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1953-07-27 第16回国会 参議院 通商産業委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十七日(月曜日)    午前十一時六分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     中川 以良君    理事            松本  昇君            加藤 正人君            小松 正雄君    委員            石原幹市郎君            黒川 武雄君            小林 英三君            西川彌平治君            酒井 利雄君            岸  良一君            豊田 雅孝君            西田 隆男君            海野 三朗君            山口 重彦君            白川 一雄君   衆議院議員            小笠 公韶君   政府委員    通商産業政務次    官       古池 信三君    通商産業省通商    局次長     松尾泰一郎君    通商産業省重工    業局長     葦沢 大義君    中小企業庁振興    部長      石井由太郎君   事務局側    常任委員会専門    員       山本友太郎君    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○特定中小企業の安定に関する臨時措  置法の一部を改正する法律案(衆議  院提出) ○武器等製造法案内閣送付) ○輸出取引法の一部を改正する法律案  (内閣送付)   —————————————
  2. 松本昇

    理事松本昇君) それでは只今より通商産業委員会開会いたします。本日はこの間の質疑の引続きを一つさして頂きたいと思いますが、御提案者でございます衆議院議員小笠君と中小企業庁振興部長石井君とが出席しておりますから、どうか一つ質疑をお願い申上げます。
  3. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 この間質問を始めておつたところであつたものでありますからそれの続きを質問するわけでありますが、第二条の関係でありまして、従前の規定の仕方は非常に窮屈であつたと私も思うのであります。今回はそれが大いに弾力性がついて幅ができて来たわけでありますが、それだけに指定しようと思えば何でも指定できるということになつて来ると思うのでありまして、むしろ何でも指定できるということは、結局は業種指定をしないほうが実情に合うんじやないかというようなことが考えられるのでありますが、この点について御意見は如何でございましようか。
  4. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 御指摘通り本法発動前提条件としての不況事態要件を拡げたわけであります。一方におきましてこの要件を拡げたことによつて何でも指定できるんだ、従つて業種指定は要らんのじやないかという御意見のようでありまするが、一応御尤もであります。先般御説明申上げましたように理論的に申しますと、独禁法の今回の改正によりまして、不況事態に応じてカルテル不況カルテルを認めることに相成つておるのであります。而もこの場合におきましては、所定の条件があればいいということになつておるのです。それと対比して考えまするときに、業種指定を特にやらなくてもいいという結論が私は一応観念的に出て来ると思う。併しながら一方から飜つて考えて見ますると、独禁法規定する不況カルテル結成というものが、実際面におきましては大企業に主として行われやすいということが言い得ると思うのです。中小企業は何と申しましても非常に数が多いということが一つと、それから企業実態、個々の企業実態が弱小であるという事実から見ますると、カルテル結成要件としては不十分だ、大企業の場合よりも困難だということが私は言い得ると思うのであります。そういうような点から考えまして、而も業種が非常に多岐に亙つておるということも言い得るのでありますから、前に法律で一々現行法のように規定しておるのよりも、一応政府中小企業対策の順序をやつて行く上において手がかりを与えるという意味において、政令によつて指定して行くという便宜主義を講じたほうが適当ではないかというふうな実際的な見地から、理論よりも一歩実際的な見地から政令に譲つて行こう、これを若し現行法のように法定しようということになりますと、いろいろな国会開会その他の都合で、機動性を失いますが、飽くまで政令という形によつて行政実情に応じてやらして行くという機動性を持たしたほうが適当ではないかと、こういう考え方から政令によつて指定する。理論でなしに実際の行政の動かし方の便宜というような点を頭に置いて政令指定するということにいたしたわけであります。
  5. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 従来の法律臨時立法であつたものでありますから、業種指定するということも意味があつたかと思うのでありますけれども、今回は中小企業安定法となり、恒久立法にするということになつておる点、それから更に中小企業というものはもうお話のありましたごとく、その業種も多いし、従つて常に濫立、濫売の傾向のあるのでありまして更に相当の損失が生ずる虞れにさらされておるというのが現状でありまするので、かような実情と、今回恒久立法なつたという点から考えまして、今中小企業として特定業種が安定しておつても、やがてこれは不安定になるでありましようし、或いは又現在不安定でも或る場合には安定する時期も一時的にはあるかも知れんというような点をいろいろ考え併せますと、今回中小企業安定法というものが恒久立法なつた機会に、もう業種は特に指定をしないという行き方にされたほうがいいと私は思うのでありまして、この点論議をすればこれはいろいろ尽きんと思いますが、私はその点を要望をいたしておきまして、その点につきましての質問はこれ以上申しても限りがありませんので打切ります。  次に第三十二条の二の利子補給の問題であります。今回は年五分限度として利子補給をするということになつておるのでありまして、その狙いとするところは結構だと思うんでありますが、併し年五分利子補給最大限度つて見たといたしましても、具体的な例、商工中金長期資金貸出金利というものは年一割二分七厘くらいになるのでありますが、五分補給をいたしましても、これは七分七厘に利子がなる。それだけはどうしても中小企業者が負担しなければならん。ところが今回造船資金利子補給状態を見ますると、現在でもすでに七分五厘、これを更に三分五厘にするというのでありまして、今回の五分限度とする利子補給中小企業に対した場合に、それでもなお七分五厘だ、現在の造船資金のほうでは現状でも七分五厘だ、これを更に三分五厘にするということになりますと、私は非常にバランスがとれんと思うのでありまして、殊に中小企業の中でもいよいよ損失顕著な状態で、大企業で言うならば、不況カルテル結成する条件と同じ条件、或いはそれ以上の条件にあるという場合に、利子補給をやるのが五分じやどうしても少い、むしろ五分限度とすると書いてあると、そのときの情勢によつて或いはもつと高い利子補給ができるということができなくなりはしないか。さような考えを持つのでありますが、この点について御意見は如何でありますか。
  6. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 現在政府のやつておりまする利子補給の制度、又一面から申しますと、政府資金の放出に際しての金利の問題は、農業関係におきましては御承知通り、凍霜害等におきましては三分五厘、ものによりましていろいろ利子の段階があることは御承知通りであります。これを今回の造船関係におきましても御指摘通りでございます。私は率直に申しまして、今商工中金金利一割二分五厘、長期資金につきましての金利というものをでき得べくんばもつと下げたいということを感ずるのであります。先般御審議のあつたはずの中小企業金融公庫におきまする金利が、政府説明は一割になつておりますが、これを衆議院におきまして、七分五厘に下げろという要望附帯決議にいたしておるようでありますが、できるだけ中小企業へ安い金利資金補給して行くということはこれから努力をしなければならんと思うのであります。その金利を幾らにして、そうして補給すべき限度をどうするかということになりますと、金利の高さとの見合いの問題もございますが、一応通常規定されておるように五分というふうな限度を実は採用いたしたのであります。特に説明に申上げましたように、本法制定の際に、現行法制定の際の決議にそういうふうな規定もあるし、あれこれ考えまして、五分限度として利子補給をすることにいたしたのであります。特に一つ考えられますことは、農業資金或いは鉱山、船舶に対する資金と違いまして中小商工業資金というものが今度は調整資金補給という問題が長期の場合と又短期の場合があると思うのでありますが、特に生産調整というふうな場合を考えて見ますると、比較的短期だ、まあ半年か一年という期間の資金が多くを占めるのではないかと考えるのであります。そういうふうな資金に対して利子補給をするということになりますと、五分程度というものがそれらの資金利子との見合いが一応とれやせんかということを私は考えておるのであります。
  7. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 年五分限度とするということがはつきり書いてあるところに将来禍根を残すのではないかという考えを強うするのでありまして、というのは御承知のように、只今金利引下げ傾向は相当強いし、又中小企業界としては、金利引下げを最も要望しておるのでありまするが故に、殊に調整組合の借入金の場合には特に長期に亙つて事業更正計画というようなものを立てるでありましようし、長期資金要望する場合が相当多いであらうと思うのでありまして、そういう点等から利子補給をするということは誠に結構でありまするけれども、私はむしろ数字で現わすならば、一割を限度とするぐらいと言いたいのであります。併しそれが困難であるという度合が強いならば、むしろ年五分限度とするという文句のないほうが将来のためにいいのではないかという点を痛感するのでありまして、この点については十分御研究を願いたいと思うのであります。  第三に、今回この中小企業安定法という形において恒久立法ができるということについて、政府は同音をしておるのかどうか。と申しますることは、これで恒久立法になりますると、相当統制的な内容強度に盛り込まれてこれが法律になるのであります。而もそれは臨時立法でなくて恒久立法だということになるわけであります。更に又今回政府提出で出ております輸出取引法改正法律案、これも内容から見るというと、実に統制強度に行い得るような法律になつておるのであります。又武器等製造法案、これを見ましても、その内容事業免許制まで布いて行こうということでありまして統制の色が実に濃い法律と言わざるを得ないのであります。従つて私は、政府が従来統制というものはむしろ極力外して行く、そういうふうになつてつた、現政府としては、非常に大きなここに方針の変化が起つておるということを肯定せざるを得ないと思うのでありまして、この点については政府から私は確たる方針を声明してもらいたいと思うのでありましてその点においてこれら三法案全体に関連する問題として、今後政府は如何なる考えを持つておるのであるか。自由主義経済とこれらの法律に潜んでおります大きな統制の而も強度に行い得るような行き方になつておるという点についての相互の関連性はつきりさしてもらいたいというふうに考えるのであります。その点は政府の相当なかたに出て頂いてはつきり御説明を願いたいと思うのであります。
  8. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 今豊田委員の御高見でありますが、政府との関連におきましては、当然政府の答弁があるはずでありますが、本法提案に当つて政府と連絡したかという、こういうお話があつたようであります。これは連絡をしております。その点だけ一つ御了承願いたいと思います。それで今の御質問の中で私の私見を申上げますると、独占禁止法の一部改正、又輸出取引法の一部改正中小企業安定法の一部改正、これらに共通の点は、不況切抜策としての調整事業を認めるという点に重点があること、従いまして経済の基調に大きく旋回をしておるのだという考え方は私は適当でないというふうに考えております。
  9. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 これについては、いい悪いとかいう問題ではないのでありまして、従来政府の大きな方針として掲げて来ておつたものと、今回の諸法案内容と如何にこれを見て行くか。要するにこの事情の大きな変更もありましよう、併しそれらについてどういうふうな考え方に変つて来ておるか、これは将来にも関係することだと思いますので、その点について方針を明らかにしてもらいたいと思うのでありまして、その点委員長にお計らいを願いたいと思います。
  10. 松本昇

    理事松本昇君) 今の問題は、豊田君のはいずれ改めて政府責任者に出て頂きまして御回答を願うことといたします。
  11. 小林英三

    小林英三君 第二条の第一項中に、先ほどちよつと豊田君からも御質問があつたのでありますが、別表において政令で定めるということになつております。それに対する提案者からの説明を聞いておつたのでありますが、私が承わりたいと思いますことは、この附則の第二項に、「左に掲げる業種は、改正後の第二条第一項の規定によりて指定されたものとみなす。」というので、こういうように列記してあるのでありますが、もとの別表でありますが、そこで承わりたいと思いますことは、政令で定めるのでありますからして今後いろいろなものがたくさん認可されると思うのでありますが、この附則にだんだんと加えて行くんですか、これからのどんどん認可されたものは。
  12. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 実は附則をつけましたのは、本法国会の承認を経て施行されましたときに、政令で出すまでの繋ぎと、こういう意味で書いておいたのであります。それと、従いまして第二条による政令というものが別に出て来るわけであります。その新らしく作られる政令で新業種というものが指定されるのであります。今申上げましたように、繋ぎ意味において別表を加えた、本来の姿なら別表は要らんのでありますが、それともう一つのことは、現在すでに指定されておる業種が新らしい政令において指定するときに落ちると困る、折角確保されておるものを政令のときに落ちたら困るという二つの心配から便宜別表に掲げた。こういう事情であります。
  13. 小林英三

