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1953-07-14 第16回国会 参議院 大蔵委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十四日(火曜日)    午前十一時十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     大矢半次郎君    理事            西川甚五郎君            小林 政夫君            菊川 孝夫君            森下 政一君    委員            青柳 秀夫君            岡崎 真一君            木内 四郎君            藤野 繁雄君            土田國太郎君            野溝  勝君            平林 太一君   政府委員    大蔵省理財局長 石田  正君    大蔵省管財局長 阪田 泰二君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君    常任委員会専門    員       小田 正義君   説明員    大蔵省理財局証    券第一課長   飯田 良一君    大蔵省理財局証    券第二課長   小林 鎮夫君   —————————————   本日の会議に付した事件証券取引法の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○証券投資信託法の一部を改正する法  律案内閣提出)   —————————————
  2. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) これより第十七回の大蔵委員会を開会いたします。  証券取引法の一部を改正する法律案及び証券投資信託法の一部を改正する法律案一括議題として質疑をいたします。
  3. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 証券取引法改正案の第二十八条から少しお尋ねしたいのですが、この前の委員会でもお尋ねいたしましたが、二十八条では現行法一緒で大して変りはないわけでありますが、依然として登録制度というもの、証券業者登録制というものを堅持しておられるのでありますが、これは登録制度を将来もこのまま維持して行くつもりか、これは認可がいいか、登録がいいかという問題だと思うのでありますが、この法律の精神が飽くまでも投資者の保護ということを強調しておられるのでありますが、まま業者の行過ぎの結果、投資者に対して迷惑を及ぼしたり、或いは場合によりましては一般の良識ある大衆から、投資が投機に走り過ぎるという非難もあるわけであります。それらのものを健全なる投資というふうに指導育成して行くために、登録制度というところであなたがたのほうでは飽くまでも今後長く維持して行くつもりであるか、その点についてちよつとお伺いしたいのでございます。
  4. 石田正

    政府委員石田正君) 御指摘の点につきましては、証券業者登録制度認可制度に切換えたらどうかというようなお含みもあつての御質問かと思うのでございます。この点につきましては、今のお話のような点から行きまして、認可制度に変えたらいいではないかという、こういうふうな議論もあるわけでありまして、この点は我々といたしましてもいろいろ研究をいたしておるのでございますが、併しながら今の実情から申しますると、そういう認可制度にするということは行過ぎではないかというふうな工合に考えておる次第でございます。
  5. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 これは私酒の販売業者との関係から考えまして、有価証券取引税法案も提出されておりますが、これと並行して考えるなら、酒類の販売、それから製造業者はこれは登録じやないですね。今後も証券業者にあの取引税の徴収を任すことになつておるのであります。それから考えて、こちらは登録制度、向うは認可制度になつている。この兼合いから同じ大蔵省行政として、このときもこれを登録にしたらいいじやないかと我々が質問しますと、これは認可制でなければいかん。これについては登録制がいい。そのどうも主張がやつぱり同じような性質だと思うので、これは一方は酒税なら、こつちは取引税を今後正しくやつて行かなければならんと思うのでありますが、今度提案されております法律案を読んでみますと、業者はやはりお客のほうから販売の際には取引税法によつて税金をとつて、そうしてこれを納める。それから又業者取引する場合には或る程度安い税金で以て取引ができる、こういうような特権を与えた。そういうところを見まして、業者をしつかりしたものにして投資者を保護するという点から考えて、もう少し統制……統制というと語弊があるけれども、いい業者を育成するという方向をとる私は必要があると思うが、特に同じ大蔵省行政酒屋さんと証券業者、むしろ及ぼす影響というものは酒屋さんなんかは大衆に迷惑をかけるという点が少い。皆自己の責任において処理されると思うのですが、証券業者のほうはそうじやない、大衆に迷惑を及ぼすことになる。これは同じ大蔵省が所管しておりますのに、違つた行き方をするのはどういう関係ですか。
  6. 石田正

    政府委員石田正君) 私酒税関係酒屋さんを認可制度にすることが妥当であるか妥当でないかというようなことをここで申上げるところの立場ではございませんので、その点はお許し願いたいと思うのでありますが、併しそれがそうなつておるのであるから証券業者のほうは同じやはり取引税をとるから、税金をとる機関になるという意味においてこれを認可にすべきだというような点につきましては、有価証券移転税をとるのにつきましては、これは有価証券移転税がこういう今のような登録制度の下においては税収が確保できないというような事情があるというようなことでありましたならば、これは税の関係としても考えがあると思いますが、やはり証券業といたしましては、現実といたしまして証券業を営まさせることがいいか悪いかということを、先ほどの前段の御議論の点から考えると、こういうふうにすべきではないだろうかというふうに考えるのでありまして、酒税のほうにつきまして認可制をとつておるから、証券業のほうも認可制にしなければならないと、必ずしもそういう論理的な関係のあるものではないのではないかと考えております。
  7. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そういう意味で私は申上げておるのではなくて、それならいつそのこと、こういつた種類の業者はすべて登録制に統一したほうがいいじやないか、酒のほうは私のほうで認可制度を固執する理由お尋ねしますると、これは酒税の確保のためだと、こうおつしやる。そうすると砂糖消費税にいたしましても、すべてそういつた税金業者に取扱わせるようなものは皆認可制度にしなければならないかというと、そうでもない。そうなりますと、やはり一貫したほうがいいじやないかと、こういう角度から私は申上げておるのでありまして、特にこの証券業者につきまして若干問題がありますのは、大衆に迷惑を及ぼすことが多いために、或る程度これを整理しなければならんのじやないかということを考えるわけであります。で、それに関連して御質問申上げるのは、証券業者の現在の登録しておる数と、それから昭和二十三年でしたか、この証券取引法を始めたのは。それ以来のずつと増加の数を一遍わかつておりましたから、これは今日は殖えておるだろうと思うのです。後でお聞きしたいと思うのですが、保証金のごときものは形式的に保証金をとるのはこれは問題だと思う。あとお尋ねしたいと思うのですが、これは条を追つてお尋ねしたいと思いますが、これはだんだん殖えて行くだろう、その殖えて行くと共にどんどん倒れて行くものもあるだろうと思うのですが、その傾向をお伺いしたい。
  8. 石田正

    政府委員石田正君) 今のお話の点につきましては、これは年度ごと業者の数を調べてございますので、それをここで申上げますと、昭和二十三年度におきましては、その期末において業者の数は九百四十八でございました。それが昭和二十四年度になりまして千百二十七になつております。それから二十五年度は九百三十六、それから二十六年度が八百三十八、二十七年度が八百三十六、こういうふうな数字になつておる次第でございます。
  9. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると、二十四年から二十七年に大分減つておることになつておりますが、これはどういう関係で減つておるのですか。
  10. 石田正

    政府委員石田正君) これはいろいろ原因もございましようが、主なる理由証券取引が旺盛になるかならないかということが大きな原因であろうと思います。要するに証券界が非常に賑やかになりますと、商売をしたいという気持が起つて参ります。証券界が不振になりまして、余りいい商売にならんというふうに考えますと、やめる者もできて来たり、或いは新しくやる者も殖えない、こういう実情であろうと思います。
  11. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に登録申請書の法的な記載事項を非常に改正案は簡単にせられてあるようでありますが、これはなぜこういうふうに簡素化したのか、割合に現行法は詳しくこういうふうなものを書いて来いと示してあるのでございますが、法律上どういう必要があつてそういうふうに簡単にせられたか、改正理由を伺いたい。
  12. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 今度の改正法では証券業者登録申請書に添付いたして出します書類でございますが、これを大蔵省令で定めるように譲つて頂くような改正案になるわけでございます。これは今添付いたします書類は相当細かいものでございまして、現在法律にありますのは役員履歴書とか、戸籍抄本とか、そういつたものまで添えてもらうのでございますが、そういうたもののほかに、今後は純財産額等を調べます関係で、純資産の調書といつたものも出してもらうようになる。そういたしますと、純財産調書等もいろいろ細かい様式等をきめなければならんようなこともございますので、従来の今まで法律にありましたこれらのもののほかに、更に随時適当に省令において添付書類を定められるようにやつて頂くほうが便利だと、こういうことで改正案を提出いたした次第でございます。
  13. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると、これは大した改正ではございませんね。
  14. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) ええ、ございません。
  15. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 その次に第三十一条についてちよつとお伺いしたいのですが、「登録申請者に通知して当該職員をして審問を行わせた後、その登録拒否しなければならない。」こういうふうになつておる。これは虚偽の記載事項或いは記載洩れ等の場合においてこういう処置をとらなければならない、而もこれは登録拒否しなければならないと、こうなつておるのでありますが、勿論この場合には訂正に応じた場合は訂正させることを含んでおると思うのですが、この法文の解釈で行きますと、記載が欠けておるときは通知して審問を行わせた後拒否と、こうなつておりますが、これは訂正なつた場合は、訂正に応じながら、これは法律解釈から行くと拒否しなければならないとなつておりますが、大蔵省の義務というか、法規的に規制されておるのですね。
  16. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 法律のほうでは重要な事項記載が欠けておりますれば、登録拒否しなければならないとございますので、法律登録拒否ということになるのでございますけれども、実際上の扱いといたしましては、申請書を見まして、こういう事実が欠けておると、それが申請者が適当に訂正ができるものでございましたら、その点を話しまして、一旦申請書を取戻してもらいまして、正式に記載を改めまして、又出して頂く、こういうことにしておりますので、そういつたちよつとした過失に基く事項記載が欠けておるといつた程度拒否をされるということにはならないわけでございまして、そういう扱いをいたしておるわけでございます。
  17. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それでは、審問という言葉がこの法律にはたくさん出て来るのでありますが、審問というのは法律上どういう行為をやる、これはどんな権威を持つておるか、この点をお伺いしたいと思うのですが、審問というのはこれは余りほかの法律には少いと思うのですが、この法律案にはたくさん出ておりますので……。
  18. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 審問と申しますのは、恐らく証券取引法関係の法令だけになるかと思うのでございますけれども、これは戦後の法律といたしまして、こういつたことを取入れたわけでございますが、役所に対して願出をいたしました申請者とか、役所の監督を受けております証券業者等に対して、役所でその本人に対して不利益処分をいたしまする場合に、従来でありますると、普通書面審査でありまして、書面審査をいたしまして、これは不備がある、或いはこれは不許可にするとか、或いは行政処分として処分すべきものということが判明いたしますと、その書面審査によりましてそういつた行政処分をいたしましたり、或いは登録拒否といつたことをいたすわけでございますけれども、この法律におきましては、そういつた場合に書面審査ということでなく、本人に実際来てもらいまして、そうして当該職員が面接の上でその点を質し、その人から述べるべき点を聴取いたしまして、そうしていろいろそういつた処置をきめる、こういつたふうに手続を慎重に行うようにしておるわけでございます。ここにあります審問につきましても、登録拒否といつたような重要な、本人にとつて不利益になるようなことを一方的にきめるということでなく、一応本人の言い分を聞いてからやれるようにというふうに努力しておるわけであります。
  19. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 この審問の場合にちよつとお伺いするのですが、証券業者というのは、まあこれはガラス張りの中で商売をやらなければならんのでありますが、存外他の店に知れては悪いような事項もたくさん店としては持つておると思うのです。あと審問という字句も出て来るから申上げるのだが、審問をしようとする職員は、今までは立入検査をする場合には、証明書を持つて行つて立入検査ができるということはこの法律に載つておりますが、この審問には一体「当該職員をして」と、こういうふうに漠と書いてあるだけでありまして、審問する場合には出張して審問することも考えられると思うのでありまして、その審問職員証明書の問題、或いは秘密審問をしました場合、秘密を漏らしてはいかんということは、これは公務員法によつてきめられておりますから、漏らすことはできないと思いますが、これについてはあとで都合の悪いことは、黙秘権は裁判にもありますが、審問とそういう関係はあなたのほうではどういうふうに考えておるか。証券業者かたは秘密事項が多いもので、審問ということになると関連事項としてこれは調べなければならない。そうすると業者のほうでは多少陳述を渋るといつたような事件も起つて来るのではないかと思いますが、その点についてあなたのほうでは黙秘権を認めるという、そういうような点も考えておるのですか、この審問について。
  20. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 審問につきましては、法律でその審問手続について百八十二条以下において規定があるのでございます。お尋ねのございました点でございますが、審問はすべて役所においてその当事者に来て頂きまして、そうして審問をするということになつております。出張審問ということはいたしておりません。  それから審問をする係官でございますが、これは法律で「当該職員」となつておりますが、特に大蔵大臣の決裁を得まして、誰が審問をするかということを指定を受けてやつておるわけであります。それから秘密に亘る事項についてでありますが、審問を受けました場合において、大体において本人にとつて不利益事項について処分があるといつた場合に、無論本人のためを考えていろいろ聞き質すということでございますので、むしろ積極的に述べたほうが本人に有利であるといつた機会のほうが多いわけであります。若し不利益なことを聞かれるということでありますならば、それは別に答えなくとも差支えないというようになつておるのであります。ただそうなりますと、役所では書面その他いろいろの状況から判断いたしました結果において措置がされるということになるわけであります。
  21. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に三十一条の七号ですが、「執行を受けることがないこととなつた日から」というのは、これは執行猶予なんかのことを意味しておるわけでありますか。
  22. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) そうでございます。執行猶予等の場合であります。
  23. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 執行猶予になつてから五年間は、例えば刑の執行終つたという場合でありますが、二年間執行猶予になり、その上更に五年間これをやつてはいけないという意味でありますか。
  24. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 刑の執行猶予を受けました場合につきましても、執行猶予ときまりましたときからやはり五年間証券業に従事できない、こういうことになるわけであります。それは仮に執行猶予になりましても、刑の執行猶予されたということでありまして、やはり有罪になるような何と言いますか、悪いことをしたという結果でございますから、刑の執行は免除されるが、一応そういうことをやつたということの責任を考えまして、やはり五年間はそういうかたは証券業に従事するのはまずいということで法律規定されることになつております。
  25. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 これを見ますと、罰金も、それから体刑も、執行猶予も、すべてそれが終つてから五年と同一制限をしておるわけでありますが、一体罰金執行猶予と実刑を科せられたというのと同じように五年間経過するまではいけないというのはちよつと公平を失するのではないか、法律の罪名に対する裁量をこういうふうにして軽重によつて制限しておる、それをすべて一緒のように制限をするというのはどういう意味でございますか、それでは罰金体刑執行猶予意義がなくなるのじやないかと思いますが。
  26. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) お話通り、この法律の点は、罰金につきましても、体刑を科せられた者も、又執行猶予を科せられた者も同じように規定しておりますが、これはこの証券取引法規定による刑の法律違反がございまして、それによつて処分をされた者でございますので、そういう証券取引法によつてそういつた刑を受けた者は証券業に従事することはどうも不適当である。これは何と申しますか、証券業者として適格であるかどうかということの実際の審査登録制度でありまして、少くとも最低限度この登録要件は満たしておるということ、これは証券業者として開業するのに適当である、こういうように判断されますので、こういうここに挙げましたような刑に処せられました会社証券業を営むということはどうも不適当であるということで同一に定めたのであります。
  27. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると、五年経つたならば又資格は生ずるのですか。五年と限定した意義はどういうわけですか。五年経つたら世間も忘れてしまうからいいだろう、五年間経てば資力も回復していいのだというのできめたのか。あなたの今言われたように、その制限を五年にお切りになつたのはどういう意味なんですか。五年経てば世間ももう忘れてしまうし、その人も反省するだろう、その間は懲罰的な意味で五年間はやらせないというのか、五年間の意義を伺いたい。
  28. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 特に五年という期間は、五年でなければならないという意味はないのでありますが、一応そういつた刑に処せられました者がずつと永久的に、そのために責任を負つて証券業をさせないということは酷でございますので、又、といつてこれを余り早く証券業に帰るということも如何かと考えられますので、五年という期間は大体適当なところではないかということで引かれたのであります。別にほかに特別にこの五年ということについての理由はないかと思いますが、そういうことから一応五年が適当であろうということでそういうことになりました。
  29. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 今まで昭和二十四年から二十七年までにたくさん業者は減つておりますが、この五年間に処分を受けた者は、あなたのほうで記録があると思いますが、どのくらいありますか。
  30. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 証券取引法規定によりまして刑罰を受けました会社というのは、今までのところ行政処分は相当ございますが、刑事処分に付せられた会社はございません。ただお尋ねの点が、或いは行政処分に付せられた会社に在勤しておつた役員が、五年間証券業に関与できなくなるということに関連しての御質問かと思いますが、そうなりますと、行政処分を受けました会社の数は、二十三年から今年の六月まででございますが、百七十八社あります。この百七十八社の会社役員が五年間役員になれないということになつております。
  31. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に進みまして、九号へ参りまして「取締役同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。」こういう条項があるのでございますが、一体これはどういう認定、例えば或る新聞に載つてつた経済保全会伊藤徳という人は、どつか大きな証券会社ではもう社長以上の権限を持つような、こういうような証券業界には我々聞くところによりますると、小さい機関店をたくさん持つておるのでありまして、この機関店に対して大きな証券業者なり、或いは証券界有力者という連中はみなそれぞれ社長、店主以上の支配力を全部私は持つておるということを聞いておるのですが、これもあなたのほうもお認めになるだろうと思うのです。これは全然否定されないと思うのです。これらは取締役同等以上と認めると思いますが、実際問題として九号による処分ができますか。これらは皆逃げてしまうだろうと思いますが、これによりますと「顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず」と、こう書いてあるのですから、名称はどんな名称でも、仮になくても、或いは顧問とか何とかいうこの表面に表わしているだけを意味しているのであつて、全然そういう機関店関係とか、実際の支配力を持つておるものを意味してないのか。括弧内の「相談役顧問その他いかなる名称を有する者」と言つている以上は、厳格にやられるのだろうと思うのでありますが、この法の解釈から行くと実際これができるかどうか。証券業界実情から極めて困難なる問題だと思うのでありますが、この点明確に一つお答えを願いたいと思います。
  32. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) この点は相談役顧問等名称を持つておる者は勿論でございますが、そういつた名称がない者でございましても、会社取締役と同じようにその会社に対して経営支配するような実際の力を持つておる、こういうふうに考えられまする者につきましては、この規定を適用いたしまして、今申しましたような五年間の証券業関与禁止等規定を適用する、こういうふうに考えておるわけでございます。でお話のございましたように、証券業者取引する顧客におきまして、実際上大株主といつたものは相当ございまして、会社に対して或る程度影響力を与えておる者も多いかと考えます。そういつた者が大株主等であり、大口取引者であるということによつて、実際上役員と同様に或いは役員会にも出、或いは会社の中では全く勤務すると同じような状態において会社経営に参加しておる者もまま見受けられることもございます。そういつた者につきましては、やはり私どものほうで処分をいたしまする際には検査等いたしまするので、いろいろの点がわかるわけでございますので、そういつたかたは一応支配力のあるものと認定される場合も出て来ようかと思つておるわけでございます。お話のように実際上の場合になればむずかしいことはお話通りでございまするけれども、そういつたことも或いはあり得るだろうと考えております。
  33. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると、今の御答弁ではそういつた実際上の支配力についても厳重に本条項は適用されるものである、将来適用して行くんだ、こういう方針の下に改正案をお出しになつておるのですね。
  34. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) その支配力会社役員同等、少くも取締役と同じような会社経営に対する支配力でございましたらば、適用されるというふうに考えております。
  35. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると、名称はそう表面に現われなくても、俗にいう機関店的な支配をしておるものにもすべて本条項は適用されるものだ、これはもう店のおやじより、社長より上な支配力を持つたものはたくさんあり、小さい取引客、それらに対してもこの条項を適用するんだ……。
  36. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 今の機関店でございますが、この機関店取引関係から大口の注文を出したりする等の関係で或る店が機関店経営営業方針と申しますか、それを或る程度支配するということはあろうかと思いまするが、これは具体的になりませんとはつきりいたしませんが、大体の場合において機関店といつたものは会社経営そのものに対して役員のような支配力を持つというふうではなく、むしろ売買のことについてであろうかと思うのでございまして、そこへ書きましたのは、主として取締として商法上会社取締役会に出席し、取締役会の決議事項になつております事項に関しまして同じように会社影響力を与えるといつたものを考えておるものでありますから、そのときどきの売買といつたことにつきましては、そういつた場合は必ず適用されるかどうかということはなおそのときによつて検討しなければならんかと思つております。
  37. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 私のお尋ねするのは、「相談役顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず」とこう来ておるので、これは名称が実際になくても、実際上の支配力を持つておるというのはこの業界には特に多い。それらについてもこれは適用されるのかどうか、こういうことをお尋ねしておるのです。
  38. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) お尋ね意味で、業界におけるそういつた店に対する支配力を持つ者が多いという意味におきましては、適用はされないのじやないかと思うのでございます。そういつた単に業界で相当業者に対する支配力がある、機関店を使つて支配するといつた意味におきましては、この条文は適用されないというふうに考えております。
  39. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると、表面上に顧問であるとか相談役であるという名前を連ねておらなければ、如何に支配力を持つておろうといい、逆に言えばそういう意味ですね。
  40. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 表面上の名称はなくても、やはり会社に対しまして、丁度取締役と同じように会社に勤務をいたしておりますとか、或いは勤務いたしませんでも取締役会に参加いたしますとか、そういつたことをいたしまして、取締役会の決議を左右するといつたようなことで、取締役と同じように会社経営に発言をいたしております者について適用がある、こういうことでございます。そういう者につきましては名称を持つておらなくても適用がある。こういうことでございます。
  41. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 ちよつとわかりにくいのですが……。
  42. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) いわゆる業界におきます支配といいますか、影響とか、機関店とか、そういつたことを指すわけではございません。
  43. 石田正

