○
参考人(
友末洋治君) 参議院の
地方行政委員の皆さんにはかねがね
地方自治確立のためにいろいろ御高配を願つておるのでありまするが、特に
地方制度の
改革につきましては先に私
どもの
意見を御聴取願い、更に重ねてお聞取りを頂きますることは誠に感謝に堪えないところでございます。この
地方制度調査会において当面
答申を要すべき
事項に関しまするところの各
部会の
答申原案に対しましては、
知事会といたしましては会の中に設けておりまする
調査委員会を三日間に亘りまして開催いたし、慎重に
検討をいたしたのであります。更に
全国知事会議を開会いたしまして、この
会議におきましても慎重な論議を遂げまして、これに対しまするところの
意見が一応きまつておるわけであります。それらの要点につきましてここに御説明を申上げたいと存じます。
お
手許に差上げてございますととろのメモによりましてお聞きとりを頂きたいと思うのでありますが、先ず第一に
行政部会関係の
答申原案についてでございます。この
行政関係の
答申原案を全般的に見ますると大体常識的な
結論に相成つておりまするような感じを持つのでございます。
起草委員が各
委員の
意見をできるだけとり入れつつ、我が国の
実情に即しまして今後の
地方行政をできるだけ民主的に又能率的に
改革するという点について払われました慎重な態度と苦心のほどは私
ども十分にこれを認め得るのであります。かように
結論が比較的穏当な点に出ました
基本のものは、
起草委員が九名でございまして、この九名の中に御覧の
通り各方面の
学識経験者がおられたということによるのではなかろうか、かように拝察をいたしているのであります。併しながら
答申原案の前文にもございますように、取りあえずという政府の二十九年度
予算案、
法律案に盛込みたいという要請に基きますところの時間的な制約がありましたために、応急的な対策というものに重点が置かれまして、
便宜主義の色彩が濃厚であり、根本的にもう少し筋を通すという点にやや欠けておりまするうらみがありまするように考えられるのであります。それらの点は国と
府県と
市町村とに亘りまするところの
行政の
責任がさような
関係であいまいに相成つておることにあるのであります。かように
行政責任を不明確にいたしておりますることは、従来の体験から申しますると、いきおい
中央集権化の方向になりますところの危険が必ずあるのであります。現在におきましても一番国及び
地方を通じて困りまする問題は、
責任の不明確のために事実上国の
地方自治に対しまするととろの
干渉圧迫が非常に多いから、無用に
地方自治体というものが苦しんでおるということがあるのであります。この弊害をなくしますることが今回の
地方制度改革の一つの大きな狙いでなければならんと思うのであります。この点がどうも
便宜主義からまあ一応この
程度でこの際納めておけば無難だからという、多少安易な
考え方から勢い
責任の不明確な点をそのまま残されておりまするような気持がいたすのであります。
で、例えて申しますれば、第一の
府県の
性格に関する
事項でございます。その中で
国家的性格を有する
事務を処理することをもその任務とするというふうに規定されておるわけでございます。正しく実質上はさようなことに相成つておるわけでございます。
行政事務の徹底的な再配分をやりまして国に属しまするところの
委任事務は
最小限度にする、それ以外の
事務は
府県市町村をしてそれぞれ
責任と工夫を以て処理せしめるというふうに、そこにもう少し明確なる線というものを置きますることが
制度改革及び
地方自治の確立に大きな影響を与えるものと私
どもは考える。この線に沿うて飽くまでも
府県というものは
地方自治体であるというこの点を明確にいたし、そうして国との
関係におきましては、国の必要といたしますところの
事務を県が或いは
団体委任、或いは
機関委任を受けまして、そうしてその線に沿うて国に協力を申上げる。その範囲におきましては国の厳重なるところの
指揮監督を受けることは勿論でございます。併しながら
地方自治の仕事に関しまする範囲におきましては、国といたしましては干渉し或いは
指揮監督を振いますることは穏当でない、飽くまでも
地方の創意と工夫による
責任によりまして一自主的にこれを処理いたしますることが適当かと思うのでございます。その
地方の
事務と国から参りまするところの
委任、
委託事務との間に
はつきり線を引いておきますることが、国のためにもよろしいし、又
地方自治の