    小林英三君 私が聞きたいと思いますことは、政令でありますから、従来の法律形態からいいますと、こういうものは要らないわけでありますが、特に今までの別表附則に直して今度の改正案に対する第二条第一項の規定によつて指定されたものとみなすとありますが、ただ私どもの手許に、成るほどこれは将来当然政令によつて認可されるべきものとみなすというような業種からいろいろな陳情も出ておるのですが、こういう法律形態で行きますと、ちよつとこれのみが指定されたんだ、認可されたんだというような感じを抱くのですけれども、全然これはそうしますと、法律が成立いたしますと、ずつと永久にこのままの形で残るわけですか、それとも新らしいやつはやはり追加して行こうというのですか。
  14. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 新らしく本法公布施行になりますと別に新らしい政令を作るわけです。そうして平たく申しますと、そのときに今別表に載つておるのは不適当だから必要がないということで、削除してもいいということの場合を考えますと、政令で削除ができる。これは本当は本法が施行されたときにこういうものを書いた政令を作ればいいわけですが、先ほど申上げましたように、現行法では法定になつておりますが、法律別表だけきめることになつております。それを権利というと語弊がありますが、そのまま移行させるということと、時間的なプランクができないように、こういう考え方別表というものを作つたわけであります。
  15. 小林英三

    小林英三君 そうすると、これは今までの別表は残さなくてもいいわけですね。本来の法律形態からいいますと別に。
  16. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 立法論としてはなくてもいいわけです。ただいわゆる繋ぎをつけておる、こういう意味です。
  17. 小林英三

    小林英三君 もう一つ承わりたいと思いますことは、この第二条の「この法律の適用を受ける業種は、工業部門に属する業種であつて、」と、こういうのがあるのですが、この工業部門という意味ですね、これを一つわかつたようなことでありますけれども、ちよつと承わりたいと思います。
  18. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 工業の定義つきましてはいろいろございましようが……。
  19. 小林英三

    小林英三君 つまり私の考えでは、変な質問をしたようでありますが、所管が必ずしも通産大臣所管でなくても工業部門はたくさんあると思うのです。農林部門もありましようし、いろいろな部門があるだろうと思うのですが、そこで御回答願わなくても当然そうだろうと思うのですが、そういたしますというと、認可権というものが、いつも通産大臣になつておるように思うんですけれども、例えば通産省所管に属しない工業部門であつた場合において、やはり通産大臣認可するんですか、或いは他の方法によつて認可するんですか、その経過をちよつとお伺いします。
  20. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) その点につきましてはたびたび各委員からお尋ねがあるわけでありまするが、工業部門というのは、物に生産加工を加える事業体をいうということは御承知通りであります。この物に生産加工を加えるというのは、現在の各省所管から申上げますと、それぞれの所管に亙つておることも御指摘通りであります。ただその中で、比較的通産大臣に多いということもこれ又事実と思うのであります。各委員からもお話がありましたのですが、それならば現在の各省設置法業種を縦割にしておる、縦割にしておるからその縦割にしておる状態において各主務大臣にこの権限を持たしたらいいじやないか、こういう御意見が実はあるわけであります。その点につきましては、私は実はこう考えて立案をいたしたのであります。この法律中小企業という一つの横から見た総括的な一つ態勢である、そうして現在の各省設置法から見ますると、横に中小企業という形で所管しておる役所というのは中小企業庁だけであります。中小企業庁中小企業という横から見た総括的な立場からいろいろな指導をしておる。例えば診断の問題にいたしましても、或いは簿記の指導にいたしましても、或いは金融の問題にいたしましても、総括的な責任態勢をとつて来ておるのであります。そういうような実情から考えまして、この法律中小企業の全体的な立場に立つておる中小企業庁監督大臣と申しますか、所管大臣と申しますか、通産大臣にするというふうに実は考えたのであります。いま一つ役所の組織をできるだけまとめて行く、行政を簡素化して行くというのは、一方において国民的要望だと私は思うのであります。その国民的要望に応じて成るべくなら一つにまとめたほうがいいんじやないかと私は考えまして、今言つたような各省設置法との関係その他から見て、取りあえず一本でまとめて行つたほうがいいという考え方で立案いたしたわけであります。
  21. 小林英三

    小林英三君 そうすると、いずれの所管に属しようとも直接に通産大臣がそういう場合にはいつでも許可できる、こういう考え方ですか。
  22. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 大体そういうような考え方です。
  23. 岸良一

    岸良一君 今小林さんの御質問に対して小笠さんから御答弁ありましたが、この農業関係の仕事になりますと、単にこの生産或いは加工の側から見ただけでいかん場合が非常に多い、生産との関係考えてやらなければ、今の調整なんというものはなかなかむずかしい問題であります。一方で締めれば結局生産のほうにも及んで行くというような関係があるのであります。これは小笠さんのよく御承知だろうと思う。そういうような点で、私は深甚な御注意を払つて頂くことが必要だろうと思います。今のお話のように、中小企業を横に見たそういう考え方もよくわかりますし、又この際行政簡素化前提にするということも考えられますけれども、一方においてやはり各省の責務、責任と言つたような面において、例えば農林業については、主務大臣責任を持つというようなことも設置法の中に謳われております。そういうような関係から今生産との関連においていろいろ農林省がやつておることにも非常に影響が及んで来るだろうと思うのであります。これは何も農林省の肩を持つわけではありませんが、なかなか農村の実情というものはそう簡単なものでないということを御了承願いたいと思います。
  24. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 私から申上げるまでもなく、一定の生産消費への一過程におきまして調整をやるということになりますと、関係方面に非常な影響があるということは御指摘通りであります。そこで私は今回の改正におきまして、第十六条の三項の中に、現行法では「消費者利益を著しく害すること。」と書いてあります。それを「消費者及び関連事業者利益を不当に害すること。」、これがこういうときにはこういうふうに該当するから認可をしてはならないという前文が頭にあるわけであります。そこで関連事業との調和をできるだけ強くとつて行くということが、今後の調整事業運用上一番大事だと思つておるのであります。ここで一方におきまして審議会規定が御承知通りあるのであります。この審議会規定におきましては、いろいろなことを、重要事項審議することに相成つておるのでありまするが、この審議会事項業種が殖えるに従いまして、実際上運用がなかなかむずかしいということになりますので、極く基本的なものを審議会に付議するということにいたしましてその審議会委員数が今日五十名を三十五名に改めておるのでありまするが、ここで広く各界のその道の指導者というか、達見の士を集めて全体の運用に遺憾なからしめたいと考えておりますが、それを各業種別に見ますると、今岸委員の御指摘のように、例えば農産物になりますと、農産物生産部門集荷部門等との関係が非常に厄介であることも私は承知いたしております。そういうような例を考えまして、この新らしく入れた「消費者及び関連事業者利益を不当に害する」というような場合には認可をしてならないという一項を入れた。運用につきましては、業種別専門委員会と申しまするか、諮問委員会と申しまするか、それを作つてその間の調整に遺憾なからしめて行きたい、このほうが審議会でお座なりの場合よりも業態の実態を把握できるのじやないか、こういうような考え方で実はおるのであります。先般も石原委員からか誰かからお話がありました関連事業者利益を不当に害すること、害する場合は認可してはならないという場合には、関連事業者利益事業者にどういう影響を及ぼすかということを審査、調査するの義務政府は負うものと実は私は考えておるのであります。その義務遂行上、今申上げましたような専門委員会というようなものを作つてこれをやつて行くということにすると、比較的過ちがないのではないかというふうに考えておるわけであります。
  25. 岸良一

    岸良一君 お話の点は私もよくわかります。わかりますが、実際こういう不況カルテルその他に対すると、或る場合においては相当敏速に事態に応じて措置をするということにならなければならん。それはやはりよく事情を知つたところで平素それを担当しておる者がやるということがこれは一番早いと思う。それで今のようなやり方で、例えばいろいろな意見杆格ができたというような場合になりますと、これはなかなか実際の問題といたしましては簡単に行かない、却つて事態を紛糾させるというようなことになりはしないか、それは中小企業というものを一つの官庁でおやりになるのはいいけれども、その点は審議会等通産省においてそうして統一的におやりになるのはいいけれども、今の実際に即応する調整というようなものは生産等関係のあるものについては別に考える必要があるんじやないか、こう私は考えておるのであります。御参考までに申上げます。
  26. 海野三朗

    ○海野三朗君 只今関連して、その審議会作つて影響するところをよく調べた上でやるのだ、こういうお話でありますが、それが法文の中に出ておりますか。
  27. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 法文の現行法第三十三条、「この法律の施行に関する重要事項調整審議するため、通商産業省に中小企業安定審議会を置く。」第一項がそうでありますが、第二項は「審議会は、会長一人及び委員五十人以内で組織する。」この五十人が今回三十五人になりました。第三項として「会長及び委員は、」云々、こういう方面から選んで、通商産業大臣が任命するということに相成つておるのであります。この中で今回「会長及び委員は、関係行政機関の職員及び学識経験のある者のうちから、通商産業大臣が任命する。」こう書いてあるのでありますが、これは一々例えば、金融機関の役職員、或いは何と申しますか、販売業者、消費者云々と書くのを、学識経験者という言葉で一本にまとめたということで内容は同じであります。その点はそこで今申上げましたようなことで、第三十四条に「審議会の諮問事項」というのがありまして、そこに審議にかけらるべきものを列挙いたしておるわけであります。
  28. 海野三朗

    ○海野三朗君 先にお答えがあつたようでありますが、私がぴんと来ないものですから、もう一度お伺いをいたしたい。この関連事業者利益を不当に害しない、不当というのは、そのリミットがどの辺にあるのでございましようか。至つてぼんやりしておるように考えられますが、その不当というのは、極限がどういうものでございましようか。
  29. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 不当は不正当だとこういう意味であります。不正当だということは非常にむずかしいのでありますが、ただ法律におきまして特に今回の改正にかかつておりまする独禁法の中には、不公正或いは不当という言葉が随所に出ておることは御承知通りであります。それでそれと同じようにこの関連事業者との調和を図つて行く、一方の特定事業の行う調整事業によつてその関連したあと先或いは横の関係にある関連事業者がそのためにひどい影響を受けるということのないような形にして行こうという考え方であります。例えば関連事業者の主張というようなものを十分に尊重して、それとの利害の調整を図りながら、調整事業を行なつて行くということであります。で私のお答えははつきりしないようでありますが、リミットはどこだということになりますと、物のそのケース、ケースの具体的な実情によつてこの不当に該当するかどうかということを判定するよりほかに実はないと思うのであります。はつきり物差で計るようには参りかねるのでありますが、そこは社会常識を働かして、又関連事業者との話合いを十分にして、一方の力が強く一方に悪い影響を与えないようにして行くということを私は言つておると思うのであります。
  30. 海野三朗

    ○海野三朗君 そうして両方の意見が合わなければ調整をとつて妥協ができれば先ずその利益は不当ではなかつたと、こういう判断を下すわけなんですね。つまり不当ということが至つてあやふやなことでありまして、立場々々によつて皆違つて来る、それでありますからここにはつきりしたことが考えられない、というのは、つまり話合いの上でうまく結末がついて行けば不当でない、こう見るというわけなんですね。
  31. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 海野委員のような、御指摘のような場合が多いと思うのです、実際問題から言うと。併しながら業界の立場というものは御承知通り、非常にいろいろ複雑いたしております。従いまして必ずしも話が妥結がつくという場合ばかりに限らないという場合も勿論予想しなければならないと思う。その際におきまして、調整規程の認可に当りまして、通産大臣は全体的の立場から見て特に経済の動きそのものの実情から見て、適当な判断を下して不当でないと判断する場合もあり得ると私は思うのであります。
  32. 海野三朗

