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政府委員(中島
征帆君)
只今委員長から概略の本件の経過につきまして
お話がございましたが当時問題になりました
事項といたしまして、電源開発会社がか
ような事業を附帯事業として営むことが適当であるかどうか、これが
法律上許されるかどうかという点が問題に
なつたのでありますが、この点につきましては、当時大体現在の
法律の解釈上、別に不適当ではない、当然こういうものを以て附帯事業として
考えられるということを申上げておりますが、その点に関じましては、現在におきましても私
どもの
見解は変
つておりません。
それから本契約によりまして電源開発会社が
国家的な資金を使う
意味におきまして、何らか不当な損失を受けるということになりますと、これは問題でありますが、そういうことがあるかないかという点につきまして、十分検討を加えておりますが、現在の契約案の内容によりますというと、この建設費の一部を開発会社が補償することにな
つておりますが、その点を除きましては
如何なる場合におきまして、もこのセメント工場を自営することによ
つて特に損失を受ける
ようなことにはな
つておりません。従
つてそういう
意味におきましても、経済的に電源開発会社がこのセメント事業を自営するということは不利ではないという
ような判断を下しております。
それからいま
一つの問題は、この工場で作
つたセメントがダムに向くかどうかという技術的な問題でありますが、この磐城セメントで現在もくろんでおります設備は、
日本では割合に新らしい設備でありまして、レポル式と言
つておりますが、レポル式の窯から出ましたセメントは、従来の経験によると、ダムには適しない、余り優秀なセメントではないという話もあ
つたわけであります。これにつきましては、一応当時もいろいろ各
方面の
意見を聞いておりましたが、大体心配がないというふうな
考え方で、この前の
委員会までは御
説明申上げておりましたが、この点につきましてはなお
研究の余地があるということで、その後国会閉会中におきましては、電源開発会社が主体となりまして、各学校の土木或いは化学、窯業の専門の教授の
かたがた、或いは電気或いは土木の
研究所の専門家等のおいでを願いまして、権威ある
意見を交換いたしました報告が来ておりますが、その結果に上りますというと、このレポル式のセメントというのは、すでに
海外では
相当早くから発達して、その品質も保証されている。又価格も比較的低廉にできる
ような優位性があるという
ような御
意見が強くありまして、この方式に上るためにダムに不向きなセメントができるということは全然
考えられないということが、全般的な判断の
ようでございます。
それからいま
一つの問題は、果してこの工場からセメントを買わなければ、
日本のセメントというものが不足するのであるかどうかという点でありますが、これは本来から行きまして、
日本のセメントの供給能力というのは、全体の
バランスをと
つた場合に不足するということはこれは
考えられない。ただ現在の状態におきましては、中京地区におきましては、比較的
需要に対しまして工場が少いためにややもすれば品がすれの状況が起きる。これはすでに現在行われております丸山その他の大きなダムの建設工事の途上におきましても、ときどきセメント切れの問題が出て来ます。そういうふうな懸念がときどき起るわけであります。そういう
意味におきまして、更に大がかりな佐久間ダムの工事を始めますというと、そこにもつと一層確実な供給源を確保したい、こういうことを開発会社で
考えますのは当然でありまして、その、要求と、たまたまそこに起
つておりました磐城セメントの工場建設計画の問題が合わさ
つて話合いに
なつたわけでございます。そこで一時的な品がすれと申しますか、そういうものにつきましては、将来その附近の工場におきましても、それぞれ増設計画等もございますので、これは適当な対策を講ずることによ
つてそういうふうな支障のない
ようにするということは、これは不可能ではないかと思います。併し近くに工場があれば、これはますます安全なわけでありまして、殊に輸送費も
相当助かるという点も出て来ます。ところが輸送上に
一つの問題がございまして、佐久間にダムを作ります場合には、
相当遠距離から多量なセメントを運ばなければならない。最
需要期におきましては一日九百トン余り運ぶことにな
つておる
ようでありますが、九百六十トン毎日輸送しなければならない、こういうことになります。そういたしますと、これが果して円滑に行くかどうかという点につきまして、これは開発会社のほうで最も懸念いたした点ではございますが、この点につきまして鉄道の当局に十分
研究してもら
つたのであります。そうしましたら、現在あの附近の東海道線は
相当手一ぱいに働いておる。そこで若し佐久間ダムの建設が始ま
つてセメントをよそから運ぶということになるとかなりそこに無理が来る。第一に、例えば一番近い有力な工場であります三重県の藤原工場、小野田セメントの藤原工場でありますが、そこからセメントを運ぶということになりますと、豊橋で専用の列車はこれは編成できませんので、ほかの貨物と一緒に輸送して来まして、豊橋で編成替えをする、こういう手続になる。そうしますと、豊橋の現在の操車場が現在では手一ぱいでありますために、そういう
ような大量の貨車を操車いたしますためには、更に千坪足らずの操車場の拡張をしなければならない。ところがその附近はかなり密集した商店地帯でありまして拡張のための買収に非常にこれは手間がとれる。通常の例から言
つて、操車場の拡張のために土地を買収する期間というものは、一年から一年半はかかる。恐らく普通に行けば、一年半はかかるであろう。
如何に無理して急いでも一年は十分かかる、こういうふうな鉄道当局の話であります。又それに要する費用というものが二億ぐらいかかる。これは当然電源開発のほうに負担がかかるわけであります。そういう費用の点は別にいたしましても、仮に買収に一年かかるというと、これから早速始めましても来年の春を過ぎるということになるとセメントの最
需要期の来年の春以後、夏にかかります、この時期に対しまして操車場が間に合わんということになりますと工事の進捗が
相当心配になる、こういう
ような点がその後判明したわけであります。大体今日までの
調査の結果はこの
程度でございまして、新
大臣就任以後極めて簡単に
只今までの経過を申上げまして御報告申上げておきますが、この取扱につきましては、なおもう少し慎重に
研究した上でやるという
ように
大臣は申されております。
事務当局として申上げる点はそれだけでございます。