    政府委員石田正君) 今小林課長からいろいろと答弁いたしましたが、補足して申しますると、こういうことではないかと思うのであります。或る証券業者がおりまして、その証券業者の業務をやつて行く上において、会社の運営上の内部意思を決定して行く、こういうようなことに実際上の力がある人は、名称は何であろうとこの中に入るのだ。併しながら証券業者というものは商売をするときに相手のお客様があります。お客様が非常に取引の大部分を占めるというようなことで、実際の商売の利益とか、損とか、業務の内容をたくさんやるということだけではこれは会社支配したこととはならない。こういう趣旨で答弁いたしたものであろうと思います。
  44. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 ちよつと明確を欠くように思いますが、その点については改めてお伺いすることとして、疑問として残しておきたいと思います。  次にハのほうに参りまして、「当該処分のあつた日以前三十日内に当該会社取締役であつた者で当該会社が」云々、この「三十日内」というのですが、これはこういう条項がございますと、むしろ業界におきましては、三十日以前に処分を受けそうになつて、危なくなつたときにすぽつと取締役を退いてしまえば、この条項によつて処分されるということがなくなるわけでありますが、大体会社というものは半期の決算で、決算を半期ごとにやつておるわけでありますが、なぜここで三十日以内というふうに切つてあるか。むしろその処分を受ける業務の会計年度の期間内に取締役であつた者はその責任を負うということが常識ではないかと思うのですが、危くなつた、これは処分を受けるかも知れないというので、三十日以前にぽつと席をはずしてしまうということになると、これに該当しないということになつて来るわけですが、それらはなぜ三十日以内ということにせられたか、お伺いしたいのであります。
  45. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) この、取締役責任を負いますことは、処分を受けましたそういう悪いことなり、資産内容を悪くするといつたことにつきまして、実際上は責任のある人が責任を負うということはこれは当然なわけでありますが、その場合にそれを実際上確定をいたすということはなかなかむずかしいことでございますので、一応処分のあつたときから遡つて三十日間において在勤している者は、そのことについて責任を負うというふうに見まして、この規定ができておるわけでございますが、お話の今六カ月、半期ごとにという点につきましては、これは証券業者はやはり相場の変動等によりまして、相当絶えず毎日相場が変るということ、変化がございまして、いろいろ破綻を来たすということがある。これは必ずしも長い期間の例えばいろいろな貸付等の管理を怠つたということと違いまして、相場の変動に基く場合が多うございますので、必ずしも六カ月も前に遡つた部分の責任を負わすということも多少商売の性質から見て酷ではなかろうか、こういうふうに考えられる場合が多いのでございます。そこで一応こういつた責任を持たすということでございますから、できるだけ範囲を限りまして、先ず三十日というところで線を引いたわけでございます。
  46. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 私の申し上げるのは、三十日前に相当会社で、これは戦前でございましたが、戦前山一でも社長が自殺をした事件がございましたね。あのようなことは、前から社長がずつと悪いことと言つては誤弊がありますけれども、思惑買、思惑売をやつている、その結果が現われて来るのは大体三十日か六十日後に会社影響を及ぼして来るであろう、これは危いと思つたら三十日前にぱつと逃げるという手がこれによつてはできると思うのですが、それらのことを考えておられるのですか。
  47. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) そういう不測の事態が起りましたときにおきましては、私どものほうではできるだけ速かに検査もし、処分もいたしておりまして、大体におきましてそういつた事態も三十日以内には処分をいたしてございまするので、そういつた責任のある者が逃げてしまつて、やめてしまつて処分を受けたときには違つた人がやつておつたということのないように、そういう点は特に敏速にやつておるわけでございます。
  48. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 ここで御答弁するときには検査をうまくやつているからとおつしやるのでありますが、私実際問題として事故の起つた所へ債権者の連中と捜査というか、行つてみたところが、その係官の話を聞いてみますと、なかなか調べられるものではございません。いよいよ実際に現われてこないとわかるものではございませんと、こう言つておるのです。これだけの人数が今証券取引所内に監督官と称して出向いておる、併し実際問題としてこれだけの業者を一々調べるわけにも行かんし、報告書を徴しておくくらいの程度でありまして、なかなかそれはできるものではございません、こう言つておる。今の御答弁によると、如何にもうまく検査もされて、そういう事故の起らんようにやつておるのだから大丈夫だということだが、大分実際と御答弁と食い違つておるのじやないか、又食い違いが出て来て当り前だと思う。その点から考えて三十日ということはもう少し私はやはり半期の決算を終つて会社でございますから株主総会も終つて、その後の責任についてはこういうものはわかると思いますが、三十日以内というような逃げ道を拵えておくのはちよつとおかしいのじやないかというふうに思いますが、局長どうですか。
  49. 石田正

    政府委員石田正君) 御指摘の点でございますが、我々もできるだけ検査をやりまして、業界の実態の把握に努めたいと思つておりますが、併しお話のありましたように、なかなか現在検査がよく行き亘つて、そうしてちつとも心配ないというような状況になつてないということは御指摘の通りだろうと思います。そこで問題は検査をいたしまして、そうしてどうもこれは工合が悪いということがわかつてから、後の措置をどうするかという問題が実際問題として起つて来るわけであります。この点につきましては、検査の結果これは工合が悪いということになりますれば、その後で損をしたということが起つて来るわけであります。そうしてそれから行政処分ということが起つて来るというわけでありますが、これはできるだけ三十日以内に片付けてしまつて、従つてその間に逃げられるということのないようにいたしたい。仮に今申されますような半期遡るという点でございますが、これは実際の検査をやつて見ました結果、すべての会社につきまして報告を取つております。その報告の上ではつきり出て来ればいいのでございますけれども、実際上なかなかそうは行かないで、検査などをいたしました結果どうも報告書と違つたようなものが出て来る。そこで取消もしなければならない、こういうふうなことが多いのでございます。こういう場合におきまして、検査しました結果、その禍根というものは必ずしも半期内にあるのじやなくて、或いは一年に亘るというような場合もあろうかと思います。そういうふうな場合におきまして、それでは半期ならば安心であるかどうかということになりますと、これはなかなか必ずしも目的を達せられるというわけに行かない。要するにここに書いてありますることは、いろいろと中身を我々のほうで見まして、そうしてここに登録の取消というような行政処分をする場合におきましては、そのわかりましたときから三十日以内に片付けまして、そうしてその間に逃げるとか何とかいうようなことのないようにいたしたい、かように思つておる次第であります。
  50. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そういうふうな御趣旨であるかも知れないけれども、これは業界の実態にちよつとそぐわないのじやないかというふうに私は考えますけれども、意見になりますから次に進みます。  次に三十一条の二項でございますが、「資産の合計金額及び負債の合計金額は、政令で定めるところにより計算しなければならない。」こういうことになつておりますが、これも法律上ではうまく合わされておるのでございますが、特に資産の合計額については或る程度つかみ得ると思うが、負債の合計額のごときはなかなか計算が極めて困難になり、この業界の特質上問題だと思うのでありますが、一体政令でどういうところまで定められておるか、今度の新しい条文でございますけれども、どういうふうにして負債の合計額の算出をやろうとしておられるのか、ちよつと構想をお聞きしたいと思います。
  51. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) この点につきましては、実際買主に対する貸付金、更に立替金とか、そういつたものが多かろうと思うのでございますが、それで一切の負債につきまして、一応各すべての科目につきまして、これはその会社の帳簿価額によつて計算されておりますものを計算して出して頂くということに考えております。そこでただ資産でございまするが、資産につきましては評価をいたしまして、有価証券につきましては時価で評価する、こういうふうに考えております。負債につきましては一応簿価でそのまま計算して行きたい、こういうことになるかと思います。実際問題といたしまして、資産によく所有証券、大体証券業者財産と申しますものは有価証券が多い、有価証券が不当に高い値段で評価をされておるといつたことで実際の正味資産が欠けておるといつた場合が多いわけでございますので、所有証券につきましての評価の規則を作りまして、厳正に評価するということでいたしますと、或る程度これは把握できるものと考えておるわけでございます。
  52. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に三十二条で、こういう変更があつたときは「遅滞なく」届け出なければならないということになつておりますが、これは営業所の設置であるとか、出張所の設置なんかをして置いてから、それから届け出る、こういうことになつておるというふうに解釈してよろしうございますか。変更があつたときには、遅滞なく届けなければならない。
  53. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) さようでございます。その登録事項に変つたことが起りましてから、その後におきまして、直ちに遅滞なく届け出ると、こういうことでございます。
  54. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると、営業を始めまして、それから届け出る、変更があつたということは営業を始めてから変更があるのだろう、出張所を設けましても、営業を始めてからそれから届出ればいい、その余裕期間をどのくらい見ておられるか。それは三十条の二との関係におきまして、「登録を受けていない本店その他の営業所又は代理店において証券業を営んではならない。」ということになつておりますが、変更があつたときには遅滞なく届け出でなければならないということとこの関係が少しおかしいのじやないかと思います。
  55. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) この支店、出張所等を新しく設置いたしました場合におきましては、その設置いたしましてから、その事実を遅滞なく届出をいたしまして、そうして、それから三十三条に規定がございまするが、登録の手数料を納め、それから営業所につきましての営業保証金というものを供託をいたすことになつております。そうして三十条の二という規定がございまして、そういう措置を受けてから初めて証券業の営業ができる、こういうことになつております。
  56. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それじやまあそれはこの程度にして次に行きまして、三十八条、三カ月以内に営業を開始しないとき、又は三カ月間休業したときは登録を取消すことができる。これは大蔵大臣のいわゆる自由裁量できまるものか、それとも法規裁量でみな規定されてあるものか、お伺いしたい。というのは、いろいろ理由を設けて大蔵省に運動したら、三カ月以内の休業或いは営業を開始しないというようなものがあつても……、これは天災地変等止むを得ない事故のみの場合を取消しに考えておられるのか、これは非常にむずかしい問題だと思いますが、大蔵大臣の取消しをすることができるというだけになつておりますね。従つて、三カ月間休業しておりましても、事情によつては取消しせずにそのまま認めるのか、店を閉めてしまつた場合に、これをどつちに考えておるのですか。天災地変その他不測の事態の場合にできる、でありますから、しない場合もあるけれども、常識的、一般的にはこれは三カ月間営業開始をしない場合、或いは休業の場合には、店を閉めたような場合には当然取消すんだ、これを原則に考えておりますかどうか。
  57. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 実際登録を受けましてから、営業の意思がなくて、放つたらかしになつておりまして、三カ月も経つておりまして、その間に適当な人があれば店を譲る、看板を譲るとかいつたことで、全然開業の意思なく三カ月も休業しておるというものにつきましては、これはもう全然それは営業を継続せしめる必要もないわけでありますから、取消しする、こういうことでございます。そうでなく、営業意思はあるのだけれども、まあ天災地変と申しますか、その他特に考慮してやらなければならないという事情がございます場合には取消しをしないで置くことができる、こういうことでありまして、どちらかと申しますれば、それは厳格に扱うわけであります。
  58. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 証券業者の休業というようなものは、これはどちらかと申しますと、投資者にとりましては、まあ見方によりましては、銀行の休業と同じような心理的影響を与えるものと解釈しなければならんと思いますが、というのは、最近店を閉めて、休業仕り候で店を閉めてしまう、ところが大蔵大臣がそういうものについても登録を取消しすることができるというわけで逃げておるわけであります。従つて、事情を調べたり何かして取消しすることができることになつておるかも知れないけれども、三カ月も休んで、ここには休業した営業所又は代理店の登録を云々、こう書いてありますが、代理店なんか特にそういう点は一般投資者に対する影響は大きいと思うのですが、原則としては、あなたのほうはそういうものは取消すつもりでやつておるのかどうか、それを聞きたい。
  59. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 営業を、新規開業でありませんで、現に営業をずつと続けてやつておりました店が、店を閉めて三カ月も休むといいますのは、大抵の場合においては、何らかそこに店が廻つて行かなくなるという事故があるわけでございます。そういつたことが私どものほうに届出なり、又調査の結果わかりますれば、直ちにそれは検査をいたしまして、そうして検査の結果、それぞれの条項を当てはめて処分をする。従つて登録を取消しをするということになるわけでございます。
  60. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると、この第三十九条へ行つてすぐ疑問が起きるのでありますが、第一項では「取り消さなければならない。」こうありますが、第二項は「取り消すことができる。」とある、その理由、而も「不正の手段により」とあるのに、なぜ「できる」と、こういうふうに不正のやつを「できる」というようにして受けてあるのですか。「不正の手段により」云々と、こう書いてあるのですが、二項に参りますと、「大蔵大臣は、不正の手段により第二十九条の規定による登録を受けた者のあることを発見したときは、当該証券業者に通知して当該職員をして審問を行わせた後」、その代理店の登録を取消すことができる、これも取消すことができると、不正な手段によつて登録を受けた者、それをできるというふうに受けているのは、これは取り消さなければならない、こういうふうに行くのがいいじやないのですか。
  61. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 登録の際、不正の手段によつて登録を受けました者につきましても、いろいろ登録事項にそれぞれ条項がございますが、中には手段が不正でありましても、軽微な点において不正であつたということもあろうかと思われるのであります。そこで、まあ一遍成立いたしました営業につきまして、その営業をやつておる、現にやつておりまする者が、健全にやつておるということでありまするし、又不正の手段によりましても、そのことが軽微である、その後において直されておるという場合においては、これを取消しいたしますと、却つて相当取引のあつた大衆全般についていろいろ損害をかけたり、いろいろいたしまして、大衆の保護にならんということもあるわけでございますが、そこでそういつたそれぞれの状況に照らし合せまして、取消しをしない場合もある。余り目に余る場合であり、その後放置して置くことがいかんということでありますれば、取消しをいたすわけでありますから、そうした取消しをしない場合もあり得るように一応規定としては取消すことができる。こういうふうにいたしたわけであります。
  62. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうしますと、三十八条、三十九条を一貫して考えまして、非常にまあ余り厳しいことを言わずに、どちらかというと自由放任主義でやつて行こう、厳重な取締と言いますか、これは大衆、いわゆる投資者大衆保護のために、これらの業者の不正や或いは間違つたような問題については、厳罰主義を以て臨むというのではなく、まあまあ主義でこれは行こうというように大体今の答弁で受取れるのですが、そういう方針であなたのほうでは証券業者に対してやられるのか。
  63. 石田正

    政府委員石田正君) これは我々の気持といたしましては、証券業者自体については厳格にやつて行きたいと思つております。ただ併し、そのときに証券業者が悪いことをしたから厳格に措置するということについては、そのときの事情々々によつてその業者取引の相手方に対してどういう影響があるかということを考えなければいかん。そういうことでやるというのでありまして、証券業者を甘やかせるという観点からやつているのではないということだけは御了承願いたいと思います。
  64. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それで大体わかりました。そうすると、これは投資者、顧客にどういう影響を与えるかということを第一義的に考えてこれらの条文は運用するのだと、こういう御趣旨ですな。
  65. 石田正

