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政府委員(
佐々木義武君) 御要請によりまして只見川開発問題の経過並びに内容に関しまして御報告申上げたいと思います。只見川の開発問題は、御
承知のように
昭和二十二年でございますから、
只今まで七
年間くらいに亘りまして、長い間論争に論争を重ね、今まで未解決のまま進んで来た問題でございまするが、その間電源の開発並びに信濃川下流におきます農業開発等の問題に関しまして、当時の
経済安定本部の中に河川総合開発協議会というものがございまして、そこで農業の問題は農林省、電源の問題は当時の商工省に調査を委託申上げまして、そうして商工省のほうでは当時の日発に調査いたさせまして、三
年間に亘
つて調査いたしてございます。その後いろいろこの開発の問題をめぐりまして、各種の案が出て参りましたので、その後に発生いたしました公益
事業委員会、当時の電力の問題一切に関する
一つの独立の決定機関でございましたこの公益
事業委員会が約一億の予算を以ちまして、この予算全部を只見川に使つたわけではございませんが、その大
部分は只見川問題の解決のための調査立案のための費用に使つたわけでございます。その結果が昨年の五月に出まして、その結論と申しますか、勧告に基きまして、
政府ですぐこの只見川の問題を決定する状態にあつたはずでございまするが、丁度
電源開発促進法が議会で討議の真つ最中でございました。はた又公益
事業委員会も
機構改革その他で、やがて解消する運命にありました
関係上、その決定を待たずして、電力の問題は
通商産業省の公益
事業局のほうに引継がれたわけでございます。その後促進法も昨年の七月三十一日に決定、公布になりまして、それに伴
つて電源開発調整審議会ができたわけでございますが、この只見川の開発問題は、促進法の
規定によりますと、いわゆる基本計画というものの本体をなす問題でございまして、この審議会できめるように
規定されてございます。そこで去年の九月に発足いたしました今の
電源開発株式
会社に、この只見川の調査研究を依頼いたしまして、審議会とされまして調査河川としてこれを指定して、そして調査決定を依頼いたしまして、爾後
政府のほうでは相並行いたしまして、各省間でお知り合いのかたがたがまだ残
つておりますので、その人たちから資料、又は調査の成果を聞き、或いは福島、新潟県側等からいろいろ資料の提出を求めまして、或いは報告を聞きまして、検討を重ねて参つたわけであります。そうしておる間に、本年度の五月の末頃かと思いましたが、大体開発
会社の只見川問題に対する成案ができ上りまして、新聞でも御
承知のように、東北電力並びに東京電力、このほうは非常にこの問題に
関係深い
会社でございまして、開発
会社といたしましても、今後開発を進めて行く際に、東北電力からは資料並びに技術、東京電力からは水利権といつたような、それぞれ協力を求めませんと、実際開発というものは円滑に進まんという
関係にございまするので、三社、開発
会社と、東北電力、東京電力と
話合いまして、そして何回も何回も会議を重ねまして、三社の決定を見たいわゆる開発
会社案というものができたわけでございます。で、それができたのと相並行いたしまして、
政府のほうでは
先ほど申しましたように、いろいり研究を重ねてお
つたのと、大体或る
程度研究も進んでおりましたし、もう
一つの理由といたしましては、今年度は少くとも七月末ぐらいまでにこの問題をきめませんと、工事の締切の
関係からいたしまして、どうしても工事が一年延びる、そういたしますと、これは一応予算にも
関係がありますし、或いは外資等にも非常に
関係の深い問題でございまするから、もう一年この問題を延ばすには忍びないという上層部の意向もございまして、どうしても七月頃までにこの問題を決定いたしたいという御主張がございまして……、たまたま開発
会社の原案もでき、
政府等の調査等も或る
程度進んで参りましたので、今年の六月二十三日と、六月二十九日のこの両日に亘りまして、第八回、弟九回の
