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1953-09-10 第16回国会 参議院 通商産業委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年九月十日(木曜日)    午前十時二十七分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     中川 以良君    理事            松平 勇雄君            海野 三朗君    委員            酒井 利雄君            豊田 雅孝君            西田 隆男君            藤田  進君            小松 正雄君            武藤 常介君            團  伊能君            白川 一雄君   委員外議員            小野 義夫君   説明員    通商産業省軽工    業局化学肥料部    長       柿手 操六君   参考人    日本硫安工業協    会副会長    大仲斎太郎君    宇部興産株式会    社常務     水野 一夫君    全国購買農業協    同組合連合会専    務理事     島田日出夫君    全国肥料商業組    合連合会会長  鷲見 保祐君    全国農業委員会    協議会会長   内田秀五郎君    東京貿易株式会    社専務取締役  藤野忠次郎君    全国農業委員会    協議会農政部長 嶋津  猛君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨  時措置法案内閣送付) ○通商及び産業一般に関する調査の件  (臨時硫安需給安定法案に関する  件)   —————————————
  2. 中川以良

    委員長中川以良君) それでは只今より通商産業委員会を開きます。  本日は公報を以て御通知申上げました通り硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案並びにこれと密接不可分関係でございます臨時硫安需給安定法案議題といたします。御承知のごとく、両法案が去る十六国会末期提案をされまして、これを継続審議に持込みました際に皆様とお申合せをいたしまして、適当の機会に両法案に対して関係業者の代表的御意見を承わるべきことを定めたのでございます。その人選につきましては委員長に御一任を願つておりましたので、本日ここに日本硫安工業協会会長大仲斎太郎君、宇部興産株式会社常務水野一夫君、全国購買農業協同組合連合会専務理事島田日出夫君、全国肥料商業組合連合会会長鷲見保祐君、全国農業委員会協議会会長内田秀五郎君、東京貿易株式会社専務理事藤野忠次郎君をお呼びいたしましたが、以上の方々を参考人として御意見を聴くことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中川以良

    委員長中川以良君) それではこれから御意見の開陳を願いたいと存じます。本日は委員諸君には特に閉会中御出席を賜わりまして有難うございました。  なおこの際に本日御出席願いました参考人皆様方に一言御挨拶を申上げます。只今も申述べました通り議題になつております両法案は目下両院各委員会におきまして継続審議中のものでございます。これは恐らく来るべき臨時国会においては成るべく速かに結論を出さなければならないと存じております次第でございます。当委員会といたしましては、かねて硫安問題が一つの大きな政治問題といたしまして大きく取上げられております経緯に鑑みまして、今回の両法案がこれを解決をいたしますところの一つの立派な結論と相成りますることを念願をいたしまして特に深い関心を寄せまして、飽くまで参議院らしい公正な立場で以て審議をいたしたいと存じておる次第でございます。本日はどうぞ皆様方この機会にかような御見地の下に忌憚のない名業界の御意見をお漏らし賜わりまして、どうか今後この両法案審議をいたしまする上に最もよき示唆御鞭撻をお与え賜わりたいと存じまする次第であります。ここに先ず本日の御出席に対しまして厚く御礼を申上げますると共にお願いをいたしまする次第でございます。有難うございました。  それでは最初に先ず日本硫安工業協会会長大仲斎太郎君よりお話を承わります。
  4. 大仲斎太郎

    参考人大仲斎太郎君) 私は硫安工業協会の副会長を勤めております大仲斎太郎でございます。肥料問題、特に硫安の問題についてなかなかやかましい議論のときに我々業界意見をお聞き取り下さる機会を与えて頂いたとを厚く御礼申上げる次第であります。御承知通り硫安工業界は今では皆さんのお蔭によりまして食糧増産確保のための国内需要量に対しては全部充足の使命を完全に果せるようになつて、更に大体年間五十万トンばかりの輸出を可能とするまでに生産が上つて来ておるのでありますが、我が国輸出産業のうちにおいての地位としても最近著しくその重要度を加えて来たように私実は感じておるのであります。硫安輸出の伸張はいわゆる我が国自立経済達成のために寄与するのみでもありませず、生産増加に伴う操業度上昇による生産コストの低減と、それによつて国内への低廉な品物が供給できるということが可能になつたのであります。こういう工合硫安業界としてはあらゆる手段を尽してその市場確保或いは開拓に努め、なお且つ安い肥料国内供給することに努めて来ておるのであります。併し御承知通りに、昨二十七年の而もその後期においては、西欧諸国の窒素肥料生産が非常に大きく増大されたということと、それから海洋運賃の急落などで、東南アジア地域における国際市価の急激な暴落によつて我が国硫安輸出というものは極めて困難な状況に陥つたのであります。これを例にとつて見ますれば、昨年の三月には七十九ドル五十セント、これは台湾に契約したのですが、七十九ドル五十セントのものが六月には六十九ドル、八月には六十五ドル、十一月には四十六ドル、これはインドでございまするが、こういう工合に下落したのであります。最近多少落ちついたとは言いながら、この六月頃までは五十一ドルくらいから、或いは民貿によつては朝鮮などは六十ドルというものもありますけれども、大口はやはり五十ドルくらいでおつたのであります。極く最近に台湾に二十五万トン、五十六ドル八十八セントという成約ができましたが、これは今の国際市場から見れば三割も高い契約であります。無論これはオープン・アカウントという関係もあつて我々も随分長い間苦労をしてやつて来たものであります。  ところがここに問題となるのは、内地農民諸君から国内に高く売つて海外に安く売るという、どうも合点が行かない、同じ値段にしたらいいんじやないかということが一つと、それから国内へ高く売りながら外国へ安く売つておる、外国で安くなつたものをその損失国内に転嫁してはいけない、こういう二つの大きな問題が取上げられて来ておるのであります。そこで輸出という問題はどうしても国際的な競争に対処しなければならないものでありますが、これはまあ政治的とか何とかいうような問題じやないので、これにはコストを下げる以外には何もない。コストを如何なることをしてでも下げなければならん。ところが下げるについては今のような日本状態では抜本的の方策を講じてもらわなければならん、こういうことに相成るのであります。  そこでコストを下げなければならないという問題は一体どこにあるのか、こういうことになつて来ると、外国に比してコストの高い主なる原因というものは、原料が高い、いわゆる石炭、コークス、硫化鉱電気、こういう原料面が高いということと、それから金利が高い、まあ大体においてこの二つに尽きるのであります。無論近代化の遅れておる点もこれも附加えなければならないと思いますが、この三点について何とか考慮しなければならん。  そこで私どもは大体これをどうしたらいいかということで、低金利の金を二百三億円借りてそれによつて外国との差を縮めなければならない。外国との差はどれだけあるかということははつきりしたことはよくわからないけれども、大体において十五、六ドル、そろばんのとりようによつては二十ドルくらいという差があるのでありますが、ここに我々が二百三億円の合理化資金を投じてすべての合理化をやるということと、それから石炭がいわゆる竪坑によつて二割程度安くなるということと、それから電力の開発によつて電力が高くなつてもなお且つそれによる電力の配当が多くなつて操業度が高くなる、そのことと、それから金利を我々はまあ大体五分くらいの低利にしてもらつたらどうだという話もあるけれども、七分なり五分なりに下げてもらうということと、それから税金の問題を我々に緩和してもらう、こういうことを総合するというと大体において外国との太刀打ができるまでにコストを下げ得る自信を持つておるのであります。そこでそのことも政府にまあ要望しておるわけであります。  一方において外国の損を内地に転嫁しないということについては、これは貿易面とそれから国内消費というものを分離して考えて頂かなければどうしてもいかんじやないか。如何に我々が損失内地に転嫁しないといいながら、やはり一緒におつてはそれがはつきり農民にわかつて頂けない。それには特殊の輸出会社というものをこしらえてこれをすつかり分離してしまう。そのことはただに農民諸君に安心を与えるのみならず、外国に対して今までちりちりばらばらに引合をしている関係上、どうもはつきりした一番最上の買手を見つけるのに非常に苦労をする、ときと、場合によつては非常にかけ引にものる。どうしてもこれは一本で外国に当る。買うほうも外国は一本、例えば台湾のごときは政府が一本で買つて来るという場合にも、各社がまちまちに今のような工合でやつていると、どうしても最低値段に線を引張られて売らなければならないようになる。そこをチャンネルを一本にして日本として外国に当るということになればそこによつて損失どもばらばらよりは相当少くなるというように考えますので、この特別会社を是非こしらえて頂きたい、こういうことを我々は今までも希望しているわけであります。  今硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案が提出されまして本会でも御審議を願つておるのでありますが、どうかそういう意味において我々はこの法案の無事通過して一日も早く我々に運用を任して頂くということのできることを切望する次第であります。  御承知通りに一方における臨時硫安需給安定法案は、今私が概略申述べた通り内地における需給の安定と価格の公正なる安定という両方面が盛られておりまして、国内で要る数量優的先確保する、その上にその大体一割くらいのところを今度の九州とかああいう工合に特別の災害とか突発的の需要に応じてそれも確保する、なお且つ食糧増産農業品増産分に対する見込数量確保する、要するに十二分の国内数量確保し、更にその値段においてはコストを調べて、そのコストを適当なコストで以て最高額をきめる、それには権威ある委員会で以てそれを審議してきめる。こういうことになつておるのでありますから、国内としてはもう数量においても値段においても何ら不安のあるようなことはないと存じます。こういう意味においてこの法案も我々としては無修正のまま通過することを切望しておるわけであります。  この両法案の通過によつて我々硫安工業も大きな今まで以上の光明を持つてますます発展して、世界にどんどん増加して行く肥料消費に対しても日本もこれだけの問題にとどまらずに、それに応じて供給も殖やして行きたい、こういう工合に念願しているわけであります。  なお後刻皆様からの御質疑に対しては詳細にお答え申上げたいと思いますが、我々の今考えておること、なお且つ希望しておることを概略申上げた次第であります。
  5. 中川以良

    委員長中川以良君) それでは引続きまして、次に全国農業委員会協議会内田会長お願いいたします。
  6. 内田秀五郎

    参考人内田秀五郎君) 私はお話に対しまして基本的の問題と、価格の問題、それから需給の問題、この三つに分けて考えておるところを申上げて見たいと、こう思うのであります。先ほど大仲さんからお話のありましたように、どうしても硫安肥料、即ち化学肥料なるものは食糧増産上欠くべからざるものであるということは言を待たないところでありますのですが、ただ現在の状態でありますと、農民立場になつて考えますと国内肥料価格が非常に高いということが何としても了解に苦しむところであるのでありますが、それに反しまして従来のやり方とすれば外国輸出いたします肥料というものは安いということから、まあ今回議会方面におきましても如何にしたらば農民に使いやすくなるかということが中心となつてこの二法案が出て御心配を頂いておるものであろう、こう思うのであります。  これを考えまするときに、日本生産コストがすべてに高く上つてこういう結果になる、併し外国肥料は安いのだというようなことに相成りますると、これはどうしても外国肥料をそういうような場合には入れたらどうか、安い肥料を入れたらどうかということが、これが素人の私どもの直接農民としての考えでありますけれどもできることならばそういうふうにいたしたならば内地方面においても安いものが使えるのじやないか、こんなふうに、これは勝手の考えかは知れませんけれども、そういうふうなことも考えられるのであります。  それからもう一つには、肥料価格というものは業者計算によりまして生産費基準として大抵決定されておるものでありますが、農民生産する作物即ち主なるものは主食の米であります、その米の価格というものは、現在も統制下にありまして、これはまあいろいろのバリテイ計算とか何とかいう下にやつては下さるけれども最低方面拾つてバリテイにあげておるものでありまするのであるからして、これと即ち硫安生産費基準としたところの価格とは釣合いがとれないというふうに考えておりまするので、これらの点に対しても、一方的の価格政府はつまり米価のごときものには決定しておる、こういう時代でありますからして、これらに対しまして何らかの方法一つ考えられなければならないのじやないか、こんなようなふうに存ずるのであります。  もう一つ、これはまあ百姓というものがいくじのない仕事の関係にはありまするけれども、まあこれは肥料の問題でありまするから、肥料工業を問題として考えて見ますると、これらの肥料工業方面においては拡張であるとか再生産をするためのすべての資金蓄積というものはこれは定められて大抵いずれの会社にも蓄積ができておる、こういうことでありますが、農家の経済というものはそんなどころじやない、その日その日がやつて行けない、こういうようなことで、これは全般とは言えませんけれども、多くは、そういうような米作地帯におきましてはそういうところが多いのでありまするので、これらの点で、農業経営の上に非常に、高い肥料使つて統制の米のごときものをやられておるということが、非常に苦しい点が一つあるのであります。  それから今度の価格の点でありますが、価格を決定いたしますところの基準というものは、生産者や或いは消費者の実際了解に苦しむようなことに考えられますので、極めて価格決定というものは不明瞭な位置に置かれておるというようなことも、これは私ども考えとしてはそんなふうに思われるのでありまして、これらの関係に対しまして、どうか徹底的にこれらを究明いたしまして、業者は御協力をなすつておることは只今お話のありましたことでありましようけれども、又政府といたしましても強力な具体的な方策を立てて頂いて、そうして価格の点に対しても十分な一つ御配慮を願いたい、こういうように考えておるのであります。  それからその次には硫安工業合理化というようなことでありまして、これはまあコスト引下げでありますが、これは先ほど来もお話のありましたように、即ちいろいろな生産資材というものが集まつて生産コストも、そこで計算して来られるのでありますからして、これに要するところの電気であるとか、或いは石炭であるとかいうようなすべての問題のいろいろな原料というものは、総合的にやつぱりこれらは引下げ計画を立てて頂いてこれを実施して頂かなければ、なかなかそれが実現は困難であろう、こんなふうに思います。それからもう一つには、価格の点に対して国際価格におけるところの貿易上の競争ですが、貿易上の競争は、今輸出においても随分論じられておるところであります。これらに対しまして、先ず輸出数量ですね、それから価格等について、すつきりしたところの見通しがつくようなことにして頂きましたらば、これはいいのじやないかと思うのでありますが、ただ安いところがあればそれに競争するためにこうしなくちやならん、ああしなくちやならんというような関係にありまして、ただ恐れますことは、そのしわ寄せが少しでも多く行くとすれば、やつぱりこれは公定ではきめられるとはいうようなものの、どうしても内需に及ぶ関係が起るという憂いがないとも考えられないと思うのであります。  それからもう一つ内需関係でありますが、内需はどうしても優先的にして頂きたいということは、これは日頃我々消費者の側のお願いをいたしておりまする問題でありまするからして、こういう場合には業者方面におきましては、一つ輸出会社に何らかの形で以て、実際上は内需の優先というものを破壊されないように、一つ心がけて頂かなければならない、そんなふうに考えておりまするのであります。  それからまあ需給計画でありますが、需給計画によりまして内需需給量は、消費実績と、或いは農業生産事情等を十分に勘案してきめられるようでありますが、この食糧増産計画は、実際から行くと何を基準にして事実するのかというようなことを考えますときには、これはまあ一例でありますけれども一つには、農林省はいろいろの計画を立てる、大蔵省のほうじやその計画は足らない予算で以て縛られてしまう、縮まつてしまう、そういうようなことになりますと、どこが基準になつておるかわからない。従つて変動を及ぼすというような結果も起るのではないかというようなことが実は心配になるのであります。こういうような関係から考えますと、そこでまあ輸出会社というものができるということは、これに対しては、その金融の処置、運営方法とかによつて赤字が生じる、その赤字処理でありますが、赤字処理なんかはこれはまあいずれその会社がおやりになるということのようには聞き及んでおるのでありますが、これらのしわ寄せが又国内価格に転嫁して来るということもないのではないかというようなまあ暗示があるのであります。今度の法案といたしましては、私ども需給法案はとにかくとして、この会社法案提出法案でありますが、この提案を通じまして考えて見ますると内需を優先的に確保して企業合理化によつて価格引下げてもらう、そうして輸出の促進を図るということ、この三つの問題でありますからして、この趣旨に対しましては根本的に了解ができるものでありますけれども、実際これらの目的を達成いたします上には、価格においても農産物関係等との釣合いも余り……まあ今後どういうふうになるか知れませんが、現在の状態で行きまして二百三億とかいう金も五カ年間の計画では徐々に下るというようなお話は、運営の上で聞いてはおりまするけれども、少し企業合理化近代化等の総合的な点が欠けているのではないか。こういう点を一つ輸出会社を作りまする上には明瞭にされまして、両案の成立を期待いたしておるようなわけであります。こういふうに考えますと、どうもひがみかは知りませんが、農民の期待というものは、余り今度の法案において認められることが少いのじやないか。ただ扱い方としては大して変つたことはない。輸出会社ができるということで、あとの扱い方というものには、私ども法案内容はよくわからないのでありますけれども、そんなふうに考えておりまするので、十分なる御検討も頂きまして、そうして両案の成立お願いしたい、こんなふうには考えておりますので、簡単でありますけれども……。
  7. 中川以良

