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政府委員(長谷愼一君)
只今御審議を頂いております
放送法の一部を改正する
法律案につきまして簡単に要旨を御
説明申上げたいと存じます。
今回のこの
法律案の提案理由の
説明は、大臣から先般申上げましたところで
概略御案内と存じますので、主として御注意を願わなくちやならん点につきまして申してみたいと思います。
先ず第一に、第九条の
放送協会の業務に関することでございますが、今回その第二項に第八号を加えましたのは、
研究が
放送協会の本来の業務ではございますが、それにもおのずから規模その他から限度がございますので、
外部に対しても
研究の
委託ができる途を開く
趣旨でございます。又同じく第九号を加えましたのは、
受信料の
徴収の特権を有するなど、
放送事業全般に対する
協会の公共的な使命に鑑みまして、
放送の進歩発達に寄与する
研究或いはその他の業務を助成することができる途を開いておく
趣旨でございます。なお、第七項は、以上の申上げます
委託或いは助成を行います場合に、これが適正であることを確保するために主管大臣の認可を要することといたしたのでございます。
次に第十六条の経営
委員の任命の件でございます。これにつきまして、第一項につきまして、
協会の経営
委員会の
委員の任命権者を、従来内閣総理大臣とな
つておりましたのを、内閣と改めたものでございます。これは従来の内閣総理大臣とありましたのは、電波監理
委員会が総理府の外局でありましたときの何と申しましようか、遺物とでも申しましようか、そういう
状態のままでな
つておりまして、総理府の長としての内閣総理大臣が任命権者として掲げられておつたからでございます。従いまして今回の改正は、条文の整理とでも申上げたほうがよいかと存じます。なお罷免権者につきましても、任命権者と同様に整理いたしてございます。次に経営
委員会の
委員の任命に弾力性を持たせまして、必ずしも現行の、
全国を八地区に分けた、併も住所主義に捉われないで、
全国的に見まして最も適正なかたを選任できまするように、従来の第二項及び別表を削除することといたしました。これに伴う条文整理は併わせていたしてあるのにございます。
次に、第二十四条の
役員の人数でございますが、これは提案
趣旨を御
説明申上げましたときに、よく申上げましたので省略さして頂きます。
その次は第四十九条の二、いわゆる監督者及び四十九条の三として命令及び報告の件でございます。これは後ほどなお私
どもの
考え方をよく申上げたいと存じますが、最初にその要点だけを申上げますと、四十九条の二といたしましては、
協会に対する主管大臣が郵政大臣であることを明らかにいたしました。他の公の法人についての
一般立法例に倣つたものでございます。
なおその次の四十九条の三は、
協会という極めて公共的な性格を有する法人の使命の達成を期するために、他の特別の法人の例に倣いまして、国会の付託を受けておりますところの政府において、公共の福祉を増進するため特に必要があると認めるときは、
協会に対し監督上必要な命令をすることができる途を開き、又
放送法を施行するため必要な限度において、
協会からその業務に関する報告を徴することができる途を開いたのでございます。この両方の二つの条文は、後ほ
ども申上げたいと存じますが、従来あるべきものが欠けておつた、いわゆる欠闕を補う、こういう
意味で今回御審議をお願いしている次第でございます。
なおその次に、四十九条の四といたしまして、今回の改正によりまして行政処分のあり得る場合が増加しましたので、この
機会に郵政大臣によりますところの行政処分に若しも不服のある場合には、
協会又は第三者にその異議の申立の途を開き、電波法第七章、これは異議の申立及び訴訟の条項でございますが、この規定に準じて公正な審理が行われますように途を開いた次第でございます。
なおそのほか今回の改正に伴いまして、所要の罰則その他の立法例に倣いました整備をいたしてございます。
なお少しくお時間を頂きまして、この監督並びに監督上必要な命令の事項につきまして政府当局の考えておることを述べさして頂きたいと存じます。
この四十九条の二につきましては、先ほ
ども申上げましたように、日本
放送協会に対する監督者が郵政大臣であることを規定したものでございまして、
郵政省設置法第十条の二第十六号に対応するものでございます。
協会に対しまする監督につきましては、
放送債券の発行につきましては大蔵大臣の認可、会計につきましては会計検査院の検査を受けるのでございますが、
協会の
事業経営の
一般的監督は、郵政大臣がこの
法律の定めるところに
従つて行うことを今回明らかにしたのでございます。現行法ではこの条文はございませんけれ
ども、