電源開発調整審議会を開催いたしまして、そしてこの二日の八回、九四の審議会では、主としてO・C・Iの調査結果並びに新潟県側の正式な案と申しますか、最後的な……、それから開発
会社並びに福島県の
意見等をつぶさに報告を受けまして、それで第九回の審議会では、一応開発に対する
質疑応答を進めたわけでございますので、その第九回の審議会の際、問題が、非常
経済的、或いは技術的に深い問題がざいまするので、
調整審議会の各
委員が全員出席して、そうしてこれをつぶさに検討するというのは、なかなか困難なように思われるので、これに審議会の幹事と申しますか、これは
関係各省の局長クラスで構成されたのでございますが、その幹事会で十分比較検討してもらいたいという付託がございましたので、今月の末から今月の下旬にかけまして、幹事会といたしまして検討を進めたわけでございます。その検討を進めました内容を申上げますと、主としてO・C・Iの成果は開発
会社並びに、新潟県の最終分水案に両案も包含されおりまして、従いまして、O・C・Iの勧告も勿論参考資料にはなりまするが、検討の対象からは抜きまして、並びに福島県側で主として
意見を述べました開発
会社案と同じ立場で行きたい、こういう
意見でございまするから、主として審議い出たしました対象の案は、開発
会社案と、それから新潟県の分水案と、この二つを審議の対象に載せまして、三回に亘
つて公式な幹事会を開きその中から通産、或いは審議庁、或いは農林、建設から、それぞれ人が出て参りまして、そうして審議をし、並びに作業と申しますか、詳細な作業に入つたわけでございます。
その調査の内容といたしましては、全体計画と、第一期の着手地点を如何にすべきかという三つの問題に亘るわけでございまするが、全体計画といたしましては、
先ほど申しましたような二つの案を中心にいたしまして、主として建設単価、或いは将来の
需給量に対する弾力性の問題、或いは工事施行上の問題、或いは運転維持上の問題、或いは灌漑用水確保上の問題、或いは森林資源の開発、及び治水上の問題、或いは早期開発上の問題、こういうふうな諸点を中心にいたして、両案を検討いたしました結果、結論といたしましては、新潟県の案よりも開発
会社案のほうがよりよろしいというふうな調査の成果が出たわけでございます。同時に第一期の計画と申しますのは、少くとも
昭和三十二年度まで、今後五カ年以内に完成するものであ
つて、今年度に着工、或いは着工準備をするという、第一次の着工地点をどこどこにしたらいいのかという問題に入つたわけございます。その着工地点の対象に挙げましたのは、幾つかの
組合せも考えて見たのでございますが、大体AからFまでございまして、Aといたしましては湯ノ谷第一、第二、第三、奥只見、これは新潟県の分水案でございます。Bといたしましては、開発
会社案をそのままとりまして、奥只見四台、山子倉三台、黒又川第一。第三番目の点は、奥只見三台、田子倉二台、黒又川第一、Dとしては奥只見三台、黒又川第一、田子倉二台、上野尻。Eとしては奥只見二台、滝、黒又川第一、上野尻。Fは田子倉三台、黒又川第一、工野尻というふうな六つの案を作りまして、その対象を主として電力
需給上り要求発電効果、或いは総合開開上の効果、資金の見通し、その他の
関係等から、詳細に検討したわけでございます。で発電効果上の問題といたしましては、内容といたしましては、建設単価、或いは
需給収益率、或いは渇水期給電力量、或いは早期開発の効果という点から、発電効果を検討したわけでございまするが、その結論といたしまして、第一期の着手地点としましては、
先ほど申しました諸案の中で、奥見三台、田子倉二台、黒又川第一とう案が一番よろしいというふうな成果を得たわけでございます。この中で
只今今申上げました
意味で、上野尻というのは、東北電力で現在や
つておりま本流沿いの下流地点にありまして、東北電力でやらしたほうがいいのじやなかろうかということにな
つておりまして、開発