    政府委員石田正君) 従いまして、もう投資者保護の見地から言つて、そういうものはいけないというような極端な場合は取消すと書いてあります。そうでない場合については取消すことができるということであります。多少の条文の上におきまして只今御指摘のありましたような、三十九条につきましても第一項と第二項と分けておりますところの趣旨は、そういう点を考えておる次第であります。
  66. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 第四十条の営業用純資本額についてでありますが、負債総額が一定の率を超えるようになるということは、極めてこれは認定が困難である。特に証券業者のような業務においては変動が激しい。一般の産業界とはちよつと性質を異にしまして、場合によつては今日は負債が一定の率を超えているかも知れないが、明日になつたら逆に負債が全然なくなるというような事態もこれは生ずると思うのです、この相場の上り下りによりまして。まあ今のような動きがないときには余り変動もないですけれども、この間のスターリン相場やああいうようなときには、又休戦相場が出たというようなときにはがらつと来てしまうと思うのでありますが、この四十条の解釈から行きます場合、営業停止というのがすぐやつて来ると思うのでありますが、これもまあできるということになつておるのですから、今の局長の御説明によつてはつきりしたように、大衆にどういう影響を与えるかということを考えて、実情に応じて処置して行くのだと、こういうことになれば、余り厳格に一定の率を起えるようなときというような問題は、私はこれはどうも四十条の規定そのものが極めてこれは含みのある運用をしようとする意図の下にこれはできているのか。それともこの一定の率というのは厳格に一つ守つて行くのか、この点を一つお伺いしたいと思います。率というのはどのくらいの率を考えておられるのか。
  67. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 四十条の営業用純資本額に対しまする負債の倍率でございますが、これは現在二十倍となつておりまして、まあこれは最高でありますが、法律で二十倍以内ということになつております。で、今後も二十倍で行くわけでありますが、現在のやり方といたしましても、この負債倍率というものは相当厳格に考えまして適用をいたしております。お話のように、証券業者の資産内容が有価証券の相場の変動によりまして変りますから、営業用純資産額も変る結果、従つて倍率も変動する、こういうことがあるわけでありますが、そこにまあおのずから幅がございまして、現在例えば四十倍、五十倍の倍率を持つておるというものは、多少翌日は相場が変つて多少回復はいたしましても、相当そこに、まあ一遍に全部回復できるというわけじやございませんので、そういつた場合につきましては、もうはつきりとこれを適用するということで営業停止等の措置を講じておるわけであります。二十一倍といつた場合でありますと、場合によりましては回復をするという場合もございますし、営業停止を命ずるということが相当その当事者、一般顧客に対しまする関係も先ほどお話のようにございますので、そういつた場合には必ずしも営業停止を命じないでおくと、こういうこともできるように今度の改正では、従来は「命じなければならない。」というのが「命ずることができる。」と改めた次第であります。
  68. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 その「営業停止を命ずることができる。」に今度変つたので、前には、「理由を示しその営業の停止を命じなければならない。」と現行法では相成つておる。これは改正しなければ「命じなければならない。」とこういうことになるのだが、実際これは四十条をそのように運用されて来ましたかどうかということをお聞きしたい。これではとてもいかないからというので、実情に即したように「命ずることができる。」という改正を今度はしようと思つて提案されているのだろうと私は思うのでありますが、この点をはつきりお伺いしたい。
  69. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 従来もこの負債倍率の規定は、これは重要な規定でありますので、これに対する違反に対しましては厳格に適用をいたしておるわけでございますが、まあその結果どうもちよつとそうまでしなくてもいいのじやないかという事例もありますものですから、そこで改正を提案したようなわけでございます。
  70. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると、現行法によりましては、それなら「命じなければならない。」というふうに厳格に適用しておるのですか。
  71. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) まあその倍率につきましは、これはその資産、負債等の計算を細かくやるわけでございますから、倍率計算をしてみました結果、二十一倍になるということでありますると、それは法律からいいまして「命じなければならない。」ということでありまするから、当然そういう措置をとると、こういうことになるわけでございます。ただ従来この所有証券につきまして、一時規則によりまして時価評価いたしませんで、簿価で評価ができることを認めましたことがございます。そういつた関係で、ときにはそういつた規則に従いまして、倍率を実際時価に評価いたしまして、倍率を越えておつても必ずしも営業停止にならなかつたという例はございます。それは政令によりまして、そういつた評価の方法を変えた簿価評価を認めておりますところは、そういつた措置をとつております。
  72. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それじや次に行きまして……この辺についても大蔵大臣に聞いてみなければならんと思うのですが、大体立案の趣旨はわかりました。  次に第四十一条の、これは私非常に問題があるのじやないかと思うのでありますが、営業保証金の額ですが、当該証券業者の本店については十万円、支店その他の営業所については営業所ごとに五万円と、こうしておるのですが、今の大体証券界の金の動き方から考えまして、この十万円、五万円というのは誠にどうも子供騙しのような保証金だ。而もあとには「証券業者証券業に関し取引をした者は、その取引に因り生じた債権に関し、」営業保証金は「他の債権者に先だち弁済を受ける権利がある。」と書いてあるのですから、全く法律はこれで整つております。併しその金額が十万円の額がどんな影響を持つかと思うと、全く子供騙しのように考えるのです。今の何からして四項のごときはまさに無意味だ。意味がない。意味がないといつても一銭も返らないよりましだということになれば別問題ですが、この十万円、五万円というのは、現行法と同じでちつとも改正あとがないのですが、これは少し改正をする必要があると思うのですが、これはどうですか。
  73. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 営業保証金の額につきましては、お話のような関係もあろうかと存じますけれども、一方考えますのに、現在の取引業というものは相当多量になりまして、金額も多くなつておるということでありますので、それでは営業保証金でカバーできると、補填ができるというような額を積むということになりますと、これは相当多額なものになろうかと思うのであります。それで営業保証金といつたものの額を上げますると、相当これはそういう意味で本当に上げるということになれば、多額なものになりまするが、現在の証券業者経営の実態から見まして、そう多額のものを保証金として供託させて寝かすということは、これは経営上無理があろうかと思うのであります。そこでそれは一般の当事者に迷惑をかけないということのためでございまするから、むしろそういつた一般投資者に迷惑がかかるような経営方法をとらせないようにし、営業保証金で補填させなければならんというような、さような事態にならんように一般の営業のやり方を改めさせ、指導するといつた意味におきましていろいろ今度の法律の中にも改正をお願いしておりますが、そういつた規定の運用を以ちまして、私どもといたしましてできるだけ検査その他の資料によりまして、そういつたことにならんように指導して行きたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  74. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると、四十一条の額を改正提案しておられないところから見まして、この保証金というものは、泡沫のいわゆるもう全然信用のないようなところの業者を牽制するために、いわゆる議員の立候補に当りまして供託金をとる、こういうような意味の供託金としてならこれは意味がわかるのですが、併し一方におきまして株式会社というところでこれを抑えて行く、証券業者を……。そうするとむしろこの保証金というものは全然意味がないのじやないか。大体証券業者に対して取引関係で債権を生じて倒れてしまつたのに、十万円の保証金があるからこれはこいつを取ろうというようなことは現実を極めて遊離して規定じやないか、むしろこの際には四十一条を削除してもいいのではないかとさえ思うわけでありますが、現在の証券会社実情から考えまして。にもかかわらず十万円、五万円を積立てさせようというのは、一体意図はどこにあるのかということはよくわからんのですが、先ほど申上げましたような、いわゆる議員立候補の場合の供託金的な性格を持つているのか、それとも投資者保護の弁償のために当てる財源として供託さすのか、どつちに考えているのか、
  75. 石田正

    政府委員石田正君) 現在の取引の実態から行きまして、こういう供託金だけでは殆んど意味がないじやないか、誠にそういう点が私は実際問題としてあろうかと思います。然らばそれじや一方においてそんなものをやめてしまわんかということになると、これはこのほうがいいのじやないかと私は考えます。それからもう一つの問題として、もつと上げたらどうかという問題になつて来るかと思います。これはこの前にいろいろ御質問もありましたようですが、証券会社の資本金というものをどういうふうにするかということも関係あるわけでございます。我々はできるだけ証券会社というものを資本を殖やすということに相当重点を置いて行かなければならないと思つております。これが非常に問題でございまして、現在のごとく地方などにおきまして、二百万円というような資本金でもやれるというようになつておるわけでございます。ところがあれがなかなかむずかしいことですが、御承知とは思いまするけれども、そういうことを前提といたしますると、この資本金というものは、要するに証券業者でありますと、寝かしておく、現金で持つている性質のものではなくて、やはり運用しなければならないということになつて参りまして、その点から申しますと、どうも今の実情としては十万円、五万円を上げるということは、そこまで遺憾ながら実態は行つていないのではないか、かような実情にあることを御了承願いたいと思います。
  76. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 委員長から御注意で、そろそろ休憩に入りたいというお話ですから、もう一遍だけ四十一条について……。御了承願いたいという今の御説明を聞いても、これは非常に納得のできにくい問題で、どちらかにはつきりしたほうが私はいいのじやないか。上げることはできない、これは業者に一千万円も二千万円も供託させて寝かしておくということになるなら、それは営業用の回転資金に大きな支障を来しまするから、これはとても困難である。だからと言つて十万円や五万円というものを形式的に寝かしておいても、これは大蔵省のほうの資金繰りからみると、全般からみると、少しは金が集つて来るということになるかも知れないが、山一や日興証券が十万円を供託しておいたつてこれは殆んど問題にならんことだと私は思うのだ。こういうのを形式的に残しておいて、如何にも法律の上では形式が整つたように思いまするが、これは明治初年の昔の株式取引所、日露戦争当時の株式取引所であつたならば、仲買人であつたなら、このくらいの保証金でも威力を発揮するだろう。今の貨幣価値から行きましたならば、これは誠に有名無実な条文だと思うのですが、一体どちらを狙つて、いわゆる泡沫の業者を抑えるために、そういう意味で十万円、五万円を供託させるのか、それとも投資者保護のための十万円、五万円かということをはつきり一つしてもらいたいと思うのですが、ただ形式的に残しておくのだというような今の理財局長のお話だが……。
  77. 石田正

    政府委員石田正君) この四十一条は、先ほど二つの観点をお挙げになりまして、前者の意味であるか、後者の意味であるかということでございますが、これは趣旨は明らかに後者であります。問題はその額が妥当であるかどうかということであるとお考え願つて結構かと思います。
  78. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると、後者の意味ということになりましたならば、意味をなさん。これはどなたが考えてもこれなら投資者保護の意味を持つているかということになりますと、後者の意味ということになりましたならば、額をもう少し殖やすのが当り前だ、今の取引高からしましたつて……。それから又それを同様に二百万円の会社でも十万円、それから一億の会社でも十万円、こういうふうな取扱はこれはどうも不公平である。取扱の数量によつて変えるとか、それから業務の実態によつて供託金を変えるというなら、これは話はわかると思う。後者の意味を持つているということになつたら、この四十一条は意味をなさんと思う。これらが改正のときお考えにならなかつたのか、御検討にならなかつたのかどうか、一つお伺いしたいのですが、全然その考えは持つておられなかつたのですか。
  79. 石田正

    政府委員石田正君) これはいろいろな問題がございまして、大きな会社と小さな会社と同じにするのはおかしいではないか、大きな会社と小さな会社とを比べました場合に、二つ問題があろうかと思います。大きな会社というのは店舗の数が多いということ、それからその店舗における取引量が多い、こういう二点があると思う。この四十一条の規定によりますと店舗の数が多いものについては余計供託するのだということが出て来ると思う。併し取引量によつて差別を付くべきじやないかということはカバーできない、こういうことであります。  それから検討したかしないかという問題でございますが、それは先ほど申しました工合に、ともかくこういうことで現在やつて来ております。これを全部削除しちやつたほうがいいか、それとも上げたほうがいいかということになれば、上げることにつきましては、これはなかなか実情から申しましてそういかん点がある。それじや削除してしまうかということになりますと、これはいささか役をしているけれども、殆すど役をしていないから削除してしまおうというので、思い切るのがよいかということでありますが、この点につきましては、我々はもう少し考えてからやりたいという意味でこの規定を残しておいた次第でございます。
  80. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 これは法律の体裁を整えるだけの意味は持つているだろうとは思いますけれども、それ以外に大して意味はない。それはないよりましだというようにあなたのほうで言い切れば、たとえ一銭でも四項で行けば戻る。なければ一文も戻らんじやないかということになる。そういう極端論になりますけれども、それでは殆んど今の実情取引の実態からして意味をなさんということの意見もこれはおわかりになるだろうと思う。これは十分にこの点については研究されなければならん問題だと私は思います。もうそれは意見になりますから、この辺で委員長お話もございますが、一応午前中の質問は打切ることにいたします。
  81. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 暫時休憩いたします。    午後零時十九分休憩    —————・—————    午後二時十二分開会
  82. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 休憩前に引続きまして会議を開きます。  証券取引法の一部を改正する法律案及び証券投資信託法の一部を改正する法律案について質疑を行います。
  83. 小林政夫

    小林政夫君 証券業者取引手数料はどういうふうになつておりますか。
  84. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) いわゆる証券業者の顧客からの委託手数料に関する御質問と思うのです。この手数料は証券業者の間のいわば申合せ的な性質のものでございますが、これを更に高めまして、取引所の規定できめておるわけでございます。その取引所の規定がどうなつているかということになるわけでございますが、全国必ずしもこれが統一はとれておりません。東京証券取引所の例を申上げますと、証券の株式の一株の価格に対しての千分の八を乗じたもの、これを従価率と申しております。それに一株当り二円を加算したものというのが現在の委託手数料の基準になつております。それからこれはいわば株数を加味しておりませんが、株数が一定上のものにつきましては割引きを行なつておるわけでございます。株数が五百株以上のものにつきましては、一割から最高三割までの範囲内で軽減的な手数料を一応きめておるのか現状でございます。
  85. 小林政夫

    小林政夫君 それは五百株以上と五百株以下という二段階ですか。
  86. 飯田良一

    説明員(飯田良一君) 五百株未満、これが普通の料率でございまして、五百株を超えて二千四百株までに関しまして一割減、それから二千五百株から四千九百株までが二割減、五千株以上が三割減という料率で低減しております。
  87. 小林政夫

    小林政夫君 この取引所の規定による取扱い手数料というものに対しては、大蔵省としてはこの引下げ等について指示する権限があるのですか。
  88. 飯田良一

    説明員(飯田良一君) 現在この委託手数料率をきめておりますのは、証券取引所の内部規定であるところの受託契約準則というので規定いたしておるわけでございます。この受託契約準則の変更は大蔵大臣への届出を以て足りる。即ち自主的には取引所において決定するということになつております。従いまして、現行法においては法律の正面から政府側がこれに対しての指示を与える権限は持つておりません。従いまして事実問題としては、いわば勧奨するという程度のもので、その変更についての話合いが出ている程度でございます。
  89. 小林政夫

    小林政夫君 これは現行法の東京取引所の委託手数料、今飯田課長から述べられたのはそのようですが、最近これを引下げたとかいうが、引下げたとすればいつから引下げたということになつていますか。近頃のようにも聞いておるのだけれども。
  90. 飯田良一

    説明員(飯田良一君) 只今私が申上げましたのは現在の制度でございます。これが、正確には覚えておりませんが、今年の五月になつてから実施をいたしたものと思つております。それ以前にはこういう方法をとりませんので、株式の価格によりまして、初めからその手数料一株について幾らということで、基準を示しておつたのでございます。
  91. 小林政夫

    小林政夫君 この証券取引法昭和二十三年から実施されて以降のこの東京取引所及び大阪、できれば現在ある取引所の全部の委託手数料を経過的にわかるように一連した表を作つて資料として出してもらいたい。
  92. 飯田良一

    説明員(飯田良一君) 株取引所によりましてきめ方が非常にまちまちでございます。現在全国に九取引所ございますが、大体戦後の推移が、東京取引所の推移と、それから地方といたしまして大阪程度のもので代表して頂きますと非常に資料として作成しやすいと思います。或いは全国的に、勿論大体そのままの資料ですから作成は簡単でございますが、却つて厖大になりはしないかということも思つておりますが……。
  93. 小林政夫

    小林政夫君 九取引所ですから私も今東京、大阪二つぐらいにしようかと思つたのだけれども、まあ御面倒でしようが一応全部出して下さい。
  94. 飯田良一

    説明員(飯田良一君) かしこまりました。
  95. 小林政夫

    小林政夫君 五月から東京が引下げたということは、どういう理由で引下げたのですか。
  96. 飯田良一

    説明員(飯田良一君) 委託手数料の絶対額が高いのではないかということが、いわば輿論のようになつて来ておるのでございます。併しながらこの委託手数料は証券業者のいわば収入の大宗をなすとでも申しましようか、主要な財源となるべきものでありまして、一方経費の点は人件費通信費その他非常に嵩むわけでございまして、これとの睨み合せにおいて、而もなるべく当事者に対して負担を軽くするという意味で引下げて参らなければならないわけでございます。それで五月に改正しました以前の手数料というものは、その前制定されました当時、それから二年ばかりを確か経ておると思いますが、事情も大分変つておりますし、それから輿論的に今申上げましたような意味で高いから成べく引下げるという声もありますので、大蔵省といたしましても、証券取引所に対しまして引下げの研究を勧奨しておつたのでございます。たまたま去年の年末から今年の初頭にかけまして売買株も非常に殖えて参りまして、いわば業者の収入も相当増して参つたと思われるわけであります。ただ一方経費もそれに若干比例して増して来るということもあるのでありますが、ここでやはり引下げの第一歩を推進する時期ではないかというふうなことを考えまして、当局といたしましても具体的に引下げの案を早く練る計画ということを進めたわけでございます。それが五月に至りまして現在のような形で引下げられたわけでありますが、ただ何分にも先ほど申上げましたように、業者の収入の大宗をなす手数料の基準でございますので、急激にこれを引下げるということにいたすのはなかなか困難であろうと思いますし、現にその後の市場の状況も御承知のように若干不振になつて来ておるというふうなこともありまして、先ず以て漸進主義でこれを引下げるのが妥当ではないかというので、あまり大幅な引下げにはなつておりませんが、従来のものよりも一歩引下げへ前進したということになつておるわけであります。
  97. 小林政夫

    小林政夫君 都合では速記をとめてもいいが、この証券取引税が、当初政府提案よりも今回提案されておるものは安くなつておる。低くなつておる。そういうような点この前証券業者の代表を参考人としてここへ出頭を求め、この取引税が高いというような意見の陳述があつたので、私から取引税を下げろということならば前提として皆さん方のほうでも委託手数料について考える用意はないかということも言つたわけですが、そういう点と、今度政府提案による取引税が下つておるというような点との、多少交換条件的な勧奨或いは話合いというようなものは行わなかつたか。
  98. 飯田良一

