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1953-09-08 第16回国会 参議院 地方行政委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年九月八日(火曜日)    午前十時四十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     内村 清次君    理事            石村 幸作君            堀  末治君            館  哲二君    委員            伊能 芳雄君            高橋進太郎君            西郷吉之助君            小林 武治君            島村 軍次君            秋山 長造君            苫米地義三君            加瀬  完君   事務局側    常任委員会専門    員       福永与一郎君    常任委員会専門    員       伊藤  清君   説明員    自治政務次官  青木  正君    自治庁財政部長 武岡 憲一君    地方制度調査会    会長      前田 多門君    地方制度調査会    行政部会長   灘尾 弘吉君   参考人    全国町村会会    長、茨城県結城    郡石下町町長  関井  仁君    全国村議会議    長会会長、大阪    府中河内郡石切    町議会議長   辻 龍太郎君    全国市長会代    表、平塚市長  柿沢篤太郎君    全国庁議会議長    会会長、京都市    議会議長    竹内 忠治君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○地方行政改革に関する調査の件  (地方制度調査会(当面答申を要す  ベき事項)に関する件)  (地方財政平衡交付金に関する件) ○参考人の出頭に関する件   —————————————
  2. 内村清次

    委員長内村清次君) 只今より地方行政委員会を開会いたします。  本日は地方制度調査会答申案の行、財政部会案に対しまして、市町村の各団体の代表の方々から参考人として意見を聞くことにいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 内村清次

    委員長内村清次君) ではさよう決定いたします。  先ず委員一同に代りまして、委員長から参考人として本日御出席頂きました皆様がたに御挨拶を申上げます。各団体地方制度改革案につきましては、去る八月十七日、十八日にお伺いいたしたのでありまするが、その後地方制度調査会におきまして、小委員会の作成いたしました当面答申を要すべき事項としての答申案が発表せられましたところ、その反響も大きく、又地方の各団体もこれに対しまして意見を持つておられるということでありますので、本委員会といたしましても、極めて重大な関心を持ちまして、参考人方々にお出でをお願いいたしたわけでございます。委員会を代表いたしまして、皆様がたに厚く御礼を申上げます。  つきましては、今日の参考人の御意見要点は、大体先般発表せられました行、財政部会案に対する御態度につきましての御意見をお伺いいたしたいのでございます。時間の関係につきましても、どうか一つ皆様がたにおきまして、適当にその要点を御発表頂きまするようにお願いを申上げます。  それでは先ず全国町村会会長関井仁君。
  4. 関井仁

    参考人関井仁君) 今回参議院地方行政委員会におかれまして、私ども地方団体意見を申述べる機会をお与え下さいましたことにつきまして、衷心より御礼を申上げる次第でございます。  地方制度調査会起草委員答申案に対しまする全体的の印象が非常に官治的傾向があるということが注目されるのでございまして、私ども町村の立場といたしましては、甚だ不満の点があるのでございまして、今回私ども意見を述べる機会をお与え下さいました当委員会に対しまして、厚くお礼を申上げる次第であります。  町村としての意見は、お手許に印刷物を配付いたしましたが、主要な点につきまして簡単に御説明を申上げます。  地方公共団体種類性格に関する事項におきまして、府県市町村の二段階制をとりまして、市町村性格現状通りである、府県については市町村を包括し、国家的性格を有する事務を処理することを以てその任務とするとしたのでございまして、更に先般の行政部決定におきましては特に広域行政を行う地方公共団体であるということを明示したのでございます。かくのごとくいたしましては、当初調査会におきまして論議されました府県市町村性格をその当時よりも更にあいまいにすることによりまして、地方制度改革方向を混迷に導くことを恐れておるのでございます。市町村優先原則、或いは市町村基礎的地方公共団体と規定しますることは戦後確認されました原則と思われるのでありまするが、我々は原則倒れに終りましてその実の伴わざるところの市町村優先原則にその実体を与えることが、いわゆる自治本旨実現するゆえんであると信じておるのであります。かくのごとき意味におきまして、市町村育成強化を図ることが、今回地方制度改革の主要なる目的と考えていたのでございます。改革はもとより現実的でなくてはならないのでありまして、町村といたしましては、現状府県直ちに廃止すべしとの主張はこれをとらなかつたのでございます。ただ将来市町村完全自治体といたしまして育成強化をする方向を迫るならば、府県地方公共団体としての性格を漸次弱化するに至る、少くともこれを完全自治体として育成する方向を与えることは市町村優先原則と相矛盾するものと考えておるのであります。府県の国の出先機関的性格を明示することは、現在将来における府県の一面の性格を明示しておりますので、恐らくこれは誤りではないと思われるのでございます。他面この改革案におきまして名のみでその実の伴わざる市町村自治現状通りとするというのであつては、地方制度改革方向あいまい模糊の中に埋没いたしまして、将来の抜本的改革に不測の障害を来しまして、当面実施しようとする改革の真意を全国一万の町村長をして了解せしめることは到底でき得ないと考えておるのでございます。この故に府県性格市町村育成強化方向との関連につきまして明確な表現をいたすべきものと思うのであります。我々は市町村育成強化方向を明確にするために、市町村級別制をとり、或いは市町村連合組織活用強化提案をいたしたのでありまするが、前者はこれを否決し、後者については何ら触れるところがなかつたのでありまして、甚だ遺憾と存じておる次第でございます。  次は地方公共団体規模合理化に関する事項につきまして申上げます。町村規模合理化につきましては、当参議院地方行政委員会の絶大なる御努力によりまして、町村合併促進法の成立を見ましたることは、私どもの深く感謝するところでございます。本法律活用を以て当面町村規模合理化を図ることを起草委員答申しておるのでありまするが、都市、農村の適性配置に関する国の基本的計画の想定のない機械的合併、或いは過大都市設置を来たし、或いは将来の分離運動を懸念せられるが故に、幾多の弊害を予想し得らるるので合併促進と呼応しまして、或いは合併促進法に先行して国土に関する基本的計画の速かなる樹立を望むのであります。更に現実的に合併を推進するためには国家多額経費を要することは明らかであり、又該当町村におきましても多額経費を要することは明らかなのでありまして、相当の予算を準備いたしまして物心両面から促進法裏付をする必要があると思うので、ついでながら当委員会の御支援をお願いする次第でございます。  次は、事務配分について申上げます。義務教育事務配分につきましては、割合に大胆、率直に方針を示しておるのでありまするが、警察関係については暫く私どもはこれをおきまして義務教育行政運営管理につきましては、市町村の最も長期に亙つて手がけました練熟した行政としてその行政の本質から検討いたしまして、勿論その主体には市町村がこれに当るべきものと確信をしておるのでございます。施設のみの管理市町村とするというに至りましては、暫定的改革とはいいながら失望、憤慨せざるを得ないのであります。行政簡素合理化の線に沿つて行政委員会原則的配置提案しましたことは行政の一元化を提唱し来たつた私どもの賛意を表するところでありまするが、教育委員会に関して地方教育委員会の廃止のみを決定しまして、県においては行政委員会として単に委員選任方法だけを改正して存置するということは理論的根拠が甚だ薄弱と思われるのであります。要するに教育に関する提案は私どもの同意いたしがたい点が甚だ多いのでありまして、ここに我々の年来の主張を一括述べさせて頂く次第でございます。   一、義務教育全面的運営管理市町村がこれに当る。   二、教育委員会法は、これを廃止する。   三、民主的運営を保障するため教育に関する市町村長諮問機関をおく。   四、義務教育職員市町村公務員とし、その人事は当分の間市町村長府県知事協議してこれを行う。   五、経費負担は国と市町村との連帯支弁とする。右に要する市町村所要財源として税制改革による固有財源を附与する。   六、税制改革実現を見るまでは、全額国において保障するものとする。  以上でございます。  次は、その他の事項につきまして申上げます。いわゆる内政省設置提案として伝えられておりまする事項につきましては、中央各省地方公共団体との間及び地方団体相互間の事務調整を行う、中央機構のこの必要性ということにつきましては、私どもも認めておるのでありまするが、地方自治に対する明確な保障なくして、即ち現状市町村実態というようなことを放置いたしまして、今度の改正のような状況におきまして、地方行政総括機関として中央官庁を強化設置するということは、これは十分研究を要すべき点があるのではないかという疑問を持つておりますので、申添える次第でございます。  次は財政の部につきまして申上げたいと思います。財政面における小委員会、或いは単に現状前提といたしまして、地方財政所要財源について一応の試案を行なつたこと、及び税源偏在を是正するために、税目間に移動再配分調整的考慮を加えておるのみで、基本的に地方財政を安定せしむる抜本的方法を欠除しておるものと断ぜざるを得ないのであります。即ち自主的に固有財源充実せしめ、地方財政の安定を、自主的運営を確立すべき配慮を欠除し、実質的に中央財源である交付税制度にますます依存せしむるのみで、財政を通ずる強固な中央統制は何ら改善ざれんものと認めらるるのであります。以下小委員会案の順を追いまして本会意見を申述べさして頂きます。  一、地方財源所要額総額につきまして申上げます。本案は新たな地方財源所要額といたしまして、約三百六十億円の推算を行なつておりまするが、地方財政実態に即応していないのであります。即ち実際の二十七年度における地方団体決算見込額と、地方財政計画上の財政規模との間に、市町村分のみで約二百八十億円の差異があるのでありまするが、これらは計画外財源町村有財産の売却、税収の増徴、借入金などで賄われておるものであります。現在の財政規模は、義務的経費の累増によるものでありまして、自主的にこれを圧縮し得る余地は殆んどなく、当然財政計画におきましてこれらの所要財源が計上せらるべきものと認められるのであります。仮に町村財政におきまして、その運営を一応不安なからしめ、地方的事情に基く緊急な事業の最低限を確保せんとするならば、町村分として推計二百億円以上の新規財源を要するのであります。例えば町村におきましては法令によらぬ各種負担金寄附金推計百億円に達しまして、而も累年増加しつつある状況であります。町村としては自主的に削減し得ぬ性質のものでありながら、財源としては何ら考慮されておらないのであります。自主的に削減し得るものでありまするけれども、いろいろの状況でこの負担金或いは寄附金というものが蔽い被さつてつておるのであります。あらゆる国家機関が、末端におきましてはその与えられました予算以上の計画を常に立てまして、その余分市町村に要求して参つておるのであります。これは実際町村に参りまして調査をすればわかるのでありまするが、あらゆる政府機関末端におきましては、実際の予算の倍以上の仕事をやつておるのであります。例えば高等学校が五十万円の予算よりないのでありまするがそういう場合に、百五十万或いは二百万の増築計画をするのであります。余分町村へ常に蔽い被つて来る。これはあらゆる機関において行われておるのであります。  なおこの経費の節約の点でも、委員会制度の改廃、行政整理などが仮に計画通りに断行されたといたしましても、初年度に経費全額削減をなし得ないことは自明のところであります。要するにこの程度財源所要額算定及び経費節減前提とする税財政制度改革は、到底窮乏する地方財政現状では対処し得ぬものと断ぜざるを得ないのであります。  次に、地方税制改革につきまして申上げます。税制面における基本的問題は、本案による改革地方税制確立基本眼目であります自主的な個有財源充実十分意を用いることなく、税源偏在調整にのみ急であることから、却つて地方団体既定税源を分割再配分して、地方、特に町村財政不安定感を増大せしめていることであります。我々年来の主張でありまする国庫財源地方への委譲について真剣な考慮の払われていないことにあるのであります。即ち新らしく普遍的人税として道府県民税創設することが述べられておるのでありますが、第一に、国家的性格を有する事務を処理することを重要な機能とする府県性格からいたしましても慎重な考慮を要するのでありまするが、特に町村民税同一納税義務者より町村民税の一部を分割する形で徴収することは、ただ徴税事務煩雑化負担の不均衡を生ずるのみならず、町村税制中核でありまする町村民税減収を結果するものといたしまして反対でございます。仮に府県財源として人税創設を止むを得ない措置とする場合は、府県性格からいたしましても、又地方財政現状からいたしましても、これを所得税附加税等国庫財源に求むべきである、こういうふうに主張をしておるのであります。  次に、固定資産税の中から別に償却資産税創設して、府県市町村で折半いたしますることは、単に市町村財源府県財源に一部移管するだけでありまして、何ら実益がないのみならず、これが比較的安定した市町村税源である点から見まして、却つて町村財政の安定に有害であると見られるのであります。市町村といたしましては漸くこれらの徴税事務にも習熟しつつありまして、市町村税としての観念も普及しつつある際、何ら重大な理由なくして全償却資産についてこのような措置をとりますることは甚だ当を得ないのであります。むしろこれを現行通りといたしまして資産評価の基準を法定し、評価額を三ヵ年以上据置くというような方法をとりまして、徴税事務簡素化方法を講ずべきであるというふうに考えます。  税源偏在の点につきましては、特定の大規模償却資産限つて限度を定めまして、国の徴税財源に繰入れる等の措置で十分であります。何ら全部の償却資産を分割する理由にならんと信ずるのであります。このことは法人税割の一部を国税に委譲するという原案に対しましても全く同様に言い得るところと存ぜられるのであります。  次に、煙草消費税創設には、本会意見にもあるところでありまするが、本会といたしましては義務教育全面的市町村管理前提といたしまして、新規財源として酒税と併せ一括国税として徴収し、人口に応じまして市町村に配付する配付税制度として主張したものであります。本案のごとき償却資産税府県民税創設による代り財源として与えられるものといたしましては、全く似て非なるものであります。而もこれを消費地市町村消費税として徴収せんとするごときは、消費税地域的偏在から、徒らに税源偏在をもたらし、却つて地方財政に新たな不均衡を生ぜしむる欠点があるのであります。現に我々の若干の試算によりますれば、市町村税収は若干増加すべき小委員会の案にもかかわらず、弱小町村におきましては却つて減収する現象を見られるのであります。而も将来の姿として市町村から比較的税収伸びのよい市町村民税固定資産税の一部を手放しまして、堅実ではありまするが、伸びようとしてはそれほどではないたばこの消費税創設することは、収支の面で漸次転換する懸念もなしとしないのであります。  次に、地方交付税制度について申し上げます。すでに述べましたごとく、平衡交付金或いは本案地方交付税如何合理的な制度であるといたしましても、地方団体の大半がこれに依存をし、決定額如何地方団体の死活問題として論議されるがごとき現状では、地方自治の達成は到底期待しがたく、中央統制の排除も期しがたいことは言うまでもないのであります。この意味で前項の地方税制改革の不徹底は徹底的に再検討の要があるのであります。一方又地方財政現状からいたしまして、或る程度財政調整制度活用する要があることも言を待たないのであります。従いまして先決問題として固有財源充実が目下の急務でございます。この前提の下に財政調整制度を考究するとすれば、基本眼目といたしましては、どうしても地方団体が必要とする総額を確保するということを明確に措置することが急務なのであります。即ち仮に地方交付税制度創設するといたしますれば、交付税特別会計への繰入税種であります所得税法人税酒税遊興飲食税などは、いずれも景気変動の影響を敏感に受ける性質のものでありまして、而も不況時には地方財政需要却つて増加をするという矛盾があるのでありまして、あらかじめ減収時には繰入率を調整し得るというような措置を予定しておく必要があるのであります。又特別会計不足額の借入につきましても、あらかじめこれを確保し得る措置を講じておくことが必要なのであります。こういう用意がなければ交付金の場合と同様、総額確保上の不安定は何ら解決されないのでありまして、その運営に当を失しますれば、弾力性の欠如から交付金制度以上の不安、不合理を露呈するのであります。なおこの配分算定規準などは十分合理的なものに改訂する要あることは勿論でありまして、ただ特に今後育成を要する町村分にありましては、法律の要求する行政水準維持向上を内容として決定せらるべきことは言うまでもないところであります。  次には地方債制度について申上げます。地方債につきましては、本会起債資金源政府資金のみに頼らず、政府資金のみならず、民間資金にも求めて起債充当率を引上げること、なお又現行制度による手続を能う限り簡単化するための方策といたしまして、すべての地方債を包括する地方公共団体中央金庫創設を従来から主張しておつたのであります。先般の地方制度調査会におきましても、この意見を提出しておいたのでございます。併しながら諸般の事情からこのような構想の急速な実現が困難であるといたしまするならば、次善の策として先ず小委員会案のごとく差当り公募債吸収消化目的といたしまする地方団体中央金庫創設いたしまして全体として資金源の拡大に寄与せしめ、漸を追いまして総合的な地方債金庫に発展せしめることをも一案と考えられるのであります。従つて本会といたしましては将来総合的金庫たらしめることを目途として小委員会にこの点賛成をいたしておるのであります。  大体、申述べた次第でございます。特に参議院地方行政委員会におかれまして私ども意見を徴されましたことにつきまして再度改めて御礼を申上げまして終りたいと思います。
  5. 内村清次

