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公述人(
金子佐一郎君) 只今提出されました予算の中で
租税及び印紙収入が七千百六十億円計上されております。これはいろいろの角度から見積られたものでありましようけれ
ども、財界全体の不況の度合から
考えますると、或いは
法人税、
所得税等に対する見積りが過大であるかどうかというようなことは、一面において
一つの
意見として指摘されているところでありますが、併しこれは見通しの問題でありまするので、相当これを論ずることは困難でありますが、多くの場合過大に
租税収入を見積られますと、結局徴税の面で、若しもその通り収入がない場合には、勢い強い徴税の形になりまして、混乱を起すことが多いのでありまして、この点は相当に慎重な検討を必要とするのではないかと
考えるのでございます。この
減税を
要望いたします
財界一般の声、又国民の声、これはこのところ税が高くなりましてから常に言われているところであります。併し如何に税の安いことを望みましても、結局この
減税を期待するのは、あくまでも
財政の歳出面を削限できるかどうか、それから又
国民所得がそれだけ増大をして行くかどうか、若しも
国民所得が増大すれば、勢い
税率等を下げましても、
税収入は何ら支障がないということは明らかなことでございます。こういう点が、今後の私は税の問題を解決して行く、それ以外になかなか容易に
減税を望めないのだと
考えるのでありますが、併し
企業の立場から言えば、非常な税
負担を与えると
考えております。いつも申すことでありますが、収益に対して山分けということが仮にあるといたしましても、山分け以上税に持
つて行くという現状においては、これは非常に私は重いとい
つても差支えないのじやないか、曾
つては超過
所得等の場合を除きますれば、平均して二割五分乃至三割という
程度にとどま
つた、
従つて収益のうち七割は稼いだ者の手に帰したのでありますが、今は半分以上の
税金によ
つて、四割数分しか手に残らないということ、この問題を早く解決しなければ到底
資本蓄積或いは
資本構成の
是正というようなこと、
自己資本を増大するというようなことは容易に望めないのじやないか、こういう点で、常に
税制の
改革を
要望しているのであります。ただ私は、
税制の
改革というたびごとに思うのでありますが、どんな
税制でも理論的に非常に立派なものであるとい
つても、
経済界或いは社会の実情に合わない場合には、全くこれは
実施しても混乱を来たすだけで、うまく行かないのであります。それはここで論じられておりますような
富裕税の
廃止或いは取引高税の
廃止、或いは
譲渡所得税の
廃止、或いは先ほ
ども少し
お話が出ましたが、
附加価値税の
実施がなかなか困難でなか
つたかというふうな問題、これはやはり相当理論的には、
シヤウプ勧告によりまして裏付けはあるでありましようが、さてこれを
実施してみるとなかなか社会の実情と合わない、
従つてその徴税の結果も意のごとく行かないばかりでなく、却
つて煩瑣と混乱を伴な
つている、こういう点が私はこの
税制改革をする場合によほど留意して頂かなければならないのじやないか。
従つて税制というものの
改革は、或る
意味においてはそのときの
経済政策なり或いは社会政策なりを多少
考慮して、理論的には無理があ
つても、そのほうが税としても効果的であり、又その国の
経済なり国民の繁栄を来す原因となるのではないかと思うのであります。そういう
意味合いにおきまして、今度の
税制改革の主なものを拾
つてみますと、
所得税の軽減ということは、これは大蔵省でも一番重点を置いているようであります。それは当然でありまして、曾
つての
所得税の
負担の
割合等を見ますれば、私はまだまだ
所得税としては相当重いのじやないか、まあ漸く二十万円の
所得者が、家族その他の扶養
関係はいろいろ条件はありますけれ
ども、漸くまあ
税金をどうやら免がれて来たという
程度までこれは戻
つて参りましたが、もう一歩進める必要があるのではないか。まあ今回は基礎
控除とか或いは扶養家族
控除というような問題についても相当これを引上げてありますので、こういう点については相当努力が払われたようにも思うのであります。特に
給与所得につきましては、しばしば問題になりますように、
源泉徴収という形でこれは正確に税がとられておるということが言われておりまするが、正確に税をとられるということは当り前な話だと、こういうように