    説明員(飯田良一君) 取引税の税率の問題と、それからこの委託手数料の引下げの問題と関連は何ら持たしておりません。
  99. 小林政夫

    小林政夫君 菊川委員も見えておりますし、あとは多少意見めいた発言になりますから、次回に只今要求した資料ができてから局長に質問したい。
  100. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 直接今度の改正の問題に当らぬかも知れないけど、関連事項としてちよつとお伺いしたいのですが、この証券取引と言いますか、いろいろ株式や何かが一般国民の輿論と言いますか、そういうものの関心が深くなつて、これを中心に普及して行くことは、非常に経済の発達にいいと思うのですけれども、それと同時にやはり一種の金融機関みたいなものですから政府で監督されて、若し間違いのあるようなことがあつては非常に遺憾だと思います。そこで政府ではこの取引所なり或いは取引員に対して、どういう点で御監督になつているか。いろいろな点があると思いますけれども、私のお伺いするのは、例えば銀行について銀行の実務を監督されるというような監査についての何かございましたら伺いたいと思います。
  101. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 証券業者の監督につきましては、業務の内容がまあ証券の売買の斡旋をするとこういうことでございますので、その委託者の趣旨通りに注文が行われて、そして公正な価格で以て取引ができるようにと、こういうことになりますようにいろいろ法律規定が設けてございまして、その法律規定が遵守されておるかどうか。  一例を申上げますと、例えば顧客が注文した注文に対して、速かに報告書を出して、顧客に、注文通りできているかどうか確認の機会を与えるとか、顧客の注文を呑んでしまつてもいけないというふうな、いろいろそういう規定がございます。そういつた規定規定通り実行されておるかどうかということは随時検査をいたしまして、監督をいたしておるわけでございます。その他証券業者の資産内容につきましては、これは支払い能力というものの維持のための規定がございまして、そういう規定に従つてその規定通りに資産内容が維持されておるかどうかということにつきまして、やはりこれも検査又は随時報告等も求めまして検査監督をいたしておるわけでございます。
  102. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 今の検査というものは、取引所そのものに対する検査ですか、或いはその中の業者に対するのですか。両方をおやりになるのですか。
  103. 飯田良一

    説明員(飯田良一君) 取引をいたしまする証券業者に対しまして監査をいたしておるわけでございます。なお、必要があれば取引所も検査をできるような規定になつております。
  104. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 その取引業者というのは、先ほどお伺いすると八百三十六あるというようなことを伺いましたけれども、それに対してどういう方針と言いますか、まあ年に幾回というかいくつぐらいを監査されるか。
  105. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 人員とか経費の関係もございますので、大体今のところではできるだけ年に一回ということを目標にして検査に努力しております。なお、いろいろその時々によりまして、特別の業者につきまして検査を必要とする場合につきましては、年に何回でも検査をやつておるわけでございますが、定例といたしましては大体一回……。
  106. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 そうしますと、原則としては八百三十六の取引業者を全部年に一回は少くとも実地の監査をおやりになるんですね。それは本省のほうと地方の財務局のほう、そういうところでおやりになるんですか。
  107. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 検査をやりますために本省並びに財務局に証券検査官と申します専門の職務の係官を置いておりまして、そのものが専任にやつております。
  108. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 私は業者のかたの自覚と政府の御指導によつて、全部が円満に発達して行けば非常に結構だと思いますけれども、菊川委員からもお話ございましたけれども、時々間違いが起る。これは止むを得ないことと思いますけれども、私は監査というものは誤りなきを期する意味が多いのだと思います。これは非常に突込んだ意見で出過ぎかもしれませんけれども、ただ全面的に八百三十六をおやりになる行き方よりか、或いは非常にいいところはむしろ実地の監査まではおやりにならんでも、その中のABCに分ければCクラスというか、これはよく監査したほうがいいというところに重点を置いておやりになるほうが、実際のためには機械的でなくていいのじやないか、或いはそういうふうに漸次おやりになつていることのお答えが先ほどのようなことかとも思いますけれども、そういう点についての、何か今後取引所を中心に一般の素人の人が利用するとすれば、業者の健全を期するという意味においても有効なやり方を御研究になつているか、又それに関連して業者に問題が起つてからでは困る。事後の処置じや弱いのでございますから、事前に、監査される前にいろいろお調べになつていると思うけれども、或いは地方の府県町の意見をお聞きになるとか、或いは商工会議所の意見をお聞きになるとか、これは秘密で、人の信用を害するようになつちやいけませんけれども、そういう意味でなしに、ただ政府が直接機械的に段々に監査されるだけでなしに、地方での空気も良くお調べになつて、平素そういうことをおやりになつていて、いわゆるCクラスというか、これはどうもいろいろな点が危険だぞというような点に指導的におやりになるほうが効果的じやないか。こんな気がいたしますから、いま一度何かお考えがありましたらお答え願いたいと思います。
  109. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 大体検査につきましては今お話のございましたような考え方によりましてやつておるわけでございまして、随時決めた様式によりまして報告書を取りまして、又協会、取引所につきましても調査をいたしまして、そういつた結果を総合いたしまして、大体検査を取りあえず必要とするもの、先に延ばしていいものという、いろいろその時の条件に応じまして区別をいたしまして選び出しまして、そうして検査を、その時の資料に基きまして必要と認めましたものにつきましては、すぐ実施するといつたようにいたしまして、そういつた業者につきましては度重ねて検査をいたすこともあるだろうと思いますし、余りすぐ必要のないといつたものにつきましては、その検査を先に延ばす、或いは検査の回数を減らすということがあるわけであります。そこはその時々の取引の状況なり、各店の状況をよく調べましてやつておるわけでございます。
  110. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 私はこの間何か名古屋に一つ事件があつたというのをよく知りませんですけれども、ああいう問題は監査とか何とかいうむずかしいものでなしに、これはどうも平素の状態から少し注意したほうがいいというような軽い意味で注意を払う。業者の信用を落すものじやいけませんけれども、何か見ていられるなら財務局なりが、起る前に与えられるほうが、業者にとつても非常にためになるのだし、いわんやそこで取引をした人にはためになりますから、何か弾力性のある監督を御指導を願うほうがいいんじやないか、非常にこれはむずかしい注文でありますけれども、起つたあとじや何とも仕様がありませんから、何かいろいろ御苦心になつている点はわかりますけれども、やつて頂けば非常にこれは今後いいんじやないかと思いましてお願いをするわけであります。そういうようなやり方もお考えになつておるのでございましようか。
  111. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) お話のようなやり方も取つておるのでございますが、いろいろ調べたことにもよりますし、又人からの風評等も参考にいたしまして、特に検査というやかましい形でなく、地元の財務局におきまして出かけて注意するといつたようなやり方もやつておるわけであります。なお今後十分そういつたような点は注意いたしたいと思います。
  112. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 もう少し各条章についてお伺いしたいと思います。四十九条に、有価証券の売買その他の取引その他の大蔵省令で定める取引とあるこの「その他の取引」というのはどういうものか。有価証券取引はよくわかりますが、その他の取引というのはどういうことを指しておりますか。
  113. 飯田良一

    説明員(飯田良一君) 売買その他の取引とあるのでありますが、その他の取引は顧客から売買取引の委託を受けること、これは厳密に言いますと売買取引そのものではないのであります。そういうものを含ませる趣旨でございます。
  114. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 今の御答弁だと委託ということは一つの大きな業務になることはわかつておりますが、その他の取引と表現してありますので、非常に何かほかにもあるように我々には感じられるのでありますが、これは委託業務だけのことですか。
  115. 飯田良一

    説明員(飯田良一君) 証券業定義のところにございますように、売買の媒介、取次、代理、その他いろいろと証券業の中味をなす行為を列挙してございますが、ケースとしては非常に稀でございますけれども、純粋の売買取引以外に、さような取引等が遂行されるわけでございますから、そういうものを含ませるのです。
  116. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そういたしますと、四十九条の信用供与は、一切の取引という意味でございますか。
  117. 飯田良一

    説明員(飯田良一君) 信用供与が行われる取引があるとすれば一切の取引ということになります。但し現実の問題といたしまして、信用供与をして行うといういわゆる信用取引でございますが、というのはお客から有価証券の売買について委託を受ける取引でございますが、現実の問題といたしましては、その受託をする行為、それに伴つて取引所において証券の売買をする行為というのが主体になつて参ります。
  118. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 この四十九条に「信用を供与して行う」と、こうあります以上、「その他の取引」をするよりも、今おつしやつたような点だけであつたならば、そういう表現にされたほうが私はいいのじやないかと思うのですが、如何にも何が何でもこの証券業者がいわゆる法律に定められた業務をやるにはすべて信用供与というのが伴うものかというように解釈できると思いますが、それでよろしうございますか。やろうと思えば……。
  119. 飯田良一

    説明員(飯田良一君) ちよつと御質問の趣旨がはつきりいたさない点もあるのでございますが、信用供与をして行う行為が売買の委託取引或いは売買そのもの以外にありとしますと、これに引つかけて参るのが、規制して参るのが正当と思うわけでございます。先ほど申上げましたように、現実の問題としては、取引所における売買の委託を受けて、それを執行する行為が主でございますので、それを押える目的で規定しておるのであります。
  120. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に、この前にもちよつとお尋ねしましたが、「百分の三十を下らない範囲において定める率を乗じた」、この百分の三十を下らない範囲で大蔵大臣がきめることになつておりますが、この改正案が通るということになりましたら、直ちにどういうふうにきめようというのですか。下らない範囲というのは、今の構想はどういうふうに考えていますか。実際は三十と、こういうふうにきめるのでしよう。
  121. 飯田良一

    説明員(飯田良一君) 本条の改正がありました場合に直ちに三十にきめるかどうかということは、これはなお研究しなければならん問題でございます。ただ私ども考えておりますのは、現在の信用供与率、新らしい条文によりますと預託金の率といいますか、或いは俗に証拠金率と申しますか、そのほうから端的にきめるわけでございますが、その幅が弾力性を持つていない、これに弾力性を持たせようという趣旨なのでございまして、現在の市場の状況、これが直ちに百分の三十を適用する状況かどうかということは、ちよつと別個の判断になろうかと思つておるのでございます。但し現在市場といたしましては相当売買高も少い時期でございますので、現在の四十五の証拠金率をもう少し下げることは必要があるのではないかというふうに観測はいたします。
  122. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 まあ事務当局としてはそういうふうな御答弁になると思うのですが、実際は、これはあと大蔵大臣にもお聞きしたいと思うのですが、こういうふうにきまつたらもう三十にしようとするものだと、こういうふうに一般に解釈されるし、これも三十を下らないというけれども、まさか三十五にするとか四十ということは、これはもう考えられない問題だと思うのです。どうですか。理財局長は三十くらいがいいというふうに、今の状態としては三十くらいが、これが通つたらいいという考えでこれを立案しているのか。
  123. 石田正

    政府委員石田正君) こういう提案を申上げます以上は、こういうことをやつてみて、そうしてまあ大体の今のところでは必要がないと思うけれども、こうしておこうという意味ではございません。最近の市況の状況から言いますると、私たちは百分の三十二が今の状況の下においてはいいのではないかと思つております。ただなかなか弾力性があるものでございますから、百分の三十にしました場合に、その百分の三十をずつと据置くかどうかという問題がありますが、これは要するに市況がどういうように推移するかということによりまして、昨年の暮から今年の初冬にかけたような状況がありますような場合におきましては、これは百分の三十を上げるということが、妥当ではないだろうか、かように考えております。
  124. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 大蔵大臣が範囲をきめることになりますと、百分の三十を下らない範囲ですから、極端なことを申して幾らでも上にはできるわけです。而も法律の三十の最低限度だけはきめておりますけれども、時の動きによつてこの信用供与の率を大臣が動かし得るということになつたら、法律にきめてあるのは、実は最低をきめてあるだけで、三十を下らない範囲、だから一番下をきめてあるだけでございますが、その時の政府におかれまして証券業者のほうからの運動によりましては、操作が奏効して、業者の運動が効を奏してこれを引下げた、又引上げたり操作できるというような余地があるわけですが、で本当に技術的にいろいろの角度から検討してみて、正しい判定ができるならば、それでよろしいのでございますけれども、人間のやることでございますから、どうしても感情も入りますし、例えば証券取引所に対しまして、この前の年末から年初にかけまして、或いは日銀総裁の声明書を発表してみたり、大蔵大臣が談話を発表したことがございました。それが直ちに翌日の市況にも影響して来るのですが、ましてやこの率を動かすということになつたら、私は多少の影響はすぐ出るだろうと思います。それらのことが大臣の判定によつてできるということになりますと、そこに問題を起す余地が生じて来るということは、政治がこれにすぐ影響力を持つということになつて参りまして、法律で、国会できめてこれを改正するならば、国会の法案として改正されるということになりますと、或る程度いいのですけれども、大臣の認定権だけでこれを動かし得るということになつたら、将来問題を残す余地があるのじやないか。それでなくても今日本の政府或いは政府機関とこれらの利害関係を伴う業者とのいろいろの関係が何か批判の対象になつておる時に、そういう種を播く結果になることを私たちは恐れるわけであります。この点について理財局長の考え方はそういう余地が絶対ないものと考えて、こういう幅を持たして提案の出し方をしておるものかどうか。これは法律でもつてその都度変えるようにしたら……。
  125. 石田正

    政府委員石田正君) 先ず第一に証券市場におきますところの株価の変動でございますが、これに対しましては、大蔵省がとつておりますところの基本的態度は、これは前回も申述べたかと思うのでありますが、その市場において自由に公正に価格が形成されるということを先ず第一義として考えるわけであります。従いまして、それはその市場に売りなり買いなりに出て来る人のボリユームによつて値段がきまつて来る、こういうことを先ず根本的に考えておるわけです。それに対して、少しこれは株価が上り過ぎたから何とかしてこれをチエツクしようとか、或いは少し下り過ぎておるから上げたほうがいいのじやないかというように、特殊の銘柄についてどうこうするとか何とかということは、それはやはり避けなければいけないのじやないか。なぜかと申しますならば、根本の趣旨がそういうことでございますし、それが高いとか安いとかということを役所が専断的に考えて、そうしてこの市場に入つて行くということは慎しまなければならない、かように根本的な問題として考えておるわけであります。併しながら普通の常識から見まして、全般的に言つて少しこれは乱調子である、少し上り過ぎておる、こういうことはどうも危いのではないだろうかということ、それから又逆に申しますならば、非常にこれは沈滞しているというような一般の常識から申しまして、大蔵省だけが判断するだけでなくて一般の常識から言いまして、そう判断する場合が現実の問題としてあり得ると思うのであります。そういう場合に、それじやもうそれつ放しにしておくか、こういう問題があるわけでございます。そこで信用供与率の問題でありますが、この信用供与率の問題につきましては、いわゆるすべてキヤツシユで以てやらなければいかんというのに対しまして、信用供与をして、そうして取引が認められるということでありまするならば、それだけボリユームが多くなつて来る、こういうことであります。それじやどのくらいの程度でこれはやつたらいいのかという問題でございますが、その問題におきまして、株から申しますると、清算取引というような工合に実物を伴わないところの取引が主体をなしておつたのでありますが、現在の建前といたしましては、やはり実物取引を主に変えて行かなければならない、それに対して或る程度のゆとりのある信用取引というようなものの余地を残して行こう、これが現状でございます。そこで現状から申しまして、現在のやつが一体いいかどうかという問題で、まあ少しゆとりを持つたらいいだろうというので、百分の三十ということをここに新らしく御審議を願つておるわけでございますが、少くとも三〇%の証拠金を以てやるようなことでなければ困るというようなのが大体の考え方の基調であります。  それで、今度は今の一番の御心配になつておる点といたしまして、行政官庁にこれを任せるのじやなくして、やはり一々法律規定したらどうであろうかということになるのでございますが、この点につきましては、法律規定するということになりますると、片一方の限度でなくして、上下限を合せてきめなければならんということになるわけであります。一本できめるということはなかなか実情に即しないだろうと思います。そこで上下限をきめるということになれば、それはその範囲内で動くということになると思います。さりながら証券界実情は、我々もすでに経験しているところでありますが、この短い間におきまして、去年の暮から今年の初めのような状況及びその後におけるところの状況というものは、我々は率直に申しまして心配をしておつたのでありますけれども、ああいうふうに急激に来るであろうとは思つていなかつたわけであります。で、証券界というのは、とかく短期的に大きな動きをするものでありまして、実情から申しまして、一々国会の御議決を経ましてやつておるのでは、もう議決が済む頃にははつきり違つた様相になつてしまう、こういうことが予想せられまするので、まあこういう形においてお願いをいたしておる次第でございます。  それからもう一つ、この信用供与の問題につきましては、大蔵省といたしましてはこの法律自体に書いてありますように、百分の三十、或いは逆に言えば百分の七十とかいうことを信用供与のほうで申しますが、そういうことにつきましても、これは問題はやはり金融機関におきまして資金供給をいたさなければできないという面があるのです。そこに一つの拠りどころがあるわけです。現在におきましては十五億ぐらいもやつておりますけれども、現行におきましてこれをどの程度にやるのかということが又一つの大きな問題であります。その両者を併せまして適宜に大きな意味で規制いたしておりますが、一々その価格が上り過ぎたとか、下り過ぎたとかいうことはいたしませんけれども、大体の枠といたしまして、少しこれは過ぎているのじやないかという場合には規制をする。それから今度規則をする方面はどちらかといいますと、信用供与率を引下げる、逆にいえば証拠金の率を上げるということが規制の効果が上ります。併し逆にそれを少し緩めたらそれと同じ程度に逆の意味においてうんと効果があるかということになると、これは率直に申しまして効果が上る場合もありますし、上らん場合もあるのじやないか、かように考えております。
  126. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると、あなたのほうでは、金融の面とそれから証拠金の面とで或る程度の行過ぎ、或いは非常に伸びないというような時には操作をするものであるという考え方でこれをお出しになつておるのですか。
  127. 石田正

    政府委員石田正君) その程度の規制はしなければいけないのじやないか、ただ黙つて証券市場というものは、それは売手と買手との間でやつております。その時にインチキをやつたり、ごまかしをやつたら取締る。併し本当に実物でやつておる、或いは信用取引の範囲内でやつておるということならば、もうほつたらかしておつていいのだということで、何もしないということはいけないのじやないか。かような程度のことだけはやるべきじやないか、かように考えておるわけであります。
  128. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 過去に清算取引の存在した時代におきまして、やはり政治がこういう問題に規制をするということがあつた事実はございますか。
  129. 石田正

    政府委員石田正君) その点は私過去と非常に違つておると思うのでございます。これは今金融のことを申しましたけれども、昔のいわゆる清算取引で申しますると、証拠金の問題もございません点もありますけれども、要するに相対の信用の問題なんです。殆んど百パーセント証拠金というものはないものでございますし、ですから、百パーセント売買の信用で行つてしまうわけです。こういう程度に残しておきますれば、少くともこの部面というものは金融統制が利くということを我々は考えておるわけでございますが、昔と今とはまるつきり違つて、昔はそのままやらしておくということでございまして、もう実物取引を中心にするということに変りました時から、思想がもう変つておるのだ、制度がもう変つておるのだ、かように御了承願いたいと思います。
  130. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 我々仄聞するところによりますと、もうこの法案が出ているからというので、実際の商取引は百分の三十でやられておるということが私らの調査、これはどうしてもそう権威ある調査ではございませんけれども、そういうことをあなたは御存じございませんか。実際的には百分の三十で行われておるということは……。
  131. 石田正