育成強化の上においてもよろしいという固い確信を持つておるわけでございまするが、さような線から考えますると、県の
性格に
国家的性格を有するところの
事務を処理することを任務付けるということは少し如何かと、かような考えを以て、それに沿うた
修正意見を提出いたしておるのであります。これは勢いこの
府県の
自治事務を極めて少くし、そうしてだんだん
知事の公選も官選に切替えるところの含みを持つた
考え方であるというふうに
地方団体及び
地方の住民は憂えておる点でございます。
更にこれと密接な関連を持ちまする
事項といたしましては、
地方事務官の
制度を活用する、大胆に露骨に表現されておるのであります。で、
地方が国の
事務の
委任を受け或いは委託を受けまして処理する場合におきましても、何も
地方事務官の
制度によつてこれを行う必要はない。で、
地方の
自治体の職員をもつてこれを行わしめますることもできるんであります。特に県庁の中に
地方公務員と
国家公務員と二つおりますることは、待遇の点或いはその他の点、全体の融和を
図つて一身同体と
なつて
地方の
自治事務をやり又国にも協力いたすという点から考えまするとどうも納得できないのです。強いて
地方事務官の
制度を活用せんといたしますことは、強いて
府県の
性格に国家的な
事務を処理する任務を与えたことに基くものでありますると同時に、今後
出先機関の廃止とか或いは
事務の再配分をできるだけし易いように
便宜主義から妥協されましたところの線ではなかろうか、かように考えるのでございます。これはのちに出て参りまするところの
警察官の身分とも非常に密接な
関係を持つておりますところの重要な点でございます。即ち形式は
地方自治にして置きまして、実質におきまして
地方事務官というものを置いて
中央が牛耳つて行こうという伝統的な
封建思想に基きますところの
考え方である。この極めて極端な封建的な思想を打破いたしますることが
地方制度改革の
基本でなければならん。さような点からなお
地方事務官制度を活用するというふうな露骨な表現が勢い出て来るのではなかろうかとかように考えているわけでございます。
なお、
警察行政につきましては
答申原案で御覧の
通り、一応
府県の
自治体警察を創設するということには相成つておりまするが、更に
中央機関を設けることに
なつております。更に
国家的事件につきましては国が
指揮監督をする。又
府県の
自治体警察の身分につきましては特別な
取扱をする。この特別な
取扱というものが実は
はつきりいたしておりません。完全に
地方公務員といたしまするのか、或いは
地方事務官と同じように、昔ありました
地方警視、
国家公務員を以てこれに対処いたしまするのか。この
はつきりしないままの
特別取扱という表現に相成つております点。更に
警察費につきましては一定の
負担を国がする、二分の一するのか、或いは又国の
治安事務の執行に要しまするところの費用は国が
負担するのか。さような点が実に不明確な表現に相成つているのであります。
警察の
事務のうちには
府県ごとで処理し得ますところの
自治事務、これは相当たくさんあると思います。併しながら国全体の立場から
府県の区域を越えて処理しなければならん事案、即も国際的な犯罪でありまするとか、或いは
通貨偽造の犯罪であるとか、或いは相当大規模な騒擾の罪であるとか、さように
府県単位の区域を以ていたしましては不十分なものにつきましては、国の
治安事務としてこれを処理すべきではないか。このできまするところの
中央機関は、一面におきまして
府県自治体警察の
相互連絡、或いは
府県自治体警察を以てなすことが適当でない施設の整備、更に進んで国全体として、国の
治安確保のために必要といたしまするところの
国家警察事務というものを処理いたしますることが実際必要であり、適当なのではなかろうか。かように実は考えられるのでございまするが、それらの点は実に不明瞭でございまして、すべて
警察というものは
府県にやらせる。そして国が一部の
財政的な権限或いは
人事権というものを掌握いたしまして、実質におきましては
国家警察の形に持つて行こうというふうに想像されないこともないという点が、すべて各方面で憂えられておりまするところの
重要ポイントであろうかと思います。これらにつきましては、もう少し明確に、
中央機関の政府、
県警察職員の身分、更に且つ
地方との
財政上の
負担区分、これらを本当に
はつきりさしておきませんと将来思わざる不幸な事態が発生することなきにしもあらずというふうに考えざるを得ないのであります。従来