    委員長中川以良君) 有難うございました。  それでは次に全国購買農業協同組合連合会島田さんにお願いいたします。
  8. 島田日出夫

    参考人島田日出夫君) 先ほど委員長からお話のありましたように、二つ法案は、これは密接不可分な問題でありまするから、まぜこぜにはなりますが、両方について考えていることを申上げます。  そこで、法案内容お話をする前に、この両法案を提出せざるを得なくなつたその経過について、是非皆さんの御考慮をお願いしたいと思うのであります。それは、先ほど大仲さんからもお話がございましたように、問題は、輸出された硫安値段国内価格から見て非常に安いということから問題が起りまして、只今内田さんからもお話がありましたように、農民のほうの側からの希望は、輸出する価格日本農民にも売つてくれ。それができなければ、安い硫安外国から輸入するのが当然じやないかというのが農民意見でありまして、内田さんの主宰されておりまする農業委員会におきましても、それからそのほかの団体を網羅しております中央農業会議でもしばしば決議をいたしまして、全購連に対しましても、国内価格輸出価格まで引下げるように努力をせよという強い注文が幾度もされているのであります。なおこれは団体の間では意見相違もございますが、直ちに輸出価格で売れと言つたところで、これは無理な注文であるから、それを現実に果すためには、肥料メーカーなり或いは消費者なりに国家補給金を出しても安い価格にすべきであるという議論が、団体の間では、意見相違もありまするが、そういう意見を出している農業団体もあるのであります。なおこの価格を安くするためには、国が、或いは電力供給を十分にしてやるとか、或いは石炭値段を安くするとか、或いは政府資金を十分に硫安工業に投入して合理化を進めてもらいたいという希望は同時にあるのであります。要するに農民希望するところは、一日も早く日本硫安工業国際水準に到達すること、換言すれば生産費を安くして国際水準に到達してもらいたいというのが農民希望であります。その結果この二つ法案が出て参つたというのでありまするが、消費者立場から言えば、第一に問題になるのは価格であります。この価格は御承知肥料対策委員会で論議をいたしました時分には、価格の構成の要素になるものは、生産費農産物価格国際価格水準という、三つ要素が入つてつたのであります。その結果合理化を進めて年々合理化係数を掛けて行くような、低下して行く価格をとるようにせざるを得ないのじやないかというのが、肥料対策委員会では論議された結論に相成つておると思いますが、法案では、生産費、それから農産物価格、それには経済事情を参酌してという肥料対策委員会の当時の議論よりはやや不明瞭な形になつて法案に現われている点は、これは農民としてもつと明確にして頂きたいという点が要望の一つであります。それから合理化に関する問題でありますが、先ほど申上げましたように、これは日本農民といえども日本窒素工業を潰滅してしまう、立つて行かないということを望んでいるわけではございませんから、国家においても十分な施策は望ましい。ただそのときに、輸出に関連いたしまして、この合理化及び輸出調整措置法案の中での硫安輸出会社ということが、農民の間では非常な問題になつているのであります。あの法案の何条かによりますと、硫安輸出会社に対しましては、私的独占の禁止及び公正取引確保に関する法律の適用除外という条項が入つております。只今大仲さんのほうからのお話にもございまするように、硫安各社は、或いは微粉炭法を採用するとか、或いは硫安でなく尿素の形に持つて行くとか、それぞれ努力をなさつていられることは多といたすのでありますが、輸出カルテルというような強固なものを作られますと、輸出に向つてカルテルを作るということは、国内に向つて国内カルテルを強化するということに当然ならざるを得ないのではないか。そんなことで七月二十九日にも、各農業団体を網羅しております中央農業会が声明を発しまして、こういうような強固なカルテルを作られるということになりますと、農民希望しております合理化という点に行くことに、より道が遠くなりはしないか。この強固なカルテルの上で、而も硫安国内価格が主として生産費を基礎として作られるということに相成りますると、当然各会社努力して進むべき真摯な努力が阻まれはしないか。私的独占の上に、従来の生産費の上にあぐらをかいて行くようなことになりはしないか。そうすれば、一方において、西欧においては技術がどんどん進むのに対しまして、日本窒素工業の進歩というものは、それについて行けなくなる虞れがあるのではないか。従いまして国際水準に近付くという目的に、非常に到達しにくいことになりはしないか。こういう見解から、七月二十九日にそういうような声明を出しております。先ほど申上げましたように、農民の率直な希望としては、そういうように価格が下らないならば、外国硫安を入れたらよかろうという議論のございますことは、今申した通りであります。又この国会におきましても外安を輸入すべしという議論もあつたようでありますし、我々の団体に対しましてもそういうようなふうに全購連は努力するのが当然じやないか、全量とは言わなくても、或る程度のものは輸入に努むべきだということを申しておられるかたが相当あるのであります。併し先ほど申上げましたように、農民といえども、決して日本窒素工業の確立を望んでおらんわけではありませんが、その前に、率直に申せば、もう少し淘汰すべきものが淘汰されていいのじやないか。優勝劣敗の原則がもう少し働いていいのじやないか。それを安易に措置するような輸出会社というものについては、やはり困るのだというのが率直な希望であります。この両法案成立いたしますると、今まで日本硫安界で問題になつておりました国際価格というものは、一応遮断されるわけであります。今まで輸出価格で売つてくれと言つた農民の声は、この二法案成立によりまして、国内価格は、この生産費を基礎にしたものによつてきめられる国際価格と一応遮断される。それから第二には、この二法案成立によりまして、今までと違いまして余剰の生産量は随時に相当の量が、今までのように一件々々輸出政府の許可というのでなく、相当のものが随意に出て行くのだ。今までよりは商売としては非常に楽に出て行くのだ。すでにこの二つの点で硫安メーカーにはこの二法案成立によつて寄与するところが多いのだ。すでに御承知のように台湾輸出もこういう輸出会社がなくても二十五万トンの輸出というものが現に行われておるのだ。そうすれば問題は合理化を進めるという観点から言つて輸出会社というものはなくても個々の会社の御努力によつて輸出ができるのじやなかろうか。こういうのが農民希望であります。  以上大体農民側の二法案に対する大きな観点からの希望を申上げた次第であります。
  9. 中川以良

    委員長中川以良君) それでは次に宇部興産株式会社の水野常務にお願いいたします。
  10. 水野一夫

    参考人水野一夫君) 私宇部興産の水野であります。私いろいろな点からすでにお話がございましたので、輸出会社を作らなければいけないということについて特に申上げて見たいと思うのであります。  私どもここ一年半ばかり輸出のことにつきまして実際に苦労をいたしました者から見まするというと、日本の国としては貿易の振興対策というものが殆んどゼロ、極端に言えばむしろマイナスの面などがあるという感じがするのであります。輸出振興ということが最近特に大きく取げられて参つておるのでありますが、併しながら実際の面では不幸にして何らその対策がない。独占禁止法というようなものがあつてなかなか思うようにやれない。輸出については又許可制であつて適時適期に輸出がやれないというような手械足枷のほうはあるのでありますが、積極的な振興策、助成策というものは何らできておらない。こういうことを痛切に感じて来ておるのであります。この頃欧米各国をお廻りになつてお帰りになつたかたがたがいろいろな見解をお漏らしになつておられますが、最近国民経済研究協会の理事長稲葉秀三さんが外へ出て見て、日本貿易政策というものは何にもない、めちやちやであるということを強調しておられる。外国では日本から物を買おうと思えばじつとさえしていれば自分で値段をだんだんだんだん下げて来るから何にも自分のほうから働きかける必要はない。じつとしていればいい。日本に売るものはこれもじつとしていれば競上げて来る。黙つて見ていさえすればいいということを言つておられるのであります。外を廻つて貿易というものを見て来られた、私外には出ませんが、うちにおつて仕事をやつておるものの感じと全然同じなんであります。そこでこの輸出会社というものがどうして必要かと申しますると、今まで二万トンの引合いがある、五万トンの引合いがある、それで通産省へ駆けつける農林省へ駆けつけて御相談をして、そうして内諾を得るまでに相当の日数がかかります。外国では輸出の窓口が或る国においては一本、一本でなくても相当にまとまつておるのであります。非常に機動的なやり方をいたします。我々のほうは大勢が同じことを手間ひまかけてやつておりますものでとても商売の体をなさない。初めから商売の体をなしておらないのであります。不幸にして昨年の暮インドの輸出は極端な値段に下つたのでありますが、これもやはり国際価格が下つたためにああいう安値に追い込まれたのでありますが、併しながら商売下手の点も大いに手伝つているのであります。こういう会社を作りまして内需というものを先ず優先的に考えて年間の輸出余力を算定して、そうして大体それに対しては許可が与えられるものという見通しで適時に適所へ輸出ができるということになりますれば、それだけでも数ドルの利益は出て来ると考えるのであります。今国際価格と、日本生産費から見た価格と十四、五ドルの差は先ずあると思うのでありますが、その差を縮めるのに合理化によるあれは一応七ドルぐらいのものが出ておりますから、この半分は合理化の遂行によつて縮め得る、それからその他のこまごましたいろいろな対策から三ドルや四ドルのものは無論出て来ると思うのであります。それに持つて来てもう少しうまい商売をやるという点からも三ドルや四ドルは浮いて来るのじやないか。現に台湾との取引も一番悪かつたときから見ますると大分よくなつて来ております。これも長期の輸出契約ができる態勢になつて来たからまあできたことであります。これが輸出会社というようなはつきりした形になりますればもつともつとうまく行くと思うのであります。これは商売をやります上から、どうしてもそういう一元的で機動的なやり方をしなければ外国競争はできないということであります。これは併し同時に国内との問題がございますので、当分の間出血輸出も続けて行かなければなりませんので、その損失国内に転嫁しない、それを赤字としてそこに一応棚上げしておくということが、消費者大衆から見まするというとはつきりと数字の上でおわかりになわけでありまするので、今まで言われておりまする、出血の国内転嫁がいかないと言われることをこの輸出会社設立によつて現実にそれを、その要望に応えることになると信ずるのであります。この輸出会社はできるだけ早くこれをやつて頂かないというと、まあ実際の商売は毎日あるわけでありますので、これが前国会で成立いたさなかつたことは私どもとしては非常に残念であり、現実に国家的に見ても大きな損失であつたと思うのであります。来たるべき臨時国会では是非とも速かにこの法案成立いたしますように皆様の特別の御配慮をお願い申上げる次第であります。又何か御意見、御質問がございましたらお答えを申上げます。
  11. 中川以良

