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政府委員(平田敬一郎君) 或いは税制
課長の御説明と重複するかも知れませんが、私要点を少し申上げまして、更に直税部長も丁度来ておりますので、細目につきましては補足して申上げたいと思います。
企業組合は御
承知の
通り、届出主義にな
つておりまして、
一定の条件を備えて届出すれば企業組合はできる、実はこういう法律にな
つておる。従いまして、本当の企業を合同的に経営しまして、企業組合の本旨に従
つたような経営をや
つている組合と、それから単に何と申しますか、名目だけ企業組合という名を借りまして、実際は僅かの会費を払い、或いはときどき相互の連絡をやるというぐらいの
程度で、異体を調べて見ますと、殆んど各自がや
つておるのと実質変
つてないというのと両方ございます。勿論その中には
程度の差がたくさんあるわけでございますが、併し極端に申しますと、両方がございまして、これを課税上どういうふうに扱うかと聞しますと、実になかなかむずかしい。現在におきましても、本当に企業組合としての実を備えていないというものにつきましてはよく調べまして、実は法人として認めないで個人として課税をする、今の
所得税法でも今度新らしく明瞭にする意味で規定を設けましたが、
所得税は実質に
従つて課税する、これは大原則だと実は
考えておりまして、そこからいたしましても当然のことだと
考えているのでございます。その極端な
ような場合におきまして、なかなかこの問題が簡単に行かない。その
一つの例は、これはもう訴訟事件にまでな
つておりますので、名前もはつきり申上げていいと思いますが、九州を中心にします共栄企業組合というのが実はあるのでございます。これはちよつと概況を申上げますと、今年の五月三十一日現在の調査でございますが、
一つの共栄企業組合の下に三千二人という組合員が実は企業組合を結成しておる。場所から行きましても、税務署の数で行きますと、全国に五十三に跨
つておる。中心は福岡と熊本ですが、福岡が十八税務署に跨
つておる、熊本が二十二税務署に跨
つておる、広島が七税務署、それから去年あたり東京に飛火しまして、東京の六税務署に跨りまして組合がありまして、全体の組合員は三千二人、実はこういう状況でございます。それで業種もあらゆる業種を実は含んでおる。これがやはり向うとしては届出主義ですから、向うの組合法ではちやんとやはり企業組合だ、こういうわけでございます。ところが実体を調べると、如何にもどうもそれを企業組合として課税するのはおかしい、すぐ隣の業者からそんなことがありましたら文句が出るとい
つたような形にしかな
つてない、取引なんかにつきましても、結果的にやや或る
程度の報告はいたしておりまするが、どつちかと申しますと、会費を払
つて企業組合とい
つたようなものを結成して事業をとにかくや
つて行くという
ような形、こういう問題につきまして、而もこの組合というものは甚だ率直に申上げて恐縮でございますけれども、一部の有力な方面から実は指導を受けてあらゆる法律上の闘争手段を講じております。調査に行きましても調査に応じない、査察官を差向けなければ調査ができない、こうい
つたようなものも中には相当あ
つたわけでございます。併しこれはそのまま放擲いたしますることは、個人の
所得税の課税におきまして由々しいことでありまして、ほかの納税者が聞かない、そういうことにも
なりますので、昨年の秋から実は本格的の調査に着手いたしました。九州を中心にしまして実はその調査をいたしたわけでございます。その結果といたしまして現在わか
つておりまするところは、指導いたしました幹部の者については、脱税犯として刑事事件としての手続を目下進めつつあるわけでございます。他の多くの人につきましては、如何にもどうもおかしいじやないかというので話しまして、すでに組合から或る
程度脱退しまして、普通の
所得税を納めている人もございます。併し一方組合側では組合の所得を個人の所得として課税したことについて、民事訴訟として先ほど税制
課長が申しました
