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政府委員(
葦澤大義君) 武器の生産につきましての現状でございますが、
提案理由においても御
説明を申上げてある
通り、昨年の四月に一切の武器についての
製造が禁止されてお
つたものが、
許可によ
つて製造してもよろしいというように変りましてから、駐留軍側からの日本の武器の
製造者に対する発注が行われて参りました。
只今までのところ、武器に関しまして約四千二百六十万ドルに上る発注が行われております。
この内容につきましては、参考資料の第一表にございます
通りでございまするが、
種類は、迫撃砲、迫撃砲弾、手榴弾、銃剣、ロケツト弾、榴弾、照明弾、バズーカ砲というような
種類に亙
つておるのでありまするが、こうい
つた発注が、これは主として向側の、PAというところから発注されておるのでありまするが、向うの発注制度といたしまして入札制度によ
つておりまするので、この入札に参加いたします日本側の
製造業者が、つまり現在の経済情勢、昨年以来経済界における軟調と申しますか、というような情勢から、こういう新らしい発注に対して相当メーカーが殺到して参るというような状況でございまして、機械メーカー、或いは鉄鋼メーカーも、無論戦前においては経験があ
つたのでありまするが、そうい
つたものに主体の事業をいたしておりますものがこういう新らしい分野にやはり再度殺到して参るというような形勢が相当見えて参
つたのであります。それに伴いまして
製造単価が、入札制度でございますので、安いものに落ちるわけでございまするが、それを相競
つて、何と申しますか、安値入札という傾向が相当顕著でございまして、新聞紙上等においても、出血受注ということでしばしば問題を提起いたしておるわけであります。何が出血であるかということは相当むずかしい問題でありまするが、駐留軍側において一応購入予定価格というものを持
つておるようでありまするが、そういうものを漏れ聞くところと比較いたしますと、大体単価において物によ
つて二割前後の開きがあるということは想像されるような状況でありまして、こうい
つた制度の下で何らかこういう傾向を是正する必要を認めまして、この入札制度に参加いたします
製造業者につきましては、
一定の通産省においていろいろ
調査をいたしまして、大体適格と思われるものを入札に参加さしてほしいというような申入をいたしまして、従来一つの入札について二十数社がこれに相競
つたというような状況であ
つたのでありまするが、そういう中から推薦をいたしまして五、六社の——数社の中から一つ入札をしてほしいというような制度の改善の申入をいたしましてJPAサイドにおいても諒とせられて、そういうような制度も昨年の秋頃に始ま
つたような次第でありまするが、なお何と申しましても新らしい分野でありまするので、業界といたしましても殺到傾向というものはまだそのあとを断
つていないというように
考えられるのであります。で今後どのくらいのこれが受注があるかということはやはり相当な問題であると思いまするが、米軍の今年度会計年度七月、余すところ僅かでございまするが、すでに我々の聞き及んでおるところによりますと、あと千五、六百万ドルの発注はあるようでありまして、大体この七月までには六千万ドル前後の発注があろうかと思いまするが、ただこの朝鮮動乱の一応平和的妥結というものが実現した場合にどうなるかということが問題になろうかと思いますが、一応現在駐留軍側と我々との折衝のところから我々の想像いたしておりますところでは、現在ベースで更に来年度も行われると、又向う側もそうい
つたことを漏らしておりまするので、大体現在ベースの発注があるのではないかというような
考え方をいたしておるわけであります。武器の需要は現在こうい
つた駐留軍
関係が殆んどその主体でございまして、ただこれがドルを以て一応支払われておりますので、一面貿易上から見ますと特需という名を以て称せられておりまするが、ドル収入になるという意味において一つの貿易に準ずる産業であるというような見地から、こうい
つた産業の健全な発達というものが望ましいというようなふうに
考えておるわけであります。なお輸出につきまして海外からいろいろな引合もあ
つたのでありまするが、現在のところはタイから発注のありました日本製鋼所が受注いたしました砲弾五万発の引合に対する
製造をいたすということが一件きまりましただけで、あとまだ商談のまとま
つたものはありません。ただこの輸出につきましては日本の国際的な、殊に東南アジア等諸国に与えるいろいろな再軍備をするのであるかどうか、そうい
つたようないろいろな政治上の問題もあろうかと思いますので、武器の輸出につきましては、たとえ引合が海外からありましても、これをどう受けるかということはよほど慎重を要するのではないかというような
考え方をいたしているわけであります。そうい
つた現状から、武器
製造につきましての問題点といたしましては、需要が
一定の国自身が需要するというような態勢にな
つておりません需要内容でありまするので、これに応じた
製造の態勢を作るという意味合いと、入札制度にこうい
つた徒らに競争にのみ走り過ぎるという傾向というようなものを勘案して参りますときに、生産分野の確立されました
一定の生産態勢が整えられた状態を持つか持たないかというところが、一つの問題点であろうと思うのであります。と同時に、この一つの準貿易のような状態にな
つておりまするので、徒らに出血価格、不当な安値価格を以てこれに応ずるということはやはり抑止する必要がある。又商売上から申しまするならば、
最初は安いものを売りましてそこで一応の連繋ができ上
つてあとの納入商売において、前の損を取返して余りあるというような商売のやり方、無論これは普通の尋常のあり方かも知れませんが、そういうものが過度に過ぎますると、何と申しましても武器生産の現状に照らしますと健全な発展になろうとは思われません。そうい
つた点に問題の重点が、二つの中心点が、あるというように
考えられるわけであります。そうい
つた観点から生産態勢の整備と申しますか、生産分野の確立の上にしつかりした生産態様を持ち来すという意味におきまして、
製造事業に対して一応
許可制度を布きまして、その
許可制度の
基準といたしましては、無論経理上或いは
技術上立派なものであることを一つの
条件とするのでありまするが、日本の経済の全体のバランスから見まして、過剰設備にならないようにという一つの
条件をやはり
法律の中に謳いまして、
製造の
許可制度を布くというふうに、
法案の中において規定をいたしているわけであります。
第二のいわゆる出血受注に対しまする方策といたしまして、すべての契約につきまして認可制度を布きまして、認可がなければ契約ができないというようなことを
考えたのでありまするが、そこまで参らなくとも、一応この
届出制によりまして、その内容によ
つて不当なものにつきましてはこれを戒告するということで、一応このいわゆる出血受注に対しまする問題の処理も可能ではないかというような
考え方から、そうい
つた制度をこの
法案の中に盛込んであります。
本案におきまする二つの中心点はそこにあるわけでありまするが、やはりこうい
つた制度をいたしまするにつきましては、何と申しましても独断に陥るということが最も戒めなければならないとこるだと存ぜられまするので、この制度の運営に当りましては武器の生産
審議会、官民からなる
委員によ
つて構成されますこの
審議会において重要
事項の決定をして頂くというような段取りに
法案の体制が規定いたされているわけであります。概略御
説明をいたした次第であります。