    委員長内村清次君) 次に全国町村議会議長会会長辻龍太郎君から聴取いたします。
  6. 辻龍太郎

    参考人辻龍太郎君) 本日地方制度調査会委員会案に対する意見の開陳をする機会を与えられましたことは非常に光栄と存ずる次第であります。先般の小委員会におきまして私ども団体からいろいろそれの反対意見を出したのでございますが、少数で殆んど採用されなかつたということを誠に残念に思つておるのでございます。小委員会の案につきましてここに総括的に意見を申上げたいと思います。  大体小委員会昭和二十九年度の予算の編成及び法律の制定に当りまして、当面必要とする事項限つて答申を求められておつたのでございますが、先般の答申案によりますると、それ以外にも亙つて地方制度根本的改革にも及んだような事項も含めての問題としての御答申がございました。これはいいのか悪いのかわかりませんが、少しそれがために各団体においてもいろいろの意見が出たのではないかと思うのであります。  先ず第一にこの行政部会関係について申しましても、府県性格はどうするかということでございますが、これもなかなか憲法改正事項になるかどうかというようなことも総会においても論議された次第でございまして、なかなか地方制度の根本問題であると考えておるのでございます。この問題に触れておりますが、府県性格地方公共団体として国の出先機関的の性格に変革するというようなことになつておるのでございますが、大体知事公選制の問題であるとか、或いはその他の問題に徴しまして、府県憲法事項としての改正を要するや否やということにつきまして根本問題であると思うのでございます。その選任方法につきましても現行通りということを私たちは考えておるのでございます。又この義務教育行政及び警察行政でございますが、これはやはり新らしい地方自治といたしましては町村行政中核とすべき事項でありまして、この行財政制度を含めまして地方制度根本的改革をやつて初めて解決すべきものと考えておるのでございます。この両制度に対する法律案が十六国会に提出される前に本会といたしましては、この事項については制度調査会意見を待つて、そして提案してもらいたいというような意見が一致したのでございます。如何に本問題が重要事項として私たちが考えておるかということは論を待たないわけでございますが、あえてこの両制度についての結論をお出しになつておるようでございます。本会といたしましては、本会というのは私たちの会でございますが、何が故にこれらの根本問題を早急に当面する事項として解決をしなければならんかということの了解に苦しんでおるのでございます。  第二の問題といたしましては、答申案構想地方自治本旨というものを著しく中央集権的に逆転するような企図があるのではないかというふうに多大の疑問を持つておるのでございます。即ち府県性格を国の出先機関的なものに変える或いは地方事務官制度復活する或いは地方行政を総括する強力な中央機関設置するというようなこと、又警察行政及び教育行政府県単位に切替えること、地方議会機能簡素化するということ等の一連の構想は、どうもその背後には内務省の復活であるとか或いは知事の官選であるとか、警察国家の再現というようなことが企図されておるのではないか。更に予算原案執行権或いは代行権事務管掌等のいわゆる旧町村制であるとか或いは地方事務官制度というようなものの復活ではないかというようなことも考えられるのでございます。町村議長会といたしましては小委員会方々がまさかそんなことをお考えになつて起草をなさつたとは考えておらないのでございますが、併しこの答申を見ますと、そういうことにも大いに私たちといたしましては危惧の念を抱いておるのでございます。  第三に、行政事務配分でございますが、これは神戸勧告に従いまして町村が優先的の原則に基く行政事務の再配分をやつて頂くことは当然でございますのに、抽象的に極めて漠然として故意に問題の焦点を避けておるかのような疑いが持たれるのでございまして、この点ももつと明確にしてもらいたいと思うのでございます。  それからその次に議会機能簡素化の問題でございます。これは本案構想というものが地方議会制度が新らしい地方自治法における最も重要な点でありまして、地方議会地方自治の上に占める重要性を顧みないものではないか、かように思うのでございます。民主化の根本を揺がしますようなことがあつては、誠に私たちといたしましては遺憾に思うのでございます。議会制度の問題は簡素化とか合理化の問題として簡単に取扱うものではなく、地方制度根本的改革の一環として検討すべき問題であるというようなことを考えておるのでございます。  以上申述べましたことを少し具体的に申上げますと、町村が住民に直結しておる基礎的地方公共団体であります。従いまして完全自治体としての機能を与えてもらわなければならないのであるということにつきましては、地方制度調査会におかれましても異論のない点と思つておるのでございます。然るにこの小委員会の案によりますと、単に現状通りにするということだけでございまして、その意味が極めて漠然といたしておりまして、甚だ私たちといたしましては遺憾に思うのでございます。  次に府県につきましても、その性格を市町村行政に対する補完的、広域的事務を行う中間的地方公共団体として、国の委任事務は大幅に整理いたしまして、これを地方公共団体の固有事務として委譲すべきが至当であると考えておるのでございます。従いまして国の権力的関与はおのずから必要と認めないのでございます。  次にこの小委員会案が、府県について国の出先機関的な性格を殊更に強調しておりますことは、只今申述べました主張に反するばかりでなく、地方自治本旨を歪める中央集権に逆行させるものでないかという危惧の念が持たれるのであります。従いまして町村議長会といたしましては、府県性格は飽くまで自治団体とすることといたしまして、これを明確に規定して頂きたいと思うのでございます。  それから警察、教育その他の事務配分につきましては、町村優先の原則に基く行政事務配分こそ地方制度改革の根本条件であるとするのでございます。本委員会案市町村配分せらるべき行政事務には、単に神戸委員会の勧告を参酌するという漠然とした方針でないかというように考えられるのであります。これは議長会といたしましては了承いたしがたい。殊に市町村行政の中枢ともいうべき教育行政について、却つてこれを府県単位に切換えるというようなことが、少くとも義務教育に関する行政事務市町村住民に直結しておりますところでありまして、最も基本的な行政事務でありますのですから、その運営管理は挙げて市町村をしてこれを行わすべきである。自然人事権とか或いは財政権も併行して市町村に委譲すべきものと考えるのであります。但しそれは町村の現在の教育委員会につきましてこれを存置するということではないのでありまして、廃止する意見というものが前提となつておるのでございます。この点を申し加えておきます。  それから議会の組織及び運営に関する小委員会案は、議会というものを地方自治の上に占める地位が重要であるということを非常に簡単にお考えになつておりまして、議会の組織並びに運営の問題が単に行政簡素化であるとか或いは合理化及び能率化というようなことの対象といたしまして取上げておるということは、根本的に地方制度改革の一環として最も重要視せられなければならん問題であると存ずるのでございます。なおこのことにつきましては、関連いたしまして小委員会案のような地方議会を軽く見てその機能を縮小弱化させるというような構想というものは、憲法が保障しておるところの地方自治本旨にもとるものであるということであろうと思うのであります。過日地方議会関係者を以て一環といたしました全国地方議会同盟というものを結成いたしたのでございます。地方議会制度の擁護のために強力な運動を今後展開することを固く誓つておるのでございます。  なお議会に関する個々の問題につきまして、町村議長会意見といたしましては、お手許に詳細したためまして差上げてございますので、この際特に国会議員の皆さんにおかれましては議会人という立場から、この問題に関しましては格別の御理解と御協力を賜りますように切にお願いいたす次第であります。  最後に地方行政総括機関として強力な中央機関設置するという点につきまして、地方団体意見並びにその利益を国会や政府に反映させるという面ではその機能の強化を図るということでありますれば、現在の自治庁の各省に対する発言権を大きくするという意味で賛成でございます。但し旧内務省の復活というような内容を持つて地方公共団体に強大な圧力を加えるということには絶対に反対でございます。  次に財政面ですが、財政部会関係におきまして、先刻申上げましたような事務配分について、私たち主張から申しまして、市町村の自主財源というものはますます拡大強化せらるべきであろうと存じておりますのに、却つてこれを分割、剥奪いたしまして、その代り財源として申訳的な煙草の消費祝とかいうようなものでその穴埋めをしたりするということは、計数的には辻褄が合いましても、町村財政に関する限りは現状を顧みない案だろうと思うのでございます。そういうことを安易に考えておるということを申上げたいと思うのであります。なお地方財源の所要額につきまして、その算定の仕方が歳出面では極めて切りつめてあります。又歳入面では非常に過大に見ておるというようなことばかりでなく、行政整理によつて二百億円の捻出ができるということも述べられておりますが、これは地方自治を圧迫しようとする独善的な算定であるのじやないかというようなことも申述べたいのでございます。このことは地方公共団体の赤字財政再建整備についても同様でございますと言いたいのでございます。法の適用を受ける場合の条件が大変厳重であつて、むしろ酷に過ぎるのではないかと思われるのでございます。これでは折角発展途上にございます地方自治体を却つて萎縮沈滞させるようなことになろうと思うのであります。  次に小委員会案につきまして個々の問題を申上げますと、地方財政需要額の総額に対する事項でございます。新たに地方財源といたしまして三百六十七億程度を必要としておる。併しこれは地方財政現状から見て甚だ過少であると考えるのでございます。各地方団体の見たところによりますと、地方財政計画におきまする二十七年度の既定財政規模地方団体算定見込額との間には五百億以上の開きがございます。そのほかに二十八年度自体につきましても、財政計画算定方法の不合理によるところの財源不足額は相当な額に上ることが予想されるのでございます。地方団体赤字解消の問題は、私どもといたしましては最も重要な問題でございまして、この赤字が幾らあるかということがこの問題解決の前提条件でありまするから、これと関係の深い財源所要額地方団体の実情に即して決定して頂きたいと思うのでございます。又整理による二百億の財源捻出ができるとしておりますが、この点につきましてもこの数字が町村実態から申しまして無理であると思うのでございます。  次に地方税制改革に関する事項でございます。これは附加価値税を廃止して事業税を存置することは止むを得ないとは思うのでございます。併しながら原始産業である農林業については現行の非課税制度を踏襲されたいのでございます。農林業はすでに町村民税及び固定資産税等において負担の限度に来ておりまして、これ以上の事業税を負担することは困難でございます。  次に、道府県民税創設でございますが、これは町村民税固定資産税と共に住民負担の限度に参つておりまして、町村民に新たにこういう負担をかけるということは無理であろうと思うのであります。これを創設するということならば、国税のほうからその財源を持つて参りまして、そうしてそういう税を創設して頂くということには差支えないと思うのでございます。  それから償却資産税及び町村民税を分割すること、これは税が市町村にとつて最も有力な自主財源でありますから、町村財政を不安定にいたしまして、且つ独立税が附加税的な性格になるということは、税に対する責任の所在が非常にあいまいとなりますので反対でございます。但し償却資産税偏在を是正する方針は、別途に適当な方法を考えて頂きたいと思うのでございます。償却資産税及び市町村民税分割委譲の代り財源といたしまして、酒、煙草の消費税創設するということになつておりますが、これは代り財源でなく、新らしい自主財源として煙草及び酒の還付税を創設することにして頂きたいと思うのでございます。即ち市町村に対しましては、行政部会で主張せられております通り市町村優先原則によるところの義務教育の全面的管理をする方針、それから行政事務の再配分が将来殖えること、そういう点からこの両税を還付税制度として自主財源充実するように税源偏在を規制して頂きたいのであります。  次に、国と地方公共団体相互間並びに地方公共団体相互の財源調整に関する事項でございます。地方財政平衡交付金制度地方交付税制度に改めるという場合に、次のような点に明確を欠いておると思うのでございます。第一は各地方団体財政収入額と財政需要額との差額を積上方式によつて合算したものを普通交付税総額としてこれを完全に満たすに足るところの額を保障するような措置を講じて頂きたい。現行地方財政平衡交付金の制限は予算によつて制限をせられておりまして、積上方式による方針が保障せられていないのであります。この点が甚だ不安定だろうと思います。  第二には、その配分方法平衡交付金配分方法を採用して頂きたい。  第三は、現行地方財政平衡交付金制度の欠陥になつておりまするいわゆる弱小町村に対する配分の不利な点でございます。これもこの機会に是正されるように単位費用の区分方法等を法律で規定して頂きたいと思うのでございます。  それから赤字地方公共団体財政再建整備に関する事項でございます。赤字地方公共団体の再建整備が地方財政現状から考えまして最も必要な措置でありまして、私たちの強く要望するところでございます。併し本案はその条件が少し酷でありまして、地方団体に無理を強いることになるのでございますから、財政再建整備計画としての税率の引上による増収計画、又は経費の節減計画を立てる等の自己の力を以て歳入不足を解消するための計画が含まれていなければならんということでございますが、この条項は削除をすべきものと考えておるのであります。なぜならばと申しますと、赤字の原因がその地方公共団体のみの責任に帰すべきであるかどうかということでございます。国、府県の委任事務財政措置の不十分なために、やはり地方公共団体にそういう結果が招来されておるのでありまして、この点を一つよろしくお願いいたしたい。それから償還年限が五年ということは非常に短期に失しますので、少くとも十五年にして頂きたい。それから財源としての地方債の二百億円は、地方財政赤字の現状から見まして非常に僅少でございますので、赤字の額を明確にいたしまして、これに応じて地方債の額を増加すべきであろう、かように存じておるのでございます。  以上簡単でございますが、今回の答申案に対する意見として申上げます。
  7. 内村清次

