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政府委員(
牛場信彦君) 私は今般日独貿易協定に附属いたしまする貿易
計画の改訂のために、四月の十八日に
日本を出発いたしまして、六月十九日に帰
つて参りました。その間約一月、
ドイツにおきまして交渉に当りまして、六月の九日に貿易
計画を作成いたしたわけであります。それ以外に、スウエーデン、オランダ、ベルギー、フランス、イギリス、スイス、オーストリア、イタリア、帰りにパキスタンに寄りまして、いずれもこれは協定の相手国であります
関係上、向うの
政府の人と会
つて話をし、更に協定
関係の話をして参つた次第でございます。
日独の貿易
計画につきましては、もう発表にもな
つておることでございますが、今回は従来の片道三千万ドルの貿易金額を、五割殖やしまして、片道四千五万百ドルということにいたしました。主な輸出品は、当方からは原油であるとか、それから繊維類、鉄鋼製品、非鉄金属というようなものであります。主要な輸入品は、
機械類、それからカリのようなものであります。
それから協定に附属いたしますスウイングにつきましては、従来の九百万ドルを一千二百万ドルに上げたのであります。この金額といたしましては、相当
程度膨らましたのでありますが、これを実行できますかどうかということになりますと、主として
日本から物をそれだけ向うに入れるかということにかか
つて来るわけでありまして、これは又一にかか
つて日本側の物価如何ということによるのであります。今般私はヨーロッパを旅行いたしました際に、いずれの国に行きましても、結局
日本のものはどうしてああ高いのかという話が主な話でありまして、一部の繊維類についてはそういうことはないのでありますが、それ以外のものは殆んど例外なく割高にな
つておる
状況でありまして、これを是正しない限り、なかなか貿易の発展というものは期せられないということを非常に痛感いたした次第であります。
ヨーロッパは一、二の国を除きまして、大体におきまして、相互の間の貿易は非常に自由にな
つておりまして、例の欧州
支払同盟の
関係でございますが、
ドイツ、それからオランダ、ベルギー、スイス、イタリアなぞという国は、大体におきましてその輸入の九割以上、これはヨーロッパ
支払同盟に属しておる国からの輸入についてでありますが、九割以上を自由にいたしておりまして、その結果非常にそこに自由な国際競争が行われまして、お互いの間の分業の促進、更にコストの低下ということが起
つて来ておるのが殊に昨年以来著しく認められるのであります。
我が国とこれらの国との貿易の尻を見てみますと、大体におきまして、昨年の半ばまでは当方の出超にな
つておりました。ところが昨年の暮以来これが入超に転じまして殆んどすべての勘定におきまして
日本が赤にな
つておる。これは結局
日本の輸出が困難にな
つて輸入がしやすくな
つて来たということによる次第であります。この点なかなか容易ならん問題が存在しておるように感じておる次第であります。
只今委員長から西独の貿易の
状況を主として
説明しろというお話でございましたが、統計によりまして申上げたいと思いますが、西独の輸出は殊に一昨年以来非常な伸びを示しております。数字で申上げますと、一九四八年が約六億ドル、四九年が十一億二千万ドル、五〇年が十一億八千万ドル、五一年が三十四億七千万ドル、五二年、昨年でありますが、これが四十億三千七百万ドルという数字にな
つておりまして、更に国際収支の
状況を見ますと、一九四九年には十一億ドルの輸入超過、五〇年には七億ドルの輸入超過でありましたが、一昨年は僅かに三千万ドルの輸入超過、昨年になりますと、一億八千万ドルの輸出超過、本年に入りましても一月がやや輸入超過でありました以外は毎月輸出超過の
状況を示しております。
更に我々一番関心を持
つておりますドル貿易の
関係でございますが、これは全体といたしますとその量は
余り多くないのでありまして、例えば昨年でありますが、ドルに対しまする輸出は全輸出の九・五%、三億八千四百万ドルということであります。これは
我が国のドル輸出が約三億九千数百万ドルでありましたよりもやや低い数字であります。それから輸入もドル国からの輸入は七億三千九百万ドル、だだの二%という数字でありまして、これも又
我が国の輸入に比べて低い数字にな
つております。その結果ここに約三億四千万ドル
程度の輸入超過にな
つております。西独の貿易の拡大はどこの地域へ一番出ておるかと申しますと、これは言うまでもなく欧州決済同盟の
関係でありまして欧州決済同盟に対しまする輸出を見ておりますと、輸出は七四・四%、輸入の六七%ということにな
つております。それからそれ以外の輸出入は主としてその他の決済勘定と、双務勘定と、この中に
日本も入るわけでありますが、これが輸出の面で一五・九%、輸入の面で一三・九%ということにな