    ○海野三朗君 そういたしますと、つまり最後は通産大臣のほうで不当であるか不当でないかの最後の断案を下すというわけなんでございますか。つまり不当であつても不当でなくてもとにかく両方が妥結できないような場合には、通産大臣がその間を勘案してどちらかに断を下す、こういうことになるのでありますか。
  33. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 本文第十六条第三項は、通商産業大臣は、第一項の認可の申請のあつた場合において、当該調整規程の内容が左の各号の一に該当するものと認めるときは認可をしてはならないと書いて今の事項がある、従いましてこの条文から考えますると、通産大臣が最終の認定というか、判断を下すということになるわけであります。
  34. 海野三朗

    ○海野三朗君 それではもう一つ、この中小企業のリミット、極限というものはどこに引いてあるのでありましようか。
  35. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 本法につきましては御承知通りに、第二条に『この法律で「中小企業者」とは、常時使用する従業員の数が三百人以下の事業者をいう」。』というふうに一応規定いたしておるのであります。
  36. 海野三朗

    ○海野三朗君 これには繊維卸商なんかは入つておるのでございますか。
  37. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 第二条の第一項に「この法律の適用を受ける業種は、工業部門に属する業種であつて」としてあつて工業部門と明定しております。
  38. 海野三朗

    ○海野三朗君 ここに私が只今受取つたのでありますが、日本繊維卸商団体連盟からの申入でありますが、この法律につきまして一条、二条、三条、四条こういうふうな申入が来ておるのでありまするが、御当局のほうではすでにこれは御覧になつておるのでありますか。
  39. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 御当局といいますと、提案者でありますか。
  40. 海野三朗

    ○海野三朗君 提案者です。
  41. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 提案者は拝見いたしました。
  42. 海野三朗

    ○海野三朗君 御覧になつた。ああそうですが……。この前提案者にお伺いしたんでありますが、この自然の自由競争というのをこれは制約した法案になるわけでございますね。つまり危殆に瀕するような状態にあつたならば、ここに法案を設けてそうしてこれを危殆の状態から救おうという法案であつて、私がこの前伺いましたのは、それは自然淘汰によつて勝負が決して行くのではないか、こういうことをこの前申上げたのでありますが、そのことにつきましてはつきりした提案者の御信念のほどを承わりたいと思うのであります。
  43. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 本法制定するに至りました、即ち第十四国会におきまして本法が通過いたしました際におきまする提案の理由というものがすでに御承知のことだと思うのでありますが、不況事態に応じて中小企業の不当な競争、無謀な競争ということによつて中小企業がだんだんに悪くなつて行くということを防止するために、この法律を作つた、こういうことにあるのであります。で今回はその大黒柱で立つておるところの一部を模様替をするということでありますので、第十四国会におきまして提出されたときとの狙いは全く同様でございます。私は私見に亙りますが、日本の今日の経済実態から考えまするときに、特に中小企業の日本の現状というものを考えまするときに非常に数が多い、そうしてその各事業者が比較的経済的に弱い力である、これが不況を受けますと、ともすれば無謀な競争に入つて行き勝ちであります。無謀な競争に入つたときにそれに任しておけばいいものだけ残るじやないか、適者生存の原理が働くじやないかというお考えもありましようが、それでは日本の中小企業界に無用の混乱を巻き起すことのみならず、最も国として優秀な企業或いは必要な企業の存立がその無謀な競争の過程において存立すると保証は私はできないと思うのであります。そういうような事情から考えまするときに、どうしても中小企業者には何らかそういう事態に応じては、外からつつかい棒をしてやる、つつかい棒をすることによつて、共同動作をとることによつて不況を切抜けて行くという施策が必要だと私は思うのであります。この点は先ほど豊田委員からも、経済運用上の原則論についての考え方がありましたが、私は十四国会におきましてこういう法案が通つたということは、この事実に着目して何でも自由放任主義で行けるんだという考え方に修正を来たしておるという一つの例だと私は考えておるのであります。そういう趣旨におきまして特に中小企業というものが、社会生活におきまする中産階級と申しますか、中堅階級でありますので、これの維持というものは経済的要因以外からも考えまして、その不況時における混乱を未然に防止して行く措置が必要であると私は考えております。
  44. 海野三朗

    ○海野三朗君 極く今特殊な実例をとつてお伺いするのでありますが、例えば度量衡の問題にしましても、在来の製造方法によつてつてつた、そうしてその工業が成立つていた、そこに研究の結果、材料も僅かで済むし、又便利なそこに度量衡が発明された、そうしてこれを作り出しで行くということになつて来ますと、在来の工業家というものは一遍に大恐慌を来たしてしまう現象がここに起つて来るのでありますが、そういう際には如何なる態度をおとりになるのでありましようか、それをお伺いいたしたいと思います。
  45. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 御承知通り、この調整事業を認める、調整事業というものは平たく申しますと、原則が任意カルテルであります。従いまして入りたい人が入つてつて行く、入る人が少くとも同じ事業を営んでおる者の三分の二以上が、少くともその生産業の二分の一以上が当該業種で中小業種によつて占められておる、いろいろな条件が実はあるのであります。この組合を作つて調整事業をやるのには御承知の第九条にその点がはつきり書いてあるのでありますが、組合員の総数が当該業種の全従業者のうちの二分の一以上があり、且つ総組合員の三分の二以上が中小企業者であるものでなければこの組合を作ることができないということに実はなつておるのであります。これが最小限の組合構成要件でありますから、この構成要件を例えば最低で調整組合を作つたといたします、そうすると、約二分の一弱というものが組合の外におるわけであります。外におつてそれぞれの目的に従つて動いて行くことができるということに実はなつておるのであります。ここに問題があるのでありまして、任意カルテルである、任意カルテルでありますから、そういう特殊な技術、特殊な考案をしておる人が若しも個々に組合に入つて一緒にやつて行くという必要があれば入るし、入りたくなければ外におつてつて行く。併しながら一面においてそういうことでは組合の運営がうまく行かないという心配があるのであります。特に中小企業不況切抜策という大きな狙いが外におる者によつて潰されて来るという心配があるのであります。そこで二十九条に参りまして、通商産業大臣が是非必要だという場合に、即ちそのままの組合がやつて見たら、半分以上でたつて見たらなかなかうまく行かんのだ、そしてそのまま放つて置くことによつて業界が非常な影響を受けるというときに限りまして、通産大臣命令を以ちまして、組合のやつておることと実質的に同じ内容事項に従うことを命令を以てすることができる、こういうことになつておるのであります。これはこの場合におきまして、今申上げましたような特殊な技術、特殊な考案を持つておるものを阻害するというふうなことは、産業政策の立場から許されません。当然に通商産業大臣がこの二十九条の発動に際しましては当然にこのことを考慮することだと私は思います。これは丁度独占禁止法に今回生産設備の制限を不況カルテルにおいて認めるということに相成つておるのでありますが、設備の改善、更迭より、より良くなるという場合を例外的に除いております。そういうような考え方と同様な考え方で進めて参るべきものでありまして、二十九条の命令を出す場合も当然そういう考え方で行くと私は考えるのであります。
  46. 海野三朗

    ○海野三朗君 常に進歩改良というのは一つの小さい革命でありまして、この新しいこと、そうして又良いことが考えられますというと、在来の古い穀に閉じ籠つて商売をしておるものから見ますというと、ここに一大圧力を加えるのが今日世の中の一般の情勢であります。そういう際に、その新らしき発明なり考案なりによつて品物を作り出して行くという際においては、それに掣肘を加えるような法案の動き方ではまずいのではないか、そこがいわゆる競争の時代でありますから、その点について如何ようにお考えになつておるのでありますか、伺いたい。
  47. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 私から申上げるまでもなく、カルテルの問題に対する反撃の基礎は、一つ企業の創意努力の、何と申しますか、怠らせると申しますか、カルテルの上に偸安の夢を貧る虞があるのだということがよく言われるのであります。そこでこのカルテルという問題を考えるに当りまして、最小限の必要に応ずるという限界を切ることが先ず大事でありますと同時に、日本の今日の与えられておる経済界の実情というものが、海野委員の御指摘のように、できるだけ新らしい考案、新らしい技術によつて新らしい生産方式をとるように指導して行かねばならんという要請があるわけであります。従いましてカルテル運用に当りまして、そういうものを滅却するような方法はとつてはならないのであります。ただ問題の一つは、ともすればそういうふうな場合があるが故に、カルテルはいかんのだ、通義をとめるのだ、こういう極端な議論をする向きがあるのであります。併しそれは当らないのでありまして、広い立場から見まするときに、新らしい新規の考案をする者に対してそれを助成して行くという途は十分に開かれる余地がありまするのみならず、一面においてカルテルを認めざるを得ないような経済事態におきまして、当該産業の維持を図るということが、経済再建への私は一つの礎石になると私は考えておるのであります。
  48. 加藤正人

    ○加藤正人君 私は遅れて来たので、すでに諸君のうち質問した人があるかも知れませんが、この法律のうちで非常に重要だと思うのは、この審議会でありますが、それに関係した改正案を見ますと、大分簡素化されているというか、とにかく大分意を用いて作られたと思う現行法が非常に簡単になつておるということは、何かこれは今までの経験に徴してこういうふうに改正されたのでありますか、その点をお伺いいたしたい。
  49. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) その点につきましては数回御質問があつたのでありまするが、実は現行の審議会につきましては、その付議事項が相当多くの付議事項に実はなつておるのであります。それから委員が五十人、この委員の選任の範囲がこれこれこれこれと規定いたしておるわけであります。これを今回付議事項を基本的な事項に限つたということが一つ改正委員を五十人を三十五人にしたということが第二の改正、第三点は委員の選任をすべきグラウンドと申しますか、領域というものを一本にまとめた、即ち関係行政機関の職員と卓識経験者というふうにいろいろな面を学識経験者という言葉でまとめた文句の整理であります。これはすでに本法改正の骨子であります。本法ができるだけ中小企業の不況対策、不況切抜策一つとして多くの企業にこれが適用される場合を予想して、法定集積を法定せずに政令に任しており、必要の経済実態に応じてこれを認めて行こうという形にいたしておるのであります。従いまして、だんだん多くなりますと、中小企業安定審議会委員五十人ということではなかなかむずかしいということが言われるのであります。そこで今回は、第十六条の第三項に、現在の「消費者利益を著しく害すること。」ということを直しまして「消費者及び関連事業者利益を不当に害すること。」先ほど申上げたそういうようなことがあつて認可してはならんという規定で拡げておるのであります。このことは関連事業者意見を聞き、その実態を調査する義務行政官庁に負わすわけであります。この際に私は行政庁といたしましては、関連事業の状況、影響を調査するのに、業種別専門委員会と申しますか、それぞれの学識経験者を集めて、部門々々で意見調整を図らして行くということに実はいたしたいと思うのであります。そうしてそれが出て来たものを最終的に審議会というので広い視野に立つて決定をして行くというふうの機関にしたらどうかというふうに実は考えて直したのであります。  以上のような事情でありまして、審議会の条文整理というものをやりましたのは、今言つたような趣旨からやつたのであります。これは独占禁止法におきまするような状況とは若干違いますので、中小企業のこういう事業というものは非常に場合が多いのでありまするから、できるだけ実質的に関連事業者利益行政庁において調整をさして行くというほうが実情に合うんじやないかとしうような考え方をいたしておるわけであります。
  50. 松本昇

