○
政府委員(
松尾泰一郎君) ではこの現行の各種の輸出
保険の概要について御説明申上げます。実は現在輸出
保険と申しましても四
種類ほど実は実施をいたしておりますので、それから又今度新らしく輸出
手形保険というようなものを実施することに相成
つておりまするので、それの大体の概念を御了解願うという
意味におきまして簡単に説明さして頂きますと、いわゆる現在は甲、乙、丙、丁と四
種類の
保険を実施をしておるわけであります。今回の
改正案におきましてこの甲、乙、丙、丁という名前を先ず普通輸出
保険、これは甲種
保険でありますが、これを普通輸出
保険、それから乙種
保険を輸出代金
保険、丙種
保険を輸出
金融保険、それから丁種
保険を海外広告
保険というようにまあ名前を変えるわけであります。その現行の四
種類の
保険のほかに輸出
手形保険を創設をしたいというわけなんであります。そこでこの現在のいろいろの
契約の概要に入ります前に、これは現行
制度でありまするが、大体甲、乙、丙、丁というようなものがどういう差があるのかというような点から、
ちよつと甚だ常識的な説明にな
つて恐縮でありまするが、説明をさせて頂きますと、先ず甲種
保険と申しますものは、今度の普通輸出
保険でありますが、これはいわゆるこの輸出業者なり或いは又特定の生産者がこの輸出
契約をいたしましてから後、船積みをいたしますまでの危険、その危険もいわゆる非常危険と申しまして、
相手国におきまして例えば戦乱とか或いは動乱が起るとか、或いは為替管理或いは輸入の制限があるとかいうふうな、いわば人力で如何ともいたし方がないような、そういう非常危険が起りますことによ
つて積出しもできず、金も取れないような場合に
保険をすると、こういう式が現在の甲種
保険でありまして、これは先ず
保険会社とそれから輸出業者であるとか或いは特定の生産業者の間に
契約をいたしまして、
政府がその
保険会社から再保を受けておるという式のものであります。
それから乙種
保険、今度の輸出代金
保険と申しますのは、いわゆるプラント類の輸出業者がいわゆる物を積出してから後におきますところの危険について
保険をするわけでありますが、これはいわゆる
保険会社を中に入れませずに
政府と輸出業者とが直接
契約をいたすわけでありまして、その
保険をいたします危険の
範囲も甲種
保険の場合はいわゆる非常危険だけでありまするが、乙種
保険の場合はいわゆるこの信用危険、まあ
相手方がこの金をよう支払わないというふうな、いわゆる信用危険も含めまして非常危険並びに信用危険によりまして輸出代金が回収不能になる場合の
保険であるわけであります。
それから輸出
金融保険、いわゆる今の丙種
保険でありますが、これは
銀行と
政府が
契約関係になるわけでありまして、或る特定の例えば農産物等の集荷
資金を
銀行が融通をした、ところが輸出がうまく行かずに
銀行としては代金の回収ができないというふうな場合に
政府が
銀行に対して補填をするのでありまして、いわば集荷
資金に対しまして
政府が
銀行に対して補填をする、その結果として間接的な利益を貿易業者が受けるという式のものであります。
それから現在の丁種
保険、これは今度は海外広告
保険と名前を変えるわけでありますが、これはいわゆる広告をせんとするその貨物の生産者が直接
政府と
保険契約に立つわけでありますが、これはいろいろの広告費用を使
つたという場合に、輸出をした結果広告の費用の回収すらできなか
つたというふうな場合に、
政府がそういう広告をした貨物の生産者に
保険をするわけであります。
それから、それがまあ大体現行の四
種類の
保険でありまするが、今度新らしく輸出
手形保険というものを創設せんとするわけでありますが、これもこの現行の丙種
保険、いわゆる輸出
金融保険とほぼ同様の形態といいますか、恰好になるわけでありまして、
保険関係は
政府といわゆる為替
銀行との間に
保険契約をいたすわけであります。一言で申しますと、従来は貿易業者が輸出をいたします場合には信用状というものが向うから参りまして、それによ
つて為替
手形の買取りを
銀行にしてもらうといういわゆる標準決済でやるのが原則であ
つたわけでありますが、最近のような情勢、特に海上との競争が非常に多くなるというようなことにな
つて来ますと、いわゆる信用状が参りませんで、いわゆる荷為替
手形を組んで貨物を向うに送るという場合がかなり多くなりつつあるわけであります。その場合におきましてはいわゆる向うから信用状が参
つておりませんので、輸出業者がその貨物を向うに輸出をいたします場合においてその荷為替
手形を
銀行が買取
