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1953-07-01 第16回国会 参議院 通商産業委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月一日(水曜日)    午後一時三十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     中川 以良君    理事            松本  昇君            加藤 正人君    委員            石原幹市郎君            西川彌平治君            酒井 利雄君            松平 勇雄君            岸  良一君            豊田 雅孝君            西田 隆男君            武藤 常介君            白川 一雄君   政府委員    土地調整委員会    事務局長    豊島  陞君    通商産業政務次    官       古池 信三君    通商産業省重工    業局長     葦澤 大義君    通商産業省軽工    業局長     中村辰五郎君    通商産業省鉱山    局長      川上 為治君    通商産業省公益    事業局長    中島 征帆君    中小企業庁長官 岡田 秀男君   事務局側    常任委員会専門    員       林  誠一君    常任委員会専門    員       山本友太郎君    常任委員会専門    員       小田橋貞壽君   説明員    文化財保護委員    会事務局次長  岡田 孝平君   参考人    石灰石鉱業協会    会長      芳賀 茂内君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○中小企業信用保険法の一部を改正す  る法律案内閣送付) ○鉱業法の一部を改正する法律案(内  閣提出衆議院送付) ○通商及び産業一般に関する調査の件  (九州地方水害状況に関する件) ○火薬類取締法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○武器等製造法案内閣送付)   —————————————
  2. 中川以良

    委員長中川以良君) それでは只今より通商産業委員会を開きます。  本日は最初中小企業信用保険法の一部を改正する法律案につきまして、政府側提案理由を聴取いたします。
  3. 岡田秀男

    政府委員岡田秀男君) 中小企業信用保険法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申上げます。御承知よう中小企業信用保険法は、中小企業者に対する事業資金の融通を円滑にするため、金融機関中小企業者に対する貸付につき政府信用保険を行う制度として昭和二十五年十二月に発足をいたし、更に一昨年十一月の改正により指定法人の行う中小企業者債務保証をも保険対象に加えて今日に至つたものでありまして、専ら中小企業者信用を補完することにより、中小企業金融円滑化に寄与して参つたのであります。今、制度発足以来本年三月末までの利用状況を見ますと、金融機関相手方とする保険付保実績は約一万二千件、百四十八億円に及び、指定法人相手方とする保険におきましても、約一万四千件、四十四億円の利用をみたのでありまして、制度の普及と共にその利用は逐次上昇の一途を辿つているのでありますが、現在の金融情勢下におきまして、なお多大の困難を有する中小企業金融促進のためには、この際本制度に及ぶ限りの改善を施し、その効果を一層大ならしめる必要があると考えるのであります。  今回改正を必要とする諸点といたしましては、第一に中小企業者の定義を改正し、資本の額による制限を、現在の五百万円以下から一千万円以下に、常時従業員の数による制限を現在の二百人以下から三百人以下に拡大すると共に新たに医業を主たる事業とする法人調整組合対象に加えること。第二に相互銀行或いは無尽会社の行う給付を貸付に準じて保険すること。第三に金融機関相手方とする保険について、保険金てん補率を現在の七五%から八〇%に引上げること。第四に保険関係が成立する貸付金の限度を現在の五百万円から一千万円に引上げること。第五に保険金支払請求権行使の始期を現在の保険事故発生後六カ月経過時から三カ月経過時に繰上げること。第六に保険金支払に伴う代位の規定回収金の納付の規定に改めて手続簡素化を図ること。第七に指定法人相手方とする保険について保険金てん補率を現在の五〇%から六〇%に引上げること。第八に中小企業金融公庫、日本開発銀行及び国民金融公庫の行う代理貸に際し、代理金融機関債務保証保険する制度を新設することでありますが、これによりまして制度の能率的な運用と大幅な利用促進とが期待されるのでありまして、中小企業金融円滑化に大いに資するところがあると存ずるのであります。  何とぞ右につきまして慎重御審議の上、御賛同あらんことをお願いいたす次第であります。
  4. 中川以良

    委員長中川以良君) 本法律案に対しまする政府側内容説明の聴取並びに質疑は次回に譲りたいと存じまするが、御異議ございませんか。    (「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 中川以良

    委員長中川以良君) それではさように取計らいます。   —————————————
  6. 中川以良

    委員長中川以良君) それでは次に鉱業法の一部を改正する法律案を議題といたします。鉱業権文化財との調整問題に関しまして、先般の委員会においてもいろいろと論議されて参つたのでございまするが、そのときに取上けられましたところのモデル・ケースといたしまして、福岡県の小倉平尾台石灰石鉱区採掘権をめぐる問題につきまして、本日は参考人といたし、石灰石鉱業協会長芳賀茂内君の御意見を先ず承わりたいと存ずるのであります。  芳賀参考人に申上げます。本日は御多用中にもかかわらず、当委員会のために特に御出席を頂きまして、誠に有難う存じました。只今も申上げましたごとく、平尾台鉱区をめぐる問題の経緯につきましては、殊に文化財鉱業権との調整について、かねがね業界においても問題とし、これを検討を加えておりまする次第でございまして、いろいろとその点私ども納得の行かない点等守もございまするので、この際どうぞ忌憚なく従来の経緯並びに御希望等を御開陳を賜わりまして、本法案審議に私どもの貴き参考となりますように、特にお願い申上げる次第であります。それではどうぞお願いいたします。
  7. 芳賀茂内

    参考人芳賀茂内君) 鉱業権文化財との調整についての意見を申上げさして頂きます。  昨年十一月二十七日文化財保護委員会告示を以て指定されました福岡小倉平尾台における天然記念物は、石灰石鉱業権既存区域を包含する広範囲のものでありまして、その鉱業権は実質的には制限若しくは禁止されたと同様のこととなり、財産権に重大な影響を及ぼしております。而も該鉱業権に対しては、小倉市から昭和二十七年八月土地調整委員会に対して鉱業権許可取消申請がなされたのでありますが、関係人に対する審問、公聴、その他慎重調査審議の結果、昭和二十七年十二月二十六日原告の申立は棄却され、鉱業権は再確認されたのであります。このよう国家意思の分裂しますことは、誠に奇異な感なきを得ません。又その天然記念物指定に至りますまでには、当該鉱業権者は勿論関係業界及び関係行政官庁から、即ち文化財を大切に保存することを自覚すると共に、一方当該天然記念物の主体たるものは必ずしも同鉱区内にのみ存するとは限らないので、その他の地域において指定されたきこと、又は鉱区内において特に指定価値ありとされる部分又は区画については、鉱業権者は、自ら鉱業権制限する意思があるが、本鉱区を全面的に否定されることは我が国軍要産業一つであるセメント工業消長影響するところが大であるので、文化財指定鉱業との調整につき特に考慮せられ、鉱区地域に亘つて指定することなく、その一部において鉱業の実施ができるよう善処願いたき旨具申し、又は審議に際しては、関係人意見を聴聞されるよう願い出たのでありますが、いずれも取上げられることなく、文化財保護委員会独自の調査審議により本指定を見たものであります。これに対しましては、鉱業権者たる豊国セメント株式会社は、唯一の原料地を制せられることとなり、又延いては我が国重要産業一つであるセメント生産消長に及ぼすところ甚大でありますので、重大なテストケースとして鉱業界を挙げて注目しております。豊国セメント社といたしましては、文化財保護委員会に対し現状変更申請即ち指定地域内の一部において掘採を行うことの申請を目下いたしておるのでありますが、委員会から豊国セメント社に対し、指定区域の外、背後地を掘採すべしとして申請書変更の内示が参つておりまして、同社も甚だしく難儀している現状であります。  仄聞するところによりますと、文化財鉱業権、特に地表鉱物との関係につきましては、文化財保護法立法当時新鉱業法成立以前であつたため、十分御審議の機がなかつたやの趣でありますところ、なお今次国会政府から提出されました鉱業法の一部を改正する法律案においても、鉱業法において文化財との調整に関する規定を新たに設けられております際でもありますので、文化財保護法においても、左の諸点改正され、納得が行く行政がなさるべきものと思料します。    記   一、鉱業権既存地域文化財指定ようとするときは、文化財保護委員会はあらかじめ鉱業権者及び関係人に対し意見書提出を求め、又は公開による聴聞を行うこと。    理由   一旦文化財指定が行われると、その鉱業権行使制限又は禁止されたと同様になり、財産権に重大な影響を及ぼすものである。その指定に際しては協力の実と財産権尊重につき立法者意思を具現するため十分民意を尽さしめられたい。なお第八回、第九回国会両院通産委員会において白熱せる論戦の結果可決された新鉱業法においても、地表鉱物鉱業権出願処分に際しては土地所有者財産権尊重につき十分の考慮が払われ、処分官庁土地所有者に対してあらかじめ意見書提出機会を与え、又は新鉱業法施行の際の経過措置として、土地所有者に対し出願優先権を与えておる等の規定が設けられておる。    二、文化財保護法又はこの法律に基く命令規定による委員会処分不服のある者は、委員会又は文部大臣に対して異議申立をすることができること。但し、次のよう土地調整委員会裁定申請することができる事項についてはこの限りでない。     理由    行政訴願の途を開き民意を尽さしめられたい。新鉱業法においてもその処分につき通産局長又通産大臣に対し訴願の途が開かれている。    三、鉱業権既存地域において、文化財指定若しくは仮指定又はそれらの地域現状変更等制限環境保全のための命令等処分不服のある者は、その処分につき土地調整委員会裁定申請することができること。     理由    文化財保護法処分に対しては訴願等行政上の救済方法は現在認められていないが、鉱業権等財産権に重大な影響を及ぼすものについては何らか行政上の再審査方法を設けて頂きたい。そしてその再審査地下資源又は文化財の一方的行政機関でなく、公正中立第三者的機関によることが望ましい。この機関としては土地調整委員会が最も適当であると信ずる。該委員会一般公益又は他産業鉱業又は採石業との調整のために特に設置されている機関であつて鉱業法及び採石法に基いて権限を有するほかに農地法及び森林法に基く各種の処分についても鉱業又は採石業との調整に関する場合には処分庁関係者との間に立つて裁定を行うことになつている。近く国会提出を予定されている自然公園法案でも自然公園の景観の維持と資源開発との調整について同様の措置が認められておる。   四、文化財指定処分によつて損害を受けた者に対しては、政府損害補償すること。     理由   環境保全においては損害補償を認められている以上、財産権に重大な影響のあるこの指定については同様の考慮が払われて然るべきものと信ずる。なお鉱業法において公益害による鉱業権取消の場合において補償規定は設けられていないが、相当の補償を支払うべきものと従来解釈せられて来たのである。今次国会提案せられた鉱業法の一部を改正する法律案はおいて補償規定が明文化されております。以上。
  8. 中川以良

    委員長中川以良君) 有難うございました。只今お話を承わつたのでありまするが、文化財保護法は単に鉱業権との間に摩擦を生じておりまするのみでなく、産業開発の重点とも申しまするべき電力の開発関係につきましても現に種々問題を生じておりまするところであります。今後電源開発本格化に伴いましてますますこの問題が発生をする虞れがあると存じまして、私どもは非常にこの点関心を持つておる次第でございます。丁度その機会におきましてこの間の事情等につき殊に通産当局のお考え等につきまして公益事業局長より一応の説明を先ず求めたいと存じます。
  9. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 文化財保護法電源開発の問題は現在までのところ特別のトラブルを引き起しておりませんでありますが、多少問題になりましたケースが三、三ございますので、お手許に資料を配付いたしましたが、これに基きましたて各例につきまして御説明申上げます。  第一は長門峡ケースでありますが、山口県の長門峡は御承知通り名勝指定なつておりまして、この地区に近い所へ中国電力におきまして約一万二千キロの発電をするという計画があります。これは実際には長門峡区域外でありましたけれども、関連を持ちまもと考えまして、着工に先立ちまして一昨年の七月に文化財保護委員会現状変更認可申請をいたしたわけであります。ところが昨年の二月に至りまして、これが許可となりまして、現在計画通り電源開発に着手いたしております。  それから第三は、岡山県の朝日川の流域でありまして、湯原という地区におきまして同じく中国電力によりまして約二万五千キロワット程度発電計画を立てまして、これにつきましてこの一帯が天然記念物の大山根魚棲息地でありますので、工事に際しまして文化財保護委員会現状変更認可申請をいたしたわけであります。これにつきましては昨年の五月に申請をいたしまして、六月下旬には許可を頂きまして円滑に開発が進んでおります。  それから第三のケース広島地区の柴木川の問題でありますが、これが今のところ最終解決をいたしておりません一つの例でありますが、これはいわゆる三段峡名勝地域に関連いたしましてここに第一、第二、第三という三発電所、合計三万五千九百キロワットという発電所計画いたしましたのでありますが、この発電所を造るために三段峡名勝が失われるという見地から地元並びに県の委員会におきましては相当な難色を示しております。それに従いまして中国電力におきましては当初の計画変更いたしまして、ダムの地点乃至は発電所の数等も若干の変更を加えてできるだけこの景勝地支障を来たさないような案に修正をいたしまして、改めて現状変更認可申請をいたしたわけであります。この新らしい案につきましては、現在委員会におきまして検討されておりますが、中共の委員会におきましては、かなりこれにつきましては御理解ある態度をとつておられまして、地方委員会と共同で調査をされておる状態でございますが、恐らくはこの線で円満に解決するのではないかという期待を持つておるわけでございます。  それ以外の点につきましては現在具体的に問題になつておる点はございませんが、このように一応指定されましても、事情が許せば特別の許可をして頂いておりますので、現状におきましてこのために開発が特に遷延しておるというふうな重大なケースはないと考える次第でございます。ただ将来の問題といたしましては、例えば尾瀬原等いろいろございますので、これに書ましては電源開発見地文化財保護見地とお互いに支障のないような点で開発の途を開くように双方とも努力しなければならんと、こういうように考えております。
  10. 中川以良