国家警察が挙げましたところの功績もございまするが、国家のために与えました損害も決して少くない。この損害だけは将来におきまして、絶対になくいたしますることを、この際私
どもは慎重に考え、慎重な態度で臨むべきではないか。強力な権限を行使いたしまする
警察において、特にその感を深くいたす次第でございます。
次に
義務教育行政につきましては、一応原則として
府県単位に
教育職員の
行政財政の管理をいたすという線が
はつきり出ておりまするが、
五大市につきましては特例を設けまして、
五大市の
責任とされております
義務教育に従事いたしまする
教職員の
人事、給与、その池の
行財政の
管理権というものはなかなかむずかしい問題でございます。過去におきましても、
市町村単位でやつてこれではいかない、或いは教員の俸給の不払、或いは教員の
人事の停滞に伴いまするところの
教育全体の沈滞という苦い経験を持つておるわけでございます。そこで今回の審議に当りましても如何なる単位におきましてこの
義務教育を扱うかということが慎重に
検討されたと思うのでございますが、
広域自治行政を
取扱いまするところの
府県単位がよろしい。成るべく広い範囲において行うことがよろしい。一つの
府県の中で市の
教職員、県の
教職員の二つがありますることは、或いは給与の面或いは
人事異動の面におきまして非常なさし障りが実際の面に出て来る。
財政力は
府県と市というものが違いますれば、まするほど起つて参る。その
人事の不公平な
取扱というものが実質的に
教育全体の効果に及ぼす影響というものは測り知るべからざるものがあるということを考えざるを得ないのであります。
従つて飽くまでも
広域単位においてこれを行うことが
教育自身からいつて本当であるということの判断を下す以上は、
五大市に限り、如何に政治的な運動がありましようが、さようなものに考慮する必要がない。断固として
教育の将来性を考えて線を引くべきではなかつたか、かように実は考えるのであります。
更にこの
教育委員会制度を現状のままに存置するというふうに相成つております。併しながら
委員そのものの
公選制は廃止する、
公選制によりまするどころの
教育の政治的な
中立性が保持されておりません。現在これはその
通りであろうと思います。更に
一般行政委員会の問題につきましては政治的に特に強く要請されまするところのものはこれだけは存置してあとは原則として廃止するという線を
はつきり出されておる。この
公選制廃止とそれから
委員会制度の
整理統合の
基本方針からその
教育委員会を眺めてみました場合におきましては、
現行通りの
行政機関としての
行政委員会として存置する必要はない。多数の
委員によりまするところの
行政責任の
負担は日本ではなかなかうまく参らないのが
実情でございます。
責任のなすぐり合いと申しまするか、勢いこの全
責任を持つて
教育内容をよくして行こうという熱意というものはどうしても薄らいで来るのが各
府県の
教育委員会の
実情じやないかと私は思う。そこでこの
委員会は
行政機関としてでなく、
行政責任は市長に統一をいたし、そうして
諮問機関にいたしますることも
教育の
重要性から考えて如何かと思われまするので、
行政機関と
諮問機関の中間に位いたしますところの
審議機関程度、即ち
教育に関しまするところの
人事、予算その他の
重要事項というものはこの
審議会の議を経て長というものが全
責任を持つてそれを行う。
教育も勿論政治的に
中立性を保障しなければなりません。又
地方の
実情にも沿うた
義務教育が実施される必要がある。さような面からいたしまして、最も適当な人がその
制度に関与されますることが最も
実情に適応するのではなかろうか。かように考えて私
どもは
教育委員会は
現行通りでなく、
審議機関としてこれを存置するほうが適当であるというふうに考えておるのであります。
なおいわゆる
内政省の問題といたしましては、一般の注目をあびておりまするところの
中央の
機関創設の問題でございます。
原案におきましては
地方におけるところの
行政の
総括機関として強力な
中央機構を設置するというふうにあります。これをそのまま眺めてみますと、どうも
地方行政に対しまするところの権力的な統制をもつと強化しなければならんという色彩が強いようでございます。ここに実は問題があるのであります。国と
地方自治体との
関係は、飽くまでも権力的な
干渉支配というものを
地方自治の建前から除いて参らなければならん。併しながら国といたしましても
