○
菊川孝夫君
証券取引法の一部を改正する
法律案に
賛成をいたします。
併しこの法案の審議におきまして、
質疑応答の過程においても明らかになりましたごとく、
投資者を保護するということは、まだまだ業者の昔からの古いしきたりと申しますか、これが新らしい
証券取引法に本当に調子が合
つて来てない面があるのじやないか。従いまして未だに思惑によ
つてその店の繁昌を図ろうとする
会社の
取締役等が一部においては多いことを認めなければならんと思います。それからもう
一つの問題は、大
証券会社と俗に言われまする四大証券或いはその他の大
証券会社とその他の中小
証券会社との間に資力の差がだんだんと大きくな
つて参りましたために、
一般投資者の
信用というのも大
証券会社に集中いたしまする結果、小証券取引業者は手数料だけでは店舗の維持が困難にな
つて来る。そういたしますと勢い思惑に走る危険性が極めて多いのであります。その結果
投資者に対しまして不測の
損害を与える結果を誘発することになると思いますし、昨年から今年初頭におけるような
株式市場が非常に繁昌をした場合であ
つたならば、その怪我人も余り出なくて済むのでありまするけれ
ども、今後の世界の政治情勢、
経済情勢の
動きを憶測、推測してみましても、極めて波瀾に富んだ推移をすることは、これは誰でも
考えなければならんところであります。これにつれまして敏感に
株式市場に響いて参りまして、その結果
変動が極めて激しい波を繰返すだろうと思います。その波にうまく調子が合
つたものはいいけれ
ども、合わない店が思惑に走
つた場合には、これはもう打撃をこうむることは火を見るよりも明らかでありますが、その結果
大衆に迷惑を及ぼす。ところが
質疑応答の過程におきまして、
大蔵省がこれが指導と申しますか、
監督に万全を期するような御答弁でございましたけれ
ども、なかなかそう一々個々の
証券会社に対しまして財務局が全部目を配
つておるというわけにもなかなか行かないだろう。或いは又帳簿や報告書だけを徴しましても、そう
大蔵省の公務員だけで以てこれを完全に取締ると申しますか、育成して行くということは極めて困難だ。
従つてどうしても業界の相互牽制と申しますか、共同
責任によ
つて少くとも
大衆にだけは、
一般のお客にだけは迷惑をかけないというだけの
一つの共同
責任体制というものを打立てさせるように私はリードして行かなければならんと思う。ところが
法律の
条文を見てみますと、そういう育成方法は若干欠けているのじやないか。それは勿論行政の面において理財局のほうで指導して行かれるという御答弁でございましたが、これは非常にむずかしい問題でございますが、そういうふうにや
つて行かんとなかなか目が届かん。だからしてこの
法律の
運用に当りましてはその点特に注意されんことを私たちは望むのであります。
それは
法律の目的に掲げてありまする
投資者を保護して、日本の
経済を健全に発展させるために
大衆の資金をここへ集中して行く、こういう目的がだんだんと殺がれて来まして、一部の思惑投機に好奇心を持つ者だけが集ま
つた投機市場に化してしま
つたのでは、折角の
証券取引法の精神が蹂躪される結果になると思うのであります。最近の市場の
動きを見ておりますと、若干そういうふうにな
つて来るということは、
大衆が寄りつかないというようなことは、どうしても思惑に走る結果になるだろうと思うのでありますが、特に今度の改正の重点でありまするところの
信用供与率の引上げが、ややもいたしますると健全なる
投資から投機に走ることを誘発する要素を提供することを一番恐れるわけであります。というのは去年の暮から今年の春にかけての
株式市場が非常に繁昌いたしました当時も、一部識者の間にはこれは投機市場に流れている。
証券取引法の本来の目的を逸脱しているのじやないかという批判さえも起きてお
つたわけであります。これを今
証券市場が若干あの当時と比べまして閑に
なつた。そういう際にこれを閑にな
つたのを挽回しようとして
信用供与率が引上げられるということであ
つたならば、投機という
一つの要素を加味しまして、そうして
大衆の投機に対する好奇心を集めようというような誤解を与える結果になると私は思いますので、この点を一番この
証券取引法の一部を改正する
法律案について私たちいろいろの角度から検討いたしたのでありますが、業者間におきましても、或いは
大蔵省においてもこれが投機に走ることのないように万全の処置を講ずるという答弁がございましたので、私たちも暫らくその適正なる管理行政を期待いたしまして
賛成するわけでありますが、これが仮に今の法案審議に当
つて答弁されましたとおのずから違
つた方向に走るということになりましたとするならば、国会におきましても更に再検討されなければならない結果になるのではないかと思うのであります。
現に巷間伝えられるところによりますと、もうすでに
法律は……、
信用供与率が引上げられるのであるからというので、すでに引上げられないままで、一部証券業者の間においては
信用供与率を引上げた
信用取引が行われておると伝えられておるわけであります。これらについては勿論
大蔵省当局においては事実無根であると言
つて否定されておりまするから、大蔵当局の
説明を一応了承いたしまするけれ
ども、仮にそういう面があ
つたとするならば、これは証券業界がみずから墓穴を掘ることになると思いますので、あとで十分そういう事実がなか
つたかどうかについても
監督官において調査をして、警告を与えるという
措置をとられるよう
にしなければならんと思うのでありますが、昔のように一部財閥が殆んど株を持
つてしまうというのではなしに、
大衆がたとえ百株ずつでも持
つて、そうして
大衆の資金で以て日本の産業を大いに発展さして行こうという
趣旨の下に施行されておりまする
証券取引法が、更に一段その精神を取り入れた体制とされるのでございますので、ここに
賛成はいたしますけれ
ども、以上申上げました点が一番危険な要素であ
つて、逆の結果を生む点が極めて多いということを申上げまして、この
法律の
運用について最善の御注意を払われんことを期待してここに
賛成いたす次第でございます。