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政府委員(
川上為治君) 現在の
鉱業法におきましては、この第三十五条におきましても、又第五十三条におきましても、
文化財とか、或いは
公園とか、
温泉というような問題は、はつきりいたしておりませんので、従いまして
文化財とか或いは
公園というものは除外いたされていたわけであります。今回におきましては、これをはつきり取入れるということにいたしたのでありますけれども、この三十五条なり或いは五十三条等の
改正によりましても、なお特に
文化財との
関係につきましては十分
法律的に或いは
運営的に
調整できない点があるのではないかと私どものほうでは考えておるわけであります。即ち現在
国立公園につきましては、
国立公園法によりまして、特別の
地域等の
指定は
厚生大臣が、
国立公園審議会の
意見を聞きましてこれを
指定いたすことになります。
指定をいたしますというと、その
地域につきましては、
鉱業の採掘はできないということに相成
つておるのでありますけれども、この
国立公園の
指定の
関係につきましては、今申上げましたように、
審議会というのがございまして、その
審議会におきましては
農林、
通産、
運輸等の
各省の職員も
委員として参加いたしておりますし、又その
ために
関係行政官庁間の連絡は相当緊密に行われております。従いまして、
鉱業権と、この
国立公園の
特別地域につきましての
調整につきましては、十分に
調整が行い得る
状態にな
つております。若し協議が
各省の間につきません場合におきましては、或いは
次官会議、或いは閣議というような
機関もありまして、それによりまして
調整されるような恰好にな
つております。従いまして、そういうような経緯によりまして、
国立公園の
関係におきましては両者間に十分の
調整が行われまして、
鉱業権の問題と、それから
特別地域との
調整は相当よく行い得ると考えられておるわけであります。又
国立公園の
関係につきましては、
損失の補償の制度がありまして、
鉱業権の取消が行われますというと採掘ができない場合におきましては、
鉱業権者の
損失を補償することの規定がありますので、そういうような
関係から申しましても、
国立公園の
関係におきましては大体において円満に行われておるということが言えると思うのであります。現在までいろいろ問題がありましても、結局のところ両者内でいろいろ話合いしまして協議もできまして、それで比較的円満に行
つているということが言われているのであります。それから同じような問題につきまして
温泉法
関係がございますが、
温泉法でも道府県の知事は土地の掘鑿が
温泉に著しい影響を及ぼす場合には、その影響を阻止するに必要な
措置を命ずることができるのでありますが、この際におきましても、あらかじめ土地の採掘を
許可又は
認可しました
行政官庁に協議しなければならないということにな
つておりますので、その際例えば
鉱業権の問題につきましては、この都道府県知事は、
行政官庁であります地方
通産局なり、そうした方面と十分連絡をと
つて許可をするということにな
つておりますから、事前に十分の打合せがあるわけでございまして、その
ために
鉱業権とこれらの
温泉のほうといろいろな問題を起すことが少なく、比較的円満に片付いているということが言えるのではないかと思うのであります。その他例えば農地法とか或いは森林法或いは海岸地区の
法律を出されるというような話を聞いておりますが、海岸保全
法案とか或いは自然
公園法案とか、そういうようなものにつきましても、大体におきまして
鉱業権との
調整を十分に考えまして
法律案は考えているようでございます。ところが、大体殆んどこれだけではないかと思うのでありますが、
文化財方面につきましてはこれは三、四年前に
法律ができまして、現在施行されているのでありますが、
文化財保護法によりますというと、
文化財の
指定につきましては
文化財保護委員会というのがありまして、この
委員会におきまして、この
文化財の
指定をすることにな
つております。この
文化財の
指定を
委員会におきまして
指定します場合におきましては、別に公聴会とか、或いは
審議会とか、そういうようなものはないのでありまして、この
委員会におきまして勿論その下に専門
審議会のようなものがありますけれども、その
審議会の
意見を聞きまして、
委員会が独立の権限を以て
指定いたしておるわであります。この
委員会は、文部省の一応所管にはな
つておりますけれども、丁度昨年までありました
公益事業委員会と同じような性格を持
つているのではないかと思うのであります。従いまして、ここで
指定されますというと、今まで
鉱業権を持ちまして採掘しておりましたものが、これがいきなり採掘を休止しなければならないような状況になるわけであります。勿論その際におきましては、原状復旧の申請というのが、回復の申請というのができるのでありまして、その申請を
鉱業権者が行いますというと、場合によりましては或る程度これを認められまして、採掘が一部
許可されるようなことにもなるわけであります。いずれにしましても、この
指定というのは、
文化財保護委員会におきまして別に公聴会とか或いは
各省間に協議するとかというような
法律的な制度もなくして、この
委員会におきましてその
指定をし得る状況にな
つております。こういう点につきまして、
法律的な若干の不備があるのではないかと私どものほうでは考えておるわけであります。そして一遍
指定しますというと、先ほど申上げましたように原状復旧の申請はできますし、それによ
つて場合によりましてはその
委員会でそれを認められんということはあるかも知れませんけれども、一旦
指定しましたことに対する損害賠償と申しますか、
損失補償の制度は別にないわけであります。従いまして、一面から見ますというと、
鉱業権者にとりましては非常に不利な立場にあるわけであります。私どものほうとしましては、特にこの
文化財の方面につきましてはそういう制度にな
つておりますからして、何とかして
文化財保護委員会のほうに十分にこちらの立場を
説明いたしまして、そして是非とも
鉱業権を認めてもらいまして、採掘が必要な限りできるように、いろいろ連絡を今日までと
つてや
つて参
つておるのでありますけれども、遺憾ながら今申上げましたように
法律的な点、或いは
運営的な方面におきまして若干のほかの
国立公園法とか、或いは
温泉法とか、そういうものと違つた点がありますので、十分な連絡をいたしますといいましても、なかなかうまくその点が行きませずに、勢い
指定が、協議が整わないままに先に行われて、いろいろ地方におきまして問題を起しているという点がないでもないわけであります。従いまして、私どものほうとしましては、先ほど申上げました
温泉法とか
国立公園法とか、そういうような方面につきましては或る程度円満にこれが行えておりますので、別段これをもつとよく
改正してもらいたいというようなことは、今のところそれほど考えておりませんけれども、
文化財の方面につきましては、何とかそういう方面につきまして
法律的な点について考えてもらわなければ、今後におきましても相当いろいろな問題を起すのではないかというようなふうに考えられます。先ほど申上げましたように、たとい今回第三十五条、第五十三条の
改正をいたしたといたしましても、現在の
文化財保護法そのままでありますというと、なかなかその辺の
調整はとり得ないのではないかというようなふうに考えておるわけでありまして、この辺の
調整につきましては、
文化財保護委員会のほうとも十分連絡をとりまして、何とか
調整して頂きたいというようなふうに考えております。