○
公述人(石川
辰正君) 私は
只今御紹介を受けました
全国電気通信労働組合の副執行
委員長石川
辰正でございます。議題とな
つておりまする三
法案について
意見を述べたいと思いますが、時間の
関係もございますので、私どもの最も関心を持
つておりまする
公衆電気通信法第百五条の構内交換
設備、いわゆるPBXの問題と
料金問題に絞
つて申述べたいと存じます。先ず百五条のPBXにつきましては、いわゆる自営もできるようにな
つていますが、すでに第十三
国会、第十五
国会でも大いに問題となり、慎重
審議が行われまして、
法案は両
国会において成立しなか
つたわけでございますが、このような専門的な問題について
国会において慎重
審議されましたことに深甚の敬意を表すると共に、三度私どもは電信
電話事業に直接携わ
つておる従業員といたしまして、特に純技術的な
立場から反対をいたす次第でございます。純技術的な
立場から反対するということは、ただ単にPBXが民間に取られるとい
つた官僚的な繩張根生やイデオロギー的にこうしたものに反対する、そういう観点からでなくて、
電話は神経系統と言われますように、
電気、ガス、鉄道と一見似ているようでございますが、
機械の設置、保守、運営、これを統一して行わないと神経全体が統一して働かない、従
つてサービスも悪くなるので、どうしたら
サービスをよくすることができるかと、こうい
つた技術的な見地から申上げるわけでございます。御承知の
通りPBXは戦前全国で三百
余りの団体において小企業
形態の工
事業者の
方々が工事並びに保守に当
つて参
つたのでありましたが、
昭和十八年の十二月に全国の業者を統合して資材、
計画等の一元化を図る目的で
日本電話設備会社が創立され、
逓信省の
監督の下にPBXの工事運営を行な
つて参りました。併し統一された
設備会社ができましても、実際との当時の実情を見ますると、依然として完全な一元化はできず、いろいろな問題があ
つたのではないかというふうに存じております。
昭和二十三年三月にGHQの覚書によりまして、この
設備会社を
逓信省へ接収することが指示され、二年後の二十五年五月電通省に移管され、
電話事業の一元化の見地から直営でや
つて参りました。昨年八月電通省が
電電公社となりましてからも、ずつとこの方針で今日に至
つておるわけでございます。GHQがこのような指示を出しました
理由は
独占企業の禁止という当時の占領政策の一環からというよりも、この際にはアメリカの
電信電話関係の専門家、民間人でございますが、民間人の専門家が参りまして、
日本のPBXの現状を把握して、その上に立
つて、第一には、
日本では
機械、機器の標準化、統一制がとれていないので
サービスも悪い、
電話事業は局内の
機械、線路、中継線、PBX、端末
電話等が一体として
経営され、扱われなければならんという、こういう
理由が大きな
理由であるというように承知いたしております。これは甚だ抽象的でわかりにくいかと存じますが、一例を挙げますると、当時構内交換機の型が全く多種多様で、全国で一台しかない、乃至は三台、数台しかないという型もありました。又端末の
電話機、いわゆる普通の受話機でございますが、規格品が十七種、規格外が百五種もあ
つて、更に交換機の部品等を調べて見ますると、継電機というものだけとりましても千百七十一品種というように非常にばらばらであ
つたという実情であ
つたというので、このような実情では
日本のPBXは発展し得ないという技術的な
立場が大きな
理由であ
つたというふうに承知をいたしております。第二の
理由といたしましては、民営の場合には工事に重点が置かれて日常の保守が完全に行われない。従
つてPBXの故障の率が非常に多くなる。第三番目には、個々の業者のかたに民営として行わしめると、先ほど申しましたように標準の維持もできない。若しこれを
監督するということになりますれば電通省なり、
電電公社の
監督範囲が広くなり、
監督費も高くなるから
経営上無駄である、このような技術的な、
経営的な面からGHQの措置がとられたのであります。私どもアメリカ人の行
なつたことは何でもいいとか、或いは何でも悪いというのでなく、更に又占領措置であ
つたからこの際これを元へ戻さなければならん、いや戻さなくてもいい、こういう議論をやめまして、
電話事業の技術的な特質からこの問題を
