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政府委員(
豊島陞君)
土地調整委員会のできました
経緯と現在
土地調整委員会でや
つております仕事の概要を
最初に申上げたいと思います。御
承知の
ように
鉱業権は他人の土地に重複して設定されるということ、それから第二には工場を設置しますときには、適地にどこにでも工場を置くことができますが、
鉱業はどうしても場所が固定するという
ような
関係上、
地方との衝突を招来する場合が非常に多いのであります。従いまして
鉱業法の
改正の際に、この問題が
一つの大きな問題として取上げられまして、その結果といたしまして、これを
調整いたしますのには、第三者的な
機関で
調整をやることが一番いいのじやないかということで
発足いたしましたのが
土地調整委員会であります。従いまして
土地調整委員会は一応総理府の外局という形で設置いたしまして、その
委員は人格が高潔であり、公共の福祉に関して公正な
判断をすることのできる者のいう条件を
法律で
規定してありまして、そういう条件にか
なつた人を両院の同意を得て内閣総理大臣が任命するということで、現在五人の
委員で構成しております。
今申上げました
ように、
鉱業との関連において設置されましたので、
土地調整委員会の仕事の大
部分が必ず一方には
鉱業がある。それからもう
一つ採石業があるのであります。
鉱業と
採石業と、ほかのほうの法益、今問題に
なつております
文化財とか或いは
国立公園、そういつたものと
鉱業との衝突であり、或いは
鉱業と農業が衝突する、或いは林業と衝突する、こうい
つたような場合には、どちらの
産業を生かして行くか、或いはどちらの、
文化財を生かして行くか、どちらをやめてもらうか、こうい
つたようなことの
判断をやることに
なつております。従いまして
委員会の仕事の第一といたしましては、
鉱区禁止
地域の
指定ということをや
つております。これはどういうことかと申しますと、旧
鉱業法では、宮城とは離宮とか公料地とかそうい
つたような場所におきましては、
法律上絶対にそこは
鉱区を設定してはいけないという
法律上の
鉱区禁止
地域に
なつておりましたが、新
鉱業法ではそうい
つたような場所におきましても、或る場所においては或いは
鉱業を掘ることが国家のためにいいという場合もあるのではないかということで、そうい
つたような場所につきましては、一括
法律上で禁止しないで、
土地調整委員会の
判断に任せ
ようということで、そういつたものの
判断とか、或いは旧
鉱業法では通産
局長がいわゆるこの
鉱区禁止
地域に相当するものをや
つてお
つたのでありますが、これをやりますと、ほかの官庁との
納得がうまく行かないのじやないかということで、そうい
つたようなものにつきましても、
土地調整委員会がそういう権限を行うということで
鉱区禁止
地域の
指定ということを行う、そうして
土地調整委員会が
指定を行いましたならば、その
地域におきましては通産
局長は
鉱業権を設定することができない、そういう効果を持たせる。そうして一方には又
鉱業のほうが非常に重要に
なつて来る、或いは
地下資源が国家的な脚光を浴びて非常に重要なものに
なつて来た場合にはこれを解除する。そういつたものの
申請、解除ということは、個人に任せますといろいろな人からどんどん出て来る虞れがありますので、これは知事か或いは各省大臣かどちらかそういう人でなければ
申請ができない。普通の人には
申請権を認めない。それから解除の場合も同じ
ような方法をと
つて来ます。
鉱区禁止
地域の
指定ということが第一の任務。それから第二の任務は、
鉱業権の設定とか、
取消とか、そういうことについて他の法益とぶつかつた場合の争い、これが
只今問題に
なつておりまする
平尾台につきまして
鉱業権を設定しましたことに対しまして、
小倉市としてはあそこは
文化財として残すべきである。従
つてその
鉱業権は
取消してもらいたいとい
つたようなことが争いにな
つたのでありますが、そうい
つたような
鉱業権の設定につきまして、
公益上のいろいろな問題の争いがありました場合のその
裁定を行う問題、そうしてこの
裁定に対しましては東京高等裁判所に訴訟を提起していい。そうして更にそれに