  8. 柿沢篤太郎

    参考人柿沢篤太郎君) 地方制度確立のために日夜御奮闘下さいまする皆様方のこの委員会が、このたびの地方制度調査会答申案を中心としてこれから御審議なさるに先立ちまして、私どもをお呼び立て下さいましたこと、その意見を発表する機会を得ましたことはこの上もない幸いと存じ、深く御厚意に対して敬意を表する次第であります。  本論に入ります前に、先般町村合併促進法を御立案下さいまして急速にその実現を期して頂きまして、なおその審議の途中において私どもののささやかな意見をも取上げて頂きましたこと及びその後現実に各町村に膨湃としてこの皆様方の意図が現われておるということを御報告申上げたいのでございます。ああした決定を見て頂きました結果、当初予想されました小さい市と町村との間に全く摩擦なく活発なる連絡が山とられ始めておりますこと、それから町村自体のほうも、最低線の八千ということが、或いは懸念された、やむなく八千の線に圧力的にならないだろうか、こういう状態が起りはしないだろうかと思つたのが、そうではなくて、逆にむしろもつと大きく、更に一万の町村と一緒になつて行こうじやないか、こうした、いわばこの機会にこそ地方自治団体行政能力を強化される機会である。全く法案の意図そのままが随所に現われておるということを御報告申上げまして深く敬意を表する次第であります。  なお、その市町村の動きは単に目先の、あの法案に示して頂きました利益な点をのみ目標としておるのではなくて、これでこそ本当に来たるべき地方制度の大改革に際して、我々は新らしい行政をし得る能力が得られるのだという気強い感を持つておるようであります。なお今までは一口に市町村といいましても、市と町村との能力に少し違いがあると言われておる。従つて手の繋ぎにくい点のあつたのを、ぐつと近くに町村と市とが寄りまして、全く同じ問題を同じ意見で検討し得る機会が到来いたしましたことを御礼を申上げたいのでございます。従いましてそうした受入態勢を十分に整えられる予想の下に、この地方制度改革をお待ちしておるということを申上げたい。  そうしてお待ち申上げておるときにこの地方制度の今回の答申案でございますが、これがいささかその期待に反する点があるのであります。それは先ずその構想の仕方でございますが、地方制度を根本的には他日検討するのである、取りあえず二十九年度は臨時措置としてこうこうであるという題目でありますが、若しそうであるとしたならば、全く誰が見ても二十九年でなくてはならない一部分のみを、小さい問題のみをするはずでございますが、或いは二十九年度取りあえずと称して大きな部面をもそれに織込んでしまう、こうした意図があるのではないかと疑わしめる点もあるのでございます。若し本当に将来の本格的地方制度改革をするならば、その点はあと廻しになさつたらどうであろう。若し将来本当になさるおつもりであつたならば今こうしたためにこれが一つの公約のごときようなものになつて、この地方制度調査会に矛盾を将来来す虞れがあるのではないかとかように考えております。私どもは強いて題目を尊重して二十九年度の臨時措置として、本格論はあと廻しにして答申したいのでありますが、如何せんそうした片鱗が現われておる以上、本格論が入らなければならない。どの程度が自分たちの考えている本格論と当面の問題に対する答え方を如何にすべきかということが非常に迷うのであります。従いまして今これから述べようとする私ども答申案には、そういうふうに迷つたあと、或いはこう言わなければならないのを割愛しておくであろうということもありますので、さような御了承の下にお聞き取り願えばこの上もない幸いと存ずるのであります。  先ず私どもが今申上げますあらましを申上げますというと、公共団体の種類、性格そうしたところ、或いは地方自治団体の民主的強化に反することが非常に随所に現われておることを指摘したい。項目だけを先ず申述べてみますというと、申上げようとするのは五つの点でありますが、その第一は府県性格でございます。これは国家事務を大幅に委譲する、即ち国の出先機関性格を帯びさせる、それから従来の自治事務もする。この二重性格というものを他日直すので今回は言わないというならともかくも、こうするのだと言われておりますと、私どもは何としても従来通り主張して来ましたやはり府県は国の簡単な、単純な出先機関にすべきであるということを主張したい。そうして地方自治団体とは即ち市町村一本だけあるように主張したいのであります。  第二には、警察制度でございますが、この都市自治体警察を廃して、そうして府県自治体警察を作るという今度の案でございます。これは私どもの絶対反対するものであります。これはなぜかというと、府県となれば自治体警察ではない、府県となればこれは即ち実質的には国家警察であることは間違いないと私は断じておるからでございます。飽くまでもこれは自治体警察を存続すべきものであると考えるのであります。  第三には、義務教育の点でございますが、これを又府県に統轄する、これこそ折角この警察と教育、これが民主化されたことがこの日本の大改革の根本的のものであつた。而もそれがその警察や教育は今までの規模市町村では受けることに不完全である、かような解釈からわざわざああした旧来の伝統をも捨てて、新らしい町村合併の大改革をもなし遂げられたこの委員会において、折角受入態勢をこしらえて、受入態勢がなかつたときでさえもそれを苦労してさせたものを、逆に受入態勢が強化できるとするときに、それを持ち去るということが果してどういう思想から生れておるか。この点が全く私どもの疑問とせざるを得ないところであります。  第四には、市町村に対する財政措置の欠陥を是正して事務量の増大に対応すべき財源強化の措置が不十分であるということを申し上げたいのであります。  更に第五には、今回の税制の改革案は税体系を徒らに混乱させるだけである。殊に府県が独立税を課して、そうして市町村税源を取上げるというこの考え方は、全く地方自治の精神に反するも甚だしいものであると私ども考えておる次第でございます。  以下少しくこれを具体的に申上げますと、地方公共団体の種類及び性格についてのことでございますが、概略のときに申上げましだが、私どもはただ府県を単なる国家の出先機関にすべしというだけでは、余りに簡単過ぎるのでございますが、私どもは只今申上げましたような町村規模が確立される、それと手を携えて、全く今まで府県がやつておつた仕事を全部国の出先機関として行えというのではなくして、むしろ今まで府県のいたしておつたことの約三分の二くらいは私ども市町村で十分これを吸収し得るものであると確信しておるのであります。従いまして他の分のみを国家へ吸収して頂く、これには必然的に内政省の問題が起つて来るのでございますが、内政省などはむしろ私どもは単に閣内における発言力を強化してもらうためのものだけでなくて、むしろ府県をして国の出先機関たらしめるには、やはり内政省があつて、それをして府県を出先機関とする用意をそこでされるものという善意の解釈によつてこれに賛成するものでございます。  なお更にこうした出先機関はどんなに細かくこしらえても、やはり市町村としての自治団体としての広域行政があるのではないか。かような点につきましては先般私どもの代表である大阪市長が調査会で詳細に述べたと思うのでございますが、どれに対しては市町村主張する統合広域行政形式を以てとれに充てる考え方でございます。  警察につきましては私どもは一応市制施行地の警察行政を今まで通り主張するのでございます。昭和二十三年という時、即ち荒廃と混乱のさ中において私どもはこの自治体警察を民主化の第一線なりとして引受させられ、而もそうしてそれが昭和二十二年のあの憲法改正の結果、警察能力の挙げにくいときであつた。新らしい人権尊重の下にああした仕事をしなければならないのを督励して、漸く苦労の末に都市警察は確立されて来て、そうして今や全くその地方団体の掌中に警察制度が手でこなせる程度になつた。こういうときに或いは当時の町村自治体警察を小さいのに持たせられて、そうしてやむなく先般返上したそれらの町村も、今度こそはこの町村合併によつてあれを再び獲得し得るであろうと意気に燃えておるとき、逆にこれを取上げるというふうなことになつたことは実に遺憾に堪えないのでございます。これこそは全く日本における民主制度の象徴でございますので、是非ともこれをいま暫く辛抱して我々の成果を見るまで一歩譲つて試してみてでいいから置いておいてもらいたい、こう考えておるのであります。私どもつて、これを完全な、期待に背かない自治体警察として町村と共に仕上げるであろうということをここに申上げたいのであります。  次に教育事務配分のことでございますが、答申案によると、義務教育については施設だけは現行通り市町村でするのだ、教職員については五大市以外は府県のみがその公務員としてこれこれである、こういうのでございますが、私ども教育こそ本当に市町村がこれを掌握しなければならないものであるということを前の警察制度と同じようにこれを主張するものでございます。  その他の問題でございますが、例えば行政委員会制度議会の組織及び運営、任用制度等につきましては、私どもはこの議会の議員の数を減らせ、地方行政委員会が住民の数に比例して多過ぎる、そうしたことがございますが、それらを直すために町村合併をなされたものと私ども考えております。四つの町村が一つになれば政委員会を四分の一の数に減らしたことと少しも違わない結果になる、議会の議員の数も同じくそうしたことになるのでありますが、どうかこうした大きな町村衡平を立案された趣旨から考えまして、その町村衡平ができた上で現行制度を試してみて、然る後に最後の方針をきめらるべきであると考えておるのでございます。  次に財政に関する問題でございますが、この税体系でございますが、全くシヤープ勧告案によりまして一つの税種を分け合うことのない立派な筋の通つたものでございます。更にこれを地方制度の大改革によつてどもが期待したものを更にそれを税の種類のうちを分けるどころでなくて、それを系統別に大きく分けてしまう、国と市町村とに画然と二つに大きく分けてしまう、少くとも今度の改革案によりまして、それが臨時措置であつてもその理想に一歩ずつ近寄る、一歩でも二歩でも近寄るように改正されるものと私ども期待しておつたのでありますが、それに相違して、先ほど来町村長のかた或いは町村議会議長のかたがおつしやつた通りに全く今までの市町村財源の一部を取上げる、かようなことは何としても私どもの承認し得ないところでございます。  煙草消費税につきましては、私どもはもとよりこれを主張しておつたものでございます。でこれについては大賛成でございますが、先ほど来申上げましたように、財政措置制度に附随して行われるものであります。制度においてすでに警察及び教育現状のままを主張しておる私どもといたしましては、府県民税その他の取上げ分を取上げないだけでなくて、煙草消費税の現在のパーセントによる創設だけでなくて、更にこのたばこの消費税をいま一〇%引上げて、更にこれと同じ系統に属する酒税その他の消費税創設して、市町村財源を強化すべきであるということを主張したいのであります。  なお財源調整の問題でございますが、私どもは平衡交付金制度をこのたびの配付税制度に変えられたことにつきましては、私どもが多年主張しておりました自主財源という思想から申しますというと、幾らかでもその自主財源の思想に近く改革されたということについて賛意を表するものであります。併しながら得てして、今までのやり方は平衡交付金制度にいたしましても、配付税制度にいたしましても、結局末端の技術上の点において遺憾の点が多かつた。その点だけは一つ是非折角そうした思想を以て自主財源的な性格を帯びた配付の仕方をするという考え方をするならば是非それを活かして頂きたいということをここに附加えて、条件付賛成という御解釈を願いたいと思うのであります。  なお、地方債制度でございますが、地方債の確保を容易ならしめる方法としての地方公共団体中央金庫の設立ということについては賛成でございますが、そのうちの二の許可並びに融資手続の簡素化について申上げたいのでございます。第一の手段としては、現行の地方債制度地方自治法及び地方公営企業法の原則に立還つてすべてこれを地方団体の任意に任かして頂きたい。これは全く地方自治制度が確立して私どもの自主的の統制と申しますか、この制度を守る十分私どもは自信を持つておるのでございます。どうかそういう意味におきまして、これを地方自治団体の任意とするというふうに改めて頂きたいのであります。併しこれは理想でございますので、この基本方針が実現するまではこのようにして頂きたい。その一つは、公営企業債は独立採算制の建前から即時許可制度を撤廃して頂きたい。二は、その他の起債については法律を似て基準を定め、その枠内での起債は任意とするような基準を定める。ということは、例えば税収の一定割合を以て、そうした大きな標準を示す程度でよいではないかと考えるのであります。赤字地方公共団体財政再建整備につきましては、この赤字地方公共団体が国の責任もあるという考え方の下に、このたびのことが立案されたといたしますならば、その内容では余りにその考え方から見ると酷ではないか。先ほど来全自治団体よりもお話がありまして、標準税率を一・二倍を超える税率を苛酷にかけなければならん、若しくはこれに等しいような逆に財政圧縮の途が講ぜられなければならない、それでは全くあたかも赤字を出したものが、不心得な原因によつてのみこれが行われた場合の措置と同じような措置を講じようとするところに欠陥があるのじやないかと考えております。更に国庫貸付金の総額の二百億というのがございますが、以上の趣旨から見れば、到底この程度では意味をなさない、更に大幅にこれを増額すべきであると考えております。而もこうした行為を以てするならば、この償還期限などは少くとも十五年程度にしなければならない。更にこの原因を除くのが国の欠陥があるということを認められるならば、この源をなくさなければならない。今までのはこうしてやるが、これからはあと出さないで済むように、普通のやり方をすれば新らしくは出ないような方法を確実にすべきことがむしろ第一番の条件ではないかと私どもは考えるのでございます。  以上時間がありませんので、少し急いで略して申上げましたが、私ども主張をここに謹んで申上げますので、何とぞ御採用あらんことを切にお願い申上げまして私の公述に代える次第でございます。
  9. 内村清次

    委員長内村清次君) では次に全国議会長会会長竹内忠治君にお願いいたします。
  10. 竹内忠治

    参考人(竹内忠治君) 今地方制度調査会は総会を前に控えまして、すでに各部会において民意はいたずらに蹂躙されて我々の望まない方向地方制度改正決定付けられるような状況に追い込まれておりますことは、私どもの甚だ遺憾とするところであります。然るにこの参議院の地方行政委員会におかせられましては、民意を暢達しようというこの有難い思召しを以てたびたび私どもを召されまして、私どもの意のあるところを御聴取頂きますこの事実に対しましては、私どもはこれでこそ我々の信ずる参議院であるという感が今日ほど深く持たれることはないのでありまして、誠に感激に堪えない次第であります。この際有難くお礼を申上げます。更に今日はお許しを得まして、地方制度調査会起草委員会によつて作られましたこの答申案につきまして、私は全国議会の議長会を代表いたしまして所見を申述べたいと存じます。  申すまでもなく、地方制度調査会の任務は設置法にありまする通り、日本国憲法の理念が十分具現できるよう、現行の地方制度に検討を加えるところにあると思うのであります。地方制度改革意見が逆コースを辿る虞れが十分あるとの慮りから、当委員会が特にこの点に修正を加えられましたものと私は了解をいたし感謝をいたしておるのでございます。  現行地方制度改正要点は三つあると私は思います。その一つは占領政策の行過ぎの是正、二つには時勢の変遷に応ずる各種制度改正、三つには経費合理化、能率化であると考えておるのであります。この三つが互いに因となり果となつて、窮極するところ地方自治本旨に副つて地方自治を確立するものでなければならないと信ずるものであります。然るに今回の答申案合理化と能率化に忠実な余り、民主政治下における地方自治の確立、殊に住民と直結する市町村自治の向上発展が等閑に附されている感を深くするものであります。行政財政両部会を通じて本答申案を実施することが、却つて委員会が憂慮されました通り、むしろ中央集権、官治行政を促進する虞れがあることを憂うるのであります。もとより地方制度調査会はこの当面の問題で終るとは考えないのでありますけれども、この答申案に盛られました動向が今後の調査会方向に大きな影響を与うるものと考えるのであります。従つて重要と思われる点につきまして意見を申述べ、詳細はお手許にありまする資料によつて御覧を頂きたいと存ずるのであります。  先ず府県性格につきまして、私はこれを限られた広域行政、補完行政、連絡事務を行う特別地方公共団体に改編すべきであるとの主張を持つのでありまするが、当面の措置として、一応現行府県制度を認めなければならないかと考えるのであります。併しながら答申案のごとく、現状に更に国家的性格を附与し、機関委任、及び団体委任、それに地方事務官制を活用して国の指揮監督権を強化することに相成りますると、府県自身が自治の色彩を失うばかりでなく、市町村も又国、府県の強い指揮監督の下に立つて、却つて地方自治を弱体化せしめる結果になると断ぜざるを得ないのであります。  次に警察及び教育についても答申案と所見を異にいたすものであります。教育及び警察を市町村事務といたしましたことは、戦後の行政民主化の二大支柱として地方自治の根幹をなして来たものであります。警察は従前警察国家乃至官僚政治の支柱であつたことを批判して新制度創設せられたのでありまして、従つて現行警察法の前文には明確に「日本国憲法の精神に従い、又、地方自治の真義を推進する観点から」云々と示しておるのであります。それにもかかわらず地方自治の基礎団体である市町村が、今日まで苦心経営をいたしたこの自治体警察を、民意にかかわりなく一挙に人事等について実にあいまいな府県警察に統合することは、過去の警察国家の再現を印象付け、治安維持の名目の下に警察権濫用の危険が十分あります。とかく権力の集中が権力の濫用を来しやすいことは我が国官僚機構にまつわる宿弊であることを危惧するものであります。  教育行政も、教育委員会法第一条に「公正な民意により、地方の実情に即した教育行政を行う」云々と明示いたしております。義務教育は今日まで市町村自治と共に発達し、市町村民の重大な関心事でございます。従つて義務教育市町村の責任の下に遂行することが、その地方の実情に即応して発展向上を図る途であることを信ずるものであります。今回の答申案は官僚統制へ後退の第一歩を印するものといたしまして、断乎反対せざるを得ないのであります。  第三として地方議会の組織及び運営に関する事項について申上げます。先ず議員定数の減少について、現行のごとく地方自治が首長主義をとる以上、これと均衡をとり、公正な施策を実施するためには、相当数の議員を必要とするのでありまして、その適当な数は議会の能率的運営と住民代表としての機能発揮との調和であろうと思うのであります。これはそれぞれの地方自治体の事情によるものでありますから、これを画一に法定し、而も大巾に減少しようとするのは、市町村民の議会制度を通じての発言権を制限するものであります。これが議員の名誉職であることを明らかにして、議員の職務執行を片手間のごとくにしようとすることと相待つて議会活動抑制の意図にあるを感ずるものであります。従つて議員定数はその地方自治体の条例に任せるのが地方自治本旨に副うものと確信するものであります。  常任委員会制度の廃止は幸い行政部会で原案の少数意見が入れられたのでありますが、併しこれとても行政の分化と専門化の傾向の著しい今日、議会の能率的運営のためにはこれを廃止することはできないと信じておる次第であります。  第四には地方財政改正に対する意見であります。今日地方財政が窮乏の極に達しておることは御承知の通りであります。その原因のよつて来るところは、ひとり公共団体だけの責任ではなく、国の施策に原因するところも大いにあるのであります。その是正と併せて地方自治を確立するには、地方自治体、特に市町村の自主財政の確立ということが必要であると信ずるものであります。然るところ、財政部会の答申案につきましても、国の財政施策の是正及び市町村財政の強化について十分に考慮が払われていないことを、甚だ遺憾とするものであります。答申の起草委員会案は、税目の新設、委譲等の移動を行なつておりますが、ただ国、府県市町村、それぞれの税総額の枠内の移動であつて地方自治体、殊に市町村の自主性強化に寄与するところは極めて少いのであります。即ち煙草消費税は新設されますが、府県税から遊興飲食税を、市町村から法人割を国に吸上げ、遊興飲食税の肩替りに府県民税償却資産税を新設して、市町村民税固定資産税府県に吸上げております。これはむしろ弾力性の強いものを吸上げることによつて、市町村財政を弱化するものであります。地方交付税総額は或る程度保障せらるるにいたりましても、交付手続が地方財政平衡交付金と殆んど同様であるのと関連して、地方財政は依然として中央集権でありまして、地方自治体独自の運営は困難であります。地方団体が国の事務を多く委任せられておる現状からも、更に行政部会が国の出先機関地方自治体に統合しようとする意図からも、財政の窮状に鑑み、国税地方税に委譲されることを要望いたすものであります。  以上地方制度調査会答申案の重要な点に関し所見を申述べたのでありますが、若しこのように行政の中央集権化を企て、民主化を踏みにじるような改革主張されるような傾向が漸次顕著となりまするならば、やがて戦時中の統制強化にまで進まないとは誰が保障できましようか。我々地方自治関係いたす者といたしまして、この趨勢に対し大きな危惧を抱くものであります。委員の皆様におかれましては、地方自治の振興という点に十分に思いをいたして頂きまして、この地方制度調査会答申案に対して公正な御批判を賜わりますよう、衷心からお願いをいたしまして私の意見を終ります。
  11. 内村清次