つておりまして、西独の貿易の拡大が、その大部分がヨーロツパ諸国に向ける輸出、その裏には今申上げましたように、欧州決済同盟による貿易の循環ということが非常にきいておるということがおわかりになると思います。このドルにつきまして、先ほど申上げましたように、三億数千万ドルの輸入超過にな
つておるのでありますが、これらの
状況は今年になりましてからもう非常に変
つて参りまして、一方においてドルの輸出が殖える、それと同時にドル貨の輸出が著しく減りまして、今年の第一四半期、昨年の第一四半期に比べてドル貨の輸出がほぼ半減したという
状況、今年の四月にはドルに対しても商品貿易に対して四千七百万ドルの輸出超過に
なつたという
状況でありまして、これは全く……勿論ドルに対するドルの使用に対して相当制限をしていることは事実でありますが、それ以外に、ヨーロッパの物価が下
つて欧州決済同盟諸国からの輸入が、ドル輸入に比べて割合楽に
なつたためにだんだん使用転換ができて来てドルに対する
需要というものが少くな
つたのだ、それと同時に同じ
関係からドルに対する輸出が殖えて来たということが大体において申上げられると思うのであります。
又この輸出入の内容を見てみますと、輸入のほうから申上げますと、輸入は食糧の輸入が非常に多い。この点が西独の経済の一つの弱点にな
つておると思うのであります。昨年の三十八億ドルの輸入のうちで、約十一億四千万ドルというものが食糧
関係の輸入でありました。その結果、我々が主食と言
つております穀類、これは人間とそれから家畜用のものと両方でありますが、これが約十億ドルありまして、これに対しまして
我が国は大体年間四億ドル内外の主食の輸入で足りておるわけであります。それだけ西独の経済は食糧輸入の必要が大きいということが認められます。それからもう一つ輸入に関して目立ちますことは、それ以外の輸入につきまして割合にいわゆる完成品の輸入が多いことでありまして、昨年五億一千万ドルということにな
つております。これは一つは欧州決済同盟の中におきましていわゆる贅沢品につきましては輸入を殖やした
関係といたしましていわゆる不急品が相互にたくさん取引されておるのでありますが、入
つて来ておることが認められます。併しながらこの相当多くの部分が
アメリカや或いはスイスから場……、主としてスイスであります。スイスなどから
機械を輸入しまして
ドイツにおいては、一方において
機械輸出をや
つております国が、又一方において自国の
機械よりもいい物につきましては、
アメリカの物乃至スイスの物を買
つておる。これは事実私
ども工場へ行
つてもその
状況は認められるのであります。ということは、非常にこれは注目すべきことであろうと考える次第であります。
輸出につきましては、これは御
承知の通り非常にいわゆる完成品の輸出が多い。これは四十億ドルのうち三十億ドルまでが完成品の輸出であります。これは主として
機械類になるわけであります。従いましてこの
ドイツの輸出は
日本の輸出とは非常に
状況が違いまして、八割くらいまではメーカーの直輸出ということにな
つております。この
機械輸出というものになると、或る
程度そういうことにならないと実際伸びないじやないかと私はつくそれ感じて参
つたのであります。輸出業者に売ればそれで済むというのではなくて、メーカーが自分で
機械の据付けから最後の動き出すまで、それから更にそれに引続いての部分品の供給というようなものにつきましておのおの相当に立派な輸出部門を備えましてみずからの責任においてや
つておるということが認められる次第であります。そこでこの西独の輸出の
状況につきまして、
日本とこれを
比較いたして見ますというと、
戦前に比べまして、西独はすでに相当
程度戦前よりも多くの輸出をしておるわけであります。一九五一年にすでに
戦前の水準を突破いたしまして、現在では、
戦前と申しましてもこれは一九三六年でありますが、これに比べまして約四割くらい輸出は殖えておるわけであります。これに比べまして
我が国は、一九三六年に比べまして僅かに三割ちよつと上廻る
程度の輸出しかいたしておりません。これに特需を加えましても恐らく五割には達しないくらいであります。西独と
我が国との間の経済
関係の違いもここに一番著しく現われておるのであります。併しながらこれと同時に、輸入の面におきましてもやはり同じことがあるのでありまして、西独のほうはやはり一九五〇年頃からして輸入は
戦前の水準を突破いたしまして、現存は六体輸出入とも
戦前の一四〇%
程度ということにな
つておるわけであります。これに対しまして
我が国は、輸入のほうは大体
戦前の五割五分乃至六割
程度にとどま
つておる
状況であります。西独の輸出の伸びというものは決して輸出だけがただ伸びたのではなくして、輸入も同時に伸びて行
