○前田久吉君 繊維
局長に申上げておきたいのですが、新聞は日一日と発達をしまして、新聞紙の消費は殖えて来ていることは常識でもおわかりにな
つていることでしよう。
日本の国家が発展すると共に新聞紙の発達部数が増大して行かないと、
日本の文化は発展しないのであります。この意味から
一つ需給
関係の
計画についても御考慮の中に入れてもらいたいのであります。
それから表をみると、十二月末の
生産量は九千数百万トンということにな
つており、設備能力は九千五百万トンとありますが、実際は月産
生産量は八十三万四千ポンドという数字が今日では見込まれておる。我々はこの表を以て見まして、大体そうみております。これに対しまする消費量は八千二百九十万ポンド、であるから差引き千八百十四万ポンドの余裕ということになります。即ちこの数字は
輸入量の一週間分消費量相当の千七百万トンと
余り大差がない。
輸入ができぬと十二月に入
つて一週間分しかストックがないということになり、冬場に入
つて参りますと
電力が涸渇して参りまして、いつも困ることは周知の事実でありまするし、殊に全国新聞用紙の大部分が依存しております苫は北海道にあり、津軽海峡が毎年吹雪で輸送困難となり、始終入手は遅れ勝ちにな
つて来るということも我々は
考えておかなければならんのであります。然るに一週間ぐらいの手持ちでこの冬を越すということは、非常に新聞界としては重大な問題であります。今年末の
自給度は先ずそういう状態であるということをよくお
考えを願いたい。
私は時間の節約上、
委員長から僅かしか時間を頂いておりませんので、次はこの
程度の
輸入によ
つて、果して
国内メーカー工場に打撃を与えるかどうかという点で当局の意向をお伺いしたいと思うのであります。戦前から一体新聞はどうな
つておるかというと、
昭和十九年と十一年の物価比較をすると、総合物価は三百四十倍とな
つております。ところが新聞の巻取紙は四〇五・四倍、新聞の販売
価格は、
昭和十三年が一円二十銭でありますが、
昭和十一年には一円であります。現在は二百八十円の
価格ですから二百八十倍ということになる。こういうように新聞巻取紙の値上りと、新聞販売
価格の値上りとは大きな懸隔があるのであります。我々新聞業界では
日本の経済安定と文化保持の使命のも一とに非常な困難と闘
つて僅かに二百八十倍の値上げ
程度で我慢しておるという情勢でありますが、内情は非常に苦しいということは御理解願いたいのであります。方製紙会社の情勢はどうな
つておるか。新聞紙製作工場、ボール工場の大きいところは北海道の苫であります。御存じのごとく終戦前、終戦直後の統制のそのままにずつと引続いて参りまして、当時より幾分か生産が増加いたしまして、それに対する割当の増加は多少ありましたが、現在に至
つても新聞紙の需要はまだ十分に満しておりません。
従つて丸網式の仙花のようなものが市場に幅を利かしているのでありますが、本当の新聞紙というものは以前の割当そのままが続いておる。
幾ら金を出しても
購入できない。こういう情勢であるということは通産当局はすでによく御存じのはずだと思うのであります。ところが今日の製紙会社は相当高率の配当をし、会社は無償株を出したり、従業員は厚生施設を加算すると月収三万円以上のベースであり、賞与にいたしましても一年十万円
程度の賞与が支給されておる。新聞社側では
日本の経済
復興という大きな問題に自制いたしまして、物価を成るべく上げないようにと努力しておる現状で、例えば海外に派遣しておる相当な古参記者ですら今日紙会社の材木運びの社員が得ている給料ベースすら取
つておらないのです。新聞社の全従業員もよく
日本の現在を
承知して、我慢しているというのが現状であります。今度の
輸入されまする紙で関税の撤廃若しくは五%の定率引下げを今度提案しておるのでありますが、それについて、昨日関税部長は紙が下
つたという、昨年と比べて下
つたというお話でありますが、昨
年度は十一月に新聞は初めて戦前に復帰いたしまして、朝夕刊十二ペース、非常に遅れましたが、やつと新聞らしい新聞が整
つて国民大衆に出すことができたような次第で、昨年も非常に変動がありましたが、今年は一月からずつと見てみまして、一頃苫その他旧王子系以外は、旧王子系は買おうと思
つても買えないのであります。配給の続きで、幾分か