    委員長中川以良君) 有難うございました。  それでは次に東京貿易株式会社の藤野専務にお願いいたします。
  12. 藤野忠次郎

    参考人藤野忠次郎君) 私東京貿易の藤野であります。  一体いろいろの肥料のうち硫安だけが、非常にこれから資金と労力と時間をかけて合理化し、更に又増産するというふうな価値があるものかどうかということも一つ基本的にまあ考えて見なければならん問題だろうと思うのであります。それには硫安に対するそういつた裏打ちがあるかどうか。まあ内外の恒久的の需要が期待されるかどうかということも当然考えなければならんことだと思うのですが、大体先ず国内的には価格の問題はとにかくとしまして、相当数現状ではもう余力があるということになつておりますが、他方国際的に見ますと御承知のように今硫安数量的に相当余つているというのはヨーロツパと南米と、この二つだけであります。尤も南米のほうは御承知のように硫安が余つているという、窒素肥料として余つているというだけでありますが、その窒素肥料の基本は例のチリーから出る天然硝石ですから、今ここに言うアンモニアからの窒素とちよつと性質が違う。同じく窒素肥料でありますが性質が多少違いますが、これがあるために南米は余つているのですが、他国に対して、ほかの世界の地域に対して、殊にアジア地域に対してまで輸出して来るだけの余力なり、又価格の余裕は南米からは原則的にない。これに反しましてヨーロッパのほうは相当、少くとも大体百二、三十万トンは自国の需要を満たした上に輸出余力がある、こういう数字が先ほど来からちよいちよいお話なつおられます日本との競争相手になるわけでして、これが硫安が非常に足りないアジア全体の市場に向つて売向つて来る、これと競争するために日本から外国へは出血輸出と、こういうことになつて現われて来ておることは御承知通りでありますが、大体少くともこのアジア地域全体では四百万トンぐらいの硫安を必要とするのですが、これに対して二百七、八十万トンしか供給がありませんから、少くともここでは百二、三十万トンは足りない。そうして見ますと価格の問題をさておきますと、数量的にはどうしてもこれは硫安というものはここで日本全体から見ますと大いに合理化もし、又増産もし、そうしてこの足らないアジア地域に向つて輸出することが好ましいことではないか。勿論その場合に内需に先ず向けて豊富低廉、而も比較的安定性のある価格を以て絶えずこれに供給し続けるということを前提にしまして、そうして余力を駆つてこの足らない近東アジアに向つて出せば、少くとも全体から見ますと貴重なる外貨の半分は現状ではまあ食うために使つているという悲しい我が国の現状にとつて輸出振興にもなりますし、かたがた商品の性質上これは又それほど原材料その他を外国へ仰がなくても日本国内で賄い得る部分が非常に多い、こういう点から考えましても、これは全体から見ますとどうしても大いに合理化をし、増産をする、こういうことが望ましいことと思われます。その場合に特定の人に非常に犠牲が及ぶということではなかなか話が進まないと思いますが、先ほど来から問題になつておりまするし、又この法案の骨子でもあると思うのですが、輸出数量内需と一応切離して、それから起つて来る損益を非常に明確にさせる、そうして内需にこのしわを寄せない、こういう建前をはつきりさした上でやつて行くということがいいことではないかと、かようにまあ考えておる次第であります。  ただその方法として一つここに輸出会社という独特の日本硫安独占権を持つた新らしい会社を作つてつて行くということですが、この運営、仮にこれが通過してそういつた会社ができた場合のことにつきましては一言私としては又意見があるわけであります。現状では輸出の対象として一番大きいのは勿論朝鮮、台湾ですが、そのほかフィリピン、それからインドネシア、インドと近東にかけて相当あるわけであります。こう言つている間でもしよつちゆう引合いがあるわけですが、この輸出会社なるものが全部輸出の実務をみずからやるかどうかという運営方法につきましては、これは非常に疑問があると思います。と申しますのは、大体その独占会社は一定期間の、初めから存続期間を予定されているのです。硫安の工業化が進み、原価が国際価格に鞘寄せして行く、そうして内需のほうにも一般消費者大衆に不必要な懸念をかけないようなことが達成された場合には当然解消する、こういう前提の会社だと思われるのですが、そういうことになつて来ますと、初めから会社の存続期間に一定の期間を設けるわけですから、なかなかみずから相当の人を雇つて、それから全部海外との引合いその他を会社自体がみずからやるというにしても相当な経費がかかる、人員も集めなければならないと思われますから、そうすると折角合理化をやつてできるだけ出血を少くしながら実績を挙げて行こうという本来の目的に却つて反することになりはしないか。一方たとい国内的に硫安輸出の独占権をとつても、必ずしも近頃の貿易は御承知のように一本の片道だけでは済まされない場合が多いのです。バーターとかスイッチとか、こういう複雑な形態になつて来ておりますから、硫安以外に別の商品の輸入の独占権もこれに附随して行かなければいけないのじやないか。かたがた、若しこの硫安会社だけが硫安貿易をやるということになりますと、今までやつておつた各貿易会社は、海外との特殊関係とか、現に引合つている関係をここに一定期間中断されることになりまして、後日これが硫安会社が解消して、輸出産業としてこれを大いにやつて行かなければならんという場合に、大多数の貿易商社が数カ年の不自然に空白を作つた、そのためにその空白を取返すことがなかなかできない。こういうことも懸念されるわけであります。それから国内で高く売つて外国で安く売るのはいかんじやないか、こういうお話もありましたが、これらは大体十分考慮された上でのこういう新らしい機関でありますから、輸出会社を作るまでの経過は結構だと思うのですか、その会社ができたあとの運営方法については只今申上げましたようないろいろ利害得失もできることと思いますので、運営はよほど慎重を期さなければならんと思います。今硫安輸出のこととかそういうことをここで論議しているわけですが、私ども三十年くらい硫安をやつておりますが、三十年くらい前には殆んど御承知のように日本硫安というものは全然なくて、主としてドイツとか、それから英国、カナダ、アメリカ、こういうところから全部入つておつたものが、逆に今日こういうふうな、見方によつては隆盛の域に達したということは結構なことだろうと思われる次第であります。そうすると今は足らないと予定されておりますアジア地域でも、漸次自分で、日本が曾つてやつたと同じように、みずから工場を建設して自分でどんどん賄えるようになりはしないかということも考えられます。併し日本の場合と、これらインドから近東にかけての実情とは随分違うと思います。従つて海外市場に関する限り百万トンやそこら、ヨーロツパとの競争は勿論期待しなければなりませんが、恒久的性質を持つている需要先だと考えられます。ほかにいろいろこまごました点もございましようが、大体私としては以上であります。
  13. 中川以良

    委員長中川以良君) 有難うございました。  それでは最後に全国肥料商業組合連合会の鷲見会長お願いいたします。
  14. 鷲見保祐

    参考人鷲見保祐君) 私は主として国内販売の、而も肥料商系統の立場から申上げたいと思います。  その前に簡単でありまするが、硫安日本に入りましたのは、明治二十九年に濠洲から僅かに五トン入つております。当時茶袋などに入れて各農村に宣伝したのだそうでありまして、爾来輸入硫安を以て国内消費というものは満たされておつたのでありまするが、それが日本で製造されるようになりました次第でありまして、漸次この傾向が進んで参りまして、日本硫安工業というものが発達した理由は、輸入より日本の工業のほうが有利であるという点が主な原因だつたと思う。それは電気の問題と、硫化鉱日本にはたくさんありまして、硫酸の問題と、この二つの問題が有利な生産工業として立つて行ける大きな理由であつたろうと思うのであります。従いまして輸入が漸次抑えられて国内の製品に変つて参りましたのでありますが、その過程におきましては、ドイツとか英国などの強敵と、日本内地においては相当販売戦が展開されまして、これが価格操作を非常に変動さしておつたのであります。輸入品と国内商品とのいろいろな事情から、需給にアンバランスを生じたりいたしましたために、価格に非常な変動が起きておりまして、取扱う者も、生産者消費者も、価格を見極める点において非常に苦労したのでありまするが、それも漸次国内生産増産されまして、輸入が杜絶えてしまうという立場で、漸く国内の製品が消費を満たされるという段階に到達したのはほんの戦前、暫らく前のことでありまして、ここにおきまして消費生産とが一つの何らかの形において価格操作、需給操作ができる段階に至つておるのであります。かような意味合いにおきまして私などは長い間硫安需要価格では悩み抜いた結果、今日の情勢のように漸次この悩みが解消されて参りまして、最後にこの法案がいろいろの線から難関もありましようけれども、一応安定した線を見出したわけでありますので、できるならばこの原案を中心にして、皆さんの御審議によりまして安定をさして頂くようにお願いいたしたいと思うのであります。ただこの中に硫安以外のアンモニア系窒素肥料もこの法案の対象とするようなふうになつておりまするが、でき得るならば私のほうは只今も申上げましたような工合で、長い間硫安問題が悩み抜いた最後の結論が出るので、新らしく生れて参りまするアンモニア系の肥料はこれからの段階に入るのでありますからかような新らしく発展するものは区別して頂いて第二条にありまするアンモニアに成るべく限定さして頂きたい、かように思う次第でございます。  もう一つは保管と買取りの問題でありますが、これは需給調整が主でありますので価格操作に影響のないようにいたしたいものだと思つております。無論これにはさようになつておりますが、実際の運営におきまして価格操作に買取り、保管された硫安が何らかの動きを見せるということのないようにいたして頂きたい。こういうような意味におきまして、できるならば原案を通過させて頂きたい、かように思つております。
  15. 中川以良

    委員長中川以良君) 有難うございました。  委員の諸君にお諮りいたしますが、ここで一応休憩をいたしまして、午後から再開をいたしまするか、或いはこの際多少食事の時間を延ばしまして、一時頃までかかりましても質疑をして頂きまするか、いずれかに決定をいたしたいと思いますが、如何でございましよう。いろいろ御質問もたくさんあると思いますので、一応御意見を伺いまして決定をいたしたいと思います。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  16. 中川以良

    委員長中川以良君) 速記を始めて。  最初にお諮りをいたしまするが、小野義夫君から委員外発言を求められておりますので、小野君は肥料関係には非常な造詣の深いかたでありますので、委員長はこれをお許しすることにいたします、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 中川以良

    委員長中川以良君) それではさよう決定いたします。  全国農業委員会協議会内田会長は所用があつて御退席になりましたので、代つて嶋津猛農政部長が皆様方に御答弁を申上げることになつておりますが、御承知頂きたいと思います。それでは只今より各参考人から承わりました意見につきましての委員諸君の御質疑をお願いいたします。
  18. 小野義夫

    委員外議員(小野義夫君) 只今参考人の各位からいろいろな御意見を拝聴しまして、いずれの御意見にも多大の尊敬を持つておるもので、ございまして、その個々の項目につきましてはいろいろお尋ねしたい点が多々あると存じますが、実は今日委員長お願い申上げましたのは、私が業界に長くおりますので、むしろ皆様の御意見業者の側に立つてお願いをするような意味においての発言をお許しを願つた意味でありまして、従いまして御質問はこの際私は御遠慮申上げまして、極く簡単に皆様のお邪魔にならんように、五分ほどお許しを願いたいと存じます。  只今鷲見会長から御意見のありました通り、本邦における硫安工業発達の歴史に鑑みまして、実は非常に長い間我が国はこの硫安工業のためには外国の資本と申しますか、商品のために我が国農業というものは全く圧倒された位置に立つておりまして、イギリス、その他ドイツ等の硫安業者のために非常に苦しんでおつたのでありまするが、これを漸く脱却しまして、今まさに反対に外国輸出しようというときに際会いたしまして国内消費者のほうが非常な我々の計算において輸出をするのではないかという御懸念を持たれるということも決して杞憂であるとは考えませんけれども、こういう観点から強く申しまするならば、あらゆる日本の商品がさような意味に相成るであろうと考えるのでございます。でありますから、これは日本が国際経済の一環として立つ以上、仮に多少の一般の消費者が犠牲になりましても、将来は必ずや内国消費に寄与するところがあるのでありますから、この輸出工業を大いに進めて頂きたいということが一点、それから今盛んに国費を傾倒いたしますところの電力の拡充は将来如何なる産業にどういうふうに御使用になる考えか知りませんが、私どもの観点といたしましては、やはり大きな重化学工業が電力消費いたして輸出するのほか途がないのであるということを考えております。この点からも、電力の拡充と相待つて硫安工業その他の軍化学の輸出は非常に国策としてこれを強く打出して行くべきであろうということを考える次第であります。それから日本輸出産業、輸入産業いずれもそうですが、殊に輸出におきまして、戦前におきまして私ども貿易合理化日本商社の合理化が先であるということを盛んに唱えたのでございまして、僅かばかりの輸出商が日本にあるにかかわらず、非常にこれは華僑その他から自由な操縦を受けまして、そうしてその彼らの言うがままに安い値段で、競争して国費を、折角高く売れるものも安く売る、これは言い換えるというと、これは資本家だけの損失でございません。日本の労働のいわゆるダンピングにも相成るのでありまして、この点は自由放任に、自由競争に、外国貿易を任すべきではなかろうという観点を持つております。先ほど輸出に対してのカルテル内地に及ぼす虞れがないか、これは非常に御尤もな御心配でありますが、これは非常に徹底的に、そういうことのないように取締り、これに対しては認可制を以て内地価格の調整とか、或いは生産の制限とか、これらに対しては政府が御関与なさるのがよろしいのでございまするけれども、この輸出を成るべくそのもとにおいて一本化し、そうしてそれをいろいろの人がきまつた価格の中で、各商社が自分の手数料も少くし、或いはその他勉強して頂いて、幾つかの商社が自由な取引を下さるということにおいては差支えないが、その本もとたるところの輸出の一元化というようなことは私はこういう商品では是非とも必要であろうと存じます。いずれにいたしましても、この問題は非常に長い歴史を持つた産業であり、今後非常に発達を促して、相成るべくは今二百五十億になんなんとするところのこのアジア諸地域の市場に対して日本が独占とまで行かなくても、殆んど大半、過半以上占めおるところに持つて行くように希望いたすものでありまして、私はこの委員会委員でありますれば、これらの御審議にも伺つて述べるところでありますけれども、今日は業者のかたがたも、お前も出て来て一緒に我々の立場を述べてくれという御要望もありましたので、甚だ皆様に御迷惑でございましたけれども以上申上げました。
  19. 中川以良