検討して行かなければならんと考える次第でございます。
そこでいま少し詳しく私どもの主張でありまする
公社で一元的に運営したほうがよいという
理由を技術的に申述べますと、
公社が一元的に運営いたしますれば、交換機の規格も統一されて参ります。よく検査を経た
機械を用いますし、又工事も一元化されました標準工事法で工事いたしますので、且つ又その工事をやる従業員、これを保守する従業員は
公社の教育機関である学園なり現場訓練等でよく教育をしております。
設備会社から受入れました従業員の諸君は千五、六百人おるというふうに考えますが、このうち半分はすでに一ヵ月ぐらいの訓練を経て年々刻々と進歩する技術に対応し得るように訓練をしておるわけですが、この従業員が工事をする。而も工事をするときから、いずれ
自分たちでこれを保守して行かなけりやならん、将来の長い間の保守、更に交換機の価格のことまで考えてやりますので、
電話の
加入者のかたに対する
サービスはこれに優る方法はないと考えるわけであります。
電話は電燈と異なりましてちよつと引込線を引いて来れば話ができるというような簡単なものでなくて、交換機、線路、端末の
電話機の全部が全部良好な状態に置かれなければ話がうまく通じない。若し
一つのビルディングなり、
一つのホテルのPBXが調子が悪いということになれば、そこへかける相手方の
加入者のかたも電池の
事情一つによりましても或いは
一つの部分品がうまく行かなくても微妙な弱電流でございますので、話がうまく通じない、相手方にも迷惑をかける、
加入者全般に迷惑をかけるというような点からいたしまして、どうしても一元的にこれを運営しなければならんと考えるわけでございます。これが証拠といたしまして、故障の率は直営は自営の度合に比較しまして約三分の一に済んでおるというような点がよく明瞭にこの根拠を物語
つておるのではないかというふうに考えます。尤も私どもの主張に対しましていろいろな御
意見も問いおります。或いは
加入者がPBXを申込みましてもなかなか開通しなか
つた、
公社は予算の枠があるから
自分の
資金でどんどんPBXを付けたらいいじやないかと、こういう議論もあるかと思いますが、併し今までPBXが、工事が遅れたという主な
原因は、むしろPBXそのものにあ
つたのでなくて、肝心のもとになります基本
設備でありまする
電話局が足らない、
電話局の交換機やケーブル線が
不足であ
つた、こういうところからして主な
原因があ
つたのではないかというふうに考えます。現に、
設備会社を受入れました当時には、
公社の直営によりますのは千三百九十件でありました。受託をされましたのが七千二百四十一件、一六%に八四%という
比率でございましたが、二十七年の三月に至りましては、
公社の直営が四千四百四十六件、委託を受けてや
つておるのが五千六百五十五件、四五%に五五%、二十八年の三月には更に
公社直営は五千件を突破いたしまして、ほぼ同じような。パ一セントにな
つて来るというふうに考えるわけでございます。その上、受け継いだものの中には、先ほど申しましたような規格品がばらばらとか、非常に傷んだ
機械も老朽な
機械もある。これらの取替に鋭意
終戦以来当
つて来たというような点から工事もうまく行かなか
つたというふうに考えるわけであります。勿論電通省当時、官僚的な手続等もあ
つたことは否めないと思いますが、その
公社となりまして手続の簡素化、資材の配備或いは
サービス・カー等を設けまして、故障にもすぐ
器具を積んで、そのまま
サービス・カーが走
つて行けば故障も直し得るというような、こうした
サービスの点も改善されつありますので、こうした御
意見に対しましては、逐次急速な要望に副い得るというふうに考えます。従
つて先ほど申しましたように、電燈線のような調子には行かない。或いはラジオのセットを買
つて来てソケツトを電燈線に突込めばすぐラジオが聞えるという簡単なものではないので、どうしても先ほど言
つたような一元化が必要である。仮に自営ができる、
自分でPBXを付けたい場合に
自分で付けるというように
なつた場合、成るほどPBXだけは、構内交換機だけはできましてもとのほうの
電話局なり、
電話局の交換機或いはケーブル線がないということになれば、PBXは付けたが
電話局に通じない、話ができないというようなこういう現象が起きて、
加入者のかたは早く何とかしたいというのでPBXだけを付けて、それからあとは困るというような現象が起きて来るのでは、却