    委員長内村清次君) 以上で参考人の陳述は終りましたが、質疑に入ります前に、本日は前田地方制度調査会会長灘尾行政部会会長、石村財政会会長代理が見えられております。このかたがたから、経緯、或いは又御意見がありましたならば一つお伺いいたしたいと思います。調査会の経緯を前田調査会長からお願いいたします。
  12. 前田多門

    説明員(前田多門君) 先ほど来、地方団体の代表者のおかたがたのお話の中にも、大体地方制度調査会の只今までの審議の経過がおわかりになつておることのように考えまするので、且つまだ何も完結いたしておりませんので、甚だ申上げることが少いので恐縮に感じておる次第でございます。  先だつてこちらに参りまして御報告を申しましてから以後、一日、二日、三日、四日に亙りましてそれぞれ行政部会及び財政部会の審議があつたのでございますが、一日から三日の午前にかけまして、行政部会におきましては、起草委員の案を骨子といたしまして、只今お聞き及びのようないろいろの御論議の下に、一応の決をお採りになりまして、行政部会として総会に御報告になる態勢ができたのでございます。然るに財政部会のほうでは、三日と四日にかけまして会があつたのでございますが、起草委員の案に対しまして、地方公共団体の代表者の方々からもいろいろの観点からこれに対して御批判があつて、又他面におきましては、大蔵省のほうから出ておる委員のほうからは、大蔵省的見地からいたしまして種々の意見がございまして、相当の開きが広いのでございます。このまま起草委員の案を骨子といたしますよりは、だんだんと皆様がたの御意見をよく聴取いたしました上に、起草委員方々が再び再調なさつて、そうしてでき得るだけ多くの方々の理窟がある御意見を取入れて、起草委員のかたの作りまする草案を全然作り直すわけでもございませんが、適当に修正をいたす、そうしてそれでもなお且つ御反対のいろいろの委員の御意見があれば、そういうような意見と並び合せて総会に出して、結局総会が決定をすると、こういうことにしようじやないかというので、四日に一応部会が閉じられまして、閉じられました直後直ちに起草委員が集まりましていろいろ相談をし、又その翌日五日、土曜日でございますが、土曜日も午前から午後にかけて起草委員の諸君が専ら案を練られておりまするが、これはまだ完結いたしておりませんで、たしか明日であると思います。明日又起草委員のかただけが集まられまして、いろいろ御相談になられます。いずれにいたしましても、財政部会は十四日に開かれることでございまするので、それまでには無論起草委員の草案というものが、再調されたものが出ることでございまして、恐らくは部会においてその際御審議になることだろうと思います。他面におきまして、事柄が大分迫つて来ておりまするので、実はまあ九月一ぱいくらいまでに完結いたしたいというような考えでやつておりまするので、成るべく急いで結論を出したいという考えを持ちまして、十八日、十九日、この両日を以て一応総会の日取りといたしまして、これは各委員の御了解を得まして、十八日、十九日で総会の御審議を願つて、若し二日間でどうしても結論を得られなければ、二十日は日曜でございますけれども、日曜に入つても是非御決定を願いたいと、こういうような経過になつておる次第でございます。
  13. 灘尾弘吉

    説明員灘尾弘吉君) 調査会の審議の経過につきましては、大体会長から申されました通りでございまするので、附加えて申上げることもないかと思うのでございますが、今回の調査会の任務は極めて広汎に亙つておると思うのでありますが、只今のところは、取りあえず来年度の予算の編成、或いは又次の国会というものに提出すべきものがあれば、これを出したらどうかと、こういうような見地からいたしましても余り地方制度の根本に亙ると申しますか、根幹に触れるような問題になりますというと、いろいろの御議論も多岐に亙ることでございますので、当面必要とする事項を考えてみようということで、調査をいたしておりまするような次第でございます。私は行政部会のほうを担当いたしておるのでございますが、このほうにつきましては、只今お話のございましたごとく、一応行政部会として案を取りまとめることができたかと思うのであります。これを次の総会に報告いたしたいと考えております。勿論、この問題につきましては、先ほど来各地方団体の代表者の方々からいろいろお話のございましたごとく、極めて有力な反対意見として、さような意見もたくさんあることでございますが、行政部会といたしましては、一応採決を以ちまして、各項目につきましてまあ多数説と申しまするものを報告するつもりでおりますけれども、同時にこの部会において現われましたいろいろな意見につきましては洩れなく総会のほうには報告いたしまして、御審議を願うつもりでおります。  それから内容につきましてはお手許にございます資料によつて御承知を願いたいと思いますが、皆さんすでに御承知のことと思うのでございますが、今回のこの答申案を作成するにつきましては、いろいろ議論もたくさんあることでございますので、部会といたしまして、比較的何と申しますか、言葉が或いは不穏当かと思いますけれども、中立的立場と申しまするか、公正な立場にある、こういうふうな意味合いにおきまして、いわゆる学識経験者として委員を委嘱せられております方々答申案原案と申しますか、起草をお願いいたしましたような次第でございます。この方々が熱心に御調査下さいましたものを部会に諮りまして決定をいたす、こういうふうになつております。御承知のごとく格別政府から原案を示されたものでもございません。決して政府の意図によつてどうであるとか、或いは又委員の一部の者の考えによつてどうであるとかいうことはないものと確信いたしております。極めて冷静且つ公正な御審議の結果、この案ができ、又部会におきましても、その立場で審議せられたものと私は考えておる次第でございます。その辺のことについては篤と御了承願いたいと考えます。大体この程度申上げて、よろしくお願いいたします。
  14. 石村幸作

    ○石村幸作君 今前田会長及び灘尾行政部会の部会長の御説明がありまして財政部、実は財政会長の床次君が欠席いたしております。私ただその代理を普段やつておりますが、財政部会におきましても、先ほど会長が話された通りのいきさつであります。学識経験者とでも言いますか、その部の委員諸君にお願いして、数名のかたでこの答申原案の起草をやつて頂いたのであります。その一応結論が出まして、これを部会にかけたのでありますが、大分各委員との意見がかけ離れております。そこで先ほどお話があつた通り、一応四日の日ですか、結論が出るはずであつた、それを延ばして十四日に部会を開いて再検討するということになつておるのでありますが、私は今日は委員長の指名で今発言いたしましたが、これは部会長代理という立場だけでなく、丁度当参議院の地方行政委員会委員としての立場でこの調査会の内容等も見て来ました。その経過等は、これはここで自分の意見を加えてお話することがいいか悪いかはこれは問題であります、微妙な立場におりますし……。併しむしろ率直にお話したほうが、いいかと、こう考えております。これは方々に差障りがあるかも知れませんが、御了承を願いたい。  そこで私は、この財政部会の各位が、これは全般のかたですが、非常に熱心に数ヶ月かかつてこれを検討されておつた。而も地方公共団体の六団体委員からも貴重な資料がたくさん出て、それに基いてこの地方自治制度のこの真剣な叫びも聞いておつたのであります。そこでこういう皆さんに対して、本当に心から私はその御熱心に敬意を払つてつたのでありまするが、そもそもこの地方制度調査会設置された理由は、皆さん御承知の通りこの地方制度を或る程度改正しよう、今後どういうところへ持つて行くか。これについては政府が独自の立場でこれを決定又立法化するのでなく、この地方自治体に関係のあり、又直接間接に関係のあるかたたちを選んで、そうしてこの制度調査会を作つて、そうして本当に民主的な意見をまとめて、それを政府が今後の方針の大きな貴重な参考にすると、こういうことであつたと思うのです。  話がちよつと飛びましたが、そこでこの地方制度調査会答申というものは、ただ政府が考えているようなものだけでなく、地方自治実態に即したものが結論として出ることを私どもつておつたわけであります。さてこの財政部会における答申案原案ができた、これが部会でまとまりがつかなかつたということに、まあここに大きな問題がある。勿論六団体といえども、県、市町村おのおのこれはどうしても意見が全部一致しないだろうということは予測しておりました。然るに今回の答申案原案に対しては、どうも六団体と一部のものについてはいろいろの相反した意見が出ております。お互に六団体同士の間に意見が一致しなかつた点もありますけれども、総合いたしまして、財政部会に属する財政の問題については、総じて六団体が、何といいますか、殆んど一致してこの原案反対しているように見受けられます。先ほど来縷々参考人意見もありましたが、これは調査会委員会の席上でも同様な意見が出ておりました。そこで私はあの原案が部会で持出されてまとまらなかつた、そういういきさつについて、忌憚ない私の意見をここで申上げてみたいと思います。  この財政面につきましても、どうもあの原案に対して、地方公共団体関係の六団体が非常に反対をしているということに対して、私は当然じやないかと考えております。何となれば、どうも起草委員のかたたちの見方が、何か高いところから地方公共団体を見下して、これを批判し、そうしてこいつを直してやろう、まあこんなふうな考が、お気持が強いように見受けられます。従つて常に地方自治体が叫んでいることと、どうも正反対意見が具体化しているというふうに見受けられます。そこで、私としては、この結論が出たことに実は予期に反していた、こんなふうにも言いにくいことでありますが感じられたのであります。詳しくは、成るべくここには申上げるのは差控えたいのでありますけれども、例を挙げて言わなければ話がわかりませんから概略ちよつと申上げますが、例えば、これは例であります。税制問題につきましても、現在行われておる地方財政の姿というものは、これはいい悪いは別の問題であります。つまり地方自治の確立、まあ憲法に調われておる地方自治本旨に基いた精神、これによりまして先ず第一番に地方自治の確立は、その財源地方財政の自主性といいますか、これでなくちやならない。そこで地方税、これもおのおの独立税、そうして附加税等の制度も、従来あつた附加税制度等も全然廃されて、そうして自主独立の地方税を確保しなければならん、こういう原則に基いた制度であります。然るに、今回の原案を見ますと、それに反して、これをばらばらにするということであります。そもそも今回の諮問事項が根本的に地方制度を大改革をすること、勿論これでありますけれども、差当つては、当面の問題、即ち二十九年度の予算の編成又はこれに伴う立法等に要する事項、即ち最も緊急を要するものを大急ぎで作り上げるというのであります。然るに、根本的に、例えば地方税の体制、税体制にメスを入れたというのはどうかとも考えられるだけでなく、先ほど申上げましたつまり地方税をばらばらにする、具体的に申しますと、例えば県民税を新らしく創設する、これもいいでありましようが、併し能率の増進とか、地方財政の均等化等を図るのも勿論であります。ここにどうしても住民の福祉ということを考えなければならん。負担のことも考えてもらわなければならんと思う。国としては、成るべく国民の負担を軽減させよう、これは来年度の予算等もこれははつきり出ておる。然るに、今度の案によると、県民税も新らしく作ろう、市町村民税というのがあるにもかかわらず、同じようなものを、又県民税を作る、これもどうかと思うのであります。又遊興飲食税を国に移管するというのでありますが、いわゆる都道府県税の最も重きをなす入場税と並んだ遊興飲食税だけを国に吸い上げよう、それから又市町村の重要な税種である固定資産税の中の償却資産を切離して、これを道府県に委譲する、又市町村民税の中の法人割の一部を、これは法人割全部を持つて行くというなら又考えようもあるが、法人割の一部、約二割これを国に委譲する、こういうふうなことも謳われてある。そうすると、市町村と県と、国と、これをばらばらに、ちやんぽんにしてしまうと、もう今までのとにかく税の体制というものは根本からこれは覆される、どうして、何のためにこういうふうにするかということが非常に疑問なんであります。勿論今までこの委員会等でも常に叫ばれておつて委員会としても、自治庁や大蔵省等の意見を聴取したりして、この地方財政調整ということを非常に大きく、殆んどこの委員会の大きな問題として取上げて来たのであります。地方財政を調節して、そうして赤字にならないようにということはどうしてもやつて行かなければいけない。そのためにこの地方財政を今度も研究しておると私は思つておるのでありますが、この赤字を解消するようにやつて行くんだつたならば、国からどうしても一つの財源地方に持つて来なければならんと、こう当然考えるべきことであります。そこで、この答申案の中にも、煙草の消費税を持つて来ておる。これは賛成できるのでありますが、他のいろいろな税目、税種をちやんぽんに、ばらばらにする必要はない。折角持つて来た煙草の消費税を、これを配付してやれば、それで一応問題は解決に向つて行くと、こう考えられるのでありますが、これは勿論この税種をばらばにした趣旨としては、つまり税制の偏在を是正するというところに狙いがある。又小委員のかたも主張されておりまして、御尤もでありますが、この税収入が偏在しておる。これを根本的にあとを断つというのだつたならば、もう現在の税体制をやめて、そうして全部国に吸い上げて、これを配付してやる以外に途はないと思います。こんな意味で、私は今ここでただ当面の問題を解決するために、この税目をばらばらにする必要には疑問を大いに持つております。同時にその方針として、地方の税を国に吸い上げるという、そのこと、そのものに私は大きな疑問を持ち、又賛成できないような気持も多々あるのであります。  それから次に、例として地方財政平衡交付金、これはこれを地方交付税に改めるということでありまして、いろいろ中の説明等を聞きますと、一応尤もと思います。地方財政平衡交付金法が現在実態に即していないという意見は今まで随分出ておりまして、私どもとしても或る程度それは肯定しておつた。併しこれは主なる原因というのは、財政需要額と収入額、これを見合つた、いわゆる必要な交付総額をきめる、これが問題だつたでありましよう。つまり積上方式をとれなかつたという問題でありましようが、そこでこれを改革すればいいのでありまして、それが今度は地方交付税になつたというので出ておりますが、これは内容についても私は大して議論というよりも反対も賛成もない、ただ名前が変つたくらいのものと、又一つその方法として、国からの国税の一定割合と、こうなつておりますが、そこなんです。一定割合をどうするかという積上方式で行くのだつたら、積上方式によつた総額を出して、それを国税の一定割合ということにはつきり算定するのでしたらよろしい。又それだつたならば現在の平衡交付金法で積上方式をとれば、同じ結果になるのでありまして、これはつまり地方財政の需要額を必ず確保してやるという性質のものだつたら、どつちでもいいようにこう考えられます。  それからこれは各地方公共団体が非常に熱心に叫ばれておる地方公共団体の中央金庫という問題ですが、これは相当研究しなければならんと思うのですが、これはまあ小委員会でも案が出ていないようです。  次に問題は赤字地方公共団体財政再建整備の問題でありますが、これも救つてやろうという非常な親心で、当然これはこの調査会答申案として先ず第一番に取上げられなければならない緊急な問題でありますが、併しその中にも、私は意見を持つております。例えばその条件として赤字の自治体は県にしろ、市町村にしろ、その税収入の一・二倍の増徴をして、増収をしなければならんと、又はそれに対する節約をしろというのでありますが、これもいいでありましよう。赤字を生んだならば、これを国の力によつて再建して行くというのならば、みずからも苦しんで措置をとらなければならん。これは当然のように思われます。併し事実から見ると、これができるでありましようか。この原因が県知事市町村長、この人によつて非常に放漫な政策を数年続けておいて、こういう赤字を出したならば、これは当然でありますけれども、これはその市町村長は責任を負わなければならん。併し現在の全国的な地方公共団体の赤字というものは、単にそうとはこれは見受けられない。制度の欠陥といいますか、どうしてもその赤字が出なければならんような制度であるとしたならば、今のような条件付きということは、これは苛酷であろうと、折角の親心が何にもならなくなる、こういうことだと思います。第一例えば或る町でこの赤字の再建整備をするために、町村税を一・二倍の増徴をしたとするならばどうなりましようか。これはもうその町民は決して黙つておりません。又議会もこれを承認しないでしようが、承認しても町民というものはこれを決して喜んで納めません。第一番にこれは理事者又議会に向つて、どういうわけで赤字が累積したということを質さなきやあならん。若しもそれが放漫政策だつたら、その理事者の責任としてこれを問うでしようし、若しこれが制度の欠陥だつたとしたならばこれは絶対に町民は納得しない、これは事実なんです。当然そういうことになると思います。まあこういうふうなことも或る程度の犠牲は止むを得ないとしても、もつと温かい気持ちを持つてやらなければならん。それからこの二十九年度の場合に二百億というような金額も出ておりますが、この二百億という金額をここに謳うのもどうかと思います。併しこういう話をすると際限がありませんが、今例をここに以上申上げたのであります。  私はこの答申案原案をこしらえて頂き非常に御苦労しておられたのに対して感謝をいたしますが、この間最後の結論を出そうというときに、各委員との意見が一致しなくて延ばしてそこで先ほども前田会長から話があつてその夕方から再検討を始めた、そこへ私も立会いました。それでそのいきさつ、状況等も見ておりましたが、どうもこの修正意見、又は反対意見がどつさり出ておつたのにもかかわらず、この意見を取入れようとする空気がちつとも見えておりません。私はあの部会のしまいの機会に小委員会のかたたちにも、起草委員のかたたちにも、この問題はただの個人の説を具体化したのじや困る、つまり六団体の人たちが数ヵ月に亙つていろいろ意見を言つておつた。而も先ほどもその結論を出そうというときにも、非常に声を大きくして反対修正を希つておる。これはつまり冗談ごとで言つているのじやない。つまり地方自治のためにもう身を以て衝に当つて今までのいろいろな点を体験しておる。その主張たるや実に切実なるものがあるのだから、これはどうしてもこの六団体から出ている委員諸君のこの意見を十分に尊重して参考に資して、そうして練り直しをやつてもらいたいということを申上げ、皆さんもこれをよく理解してくれたと思つたのでありますが、その再度の再検討の場面を見まして、ますます私は予期に反した、もつと勝手に言わしてもらえばまあ憤慨したとでも言いましようか、これは言い過ぎかも知れませんが、まあそんなふうにも見えて、何ら反省の態度が出ていなかつたことに対しては非常に私は遺憾に堪えなかつたのであります。  で、時間もありませんので、まだ言いたいこともたくさんありますが、やめますが、まあ結論としましては、丁度この地方行政委員会関係参考人から最後の意見を聴取したのであります。そこでこの委員会で貴重な参考人諸君の意見が出された。これがあの調査会答申案原案を作る、それに反映すれば非常に喜びに堪えないと、こう考えております。恐らく今後十四日に部会を開いて、そこに小委員会の練り直した案が出て来ると思いますが、その案が本当に県市町村のかたたちが希つておるまじめな案に接近して来るということを期待しておる次第であります。以上であります。
  15. 内村清次