つたのである。逆に言うと、輸出を伸ばすためにはやはり輸入も伸ばさなければならんというか、これは戦後の貿易の特徴であると思うのでありますが、よくここに現われておると感じます。勿論輸入につきまして、ちよつとその内容につきまして審査しなければならんことは当然でありますが、要するに
ドイツの輸出はただ輸出だけ伸びたのではなくて、輸入の
関係も同じように伸びて来ておるのだということが考えられるわけであります。そこでこれから先どうな
つて行くかという問題でありますが、これにつきましては大体において今までのような輸出の伸び方はなくなるだろうという観測が強いのであります。一つは、これは世界的に貿易量というものがとめどなく伸びるというものではないというのであります。
ドイツ特有の理由といたしまして、最近各方面に対して
ドイツが輸出によ
つて生じたところの一種の固定債権を非常に多く持つように
なつたということは、第一にEPU、欧州決済同盟に対してでありますが、一九五〇年の六月頃に
ドイツは欧州決済同盟の中で一番の大債務国にな
つておりまして、四億五千万ドルを突破する債務を持
つていたのですが、その後どんどん取返しまして五一年の初めからは債権国に転じまして、現在では五億ドルを突破する大債権をこれに対して持
つております。それから更にそれ以外の双務勘定国につきましては、例えばブラジルでありますが、ブラジルに対しましては、スウイングの額が千三百万ドルにかかわらず、
ドイツの債権は実に九千万ドルを突破して一億ドルになんなんとしている。それ以外の国につきましても
ドイツは多く出超にな
つておりまして、現在は焦付いた債権をどうして回収するかというむしろ問題にな
つておりまして、一方的に輸出だけ伸ばして行くわけに行かないという
状況にな
つて来ています。これはいろいろの面で
ドイツ政府の施策の上にも現われておりまして例えばブラジルとの間の貿易につきましても、輸出業者はその輸出によ
つて得た為替を公定価格で以て中央銀行に売ることはできないので、輸入する者に対して売らなければならない。その相場は自由にきまるわけですから、従いまして
需要供給の
関係で必ずこれは割引きして売らなければならないことにな
つています。その割引きをして買つた
需要者が自分の輸入コストの八割まで
支払いまして、あとの二割は中央銀行から公定値で以て為替を買
つて輸入をするという仕組にいたしております。従いまして輸出は、輸入の取引が成立する見込がない限り恐らく輸出はできないでありましよう。又輸出入が行われるたびごとにその額の二割までは焦付き債権は消して行くということになるという仕組で以て、これは一種の輸出抑制策でありますが、そういう政策までと
つておる
状況でありまして、まあここに一つの今後の問題が存しておるように感じた次第であります。
西独
政府はそのほかに輸出奨励策としてどういう措置をと
つておるかということにつきまして、これは私
ども非常に興味を持ちまして参
つたのでありますが、行
つてみますと非常に当てが違
つておりまして、現在のところ本当に有効な輸出奨励策というものは、税金の面で輸出契約につきまして或る
程度の額の所得控除を認める。更にそれと同じぐらいの額の積立金を認めるという制度でや
つております。それ以外に特に有効な制度というものはや
つていないように認められたのであります。この税制の問題は、これは
ドイツでは非常に税金が高い
関係上これが効くのでありますが、現在
ドイツでは千八百億マルクの国民所得に対しまして、四百十億マルクという莫大な税金をと
つております。国民所得三分の一以上を税金にしてと
つておる
関係がありまして、その結果必要なときに思い切
つて減税をすれば、それだけで企業としては非常に助かるという面がございまして、これは輸出だけではありません、例えば新らしく投資をするというような場合にも同じく思い切つた減免税をや
つております。それによ
つて国内の資本を必要な面へ向けて行くという施策をや
つているように感じたのであります。この制度自身
ドイツ人に聞きましても、これは非常に輸出の振興に役立
つておるということを申しております。それ以外に、例えば
只今日本で問題にな
つております優先外貨のごとでございます。これは
ドイツでは輸入権という名前にしておりまして、ドル輸出に対してその四〇%の為替を使用する権利を与える。その権利は売買し得ることにな
つておるのであります。これにつきましては、昨年の初めからこの制度は始まりまして、当初は二割
程度のプレミアムがついたということでありまして、それだけ輸出のコストを切下げてもいいことになりますから輸出促進にな
つたのでありますが、その後先ほど私が申した理由で、ドル物資が
需要がだんだん減
つて来たような
関係でプレミアムが下りまして、現在では僅か〇・六から〇・八にな
つている。殆んど輸出促進としての全然
価値がないのであ