    委員長中川以良君) それではこれから質疑に入りますが、只今本件に関しまして政府側から出席をいたしておりまする政府委員並びに説明員を念のために皆様に申上げます。政務次官古池君、鉱山局川上局長公益事業局中島局長文化財保護委員会岡田事務局次長文化財保護委員会平間記念物課長土地調整委員会豊島事務局長、以上でございます。  先ず最初委員長から総括いたしまして一、二の点をお尋ねいたしたいと存じます。  第一点は鉱業権と他の公益との調整という問題につきましては、国立公園温泉などとの場合も同様と思うのでございまするが、これらの問題につきましては比較的温泉国立公園のときには円満に解決をいたしておりまするようでございます。然るにかかわらず文化財につきましては只今も御説明を承わつたように、いろいろと紛争が生じておりまするのは国立公園法温泉法に比較いたしまして、文化財保護法規定並びにその運用が他の利益との調整に関しまして不十分なるものがあるのではないかと思われるのであります。同法を実際運用されておりまするところの文化財保護委員会当局の御見解を先ず承わりたいと存ずるのであります。
  11. 岡田孝平

    説明員岡田孝平君) 只今参考人の御意見、それから公益事業局長の御説明がございましたが、文化財保護と他の産業若しくは公益との調整の問題につきましては、文化財保護委員会といたしましては最も苦心をいたしてその取扱に非常に慎重を期している次第であります。全体といたしましては非常にむずかしい問題は少いのでありまして、史跡名勝天然記念物千六百件ございますが、そのうちで特に只今非常に面倒になつておりますのは先ほど御説明尾瀬原その他一、二件でございまして極めて件数といたしましては僅かな件数でございます。併しながら問題は重要でありますので、私ども非常に慎重にいたしております。私どものほうの方針といたしましては文化財保護及びその活用という点から見まして、文化財指定いたしましたその価値本質を傷つけない限りにおいては他の産業及び公益との調整につきましては十分考慮いたして、現状変更文化財現状変更ということでできるだけ許可いたしている、いたしたい、又現在いたして来ている次第であります。ただ文化財本質をこわす、そこを失えば文化財価値がなくなるという場合、或いはその部分につきましてはこれは簡単には譲歩できないのでありますか、そうでない限りはできるだけこの関係を十分に考慮いたしまして現状変更をいたす。大体において問題を円満に解決いたしていると信じている次第であります。  それから先ほどお話がございましたが、文化財保護委員会が一方的に何らかの意見を聴取せずにどしどし指定をするとかいうことはいたしておりませんので、申請人意見は十分にこれは聞きまして尊重いたし、且つ又地元関係者、或いは県の教育委員会、或いは県庁側その他の意向も十分聴取いたしましてその上でこれらの問題を解決いたしている、かよう方針をとつて来ております。ただ文化財保護法はこれは国会立法でございまして参議院提案立法でございますが、すでにこの法律を施行いたしましてから三年になりますが、いろいろな点におきまして実際施行いたしました点から考えまして、或いは改正を要しやしないかという点があると思いますので、さような点につきまして只今研究いたしているのでございます。又参議院事務局のほうでもいろいろと御研究せられているようでございますが、その際に、その法律改正の際に只今ような重要な問題につきましてもできますものならば解決いたしたいというようなことでいろいろ研究を進めているような次第でございます。
  12. 中川以良

    委員長中川以良君) 只今お話であらましはわかるのでございますが、私どもはその重要文化財の保存ということに対しましてはこれは十分尊重をいたし、又文化財保護法の精神を酌んでいるものでございますが、ただこの狭い国土におきましてどの程度地域限つていわゆる文化財保護指定をされているか、即ち史跡名勝天然記念物指定をするものでございますか、又指定によつて他の目的に対しまして与える損害補償の途が開かれているか、がこれは問題であると思うのであります。文化財保護法の第四条第三項には、「政府及び地方公共団体は、この法律の執行に当つて関係者所有権その他の財産権尊重しなければならない。」と規定をされております。併しながら、指定に関する第六十九条においては、委員会は何の制肘もなく指定し得ることになつているのでございます。この問題の調整文化財保護委員判断次第となつているようでございまするが、これに対しまして、委員会指定前に、当該地域鉱業権水利権の所在及びそれらの経済的価値に対しましてはどのよう手続をして御調査なつているのか、この点を明らかにして頂きたいと思うのであります。
  13. 岡田孝平

    説明員岡田孝平君) 只今御指摘の点は、誠に御尤もな点でございまして、できるだけ関係者所有権その他の財産権尊重しなければならないということでございまして、先ほど申しましたような趣旨で以て、或いは地元、或いは申請人、或いはその他の関係者教育委員会というような、各方面意見を聞きまして処理いたしておりますが、なお私どもは顧みまして十分でない点もありはしないかということを極めて恐れております。さような点につきましては、十分反省をいたしまして、これらの取扱には更に一層慎重を期したいと考えておる次第でございます。
  14. 中川以良

    委員長中川以良君) 只今一体どういうふうな手続で以て御調査をしておられるか、その点は今の御答弁では明確でないのでありますが、その点を一つ一応はつきり現在どういうふうにやつておられるのかを承わりたい。
  15. 岡田孝平

    説明員岡田孝平君) 現在は大体問題が起りました場合には、地元の県の教育委員会で以て第一次的にいろいろと事情を取調べまして、それに対して県の教育委員から意見を具申して参りまして、それに基にいたしまして我々が判断をいたしております。必要があれば更に直接私どものほうから申請人その他の関係者意見なり希望なりを聞きまして、そうして調べておるというような次第でございます。
  16. 中川以良

    委員長中川以良君) どうも今の御答弁で私まだ得心しないのでありますが、教育委員会のごときはどうも産業のことは余りおわかりにならないのじやないかと思いますが、この点はいずれ他の委員皆様方から御質問があると思いますので、一応私はこれで質問は打切つておきまするが、次に、第八十一条に環境保全規定がございます。本条の適用される地域は、史跡名勝天然記念物指定地域内でありますが、それより広範囲地域に及ぶものであるかどうか、この点を一つ御明確にして頂きたいと思います。
  17. 岡田孝平

    説明員岡田孝平君) 只今の八十一条の環境保全でありまするが、法文の解釈そのものといたしましては、必ずしも指定区域内に限ることはありませんで、場合によりましては必要に応じて指定区域外につきまして環境保全措置を講ずるということもできるという解釈でございます。ただこの八十一条は、実際問題といたしましては、余り条文の適用をいたしたことはございません。実例は少いという実情になつております。
  18. 中川以良

    委員長中川以良君) 今の私の御質問いたしました点も、今後産業関係としては今のような御答弁では甚だやはり頼りない、いろいろな問題を惹起する虞れがあるように思うのでありますが、この点も一つ委員諸君から重ねて御質疑を願いたいと思うのであります。  次に、天然記念物現状変更に当りましては委員会許可を受けることになつておるのでありまするが、許可に当りましては、その条件として文化財本位といたしまするならば、経済施設に対しましては非常に苛酷となる虞れがあるのであります。この関係におきましても、委員会基本方針というものはどういうふうに持つておられるか、産業方面に対してどういう御配慮が講ぜられておるか、又関係官庁との意見調整はどのように行われておりまするか、この点を一つ承わりたいのであります。
  19. 岡田孝平

    説明員岡田孝平君) 史跡名勝天然記念物関係指定等に伴いまする他産業との関係でございまするが、先ほど申しましたことが、殆んど大部分史跡名勝天然記念物について当てはまることでございまして、十分に関係者意見を聞きまして、実情を取調べまして慎重を期しておる次第でございまするが、なお他官庁との関係につきましては、問題がございまするならば、他官庁のほうからもいろいろと御意見を言つて来られます。そういうような点は、私どものほうでもいろいろと意見を申述べまして、できるならば調整を図りたい。かよう方針で、その問題々々に応じまして、いろいろ意見が官庁にございまするならば、それらの点も十分に研究いたしまして問題の解決を図つておると、かような次第であります。
  20. 中川以良

    委員長中川以良君) 経済産業関係に対しての何か基本的なお考え方というものが今のではちよつとわかりかねるのでありますが、どういうふうにお考えなんですか。どうもただ単に釈明的な御意見でなく、委員会のもつとはつきりした御意思を表明願いたいと思うのであります。産業経済に対するお考え方です。
  21. 岡田孝平

    説明員岡田孝平君) 産業経済につきましては、先ほどから申上げておりまするように、文化財の基本を崩さないという最小限度のそこは守りまするが、その基本を崩さない限度において他産業のそれを十分に考慮に入れまして尊重して処置をいたしております。他官庁からいろいろご意見がありまするならば、それを伺いまして処置をいたしておるわけであります。
  22. 中川以良

    委員長中川以良君) これも又委員諸君から更に一つ明確にして頂きたいと思います。  次に鉱業権水利権等の既得権利の全部又は一部が文化財指定によつて効力を失うような場合の補償関係は、一体、この文化財保護委員会においてはどういうふうにお取扱いになつておるか伺いたい。
  23. 岡田孝平

    説明員岡田孝平君) 補償関係につきましては、只今文化財保護法には何らその規定はございませんので、そういう場合には補償いたしておりません。ただ実際問題といたしまして、先ほど来申しておりまするように、実際に補償が必要であつたというような場合は、これは極めて稀でございまして、そういう事件は非常に少かつたと思うのであります。
  24. 中川以良

    委員長中川以良君) 只今まで補償がもらえないので、いろいろなやはり問題がこの鉱業権水利権にはあると思います。この点もこの機会に当委員会で更に一つ検討を加えてみたいと存ずるのであります。  それから最後に文化財保護法の第七十一条には、「史跡名勝天然記念物がその価値を失つた場合その他特殊の事由のあるときは、委員会又は都道府県の教育委員会は、その指定又は仮指定を解除することができる。」と規定をいたしております。指定委員会独自の見解、意見によりまして行うことになつておると同様に、解除のほうも委員会判断によつて行い得る途が残されておるのであります。本条の中にございまする「その他特殊の事由のあるときは、」というのは、これは何を指すのでありまするか。又他の権利と競合がある場合に、本条を適用して指定地域の一部又は全部を解除する用意をお持ちかどうか、この点も一応一つ委員会の御所見を承わりたいと思います。
  25. 岡田孝平

    説明員岡田孝平君) 文化財価値を失つた場合には指定を解除するという規定がございますが、「その他特殊の事由があるときは、」といいますのは只今まではそういう実例はございません。別にどういう場合ということはないのでございますが、要するに文化財保護法対象にならないというような場合になると思います。これが実際に該当いたしましたことはないと思います。なお指定の解除の場合に、他産業との関係については、指定の場合と同様になると思います。
  26. 中川以良

    委員長中川以良君) 只今までの御答弁を承わりますると、どうも私ども腑に落ちない点もございますので、殊にこの文化財保護法とこのたび改正をされまする鉱業法との間には密接不可分なる関係がございますので、ただ単に鉱業法のみを改正をいたしても無意味な点が多々あると思います。殊に本日は私本当に遺憾と思いまするのは、文化財保護委員会よりは事務局次長が御答弁にお出ましを頂いておりまして、当の委員諸君は一人も御出席を頂かないという点、この点につきましても折角産業方面と関連をして、文化財を我々が尊重しながらこの検討を加えて調整をしようと考えておりまする際に誠に残念と存ずるのであります。併し御出席がないのでございまするから、一つこれからは委員諸君から今までの御答弁等に対しまして、又これに関連いたしまして一つ活溌なる御質疑をお願いいたしたいと存じます。
  27. 西田隆男

    ○西田隆男君 次長にお尋ねしますが、今までの御答弁を聞いておりますと、文化財保護委員会そのものがどういうことをやつているかということを確実に我々はつかめなかつたのですが、文化財保護委員会はこの委員会指定するものに対する調査機能を持つておりますか。
  28. 岡田孝平

    説明員岡田孝平君) 文化財指定いたします場合には、先ず第一次に都道府県の教育委員会調査いたします。それからそれによりまして意見を述べて参りますが、文化財保護委員会といたしましては専門審議会というものを設けまして、この専門審議会にはそれぞれ専門若しくは非常に技術的な問題を調査審議するということがその任務でございますが、高度の国家的な文化財に対しましての専門的な而も技術的な知識のあるかたに専門委員なつて頂きまして、それらの専門審議会の委員等が十分調査いたしまして、その議に付しましてその上で指定いたす、さよう手続をとつております。
  29. 西田隆男

    ○西田隆男君 私のお聞きしておりますのは、文化財保護委員会調査機能を持つておるかどうかということです。今あなたの御説明では審査機能はあるようですが、調査機能を持つておるかどうか、このことです。
  30. 岡田孝平

    説明員岡田孝平君) 調査機能は、文化財の事務当局の中にそれぞれ所管の課がございまして、それぞれ専門のものが、技官或いは事務官等になつておりますが、それらの調査専門のものが調査いたし、更に先ほど申しました專門審議会の委員も事実上調査の仕事を担当いたしまして、これらの機関で以て調査をいたす、こういうふうになつております。
  31. 西田隆男