考えられるのであります。併し世の中に、当り前であることが
一つの例外である場合には、その当り前のことが何らかの形において又
考えさせられなければならないというわけであります。ですからすべての問題においてそれが当り前であるならば、そういう問題について特別な
考慮の必要はないのでありますが、
申告納税という問題についていろいろ問題が起
つている際に、
源泉徴収において正確にとられるというならば、そういう段階においては、多少それらのバランスを
考えて
給与所得等に対しますところの勤労
控除というようなものは、今回も三万円から四万五千円に引上げられましたけれ
ども、この点についてはいま少しく
考慮をする必要があるのではないかというような感がいたすのでございます。
特に強調いたしたいのは、どうも
申告納税というものが低調である。先ほ
どもお話がありましたが、
源泉徴収が正しいものとするならば、それに応ずるだけの
申告納税の結果が現われて来なければならんのに、どうも
申告納税がうまく行かない、これは何であるかと言えば、やはり
一つの
むしろ徴税の面の、
税務行政の面においてもう少し
考えなければならん点があるのじやないか。それは差しおきまして、
政府は青色申告制度というものを
実施いたした。これは帳面を、大体規定に基きまして正しく記帳するということなのであります。
従つてそれによ
つて計算された
所得というものが、青色申告の規定によ
つて算出されたものであれば、これは
政府のほうでも、大蔵省といたしましても十分尊重して、そうしてこれに基いていろいろとその
所得を検討して行こう、こういうわけでございます。然るにその
実施の結果はどうであるかと申しますと、まだ納税者の一割しか青色申告をや
つていない。それで而も又
法人ということになれば、商法の規定で帳面を備え付けていなければならんことは明らかであるのに、
法人の青色申告の採用している者が六割しかない。これを見ましても帳面をつけていながら、正規な帳面、正しくその帳面をつけるということになると今のように誠に低調である。そうすると納税者の九割が仮に青色申告でないとするならば、九割は本当の
所得が自分自身にもわか
つていないということも言えるのです。まして徴税側のほうから見ればわからないのは当り前であります。そこでいわば査定をいたしまして、まあここに更正決定その他の混乱や論議があるわけであります。これは納税者側から
言つてもおかしな話であります。自分も正しい帳面をつけて、これだけの
所得があるというならば、徒らに更正決定で不当な
課税を受けないで済むのじやないかということも半面言えるのでありますが、私はこの青色申告を皆採用したがらない裏は、やはり青色申告をしては損だという感じがあるのではないか。なぜ損かというと、正しい
所得を出して正しい
課税を受けるよりも、どうも
所得がよくわからないというので、適当に
所得を申告しておけば、却
つてそれが政治的の折衝によ
つて何かそれが得だという感じが残されているのじやないか、こういうように感ずるのであります。ここで大蔵省におきましても先般
税務行政懇談会を作りまして、非常に簡単な帳面でこの青色申告をさせるようにして、少くともこの一割を三割、五割まで持
つて行こうという
措置を
考えられたようでありますが、併し私はそういう記帳だけの問題ではうまく行かないと思う。
むしろ先ほど申しましたように、正しい申告をすることは当り前でありますが、そういう正しい申告をした者に、正直者が馬鹿をみないように、或る
程度まで青色申告者に対しては天引一割とか或いは一割五分というような工合に、方法はいろいろありましようが、何かの形において
一つの記帳に対する報酬というような形でもよろしいから、恩典を与えてこそそこに
一つの解決点があるのじやないか、このように一応
考えておるわけであります。
それから
有価証券の
譲渡所得税の
廃止は、これは初めから問題でありまして、
シヤウプ勧告によれば、これは本当ならば非常に強化して、できるだけ正確にとるべきであ
つたでありましようが、現在
日本の実情においてはこれはとれない、而も殆んどがいろいろな形において混乱を来たしておる際、こういう
むしろ税制は、先ほど申上げたように、実情に即さない、而も徴税
能力は上らない、而も半面から言えば、
株式の流通を或る
意味において円滑化を阻害しているというようなことならば、この際思い切