    理事松本昇君) 本会議のほうで大分出席を求められておるかたが多いので……。  ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  51. 松本昇

    理事松本昇君) 速記を始めて下さい。  それでは時間の関係で一応休憩いたします。一時半から再開いたします。    午後零時九分休憩    —————・—————    午後二時九分開会
  52. 中川以良

    委員長(中川以良君) それでは休憩前に引続きこれより通商産業委員会を開きます。  午前中に引続きまして特定中小企業の安定に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題に供します。質疑を続行いたします。
  53. 加藤正人

    ○加藤正人君 午前中質疑をいたしまして答弁を一応承わつた関係上、引続いて質問いたしますが、答弁によりますと、現行法にある委員審議会の構成のうちで指定業種に属する事業を営む者、又はその製品にかかる販売業者及び消費者指定業種関連する事業を営む者というようなものが皆除かれて、それを代行するために関係行政機関の職員及び学識経験者たるものということですが、こういうふうにされたというのは五十人設ける構成では、船頭多くして船山に登るたぐいで、迅速なる審議が妨げられるという意味があつてなされたものでありますか。
  54. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 一つの理由は、午前中にも申上げましたように、各関係業界の連絡調整というものをよくさせるという理由で、現行法におきましては、こういうふうに委員選任の範囲を規定いたしておるわけであります。ところが今回の改正法案におきましては、審議会委員を、業種の増加につれてだんだんに殖やして行くというわけにも実は参りかねるのでありまして原則的に建前として、十六条の三項に、関連事業立場を守る規定としてそうすることによつて、この審議会の構成の選出業界というものの規定を学識経験者ということで取りまとめたのであります。先ほども申上げましたように、業種がだんだん殖えて参りますと、業界ではこういうふうな加工関係のものは入りますが、或る業界では入りにくいというようなことにもなりましよう。又審議会という立場から見ますと、全体的な立場から、各業界のこの本法運用の基本的な事項審議、調査するというほうが適当だということが考えられますので、今申上げましたような改正にいたしたわけであります。特に業種別に、関係業界との調整は、専門委員会と申しますか、というようなものを行政的に作つて、そこで十分に意見調整、公正な結論の発見に持つて参りたい、こういう考え方でおるわけであります。
  55. 加藤正人

    ○加藤正人君 専門委員会というものができるのですね。
  56. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 例えば陶磁器というようなことになりますれば、陶磁器の販売業者、或いは又小売業者と申しますか、主たる原材料の供給者というようなものも以て、必要がありますれば輸出業者というものを入れて、その業界の特殊事情に応じて、陶磁器工業における調整の具体的な内容というものを審議せしめ、当該業界としての妥当な結論を出して行くように、行政的に運用して参わたい、こういう考え方でやつて参りたいと考えておるのでございます。
  57. 中川以良

    委員長(中川以良君) ほかに御質疑ございませんか。
  58. 海野三朗

    ○海野三朗君 関連事業者利益を害しないというふうにしてありまするが、そういう場合には、不服の申立を受入れるようになつておりますか、どうでしようか。
  59. 小笠公韶

    衆議院議員小笠公韶君) 端的に言つて、不服の申立を受入れるという形ではなくて、先ほど加藤委員お話申上げましたように、業界の意見を、専門委員会というようなところで十分に出して、そこで比較的公正な結論を出して行こうと、こういう考え方であります。従いましてその専門委員会審議の中において各方面の意見を出して頂いて行くというふうな考え方であります。その点につきましては、午前中にお答え申上げましたように、意見調整ができなかつたときどうなるのかということにつきましては、その最後のときに、いわゆる産業全体の立場、或いは公益の立場を代表する通商産業大臣において判断を下して行くということにいたしたいと考えておるのであります。
  60. 中川以良

    委員長(中川以良君) ちよつと速記をとめて下さい。    午後二時十六分速記中止    —————・—————    午後二時四十一分速記開始
  61. 中川以良

    委員長(中川以良君) 速記を始めて下さい。  それでは本法律案審議は一応これでとどめておきまして、次回にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 中川以良

    委員長(中川以良君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  63. 中川以良

    委員長(中川以良君) それでは次に武器等製造法案を議題に供します。前回に引続き質疑をお願いいたします。
  64. 海野三朗

    ○海野三朗君 ポツダムの政令は日本憲法に優先してあつたのでありまするが、ポツダムの勅令が今日廃せられたときにおきましては、やはりこの行政協定、安保条約が憲法に優先するものでありましようか。憲法が優先するものでありましようか。これをお伺いしておきたい。
  65. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 憲法が優先いたすと考えております。
  66. 海野三朗

    ○海野三朗君 それでは戦争も放棄したのでありまするから、従つて武器を製造するということは新憲法の下においては認められないのではありませんでしようか。殊に昨今造られましたその武器が保安隊によつて内灘でぶつ放されておる現状においては、そのことは憲法に副わないのではありませんか。それをお伺いしたいと思います。
  67. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 憲法第九条におきましては、この戦力の保持を禁止いたしておることは御説の通りでありまするが、併しながらここに言う戦力とは、近代戦争の遂行に役立つ程度の装備或いは編成を備えまして、人的物的に組織化された総合力を戦力と解するのでありまして、単なる武器そのものは、成るほど戦力を構成いたします要素ではありまするが、戦力そのものではないという解釈に立つておるわけでございまして、従いまして武器の製造を認めるということは戦力の保持を禁止する憲法には違反しないというふうに考えておるわけでございます。
  68. 海野三朗

    ○海野三朗君 それはまあ鉄砲玉やあの砲弾、ああいうものが戦力でないと解されておりますけれども、あれは何と見たつて武器に違いがないのではありませんか。
  69. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 武器であるとは我々も武器だというふうに考えるのでありまするが、併し武器そのものは戦力を構成する一つの要素でありまして、戦力そのものではないというふうに考えておるわけでございます。
  70. 海野三朗

    ○海野三朗君 それはまあ如何にそこのところを御解釈になりましても、とにかくこの新憲法の下では戦争放棄が語つてありまするうちは、その武器を造るということも国家として認めるべきものではないと思いまするが、それをも差支えないと解釈をしておられるのでありますか。
  71. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 憲法第九条には武器を造ることは抵触しないというふうに考えておるわけでありまして、例えば警官が所持いたします拳銃、拳銃をこの法案においてもやはり武器というふうに定義付けておりまするが、こういうものも造るということはやはり憲法違反にならない。御承知のように武器を製造いたしております主たる目的は、目的と申しますか、現在発注は駐留軍からの発注でありまして、これがドルによつて支払われますので、一面特需といたしまして貿易に準ずる産業であるという意味合いからこの武器製造産業というものを我々は見ておるわけでありまするが、御説の憲法違反であるという点については、我々は解釈を異にしておるわけでございます。
  72. 海野三朗

    ○海野三朗君 今警官が持つておる拳銃のごときものというお話でありまするが、それとは全くその範囲を越えたる十五サンチのあの砲弾、而もそれが保安隊によつてぶつ放されておる現実の姿は如何に見ていらつしやるのでありますか。
  73. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 保養隊のぶつ放しておる状況に対しまする見方ということなのでございまするが、これは治安のために必要な保安隊がその訓練のためにそういうことをしておる、こういうふうに私どもは見ております。
  74. 海野三朗

    ○海野三朗君 それは甚だ苦しい御答弁のように私は思うのでありまするが、治安でありましたならば、十五サンチのあの大きな砲弾、治安のためとはちよつと考えられない。小銃弾でありましたらこれはなんでありますが、十五サンチの直径、あの大きな大砲の弾をぶつ放しておるのは明らかにこれは戦争への演習をやつておるとしか常識的に考えられないのではありませんですか。あれをもやはり治安のために、国内に暴動が起つたときは十五サンチの弾をぶつ放さなければならないというふうにお考えになつておるのでありましようか。治安の範囲を越えたるものであると思うのでありまするが、如何でございましようか。
  75. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 十五サンチの砲弾をぶつ放しているかどうか、私も上くそのことは承知をいたしておらないのでありますが、仮にそういうことがありましても、私どもは別に戦争行為、戦争の放棄ということについて否定であるというふうには考えておらないのであります。
  76. 海野三朗

    ○海野三朗君 この新憲法の下ではそういうふうな戦力を培うようなものの製造は許さるべきではないと私思うのであります。従つてこの武器を製造しておることは、政府は見て見ぬ振りをしておる態度が私は間違つておると思うのでありますが、その点に対して政府は如何ように考えておられましようか。
  77. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 本法案に定義いたしておりまする武器の製造は、現在自由に行われておるわけであります。これは提案理由の中においても御説明されたのでありまするが、許可を受ければ製造してよろしいという昨年四月以降の改正によりまして、許可があつたならば造つてよろしいという改正があつたのでありまするが、これが効力が昨年の十月二十四日に失効いたしまして、自由に何人がどんな武器を造つても現在の法律状態としては何らこれに対して規制がないという状態になつておるのでありまするが、たまたまその間におきまして、駐留軍から武器の製造について発注がありましたので、これについて前ポツダム勅令の時代にその必要あるものにつきまして製造の許可がありました、許可があつたものはたくさん造つてつた状態でありまするが、無法律状態において自由にこれを生産してよろしいということになつておりまするので、こういう自由に放任されておることは却つて治安の上から申しましても、又現実の発注に即応いたしまして、適正な値段、適正な品質のものを納入するという見地から見ましても、工合が悪いという考え方から、ここにむしろ武器の生産につきまして規制をいたします法案提案いたしておるわけでございます。
  78. 海野三朗

    ○海野三朗君 私はこの法案が出される前においても、すでに武器製造については政府が甚だ無責任のように考えられる。何となれば戦争を放棄したその国民が、そういうふうな武器を造るということは政府が喜ばないのが当然であつてこれを暗に奨励しておるような方向に持つて行くということは、私は根本において間違つておるのではないか。こういうふうに考えるのでありまするが、政府当局はそれをも間違つていないとお考えになつておるのでありましようか、その辺をはつきり御答弁を頂きたい。
  79. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 本法はこの武器の生産につきまして暗に奨励をしておるということでは私はないと考えまするので、むしろ武器の生産につきまして規制をするという考え方であります。従いまして本法の中には武器の生産につきましていろいろな育成措置等につきましては何ら規定がないのでありまして、武器の生産を放置せずに規制するという考え方になつておるわけであります。
  80. 海野三朗

    ○海野三朗君 重ねてお伺いいたしますが、新憲法によつては戦争を放棄したというこの新憲法の存する限り、こういうふうな武器に類する武器の製造というものは政府は放つて置いてはいけないのだ、憲法に従つてそれはむしろ禁止すべきものではなかつたか、そう考えるのであります。ところがこれは武器ではないからというお考えのように御答弁ですが、私は戦争を放棄したのであるから、そういうような武器を造ることさえもいけないのである、こういうふうに憲法を働かせて行くべきではありませんか。
  81. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 憲法は戦力の保持を禁止しておる、これを一応戦争を放棄したと、こう一般に申されておる、戦力の保持を確かに禁止いたしておるわけですが、その戦力というのは、すべての物的並びに人的な、戦こうそういういろいろな要素が組織化されたものの総合されたものが戦力だ、その一部分である武器というものは、これはその戦力そのものであるとは見ていないわけでありまするから、憲法上この武器を製造するということは憲法違反というふうには考えないわけであります。ただ戦争放棄しておるのであるから武器を造つてはいかんのだ、こういうお考え方一つ立場からするお考え方と思いますが、現在の法律体制の中においてはそこまでは法律体制が及んでいないのでありまして、従つて武器を造るということは現在の憲法の下におきましても抵触しない、こういうふうに考えております。
  82. 海野三朗