    ○西田隆男君 今御説明によると、それぞれ専門の部会か何かがあつて調査の必要なる場合は調査しておるということですね。そうしますと他の権利と競合しない場合の文化財指定に対してこれは問題は起きないと思うのですが、問題になるのは、他の権利と競合するがごとき文化財指定という場合において初めてトラブルが起きて来るのですが、そういうトラブルが起きて来ることの可能性も考えて、そのよう文化財指定する場合は経済関係なり、その他の関係について十分な専門的な立場から調査がなされて指定されておりますかどうか。
  32. 岡田孝平

    説明員岡田孝平君) 先ほど申しました専門審議会の委員の中には、例えば鉱山関係でありまするならば地質関係或いは採鉱冶金関係等の専門の、主としてこれは学者でございますが、そういうようなかたが入つておりまして、それらのかたが事実上他産業との関係等につきましても十分に研究しておるというふうにいたしておる次第であります。
  33. 西田隆男

    ○西田隆男君 具体的の問題に移りますが、小倉平尾台天然記念物指定されましたときの調査の報告の概要でもあつたらお伺いいたしたい。
  34. 岡田孝平

    説明員岡田孝平君) 只今ここに持ち合せておりませんが……。
  35. 西田隆男

    ○西田隆男君 なければその資料を当委員会にお出し願いたい。その上で私の質問を又継続いたします。
  36. 中川以良

    委員長中川以良君) その資料お出し願えますか。
  37. 岡田孝平

    説明員岡田孝平君) のちほど又取調べましてお出しいたします。
  38. 中川以良

    委員長中川以良君) 資料をのちほど出すそうでありますから……。
  39. 西田隆男

    ○西田隆男君 頂いてから質問いたします。
  40. 中川以良

    委員長中川以良君) ほかに御質疑ございませんか。私からもう一点お伺いしたいのでありますが、今の資料を拝見すればわかると思うのでありますが、今の小倉平尾台の問題でありますが、会社側は現状変更申請しているのでありますが、聞くところによりますと、これに対しまして従来の場所と変えて、横のほうから、裏のほうから今度坑道を掘つて採掘する、それは人の土地であつて、そういうことは実際実行上不可能なる現状変更意思を表示しておられるように承わつておりまするが、この問題は一体どういうふうになつているのでございましよう
  41. 岡田孝平

    説明員岡田孝平君) 小倉平尾台の問題は現状変更申請書が来ておりますので、私どものほうといたしまして、只今慎重に調査いたしておるのでありますが、文化財本質であるところの石灰石天然記念物、成るべくそれを傷つけないという観点から、いろいろと申請側の御意見を承り、又申請側といろいろ只今懇談いたしている次第であります。只今お触れになりました裏側を掘るということ、これは一案でございますが、そういう案が若しも申請者のほうとしてそういうことが実行可能であるかというようなことにつきましても先般話合いをいたしました。が、併しこれはまだ結果はまとまつておりません。只今そういうような工合にいろいろと申請者側のほうともお話合いをいたしているような次第であります。
  42. 中川以良

    委員長中川以良君) ほかに御質疑ございませんか。文化財保護委員会のほうからいずれ資料が出て参りますし、更に本日はどうも事務的な御報告のような御答弁のみでございます。やはり責任者であるところの委員出席を求めまして、次回更に質疑をいたしたいと存じますが、如何でございましようか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 中川以良

    委員長中川以良君) それではさようなことに……一応文化財委員会に対しする質疑は本日はこの程度にいたしまして、次に通産省側から先般鉱山局長から御説明を承わつて、通産省側の御見解は了承しておるんでございますが、本日今までの質疑の模様、又、文化財保護委員側の御答弁等に関連をいたしまして、鉱山局長はどういう御意向であるか。重ねて一つ御当局としての御意思を御表明を願いたいと思うのです。
  44. 川上為治

    政府委員川上為治君) 先ほど文化財保護委員会事務局次長からもいろいろお話がありましたが、従来、ざつくばらんに申上げますと、必ずしも私のほうとの関係等におきましては、うまくは行つておりません。それは、結局問題は、やはり私は、法律的な欠陥、或いはその運営上の欠陥にあるんではないかと、そう考えるわけであります。この点につきましては、先般のこの委員会におきまして、私、申上げましたが、例えば平尾台の問題につきましても、文化財としてあの地域指定します前に、十分通産省との関係におきましても、話合いをした上で、その上でどうしてもというようなことになりまして、通産省のほうにおきましても納得したところでこれを指定するというようなことになりますれば、恐らく現在におきまして、原状回復等の問題につきましていろいろ問題がありますようなことは、私はなかつたんじやないかと思うのであります。勿論これから原状回復の問題につきまして、いろいろ御相談しまして、成るべく円満なところでこれをまとめて行かなければならんと考えておりまするけれども、やはりそういうよう経緯のありましたことは、法律的な私は欠陥があるのじやないかというようなふうに考えるのであります。その法律的な欠陥と申上げますのは、この前も申上げましたように、例えば国立公園法によりまして、公園を指定します場合におきましては、審議会というものがありまして、その審議会のメンバーには鉱山局長委員として入つており、又農林省からも関係官が入つておりまして、その議会でいろいろ審査し、そこで決定しましたものが厚生大臣の、これこれによりまして指定をいたしますということに相成るわけでありますが、その審議会に各省の者が入つておるということ、或いはそれが大臣の諮問機関であるというような点、或いはどうしても厚生省との関係において話がつかない場合においては、次官会議なり、或いは閣議、そうした方面におきまして、なお話合いの余地があるというような、或いはこの指定をいたしまして、鉱業権に対しまして影響がありましたときは、補償の途が開かれておるというような点、そういうよう法律的ないろいろの点を或る程度調整しておりまして、それによりまして、私は国立公園指定鉱業権との関係におきましては、大体円満に行つておるんじやないかというようなふうに考えるのであります。又温泉法につきましても、都道府県知事が温泉指定いたしまして、そこの地域につきましては、土地を掘鑿してはいかんというようなことをいたします場合におきましては、あらかじめこの温泉法によりまして、行政官庁と協議した上でやらなければならんということになつております。従いまして協議が整いませんというと、結局温泉につきましても、これを勝手に指定したり禁止区域にしたり、そういうことはできないわけであります。そういう途が開かれた、そういう点に極めて私は重大な問題があるのじやないかと思うのであります。この文化財保護委員会関係におきましては、私のほうにおきましても又委員会事務局におきましても、いろいろ円満に解決するように努力はいたしておりますけれども、今申上げましたような国立公国法とか或いは温泉法かそういうよう法律と同じような仕組みになつていない。協議してやらなければならんというよう規定もありませんし、又、委員会委員は、その道のエキスパートということになつておりまして、産業界、その方面からの委員を出すよう規定にはなつておりませんし、又先ほど申しました補償規定もありませんし、或いは文部大臣の管轄下にはありますけれども、文部省の外局としてはなつておりますけれども、これはその委員会が独自の権限を持つておる、指定する場合におきましては、独自の権限を持つて協議が整わなくても指定できるというよう法律的な構成になつておりますから、そういうところに私はやはり運営上におきましてもいろんな欠陥が出て来まして、そして従来平尾台の問題とか、或いは山形県の北投石の問題とか、そういうような問題が私はやはり出て来るのじやないかというようなふうに考えられます。勿論私どもとしましては、極力円満に両方で相談いたしまして、できる限りこういう紛争が起きないように努力はいたすつもりでありますけれども、そういう法律的な欠陥がありますというと、やはり何かの間違いなりいろんな点におきまして、私は紛争の種を残すのじやないというようなふうに考えられますので、できる限り法律、そういう点におきまして、私は、改正をして頂きたいというような気持を持つているわけであります。
  45. 岡田孝平

    説明員岡田孝平君) 只今鉱山局長のお述べになりました点につきましては、先般も申しました通り、確かに他産業との関係におきましては、いろいろ問題がございまして、私どもいろいろ努力はいたしておりますが、十分でない点も多分あるように実は考えておりまして、従つて法律改正の問題といたしましては、これは全般的に、いずれ文化財のほうの改正の問題がございますので、そのときにこれを間に合わすように十分研究いたしたい。目下いろいろ研究中でございますが、実際の運用の問題といたしましては、かように直接に、他産業、殊に鉱業権等との問題につきましては、そういうものにつきましては、事前に通産省と私のほうとお互いに協議し合うというようなふうにいたしまして、そしてできるだけ紛争を避けまして、円満に解決したいというようなつもりで、只今鉱山局とそういう点につきましてもいろいろ打合せをいたしている次第でございます。
  46. 中川以良

    委員長中川以良君) 文化財保護法改正についてお打合せをしていらつしやると言つて、今お話がございましたが、さように承わつてよろしうございますか。
  47. 岡田孝平

    説明員岡田孝平君) その事前に協議と言いますのは、改正の問題でなくて、事実上の取扱いといたしまして、両省で、例えば覚書のようなものを交渉いたしまして、そうして文化財指定と、鉱業権、或いは他の通産省関係のものというふうにいたしまして、事前に協議をするというふうな事実上の取扱をいたしたい。こういうようなことで今話合いをいたしております。
  48. 中川以良

    委員長中川以良君) そうすると、鉱業法改正に対応して、文化財保護法改正ようというような御意思は全く今日はないと承知してよろしうございますか。
  49. 岡田孝平

    説明員岡田孝平君) その点は、他の改正点も多々あることでございますから、それを合せまして、只今どものほうで研究いたしております。全くその意思はないということはないのでありまして、改正する必要があるか、又改正するならばどういう点を改正しなければならんかということを今いろいろ研究いたしております。
  50. 中川以良

    委員長中川以良君) それでは次に、紛争の際に調整をしておられる土地調整委員会側の一つ説明を承わりたいと存じます。土地調整委員会としての本問題に対する御見解をお述べを頂きたいと思います。なおこの機会に、土地調整委員会の現在の御任務、やつておられるところの運営状況等につきまして、最初に簡単に一つお話を賜わりたいと思います。
  51. 豊島陞