つて撤廃されたほうが賢明であろうと思うのであります。
それから
富裕税の
廃止の問題でありますが、これも私は理論的には
所得税の
補完税として設置されたという
意味から申しまして、
考え方として一応は納得できたのであります。併し
日本にはまだ富裕と称せられるような階級というものは余りないのではないか。
従つて徴税いたしました結果も非常に低調であ
つたということも言えるのでありますが、もう少しこれを掘り下げて見ますれば、この
富裕税というものは少くとも
財産税であります。で私の
考えでは、
財産税というのは或る一定の時期に、これを一回とるということならば
考えられるのであります。併し毎年々々
財産税を継続するということは、仮に不動産を持
つているというような者でありましたならば、その
富裕税を支払うのにどうするかというと、家であるならば、家の一部を売らなければ
富裕税が払えないというような、極端な例でありますが、そういうことも一応
考えてよろしいのではないか。つまり
所得が伴わないという場合におきまして
富裕税を払う、而もそれが
株式等のようなものであれば、一部ずつ売
つて納税して行くという手もありますが、不動産或いはその他建物、特に不動産中の建物等のものであれば、これはなかなか税を払う担税力が出て来ない。自然問題は一層困難になる。又骨董その他のような問題に対しまして
課税価格を査定するということだけでも容易ならざる問題であります。特に一番不合理なのは、昨年度あたりでごさいましたか、例えば非常に株価が高騰する。その十二月三十一日に非常に株価がその附近高か
つたという場合においては
富裕税として高い税をとられる。併しその後株価が非常に低落したという場合に
富裕税は返してもらえない。そのときに売
つてしまえばいいのでありますが、一応売らなければ高いところだけで税をとられるというようなことも出て参りますので、こういう問題は非常に論議が納税者側にもあるのじやないか。ただ仮に
富裕税を行うとするならば、少くとも
富裕税を行うすべての他の条件が合理的でなければならないのであります。先ほ
ども話が出たように、無
記名預金或いは
投資信託というような問題が今日如何に
資本蓄積のために大きな役割をも
つているかということは、
投資信託のごときは非常に成功している。又無
記名預金のごときも相当累増していると
考えられる。これはやはり現在の
資本蓄積の方法としては、一番
蓄積を誘致しやすい方法であるのであります。併し仮に無記名のこういうようなものを残しておいて
富裕税を存置するということになれば、そこにおのずから
富裕税というものに対して完全なる徴収ができないということを明らかに示唆するものである。そこに大きな矛盾がある。そういう矛盾を解決してこれをすつきりするならば、今の段階において私は税といたしましても十九億ぐらいしかとれないというような、
最高の徴税額でもその
程度でありまして、而もそれをとるために調査いたします
負担というものは相当にあるように聞いております。こういう点は
むしろすつきりして、そうして活かすべきほうを活かしたほうが賢明ではないか、このように
考えているわけであります。
それから
法人税の問題につきましては、いつもながらいろいろ財界からは
要望があるのであります。この
要望の一番の眼目は、先般来三五%という
法人税が四二%にな
つた。これは少くとも全体の
国民所得が増大するか、或いは
財政上の
関係から
所得税に次いでこれが
減税が可能とな
つた場合においてはその
税率は旧
税率程度まで戻すべきではないかと
考えられているのであります。併し一概にこの七%上げるときは上げても、下げるときに不可能であるならば、これを二段階くらいに漸次逓減して行くということも
考えられるのであります。現在の
法人税の
負担軽減は、
税率というよりも、
むしろ資本蓄積を狙
つて、これに該当するような
目的のために
法人が経理上の
措置をした場合には税の軽減ができるようにな
つている。それが御
承知の通りの貸倒れ準備金とか或いは
価格変動準備金とか、特に問題になりました特別
償却の範囲を拡大するというようなことが
考えられる。これは結局税を下げるというにしてはそれだけ財源がないし、併し
法人税を合理的に幾らかでも
負担の軽減をさせるならば、
資本の
蓄積をやらせようという半面の狙いと併せて
減税も幾らかでも
考えているということは言えるのでありまして、
従つて何か
目的がなければ現在のところは
減税をさせてもらえない。