地方自治の本旨を実現いたしまするがためには、やはり
地方自治育成強化のために必要な干渉、助言、或いは
調整機関の作用というものがされなければなりません。又
地方といたしましても、国の仕事に対しましては
委任を受けて極力
中央に協力しなければならん一つの線を
はつきり引いて、そこにお互いに
協力態勢の実を挙げまして、相共に日本の復興に精進いたす、かようになすことが正常な
関係であろうかと思います。これが現実におきましては殆んどできておりません。
制度改革をいたしましてさような正常な姿をここに築き上げ、築き上げました以上は国からそれを乱さない、
地方から乱すはずはございません、国の各省がそれを乱さないというふうに私
どもは何らかの方法で保障が欲しい、さような意味におきまするととろの
中央機関は是非必要じやないかと、かように考えておるのでございます。内務省の復活を夢み希望しておりまするところの気持は毛頭ないことを御了承願いたいと存します。
第二に
財政部会の
関係でございまするが、これは
行政部会と全く異なりまして全般的に見まして満足できない、又賛成でき得ないものでございます。恐らく採決をいたしたならば全部
原案が否決に
なつたであろうということを私は想像いたしております。即ち第一は各
委員の
意見、特に実際に
財政を
取扱つておりまするところの
地方団体側の
委員の
意見というものが
十分消化もされてない。消化されておりません以上適当にこれを取捨選択することができないのは勿論であります。なおこの
財政収支に関しまするところの数字的な
検討が総合的にされておらないような気持がいたすのでございます。
知事会といたしましては
制度改革におきまするところの
財政収支の面は、経理的に長期間に
亘つて調査をいたしたのでございますが、お
手許に差上げてございまするところの
財政規模の
推計表に現われておりまするような状況でございます。これも御参考に一つ後ほど御覧を頂きたいと思います。そこで第一回の
答申原案の
部会の審議の際にも、私からお
手許に差上げてございまするような
質問事項を提出、事前に申上げ、そうして
部会で答弁を求めたのでございまするが、殆んどこれらの質問に対しまするところの満足すべき答弁は得られなかつたのでございます。又
地方税財政制度改革の基礎となりまするところの財源の
所要額の総額、それらも杜撰でございまして、又改正の
基本方針というものも
はつきりしておらない。なお進んで
地方税の改正につきましてはその
内容等も
地方の実態から考えまして全く適しない点が非常に多い、いずれの面から見ましてもどうも我慢ができないというので
起草委員は熱心に
検討されたのでございまするが、遺憾ながら強硬な全面的な再
検討の要請を申上げざるを得なかつたのでございます。かようになりました根本の原因は小
委員が僅か三人でございます。その二人は京都に住んでおられるかたでございます。東京に住んでおられるのは一人でございます。従いまして
委員のいろいろな都合もあ
つて会合をしばしば設けられますことに容易でなかつたろうということも実際想像される。初めから
学識経験の
財政部会の
委員というものの数が少な過ぎたということをあとから実は非常に悔んでおるよろな次第でございます。要するに全面的にどうも十分な
検討が行あれていない。税というものをこういじくり廻して一応けりがつけられて
答申に
なつておるというふうな、甚だ
起草委員に対しては相済まん無礼かとも思いまするが、率直に申上げますると、そういう感じを持たざるを得なかつたのでございます。そこで今再
検討を要望いたしました要点を申上げますることも時機であるかどうかと思いまするが、折角の機会でございまするから一、二申上げておきたいと存じます。
第一は
地方財源所要額の総額の問題でございます。
答申原案によりますると、その中で現行の
地方財政計画に不合理があるということを認めまして、三百億円
程度その不合理の是正に必要だという線が出されております。その内容も
説明書に詳しくつけてございまするが実はかように大ざつぱに出されては困るのでございまして、
税制度というものは
府県と
市町村と体系を異にいたしております。そこで
税財政制度を考えます場合におきましては、
府県分でどう、
町村分でどうかように
はつきり線を引いて最初から出発いたしませんと、ここに適当なる
税財政制度が生れるはずはないので、一本といたしまして大ざつぱに三百億円ぐらいだろう、
府県はどうか、
市町村はどうかといつてもその線が
はつきり出せないようなことで、どこに
税財政制度を