    政府委員豊島陞君) 土地調整委員会のできました経緯と現在土地調整委員会でやつております仕事の概要を最初に申上げたいと思います。御承知よう鉱業権は他人の土地に重複して設定されるということ、それから第二には工場を設置しますときには、適地にどこにでも工場を置くことができますが、鉱業はどうしても場所が固定するというよう関係上、地方との衝突を招来する場合が非常に多いのであります。従いまして鉱業法改正の際に、この問題が一つの大きな問題として取上げられまして、その結果といたしまして、これを調整いたしますのには、第三者的な機関調整をやることが一番いいのじやないかということで発足いたしましたのが土地調整委員会であります。従いまして土地調整委員会は一応総理府の外局という形で設置いたしまして、その委員は人格が高潔であり、公共の福祉に関して公正な判断をすることのできる者のいう条件を法律規定してありまして、そういう条件にかなつた人を両院の同意を得て内閣総理大臣が任命するということで、現在五人の委員で構成しております。  今申上げましたように、鉱業との関連において設置されましたので、土地調整委員会の仕事の大部分が必ず一方には鉱業がある。それからもう一つ採石業があるのであります。鉱業採石業と、ほかのほうの法益、今問題になつております文化財とか或いは国立公園、そういつたものと鉱業との衝突であり、或いは鉱業と農業が衝突する、或いは林業と衝突する、こういつたような場合には、どちらの産業を生かして行くか、或いはどちらの、文化財を生かして行くか、どちらをやめてもらうか、こういつたようなことの判断をやることになつております。従いまして委員会の仕事の第一といたしましては、鉱区禁止地域指定ということをやつております。これはどういうことかと申しますと、旧鉱業法では、宮城とは離宮とか公料地とかそういつたような場所におきましては、法律上絶対にそこは鉱区を設定してはいけないという法律上の鉱区禁止地域なつておりましたが、新鉱業法ではそういつたような場所におきましても、或る場所においては或いは鉱業を掘ることが国家のためにいいという場合もあるのではないかということで、そういつたような場所につきましては、一括法律上で禁止しないで、土地調整委員会判断に任せようということで、そういつたものの判断とか、或いは旧鉱業法では通産局長がいわゆるこの鉱区禁止地域に相当するものをやつてつたのでありますが、これをやりますと、ほかの官庁との納得がうまく行かないのじやないかということで、そういつたようなものにつきましても、土地調整委員会がそういう権限を行うということで鉱区禁止地域指定ということを行う、そうして土地調整委員会指定を行いましたならば、その地域におきましては通産局長鉱業権を設定することができない、そういう効果を持たせる。そうして一方には又鉱業のほうが非常に重要になつて来る、或いは地下資源が国家的な脚光を浴びて非常に重要なものになつて来た場合にはこれを解除する。そういつたものの申請、解除ということは、個人に任せますといろいろな人からどんどん出て来る虞れがありますので、これは知事か或いは各省大臣かどちらかそういう人でなければ申請ができない。普通の人には申請権を認めない。それから解除の場合も同じような方法をとつて来ます。鉱区禁止地域指定ということが第一の任務。それから第二の任務は、鉱業権の設定とか、取消とか、そういうことについて他の法益とぶつかつた場合の争い、これが只今問題になつておりまする平尾台につきまして鉱業権を設定しましたことに対しまして、小倉市としてはあそこは文化財として残すべきである。従つてその鉱業権取消してもらいたいといつたようなことが争いになつたのでありますが、そういつたよう鉱業権の設定につきまして、公益上のいろいろな問題の争いがありました場合のその裁定を行う問題、そうしてこの裁定に対しましては東京高等裁判所に訴訟を提起していい。そうして更にそれに不服があれば最高裁判所に持つて行く、そういつた仕組であります。第三には鉱業のために土地を使用したり、収用したり或いは鉱業のために土地を利用するのについていろいろな処分がありますが、そういつたよう処分不服がある場合には、やはり土地調整委員会裁定申請ができる。そうしてこれに対して不服があれば東京高等裁判所、更に最高裁判所に提訴ができる、こういう大きく分けましてこの三つであります。  そのほかにもう一つは土地収用法によりまして、建設大臣が土地の使用或いは収用につきまして訴願がありました場合にはその訴願裁定する場合には土地調整委員会意見を聞いて必ず裁定する、こういつたよう規定、この規定に基きまして土地調整委員会が建設大臣に意見を具申するといつたような事柄が土地調整委員会の権限の概要であります。  それでは今の調整の問題でありますが、これについて一つ問題があるのでありますが、それはどういう問題かと申しますと、鉱業を行います場合には通産局長限りで行えない場合が非常に多いのであります。例えば今問題になつておりまする文化財指定されますとその地域内で鉱業を行います場合には文化財保護委員会許可がなければここは掘れない、或いは又砂鉄、砂鉱そういつたものを川で掘ろうとするとこれは河川法によりまして知事の許可がなければこれは掘れない、或いは国立公園保護地域指定された地域内でありますと、これは厚生大臣の許可がなければ掘れない、或いは農地をつぶしてそこに鉱業のいろいろな建物を作ろうとか或いは保安林の中で鉱業をやるという場合にはやはり農林大臣だとか或いは府県知事の許可がなければ掘れないのであります。そういつたような場合に今問題になつておりまする鉱業権そのものにつきましては通産局長鉱業権を設定して、それに不服があつて土地調整委員会においてその処分はよろしいという裁定をしておりながら、ほかのほうの法律許可を要する場合には、そのほうの法律の主管官庁だけの権限で現在は一切の処分が左右されておりますので、例えば前申上げました鉱業権はよろしいと言いました場合において、その鉱業を実施しようと思いまして保安林の中で掘ろうというときには農林大臣の一許可が要る。そうしますと農林大臣がそれに対して不許可をするということになりますと、土地調整委員会最初その鉱業権を認めようとした場合にはその保安林の関係考慮してそれはよろしいという判定がしてあるのでありますが、農林大臣の処分土地調整委員会関係なしに行えるということの結果、そこに鉱業権がありながら行えない鉱業権ができてしまう。こういつたような矛盾を招来いたしますので、土地調整委員会といたしましては去年発足いたしたのでありますが、発足以来そういうことに気付きましたので法律改正の都度そういつたようなアンバラスを直して行くということで交渉をして参りまして、昨年国会通りました農地法改正とそれから森林法改正が行われたのでありますが、その際に農林省と話しまして農林大臣がするその処分のうち鉱業採石業とに関連のある処分、今申上げましたよう鉱業権者鉱業をやろうと思つて保安林の中で許可申請する、そうするとそれが不許可なつた、或いは逆に許可なつたというような場合、そういう場合にそれに不服のある人は土地調整委員会不服裁定申請できる。そうしてそれに不服があれば東京高等裁判所に、更に不服があれば最高裁に持つて行けるというふうに農地法森林法におきましてはそういうふうに改正がなされました。それからあといろいろな法律が昨年も提案が準備されておつたのでありますが、その際にそれぞれお話をいたしまして交渉をして参つております。従いまして今後文化財の問題につきましても今文化財保護委員会のほうにも私のほうからそういつた点に持つて行くべきではないかということを申入れております。なお国立公園のほうにもそういう話を持つてつております。そうして改正の都度そういう方向に持つて行きまして、そうして国家といたしまして処分に一貫性を持たすというふうに持つて行くべきではないかというふうに考えております。
  52. 中川以良

    委員長中川以良君) 御質疑ございませんか……別に御質疑もないようでありますから本法律案審議は本日は一応このくらいで打切りをいたしまして、次回に譲りたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 中川以良

    委員長中川以良君) それではさように決定をいたします。   —————————————
  54. 中川以良

    委員員(中川以良君) この際先般九州並びに中国におきまする災害に関連をいたしまして産業関係に如何なる影響を及ぼしておるかという点につきまして、政府側の御説明を伺いたいと存じます。
  55. 古池信三

    政府委員古池信三君) 只今委員長からお尋ねのございました最近の九州、中国方面の水害につきまして、御報告申上げます。本省からは係官を派遣いたしましてその報告を取り、又現地の通商産業局からも報告が参つております。日々報告が来ておりまするので、詳細なる資料はございますが、それを要約いたしましてここで御報告いたしたいと存じます。現在まで判明いたしました状況は大体次のようでありますが、炭鉱につきましては、何分交通、通信の杜絶等から調査の不十分な所もありまするので、なお今後若干の増加が見込まれるものと御承知願いたいと存じます。  最初に炭鉱関係を申上げますと、九州並びに宇部地方を含めまして炭鉱の被害としては百九十二坑でございます。その内訳は、全坑水没いたしましたものが百四十九坑、一部水没いたしましたものが二十九坑、坑外施設の被損浸水を受けましたものが十四坑となつておるのであります。なお貯炭の流失量は目下不明でございますが、山元におきましては相当量に上る見込であります。現在のところ出炭減は約十二万トンと推定されるのであります。石炭の供給につきましては、目下北九州の港頭貯炭は百二十万トンありまするし、なお北海道、常磐地方損害がありませんので、大口消費地貯炭も相当量あります関係上、差当り需要に及ぼす心配はなかろうと思われます。被害の復旧日数につきましてはおよそ十日乃至六十日程度を要するのではないかと考えられております。  以上が炭鉱関係でありまして、次に製鉄関係について申上げますと、八幡製鉄所は二十八日午前十一時頃より一部施設の稼働休止もありましたが、昨日までに全部復旧いたしました。小倉製鋼所は詳細調査中でありまするが、瞬間的作業休止の程度で、被害は軽微の見込であります。次に東京製鋼これは鋼索を作つておる所であります。この小倉工場は二十八、二十九両日浸水によりまして稼働休止となりましたが、昨日よりは殆んど旧に復して稼働いたしております。なお以上の復旧対策につきましては、詳細なる調査の結果を待つてできる限り早急に講じたいと考えておるような次第であります。  次に発電関係でありますが、これは二十九日の夜入りました報告によりますと、発電所の停止は、九州におきまして主として筑後川、白川及び大分川流域であります。その停止発電力は十六万キロ、発電所の数にいたしまして三十六カ所となつております。この復旧見込はおよそ二週間乃至長いところは二カ月を要するであろうと予想されております。送電設備につきましては、流失したものが五十基、傾斜いたしたものが十五基、倒壊が三基、これは主に幹線と申すよりも支線に多いようであります。配電設備にしましてはの電柱が四千本流失、二千本欠損、倒壊が二千五百本、傾斜が六千本、電線流失が八千七百条、その他細かいところは省略いたします。火力発電所は殆んど被害を受けていないようであります。  大体概要以上のように御報告いたします。
  56. 中川以良

    委員長中川以良君) 今の御説明に対しまして御質疑をお願いいたします。
  57. 西田隆男

    ○西田隆男君 産業被害に対する対策は詳細がわかつてから立てるというようお話ですが、詳細がわからないでもわかつたやつから立てて行かないと復旧が遅れるのですが、通産省としてはどの程度のことをやろうというお考えですか。
  58. 古池信三

    政府委員古池信三君) 先ほど申しましたように、本省から係官も出張いたさせておりまするが、大体現場の事情に最も通暁しておりまする九州で申せば福岡通商産業局に一応の計画を立てさせまして、至急本省と連絡をとつて、例えば金融措置なりその他資材の措置等につきましてはできる限り早急に善処いたしたいと考えております。
  59. 西田隆男

    ○西田隆男君 電力の発電不能が今十六万キロワットと言われたようですが、電気を使う産業がこうむつた被害は在庫品の損害が大部分と思いますが、九州の地区産業に使う電力に支障がないように何か特別の方法を考えておられますか。
  60. 古池信三

    政府委員古池信三君) 電力の関係は、只今入りました報告では、詳細なる点がまだつまびらかになつておりませんが、一応十六万キロの被害となつておるのであります。その十六万キロの内訳をもう少し調べないとわかりませんけれども発電所によつては案外早く出力だけの回復はできるものもあるかも知れんと思つております。殊に火力は大した被害はないという報告でありますから、十分にこれを活用して停電による産業に及ぼす影響を最小限度にとどめたいと考えております。
  61. 西田隆男

    ○西田隆男君 いま一つの問題は、石炭の問題なんですが、貯炭がたくさんあるから石炭の需給の関係には影響はない、これはお説の通りなんです。通産省の石炭行政に対する基本的な方法は、第十五国会説明された五カ年計画というのが一応出されただけで、その後確定した方策というものはないようなんですが、これはまあこの水害によつて水没した炭鉱の復旧を一応皆経営者は考えると思うのですが、こういう際、通産者としては石炭行政の根本的な策を立ててその策に従つて炭鉱の災害の復旧もお考えになる必要があると思うのです。ただ無意味に、災害が起きたから金を出す、金を出したら石炭が出始めた、出始めた石炭の置場がないというようなことに又なると国として困るので、そういう方面については一つ通産省の石炭局のほうで石炭行政に対する基本策をきめてもらいたいと思うのです。それに則つて方策が講ぜられないと、ただ徒らな無意味な救済がなされるだけで、本当に国家のためにはならないようなことが起らんとも限らないと思うのです。そういう点古池さんは当委員会に長くおられたのでよくおわかりと思うのですが、実は通産大臣に尋ねたいのですけれども、ちつとも出て来ませんからね。そういう点は特に議して、いろいろ陳情があると思いますけれども、根本策を一つ先にきめて頂きたい。これは私お願いしておきます。
  62. 古池信三

    政府委員古池信三君) 只今の西田さんのお話、誠に御尤もでございます。通産省といたしましても石炭業に対しまする基本的な方策は頻りに検討を加えておるのでありまするが、たまたま不測のかような災害が起りましたので、この災害復旧とも噛み合せまして根本的方策も十分立てて参りたいと存じます。大臣ちよつと所労のために本日は欠席いたしておりまするが、御意見の趣きは十分私から大臣にも伝えまして、御期待に副うように努力をいたしたいと考えます。
  63. 西田隆男

    ○西田隆男君 もう一つお願いしたいのは、炭鉱の災害、農村の災害その他で通産行政に関しての問題だけで結構なんですが、相当な失業者が考えられます。これに対しては労使省と一つ御協議下すつて万遺憾なきを期して頂かんと、これは九州にとつては大変な問題だと思いますので、特にその点御注意をして頂きたいと思います。
  64. 古池信三

    政府委員古池信三君) 承知をいたしました。
  65. 西川彌平治

    ○西川彌平治君 炭鉱のほうは宇部地区の報告が出ておるようでありますが、山口県の宇部、下松、徳山附近に対しましてはほかの工業に対しての損害等がおわかりになつておりましたら一つお願いします。
  66. 古池信三

    政府委員古池信三君) 只今まで手許に参りました報告に従いまして御説明申上げますと、昨日の午後に入りました状況は、中国地方の炭鉱の被害状況、水没十三炭鉱、一部水没が三炭鉱、その他の被覆を受けたものが五炭鉱で、合計二十一炭鉱になつております。
  67. 西川彌平治

    ○西川彌平治君 炭鉱以外のものはどうですか。わかりませんか。
  68. 古池信三

    政府委員古池信三君) 炭鉱以外のものとしまして、厚狭にありまする日本火薬の工場が浸水をいたしましたが、これは一週間か十日くらいのうちには稼働開始ができるのではないかという見込のようであります。その他のものはまだ入つておりませんので、入り次第御報告いたします。
  69. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 今の御報告ですと、一般商工業関係の報告まだ入つておらんということかと思うのでありますが、炭鉱でありますとか或いは製鉄所、発電所或いは大工場に偏することなく、全般の商工業に対する被害の御報告を一つお願いいたしたい。  それと同時に、これに対して緊急な金融措置或いは減税等について通産省のほうから大蔵当局のほうへすでに御交渉になつておるのかどうか。その経過、今後の見通しなどについて伺いたい。
  70. 古池信三

    政府委員古池信三君) 御尤もなるお尋ねでございますが、何分まだ災害後日が浅いのでありまして、中小企業を調べてその結果を出しまするには或る程度の時間的余裕が必要かと思うのであります。どうしましても差し当り早く判明いたしますのは大工場の分が早いのであります。  なお減税その他の措置について大蔵省に交渉を始めたかどうかという問題でありますが、これは現地におきまする対策本部と同時に、中央におきましても内閣に災害復旧の対策本部を立てて各関係省総合的に最も適当なる方策を立てるという仕組になつておりますので、その中央の対策本部において当然減税その他の問題は取上げて至急解決されるものと考えております。
  71. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 今の金融措置或いは減税措置などにつきましても、重点産業なり或いは農村にとかく重点が置かれがちになろうかと思いますので、従来の例になずむことなく、一般商工業に重点を置いた災害の報告並びにそれに対する対策としての金融措置なり或いは減税措置について常にお考えが願い、又その線に沿つての御報告をそのうちお願いしたいと、こういう希望を申上げておきます。
  72. 酒井利雄

    ○酒井利雄君 災害の復旧費の国庫補助なり融資のことはどういうお考えをお持ちになつていらつしやいますか。
  73. 古池信三

    政府委員古池信三君) 取りあえずの措置といたしましては、予備費から応急の救助費を出す予定でありますが、その後の金融の措置なり何なりは改めて対策本部において練る予定になつております。
  74. 酒井利雄