    委員長中川以良君) ちよつと今小野さんの御発言に関連いたしまして、私より一応これは政府当局に伺いまして、政府当局の御説明を最初にお願いいたしたいと思いまするが、今日の読売新聞を見ますると、硫安の海外の需要が非常に高まつて参つたということが大きく出ております。西ドイツの硫安の品がすれと世界の硫安需要の増加傾向に伴いまして、最近日本硫安に対しまする海外の引合いが活溌に出て参り、特にここに書いてございますのは、台湾向け二十五万トンのほかに来年の三月までにパキスタン、フィリピン、アルゼンチン、ハワイなどから約三十一万七千トンに上る大量の引合いがあるということを言われております。これに対しまして価格もFOB六十ドルという相当今までにないいい値が出ておる。政府も是非これに対して増産を各製造業者にさして、そうしてこれらに応じたいということを考えていると出ております。殊にこれに対しては九月末から各硫安メーカーに対しまして電力の増配をして、十、十一月分の生産計画数量を三十七万トンの上に更に三万トンの増産をさせるようにする方針であると出ておるのでありまするが、これらの点に関しまして一応最近の海外の需要に対しまして肥料部長から御説明を願いたいと思います。  それからもう一つ伺いたいのは、只今電力の問題が参考人からも、又小野さんからもお話があつたのでありますが、昨年、昭和二十七年度、いわゆる肥料年度の後半期におきまして、政府増産をさせ、而も肥料安定価格を作つて値段を安くさしておりまするが、その際に電力の五分の増配を一応肥料対策委員会等において決定をし、政府もそれを実行すべく大体約束をしておりまするにかかわらず、この春にはその増配が実際は行われていないというようなところが、まあ肥料製造業者といたしましては片手落ちのような感を持つて、今日もなおこれに対しては一部政府に対する不信も私はあるのじやないかと思うのでありまするが、これらの点等について一応一つ政府側から御説明を頂きたいと思います。その上に今度各委員から御質疑を願いたいと思います。
  20. 柿手操六

    説明員柿手操六君) 昨年の丁度この頃から十月、十一月にかけまして相当滞貨ができた。二十七肥料年度、去年の八月から今年の七月末までの年度の見通しでは当時現実に相当の滞貨がありましたし、年間を通ずれば五、六十万トンくらいの輸出をしなければならんだろうというにかかわらず、なかなか輸出はできない、而も非常な出血輸出になるというようなことで、まあ本日御審議を願つておるような法案もできたようなわけであります。そういうふうに非常に滞貨を抱えて始末に困つておるというようなことが又外部にかなり知れまして足下を見すかされたということが現実であろうと思うのでありますが、今年こそは、この二十八肥料年度、この八月から来年の七月末に至る二十八肥料年度は、そのようなことはやはり繰返したくないというような気持がありまして、この五月頃に、本年度やはり五十万程度の輸出をしなければならんのであるから、まあそのうちの相当部分を一つ台湾と長期契約をしてともかくそう慌てた輸出の商売をしないで済むようにしようということが業界でも話が持上りまして、この五月に硫安業者の有志のかたがたが台湾に使節団を送られまして、そうして台湾に出かけまして、いろいろお話をなさつた結果、それが端緒になりまして、この八月の十日でしたか、向うからも本年度に二十五万トン、秋に十四万トン、春に十一万トン、合計二十五万トンを業者の何で一つ買いましようというようなことが話がありまして、その後、取引条件がいろいろありますが、大体まあ妥結に至るというような方向になつてつたのであります。そういうふうにすれば五十万トンの輸出余力があつても、まあそのうち相当部分がそういうふうにきまれば、まあ比較的落ちついてあとの輸出の商売もできるであろう、従つて安定もできるであろうということでそういうことをやつたのでありますが、この二十七肥料年度の最後の数字を取りまとめて見ますというと、案外、前年度に国内輸出は当初考えておつた量以上に二十万トンばかり余計に出たのであります。そのことは結局今年度の繰越量が減つたことになるのでありまして、従つて本年度の輸出余力がそれだけ減つた。台湾から二十五万トン買おうという申出に対して、秋のごときはそれをその通り承知するのさえ幾分困難であるというようなことから、十四万トン秋にくれというのを十二万トンにしてもらいたい、春はその代り十一万トンを十三万トンにいたしますからというようなことで話を進めておるような状況であります。そこで只今委員長の仰せのように非常に皮肉と言えば皮肉なものでありましてもう七月頃から輸出の引合いというものが殆んど杜絶えておつたのでありますが、台湾の二十五万トンの長期契約が新聞等に出始まりますと、それを合図のごとくほうぼうから非常に相当有利な条件で引合いが殺到して来て、その中にはまあ情報程度のものもあります、非常に確実なものもあります、いろいろあるのでありますが、私ども見るところではやはり年内に数万トンは、台湾輸出を十二万トンにいたした以外に相当にいい条件でこういうようないい輸出先に輸出をしたいというようなものがあるのであります。併しながらこの法案を御審議つておる現在におきましては、この年度における需給の見通し等も、この法案通りましてこの法案の趣旨に従つて運用したらどういうことになるかという考えの下に、やはり今から今年度の需給なり輸出の方針等もこの二法案の趣旨に準じて今やるのは政府としてのやはりそれは妥当な措置であろうというふうに考えました。そういうふうに考えまして、やはり大体年間の需要量の一割程度は、これは不測の供給不足或いは不測の需要等のためにやはりリザーヴという考え方を以て需給を見、そうしてその上に輸出余力を算定するということにいたしますというと、現在の生産計画ではそういうふうな非常に有利ないい条件に対して輸出を許して行くということは困難であるという状況に際会いたしましたので、私どもといたしましては年度の初めに一カ年間の電力の割当てをいたしますが、五、六%程度は毎四半期にリザーヴしておりまして、そうして年度の初めにきめたものとの調整をして、各産業に対して割当をいたしておるのであります。第二四半期は非常にこれは殆んど近来稀なる豊水でありまして問題なかつたのでありますが、来る十月一日から十二月までの第三四半期の割当につきまして、そのリザーヴの追加割当てにつきまして、目下通産省で検討いたしておるのでありますが、私どもといたしましてはともかくこういうふうに相当の硫安輸出を手広く開拓いたしておりまして、すでに五十数万トン出しておるわけでありますから、これを一年間といいますか半年でもブランクにするということは将来の輸出市場確保のために非常に残念な問題でありますので、是非とも第三四半期に電力の増配をいたしまして硫安生産計画を増加することにいたしたまして、その計画が立てばそれに見合う輸出の許可をいたして参りたいというふうに考えまして、目下省内で検討いたしております。  それから二十八年度の電力の年度の初めの硫安工業に対する割当の問題でありますが、委員長御指摘の通り肥料対策委員会がこの正月から開かれまして、去年の秋きめました安定帯価格を相当大幅に引下げることを要請されまして、当時硫安工業の側といたしましても、金利引下げ及び五%程度の操業度を増すために必要な電力増配を要望いたしまして、その安定帯価格引下げの要望に応えたのでありますが、まあそういう経緯もありまして、二十八年度の電力の割当につきましては、全体の電力の給供力は余り殖えなかつたのでありますが、硫安はそういう経緯もあつて特に優遇するということから、特別な措置を講じたのであります。併しながら五%の操業度を上げるに必要な電力ということになりますと、相当の量でありまして、一億数千万キロ・ワット・アワー、ということに年間でありますが、なるのであります。なかなか我々としては無論それを要求したのでありますが、各産業との調整の関係で、省といたしましては硫安に対しまして五千万キロ・ワット・アワーを増配するという、前年度からそれだけ増すという措置を講じまして、あと五千万キロ・ワット・アワー余りは足らんことになるのであるけれども、これは常時割当以外の方法で何とか事実上電気が、割当はしないけれども硫安工業に行くようなことを考えよう。まあそれはその一つとしては非常に電気を余計使う電気化学工業ではほかの機械工業その他と違つて二十四時間同じ量の電気が来なくても、幾分かでこぼこの量が、深夜には多く或いは朝晩のラッシュ・アワーには少くというようなでこぼこの電気でも、割合生産に悪影響なく使用できるというような性質がありますので、そういうようなことを一つ消費者側も電力会社のほうの、電力供給者のほうの側の意向を容れて、使い方を工夫してくれれば、割当量は殖やさんけれども、事実上電力が余計出せるというようなことの特約供給制度という制度があるのでありますが、そういうようなことを考えて、あとの五千万キロワットほどはそういうようなことを考えようというようなことで発足して、そういうようなことも織込んでやつておりますが、まだその不足量五千万全部そういう方法でカバ一するということには至つておりませんが、硫安工業の特殊な性質から何とかして電気を増配しようという気持で運用をいたしております。
  21. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 参考人のかたに御質問申上げたいと思います。  第一は輸出価格の低落して来ている主たる原因と、今後の輸出価格の見通しをメーカー側のかたと貿易側のかたに伺つて見たいと思います。  第二は硫安輸出会社が設立せられまして後にこの経理の見通しはどうなのか。ともかく作ることは作るが、やがては採算がとれなくなつて国家から補給金等をもらわなければならんというようなふうになる懸念があるのじやないかというふうに、各方面から見られておる傾向があるわけでありますが、これに対してメーカー側のかたがたはどういう見通しを持つておられるか、これを具体的にお伺いいたしたいと思います。  第三点といたしましては、これもメーカー側にお答え願いたいと思うのでありますが、硫安製造について合理化計画をいろいろお持ちのようでありまして、お配り願いました資料にも明らかになつておるわけでありますが、私の聞いておりまするところでは、重油の転換設備資金等といたしまして開発銀行から来年度二十億ぐらいの融資を受ける計画があるやに聞くのでありますが、併し一方貯炭の関係等から重油の転換はお見合せになつておるかのように資料の上からもちよつと拝見するのでありますが、この点はどういうふうになつておるか、その点を承わらして頂きたいと思います。  最後に第四点といたしまして、これは農業委員会のかたに伺いたいと思つておりますが、先般農林当局にも私お尋ねしたのでありますが、どうもまだはつきりしないのでありますが、その点は昭和元年の硫安消費量は約五十万トンぐらい、四十万トンか、五十万トンか、その程度であつたろうと思うのであります。昭和二十六年度においては約百五十五万トンになつております。で、その消費量は殆んど四倍近いのでありますが、ところが、この一反当りの米の収穫高というものは昭和元年が一石七斗六升、昭和二十六年度が一石九斗八升くらいでありまして、その差は二斗二升くらいであります。で、地方にはおのずから限度があるのでありますから、硫安を如何に使つて見ても、そうは反当り収穫高が伸びるものではないことは想像に難くはないのでありまするけれども、それが硫安消費量というものでは、昭和元年と二十六年の間において四倍ぐらいになつておるにもかかわらず、反当りの収穫高というものはこれに比べて非常に少い。これはどういうところに原因があるのか。とにかく硫安食糧増産上非常に重要であるということはこれは言うまでもないのでありますが、非常に又そういう見地から今回いろいろの施策がとられようとしておるのでありますけれども硫安消費量の殖えた割合に、食糧増産のほうが好転しておらんようであります。この点はどこに原因があるのか、これは大いに検討して見る必要があるのではないかと思うのでございますが、その点について御意見を伺いたいと思います。
  22. 中川以良

    委員長中川以良君) それでは最初の御質問に対しまして水野さん。
  23. 水野一夫

    参考人水野一夫君) 輸出価格の見通しという点でございますが、これは非常にむずかしい問題でございますが、先ほどからも話がありましたように、現在台湾輸出の成約をたまたま転機といたして好転しつつあるわけでありますが、併しながら、これはどの商品でも相当なフラクテユエーシヨンもあるわけであります。私どもたまたま目に見えてやや好転の兆が見えるということに、大きな期待は持つておられないわけであります。と申しますのは、世界の窒素肥料生産能力というものは大体需要にバランスしておる。ちよつと手控えれば、例えば昨年のインドの輸出のような非常に低落をいたしまするというと、おのずから手控え気味になりまして、ドイツでもイギリスでも、殊にベルギーあたりでは、こんなに安くなつて輸出してもしようがないから少し手控えるのだということを向うでも言つておつたようなことで、実際に手控えられたかどうか、まだ数字に現われておりませんけれども、そういう気分はすぐ起つて来る。たまたま目先は若干明るくなつたということが、そういうことに原因しているかどうかわかりませんけれども、何千万トンという大量のものが大体バランスしておるのでありますから、ほんの一、二%生産が何かの事情で減りましても、すぐ数百万トンの輸出値段に響いて来る。私ども大体のあれとしては、先ほど申しましたように、今十四、五ドル下げなければ国際価格に追い付けないのだと、それだけの量を下げて行くということを目標にすべてのことを運んで行きたいというふうに考えております。そこで、この出血の尻が、結局又国家の負担にでもなるんじやないかという御懸念も各方面におありと思うのでありますが、合理化を進めますことによりましても、二百三億の低利の資金供給して頂けば七ドル下るということになります。これは五年間の計画でございますけれども計画では三年で、大体主な量をやつてしまうということになつております。従つてだんだん国際水準に近付いて来るわけでありますので、初め雪だるまは大きなものが仮にでき上つてつても、或る時限からはだんだんとその雪だるまは小さくなつて行く、そして四、五年の後にはその他の企業自体の努力、或いは国としてのいろいろな措置から、なお相当のコストの低下は期待できるわけであります。結局四、五年の後には十四、五ドルのハンディキャップを完全に埋めてしまうという、希望ではなくてそういう確信の下にまあ我々すべてを考えてやつておるわけであります。やがては出血ではなくなるという日が必ず来ると想像ができます。そのときまあ残つた赤字を更に輸出でプラスができるようになるか、或る期間を延ばして輸出会社を存続して、それで赤字を埋めるか、その辺のところまでは考えておりませんけれども、或るところまで伸びたらそれからは逆に縮んで来るというふうに考えております。その尻をどこかへ持つて行くということは考えておりません。法案もそういうふうにできております。業者へ直接直ちに赤字が出た、その途端に業者への計算、バランス・シートへは入れませんけれども、その赤字の負担は業者自体でやると考えております。  それから合理化計画のうち、お話のありました石炭の重油転換のことでございますが、この計画は三社で今持つておられるのでありますが、日産化学と、日東の八戸工場、それから東北肥料、その三社で、予算では二千三百万円、二百三億のうち、その方面に予定しておりますものが二千三百万円、合理化のうち大きな部分を占めておるわけではございませんが、併しこれも合理化一つの項目になつておりまして又無論効果もありますし、特に今重油転換を躊躇するという理由はないように思います。併しその三社がその後どういうふうになるか、具体的には私存じませんが、ただどの会社もいろいろな合理化の項目がありますので、資金、或いはその効果の関係上、本年度すぐ手を着ける、或いは来年度やる、再来年やるとか、いろいろある。こういう関係から今年やろうとするのを、資金が足りないから来年にするということがまああり得ると思います。これは私具体的には存じません。以上です。
  24. 中川以良

