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政府委員(山中徳二君) 私どもまだ
監察の実績といたしましても経験が十分でございませんので、帰納的に結論を申上げますことは、殊にこのような相当むずかしい問題に対しまして申上げますことは、
資料その他で不十分と思いますが、今日まで、不当、不正の事件が相当多か
つたということは私どもの乏しい
監察の結果から見ましても窺われるのでございます。
只今お尋ねもございますので、実はそういう
意味合を以ちまして、総合的に十分検討はいたしておりませんが、若干従来の
監察の結果に関します所感のようなものを申上げましてお許しを得たいと思う次第であります。
不正不当事件が非常に多いと申しますことは、戦争の敗因に基いておるものは特別でございまして、これは終戦後の道義の低下或いは生活条件の悪化というような問題が原因だろうと思います。敗因に基くものは別といたしまして、やはり考えられますことは御指摘にありましたような官紀の弛緩、
言葉を換えて申しますれば公僕観念が熟成していないということが原因だろうと思うのでありまして、このことは責任体制が不明確である、或いは責任の自覚或いは責任の追及の風を欠いておるということ、或いは部下を
監督するということに遠慮がちである、或いは部内に察監
機構がありましてもやはり部内の
監察機構というものにはおのずから限界があるということ、又いろいろ官庁
内部の牽制組織にも欠陥があるのじやないかと思います。
更に官紀の弛緩の面から又別に不当、非能率ということの基盤的な条件を考えてみますると、
業務を実施いたします場合に計画性が一体乏しいということが考えられるのであります。予算等に付いておりますものを無計画と申しますと
言葉は過ぎますが、年間を通じてどういうふうに計画的に実施したらば効率的であるかという点の考慮が乏しい。
言葉を換えて又別のことで申しますれば、能率的に事務を施行するということに対する熱意が乏しい。又能率的に施行しなければならないという予算上の制約が比較的に乏しいのじやなかろうか。このことは又責任の帰趨が必ずしも明確にきま
つていない。先ほど御指摘のありましたような信賞必罰ということが必ずしも行われていない。或いはこの
言葉で申上げますのは、少し口幅
つたいことであろうかと思いますが、やはり民主主義の弱点と申しますか、迎合、人気取り、或いは一部の顔がいろいろの
仕事を左右するというような欠陥があろうかと思うのであります。
更にこの点を
行政運営上の欠陥というような面から考えて参りますと、中央できめられました計画の
趣旨が末端に徹底していない。又一般に、これは私自分に対する反省として以上のようなことを皆申上げておるのですが、企画には熱意がありますが、実施をする場合に比較的冷淡である。又
一つの
仕事をいたします場合に、
関係機関が非常に多過ぎるということは、消極的な牽連の問題を生ずる、連絡が十分でないというようなことも
行政運営の欠陥として指摘されるであろうかと思います。又その一面いろいろと
仕事を上手にいたしたい
関係もありまして、手続が非常に煩わしいということ、又もう
一つ人事管理の面から申しますと、上級幹部の転任が比較的頻繁でありまして、従
つて下級者が相当重要な責任ある
仕事をするというような面も
行政運営上の欠陥を助成しておるのではないかと思うのであります。
又現行の予算の組み方につきましても、これはいろいろの問題点があるのでありますが、やはり予算の組み方のために
形式的な違反事件が起
つておるというようなことも少くないのではなかろうか。まあ絶対額といたしましては、殊に
補助額等、或いは災害等の応急費の絶対額が足りないという点に、現在の
地方財政の困窮という点もからみ合いましていろいろの無理が出ておる。又
只今のことと関連し、先ほど小峰
局長からもお話がありましたようなことで、これらのきまりました査定が適正に行われていないということでございます。これは
現地の査定を行わないという問題等もございますし、殊にえてしていろいろな運動等によりまして予算が重点的に配置されていないというようなことが、予算の絶対額の不足と相待ちまして
補助金等が細分化され
業務が不徹底になるということ。或いは又いろいろきま
つております例えば労務費等の単価が実際上と違う。実際上労務者を雇えないような単価にな
つておるというようなことも
形式犯を誘致する原因になろうかと思うのであります。殊に
補助金等につきましては、申請の手続が非常に順境である。或いは
交付の手続が遅れる、査定がずさんである、或いは配付の基準がきま
つていないとか、いろいろの問題が交錯してこういう事態を生むのであろうかと思うのでありまして、やはり私どもとしましてはこれらの事案が相継いで起りますのは、事案を生じました場合の善後措置がとかく対症療法に終
つておりますので、やはりこれらを誘致する根源を突くということが大事であろうかと思うのであります。
さて私どもに与えられました