    ○酒井利雄君 そういたしますと、それは何でございますか、融資の意味で金融をなすのですか、幾らか炭鉱などに補助をお出しになる意思があるのですか。
  75. 古池信三

    政府委員古池信三君) 一般炭鉱その他の産業に補助をするかどうかということは、これは相当研究を要する問題と考えます。ともかく金融面において相当程度の斡旋をやるということはこれは第一に考えなければならん問題ではないかと、私はさように存じております。
  76. 松本昇

    ○松本昇君 これは只今豊田委員からもお話があつたのですが、この通産委員で私がお尋ねするということはどうかと思いますが、この間九州の水害については大蔵大臣として相当業者に対して金融面において考慮するというお話だつた。支払に対しても多少手形の割引とかそういうものについても商工業者には適当な方法を講ずるというふうに私承知しておりますが、現在のところにおきましては、この九州の土地におる人に対してはその恩典を施しておるようでありますが、問題は東京や大阪あたりから九州のほうに売り込んでおりますその手形が順次もう期日に来ておるわけです。そうするとその手形を東京なり大阪の業者が割引いておるというものは、もうその割引手形はそのもとに出した人が落さなければならないという立場に現在なつておりますので、被害は九州にありますけれども、その元は東京なり大阪なり出荷した人にありますので、それを何とか緩和してくれなくては、業者としては災害に対しては見舞金は出さんならんわ、不良品は引取らんならんわ、その上手形を落さんならんわということになると実際困るので、九州の人も困るけれども、本当に困るのはどうしてもメーカーの側が非常に混乱を今来たしておりますので、大蔵当局としては大体目が九州にばかり向いて、大都市のその元の出荷した方面に対する金融の措置がどうも銀行業者に聞いてみるというと、それは徹底していないようでありますから、できたら一つ通産省から大蔵省のほうに向つてそれに対する措置を成るたけ早く徹底さすよう一つ御連絡をとつて頂きたいと思います。
  77. 古池信三

    政府委員古池信三君) 松本さんの御意見誠に御尤もだと存じます。でありますが、かような災害の発生いたしました場合には何としても第一着手はやはり現地の救済ということが先ず第一に取上げられる問題だと思います。従いましてその現地との取引関係等におきましては恐らく第二段ということになろうかと思いますが、私どもといたしましても十分その御意見のあるところは対策本部に申入れまして唯今の御意見に副うように努力いたしたいと存じます。
  78. 中川以良

    委員長中川以良君) ほかに御質疑ございませんか。
  79. 松本昇

    ○松本昇君 これはもう手形などは、御案内のように向うは、支払先もわかつておりますことですから全般に及ぶ問題でありません。その局地に及ぶものですから、特にその点を御考慮願いたいと思います。
  80. 中川以良

    委員長中川以良君) ほかに御質疑ございませんか。それではこの問題につきましては更に逐次新らしい詳報が入りますごとに一つ政府側から本委員会に御説明をお願いいたしたいと思います。  なお唯今委員諸君から御開陳になつた御意向に対しまして是非御趣旨に副いますように御施策をやつて頂くように御希望いたします。
  81. 古池信三

    政府委員古池信三君) 承知いたしました。
  82. 中川以良

    委員長中川以良君) それでは本日はあと火薬類取締法の一部を改正する法律案並びに武器等製造法案につきまして質疑を続行いたしたいと存じます。  この際御報告申上げまするが、衆議院におきましては昨日この火薬類取締法の一部を改正する法律案は本会議を上げております。並びに鉱業法の一部を改正する法律案も同時に本会議を上げております。従つて委員会におきましては明後日金曜日の委員会においてできるだけ一つ結論を出して、法案を上げるようにいたしたいと考えておりますので、どうぞさような御意図の下に御質疑をお願いいたしまして、各会派に又さような意味の下にそれぞれ御協議を願いたいと存ずる次第であります。  それでは最初火薬類取締法の一部を改正する法律案につきまして質疑を願います。
  83. 西田隆男

    ○西田隆男君 私は前の委員長の言明に対する意見なんですが、金曜日に二つこの法律案を上げるというのですな、鉱業法の一部改正法律案を上げる、火薬類取締のやつも上げる、こういうお話ですが、鉱業法の一部を改正する法律案文化財保護委員会の人に来てもらつて文化財保護法による文化財保護委員会が完全に機能を果しているかどうかということを先に出さないと、文化財保護法改正も、修正も国会で権限を持つているからいいか悪いかわからずにやるということには行かんと思います。従つてその問題のかたがつかなければ鉱業法の一部改正案は最終段階に持つて行くわけには行かんと思います。
  84. 中川以良

    委員長中川以良君) 当然さようでございます。本日その点から特に私も質問いたしておりますので、明後日は一つ責任のある委員出席を求めましてその点一つはつきりいたしたいと思います。それでなければ当然これは上げるべきではないと思います。上げるように努力をいたしたいという考え方でありますからどうぞその点御了承願いたいと思います。
  85. 西田隆男

    ○西田隆男君 私は武器等製造法案提案理由説明に……。
  86. 中川以良

    委員長中川以良君) ちよつと申上げますが、最初に火薬類改正法律案につきまして御質疑を願います。
  87. 西田隆男

    ○西田隆男君 衆議院は無修正で通つたのですか。
  88. 中川以良

    委員長中川以良君) 無修正で通つたようでございます。
  89. 西田隆男

    ○西田隆男君 私はこの前の委員会質問したのですが、一年間火薬類を持たして置くということは如何に考えても適当でないと思うのです。理窟をいろいろ言つておられますけれども、それは条文を作つたから言つておられるので、実際問題としてはそう長く持たして置く必要はちつともないと思う。だからあれは手続期間だけに修正して置くほうが無難だと思いますがね。
  90. 中川以良

    委員長中川以良君) それに対する御答弁ございませんか。
  91. 古池信三

    政府委員古池信三君) 西田さんの御心配の点も一応は御尤もに存ずるのでありまするが、取締関係の我々といたしましても十分それらの点も考慮し、今までの経験から今回の改正案を練りに練つたわけでありまするので、この際は是非原案通り御賛成を頂きたいと思います。
  92. 西田隆男

    ○西田隆男君 練りに練られたのであろうけれども、私としては一年間延期したという理由がね、非常に薄弱なんですね、あれはね。それで立法という場合、そういう簡単なことでぐるぐる変えられるものではないと思うのです。もつと顕著な理由があれば別に異議はございませんけれども、あの理由ではね、そういう必要を認めないですね、私は。これは私一人の意見なんですから、委員会全部に諮るわけではありませんが、大体これはどこからの要請なんですか、一年の期限を置かなければならないというのは。
  93. 中村辰五郎

    政府委員中村辰五郎君) 残火薬の処置の問題につきましては従来取締関係からの意見、特にこの取締は府県が担当している問題でありますが、年二回程度に定時会議を中央で持ちまして法律の実施についてのいろいろの問題について討議をいたしているのでございますが、残火薬の処置の問題につきましては実際に即してこれを考えますると、或る一つの猟期が終つたという際に、その際直ちに処分をするということを強制することは非常に実情にも即しませんし、又実情に即しません関係から考えても取締を強行するということが却つて問題によつては不適当だ、こういう意見が強いので、私のほうとしましては今般こういつた改正案を提案いたしまして、実情に合わして取締も励行できる、同時に又一年延ばしたことによつてこの残火薬の処置が不当に延ばされ、そうして却つて社会的危害の原因になる、こういうことでありますとそこに考える余地もございまするが、そういつた悪影響というものは考えられませんので、特にこういう改正提案したわけでございまして、特殊な団体その他からの要請ということよりも、むしろこれは火薬取締を実施いたしておりまする地方、都道府県の意見というものに立脚いたしまして立案した次第でございます。
  94. 西田隆男

    ○西田隆男君 今までの規定通りであればどういう不都合が起きるのです。一年間にしたらなぜ不都合がなくなるのです。その理由説明して下さい。
  95. 中村辰五郎

    政府委員中村辰五郎君) 一年にいたしておきませんと、一つの猟期というものが、法律的に許された期間というものがございますので、その期間が過ぎますと当然猟に従事している人たちも結局残火薬を処分しなければならんという義務を強制されるわけであります。併しこういつた狩猟に従つているものは一年の或る猟期だけ行うということはございませんで、むしろこれを長期間に亘つて年々やつておるというものが実際でありまして、そういう意告合いにおきましてその都度処分を強制して、少しでも持つておればこれを取締るというようなことは、煩に過ぎる一面実益のないことである。同時に一年延ばすことは次の猟期にこれを使うということの関連がありますので、そういう工合にいたした次第でございます。
  96. 西田隆男

    ○西田隆男君 それが僕にはわからんのです。猟期ごとに火薬を使う、これはわかる。そうすると半年ごとに仮に猟期があれば、半年たてばあとの半年は猟期がないから火薬を使わなくてもいい。その使わない火薬を各家庭に保存させておくほうが、より治安上よろしいという考え方が私にはわからん。一年にしても一年半にしても同じだと思う。それを半年であるものを一年に延ばしたらなぜ安全か。問題はあなたのお話を聞いていると手続上の問題だ。事務的な処理をする問題だ。その問題だけのために、危険物である火薬を日本の家庭に幾らかでも温存しておくということの危険のほうが私は大きいと思うのです。だから一年にしたという理由がはつきりわからんので、非常に細かな問題ですありまけれども、悪用する者ができてきた場合、或いは余計にあれば余計に過失が起きて来る。そうした場合の弊害、損害、ただ個々の火薬な使う一部の人が手続上或る程度面倒だということだけであれば、手続の期間を延ばすということだけでいいはずである。それを一年にしなければならんという理論的な要素は何もない。そういう意味で私はお尋ねしている。その点の説明納得の行くようにしてもらいたい。余りに私は便宜的過ぎると思う。  余り的確な答弁もできんようですから追及はしませんが、よくこういうことによつて火薬を自宅に保存しておくということが原因になつて事故が起きたときに責任は大体誰が負うのですか。
  97. 中村辰五郎

    政府委員中村辰五郎君) こういつた火薬を常時使う仕事に従事しておりますものでございますので、火薬の保存なり、そういつたことについては他のいわゆる全然関係のないかたにこういつた期間を猶予するというようなことにいたします場合とは異なりまして、保安上の危険はないと私は考えます。同時に或る一定期間だけに使い残つた残火薬をどうしても法律処分しなければならんという形においておくことが、いかがわしい処分をすることになりますると、却つて治安上の問題もありまするので、むしろこういつた火薬そのものを常時使うことに馴れ、又それを商売なり或いはそういつたことに馴れておる関係者でございまするので、むしろこういつたものを法律上保有し得るということの権利を与えましてその権利に十分留意させることがむしろよいじやないかという工合に考えて、こういつた改正措置を出したわけであります。
  98. 西田隆男

    ○西田隆男君 大体の中村さんの考え方はわかりますが、そうしますと今までの答弁を素直に聞きますと、半年ごとにしたら残つた火薬はいいものでない。一年ごとにしたら安全だということに聞える。残存火薬の数量は届出はさせるでしよう。そうすると翌年火薬を今度買入れます場合、使用火薬は、それは一定の猟期間のその人の消費量から残存火薬を引いた量だけしか売らんのでしよう。そうなればあなたのおつしやることは一年でなくても半年でも結構同じだ。何も意味なさんと私は思うのですが。
  99. 中村辰五郎

    政府委員中村辰五郎君) 今の場合の販売の制限というこの規定がございませんので、只今の御質問ような翌年の猟期には保有しております火薬を差引いて売るというよう法律制限はございません。ただ一年がいいか半年がいいかという問題になりますると又猟期のことも考えまするし、ただ最短期間の保有期間を法律で猶予すればいいじやないかというようにも考えられますのでありますが、一年といたしました根拠は大体次の猟期でも使い得る、保有することによつて使い得るというよう法律的状態を考えて一年としたわけでありまして、それが現実的に六カ月で次の猟期に行く場合もありましようし、いろいろな具体的な場合もあると思います。ただ私のほうの実際の実情を考えますと、一年の保有期間を許しておきますれば大体実情に即すると考えた次第でございます。
  100. 西田隆男

    ○西田隆男君 又今新らしい問題が起きたんですが、買入れの数量に対する法的な規制はない、こういうお答えでしたね。そうすると次に買いますときに、猟期は年に二回あるでしようが、半年後に残存火薬が相当数ある。併しその半年の猟期の後には又以前のようにこれを買入れるとすれば、一年後に残る残存火薬数というものは余計に使わない限りだんだん多くなつて行つておる。こういう結論が出るのですが、そうするとこのほうがより安全だということはどうにも私はわからん。でも法的な規制でもあれば残存火薬を差引いて販売をするということになるのだから、一年後には半年後と同じ状態になるのは理論的に考えられる。今のお話じや余計に殖えることは考えられても減るとは考えられない。
  101. 中村辰五郎

    政府委員中村辰五郎君) 只今の猟期と猟期との間は九カ月程度なつておりますので、まあ一年ということにいたしたいと思います。なお量が漸次殖えて行くじやないかという問題になりまするが、もともと狩猟者の使用する火薬というものは悪意があつてそういつたことをすれば別でございまするが、やはり一つの猟期に対するその人の考え方というものにはおのずから普通に考えまするとそう不適当に多量に買込むというようなことは考える余地がございませんので、我々としましては普通の状態を考慮いたしまして、こういつた保有期間を猶予するという行き方が適当だ、こういう工合に考えておる次第でございます。
  102. 西田隆男