    委員長中川以良君) それでは後段の部分に対しましては、全国農業委員会協議会の嶋津猛君にお願いします。
  25. 嶋津猛

    参考人(嶋津猛君) 今の御質問は、肥料を使つて割合に反収が上つていないじやないかという御結論のように承わりましたが、これは御存知じの通り、特に戦時中国民食糧確保しなければならない、或いは戦後も入りますが、こういう国内的な大きな事情の中から、基本的には非常な無理をして、生産統制と申しますか、そういう事情が大きく出て来たのであります。従つて例えば一つの理由になりますものは、今御指摘の昭和の始め頃を一応見ますと、この化学肥料以外の、例えば大豆粕とか、或いは魚粕とか、こうした有機質肥料が百万トン余りも実際使われておつた、そのため又これは家畜の関係もありますが、いろいろ馬が動員される、その他そうした本当の主食というものに非常な国家的な要請が強く出ましたために、その他のいわゆる自給有機質肥料、こういうものが非常に実際上生産が減退した。例えばこれは有機質肥料に直接係はないにいたしましても、桑畑をいも畑に多く転換しております。それらに関連するいろいろな農業経営の内部が、非常に或る意味では単純化されている。こういう事情の中で、地方そのものがすでに戦時中、或いは戦後の食糧、特に主要食糧確保という、そうした国家的要請の中で、御存じの通り化学肥料を、単にそれのみを使つて、一時的な効果を狙う、それ以前の本当の肥料を消化吸収する力と申しますか、そうした基本的な、基礎的な地方そのものが非常に減退したところに大きな問題があろうかと思います。それが今御指摘のような結果になつて現われておるでありますが、なお今それらの肥料の使い方、これは又一方に使い方の指導と申しますか、農業生産指導、こうした方面の非常ないろいろな無理の中から、若い青年がいろいろな方面に動員され、そういう事情の中から、こうした経営全般を通じた、或いは特に肥料の使い方等における指導の面の一つの弱体化された問題、こういう問題もあるかと思います。大体大筋に結論的に申上げますと、先ほどども会長が申上げましたように、農業というものが、非常に他産業に比べまして、特にこういういろいろな時代の要請の、国家的な要請というものが強く、例えば最近の食糧問題を一つ考えましても同じでありますが、非常に無理をしているということが、この地方の減退を一つつかまえてもわかるのであります。これが大体大きな原因だと思います。
  26. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 只今のお答えから考えさせられるのでありますが、非常に高価な化学肥料を使い過ぎるということから、農村経済が非常に困難になつて来ているのじやないかという疑問を持つわけなんですが、この点についてどういうふうにお考えになつておるか。それと、これは前段お答え願いました重油転換の問題でありますが、貯炭、これは一時的な現象だと言えばそれまでのものでありますが、相当な貯炭量になつている関係上、従来重油に転換しておるものまで元へ戻そうかというような考えがあるくらいなんでありまして、この際に重油転換に向つて行くということが果していいかどうか、この点について政府側のお考えを聞いておきます。その二点。
  27. 柿手操六

    説明員柿手操六君) その問題、私ども関係でありますが、燃料関係のほうの専門でないので確信のあるお答えができないのでありますが、国全体の問題から、国家経済の問題がどうという論点でなしに、要するに硫安を安く造るという点から、重油を使つたほうがいいのか、石炭を使つたほうがいいのかという問題は、重油と石炭との価格の問題になろうと思います。現在のところでは、私の聞いている範囲では、やはり石炭が安くなつたとは言うけれども、まだまだ重油のほうが安いのだということを聞かされておるのであります。そこで将来それじや石炭はどの辺のところで落ちつくか、重油はどの辺の価格になるかという見通しの下に設備を考え直さなければならんのじやないかというところに来ているかどうか、その点についてどうもここで確信のあるお答えができないのでありますが、まあ一応そういう、さつき水野さんからプランのあるお話を聞きましたが、それを実行に移す場合には、そういう点の見通しを十分検討いたしまして慎重にやるべきであろうと思います。私どももそういうふうな方針で補償をいたしたいと考えております。
  28. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 只今の農村経済との関係如何でしようか。
  29. 嶋津猛

    参考人(嶋津猛君) 今の御質問は、化学肥料を農家が使い過ぎることによつて農家経済が逼迫を来たしておるのじやないかという点とお聞きしましたが、これは結論的にはそういう見方も成立つかと思いますが、それ以前の問題を考えますと、今の根本的な、これは国の農業政策と申しますか、そうした根本問題に触れるわけでありますが、無理をして肥料を使つて一時的な効果にしても反収を上げなければならない事態に追い込まれておる。その半面は、例えば価格の問題、先ほどもいろいろ申上げましたが、価格の問題を一つ見ましても、完全に農民の主張する一つ価格というものは、統制の中で実現しないというこの実情から、無理にせざるを得ない事態に置かれているということが、根本的な問題であります。ただ、先ほども申上げましたように、もつと広汎な農業経済全般の改善の問題とか、或いは肥料の使い方のもつと具体的な研究とか、こうした問題も更にこれは農民自体の問題として、生産コストを下げたり、いろいろな研究もしなければなりませんが、そうした一つの研究を進める、或いは余裕と申しますか、そこまでまだ実際は手が届かないという現状、そこから来る。勿論部分的にはこれは特に化学肥料を使い過ぎているという一つの見方が成立つと思いますが、基本的にはそういう問題から来る結果であると思います。
  30. 島田日出夫

    参考人島田日出夫君) 私に対するあれじやありませんが、只今の嶋津君の意見一つ意見でしようが、全体に見てこの階層によつても違いましようが、階層の或るところところではもう収穫逓減の法則が働くぐらい肥料をやつておるところもあろうかと思いますが、全般に見てまだ非常にやり過ぎていて、そのために負担になつておるということは、ちよつと技術的に見てむずかしいのではないか、そういう傾向はそう強くは働いておらないのじやないか、逆に考えれば、硫安にしても石灰窒素にしても、非常に安い値段であるならば、ヨーロツパでやつておるように牧草にも使えるとか、そうして輸入の飼料の防遏にも私は更に消費というものがまだ進むのじやないか、その上に政府は、今考えておるような食糧増産計画をやつてそして更に開拓地を殖やして行くというようなことを考えて行く、又技術者の最高、どこらぐらいまでやれるかというような数字を見ましても、技術的な観点から言えば、これでやり過ぎておるということは言えないのであります。但し、農家の階層別に見ますると、非常に金のある農家あたりではそろそろ限界には来ておるのじやないか、併し全体から見れば限界に来ておるというふうには思えないような気がいたします。
  31. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 今の島田さんからのお答えではちよつと私満足しかねる点があります。と言いますのは、昭和元年の数字を見ますと、窒素肥料全体の消費料が、これは硫安のほかに魚粕とか大豆粕とか一切入れてでありますが、百三十二万一千トンであります。昭和二十六年は、窒素肥料全体を見ると百九十五万九千トン、余り違つてないのです。ところが硫安だけを見ると、昭和元年は四十万、昭和二十六年は百五十五万と、約四倍になつて来ておる。ところが反当りの収穫高は、さつきお話しましたように、昭和元年は一石七斗六升、昭和二十六年は一石九斗八升、余り違わない。だから結局窒素肥料全体の消費量というものは、昭和元年と昭和二十六年と余り変つていないのです。これから見ると、反当りの収穫高はそんなに変らんというのは無理もないという結論が出て来るのです。ところが硫安だけを捉えて見た場合に、非常に違いが、昭和元年と二十六年とはあるのです。そういう点で金肥の使う量が非常に殖えておる割合に反当りの収穫高は余り殖えておらんと、そこに非常に疑問を持つので、日本の米穀生産の特殊事情等から考えますと、もつと堆肥とか或いはそういう昔のような行き方をやることのほうが却つて地質に合つておる、或いは農家のあり方に合つておるんだと、そこから今の農村経済、農家経済の非常に苦しいという点が問題になつて来ておるが、そこらに一つの原因があるのじやないかという点を強く考えさせられるので、その点についてお尋ねをして見たわけであります。
  32. 島田日出夫

    参考人島田日出夫君) 今おつしやるやつ、そういう御議論も強く出てい参ることは事実であります。ただその中で正確な資料を私ここに持つておりませんが、おつしやるやつと違う、そういう結果になつておらないのは、二つ私は理由があると思います。一つは自給肥料というものが、平地林の解放とか、農地の解放とかいうので、自給肥料の給源というものが、戦争の後は、全く戦争以来ずつと、戦時中は労力の不足、戦後は今申しましたような平地林の解放とか、農地の解放ということで、自給肥料の給源が非常に減つているということと、もう一つは統計を見なければわかりませんが、米以外の農作物にかなり多く使われて来やしないか。硫安の使用が、米のほうがそんなに増加せずに、米以外のものにも消費がかなりありやしませんかね。ただこれは資料を私持つておりませんからあれですが、お話のように金肥をもつと節約して使えという運動は、御意見のあれはかなり出ておりますが、先ほど申しましたのは私の感じを申上げたわけです。
  33. 海野三朗

    ○海野三朗君 農民からお米を供出させているのは、外国から購入している値段の約半分になつているのでありますから、農家の仕事といたしましては、硫安はつまり化学肥料は絶対減つておらん、そうしてみたならば、この化学肥料に対しては国家が補助を与えてでも、生産費よりも安く農民に配付すべきじやないかと思うのですが、政府御当局はどういうふうにお考えになつておりますか、これが第一点。  それから只今豊田委員からもお話がありましたが、私はその点につきましては、この土壌の研究ということが日本ではおろそかになつているのじやないか。同じ肥料を使つても、その肥料が一〇〇%働いているのか、八〇%働いているのか、その土壌に対しては。そういう方面の土壌の研究が足りないように思われるのでありまするが、政府御当局はどういうふうにお考えになつているのでありますか、これをお伺いしたい。この二点についてお伺いしたい。
  34. 柿手操六

    説明員柿手操六君) いずれも大事な大きな問題でありまして、私がどうも政府を代表してお答えするには、余り問題が大き過ぎるのでありますけれども、まあ事情をお語いたしましてお答えに代えたいと思うのでありますが、ともかく食糧を安くするということは、日本経済のやはり基幹ですから、そういう意味におきまして、戦争中、昭和十五年の一月から、まあ当時肥料は統制いたしましたが、生産費より安く、補助金を出して農家に安く売るという政策を戦争中は昭和十五年の一月から戦後も二十五年の八月までは、コストで買上げて、その差額は、それから或る程度の補助金も出して農家に安く売る、こういうことをやつてつたのでありますが、二十五年八月から国の財政の事情もありましよう、それからまあだんだん物資の統制というものはやめたほうが、長い眼で見れば日本経済全般の立場から、これは好ましいだろうというような経済政策の大方針から、二十五年の八月から約三年ばかり統制を撤廃している。要するに昭和十五年から戦後二十五年の八月まで、その間終戦後ちよつとそういう補助金を出さなかつたときもありますが、大体その間十年くらいは統制をしておりまして、そうしてコストよりも安く農民供給して、政府が補助金を出したという制度をやつたのでありますが、二十五年八月から、今申上げましたような見地から補助金を出さないで、統制を撤廃して現状に及んでおるのであります。まあ今度本日御審議を願つておりますこういうような硫安につきましては、こういう制度ができまして、或る程度の統制を経まして、もう少し農民肥料を安くしたほうがいいということが問題になりまして、財政もそれが許しますればそういうようなお説のようなことも行い得る態勢ができると、こういうふうに思つております。  それから土壌の研究について、これは相当古くからやつているのでありますが、私はこれは私見になりますが、研究を相当古くからやつて、相当な成果が実は挙つていると思うのでありますが、それを実際に個々の農家が実行するように普及することがまだ足りないのじやないか、研究よりも研究成果を実際に農民にアップライさせるという普及指導と言いますか、その方面がまだ足りないのじやないかというふうに私は考えております。
  35. 海野三朗

    ○海野三朗君 只今の御答弁を承わりましたのですが、そういたしますと、以前には肥料補給金が出ておつた、今は出ないのだというお話であります。これは事実を御説明になつたのであります。つまり米は安く農民からとつているから、肥料も半分ぐらいの値段で与えるのが当然ではないでしようかという一つ意見を伺つたわけであります。それはどういうふうにお考えになつていらつしやるのでありましようか。ビルマ米の購入値段などに対しましても供出の値段が半分である、半分の値段農民から米を取上げておるのだから、肥料も半分の値段ぐらいで農民に与えるべき問題ではないか。これは私が大筋を伺つておる。ここからしてこの肥料の問題はおのずから解決の途が出て来るのじやないか。こう思うのでありますが、それに対しましては、どういうふうに政府側といたしましてはお考えになつていらつしやるのでありますか。
  36. 柿手操六