    政府委員石田正君) これは先ほどもちよつと申しましたが、東京なら日本証券金融という金融会社がございまして、これは大体資金の供給という大きな元になつております。これを通じてやつております分につきましては、我々もよく知つておりますけれども、そういうことはないと思います。併しそれ以外のもので、蔭でやつておりますところにつきましては、先に申上げましたように、検査その他をやつてみますればそれは確認できますけれども、そういうことが横行されておるということを検査の結果確かめてみる、これなら本当に確認されるわけですが、そこまでは行つておりません。
  132. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 実際にはそういう取引も行われている、公然の秘密として行われている、常識化されておるということさえ言われておるのです。そういう事実があるそうですが、それであなたのほうで検査をするとおつしやつても何かというと検査をやつて指導するとおつしやるのですが、今の機構であれだけの人員でもつて、あの複雑な取引所内の売買のあとを一々検査しようとしたつて、実際問題として不可能だ。それは抜打ち検査は多少はできるかも知れないけれども、実態を把握するのは極めて困難だと私は思うのでありますが、何か御質問しますと直ぐ検査をするといつて逃げられるけれども、なかなか検査というのは本当の状態はそうできていないのが事実じやないですか。
  133. 石田正

    政府委員石田正君) 検査のことを申されておりますが、私たちはその検査によりまして、はつきりつかむということ以外におきましては、そういう事実があるとかないとかということをはつきり申上げることを避けておるわけであります。それから検査の効力につきましては、私は率直に申しまして検査があるから安心な状態にあるというふうには絶対に思つておりません。これは非常に心配いたしております。それでできるだけ検査によつて弊害を少くする、それからして、又検査によつて更に一層の弊害が出るというものを、或る程度まで悪いことが行われておりますものを是正すると同時に、又是正しがたいというものにつきましては、取消その他の処分を行うことによりまして、更にその困つた事態が発生して行くのを防ぐという程度のことをやつて行くのが精一ぱいだ、こういうことを私は率直に思つております。併しながらその検査というものも、その程度のものではございますけれども、更に先ほど課長からも申しましたように、年一回は大体やることにいたしまして、そうしてできるだけそういうことの是正を極力して行きたい、かように思つております。
  134. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 まあその程度にしておいて、あと大蔵大臣に聞くことにいたします。
  135. 小林政夫

    小林政夫君 関連して、この前私もこの点はちよつと質問したのですけれども、今の菊川氏の意図とは逆の私は気持を持つておるわけです。というのは大蔵省、あなたがた今結局ここへ出席しておられるメンバーがこの信用供与率をきめるというようなことになるのですが、果して証券取引に対して適当な信用供与率、実勢とマツチしたきめ方ができるかどうかということです。そこでむしろ大蔵省、監督官庁のほうは、間接的な立場に下つて証券取引所で自主的にきめられるという方法を考えたほうがいいのじやないか、今の委託手数料等も受託契約準則によつて自主的にやらしておる、そういうことから行くとこの信用供与率も受託契約準則等に委ねて、それがどうも公益上下都合だという場合には変更を命じ得るというようなことで、直接大蔵省が信用供与率の最低限度をきめるというような、勿論きめるに当つては或いは業界の意見を非公式には徴されるかも知れません。併しながら専断だというようなふうにやろうと思えばできるわけです。そこまでの直接的な決定を大蔵省がやるというよりは、むしろ業界の自主性を尊重する意味において、一応自主的にやらして、いかん場合に大蔵省が出動する、こういう態勢のほうが望ましいのじやないか、こういう点についてはどうですか。
  136. 石田正

    政府委員石田正君) これは複雑な点がございまするので、御質問に対しまして答えておりました点がいろいろと誤解が起つておる点があるかと思いまするが、今のようなお話の点につきましては、私はこの四十九条の規定といたしましては、大蔵省としては伸縮性を持たせなければいけない、併し伸縮性を持たせるにしても率が三〇%を下るようなことがあつてはいけない、これが本旨でございます。そこで私は現在の状況から申しますれば、百分の三十くらいがいいと思つております。併しそれからあとどうするかという問題につきまして、これは小林先生の御指摘の点は、あとは委せたらいいのじやないかという御趣旨だと思います。現に私はこの信用供与が動いておる大部分のものは、東京で申しますれば日本証券金融がやつておるわけであります。日本証券金融が取引所その他と連絡をし、実情を見まして適当にやつておるわけであります。金額の点につきましても、必ずしもその金融が受けられる限度一ぱいでやつておるわけじやございません。我々はそれを立入つてやるつもりはございません。併しながら若し仮に取引所或いは日証金の見解と、それから大蔵省の見解が違つてつて、そうしてまあ少し語弊があるかも知れませんが、目に余るといいますか、或いは少し行過ぎるのじやないかというような場合におきましては、大蔵省がこの四十九条に基きまして、独自の判断に基いてやるべきだ、かような程度に考えておる次第でございます。
  137. 小林政夫

    小林政夫君 今の説明の通りならいいのですが、併しこの条文はそういうふうにはなつておらないのですね、百分の三十を下らない範囲において大蔵大臣が定めるのです。運用はそうすると言うのです。
  138. 石田正

    政府委員石田正君) これは何と申しますか、最大限と申しますか最小限と申しますか、限度一ぱいをここに規定したわけでございます。これは今のような事業、最近の株の取引高等を見ますれば限度一ぱいでよろしい、それから株がもう少し取引高が殖えて来て、仮に東京の近辺におきまして四百万とか五百万くらいしかできなかつたものが千百万になつたという場合に、すぐこれを変えるかどうかということにつきましては、そのときの実情を見て判断すべきである、私は今はこういうふうに考慮いたしまするけれども、ただ併しそういう場合におきまして、日証の取引所のやつておることにおいて、大体我々が見ておつてまあまあ適当であろうと思いますれば、何もいじくるという気持はございません。
  139. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そこで一つ飛躍してお伺いするのは、もうこのようにだんだんと、だんだんと言つては語弊がありますが、三〇%を下らない範囲で七〇%の信用供与を法律で定めるということになつたら、そこで問題になるのは、僕は清算取引の復活、これはいろいろ議論があるところだと思いますが、大蔵省のほうで、只今の当局のほうでは清算取引の復活については、これは日本における独特の方法だと言われておりますが、業界にも反対もあれば要望も強い、今業界のほうでの意見はどういうふうになつておるか。それからあなたのほうはこれに対してどう対処して行くつもりであるか、永久にこれはもう復活させないというつもりでいるのであるか。或いは時期が来たならばこれも考慮するという含みで残して検討をしておられる問題であるのか、この点を一つ。
  140. 石田正

    政府委員石田正君) これは清算取引論、それからまあ今我々がこの証券法に基いてやつておりますところのものとどちらの制度がいいのだという抽象論は私はやりましても切がないと思つております。ただ率直に申しまして、従来証券業者のかたがたが株屋と言われ、相場師と言われた背景の下において、そういう考え方がこの新らしい制度によつて切替えられておるべきはずでありますけれども、とかくまだ我々の眼から見ますとまだまだというような感じがいたします。そういうふうな下におきまして清算取引論というようなことをいたしますことは、これは好ましいことではない、私は大蔵省といたしましていわゆる清算取引というものを復活する意思はないというふうに見ておるのであります。又そうあるべきものではないかと考えております。
  141. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 業界のほうの要望はどうですか。
  142. 石田正

    政府委員石田正君) 私は業界といたしましても、業界もいろいろ考え方がございまして、一時はこの改正案を出すにつきましては、その点も問題の一つでございまして、内輪のことを申しますと、両方の意見はございましたが、併し我々といたしましてはそういうことを今論議すべきような工合にはまだ事態が来ておらんということを確信いたしまして、不肖私は全国の証券業者大会におきましても申上げたのであります。その後におきまして、業界のほうから私のところへは今までと違いましてこの問題を持つて来ておられませんので一応論議は終つたものと考えております。
  143. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうしますると、清算取引という制度の復活と申しますか、実施ということについては考えてもおらない、当分そういうものは実施しないのだ、こういう方針でございますか。
  144. 石田正

    政府委員石田正君) 私先ほど申しましたが、抽象論として議論すればきりがないと思うのです。問題はむしろ今の制度の下でどうしてよくするか、大蔵当局もできるだけ努力もいたしますし、それから業界のかたも御努力願つて、そうして国民の信用が受けられる証券業者であるというふうに、一般的に認識されるようになるかならんかというのが根本問題で、今の段階はそれに没頭すべきであつて、これで相当時間がかかるのだというふうに遺憾ながら考えておるのであつて、清算取引という問題はそのほうがむしろ大切だと考えておる次第であります。
  145. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 今の御答弁でありますと、まだまだ証券業者というものは余り率直に申しまして、今の時代に適合した、洗練された段階にまで来ておらないということは大蔵当局も認める、こういうことでありますね。
  146. 石田正

    政府委員石田正君) これはいろいろな制度についても同じことだと思いますけれども、制度本来の趣旨と、それがその通りに行われておるかどうかということにつきましては、なかなか理想と実際とが一致しないということがありがちのことでございます。特に証券界のことにつきましては、先ほど申しましたような工合に、従来の取引の制度と、それから今度の制度とはがらつと変つて来ておるわけです。而もやつておるかたというのは、全部新らしくスタートされたかたではないのであります。そこで、頭の切替えに実際問題といたしまして、やはり時間がかかるというようなことはやむを得ないではないだろうか、それが今の段階だと思うのでありまして、御尤もであります。そういう意味で私は申上げておるのでございますることを一つ御了承願いたいと思います。
  147. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 私も率直に申しまして、そこまで言いたくないと思つておりましたけれども、この法律に照らして本当に厳格に実施しましたならば、大抵は引つかかる、率直に言つて。こう私は思うのです。併し、あなたの今の御答弁で、一応そういうことも暗ににおわしておるからその辺にして置いて、併し、将来は方針として証券業者を育成して行くのだということでありますから、了解して次に進みます。  その次に、「前項の金銭は、大蔵省令で定めるところにより、有価証券を以て充てることができる。」この「大蔵省令で定めるところにより」というのは、どういうのを考えておられますか。
  148. 飯田良一

    説明員(飯田良一君) 「大蔵省令で定めるところにより」とありますのは、有価証券の時価を、まあ俗に言う証拠金としていくらに換算してみるかという問題でございます。それから有価証券と申しますのは、これは広い意味有価証券でありまして、株式等は勿論含むわけでありまして、ただそれなるが故に時価一ぱいに見るわけには行きませんので、現金との比較において、それより内輪でなければいけない、それを大蔵省令で定めて参る、かような趣旨でございます。
  149. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 株式等の場合には、時価の何掛というようなことも大蔵省令で定めるのですか。
  150. 飯田良一

    説明員(飯田良一君) それは当然大蔵省令規定することになります。
  151. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 どのくらいの掛になるか。
  152. 飯田良一

    説明員(飯田良一君) 大体これは一般の経済的な原則と申しますか、当然有価証券的なものの当面の時価との、何と言いますか、掛目と言いまするか、常識的にきまるものと思いますが、大体それを取入れまして、七〇%程度にきめるのが妥当ではないかというように考えております。
  153. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に五十一条、この五十一条の条文が非常に、特に改正の第一項がわかりにくい、これは問題を起す余地があるじやないか、こういうふうに思うのですが、「顧客から預託を受けた有価証券又はその計算において自己が占有する有価証券をその他の者の有価証券と混同して担保に供する場合」、だからして混同して担保に供することを認める、こういう前提に立つて、その場合は顧客から書面による同意を受けなければならない、こういうことになつておる。混同して担保に供するということをこれは認めておる。そういうことを平気で正直にやらせるということがこの五十一条の改正の精神ですか。
  154. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 五十一条の規定は、現行規定の条文の整理なんでございますが、今の混同して担保に供するという点につきましては、これはお客さんから預かつた株券なり、占有しておりまする株券について、それを担保に供し、又は貸付をするということが前提として認められておるものに限るわけでございまして、それが認められておりましても、それを他のお客さんの証券と混同して担保に供する場合については、特に書面による同意が要る、こういうふうにしてあるわけでございます。それは何故かと申しますると、銀行等に担保に預けました場合に、混同して担保に入つておりますると、債権者が、いわゆる代位弁済でございますか、銀行に対して、その証券業者に代つて債務を支払つて、そうして担保物を取出そうといたしましても、担保物不可分の原則によりまして、金額について支払いをいたしませんと、銀行から担保が出せなくなる、こういうことになります。そこで、混同して担保に供せられるということは、お客さんにとつてそうした不利な立場に立たされることになりますので、特に混同して担保に供する場合に限つて書面によつて同意を得るというふうに慎重な手続をとらせるようにしておるわけでございます。でありまするから、担保に供することそのことについては当然前提としてそれが許されておる場合に限られておるわけでございます。
  155. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 この担保に供するのを許されておるのを条件にやるというお話でございますが、ところが、それでは若干問題を起す余地がありまして、この間名古屋で起つたのもこれに大分ひつかかつておるらしいですね。お客さんから預託をしたということで、皆銀行へ担保に入れてしまつてある。これは、銀行へ担保に供するようなときには、そのお客の同意があつたものかどうかということを銀行にわかるようにしてやるのですか。それとも、ただ証券業者は同意書を自分で保管しておればいいか。そうすると、いわゆる銀行あたりが、担保に取つて、取つてみたところが、それは実際は同意書を取つていなかつたというような事故が起きた場合には、一体処理をどうするか。その点を一つお伺いしたい。
  156. 石田正

    政府委員石田正君) 今の資料の中で、五十一条をどうしてこういう文章を変えたか、その変え方がおかしいじやないか、こういうような御趣旨だろうと思います。これは成るほど残つた文章だけから見ると、逆になつたような形になりまするが、我々は、こういうお客から預かつた有価証券を担保に金を借りるとか、或いは自分のものと混ぜて金を借りる、或いは貸付に使つてしまうということは好ましくないことと思つております。その点につきましての認識は変つておらんということを先ず申上げて置きたいと思います。  先ず、前の条文で行きますると、「政令で定めるところに違反して」というようなことがありまして、何か大蔵省がこういう場合はいかんのだというような印象も与えておりますので、そんなものはなくしてしまつて、とにかくそういうことは余り好ましくないことだ、但し、書面による同意があれば、それまで禁止するという趣旨ではないのだ、こういう考え方でこの新らしい五十一条はできておるということを御了承願いたいと思います。  それから、第二の点で、いわゆる銀行に担保を持つて行つたときには、同意書をそれでは持つて行かせるのかどうかという問題でございますが、それは銀行のほうといたしまして、証券会社が持つて参りました場合に、それは一体お前さんのものであるか、それともほかの人のものであるかということを、動産としてなかなか調べるということは、実際問題として困難だと思います。私たちの趣旨というのは、例えば、私たちが行つて見ました場合に、これはお客さんが同意したものだとか何とかいうようなことを言つて、あやふやになるようなことが間々起り得るのであります。そういうことはこれははつきりしなければいけないことでございまして、その点は証券業者としてはお客さんのものを担保にするというような場合に、ちやんとした書類をとつて置くことによつて、我々がこれを法律違反をやつたかどうかをすぐ認定し得るようにいたしたい、かように考えております。
  157. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうしますと、これはこの法律の目的である投資者保護というよりも、どちらかと言いますると、あなたのほうの検査の場合にはこれでいいんだが、ところが、担保に持つて行くときに、一体同意があつたのかなかつたのかというのは、あなたのほうの検査を受けていて初めて同意があつたかなかつたかということがわかるのだが、預託したものから考えてみると、これでどんどん担保に入れ得ることになつて、現に入れられちやつて返さんということが起つておる。而もそれは同意していなかつたけれども入れられちやつておる。あなたのほうで調べる場合には、同意書があるから同意しているかいないかということがわかる。けれども、投資者保護という面からすれば、これを担保に預かる者が同意書を確認するとか何とかいう規定を設けられるのが当り前じやないか。投資者保護というのが法律の建前だとするならば。検査には便利だけれども、投資者保護にはなつていないじやないか。こういうふうに考えられるのですが、どうですか。
  158. 石田正

    政府委員石田正君) 只今のお話は御尤もな点があると思います。その範囲内におきましては。併しながら、それを徹底しますためには、証券業者というものに預り証券とか何とかいうことをさせないというのが一番徹底しておるだろうと思います。ところが、実際問題といたしましては、そうまで行かないというのが実情だと思います。そうしますと、預かつたということは、これはそこまでは認めなければいけない。それからして、我々の趣旨は、預かつたものを黙つて担保に使用してはいけない、こういうことでございます。そのときに、それでは同意書があつてもいけないのか、そこが問題でございます。私どものほうでは、してはいけないというのではない。この条文を読んでみれば、同意書さえあればどんどんやつてよろしいのだということを勧奨する趣旨ではない。
  159. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そういうふうに見える。
  160. 石田正

    政府委員石田正君) そういう趣旨ではないのでありまして、これは我々のほうとしましては、預けるまではいたし方ない。担保に供するには同意書がなければいけないのだ、こういう意味でございます。
  161. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 私から言わせるならば、預かることは、当然預かる、これは当然預かつていいと思いますが、担保に供する、同意書があれば担保に供せられてもいいというふうにこれでははつきり読める。そうすると、同意書をとつて担保に供する、そうすると、あなたが先ほど答弁されておるように、まだ洗練が十分されていない、こういう前提に立つてこういう条項を置いておくことは危険じやないか。むしろそんなものは担保に供してはいけない。他人名義のもの、預かつたものを担保に供するということは常識はずれだと思う。たとえ同意書がついておろうと。而もその同意するかしないかということは、どちらかと言うと、現在証券投資というものは、大体証券業そのものを利用する人は素人の人です。そんな人にいい加減にごまかして判を押さしてしまつて、同意書をとつてある、こういうふうに言い逃れする余地ができる。これはちよつと納得できんと思うですがな。この前の事故から考えて、私は実際問題から申上げておるんですがね。
  162. 石田正