    ○海野三朗君 昨今朝鮮においては休戦会談が締結せられ、アジア諸国は挙げて平和の方向へ今辿つておるのでありまするが、この武器製造ということも私は産業の方面から眺めまして幸先映して明るいものではない、永久に続かないものだというふうに考えます。そういたしますと、永久に続かない、その続かないものであるからして政府はそれを如何に考えておられるか。この武器製造を以て日本の産業ますます発達して行くというふうにお考えになつておるか。私はこの武器製造に対しては甚だ苦しい見通しを持つておるものであります。世界の今日の情勢から、殊にアジア方面の平和の回復がアジアにも響いて来ております立場からして、この武器製造法に対しましてはむしろ消極的な考えを持つて行かれるのが当然ではないかというふうに考えるのでありますが、どんなものでございましようか。
  83. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 只今駐留軍の需要いたしておりますこの武器、大体只今までに七千万ドルぐらいになつておりまするが、これもまあ明年どのくらいの発注があるかということでありまするが、大体向う側の話では今年程度はあるということを向う側は言つておるわけであります。ただ明後年、更に三、四年あとどうなるかということは、まだ向う側も明確なことを言えない段階であります。ただそういつた前途に対して武器というものは産業上こういう平和的な空気の中でだんだん需要がなくなつて来るのではないかという御説に対しては或いはそうかも知れない。併しながら又一方翻つて見ますと、東南アジア諸地域からこの武器の輸出につきまして相当引合いが参つております。現にタイ国から注文がございまして、これは日本製鋼が受けたのでありまするが、すでに輸出の契約ができております。まあそういつた海外に対して武器をどんどん輸出して行くことがいいか悪いか、これは現在の日本の政治的な情勢等から見まして好戦国民というか、或いは侵略国民というか、そういうような海外からの思惑等を考慮いたさなければなりませんから、直ちに輸出の引合いがあるからどんどん造つて輸出して行くのだということはどうかと思いますが、いずれにしてもそういう情勢もあるわけであります。仮にこういうものの、併し需要が御説のようになくなつて行くということにいたしましても、現状のように全然武器の生産を放置しておく、何人がどんなに造つてもよいというように放置いたしますことは、却つて今日の事態に即応しないというふうに考えるわけであります。本法案の仮に御説明のように、武器の需要というものが減少して行く場合におきましても、武器生産につきまして一定の規制を加えるということは必要であるというふうに考えるわけであります。
  84. 海野三朗

    ○海野三朗君 そうしますと、この法案が通つた場合に、一体何カ所ぐらいを武器製造の工場としてお認めになるお考えでありますか。
  85. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) これは武器の種類が、御承知のように非常に多数に上つております。ただ明年度の金額が、仮に今年程度の七千万ドルという発注があるにいたしましても、その中の種類がすべて今年度と同じであるというわけには参りませんと思うわけでありまして、銃弾なり砲弾なり、或いは砲なり小銃なり、いろいろその中の部類で発注額の変化があるわけであります。そういうものを具体的に向う側とよく打合せをいたしまして、本法においてはその基準を作りますにつきましても、生産審議会というものを設けてありまするが、そこで一応の基準というものを立てて頂きまして、その基準に基きまして武器の製造の許可ということが行われるわけでありますが、現在武器の生産をいたしておりますものは十社ぐらいあります。ところが希望いたしておるものは六十社ぐらいあります。これは無論種類によつて違うわけでありますけれども、そういう状態でありますので、単に放置いたしますことは、これは極めて危険であるというふうに考えておるわけであります。
  86. 小松正雄

    ○小松正雄君 私は先般の武器製造法案委員会でいろいろ御質問申上げておりますので、特にお聞き申上げたいと思う点は……今の同僚委員の御質問の中にありましたが、この武器の種類というものについて御答弁がどうもはつきりしなかつたのですが、もう一遍言つて頂きたい。
  87. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 第二条……。
  88. 小松正雄

    ○小松正雄君 原案に示してある案以外には製造はいたしませんか。
  89. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 中で政令を以て定めるものというふうに法律規定をいたしてあるわけでありまして、その政令内容といたしまして第二条の四の「爆発物を投下し、又は発射する機械器具であつて政令で定めるもの」それから四、五、六と政令で定めるものというものがありますが、これが法律に明記してありませんのですが、政令で定めるというふうに予想をいたしておりますものがあるわけでありましてその点が法律の上ではお説のように明確を欠いておるわけであります。そこで「政令で定めるもの」という規定の中で、投下弾、ロケット弾、手榴弾、地雷、機雷、爆雷、魚雷というようなものを一応予想いたしておるわけであります。それから次の五号の政令で定めるものというものには、銃剣及び戦車というようなものを予想いたしておるわけであります。
  90. 小松正雄

    ○小松正雄君 今さつきの御答弁の中で、発注があつたものに対して製造するのだ。そこで、発注をするほうの側から、政令で定めてあるもの以外に注文をされた、発注されたという場合には、製造いたしませんか。
  91. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) この法律に定義いたしております武器以外の発注がありましたものは、この法案の適用を受けないというふうに考えるわけであります。そういうものを作つてよろしいか、或いは注文をどういうふうにするかということは、他の法規によるというふうに考えております。
  92. 小松正雄

    ○小松正雄君 そういたしますと、これらの武器を造る業者というものは、政府のほうで特定業者として指定することになつておりますか。指定することに考えられておりますか。例えば製造する会社を指定する考えでありますか。
  93. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 現在すでに製造いたしておりますものにつきましては、この法案附則におきまして、事業の許可があつたものとみなされるということになつておりまするが、本法が施行になりましてから新たに製造しようというものは、許可を受けるということになりまして、許可があつたならば製造ができるということになるわけであります。
  94. 小松正雄

    ○小松正雄君 その許可を与えるのは、所管大臣が許可を与えるのですか、どうですか。
  95. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) お説のように所管大臣であります。
  96. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 ちよつと関連しておりますから……只今質問関連してお尋ねしたいのでありますが、MSAを仮に受諾したような場合には、今回の武器等製造法案関係では到底足らないので、他の構想を以て臨まなけれけならないというふうに考えるべきでしようか、この点についてどういうふうに……。
  97. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) MSAの受け方がどうなるかということは、目下交渉されておるようでありますので、その内容、成果につきましては、只今何とも申上げることができないのでありますが、私どもの予想をいたしておりまするところでは、仮に従来のようにMSAによつて国内調達というようなことが行われまして武器の発注があるという場合には、無論日本の国内においてはその法律が適用になるというふうに考えるわけであります。
  98. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 それに関連して、一種の機密保持が法案関係しても必要になつて来るのじやないかという感じがするわけなんですが、只今お話のごとく、MSAを受諾するような場合において、武器に関係する範囲内においてはこの法を以て律して行くということになると、これによつて機密保持の法案のようなものが必要になるのじやないかというふうに考えられるのでありますが、この法案に関する関係及び将来の見通しの関係において、そこらにはどういう構想を持つておられるか……。
  99. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 機密保持につきまして、この武器につきまして確かにお説のようなものがあり得るかとも思いますが、併しながらこれは機密の保持につきましてはひとり武器のみにとどまらず、いろいろな面おいて出て来ようかと思いますので、武器にもあり得るかとも思うのでありますけれども、そういう事態を予想して、特に本法においてそういう規定を設ける必要は私はないというふうに考えておるわけであります。
  100. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 軍工廠払下げなどいろいろ問題になつて来ているわけなのでありますが、この武器等製造法案通り、いよいよ本格的に動くようになつた場合には、現在の軍工廠を払下げて行つたならば非常にあとになつて困るというような問題も出て来るのじやないかと思うのですが、その点について将来の見通しは如何でしようか。
  101. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 工廠を将来直接ここで復活するかどうか。これは特定の武器製造メーカーに武器を生産させる必要上、留保すると申しますかというような考え方につきましては、別に只今そういつた要請も私どもは承知いたしておりません。ただ軍工廠の払下げにつきましては、我々重工業生産関係だけでなく、或いは火薬の製造等、一般的な工廠の払下げ方針によるように存じておるのでありまして、武器の面から特に払下げを留保するとか、或いは直ちに方針をきめるとかいうような方針については、別に私どもは承知をしておりません。
  102. 小林英三

    小林英三君 第二条の五にあります。「前各号に掲げる物に類する農器具であつて政令で定めるもの」ですが、これに該当するようなものの例はどんなものでしようか。
  103. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 第二条第五号に該当いたしますものといたしまして、銃剣、それから戦車というようなものを予想いたしておるわけであります。
  104. 小林英三

    小林英三君 それは農器具ですか、そんなにありますか。第二条の第五号、前各号に掲げる物に類する農器具であつて……。
  105. 中川以良

    委員長(中川以良君) 機械器具です。
  106. 小林英三

    小林英三君 機械器具ですか、そうですが。私の目が間違つていたから……。それから第五条の一項一号ですね、「当該武器の製造のための設備が通商産業省令で定める技術士の基準」この「技術上の基準」というのはどういうことなんでしようか。
  107. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) この技術上の基準が設備の……設備が持つております都合によりましてどの程度の武器ができるかという、従いまして設備の内容等になるわけでありましてどなしても技術上かくかくのこの設備がうければできないというものもありましようし、或いは一般的にすべてのものに共通して造られるというような設備もありましようし、そういうようなものを、必要性の権衡を勘案いたしまして基準というものを作りたいというふうに考えているわけであります。無論この五条の各条件は、最も本法の適用を受ける重要なことに属しますので、その具体的な内容につきましては、生産審議会において審議をして頂きまして、これを適用いたします基準細目について十分に議を練つて決定をいたして頂きたいというふうに存じておるのでありまして、政府案といたしまして考えております考え方は、そういうような考え方でございます。
  108. 小林英三

    小林英三君 これはどこが基準として一番重大な問題であるというのですか。そういう審議会に専門家を集めて、それらの専門家によつて現場を見て、そうしておきめになるというわけですか。
  109. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 必要がありましたならば現場も見て頂くことを考えておりますが、併しながら大体の問題は専門家が、すべての大体現場を承知されている者が専門家なわけであります。併しながら必要ある場合に工場を見るという場合もありましようが、現場をすべて見た上でということにはならないというふうに考えるわけであります。
  110. 小林英三

    小林英三君 今のお話でありますというと、大体現場を見ている人が審議会委員になるというふうに聞きましたのですが、これは審議会の構成というものはやはりその工場々々のほうから出て来るというのですか。
  111. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 審議会の構成につきましては、政令に委ねられているのでありまするが、現在の考え方といたしましては、会長、委員三十人くらいで大体組織いたすことにいたしまして、専門の事項を調査いたすために専門委員を置くことができるということにいたしまして、専門委員委員のほかに附置いたしまして審議して行くという構想を只今考慮しているわけであります。
  112. 小林英三

    小林英三君 私の伺いたいと思いますことは、只今どなたかの御質問の中にもありましたが、現在やつてるやつが一件くらいで、更に将来の武器の製造を希望しているというところがほかにもあるというお話を聞いたのですが、それらの上から事務的なデータでありまするところの第一号の問題例えば専門委員を置くといたしますと、それらの専門委員の、全貌を知悉するということから考えますと、これは許可をしてもいいような工場の人たちが専門委員として出て来るわけでありますか、そういうふうな規則なんですか、どうですか。
  113. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 許可をさるべき会社の人たちというものも、これは無論あり得るかも知れません。一応基準を定めるのでありますから、そういう人たちも、必要があれば専門委員に任命できるわけであります。第三者の力もお願いをすることができるわけであります。その許可を受けさせました会社に限るかと、まあ限られることはないだろうと考えているわけであります。
  114. 小林英三