    説明員柿手操六君) この問題は先ほどお答えいたしましたように、肥料は成るべく安く、そうして食糧も成るべく安く供給するということが日本経済全般からいいと思います。ただこれは国家財政の事情もありましようから、それが肥料を安くするということ以外にもいろいろいいことがあつてやれないものもたくさんあろうと思うのであります。それらの点につきましては、これはどうも私がちよつとお答えするのは政治問題になりますからお答え困難でありますが、私どもとすれば、これはできれば食糧も安く国民に供給する、こういう政策をできればやるべきだろうと思います。これは国の財政の問題もありますから、まあ希望だけでありまして、それに対する政府意見ということになりますと、私にはお答えできかねます。
  37. 中川以良

    委員長中川以良君) 海野君にちよつと申上げますが、政府に対する御質疑でございましたら、この次の委員会お願いいたします。できるだけ今日は参考人に対する御質疑をお願いいたします。
  38. 海野三朗

    ○海野三朗君 今の土壌の研究でありますが、私はあちこちの農事試験場を大分見て廻つておるのでありますが、農林省の使う予算というものは相当莫大なものでありますが、この試験場に行つて見ると研究になつていないのがたくさんあるのですね。研究になつていない。研究をやるつもりでいるが的外れになつてつているのが随分あると思いますが、政府肥料部長としてはどういうふうに地方の農事試験場あたりを御覧になつているか、ちよつと御所見を伺いたいと思います。
  39. 柿手操六

    説明員柿手操六君) 私今農林省の関係の者じやないのでありまして、よく存じませんが、これは今農業改良局というものが戦後できまして、農業の研究を余り重複しないで、今までは曾つて研究題目も随分統制なくダブつてつて無駄な点がありましたから、これを一つ農業改良局が中心になつて研究部の企画課というものを置きまして、それぞれ研究のテーマをダブらんように、最小の金で最大の効果を挙げるというように統制をやつて来ております。そういう関係で或る試験場だけを御覧になると、こういうことをやるよりか、こういうことをやつたほうがいいのじやないかという御意見もあるかと思いますが、これは何かやはり統制をしているようであります。
  40. 海野三朗

    ○海野三朗君 水野さんにお伺いいたしたいのでありますが、この輸出をなさつたときにはやはり出血でございましたのですか、昨年度の。
  41. 水野一夫

    参考人水野一夫君) 一番初めに大仲会長からもお話を申上げたように思いますが、昨年の上半期までは出血ではなかつたのであります。国内よりもむしろよかつたのであります、ところが下半期に至りまして非常にヨーロツパの品物が東亜市場へ殺到して来て、十一月頃になりまして極端な安い値段が出て、輸出滞貨は増す一方、どうしても一掃しなきやならんというのでインドヘ二万数千トン非常に安値のものを出した、そう大量ではなかつたのですけれども……、だがそれがそこで先ほど申しましたように今度の台湾との長期契約ではその頃に比べまするというと約五、六ドルよくなつておるのであります。併しながらまだ国内価格は大体原価に近いところでありますが、国内価格からいうとまだ五、六ドル安いところであります。従つて出血であるというところでございます。
  42. 海野三朗

    ○海野三朗君 そのやはり、出血というものをどういうものでカバーしていらつしやるのでありましようか、国内に売つていらつしやる値段で相当儲けが上つていらつしやるのでございますか、どういうのでございましようか。
  43. 水野一夫

    参考人水野一夫君) それは会社によつてコストは相当の差があります。一番安いところと一番高いところと比べて見ますると相当差があるわけでございます。個々の会社国内価格で黒字になるか赤字になつているかということは我々メーカーでも自分の会社のことしかわからない。平均の価格、全会社の平均を見ますというとやはり現在の国内価格が大体すれすれのところじやないかと思うのです。
  44. 白川一雄

    ○白川一雄君 輸出と言い、又国内需要と言い、結局できるものが安くできなければいかんというのが、まあこれは根本だろうと思うのですけれども、その点におきまして、従来の設備とかいうものに余りに執着し過ぎて手をかけても効果のないようなものにこびりつき過ぎておる点があるのじやないかという我々観察を持つておるのでありますが、その各社のいろいろの合理化計画というものも拝見し、先般或る工場も見せて頂いたりしたのでございますが、それで計画書にあるように政府の補助を願うとか、或いは金利を下げるとかいろいろ要求するとすれば、その計画書によつて上つた結果に対してはシビアーな責任を持つというだけの意気込を持つた計画でなければならないのであります。ですから我々としてはどうしても生産合理化をやつてもらつて国際水準より安い品物ができるように政府が極力応援をすべきだろうと思う。半面業界はそれに対して責任を持つということが非常に大事なことでないか。こういうように思うのでございますが、例えば先般見たところでは、現在の原価が叺当り八百三十八円ぐらいになつておるのです。合理化すれば六百八十八円になる、この六百八十八円が果して国際価格かどうか知りませんけれども、六百八十八円になるということで補助を受けて合理化したとすれば、六百八十八円に対しての厳格なる責任を感ずるような行き方に行かなきやいかんと思うが、製造者のほうにおいてはそれだけの成案があるかどうかということを一点伺いたいのと、次は出血輸出ということは、それは非常に聞くのでございますが、出血しておるはずならば、会社の経営の上にも赤字で当然無配にならなければいけないものがやはり配当もしておるとするならば……若し非常に大きな一方で出血があるとすればそれが内地のものに振りかかつておるか、或いはその損失を別の手でカバーしておるのではないかという点に疑問を感じましたので、先般政府当局に伺つたところでは、輸出赤字出血の損失は別枠にしてのけておいて、大蔵省の承認を得て一年間だけは損失に計上しないであるのだというお話を伺つたのでございますが、普通の会社で若しこういうことをやりますと、いわゆる蛸配ということになりまして非常に責任問題を生ずるのでございますが、現在そういう方法はずつと持続してやつておられるのが現状であろうかどうかということをお伺いいたしたいと思うのであります。  それから第三点には、輸出会社につきまして、この輸出会社ができますと直接輸出もするし、又輸出業者輸出用として譲渡すということは、輸出が二本建になるということになりますので、輸出を若し赤字を忍んでも外貨獲得のためにやらなければならんということになりますと、そこに損失しわ寄せになつて来るわけで、そのしわ寄せをどういう方法でカバーされるかということを先般政府当局に質問いたしたときに、獲得する外貨を優先的に使うことによつてカバーするという御説明があつたのでございますが、輸出業者輸出して頂いたとすれば、外貨獲得は輸出業者に外貨は入るべきものであつて輸出会社には入らんのではないか。ただ直接輸出した分だけの外貨は入るかも知れませんけれども、この外貨を、或いは硫安輸出して豆粕を入れて次の生産に使うというような生産的なものにこの外貨が使えるならばいいけれども、極端に言えばバナナを輸入して高いバナナを日本人に食べさしてこの肥料値段をカバーする、損失をカバーするのだということになりますと、国家経済としては重大な問題ではないかという点で、その点について何か政府当局の御説明では、この輸出業者の獲得した外貨も話合いで大体輸出会社が使うようなこの間御説明があつたのでございますが、果してそういうアンダースタンディングというのが業者との間にできておるのかどうかという点に疑問を感じておるのであります。  それから第四点に、先ほど硫安の建前から石炭から重油に切換えるということが考えられると、コストの上から考えられると言われましたが、今度私どもが視察して来た中の発電所なんかは、現在重油を使えば非常に安く行くのであるけれども日本の国のためを思うて石炭と重油をパラレルに使う、或いは一旦重油が困難だというときには日本石炭を使うのだというダブルの設備をしておる、こういうことはこれは非常に国家的行き方であろうかと思う。硫安が目先のいろいろの事情にかぶれて、若し重油だけの施設で増産計画をしたとすると、国家の将来に対して非常に憂うべきものがあるのではないかというような点があるので、肥料部長の先ほどお話があつたが、まあ石炭部のほうは御関係がないとしても、政府当局としては御関係を深くしてそういう点を密接にやつて頂かないと、これはセパレートでやるべき性質のものではないと、こういうふうに考えるのであります。  最後に農業関係の人に伺いたいのは、私の出身地は四国の香川県でございますが、そちらのほうは硫安を使つて増産ができない。土地が酸化してしまつて硫安を何ぼ注ぎ込んでも稲の穂が大きくならない。何としても硫安を中共のほうに輸出して、それでバーターに豆粕を入れてもらいたい。それを肥料に使つて改良する。今度は堆肥を使うと、一つの豆粕が二つの効果を発揮するから、自然肥料が安いことになるから、政府輸出禁止になつておる硫安を、向うの土地は非常に硫安が向くわけでありますから、そういうわけで政府輸出禁止を解除してもらうように骨を折つてくれという声が聞えるのでございますが、非常に熱心な声があるのでございますが、実際そういう現象が事実なものであるかどうかということを、そういうことを知りませんものでありますから、専門のかたがたの御意見を伺いたい。その五つの点を大ざつぱに伺います。
  45. 大仲斎太郎

    参考人大仲斎太郎君) 第一の御質問に対しては、今の設備に執着して行つて発展的の改造をしないのではないか、それから、やるとしても一体責任を持つてやるのかと、こういう御質問のように伺つたのでありますが、今の合理化でも、資料が出ておると思うのですけれども、必ずしも執着をして合理化を進めておるわけではありません。むしろ今の設備の改良というのは、要するに蒸気の回収とか、いろいろ古くなつておるものの改修をして、そうしてコストを下げるということと、それからいわゆる硫安は水素の取り方によつて先ず大体においてきまる。その水素の取り方でありますが、今までのような石炭法におけるようなことでなくて、別の方法で以てやる。これでは相当今までの設備もまあゼロにしてやらなければならないというような問題でありますが、それも相当には近い年限のうちには変つて来る。いわゆるコッパース法の施設であります。これなどはいわゆる今までは硫安原料として対象にならなかつた微粉炭とか粗悪炭というようなものがいわゆる対象になつて、これから硫安原料として使えるということになると、今までは石炭業者として捨てておらなければならない、或いは売つても運賃で到底引合わなかつたものがこれによつて救われる、或いは全体がそういうふうになれば或いは高くなるかも知れませんけれども、今のところはそうではなくて、おのおの立地条件がありますから、その立地条件の見合つたところはそのほうに変える。これなどは相当の大きなコスト切下げになつて、そうした場合徒らに今までの設備等を修繕とか改善ということだけにとどまつていないことを御了承を願いたい。  それから第二番目は経理の問題でありますが、赤字があるにもかかわらず配当をしておるではないか。いわゆる出血輸出があるのにもかかわらず配当をしておるでははないかという御質問でありますが、これは昨年度輸出した出血は大蔵省にも了解を得て一応の棚上げの対象にしてもらつたのであります。併しこれも要するに未決算という形であるのであつて、道理から言えば、決算が済めばこのままで棚上げは許されないというような強い御意見が大蔵省のほうにあるのであります。これは今の状態でそれをやつて行くということは、非常に苦しいから是非続けてくれというお願いを出しておるのであります。尤もこの硫安そのものだけではなくて、ほかに大きな兼業をしておるお方においてはまあそのほうの利益もあり、かたがた一部分とか或いは僅かであれば全部の償却をそこでしている会社もこの頃にはあると思いますけれども、いずれにしてもどうしてもこれをやらなければならないということであれば硫安プロパーの経費からすればどうしても赤字にならざるを得ない。で、その分だけで配当するということになれば今までのように蛸配、蛸配はどこから持つて来るかというと必要な償却も修理、すべてのものを犠牲にしてこれに充てて行く、こういうような形が現状であります。  それから第三の輸出会社ができて、それは直接にするのか、或いは業者にもやらせるのか、二本建になるかというようなお話でありますが、これは輸出会社ができるときにならなければはつきりしたお答えはむずかしいのでありますが、業者たちで今話をしているところでは輸出会社ができても非常に経費をかけないというやり方で、今までの普通のいわゆる輸出会社というのとは非常に趣きが違つてつてただ帳面の出し入れくらいのものにしたらいいんじやないか、やはり餅屋は餅屋でございますので、販売は輸出業者に扱つてそれをやつてもらう。併しその扱つてつてもらうということも今までのように輸出業者が自分の利益で輸出するという場合をとるか、或いはそうじやなくていわゆる実際の実務を取扱つてもらうだけのことにして契約者は依然としてメーカーと商人、こういうことになるほうが可能性が強いのじやないか。然れば今の優先外貨なども頂くのはその輸出会社として頂くというようなことになろうと思います。業者のほうに或いはやつた場合に優先外貨はどうなるかということですが、これは契約するときの話合いでなることであつて、或いは優先外貨はメーカーじやなくてディーラーがとる。そうすれば実際においてそのディーラーがよつて受ける利益だけのものを硫安として高く買つて頂けばそれはそれでいいと思います。要は折角利用のできる優先外貨はできるだけ有利に働かして、この硫安会社の出血をカバーして行きたいと、こういう工合に今のところは考えております。  それから重油に切換える問題は先ほど水野常務からお話した通りに、今のところはまあ転換というよりはむしろ余りに石炭が高い関係上でこれをフアーネス、ボイラー炭の代りに使つているところが相当にあるのであります。併しこれはいずれもバーナーを取換えて重油に取換えるという態度で以て而もそれが非常に短時日でそうロスもせずに取換えられるという見通しの下に今使つておるのであります。併し最近に至つてはこの石炭はなかなか下りそうもないというような見込からこの重油を原料に使つたらどうかというお話業者間でも非常に多い。併しそれは重油が今の石炭と重油との値段が持続し、且つ数量もいつでも随時随量手に入るという見通しがなければこの大きな問題を一挙にして解決するということは非常に危険であると存じます。各社においても全部それをやろうという会社は殆んどないのであつて、一方において電解法をやつたかたわらにそれもやろうか、それから重油で使える一部分は今まで石炭を使つているけれども製品の出来方工合によつては重油を少しそのほうで処理したほうがよいというようないろいろな観点から各社がいわゆる非常に慎重に且つ如何なる場合にも転換しても損失のないような形で重油を研究しているということは事実であります。以上お答えをいたします。
  46. 白川一雄

