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説明員(
中島征帆君) お手許に三種類の資料が配付されておると思いますが、一つは
借款契約の内容の要旨であります。それからいま一つは、この内容に関連いたしまして各国の
借款条件との比較の例であります。いま一つは表に
なつておりまして、
新設発電設備の概要というのがあります。この表から御
説明申上げます。
この際ついでにこの
借款の当初の経過のあらましを申上げますが、この問題は昨年の春頃からぼつぼつ話が起
つたのでありますが、今日
契約を締結いたしました三社間におきまして、
火力設備の強化のために外国の優秀な
火力発電設備を輸入して、
日本の
火力発電の能率を上げたい、こういう話が出ましてこれに対しましては
通産省もこの方針につきまして同意を与えたわけであります。そこで昨年来この三社と、それから
ウエスチング・ハウスとG・Eの両者の間におきましてそれぞれ
機械輸入等に関しまして交渉が進められて参
つたのでありますが、昨年の暮近くになりましてこの
機械の発注に関連いたしまして
輸出入銀行から
外資を導入する、その際合せてG・E及び
ウエスチング・ハウスが或る程度これに協力する、こういう話になりましてこの
借款の線を
輸出入銀行との間に逐次乗せて参つたわけであります。そこで
アメリカの
輸出入銀行との話が今年に入りましてからだんだん具体化いたしまして三月の終り頃までにはかなり進捗をいたしてお
つたのであります。四月に入りましてどうやら近く事務的には調査も終了して
本式契約を締結し得る段階にまで来そうだというところまで参つたわけでありますが、その後
輸出入銀行の総裁が変り、又
米国政府の
輸出入銀行及び
世界銀行に対する政策の変更とがございまして、結局この種の
長期借款はすべて
世界銀行によ
つて取扱われるべきものだというふうな話になりまして、五月の末頃からこの
輸出入銀行との話合いも
借款問題が
世界銀行の手に順次移
つて参りました。六月の初め頃から明確に
世界銀行がこの
貸付の対象として調査を開始したわけであります。そこでそれではどういう
設備を当初考えておつたかということでありますが、これは交渉の経過においても若干
計画も変
つておりますが、大体大きな数字はここの表に載
つてあります通りでありまして、細かい点を除きまして大した変化はございません。これによりますというと、中部が六万六千キロ・ワットの
発電、これはG・Eから輸入することに
なつております。
関西と
九州が
ウエスチング・ハウスの
機械でありまして
関西が十五万キロ、これは二基であります。
九州は七万五千、
関西の多奈川が七万五千キロワット、二基ということで十五万キロになるわけであります。そしてこれも表としても大きいわけでありますが、その効率を見ますと、
熱効率といたしまして中部の場合が三〇・五、
関西が三二・六%、
九州も同様ということでありまして、これを現在我が国の最優秀の
設備であります
九州の築上の
最新式の
設備に比べますというと、築上のものは二六・七%であります。能力は大体似たようなものでありますけれども、
従つてその間において相当な開きがあるということであります。又石炭の
消費率を見ますというと、簡単にいたしまして中部の場合は〇・五一二、それから
関西、
九州それぞれ〇・五二乃至〇・五五ということになりますが、これは現在の
日本の
火力発電設備の総平均〇・七一六というものに比べて相当に低い。それから現在稼働中のもので最も
消費率の少いのは尼崎の第二
発電所でございます。これが〇・五五ということで、大体これに近いということに
なつております。その他こういうふうな高能率の機能というものはこの
機械の
構造そのものから来るわけでありますが、この
設備におきましてボイラーの気圧が丁度この中ほどにあります通りに八十八キログラム、或いは百二キログラムということで、これを
国内で作
つております現在の最高のものが大体六五キロ程度でありますが、その間五割以上の開きがある。汽温にいたしましても、いずれも五百十度以上でありますが、国産のものは四百八十五、六度程度であります。その程度の開きがありまして、結局におきましてこういう
高性能のものは、まだ
日本では全然作られておりませんし、又これを急速にこなすという見込もない。