    小林英三君 私はどうもそこがわからんのですが、従来何々重工業とか何とかは、これは余りにも有名な会社であるから許可してもいいとお考えになるのか、或いはたくさんの希望者のうちからというので、どこか製造業者として、許可するときには現場に行つて十分調べて許可されるというのか、それを聞きたいのです。
  115. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 個々の会社の、例えば甲という会社が具体的に武器の生産をいたしまして許可するということは、これは通産大臣責任においてなされるわけでありますが、通産大臣が許可するに当りまして、法律上の基準だけでなくて、この法律に定められておりまする基準の細則を審議会においてきめて頂きまして、その細則に則りまして通産大臣責任を以てきめるというわけでありまするので、具体的にその甲という工場の申請を許可するかしないかということにつきましては、通産大臣責任において現場を十分に調査する必要ありと認めるときには、無論現場の調査が行われるわけでありまして、従いまして審議会委員が一々具体的に甲乃至乙会社の許可の申請についてそれを審議するということは考えておらないわけであります。
  116. 小林英三

    小林英三君 それから第三号の、「その許可をすることによつて当該武器の製造の能力が著しく過大にならないこと。」というのは、著しくというのは更に漠然としている言葉でありますが、「著しく過大にならない」ということをきめたことと、それから「著しく過大にならない」という解釈ですね、それはどういうふうに承知したらよろしいのでしようか。
  117. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) この製造能力の基準は、やはり発注額というものが一応の判断する材料になるわけでありまするが、そのときの発注量、これは半年なり或いは一年間というものを、的確なものが予想されれば一番よろしいかと思うのでありまするが、その発注量に比して著しく製造能力が過大にならないということが先ず第一段階として考えられるわけであります。著しくの程度の状況でありまするが、これは非常に具体的にはむずかしい問題でありまして、発注量の二、三割を上廻るものを以て適当と見るのか、或いは半分くらい上廻るものを以て適当と見るのか、それ以上が過大であるかどうかという判断は非常にむずかしいと存ずるのでありますが、そういつた点につきましても、この審議会において十分に審議をして頂きたいというふうに考えておるわけであります。
  118. 小林英三

    小林英三君 今の第三号の著しく過大にならないということの御説明を聞きますというと、勿論これは駐留軍のいわゆる特需における来年度の量、只今七千万ドルというお話でありますが、その量にマッチするようないわゆる許可をして行こうということから来ておるのではないかと私は想像するのでありますが、その通りに解釈してよろしうございましようか。
  119. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) おおむねそういう線で考えておるわけであります。
  120. 小林英三

    小林英三君 それではこれは一つの大きな問題なんですが、先ほど海野君が御質問したことと多少背馳するような嫌いがあるかと思うのでありますが、これはまあ総理大臣にでも聞けばいいような問題と思うのでありますが、併しこういう問題を専門にお扱いになつておるところの局長に承わつておきたいと思うのです。  日米安全保障条約によりまして、独立後の日本が、アメリカの援助によつて我々は平和を守り、又日本の国土を守つておるわけであります。併し独立国となつた以上は、いずれ国力が充実いたしまして、将来、いつか知りませんけれども、いつかそういう事態が当然来るであろうと思う。いわゆる自衛軍を創設するという問題が国会でやかましくなつておりますが、併し独立国でありまする以上は、国力が充実して、そうしてもういいという時代が来たならば、これは自衛軍を置くという、我々はそういう論拠を持つている。これに反対している諸君もかなりありましようが、私どもはそう考えておる。そういうような時代が将来来たときにおいて、そういう急に武器の製造をして行くということは、これはなかなか容易ならざることであります。どうしてもこの武器を造つて行く上におきましては、技術的にも、設備の上におきましても、十分に訓練されたメーカーがいなければ、そういう憲法を改正して、日本の国民の総意によつて、どうしても将来独立国日本が自衛軍を創設すべきじやないかというような時代が何年か後にあつたと仮定いたしましたときに、今日のこのように、能力が著しく過大になつては困るのだというような、この武器等製造法案において規制をしておる。併し一たびそういうふうな時代が仮に来た場合において急に今日から、明日から、翌年から工場を創設して、そうして武器をどんどん造つて行くというようなことはできないわけです。どうしてもあらかじめ予備の時代が必要だ。そうして十分に職工の技術を訓練し、工場の設備を十分に充実してやつて行かなければ、立派な武器はできない。つまり、泥棒が入つてから繩をなうというようなことはできないはずです。仮にそういうような時代があると仮定いたしましたときにおいて、局長はこの武器の工場の問題についてどういうお考えを持つていらつしやいますか。
  121. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 将来の問題について、仮説においてのお話でありますが、仮説が確かにそういうことでありまするならば、お説のように武器の製造事業というものが一挙に需要を賄うということには参りませんのでありまして、何らか準備は必要かと思うのであります。従来この武器の製造が、やはり機械産業の中におきまして、精密工業といたしまして、幾多の機械一般のレベルを向上いたしておりますことに寄与いたしておるということは、私は事実だろうと存じます。それだけに武器の製造技術というものはやはり大事な問題でありまして、一朝にしてできないというふうには存ずるのでありまするが、併しながら、我々は只今のこの段階においては、お説のような仮説はまたないのであつて、一定の武器の製造につきまして規制を加えるということは適当な措置であるというふうに存じておるわけであります。
  122. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 私も只今小林委員の御発言とやや関連するのでありますが、武器製造業というものは、これは将来日本の自衛力の漸増、或いは又日本の輸出産業、そういう問題等とも関連して、武器製造業というものは、必ずしも、何といいますか、直ちに軍備力を増すとか、そういうことばかりの関連でなしに、日本の一つの産業としても考えて行かなければならない。自衛力漸増の上から言つてもこれは当然のことでありましようが、そういう観点に立つて、武器製造業というものに対して通産当局はどういう考えを持つておるかということを私聞いておきたい。
  123. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 武器は、先ほども申上げましたように、駐留軍の発注を現在唯一の対象需要先といたしておりまして、輸出の面におきましても、タイ国から榴弾の注文がありまして、一件これが成約しておるというような状況であります。殆んど駐留軍一本であるという状況でありまして、産業としてはこのように注文者が極く限定されておるというものは私は非常に少いものだと思うわけでありまして、これが現在ドルを以て支払われることによりまして、一種の輸出貿易に準ずる産業の性格を持つておると思うのでありまして、そういう意味におきまして、この産業か徒らに少い発注者に、蟻が砂糖に付くように殺到いたしまして、みずからが競争のためにお互いに出血し合つて商売をして行くということは、如何にも無駄なことでありまして、これについて規制をいたすということは、現在の状況においては必要なことであるというように存ずるのでありまして、これが将来輸出産業として発展するかどうかということは、無論通産省立場といたしましては、政治的に何ら顧慮なくそういう産業が輸出としてできるということであれば、輸出貿易の上において非常に大きな寄与をすることの期待が寄せられるのでありまするが、そういう事態が今日の前に展開して来るというふうにも考えられませんので、武器製造業に対します考え方は、現在のこの駐留軍に対します納入という意味において武器製造事業の特殊性があろうかというふうに存じておるわけであります。
  124. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 現在の段階における考え方としては、それは無理からんことと思いまするが、この長い間日本はやつぱりこういう産業については空白があつたのであつて、曾つては日本のこういう技術は相当高度なところへ私は来ておつたと思うのです。又将来、こういう武器製造とかいう名前で言えば何でありまするが、局長もさつき言つたように、これは一種の精密機械工業関連が深いものであると思うのでありまして、こういうものが将来技術的に向上して行けば、後進国からのまあいろいろの注文なり指導等も仰がれるような立場にならんとも限らんのであつて、そういう観点から見て、もう一回武器製造業というものは、名前は今武器製造を育成助長するというようなことを言えば或いは工合が悪いかも知れませんけれども、日本の、曾つては非常に高度なところまで行つた一つの産業であると考えて、どういう考えを持つておられるか聞いておきたいと思います。
  125. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 長い将来に亙つての海外諸国との貿易における武器製造の地位というものは、確かに石原さんのおつしやつたように、そういう展望を我々としては期待をいたしたいというふうに存ずるわけでありまして、そういうふうな発展というものの基礎といたしまして、現状において如何なる然らば助成をしたらいいかという問題になろうかと思うのでありますが、現在といたしましては、この法案の程度を以て出発いたしまして、お説のような要請が参つたときに、更に一歩進んでこの育成と申しますか、対外の貿易助長という意味においても、或いは機械産業の中核であるという意味においても、いろいろな手が打たるべきであるというふうに存ずるのであります。
  126. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 そういう問題に関連してどうもこの法律ちよつと眺めて見ますると、それから最初の提案理由の説明があつたとき等から考えてただこれは過度の競争防止というような意味だけの法案でありまして、武器産業というものに対して育成保持と言えばちよつと言葉が強過ぎまするけれども、産業的に見てこれをどういうふうに持つて行こうかというような色彩が少しもまあないように感ずるので、今そういうことを希望することは無理かもわかりませんが、ただ許認可制度を設けたというだけの法律のように感ぜられるのでありまするが……。
  127. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) この法案においては、確かにお説のように、特別の育成助長措置というものは盛られておりません。本案は併しながら、許可制度を布きますことによつて、一面法律的に認められたものは、徒らなる他との競争、やりたいからやるんだというような競争を一応排除いたしておりまするので、無益な競争から一応保護されるという態勢はあるわけでありましてこの態勢を基盤といたしまして武器産業の将来を考えるという意味においては、これは一つ意味を持つておるというふうに存ずるのであります。その上に更に、この法案ではございませんが、少くもこういうものが、健全な事業を運営して参るということになりまするならば、どうしても注文のほうが現在のように非常に特定な限られた、又長期の発注見込というようなものがないものでありまするので、設備資金の斡旋、或いはこれら武器を造ります機械につきましての償却につきまして特別な割増償却というような制度を考えておるわけでありまして、お説のような趣旨に本法案にはじかには盛つてないのでありますが、本法案と並びましてそういうような措置も考えておるわけでございます。
  128. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 それから、これは下請関係のものは直接この法律で取締るということはないのですね。
  129. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 下請業につきましては、この部品が、武器の定義があります。部品につきましては、無論下請と申しますか、中小企業者もこの法律の適用をじかに受けるわけでございます。併しながら、いわゆる下請業としてこの法案の定義に該当しないものを造つておりまするものにつきましては、直接の適用はないわけであります。
  130. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 それからこの許可制度をとられるようでありまするが、こういう仕事がだんだん、この頃割合に許認可制度をとるような法律が大分殖えて来たのでありますが、これによつて役所の人員を更にどうこうしようとか、そういう何は、現在の陣容のままでやり得るという自信を持つておられるのでありますか、どうでありますか。
  131. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 現状においては多少無理があるかとも思いますが、少くもまあ暫らく当座の間は現状を以て、別に人員の増加等の必要はないというふうに考えておるわけであります。
  132. 白川一雄