    委員長内村清次君) 委員のかたがた御質疑ございますれば一つ……。
  16. 小林武治

    ○小林武治君 柿沢さん、竹内さんどちらでもいいですが、府県単位の警察では自治体警察にならんという御意見は、どういうところからでありましようか。どちらでもいいですから……。
  17. 竹内忠治

    参考人(竹内忠治君) 府県単位自治体警察は自治体警察でないという御意見でございますか。
  18. 小林武治

    ○小林武治君 そういうようなことです。
  19. 竹内忠治

    参考人(竹内忠治君) 私もそう思います。今町村会会長さんがおつしやつたと思うのですが、実質的にはそういうことになると思うのです。あの改正案の内容を見ておりますと、やがて知事も官選になるのじやないかという感じを国民は深く持つておる。今は知事の公選を許して、そうして府県単位自治警察にしておくが、やがて官選知事になつて来るということになれば、府県単位自治警察というものは、国家地方警察の府県単位に置かれた本部になるというようなことは、もう一応国民はああした起草委員案の内容を見て感じておる。私どもは東京で憤慨して帰りましたが、地方議会に帰つてそのことを報告してみましても、議員自体が、或いはこの問題に関心を深くしておる識者たちもそのように感じておるのです。そこで我々は現行のままでよろしいと言つておるのは、今の市町村単位の自治警察、特に私どもの京都市で言いましても、府にあつた時代の警察当時の力よりも、市に自治体となつて現われた自治体警察の力のほうが遥かに大きいと思うのです。なぜならば京都市自治警察大体三千人の警察吏員がおりますが、この三千人即ち自治警察で以て一朝有事の際に如何なる仕事ができるか、こういうことなんです。而も京都市自治警察というものが三千の人員でありながら、以前の三千八を擁した当時の府の警察よりも更に大きな力が発揮されるということは、市民がこぞつて、この自治体警察に協力しておる百二十万市民の上に立つた警察であるということを百二十万市民はそれを感じておるのです。我々の力によつて我々の警察を作ろうではないか。従つて警察に必要ないろいろな施設にも喜んで醵金をしておる。こうした事実に鑑みましても、府時代よりも現在の市の警察に至つて内容も非常に強化されております。常に警察が叫ぶとか或いは市民が必要を感じて警察に求むると、大きな力が発揮される、その準備はもうすでにでき上つておるのです。こうした強力な市民の協力の上に立つこの警察を、又元のようなふうに返すということは断じていけないというのが市民全体の声なんです。このことは全国市町村又然りだと思う。ただ財政裏付がないために、欲しい自分たちの警察も止むを得ず離さなければならないというので、これを国に返上したというようなところも出ておりますが、若しその財政裏付さえあるならば、いずれの市町村でも自分の警察を自分の手で持ちたいという考えに変りはないと思う。だから我々は現行のままとして、若しこの市町村のうち我々は要らないのだというものがあれば、それは国警に編入すればよろしいし、又幾つかの町村が寄つて一つの自治体警察を持つこともよろしいというふうなことを主張しておるのです。それは国民のためになる国民の警察であつて欲しい、住民のためになる自治体警察であつて欲しい、こういう念願にほかならんのであります。
  20. 柿沢篤太郎

    参考人柿沢篤太郎君) 府県警察は府県自治体と称しても、自治体警察ではない。と言います根拠は、国民が府県を現在でも自治体と思つておらないという考え方に基いておるのでございます。それは府県という文字が長い、何十年来、まさに国の出先機関的色彩を帯びて来たのである。内務省の手先として中央集権の腕の役を果していた、そうした住民の意識が強かつた。従つて憲法の下に一応自治体として名乗りを挙げて、それを変えてみましても、この間の府県自治体としての色を濃くしようという努力にもかかわらず、依然として住民は一歩も自治体と思い出しておらんということを申上げたいと思います。県の旗を作り、そうして又県の象徴とする花などを作つて、そうして県民意識の高揚を随分全国的にやつておられますが、遺憾ながらやはり府県は丁度その規模自治体とは言えないという点もあるし、又旧来の習慣から、又或いは再び当然国の出先機関であるという潜在意識からか、何にしてもそうは考えられない。そこで今他のいろいろな問題をとりましても、市がこれをやつてくれれば、市ならば自由に我々は文句を言うのだが、県では言えないというのが全くの住民の意識である。それらが府県自治体でないという住民から見た理由でございます。  なお今度のこの改革に窺れることは、丁度今政府の自衛軍云々が、その紙を一皮むけばこの意思であるといつたようなことと同じ感覚の下に、この県警察は、即ち国家警察の第一歩であるということがもうすでに輿論と化しておるということを申上げたいと、かように御了解を願いたいのであります。
  21. 小林武治

    ○小林武治君 柿沢さんのお考えでは、そうするともうすでに府県自治体じやないから、その単位の警察は自治体警察じやない、もうすでに府県自治体じやないと断定してかかつておるわけですな。
  22. 柿沢篤太郎

    参考人柿沢篤太郎君) 私ども自身が府県は一日も早く国の出先機関たらしめるべしと主張しておるのです。
  23. 秋山長造

    ○秋山長造君 小委員会案の内容をお尋ねする前に、これを作られた地方制度調査会運営方法等について詳しいことを主張された柿沢さんなり又石村さんにお尋ねしたいと思います。只今石村委員のお話によりますと、この間の小委員会運営或いはその後の部会の運営等は、非常に何といいますか、少数独善的な運営のやり方というようなお話だつたのですが、財政部会についてだけでもそういうことで、小委員会の案についても議論百出で何ら結論は出ておらない、だから今後改めて部会をやられましても、なかなか一回でまとまるかどうかわからないというようなお話なんでして、まあそれでは我々がこの小委員会案を中心にして余り突込んだ議論をここでやるのも大した意義はないのではないかというような気もするのです。併しまあそれはそれとしまして、大体最初に行政部会なり財政部会なりにおいてそれぞれ小委員の任命をやられたわけなんですが、そのときの小委員の任命の仕方ですね、先ほど灘尾会長からのお話では、大体学識経験者だけに限つたほうが公平であると思うからというようなお話だつたようでありますが、大体部会でそれぞれ小委員会を作られるときの小委員の任命の基準といいますか、どういう基準で三名乃至五名の小委員を選ばれたかということ、それから又その小委員会に対して一切白紙委任をされたのか。それとも部会なり又総会なりにおいて大体の要綱のようなものを示して、あとの細目について御委任になつたのか、先ずそういう点についてお伺いいたします。
  24. 灘尾弘吉

    説明員灘尾弘吉君) 行政部会関係について申上げます。これが政府から原案でも出して頂くと大変審議もやりやすかつたと思いますが、何もございません。それで行政部会といたしましては先ほども申上げましたように、当面改善を要すべき事項はどんなものだろうというふうなことにつきましていろいろ審議をいたしたわけでございまして、大体こういうことを問題として審議したらどうであろうかというふうなのがお手許にたしかあると思いますが、いろいろ項目ができております。ああいうふうな項目について一つ審議して見ようと、こういうことになりまして、各委員からいろいろ御意見の御開陳もありました末にああいうふうな、これは御想像もつくと思うのでありますけれども、いろいろ御意見がありまして、容易に部会だけではなかなか答案が出て来そうにもない状態でございますので、皆さんとお諮りいたしました結果、若干の小委員のかたをお願いいたしまして、そこで一つ答案を書いて見て頂こうということになりましたわけでありまして、そのときに小委員にお願いするのは、私の部会といたしましては、学識経験者として委員の委嘱を受けておられまする方々全部に一つお願いをしようということでああいうふうな結果になりました次第であります。格別こういうふうにというふうな要望とか何とかというものはお示しをしてはございません。各小委員のかたにおかれましては、勿論部会におけるいろいろな論議というものは十分御承知の上で起草に当られたことと私は思つております。
  25. 秋山長造

    ○秋山長造君 そういたしますと、まあ大体ここに資料が出ております答申を要すべき事項として幾つか羅列してありますが、これは都会としては小委員会に白紙委任されたというように……。
  26. 灘尾弘吉

    説明員灘尾弘吉君) さように申上げてよいと思います。
  27. 秋山長造

    ○秋山長造君 それで小委員の選任なんかにつきましても、学識経験者で、いろいろな面から見て一番公平な結論を出されるだろうという部会の非常な期待をかけられて作られた案に対して、この資料を見ますと、殆んどすベての項目に亙つて修正案が出ておるわけであります。而もその修正案が殆んどもう全部が全部否決されているんですが、やはり行政部会においても、先ほど石村委員のお話のありました財政部会のように、やはり余り慎重に修正意見を論議されるということでなしに、特に又六団体あたりから出ている修正案に対しても、余り耳を藉すことなくして、小委員会原案を否応なしに押通すというような形であつたのか、それとも慎重にすべての修正案について御研究になつたのか、それをお伺いしたい。
  28. 石村幸作

    ○石村幸作君 灘尾会長の御答弁の前にちよつと釈明をしておきますが、私が先ほど来縷々申上げましたのは財政部会に関する限りであります。聞くところによると行政部会はそれはいろいろ意見が出たんでしようが、最後の結論はいろいろの少数意見を附して大した混乱がなくきまつたようにうらやましく思つております。ただ財政部会の場合は先ほど私が申上げました通りであります。こういうことであります。
  29. 灘尾弘吉

    説明員灘尾弘吉君) 私から申上げるのも如何かと思うのでありまするが、私といたしましては、或いは御意見のあるかたのほうから申せばもう少し時間が欲しい、もつとやりたいというふうなお気持を持つていらつしやるかたが勿論おありだつたと思うのであります。大体行政部会といたしまして各方面から御提出になりました御意見は、前から印刷物でも十分承知しておることでもございまするし、同時に又行政部会におきましてそれぞれ又詳細に御意見は伺つておるわけでありまして、それぞれ御意見を十分御開陳を願いました末に、結論を得まするために採決という方法を用いましてやりました次第でございます。十分議は尽したものと私たちは考えております。
  30. 秋山長造

    ○秋山長造君 部会の採決の方法なんですが、この資料を見ますと、大体まあこういう重要な問題についての採決というのは、過半数できめるというのが原則だろうと思いますが、過半数に達しないで比較多数で採決がどんどん行われて、例えば五対六だとか、七対八だとか、十対五だとかというような形で行われておりますが、そうしますとあとのかたは結局賛否を留保されたわけなんですか。
  31. 灘尾弘吉

    説明員灘尾弘吉君) 御尤もなお話であります。どうも今回の行政部会の審議を通じて考えて見ましても、意見を留保せられるというふうに窺えるかたもかなりおられたように思います。そこで採決の方法といたしまして、単純に賛成だけを聞くとか反対だけを聞くということでなしに、賛成のかたも幾らもいらつしやる、反対のかたも幾らもいらつしやるということを一々確かめまして、それで一応結論を出したような次第であります。
  32. 秋山長造

    ○秋山長造君 そういたしますと、もとよりこれは部会の採決が、この部会に所属しておる委員を拘束するわけではないでしようから、総会等におきましては、又一応部会でそういう比較多数できまつた案ですから、総会に持出した場合に又どう変らないとも限らないという点は……。
  33. 灘尾弘吉

    説明員灘尾弘吉君) そういうことだろうと思つております。そうなります。
  34. 秋山長造

    ○秋山長造君 だから一番極端なことを言えば、部会で採決によつてきまつた案ではあるけれども、総会においてはもう根本的にひつくり返してしまうということも考えられるわけでありますね。
  35. 灘尾弘吉