    政府委員石田正君) これは私実際問題といたしまして、預けます場合に、保護預かりをしてほしい、預かつて、ただ保護預かりする、こういう場合におきましては、書面があろうとなかろうと、してはいけないのです。ところが、お客さんのほうでは、これを預けて置くから、これをうまく使つて金利も稼いでほしい、場合によつては書換もやつてくれ、貸付もやつて下さいということで頼むお客さんが相当にある。そういうものまでいけないということを言つてしまうかどうか、そういう問題でありまして、そういうものは、そういうことを頼むにはちやんと紙に書いて頼んで下さい、こういうふうに言つておるわけであります。
  163. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 どうもはつきりしないのですが、まあいいです。その次に五十五条について。これも非常に文章の上から読みますると、誠にうまくできておるのでありますが、例えば、「財産経理の状況に照らし、過当な数量の売買取引、不健全な方法による売買、金銭若しくは有価証券の借入をなし若しくは過当な数量の有価証券の借入をなし若しくは預託を受け」と、ここで、過当な不健全なというのだが、一体過当な数量というのは、どの程度にあなたのほうは考えておられるか。それから不健全な方法による、これなんかは判定が非常にむずかしい。こういう表現は文章としては成るほどいいのですけれども、運用の面になりますると、業者のほうでは、これは過当ではない、或いは不健全ではないと、こう言う。あなたのほうから判定するならば、過当だ、不健全だと、このくらい対立する文章はないと私は思う。法律としては、これはちよつと文章的には成立つかも知れないけれども、運用の面において問題を生ずる余地が極めて多い条項である。かように考えるのでありますが、理財局長どうですか。これは、一遍さあとなつたら、不健全なる方法というのは、どういうのが不健全だと、具体的に一遍示して下さい。過当な数量というのはどういうことであるか。あなたのほうで基準でもございますか。
  164. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) これは、証券業者がよく営業がまずく行つておりまする場合に、金繰りに詰まるといつたような場合よく例があるのでございまするが、非常に高い利子を払うからということで株を集めて廻る、そうして運用預りというようなことをよく申しますが、高い利子を払つて、そうして株を集めて、その株を自分が担保に入れて、金を借りて、そうして自分の思惑とするというようなことになるわけでございますが、そういうふうに、非常に高利の、普通の金利でなく、高い金利で以て株を集めるというような場合が最も多い場合でありまして、そういつた場合には適用されるかと思いますが、過当の数量と申しますのは、これはその会社の営業の状態が振わなくて、売買量も少い、それから従つて財産内容もよくない、人の株を預つて、それを流用して行くなり、他に貸付けをいたしましても、その株を返してくれといわれたときに、返せるかどうかということにつきまして、非常にそういつた場合は、不安があるわけでございます。そういつた場合につきまして、財産経理の状況、営業の状態というものをよく個々につきまして調べまして、そこで判定を下す、こういうふうに考えておるわけでございます。
  165. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 五十五条の二は、改正するならばもう少しはつきり明確にして置かんと、あなたのほうが証券業者を監督する上においては非常に便利な文句であります。はつきり申しまして。これは過当だ、これは不健全な方法だというのだが、ただそんな抽象的な表現でされておつて、五十二条違反ということで処分をされるというふうに臨まれるものでありますから、業者に対しての圧力を加える場合、圧力と言うと誤弊がありますが、牽制するには非常に便利でありますけれども、一方業者から申すならば、こういう条文だけで取締られるということは非常に漠として、どれが過当であり、どれが不健全であるか、自分は過当でない、不健全でないと思つてつても、ひつかけようと思えばひつかけられる。そんな法律で、而もこれに違反した場合には処分を受けなければならない。ちよつとこういうような裁きということになりますると、非常に、大蔵省から処分を受けたけれども、本人はそれではなかなか納得できないものが必ず生じて来ると思うのでありますが、今日まで、この五十五条の二は、前は「不健全な方法による売買若しくは借入をなし」ということになつておりますが、不健全な方法による今の借入のことはあなたが御説明になりまして、高い利子を払つて借入れるということになるが、不健全な方法による売買というのは、一体どういうことですか。
  166. 森下政一

    ○森下政一君 ちよつと関連して聞きたい。私、只今菊川君の指摘されたところをお聞きしたいと思つておつたのですが、今度の改正ですね。一番大蔵省として重点を置いておられる、又我々としても重点を置くというのは、投資者の保護だと思うのですね。それで、只今菊川君が指摘された条文を見ると、到るところに過当な数量ということがある。それから、かねて承わりました説明によつても、資力の薄弱な証券業者が顧客から過当な数量の有価証券を借入れ、或いは預託を受けているという場合に、それを顧客に返還することを命ずるというような処置をとる、やつぱりこれは投資者を保護しようという建前に出ているだろうと思う。その過当なということが如何にも抽象的な言葉であるというふうにも考えられる。それから、一体証券業界のようなところで、どうも今日の状況から判断すると、過当だと思つてつても、明日忽ち儲けをして必ずしも過当でないというふうなめまぐるしい変化が起るのじやないかと思うのだが、一体そんなときに、これが過当である、これが過当でないというのは、日々の変化、そういつたことを大蔵省はどうして一体それをキヤツチするのか。極めて私はこれは一つの作文であつて、実際から言うと、こういう条文を入れておいて、たまたまあれはどうも資力が薄弱で近頃思わしくないらしいじやないかというのがあつて、一応検査の必要があるというようなものについて、検査をして、その実情から照らして過当だと思えるようなものに対して命令をして、お客さんに返すとか何とかという措置をとり得るような予備に作つた条文だけであつて、実際の事情は、これから果して投資者が本当に保護されることになるのかどうかということに一つの疑惑を持つのですが、その点併せて御答弁願いたいと思います。
  167. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 只今の菊川先生の最初の御質問でございますが、不健全な方法による売買と申しますのは、従来の例で申上げますと、例えば信用取引をいたしまする場合に、株をお客さんが買うに対して自分が売りまして、そうして代金は普通でありますと証券金融会社から一切借りて来て売るというのが普通でありますが、そうでなく単に自分がその代金の貸付をする、丁度相対で株の売り買いと反対に貸借を起して、そこでその未決済のままに持越しをする、こういうことによりまして、差金決済をするといつたことになりますと、現物売買を脱しました一種の差金取引的なことが行われるのでございますけれども、そういつたような方法によりまして、多く常習として売買をするというようなことは、これは相場の変動……、お客さんに対していわゆるお客さんを食うといいますか、お客さんに向つて勝負をするということになります。又業者からの経営から見ても、一朝相場の変動がありまして損をこうむるということになりますと、業者の思惑もあります。そういつたような方法によりまする不健全な方法による売買といつたようなことに充てまして、こういう規定を働かしました実例はございます。そういつたような極端な場合につきましては、もう証券界といたしまして、これは全く不健全な方法だということが或る程度常識的に証券界の中におきまして特にはつきりしておるわけでございまして、そういうことに対して法律を働かすということにつきましては、大体において納得せられるということだと思うのでございます。今度の借入の場合の不健全なるかどうかという、過当かどうかということにつきましても、大体一つの基準、そういつた証券界として見ての基準というものはあるわけでございますので、成るほどあんな店がこんなに借りておるのだ、預かつてもらつておるといつたような場合が往々にしてあるわけでございます。そういつたものにつきまして、この規定を働かす、こういうふうに考えておるわけでございます。それから今の森下先生の御質問の点でございまするが、成るほど確かにこの数の多い業者でございまするから、一々について、その都度そその都度借りておる証券が多いか少いかといつたようなことはわからないわけでございまして、結局はそういつた調査とか検査等の機会におきまして、それを調べてみまして結果がわかる、その際におきまして、これをどういう処置をするかといつた場合に、法律に違反しなければ行政処分ということは行えないわけでございます。併し法律に違友しないから法律処分はせずに、そのままずつと営業していいかと申しますと、非常に危いと私どもは思うことが多いのでございます。で早くこういつたことは事前に株を返すなり、その後同じようなことをしないように措置をしなければならん。成るほど営業停止するまでは止むを得ないけれども、又営業停止することは却つて投資者のためによくないけれども、併し予防的措置はどうしてもとらなければならんということは、過去において相当あつたわけでございます。そうしてそのものがそのまま放つておいた結果、結当大きな穴をあけてしまうといつたことがあるわけでございます。そういつた場合につきまして、現在あと審問といつたようなことによりまして事態を明らかにして罰則を適用する、こういうことになるわけでございます。
  168. 森下政一

    ○森下政一君 そこで誰が調べてみても、誰が判断しても常識的に見て、これは過当だという場合もあるでしようから、そこでどうなんですか。比較的真剣な、まじめな営業をやつておるような業者である場合に、あなたのほうではこれは過当であると言うし、そうではありませんと、意見の対立を来すようなことはありませんか。
  169. 石田正

    政府委員石田正君) これは私はよく実情をはつきり申上げたほうがいいかと思うのでありますが、いろいろ聞込み等によりまして、大体見当を付けているという場合もございますし、それを検査をいたしまして、そうしてその中身を本当によく洗いまして、係のかたはよく判断しなければならん、そうした場合にはいろいろな観点からいつて、一番問題になりますのは過当な数量の取引ということになると思いますが、過当な数量の取引であるかどうかということにつきましても、役所といたしましては、結局これは危いという判断が先ず出るわけでございます。そうしました場合にすぐ処分するかといいますと、決してそうしないのであります。これこれの問題についてお越し願つて話を聞かしてもらいたいということで審問書というものを作ります。そうして場所を示しまして向うに届けるわけでございます。そこで向うのかたが見て来まして、そこでいろいろ話をするというわけであります。従来の例で申しますると、いろいろな問題につきまして、先ほど来問題になりましたが、審問ということにつきましては、大体こちらのほうで、どうもこれは不適当だと思う、或いは法令違反があつたと思うというのに対しまして、向うのかたが、こちらは相当資料等は固めてからいたしますから、その通りであるというのみならず、それに対してその通りであるということを書いて判を捺して来るわけであります。そういう場合にはそのまま処分するわけであります。中にはそうでない、我々とは考え方が違うのだというような考えから、殊に内容なんかの悪い場合につきましても、これこれこういうふうにしてうまくやつて行くから心配ないのだというようなことを言われるかたがございます。そういうかたは明白に書いて出して頂くわけでございます。そうしてその結果に基きまして、先方で言つていることが誠に尤もであるという場合には、我々の考え方は当然変えるべきである。併し言つているほうがどうも筋が通らん、大体誰が見ても筋が通らんじやないかという場合には、我々の考えに従つて処分する、こういうことをやつておるわけであります。
  170. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そこで私は今の説明を聞いておると、ちよつと私らのこの法律解釈ちよつと違うように思うのですが、例えば不健全なる売買というのは、今余り新聞でもやかましく言われませんが、藤綱一派が渋沢倉庫の乗つ取り、或いは白木屋事件というふうに盛んにございましたな、年末から年始にかけまして。ああいうのを称して不健全な方法による売買というふうに私は考えるのですが、あなたらはあれは健全なる方法による売買と考えておられるのですか、そこまで一つ発表して頂きたいと思います。ああいうのは投資者保護でも何でもない。むしろ自分で買取つておいて、そうして今度会社に乗り込んで行つて、おいどうだ、一つこれ買取らんかというような行為に出る、或いは又おれを社長にせよ、或いは取締役に二人ばかりおれの子分を入れろという強要に出た。渋沢はこれを刎ねつけて、増資をやつてこれに対抗したと新聞に載つておりましたが、あの当時渋沢倉庫の労働組合のほうからも僕らのほうに内容を詳しく述べて陳情に来ました。こういうのをあなたら五十五条違反というふうにお考えにならんかどうか。
  171. 石田正

    政府委員石田正君) 今御指摘のような問題が、不健全な方法による売買にならんかどうかというお尋ねでありますが、この点につきましては第一にお名前をお挙げになりましたような人が売つたり買つたりする、そのことが健全であるか、不健全であるか、こういう問題でございます。その問題と、それからしてここでやつておりますところのものは、そういう人たちの売買について証券業者がそれを、取次ぐという行為、それがいわゆる不健全ではないか、こういう問題になるわけです。
  172. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そういうことです。
  173. 石田正

    政府委員石田正君) そこでまあこれは非常にむずかしい問題でございますが、要するに金を払わなくなつてしまう、金を持つて来ずにやつておる、売つたり買つたりしておつても金が取れなくなるというようなことを平気で業者がそれに応じておる、それが不健全と私は思います。併しながら現場で現なまを現に持つて来られて、それがどこのあれか知らんけれどもお金を持つて来て、そうしてそれでこれを買つてほしいといつた場合に、それを称して不健全な取引と言われるか、それに応じることは。これは私は相当議論があるところであろうと思うのでございます。まあ併し私たちといたしましては、余りにもそういうことでとかく世間の問題になりますことにつきましては、私どもはやめろとか何とかいうことを証券業者には言いませんけれども、証券業者としてよくその点は判断してやつてもらいたい、ということは、これはやはり我々として言わなければならないところじやないだろうかと思つております。
  174. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうじやないので、これはまあ健全な投資者保護というのだが、それはもう投資の範囲を逸脱しまして、会社の乗つ取り、必ず買つておいてはあとで脅迫に行つておるということになつておる。而もそれをF一派とよく言われておる連中に動かされた機関店が堂々とお先棒を担いでいる、五つも六つもの機関店が動いている、その買占事件ばかりに動いているということがあつても、これはあの当時ああいう問題を審問をされましたか、そうしてあとで乗り込んで行つた。それは審問にはかけなくても、あの程度では止むを得ないであろうというふうにお考えになつておるか。そのあと仕末等も、聞くところによりますと、それによつて相当怪我人が出ておるのだというようなことも我々聞いておるわけでありますが、そういう点について審問をされたこともあるのでしようか、どうでしようか。あれは一つの大きな問題を提供したと思うのですが、あの当時。
  175. 石田正

    政府委員石田正君) この五十五条の二というのは証券業者が資力がなくなつてしまうといいますか、支払い能力がなくなるというようなことで、それでお客に迷惑をかける、そういうことがあつてはならないというのが趣旨でございます。従いましてお話のようなことでお客の中の或る人が何と申しますか、金も持たずにやつて来て乗つ取ろうということがありますれば、これはその業者に累が及ぶわけでございますから、これはここに言うところの不健全な取引ということになるわけなんであります。併しお金をちやんと持つて来てやつておるということでありますれば、業者のほうから言えば不健全な取引というのは如何かと思います。
  176. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると証拠金なり、或いは現金代価をきちつと持つて来ておるのであるならば、どういうような取引を、ああいうような乗つ取り事件とか買占事件等も不健全、ここでいう不健全とは解釈しない、こういうようなあなたの御説明ですな。
  177. 石田正

    政府委員石田正君) これは何と申しますか、産業界なり経済界なり、一般の会社経営とかいう点から判断いたしまして、それから証券取引法の中に特に証券業者というものの資力という点に気を付けまするところの不健全というものは、これは必ずしも同じでない場合があり得るというふうに、かように思つております。
  178. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうしますと、先ほどあなたの御説明にもある通りに、証券会社は立派な銀行の信用、今まあ銀行は一応信用あるかないかは別として、信用がどのくらいまでおかれてあつて、将来はあの水準まで高めようというのがあなたの理想的な目標だと先ほどの御答弁から見ておつた、又そうなければならんと思います。そういう矢先にそんな手先になつてつておることは、やはり五十五条の不健全になるのじやないかと思つて質問したのです。  それではもう一点、一つのケースを挙げて御質問申上げたいと思うのですが、それは過般不渡手形というような問題がございましたですね。これは或る会社が不渡手形ができたからというので、それ叩けというので、大会社、大証券が先に立つてこの会社の株を叩いております。これなんか、これはまあ私らは新聞記事なのでよくわかりませんが、叩いておつた。これなんかも常識的に言うならば、今のあなたの御説明によるならば、何も金を出して売つておる、或いは持つておるのを全部売つておるのだから何も不健全だと言わない、これも常識的な取引だ、こういうのですか。
  179. 石田正

    政府委員石田正君) 結論から申しますと、私はそれは止むを得ないのじやないかと思つております。要するに何と申しますか、この株なりその他の取引を、売買を自分でやられますかたは根本的に申しまして、要するにこういうことが日本経済のためにいいことであるから、従つてこれを長い間持つておる、いわゆる長期投資にいたして持つていようという意味でやつて下さるかたと、それからこれを持つておつたら値が上つて儲かる、だから儲かつたら売つて次のやつに買い換えるのだ、こういう工合で株の買い換えをやつておるのと、大きく申して二つあると思うのであります。我々のほうで申しますと、前段に申上げました方向に進みますのは望ましいと思いますけれども、併しながら現実はそこまで行つていない、そうしますと後段で申しましたものが大がかりに起つて来たり、或いは証券会社がそれと同じようなことをやる、こういうことがあり得るわけであります。それを証券会社がやつてはいけないということについては、これは全部今やめてしまうことは、まだその段階に来ていない。私は個人的な考え方でありますけれども、有価証券会社という型はこれからはだんだんいわゆるみずからの自己売買というのが主で、手数料というものを中心にして、そうして手数料だけで経営が成立つように持つて行きたいと思つているが、それではやつて行けないというのが実情であります。従いまして何と申しますか、売買だけ、而も空売買だけでやつて来たほうがだんだんと役所あたりが考えておる方向に向つておるような今段階なのでありまして、従いまして、大きな目から見ましたら、いろいろ議論があろうと思いますが、我々は証券業協会なり証券取引所が、実際の売買の実情というものを無視して考えて行かなければならないことが止むを得ないのじやないかと、かように考えております。
  180. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 よくわかりましたが、あなたの趣旨は投資を主としてやつて行くのは理想であるけれども、多少投機的な面が動くのは止むを得ないものとして是認して行くのだ、こういうふうに解釈していいですな。  それで次五十六条のほうに参りまして、外務員についてでございますが、外務員の届出は成るほどここに規定してございますが、届出をして正式に外務員である、こういう者に対しましては、大蔵省として何らかの免状と言いますか、鑑札と言いますか、そういうのは全然考えておられなかつたのですか、ただ登記してあなたのほうの名簿に載つておるだけですか、法文から解釈して。
  181. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) この証券取引法扱いといたしましては、外務員の届出をされまして、その店で使つております外務員はどういう者かということを役所の名簿の上において明らかにさせている。そうして監督の対象にしておる、こういうことでございますが、一方証券業協会におきまして、証券業協会の規則を以て外務員につきまして登録制度というものを採つております。そこで登録をされましたものにつきましては、身分の証明書を出しておりまして、その証明書を営業の際に携帯するようにしておりますし、又身元保証金を積ませるとか、その他外務員になります場合は、いろいろ試験とかその他の選考を経た者をとる、事故がありますとそれを排除するといつたような監督を証券業協会をしてやらせておるわけでございます。
  182. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 自主的にそれらの統制は、統制というか外務員の質的向上とか統制等については、証券業協会においてやらせておる、そうすると協会のほうではやはり免状と言いますか、信任状というようなものはちやんと発行して持たしておるようになつているのですか。間々外務員が悪いことをしたという事実がよく今までございましたですね。これはまあ法律ではきめてないけれども、あなたのほうで業界に対して自主的にこれが規正をやらしている、こういうことですか。
  183. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) さようでございまして、私どものほうで自主的にやるように指導させまして、現に免状等も出しております。写真を貼付いたしましたものを持つてやるようにしておるのです。
  184. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 わかりました。  その次に、まあ細かいことは抜きにいたしまして、八十六条に「証券取引所は、営利の目的を以て業務を営んではならない。」こういうことになつているのですが、これはそうすると営利でなければ慈善事業か或いは公共事業、こういうことになると思うのでありますが、一体何が目的になるのですか。営利の目的でないということになれば、この目的は何になるか。これはもう国家に奉仕する、こういう目的ですか。経済界の発展に寄与するという目的になるのですか。
  185. 飯田良一