従つてそういう条件を持
つた法人は幾らかでも税の軽減を受けるけれ
ども、これらの
措置が可能でないような
企業については必ずしもこれは
関係がない。
従つてこういう恩恵が受けられないということになるのであります。
従つてこういうような
減税の総額が、少くとも
税率を相当額引下げられる額に達したときには
むしろこの問題は
税率を引下げることに置き換える。そうして
一般の
法人が均霑してその
減税の恩典に浴するということのほうが今後の狙いとしてはよろしいのではないかと思います。
従つて現在の過程においては一応条件付の
措置を
考え、その条件に当てはま
つた者について税
負担の軽減を図ろうというような趣意が見受けられるのでありますが、将来は少くともやはり
税率の引下げ、こういう方向に向うべきではないかと思うのであります。
特に現在の財界が
要望しておりますのは、
資本の
蓄積を何とかさせなければならないということであろうと思います。併しそれには今度の
法人税の
改正、並びに
法人税ばかりではありませんけれ
ども、
一つの
措置といたしまして第三次の再評価が認められることにな
つたのであります。これは財界で
要望いたしてお
つたところでもありますし、又これは明らかに
資本蓄積並びに
資本構成是正の大きな役割を持つものとして、我々としても期待をかけられるものだと思います。併しながらこれについてはやはり相当のまあ問題がある。以下私の私見を少しく述べさせて頂きたいと思います。
この再評価というものは、第一次、第二次を
実施いたしましたけれ
ども、
企業の
実施いたしましたものは甚だ少い。これは私
どもから
考えれば非常におかしいのでありまして、再評価をするということは帳簿
価格を時価を基準として直しまして、それがために
減価償却が余計できることであります。
従つて減価償却が増額いたしました
部分は、今までは名目利益が出ておりまして、本当の利益でない利益がバランス・シート上出るわけであります。
従つてそれに又
税金がかか
つて、勢い
資本食いつぶしをされているのでありまして、これを正しく直そうというのでありますから、
企業の経営者としてこれをやらないということはおかしいのであります。私
個人といたしましては、これは
企業にと
つて誠に栄養価値のある御馳走だと言い切
つているわけであります。その御馳走を第一次、第二次をやりましたけれ
ども、僅か三万四千社しかやらないのであります。併し再評価申告を出されました
企業の数は十六万六千と聞いております。こんな工合でありますので、この問題は一体何故やらないのかというのは、再評価をするのは、収益力があ
つて、この再評価を
実施することによ
つて減価償却が増して、その経費の増大にも堪え得る
企業でなければこれはやれないのであります。やらないのではなくて、やれないのであります。
従つてそういう
企業が多ければどうしてもこの再評価というものはなかなか容易に
実施はできない、こういうふうに
考えるのであります。
従つて今度の第三次の再評価は仮に認めましても、私は殆んどやる
企業はないのではないかということが
考えられるのであります。財界から第三次再評価をやらせろと
言つて、やる
企業が余りないのじやないかということをおかしいじやないかと仮に
考えるならば、それは丁度第二次の再評価をいたしましたのは一昨年でございます。それから
経済界は不景気で不況でございます。
従つて収益力はどちらかと言えば減退しているのであります。第二次の再評価のときに見すごした
企業が、今ここで再評価を許して下さいましても、これに飛びついてやるという力が只今では増大しておらないのであります。若しもその後景気がよくな
つていたら恐らくやるでありましようが、収益力は
むしろ減退しておりますので、これは恐らく低調であろう。そこで私の特に主張いたしておりますのは、この第三次の再評価は、いつでも
企業が再評価できるときにさしてもらえるように機会を長く与えておいてもらいたいという主張でございます。
従つて私
どもは、財界といたしましては、
最初は五年くらいの期間を置いてくれ、それでいけなか
つたら三年、少くとも期間を置いてもらいたい、こう申したのでございますが、今回は二年ということでございます。これは今年、来年のうちに私はそう
経済界が好転するとは
考えられないと思いますので、恐らく第三次再評価は、これは折角よい御馳走を目の前に出されても、病人には手が出せないというようなことで、健康回復の時期をもう少し将来に期待しなければならんのではないかと