検討したかと言いたくなるくらいでございます。私
どもは先ほど申上げましたように長期に亘つて
検討いたしました結果、お
手許に
推計表がございますように、現在の
地方財政計画におきましては三百三十二億四千五百万円の不合理があるというふうにこれを断定いたしております。これに対して
答申原案で推定されておると思われます点を特に私
どもが引張り出したのでありまするが、百七十四億四千二百万円ということに
なつておる、相当の開きがございます。その開いておりまするところの
ポイントは、
夏期手当が本年は〇・二五、年末から繰上げ支給されております。その穴埋めもできておりません。それから昨年の年末に〇・二五の
給与改善が行われたのでありまするが、本年も必ずこれは行われるべきでありますがそれも見込んでございません。宿直、日直の手当も
国家公務員に比較して
府県分の単価を特に理由もなくして切り下げております。それから
補助基本額の寡少によりまするところの
地方の
超過負担分、これらも一応は見ておりまするが、ただ職員だけでありまして、
事務事業についての寡少額は見ておりません。下から仔細に
検討いたして参りますと、
地方の枠といたしましては七百四十六億、
地方財源分といたしましては二百五十七億、最後の附記の欄に掲げてある数字でございます。でこれを元にいたしまして、
府県分といたしましては現在の
地方財政計画の不合理というものが二百六十億ある。かような基礎を持つた数字でございます。更にさようにいたしまして、現在の
地方財政をあるべき姿に一応返して行くということが第一次の操作でなければならん。第二次におきましては、
制度を
改革いたしました場合に、
事務の減少、
整理節約に伴う
節約額がどのくらい出るか、或いは
事務の増加に伴いまするところの新しい
財政需要というものがどれだけふえるかということを仔細に
検討しなければならん。それは
行政部会で
はつきり線が出ておるのであります。即ち
国家警察は廃止して、
府県自治体警察になるということになりますれば国の予算はそれだけ減るのであります。又
自治体警察を
府県に持つて参りますと
市町村の
財政の枠はそれだけ減る、かように差引き増減をいたさなければならんわけでありまするが、これが実に
はつきり出ていない。ただ単に大ざつぱに
節約すれば二百億円
程度が出る、その
節約の内容も現在の
義務教育教職員を五〜六%
行政整理をするとか、六・三制等に対しましての
制度改革の
結論も出ていない。
財政面から勝手にやればこれだけ出るというふうな、数字を余りに軽率に
取扱い過ぎる、さような問題が実はあるのであります。又
社会福祉制度を今後どう持つて行くか、又
結核療養制度を今日のごとく
生活保護法の建前でなく直接誰にも
治療補助をやるという行き方で行くのか、或いは元の
財政負担のない者だけに
生活保護法の適用をさせて行くほうがよいのか、
結核行政並びに
社会福祉行政というものを今後日本としてどの
程度にどう持つて行くかという
行政的な
結論が出ません以上は、
財政的には
節約額を見込むのは時期が早いのではないかというような気持がいたしておるわけでございます。さような
関係で
節約の面につきましても非常に問題がある。更に
事務の増加に伴う経費、即ち
府県分といたしましては
警察が参りますれば三百八、九十億かかる。
出先機関を廃止いたしましても仕事が
府県に参るのでありますからそういたしますと百三、四十億はかかる。いずれも現在よりも二割
程度かような
制度改革をすれば
節約ができるという線で、さようなケースを慎重に考えてはじいたつもりでございます。そういたしますと
制度改革後におきまするところの
府県として減少いたします分は百四十億でございます。中味といたしましては、
警察関係が二割
節約といたしまして九十六億、
出先機関が二割やはり整理できる経費といたしましては三十四億、その他のものが十億ということで百四十億を見込んでおるわけでございます。
なおこの新たに増加いたしまするものといたしましては、
府県分が五百二十二億、
警察と出先
関係これらでございます。これらは一部は国家の予算が少くなり、或いは
市町村の費用が減少するのであります。全体といたしましては二割
程度、即ち百三、四十億のものがかような
制度改革によつて
財政の需要の枠が少くなるという
結論でございます。さようにして先ず現在の姿をあるべき姿にかえす。
制度改革後におきまするところのプラス・マイナスを差引きまして平年度におきますところの