    ○西田隆男君 あなたの説明で一応了承しておきましよう。私は必らず弊害が起きて来る、そう考えておりますが、弊害が起きて来た類例がないとあなたがなかなか納得されんようですから、まあ併し私の考えておるような弊害の生じないように万全の策をとつてもらうということで、譲歩しておきます。
  103. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 この前伺つたことに関連するのですが、今年の春東京都下で大災害があつた、それから又数日前も何か又煙火工場かなんかで大きな災害があつて数人の死亡者が出たようなことがあつたのですが、この頃の火薬類の取締はどういう機構でやつておられるのですか。
  104. 中村辰五郎

    政府委員中村辰五郎君) 御質問の煙火工場の大きな災害は本年の二月十四日にございました災害のあとに、つい最近新聞紙上に出ておつたというのは、お話の記事は恐らく煙火工場ではございませんで、これはメチルエチルケトンという特別の化学薬品を使つて工業用の試薬を作つております工場の災害かと考えます。  只今の御質問の一般的な監督の仕方でございますが、火薬工場につきましては、或る一定の火薬の工場に使います停滞量と法律語を言つておりますが、或る一定の停滞量以上の大工場は通産省が直接監督いたしております。その量に達しませんものは、都道府県のほうに委任して監督せしめております。それで火薬の事故の趨勢から申しますると非常に問題は大きいのでありますが、我々の監督という見地を離れて火薬というものの取扱についての知識というようなものが特に終戦後におきましては徹底しておらん面も感ぜられまするので、地域的に、ブロック的に或いは府県単位ごとに講習会というようなことを随時、或いは定時にやつております。今までも講習会等でやりました回数は年間にいたしまして全国で百三十数回にも及ぶような状況で指導いたしておりまするが、今日なおまだそういつた普及に対しますことに関しては不徹底かと考えまして、先般来只今申しました府県別に一つのブロック協議会というものを作り、或いは府県の単位ごとに業者を集めまして、実際起つた災害の実情等を事実を以て説明しつつ取締の要点、或いは業者が注意しなければならん点を指導しておる状況でございます。
  105. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 災害事故一覧表を見ましても非常な、昔と今日比べてみて一向事故が減つていない。むしろ殖えているくらいの形になつております。それから又ああいう非常な大きな数十名の人命が一遍にふつ飛ばされるというような、こういう事故等に対しまして取締り指導以外に何かああいう災害のあつた場合に、あと引続いて如何なる原因であつたかどうかというようなことについて特に研究する調査機関とか研究所のようなものは何かあるのでございますか。
  106. 中村辰五郎

    政府委員中村辰五郎君) 災害の大きいものについて申上げるのでありますが、例えば先般府中在にございました花火工場の場合には、大学関係の専門の教授、業界の専門のエキスパートのもの、並びに取締官庁でございます我々のところ、又直接の監督をいたしております東京都というものの管理に携わるものとの合同の研究委員会を随時開いて、継続的にやつて結論を追究いたしております。他の大きな災害につきましても例えば東亜合成の場合のごときにつきましても現地に調査機関を設け中央においてもそういつた機関を設けて、大学の教授或いは試験場の専門技師というものを中核にいたして検討いたしておる次第でございます。
  107. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 以前は、ずつと前でありますが、火薬その他の取締には警察関係のものが関係して、たしか仕事の系統も警察の中にあつたのじやないかと思つております。現在では全然警察と離れておる。まあそれがどうこうというわけじやありませんが、そういうことで何か取締なり何かのほうで手ぬるいとか或いは不便があるとか欠陥があるというようなことは何もございませんか。
  108. 中村辰五郎

    政府委員中村辰五郎君) 戦前の仕事のいたし方としましては、御質問の御趣旨の通りに普通の警察機関が担当して実施しておりましたが、終戦後の警察制度の根本的な改正問題がございまして、先ほど警察と言われたものについては通産省が中央機関として、その下部機構として都道府県がこれに当つておるという実情でございます。ただ実際の取締の実情からいたしますると取締の対象によりまして警察官の協力を得ることが非常に効果的であると考えられる部面が相当ございまするので、これにつきましては都道府県が中心になりまして警察機関或いは消防機関と緊密な連絡をいたしております。工場の実際の保安上の状況についても警察官と都道府県の火薬担当官とが共同で監査に行くというような例もございまするし、或いは更に末端の取締部面につきましては警察官に主としてお願いして実施しておるというのが地方の実情でございます。
  109. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 例えば飛行機などの墜落等があつた場合には、徹底的にその原因をいろいろ糺明して、残存者がないような場合でも、破片その他によつている原因等を糺明してやつているようでありますが、この火薬関係の災害というものは、一朝事あるときには非常に大きいのでありますから、或いはこの間の府中の事件簿のごときも関係者が残つていないからというので、全然何も原因の糺明も結論も何もないようでありますが、ああいうようなものはやはりもつと真剣に徹底的に検討して、あとの災害を防ぐように一層態勢を整えられるよう希望いたします。
  110. 中川以良

    委員長中川以良君) ほかに御質疑ございませんか。
  111. 古池信三

    政府委員古池信三君) 只今石原さんの御意見は誠に御尤もなことでありまして、府中の問題につきましても、不幸にして生存者が一人もなかつたために、その調査も甚だ困難を来たしているような次第であります。かような問題につきましては、御説の通り十分にその原困を糺明いたしまして、再びさような惨事を惹起しないように、我々といたしましても十分注意して参りたいと存じます。
  112. 中川以良

    委員長中川以良君) それでは本法案に対しまする質疑は本日は一応これを以て打切りまして、次に武器等製造法案につきましての質疑を願います。
  113. 西田隆男

    ○西田隆男君 私はこの武器等製造法案提案理由説明に対してちよつとお伺いしたいのですが、この前途中から退席しましたので、或いは質疑があつたかと思いますが、質疑が若しあつたならば簡単に御答弁願いたいと思います。  提案理由説明の中にこの事業の濫立による弊害を排除し、或いは又海外に対する政治的配慮等の理由から、余りに製造能力が過大になることは厳に抑えなければなりません、だから許可制にしたのだ、こういう説明がしてあります。この海外に対する政治的配慮等の理由、というこの政治的配慮という理由はどういうことを指しているのか、この説明を煩わします。
  114. 古池信三

    政府委員古池信三君) この点につきましてお答えを申上げますが、これは日本の考えておりまする産業政策というものを正当に海外諸国に理解してもらえますならば結構だと存じますけれども、若しも正当なる理解を得られなくて、仮にかよな武器製造の能力を急激に増大いたしますることが、場合によつては日本が再び過去のような過失を又犯すのではないかというふうな誤解を徒らに招いても如何かというよう考慮も多少払つたのでありまして、その点がここに申上げました海外に対する政治的配慮というよう理由になつたのでございます。それ以外に別に深い理由というものはないのでございます。
  115. 西田隆男

    ○西田隆男君 それだけのことを御答弁なさるのなら、それだけの理由であればわかるのですが、むしろ武器等製造法案について提案されるほうで考えなければならんことは、日本の対憲法の問題が先であつて、海外の思惑とか何とかいうことに重点を置いて提案説明の中にお書きになる必要性はちつとも認めない。むしろ日本の対憲法の問題をお考えになつてこういうような表現を用いておられるのじやないかとも私は考えるのですが、そういう点をもう一点御回答願いたい。
  116. 古池信三

    政府委員古池信三君) この点は只今申上げました通り、我が国の憲法との関連ではなく、只今申上げました通り事情考慮いたしまして、ここに提案理由の中に加えたのでありまして、それ以外何ら他意がないということを再び申上げます。
  117. 西田隆男

    ○西田隆男君 重ねて聞きますが、そうすると、制限をお加えになるのは、日本が昔のような軍国主義に武器を余計造つてなるのじやないかという、海外のことを慮つて、それも理由一つとして制限を加えたのだということなんですが、それでは、許可される武器の製造業というものはどういう範囲をお考えになつておるか、或いはMSAの問題も最近活溌に取上げられておるようですが、日本の保安隊或いは警備隊等が使う武器を生産するということが主になるのか、或いは海外に武器を生産して輸出をするということが主になるのか。そのいずれを主に大体お考えになつて、この制限を加えようとされるのか、それを一つ説明を願いたい。
  118. 古池信三

    政府委員古池信三君) MSAの問題が、お尋ねにございましたが、これは御承知ように、これからMSAの援助を受けるかどうかその交渉を始めようとする段階にあるのでありまして、その結果の如何によつて、又考え方も多少は変つて来るかも知れませんが、現在の段階といたしまして、我々はMSA援助によつて大きな変化が来るとは今のところは考えていないのでありまして、それかと言つて、大々的な武器製造国となつて、大いにこれを海外に輸出して行こうというほどの積極的な意図もないものと考えております。又国内の保安隊警備隊等をこの武器製造能力の拡大によつて、飛躍的な拡張を図ろうというような意図も、通産省としては勿論持つておらんのであります。ただ、我々といたしまして、何としてもこの外貨を獲得して経済の安定に寄与せしめねばならんという観点から、この際需要があれば、相当な程度においてこれに応じ得る製造業を育成して行くということは、現下の段階としては必要且つ適当であろうというような観点からこの法案を提出した次第であります。
  119. 西田隆男

    ○西田隆男君 今の前半の御答弁と後半の御答弁とは非常に大きな食違いがあると思う。最後に言われた外貨獲得を目的としてということになると、私が後段に申上げたように、輸出する武器を造るということに基準を置いてこの制限を加える、こういうふうに受取れるのですがね。私がお尋ねしていますのは、日本の保安隊や警備隊が使うものを主として日本国内で製造するのだ、そうして余力があれば、海外に輸出をするのだという考え方で制限をされるのか、或いは海外に輸出をすると、今あなたがおつしやつたように、大いに外貨を獲得するということのために武器を生産するのを基準に置かれるのか。これは非常に重要な問題だ。通産委員会の問題だけでなく、これは予算委員会の問題であると思いますが、古池政務次官は練達堪能の士でありますから、その点誤解のないように願いたい。
  120. 古池信三

    政府委員古池信三君) 唯今外貨の獲得と申上げましたのは、海外に大々的にこれを輸出いたしまして外貨獲得をしようという意味よりも、むしろ現在日本には駐留軍が滞在しておるのでありまして、その必要とする武器を我が国において製造して提供する、この意味において外貨の獲得に役立つと、かように申上げたので、ですから、その意味において御了承願います。
  121. 西田隆男

    ○西田隆男君 そうしますと、今あなたのお話は、アメリカ駐留軍に武器を供給するのだという意味ですね。日本の保安隊警備隊は、今まではアメリカから武器弾薬その他が皆恐らく無償交付を受けておつたのでしよう。これが今MSAの問題で問題になつているようであります。これから先は日本で生産しなければならない、日本で武器も弾薬も供給しなければならないという段階になつて、只今のあなたの言つたことを悪くそのまま解釈すると、保安隊、警備隊の使う武器は勿論、その上に、駐留軍が使うものまで、大体製造するということを基本精神として制限を加えるのか。そうして余つたものがあればなお海外に出すというふうに受取れますね。そうしますと資料として出ております年間四千五百万ドル程度の発注があつておつたという金額は、四千五百万ドル程度受注できるだけの態勢が日本の武器製造業だとかで作り上げたことになるかどうか。或いは一億になるか或いは一億五千万ドルも外貨を獲得するような武器の製造業をやらなければならないのか。これは日本のMSAの問題と関係ないとおつしやるけれども、MSAの問題と大きな関連性を持つて、将来武器の製造業者の措置がなされるという実態が生じて来ると思うのであります。この点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  122. 古池信三

    政府委員古池信三君) この問題はなかなか大きな問題で私がお答えするのに果して適当であるかどうか存じませんが、考えまするのにMSAの問題はこれは日本としても相当重要な問題で、且つ只今交渉に入つたという段階に過ぎませんので、その条件等はどういうふうになるかと、又今後の問題ににかかつているのであります。併し我々といたしましてはさような情勢が今後どういうふうに変転いたすにいたしましても武器製造業というものを認め、これを合理化して行くという見地から申しまするならば、ここに御提案申しましたよう程度法律はどうしても必要じやないか。その裏付けとなる生産の数量その他については、これは今後の客観情勢如何によつておのずから妥当なところに落ちついて参るのじやないか。かように思うのでありまして、この法律自体といたしましては只今申しましたような趣旨において御審議を頂ければ非常に仕合せだと考えます。
  123. 西田隆男

    ○西田隆男君 私はまだ法律案の内容の条文に入つてお尋ねしているのじやなくて、この提案理由説明の概略についてお尋ねしているのでありますから、その点で一つ答弁を願われたい。  今あなたのおつしやつたように非常にこれは重大な問題なのであります。究極するところは日本の産業構造の問題までも含めなければならんというほどこれは大きな問題だと思うのであります。一旦この武器の製造というものを許し、武器の製造を法律で認められる、これはあなたがどういう基本方針制限を加えられるかはわかりませんが、その企業の成立つて行く程度までは武器は生産しなければならない。でなければ国が保障しなければならんという段階に追込まれることは必至であります。通産大臣が権限を以て許可、不許可するということには一応なつているようでありますが、その許可、不許可ということは武器を造るのに適当であるかどうかという不許可許可であつて、その武器を製造する量までも通産大臣の不許可許可ということにはならない。そこで提案理由の中に書いてあるようなことについて考えなければならないようなことになつて来るのじやないかと思うのでありますが、まあ提案理由でありますからそうつきつめて古池さんにお尋ねはいたしませんが、これは通産省としてもただ事務的に御判断なすつて、そうしてこの武器製造の許可、不許可をお考えになることよりももつと根深くお考えになつて、法律案そのものをお作りになつて、政治的に本当に大きな問題が将来この法律案に生じて来やせんかという疑念を多分に持つのであります。そういう点は古池さんに御答弁を頂かなくても結構一でありますが、自由党内閣のほうで一つ十分にこれをお考えになつて、この法律案の通過のときにはいろいろ問題になると思うのであります。一応今日はこの程度で打切つて置きますが、御研究をして頂きたいと思うのであります。
  124. 白川一雄