    ○白川一雄君 只今石原委員がお尋ねになりましたことに関連してお尋ねしたいのですが、この武器等製造法案の目的は現在の特需を目標にして徒らなる競争をさせないように規制をするというように承わつたのですが、そうだとすると、発注先のアメリカ側と通産省との了解というものがはつきりついておりませんと、非常に又混乱するものが生ずるのではないかと思うのです。現在の状態を見ますと、アメリカ側はメーカーに直接参ることになつて、聞くところによればアメリカ側はむしろ日本の官庁を中に入れることを避けておるように聞いておる。そうだとすると、若しそこに了解がついていないとすれば、現在の業者はアメリカ側と交渉するだけでも並大抵でない上に、通産省に又了解を得べく努力しなければいかんということになりますと、二重、三重の苦労が重なつて来るのではないかと、こういうように考えるのでありますが、その点十分なる話合いというものがついておるのでありましようか。
  133. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) この発注に関しまするいろいろな問題につきまして、無論現在も向う側と通産省はいろいろな話合いをしておりますので、私ども重複したようなことはないように考えておりますが、ただ本法案が無論独立国の国内法でありまするので、向うがどうこうという筋合いのものではないというふうに思いますが、御指摘のように、向うとの関連性の問題が相当出て参る問題でありまするので、向うと打合せも済んでおります。その点何らそれから来るトラブルは私はないというふうに考えております。
  134. 白川一雄

    ○白川一雄君 下記工場につきましても、現在の特需の状況を見ますと、先方自身が下請工場を調べて、それを下請するのに適格性があるかどうかという事柄をよく見た上において初めてアブルーバルというものを出して下請をさすという段階になつておりますが、その場合に通産省のほうの下請工場として適格性があるかどうかということと先方の認定とに違いを生ずるというようなことはありませんでしようか。
  135. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) そういうようなことは絶無ではないかと思いますが、そういう際はよく打合せをいたしまして御迷惑がかからないようにいたしたいというふうに考えております。
  136. 白川一雄

    ○白川一雄君 現状から見ますと、業者は終戦後ずつとアメリカの特需を直接取ることに馴れておりますので、或いは通産省を無視して、向うだけの話合いでどんどん注文をきめて行くということがあつた場合には、これを取消さすとか、或いは罰則を与えるとかという、何か力を持つことができるのではないかと思いますが……。
  137. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) この本法案が若し成立いたしましたならば、許可がないものは生産ができませんのと、それから生産いたしましても、契約をいたしますときに、届出をいたしまして、不適正な価格等を以て契約をいたしておりまするときは、通産大臣がこれに対して戒告をするという制度になつておりまして、これに対しては何らの罰則もないという状況であります。  それから下請事業につきましては、本法の適用は直接はないわけです。ないわけでありまするが、その下請け関係につきまして、どういうような形態になるのかということは、やはりこれは私どもは放置するわけに参りませんので、一応の状況等につきまして、通産省のほうにもお知らせを願いたいというふうには存じておりまするが、それによつて併しながら駐留軍との間にトラブルが起るということは、私どもは予想はいたしておりません。
  138. 白川一雄

    ○白川一雄君 そしてまあこれは特需のみにおいて考えておられる法案のように承わるのですが、現実の問題としまして、保安隊もすでにあつて、先般小松委員からもお伺いになつたように、演習をするのにもアメリカ側の弾丸をもらつて演習をするというような現実は、私はいつまでも続くものでないのではないかという、こういうように考えておりますので、そういう場合を予想されて、保安隊向けの弾丸を作つても差支えないような含みが、二十二条の但書に記せられておるような気持がするのでございますが、そういう点についてのお考えは、どんなものでしようか。
  139. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) この法案においては保安隊の武器を造つてはいかんという規定は何もないわけでございますが、ただ現在までのところ保安隊からは発注がないという状況でございます。
  140. 小松正雄

    ○小松正雄君 二、三重ねてお尋ねしたいと思いますが、武器の中に戦車などの発注があるやに御答弁があつたのでありますが、戦車の発注を受け、戦車を製造することに相成りますると、この戦車というものは相当重要視する武器でありまするために、これらの製品のために、国内は終戦後今日までの長い間空白があるために、こんな重要な戦車のようなものを製造するということについての技術者と申しますか、といつたような人たちが恐らくこの発注を受ける業者の中には少いのではないか。こういうことから考えまするときに、さつきも白川委員からお話があつた中にもありまするように、折角造つて見たが、つまらないという気持が起つて来るということになると、業者も相当迷惑することもありまするし、今のことに関連いたしまして、そういう意味から、発注されるところのほうから、何かこれがために、製造するために、指導者でも来ておりますか。技術者——指導者ですね。
  141. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) この法案におきましては、戦車の、一応この武器の定義といたしまして、対象にいたしておるわけでございまするが、現状はまだ戦車を造るという実情にはなつておりません。ただ向うの戦車を一部向うが直轄工場にして修理をいたしております。で、それに日本側の技術者も参加いたしておりまするが、これは駐留軍の直轄工場なのでありまして、本法案が仮に成立いたしましても、本法案の適用はないわけでありまするが、仮に戦車の発注があつて、これを製造して参るということになりますると、御指摘のように、この技術者なり、或いは技術者の技術それ自身というものが、相当空白状態にありまするので、問題になることは御指摘通りあろうかというふうに存ずるのであります。
  142. 小松正雄

    ○小松正雄君 只今御答弁の中に、直轄工場と仰せられましたように思うのでありますが、直轄工場というのは、日本政府がどの国かに許してあるところが国内にありますか。
  143. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) これは日米行政協定に基きまして、アメリカ軍が、その設備機械全部向うが持つて参りまして、日本側が従来、まあ主として工廠でありますが、土地、建物を提供いたしまして、労務者がマン・アワー制度で、こちら側が労務雇入れということになろうと思いますが、ということで向うがすべてのそれについての管理をいたしているわけでありまして、そういう個所が日本にも二、三あるわけでございます。
  144. 小松正雄

    ○小松正雄君 個所はどこですか。
  145. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 我々の承知いたしておりますのは、赤羽工場と、それから相模工場がこれに該当するものというふうに思つております。
  146. 中川以良

    委員長(中川以良君) ちよつと小松君に申上げますが、今のは、先国会で、予算委員会でその工場を視察いたしました。各会派で以て……、それだけちよつと申上げておきます。
  147. 小松正雄

    ○小松正雄君 もう一、二点だけこれに関連してちよつと……。
  148. 中川以良

    委員長(中川以良君) どうぞ。
  149. 小松正雄

    ○小松正雄君 そこでこの直轄の工場で造られるというようなものは、この武器等製造法案関連せずに、別途に何か大きいものか、先方で必要なものを何でも造るというようなことになつておりますかどうか。これはまあ今委員長のおつしやるように、行政協定の中で調べればわかるかも知れませんが、とにかくここまで来ましたので、その点一つお知らせ願いたいと思います。
  150. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 現在は修理だけをいたしております。これは行政協定の既定の条文によつて読みまするならば、一切の権利を向うが留保いたしているわけでございまするから、そういつた製造面についても、向う側としてはできないわけではないというふうに思いますけれども、現状は修理だけでありまして、新らしいものを生産するということはいたしておりません。
  151. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 もう一つ私は聞いておきたいのですが、猟銃の製造業などというものは、これは、曾つても許可事業つたのですが、昔も……。
  152. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 許可事業でありました。
  153. 海野三朗

    ○海野三朗君 今日までの武器製造をしましたその工場で怪我及び爆発によつて死んだ者はどのくらいありましようか、年間どのくらいの割合で死んで行つておりますか。
  154. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 武器関係の工場においては、今申されました爆発事故は一件もありません。
  155. 海野三朗

    ○海野三朗君 怪我とかそういうもので……。
  156. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 怪我はまだ調査をいたしておりませんが、恐らく問題になつたような怪我というものは私ども承知いたしておりませんが、まあ微細な怪我というものは、これはどの程度か調査いたしておりませんです。
  157. 海野三朗

    ○海野三朗君 鉄鋼は、この武器製造品に対しまして、昨年度は何トンぐらい使つておりますか。
  158. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 今まで銑鉄が約四百トン、これは武器の製造が始まつてからでございます。それから普通鋼材が約七千トンになつております。
  159. 海野三朗

    ○海野三朗君 そうしますと、この武器等製造法案、これが通過しました暁には、どれぐらいの範囲までお使いになる予想でありますか、鉄鋼は……。
  160. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) これは法案の成立するかしないかということと、鉄鋼の使用量というものは、これは密接な関連がないのじやないかというふうに思いますが、一応発注量が今年程度でありますならば、来年度も大体その程度はあるというふうに向うが見ておりますのて、武器の種類によりまして多少の変動はあるであろうかと思いますが、鉄鋼の使用面におきましては、やはり今年度程度ではあるまいかというふうに存じておるわけであります。
  161. 海野三朗

    ○海野三朗君 只今お示しの七千トンと言いますのは、これは月に七千トンになりますか、年間に七千トン……。
  162. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 戦後武器の製造が始まつてからであります。今日まで約一カ年間の量であります。
  163. 海野三朗

    ○海野三朗君 この間あそこの泰道化工を観察したのでありますが、あそこでの生産高から推しますというと甚だ少いように思いますが、七千トン以上になつておりやしませんか。
  164. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) 普通鋼は七千トン、大体我々の計算によりますと、実際実質トン数は約五千トンでありますが、歩留りがありまするので、七千トンということに見ておるわけであります。完成しました武器そのものの重量は、普通鋼材で見ますと約五千トン、それにいろいろ削つたりしてそういう完成武器になりますと、使われた鋼材が歩留りを見まして七千トンというふうに見ているわけであります。武器につきましては、こういつた普通鋼材のほかに、御承知のように、特殊鋼が相当使われております。特殊鋼は、これも約十倍程度使われておるわけでございます。これも又別になつております。
  165. 海野三朗

    ○海野三朗君 そうしますと、この鉄鋼は、全生産高の何%ぐらいになつておりましようか。特殊鋼は大体何%ぐらい使つておるわけでありますか。
  166. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) これは銑鉄は四百トンばかりでありまするが、全体の生産数量が大体三百五十万トン年間造つておりますので、これは何%と申上げるには足らない数字だと思いますが、鋼材は七千トンでございましてこれが年間生産量が四百六十万トンばかりになつております。でありまするから、〇・一五%ぐらいになりましようか、そのぐらいになると思います。それから特殊鋼は全体の生産が二十四万トンでありまするので、六万トンは、全生産の約四分の一ぐらいが使われておるということになつております。
  167. 海野三朗

    ○海野三朗君 そうしますと、この特殊鋼は軍需以外のほうは約七五%ぐらいになるわけですか、軍需以外は四分の三ぐらいになりますか。
  168. 葦沢大義

    政府委員葦沢大義君) お説の通りであります。
  169. 中川以良

    委員長(中川以良君) よろしうございますか……ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  170. 中川以良

    委員長(中川以良君) 速記を始めて下さい。  それでは、武器等製造法案は、本日の審議は一応この程度にとどめたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  171. 中川以良