つて、もう他国がやめれば自分の国はいつでもやめてもいいのだということを申しておりますが、最近国際通貨基金に対してもそういう意味のことを申したようであります。
その次に、輸出の金利について何か特別の措置をと
つていないかということでありますが、これにつきましては原則としてはそういうことをや
つておらんようであります。ただ仕向国の積立による外貨手形を輸出業者に出しましてそれを中央銀行が、仕向国の中央銀行が再割しておるその再割の率で以て割引くということによりまして実際上出しておる。今でも出しておるのでありますが、併しながら現益では
ドイツの中央銀行の再割率は三分五厘まで下りまして、これはイギリスなどと比べても低い
関係にな
つたので、そういう仕向国の再割ということが
余り魅力がなく
なつたということでありましよう。勿論
ドイツの輸出金融は主として市中銀行の
支払で行われておりまして、全部中央銀行が割引くという制度にな
つておりません
関係上、中央銀行の利率は下
つても市中ではやはり依然として相当高い金が使われておりまして従いまして輸出外貨手形というものはまだ相当利用
価値があるのでありますが、曾
つてドイツの再割率が六分であつたような時代に比べまして非常に効用は少くな
つて来ているということも認められます。それ以外に手段といたしましてやや目立ちましたことは、いわゆる見本市でありますが、これは
ドイツに限らないのでありまして、イギリスでもベルギーでもイタリアなどでも非常に盛大にや
つております。
ドイツにおきましては、ケルンとフランクフルトとハノヴアーという三つの都市で定期的に開くことにしまして、各国の出品を求める。その場合各国のバイヤーを招待する。招待と申しましてもこれは見るだけであ
つて金は勿論向う持で来るわけでありますが、そういうことをや
つておりまして、私が現に行きまして一、二見たのでありますが、これはヨーロッパ諸国、
アメリカ、東南ア諸国からもたくさんバイヤーが呼ばれておりまして、現実において
機械を運転して見せて、これを売るというやり方でありますが、非常にこれは効果があるように感じたのであります。
我が国におきましても、明年
大阪府においてこれをやるそうでありまして、非常によいことでありますが、願わくはこれは
我が国におきましても
東京、
大阪、
神戸ぐらいに毎年定期に行いまして、各国のバイヤーをよせるというようなことは、非常に
日本の品物を親しく知らせるという意味において効果があるのではないかと考えた次第であります。
ドイツにおきましては、見本市は会社組織にな
つておりまして、
政府からの補助はもらえないで自分の金でや
つておるようであります。
もう一つの措置といたしましては、海外市場の調査ということでありまして、これは
我が国でも御
承知の通り海外市場調査会というものがございまして、これは通産省から補助金を出しておるのでありますが、
ドイツに行きまして、これは全額
政府負担で、向うの経済省の外郭団体のようなものにな
つておりまして、相当活溌に動いておるように感じました。その調査は主として
基本的なデータを隻めるということにあるようでありまして、目前の
商売のためになるというよりは各国の関税
関係でありますとか、或いは輸出入
関係の法規を丹念に集めるということに主眼を置いておりまして、又ときどきに各国の市場別にまとまつたパンフレットを出して紹介するというやわ方でありまして、これも
ドイツだけではなく、ベルギーにおきましても、スイスにおきましても、相当多額の国家の金を使
つてやはり同じような団体ができておりまして、相当海外市場紹介という意味では役に立
つているように感じた次第であります。
大体輸出促進策というのはそのような
程度のものでありまして、これはやはり感じたことでありますが、例えば輸入権の問題にいたしましても、或いは金利の問題にいたしましても、過渡的には非常に役に立つた時期があ
つたのであります。その役に立つた時期に機動的にすばやくこういう措置をとつたということに対しましてば我々非常に敬意を表しますると同時に、我々自身が非常に無能であつたことに対して責任を感ずる次第でありますが、現在においては、
ドイツの物価が大体国際物価、ドル物価並みに下り、且つほかの方面からの要請もあ
つて、そう無理やりに輸出だけ促進するという必要がなく
なつたという
状況の下におきましては、
余り政府の手段で以て何か特に輸出を奨励しておるというような傾向が認められんように感じた次第であります。例えば、成る
程度の長期分割払によるプラント輸出の金融でありますが、これも、全然市中の金融に任されておりまして、
政府として特にこれに対して金を出しておるということはないようでありましてこの点においては、
日本のほうがずつと進んでおる措置をと
つておる次第であります。大体貿易のことだけを申上げた次第でありますが、そのほかのことにつきまして若し御質問がありましたらお答え申上げます。