つて加入者のかたに
サービスが悪くなるのではないかという点が心配されるのでございます。それよりも、成るほど一定の枠はございますが、建設
資金の
計画を立てまして、これだけは
電話局の基本
設備に使う、これだけはPBXとい
つた工合に、
計画的に
資金を運用して逐次発展さしたほうが非常にうまく行くというふうに考えます。二十七年度の
公社の建設
資金も約四百億円近くの中でPBXの建設
資金は十二億七千万、これでいわゆる甲種増設が三万三千個、乙種増設が四万四千個できておりますが、このような建設
資金のバランスにな
つておりますので、仮に十二億まるまる基本
設備に廻しましても全体から見れば極めて僅かな。パーセントでございますので、それよりもむしろ
計画的に、先ほど申しましたように基本
設備とPBXとバランスのとれた総合された建設をや
つたほうが
電話の発展のためには非常にいいのではないかというふうに信じております。或いは御
意見の中に
公社と民間に競争をさしたほうがよいだろうという
意見もあると思いますが、物品製造や商業面では成るほどよいかも知れませんが、先ほど申しました
通り、たとえ一定の技術水準を設けましても、やはり或る
程度の設計基準なり或る
程度の工程基準か抽象的な条文でしかできないというようなことも考えますれば、やはり規格が崩れて標準化が乱れて来るのが必至ではないか。これは民間のかたを信用しないというわけではございませんが、将来の長い間の保守交換のことを考えまして、同じ
経営体で同じ
公社の職員が工事をする場合と、そうでない場合といたしましては、おのずから人情といたしまして境が生じて来るのではないかというふうに考えるわけであります。なお現に先ほど申しました
通り、
電話設備会社から電通省へ引継がれた従業員の諸君が約千五、六百名
公社におりますが、この受入の際にはいろいろ不利な受入
条件、労働
条件等がありまして、相当問題があ
つて引継がれたのでございますが、
公社自身もPBX
事業をみずから担当いたしまして、
電話を愛する技術者といたしまして真剣に考えまして一致して一元化に
賛成し、今度の
法案に反対しておるということを申添えておきたいと存じます。なお
電気器具関係、
電気関係、電線
関係の労働組合の諸君とも私ども密接な連絡をと
つておりますが、私が先ほど申しましたように、
計画的な発展というものがメーカー側の労働者の諸君から考えた場合でもいいというような御
意見も受け、全面的な賛意を受けておる点も申添えておきたいと存じます。
更に、いろいろな御
意見の中で、
加入者が
設備費を負担するわけでございますが、この所有権が
公社に移
つてしまう、これを譲り渡すなり、売買をしたいという際にもできないという
意見もございますが、この点につきましては、施行法三十条に、社債の引受が相当大幅に認められるようにな
つておりますので、かなりこれは緩和されて来るというふうに考えておるわけであります。而も成るほど所有権は譲れなくても、将来一度PBXの
加入者に相成りますれば、その
機械が古くなり或いは故障になるという場合にも、これを取替えるなり
公社の手で保守を無料でいたしますので、あながちこういう
意見も当らないのではないかというふうに考えます。又自営を許すということになりますると、勢い
監督もしなければならない。併し
監督するには結局
公社の職員がやることにな
つて来ると思いますが、
昭和二十四年当時、丁度先ほど申しましたGHQの指示が出まして、その後いろいろやられました際にも、アメリカの専門家の
意見によりますれば、
昭和二十四年当時でも
監督費が五億円は必要である、こう言
つております。現在の価格に直しますれば、恐らく十億円を突破するのではないかと思いますが、そういたしますと、昨年のPBXの建設
資金は十二億七千万円ございますので、
監督費だけでほぼ一年間の建設
資金が出て参りますので、むしろそういう
監督費なり
監督する人というものは
事業の拡張のほうへ廻し、それだけの金があるならば建設
資金のほうへ廻すべきであるというように考えまして、これは後ほどの
料金問題にも
関係いたしますが、十億円の
監督費が必要であるということになれば、これが
公社の支出にな
つて参りますので、
料金にも影響が来るというような点からいたしましても、この点は考えなければならんのではないかというふうに考えております。