財政規模、ここにございますように五千六百三十四億円というものを目標にいたしたわけでございます。これを目標にいたしまして今後の
府県税財政制度というものを私
どもは
検討いたしております。ただ
行政部会で
出先機関は例示したしまして、これこれのものは廃止することを原則とするけれ
ども、
検討するということがつけられましてそれで
検討するという建前から申しますると、具体的な線が
はつきりせん以上今直ちに
財政需要に上げることが適当でないといたしますれば、百六十九億円をこの規模から下げる。又
義務教育のうち五大都市の
義務教育は
五大市でやるということになりますれば、百六十四億円
府県の枠から少くなる、小計いたしまして三百三十億ということになります。で、かような線で参りますと五千三百億
程度が
制度改革後におきますところの
府県の
財政需要の枠と、こういうことに相成るかと思いますが、今直ちにさような線では私
ども主張いたしておりませんので、従来
通りの主張を続けておるわけでございます。
で、そこで次にこの
改革の
基本方針というものは、先ず現在
地方は独立税源に悩んでおる、僅か総計で見ましても二割を超えるような
府県の自主税源、極端なところになりますと、八%位の自己税源しかない、かような姿で、
地方公共団体であるということは実は言えない。もう少しもつとこの自己税源というものをふやすということが重点でなければならんと思います。で、さような観点からいたしますると、現行の
地方税というものは原則としてあつちへ動かしたりこつちへ動かしたり、いらうべきではない。足らんところは国の税財源というものを
地方に委譲するというのが本筋ではないかと思うのであります。この
答申によりますと、
府県の遊興飲食税は国に持つて行く、それから大蔵省は更に入場税も持つて行きたい、それからこの
市町村の税で一番大事な
市町村民税のうち、個人法人割の二〇%、これは五、六十億になるかと思います。これは国に持つて行く。一部都道
府県民税を作つてやるけれ
ども、それは
市町村民税を減らして委譲して持つて行く、約七十五億ばかりかと思う。償却資産税は
市町村と
府県が分け合うというように現行の
地方税をあつちへ動かしたりこつちへ動かしたり移動に重点を置れておるようであります。ただ
市町村にはたばこ消費税を設けてやる、それだけでございます。自主的に
府県に税金を新たにふやしてやつたというものは一つもありません。そこで先ず
府県の独立税源というものを拡充強化するというこの大眼目を失つてはいかん。
次には税源の偏在というものを是正する。これは勿論各
府県に非常な大きな税源の偏向がございます。それはできるだけ偏在の是正はする必要があると思いますが、これも独立税でやりまする方法と、或いは配付税の方法によりまする方法があると思いまするが、先ず私
どもの希望といたしましては、独立税でできるだけ税源調整というものをやつて頂きたい。第三番目には、さようにいたしましても、
府県間の不均衡はいわゆる財力、力そのものが違つておりまするので、何ともできません。それは
財政調整というものをこれは是非必要とするのであります。狭い日本の国でこの県とこの県との標準
行政というものは大きな差異を置くわけには参りません、今日の段階では。そこでどうしても
財政需要というものは一定限度要るのでありますから、税源が足りません以上はやはり国で御面倒を願う。それで
財政調整をお願いする。そこで必要
最小限度の
財政需要というものはとにかく弾力性ある方式によつて確保される。これが今まで弾力性かありませんために毎年々々皆さんにも御厄介にもなり、
中央各省には非常にいやがられながら平衡交付金のお願いを申上げた根本的な理由がそこにあるのでありまするから、赤字悪循環を断ち切りますためには、どうしても適正な弾力性のある
財政調整の方式をこの際に打立てなければ、従来のような陳情々々これを年がら年中繰返すことになるかと思います。
次に
地方税についてでございまするが、都道
府県民税の創設は私
ども負担分任の精神から従来主張して参つてはおるのでありまするが、
市町村民税から委譲を受けて
府県民税を作るということにつきましては、これは反対でございます。さような趣旨ではない。移動すべきではない。飽くまでも国の税財源から適当に委譲してもらわなければならん。ただ現在の
市町村民税の賦課比率が非常に複雑に
なつておりまする
関係から、都道
府県民税を設けまする場合におきましては課税技術が非常に困難かと思います。これらにつきましては自信のある方式を相当