行政監察の
業務といたしましては、やはりおのずから
行政監察の限界があろうかと思います。私どもといたしましては、制度の
運営というような面でどういう点に欠点があるかということを
関係機関に
勧告してその是正を待つということでありますが、広く国政全般を通じまして対症療法でなく根源を突くという問題は、これは私どもの任務を過ぎておる問題であろうかと思うのであります。具体的に申上げますると、例えば私どものほうで取上げました農業災害の問題、これは極く末端の農地災害の状況を調べたのでありますが、これらの結果先ほど
検査院の
局長から御指摘がありましたような事実も私どものほうでも発見いたしたのでありまして、これに対しまして
農林省に私のほうから
勧告をいたしました結果、
農林省としても大体次のような措置をとろうという回答を得ているのでありまして、これらのことも私どもの
仕事ぶりを知
つて頂きます一端かと思いますので、繁雑でございますので要点を申上げますと、例えば根本的な問題といたしましては、
農林省といたしましては、
会計検査院や
行政管理庁の指摘したような事案について、今後こういう点を再び誤ちを繰返さないように注意したいという先ず啓蒙運動を起そうということで、設計審査、地元負担工事施行設計変更
検査、経理事務等に関する
説明書を
関係者にくまなく配付いたしました。従来指摘されました事例を引用して注意を喚起するというような企画を立てて実施に移したいと申じております。
なお
現地査定につきましては、事業費二百万円以上の工事は
農林省においてできるだけ
現地査定をするという方針を設けまして、なお査定官を特定いたしまして責任
権限を明確にすると同時に必要な技能の養成を図る、又できれば小型のジープというものを備えまして
現地調査ができる、
現地調査の機能を強化したいというようなことを回答をしてよこしております。なお又工事の遂行
検査につきましても事業費三百万円以上の工事及び都道
府県が直営いたしておりまする工事につきましては、
農林省において全部
検査したい。こういう方針で対処いたしたいというような回答をよこしておりますので、まだこまごましたこともございますが、こういうふうに制度を改めますれば勿論先ほど申上げましたようないろいろな原因が重な
つて今日の事態を生じておるのでありまして、一朝にはなかなか改まるということも期待し得ないと思うのでありますけれども、相当程度の効果が期待できるのではなかろうかと思うのであります。
又この前の機会にも申上げましたごとく従来は
市町村に対する直接
補助でありましたんでありますが、これはやはり
府県を通しての間接
補助ということにいたしますれば
府県もそのたびに責任を持ち、若し可能であれば
府県も若干の負担額を出すというふうにして、成るべく
監督の目を多くするというふうにしたらというようなことにつきましても、これは法令の改廃を要する問題でございますので、審議して
農林省も同意いたしたのでせつかく今その筋で検討をいたしてもら
つているような次第であります。
それから順序が悪くなりましたのでありますが、
委員長からお示しのありましたように
行政の非違に関連いたしまして職員の
綱紀というものがこの間にからまりまして、これに関する処置必ずしも適切でないというのも御指摘の
通りであります。ただ私どもといたしましては従来は
行政運営をいかに
改善するかという角度に重点をおいて参りましたので、これらの点につきましては非違の糾弾ということには、これをおろそかにするわけではございませんが、個々の事件を追及するというよりも、個々の事件のよ
つて起
つた原因を集約いたしまして、制度をいかに
改善すべきかということのほうがこういう悪い事態を改革する最もいい最も早い道じやなかろうかということに意を用いました
関係上、従来とてもそういう点に無関心であ
つたというわけではございませんが、今後今回御審議をお願いいたしております設置法の改正によりまして、私どもも
監察権を強化いたして参りたい。
又従来もとり上げました問題は、
只今御
説明申上げましたような予算の効率的
使用という面ばかりでございませんで、
行政制度がいかに適正であるか、
行政の
機構が末端においてもその
通り動いているかというような点を見て参りたいのであります。必ずしも効率的
使用という面にのみ重点がなか
つたようでありますが、今後当分の間は御指摘のような次第でございますので、
権限を整備いたしますと同時に、その面に重点をおいて参りたいと思いますので、勢いやはり
綱紀問題に当面する事態が多くなろうかと思いますので、従いまして今回の改正法案にも特に一条項を設けまして、これらにつきましては
任命権者の注意を喚起いたしました、
任命権者によ
つて速かに適正な措置をとりまして、他の作業と併せて
綱紀の粛正にも寄与したいというような牽連があ
つて、それでさような心構えの一条を設けました次第であります。
とりとめもございませんので、思いつきを羅列したようで恐縮でございますが、一応これで終ります。