いろいろ申述べましたが、世界各国を見ましても、官営或いは民営で
電話をや
つておりますが、民営でや
つておる所にいたしましても、或いは官営でや
つておる所にいたしましても、いずれにいたしましても、PBXを二元的に
経営している例はございません。その
経営主体が一元的に
経営しておるのでありまして、世界各国を眺めましてもこういう例はないのでございます。而も
電電公社が出来ました
理由は、電信
電話事業を、
公共性を保ちつつ企業的能率的に
経営することが眠目でありまして、PBXの一元的に
経営されるようにな
つたのは
昭和二十五年五月で、僅か三年を経たばかりでございます。
公社にな
つてからもまだ一年にな
つておらないという、こうした
事情からいたしまして、折角企業的能率的な
経営を行おうという
建前の
公社、而も又努力をいたしておりまする
公社並びにその従業員の熱意をくんで、私どもは無論この百五条には真向から反対いたしますが、少くとも今暫らくPBXを一元的に
経営せしめて、なおその上でも悪いというようなときには、その際いろんな御非難なり、違
つた方法があればこれは我々としても何とも言いようのない話でございますので、折角
公社に
なつた際でございますので、少くとも今暫らくの間は現在の
経営方式をとるということが、
電話をスムースに運営し、
電話の発展の上に必要ではないかと存じますので、この点を申し添えておきたいと存じます。
次に、
電信電話料金改訂の問題でございますが、これは本質的には政府の
通信政策の問題であると存じます。いろいろ今出ておりまする
数字等もございますが、この
通信政策を衝いて、この政策がいいか悪いか、単なる現象面でなくて、
通信政策を見なければ私はこの
料金問題の本質を衝いた議論にならないというふうに考えます。今日特に
電話が引けない、かからないという非難或いは輿論があるのは、先ほどからも申されまして周知の事実でございます。私どもも約二、三年前から、建設的な
電信電話再建運動を展開いたしております。
昭和十六年に百六万個の
電話加入者がありましたが、戦災等のために
昭和二十年には約半分となり、爾来逐次復興いたしまして、現在では百五十五万個とな
つて参りまして、
昭和十六年に較比いたしまして約一五〇%と増加をして参りました。併し、なお
電話を引きたいという需要者が八十六万人と言われ、潜在需要を合せれば恐らく二百万
程度になるのではないかというように私どもでは計算をいたしております。この
電話が引けないという非難が、結局実際仕事をや
つておりまする
電話局の窓口の
加入係の諸君、或いは交換手の諸君が受けておりますので、私どもも何とかこれはいたさなければならないと考えているわけでございますが、何といたしましても労働組合でございまして、
経営権がない。
経営権の問題にもタッチができないというわけで甚だ遺憾に存じておりますが、問題は、
只今も申上げましたような
通信政策の問題であるというふうに考えます。御承知の
通り昭和九年から十九年にかけまして
一般会計並びに臨時軍事費へ十二億三千万円、現在の貨幣価値にいたしますれば約二千五百億円ぐらいになるかと思いますが、これが繰入で
一般会計の戦争遂行の犠牲にな
つて参りました。而もその上に戦災で先ほど申しましたように
電話がだんだんやられて、或いは又戦時中にとにかく資材がない時代であるから間に合せでや
つて行けということになりまして、ケーブル線を引かなければならんところをコム線でやる、銅線でやらなければならんところを鉄線でやる。ケーブルにいたしましても或いは鉛がないからお粗末なケーブルでや
つて行くというようなことからいたしまして、今日障害が頻りに起る不良
施設が非常に多い。これがそのまま残
つておる。こういうものを取替えなければならんというので特別
償却として今年度だけでも二十七億円計上されておるわけですが、普通
償却以外にこれをやらなければならんというのはそういうところにも
原因がある。一方
電話に対する先ほど申上げました不満の声を解消するには、何とかしなければならんというので、
公社の
経営者といたしましては五カ年
計画を立てていますが、最初は五カ年で
加入電話百万個、それに応ずる中継線を殖やすというのが
資金面でいういろいろ行詰りまして、当初七百億という
計画であ
つたのが
資金面のためにだんだん縮小されまして、ここに出ております五カ年