    ○白川一雄君 第三条に「工場又は事業場ごとに、その製造をする武器の種類を定めて、」こうありますが、これはここに品目についての許可を要するのですか。その種類ということについてお尋ねしたいと思います。
  125. 葦澤大義

    政府委員葦澤大義君) お答えいたします。第三条の武器の種類は、武器の定義を第二条で規定をいたしておりまするが、この定義の種類に従つて定めるというように現在考えておる次第でございます。
  126. 白川一雄

    ○白川一雄君 例えば、弾丸のように、サイズが違うものを、このサイズはどこへ許可する、このサイズはどこへ許可するというように、サイズまでをきめて通産大臣許可するのか、総括的に工場がこういうものを造る適格性を持つておるということに重きを置いて考えていいのか、これをお尋ねしたいと思います。
  127. 葦澤大義

    政府委員葦澤大義君) サイズについて種類別にするかというお尋ねだと思いますが、サイズ別にまでは武器の種類については考えないという方針でおります。
  128. 白川一雄

    ○白川一雄君 そういたしますと、その工場でどういうものを造れるという適格性を通産大臣許可をするのか、商品をきちつときめて許可するのか、これが今後の非常に大きな分れ道になるように考えるのでありますが、その点もう一度お答えを願いたいと思います。
  129. 葦澤大義

    政府委員葦澤大義君) この許可の基準は、非常に重要な事項でありまするので、大きな基準につきましては、法律の第五条で明示をいたしてありまするが、お尋ねのような更にこれの細部に亘る許可基準というものは、当然あるべきだと思うのでありまして、非常に重要な事項でありまするので、これは法律にも規定がございますが、武器の製造についての審議会を設けまして、そこで一応細部に亘る基準を取極めて頂くという考え方をいたしておるわけであります。従いまして、一応今のお尋ね等に関しまする問題も、その委員会でおきめを願うのでありまするが、まあそのときの原案として一応お出しするものであれば、こういうものというような趣旨で御了承を願いたいと思うのであります。
  130. 白川一雄

    ○白川一雄君 同品目の受注希望者が多数あつた場合に、何を標準に置いてそれを製造する所を決定するか、その標準を承わりたい。
  131. 葦澤大義

    政府委員葦澤大義君) その場合の許可基準の大分類につきましては、第五条で法律で技術上の基準、或いは保管設備の要件、或いは経理的な基礎というようなものを示しておるのでありまするが、こういうような条件が仮に同一でありましても、多数のものがある場合にどうするかという問題でありまするが、その場合には、そのときの発注状況、又製造能力の経済界とのバランスというようなものから勘案いたしまして、著しく過大にならないようにという基準を第三号に規定いたしておるのでありまするが、そういつた見地から、余り多数のものが製造許可を申出られましても、著しく過大になるという場合には、そのときに全部が全部許可にはならんというような取運びになるというふうに、考えておるわけであります。
  132. 白川一雄

    ○白川一雄君 現状は、過大になるのを恐れるよりも、業界は過大になることを希望しておるのが現状と思うのであります。この基準を明確にして頂きたいという私のお尋ね申上げる趣旨は、一部に偏在するという事柄について我々は注意しなければいかんのではないか、というのは結局大会社が許可を受けやすくして、小会社が振り落されるという虞れに対する懸念からお尋ね申上げておるわけなのであります。第五条の基準についてもお尋ねする考えでおるのでございますが、あの基準の技術上の基準については、これは細かく細則をきめてもらいませんと、観念的にこれをきめられると、結局結果は大会社のみに注文が集中して、小会社が振り落されるという懸念があるのではないか。特に日本の現在は、技術が低くて、これを向上するのに苦心しておる際でありますから、余りにシビアな基準をこしらえるということも、結局大企業自体を偏重するという結果を生みやしないか、こういう点から、第五条の技術上の基準ということにつきましてはこの字句だけでは簡単に判断できないので、これについては細かく規定をして頂かないと、そういう懸念が持たれるのではないか、こういう点についてお尋ねいたしたい。
  133. 葦澤大義

    政府委員葦澤大義君) 御尤もな御意見でありまするので、相当細部に亘つての基準を作る必要があろうかと思うのであります。
  134. 白川一雄

    ○白川一雄君 第二十二条の点でございまするが、使用する武器の修理を行う場合についてはその限りでないという意味をお尋ねしたしたいのですが、これは国の職員がこれを行うということを意味しておられるのでありましようか、どうでしようか。
  135. 葦澤大義

    政府委員葦澤大義君) この国の職員と申しますのは、保安庁又は警察関係において自から処置いたしております修理の場合の規定をいたしておるようなわけであります。
  136. 白川一雄

    ○白川一雄君 それでは極く小規模の修理であつて、大きな設備を持つた計画的修理ではないと解してよろしいのでございますか。
  137. 葦澤大義

    政府委員葦澤大義君) 大小の程度の問題は、具体的な規模に基かないと、はつきり言明はできませんと思いますが、保安庁等分がやります場合には、一定の修理計画というようなものがあつて、その修理工場を設定するという場合も考えられると思いますが、一般的には大きな大修理工場ができるというようなことは想定いたしていないわけであります。
  138. 白川一雄

    ○白川一雄君 私のお尋ね申上げる趣旨は、新らしく新設してそういうことをやられるならば、民間にそういう工場がたくさんあり過ぎて困つておるのだから、民間事業利用すべきほうに重点を置くべきでないか、新らしく買込んで経費をかけてそういうものを新設することを成るべく避けて、民間工場を利用するように持つてつて頂きたいという趣旨でお尋ね申上げておるわけです。
  139. 葦澤大義

    政府委員葦澤大義君) 通産省といたしましては、勿論今のお説のような趣旨で方針をきめて参りたいというふうに考えておりまするが、ただ場合によりまして、保安庁等の立場で民間の修理工場の修理に任しておつては目的に達しないというような場合で折合いがつかない場合もあろうかと思いますが、基本の通産省の態度といたしましては、お説の線に沿つて参りたいというふうに考えております。
  140. 白川一雄

    ○白川一雄君 最後に二点、我々の懸念を申上げたいのでございますが、先ほども申上げましたように、工場の適格性ということで広汎的に認めるということにして頂かないと、昔の統制に、官庁の極端な統制に逆行して行くということになりはしないか。又、官庁の支配力が余り集中し過ぎやせんかという点が懸念される一つでございます。  それからもう一つは、武器製造法と申しましても、大体言い換えれば特需と、こう解してもいいように思うのでございますが、従来、特需というのは、各日独立して、単独に発注者と契約を結んでおりますので、官庁がその間に介在しておる事実は我々のやつております範囲ではないのでございます。アメリカ側は日本官庁が介在することを嫌つておるように我々は見受けるのであります。又、官庁のほうも介在して世話をみてやろうという空気を我々見たこともないのでございますが、それで、急に掌を返したごとく官庁にそれを統制するという事柄がうまく切替えが行くかどうか。我々のやはり仕事というものは、生き物で呼吸しておるので、余り中間で息を切らしてしまうということになりますと、事業に重大なる支障を来たしますので、この二つの懸念に対しまして、当局の御意見を承わらして頂きたいと思います。
  141. 古池信三

    政府委員古池信三君) 只今のお尋ねの件でありまするが、我々といたしましては、いわゆる統制経済というものについては反対でございます。大体において事業活動は国民の自由に任して行くというのが今後のあり方であろうと思うのでありまするが、併し、この武器製造業のごときものにつきましては、この目的に掲げましたように、或る場合には事業活動を調整し、これによつて公共の安全を確保するというような必要もありまするので、そういう程度において監督をして参りたい。かように存じておりまして、曾つてのごとき統制経済を復活しようという意図は全く持つておりません。又、契約の場合に、そこに官庁が中間に入つてどうこうというようなことも、できる限りそれらのことは排除して参りたいと考えております。
  142. 白川一雄

    ○白川一雄君 この法案は介在することが目的になつておる法案のように解しておるのですが、そうすると従来の通りやるというわけにはこの法案が出ると行かないのじやないかと思うのですが、そうでないのでございましようか。
  143. 葦澤大義

    政府委員葦澤大義君) 契約に介在する政府のまあ運用の問題に私はなろうと思いますが、まあ現在出血受注と言われておりますいろいろな問題を一応この法案の規定によつて問題をなくそうという考え方になつておるわけでありまするが、従つてこの契約を届出られまして、それに基いて不当な価格、出血価格とよく言われまするが、というようなものによつて混乱を来たしましたような場合には戒告をすることができるということになつておりまするので、戒告をするかしないかというところが問題になるのでありまするが、製造なり販売の契約をしていいかどうかというところは政府がそれにタッチをいたさないわけでございます。介入と申しましても、契約の成否に関係するという程度のものではございません。経済的な運行における阻害をするというような事態は起らないというふうに考えております。
  144. 白川一雄

    ○白川一雄君 少しこの特需の実情と違うような点があると思うのでございますが、現在の特需というのは発注者がその製造する工場を調べまして、適正であるとして直接商社も介在させないで注文を出しておるのでございますが、そうなつたのをこの法規に基いてその工場は日本政府のほうで適当にあらずと、こういう場面が生じたときに、その注文は製造することができないのかどうかという問題が起つて来ると思うのです。
  145. 葦澤大義

    政府委員葦澤大義君) 現在武器の発注は、御承知ように、先ほど来政務次官からも説明がございましたように、現在の事態としては、これは駐留軍の発注が大部分であります。駐留軍が発注いたします武器についての制度は、御承知ように入札制度をとつております。従つて、この入札に参加するかしないかという問題でありまするが、これがまま非常に多数のものが入札に参加をいたしまして、徒らに競争の弊害を惹起いたしておるというような状況なのでありますので、現在におきましても、無論、発注者の側においても製造者の内容を調査いたしておろうかと思いますが、通産省においても向う側と話合せの上、メーカーの経営内容、製造能力等仔細に調査をいたしまして、入札に参加しますものにつきまして通産省が適格者を特に選んで向う側に通知をいたしておるわけでございます。その適格者の中から入札に参加されて入札するというような最近の運行になつておると思うのでありまするが、その際に入札しても通産大臣許可がないとできないじやないかというお尋ねかと思いますが、そういう入札に参加して入札が可能であるというような状態のときは、やはり製造業者としても通産大臣許可があることを前提とするわけでございます。入札は落ちたけれども製造業者としての許可が下りないというような事態は起きないじやないかというふうに考えておるのであります。
  146. 西田隆男

    ○西田隆男君 今の二十二条について関連質問をしたいのですが、この条文を読んでみますと、「国の職員が法令に基き職務のために所持し、又は使用する武器の修理の事業を行う場合については、この限りでない。」こういう字句が使つてあるのですが、〔日本の保安隊、警備隊が日本で製造されたところの武器を使つて、そうしてまあ特車といい、大砲といい、いろいろな武器があるのですが、その修繕をする場合は昔の兵器廠みたいに保安隊警備隊の中に修理工場を作るという意味ですか。民間の業者には一切出さないということですが、これは……。
  147. 葦澤大義

    政府委員葦澤大義君) 先ほど白川さんの御質疑のときに申上げました通り、通産省といたしましてはできるだけ民間工場設備を利用したいつもりであります。お尋ねのように保安隊、或いは国警等において、みずからその工廠を持つか持たないかということは、まだ何ら具体的にそういう問題として我々のほうと交渉したことはありません。ただ将来多少、自分のところで工場を持たなくとも修理をするというようなことは実際上起りますので、この法案の立案に当りましては、そういう意味のものもこの法案では直ちに許可が必要ということになりますので、それは余りにも煩瑣であるというような意味から、但書の規定がありますので、お尋ねの趣旨のような工廠的なものをここですぐ作る、全くそれに依存して民間には出さないのだというようなことは保安庁とも何ら打合せはしたことがない状況でございます。
  148. 西田隆男

    ○西田隆男君 今はないでしよう。今はやつてないのですから……。ただこの法案の条文の掲げておる意味が、今あなたのおつしやつたような拳銃の一部分の修理をするという程度のものであればこれは問題じやないのですが、この条文では国の職員が職務のために所持し、又は使用するとあつて、そうすれば保安隊、警備隊員というのが大きく考えられる。それが民間の修理工場というか、製造工場というか、そこに常時発注されるのであればこういう制限を加える必要がない。そうでないという建前に立つてこの条文が掲げてある以上は、一般民間に出すのが常識じやないか。いわゆる保安隊警備隊というものの武器の補修その他は一切昔の兵器廠みたいなものを作つて、そこで秘密保持の関係からやるのだとというような意味が含まつておるようにしかこの条文は読めませんね。
  149. 葦澤大義

    政府委員葦澤大義君) 我々はそれと反対の立案の気持でございます。現在も拳銃の修理等みずから若干しておるものがあると思いますが、それを一々すべて通産大臣許可ということでは非常に煩瑣になりますので、そういう事態を取除くという意味でありまして、工廠において全部修理を一括いたしまして、民間には一切修理をさせないというような意味は但書において何ら意図いたしておらないのでございます。
  150. 西田隆男