    ○白川一雄君 今の私のお尋ねをするのが不徹底な点があつたのではないかと思うので補足して申上げたいのでありますが、これは参考にして頂きたいのでありますけれども、先般来ちよつと視察に参りましてこういう感じを持ちましたのです。軍の設備等の払下を受けるのに、二億円の価格で払下を受けて一方ではそれに勝る新らしい工場を作つて同じような設備を作ると、私の見たところでは五億円くらいでできておる。而も中の設備は格別で新らしくいい設備ができておるというようなわけで、これはもと軍が使つたというようなことでただ漠然と言いましたけれども、今修理しても世界の状態が進んでおるのに追付かないような設備に執着し過ぎるところがあるのではないか。むしろこれはスクラップとしてしまつて新らしく建てたほうがいい工場ができるのではないかというような観察する点がありましたので、硫安でも先ほど申されたように非常に会社によつて原価が違うということであれば原価の安くできるところを残して大いに助成して、どうしても原価が安くならんところはやはり自然淘汰をして、これは一会社のためでなく日本の国のためにそういう点も開かなければいけないのではないかというような、これは硫安だけでなしに、他のものもみんな日本の現状はそうだろうと思いますので、その点を十分お考え願わないと本当に硫安が世界水準より安いものを造るという線には非常に行かないのではないかという懸念がありましたのでお尋ねしましたので、現在どちらがどうという、設備がどうという具体的知識を持つているわけではないのであります。総括的な点で申上げたのであるということを御了承願いたいと思います。それだけ申上げておきます。
  47. 嶋津猛

    参考人(嶋津猛君) 只今香川県とおつしやいましたが、土壌の酸性化、特に香川県の場合ですと、秋落地帯の面積は非常に広いから、お話のように硫酸分を持つた窒素肥料は成るだけ避けたほうがよかろう、これは大きな問題でありまして、当然そう行かなければならんかと思いますが、その場合に中共との大豆粕の問題がありましたが、これは私がお答えする筋合いのものではございませんが、その前に香川県あたりではやはり石灰窒素等をお使いになるほうが土壌の上から言つてもこれは当然結構かと思います。秋落地帯の問題は米の収穫の問題に関連いたしまして非常に大きな問題でございますが、御指摘の点は我々も常に心配している点であります。
  48. 小松正雄

    ○小松正雄君 私は本日のこの参考人のかたがたの陳述によりまして、政府に対してどういうことを考えておられるか、そういう施策の点について聞き取りたいと考えますために伺いますが、委員長はこの委員会を三日続けてやられるようでありますが、委員会を継続されることについての内容を伺いたい。
  49. 中川以良

    委員長中川以良君) お答え申上げますが、大体予定といたしましては、本日で硫安問題は一応打切りまして、明日、明後日は電源開発関係をやりたいと思つております。併し本日御質問が残れば、明日は参考人のかたはお出ましを頂くことは無理でございますが、政府のほうは明日委員会に招致いたします。
  50. 小松正雄

    ○小松正雄君 お願いいたします。
  51. 團伊能

    ○團伊能君 白川議員の御質問に連関して、なお一つお伺いいたします。大仲会長に伺いたいのです。出血輸出をいたしまして、損失各社の総額は大体どのくらいの額になりますか。
  52. 大仲斎太郎

    参考人大仲斎太郎君) 昨年の総額は大体十三億であります。
  53. 團伊能

    ○團伊能君 それは先ほどの御説明にございました。一応未決済にして脇に棚上げしてあるということに承知してよろしうございますか。
  54. 大仲斎太郎

    参考人大仲斎太郎君) 決算は会社によつて違いますですが、今までは棚上げを承認願つた各社は大体棚上げをしておるはずであります。最近の決算ではどうなつたか、私も聞いておりません。
  55. 團伊能

    ○團伊能君 そういたしますと、それに対する何か政府から補填の約束なり、或いは見通しなりというものが、何らかの形において会社政府間にあるのですか。
  56. 大仲斎太郎

    参考人大仲斎太郎君) 政府からは何ら補填するという言葉も頂いておりません。私は何とかしたいと思いますが、今のところでは絶望のようなふうに思つております。
  57. 團伊能

    ○團伊能君 そういたしますと、そういう出血輸出をしたために、会社損失をこうむつたこと、乃至は出血輸出の額はおわかりだつたでございましようから、歴然と会社が大企業にも損失を来たすということを知りながら、そこに輸出された動機はどういうことになりますか。
  58. 大仲斎太郎

    参考人大仲斎太郎君) 動機は国内硫安を最も安く供給するにはどうしたらいいかということは、増産以外にはない、今のままに続けて増産をするというと、どうしても輸出しなければならない、ところが先ほど申上げました通りに、昨年の上半期に相当の有利な輸出が、一叺千円がらみの輸出ができるときがあつたと思いますが、いろいろの関係でその輸出の承認を得ることができなかつた、而もそれが非常に莫大な在庫になつて金融の圧迫が来る、倉庫は充満する、内地ではそれほど売れないということになると、だんだんだんだん国際価格が下つてつたのでありますが、止むを得ず許可を得るときになつて初めてそれを売離さなければならない、そのときにはもう相当に下つた、その国際的に相場の下つたということは、いわゆる西独あたりの国内の相場が下つたのでなつたのではなくて、いわゆる東亜地域を獲得しなければならないということと、それからやはり相当のオーバー・プロダクシヨンになつておるから、それをはかなければならないということと相待つて、更に国際運賃が大体三分の一ぐらいに下つてしまつた。二十三、四ドルのものが八ドル見当に下つてしまつた。それが我々のほうとしても非常に有利な条件であつたのが、だんだんなくなつて来て、そうして向うの安い物に対応して我々も売らなければならない、それを徒らに持つていて、それを国内に向けて、そうしてそれだけを減産するという手がなくもないのですが、それをやりますれば今国内の相場が急激に上つてしまわなければならない、いわゆる四分の一の減産をするということは到底無理である、こういう観点から国内よりは損ではあるけれども、これは大局のために、又日本のためにも、我々としては輸出せざるを得ない、こう考えてやつた仕事であります。
  59. 團伊能

    ○團伊能君 どうもそこの、会社の経理として、そういうことになりましたことの理由が、いわゆる増産をして滞貨があるから、滞貨を処分するという理由の下にのみ輸出というものに振向けられたということが、私ちよつと納得できないのですが、それはそれといたしまして、一応肥料のことでございますから、国内に売り崩すということもできない事情で、その中にはまつて、それが損失であるけれども輸出製品をはくという結論なつたことは一応わかりますが、この会社の責任である経理として考えた場合に、結局それは会社の経理上損をしたという結果になつたということに解釈していいですか。
  60. 大仲斎太郎

    参考人大仲斎太郎君) それは結果がそうなつたのであつて、どうであろうと趣旨としては今申上げた通りである。損になつたということは、これは結果として止むを得ない。そう見て頂くほかにないと思います。
  61. 藤田進

    ○藤田進君 時間がないようですから、簡単に二点だけお伺いしたいと思います。お答え願いたいと思いますのは生産業者のかたがいいと思います。大仲さんにお伺いしたいと思うのですが、この法案は御承知のように、結局独禁法或いは公取の一部適用を除外するというところに、やはり中心があるように思うのです。その他会社の設立についてもありますけれども、これは生産者の出資によるということで従来は言われておる。国策会社とはそのシステムが違いますし、或いは第四条でしたかのごとき融資の斡旋をするということは、これは制限的なものであります。結局今申上げましたような独禁法なり公取の適用除外というところに問題があつて価格カルテル、こう考えられるのでありまして、私自身今研究中なので、詳しい事情はまだ先で機会があればお伺いしたいと思うのですが、この法律を必要とする御主張についてはわかるわけですが、過般の十六国会で輸入取引法ですね、あれの一部改正がなされて、一定の制限条件の下に価格カルテル、或いは生産者もこれに参加できるということで、本法案と大同小異の法改正がなされているのですが、併しここにこういつた特別なものが必要だという点について、政府側にはこの間ちよつとお伺いしましたが、どうも成るほどというふうに感じておりませんので、政府については改めてお伺いするといたしましても、御賛成になつている大仲さんなり業者のかたとしまして、あの輸出入取引法の一部改正で事足りると、基本的にはこの法案と全く同じだと言つていいのじやないかと思われるわけですが、たまたま時を同じくしてこの法案が出されて、私はあの法案が通過するかしないかといつたようなことと、これと別個に出て来たものだから、こんなことになるのじやないかというふうな感じさえ私は持つているのです。この点についてどのようにお考えになつているだろうか。どうしてもこれがなければならないというお考えの基本問題ですね、今の輸出入取引法ではあそこが駄目なんだという点についてお伺いしたいと思います。  それから次は、これは消費者のかたといいますと、そうですね、嶋津さんがいいのですが、お伺いしたいのですが、硫安工業合理化及び硫安輸出の調整云々という本法案提案理由をお伺いいたしますと、御反対になつているそのことがむしろ否定されて、勢い輸出価格の犠牲というものが、国内消費価格しわ寄せされて、こういうふうに転嫁されるということをむしろ防止できるんだということであり、且つ生産業者を初め、硫安工業そのものの安定と、こういうものを狙つておる。ちよつと見れば薬の効能書みたいになつておるわけで、そんな、みんながいい、延いては国民全体が儲かるというようなことは、これは当然無理だと思うのですけれども、それにしても御反対になつていることと、提案の理由というものは真正面からぶつかつておるわけです。従つて御主張になつているのは多くの点を掲げられておりますが、あなたの場合……。そういう価格カルテルをやれば、勢い国内消費価格にも何らかの影響がもたらされるんじやないか、零細農民に対する犠牲、これがむしろ高度のしわ寄せになるんじやないだろうかという点がやつぱり中心のようにも伺えるわけです。その他の御主張は大体日本農業政策についての御議論のように伺えるわけです。従いまして本法案に直接の御反対としては、もつと何と言いますか、具体的な零細農民なり、そういつた人たちの立場から御主張があれば、この際いい機会ですからお聞かせを願いたい、この二点でございます。
  62. 水野一夫

    参考人水野一夫君) 私から……。お話のように独禁法の改正ができましたのでありますが、私ども初めからその改正の範囲ではやはり足りないということを、最初から考えておつたのであります。改正案が出るということも承知いたしておりましたが、それでは今後の輸出を円滑にやる、その他いろいろな問題の解決に困難である。どうしても輸出会社というような、一つの特別な機構が要るというふうに考えておつたのであります。と申しますのは、価格の協定だけをいたしましても、生きておる実際の取引、毎日世界のどこかでは取引が新たに起り話が継続しておるわけでありますが、それをとらまえて契約にまで持つて行くためには、単に価格の協定をするというだけでは実行には程遠いことでありまして、これによつて輸出会社ができれば、そこで会社の独自の判断で、合つた価格で出すということ、世界市場の大勢を見て最もいいところへ出して行くということが判断ができるわけであります。単に業者が、この程度で出そうじやないかということを話合つただけでは、一向実際の生きた商売はできない。これは私が先ほど申上げましたように、非常にその点、独禁法がそこにおいてはありますし、非常にまずくて、そのための不利というものも少くとも数ドルは常について廻つているんじやないというふうに考えておるのであります。で、その価格の協定と申しますか、価格についての判断を一つの機関で以て世界の市場を睨んできめて、即時それを実行に移し得るような態勢でなければうまくない。それから輸出会社も、又お説の効能書のようなことでございますけれども輸出会社を設立することによつてその輸出の出血がどれほどあつて、それは国内価格に転嫁されて行つていないということは消費者大衆にも納得はできるわけであります。これは効能書のほうになるが、やはりそういう一つの機構がないというと、転嫁しないと言つてもそれぞれの会社のその帳面の中につけ込んでしまえば或るとき棚上げして見たところで、結局はこれは税法上の建前から申しまして、大蔵省の監督の建前から申しましても、そういう特別な除外も認められないだろうし、実際にはごじやごじやになつてしまうということになるだろうと思います。そういう観点からやはり価格の協定は無論のことでありますが、それをもう一歩越えて一元的機構が要る。これに関連いたしまして先ほどもちよつと申上げましたように、外国は多くこういう何か一元的な窓口で処理いたしているわけでありますが、非常に機動的な商売をやつている。日本がこれだけの輸出潜在力を持ちながら、そういうものがないために従来過去においてはドジを踏んで来た。私ども単に輸出会社というような一つの一元的な機構がなければ将来、現在の輸出力を進めて行き、更に増産をして市場を拡めるということの実行ができないというふうに考えております。
  63. 藤田進

    ○藤田進君 ちよつと嶋津さんのお答えの前に……。そういたしますと、結局やはり会社の設立ということが現行法ならばこのような、何と言いますか、言葉がきついかも知れませんが、独占ですね。これは確かに今の御主張の輸出会社ができますと輸出のルートまで一元化しよう、一元化即これは輸出会社独占ということになつてこそ初めてあなたの主張されている内容がやはり充実されると思うのですね。そのような独占的な一元化ということで、これについてはやはり現行法では、殊に輸出入取引法では事足りないので本法を必要とするということで、結局会社設立というところに、そしてこれに附帯するいろいろな商標の濫用の防止とかいろいろな罰則がつけられているわけでありますが、このことがやはり主眼点になつておる、こう解せられますね。価格協定だけでない、よろしうございますね。
  64. 水野一夫

