○
平林太一君 本
法律案に対しましてはすでに
所得税法改正法律案において
反対の意思を表明いたしておることによ
つて尽きておりますことでありまして、現下の
我が国の国情からいたしてこの
法人税に対する
措置は甚だ当を得ざるものとして
反対を表明いたします。
簡単に理由を申上げますれば、個人の
所得の場合、殊に
少額所得者の
所得というものは勤労であり労働であり、いわゆる膏血の結晶である。以てその結晶の中から
国家に税を
負担させておるものである。
法人税の場合はこれとその趣きを異にいたしまして、おおむね非勤労であり非労働である、更に非膏血である。或る場合においてはこれがいわゆる
国家資金を背景としてその
所得を受けておる。法人としての組織において、又現に顕著なる事実は、今日の金融
資本によ
つて運営せられておる
ところの銀行より生ずる
法人税のごときものであります。その
税率は一般いわゆる
法人税としての適用の
範囲しかこれに及ぼしておりません。然るに今日の金融
資本が
所得する利潤というものは、表に現われたる数字に相匹敵いたしまして、潜在する
ところの
所得というものが或いは何倍或いは十数倍に達しておるということを見逃し得ないのであります。今日の金融
資本は、合法的にこの高額
所得を
税法より如何に免れんかというがために、みずからその銀行内部にその主管の係或いは非形式的に課を置いて……と申して
差支ないくらいに常にこれをいたしておるという実情でありまして、一面においては銀行が法人としてのいわゆる
所得を挙げておりますその経営の実態というものの本来は、いわゆる信用を受けて信用を与える、その間にあ
つて利潤を得るということが銀行、金融
資本の企業としての形態であるのであります。それでありますが、今日の
我が国の金融
資本の経営というものは、信用を受けるに当
つては殆んどこの無にひとしい
ところの、無にひとしいと思われる殆んど無利息同様なる
最低利率を以てこれを預かる。そうしてこれに信用を与える場合にはこの
方向をとらない。正規のいわゆるベースというものを一応の形式として、或いは現実にこの直面する銀行
資本の複雑なる実態の中にあ
つて、そうしてこの不当なる利得を別個にこれが
所得し、利得しておるという今日の実情であります。而もこれが
我が国のいわゆる全
産業の、又全勤労、労働によ
つて集め得られた
最後の場所であるいわゆる銀行
資本が、厖大なこの
資本力というもので、銀行
資本によるその力というものによ
つて挙げておる
ところの利益というものは、これは実に数字上私は現わしがたい厖大なものに達しておると
承知して
差支えないのであります。にもかかわりませずこれに対しては何らの処置も
政府はとらない。単なる
法人税として一定普辺の税を課しておる。こういう
事態が更に本
法律案においては
改正をされておりません。
又いわゆるこの
国家資本による、
財政投融資による資金というものは、今日日本輸出入銀行或いは日本開発銀行等を通じ、各般の方面におけるこの
財政投資によ
つて、その必然的な結果として生ずる法人のいわゆる受入れ機関というものは多数に達しておるのであります。併しこれらの法人の経営、その法人の実態というものは、その正体、その実態は、いわゆる自己
資本の、自己会社の、又自己事業の営利を対象としておる企業であるということは動かすべからざる事実であります。企業でありまするが故に利潤を優先することは当然であります。而もその利潤を優先しておるということが、
国家財政の投融資としての裏付けによ
つて、労せずして今日厖大なる利潤を得ておる。これに対して何らの
税制の上にこれに対する
負担をかけていないがごときことは、孜々営々として……、これらの
国家の施設、
国家のそれぞれ間接の予算によ
つて、直接の予算によ
つて企業をいたしておる
ところのそれぞれの
産業、いわゆる間接の
ところから生ずる利潤というものに対して全くこの公平を欠いた、不平等なる処置である。以て
我が国のこの
法人税に対する
措置というものが依然として
階級的な、差別的な封建専制的な傾向を、性格を色濃く現わしておるという事実を見逃すことができないのであります。この事実を
承知したならば、如何に
法人税というがごときものに対しまして、その内容に対して百尺竿頭一歩を進めて、いわゆる利潤を上げておるものに対しましては、いやしくもこれが一銀行、一金融
資本家の、民間の経営によ
つてその利得が上げられるがごときことは一刀両断の下にそれを解決し、
国家の力によ
つてか
ようなことはなし与えることはならない。にもかかわらずこれを
承知しながら今日はこれを放置しておるという
ような実態、そうしてこれに対する
法人税としての処置を豪も
考えていないということは、私は現在の
自由党内閣がこの
法人税に対して極めて劣悪なる
態度を、この
法人税の今回の
改正案の中に露呈をいたしておるという事実を見逃すことができ得ないのであります。速かに、これは今申上げました私の概観、大要でありますが、これを良心的に取入れるならば、この
法人税は、勿論法人の
所得利潤の中には今日の
税制の
法人税を以て妥当とするものもある。併しそれは極めて全体の中から僅少である。不妥当とする、いわゆる不当なる利潤を得ておるものに対してこれを見て見ぬ振りをしておる。そうしてこれに税をかけていない。以てそれが逆に
大衆の課税にそれをかけておるという実態が、この
法人税の中にも色濃く現われておるという事実を私は
指摘するものであります。
以上の理由によりまして、
政府は速かに明年度においてはこの問題に対して根本的な改革をするにあらざれば、この
税制の上から
我が国は求めなくてもいい
国家の内部に一大破綻を生ずる第一歩を築く。いわゆる
大衆によ
つて止むを得ず発生せざるを得ないという
ような、曾
つての何がしの某帝が、汝ら
生活をすることができなければ草を食えと言
つた、それに対して忽然として
大衆が憤激して一大革命を起したと同様なる、間接的にはこの
税制の上に不満が爆発いたしまして、
我が国家が如何にこの一部の人々によ
つて、下を甘く見るという
ような
態度が、一時はそれが続いても、やがてそれがひた隠しに隠し得ない結果に陥
つて、
国家に不測の災禍を起さなければならないという
ような
事態を起すということを、私は今日あえて予想し、予言してはばからざるものであります。
今日のこの
法人税に対する
政府の
態度は、こういうものに対しまして極めて隠蔽し、ひた隠しにしておるという事実を私は深く
指摘いたしまして、本案に
反対するものであります。同時に
政府の重大なる猛省を求めんがために、更にその
反対の
程度を色濃くいたして本案に
反対の意を表明するものであります。