    ○西田隆男君 武器の製造に対しては厳重な許可制をとるのですよ。当然国内で使用する武器に対してはやはりこれも厳重な許可制によつて修繕をやらなければならない。必ずしも製造ばかりすることが武器を最も有効に使用するという意味じやない。製造と修繕ということは不分可の関係にある。一つのものには許可制をとるということを条文で謳つて一つのものには、承認を申請すればよろしいということはどうかと思うのですがね。修繕をする場合もやはり相当な設備を要するのです。今言う拳銃だけなら問題がないのですが、まあ戦車を特車と言つており、特車を修繕したり、大砲の修繕をやつたり、或いはフリゲートの修理をしたり、高射砲の修繕もしなければならないでしようが、そういう場合に相当の設備がなければ修繕できないと思うのですがね。ですからこの法律案の中に武器の製造修理というような字句が使つてあれば問題ないのですが、ここには出ていない。修理というのはこの条文だけですね、第二十二条に……、ほかには出てない、条文には。而もこの修理は、国家職員の使うものに対してはいわゆる許可制でないということから考えて、今私が言うように、保安隊、警備隊には何か作るという前提に立つておるのではないかというような疑問が起きて来るわけですね……。
  151. 古池信三

    政府委員古池信三君) 詳細なる点は局長から御答弁をいたすとしまして、この二十二条の法律の趣旨から申しまして、私が考えますのに、若し仮に国が相当の規模の製造或いは修理工場を設けて、ここによつて事業をやるとなれば、本文の適用を受けて、国に適用があるものとすればこれを受けるのだろうと思います。その際に民間ならば許可又は認可という言葉を使いますが、国である場合には同じく国がそれに対して承認を与えるという字句の区別をしたに過ぎないと考えます。従いまして但書のほうは極く例外的に、単に職員が所持又は使用する武器の修理をするという極めて小規模の場合に限定するものだと私は解釈をいたすのであります。
  152. 西田隆男

    ○西田隆男君 それは全然逆な解釈じやないですか。小規模であろうはずがない。日本の国で使う武器が相当多量に上るであろうことは、これは今の保安隊、警備隊の内容から見ても常識的に判断できる。この使つている武器の修繕をするのだから決して小規模であろうはずがない。相当大規模に修理をやらなければならん段階にある。今日本では保安隊、警備隊のもやつておりますまい。アメリカの駐留軍の管理している工場でやつているわけです。それがいつまでもそうされるわけのものでもないでしようし、日本国で造つた武器を日本の警備隊、保安隊が使えば、当然その修理はやは日本の工場でやらなければならんということになるでしようから、この条文をお作りになるときには、今葦澤さん言われた通り、そういうことを考えないでやられていると思うが、さつきも言つたように、MSAの援助の問題だとか、日本の自衛力漸増を考えた場合には、この条文だけでは非常に不十分である。武器の修繕もやはり同じ武器製造法というものを作られれば、その中に一緒に入れて、やはり制限を加えるとか何とかいう条文がなければ、私は不完全ではないかと思うので。
  153. 古池信三

    政府委員古池信三君) これは私はちよつと見解を異にするのでありますが、将来若し仮に国が相当規模の工場を設置しようというような場合に、この法律の第三条に戻りまして、武器の製造の事業を行おうとする者は、工場又は事業ごとに云々とありますが、通商産業大臣の許可を受けなければならない、この許可とあるのが、国だつたらば承認を受けなければならない、かように読んで三条の適用を受けるものと私は解釈するのであります。従つて二十二条の但書は、極く小規模の修理だけの場合、かように限定して考えてよいのではないかと思うのであります。
  154. 西田隆男

    ○西田隆男君 今の議論も、三条を読んでみると、改造及び修理を含むというのであるから成立たんわけでもないと思うが、さて拳銃の二挺か三挺か、十挺、二十挺ぐらいを修理するのに、武器修理の条文を、二十二条を入れてやること自体がおかしい。第三条でよいのであれば、第三条だけにちやんときめておけば疑義が起らない。当然武器の修理工場というのは相当大きな設備を持つたものでなければならない。それが三条と二十二条を読んでみて、三条には修理を含むといつてあり、民間の武器の製造修理工場に常時出すものであれば二十二条は要らない。国の職員の使うものであろうと何であろうと、ここでやつばり修理はするということになる。特に国の職員の使用するものというよう制限を二十二条で表明していることから見ると、これは今言う警備隊、保安隊の専属の許可制でなくて、通産大臣の管轄下に一応ある状態にはなつているが、国のほうは自分のところで修理するということになると、保安隊で修理工場を作る、そうするとそれを承認しなければならんということになつて、やはり昔の兵器廠ができる虞れはないかということです、私の言つているのは。これは一つなお保安庁なりとも連絡をとつて頂いて、そういうような考え方で若しあるならば、或いは将来そうするような考えがあれば、この法律審査ももつと深くタッチして審査する必要があると思うのです。これは勿論MSA援助の問題なんかが出る前にこれは出ておつた法律案ですから、穏やかに気楽に解釈すれば、政務次官の言われた通りで結構だと思いますが、私は特に苦労性ですから、そういう点まで心配しておかなければ……、これは一つお話合いになつて、この委員会で、どういうことなのか一遍御説明願いたい。
  155. 古池信三

    政府委員古池信三君) 只今の御要求がございましたから十分に検討いたしますが、大体、くどいようでありますけれども、私の考えは今申上げたようなふうに解釈するのが、この法律を一貫して、素直に読んだ場合の解釈であろうと存じまするので重ねて申上げます。なお今後只今解釈に重大なる変更がせられるというよう品な場合には、当然この委員会において十分に御説明を申上げねばならんと考えております。
  156. 西田隆男

    ○西田隆男君 今の政務次官のお言葉を私は反駁するわけではありませんが、特に聞き質してもらいたいのは、第三条に書いてある「(改造及び修理を含む。」というのは、保安隊や警備隊が使つておるものは全部民間工場へ出して修理させるのだということが政府の考え方であるのかどうか、これを確めてもらえば大体あとの問題は解決がつくと思うのです。
  157. 古池信三

    政府委員古池信三君) 只今の点は十分に関係の向きと打合せをいたしまして、次回にでもお答えを申上げます。
  158. 白川一雄

    ○白川一雄君 ついでにお尋ねしたいのでありますが、航空機工業について巷間伝えるところでは、通産省と運輸省との間に非常に繩張り争いがあるということが非常にやかましい定評になつておりますが、その実情を一つ説明願いたいと思います。
  159. 葦澤大義

    政府委員葦澤大義君) 運輸省と通産省との間の航空機製造事業法、向うは航空法の施行上繩張り争いというお尋ねでありますが、私は行政的には航空局が向うの仕事を主管いたしておるのでありますが、航空局と重工業局、我々のほうが非常に緊密な連絡をとつて気分の上においてさえも、何らその間に私は間隙はないというふうに信じております。これは航空局のほうにお尋ねになつても私は同様な意見が向うから述べられることと思いますが、ただ法律上検査につきまして、製造事業法の上におきまして、やはりこの製造の見地から検査する、それから航空法の見地から、航空の安全という見地から検査をするという、この検査がダブつておりまするので、業界とされましては二重の検査を受けるというところに問題が生ずるのでありまして、これを一本の検査体系で参りますと製造業者におかれても便利であるという点から、これを一本化したらどうかという話が出たのでありまするが、これはいろいろ航空法の審議経過、或いは製造事業法における審議経過等に鑑みまして、その話合せがつかなかつたところにそういうお説が出るのだろうと思いますが、これも運用におきまして、両方の検査がありますが、ダブらないように配慮いたしましたならば、製造業者におかれてもそういつた面からの問題はなくなるというふうに存じておる次第でございます。
  160. 白川一雄

    ○白川一雄君 これは私ども戦争中の苦い経験から申上げておりますので、私は丁度ドイツにおりましたときに、日本の海軍の飛行機は渡洋作戦ができたけれども、陸軍の飛行機が途中でみんなえんごしてしまうというので、陸軍のかたが三井物産、三菱商事を通してあつち、こつち飛行機を漁つて、最後にはイタリーからボロ飛行機を高い金で買わされて役に立たなかつたという事実も知つておりますし、又戦争中海軍と陸軍とがまるで敵国のような恰好になりまして、その間に時間的無駄とか、進歩の停頓とか、経費の無駄とか、莫大なものがあつたように見ておりますので、日本が今最初から始めなければならないような航空工業において、そういう無駄をさせられたら大変だという懸念が先に立つわけであります。特にこの生産の面を通産省のほうで堅持して頂かないと、資材面を確保しておられる通産省と離れた所が扱うということになりますと、苦労するのは、業界だけであろうと、こう思いますので、これは業界の一般の希望でもありますので、この点はよほど一つ留意して頂きたいように思うのでございます。  次に先般大臣の施政方針に対する質問にお答えになつた中に、航空機が輸出産業として適格なものであろうと考えるから奨励するという御答弁があつて、どうもこれは間違つておりはせんかと思つて速記録を見たら、やはりそう書いてあつたのでありますが、通産省のほうでは、日本の飛行機が輸出できるようになるのは、一体いつ頃できるというお見込であるか、そのお見込を承わりたいと思います。
  161. 葦澤大義

    政府委員葦澤大義君) 航空機製造の技術の進歩は非常に目覚しいものがあることは御承知通りでありまして、極に最近航空機エンジンがジエツト・エンジンに相当転化いたしまして、ジェット・エンジンの製造につきましては、戦後日本は殆んで空白な期間を経過いたしておりまするので、そういつたものの生産に追付き、これを追越すというにはよほどの努力が要るというふうに存ずるのでありまするが、従来の飛行機においても東南アジア諸国から引合のまだまとまつたものはありませんが、聞きますので、何と申しましても運輸機関といたしまして、船舶、車両自動車というようなものから、スピードの変化という意味において、将来航空機の需要というものが相当多いだろうということは想像されますので、そういう面において日本の航空機事業が海外に対する注文に応ずるということも考えられるわけでございますが、ただ実際輸出数量として相当多額に参るということにはやはり年月を要するというふうに考えておるわけであります。
  162. 白川一雄

    ○白川一雄君 私は率直に申上げれば、現在輸出するところは皆無という状態でないかと思います。基礎産業のアルミニユームの値段にしましても、鉄の値段にしましても、材料がこれほど高いので、飛行機を作つて世界のものと市場で競争するという事柄は、現在の段階では先ず夢でないかというように考えておるのであります。甚だ私どもとして失礼な言い分かも知れませんけれども、通産省の航空機の計画というものをよく拝見いたしますと、先ほどお尋ね申上げたように、運輸省を目標に計画されておるかのような感が非常に持たれるのでございますが、日本の今機械技術を早く向上さして、関連産業の技術をうんと引上げて行かなければいかんという点には、どうしても通産省のほうで大きな規模の下に御計画を願わないと、小さく突つき廻しましても、なかなか世界の水準の上つておるのに副うて行くことは私はできない。努力しながら、経費を使いながら距離が開いてしまうということになつてしまうんじやないか、こういうように考えられますので、十分な準備をなさり、又総合的御計画をなさつて、勇猛果断に一つ当局の真の計画の下に発足して頂くという線をとりませんと、一部業者の宣伝とか、或いは誘導によつてつておりますと、非常に将来困難なものになりはしないかという懸念もございますので、この際当局としては決して再軍備に関係があるのだというようなことではなく、一朝一夕に技術というものが金さえあればできるというものじやありませんので、堂堂と予算なりに計上されてその線に向つて頂くようにしませんと、航空機工業をやらんのならよろしうございますけれども、やるときめた限りはそういう線をとつて頂かない限り、却つて一部業者の作意によつて市場を混乱さしたり、大衆に非常に迷惑をかける懸念もありますので、そういう点を御留意になつて、我々としては雄大な規模の下に御計画を立てて頂かなければいけないのではないか、これを特にお願い申上げておきたいと存ずる次第であります。
  163. 古池信三

    政府委員古池信三君) 只今のお説誠に御尤もだと存じます。曾つては日本の航空機製造工業も相当に進んだものであつたと考えるのでありまするが、戦争以来長い間の空白期間をおきましたために、現在におきまする技術は諸外国に比べて非常に劣つているということは遺憾ながら認めざるを得ないと存じます。お説のように航空機は将来平和的な交通機関として最も重要な機能を有するものでありますから、我が国といたしましてもこれが研究にはできる限りの力を尽しまして優秀な航空機を製造し得るよういたしたい、かように考えます。  なお先ほどお尋ねのありました運輸省と通産省との関係は御承知ように現在は相当はつきりしておるのでありまして、航空機を製造する工業の主管官庁は通産省、それから航空機の運航に関しまする問題はこれは運輸、交通を主管する運輸省の所管、こういうことでお互いの持分ははつきりいたしておると考えております。
  164. 中川以良

    委員長中川以良君) それでは本日はこの程度質疑の打切りをいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  165. 中川以良

    委員長中川以良君) それで明後日は火薬類取締法の一部を改正する法律案鉱業法の一部を改正する法律案武器等製造法案、この三件を議題に供します。  なお明日は小委員長よりの御申越によりまして午後一時より中小企業に関する小委員会を開催いたします。これは小委員でない方も是非多数御出席頂きますように特に小委員長からも希望がございますので、どうぞよろしく御配慮頂きます。  それでは本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十四分散会