計画は、五年間で七十万個の
加入電話を作るというような
事情にな
つて来ております。私どもこの
電話の需要が多いがなかなか引けないというこの声を解消するのには、どうしても
只今のような縮小された
計画でなくして、もつと少くとも最初の
計画ぐらいなければなかなか解消ができないというふうに全面的に考えております。この出ました五カ年
計画を六カ年なり七ヵ年に延ばしれらというような御
意見もあろうかと思います。例えば五カ年七十万個を、七年にすれば毎年十万個ずつでいいじやないか。五カ年七十万個だと毎年十四万個でありますが、七年ならば十万個でいいじやないか、こういう算術的な計算はちよつとできかねる問題でありまして、どうしてもいろいろな
施設が古くな
つて来る、拡張もしなければならない、ところが今
電話が一本も引けないという
電話局が全国にたくさんあるのでございます。この
計画が縮められ、予算が縮められては、勢い新らしい
電話局を共電式を自動式にするということにも行かないので継ぎ足しの工事をや
つて行く、或いは最初からこの地方にはどれだけの
加入者が三年後にはあるから、五年後にはあるからこの際百対のケーブルを引きたいというところだが五十対で我慢しよう、それからもう二、三年た
つてから五十対補充するという、そういう無駄が生じますので、そういうふうなことは算術的な計算ではできないわけであります。このような
事情に合わせまして
昭和二十六年度には運用部
資金から百六十億、
昭和二十七年度には百三十五億入
つたのであります。且つ又不成立予算では四十億円の運用部
資金が計上されてお
つたのが、今回出された案ではゼロにな
つて来ているというところに問題があるのではないか。
公社になりまして社債が発行できるということは有利な点でございまするが、社債には一定の限度がございます。而も
利子が高くなり、
利子の支払額も殖えて来る。今年度予算でも
利子は債券取扱費を含めまして四十一億とな
つておりますし、社債の場合は元金の償還も考えなければならない。どうしても私どもといたしましては、本来ならば
利子のない
資金を持
つて来て頂くのが妥当かと思いますが、そういうわけにも行かなければ、少くとも低利
長期の運用部
資金を政府が考えて然るべきではないかというように考えます。そういう点が政策のほうで行われないので勢い
料金値上げということにな
つて来て、
公社の
経営者といたしましては、極めて安易な途と言うと語弊がありましようが、政府の政策上止むを得ずそういうような案を出して来たのじやないかと推察するわけでございます。
電話の
施設の拡張改良をしようとする熱意は私ども全く同感でございますが、私どもといたしましては、こうした政府のやり方の政策というものについては納得ができないところであります。
更に電信
電話事業も、先ほどから出ておりますように完全な
独立採算制が布かれております。これは成るほど尤もな点でございますが、併し仔細に調べましたならば、勿論私どもも
原則としては
独立採算制は妥当だというふうに考えますが、仔細にいろいろ
検討してみれば、やはり問題があるのじやないか。
電報においては
昭和二十六年度において五十六億の赤字が生じております。併し
電報はその性質上世界各国どこでも殆ど赤字であるのが通例でございます。特に
日本の場合はどんな山間僻地でも
電報の届かない所はなく極めて
公共性を発揮しているわけでございます。郵政省の特定郵便局、主といたしまして地方の町村でございますが、この特定郵便局で取扱う
電報電話は郵政省と
電電公社との間の協定によりまして
電信電話料金は特定局で何と申しますか得ました、もつと平たく言えば、特定局で得ました、
公衆から取りました、
利用者からもらいました
料金は、そのまま
公社に入
つて参りますが、今度
公社から取扱費を郵政省のほうに支出をいたしております。
昭和二十六年度の決算においても、電信三十億、これは先ほど申しました五十六億円の中に含まれておりますが、電信三十億、
電話十五億円の赤字を出しておりますし、
昭和二十七年度の決算はまだできておらないと思いますが、四十五億を突破して参ると思います。このような地方の
電話或いは電信というものは極めて
公共性がございますので、私ども
事業の本質から当然取扱うべきであり、
サービスをよくするのが当り前だというふうに考えます。そのほか電信