増産分だけは増されましたが、現在はやはり配給のような状態が続いておるのであります。その他の中小メーカーは丸網その他の機械を改造いたしましたが、用紙の質は悪く、只今のような状態で大衆には誠に迷惑をかけており、読みにくい新聞が横行しているのであります。その紙は本年一月からずつと四月までは二十六円から二十七円、現在は二十九円に上
つております。ずつと押されて二十九円にな
つておりますが、今度の
輸入は一応三十ハドルということにいたしまして、約ポンド三十円、これで、この
価格で
内地のメーカを圧迫すると思われますかどうか、この点
一つ御回答を願いたいのであります。
それから戦前王子製紙が、樺太を持
つてお
つた頃は、
日本の新聞用紙というものは全部王子一社で独占してお
つた。独占企業にな
つてお
つた。そしてその当時すら
輸入新聞用紙は無税であ
つて、三万トン前後入
つてお
つたということはお調べ願えればよくわかると思うのですが、三万トンか四万トン入
つたからと言うて、
内地メーカーを窮地に陥れるということは……、戦前のあの王子の大勢力で、新聞社たりとも王子に対しては頭を下げる以外はどうすることもできなか
つたという時代でも、相当な無税で
輸入されてお
つた。そのくらいのものは
輸入されても我々のほうでは何ら
国内メーカーを圧迫しない。それから現在の需要
関係を見ましても圧迫しない。我々は
内地のメーカーを非常に大切にしております。新聞用紙が十分生産できないために、金融の面も我々が面倒を見たり、これを育てるのには並大抵の努力ではないのであります。ただ社会に新聞用紙によ
つてインフレを持出してはいけないというので、又我々新聞
経営をしている者も努力しまして、できるだけ安い
価格で、大衆相手の仕事でありまするから、十分心掛けて我々はこれに当
つておるのでありますが、紙がこう窮屈になり、それから一月から、先ほどから申しました
通り二十六、七
年度は二十九円、三十円につつかけて上
つて来ておるような情勢でありますので、若しもこの
輸入関税が引下げられないといたしますなれば、新聞社は大幅に新聞の
価格の値上げをしなければならんということをお
考えに入れて頂きたいのであります。そういたしましたら、他の物価がどうな
つて行くかということも十分お
考えがつくと思うのであります。こういう事態でありまするので、現在のままでは十二月まで行
つても何がしかの手持用紙もない、又戦前から比較しましても、これの三倍や四倍の
輸入をされても
内地のメーカーに必ず
影響を及ぼすようなことはないということを
考えて頂きたい。それから新聞に従事いたしておりまする従事員は相当数が多いのでありまして、従事員だけでも五万六千人、これに販売いたします従事員は約十万、十五万人が従事いたして、この低物価、低物価と申しまするか、インフレに持
つて行かないように非常に努力をいたしておるという点も、十分
一つ今度の関税についてはこの問題に
一つお
考えを願
つておきたいと思うのであります。そういうような情勢で、今関税引下げをいたしましても、
内地のメーカーには
影響を及ぼさないということを
一つお認めになるかどうか。それから若しも
内地の中小メーカーに
影響があるというようなお
考えでありまするならば、私はこれは通産当局の殊に繊維局の当局のお
考えによ
つて、配慮によれば私は防げると思
つております。現在は中小メーカーは三百五十か四百ぐらいしか出ない用紙の丸網を
変更したり、古い機械を調整したりして、
資金面で非常に苦労をして能率の悪いものでや
つておるために、二十九円というような
値段にな
つております。これは通産当局でも
内地のメーカーに大きく
影響をするというお
考えがあるならば、
一つ長期
資金でもお世話をして、中小のいわゆる単位メーカーを保護する途があれば、まだ二円や三円はコストが下る。今日新らしい機械もあり、七十四インチを入れましても七百や八百ぐらいのスピードが出るぐらいのをどんどん入れておるのでありますから、相当コストを下げ得られる
方法はあるということを見ておるのであります。そういう点
国内の新聞用紙からインフレを引つぱり出したりしないように、又メーカーを十分保護できるという
方法は他にも
幾らでもあると私は
考えておるのであります。これに対する
一つ繊維
局長のお
考えを伺
つておきたいと思うのです。