従つてこういう
設備を入れ、更にそれからメーカーと
技術提携をいたしまして、
日本の
発電設備を向上させるということが極めて緊要だという見地から、この三社の
火力発電設備の輸入に大いに協力して参つたわけであります。これらの
機械の総
建設費と申しますのは、
国内の費用に比べますと必ずしも安くございません。併しながらこの能率を考えました場合に、この表にございます通りに
発電原価が中部においては五円九十五銭、
九州に至りましては四円二十二銭というところまで低下いたしますが、現在の
日本の
発電原価総平均が七円三十四銭ということに
なつておりますので、その点に関しましても非常なここで利益が出るわけであります。こういうような
設備に対しましてそれぞれ七百万ドル乃至一千二百万ドルの
借款をするわけでありますが、その
建設費そのものは無論これを上廻
つておりまして、この下のほうの
所要資金の欄にございます通りに、中部におきましては総
資金五十億六千四百万円、そのうちの四割余り二十三億六千万円は円貨で間に合わせて、残りのものを外貨を使う。それから
関西の場合は若干この比率が違いますが、百十億の総
所要額に対しまして
国内で使うものが三十一億、残りの七十九億余りのものがこの
輸入機械になる、こういうふうに
なつておるのであります。従いましていずれの場合におきましても、この
外資のほかに
国内で使用されます円貨がかなりあるということになるのでありますが、これはもとより
開発資金計画としてこの円貨につきましては手当をいたしておるのであります。それからこの備考にも書いてございますが、同じ
建設費につきましても会社によりまして
輸入外貨に頼
つておりますものと、円で
国内で調達するものとの比率が違
つておりますが、これは
注文先の
会社事情にもよりますし、又発注する
電力会社の意図にも若干よるわけでありますけれども、中部のごときはできるだけ国産で間に合うものは、
国内のものを使いたいということで
計画を立てております。それから
関西、
九州等は逆に
安全率をとりましてできるだけセットとして全体の能率を上げたいという見地から
計画を作りました関係上、この比率が違
つているわけであります。
次に
火力借款諸
契約、
貸付契約、
保証契約、
事業計画契約要旨、これの
説明をいたします。実はこれにつきましては、実際の
契約書につきまして御
説明申上げるのが筋でございますが、まだ
契約書の正本が到着しておりませんので従来交渉の経過中にこちらで使
つております
契約のドラフトから要点を抜きましてここに掲げてあります。この
契約は
日本の
開発銀行が一応形式的な借手ということに
なつておりますが、実質は先ほど申しました通りに
電力会社と向うの
金融機関との間に話が始まつたということであります。又
世界銀行といたしましては、この
借款の
融資対象というものが新らしい
火力発電設備の建設にあるということに着目いたしておりまして、
従つて世界銀行は単に
開発銀行に単純に紐付で貸すというだけでなく、やはりその
貸付けたドルの使途につきましても、十分抑えたいという見地から
開発銀行と
貸付契約を結び、更に
開発銀行から転貸されるところの三つの
電力会社とも直接に
事業計画契約というものを結んでおります。それから更にこの
貸付に対しまして
政府の
保証を要求いたしまして、これは前国会においてこの
保証の裏付となる法律が通り予算化されたわけでありますが、それに基いて
政府が
保証契約を結びますので、
日本政府との間の
保証契約、この三つの
契約が並行して締結されておるわけであります。
先ず形式的な基本であります
貸付契約でありますが、これは
世界銀行と
開発銀行との間に結ばれる
契約でありますけれども、これも実質的に三社の
契約に対応いたしまして三つに分けてあります。併しその内容は全然同一でありますが、形式的には三つの
契約に
なつておりますけれども、要するに
貸付契約として先ず中心のものが
開発銀行と
世界銀行との間に締結され、これで
貸付金額が総額四千二十万ドル、そのうち
関西分が二千百五十万ドル、
九州が千百二十万ドル、中部が七百五十万ドル、こういうふうなことに
なつておるのであります。
それから
約定手数料四分の三%でございますが、この
貸付金を借出しますというと、これに対しましてはその次にございますように年五分の利息がつくわけであります。ところが