    説明員灘尾弘吉君) あり得ると思います。
  36. 竹内忠治

    参考人(竹内忠治君) 非常にいい御質問を頂きましたので、私は財政部会に関係をいたしておりますので、只今の御質問の御参考にして頂けば甚だ仕合せだと思います。私は地方議会関係をしてこれで足かけ二十二年目になりますが、今度の地方制度調査会行政部会の採決方法ほど不思議に思つたものはほかにないわけなのです。極く簡単に我々の地方団体の修正意見というものは葬むられた、九分九厘まで葬むられたと思いますが、これは葬むられるのが当然だつたと思います。地方制度調査会には正委員とそれから臨時委員がありますことは御承知の通りなのです。必要に応じてこの臨時委員が任命される。あの採決をとる当時におきましては、我々には地方団体が全部束になつてかかつた。ところが十二名が半分々々に分れておりますので六票しかありません、私どもは……。一、二の人が手を挙げられると右顧左眄してあつと思つてこういうふうに手を挙げられて常に多数を制せられて破れておるのです。従つて賛否いずれも手を挙げなかつたという人も相当あつたのも、特に地方団体側に多かつたと私は思うのです。採決する前には臨時委員にも採決権を持たすことの是非が随分長く論じられました。併し臨時委員といつてもひとしく委員には違いないのだから採決に加り得るという部会長のお考え方で採決をとられたので、修正案というものは殆んどとられてしまつた、そういうことが実情なので、あのような採決方法に対しては地方団体側としては非常な忿懣を持つておるのです。決して公正な採決ではなかつたというふうに我々は考えておるのです。これは地方団体側はどなたもそういうふうに考えておられると思うのです。
  37. 灘尾弘吉

    説明員灘尾弘吉君) 今臨時委員のことについてお話が出ましたが、何か私が非常に不公正なことをやつたというふうに伺えたのでありますが、私といたしましては委員でありまする限りは、その委員が採決を制限せられておるとか何とかいうことになつておれば格別ですが、そうでない限りは同じように取扱うことは、これは当然のことであります。私の意思を以て左右することはこれはできない性質のものだと考えております。
  38. 関井仁

    参考人関井仁君) 地方団体の代表として本日は陳述するわけでありますが、地方制度調査会行政部委員として列席をしておりましたので、町村代表として一言申上げたいと思います。先ほど市議会のほうからも御発言があつた通りでありまして、採決の方法等が運営委員会におきましてどのように議せられましたか我々承知しないのでありますが、その方法たるや実際国の、而も総理の委任いたしました委員会といたしましてやるような方法ではなかつた。これは恐らくお百姓さんの部落座談会でももつと明確な方法でやるのではないかという感じを持つたのでありまして、それは私はあの速記録を見ましても、反対者が誰であつたか、或いは賛成者が誰であつたか名前は書いてないと思うのでありまして、後刻御調査願いたいと思うのでありますが、恐らく手を上げられた数だけを何点何点、反対或いは賛成ということについて、単にその賛否の数だけを読みまして、一点多いとか或いは二点多いとか、反対多数であるとか賛成多数であるとかいうような方法できめたというふうに見ておるのでありまして、恐らくあの速記録を見ましてもあとになりまして賛成者がどなたであるか、反対者がどなたであるかわからんと思うのでありまして、恐らく私は無効ではないかと思うのであります。その点御調査を願いたいと思うのであります。
  39. 竹内忠治

    参考人(竹内忠治君) 先ほど私の発言中財政部会に属しておりましたと申しましたのは行政部会の誤りですから……。
  40. 内村清次

    委員長内村清次君) 時間が大分たちましたのですが、実は明日知事会、それから府県会の議長会の、又この案に対する意見の開陳が明日ありますので、その後に又委員の各位からその反映方法あたりも一つ御相談をすることにいたしまして今日はまあ時間の関係でこれで休憩をいたします。    午後一時十七分休憩    —————・—————    午後二時十九分開会
  41. 内村清次

    委員長内村清次君) 只今から委員会を開会いたします。  議題に入る前にちよつとお諮り申上げますが、明日は地方制度調査会答申案に対する意見全国知事会代表茨城県知事友末洋治君、全国都道府県議会議長会代表神奈川県県会議長松岡正二君から参考人として聴取をいたしたいと存じますが、さよう決定してよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 内村清次

    委員長内村清次君) ではそのように決定いたします。  それでは議題に入りまして平衡交付金法の一部改正法律に対しましての政令案及び又地方財政平衡交付金の状態、それについて政府から説明を聴取したいと思います。
  43. 武岡憲一

    説明員(武岡憲一君) 昭和二十八年度の地方財政平衡交付金のうち普通交付金の額が決定をいたしましたので、その決定状況等につきまして御報告申上げたいと存じます。  昭和二十八年度の平衡交付金配分につきましては、先の第十六国会におきまして御決定頂きました予算並びに法律に従いまして算定を行つてつたのでございますが、先月の下旬にその算定を終りまして、八月三十一日付で決定いたしまして各地方団体に通知したのでございます。本年度の平衡交付金配分に関しましては、先の国会におきまして地方財政平衡交付金法の一部を改正して頂きました結果、単位費用、それから測定単位の一部、又基準財政収入額の算定方法等につきまして昨年度とは大分改正があつたのでございますが、更に自治庁におきましてはその法律改正に従いましてお手許に御提出申上げております地方団体に対して交付すべき昭和二十八年度分の地方財政平衡交付金のうち普通交付金の額の算定に関する総理府令というものを制定いたしまして、これによつて算定を行なつたのでございます。この算定方法は先の法律改正によりまして変つて参りました部分が昨年に比べまして変つてつておりますのは当然でございますが、そのほかにおきましては、大体におきまして前年度、昭和二十七年度に算定をいたしました方法と大きな変化はないのでございます。  若干の相違点につきまして申上げますと、一つは法律第十三条第二項第三号の補正、即ちいわゆる態容補正に関連いたしまして若干の改正を行いました。これは総理府令の第七条でございますが、態容補正を行いますのに地域区分をする必要があるわけでございますが、この地域区分を前年度におきましては給与の差による地域区分、それから行政の質の差による地域区分並びに行政権能の差による地域区分という区分に上りまして補正を行なつてつたのでございますが、今年度におきましてはこれを行政の質の差による地域区分と行政の権能の差による地域区分の二つの区分を開いて算定いたしたのでございます。昨年度におきましては、いわゆる行政の質の差による地域区分といたしまして、各市町村ごとにその団体の人口、それからいわゆる経済構造、即ちその団体の人口の中で第二次、第三次人口がどれくらいの率を占めておるかという率でございますが、その経済構造、それからいわゆる人口の可住地の密度並びに勤務地手当の支給率、この四つの要素によりましてそれぞれ採点をして種地を一種地から七種地まで七種に分けて補正を行う、こういうふうな方法をとつてつてつたのでありますが、本年度におきましては若干この点に修正を加えまして、行政の質の差による地域区分といたしましては、人口と経済構造とそれから去年用いました可住地密度に代えまして、宅地の平均価格の指数というものを用い、それから勤務地手当の支給率、こういう四つの要素によりまして全国市町村を一種地から七種地までに区分をいたしまして、それぞれの補正を行なつたのでございます。この点が昨年度と若干変つた点でございます。  それからいま一つは、合併町村の基準財政需要額の算定に関する特例でございます。総理府令の第十条でございますが、合併市町村の場合におきましては、昨年度、昭和二十七年度におきましては、合併後五ヵ年間に亙りましてその合併をいたしました市町村については基準財政需要額の算定の特例を用いておりまして、大体本年度の算定をいたします二十八年度の四月一日現在においてそれらの市町村合併しないで存在しておつたと仮定した場合の財政需要額というものを保障するというような考え方であつたわけでございますが、昨年度におきましてはそのうち合併後三年までのものは一〇〇%保障する、四年目のものについては六〇%、それから五年目のものは三〇%というふうに逓減をいたしまして、その需要額を見ておつたのでございますが、先般の国会におきまして御制定になりました町村合併促進法の中における平衡交付金法の特例におきましては、五ヵ年間の分については一〇〇%に見て保障をするというふうなことに御規定がございましたので、この平衡交付金法による本年度の算定におきましても、その法律に合せまして、即ち五年間逓減することなく一〇〇%基準財政需要額を見て行く、こういうふうに今年は算定をいたしたのでございます。全くこの点は法律の御趣旨通り算定をいたしたわけでございます。なお、そのほか総理府令の中で細かく申上げますと、測定単位の数値のとり方でございますとか、或いは収入額の税収算定に用いますものの若干の補正の問題でございますとか、技術的な修正を行なつておりますが、余り根本的な問題ではございませんので説明は省略いたしたいと存じます。  大体以上のような要領によりまして各団体ごとに計算をいたしたわけでございますが、その結果はお手許に計数の資料を御提出申上げておりますので、これによつて御覧を頂きたいと存じます。  先ず昭和二十八年度の基準財政需要額の総額でございますが、府県市町村を併せまして算出されました基準財政需要額は約三千二百五十億程度に相成つております。お手許の表の下から三行目の合計という欄の一番左の欄でありますが、三千五十八億五千三百万でございまして、括弧書で百九十億というものを書いてございます。この括弧書きは下の註にもございますが、東京都の区の分でございまして、区の分はこれを市町村分として計算をいたしますと、本年度におきましては交付団体即ち基準財政需要額のほうが収入額より上廻る数字が出て参りますが、府県分に当ります分と合せて計算をいたしますと、不交付団体になるわけでございますので、表の作成上、これは括弧で外書きにいたしておるのでございます。それに対しまして、基準財政収入額は二千四十一億六千四百万何がしという数字が出ております。これに対しまして、東京都の区分の基準財政収入額は百八十七億ばかりになるわけでございます。そういたしましてこれは交付団体と不交付団体を合せた数字でございますが、その交付団体分、不交付団体分の内訳は下の欄にある通りでございます。結局その差引きをいたしました財源不足額が千百九十四億五千二百万円ということになつてつております。前年度、昭和二十七年度におきまして、基準財政需要額が三千九十八億五千百万円、それに対しまして基準財政収入額が千八百八十七億ということになつておりまして、その財源不足額は千三百八十五億という数字が出ておつたのでございます。  ところで昭和二十七年度における平衡交付金総額は千四百五十億円でございましたので、その九二%に当りますところのいわゆる普通交付金総額は、千三百三十四億であつたわけでございます。この千三百三十四億の普通交付金の額に対しまして、算出されましたいわゆる財源不足額が千三百八十五億ということになつておりましたので、即ちこの間に約五十一億ほど基準財政需要額の見方が多かつたと申しますか、財源不足額として算出された額が多かつたわけでございます。従いましてこの点は法律の定めるところに従いまして、いわゆる調整を行なつて、各団体に交付すべき交付金の額が算定されたわけでございます。ところがこれに対しまして本年度、昭和二千八年度におきましては、財源不足額が千百九十四億と出ておりますが、それに対しまして配分すべき普通交付金の額は平衡交付金予算上の総額千三百億円の九十二%、即ち千百九十六億円でございます。即ちその間に約一億五千万円程度の差しかない、極く大体申上げますならば、財源不足額と普通交付金の額がほぼ一致するというような算出の結果を見た次第でございます。  そこで前の委員会におきましていろいろ本年度の算定平衡交付金算定に用いるべき単位費用の問題について御意見があつたのでございますが、その際に私から御説明申上げておりましたように、本年度の交付金の計算をやつてみまして、それによつて算出された財源不足額配分すべき普通交付金の額の間に大差がない、大体とんとんで行けるというようなふうなことであれば、単位費用もほぼ当時御提案申上げておりましたもので以て配分して差支えないのじやないか。若し先の国会におきまして、国会の修正した予算が五十億平衡交付金に追加されました結果、その前に予定いたしておりました単位費用で算定した基準財政需要額の見方が非常に少いということになれば、これは当然単位費用を改正しなければならないが、さようなことであれば大体これで行けるのじやないか、且つ前年度の算出の結果から見ますれば、前年度たまたま五十億程度のずれがございましたので、本年度も或いはこの程度交付金の増額をやつて頂いてその財源不足額と普通交付金の額が大体見合うようなことになるかも知れないということを御説明申上げておつたのでございますが、計算をいたしました結果はたまたまかようなことに相成つたのでございます。そこであの単位費用を用いまして算出しましたところの基準財政需要額の総額は大体予算修正をして頂きました趣旨から行きまして総額を算出するためのものとしては、まあ大体十分であつたのではないかというふうに考えられるわけでございます。  ただ問題は、そうなつた場合に額としては先ずこれで十分であるにしても、果して内容的に当時予算を御修正頂きましたように給与費に相当ウエイトを置く、給与を改善するように交付金配分を行うべきであるというのが予算修正の趣旨でございましたので、その趣旨に、この基準財政需要額の算出がその趣旨に即しておるかどうかという点が問題になろうと思うのでございます。この点につきまして検討いたしてみたのでございますが、その結果によりますと、ここにございまするように二十八年度の基準財政需要額の総額が三千二百五十億ばかりになるのであります。そのうち給与費として算出されておりますもの、即ち三千二百五十億のうちに含まれておる給与費の額は千七百五十六億という数字になつております。この見方は各単位費用ごとにその単位費用の中で給与費がどれだけ見込まれておるかというのと、単位費用算定の基礎となつております各標準団体、標準規模、施設の標準は予算ごとに算出いたしまして、その割合で単位費用のうちに含まれておる給与費その他の経費又投資的経費というものの比率を出しまして、その比率を各行政項目ごとに算出された基準財政需要額にかけて行く、こういうような計算方法をとりまして、結局全体の基準財政需要額のうちに算入されておる給与費の比率というものを出したわけでございますが、それが只今申上げましたような比率になつておりまして、これは率として申上げますと五三・七%ということになるのでございます。又これを全体の基準財政需要額のうち、経費を投資的経費と消費的経費というふうに分けて、その消費的経費のうちで一体給与費がどれだけのウエイトを占めておるかという数字を出してみますと、それが六〇・七%という数字が出るのでございます。一方財政計画の中に然らばどの程度給与が算入されておるかという問題でございますが、これを只今申上げました基準財政需要額のうちの給与費の比率というものと比較いたしますために、全体のつまり修正をされました地方財政計画の全体の規模、即ち八千五百八十億でございますが、その中から国庫支出金、それから地方債並びに雑収入というようないわゆる特定財源に該当いたします部分を差引きまして、税と平衡交付金で賄うべき部分を取出してみますと、それは総額が四千三百四十七億というわけでございまして、そのうちの給与費、財政計画上の給与費は二千百四十五億、即ちその比率は四九・三%でございます。又財政計画の只今申上げました数字の中の消費的経費というものの中で、給与費がどれだけのウエイトを占めておるかという比率を出してみますと、これが五四%ということになつております。即ち先に申上げました数字と対照して申上げますと、基準財政需要額の中で見ておりますところの給与費の比率は全体の規模の中で六〇・七%、それが財政計画の中では五四%、又消費的経費の中で占めておる比率は基準財政需要額におきまして五三・八%、財政計画におきまして四九・三%ということでございますから、御意見のございました通り、この単位費用を用いて算出いたしました基準財政需要額の中で、給与費の比率、ウエイトというものは十分見てあるということが言えるであろうと存ずるのでございます。  これは勿論各行政項目ごとに見ますれば、比率はいろいろに変つて参りますし、殊に結果的に私どもの判定しているところから申しますと、義務教育費の算出におきまして、これも前に御説明申上げておきましたように本年度から半額国庫負担制度が実施されたのに伴いまして、残る半額分を十分に各団体財源を保障して行きたいということで、この義務教育費に関する需要額を相当増して参りましたので、そういう点が相当に影響いたしまして、かように給与費が相当基準財政需要額の中に多く見られているというようなことに相成つていると思うのでございます。勿論これは義務教育費の関係だけではございません。各行政項目ごとに私たちやはり単位費用を策定いたします際に、給与費はその性質上義務費でございますので、できるだけその保障は厚くするという考え方で算定をいたしておりますので、かような結果が出たものというふうに考えておるのでございます。  ただ単位費用の中で一つ問題がございますのは、高等学校費に関する単位費用でございます。これはこの算出された需要額の云々という問題でなくて、先の国会におきましていわゆる給与の三本建に関する法律が制定を見ました。これに伴いまして当然高等学校教員の給与費というものが変つて来るわけでございます。これは財政計画上の平均単価というものも当然上つて来るわけでございます。そこでこれはその性質上単位費用の修正をいたさなければならんわけでございますが、この点につきましては実は今回の計算におきましては、従前のままで計算を一時便宜的に行なつたわけであります。と申しますわけは、この部分に関しまして、高等学校に関する単位費用の改正を行いまして、その部分だけ基準財政需要額が殖えて来るわけで、単位費用の改正を行いますれば、それに伴つて需要額が殖えて参るわけでございますが、その額というものは計算をして見なければわかりませんが、大体一億五、六千万内外というふうに推定せられるのであります。そういたしますと、これは基準財政需要額の全体から見ますと、千分の一乃至せいぜい千分の二以内のものでございますので、算定の全体上に及ぼす影響というものはそれほど大きなものではないということが一つ、それからなおたとえ少額のものにいたしましても、単位費用を変えてその単位費用を用いて各基準財政需要額を各団体ごとに計算をするということになりますと、非常に手間がかかるのでございまして、法律の定めております八月三十一日までに決定をするということがまあ事実上非常にむずかしいという見通しがございましたので、この点は今回一応このままにして計算をいたしまして、次の国会に改めて改正法律案として提出をいたしまして御審議を願つた上決定いたしますれば、それによつて計算をし直すと、こういうことを考えたのでございます。と申しますることは、一つにはかようなことを私ここで申上げるのが適当かどうかわりませんが、只今補正予算の問題等がございまして、或いは平衡交付金等についても次の補正予算で若干額が変るということも予想されないわけでもございませんので、若しさようなことになりますれば、いずれそのときには又全体的に、或いはものによりましては単位費用というものを再検討いたさなければならないものもあるかも知れないわけでございますので、さような機会に併せてこの部分についての改正をやつて頂いたらどうであろうか、さような考え方によりまして、今回は一応前のままの単位費用を用いて計算をいたしまして、その代り各団体のほうにはその旨を特に通達の中に謳いまして、この部分については改正によつてまあ基準財政需要額の千分の一乃至二ぐらいのところで額の修正があるかも知れないということは一応の含みとして各団体のほうには通達をいたした、かような措置をとつた次第でございますので、御了承頂きたいと存じます。  そこで今回算定をいたしました需要額、収入額並びに財源不足額の内容でございますが、これについて若干の御説明を申上げたいと存じます。先ず今回の計算によりまして、交付団体並びに不交付団体状況がどのように変つて参つたかということでございます。これはお手許に資料として「交付、不交付団体数調」というのを出してございますが、大体申上げますと、都道府県におきましては、昭和二十七年度における不交付団体は東京並びに大阪二都府だけであつたわけでございますが、本年度におきましては、そのほか神奈川県、愛知県がいずれも不交付団体ということになりまして、不交付団体の数は四団体ということになつております。これは申上げるまでもなく義務教育費の半額国庫負担制度が実施されましたのと児童福祉費の八割国庫負担制度が併せて本年度から実施になつたということ、又半面基準財政収入額を従来の七〇%から八〇%に引上げた、かような改正によつてこういう結果が出て参つたものと考えられるのであります。それから大都市におきましては、昨年は大阪並びに東京都の区、これが不交付団体で、他は交付団体であつたわけでございますが、本年度におきましては、大阪市だけが不交付団体で、他はいずれも交付団体という数字が出ております。又市について申しますと、政令都市は去年も七つ、今年も七団体、それからその他の市におきましては昨年は五十団体、今年は四十三団体、それから町村におきましては昨年は五百七十三団体本年は四百四十三団体というようにいずれも不交付団体の数が減つてつております。これは総体的に申しまして、まあ何と申しましようか、財源均衡化がやや進んで来ておる、つまり財源偏在が幾らか是正されて参つておるというような見方をしてもよろしいのではないかというふうに考えられる次第でございます。  次に計数の表についてでございますが、先ず都道府県につきましては、昭和二十八年度は基準財政需要額が千六百六億、それに基準財政収入額が九百九十五億でございまして、財源不足額は七百二十九億となつております。これを昨年度に比較いたしましてその比率を見ましたものが一番右の欄でございますが、A━Dの欄、即ち基準財政需要額を二十七年度、八年度都道府県で比べますと、去年の九割一分ということになつております。これは即ち先ほど申上げました義務教育費並びに児童保護費の国庫負担制度が実施されたことに伴いまして、都道府県財政需要額というものが減つて参つたということを示しておるのでございます。それからそれに対しまして、収入額のほうは去年よりも九%四だけ殖えております。財政計画におきましては、二十八年度は二十七年度よりも府県税が若干減つておるわけでございます。基準財政収入額が殖えておりますのが、本年度はいわゆる八〇%方式を採用したということによる結果であります。その結果、財源不足額におきましては昨年の七六%、こういう数字が出て参つておるのであります。同じく都市におきましては、大都市は、比較だけ申上げますと、昨年よりも一六%の財政需要額において一六%の増、収入額は七・八%ふえております。財源不足額においては二五・三%相当に需要額が伸びて参つております。それからその他の都市も合わせまして、都市の計で申しますとこれは需要額が昨年よりも一二%の増、収入額におきましては九・九%の増、財源不足額におきましては二・二%の増、かような数字でございます。それに対しまして町村を見ますと、町村財政需要額は五%の増、又収入額は四・四%、財源不足額におきまして四・九%の増ということでございます。これを見ますと、何か都市に比べて、町村伸び方が非常に少ないような感じを受けるのでございますが、実はこれは昨年度中に市政を施行いたしました町村につきましては、去年の数字は町村に入つておりますが、今年は市の中に入つておる、又市に吸収合併等、されましたものにつきましても同様なことがございますので、まあ市と町村との間に入りくみがございますので、この点を区別しませんと、その対比はできないのであります。さような関係があるということだけ御注意申上げたいと思います。結局市町村の計といたしましては、昨年よりも財政需要額におきまして八・七%の増、収入額は七・七%殖えまして、財源不足額は六・九%増、かような数字が現われておるのでございます。  それからその次の紙は、その次の表でございますが、これは府県分につきまして昭和二十八年度の算出額、それから二十六年度、二十七年度において錯誤のあつた分を修正をいたしました基準財政需要額、又基準財政収入額、その財源不足額というものを、各府県別に示したものでございます。これを二十七年度のものと比較をいたしました表も附加えてございます。その次が五大市の分についての総括表でございまして、基準財政需要額、収入額と、いずれも交付基準額について二十七年度、八年度の比較をしてございます。以下政令都市、その他の都市の計、又は各町村、それから市町村の計というように、それぞれ区分をいたしまして、今回算出をいたしました基準政需要額、基準財政収入額、並びに財源不足額のそれぞれの額を表示いたしまして、資料として御参考までに提出いたした次第でございます。  大体以上の通りでございますので一応御説明を終ります。
  44. 内村清次