考える。
従つて今回仮に二年といたしておきましても、その期間までに非常に低調であ
つた場合においては、更に期限の延長をあらかじめ
考慮しておく必要があるのではないかと思うのであります。そこでこういうふうな
意味合から行けば、再評価を
企業としてはできれば是非やるべきである。こういうふうに私は
考えておるだけに、再評価の強制という問題についても、その理論的の立場から言えば賛成であります。それは
シヤウプ博士も
最初の
勧告においては明らかに強制しておるのであります。併しその強制がなぜ
実施できなか
つたろうかというと、六%の税をと
つたからであります。それは再評価の強制ということは、どうも
一般には一概に言われておりますが、私は再評価の強制は三つの段階があるということをよく認識して御
判断願わないと誤りが出るのではないか。
第一番は再評価をするということ、これは全く伝票を起しまして経理上の簿記的の処置にとどまるわけであります。これを強制するということになりまするならば、再評価積立金が貸方にできまして、
自己資本も増大し、又借方の固定
資産の
価格は時価に引直されるのでありまして、これは何にも
企業にと
つて差支えないことではないばかりでなく、当然や
つてよろしいことではないでありましようか。併しこの差額に六%の税をとるということになりますと、このことからすら私は強制は無理だと思います。というのは収益力が非常に少い赤字会社、若しも伝票を一枚起しましたために、五百万円或いは千万円というような巨額の税を
負担しなきやならない会社も多くありますので、そういう税の担税力が出て来ない
関係であります。
従つて私は今の、第三次の強制を
実施するならば、少くとも再評価税は絶対に撤廃を必要と主張するものでございます。それから第二の段階と申しますのは、その再評価をいたしまして、帳簿価額が増大いたしましたならば、それに基準した
減価償却費をその経費に計上するということであります。これを強制するかどうか、これを強制いたしますならば、忽ちのうちに今までの黒字会社も或いは赤字になるかもわからない。又名目利益で殆んど賄
つていたような
企業は、名目利益だけが激減いたしますので、これは非常な利益の大きな減少となるでありましよう。勿論そのために配当ができなくなるかもわかりません。これは正しい姿でありまして、その点は本来ならば当然だと言い切
つてしまえば当然でありますが、それでは
企業というものの息の根をとめてしまうということを
考えなければならない。つまり今の敗戦後の
日本の今日まで再建した
企業の姿は、決して……、形だけはどうにかや
つておりましても、なかなかそう一概に内容的に
充実しておりません。
従つてどうにかこうにか表面づらを糊塗して今日に及んで来ておるのでありますけれ
ども、若し一度ここでそういう強い
措置を今講じますと、忽ちいわば風呂敷をかぶせた
部分がはつきりして参りますが、理論的には正しい姿でありますが、経営上は忽ち金融に詰り、或いは株価は暴落し、そして
企業経営はそれがために、折角どうにか糊塗してや
つてお
つたものが行詰
つてしまうということは明らかである。
従つてこういう
措置については、やはり或る
程度までは
企業の本当の実力が養成されて、現実にもう少し暫く将来に待つことが当然だと思うのであります。更に第三段階目の強制は、
資本に繰入れることであります。これは
資本に繰入れますならば、
資本はそれだけ適正になります。
従つて現在言われている三割とか或いは二割だとかでございますならばよろしいが、もつとひどくなりますと、四割も五割も配当できる、こういうようなことでは、これは本当でないから、少くとも
資本をそれだけ修正して、配当率を下げて、正常化して行くということが望ましいことは望ましいのであります。併しながらそういうことに簡単には
考えられない問題があります。それは電力会社のバランス・シートをこの前見たのでありますが、某電力会社のごときは、
資本金は四十五億でございます。併し再評価積立金は六百億以上持
つている。そういう場合には現在一割五分の配当をしておりますのに、若しもそれを一概に
資本に繰入れて、七百億近くの
資本に急激にいたした場合において、果してそれがどういうことになるでありましようか。勿論これはそれだけ電力料は安いのだ、
従つてそれに伴う収益力がないのだということは言えるだろうが、それだけ一概に電力料を増すことができましようかどうか、それらの問題は