契約が発効いたしまして現実に金が引出されるためには、そこに実際の返済に応ずる若干の期間がございますので、その間は
世界銀行としては金を準備していたという関係から引出されないものに対して金利をとるわけであります。これは
約定手数料と称する四分の三%、七厘五毛の利子でございます。それから金利は五%、それから金利その他
手数料支払期日、このその他の
手数料支払期日というのは、この金利五%の中に入
つておりますが、この
支払期日は一月一日及び七月一日にきめ、それから
償還計画としては、返済は一九五七年の一月一日より開始で、つまり昭和三十一年末までは据置き、それ以後三十二年の元旦から償還を開始する、こういうことに
なつております。そこで終期が一九七三年の七月ということに
なつておりまして、結局二十カ年の
返済期限で、三年据置きと、こういうふうに大ざつぱに言われておりますが、大体これも多少端折りまして、三年半ばかし据置きまして十六年半ぐらいで、あと均等償還する、こういうことに
なつております。それからこれによ
つて貸付けました
資金は、これは
融資対象と
なつておる
事業計画、つまり三社がそれぞれ提出しております本
借款に基く新らしい
火力建設計画、この
計画以外には使用してはいけないということに
なつております。これは勿論当然なことだと思うのであります。それからその他の事項に関しましてこれはあとで
電力会社と
世界銀行との間の
事業計画契約のところに出て参りますけれども、いろいろなこの
契約によ
つて義務を
電力会社が世銀に対して負
つておるわけでありますが、そういうような
電力会社の義務を遂行せしめるために
開発銀行もできるだけの協力をする、こういう趣旨のことが謳われております。この
特約条項の一つといたしまして、「
開銀は
電力会社をして本
融資対象事業計画及び
約定事業計画を遂行せしめ、
事業計画契約に規定するその諸約束を履行せしめると共に
電力会社が
資金調達不能の場合にはその
資金を供約し、又は供給させる。」このように
電力会社が提出しております諸
計画を十分に遂行させるように十分監督し、又協力をする。殊に
資金調達不能の場合には
開銀のほうでそれに対して協力させるような方法を講ずる、こういうことであります。この点につきまして、又後ほど繰返し申述べます。それからいろいろな報告、
情報等の関係でありますが、
開銀が今度の
貸付金によりまして、
電力会社が購入した物品或いは
電力会社との取引の状況或いは
開銀自体の財務の状況、こういつたものをできるだけ明らかにする書類を保存しなければならない。又それに対しては
世界銀行の
代表者の検査にも応ずる。これも
債務者としては一応当然なことだと思います。それからその次に、
開銀は本
貸付の
目的達成等を阻害する事情が発生したり、或いは
一般担保が実行されるに至るがごとき事態が生じた場合には速かに通報するということに
なつておりますが、これはまあ要するに
世界銀行の債権について何らか危惧が生じた場合には通報するということでありますが、この後半にあります
一般担保につきましては、これは又後ほど出て参りますので、そのとき
説明いたします。
それから
開発銀行といたしましては自分の資産につきましての
担保を
世界銀行にはとられておりません。併し
開発銀行が他の
世界銀行以外の債務の
保証のために特定の
担保権をその資産の上に設定するときには、これはあらかじめ
世界銀行の同意を得なければならない、若し同意がなくてそういうようなことをやつた場合には、他の
債権者のために設定された
担保に対しまして
世界銀行も同一順位の
担保権を有する、こういう規定であります。それからあとはまあ若干細かくなりますが、税金の負担の問題、或いは保険に付させる問題、それから
電力会社に転貸するときの
条件を一応通報すると、こういうことであります。これも一応
債権者としては当然の処置であります。
それからその次に
一般担保の
条件の承認がございますが、これはここでは
開銀が
電力会社をして
一般担保証書を作らせる、それには一定の
条件をつける、こういうことに
なつております。
開銀といたしましては
自分自身の財産による
担保を提供いたしませんが、転貸する場合には、
電力会社から
一般担保をとれるわけでありまして、これは法律上
開銀が
貸付けた場合には