電話事業には、これは額は大したことはございませんが、船舶
通信の海岸局の
通信とい
つたようなものも極めて
公共性を発揮しておるわけでございますが、こうい
つたものにつきまして、勿論
通信は連関性がございますが、地方の
通信につきましても、都会と地方という、こうい
つた関係もございますので、これをまるまるというようなことはちよつと無理であると思いますが、こうした
公共性のある面については
一般会計から補填ということも必要ではないかというふうに存じております。或いは又今回の九州地方に大水害が起きまして
電信電話関係の被害は相当
厖大なものがあるわけでございまして、いずれ補正予算等が組まれるかと思いますが、結局
公社自体の自前でやるということになります。道路などとは性質上ちよつとこれは比較しかねる問題でございますが、道路その他の被害のように
国家の災害復旧費で復旧乃至は補助があるということになれば、これは他の
一般の
電信電話の
利用者に負担をかけさせなくても済むのではないかというふうに考えるわけでございます。更に最近電信
電話事業に特徴的に現われて参りましたことは、本年の四月一日から国際
電信電話株式
会社が発足いたしました。私ども第十三
国会で、
日本電信電話公社法、国際
電信電話株式
会社法が
審議をされました際に、
電信電話は国際、国内を切離せるものではなくて、一元的に運営すべきものであるという技術的な、
経営的な
建前から反対運動をいたして参りましたが遺憾ながら
会社は発足いたしたわけでございます。当時国際電信
電話事業で年間十数億円から二十億円
利益があることは、
審議の過程でも明瞭であ
つたというように承知をいたしておりますが、このように儲かる面が株式
会社として切離され、いわゆる資本主義的な観点から儲かる面が株式
会社になる。これによりまして、一部の資本家のかたがたは
利益にな
つて来ると思いますが、こうした年二十億からのものが取られれば、それだけそのしわ寄せというものが今年度の予算案に現われて、これが
料金の問題にも波及して来る。こういうような点からいたしまして、
公共性のある
事業が無視をされておる。その他請負工事を大幅にやらせますとか、或いは又電信
電話事業の収益を上げている場面を
一つ一つ切離す、先ほど申しましたような、PBXのようなものが切離されて行くという傾向は、一貫した
通信政策がない。而も矛盾を生じておる問題でありますので、これは
一般の
方々の
料金へもしわ寄せが来る。私はこういうことを御強調申上げたいと存じます。要するに、政府には
公共性のある電信
電話事業に対しまして一貫した政策がない。もつと絞
つて、
電話の復興に対する熱意があるかどうかを疑うものでございます。
更に今申しましたように、
公共性ある
事業に資本主義的な態度で臨んでおるために、その矛盾が
料金値上げとな
つて来ておるわけでございますので、
料金問題は、この政府の政策に私はメスを突つ込み私はこの政府の政策に反対をいたすものでございます。最近
国会でも電通
事業に対しましていろいろ御尽力を頂いておることを厚く感謝いたすものでございますが、例えば建設
資金の面にいたしましても、
政府資金による建設
資金の増額が要望或いは決議がしばしばなされて参りました。最近では過ぐる第十五回
国会において
電話設備費の負担臨時措置法成立の際にも、この参議院の電通
委員会で決議を頂いておるわけでございますが、それが
一つも政府によ
つて実行されていない。従いまして建設
資金を運用部
資金なり
国家資金で持
つて来るということは甚だ言いやすく、言葉で言えば簡単でございますが、そうした政府の態度乃至は大蔵当局の態度からいたしますれば、甚だ言い過ぎであり、僭越であるかと存じますが、どうか具体的にどれだけ建設
資金を持
つて来る、そうして
料金をどうするというような点まで
国会の各位にこの点をお願いをいたしておきたいと存じます。これらの
通信政策を改めまして、然る上に立
つて、
料金原則の上に立
つて適正な
料金が打出されるというのであるならば、
料金問題に対しても我々もイエスかノーかをはつきり言い得るわけでございますが、こうした政策そのものに我々は反対であり、そこに
料金問題というものが露呈されて来る問題でありまするから、この政府の政策というものに反対し、これを改めて頂くことを
結論といたしまして私の
意見といたしたいと存じます。