会社で主として取上げる地点は、今申しました奥只見、田子倉、黒又川第一、この三カ点にするのが一番よろしい、というような調査の成果が出たわけでございます。
只今まで申上げましたのが、
先ほど申上げました審議会のその
委員から付託がございまして、幹事会といたしまして、両案を比較検討いたしました一応の調査検討の成果でございます。
ところが
電源開発促進法の第三条によりますると、「内閣総理大臣は、国土の総合的な開発、利用及び保全、電力の
需給その他
電源開発の円滑な実施を図るため必要な事項を考慮し、
電源開発基本計画を立案し、
電源開発調整審議会の議を経て、これを決定しなければならない。」こういうふうにな
つております。要は内閣総理大臣が只見問題の開発方針、開発計画という
政府案を立案いたしまして、そうして
電源開発調整審議会にこれをかけ、その議を経て、これを正式に決定するというように法はな
つておりまして、その立案に際しては、
只今申上げましたように国土の総合開発、或いは電力の
需給その他
電源開発の円滑な実施を図るために必要なる事項を考慮して立案しろ、こういうふうに法に命じておりますので、
経済審議庁長官並びに通灘大臣であります岡野さんが
先ほど申しました審議会の済んだあとで、どうしても
政府としては、
法案通りの
構想で、そうして
政府案を
作つてもらいたいというお話がございましたので、
先ほど申しました両案の比較検討するのと相並行いたしまして、
政府案の立案に入つたわけでございます。なかなか問題が技術的でもあり、或いは机上プランというのでは困りますから、
政府案を作成いたします際には、できるだけ現地の実地調査等もわからんところは見させ、或いは既存の各般の比較検討のデーターも使いまして、そうして一番この本来の着想と申しますか、法の精神に則り得るような案を作ろうということになりまして、先ず一番初めに持つた考え方といたしましては、開発
会社の案は本流案が本体でございまして、その信濃川の上流、主流にな
つております黒又川という所を開発いたしまして、ここを新潟県側で主張しております農業用水の補給に当てよう、そうしてどうしてもこの異常渇水期で足りないときは田子倉という地点から一
部分水をして参りまして、そうしてこれを黒又川に一
部分水いたしまして、そうして渇水期に対する補給に備えて、同時に黒又川には第一、第二の発電所を作りまして、七千キロの出力の発電所を設けようという計画にな
つてございます。ところがその案をよく検討して見ますと、どうも黒又川の水量並びに落差を十分利用していないように見受けられたわけでございます。と申しますのは、黒又、奥只見地点というのは田子倉よりずつと上流に位いしておりまして、田子倉から水を流しますと、どうしても黒又の中部から水を利用するという恰好になります。黒又の全落差を半分くらいしか利用していないという結果にな
つて、非常に消極的な立場に立
つております。そこで
先ほど申しました国土の総合開発という観点からいたしますと、むしろ只見川と黒又川と一本に問題を考え、只見地区全体の開発という観点に立つたほうが、より積極的な、或いは有機的な、総合的な開発というものはできるのではないかという着想の下に、今度は奥只見から分水したらどうであろうかということで、奥只見から黒又川に分水する案を考えて見たのでございます。新潟案のほうは、奥只見から真直に妙見という所まで、約四十キロの高圧のトンネルで四カ所ばかり発電するという案でございますが、
政府案として考えましたのはその案と全く異なりまして、奥只見から一部この黒又川のほうへ分水いたしまして、そうしてそこで黒又水系の水を、全部落差を利用するという着想を立つたわけであります。そういたしますと現地のほうの結論を聞きますと、その地点は開発上もよろしい、地形、地質等もよろしいというような結論もありましたので、いろいろ技術的に検討いたしました結果、このほうがむしろ開発
会社案よりもより積極的であり、技術的に見てよろしいのではないかという考えに立つたものでありますから、それを基本といたしまして、主として
経済的なと申しますと、発生電力量或いは建設