ようないろいろな手段を講じておる有様で、現在の法規では何しろ立証問題に関連してはつきりした規定がないので、なかなかその調査を徹底してやらなければいかん。そのために税務署及び局並びに本庁の
所得税課、査察課等の相当たくさんおる人間をこの目的のために一時使用いたしまして、調査に従事して頂く
ような次第でございますが、いろいろ調べて見てはつきり問題に
なりましたのは、課税の上におきましては立証問題にな
つて来る。これはちよつと常識の上から
考えましても、はつきり法律問題に
なりますると、なかなかそう簡単に行かない、問題がよりますます複雑に
なり且つ困難を加える。これは
一つの例でございますが、その他類似の例が若干勿論ほかにもございます。この共栄企業組合以外のそういう組合に対しましても、逐次非常に忙しい中から手を廻しまして調査いたしまして、適正な結果を生む
ように今努力いたしておりますが、非常に生やさしいことでもないのでございまして、こういう場合におきましては、私どもとしましては、やはり税法は税法でももう少しそういう場合におきまして、合理的且つ迅速に処理する
ような方法
なり、法文のできるだけのことをいたしまして、そういう場合に対しまして、適正な課税ができる
ようにいたしたいと、それが今回の提案いたしました趣旨であります。ただそう
なりますと、健全な普通の組合が潰れちやうじやないか、こういう心配が実は大分出ておりまして、その点衆議院でも大分問題に
なりましたが、その点に関しましては、実は私はこういうふうに
考えるのでございます。企業組合が本当に企業組合法の根本精神に従いまして、それが集りまして、協同組合というもので事業を一緒にや
つておる。そのこと自体は中小企業としましては、非常にいい
一つの途なんでございます。それを課税の上で妨害するのは、これは全然よくないことだと
考えております。従いまして、企業組合が本来の企業組合法の精神に即しまして、実質的に企業組合としての実体を備えておる、それをこういう法律ができたから適当にやれというのは、これは誠にいけない、そういうふうにする
考えは全然ございません。むしろそういうものに対しましては、仮にその結果が税が軽く
なりましても、ただそれだけの理由で否認するということはやるべきではないと
考えております。それは丁度個人企業が会社経営にちやんと
なつた場合において、仮にやり方によ
つて軽くなるという場合があ
つても、会社自体を否認するのはどうであろうかという
ようのと同じ問題でございまして、そういう場合にこの規定をやたらに使う、こういう趣旨のものではないということを
一つ申上げておきます。
それからもう
一つは、ただこの実際の認定の場合に非常に
程度の差がありまして、むずかしいケースがあるわけであります。こういう場合におきまして、やはり税務署の調査の担当官だけで判断さしてきめますと、これはやはりいろいろ問題がございますので、この規定を適用しまして個人として課税するという場合におきましては、必ず国税局に上申させまして、国税局の判断で最終的にきめる。この二つのことをよく言いますれば、決してこの規定を設けましたから行過ぎたとい
つたようなことでなくて、合理的な解決が求められはしないか、まあこの
ように
考えておる次第でございまして、その他いろいろ今申上げました
ようなケース、類似のケースが若干ございますが、昨年以来問題にいたしまして、私ども非常に困難を感じましたのは、先ほど申上げましたケースでございます。
なお、このケースにつきましては、実は法務省あたりともたびたび会合いたしまして、対策を
考えざるを得なか
つたのでございます。いろんなむずかしい問題も入
つておりまして、その中の
一つの問題を法文の改訂によ
つて解決する、勿論この法文ができましたから簡単に解決ができるというものではないと思
つております。これはやはり相当私どもは慎重な調査をし、且つこれに対しまして対策よろしきを得なくちやならんと思
つておりますが、やはりこういう規定がないと、円滑に、迅速に仕事が進めにくいということを痛切に感じておりますので、是非とも
一つこの立法に御賛成願いたいと私は
考えております。なお必要でございますれば、その他の例をお尋ねによりまして、国税局のほうから御説明をいたしたいと思います。