一般担保権を持
つておるということは法律上当然に
なつておりますが、それによ
つて開銀が
電力会社に対して
一般担保権を主張できるわけであります。
開銀が
国内上における
一般担保権をこの場合にも主張できるのでありますけれども、最終……最終と申しますか、最終の
債権者であります
世界銀行の債権の
担保をするためには、何らかそこで別の形をとらざるを得ない。そこで
開銀が
電力会社に対して持
つておりますこの
一般担保権を
証書にいたしまして、そこでその
証書を
世界銀行に質入する、
従つて開銀は自分の財産についての
担保権は設定しないけれども、
電力会社に対して持
つております
担保権を、これを自分の債務の
担保として
世界銀行に質入する、こういう
廻り道をとるわけであります。そこで
開銀が
世界銀行に出します
一般担保証書の内容につきましてここで規定いたしておりますが、その
一般担保権の実行の
条件といたしましては、これは先ずこの
一般担保実行の
条件というものは、
一般担保証書に明記されるところでありまして、これは
開発銀行と
電力会社との間の
条件であります。先ずこれは
電力会社がその
借款を返済しなかつた場合、それから
電力会社が
事業計画契約によ
つて履行すべき事項を履行しなかつた場合、而もその
事項不履行の状態の場合が三十日間継続した場合、それは
開発銀行は
事業計画には直接関与いたしておりませんけれども、これを十分に完遂させる義務を先ほど申上げましたように負
つておるわけでありますので、
電力会社が
世界銀行との間にきめられております
事業計画契約の遵守が行われない場合には、
開発銀行自体がその
電力会社の
債務不履行として
一般担保の設定ができる、こういうことであります。
それから次は
電力会社が仮にほかに
担保を設定しておる場合、例えば
特定担保は現在のところ設定できませんが、
一般担保権者としては
開発銀行のほかに
社債権者があります。その
社債権者の
担保が実行されるということに
なつた場合には、その
契約に基く
一般担保も実行していい、こういうことであります。
それからその他
電力会社が
一般担保権者の保護のために、
一般担保に優先するように
特定担保権を設定しないという条項がございますが、そういう条項を無視いたしまして、
特定担保を設定したときには、現実に
一般担保権が侵害されますので、その場合には三十日を経過すればこの
一般担保権は可能である、こういうようなことが
一般担保証書の
実行条件としてこの
証書に明記される、こういうふうな
一般担保証書を
電力会社からとりまして、そこで同時に
開銀と
電力会社との間に
世界銀行から借りました金の
転貸契約を結ぶわけであります。この
転貸契約証書と、それからこの
一般担保証書とを合せまして
世界銀行に
開銀として質入するわけであります。これが
開銀が
世界銀行に対していたします一つの
担保の形になるわけでありますが、これを質入
契約書として作りまして、
世界銀行に持
つて行く、こういうことになるわけであります。こういうことが
契約条項として謳われております。そこでこの
一般担保につきましては更に又規定がございまして、
開銀が
世界銀行に対しまして質入いたしましたこの
担保権の
実行条件として今度は
世界銀行と
開銀との関係の問題になるわけであります。これは同じようものがぐるぐる廻
つておるわけでありますが、結局
契約の当事者が違いますために又改めて別な形で
契約を結ぶ、若干その間の内容も違う、こういうことにおのずからなるわけでありますが、その関係は非常に廻りくどく、且つ又わかりにくいような恰好にもなりますが、この
世界銀行と
開銀との関係においての
担保権の
実行条件といたしまして、先ず
開銀としては
世界銀行との
契約に基いて元利を返済しなければならない、こういう義務があるわけでありますが、その
貸付契約の中で或る場合には、つまり
開銀といたしまして何らかのミスがあつた場合には、
世界銀行が債務の全額を即時償還させる、こういうことが期限の有効を喪失させることができるというような約束がございます。そういうような宣言を
世界銀行がいたしました場合には、当然に
一般担保権を
世界銀行が面接実行できる、こういうことになります。それはどういう場合であるかということが、次に並べてございますが、第一には
開発銀行が……。