    参考人水野一夫君) 原則的にはそういうふうにお考え下すつていいと思います。ただ先ほど参考人の藤野さんからお話がございましたが、実際のそういう輸出計画会社でいたしますが、実務はどこまでも餅は餅屋で、経験によつて業者の力を借りて進めて行く。そうしてその輸出会社は極めて簡素な組織人員でやつて行く、経費をかけないようにするという趣旨で、できたらそういう運用が望ましい、こういうふうに考えております。
  65. 嶋津猛

    参考人(嶋津猛君) 今の最後に言われました零細農民立場からの硫安に対する考えと申しましても、実はその問題になりますと若干御議論になると思いますので、私どもの会の性格から見まして、農業一般という立場から実はいろいろ御意見を申上げているのでありますが、もう一つはそれを、お説と一部のいろいろな問題は確かに私わかります。あると思います。素朴な農民考え方は、先ほど来申上げましたようにいろいろ申上げたのでありますが、一番問題は日本農業の非常に生産性の低いこと、この問題と、一般産業、特に私どもが単に肥料工業のみを考えて、この問題が具体的に我々のほかの農産物価格との関係、或いは肥料価格との関係が本当に食糧増産をする方向に向う態勢が農民の中から出て来るということは、例えば今行政組織と申しますか、そうした形の中で実際大体行われておることがこの法律を作ることによつて新らしく出て来る問題は、そうたくさん我々の立場からは期待できないのであります。そうした観点に立つて若干危惧する問題等も含めて、農業、全産業、国のそうした大きな一つの産業経済と申しますか、そうした観点から特に当委員会等におかれましては、この農業問題等の観点において、肥料の問題を特に慎重に御検討願いたい、これが結論的に率直に申上げた意見であります。非常に漠然としますが……。
  66. 小松正雄

    ○小松正雄君 私はさつき、本日の参考人のかたがたの御説明によりまして詳しく関係当局に御質問申上げたいと思いましたが、あなたの日程を聞きますと、期日も僅かでありますし、その間にそういつたものを差挾むということについても、本委員会運営にたまたま支障でもあつてはということを考えますと同時に、引続いてこのことが審議されるのでありまして、その場合にそういつた関係当局者がおいでになるということでありまするなら、明日わざわざおいでにならないでもいいということを考えまして、それでありますならばさつき申上げたことは取消しても差支えありません。
  67. 中川以良

    委員長中川以良君) それは一応後ほどお諮りいたしたいと思いましたが、丁度只今御発言ございましたのでお諮りいたしますが、明日午前中通産省関係、農林省関係出席を求めまして、この両法案に対しまする質疑を続行いたします。午前中で打切つて、午後から電源開発のほうに移りたいと思いますが、如何でございましようか。
  68. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 藤田委員からの御質問で、水野さん等の関係において関連質問が……明日水野さんおいでになれないのでしようね。おいでになれれば明日で結構です。
  69. 中川以良

    委員長中川以良君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  70. 中川以良

    委員長中川以良君) 速記を始めて。
  71. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 只今藤田委員からは、独占禁止法の関係のみならず、輸出入取引法との関係においても、質問せられたと思います。ところがその、水野さんのお答えでは、独占禁止法の関係だけでお答えになつておると思うのですが、具体的に言いますと、独占禁止法のほうは確かにカルテルだけなんですけれども輸出入取引法のほうは、これはカルテル価格協定をするのみならず、一手に輸出することができるということに今度なつておるのですね。その一手に輸出するということにすることまで今度の輸出入取引法で認められておるということになると、いよいよ藤田委員の質問せられるように、今回輸出会社まで作る必要がどこにあるのだ、そういうポイントになつて来るので、私はちよつとお尋ねしたかつたのです。
  72. 水野一夫

    参考人水野一夫君) 独禁法と輸出組合のことをくるめて申上げたので、その点明瞭を欠いたと思いますが、輸出組合法の運用については実際に各業界でいろいろ研究もされ、論議されておりますので、硫安輸出のような特に困難の多い輸出処理について現在の組合法の範囲では十分な活動が期待できないという点にあるわけであります。やはり硫安についてはこういつたはつきりしたもの、一面政府の支援と、それから厳重な監督を仰いで、ガラス張りの中でやつて行くということが必要だと思います。
  73. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 その点輸出入取引法の今度の改正になつた点をもつと業界でも御研究になり、政府のほうでも御研究になる必要があるのではないかというのは、今度の輸出入取引法によりますと、もうカルテルの形こそ輸出組合と言われておりますけれども、実際的にはそれが一点も輸出のできない、アウト・サイダーも完全に抑えられ、非常に強い法律になつておる。その点だけから言いますと、一手に輸出をし、それを採算その他バランスを見て行く点も重点を置いて行くという、そういう考え方から行くと、今度の輸出入取引法による輸出組合の一手に行くという行き方を十分活用すれば、目的が達成するのではないかという点、私は法律上確かに問題があると思う。問題はなぜ行かないかという点を私はまだほかに聞いておる点もありますけれども、その点を加味してもまだ疑問が残ると思うのです。こういう点は私は業界でも御研究になり、それから政府でも御研究になつて、もつと輸出入取引法の改正が強力に行われても、なお且つ足らないという点を法律的に説明してもらわないと困るのだと思うのですね。
  74. 水野一夫

    参考人水野一夫君) 御説の点はなお私ども考えて見なければならんと存じますけれども、この法案国内需給安定ということとくつついた不可分の関係にある法案でありまして、国内価格数量の充足、価格の安定、それを前提にして余つたものを国外へ輸出する、そしてその経理をはつきりしてその損失をそこに、その一つの機構に棚上げする。そうしてそれはすべて政府の監督の下にやつて行くというような点がこの法律によりますれば最もはつきりして、そうしてもつとも活動的にやれるというところで更に組合法の枠内でやるよりも明瞭であり、一歩進んだやり方だと私は信じておるのです。
  75. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 狙いどころは重々承わつてよくわかるのですが、その狙いどころにぴつたりする点がすでにあるというときに、もう一つ作らんならんかという点なんですね。そこが我々にわからん。これについて一つこれは政府側で御研究願つたほうがいいのか知れませんが、もう御趣旨はよくわかつておるのですが……。
  76. 水野一夫

    参考人水野一夫君) 私も組合法を十分研究しておるわけではございませんけれども、この趣旨はメーカーよりもむしろ業者が主体になるのじやないかと思うのです。まあ外国商社もこれに入り、むしろメーカーはその一員と言いますか、入つてもいいという程度の趣旨であるように思うのでありまして、そういう形態でこの困難な輸出問題の解決には不適当じやないか。それから先ほど申しましたように経理的な遮断、国内の転換の防止というようなことも組合法では不十分じやないかというふうに……。
  77. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 その点も輸出入取引法ではメーカーであつても、それが輸出する能力と意思があれば、これは輸出業者と見て、その輸出業者輸出組合という特別組合を作つて、それが一手で輸出するということもできる、そしてアウト・サイダーを完全に抑えてしまうことができるという建前になつておるのです。ですから業界では独占禁止法で緩和をせられたことだけを対象にして御研究にならないで、もう一つ全然別の輸出貿易立場から、先般の国会で輸出入取引法というものが非常に大幅に改正せられて強力な輸出統制ができるようになつたというそのことを併せてというよりも、むしろそれに主力を注いで御研究になつて、そうしてなお且つこの輸出会社の設立が必要があるならば、その理由さえわかれば私どもは別に異存がないのですけれども、それが法律的に輸出入取引法による組合で十分行けるということだと、もう一つこれを作らなければならん、而も損失が起つた場合にはどういうことになるか、先ほど水野さんのお話でありますと、損失政府に補填させようという考えは毛頭ないというお答えでありましたので、非常にはつきりしたのですけれども大仲さんのほうは團さんの御質問に対しては損失は出て来るだろう、補填してくれればしてもらいたいという希望があるんだというようなお答えなものですから、いよいよあいまいだということになるので、そうなりますというと、別に道具立てが、一般的な道具立てがあるんだと言えばそのほうで以て行つたらいいんじやないか。別にこれを作らなければならんというと、何かそこに損失補填の必要性を将来見込んでおるということにでもならんと理窟がつかんじやないかというようなことにまで議論が発展するわけなんだけれども、そこらがはつきりして来ますれば私は別にとやかく言うのじやないのです。
  78. 中川以良

    委員長中川以良君) 硫安工業会のほうの、ちよつと申上げますが、今豊田委員の御意見誠に御尤もな点もございますので、今日直ちに御即答は或いは困難かと思いまするし、又時間がございませんので、硫安工業会の御意見を我々法案審議上参考になるものは改めて書面でもお差出し願いたいと思います。
  79. 藤田進

    ○藤田進君 一つ私ちよつと関連でございますが、私がお尋ねするだけであなたがたのほうの意見なりは又判断すればいいと思つておつたんですけれども水野さんの言われた御研究になる場合の御参考までにですが、本法の必要なのはいろいろな条件は御主張のようですが、要するに外国商社は入れないというような御議論であつたように思うのです。果してそれは本法の狙つておるところかどうかという点について直接政府当局についてお聞き願つてもいいんですが、若干そこらは少し違うのじやないかと思つておるんです、むしろ……。
  80. 中川以良

    委員長中川以良君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  81. 中川以良

    委員長中川以良君) 速記を始めて。
  82. 水野一夫

    参考人水野一夫君) 実はその過去の私どもの苦い体験で一番困つた点は、我々が考えておることがその日つつ抜けにヨーロッパに電報を打たれておる。非常にまあ電報、電話で行つておるわけなんです。詳細に行つておる。あとから本当に口あんぐりのようなわけなんです。これはもう今日のような状態ですと、大した能力のない者でも外国人が一人おれば……朝夕の新聞を丹念に読めば、報道関係が非常に敏活でいらつしやるんで、もう相当なものが新聞なんかにすぐ出ます。我々がこれは出ちや困るなと思うことがどんどん翌朝出ておる。会議に出てなくして新聞を見ればわかるということをよく言われる。そうして商売上の機密が新聞に出ないところでもちよつと力を入れれば余り能力のない人が一人、外国の商社の依頼を受けてやつておる人が一人おれば、もう簡単に情報がとれるような今の状態なんです。これをまあ仮に組合でやつたといたしましてその機密の保持、そうして機動的に商機をつかんで行くということが、私はその根本が無理だと思うんです。先般も朝鮮に二十万ドル余輸出契約をいたしましたときにも、ベルギーは御承知のように相当大きな硫安生産を持つております。一人の人が飛行機で飛んで東京へ来まして、そうしてJPAと一人で話をして行く。だからここだと思つたら思切つた値段を出して取極めて行くというようなこともできる態勢なんです。それに対応というと余り、そこまでは行かないにしても、まあ組合法的な運営では到底外国のこういう敏活な商売の場を張つて行くということはむずかしい現状ではないかと思います。
  83. 中川以良

    委員長中川以良君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  84. 中川以良

    委員長中川以良君) 速記を始めて。  私一点鷲見さんにお伺いいたしたいのですが、保管団体ですか、これは大体この前も農林大臣に私は質問したのですが、まあ全購連がその保管団体に目されているわけですが、全購連がそうなつた場合に、今の肥料商業組合等はそれで差支えないものですか、或いはこれに対して御意見があつたら承わりたいと思います。
  85. 鷲見保祐

    参考人鷲見保祐君) 保管団体はお答え申上げますが、農林大臣の指定ということになつております。おのずからそこに団体の資格というものが生れると思います。で、我々のほうにも有資格者として目せられるべき人もありますし、団体もありますし、又我々見ましても不適当であるという団体もあると思います。法文的には一応広義に鮮しますれば会社団体であるという意味合いにおきまして、法文上におきましては全購連というふうに決定せずに、農林大臣の指定する保管団体ということにしておきまして、その後のことは運営上適当なる商人系の団体も或る場合にはその保管団体に入れて頂きたいし、なければこれは止むを得ない、かようにお取計らいを願いたいと思つております。
  86. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 この問題に関連いたしまして、この前私が農林大臣に質問をしたときに保管団体を全購連だけに限定することは当を得ないのじやないか、というのはこの需給の調整上配給しているのは全購連と肥料商の団体と両方あるのじやないか、という点を質問した際に、金肥商連という組織が完備したならば商業者団体もこれに指定するという明確な答弁であつたのです。ですからそれは金肥商連の組織が完備せられれば当然指定されると思うのです。又そうでなければならないと思います。
  87. 鷲見保祐

    参考人鷲見保祐君) 只今豊田さんのお話でございますが、現在の金肥商連は経済行為を取扱つておりません。又母胎がさような組織になつておりませんので、只今の保管団体の風格は現在私はないと厄つております。但しその下部組織をしております各単位組合はこれは協同組合でありますし、又メンバーの中には有力なる団体もありますので、こういう団体が複数で折合うならば、その保管数量の大小は問わず、或いはローカルに、或いは地理的に有利な人がなきにしもあらずと私ども考えております。この点において全肥商連といたしましてはこの保管問題には御辞退申上げますけれども、その際メンバーの利益を代表いたしましてかように有力なる又適格者がありました場合には御配慮を頂きたい、かように思つております。
  88. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 私はばらばらでやる場合はこれは恐らくは認められんだろうと思います。私に対する農林当局からの答弁を見ましても……、併し単位商業協同組合がこれは金肥商連を本当に経済事業も行うようなふうにすることはできることであり、法律上認められているんですから、そこまで行かれて金肥商連が指定団体になるというのが当然であり、それぐらいの元気がなければいかんのじやないかと私は思つております。
  89. 鷲見保祐

    参考人鷲見保祐君) 無論将来に対しましてさような考えを持つております。
  90. 中川以良

    委員長中川以良君) それでは本日はこの程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 中川以良

    委員長中川以良君) 参考人のかたに申上げます。本日は早朝より長時間に亙りまして尊い御意見を承わり、又いろいろ御陳述を承わりまして誠に有難うございました。本法案審議のためにも尊い参考となりましたことをお礼を申上げます。  それでは本日はこれにて散会いたします。明日は午前十時より開会いたします。    午後一時五十六分散会