    説明員(飯田良一君) 証券取引所は、個々の証券業者が会員になりまして証券取引所の開設する市場において売買取引をさせる。その目的は、国民経済に寄与するようにその売買取引が公正に円滑に行われるということを目的とするわけであつて証券業者が会員となりますから、従つて証券取引所に出資をいたします。併しその出資なるものは全く配当を取るための目的でも何でもない、いわば証券取引所自体の基本財産を維持するに足るという程度のものでございます。そこに利益を得て分配するという株式会社組織と全く異なる一つの目的、従つて営利目的とは申せないわけでございます。今菊川委員の御指摘になりましたように、むしろ国民経済又は投資者のために公正な証券の流通の機会を与えるというか、施設を提供するということ自体が目的であるという趣旨を現わしたものでございます。
  186. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 昔ありました取引所というのは、非常にこれは営利目的であつたように思うのですが、というのは、その取引所の株式そのものが非常な今日で言う仕手株の花形であつて、東新と言いますか、東京株式取引所の新株のごときは非常な花形株になつていたのですが、ああいう仕手株と今日ではまるで性格が変つて会員組織になつている。今度は会員に関する事項について八十八条にきめられているのですが、会員というのは非常にオープンなものでありまして誰でも会員になれるものですか。或いは八十八条の信認金とか会員に関する事項を定めて認可をとることになつているわけでありますが、あなたのほうの指導方針としては、これらはできるだけ希望のある者は資格さえ揃つたならばここへ入れてやろう、こういう考えで指導させているのか、今の既成会員で成るべく枠を広めないような方法をとつているのか。これはなぜ申上げるかというと、大蔵省のほうの同じ酒の業界ですが、酒の販売制度にいたしましても、法律を読んでみますると誰でもなれるようになつている。ところがこれを税務署のほうへ申請しますとなかなかこれはなれんのですよ。法律を読んでみると明日にでも酒屋さんになれるようだが、これはいよいよなつてみようとするとなかなかやれないことになつているのだが、証券業者も、法律を読んでみると明日でも我々でも株式会社を組織してちやんとやれば会員にでもなれるようになつているのだが、実際にはこれはなかなか入り込めんような、酒の製造、販売業者と同じような考えでこの法律の運営をやつておられるのか、実際の面を一つお話しを願いたいと思います。
  187. 飯田良一

    説明員(飯田良一君) 証券取引所の会員になるのには勿論証券業者に限るわけでございます。ただ、御質問の出ましたように、証券業者はいわば登録制度でございますので、なりたいと思つて特定の要件を具備すればなれるから、従つてその証券業者が会員になることもいわば自由になつておるのかどうかというお尋ねかと存ずるのでございます。証券取引所におきましてはその定款におきまして会員に関する事項を定めることになつておりまして、各取引所の会員の定員と申しますか限度をきめておるのでございます。従いましてその定員以上に勝手に会員になるということはできないのでありますので、事実上その点において一定の枠があるということになるのが必定でございます。
  188. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると昔と同じように、やはり会員である人の株というか権利を買つて、そして会員になるというのが今でも慣習になつているのでございますか。
  189. 飯田良一

    説明員(飯田良一君) 公式な意味でそういう株或いは権利というものが存在するわけでもありませんが、実際問題としまして定数が限られておる関係から会員になるのは一つの特権的な様相を帯びているというふうなことから、いわばその権利を買うというふうな事態が起つておるようでございます。
  190. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そこに、折角この法律を読んで見ると私が先ほど申上げましたように誰でもできるようになつておるが、さあいよいよとなつて来ると、こういうところで締つておるんだが、それらの定員数というようなものはもう少し幅を持たして、これに権利金が付くというようなことでは昔の株式取引所の行き方とやはりそこに同じようなものがあるような私気がするのであります。これらについてもつと進歩した改正法を考える余地はなかつたか、私がなぜ定員数について言うかというと、いつでも空席が五つ六つあつて申請すれば大体なれるようになつておればいいのですが、これでは昔の通りで、法律表面から読んだらすぐなれるようですが、質問してみるとそういうことになり、実際やろうとすると行詰るわけであります。私個人が明日やるつもりでないから、そんなものはどうでもいいのですが、これは個人の問題でなく、国民一般がそういう希望を持つておるこの法律を読んでやろうと思えば明日でも登録してできるようになつておる。ところが会員でなければ商売ができない。会員となろうとするのにはちやんと権利を買わなければならん、こういうことになつておる。これらはもう少し拡張する方法をこの改正案で考える余地はなかつたか。今の会員になるのにはどのくらいの権利金が要るのですか、あなたのほうでは当然調査されておると思うが、会員の権利金というものは認めておるのですか、この法律を読んだのでは会員の権利命というものはないのですが。
  191. 飯田良一

    説明員(飯田良一君) 取引所の定款において会員の定員をきめることの可否、即ち定員をもつと融通無碍にいたしまして希望者は誰でも会員になれるような途を開いておるかどうかという御趣旨のお尋ねかと思うのであります。証券業自体は登録制を以ていわば自由にできるような建前になつております。反面取引所の会員というものが事実上拘束されるような恰好になつておりますが、取引所の会員なるものはそうやたらに数が多くて、又誰でも彼でもなれるようにしておくことでは、取引所全体の秩序等が保てない虞れがあるわけでありまして、証券取引所といたしましては、従いましてその会員となろうとする者の信用状態、勿論これには或る程度の限度がございます。完全無欠の信用状態というものは期待し得ないといたしましても、比較的信用のよろしいというものを選んで参るわけであります。又証券市場において公正な売買をさせるというためには一定数の会員があればそれを以て十分でありまして、それ以上に数が殖えるということは、徒らに市場を混乱させるというのみに終るのでございまして、各取引所ともその市場の規模に応じまして適当な数を定款できめるということは、これは止むを得ないのみならず、むしろ必要なことではないかというふうに考えるのでございます。その半面御指摘のように空席に対しまして、これを獲得するために或る程度の対価を提供せざるを得なくなるということになる弊害はあろうかと存ずるわけでありますが、これは経済上先ほど申上げましたような定員を一方において限定しておるということから出る反射的な結果でありまして、いたし方がない面もあるのでございます。これは役所に対する関係ではございませんので、現在その権利がどの程度いたしておるか、このことにつきまして正確な調査は私どもといたしましてできにくいのでございますが、一応東京あたりにおきまして一千万円程度の値段がついておるということを風説として聞いておる程度でございます。
  192. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そこに非常に今までお聞きしておつて、いわゆるあなたのほうで考えておられる理想的な証券業の保護育成という面と、やはり封建的ないわゆる昔の仲買店的な考え方とがやはりここに一つの何と言いますか、食い違いを来しておると思うのであります。と申しますのは、これは取引所というものなら、これで見ると如何にも申請して又取引所もできるようになつておる。まさか東京にもう一つ株式取引所をこしらえようといつたつて、あなたのほうで許すこともないし、許したら経済界の混乱も起ります。又必要もないと思います。今もちよつとお尋ねしたように会員になるというのは非常にむずかしくて、その株を買うのにはなかなかむずかしいということになつておつた。又むやみやたらに会員を殖やすということは、これはどうしても考えなくちやいかんので、信用の高い或る程度しつかりした基礎を持つた者でなければその会員としての資格要件には欠けると思いますが、その代り或る程度の資格要件を備えたものであるなら、そうむやみに雨後の筍のように八百屋さんや果物屋さんを開くようにできるものではないのでありまして、その定員数については或る程度のゆとりを持たすような指導をされたほうが私らはいいと思います。なぜかと申しますと、取引所を一つ獲得することによりまして、非常にその取引所というものに利権が伴うということは、曾つて政党華やかなりし時代にシャン取、上海の……、今更それを申上げるのは釈迦に説法かも知れませんが、上海に取引所をこしらえるために奔走した、政友会の衆議院議長までやつた人ですが、故人になつておられるが、名前は控えますが、その人が、いまだに子孫が楽々食つて行けるということは、このシヤン取の利権をとつた、これによつていまだにそういうような状態だということが言われておるわけであります。その当時混乱の時代に、世の中はどうなるかわからんという時に、一旦株式取引所を開いて、そのときに会員になつたという連中が一つの利権をとつてしまつた、あとの者は入れさせん、あとの者は株を買え、あなたの言われるように一千万円の権利金だと言われておるが、これはもつと高いかも知れません。そういうところに非常に封建性がいまだに残つておるのであります。これを一つ打破する、折角改正するのだからそういうところまで踏み込むという勇気はなかつたか、僕はそういう必要があるのではないか、もう少しこれを建直して行くためにはそういう点までメスを入れる必要があるのじやないかという工合に考えるのでありますが、あなたがたは少壮官吏といたしましてこの業界を眺めて来たのでありますが、理想的な方向に持つて行くという点において多少メスを加える勇気はなかつたか、立案に当りましてそういう声がほうぼうに起つておる状態があるのじやないか、こういうふうに非会員である証券業者からそういう声も起つておるのじやないかと思うのでありますが、これらの内容について一つ御説明を願いたいと思います。私らは素人でよくわかりませんけれども、常識的に考えた質問であります。
  193. 石田正

    政府委員石田正君) これは根本的な問題といたしまして、この取引所の定款につきましていろいろな規定事項をつけておりますが、我々のほうはこれは大蔵省としてこういうふうにしなくちやいけない、ああいうふうにしなくちやいけない、こういうふうなことで積極的に指導をするというような形にはこの法案においてはなつていないわけであります。そこでそういうものについて特に会員についていわゆる門戸閉鎖主義でなく、門戸開放主義のような、いわゆる門戸閉鎖主義はやつてはいかんぞということをはつきり書け、こういう御趣旨の御質問かと考えられるわけでありますが、そこで取引所の問題については、一口に取引所と申しましても、土地によりまして相当違つておると思います。これは東京と大阪のようなところと地方の取引所とでは大分違いますけれども、東京、大阪のようなところにおいて門戸閉鎖主義があつてはいけない、地方においては逆の現象があり得るのじやないかと思うのでありますが、その点につきまして私率直に申しまして今のお話のような点についてどう考えるかという問題につきまして、私の経験から申しますると、今までこの私たちの所管に証券取引関係のものが移りましてから新らしく会員になつたというのはございません。それから又他の会員から権利を買つてそうしてなつたというのも記憶いたしておりません。私はないのじやないかと思つております。と言うことは要するに権利の売買が盛んに行われて、そうして入替えが行われるというような実情はございません。従いまして、そういう点についての感覚がにぶいのじやないか、こういうような御指摘になるのじやないかと思いますが、この点につきましては私率直に申しまして取引所の会員についてこういうふうなものを必ず入れなくちやいかんというような資格要件を役所がきめるということは、これは私はどうかと思つております。じや排斥することはどうかというような問題でございますが、実情から申しましてこれは証券業者一般の問題であると同時に、又会員も含んでの問題であろうかと思いますが、私どもは率直に申しまして両者を含めまして現状必ずしも理想的に行つておるとは思つておりません。実際の結果から申しましても会員の中におきましても最近登録を取消したというような事例も起つておるのでありまして、御趣旨のように非常にいい証券業者がたくさんあつて、そして皆会員にしたほうがいいだろうと思うにもかかわらず、どうも門戸を閉しておつて困るというような実情でありますれば当然我々として考えなければならないと思います。現状は遺憾ながらその逆でありまして、余ほど会員のかたがたもしつかりやつて頂かなければならないということもあり得るような状況ではないだろうか、かように思つておるわけであります。権利株の問題につきましては今一千万円という話もありましたが、私非常に遺憾でありましてそういう金額も知りません。そういう実例もないのにどうしてそういう呼値があるのか私個人としてはわかりませんので勉強したいと思います。実情から申しますと今のようなお話は現実の問題にまだなつていないのではないか、我々の施策といたしましてもそこまで今やるというよりむしろその前にいろいろやらなければならんことがあるのではないだろうか、かように考えておる次第であります。
  194. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 今実情はそういう必要を認めないというような局長の御答弁だし、一方課長のほうの御答弁では一千万円ぐらいな値段が付いておる、権利金は一千万円ぐらいだ、こういうようなお話ちよつとそこに食い違いがあるように私は思います。併しそれじや逆にお尋ねするんだが、実情がそこまで来るようだつたら或る程度この法律改正してでも、これらの一千万円の株を買うというようなことになつて来ますと自然そこに無理が生ずるから、あなたのほうで、先ほど私何回も質問申上げましたように、十万円の供託金の問題、五万円の供託金の問題は話にならん、少な過ぎるじやないかと言つていい。又資本金につきましても、今の大蔵省の定めておる資本金は余りにもこれだけでなければならんということで、最低限度を定めておられまするけれども、やはりこれも少いのではないか。その資本金の額から、或いは供託金の額から比べて、会員の資格を獲得するための資金が一千万円、東京や大阪、或いは大阪は東京よりも今の実情から少いと思つております。何といつても今東京中心主義になつておりますから、東京においてはそういうふうな売買がされておるときに、資本金の額から考えてこれはもう問題にならんのです。例えば東京だつたら二千万円だつたですね、この間の話では、二千万円、そのうち権利を買うために一千万円使つてしまわなければならん。そんなことで株式会社を設立しても、あとの一千万円で廻して行かなければならんということになりますと、実際はなかなかできないと思う。特に会員の株を買つてでもやるということになれば、そうすると実情に沿わない面が生じて来ると思うのです。これらについて今後勉強するとおつしやつたが、勉強して更に必要がある場合には改正をして、何らかの処置を講ずるだけの考えを持つておるか、これを伺いたい。
  195. 石田正

    政府委員石田正君) 一般的な問題といたしまして、私たちは現実の事態ということを基といたしまして、それをよりよくして行くということを心掛けておるつもりでございます。ただ事象的にいえばこうである、強いて現実を無理やりに引張つて行くということも考えておりますが、それも程度問題であろうと考えております。只今御指摘のありました会員の定款の問題でございますが、これは大蔵省といたしましては、現行法の下におきましても取引所の定款について、これは今のような問題を非常にけしからんというふうに我々が認定いたしまするならば、これは大蔵省職員取引所に審問させまして、そして理由を明らかにするという途は現行法の中にあるわけであります。ですから、私はその点につきましては必要があれば又そういう手段も考うべきである。今の現行法で、定款のあれだけで何とも手がつかないということは法制的にはなつていない。条文につきましては百五十六条であつたかと思いますが、現行法でもそういう定款の変更を命ずることができる途が開かれておるわけであります。実態がそういうふうになればこれは当然考えるべきものであると考えております。
  196. 森下政一

    ○森下政一君 私は実情に疎いのですが、会員であるということは証券業者としては非常に信用を博することになるんだと思うのです。現実の問題としてこういうことはないのですか、会員外の業者であつて極めて誠実に営業を営んで業績が非常に上つておる。従つて世間的にも非常に信用がある。その信用等からいえば会員である人と大して遜色がない。そういうような人が仮にあるとして、これがどうも定款で数がきまつておるとなれば、権利を買うとか何とかしなければ、今菊川君が言うように多額のそれがために金を投じないことには会員の資格が得られないというようなことになるわけなんだが、それが如何ともしがたいということなんですか、取引所の側からいえば、むしろ現在会員である何の誰がしよりは、あの人のほうが却つてメンバーになつてもらいたいというような人がある。ところがそれをどうすることもできない、又業者も入りたいにも入れない、実情はそんなことはないのですか。
  197. 石田正