    委員長(中川以良君) 御異議ないと認めます。さように決定をいたします。   —————————————
  172. 中川以良

    委員長(中川以良君) それでは次に輸出取引法の一部を改正する法律案を議題といたします。前回に引続きまして、御質疑をお願いいたします。
  173. 加藤正人

    ○加藤正人君 それでは質疑をいたします。  第一に伺いたいことは、業者間の協定の件でありまするが、今度の改正によりますと、協定は、輸出業者のみでは目的を達しない場合に限り、生産者又片販売業者と協定を締結することができるというふうに書いてあるのですが、この点について曾つて私は、生産業者が輸出業者として扱い得るかという問題について、松尾次長に、去年の六月十五日に質問をいたしましたが、その際に松尾次長の御答弁を速記録によつて見ますと、戦前の貿易組合法においても、いわゆる実績業者と新規業者というものを如伺に観念するかという場合において輸出の意思と能力あるものは、輸出業者であるという判定をしておつた経緯もございまして今度の場合に意思と能力ということで判断すると、いわゆる法の体系としては輸出取引或いは輸出業者ということを対象にいたしておりますけれども、実際の運用に当りまして、輸出品を生産しておる重要な輸出品の製造メーカーというようなものが、若しその人たちが輸出をしようとすれば簡単にやれることでもありますので、いわゆる新規業者よりも、より以上に輸出品のメーカーというものは輸出の意思と能力あるものと判定できるものではないかという解釈からいたしまして、輸出品における重大な関係のあるメーカーは、輸出業者と判断して、輸出組合に参加を願うというような解釈をいたしておりますと、こういう御答弁であります。この点は私が過日休んでおりますときに改進党の八木委員がこれと同様な質問をいたしたはずでございます。それに対しほぼ同様な御回答があつた。そうしますと、これは去年の六月十八日以来この観念については変更がなかつたということができるのであります。それならばもう少し法文の上に生産業者も輸出業者となり得るということを今度の改正に際して明文化されて然るべきではないかと思うのです。成るほどこれはこの法律の体系からして輸出取引法であるから、飽くまでも輸出業者に重点を置いた関係生産業者が輸出能力があればみなされ得るということではあるが、法文の上に掲げて、そういう扱いをされたということでありましたが、然らば製造業者が輸出行為をなすという点において特に組合を結成する希望がある場合には組合を結成することを認めるのであります。この点について御答弁を願いたいと思います。
  174. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 只今指摘のありました輸出業者の解釈につきましては前回の最初の輸出取引法制定のときに申上げましたのと現在も解釈は全然変つていないのでございます。そこで一言補足いたしたいことは飽くまでも前回の法律におきましては、いわゆる輸出にかかわる取引、価格その他取引条件若しくは数量その他といろいろと書き方はございますが、要するに輸出にかかわる取引に関する事項を協定するとか或いは輸出組合におきましても、そういう輸出にかかわる取引について特殊の規制をするということで、何と申しますか、いわゆる通俗的な言い方をすれば、波打際の行為につきましていろいろ協定をしたり、或いは輸出組合が組合員の遵守すべき事項を定めるという考え方をいたしておつたわけでありまして、今もそうなんでありますが、今回の改正におきまして輸出業者とこれらの生産業者若しくは販売業者との協定を認めました結果、従来は波打際だけのいわゆる輸出にかかわる取引に関する事項だけについて規制をするという範囲を拡張いたしまして、一部国内取引に関する事項も輸出に関連する限りにおいては締結することができるんだというふうな、拡張と申しますか、改正をいたさんとするのが今回の輸出に関する改正の大きな点であるわけであります。従いまして従来ならば波打際だけの統制であります、今度は波打際だけの統制では効果がむずかしいという場合におきまして、或る程度国内も入りまして、国内の生産者なり販売業者が一部国内取引についての協定を認めんとしているという点が変つておるわけであります。で輸出組合につきましても輸出業者が輸出組合の結成をするということにつきましては同様なんでありまするが、輸出業者の協定の場合におきまして生産者なり販売業者との協定を認めましたと同様の意味におきまして、輸出組合と国内の生産業者なり販売業者との間の団体契約の途も今度開かれた、その結果一応国内取引についての規定ができることになつたのであります。従いまして前回よりは最近の状況に従いまして措置し得る範囲が非常に広くなつたというふうに御了解を願いたいのでありますが、今お尋ねのありました生産業者が輸出組合を結成できるかという点につきましては、我々は飽くまでやはり輸出組合は輸出業者を以て結成さるべきものでありまして、お話のありますような一部の実際の輸出の意思と能力を持つておられるがごとき紡積業者等については、当然輸出業者の資格において輸出組合に加入いたすことは差支えないという解釈をとつておりますが、体系といたしまして、生産業者が輸出組合を結成できるかということになりますと、我々はこの今の法律の立て方では無理であるというふうに考えております。
  175. 加藤正人

    ○加藤正人君 無理であるということはできないということなんですか。やりにくいというのですか、どうなんです。
  176. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) できないというふうに考えております。
  177. 加藤正人

    ○加藤正人君 そうするとちよつとおかしいですな。意思と能力さえあれば輸出業者並みに扱えるという点に、矛盾撞着をしているように思われるのですな。
  178. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) その点は今も御説明申上げますように、輸出業者たり得るようなメーカーならば、当然輸出業者として輸出組合を結成できるわけなんです。併しメーカーとしてということになりますと、これは法律の体系から申しまして、輸出組合とメーカーとの間の団体協約を認めるというような精神からいいましてメーカーが輸出組合を結成し得るということになりますと、これは矛盾をいたすような関係になります。
  179. 加藤正人

    ○加藤正人君 如何にもメーカーの色彩を濃厚に現わしている面ではそういうような解釈ができるものがありましようが、近来紡績のうちでもフオレン・トレードをやろう、つまり輸出を直接やろうというような動きもあるわけであります。その場合においては実体はメーカーであるが、又同時に輸出業者の面を持つている、よつて今のお話のような御解釈で、メーカーという色彩のある方面は暫らくおいて、輸出業者の機能をこれから発揮して行こうという面においては、これは容認されるのじやないか、こう思うのです。つまり二重人格のようなことになるのです。
  180. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 今の大体の話の通りに我々も考えておりますので、メーカーといえども輸出の意思と能力のあるという限りにおいては、給出業者と、こういうふうに解釈申上げるということは、先ほど申上げた通りであります。従いまして輸出業者の資格において、メーカーも組合の結成も又組合への参加もできるというような解釈も従来からやつて来ております。
  181. 加藤正人

    ○加藤正人君 それからなお伺いたいのでありますが、この従来貿易カルテルを認める場合に三原則が拡大されて四原則になつたのであります。去年私はこの輸出品目、向け先において他国の競争者があつた場合に、その他国の競争者というのはやはりカルテル行為をしておる競争者があつた場合に、これに対抗するために協定ができるかということを質問したのでありますが、去年はまだそういうことは遠慮したいというようなことであつたのですが、それは今日では認められていることになつておるのですが、何故に、この四原則を見ておると、仕向先で外国の業者に迷惑をかけないとか、損害を及ぼさないということばかり並べておるんで、一応この法文を見るとまだ占領中の国家のように、独立国になつた今日において、何故にこのような気兼ねをしなければならないのかと感ずるような点があるのです。大体このアメリカのごときは、輸出取引業においては全然触れてないというような実情であつて、この日本の品物の輸出価格とかその他についてのこういう協定によつて、安定した取引ができるということを望むのはむしろ諸外国である。然るにこの協定をするに際して何故にかような気兼ねをしなければならないか。むしろ今日では外国では日本の品物は余りにばらばらな競争があるんで、困つておるということを訴えておる。むしろこういう協定面において輸出がされるということは向うでは喜ぶんではなかろうかと思うのでありますけれども、未だにこの四原則のような何となく気兼ねをしておるような表現が行われておるということは、何か特に意識的にこういうことをしなければならぬ必要があるのか。その点について……。
  182. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 只今のお指摘の点は確かに我々もそういう感じもしないではないのであります。で、実は昨年この輸出取引法を御審議願いますときにも、三原則では不備ではないかという御指摘もあつたのでありますが、あの当時独立早々にこういう独禁法の除外例を設けるという意味におきまして、どちらかというと今お話のありましたような気兼ねをしたような書き方をいたした。で、じやあ今回の場合はもうこういう原則も入れずに、書かずに自由にやれというような方法をなぜとらぬのかというお尋ねであるかと思うのですが、我々もこの法案を立案するときに、今のようなお説に対しましても、論議をいたしたのでありますが、確かにその海外も、日本の或いは安売り競争なり何なりで、却つて不便をこうむつておるとか、或いは不利益をこうむつておるという国におきましては、日本側がこういう団結的な行動によつて秩序ある活動をするということには歓迎をしておる国もあるのでありますが、又他方協定とか、或いは輸出組合によりまして、何かこう力強い進出をして来るのではないかということを恐れている国も多々あるのであります。従いまして、私たちといたしましては、実質が確保できるならば、或る程度この気兼ねしたような書き方をいたすほうが、国内法と違いまして、海外に影響を持つ法律であります関係上、却つてそのほうが効果があるのではないかということで、今度まあ四原則にいたさんとしておるのでありますが、実質的には、この前の三原則に対しまして、三つの場合が殖えているわけであります。実質的には六原則であろうかと思うのであります。まあ現存或いは近い将来を判断いたしますと、実質的な六原則、法文上で言えば四原則でありますが、で以て事が足りるのではなかろうか。事が足りるとするならば、余り刺戟的な表現を持つよりは、これは誰が見ましても当然のことを規定しているという印象も与えまするし、何と申しますか、俗に申せば実を取つて上手な表現をしているということも言えるのではないかということで、そういう、今お話のありました、気兼ねをしているという見方もできまするが、他方非常に上手な言い方をして実を取つているということも言えるのではなかろうかというふうに考えるわけであります。まあそういうふうな見地からいたしまして、原則を全部外してしまつて、輸出業者がこういう協定ができる、或いは輸出組合が、組合員に対する統制ができるというよりも、実が取れるならば、却つてこういう原則を掲げておくほうが海外に対する影響から望ましいのではないかという判断で、依然としてこういう原則を掲げたような次第であります。
  183. 海野三朗

    ○海野三朗君 ちよつとお伺いいたしますが、不公正なという不公正というのは、どういうふうなのが不公正なものでございましようか。その基準を承わりたい。
  184. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) その点は、現行法の第二条に定義を掲げております。その第一は、「仕向国の法令により保護される工業所有権又は著作権を侵害すべき貨物の輸出取引」或いは二といたしまして、「虚偽の原産地の表示をした貨物の輸出取引」三といたしまして、「輸出契約において定める要件を著しく欠く貨物の輸出」第四といたしまして、「前各号に掲げるものの外、国際取引における公正な商慣習にもとる輸出取引であつて政令で定めるもの」というふうに、一応不公正な輸出取引として四つの場合を書き出しております。第四の、「政令で定めるもの」といいまするのは、まだ現在では政令規定はいたしておりませんが、大体そういうふうな観念を申しているわけであります。
  185. 海野三朗

    ○海野三朗君 そうしますと、この不公正というのは、余り値段が格段に安かつたりする場合も含むわけですか。
  186. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) それは、四の「国際取引における公正な商慣習にもとる輸出取引」という場合に該当する場合がありましてダンピングと申しましても、これは分析をいたして御覧になりますといろんな種類のダンピングがありまして、まあそこで、いわゆる俗に言われるダンピングが、全部、国際取引におきます公正な商慣習にもとるかと申しますると、我々は必ずしもそのようには解釈いたしておりませんが、悪質なダンピングならば、この国際上の公正な商慣習にもとるということがあろうかと思います。実はまだ政令では規定をいたしておりません。正直なところダンピングの定義というものが学者が解釈しましても四、五種類あるようでありまして非常にむずかしいというような点もありましたので、一応政令で定めるという予定になつておるのでありますが、まだ現段階では定めておらんような次第であります。
  187. 海野三朗

    ○海野三朗君 ダンピングの限度はどいうものでしようか。これは甚はだあやふやじやないですか。ダンピングと見る場合と見られない場合とその限度というものは非常に不明確ではありませんか。
  188. 松尾泰一郎

    政府委員松尾泰一郎君) 御説の通り非常に不明確でありまして従つてこの規定の仕方が非常にむずかしいわけであります。従いましてダンピングでありましても、国際的に見れば公正でないというもの、或る程度のダンピングもこれは国際的に容認されるダンピングがあるように考えております。従いまして実は御指摘のように非常に定義がむずかしいために我々はすべてのダンピングが全部いけないという解釈をしていないのであります。
  189. 海野三朗

    ○海野三朗君 有難うございました。
  190. 中川以良

    委員長(中川以良君) 本日は一応この程度にとどめたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  191. 中川以良

    委員長(中川以良君) 本日はこれで散会いたします。    午後四時二十二分散会