一つの示唆であります。
従つてそれは電力会社ばかりでなく、あらゆる多くの
企業がそういう皆悩みを持
つているために再評価を躊躇しているのでありまして、この問題は
企業の本当の実力と相待
つていたすべきである。
従つてそれができる会社は断じてやるべきでありますが、これは強制するという問題は非常に無理であります。私は強制する理論的な立場においては賛成でありますが、実際のこの現状から行けば、まだ強制するということは非常に困難であろうと
考えます。ただ仮に一段階の再評価だけするということを
考えましても、再評価税の撤廃ということが伴わなければ、これはできない。この問題は今度の
税制改革におきましては、再評価税を第一次、第二次同様にとるという以上はこの強制も困難であろうと思います。積極的にこの再評価税を撤廃してもらいたいというようなことは、これは財界等でかねてから
要望しているところでありますが、なかなかそれが通らない。で私
ども仮に一歩を譲りましても、今度の再評価、第三次の再評価は、少くとも前の
最高限度額よりも、土地は別といたしまして、普通の
償却資産は五割増すということにな
つております。ですからこの五割増した
部分は、全くこれは再評価税をと
つておらないのでありますから、この
部分についてだけも再評価税を免除をすべきではないか、このように主張しておるのでありますが、これもこの
改革においては問題にな
つておらないのでありますので、この点は更に機会があれば検討をし得る余地があるのではないかと思うわけであります。
まあ、このようにいたしまして、第三次再評価についてはできるだけ期間を長く与えて、そうしてできる
企業には十分再評価をなし得る機会を与えるという狙いでなければならない。
従つて税を
廃止するならば一応再評価はやりやすくなり、そうして少くとも再評価をするというところまで行きまして、更に機会があれば
減価償却の強制
資本組入れも将来においてこれは又可能性も出て来るのではないかと思うわけでございます。
それからなお
一般のこの
資本構成是正の面においては、今のような再評価を続けていたす場合のほかに、増資を以てこの
資本構成をしようということも当然
考えてよろしいのでありますが、なぜ増資が思うようにやれないか、そして借入金に依然頼
つているかというと、やはり増資をいたします場合には、配当を伴わせなきやならない。配当を支払うのも、一割の配当金額を
考えますならば、それは二割に当る利益を割かなければ、税込で
考えなければなりませんので、これはた
つた一割の配当を
考えても、利益から減らす分は二割でございます。そして一割強を
税金に払いまして、残りの一割で配当を
考えると、こういうことになるわけであります。
従つて仮にこれを一割で借入金をしている場合には、その利息は経費に入
つて一割でありますので、これの比較を
考えますと、相当に収益力がなければつい増資を躊躇するということになる、ましてやそれが一割どころでないのでありまして、二割或いはそれ以上の配当を
考えている
企業におきましては一層の
負担が出ますので、そこで
経済同友会あたりで先般一定率、言い換えれば一割
程度の配当をする
部分について免税にしてもらいたい、こういうようなことを申したのもそこに理由があるのでありますが、これは配当の現在二割五分
控除というものと絡み合
つて参りますので、その点はよほど検討を要するだろうと
考えております。更にできるならば会社が
社内保留をいたしました利益金については幾分なりとも
法人税の軽減を
考えてもらいたいというような
考え方もあります。
又今日風水害というようなことになりますと、いつも治山治水という問題からいたしまして造林という問題が強く叫ばれておる、こういう
意味におきまして特殊
関係のことではありますが、造林積立金制度というようなものも
関係方面において強く
要望しているようでありますが、こういう点は
日本の森林政策の将来を
考えましても御
考慮頂く余地があれば幸だと思うのであります。
なお先ほ
ども出ましたが、
預金利子に対する
課税は今後
利子引下げの問題と絡み合せてそうして
考慮をさるべき問題であろうと思うのであります。
従つて今回は五〇%から四〇%に低減いたしたようでありますが、更にこの問題は相当論議がここに集中され、将来の問題として指摘されてよろしいと思うのであります。
以上丁度時間が参りましたので、この辺にとどめまして公述を終ります。