コスト等の検討をして見たわけでありますが、大体電力量といたしましては開発
会社案よりも、只見、黒又全部を合せて将来の完成した姿を見ますと約一億五千万キロ・ワット・アワー多い。それから建設
コストにいたしましても、
会社のほうは一キロ・ワット当り二十五円七十銭というのが、
政府案では二十五円六十六銭、若干安いという結果になるものですから、
経済的にもこれはよろしい。それからいわゆる総合開発という面からいたしますと、開発
会社のほうは新潟県の今所要しておる農業用水を確保するというその要望に副い得る
程度の水量でございまして、将来あの地区が大きく開発された場合の効力というものは、若干消極的な態度で出ておりますから、
政府案で参りますとその点は十分解消されまして、将来あの地区で鉱
工業或いは農業開発、或いは土地の水道或いは水位等考えましても、十分これに堪え得る電力量を用い得るという点が
一つと、もう
一つは森林の開発等から見まして、黒又の上流を合せて開発するわけでございますから、道路等の開発に伴
つてその地点だけは森林の開発になるというような
関係もありまして、総合開発の観点から見ても若干よろしいのじやなかろうか。
それから一番問題になります点は、本流に対する発電所、或いは将来の計画に対してどういうふうな影響があるかという点が一番大きい問題でございますけれども、
政府案によりまするというと本流沿いの既存の発電所に対しては全然影響がありません。将来全部下流を予定
通り開発した場合、どのくらいの影響があるかと申しますと、全部できますと四十三キロ・ワット・アワーになりますが、この僅かの分流による影響は二千七百万キロ・ワツト・アワーでございまして、〇・六%の影響しかないという結論に達してございます。ですから本流沿いに対する影響は非常に僅少であ
つて、而も黒又、只見全体を合せれば建設
コストが高いというのでございますから、これは決して二重
設備でも何でもない、非常に技術的にも
経済的にもよろしいという結論に達したものですから……。
なおくどいようでございますが、言い落しましたが、新潟県の分水案というのは、奥只見のほうからの水を七五%持
つて行きたいというのに対しまして、
政府の案は僅かに三%、三・二%の水を分水する、それによ
つて黒又川の全水系の水を、落差並びに水量を利用したい。こういう案にな
つておりますので、只見、黒又両河川とも生きるというような総合的な観点に立つたわけでございます。そういたしまして黒又水系では
会社案が七万七千キロ・ワットの発電
設備に対しまして、
政府案の砥うは十二万一千キロ・ワットの発電
設備を以て発電するという結論にな
つております。こういう次第でございまして、
委員から付託されました両案、新潟県或いは
会社案に対する比較検討と同時に、
只今まで申上げました
政府案というものが並行してでき上りましたので、首脳部のほうにこれを申上げ、爾後大臣から総理、副総理或いは
関係閣僚等の御了承を得、その他
関係機関の了承等を得まして、この二十八日に第十回の審議会を開催したわけでございます。勿論審議会にかけます際には、
先ほど申上げました促進法の第三条の
規定に基きまして正式に総理大臣の決裁、御判を頂きまして、そうして
政府案としてこれを審議会に付議いたしまして、そうして審議にかけたわけでございます。その結果、
調整審議会といたしましても満場一致これを可決してもらいまして、爾後その決定に基いて正式
答申をし、そうして総理の決裁を得まして、法の
規定通り只今関係各省のほうに通告をしてございます。その決定以後の経過に関しましては、公式の報告は受けてございませんが、電力
会社三社、開発
会社並びに東京、東北電力とも非常に円滑に実施に関して協議をしているようでございますし、新潟県、福島県のほうもそれぞれ協力態勢に向いつつあるように存じますので、本件の進行には現在のところでは目的
通り進み得るのではなかろうかというふうに考えるわけであります。
経過並びに内容に関しまして概略でございましたが
説明申上げますと以上の
通りであります。