    委員長内村清次君) 御質問ございませんか。
  45. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 ちよつとお伺いしますが、義務教育の二分の一国庫負担法の実施に伴つて、それの調整法が、財政的には調整法も潰れたわけなんですが、その結果平衡交付金としては不交付団体になりましたけれども、そういうあの法律が潰れたために、何といいますかな、不当利得という言葉はちよつと適当じやないでしようけれども、こういう団体に対する、まあ余分に行くと申しますか、その一般の財政基準、財政需要上から見てどの程度のものが余計行つているか、そういう数字はあるのでしようか。
  46. 武岡憲一

    説明員(武岡憲一君) お尋ねの数字は今ここに出しておりませんが、この表で申しますと、この道府県分の中でございます。道府県分の中で、いわゆる財源不足額がマイナスになつておる不交付団体でございますね。
  47. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 ええ。
  48. 武岡憲一

    説明員(武岡憲一君) 不交付団体が東京、神奈川、大阪、愛知と、こう四つ出ております。二枚目の表の一番右の欄を御覧頂きますると、財源不足額という欄がございますが、そこに三角が立つておりますのが、いずれも財源が計算上余つておるというのであります。これに関する限りは、これらの各団体に行きますところの義務教育負担分というものは、それだけ余計なものが積重なつて行くということになるのであります。その他の団体におきましても、その団体が受けますところの半額国庫負担負担金の金額と、ここに出ております財源不足額とを比べて、負担金の額のほうが……。只今のはちよつと私の思い違いでございました。お尋ねの趣旨は恐らくこの不交付団体になつておるものに、どれだけ半額負担分が積重なつて行くかというお尋ねであろうと思いますが、それは只今申上げましたその四団体については、そこに挙つておりますだけのものは、もうすでに調整外の季のとして、財源としては余つておる、こういう計算になるのであります。
  49. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 そうしますと、仮に神奈川で言いますと、財源不足額として、これは神奈川の分は約四億七千万というものは余計なんですが、仮にそうすると義務教育の二十億なら二十億……、仮りに半額で二十億行くとすれば、その二十億が更にこれに加わると、こういう計算になるわけでございますか。
  50. 武岡憲一

    説明員(武岡憲一君) まあその負担金だけの計算をいたしますならば、この上に積み重なるわけであります。で前の調整という考え方でございますと、今の神奈川の例であれば、四億七千九百万というものは、この計算上出て来るものでございますから、その団体に十億行くべきものとすると、その団体から十億引いて行く、これを調整方法として考えて行くべきである。ところが調整をいたしませんからこれが余計なものになる、これだけが言えるわけであります。
  51. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 そうすると、財政部長のお話ですと、神奈川の今のあれですが、二分の一の義務教育費が国庫負担として、あの法律で行けばこの四億七千万だけが余分として残る、こういうことですね。だからそれにプラス二分の一が加わるというのじやないですね。
  52. 武岡憲一

    説明員(武岡憲一君) いやそうではありません。
  53. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 わかりました。
  54. 小林武治

    ○小林武治君 今の高橋さんの質問の関係ですが、地方義務教育費の国庫負担調整法律が不成立となつた。従つて今後、今度の補正予算にあの交付の予算が組まれる、こういうふうに思うわけですが、それについて、これはまあいわばあの法律が不成立の結果、変な言葉で言えば不当にそれだけの財源余分に賦与される、こういうことになる。それに関しまして、これらの団体に対する起債等で以てこれを調整するそういう意向があるかどうか、お伺いしたい。
  55. 武岡憲一

    説明員(武岡憲一君) 団体によりましては、今度の義務教育の半額国庫負担法の実施に伴いまして、只今おつしやいますような、いわゆる調整をしたとき、調整を行う場合に比べて、相当余計なと申しますか、余分負担金財源配分されるということはあり得ることだと思います。その場合に起債等で以てこれを調整するかというお尋ねでございますが、この起債の中でも単独事業の起債、又公益事業の起債等につきましては、只今のところ、特にそういつた意味財源調整的な考え方は強くは考えておりません。ただ補助事業に見合いますところの起債につきましては、従来からの財源調整的な配分方法というものを考えて参る。即ち補助事業に伴いまして、その地方負担額というものだけに按分して起債配分するというようなことをいたしませんで、その団体負担額のほかに一般的な財源として標準税収入がどれくらいある、或いは又基準財政需要額の中に算入されておる、いわゆる投資的経費の額がどれくらいあると、こういうような数字を参考にいたしまして、その団体配分すべき起債の額を算出いたしております。そういう意味においては財源調整をいたしておりますので、さような方法を本年度もとるということにいたしますれば、先ほどお尋ねのような団体につきましては若干手加減が加えられると申しますか、実際に配分される額がそうでないときと比べて少くなるということは、これはあり得ると思います。ただ本年度の補助事業分の起債配分はまだ只今のところ検討中でございまして、着手いたしておじません。今そういう方法で以て必ずそれを調整するというようなことはここでは申上げかねますけれども方法としては昨年度の方法と同じような方法をとつております。
  56. 小林武治

    ○小林武治君 これは意見に亙るかも知れませんが、ともかく一応建前としてはこの四十数億に及ぶ余分財源が賦与されると、従つて日本全体の府県の権衡から見れば、これらの府県に対しては或る程度起債の制限を行うことによつて起債の枠を他の府県にこれを分け与えると、こういうふうな方法が然るべきものであると思うのでありまするからして、その向きのことについて是非御研究願いたいと、こういうふうに思います。
  57. 武岡憲一

    説明員(武岡憲一君) 誠に御尤な御意見と存じますので、起債配分に当りましては十分検討して算出いたしたいと思います。
  58. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 私も今小林委員起債の問題に関連してちよつとお伺いしたいのですが、最近の起債には相当公募債というのがあるのですね、ところが公募を弱小町村にもいろいろ分配されるのですが、弱小町村では到底それの起債能力というものが、いわゆる一般公募能力といいますか、そういうものがないのですけれども、それについて何か自治庁のほうで、例えばそういう場合については府県でシンジケートを作つて引受けるようにするとか、或いはそういうものについては簡易保険局とでも話をつけるとか、何かそういう、いわゆる能力のあるものとないものに均等して分けるということは非常にまあ公平なようですけれども、実質的には非常に困るので、そこらについての御配慮をちよつと伺いたいと思います。
  59. 武岡憲一

    説明員(武岡憲一君) 誠に御尤でございます。本年度におきましては、御承知のようにまあ当初から百八十億程度の公募をしなければならんというような計画になつておりまして、実はこの公募債をどうやつて実際に各団体に消化してもらうかということにつきましては、非常に私たちは苦心をいたしているのであります。その各団体に対する配分の問題でございますが、これは私どもも高橋委員のおつしやいますように、各団体の消化能力というものを勿論十分考慮におきまして配分しなければならんという考でやつていることは同様でございます。従いましてできるだけ町村よりは市、市よりは県、それから又同じ県或いは市町村の中でも、人口の割合でございますとか、或いは団体の貯蓄の実績でございますとか、そのほか団体の経済力を推定し得るようないろいろな資料をできるだけ集めまして、その団体の公募債の消化能力というものを推定して、成るべくそれにマツチするような配分をしたいというようなことで、そのような苦心はいたして参つているつもりであります。なお御参考までに申上げますと、五大市並びにその所在の五大府県でございますが、こういうようなところは、何と申しましても相当に消化能力というものは一般に比べて大きいというようなことで、こういうところに大体今後におきましても、一般起債市場において、公募債の募集をすることが可能であり、昨年度におきまして、又本年度も引続いて、相当に起債募集をいたしているのであります。大体月額にいたしまして五億乃至六億、六億というのは非常に困難でございますが、五億程度のものは月々の起債市場における募集が可能である、その他につきましては今日の段階では大体は各団体のいわゆる縁故募集、地元の銀行或いは農協その他の金融機関との話合いで借入をしているというのが状況であります。公募債の消化につきましては、甚だ私どもといたしましても、今後いろいろ研究して参りたいと存じておりますが、その配分につきましては只今の高橋委員のおつしやいますような御趣旨を十分体して配分して参りたい、かように考えております。
  60. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 私は政務次官にちよつと起債の認可金の問題ですね。どうも最近大蔵省との間に非常にトラブルがある。どうも例えば我々のところへ町村長が来ましても、自治庁のほうではこういつたような額だ、ところが大蔵省へ行けば、大体我々の申請した額程度のものは認めてくれる、或いはそれじや足りないのじやないかというようなことを言われるが、一体どうして自治庁はそれを制限しているのか。或いはもろ我々も大体総額はわかつておりますから、これは大体全額無理だと、こう言うけれども、一体大蔵省に聞くと、そのくらいのことは十分やれることになつているのだというふうな工合で、どうも起債の許可金といいますか、或いは認可金というものが、二途に出ているために、非常に地方民としては迷つているのですね。まあ先般それに伴う法案等も出ているのですが、何かもう少し事務的に大蔵省と話合つて、同じ政府なんですから、一般民間から見ればやはり政府なんだから、そこに政府の一体性が現れるような話合いとでも申しますか、或いは事務上の食い違いのないような、或いは総額なら総額或いは財政需要なら財政需要というものは大蔵省がみる、併しこの分については自治庁に一切お任せする、こういつたような話合いができないものかどうか、どうも我々両方が、細目に亙つてどつちが自治庁か、どつちが大蔵省かわからんようなことで、徒らに民間が混乱の中に行つて、どうも自然景気のいいほうにあれするというようなことでは甚だ困るのじやないかと思うのですが、その辺の一体話合いなんかについて、自治庁の政務次官からいろいろ経過をお聞きしたいと想います。
  61. 青木正