つても果してその支払期日に現地の業者から金が入るかどうかという不安があるわけであります。そこでその不安を解消いたしますために、そういう荷為替
手形を買取
つた為替
銀行に対しまして、輸出
手形が不渡りに
なつたような場合におきまして、
政府が為替
銀行に
一定金額の補償をせんとするものでありまして、いわゆる戦前の輸出補償法は大体これを
対象に実施されてお
つたのでありますが、従いましてこの輸出
手形保険を創設いたしますことによ
つて、戦前の輸出補償法をまあ
改正した
意味において実施をするということに相成ろうかと思うのであります。そこで
保険の
種類といたしましては、この新らしい
保険を加えまして五
種類になるわけであります。でこれ以外にもいろいろ
保険というものを考えられるのでありまするが、我々といたしましては
保険の
種類を殖やすことよりも現行
保険をできるだけ広
範囲に利用して頂くほうがよかろうと思いまして、一応差当りのところではこの五
種類の
保険を以てほぼ
保険制度としては、百パーセントとは言えませんが、予想される殆んどの事態に対処できるのではないかというふうに考えるわけであります。そこで現在の引受けの
状況を現行四
種類の
保険について申上げますと、この甲種
保険は昭和二十五年の六月から実施をいたしたのでありまするが、第一年度である二十五年度におきましては点数がラウンド・ナンバーで申しますと一万三千件
程度あ
つたわけであります。その
保険金額も二百四十億円
程度に相成
つておりました。而してその
保険金の支払も第一年度におきましては四千三百万円
程度にな
つておりました。ところがそれが二十六年度におきましては
契約件数は約三分の一ぐらいに減りまして四千三百件
程度にな
つております。それにつれまして勿論この
保険金額も減
つて参
つておりまするが、逆に
保険金の支払、これは二億七千万円
程度に殖えております。これは御存じのように朝鮮事変が勃発し、対中共向けの禁輸を広汎に実施しました結果この二十五年と二十六年におきましてこういうふうに
保険金の支払が殖えて参
つておるのであります。それから二十七年度、昨年には件数が七百四十一件
程度に減
つて参
つておりまして
保険金の支払のほうも三千五百万円
程度に減
つて参
つたのであります。このように件数だけを比較いたしますと非常に引受件数は減
つて参
つておるということでありますが、これはなぜかような各業者がこの
保険を利用しないのかということになりますと、この
保険は先ほ
ども申しましたように非常危険を担保するための
保険でありますので、ところが二十五年、二十六年におきまして各国の輸入制限等がかなり強化した結果、最近に至りますと余り非常危険の起る可能性というものが比較的少く
なつたということの半面、まあ輸出もかなり不振のような
状況でありますので、非常に
保険料としては安いのでありますが、それでもなお且つそういう
保険に余り入りたがらない、というふうなことも手伝
つておろうかと思いますが、そこでこの法案とは直接
関係がないことなんでありまするが、この甲種
保険の利用をできるだけ拡めますために先般来輸出
組合を利用いたしまして包括
保険というようなものを実施をいたしたのであります。その結果差当り綿糸布輸出
組合を
対象といたしましてその
組合員殆んど全部につきましてこの甲種
保険を実施をすることにな
つたのでありますが、この結果といたしまして相当この甲種
保険の
契約額が殖えて参ろうかと思
つております。この包括
保険の結果といたしまして、実施をするにつきましてはそういうふうに引受件数が非常に殖えますことを見込みまして、
保険料のほうも現行基準のものが大体百円について四十銭に相成
つておりまするが、これを八銭
程度に引下げまして、非常にまあ安く引下げまして、できるだけ
保険の利用度を向上せんとしておりますが、今度綿糸布以外の商品につきましても、輸出
組合を利用いたしまして、できるだけこの
保険の普及を図るつもりで考えております。
それからその次は現行の乙種
保険でございまするが、これは二十六年の十二月から実施をいたしておりまして、従いまして二十六年におきましては引受件数僅か一件でございますが、二十七年になりまして五件にな
つております。
保険金の額は七億一千八百万円というふうにな
つております。これにつきましてはまだ
保険金の支払が起
つておりません。それから最近のこの二十八年の四月以降からもうすでに
契約は一件起
つております。この
保険につきまして
保険料が高いという批判もありますので、この四月から
保険料を約半分に引下げたわけであります。今後……。