法律の執行を確実に行うことは政府の職責でもございますし、このことは憲法第六十五条に「行政権は、内閣に属する。」ということを明らかにされており、その他の点からも明らかで、今更申上げることもないと存じます。郵政大臣が
放送協会に関する事項を分担、監理することが設置法の上で明らかでございますから、郵政大臣としましては、従来から当然
放送法を誠実に執行し、
従つて放送法に基いて日本
放送協会を監督すべき責務を有しておつたものでございます。この
意味から申しまするならば、監督権の幅は
放送法全般に互
つてその執行を確保するものでございます。又電波法の第七十六条には、「郵政大臣は、免許人がこの
法律、
放送法若しくはこれらの
法律に基く命令又はこれらに基く処分に違反したときは、三箇月以内の期間を定めて無線局の運用の停止を命じ、又は」云々という規定がございますが、
放送法に違反したときには運用の停止を命じ得るということは、当然
放送法が確実に守られているかどうかを常に監督する
放送法の監督権が郵政大臣にあるいうことを前提として立法されているということを申さなければならないと存じます。このようなことから、現行法の上でも郵政大臣は、
放送法の施行につき
協会に対して
一般的監督権を持
つていることは明らかであり、今回の改正案による第四十九条の二という追加条文は、別段新たな権限を郵政大臣に賦与したなのではないと存じておるのでございます。然らば何故に今回新たに条文を追加することにしたかと申しますと、郵政大臣の持
つている監督権を条文の上に明示しまして、設置法の条文と照応せしめますると共に、他の
一般の立法例の形に合せまして、先ほ
ども申上げました従来の欠闕を補つた法体系の
合理化を図ることを目的としているものでございます。なを然らば、この法文がなくとも当然郵政大臣は
協会に対する監督権があるということであるならば、この法文は特に要らないのではないか、こういうふうな
考え方もできて来るかと思いますが、私
どもといたしましては、現在の
法律を極めて表面的に解釈する場合には、郵政大臣には
放送法上認可を受けることを命じているような特定の条文にだけ限
つて協会に対して監督権があり、その他の条文の事項については全然監督権がないのだというような誤つた
考え方をされる虞れがあります。又そのような
誤解をなさ
つておる向きもあるように存じますので、このような
誤解を防ぐためにも、郵政大臣が当然持つべき、又現に持
つている監督権については、条文を設けて明示することが有意義であると存ぜられます。更に御案内のように、法人の監督の
一般的な形を考えてみますと、民法上の社団法人、
財団法人は、どのような小規模のものでも、御案内のように、すべて主務大臣の監督に属するように民法でも定められておりまするのに比較いたしますれば、日本
放送協会のような非常に大きな、而も国家的な任務と保護とを与えられている法人に対しては、国家に
はつきりした監督権がないということは全く考えられないことでありまして、これは全く法の欠闕と言わなければならないと存ずるのであります。又言論
機関に対して監督することは疑問であるというようなこともよく言われております。私
どもも言論
機関に対する監督というようなことが若し必要といたしましても、これは極めて慎重を期すべきだと存じます。日本
放送協会も最も国において力の強力な言論
機関の
一つでありますが、これに対して
放送が如何にあるべきかということは、申上げるまでもなく、その実体法である
放送法に規定がございます。従いまして、この
放送法の規定されるところに
従つて、或いは又言葉を換えまするならば、この
放送法を施行するために監督上必要な監督権を有し、又それに必要な命令或いは報告を徴することのできる条文を持つということは当然ではないかと思うのであります。
なおこの言論
機関についても、いろいろな監督というようなことが
放送協会以外でも実はあるのでございまして、これも申上げるまでもないと存じますが、
参考的に申上げまするならば、
放送事業につきましても、例えば
東京におきますところの日本
文化放送協会は、
財団法人としまして、郵政大臣の監督下にございます。又
新聞、通信社等につきましても、御案内のように、公益法人組織にな
つておるものは、一応すべて主務大臣の監督下において
事業を行な
つておるのでありまして、言論
機関だから直ちに国家の監督は不要だと、或いは不可だというようなことにはならないのではなかろうか。その国の監督なり監理なりは、実体法である、今回で申上げまするならば、
放送法にその守るべき原理というものが明らかに示されておりますので、その
法律に
従つて監督を行うことは当然であり、又必要なことではなかろうかと存じておる次第でございます。
なお、甚だつたない
説明でおわかりにくかつたことも多々あると存じ上げます。御質問によりましてなお追加して御
説明申上げたいと存じます。