    説明員(青木正君) 高橋さんの御指摘のように、誠にどうもこの問題については頭を悩まし、又公共団体に御迷惑をかけまして、申訳ないと思つております。御承知のようないきさつで、この前国会で衆議院の地方行政委員会に、例の自治法の二百五十条の改正関係の法案が出まして、一方大蔵委員会では資金運用のあの法案が出まして、いずれも継続審査という形で、衆議院の委員会に残つておるのであります。私どもの考えといたしましては、その当時大蔵委員会方々ともいろいろ懇談いたしたのでありますが、現在の制度そのものが間違つておる、かような意味ではないのじやないか。結局御指摘のごとく、運用の面が悪いからこういう結果を来す、そこで運用の改善についてできるだけの、まあ両者話合つて、何とかうまく行くようにすべきではないかというような御意向が大多数でありましたので、そこで事務当局両者で先ずいろいろと意見調整をやつたのであります。併しその結果が必ずしも役所同士というか、衆議院の委員会側のほうとして満足する結果に行きませんので、そこでこれはまあ政治的にももう少し考慮する必要があるだろうということで、愛知政務次官と私と又懇談しようというので、愛知さんとも両三回この問題を中心としてお話合いをいたしたのであります。それで話合いの筋としては、現在の制度そのものというのでなしに、実際運用がうまく行くようにすればいい、そこでお説のごとく一定の額で線を引きましてそれ以下のものは自由にする、又何と申しますか、費目によりまして大体の見当をきめる、そうした方向で話合いをするということで愛知さんともいろいろ相談いたしたのでありますが、相談いたしておりましたが、そのうちに国会も終りまして、更に衆議院のほうで今日も実は大蔵委員会をやつておりますが、この問題を取上げていろいろ御協議なすつておる。その御協議なすつておる前に大蔵委員会側の意向も十分尊重して、それによつてきめることがいいのじやないか。而も現実の問題といたしましては、例の単独事業関係のほうは七月の初め頃から大蔵省と折衝中でありまして、すでにもう大部分は終了いたし、極くまだ僅か残つておる程度であります。そこでそのほうはもうすでに大体済みましたので、大蔵委員会の推移、或いは又地方行政委員会のほうの推移等も睨み合せて、そうしてできるだけ早い機会に御指摘のような考え方に立つて調整いたしたい、こういうことで目下まだその話合いの途中にあるわけであります。一方御承知のごとく地方制度調査会におきましても、起債の問題について一つの線が出ております。ああした線もやはり十分考慮に入れて各方面と睨み合せてきめる必要があるのじやないか、かように考えておるわけであります。御指摘のような線に沿つてできるだけ早く調整を図りたい、かように存ずるわけであります。
  62. 小林武治

    ○小林武治君 もう一つ伺つておきたいのですが、この今の平衡交付金算定の基準財政収入の計算につきまして、過年度の滞納の整理というものは何にも計算に入つておらんかどうか。
  63. 武岡憲一

    説明員(武岡憲一君) 基準財政収入の算定におきましては、特に過年度分滞納になつております分を、この収入額の中に算定するという方法は只今とつておりません。これはもつぱら現年度の徴収見込額というものをもとにいたしまして計算いたしております。
  64. 小林武治

    ○小林武治君 これはまあ財政部の関係というか、税務部の関係でありますが、どこの府県でも今一割或いは二割の滞納がある。従つてこれの現年度における収入というものは相当の金額に上る、こういうふうに思うのでございますが、これはもう全然計算してしまつたから現年度においては何にもしない、こういうふうな考え方であるかどうか。
  65. 武岡憲一

    説明員(武岡憲一君) 交付金算定におきましては基準財政収入が、法律に定めておるところに従いまして、その年度に各税目別に一体どの程度その団体では収入し得るかというのを基準税率によつてそれぞれ算定して行くわけでございます。勿論おつしやいますように、この交付金算定で、その団体に仮にまあ十億なら十億の税収があるべきだという計算が出ましても、その団体が現実に十億この年度に収入するか、或いはその年度におきましても、すぐに前年度からの繰越等がございましようから、現実にはその年度に十一億或いは十二億の収入があるかもわからない、或いは又団体によりましては、この見込みの数字だけの収入を上げ得ないで、九億程度の収入しかなくて、あとは翌年度に繰越すということも団体によつてはあろうと思います。併しながら平衡交付金算定におきましては、さような点は一々これを取上げて算定する建前になつておりませんから、一応その年に取れるものだということで計算をいたしております。各団体財政実態から見ますれば御指摘のような問題が残るわけでございますが、これは平衡交付金算定とはおのずから別の問題じやないかというふうに一応考えておる次第であります。
  66. 小林武治

    ○小林武治君 そうすると地方財政の問題としましては、滞納の整理が十分できるかできないかということは財政上非常に大きな影響がある。従つてその府県において財源がうんと出るか出ないか、これらのこともやがてはその財政全体として起債その他にも影響して来ると思うのでありますが、これらの点につきましては財政部当局は相当に注意をされておるか。又或いは新聞によりますれば滞納額を人の知らん間に打切つてしまう、こういうのがやはり相当あります。これらも勝手にやつて、当然取れるものを或る年度において滞納をみんな打切つてしまう。要するに不納のまま放置する、こういうふうな処置もとつておるところがあるのでありますが、これらにつきましては自治庁の財政部としてはただこれを傍観する、こういう態度をとられるのかどうか伺いたい。
  67. 武岡憲一

    説明員(武岡憲一君) 只今おつしやいましたような事情が各団体によりましては存在することもよく承知いたしております。団体の中で毎年、まあその赤字が出たというようなことでいろいろ問題になつておるわけでございますが、その赤字を出しました原因の一つには、或いは団体によつては税の取り方が非常に杜撰と申しまするか、ルーズである、努力が足りないというようなこともあろうかと存ずるのであります。そういう点につきまして自治庁として財政、徴税上それをどういうふうな処置をするかという問題でございますが、平衡交付金配分につきましては、これはおのずから法律にきまつておりますので、この範囲で以て適当にこれを斟酌するというわけには参らんと思うのです。ただ特別交付金配分におきましてはこれも御承知のようにいろいろ総理府令を持ちまして特別交付金算定の基礎となります歳出額なり或いは歳入額なりの計算をいたしますが、その場合になお全体として特に考慮する事項というようなことの中に、若し団体が著しく税の徴収を怠つておるというようなものがございますれば、これは調整する幅があるわけでございます。実際に適用した例は余りないと思いますが、建前といたしましてはさような方法は残されておるわけであります。又この団体財政が果して運営が適切であるかどうかというようなことにつきまして、私どもも絶えず団体の実情につきましては注意をいたしておるのでございまして、そのために自治庁として団体財政実態調査等も行いまして、その結果どうも税の徴収の努力が足らんというようなものにつきましては、自治庁長官の名によりまして勧告或いは助言をする、こういうような措置は講じて参つております。
  68. 小林武治

    ○小林武治君 これも多少意見に亙りますが、滞納整理等が適正に行われておるかどうかということは従来特別の平衡交付金算定等についてはこれを斟酌したことはないと言われるのでありますが、これらも私は或る程度斟酌される必要がありやせんかと思うのでありまして、今後の問題として一つ是非御研究願いたいと思います。
  69. 内村清次

    委員長内村清次君) それからこの二十八年度の平衡交付金配分に対して、この水害県の市町村、それからまあ府県、これに対しての交付金の点は何か加味してありますか、どうですか。
  70. 武岡憲一

    説明員(武岡憲一君) 今回決定いたしました普通交付金配分に関しましては只今委員長のおつしやいましたような災害関係による特殊事情というものは別段考慮をいたしておりません。災害を受けました各団体につきましては、先にこれもその都度報告を申上げてあるのでございますが、普通交付金の概算交付を数次に亙つて行なつてつておりますが、その場合に災害府県等に対しては多少増額をして概算交付をする、こういう措置はとつてつておるのであります。今回この法律の規定に従いまして決定いたしました結果によりまして各団体に交付されるべき交付金の額が確定したわけでございますが、この額の中から従来概算交付したものを差引いて今後渡して行くということになるわけでございます。その限りにおきましては交付金の額で以て各団体のその災害等による特殊な財政需要を加減する、調整するということは行われておりませんが、これらにつきましては特別交付金配分におきまして考慮をしたい、かように考えておる次第でございます。
  71. 内村清次

    委員長内村清次君) 特別交付金の額というようなものは、これは残り僅かですね。そうすると、それだけでは追つ付かないというような点も出て来はしませんかな。勿論これは特別の立法がなされておりますから、この面でも相当なるお考えがあるだろうと思いますけれども、その財源関係が一体どういうふうになつておるか。どういうふうな自治庁としては今の予算措置をやつておられるか。そういう点一つ明確に一つ一つ御説明を頂きたい。
  72. 武岡憲一

    説明員(武岡憲一君) 本年度の予算によりますと、特別交付金の額は百四億ということになるわけであります。その百四億の範囲内で以て特別交付金配分をいたします際に、今度の本年度の災害によりまして財源が特に必要になつたというような団体において十分な財源の手当ができるかどうかという問題につきましては、これは私どもといたしましても甚だ不十分であろうと存じておるのであります。これは前の国会におきましてもいろいろ御指摘のあつた点でございまして、政府におきましても、その点の措置として、特別な交付金、この交付金制度について何か特別な措置を考えるか、或いは又別途に財政補給金というような方法を考えるか等、いろいろ案はあつたわけでございますが、先の国会におきましては、この点につきましては特例法を御制定頂きましたので、大体本年度の災害によりますところのさような特別な財政需要又財源の減少等に対する措置は、この特例法の運用によりまして大体調整できるのではないかというふうに考えておるわけであります。特別交付金自体の中におきまして、どの程度考慮されるかという問題につきましては、特別交付金配分をいたします際に、更に又すでに制定されておりますところの特例法の運営とも睨み合せまして研究をいたしたいと考えております。私どもといたしましても、ただこの法律にきまつております特別交付金の範囲内だけで以て、御指摘のような災害府県に対する財源措置が十分に行われるとは考えておらないのでございます。
  73. 内村清次

    委員長内村清次君) ただ塚田長官が被害地に今回視察にも行つて、そうして現地での発言あたりを見ますと、特別立法の中及び又その現行法の中においても最大限の手当を出そうというようなまあ力強い発言がなされて、これは罹災者一般は非常に期待しておるわけです。そうしますと、只今の御説明の中で、今度特別交付金のこの額も大体見えすいた金額ですね。それで総体的に特別立法で適用するところの額というものは大体幾らぐらいになるか。これは大体百二十九億かなんか特別委員会でも資料が出ておるようですが、そういうような財政措置というものが、現在の段階におきまして大蔵省との折衝に、相当この県を優先的に認めるというような交渉過程がなされておるかどうか、こういう点はどうですか。
  74. 青木正

    説明員(青木正君) お話の点は、この前の国会中にも私どもも御趣旨のような御質問がありましたときに御答弁申上げておつたのでありますが、私どもの考えておりましたいわゆる補給金式な考え方、これと同じような立法が国会を通過いたしましたので、あれに基きまして災害に基く財政上の不足額を補わなければならん、かような考えに立つてどももできるだけのことをすべきである、かように思つておるわけであります。ところでその予算折衝の問題になるのでありますが、九州災害につきましても、財政需要額のほうは或る程度つかめたのでありますが、収入のほうの欠陥の面が、県はわかりますが、町村でどの程度の歳入欠陥を来すのか、これはなかなかつかめなくて実は困つてつたのであります。その後和歌山も発生し、京都にも起るというようなことで、まだ実は数字的にもはつきりしない面もありますし、まだ全般的の予算折衝の段階にも参つておりませんので、現在のところどれくらいを自治庁として要求するか、そこまで行つていないわけであります。併し、お尋ねのような線に沿つてあの立法の趣旨によつて自治庁としても措置したい、かように考えております。
  75. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 今の災害に関連してですが、災害による被害者の税の減免について当然団体減収を来すわけですが、その減収の分は平衡交付金の基準財政収入の面に現われて来ますか。
  76. 武岡憲一

    説明員(武岡憲一君) 災害を受けました団体におきましては、御指摘のように、税の減免を行つてもおりますし、又条例改正等によつて減免を行いますので、事実上収入の増収が困難だというような団体があるわけでございます。そういう事情による税源減収の問題でございますが、これは普通交付金算定上は別段斟酌をいたさないのであります。これまではさような点につきましては、特別交付金算定の際に、その災害によつて団体にどの程度の税の減収があつたかということを見込みまして、これを特別交付金算定の基礎に用いたわけであります。本年度におきましては、先ほどお話の出ました特別立法によりまして、さような分についても本年度に限つて起債ができる。そういうような制度に相成つておりますので、本年度は、その御指摘のような分は特例によつて措置されるのではないかと思います。従来の例を申しますならば、従来は、これを特別交付金の中で措置をいたしておるのであります。
  77. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 特別立法の分は限定されておりますから、特別立法の適用のない範囲のものは一般の例で扱うわけですね。
  78. 武岡憲一

    説明員(武岡憲一君) 勿論特別立法の適用のございませんものについては、この特別交付金の運用によつて措置をしたいというように考えます。
  79. 内村清次

    委員長内村清次君) ほかにございませんか。
  80. 秋山長造

    ○秋山長造君 ちよつとお尋ねしたいのですが、基準財政収入額を算出なさる場合に、先だつての国会で改正になりました地方税法の改正によりまして、国鉄、専売公社、電々公社、ああいう従来非課税であつたものが固定資産税がかかることになりましたが、あれによる収入をどの程度に見積つておるか。
  81. 武岡憲一

    説明員(武岡憲一君) 先の国会において御修正になりました御指摘のその点につきまして、この計算の中には考慮されておりません。算定の時期の関係等がございまして、まだ確認ができませんので、この計算上は把握することができなかつたわけであります。
  82. 秋山長造

    ○秋山長造君 そういたしますと、あれによる新規税収というものが相当大きな額になつた場合には、数字はおのずから動いて来ると思うのですが……。
  83. 武岡憲一

    説明員(武岡憲一君) 御指摘のような問題はあると思います。それから又その点を除きましても、その他の例えば事業税なり、或いは遊興飲食税、入場税等につきまして算定をいたします時期を基準といたしまして見込み額を立てておるわけでございますので、これもまあ状況によりますれば、只今考えておりますものと、どうせこれは見込みでございますので、年度末になつて実際に収入されるものとの間の開きというものも或いは出て来る可能性はあるわけであります。ただ平衡交付金法律の規定によりまして四月一日現在を基にして八月三十一日までにきめるということになつておりますので、さような点を年度末までの実際の実績というものをそのままこの計算の中に反映するということが事実上できませんので、さような点は一応この算定からは度外視いたしておるのであります。ただ従来の例を申上げますと、昨年あたりも実は補正予算で以て交付金予算修正がございまして、予算改正になりまして、そのために十二月頃になつていわゆる本決定を要したというような状況でございます。それを去年は九月頃にいわゆる一応仮決定をいたしまして、その後予算の修正に伴つて十二月から一月にかけて本決定をやつたので、その場合にやはり税の見込み等で動きましたものは、それぞれ修正をいたしております。本年若し又さようなことがございますれば、御指摘の点につきましても是正をする機会があろうかと思いますが、一応交付金といたしましては、今回これが今の現状をもとにいたしました確定の金額でございますので、これは実はそのままということになろうと思います。ただ将来、将来と申しますか、年度末頃になりましてこの税の見込み等に非常に大きな狂いを生じて来たというような特別な事情がございました場合には、事情によりましては特別交付金で以て多少の是正をするという途は残されておるわけでございます。
  84. 秋山長造

    ○秋山長造君 そういたしますと、先ほどの固定資産税の問題に限らず、先達つての国会で修正された点は一切この基礎に入つていないのですか。いろんな点が修正されたわけなんですが……。
  85. 武岡憲一

    説明員(武岡憲一君) 交付金算定の基礎として用いておりますその収入額は政府提案をいたしました修正案ですね、それを元にして計算をいたしておるのであります。その後国会で御修正になりました分につきましては、只今のところこの計算の中には、先ほど申しましたような事情で把握ができませんので、計算からは洩れておるわけでございます。
  86. 内村清次

    委員長内村清次君) ほかにございませんか。……それでは今日はこれにて閉会いたします。    午後三時三十四分散会