えまして、更に県に持たせる台数というものを約二万台近く確保できれば、これで大体において適期を外さないで防除ができるのじやないかというふうな
数字を弾きまして、来年度予算としましては、数年の計画に亙りましてそれを是非整備させたいというふうに考えておるような
状態でございます。まだ
病虫害の防除は、殊に今年のような甚だしい異常の
発生に対応して、十分な組織と施設ができておるとは申上げられませんような
状態で、それで或る
程度被害が増大した、その
発生の大きさに伴
つて被害が増大しておる、これは防除をすればできるものでございますから、これにつきましては今年度のそういろ経験に鑑みまして、是非今年の
経過を十分反省した上で、雨降
つて地固まるというふうな形で是非その制度を完備してもらいたい、農薬のほうもさることながら、農機具の整備と、それから共同防除思想の徹底というふうなことが特に大事ではないか、ころ考えられるわけでございます。大体
一つの傾向といたしましては、ここ数年間の傾向でございまするが、肥料の統制が撤廃されまして、肥料が割合に容易に入手できるというふうな
状態、やはり産米確保については国としても非常な関心があるし、農家においても
相当な努力をするというふうな
関係からして、
一般に窒素肥料を
相当余計に施用するというふうな傾向が強くな
つております。それからそれと関連しまして、土地改良の
関係も
影響を
相当しておるわけであります。それを有効に利用しようというふうな
関係から見まして、
東北地方においては穂数型の収量の幾らか少いような稲が多収型のものに転化しつつある、こういうふうな傾向をもある、とにかく農薬防除が或る
程度できるという自信が高まるに
従つて、少し危険があ
つても多収を目的として肥料を余計使い、多収品種を使
つて、それで出た場合にはそれを防除によ
つて救おう、こういうふうな傾向が強くな
つて来るような形でございまして、それに対応してどうしても政府の方面におきましても、ただ
病虫害の防除をやるということだけでなしに、やはり適当な品種、適当な殊に窒素肥料の施用、両方を奨励する、殊に
病虫害に対しては問題の大きい加里肥料の施用等が不足の
地帯もございますので、そういうところに対する適正な肥料の施用というふうなことも奨励すべきものと考えられるわけでありまして、それらの点についてはまだ不十分なところもあるわけでございまするが、
病虫害の
被害が
相当多く
なつたというようなことについては、或る
程度そういう特殊な
天候のために
発生が異常であ
つたということと、それに伴
つただけの大体制度と対策というふうなものを打つだけのまだ機構にはな
つておらない、その点については十分なお整備充実に努めなければならん点が大いにあるというような
状態にあるわけであります。