検討すべき余地があるんじやないかというふうに思つております。第二遊興飲食税の国税移管、これは賛意を表しかねる。なお入場税を国税に委譲するというのは大蔵省方面の非常に強い要請に
なつております。東京に、
義務教育費が半額国庫
負担に
なつて本年度は四十八億、平年度は七十何億これは余分に行く。法律改正も提案説明もできないというようなことで、大蔵省は何とか今度は税制改正で正しい姿に戻したいという気持が強いようであります。これをやりますためには入場税も持つて行かなければならないというような主張をされておりますが、これは全体的な
府県の独立税源の小さな力しかないという
考え方からいたしましても、又国で取りますることも、
地方で取りますることもそう変りがないと思います。何も理論的根拠は、国に持つて参りまする上におきまして、ないというふうに思われまするので反対をいたしておるのであります。償却資産税の
府県と
市町村の配分でございますが、これは同一
地方税というものを二分してあつちとこつちで取るというようなことは手続もかかるし、まあ多少税源の偏在是正という点があるのかと思いますが、まあまあ余り好ましいことではないようにも考えられます。たばこ消費税は
府県税として是非創設さるべきであり、大体酒よりもたばこのほうがその消費が
府県間の均衡の度合が高いのであります。非常に均衡のとれた消費税に私はなると思いますので、これを一つ思い切つて創設されこれを大幅に
地方に与えられる。徴税費も誠にかからない、徴税も簡易なものでございまするので、是非一つ御配慮願いたいと思います。酒消費税も
府県税としてでき得れば創設いたして頂きますることが望ましいので、これは全体の
財政需要の枠の問題とも関連いたすと思います。
そこでかような
知事会で主張いたしまするところの税制を確立いたした場合におけるところの結果でございまするが、参考に掲げてございまするように、
府県税の増収は僅か八十五億であります。
自治体警察だけでも三百八十億もかかるというのに、この八十五億がどこから計算されたかちつともわからない。奇妙なことには大蔵省は百四十八億ふやしてあるというような数字が出ております。これは
府県分であります。
知事会修正案によりますと税増収分が九百九十八億、ただ
出先機関の問題、或いは
五大市の
義務教育を除いて考えますると三百三、四十億がこれから減りまするから、六百三、四十億ということになるわけであります。これは
事務がふえまするし、又従来の
財政計画に不合理があるのでありまするから、多少大きな数字になりまするが、これは止むを得ない数字であります。それから現行
制度と
知事会修正案によりまする自主税源と
財政需要額の比率の比較を参考のために差上げておきましたが、二十八年度の
財政計画に基きましての計算をいたしてみますると、自主的な税源は僅か二三・六%であります。最高が五六・六%の大阪、最低は八・一%の岩手、かように修正いたしましても漸く四〇%足らずの三九%、最高の大阪が七〇・五%、最低が徳島の二〇%に足らない一九・一%という姿になるのであります。
それから財源調整の問題につきましては、これはいわゆる
地方交付税というような姿に
なつておりますが、これは名前の変更だけでありまするが、強いて名前をかえられまする理論的根拠は了解に苦しむのであります。
地方財政平衡交付金
制度は、それは本当に筋として正しい
制度でありますから、これをむしろ生かして今後
育成強化したらいいのではないか。ただ弾力性がない。そこで
地方交付税の内容を盛り込んだ
制度の改正をやれば、それで十分である、特に大蔵省方面といたしましては、
地方交付税にいたしまして、実質は配付税に持つて行こうというのであります。調整平衡交付金
制度というものは、これは止めだ、即ち税で与える。配付税にいたしまして、
地方に当てがいぶちにするという、勝手なことをして困るからもう縁を切つてしまう、税でこれだけ、交付税でこれだけ、あとは知らん、勝手にしろ、という当てがいぶちという方向に持つて行こうという魂胆ではないかというので、そこで
地方交付税という名前がひよこつと出ているような気持がする。さようなことで
地方行政を
育成強化しよう、或いは
地方自治というものをもう少し親心を以てやつてやろうというようなことには、とてもならんのです。国のために非常に残念です。やはり面倒ではありまするけれ
ども、或る
程度弱いものは助けてやる。全体として
地方自治というものが正しく伸びて行くためには、弾力性のある