    政府委員石田正君) これは全国場所場所によりまして違うということを申上げましたが、東京の場合におきましては私はそういうことはないと思つております。会員業者とそれから非会員業者との間においては非常に名誉とかいうことがありますことは、これは私は否定いたしません。併し会員でない者も業者であつて、会員に匹敵し、或いはそれを凌駕しながら而もなれないということは、私は東京の場合においてはないと思つております。実際の問題から申しますと、私たちは実はむしろその逆に悩まされたのでありまして、先般のヘタ株事件といわれておりますいろいろな不祥事を起こしましたが、あれなんかはどうも我々が見るところでは会員業者が自分のところでやるのは工合が悪いので、別動隊を設けて非会員ということでやるというようなこともあつたんではないか、相当断固たる処置をいたしたわけでございますが、そういうような状態でございまして、菊川先生及び森下先生からお尋ねのような事態は私はないと思つております。
  198. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それではもう一遍、今度は逆にお尋ねするのは、取引所を設置するときに、初めて会員になるときに一体どういうふうにしてこの会員を募集して、そしてそれが初めてなるときに、この株を初めて持つた者は非常にうまいことをしておるわけですが、特に地方に参りまして大証券の支店が設けられる場合には、これは楽に席さえ空いておつたらなれると思うのですけれども、この改正案でなくてこの法律を初めてこしらえたときに、どういう人が成り得たのですか、この経過をもう一遍聞かしてもらわんと……、あなたがたその当時から携つておられる経験からして、教えて頂きたいと思います。
  199. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 取引所の設立されましたのは二十五年でございましたのですが、当時大体におきまして前から東株でございますが、その後戦時中日本証券取引所というのがございましたが、そういつた取引、それから取引員でございませんでしたけれども、普通現物とも申しますが、有価証券の売買業者といつたものが兜町を中心といたしておりましたものが、あそこで集団的な取引を実際上やつておりました。そういつた業者のうちから取引所を設立いたしました際に、発起人が集まりまして取引所を作りましたときに、取引所の規定によりまして資格審査委員会というものを設け、これは取引所の会員組織の取引所でございますので、自主的に運営されるものでございまして、自主的な委員会を作りまして、そこでこの委員会におきまして各業者取引所の会員になるべくふさわしいかどうかということを、資産内容なり、営業の仕方等につきまして審査をいたしまして、そうして適格と認めたものを会員として取引所において自主的に選定いたしたのであります。その会員となりましたものを、この規定によりまして取引所の設立の際に会員は届出になつておりますので、役所のほうに届出になつておつた、こういうふうになつております。
  200. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうしますと、先ほどお聞きしました二十七年度のうちの八百三十六でしたかの業者のうちで、会員と非会員との数はどういうふうになつておりますか。正確でなくてもいいのですが。
  201. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 只今八百四十七社、証券業者はこの六月末現在でございますが、そのうち会員の数は三百八社でございます。
  202. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 相当非会員のほうが数が多い。非会員がやろうと思う場合には、先ず会員であるところの業者のかたに委託をして売買はしなければならないことになるわけですね。今度の有価証券取引税が新設された場合に二つ手数をくぐることにならなければならんと思いますが、実際手数料のところに又戻つて来なければならないと思いますが、非会員である業者と、それから会員のかたとの取引関係で手数料を例えば十円の手数料をとるときになりましたら、その按分比率というものはあなたのほうで考えておられるのか、指導しておられるのか、業者間の取極めによつて任しておるのですか。
  203. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 先ほどの二十七年度までの数字と申しましたのは、最近は多少違つておりますが、その半分以上が非会員であるという、これは東京と地方と違うのです。東京におきましてはもう大部分のものが会員になつておりまして、東京におきましては会員は百二十社でございまして、非会員は三十社というような状況になつております。ところが地方へ参りますと、地方の証券業者というのは、取引所のない所がたくさんございます。そういう人たちはやはりどうしてもそれは会員になろうと思つても、取引所のある所に店がない人はどうにもなりません。そういう所を全部ひつくるめての数字でございますから、そういうように御了承願いたいと思います。  それから要するに地方の、特にこれはあとの問題は地方等に関連するわけでございますが、地方にあつて取引所が利用できないから、東京なり大阪、名古屋というような所の取引所の会員に委託してやるという場合に、手数料の問題をどうするか、大蔵省は監督しておるかということでございますが、これは大蔵省は別に監督いたしておりません。業者同士の自主的な話合いでやつております。これは全国の証券業者が一つの団体を作つておりまして、その中におきまして始終議題になつておりまして、まあいろいろ揉んでおるところもございますけれども、まあその成行きを見ておるのでございまして、大蔵省といたしましては、こうしたほうがいいとか、ああしたほうがいいとかいうことにつきましては関与いたしておりません。
  204. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると、今の商習慣としてはどのくらいの率で……。
  205. 石田正

    政府委員石田正君) 大体非会員業者が四と会員業者が六というようなことになつておるのじやないかと思います。
  206. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そういたしますと、今でも売買手数料だけではなかなかもつて行けないというところに向けて、非会員業者のごときは四で、六までは会員業者のほうに取られてしまうということになつたら、ますます立つて行けない。やつて行けない。手数料だけでは立つて行けない。そうなつて参りますると、勢い思惑ということに手を出すことになる。そうすると、その思惑がうまく行けばいいが、逆に出た場合には、これは一般の投資者に対してどうしても迷惑を及ぼし勝ちになる。こういう結果が出て来るわけだと思うのですが、これらの調整を考えておられるかどうか。
  207. 石田正

    政府委員石田正君) これはまあ非常に私ども率直に申しましてむずかしい問題であろうと思います。他方におきましては証券民主化と言いながら、その手数料が高いじやないかということは、まあ有価証券取引税法との関係等におきまして、これは御承知の通りに株券が全部五十円株である。そういうようなものを百株単位でやるというようなことに対しまして、他方人件費その他につきましては、これは物価も相当上つておる。そういうようなことがありますので、これは私率直に申上げまして証券業者の取つておるところの手数料は高過ぎるということは、取引税その他の関連だけで言うのはどうかと思います。併しながら、これは他面においてできるだけ低くあることが望ましいのでありまして、そういうふうな方向に持つて行きたいと、かように考えております。併しながら只今お話がありましたような工合に、我々の考え方としては思惑というほうに主力が行つてしまつて、手数料なんというものはどうでもいいものだというようになつては困る。そこでおのずから手数料というものにつきましては、これはそうむやみに下げればいいというわけにも行かない。正常な取引、間違いないという場合におきましては勿論手数料は低いほうがいいのであります。併しながら同時にそれが低過ぎたために悪いほうの途を歩むということになつてしまつては困る。そこで我々はよく業者実情等を見まして、そうしてこれは何も圧力的にこうしろとか、ああしろとか言いません。ただ話合いの問題としまして例えば現在の手数料なら手数料というものはいつきめたのか。そのときは取引高税はこのくらいしかなかつた。それがこのくらいになつて来た。そうするとこれは少し下げるべきだ。内部を充実することもさることながら、漸進的に下げて参るということにお願いする。お願いすると言つては語弊があるかも知れませんが、そういう意味でいろいろ話し合いをしておりますが、これは規定いたしません。私ども社会的な行為としては手数料を下げて行くということは、業者としてはなかなかなかむずかしいことがある。併し業者としては何とかうまく行くように考えて行つてもらいたい、こういう実情でございます。
  208. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 余り私ばかり質問しておつてもなんですから、最後にもう一点だけお伺いいたしますが、先般これは東京の取引所に起つた事件ですが、ヘタ株事件というものが起つたのですね、あれなんかは不健全な取引だろうと思うのですが、それに対して厳重な、断固たる処置とつたという意味お話でございますが、ところがヘタ株事件というものが起り得る余地がやはりこの証券取引法のどこかにあるのじやないかと私は思うのでありますが、それらは今回のああいう事件が起つた苦い経験に鑑みまして、今回の改正によつて一つ或る程度取締ろうとする意図がなければならんと私はこう思うのでありますが、そういう点がこの改正のどこに現われておるか、或いはあれは一体どういうことか私は素人でヘタ株の問題の真相はよくわからん。ところが実際問題として株券を持つてつてつてもらうというように我々素人としては考えるのだが、ヘタ株というのは払込みの権利の通知が来た、銀行に払込んで、領収証とか何とかいうのが来ますが、それを取引しておるのか、それじやなしに話を少し聞いて見ますと、まだそれ以前のものを取引しておる、こういう話でしたから、こんなものは実情は一体何を証拠としてやつておるのか。この証券取引所の中を見ましても、先ず第一番に払込みのほうを見ますと、有価証券とは左に掲げるものを言うと規定してあつて、最後の六に株券又は新株の引受権を表示する証書、これは載つておりますが、引受権を表示する証書というものは、これは銀行なら銀行に払込んだその領収証を意味しておるのか。それ以前の割当までも含んでおるのか。そういうことに対して、今度はどういう処置をしておるのか。こういうものが今後又起る余地があるのか、その点御説明願いたいと思います。
  209. 石田正

    政府委員石田正君) 先ず第一段の問題でございますが、私は率直に申上げますが、ああいうヘタ株事件なんかが行われるということは、これは現行法の下におきましても法律違反であります。法律違反のことが行われて、その点において大蔵省何をしておつたのかというお叱りもあるかと思います。これはそういうヘタ株問題はどういうものを言うかということにつきましては、あと課長から細かいことは御説明申上げることにいたしますが、私たちもそういうことを知りまして、すぐこれは処置しなければならんというふうに思つたのでありますが、遺憾ながら相当長いことやつておつたということが一つ。それからもう一つは御承知のように売りと買いとございまして、大蔵省処置をするということはどつちかに対して利得を得させる、どつちかに損をさせる、何か大蔵省手を出せば必ずその行為によつて得をしたり或いは損をしたりする、得をした者は非常に喜ぶ、損をした者は非常に怨むというので如何なる時期にこれを発動するかということは……、早く手を付けたいということは思つておりましたけれども、そういうわけでまあ非常に迷つておつたのでありますが、たまたま不渡事件等も起りましたので、これはいい機会であるということでそのときにやりまして、そうしてヘタ株専門店と称するものは全部資産状況等もよかつたので、普通の面から言いますとちつともお客さんに迷惑をかけないという店もありますけれども、絶対にやつてもらつては困るのだということで、登録取消乃至廃業ということで皆なくしてしまつた、かような実情になつておるのであります。従いまして、こういうことが起りましたときには、早急に手を付けたいと思つておりますが、率直に申しまして、何と申しますか業界の考え方というものは、そういうものは実際問題としてやつても一向差支えないものだ、こういうふうなこともございまして昔から行われており、それから大蔵省といたしましてもそういう手の付け方の時期につきまして遅れたという点はあつたかと思いますが、あの機会に全部一応整備した、今後からはそういうことは絶対にやらないということを、まあ誓約書をとつておる、かような状態であります。従いまして、法律の上から申しますならば、法律改正いたしませんでもその点の御心配はないような状況に今はなつておる、こう申上げておきます。
  210. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それでこの前証人を呼んでお聞きしたときには、このヘタ株問題については投資者に対しては迷惑をかけておらないということを日興証券の遠山氏が言つておる。業界だけの迷惑に終つた、こう言つておるが、我我の考えからすれば、これはどうしても投資者に累を及ぼしていると思う。一文も投資者に対しては迷惑をかけない、業界だけで処理した、こう言つて答弁しているのですが、その点はどうも理解できなかつたのだが、あのときは時間がなかつたので……。
  211. 石田正

    政府委員石田正君) これもはつきり内容をこの機会に申上げておいたほうがいいと思いますが、  私たちそのときに、従来二つの問題があつて、一つは業界におきまして清算取引を大いにやるべしという議論と、それからヘタ株というものは一向弊害のないものである、こういう意向が非常に強かつたわけであります。我我はそれに対しては反対でありまするが、あのヘタ株の問題が起りましたときに、我々は直ちに検査等を実施いたしまして処置いたしたのであります。ところがその中味を見ますると、大体やつておるのがどうも玄人が多いということでございます。大部分が玄人である、誠に以てけしからん話であるというので、資力の問題は問わずに皆処分してまつたわけであります。従いまして、その中で言われたかたの関係したところでは、或いはそれは資力は十分あつて誰にも迷惑をかけないという場合もあつたと思います。それから又傷が出たところの関係のものにつきましても、その被害を受けるところのものは大部分が業者であり、業者の使用人である、従業員であるということで、結果的に見てそういうことは言える部面もあろうかと思います。併し我々は事柄自体は誠に以てけしからんことであると思いまするので全部処分いたした、こういう事情でございます。
  212. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうしますと、第二条の六号にある「新株の引受権を表示する証書」、これとは違うのですか、このヘタ株とは……。
  213. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 今のヘタ株と申しますのは、この六号に掲げました「株券又は新株の引受権を表示する証書」とは別のことなんであります。「新株の引受権を表示する」と書いてありまするのは、実際これは日本では余り取引された例がないのでございますが、これは単に新らしい株が増資の結果出るというときに、その株を申込みをして引受けをすることができるという権利を表わしました証書ということでありまして、その証書が再建整備法との関係で出た場合もございますが、その証書自身を売買するその値段というものは、これは当然新株の値段が八十円としますと、払込みが五十円でございますから大体三十円で売買される、こういう性質のものでございます。余り実際の売買例はございません。ヘタ株と申しますのは、それとは違いまして、増資をするということが会社の決議によりましてきまりますと、大体三月先なら三月先に新株が出るということがはつきりいたしますので、その新株につきまして、新株そのものの取引をする、こういうことであります。そこで新株の値段が八十円ということでございますると予想して、八十円で未だ実際に売渡しをするための物件というものはないのでございますけれども、三月先に出るところの新株を、三月先に出たら売渡をする、こういう条件で取引をする、こういうものでございます。従いまして、約束は三月前にあるのでございますが、受渡しは三月後において払込領収書が出ましてから、その領収書を以つて受渡しをする、こういうことになつております。
  214. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると、この第二条にも上つておらんものでありますから、できないものである、これは証券取引法からいつても全然できないものである、今の現行法からいつてもできないものであるから、ましてやそんなものは、今私が愚問を発したようでありますが、改正して取締る余地は全然関係ないものである、こう解釈してよろしうございますか。
  215. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) それはやはりその株の取引有価証券取引でございまして、それは二条の二項はまだ株券の発行されていない場合におきましての、この株券に表示さるべき権利、株主権でございますが、これは有価証券と見なすという規定が二項にございます。この第二条の二項でございます。そういう規定もございまして、これは有価証券取引であるということで、法律上はやはり有価証券取引でありまするので、証券取引法の全般の適用を受け、監督の対象になつておる、こういうことでございます。従つてそれらの取引関係は、例えば十五条という条文がございますが、これは届出の効力の発生しないものは取引をしてはいかんというわけでございます。それで今までの例を見ますると、とかく証券ならば証券の発行前に売買をするというような例がございまして、全くこれは違法な取引でございます。そういつた点において違法であつたということが言えるわけです。
  216. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると取引の効力が発生した場合には二項によつて、この二項に該当するのはヘタ株だ。こういうわけですか。そうすればその証拠は何を証拠にして取引されているのかということ、えらいどうもややつこしい。
  217. 石田正

    政府委員石田正君) 二条のそれは、そういうものも有価証券に見なすのだというので範囲が広くなつておるわけでございます。併し、じやあそういう有価証券ならば何でもやつてよろしいのかということになると、十五条でそれを縛つておるわけでございます。それで例えば会社が増資の決議をする。それだけじやいけない。やはりちやんとこういう資産内容の会社がこうするのだという正規の手続に従つて届出を出してもらわなければならない。届出を出しましてもその効力の発生という問題がございます。効力が発生して、これで若しそういうものをやつても間違いないのだという段階に相成つてから取引することはよろしいというのが十五条の規定でございます。ところが実際行われましたのは、増資の決議をいたして、そうして届出書の効力が発生する前、まあこれは逆に申しますれば届出書の効力が発生する前にはずつとたくさん段階があるわけであります。届出書が出ておるけれども、効力が発生しないといけないわけであります。それから届出書をまるつきり出さないのもいかんわけです。甚だしきに至つては株主総会の決議も何もせんうちから勝手にあれはやるだろうというのでやつておる。かくのごときものまで含めまして我々はヘタ株と一応言つておるわけであります。そういうことがいけないのだという意味でございます。
  218. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうしますと、二項に示されているようなものは一応この取引の対象になるわけでありますが、これらは取引させるときには、どういう証拠で取引するのですか。まああなたのいうのでは届出さえされておれば、例えば某会社で今度は一対一の有償交付をやるようだとなつたらば、その一対一の有償交付というものを証拠にして取引を許しているのですか、許すことになるのですか。二項に言うのは届出も済んでおるというものになりましたならば……。
  219. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 届出の効力が生じておるものにつきましては、この十五条の規定にパスをしておるわけでございますから、そこでそういうものの取引は現在の法律の下においてはできることでございます。ただ、まだ物件がないわけでございますから、受渡しはその売買約束をしたときにすぐに受渡はできないわけでございます。普通の現物があればそこで受渡できるわけでございますけれども、まだ出ていないのでございます。そこでそのときの売買約束というものは、仮に二月先ならば二月先に物件が出たとき、その際において受渡するということの約束で取引するわけでございまして、そうして銀行に払込みまして、その払込みました払込領収書が出ますから、その払込領収書によつて受渡をしておる、こういうことでございます。
  220. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それは今おつしやつた銀行に払込みをいたし、払込領収書を以て取引をするということにしてならばこれは成り立つと思うのでありますが、発行されていない場合においてもこれを当該有価証券と見なすためにはあなたのお話では届出さえ済んだら……、届出して、それからまだ払込の手続をやつて、それから払込の領収書を以て、これで取引の対象になるというのは一応わかるのですが、今のお話だと十五条の届出さえ済んだらこれは違反じやないということになると、やはりヘタ株の余地があるのじやないですか。
  221. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 今の法律の下におきましては、この届出の効力が発生いたしましたものを、そういう約束で取引することは一応違法でない取引になつておるわけでございます。これはこういつた取引と申しますのは、戦後に特に増資が非常に盛んになりました結果、特に起つて来た関係取引でございまして、その取引にも株の銘柄にもよりますが、人気のある銘柄は増資が行われるということでございまして、今後においてしよつちゆうそういうことが行われるかというと、必ずしもそうでないと思いますが、現在の状況におきましては、そういつた場合に効力が発生をすれば取引はできる、こういうことになります。ただその際に、これは現在におきましては大体取引所におきまして上場をしてもらいまして、そうしてその取引所の中において売買をいたしますれば、売買そのものは確実に堅実な売買が行われる、証拠金等の徴収等も確実に行われる、受渡も確実に履行されるということで、取引所において取引をするという方向に現在指導を考えておるような次第でございます。
  222. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 どうもこのヘタ株とヘタ株でない二項と十五条との関係が僕はよくわからん。はつきり申しまして、私は素人考えかも知れませんが、銀行に払込んだ領収書を以て、その領収書で取引をするということならわかる、或いは又それでなければ会社が発した通知書を以て、今御説明のあつたように八十円するだろうというところであつたら、五十円払込まなければならないのですから、そのあとの三十円を二十九円にしたり二十八円にして取引しているのならわかるのですが、今のあなたの話ではまだはつきりしないのだが、会社から株金払込通知書を株主に発した場合に、この通知書、或いは銀行に払い込んだ領収書、これを証拠として取引しているのか。ただ届出があつたというだけで、そういう通知がしてなくても取引は許されているものかどうか、この点を一つはつきり説明して頂きたい。
  223. 小林鎮夫

    説明員小林鎮夫君) 増資の決議がございますと、その後におきまして届出書類を作りまして、届出の効力が発生しまして、届出の効力が発生いたしましたあとにおいて、会社から株主に対していつ何日現在の株主に対して何株の割当をするということの通知が株主に行くわけであります。それがはつきりいたしますと、普通の親株の取引につきましては、その割当決定以後の取引は権利落と申しますか、新株の取得のできる元になる日以後になりますと、権利が落ちた取引になる、こういうふうになるわけでございます。そこでその効力が発生したあとにおいて、株主は自分のところに何株割当が来るということは大体通知によつてわかります。そうすると一方取引所においては、権利が落ちてしまつて、自分の持つている株が仮に百円の株だというと、これが倍額増資ということになると、プレミアムが二十五円でございますから、二十五円だけ落ちた七十五円という相場が立つ。途端に翌日から百円のものが七十五円、百円のものを持つてつても七十五円、あとの分は換金処分ができるかというと、処分する途がない、やはりそういつた自分の権利の割当のものは、相場は動くことでございますから、将来割当を受けた結果、引受けた株を取る途を開くということも、経済の事情から必要かと思います。そういつたこともございますので、届出書の効力発生後におきましては、そういつたものの取引は認めておる、こういうことになるのであります。
  224. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 では私は一応この程度でよろしうございます。
  225. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 本日はこれを以て散会いたします。    午後四時四十五分散会