不服があれば最高裁判所に持
つて行く、そういつた仕組であります。第三には
鉱業のために土地を使用したり、収用したり或いは
鉱業のために土地を
利用するのについていろいろな
処分がありますが、そうい
つたような
処分に
不服がある場合には、やはり
土地調整委員会に
裁定の
申請ができる。そうしてこれに対して
不服があれば東京高等裁判所、更に最高裁判所に提訴ができる、こういう大きく分けましてこの三つであります。
そのほかにもう
一つは土地収用法によりまして、建設大臣が土地の使用或いは収用につきまして
訴願がありました場合にはその
訴願を
裁定する場合には
土地調整委員会の
意見を聞いて必ず
裁定する、こうい
つたような
規定、この
規定に基きまして
土地調整委員会が建設大臣に
意見を具申するとい
つたような事柄が
土地調整委員会の権限の概要であります。
それでは今の
調整の問題でありますが、これについて
一つ問題があるのでありますが、それはどういう問題かと申しますと、
鉱業を行います場合には通産
局長限りで行えない場合が非常に多いのであります。例えば今問題に
なつておりまする
文化財に
指定されますとその
地域内で
鉱業を行います場合には
文化財保護委員会の
許可がなければここは掘れない、或いは又砂鉄、砂鉱そういつたものを川で掘ろうとするとこれは河川法によりまして知事の
許可がなければこれは掘れない、或いは
国立公園の
保護地域に
指定された
地域内でありますと、これは厚生大臣の
許可がなければ掘れない、或いは農地をつぶしてそこに
鉱業のいろいろな建物を作ろうとか或いは保安林の中で
鉱業をやるという場合にはやはり農林大臣だとか或いは府県知事の
許可がなければ掘れないのであります。そうい
つたような場合に今問題に
なつておりまする
鉱業権そのものにつきましては通産
局長が
鉱業権を設定して、それに
不服があ
つて、
土地調整委員会においてその
処分はよろしいという
裁定をしておりながら、ほかのほうの
法律で
許可を要する場合には、そのほうの
法律の主管官庁だけの権限で現在は一切の
処分が左右されておりますので、例えば前申上げました
鉱業権はよろしいと言いました場合において、その
鉱業を実施し
ようと思いまして保安林の中で掘ろうというときには農林大臣の一
許可が要る。そうしますと農林大臣がそれに対して不
許可をするということになりますと、
土地調整委員会が
最初その
鉱業権を認め
ようとした場合にはその保安林の
関係も
考慮してそれはよろしいという判定がしてあるのでありますが、農林大臣の
処分が
土地調整委員会に
関係なしに行えるということの結果、そこに
鉱業権がありながら行えない
鉱業権ができてしまう。こうい
つたような矛盾を招来いたしますので、
土地調整委員会といたしましては去年
発足いたしたのでありますが、
発足以来そういうことに気付きましたので
法律の
改正の都度そうい
つたようなアンバラスを直して行くということで交渉をして参りまして、昨年
国会を
通りました
農地法の
改正とそれから
森林法の
改正が行われたのでありますが、その際に農林省と話しまして農林大臣がするその
処分のうち
鉱業と
採石業とに関連のある
処分、今申上げました
ように
鉱業権者が
鉱業をやろうと思
つて保安林の中で
許可を
申請する、そうするとそれが不
許可に
なつた、或いは逆に
許可に
なつたという
ような場合、そういう場合にそれに
不服のある人は
土地調整委員会に
不服の
裁定を
申請できる。そうしてそれに
不服があれば東京高等裁判所に、更に
不服があれば最高裁に持
つて行けるというふうに
農地法と
森林法におきましてはそういうふうに
改正がなされました。それからあといろいろな
法律が昨年も
提案が準備されてお
つたのでありますが、その際にそれぞれ
お話をいたしまして交渉をして参
つております。従いまして今後
文化財の問題につきましても今
文化財保護委員会のほうにも私のほうからそういつた点に持
つて行くべきではないかということを申入れております。なお
国立公園のほうにもそういう話を持
つて行
つております。そうして
改正の都度そういう方向に持
つて行きまして、そうして国家といたしまして
処分に一貫性を持たすというふうに持
つて行くべきではないかというふうに考えております。