財政調整というものがせつかく生まれたのだから、これを一つそのまま存続すると同時に、内容を改善して行く。名前はそのままにしておくということを強く主張いたしておきます。
次に、
地方自治制度でありますけれ
ども、
地方公共団体
中央金庫の
制度につきましては、私
どもは
地方公共団体が、もう少し自主的に力を合せあつて信用力を拡大強化して、せめて公募公債、或い
はつなぎ資金だけで竜、自力でできるような姿に持つて行こうじやないか、今
地方で予算を処理することも大事でございまするが、金のやり繰りをいたしますることが、今日の
地方行政の能率を上げまする上におきまして、非常に大きな問題であります。ところが公募公債を認められましても、東京、大阪等は消化ができますけれ
ども、田舎の県としては、実は信用力もないし、利子は高いし、とても借りようと言つても借りられはしない。そういう欠陥がありまするので、もう少し私
ども協力し合つて、
中央にばかりに厄介にならない、そうして何とか金のやり繰りを考えたいというのがこの
制度でございます。これは六団体、即ち
市町村側、
府県側共同研究をしばしばやりまして、各団体ともこの線でよしかろうというので、参考試案までできておるのでございますから、是非一つこの頭を出すように御高配を願いたい。特にお願いを申上げまして、
地方債につきましてはいろいろ議論はあるところでございますが、だんだんと
最小限度において
地方の自由も認めてやる。公募公債とか、多少一定限度ものとか、もう少し自由の範囲を認めてやる方向にお考えを願う段階に
なつておるじやないかというふうなことでございます。
地方財政の再建整備につきましては、前から非常に御心配をわずらわしております。恐らく国会でも継続審議に
なつておると思いますけれ
ども、
原案によりますと、二十八年度の決算ということに
なつております。それはまだ二十八年度の決算は出ておりませんし、赤字がどのくらいになるかわからん、二十七年度の決算は
はつきり出ておるのであります。私
ども各
府県、本当に厳密に
調査いたしました結果、百七十億という線が
はつきり出ておる。繰上給与は幾ら、或いは国に対しまするところの直轄工事の分担金などが納入できていないとかいうものを仔細に点検いたしまして、集めたものが百七十億でございますが、そこで国会の継続審議のものもやはり二十七年度の決算というものを対象にされておつたのではないかと思います。私
どもの希望といたしましても、先ず取あえず二十七年度の決算を対象として解決を願い、若し万一二十八年度の決算に赤字が出ましたならば、やはり適用願う。今年は国会でも、出ないように更に今後御高配を願うし、私
どもも一つ努力したいと思います。それから赤字の原因というものが、これはどうも
原案によりますと、
地方は勝手なことをして勝手に出した赤字だからけしからん、税金も一・二倍取るし、
節約をうんとしろ、まあけしからんやつというふうな気持が非常に強いようでありますが、赤字の実態を仔細に調べて見ますというと、国の
制度及びその
制度の運営というものから来るものも実際はあるのでございます。それがために今度のこの
制度改革においても、初つぱなに
地方財政計画の不合理であるという線が出ているのでありすすから、その線か二見ましても、従来の赤字はやはり
中央も、国本
責任を分担願わなければならん範囲があるわけでありますから、もうちよつとそういう範囲につきましては温情のある手当をいたして頂きませんというと、折角の親心が何とも彼とも親心にならんということになるわけであります。これは二十七年度におきまする赤字債の額は
府県も
はつきり出ておりますので、百七十億と銘記して頂きたい。
かような点が
財政部会に対するところの要望でございます。近く総
委員会で再
検討されまして、どういう案が出るかも知れませんが、又総会でどういうふうな討議され、
答申原案がきまるかわかりません。いずれにいたしましても、今の空気ではどうも
地方自治に対しまして熱情、愛情というものが、どうも全体の空気から薄いようであります。この点については私
ども強く反省しなければならん点もあるのでありますが、併しもう少し
地方自治に対して理解を持つて頂き、温情を持つて頂くような方向に参りませんというと、今後の
地方自治体の確立は容易でないというふうな気持がいたしております。
そこでこの参議院の
地方行政委員会におきましては、どうか一つ私
どもの気持をお扱み取り頂きまして、今後必ず出て参りますところの
法律案、
予算案につきましては、格別の御高配をお願い申上げまして、御説明を終る次第であります。大変冗長になりまして恐縮であります。